シート駆動装置
【課題】装置全体として大型化することなく、且つ、電気的構成を複雑化することなく、シートの位置調整に係る機能数の制約をより緩和することができるシート駆動装置を提供する。
【解決手段】単一の回転モータと、複数の位置調整機構に対応して個別に配設された複数の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sと、複数の位置調整機構に対応して個別に配設され複数の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sのいずれかの操作に伴い該当する位置調整機構への出力軸(54L,54T,54R,54S)と回転モータに回転駆動されるウォームホイール51,52とを選択的に接続する複数の筒部材55と、複数の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sのいずれかの操作に伴い操作方向に応じた極性で回転モータに通電する単一のスイッチ77とを備える。
【解決手段】単一の回転モータと、複数の位置調整機構に対応して個別に配設された複数の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sと、複数の位置調整機構に対応して個別に配設され複数の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sのいずれかの操作に伴い該当する位置調整機構への出力軸(54L,54T,54R,54S)と回転モータに回転駆動されるウォームホイール51,52とを選択的に接続する複数の筒部材55と、複数の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sのいずれかの操作に伴い操作方向に応じた極性で回転モータに通電する単一のスイッチ77とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の回転モータにより複数の位置調整機構を選択的に作動させるシート駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、こうしたシート駆動装置として種々のものが提案されている。例えば特許文献1に記載されたシート駆動装置は、3つの位置調整機構(前後一対の上下調整機構、前後調整機構)を備えている。そして、これら位置調整機構への出力軸は、それぞれに対応する電磁クラッチ及びギヤ機構を介して単一の回転モータに駆動連結可能である。
【0003】
すなわち、図42に示すように、各位置調整機構の操作に係る操作スイッチ201,202,203は、その操作方向に応じた極性で単一の回転モータ204に通電するととともに、当該位置調整機構への出力軸と回転モータ204とが駆動連結されるように該当の電磁クラッチのソレノイド206,207,208に通電する。これにより、当該位置調整機構が電磁クラッチ及びギヤ機構を介して回転モータ204に駆動されて、該当する位置調整がなされる。
【0004】
また、特許文献2に記載されたシート駆動装置は、2つの位置調整機構(前後一対の上下調整機構)を備えている。そして、図43に示すように、両位置調整機構への出力軸211,212は、それぞれに対応して設けられた2つのロック機構213,214によって動作が切り替わる差動歯車機構215を介して単一の回転モータに駆動連結可能である。すなわち、この差動歯車機構215は、入力系統が回転モータ側に連結され、2つの出力系統が両位置調整機構への出力軸211,212にそれぞれ連結されている。
【0005】
そして、一の位置調整機構を作動させる際には、他の位置調整機構への出力軸211(212)をロックするべく該当のロック機構213(214)のプランジャ213a(214a)を作動させる。これにより、当該位置調整機構への出力軸211(212)が差動歯車機構215を介して回転モータに駆動連結されて、該当する位置調整がなされる。
【0006】
さらに、特許文献3に記載されたシート駆動装置は、2つの位置調整機構(リクライニング機構、前後調整機構)を備えている。そして、図44に示すように、一の位置調整機構への出力軸221は、一対の摩擦車222,223に接触するとともに、当該接触状態のままそれらの移動を許容する。また、両摩擦車222,223間には、スプリング224が張架されるとともに、これら摩擦車222,223を移動させる制御ノブ225が配置されている。この制御ノブ225は、当該位置調整機構に係る操作ボタン226に、作動板227及び操作レバー228を介して連係されている。制御ノブ225は、操作ボタン226の操作に伴い操作方向に応じて作動板227が往復移動する際に操作レバー228が揺動することで、いずれか一方の摩擦車222,223が回転モータMの回転軸Rに駆動連結されるようにこれら摩擦車222,223を移動させる。
【0007】
同様に、他の位置調整機構への出力軸231は、一対の摩擦車232,233に接触するとともに、当該接触状態のままそれらの移動を許容する。また、両摩擦車232,233間には、スプリング234が張架されるとともに、これら摩擦車232,233を移動させる制御ノブ235が配置されている。この制御ノブ235は、当該位置調整機構に係る操作ボタン236に、作動板237及び操作レバー238を介して連係されている。制御ノブ235は、操作ボタン236の操作に伴い操作方向に応じて作動板237が往復移動する際に操作レバー238が揺動することで、いずれか一方の摩擦車232,233が回転モータMの回転軸Rに駆動連結されるようにこれら摩擦車232,233を移動させる。
【0008】
なお、操作ボタン226,236は、回転モータMへの通電を断接するスイッチSWと該当の作動板227,237を介して連係されており、その操作に伴い操作方向に応じて作動板227,237を往復移動させることで、該当する極性で回転モータMへの通電を同時に行う。
【0009】
従って、例えば一の位置調整機構を作動させるべく、該当の操作ボタン226(236)の操作によって制御ノブ225(235)とともに両摩擦車222,223(232,233)を移動させ、操作方向に応じたいずれかの摩擦車222,223(232,233)を回転軸Rに連結するとともに操作方向に応じた極性で回転モータMへの通電を行うと、回転軸Rが該当の摩擦車222,223(232,233)を介して出力軸221(231)に連結される。これにより、当該位置調整機構による位置調整がなされる。他の位置調整機構を作動させる場合も同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭58−97528号公報
【特許文献2】特公平6−9945号公報
【特許文献3】特開昭63−199139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、特許文献1では、これら位置調整機構への出力数と同数の操作スイッチ201〜203及び電磁クラッチ(ソレノイド206〜208)がそれぞれ必要になるため、例えば位置調整機能の増加に伴って電気回路の複雑化を余儀なくされる。
【0012】
また、特許文献2では、少なくとも両位置調整機構への出力数と同数のロック機構213,214(プランジャ213a,224a)が必要になるため、電気回路の複雑化を余儀なくされる。加えて、両位置調整機構の選択的な作動に、1つの入力系統と2つの出力系統を持つ差動歯車機構215を利用することから、その出力数は「2」のみとなり、シートの位置調整機能としては不十分となる。
【0013】
さらに、特許文献3では、操作ボタン226,236の操作時、3個の摩擦車を移動させるというダイナミックな移動となって、必要な操作力の増大を余儀なくされる。また、これら3個の摩擦車は、互いに異なる回転軸周りにそれぞれ回転するため、装置全体としての大型化を余儀なくされる。
【0014】
本発明の目的は、装置全体として大型化することなく、且つ、電気的構成を複雑化することなく、シートの位置調整に係る機能数の制約をより緩和することができるシート駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、単一の回転モータと、複数の位置調整機構に対応して個別に配設された複数の操作部材と、前記複数の位置調整機構に対応して個別に配設され、前記複数の操作部材のいずれかの操作に伴い、該当する前記位置調整機構への出力軸と前記回転モータに回転駆動される入力軸とを選択的に接続する複数のクラッチ機構と、前記複数の操作部材のいずれかの操作に伴い、操作方向に応じた極性で前記回転モータに通電する単一のスイッチとを備えたことを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、前記回転モータや前記スイッチは単一であるため、その電気的構成をより簡易化することができる。また、前記複数のクラッチ機構の各々は、該当する前記位置調整機構への前記出力軸と前記入力軸とを接続する構造(いわゆる軸継手)であるため、前記出力軸等の周りに集約的に配置することができ、装置全体としてより小型化することができる。さらに、前記出力軸の本数分だけシートの位置調整に係る機能数(位置調整機構の個数)を増やすことができるため、該機能数の制約をより緩和することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシート駆動装置において、前記複数の操作部材は、互いに同一の回転軸周りに回動するように軸支されていることを要旨とする。
同構成によれば、前記複数の操作部材は、前記回転軸周りに集約して配置されることで、装置全体としてより小型化することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のシート駆動装置において、前記複数の操作部材は、同一の回転軸周りに回動するように軸支されている前記操作部材を1組とする複数組に分けられていることを要旨とする。
【0019】
同構成によれば、前記複数の操作部材は、複数組に分けられて、これら複数組の操作部材が互いに異なる複数の回転軸周りに回動するように軸支される。従って、前記複数の操作部材の全てを互いに同一の回転軸周りに回動するように軸支した場合に比べて、これら複数の操作部材の相互干渉を抑制することができる。そして、前記操作部材の操作時、該当の前記位置調整機構をより精度よく動作させることができる。また、前記複数の操作部材が複数箇所に分散して軸支されることで、前記操作部材の配置やその操作をよりわかりやすくすることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、前記各クラッチ機構は、該当の前記出力軸が一体回転するように、且つ、軸線方向に移動可能に嵌挿され、前記入力軸側への軸線方向の移動に伴い該入力軸が一体回転するように嵌挿される筒部材を備え、前記入力軸が嵌挿される側に前記各筒部材を軸線方向に付勢する第1付勢部材と、前記各操作部材に駆動連結され、該操作部材が所定の初期位置にあるときに該当の前記筒部材への前記入力軸の嵌挿を外すとともに、前記操作部材の前記初期位置からの操作に伴い前記第1付勢部材に付勢される該当の前記筒部材への前記入力軸の嵌挿を許容するカム部材と、前記各操作部材が前記初期位置に保持されるように前記第1付勢部材の付勢力に抗して該当の前記操作部材を付勢する第2付勢部材とを備えたことを要旨とする。
【0021】
同構成によれば、いずれかの前記操作部材を前記第2付勢部材の付勢力に抗して前記初期位置から操作すると、前記カム部材により前記第1付勢部材に付勢される該当の前記筒部材への前記入力軸の嵌挿が許容される。従って、前記回転モータに回転駆動される前記入力軸の回転が該当の前記筒部材を介して前記出力軸に伝達されて、該当の前記位置調整機構が作動する。このとき、該当の前記出力軸と前記入力軸との接続状態は、前記第1付勢部材によって維持されており、従って前記出力軸等の回転が前記カム部材や前記操作部材へと伝達されることを抑制でき、ひいては前記出力軸等の回転振動が該当の前記操作部材を介してこれを操作する手などに伝わる不快感を解消できる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載のシート駆動装置において、前記スイッチが前記回転モータに通電するように前記スイッチを作動させる単一のスイッチレバーを備え、前記複数の操作部材は、前記回転軸周りの回動に伴い、回動方向に応じた極性で前記スイッチが作動するように前記スイッチレバーを押圧するスイッチカム部をそれぞれ有することを要旨とする。
【0023】
同構成によれば、いずれかの前記操作部材が前記回転軸周りに回動すると、該当の前記スイッチカム部が前記スイッチレバーを押圧することで、前記操作部材の回動方向(操作方向)に応じた極性で前記スイッチが作動する。従って、いずれかの前記操作部材の操作に連動する前記スイッチの作動を極めて簡易な構造で実現することができる。また、前記スイッチカム部は、該当の前記操作部材に一体的に設けられていることで、装置全体としてより小型化することができる。
【0024】
請求項6に記載の発明は、請求項3に記載のシート駆動装置において、前記スイッチが前記回転モータに通電するように前記スイッチを作動させる単一のスイッチレバーと、前記複数の操作部材とは異なる互いに同一の回転軸周りに軸支され、前記複数の操作部材にそれぞれ駆動連結された複数のスイッチカム部材を備え、前記複数のスイッチカム部材は、該当の前記操作部材の前記回転軸周りの回動に伴い、回動方向に応じた極性で前記スイッチが作動するように前記スイッチレバーを押圧するスイッチカム部をそれぞれ有することを要旨とする。
【0025】
同構成によれば、いずれかの前記操作部材が前記回転軸周りに回動すると、該操作部材に駆動連結された該当の前記スイッチカム部材の前記スイッチカム部が前記スイッチレバーを押圧することで、前記操作部材の回動方向(操作方向)に応じた極性で前記スイッチが作動する。従って、前記複数の操作部材が、互いに異なる回転軸周りに回動する複数組に分けられていても、いずれかの前記操作部材の操作に連動する前記スイッチの作動を、該当の前記スイッチカム部材を介することで実現することができる。また、前記複数のスイッチカム部材は、互いに同一の回転軸周りに集約して配置されることで、装置全体としてより小型化することができる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項4に記載のシート駆動装置において、前記各カム部材は、該当の前記筒部材の軸線に対して非平行な回転軸周りに軸支されており、前記各筒部材に形成された外向きフランジと、前記各カム部材に形成され、該当の前記操作部材が前記所定の初期位置にあるときに該当の前記筒部材の前記外向きフランジに近付くとともに、該当の前記操作部材の前記初期位置からの操作に伴い回動して該当の前記筒部材の前記外向きフランジから離隔するカム部と、前記各外向きフランジ及び該当の前記カム部の間で前記筒部材の移動方向に沿う周方向の回動が自在に設けられ、該当の前記操作部材が前記初期位置にあるときに前記カム部に押圧されることで前記筒部材への前記入力軸の嵌挿が外れるように前記外向きフランジを押圧し、該当の前記操作部材の前記初期位置からの操作に伴い該当の前記カム部から解放されることで前記外向きフランジを解放する仲介部材とを備えたことを要旨とする。
【0027】
同構成によれば、いずれかの前記操作部材を前記第2付勢部材の付勢力に抗して前記初期位置から操作すると、前記カム部材の前記カム部による前記仲介部材を介した前記筒部材の前記外向きフランジの押圧が解放される。これにより、前記第1付勢部材に付勢される該当の前記筒部材への前記入力軸の嵌挿が許容される。そして、該当する前記位置調整機構への前記出力軸と前記入力軸とが接続される。一方、該当の前記操作部材の操作を解放すると、前記第2付勢部材に付勢される前記操作部材が前記初期位置へと復帰する。このとき、前記仲介部材は、該当の前記カム部に押圧されることで、前記第1付勢部材の付勢力に抗して前記外向きフランジを押圧する。これにより、前記筒部材への前記入力軸の嵌挿が外れる。この際、前記仲介部材は、前記筒部材の移動方向に沿う周方向の回動を行って前記外向きフランジを押圧するため、例えば前記カム部で直に前記外向きフランジを押圧する場合のような一点での押圧に代えて、複数点での押圧や直線での押圧にすることができ、前記第1付勢部材の付勢力に抗した前記筒部材の移動をより円滑化することができる。
【0028】
請求項8に記載の発明は、請求項4又は7に記載のシート駆動装置において、前記各筒部材及び該当の前記入力軸の互いに対向する両先端面間に介装される緩衝部材を備えたことを要旨とする。
【0029】
同構成によれば、前記各筒部材及び該当の前記入力軸の互いに対向する両先端面間に介装される前記緩衝部材により、前記各筒部材に該当の前記入力軸が嵌挿される際のこれら両先端面の当り音を緩和することができる。
【0030】
請求項9に記載の発明は、請求項5に記載のシート駆動装置において、前記スイッチレバーは、前記複数の操作部材とは異なる第2の回転軸周りに回動するように軸支されており、前記複数の操作部材は、前記回転軸周りの回動に伴い、回動方向に応じて前記スイッチカム部で前記スイッチレバーの先端部を押圧することで、前記スイッチレバーを前記第2の回転軸周りに回動させて前記スイッチを作動させるものであり、前記複数の操作部材の全ての非操作時、これら複数の操作部材の全てにおいて、前記スイッチカム部が前記スイッチレバーの先端部を押圧可能な両押圧部と、前記スイッチレバーの先端部との間に、前記第2の回転軸を中心とする周方向の隙間がそれぞれ形成されていることを要旨とする。
【0031】
同構成によれば、前記複数の操作部材の全ての非操作時、前記スイッチカム部の前記両押圧部と、前記スイッチレバーの先端部との間に前記隙間がそれぞれ形成されていることで、前記複数の操作部材のいずれか一つの操作時には、該当の前記スイッチカム部の一方の前記押圧部が前記隙間分の空走区間を経て前記スイッチレバーの先端部を押圧する。これにより、前記スイッチレバーは、前記第2の回転軸周りに回動する。この場合、前記スイッチレバーの先端部と、非操作である他の前記操作部材(スイッチカム部)の他方の前記押圧部との間に前記隙間が形成されていることで、前記スイッチレバーの先端部が他の前記操作部材の他方の前記押圧部を押圧してこれを一体的に回動させてしまうことを抑制できる。
【0032】
また、前記スイッチレバーの回動時、その先端部は、他の前記操作部材(スイッチカム部)の他方の前記押圧部との間の前記隙間分の空走区間を経て当該押圧部に当接又は近接する。従って、前記スイッチレバーの先端部により、他の前記操作部材(スイッチカム部)の回動を規制することができる。
【0033】
請求項10に記載の発明は、請求項6に記載のシート駆動装置において、前記スイッチレバーは、前記複数の操作部材及び前記複数のスイッチカム部材とは異なる第2の回転軸周りに回動するように軸支されており、前記複数の操作部材は、前記回転軸周りの回動に伴い、回動方向に応じて前記スイッチカム部で前記スイッチレバーの先端部を押圧することで、前記スイッチレバーを前記第2の回転軸周りに回動させて前記スイッチを作動させるものであり、前記複数の操作部材の全ての非操作時、前記複数のスイッチカム部材の全てにおいて、前記スイッチカム部が前記スイッチレバーの先端部を押圧可能な両押圧部と、前記スイッチレバーの先端部との間に、前記第2の回転軸を中心とする周方向の隙間がそれぞれ形成されていることを要旨とする。
【0034】
同構成によれば、前記複数の操作部材の全ての非操作時、前記スイッチカム部の前記両押圧部と、前記スイッチレバーの先端部との間に前記隙間がそれぞれ形成されていることで、前記複数の操作部材のいずれか一つの操作時には、該当の前記スイッチカム部の一方の前記押圧部が前記隙間分の空走区間を経て前記スイッチレバーの先端部を押圧する。これにより、前記スイッチレバーは、前記第2の回転軸周りに回動する。この場合、前記スイッチレバーの先端部と、非操作である他の前記操作部材に対応する前記スイッチカム部材(スイッチカム部)の他方の前記押圧部との間に前記隙間が形成されていることで、前記スイッチレバーの先端部が他の前記スイッチカム部材の他方の前記押圧部を押圧してこれを一体的に回動させてしまうことを抑制できる。
【0035】
また、前記スイッチレバーの回動時、その先端部は、他の前記操作部材に対応する前記スイッチカム部材(スイッチカム部)の他方の前記押圧部との間の前記隙間分の空走区間を経て当該押圧部に当接又は近接する。従って、前記スイッチレバーの先端部により、他の前記スイッチカム部材(スイッチカム部)の回動を規制することができる。
【0036】
請求項11に記載の発明は、請求項6又は10に記載のシート駆動装置において、前記複数の操作部材及び前記複数のスイッチカム部材とは異なる第3の回転軸周りに回動するように軸支され、該第3の回転軸を中心とする径方向に突出する被押圧部及び該被押圧部を挟む前記第3の回転軸を中心とする周方向両側から径方向に突出する一対の規制部を有するストップカムと、前記複数のスイッチカム部材にそれぞれ形成され、回動方向に応じて前記被押圧部を選択的に押圧する一対の係合部とを備え、前記複数の操作部材の全ての非操作時、前記複数のスイッチカム部材の全てにおいて、前記両係合部と前記被押圧部との間に、前記第3の回転軸を中心とする周方向の隙間がそれぞれ形成されており、前記複数の操作部材のいずれか一つの操作時、該当の前記スイッチカム部材の前記係合部に前記被押圧部が押圧されて前記ストップカムが回動する際に、前記規制部が他の前記スイッチカム部材の前記係合部の回動軌跡を遮ることを要旨とする。
【0037】
同構成によれば、前記複数の操作部材の全ての非操作時、前記スイッチカム部材の前記両係合部と、前記ストップカムの前記被押圧部との間に前記隙間がそれぞれ形成されていることで、前記複数の操作部材のいずれか一つの操作時には、該当の前記スイッチカム部材の一方の前記係合部が前記隙間分の空走区間を経て前記ストップカムの前記被押圧部を押圧する。これにより、前記ストップカムが前記第3の回転軸周りに回動することで、一方の前記規制部が他の前記スイッチカム部材の一方の前記係合部の回動軌跡を遮る。従って、前記ストップカムの一方の前記規制部により、他の前記スイッチカム部材の回動を規制することができる。
【0038】
また、前記複数の操作部材の全ての非操作時、前記スイッチカム部材の前記両係合部と、前記ストップカムの前記被押圧部との間に前記隙間がそれぞれ形成されていることで、前記複数の操作部材のいずれか一つの操作時、前記ストップカムの前記被押圧部が非操作である他の前記操作部材に対応する前記スイッチカム部材の他方の前記係合部を押圧してこれを一体的に回動させてしまうことを抑制できる。
【0039】
さらに、前記ストップカムの回動時、前記被押圧部は、他の前記操作部材に対応する前記スイッチカム部材の他方の前記係合部との間の前記隙間分の空走区間を経て当該係合部に当接又は近接する。従って、前記ストップカムの前記被押圧部により、他の前記スイッチカム部材の回動を規制することができる。
【0040】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、シートクッションの側部に取着され、前記複数のクラッチ機構を収容する筐体を備え、前記複数の位置調整機構は、前記シートクッションの側部に取着され、該当の前記出力軸にトルクケーブルを介して駆動される伝達装置をそれぞれ備え、前記筐体は、前記複数の伝達装置に挟まれる前記シートクッションの側部の中央部に配置されていることを要旨とする。
【0041】
同構成によれば、前記シートクッションの側部において、前記筐体が前記複数の伝達装置に挟まれる中央部に配置されていることで、各々までの前記筐体からの距離が概ね均等になって、前記トルクケーブルの長さも概ね均等になる。このため、一部の前記トルクケーブルのみが長くなることによる、当該トルクケーブルの質量増加、摺動音増加による高騒音化、摺動抵抗増加による低効率化を抑制できる。
【0042】
請求項13に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、シートクッションの側部の骨格をなすロアアームに取着され、前記複数のクラッチ機構を収容する筐体を備え、前記複数の位置調整機構は、車両フロアに固定されるロアレール、該ロアレールに前後方向に移動可能に装着されるアッパレール、該当の前記出力軸にトルクケーブルを介して駆動され前記ロアレールに対して前記アッパレールを前後方向に移動させる伝達装置とを備えるスライド機構と、前記アッパレール及び前記ロアアームの前端部にそれぞれ回動自在に連結されるフロントリンク、前記アッパレールの後端部及び前記ロアアームの後端部にそれぞれ回動自在に連結されるリアリンクを備え、前記アッパレールに対して前記ロアアームを昇降させるリフタ機構とを含み、
前記伝達装置は、シート幅方向に延びる軸線周りに前記アッパレールに回動自在に連結されており、前記伝達装置に一方の端部が回動自在に連結され、前記フロントリンク及び前記リアリンクのいずれか一方又は前記ロアアームに他方の端部が回動自在に連結されたリンクを備えたことを要旨とする。
【0043】
同構成によれば、前記スライド機構(伝達装置)により、前記ロアレールに対して前記アッパレールが前後方向に移動されることで、車両フロアに対する前記シートクッション(ロアアーム)の位置が前後方向に調整される。また、リフタ機構により、前記アッパレールに対して前記ロアアームが昇降されることで、前記シートクッション(ロアアーム)の位置が上下方向に調整される。このとき、前記筐体が前記ロアアームと共に昇降することで、これに追従して前記トルクケーブルの姿勢が変化する。しかしながら、前記フロントリンク及び前記リアリンクのいずれか一方又は前記ロアアーム、前記リンク、前記伝達装置、並びに前記アッパレールは、前記リンクを媒介節(連接節)とする4節回転連鎖を構成する。従って、前記シートクッション(ロアアーム)の位置が上下方向に調整されたとしても、前記フロントリンク及び前記リアリンクのいずれか一方の揺動又は前記ロアアームの昇降に追従して前記伝達装置が揺動することで、該伝達装置及び前記筐体間の距離が略一定に保たれて、前記トルクケーブルの長さが過不足になることが抑制される。
【0044】
請求項14に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、シートクッションの側部の骨格をなすロアアームに取着され、前記複数のクラッチ機構を収容する筐体と、前記複数の操作部材を除き、前記筐体を含めて前記シートクッションの側部を覆うサイドカバーとを備え、前記複数の操作部材の少なくとも一つは、シート幅方向に延びる軸線周りに回動するように前記筐体に軸支されてその軸線を中心とする径方向に延在していることを要旨とする。
【0045】
同構成によれば、該当の操作部材を操作する際には、例えば前記サイドカバーのシート幅方向外側面(一般面)に手の平を置いたまま当該操作部材に一本の指を押し当てて、手首を支点に手指を回動させればよい。つまり、当該操作部材の操作のためにこれをつまむ必要のないことから、シート幅方向外側に指が立ったりすることもない。このため、該当の操作部材の操作に必要な空間をより縮小できる。
【0046】
請求項15に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、シートクッションの側部の骨格をなすロアアームのシート幅方向外側面に取着され、前記複数のクラッチ機構を収容する筐体を備え、前記複数の操作部材は、前記筐体のシート幅方向外側面に支持されており、前記筐体は、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜していることを要旨とする。
【0047】
同構成によれば、前記筐体は、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜していることで、例えば前記筐体の姿勢を略垂直にする場合に比べて、前記複数の操作部材のシート幅方向外側への突出長をより短縮できる。そして、例えば前記複数の操作部材等と、それらのシート幅方向外側に対向する車両ドアのドアトリムとの距離を確保することができる。
【0048】
請求項16に記載の発明は、請求項15に記載のシート駆動装置において、前記回転モータは、その軸線がシート幅方向内側に向かうに従い下方に向かうように、前記シートクッションの下方で前記筐体に取着されていることを要旨とする。
【0049】
同構成によれば、前記回転モータは、その軸線がシート幅方向内側に向かうに従い下方に向かうことで、シート幅方向内側に向かうに従い前記シートクッションとの間の高さ方向の隙間に余裕が生まれる。従って、前記シートクッションとその下方(即ち尻下)に配置される前記回転モータとの間の高さ方向の隙間を確保することができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明では、装置全体として大型化することなく、且つ、電気的構成を複雑化することなく、シートの位置調整に係る機能数の制約をより緩和することができるシート駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態が適用される8ウェイパワーシートの斜視図。
【図2】同実施形態を示す側面図。
【図3】同実施形態を示す斜視図。
【図4】同実施形態を示す側面図。
【図5】同実施形態を示す分解斜視図。
【図6】同実施形態を示す分解斜視図。
【図7】(a)(b)は、第1カム部材及び第2カム部材を示す斜視図。
【図8】同実施形態を示す平面図。
【図9】図8のA−A線に沿った断面図。
【図10】図8のB−B線に沿った断面図。
【図11】図8のC−C線に沿った断面図。
【図12】図8のD−D線に沿った断面図。
【図13】スイッチレバー及びその動作を示す拡大図。
【図14】スイッチレバー及びその動作を示す拡大図。
【図15】操作ハンドルの操作態様を説明する側面図。
【図16】操作ハンドルの操作態様を併せて説明する、図2のE−E線に沿った断面図。
【図17】従来例の操作ハンドルの操作態様を説明する側面図。
【図18】従来例の操作ハンドルの操作態様を説明する断面図。
【図19】同実施形態の動作を示す斜視図。
【図20】同実施形態の動作を示す斜視図。
【図21】同実施形態の電気的構成を示す等価回路図。
【図22】本発明の第2の実施形態が適用される8ウェイパワーシートの斜視図。
【図23】同実施形態を示す側面図。
【図24】同実施形態を示す分解斜視図。
【図25】同実施形態を示す分解斜視図。
【図26】(a)(b)は、カム部材を示す斜視図。
【図27】同実施形態を示す平面図。
【図28】図27のA1−A1線に沿った断面図。
【図29】図27のB1−B1線に沿った断面図。
【図30】図27のC1−C1線に沿った断面図。
【図31】同実施形態の動作を示す斜視図。
【図32】同実施形態の動作を示す斜視図。
【図33】同実施形態の動作を示す斜視図。
【図34】本発明の第3の実施形態を示す分解斜視図。
【図35】同実施形態を示す断面図。
【図36】図35の拡大図。
【図37】同実施形態の動作を示す斜視図。
【図38】同実施形態の動作を示す斜視図。
【図39】同実施形態を示す分解斜視図。
【図40】同実施形態を示す断面図。
【図41】(a)(b)は、同実施形態の動作を示す断面図。
【図42】従来形態の電気的構成を示す説明図。
【図43】別の従来形態を示す説明図。
【図44】別の従来形態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0052】
(第1の実施形態)
図1〜図21を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。図1に示すように、車両フロアには、シート幅方向に並設されて前後方向に延在する対のロアレール1が固定されるとともに、該ロアレール1には、アッパレール2が前後方向に移動可能に装着されている。
【0053】
両アッパレール2には、板材からなるブラケット3がそれぞれ立設されている。そして、両ブラケット3には、各々の前部及び後部に配設されたフロントリンク4及びリアリンク5を介して乗員の着座部を形成するシート6が支持されている。このシート6は、座面を形成するシートクッション7と、該シートクッション7の後端部に傾動(回動)自在に支持されたシートバック8と、該シートバック8の上端部に支持されたヘッドレスト9とを備えて構成される。
【0054】
そして、シート6は、両側のロアレール1及びアッパレール2を相対移動させることでその前後位置が調整可能であるとともに、両側のフロントリンク4及びリアリンク5を昇降させることでその上下位置が調整可能である。また、シート6は、シートクッション7の後部に対する前部の傾斜角度が調整可能であるとともに、シートクッション7に対するシートバック8の傾斜角度が調整可能である。これにより、当該シート6の着座者は、例えばその体格に合わせて目線の位置を調整可能である。
【0055】
次に、シート6の位置調整に係る構造について更に説明する。図2に示すように、各側のロアレール1には、前後方向に貫通する雌ねじ部を有するスライド用ナット部材11が固定されており、各側のアッパレール2には、スライド用ナット部材11の雌ねじ部と螺合する雄ねじ部を有して前後方向に延在するスライド用リードスクリュ12が軸支されている。
【0056】
また、各アッパレール2の前端部には、スライド用ギヤボックス13が取着されている。このスライド用ギヤボックス13は、前後方向(リードスクリュ12の軸線方向)及びシート幅方向にそれぞれ軸線が延びる一対のハスバ歯車(図示略)を内蔵している。前後方向に軸線が延びる一方のハスバ歯車は、リードスクリュ12に一体回転するように連結されており、シート幅方向に軸線が延びる他方のハスバ歯車は、当該方向に延びる軸線を有して両側のスライド用ギヤボックス13間に橋渡しされる多角柱状のスライド用連結ロッド14に一体回転するように連結されている。
【0057】
さらに、片側(シート前方に向かって右側)のアッパレール2には、スライド用ギヤボックス13の外側で方向変換ギヤ装置15が並設されている。この方向変換ギヤ装置15は、シート幅方向(スライド用連結ロッド14の軸線方向)及び概ね前後方向にそれぞれ軸線が延びる一対のハスバ歯車15a,15bを内蔵している。一方のハスバ歯車15aは、スライド用連結ロッド14に一体回転するように連結されており、他方のハスバ歯車15bは、方向変換ギヤ装置15の後方に延在するスライド用トルクケーブル16に一体回転するように連結されている。
【0058】
従って、スライド用トルクケーブル16が回転すると、その回転が方向変換ギヤ装置15の入力側であるハスバ歯車15b及び出力側であるハスバ歯車15a間で90°方向変換されてスライド用連結ロッド14に伝達される。そして、スライド用連結ロッド14の回転は、両側のスライド用ギヤボックス13において90°方向変換されて両側のスライド用リードスクリュ12に伝達される。これにより、各側のスライド用リードスクリュ12及びスライド用ナット部材11のねじ作用でスライド用リードスクリュ12の回転運動がスライド用ナット部材11に対するスライド用リードスクリュ12の直線運動に変換されて、ロアレール1に対してアッパレール2が前後方向に移動する。
【0059】
なお、スライド用ギヤボックス13の入力側のハスバ歯車のギヤ径よりも出力側のハスバ歯車のギヤ径の方が大きく設定されており、前記した方向変換時に入力側のハスバ歯車の回転が減速されて出力側のハスバ歯車(及びスライド用リードスクリュ12)に伝達されるようになっている。スライド用ナット部材11、スライド用リードスクリュ12、スライド用ギヤボックス13、スライド用連結ロッド14及び方向変換ギヤ装置15は、ロアレール1及びアッパレール2とともに位置調整機構としてのスライド機構M1を構成する。
【0060】
各側のフロントリンク4は、一方の端部が前記ブラケット3に回動自在に連結されるとともに、他方の端部がシートクッション7側部の骨格をなす板材からなるロアアーム20に回動自在に連結されている。また、各側のリアリンク5は、一方の端部が前記ブラケット3に回動自在に連結されるとともに、他方の端部がロアアーム20に回動自在に連結されている。従って、ブラケット3(アッパレール2)、フロントリンク4、リアリンク5及びロアアーム20は、該ロアアーム20を媒介節(連接節)とする4節回転連鎖を構成する。
【0061】
片側(シート前方に向かって右側)のリアリンク5には、ロアアーム20側の支持軸を中心にその前側に略扇状に広がるセクタギヤ部5aが形成されている。そして、当該側のロアアーム20には、その外側でリフタ用ギヤボックス21が取着されている。このリフタ用ギヤボックス21は、ウォーム21a及びウォームホイール21b(即ちウォームギヤ)からなる減速機構を内蔵するとともに、ウォームホイール21bと同軸でこれと一体回転するリフタ用ピニオン21cを露出する。このリフタ用ピニオン21cは、シート幅方向に延びる軸線を有してリアリンク5のセクタギヤ部5aと噛合する。そして、ウォーム21aは、リフタ用ギヤボックス21の前方に延在するリフタ用トルクケーブル22に一体回転するように連結されている。
【0062】
従って、リフタ用トルクケーブル22が回転すると、その回転がリフタ用ギヤボックス21の入力側であるウォーム21a及び出力側であるウォームホイール21b間で減速されてリフタ用ピニオン21cに伝達される。そして、リフタ用ピニオン21cの回転は、該リフタ用ピニオン21cにセクタギヤ部5aで噛合するリアリンク5に伝達されて、該リアリンク5がロアアーム20側の支持軸を中心に回動する。これにより、4節回転連鎖を構成するフロントリンク4及びリアリンク5が共にブラケット3側の支持軸を中心に回動し、ブラケット3に対してロアアーム20(シート6)が昇降する。フロントリンク4、リアリンク5及びリフタ用ギヤボックス21は、ブラケット3(アッパレール2)及びロアアーム20とともに位置調整機構としてのリフタ機構M2を構成する。
【0063】
なお、図3に併せ示すように、片側(シート前方に向かって右側)のフロントリンク4には、ブラケット3側の支持軸の近傍で、トラベルリンク17の一方の端部が回動自在に連結されている。一方、前記方向変換ギヤ装置15は、該当するアッパレール2の前端部に固定された板材からなるサポートブラケット18に対し、その出力側であるハスバ歯車15a(スライド用連結ロッド14)と同軸で回動自在に連結されている。そして、トラベルリンク17の他方の端部は、ハスバ歯車15bの近傍で方向変換ギヤ装置15に回動自在に連結されている。
【0064】
従って、図4に示すように、フロントリンク4、トラベルリンク17、方向変換ギヤ装置15、並びに実質的に一体化されたアッパレール2、ブラケット3及びサポートブラケット18は、トラベルリンク17を媒介節(連接節)とする4節回転連鎖を構成する。これは、リフタ機構M2の作動に伴うフロントリンク4の揺動に追従して方向変換ギヤ装置15を揺動させ、該方向変換ギヤ装置15に接続されるスライド用トルクケーブル16の長さが過不足になることを解消するためである。
【0065】
図2に示すように、各側のロアアーム20には、その前後方向中間部において、シートクッション7の側部前部の骨格をなす板材からなるチルトアーム25の後端部が回動自在に連結されている。各チルトアーム25の前端部は、フロントリンク4のロアアーム20側の支持軸と同軸で該ロアアーム20に回動自在に連結されたチルトリンク26に回動自在に連結されている。
【0066】
片側(シート前方に向かって右側)のチルトリンク26には、ロアアーム20側の支持軸を中心にその前側に略扇状に広がるセクタギヤ部26aが形成されている。そして、当該側のロアアーム20には、その外側でチルト用ギヤボックス27が取着されている。このチルト用ギヤボックス27は、ウォーム27a及びウォームホイール27b(即ちウォームギヤ)からなる減速機構を内蔵するとともに、ウォームホイール27bと同軸でこれと一体回転するチルト用ピニオン27cを露出する。このチルト用ピニオン27cは、シート幅方向に延びる軸線を有してチルトリンク26のセクタギヤ部26aと噛合する。そして、ウォーム27aは、チルト用ギヤボックス27の後方に延在するチルト用トルクケーブル28に一体回転するように連結されている。
【0067】
従って、チルト用トルクケーブル28が回転すると、その回転がチルト用ギヤボックス27の入力側であるウォーム27a及び出力側であるウォームホイール27b間で減速されてチルト用ピニオン27cに伝達される。そして、チルト用ピニオン27cの回転は、該チルト用ピニオン27cにセクタギヤ部26aで噛合するチルトリンク26に伝達されて、該チルトリンク26がロアアーム20側の支持軸を中心に回動する。
【0068】
これにより、チルトリンク26に連結されたチルトアーム25がその前端部を昇降するように後端部を中心に回動し、ロアアーム20に対してチルトアーム25の前端部(シート6の前端部)が昇降する。そして、ロアアーム20に対するチルトアーム25(シート6の後部に対する前部)の傾斜角度が増減する。なお、チルトリンク26のチルトアーム25側の支持軸は、チルトリンク26の回動に伴うチルトアーム25の回動を共用するためにチルトリンク26に対して一定範囲内の移動が許容されている。チルトリンク26及びチルト用ギヤボックス27は、ロアアーム20及びチルトアーム25とともに位置調整機構としてのチルト機構M3を構成する。
【0069】
各側のロアアーム20後端部には、板材からなるリクライナプレート31が固定されるとともに、該リクライナプレート31には、略円盤状のリクライナ32を介してシートバック8の下端部が連結されている。このリクライナ32は、周知のハイポサイクロイド減速機を構成するものである。すなわち、リクライナ32は、内歯歯車を有してリクライナプレート31に固定される第1ディスクと、内歯歯車の歯数よりも少ない歯数でこれに噛合する外歯歯車を有する第2ディスクと、内歯歯車及び外歯歯車を噛合すべくこれらの偏心状態を保つ楔部材と、第1ディスク(内歯歯車)と同軸に配置されて第2ディスクが軸支され楔部材を移動させるカム軸等とを備えて構成される。そして、リクライナ32は、第2ディスクにおいてシートバック8に固定されている。リクライナ32は、カム軸の回転に伴う楔部材の移動により、内歯歯車及び外歯歯車の噛合状態を保ったまま第2ディスクを公転させることで、この公転時における第2ディスクの自転数としてカム軸の回転を減速する。そして、第1ディスクに対する第2ディスクの回転により、シートクッション7に対してシートバック8が回動(傾動)する。
【0070】
片側(シート前方に向かって右側)のリクライナプレート31には、その外側でリクライナ用ギヤボックス33が取着されている。このリクライナ用ギヤボックス33は、ウォーム33a及びウォームホイール33b(ウォームギヤ)からなる減速機構を内蔵する。ウォームホイール33bは、シート幅方向に延びる軸線を有して両側のリクライナ32間に橋渡しされる多角柱状のリクライナ用連結ロッド34に一体回転するように連結されている。このリクライナ用連結ロッド34は、両側のリクライナ32を貫通してそれらのカム軸に一体回転するように連結されている。一方、ウォーム33aは、リクライナ用ギヤボックス33の前方に延在するリクライナ用トルクケーブル35に一体回転するように連結されている。
【0071】
従って、リクライナ用トルクケーブル35が回転すると、その回転がリクライナ用ギヤボックス33の入力側であるウォーム33a及び出力側であるウォームホイール33b間で減速されてリクライナ用連結ロッド34に伝達される。そして、リクライナ用連結ロッド34の回転は、リクライナ32のカム軸に伝達される。これにより、前述の態様でリクライナ32の第1ディスクに対して第2ディスクが回転し、シートクッション7に対してシートバック8が回動(傾動)する。リクライナ32、リクライナ用ギヤボックス33及びリクライナ用連結ロッド34は、リクライナプレート31(ロアアーム20)及びシートバック8とともに位置調整機構としてのリクライナ機構M4を構成する。
【0072】
つまり、本実施形態は、スライド機構M1、リフタ機構M2、チルト機構M3及びリクライナ機構M4の各々における正方向及び逆方向のシート位置の調整が可能な、いわゆる8ウェイパワーシートとなっている。
【0073】
片側(シート前方に向かって右側)のロアアーム20のリフタ用ギヤボックス21及びチルト用ギヤボックス27間に挟まれる前後方向中間部には、駆動装置40が取着されている。
【0074】
すなわち、図5に示すように、ロアアーム20の前後方向中間部には、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜する傾斜部20aが形成されており、該傾斜部20aにおいて駆動装置40が締結されている。この駆動装置40は、例えばブラシモータからなる回転モータ36の概ねシート幅方向(傾斜部20aに略直交する方向)に軸線の延びる回転軸36aに、該回転軸36aと同軸の入力用トルクケーブル(鉄線を撚ったもの)37を介して駆動連結されている。この入力用トルクケーブル37は、回転モータ36の回転軸36aに一体回転するように挿入されている。
【0075】
詳述すると、図6に示すように、駆動装置40は、回転軸36aの軸線方向に2分された一対の本体ケース41,42、本体ケース42を外側及び下側からそれぞれ覆うカバー43及びスイッチカバー44にてその筐体をなしている。本体ケース41,42は、これらの四隅を回転軸36aの軸線方向と平行に貫通する4本のスクリュ45にて締結されている。
【0076】
なお、駆動装置40は、本体ケース41,42においてロアアーム20の傾斜部20aに締結されている。従って、本体ケース41,42の姿勢は、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜している。また、回転軸36a(回転モータ36)の軸線は、シート幅方向内側に向かうに従い下方に向かうように傾斜している。
【0077】
本体ケース42には、図10及び図11に併せ示すように、前後方向(図示左右方向)並設された一対の軸受部42a,42bが回転軸36aの軸線方向と平行に外向きに突設されている。軸受部42aは、基端側に配置されたリフタ用軸受部46L及び該リフタ用軸受部46Lよりも縮径されたリクライナ用軸受部46Rを有して段付き円柱状を呈しており、軸受部42bは、基端側に配置されたチルト用軸受部46T及び該チルト用軸受部46Tよりも縮径されたスライド用軸受部46Sを有して段付き円柱状を呈している。
【0078】
さらに、本体ケース42には、軸受部42aと同心でその上側及び下側に略円弧柱状のガイド部42c,42dが突設されるとともに、軸受部42bと同心でその上側及び下側に略円弧柱状のガイド部42e,42fが突設されている。本体ケース42及びカバー43は、該カバー43の上側部を回転軸36aの軸線方向(即ち傾斜部20aに略直交する方向)と平行に貫通する4本のスクリュ47が両軸受部42a,42b及び両ガイド部42d,42fにそれぞれ締め付けられることで締結されている。
【0079】
また、本体ケース42の下側に配置されるスイッチカバー44には、図6に示すように、その上端の前後方向両端からシート幅方向外側に一対の柱状の支持部44a,44bが突設されている。カバー43及びスイッチカバー44は、カバー43の下側部を<回転軸36aの軸線方向と平行に>貫通する2本のスクリュ48が両支持部44a,44bにそれぞれ締め付けられることで締結されている。
【0080】
なお、本体ケース42に締結されるカバー43の上側部は、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜しており、カバー43の下側部は、略垂直に起立している。従って、カバー43の下側部に締結されるスイッチカバー44の姿勢は略水平になっている。
【0081】
ここで、回転モータ36側の本体ケース41には、図12に示すように、入力用トルクケーブル37(回転軸36a)と同心で該入力用トルクケーブル37側に略円筒状の保持部41aが突設されている。この保持部41a内には、円環状の軸受BE1が嵌着されるとともに、有底略円筒状のプラグPLがねじ込まれている。そして、軸受BE1の中心部には、プラグPLに挿通された入力用トルクケーブル37が配置されており、軸受BE1には、入力用トルクケーブル37と同軸に配置されたウォーム38の基端部が軸支されている。ウォーム38は、その基端部に形成された四角穴に入力用トルクケーブル37が嵌合することでこれに一体回転するように連結されている。このウォーム38の先端部は、回転モータ36から離隔する側の本体ケース42に、円筒状の軸受BE2を介して軸支されている。
【0082】
なお、本体ケース42には、ウォーム38(回転軸36a)と同心で該ウォーム38から離隔する側にスイッチ用軸受部49が突設されている。このスイッチ用軸受部49は、基端側から先端側に向かって段階的に縮径された軸受部49L,49T,49R,49S及び支持部49aを有して段付き円柱形状を呈しており、該支持部49aにおいてカバー43の上側部に嵌挿・支持されている。図10及び図11に併せ示すように、スイッチ用軸受部49の中心は、両軸受部42a,42b間の中心に配置されている。
【0083】
図6に示すように、本体ケース41,42には、ウォーム38の上側及び下側で前後方向に軸線の延びる一対の入力軸としてのウォームホイール51,52が配設されている。
つまり、回転モータ36と、該回転モータ36(回転軸36a)にウォーム38を介して連結されるウォームホイール51,52は、いわゆるT型構成となっている。
【0084】
ウォームホイール51,52は、ウォーム38に対して互いに異なるねじれの位置でこれに噛合しており、互いに同等の1以上の減速比に設定されている。すなわち、図7に併せ示すように、一方のウォームホイール51は、ウォーム38の上側でこれに噛合するギヤ部51aを有するとともに、該ギヤ部51aの後側及び前側に突設されて本体ケース41,42にワッシャWAを介して軸支される一対の軸部51b,51cを有する。そして、ウォームホイール51は、軸部51bの更に後側及び軸部51cの更に前側にそれぞれ突設された嵌合部53L,53Tを有する。
【0085】
同様に、他方のウォームホイール52は、ウォーム38の下側でこれに噛合するギヤ部52aを有するとともに、該ギヤ部52aの後側及び前側に突設されて本体ケース41,42にワッシャWAを介して軸支される一対の軸部52b,52cを有する。そして、ウォームホイール52は、軸部52bの更に後側及び軸部52cの更に前側にそれぞれ突設された嵌合部53R,53Sを有する。これら嵌合部53L,53T,53R,53Sの外形は、円柱形状と該円柱形状の互いに相反する径方向に延出する一対の円弧柱形状とが組み合わされてなる略2枚羽根形状を呈している。
【0086】
また、本体ケース41,42には、ウォームホイール51の後側及び前側で該ウォームホイール51と同軸に、出力軸としてのリフタ用シャフト54L及びチルト用シャフト54Tが互いに対称となる姿勢でそれぞれ軸支されている。リフタ用シャフト54Lは、その先端部に形成された四角穴に前記リフタ用トルクケーブル22が嵌入することでこれに一体回転するように連結されており、チルト用シャフト54Tは、その先端部に形成された四角穴に前記チルト用トルクケーブル28が嵌入することでこれに一体回転するように連結されている。
【0087】
さらに、本体ケース41,42には、ウォームホイール52の後側及び前側で該ウォームホイール52と同軸に、出力軸としてのリクライナ用シャフト54R及びスライド用シャフト54Sが互いに対称となる姿勢でそれぞれ軸支されている。リクライナ用シャフト54Rは、その先端部に形成された四角穴に前記リクライナ用トルクケーブル35が嵌入することでこれに一体回転するように連結されており、スライド用シャフト54Sは、その先端部に形成された四角穴に前記スライド用トルクケーブル16が嵌入することでこれに一体回転するように連結されている。
【0088】
なお、これらリフタ用シャフト54L、チルト用シャフト54T、リクライナ用シャフト54R及びスライド用シャフト54Sは、それらの配置態様等を除けば互いに同一形状を有しているため、以下ではリフタ用シャフト54Lを代表してその周辺構造を説明する。
【0089】
リフタ用シャフト54Lは、略円柱形状を呈しており、本体ケース41,42の軸受部からウォームホイール51に対向する側に延伸する先端部は、互いに相反する径方向に一対の扇形状が突設されて、前記嵌合部53Lの外形と略同一形状を呈する出力軸側嵌合部54aを形成する。
【0090】
ウォームホイール51の嵌合部53L及びリフタ用シャフト54L間には、筒部材55が介設されている。筒部材55は、筒部55aと、該筒部55aのリフタ用シャフト54Lに対向する先端から径方向外側に突設されたフランジ状の押圧片55bとを有する。そして、筒部材55には、リフタ用シャフト54Lと一体回転するように、且つ、該リフタ用シャフト54Lに対して軸線方向に移動可能に出力軸側嵌合部54aに嵌合する嵌合孔55cが形成されている。筒部材55は、軸線方向にウォームホイール51側に移動することで、該ウォームホイール51と一体回転するようにその嵌合孔55cを嵌合部53Lに嵌合可能である。
【0091】
つまり、ウォームホイール51の回転は、筒部材55の移動に伴い嵌合部53L及び嵌合孔55cが嵌合することで筒部材55を介してリフタ用シャフト54Lに伝達可能であり、嵌合部53L及び嵌合孔55cの嵌合が外れることで筒部材55を介したリフタ用シャフト54Lへの伝達が不能になる。ウォームホイール51の嵌合部53L、リフタ用シャフト54Lの出力軸側嵌合部54a及び筒部材55は、ウォームホイール51及びリフタ用シャフト54Lを選択的に接続するクラッチ機構を構成する。
【0092】
リフタ用シャフト54Lの回転は、前記リフタ用トルクケーブル22を介してリフタ用ギヤボックス21に伝達されることで、前述の態様でリフタ機構M2が作動する。なお、図9に示すように、リフタ用シャフト54Lは、その軸線方向中間部の外周部にEリング56が嵌着されるとともに、筒部材55の押圧片55bに当接する円環状のワッシャ57に挿通され、更に本体ケース41,42及びEリング56間に介装された円環状のワッシャ58に挿通されている。
【0093】
また、リフタ用シャフト54Lは、Eリング56及びワッシャ57間でコイルばねからなる第1付勢部材としての圧縮ばね59に挿通されている。そして、筒部材55は、圧縮ばね59によりその嵌合孔55cがウォームホイール51の嵌合部53Lに嵌合する側、即ちウォームホイール51の回転をリフタ用シャフト54Lに伝達可能な側に常時付勢されている。換言すれば、ウォームホイール51の回転がリフタ用シャフト54Lに伝達不能な状態では、圧縮ばね59の付勢力に抗して嵌合部53L及び嵌合孔55cの嵌合が外れる側に筒部材55が移動していることになる。
【0094】
ウォームホイール51及びチルト用シャフト54T間、ウォームホイール52及びリクライナ用シャフト54R間並びにウォームホイール52及びスライド用シャフト54S間にも、それらを選択的に接続する同様のクラッチ機構が構成されている。つまり、本体ケース41,42内には、8ウェイパワーシートの4つの出力軸(リフタ用シャフト54L、チルト用シャフト54T、リクライナ用シャフト54R及びスライド用シャフト54S)に対応する4系統のクラッチ機構の全てが収納されている。また、回転モータ36に入力用トルクケーブル37を介して駆動されるウォーム38及びウォームホイール51,52は、4つの筒部材55を介していずれかの出力軸(リフタ用シャフト54L、チルト用シャフト54T、リクライナ用シャフト54R又はスライド用シャフト54S)に回転伝達する動力伝達機構を構成する。従って、この動力伝達機構も本体ケース41,42内に収納されている。
【0095】
図6に示すように、本体ケース42には、軸受部42a及びスイッチ用軸受部49間の上側及び下側に一対の略円形の軸受孔42g,42hが形成されている。また、軸受部42b及びスイッチ用軸受部49間の上側及び下側にも同様の軸受孔42g,42hが形成されている。そして、上側の両軸受孔42gには、一対のカム部材としての第1カム部材61がそれぞれ軸支されており、下側の両軸受孔42hには、一対のカム部材としての第2カム部材62がそれぞれ軸支されている。
【0096】
図7(a)に併せ示すように、第1カム部材61は、軸受孔42gに軸支される略円柱状の大径軸部61aを有するとともに、軸受孔42gから本体ケース42内に突出する略卵形状のカム部61bを有し、更に軸受孔42gから本体ケース42の外側に突出して軸受孔42gの外側周縁部に摺接するフランジ部61cを有する。また、第1カム部材61は、フランジ部61cに隣接して本体ケース42の外側に配置されたギヤ部61dを有するとともに、該ギヤ部61dに隣接して本体ケース42の更に外側に配置された円柱部61eを有し、更に該円柱部61eよりも縮径されてカバー43に軸支される略円柱状の小径軸部61fを有する。
【0097】
図19に示すように、リフタ用シャフト54L側の第1カム部材61は、カム部61bにおいて筒部材55の筒部55aの外周面に当接又は近接して押圧片55bに当接可能に配置されている。そして、カム部61bの長手方向が筒部材55等の軸線方向に一致する回転位置、即ちウォームホイール51から筒部材55を最も離隔させる回転位置(以下、第1カム部材61の「中立位置」ともいう)にあるときに、圧縮ばね59の付勢力に抗してウォームホイール51の嵌合部53Lから筒部材55の嵌合孔55cを外す。
【0098】
また、図20に示すように、第1カム部材61は、回動に伴いカム部61bの長手方向が筒部材55等の軸線方向から外れると、圧縮ばね59に付勢される筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール51の嵌合部53Lに嵌合するように筒部材55の移動を許容する。一方、第1カム部材61は、回動に伴いカム部61bで筒部材55の押圧片55bを圧縮ばね59の付勢力に抗して押圧しつつ、該カム部61bの長手方向が筒部材55等の軸線方向に再び一致するように筒部材55を移動させると、ウォームホイール51の嵌合部53Lから筒部材55の嵌合孔55cを外す。なお、チルト用シャフト54T側の第1カム部材61の動作も同様である。
【0099】
一方、図7(b)に併せ示すように、第2カム部材62は、軸受孔42hに軸支される略円柱状の大径軸部62aを有するとともに、軸受孔42hから本体ケース42内に突出する略卵形状のカム部62bを有し、更に軸受孔42hから本体ケース42の外側に突出して軸受孔42hの外側周縁部に摺接するフランジ部62cを有する。また、第2カム部材62は、フランジ部62cに隣接して本体ケース42の外側に配置された円柱部62dを有するとともに、該円柱部62dに隣接して本体ケース42の更に外側に配置されたギヤ部62eを有し、更に円柱部62dよりも縮径されてカバー43に軸支される略円柱状の小径軸部62fを有する。つまり、第1及び第2カム部材61,62は、それらのギヤ部61d,62e及び円柱部61e,62dが軸線方向で互い違いになるように配置されていることを除いて互いに同一形状を有している。
【0100】
そして、リクライナ用シャフト54R側の第2カム部材62は、カム部62bにおいて筒部材55の筒部55aの外周面に当接又は近接して押圧片55bに当接可能に配置されている。そして、カム部62bの長手方向が筒部材55等の軸線方向に一致する回転位置、即ちウォームホイール52から筒部材55を最も離隔させる回転位置(以下、第2カム部材62の「中立位置」ともいう)にあるときに、圧縮ばね59の付勢力に抗してウォームホイール52の嵌合部53Rから筒部材55の嵌合孔55cを外す。
【0101】
また、第2カム部材62は、回動に伴いカム部62bの長手方向が筒部材55等の軸線方向から外れると、圧縮ばね59に付勢される筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール52の嵌合部53Rに嵌合するように筒部材55の移動を許容する。一方、第2カム部材62は、回動に伴いカム部62bで筒部材55の押圧片55bを圧縮ばね59の付勢力に抗して押圧しつつ、該カム部62bの長手方向が筒部材55等の軸線方向に再び一致するように筒部材55を移動させると、ウォームホイール52の嵌合部53Rから筒部材55の嵌合孔55cを外す。なお、スライド用シャフト54S側の第2カム部材62の動作も同様である。
【0102】
図10に示すように、前記軸受部42aのリフタ用軸受部46Lには、ガイド部42c,42dの内周面に摺接する態様で操作部材としてのリフタ用操作ハンドル63Lが軸支されている。このリフタ用操作ハンドル63Lは、第1カム部材61のギヤ部61dに噛合するとともに第2カム部材62の円柱部62dの位置を空走するギヤ部64Lを有する。従って、例えばリフタ用操作ハンドル63Lを回動操作すると、ギヤ部64L,61d間の回転伝達によって第1カム部材61(カム部61b)が回動する。これにより、筒部材55が前述の態様で軸線方向に移動する。
【0103】
なお、リフタ用操作ハンドル63Lの回動軸周りには、第2付勢部材としての捩りばね65が巻回されている。このばね65の両端のフック部65aの根元部はリフタ用操作ハンドル63Lのストッパ部に接触して回転止めされ、フック部66aの先端部はガイド部42c,42dにて位置決めされる。リフタ用操作ハンドル63Lは、捩りばね65に付勢されることで、リフタ用軸受部46Lの後方に延在する所定の初期位置に保持されている。このとき、リフタ用操作ハンドル63Lと一体回動する第1カム部材61は、前記中立位置に配置されるように設定されている。そして、リフタ用操作ハンドル63Lを初期位置に保持する捩りばね65の付勢力は、筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール51の嵌合部53Lに嵌合するように筒部材55を移動させる圧縮ばね59の付勢力よりも大きく設定されている。
【0104】
従って、通常は、リフタ用操作ハンドル63Lは初期位置に保持されており、これに伴って第1カム部材61は中立位置に配置されている。つまり、通常は、筒部材55を介したウォームホイール51及びリフタ用シャフト54L間の回転伝達が不能な状態に保持されている。そして、捩りばね65の付勢力に抗してリフタ用操作ハンドル63Lを回動操作すると、これに伴う第1カム部材61の回動によって該第1カム部材61が中立位置から外れ、圧縮ばね59の付勢力によって筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール51の嵌合部53Lに嵌合するように筒部材55が移動する。これにより、ウォームホイール51の回転が筒部材55を介してリフタ用シャフト54Lに伝達可能となる。
【0105】
一方、前記軸受部42bのチルト用軸受部46Tには、ガイド部42e,42fの内周面に摺接する態様で操作部材としてのチルト用操作ハンドル63Tが軸支されている。このリフタ用操作ハンドル63Tは、第1カム部材61のギヤ部61dに噛合するとともに第2カム部材62の円柱部62dの位置を空走するギヤ部64Tを有する。このチルト用操作ハンドル63Tの動作は、リフタ用操作ハンドル63Lの動作と同様である。すなわち、通常は、筒部材55を介したウォームホイール51及びチルト用シャフト54T間の回転伝達が不能な状態に保持されている。そして、捩りばね65の付勢力に抗してチルト用操作ハンドル63Tを回動操作すると、これに伴う第1カム部材61の回動によって該第1カム部材61が中立位置から外れ、圧縮ばね59の付勢力によって筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール51の嵌合部53Tに嵌合するように筒部材55が移動する。これにより、ウォームホイール51の回転が筒部材55を介してチルト用シャフト54Tに伝達可能となる。
【0106】
つまり、本実施形態では、リフタ用操作ハンドル63L及びチルト用操作ハンドル63Tは、駆動装置40の前後方向中心に対して左右対称に配置されている。
図11に示すように、前記軸受部42aのリクライナ用軸受部46Rには、ガイド部42c,42dの内周面に摺接する態様で操作部材としてのリクライナ用操作ハンドル63Rが軸支されている。このリクライナ用操作ハンドル63Rは、第2カム部材62のギヤ部62eに噛合するとともに第1カム部材61の円柱部61eの位置を空走するギヤ部64Rを有する。従って、例えばリクライナ用操作ハンドル63Rを回動操作すると、ギヤ部64R,62e間の回転伝達によって第2カム部材62(カム部62b)が回動する。これにより、筒部材55が前述の態様で軸線方向に移動する。
【0107】
なお、リクライナ用操作ハンドル63Rの回動軸周りには、第2付勢部材としての捩りばね66が巻回されている。このばね66の両端のフック部66aの根元部はリクライナ用操作ハンドル63Rのストッパ部に接触して回転止めされ、フック部66aの先端部はガイド部42c,42dにて位置決めされる。リクライナ用操作ハンドル63Rは、捩りばね66に付勢されることで、リクライナ用軸受部46Rの上方に延在する所定の初期位置に保持されている。このとき、リクライナ用操作ハンドル63Rと一体回動する第2カム部材62は、前記中立位置に配置されるように設定されている。そして、リクライナ用操作ハンドル63Rを初期位置に保持する捩りばね66の付勢力は、筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール52の嵌合部53Rに嵌合するように筒部材55を移動させる圧縮ばね59の付勢力よりも大きく設定されている。
【0108】
従って、通常は、リクライナ用操作ハンドル63Rは初期位置に保持されており、これに伴って第2カム部材62は中立位置に配置されている。つまり、通常は、筒部材55を介したウォームホイール52及びリクライナ用シャフト54R間の回転伝達が不能な状態に保持されている。そして、捩りばね66の付勢力に抗してリクライナ用操作ハンドル63Rを回動操作すると、これに伴う第2カム部材62の回動によって該第2カム部材62が中立位置から外れ、圧縮ばね59の付勢力によって筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール52の嵌合部53Rに嵌合するように筒部材55が移動する。これにより、ウォームホイール52の回転が筒部材55を介してリクライナ用シャフト54Rに伝達可能となる。
【0109】
なお、リフタ用操作ハンドル63L及びリクライナ用操作ハンドル63Rは、共通の軸受部42aに軸支されている。すなわち、リフタ用操作ハンドル63L及びリクライナ用操作ハンドル63Rは、互いに同一の回転軸周りに回動するように軸支される1組をなしている。しかしながら、既述のようにリフタ用操作ハンドル63Lのギヤ部64L及びこれに噛合する第1カム部材61のギヤ部61dと、リクライナ用操作ハンドル63Rのギヤ部64R及びこれに噛合する第2カム部材62のギヤ部62eとは、軸受部42aの軸線方向で互いに異なる位置に配設されている。従って、リフタ用操作ハンドル63L及びリクライナ用操作ハンドル63Rのいずれか一方の回動操作によって、いずれか他方に対応する第1カム部材61又は第2カム部材62が回動することはない。
【0110】
一方、前記軸受部42bのスライド用軸受部46Sには、ガイド部42e,42fの内周面に摺接する態様で操作部材としてのスライド用操作ハンドル63Sが軸支されている。このスライド用操作ハンドル63Sは、第2カム部材62のギヤ部62eに噛合するとともに第1カム部材61の円柱部61eの位置を空走するギヤ部64Sを有する。このスライド用操作ハンドル63Sの動作は、リクライナ用操作ハンドル63Rの動作と同様である。すなわち、通常は、筒部材55を介したウォームホイール52及びスライド用シャフト54S間の回転伝達が不能な状態に保持されている。そして、捩りばね66の付勢力に抗してスライド用操作ハンドル63Sを回動操作すると、これに伴う第2カム部材62の回動によって該第2カム部材62が中立位置から外れ、圧縮ばね59の付勢力によって筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール52の嵌合部53Sに嵌合するように筒部材55が移動する。これにより、ウォームホイール52の回転が筒部材55を介してスライド用シャフト54Sに伝達可能となる。
【0111】
つまり、本実施形態では、リクライナ用操作ハンドル63R及びスライド用操作ハンドル63Sは、駆動装置40の前後方向中心に対して左右対称に配置されている。
なお、チルト用操作ハンドル63T及びスライド用操作ハンドル63Sは、共通の軸受部42bに軸支されている。すなわち、リクライナ用操作ハンドル63R及びスライド用操作ハンドル63Sは、互いに同一の回転軸周りに回動するように軸支される1組をなしている。しかしながら、既述のようにチルト用操作ハンドル63Tのギヤ部64T及びこれに噛合する第1カム部材61のギヤ部61dと、スライド用操作ハンドル63Sのギヤ部64S及びこれに噛合する第2カム部材62のギヤ部62eとは、軸受部42bの軸線方向で互いに異なる位置に配設されている。従って、チルト用操作ハンドル63T及びスライド用操作ハンドル63Sのいずれか一方の回動操作によって、いずれか他方に対応する第1カム部材61又は第2カム部材62が回動することはない。
【0112】
図12に示すように、スイッチ用軸受部49の軸受部49Lには、略円環状のスイッチカム部材としてのリフタ用スイッチカム部材71Lが軸支されている。図6に示すように、このリフタ用スイッチカム部材71Lは、リフタ用操作ハンドル63Lのギヤ部64Lに対向する側の外周部に形成されてこれに噛合するギヤ部72Lを有するとともに、チルト用操作ハンドル63Tのギヤ部64Tに対向する側の外周部に形成されてこれを空走する円弧部73Lを有する。また、リフタ用スイッチカム部材71Lは、ギヤ部72L及び円弧部73L間に挟まれる外周部の下側を径方向内側に切り欠いてなるスイッチカム部74Lを有する。従って、例えばリフタ用操作ハンドル63Lを回動操作すると、リフタ用スイッチカム部材71L(スイッチカム部74L)は、円弧部73Lにおいてチルト用操作ハンドル63Tのギヤ部64Tを空走しつつ、ギヤ部64L,72L間の回転伝達によって回動する。
【0113】
図12に示すように、スイッチ用軸受部49の軸受部49Tには、略円環状のスイッチカム部材としてのチルト用スイッチカム部材71Tが軸支されている。図10に示すように、このチルト用スイッチカム部材71Tは、チルト用操作ハンドル63Tのギヤ部64Tに対向する側の外周部に形成されてこれに噛合するギヤ部72Tを有するとともに、リフタ用操作ハンドル63Lのギヤ部64Lに対向する側の外周部に形成されてこれを空走する円弧部73Tを有する。また、チルト用スイッチカム部材71Tは、ギヤ部72T及び円弧部73T間に挟まれる外周部の下側を径方向内側に切り欠いてなるスイッチカム部74Tを有する。従って、例えばチルト用操作ハンドル63Tを回動操作すると、チルト用スイッチカム部材71T(スイッチカム部74T)は、円弧部73Tにおいてリフタ用操作ハンドル63Lのギヤ部64Lを空走しつつ、ギヤ部64T,72T間の回転伝達によって回動する。
【0114】
図12に示すように、スイッチ用軸受部49の軸受部49Rには、略円環状のスイッチカム部材としてのリクライナ用スイッチカム部材71Rが軸支されている。図6に示すように、このリクライナ用スイッチカム部材71Rは、リクライナ用操作ハンドル63Rのギヤ部64Rに対向する側の外周部に形成されてこれに噛合するギヤ部72Rを有するとともに、スライド用操作ハンドル63Sのギヤ部64Sに対向する側の外周部に形成されてこれを空走する円弧部73Rを有する。また、リクライナ用スイッチカム部材71Rは、ギヤ部72R及び円弧部73R間に挟まれる外周部の下側を径方向内側に切り欠いてなるスイッチカム部74Rを有する。従って、例えばリクライナ用操作ハンドル63Rを回動操作すると、リクライナ用スイッチカム部材71R(スイッチカム部74R)は、円弧部73Rにおいてスライド用操作ハンドル63Sのギヤ部64Sを空走しつつ、ギヤ部64R,72R間の回転伝達によって回動する。
【0115】
図12に示すように、スイッチ用軸受部49の軸受部49Sには、略円環状のスイッチカム部材としてのスライド用スイッチカム部材71Sが軸支されている。図11に示すように、このスライド用スイッチカム部材71Sは、スライド用操作ハンドル63Sのギヤ部64Sに対向する側の外周部に形成されてこれに噛合するギヤ部72Sを有するとともに、リクライナ用操作ハンドル63Rのギヤ部64Rに対向する側の外周部に形成されてこれを空走する円弧部73Sを有する。また、スライド用スイッチカム部材71Sは、ギヤ部72S及び円弧部73S間に挟まれる外周部の下側を径方向内側に切り欠いてなるスイッチカム部74Sを有する。従って、例えばスライド用操作ハンドル63Sを回動操作すると、スライド用スイッチカム部材71S(スイッチカム部74S)は、円弧部73Sにおいてリクライナ用操作ハンドル63Rのギヤ部64Rを空走しつつ、ギヤ部64S,72S間の回転伝達によって回動する。
【0116】
図12に示すように、カバー43には、スイッチ用軸受部49の下側でその軸線と平行に延びる軸線を有する軸43aが突設されている。この軸43aには、図10及び図11に示すように、スイッチカム部74L,74T,74R,74Sの下側に配置された略逆T字形状のスイッチレバー76がその中央部において軸支されている。このスイッチレバー76の先端部は、スイッチカム部74L,74T,74R,74Sの下向きに延出する両端部(押圧部)74a,74bのスイッチ用軸受部49周りの回動軌跡を遮るように配置されている。従って、いずれかの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの回動操作に伴い該当のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sが回動すると、スイッチレバー76は、その先端部がスイッチカム部74L,74T,74R,74S(端部74a,74b)に押圧されることで、当該操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作方向に応じた方向に回動する。
【0117】
なお、全ての操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが操作されておらず、該当の所定の初期位置に配置されているとする。このとき、図13に拡大して示すように、スイッチレバー76の先端部は、全てのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの両端部74a,74b間に挟まれる中央部に配置されており、これら端部74a,74bとの間にそれぞれ隙間Cを形成する。従って、いずれか一つの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sを回動操作した際、該当のスイッチカム部材71L,71T,71R,71S(スイッチカム部74L,74T,74R,74S)は、隙間C分の空走区間を経て該当の端部74a,74bでスイッチレバー76の先端部を押圧し始める。
【0118】
ここで、いずれか一つのスイッチカム部材71L,71T,71R,71S(スイッチカム部74L,74T,74R,74S)がスイッチレバー76の先端部を押圧しているとき、他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動が抑制されるようになっている。
【0119】
例えば、リフタ用操作ハンドル63Lの回動操作によりリフタ用スイッチカム部材71L(スイッチカム部74L)を図13において反時計回りに回動させると、該リフタ用スイッチカム部材71Lは図示左側の隙間C分の空走区間を経て該当の端部74aでスイッチレバー76の先端部を押圧する。これにより、スイッチレバー76が軸43a(第2の回転軸)を中心に図示時計回りに回動すると、図14に示すように、その先端部がスイッチカム部74Tの端部74bとの隙間C分の空走区間を経てこれに当接又は近接する。換言すれば、図13において右側に隙間Cがあることで、リフタ用スイッチカム部材71Lの図示反時計回りの回動に伴いスイッチレバー76が回動しても、その先端部がチルト用スイッチカム部材71T(スイッチカム部74T)の端部74bを押圧してこれを図示反時計回りに回動させることがないようになっている。また、スイッチレバー76の先端部がスイッチカム部74Tの端部74bに当接又は近接することで、チルト用スイッチカム部材71Tの図示時計回りの回動が規制されている。
【0120】
反対に、リフタ用操作ハンドル63Lの回動操作によりリフタ用スイッチカム部材71L(スイッチカム部74L)を図13において時計回りに回動させると、該リフタ用スイッチカム部材71Lは図示右側の隙間C分の空走区間を経て該当の端部74bでスイッチレバー76の先端部を押圧する。これにより、スイッチレバー76が軸43aを中心に図示反時計回りに回動すると、その先端部がスイッチカム部74Tの端部74aとの隙間C分の空走区間を経てこれに当接又は近接する。換言すれば、図13において左側に隙間Cがあることで、リフタ用スイッチカム部材71Lの図示時計回りの回動に伴いスイッチレバー76が回動しても、その先端部がチルト用スイッチカム部材71T(スイッチカム部74T)の端部74aを押圧してこれを図示時計回りに回動させることがないようになっている。また、スイッチレバー76の先端部がスイッチカム部74Tの端部74aに当接又は近接することで、チルト用スイッチカム部材71Tの図示時計回りの回動が規制されている。
【0121】
リフタ用操作ハンドル63Lを回動操作した際の他のリクライナ用スイッチカム部材71R及びスライド用スイッチカム部材71Sの動作についても同様である。これにより、いずれか一つのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動に伴いスイッチレバー76が回動しても、左右の隙間Cにより他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sを回動させることはない。また、いずれか一つのスイッチカム部材71L,71T,71R,71S(スイッチカム部74L,74T,74R,74S)がスイッチレバー76の先端部を押圧しているとき、該スイッチレバー76により他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動が規制される。
【0122】
以上により、全てのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sが同軸上に配設されていても、いずれか一つのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動によって他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sが回動することが抑制される。そして、他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動に伴いこれに連結された該当の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが揺動することも抑制される。
【0123】
なお、スイッチレバー76の下面両側には一対のボス76aが突設されている。一方、図12に示すように、スイッチカバー44には、いわゆるシーソータイプのボタン77aを備えるスイッチ77が設置されている。そして、スイッチレバー76が回動すると、その回動方向に応じたいずれかのボス76aに押圧されることで、ボタン77aが所定の中立位置から傾くようになっている。スイッチ77は、ボタン77aが中立位置にあるときには回路を開き(オフし)、ボタン77aが中立位置から傾いたときにその傾き方向に応じた極性で回路を閉じる(オンする)。従って、スイッチ77によって決定される電流方向は、ボタン77aが右側に傾く状態及び左側に傾く状態で互いに逆向きとなる。
【0124】
図5に示すように、スイッチ77は、ワイヤハーネスWに電気的に接続されて、その一方及び他方がそれぞれ回転モータ36及び電源(図示略)に接続される。そして、ボタン77aが中立位置にあるとき、図21の等価回路で示したように、回転モータ36の両端子がスイッチ77を介して共に接地されるように回路が開いて、回転モータ36と電源とが遮断される。また、ボタン77aの傾きに伴い、例えばスイッチ77を介して図示2点差線のようにいずれかに回路が閉じて回転モータ36と電源とが接続されると、その極性に応じて回転モータ36が正転又は逆転する。
【0125】
図1に示すように、シートクッション7の片側(シート前方に向かって右側)の側部には、例えば樹脂材からなるサイドカバー10が装着されている。このサイドカバー10には、駆動装置40を含めてシートクッション7の側部の略全体を覆うもので、図15に示すように、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが露出するようにそれらの位置に合わせて略U字状の凹部10aを有する。
【0126】
また、サイドカバー10は、駆動装置40(カバー43等)の外形に合わせて、その下側部が略垂直に起立するとともに、凹部10aを含む上側部が上方に向かうに従ってシート幅方向内側に向かうように傾斜している。換言すれば、駆動装置40の上側部(カバー43の上側部、本体ケース41,42)は、サイドカバー10の上側部と共に傾斜することで、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sのシート幅方向外側への突出長を短縮可能としている。
【0127】
詳述すると、図16に示すように、シートクッション7の下部は、段差7aを介してシート幅方向に縮幅されており、該段差7aの下方に空間Sを形成する。駆動装置40は、基本的に空間S内で上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜することで、高さ方向に比較的余裕のある空間Sを有効利用して搭載されている。
【0128】
そして、駆動装置40の上側部(カバー43の上側部、本体ケース41,42)は、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜していることで、例えば駆動装置40の上側部の姿勢を略垂直にする場合に比べて、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sのシート幅方向外側への突出長がより短縮される。これにより、例えば複数の操作ハンドル63L,63T,63R,63S等と、それらのシート幅方向外側に対向する車両ドアのドアトリムDとの距離が確保される。
【0129】
ここで、図15及び図16に示すように、例えばチルト用操作ハンドル63Tを操作する際には、サイドカバー10のシート幅方向外側面(一般面)に手の平を置いたまま凹部10a内に進入させた一本の指(ここでは人差し指)を当該チルト用操作ハンドル63Tに押し当てて、手首を支点に手指を回動させればよい。これは、チルト用操作ハンドル63Tがシート幅方向(カバー43の上側部等に直交する方向)に延びる軸線周りに回動するように軸支されていることによる。このとき、親指をチルト用操作ハンドル63T近傍のサイドカバー10上端に添えて操作時の支えとしてもよい。
【0130】
この場合、チルト用操作ハンドル63Tの操作に必要な空間は、基本的にサイドカバー10のシート幅方向外側面(一般面)からシート幅方向外側に突出する略延ばした指の分の小さな距離L1でよい。従って、チルト用操作ハンドル63Tの操作に必要な空間がより縮小される。そして、サイドカバー10(駆動装置40)のシート幅方向外側にドアトリムDが迫っていたとしても、該ドアトリムDに阻害されることなくチルト用操作ハンドル63Tの操作が可能となる。他の操作ハンドル63L,63R,63Sを操作する際も、操作に係る指が異なることを除き同様である。
【0131】
ここで、図17及び図18に示す従来例の場合について説明する。同図に示すように、シートクッション7の片側の側部に装着されるサイドカバー250は、略垂直に起立している。そして、サイドカバー250の略垂直に起立する外側面には、シート幅方向外側に突出する態様で、移動操作ノブ251が前後方向に延設されるとともに、リクライニング操作ノブ252が高さ方向に延設されている。移動操作ノブ251は、シート6の前後位置の調整操作、上下位置の調整操作及びシートクッション7の後部に対する前部の傾斜角度の調整操作に兼用のもので、前後方向に移動可能に、後端部が前端部に対して上下方向に傾動可能に、且つ、前端部が後端部に対して上下方向に傾動可能に支持されている。リクライニング操作ノブ252は、シートクッション7に対するシートバック8の傾斜角度の調整操作に使用されるもので、上端部が下端部に対して前後方向に傾動可能に支持されている。
【0132】
この場合、例えば移動操作ノブ251を操作する際には、親指と人差し指とで移動操作ノブ251をつまんで操作することになり、シート幅方向外側に指が立ってしまう。このため、移動操作ノブ251の操作に必要な空間は、基本的にサイドカバー250のシート幅方向外側面(一般面)からシート幅方向外側に突出する折り曲げた指の分の大きな距離L2となる。従って、チルト用操作ハンドル63Tの操作に必要な空間が拡大される。そして、移動操作ノブ251の操作時、これに迫るドアトリムDによって操作が阻害される可能性がある。
【0133】
なお、図16に示すように、シートクッション7の段差7aよりもシート幅方向内側では、通常、シートクッション7(シートクッションパッド)とその下方に配置される回転モータ36との間の高さ方向の隙間に余裕がない。しかしながら、前述の態様で傾けて配置した駆動装置40に取着される回転モータ36(回転軸36a)の軸線は、シート幅方向内側に向かうに従い下方に向かうように傾斜することで、高さ方向の隙間に余裕が生まれている。
【0134】
次に、本実施形態の動作について説明する。なお、リフタ用操作ハンドル63L、チルト用操作ハンドル63T、リクライナ用操作ハンドル63R及びスライド用操作ハンドル63Sの回動操作と、これに対応する各機構M1〜M4の動作については、調整対象の駆動に係る該当のトルクケーブル16,22,28,35等への回転伝達を除けば概ね同等である。そこで、以下ではリフタ用操作ハンドル63L(リフタ機構M2)を代表してその動作を説明する。
【0135】
まず、図19に示すように、リフタ用操作ハンドル63Lが操作されておらず、従ってウォームホイール51の回転がリフタ用シャフト54Lに伝達不能な状態にあり、回転モータ36と電源との接続がスイッチ77を介して遮断されているものとする。この状態で、図20に示すように、リフタ用操作ハンドル63Lを捩りばね65の付勢力に抗して時計回り又は反時計回りに回動操作すると、ギヤ部64L,61dにおける回転伝達によって第1カム部材61が回動する。これにより、第1カム部材61が中立位置から外れ、圧縮ばね59の付勢力によって筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール51の嵌合部53Lに嵌合するように筒部材55が移動する。そして、ウォームホイール51の回転が筒部材55を介してリフタ用シャフト54Lに伝達可能となる。
【0136】
一方、リフタ用操作ハンドル63Lを時計回り又は反時計回りに回動操作すると、ギヤ部64L,72Lにおける回転伝達によってリフタ用スイッチカム部材71Lがリフタ用操作ハンドル63Lの操作方向に対応して時計回り又は反時計回りに回動する。このとき、スイッチレバー76は、リフタ用スイッチカム部材71Lの回転方向に対応するスイッチカム部74Lのいずれかの端部74a,74bに押圧されることで、軸43a周りに時計回り又は反時計回りに回動する。そして、軸43a周りのスイッチレバー76の回動により、該当のボス76aにてスイッチ77のボタン77aが押圧される。これにより、スイッチ77のボタン77aが中立位置から傾いて、その傾き方向に応じた極性でスイッチ77を介して回転モータ36と電源とが接続される。そして、回転モータ36が正転又は逆転する。つまり、リフタ用操作ハンドル63Lの操作方向によってボタン77aの押される方向(即ち傾き方向)が決まり、回転モータ36の回転方向が決まる。
【0137】
回転モータ36が回転すると、その回転は、入力用トルクケーブル37、ウォーム38、ウォームホイール51及び筒部材55を介してリフタ用シャフト54Lに伝達される。従って、リフタ用シャフト54Lの回転がリフタ用トルクケーブル22を介してリフタ用ギヤボックス21に伝達されることで、その回転方向に応じてシート6が昇降するようにリフタ機構M2が作動する。
【0138】
なお、第1カム部材61が中立位置から外れた際、圧縮ばね59の付勢力によって移動しようとする筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール51の嵌合部53Lに合致しないそれらの相対位置にあれば、これら嵌合孔55c及び嵌合部53Lは嵌合不能となる。しかしながら、回転モータ36と共にウォームホイール51が回転し始めると、嵌合孔55c及び嵌合部53Lが合致するそれらの相対位置になって嵌合可能となる。
【0139】
その後、リフタ用操作ハンドル63Lの操作力を解放すると、該リフタ用操作ハンドル63Lは捩りばね65に付勢されて、図19に示す初期位置に復帰する。これに伴い、ギヤ部64L,61dにおける回転伝達によって第1カム部材61が圧縮ばね59の付勢力に抗して回動し、第1カム部材61が中立位置に復帰する。第1カム部材61と共にリフタ用操作ハンドル63Lを初期位置に復帰させる捩りばね65の付勢力が、筒部材55を移動させる圧縮ばね59の付勢力よりも大きいことは既述のとおりである。これにより、ウォームホイール51の回転が筒部材55を介してリフタ用シャフト54Lに伝達不能となる。
【0140】
一方、リフタ用操作ハンドル63Lの初期位置への復帰に伴い、ギヤ部64L,72Lにおける回転伝達によってリフタ用スイッチカム部材71Lが回動し、図19に示す状態に復帰する。これに伴い、スイッチレバー76と共にスイッチ77のボタン77aが中立位置に復帰し、スイッチ77を介した回転モータ36と電源との接続が遮断される。これにより、回転モータ36の回転が停止する。
【0141】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、回転モータ36やスイッチ77は単一であるため、その電気的構成をより簡易化することができる。また、複数の筒部材55等(クラッチ機構)の各々は、該当する位置調整機構(M1〜M4)への出力軸(リフタ用シャフト54L、チルト用シャフト54T、リクライナ用シャフト54R、スライド用シャフト54S)とウォームホイール51,52とを接続する構造(いわゆる軸継手)であるため、出力軸等の周りに集約的に配置することができ、装置全体としてより小型化することができる。さらに、出力軸の本数(4本)分だけシートの位置調整に係る機能数(位置調整機構の個数)を増やすことができるため、該機能数の制約をより緩和することができる。
【0142】
(2)本実施形態では、4つの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sは、操作ハンドル63L,63Rからなる組と、操作ハンドル63T,63Sからなる組の2組に分けられて、これら2組の操作ハンドルが互いに異なる2つの回転軸(軸受部42a,42b)周りに回動するように軸支される。従って、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの全てを互いに同一の回転軸周りに回動するように軸支した場合に比べて、これら操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの相互干渉を抑制することができる。そして、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作時、該当の位置調整機構(M1〜M4)をより精度よく動作させることができる。また、複数の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが複数箇所に分散して軸支されることで、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの配置やその操作をよりわかりやすくすることができる。
【0143】
(3)本実施形態では、いずれかの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが回転軸(軸受部42a,42b)周りに回動すると、該操作ハンドル63L,63T,63R,63Sに駆動連結された該当のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sのスイッチカム部74L,74T,74R,74Sがスイッチレバー76を押圧することで、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの回動方向(操作方向)に応じた極性でスイッチ77が作動する。従って、複数の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが、互いに異なる回転軸周りに回動する複数組に分けられていても、いずれかの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作に連動するスイッチ77の作動を、該当のスイッチカム部74L,74T,74R,74Sを介することで実現することができる。また、前記複数のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sは、互いに同一の回転軸周りに集約して配置されることで、装置全体としてより小型化することができる。
【0144】
(4)本実施形態では、いずれかの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sを捩りばね65,66の付勢力に抗して初期位置から操作すると、カム部材61,62により圧縮ばね59に付勢される該当の筒部材55へのウォームホイール51,52(嵌合部53L,53T,53R,53S)の嵌挿が許容される。従って、回転モータ36に回転駆動されるウォームホイール51,52の回転が該当の筒部材55を介して出力軸(リフタ用シャフト54L、チルト用シャフト54T、リクライナ用シャフト54R、スライド用シャフト54S)に伝達されて、該当の位置調整機構(M1〜M4)が作動する。このとき、該当の出力軸とウォームホイール51,52との接続状態は、圧縮ばね59によって維持されており、従って出力軸等の回転がカム部材61,62や操作ハンドル63L,63T,63R,63Sへと伝達されることを抑制できる。そして、出力軸等の回転振動が該当の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sを介してこれを操作する手などに伝わる不快感を解消できる。
【0145】
(5)本実施形態では、単一の回転モータ36及び単一のスイッチ77で、回転モータ36の駆動力を正逆共に複数の位置調整機構(M1〜M4)へと出力できる。
(6)本実施形態では、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの回動操作に伴い、これに機械的に連係されたクラッチ機構及びスイッチレバー76(スイッチ77)を作動させることができるため、例えば従来のようなクラッチ専用の駆動装置やそれを制御する電気回路を不要にできる。その結果、スイッチの簡素化や回転モータに電源供給する電線の単純化・短縮化を図ることができ、ひいてはコストを削減することができる。
【0146】
(7)本実施形態では、ウォーム38に噛合する2個のウォームホイール51,52で4系統の出力を得ることができる。従って、出力軸数(4本)に比べて歯車数が少なく、騒音の発生部位を少なくできる。また、ウォーム38及びウォームホイール51,52(ウォームギヤ)で回転速度の減速を行っていることで、騒音の発生を抑制することができる。
【0147】
(8)本実施形態では、筒部材55(クラッチ機構)を介した動力の接続に圧縮ばね59の付勢力を利用していることで、筒部材55を移動させる際にその嵌合孔55cがウォームホイール51,52の嵌合部53L,53T,53R,53Sに合致せず干渉したとしても、それらの間に無理な力が加わることを回避できる。また、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作に伴い回転モータ36が回転し始めれば、ウォームホイール51,52の回転に伴いその嵌合部53L,53T,53R,53Sが筒部材55の嵌合孔55cに合致可能となる。従って、筒部材55の移動に伴い、嵌合孔55cと嵌合部53L,53T,53R,53Sとが嵌合し、筒部材55(クラッチ機構)を介した動力の接続が可能となる。
【0148】
(9)本実施形態では、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sを初期位置から回動操作することで、該当のクラッチ機構を接続するとともに、スイッチ77により操作方向に応じた極性で回転モータ36に通電できる。従って、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作方向に合わせて回転モータ36を正転又は逆転させることができ、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作方向と位置調整機構(M1〜M4)の調整方向とがよりわかりやすい関係になるように設定できる。
【0149】
(10)本実施形態では、調整機能ごと、即ち位置調整機構(M1〜M4)ごとにその作動に係る操作ハンドル63L,63T,63R,63Sを分割・独立配置した。そして、位置調整機構(M1〜M4)を単一の回転モータ36で作動させるため、いずれか一つの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作に伴い、該当の位置調整機構(M1〜M4)を作動させた場合には、それ以外の位置調整機構(M1〜M4)を作動させることができない構造となっている。従って、ユーザに対し、作動させたい位置調整機構(M1〜M4)に対応するいずれか一つの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sを意識させることができ、該当の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作へと誘導することができる。
【0150】
なお、従来例(図17及び図18参照)のように、シート6の前後位置の調整操作、上下位置の調整操作及びシートクッション7の後部に対する前部の傾斜角度の調整操作に兼用の移動操作ノブ251では、例えば無意識で移動操作ノブ251の前端部及び後端部を同時に上下方向に移動させてしまう可能性、即ちシート6の上下位置の調整操作及びシートクッション7の後部に対する前部の傾斜角度の調整操作が同時に行われる可能性があった。しかしながら、本実施形態では、このような同時操作が行われることを解消できる。
【0151】
(11)本実施形態では、複数の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの全ての非操作時、スイッチカム部74L,74T,74R,74Sの両端部74a,74bと、スイッチレバー76の先端部との間に隙間Cがそれぞれ形成されていることで、複数の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sのいずれか一つの操作時には、該当の74L,74T,74R,74Sの一方の端部74a,74bが隙間C分の空走区間を経てスイッチレバー76の先端部を押圧する。これにより、スイッチレバー76は、軸43a周りに回動する。この場合、スイッチレバー76の先端部と、非操作である他の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sに対応するスイッチカム部材71L,71T,71R,71S(スイッチカム部74L,74T,74R,74S)の他方の端部74a,74bとの間に隙間Cが形成されていることで、スイッチレバー76の先端部が他の前記スイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの他方の端部74a,74bを押圧してこれを一体的に回動させてしまうことを抑制できる。
【0152】
また、スイッチレバー76の回動時、その先端部は、他の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sに対応するスイッチカム部材71L,71T,71R,71S(スイッチカム部74L,74T,74R,74S)の他方の端部74a,74bとの間の隙間C分の空走区間を経て当該端部74a,74bに当接又は近接する。従って、スイッチレバー76の先端部により、他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71S(スイッチカム部74L,74T,74R,74S)の回動を規制することができる。
【0153】
(12)本実施形態では、ロアアーム20において、駆動装置40が位置調整機構(M1〜M4)の方向変換ギヤ装置15(スライド用ギヤボックス13)、リフタ用ギヤボックス21、チルト用ギヤボックス27及びリクライナ用ギヤボックス33に挟まれる中央部に配置されていることで、各々までの駆動装置40からの距離が概ね均等になって、トルクケーブル16,22,28,35の長さも概ね均等になる。このため、一部のトルクケーブル16,22,28,35のみが長くなることによる、当該トルクケーブルのコストの増加、質量増加、摺動音増加による高騒音化、摺動抵抗増加による低効率化を抑制できる。
【0154】
(13)本実施形態では、リフタ機構M2の作動に伴うフロントリンク4の揺動に追従して方向変換ギヤ装置15を揺動させたことで、該方向変換ギヤ装置15に接続されるスライド用トルクケーブル16の長さが過不足になることを解消することができる。
【0155】
すなわち、図4に示すように、フロントリンク4及びリアリンク5を介してロアアーム20が上昇した姿勢にあるものとして、4節回転連鎖を構成するフロントリンク4、リアリンク5及びロアアーム20、並びに、同じく4節回転連鎖を構成するフロントリンク4、トラベルリンク17、方向変換ギヤ装置15を太実線にて模式的に描画する。また、このときのスライド用トルクケーブル16を太実線にて併せて描画する。
【0156】
そして、リアリンク5の回動により、フロントリンク4及びリアリンク5を介してロアアーム20が下降したとする。このとき、フロントリンク4の回動により、トラベルリンク17を介して方向変換ギヤ装置15がスライド用連結ロッド14と同軸で回動する。このときの4節回転連鎖を構成するフロントリンク4、リアリンク5及びロアアーム20、並びに、同じく4節回転連鎖を構成するフロントリンク4、トラベルリンク17、方向変換ギヤ装置15を太2点鎖線にて模式的に描画する。また、このときのスライド用トルクケーブル16を太2点鎖線にて併せて描画する。
【0157】
同図から明らかなように、ロアアーム20の下降に伴って、該ロアアーム20に配置された駆動装置40も下降することになるが、フロントリンク4の揺動に追従して方向変換ギヤ装置15が揺動することで、該方向変換ギヤ装置15及び駆動装置40間の距離が略一定に保たれて、スライド用トルクケーブル16の長さが過不足になることが抑制される。特に、スライド用トルクケーブル16の長さを、不足分を考慮して長めにする必要がないことから、該スライド用トルクケーブル16が長くなることによるコストの増加、質量増加、摺動音増加による高騒音化、摺動抵抗増加による低効率化を抑制できる。
【0158】
(14)本実施形態では、該当の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sを操作する際には、例えばサイドカバー10のシート幅方向外側面(一般面)に手の平を置いたまま当該操作ハンドル63L,63T,63R,63Sに一本の指を押し当てて、手首を支点に手指を回動させればよい。つまり、当該操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作のためにこれをつまむ必要のないことから、シート幅方向外側に指が立ったりすることもない。このため、該当の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作に必要な空間(距離L1)をより縮小できる。
【0159】
(15)本実施形態では、駆動装置40の上側部(カバー43の上側部、本体ケース41,42)は、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜していることで、例えば駆動装置40の上側部の姿勢を略垂直にする場合に比べて、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sのシート幅方向外側への突出長をより短縮できる。そして、例えば複数の操作ハンドル63L,63T,63R,63S等と、それらのシート幅方向外側に対向するドアトリムDとの距離を確保することができる。
【0160】
(16)本実施形態では、回転モータ36は、その軸線がシート幅方向内側に向かうに従い下方に向かうことで、シート幅方向内側に向かうに従いシートクッション7との間の高さ方向の隙間に余裕が生まれる。従って、シートクッション7とその下方(即ち尻下)に配置される回転モータ36との間の高さ方向の隙間を確保することができる。
【0161】
(第2の実施形態)
図22〜図33を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態は、主として第1の実施形態の4つの操作ハンドルの全てを互いに同一の回転軸周りに回動するように変更した構成であるため、同様の部分については同一の符号を付してその説明を一部省略する。
【0162】
図23に示すように、本実施形態におけるスライド機構M11では、前記方向変換ギヤ装置15及び前記トラベルリンク17に代えて、片側(シート前方に向かって左側)のスライド用ギヤボックス13内のシート幅方向に軸線が延びるハスバ歯車13aと噛合するギヤ81を備える。このギヤ81は、前記スライド用トルクケーブル16と同軸でこれに一体回転するように連結されている。
【0163】
従って、スライド用トルクケーブル16が回転すると、その回転がギヤ81から片側のスライド用ギヤボックス13内のハスバ歯車13aに伝達されるとともに、前記スライド用連結ロッド14を介して反対側のスライド用ギヤボックス13内のハスバ歯車13aに伝達される。これにより、両側のスライド用ギヤボックス13内のハスバ歯車13aの回転が、スライド用ギヤボックス13内の前後方向に軸線が延びるハスバ歯車13bに90°方向変換して伝達されて、両側の前記スライド用リードスクリュ12に伝達される。これにより、前述の態様でロアレール1に対してアッパレール2が前後方向に移動する。
【0164】
また、本実施形態におけるチルト機構M13では、前記チルトリンク26に代えて、第1チルトリンク82及び第2チルトリンク83を備える。第1チルトリンク82は、その中央部が前記フロントリンク4のロアアーム20側の支持軸の前側で該ロアアーム20に回動自在に連結されており、前端部が第2チルトリンク83の下端部に回動自在に連結されている。そして、第2チルトリンク83の上端部は、前記チルトアーム25の前端部に回動自在に連結されている。従って、ロアアーム20、チルトアーム25、第1チルトリンク82及び第2チルトリンク83は、該第2チルトリンク83を媒介節(連接節)とする4節回転連鎖を構成する。
【0165】
片側の第1チルトリンク82には、ロアアーム20側の支持軸を中心にその後側に略扇状に広がるセクタギヤ部82aが形成されている。このセクタギヤ部82aは、前記チルト用ギヤボックス27のチルト用ピニオン27cと噛合する。
【0166】
従って、前記チルト用トルクケーブル28が回転すると、その回転がチルト用ギヤボックス27のチルト用ピニオン27cに伝達される。そして、チルト用ピニオン27cの回転は、該チルト用ピニオン27cにセクタギヤ部82aで噛合する第1チルトリンク82に伝達されて、該第1チルトリンク82がロアアーム20側の支持軸を中心に回動する。これにより、第1チルトリンク82に第2チルトリンク83を介して連結されたチルトアーム25がその前端部を昇降するように後端部を中心に回動し、ロアアーム20に対してチルトアーム25の前端部(シート6の前端部)が昇降する。そして、ロアアーム20に対するチルトアーム25(シート6の後部に対する前部)の傾斜角度が増減する。
【0167】
本実施形態における駆動装置100は、片側(シート前方に向かって右側)のロアアーム20のリフタ用ギヤボックス21及びチルト用ギヤボックス27間に挟まれる前後方向中間部において、そのシート幅方向内側に締結されている。図24に示すように、この駆動装置100(本体ケース101)には、スクリュ110により前記回転モータ36が締結されており、その回転軸36aに前記入力用トルクケーブル37を介して駆動連結されている。
【0168】
詳述すると、図25に示すように、駆動装置100は、回転軸36aの軸線方向に2分された一対の本体ケース101,102、本体ケース102を外側から覆うカバー103にてその筐体をなしている。本体ケース101,102は、これらの四隅を回転軸36aの軸線方向と平行に貫通する4本のスクリュ(図示略)にて締結されており、本体ケース102及びカバー103は、同じくこれらの四隅を回転軸36aの軸線方向と平行に貫通する4本のスクリュ(図示略)にて締結されている。
【0169】
ここで、図27及び図28に示すように、回転モータ36側の本体ケース101には、入力用トルクケーブル37(回転軸36a)と同心で該入力用トルクケーブル37側に有底略筒状の保持部101aが突設されている。この保持部101aには、略円筒状の軸受BE11が嵌着されている。そして、軸受BE11の中心部には、入力用トルクケーブル37が配置されており、軸受BE11には、入力用トルクケーブル37と同軸でこれに一体回転するように連結されたハスバ歯車104の基端部が軸支されている。一方、回転モータ36から離隔する側の本体ケース102の中央部には、図25に併せ示すように、略円筒状の軸受部102aがハスバ歯車104(回転軸36a)の軸線方向と平行に外向きに突設されるとともに、軸受部102aと同心でその右下側に略円弧柱状のガイド部102bが同じく外向きに突設されている。ハスバ歯車104の先端部は、軸受部102aに嵌着された略円筒状の軸受BE12を介して本体ケース102に軸支されている。
【0170】
図25に示すように、本体ケース101,102には、ハスバ歯車104の上側及び下側で前後方向に軸線の延びる一対の入力軸としてのハスバ歯車105,106が配設されている。ハスバ歯車105,106は、ハスバ歯車104に対して互いに異なるねじれの位置でこれに噛合しており、互いに同等の1以上の減速比に設定されている。
【0171】
つまり、回転モータ36と、該回転モータ36(回転軸36a)にハスバ歯車104を介して連結されるハスバ歯車105,106は、いわゆるT型構成となっている。
また、本体ケース101,102には、前記リフタ用シャフト54L、チルト用シャフト54T、リクライナ用シャフト54R及びスライド用シャフト54Sがそれぞれ軸支されている。本実施形態では、リクライナ用シャフト54R及びスライド用シャフト54Sが上側のハスバ歯車105と同軸でその後側及び前側に互いに対称となる姿勢で配設されており、リフタ用シャフト54L及びチルト用シャフト54Tが下側のハスバ歯車105と同軸でその後側及び前側に互いに対称となる姿勢で配設されている。
【0172】
ハスバ歯車105及びリクライナ用シャフト54R間、ハスバ歯車105及びスライド用シャフト54S間、ハスバ歯車106及びリフタ用シャフト54L間並びにハスバ歯車106及び54T間に構成されるクラッチ機構の構造は前記第1の実施形態と同様である。従って、本実施形態においても、本体ケース101,102内には、8ウェイパワーシートの4つの出力軸(リフタ用シャフト54L、チルト用シャフト54T、リクライナ用シャフト54R及びスライド用シャフト54S)に対応する4系統のクラッチ機構の全てが収納されている。また、回転モータ36に入力用トルクケーブル37を介して駆動されるハスバ歯車104及びハスバ歯車105,106は、4つの筒部材55を介していずれかの出力軸(リフタ用シャフト54L、チルト用シャフト54T、リクライナ用シャフト54R又はスライド用シャフト54S)に回転伝達する動力伝達機構を構成する。従って、この動力伝達機構も本体ケース101,102内に収納されている。
【0173】
本体ケース102には、軸受部102aを中心とする四隅に等角度(90°)間隔で4つの略円形の軸受孔102cが形成されている。また、本体ケース102には、対角線上に配置される各2つの軸受孔102cから互いに離隔する径方向に延在する4つのガイド孔102dが形成されている。そして、各軸受孔102cにはカム部材111が軸支されている。
【0174】
図26(a)(b)に併せ示すように、カム部材111は、軸受孔102cに軸支される略円柱状の大径軸部111aを有するとともに、軸受孔102cから本体ケース102内に突出する略卵形状のカム部111bを有し、更に軸受孔102cから本体ケース102の外側に突出して軸受孔102cの外側周縁部に摺接するフランジ部111cを有する。また、カム部材111は、フランジ部111cに隣接して本体ケース102の外側に配置されたセクタギヤ部111dを有するとともに、該セクタギヤ部111dに隣接して本体ケース102の更に外側に配置されカバー103に軸支される略円柱状の小径軸部111eを有する。さらに、カム部材111は、セクタギヤ部111dとは異なる周方向の範囲でフランジ部111cに隣接して本体ケース102の外側に配置された略扇柱状の支持部111fを有するとともに、セクタギヤ部111d(小径軸部111e)の軸線方向と平行に支持部111fの中央部に突設された略円柱状のばね掛止部111gを有する。なお、支持部111fの外周部中央部には、径方向内側に切り欠かれてなる案内部111hが形成されている。
【0175】
図31に示すように、リクライナ用シャフト54R側のカム部材111は、カム部111bにおいて前記筒部材55の筒部55aの外周面に当接又は近接して押圧片55bに当接可能に配置されている。そして、カム部111bの長手方向が筒部材55等の軸線方向に一致する回転位置、即ちハスバ歯車105から筒部材55を最も離隔させる回転位置(以下、カム部材111の「中立位置」ともいう)にあるときに、前記圧縮ばね59の付勢力に抗してハスバ歯車105の嵌合部53Rから筒部材55の嵌合孔55cを外す。
【0176】
また、図32及び図33に示すように、カム部材111は、回動に伴いカム部111bの長手方向が筒部材55等の軸線方向から外れると、圧縮ばね59に付勢される筒部材55の嵌合孔55cがハスバ歯車105の嵌合部53Rに嵌合するように筒部材55の移動を許容する。一方、カム部材111は、回動に伴いカム部111bで筒部材55の押圧片55bを圧縮ばね59の付勢力に抗して押圧しつつ、該カム部111bの長手方向が筒部材55等の軸線方向に再び一致するように筒部材55を移動させると、ハスバ歯車105の嵌合部53Rから筒部材55の嵌合孔55cを外す。なお、スライド用シャフト54S側、リフタ用シャフト54L側及びチルト用シャフト54T側の各カム部材111の動作も同様である。
【0177】
図25に示すように、本体ケース102の各ガイド孔102dには、ばね取付部材112がその長手方向(軸受孔102cの径方向)に移動自在に取着されている。すなわち、各ばね取付部材112は、ガイド孔102dに摺動自在に装着される摺動部112aを有するとともに、該摺動部112aに隣接して本体ケース102の外側に配置された略長円形の本体部112bを有する。また、図30に示すように、各ばね取付部材112は、カム部材111のばね掛止部111gと平行に本体部112bに突設された略円柱状のばね掛止部112cを有する。なお、本体部112bは、その移動方向(カム部材111の径方向)で支持部111fに対向配置されている。
【0178】
ばね取付部材112のばね掛止部112cには、カム部材111のばね掛止部111gに一側脚部が係止された引張りばね113の他側脚部が係止されている。これにより、カム部材111及びばね取付部材112は、引張りばね113が短縮する方向に常時付勢されている。すなわち、カム部材111は、そのばね掛止部111gがばね取付部材112のばね掛止部112cに近接する側でこれと軸受孔102cの径方向に直線上に並ぶ回動方向に常時付勢されている。
【0179】
ばね掛止部111g,112cが軸受孔102cの径方向に直線上に並ぶときのカム部材111の回転位置は、前記中立位置に一致するように設定されている。つまり、カム部材111は、引張りばね113により中立位置に付勢・保持されている。このとき、カム部材111の案内部111hは、ばね取付部材112(本体部112b)の移動方向(軸受孔102cの径方向)でこれに対向する。従って、引張りばね113に付勢されるばね取付部材112は、カム部材111が中立位置に配置されているときに本体部112bを案内部111hに嵌入する。あるいは、ばね取付部材112は、カム部材111を引張りばね113の付勢力に抗して中立位置から外す際に、本体部112bが案内部111hを乗り上げることで、ガイド孔102dに沿って引っ込む。
【0180】
カム部材111を中立位置に保持する引張りばね113の付勢力は、筒部材55の嵌合孔55cが嵌合部53L,53T,53R,53Sに嵌合するように筒部材55を移動させる圧縮ばね59の付勢力よりも大きく設定されている。従って、通常は、カム部材111は中立位置に配置・保持されている。つまり、通常は、筒部材55を介した前述の回転伝達が不能な状態に保持されている。そして、引張りばね113の付勢力に抗してカム部材111を回動させると、該カム部材111が中立位置から外れ、圧縮ばね59の付勢力によって筒部材55の嵌合孔55cが嵌合部53L,53T,53R,53Sに嵌合するように筒部材55が移動する。これにより、筒部材55を介した前述の回転伝達が可能となる。
【0181】
図25及び図28に示すように、前記軸受部102aには、その外周側で有底略円筒状の切替軸114Rが軸支されている。この切替軸114Rは、基端から径方向外側に延出してガイド部102bに摺接する円環状のフランジ部115Rを有するとともに、該フランジ部115Rの図25において左上側の角度位置から径方向外側に延出して該当のカム部材111のセクタギヤ部111dに噛合するセクタギヤ部116Rを有する。従って、切替軸114Rが回転すると、セクタギヤ部116R,111d間の回転伝達によって該当のカム部材111が回動する。なお、切替軸114Rの先端部には、略2枚羽根形状の嵌合部117Rが形成されている。
【0182】
また、切替軸114Rには、その外周側で略円筒状の切替軸114Sが軸支されている。この切替軸114Sは、基端から径方向外側に延出してガイド部102bの先端面及びフランジ部115Rの先端面に摺接する円環状のフランジ部115Sを有するとともに、該フランジ部115Sの図25において右上側の角度位置から径方向外側に延出して該当のカム部材111のセクタギヤ部111dに噛合するセクタギヤ部116Sを有する。従って、切替軸114Sが回転すると、セクタギヤ部116S,111d間の回転伝達によって該当のカム部材111が回動する。なお、切替軸114Rの先端部には、径方向で対向する角度位置を切り欠いてなる嵌合部117Sが形成されている。
【0183】
さらに、切替軸114Sには、その外周側で略円筒状の切替軸114Tが軸支されている。この切替軸114Tは、その基端がフランジ部115Sの先端面に摺接するとともに、基端部の図25において右下側の角度位置から径方向外側に延出して該当のカム部材111のセクタギヤ部111dに噛合するセクタギヤ部116Tを有する。従って、切替軸114Tが回転すると、セクタギヤ部116T,111d間の回転伝達によって該当のカム部材111が回動する。なお、切替軸114Tの先端部には、径方向で対向する角度位置を切り欠いてなる嵌合部117Tが形成されている。
【0184】
さらにまた、切替軸114Tには、その外周側で略円筒状の切替軸114Lが軸支されている。この切替軸114Lは、基端部の図30において左下側の角度位置から径方向外側に延出して該当のカム部材111のセクタギヤ部111dに噛合するセクタギヤ部116Lを有する。従って、切替軸114Lが回転すると、セクタギヤ部116L,111d間の回転伝達によって該当のカム部材111が回動する。なお、切替軸114Lの先端部には、径方向で対向する角度位置を切り欠いてなる嵌合部117Lが形成されている。
【0185】
なお、本体ケース102の外側に露出する切替軸114R,114S,114T,114Lのセクタギヤ部116R,116S,116T,116Lやこれと噛合するカム部材111等は、本体ケース102に締結されるカバー103との間に収納されている。そして、切替軸114R,114S,114T,114Lは、カバー103を貫通してその先端部をカバー103の外側に露出している。
【0186】
切替軸114R,114S,114T,114Lは、この順番で外径が増加するとともに、本体ケース102から先端までの軸線方向の離隔距離が短縮する。そして、最大径の切替軸114Lは、カバー103にも軸支されている。つまり、カバー103は、直接的・間接的に全ての切替軸114R,114S,114T,114Lを軸支する。図24に示すように、カバー103の外側に露出する切替軸114R,114S,114T,114Lは、ロアアーム20を貫通してそれらの先端部(嵌合部)を外側に突出させている。
【0187】
切替軸114Lの嵌合部117Lには、後側に延在する操作部材としてのリフタ用操作ハンドル118Lが一体回動するように嵌合する。また、切替軸114Tの嵌合部117Tには、リフタ用操作ハンドル118Lの外側で前側に延在する操作部材としてのチルト用操作ハンドル118Tが一体回動するように嵌合する。さらに、切替軸114Sの嵌合部117Sには、チルト用操作ハンドル118Tの外側で上側に延在する操作部材としてのスライド用操作ハンドル118Sが一体回動するように嵌合する。さらにまた、切替軸114Rの嵌合部117Rには、スライド用操作ハンドル118Sの外側で上側に延在する操作部材としてのリクライナ用操作ハンドル118Rが一体回動するように嵌合する。なお、リクライナ用操作ハンドル118Rは、スクリュ120により切替軸114Rに締結されることで、その内側に同軸上に配置されるスライド用操作ハンドル118S、チルト用操作ハンドル118T及びリフタ用操作ハンドル118Lと共に軸線方向に抜け止めされている。
【0188】
従って、例えばリクライナ用操作ハンドル118Rを回動操作すると、これと一体回動する切替軸114Rのセクタギヤ部116R及びカム部材111のセクタギヤ部111d間の回転伝達によってカム部材111(カム部111b)が回動する。これにより、筒部材55が前述の態様で軸線方向に移動する。既述のように、カム部材111は、引張りばね113により中立位置に付勢・保持されている。従って、カム部材111と一体回転するリクライナ用操作ハンドル118Rは、カム部材111の中立位置に対応する回転位置(以下、「初期位置」ともいう)にあるとき、引張りばね113の付勢力にて安定した状態で保持される。
【0189】
つまり、通常は、筒部材55を介したハスバ歯車105及びリクライナ用シャフト54R間の回転伝達が不能な状態に保持されている。また、リクライナ用操作ハンドル118Rが初期位置に復帰する際には、引張りばね113に付勢されるばね取付部材112(本体部112b)がカム部材111の案内部111hに嵌入することになる。これにより、リクライナ用操作ハンドル118Rが初期位置へと回動する際に節度感が生まれることになる。
【0190】
なお、他の操作ハンドル118S,118T,118Lの動作も、リフタ用操作ハンドル118Lの動作と同様である。本実施形態では、リクライナ用操作ハンドル118R及びスライド用操作ハンドル118Sは、駆動装置100の前後方向中心の上側でシート幅方向に重ねて配置されており、チルト用操作ハンドル118T及びリフタ用操作ハンドル118Lは、駆動装置100の前後方向中心に対して左右対称に配置されている。
【0191】
ここで、操作ハンドル118R,118S,118T,118Lは、それらの下側の外周部を径方向内側に切り欠いてなるスイッチカム部119R,119S,119T,119Lをそれぞれ有する。一方、ロアアーム20には、これらスイッチカム部119R,119S,119T,119Lの下側で前記スイッチ77が、ブラケット121を介して固定されている。そして、前記スイッチレバー76の先端部は、スイッチカム部119R,119S,119T,119Lの下向きに延出する両端部(押圧部)119a,119b(図23参照)の軸受部102a周りの回動軌跡を遮るように配置されている。従って、いずれかの操作ハンドル118R,118S,118T,118Lを回動操作すると、スイッチレバー76は、その先端部が該当のスイッチカム部119R,119S,119T,119L(端部119a,119b)に押圧されることで、当該操作ハンドル118R,118S,118T,118Lの操作方向に応じた方向に回動する。スイッチレバー76が回動すると、その回動方向(ボタン77aの傾き方向)に応じた極性でスイッチ77が回路を閉じることは既述のとおりである。
【0192】
なお、全ての操作ハンドル118R,118S,118T,118Lが操作されておらず、該当の所定の初期位置に配置されているとする。このとき、前記第1の実施形態と同様、スイッチレバー76の先端部は、全てのスイッチカム部119R,119S,119T,119Lの両端部119a,119b間に挟まれる中央部に配置されており、これら端部119a,119bとの間にそれぞれ隙間を形成する。従って、前記第1の実施形態に準じて、いずれか一つの操作ハンドル118R,118S,118T,118L(スイッチカム部119R,119S,119T,119L)がスイッチレバー76の先端部を押圧しているとき、他の操作ハンドル118R,118S,118T,118Lの回動が抑制されるようになっている。
【0193】
次に、本実施形態の動作について説明する。なお、リクライナ用操作ハンドル118R、スライド用操作ハンドル118S、チルト用操作ハンドル118T及びリフタ用操作ハンドル118Lの回動操作と、これに対応する各機構M2,M4,M11,M13の動作については、調整対象の駆動に係る該当のトルクケーブル16,22,28,35等への回転伝達を除けば概ね同等である。そこで、以下ではリクライナ用操作ハンドル118R(リクライナ機構M4)を代表してその動作を説明する。
【0194】
まず、図31に示すように、リクライナ用操作ハンドル118Rが初期位置から操作されておらず、従ってハスバ歯車105の回転がリクライナ用シャフト54Rに伝達不能な状態にあり、回転モータ36と電源との接続がスイッチ77を介して遮断されているものとする。この状態で、図32又は図33に示すように、リクライナ用操作ハンドル118Rを初期位置から時計回り又は反時計回りに回動操作すると、セクタギヤ部116R,111dにおける回転伝達によって該当のカム部材111が回動する。これにより、カム部材111が中立位置から外れ、圧縮ばね59の付勢力によって筒部材55の嵌合孔55cがハスバ歯車105の嵌合部53Rに嵌合するように筒部材55が移動する。そして、ハスバ歯車105の回転が筒部材55を介してリクライナ用シャフト54Rに伝達可能となる。
【0195】
一方、リクライナ用操作ハンドル118Rを初期位置から時計回り又は反時計回りに回動操作すると、スイッチレバー76は、リクライナ用操作ハンドル118Rの回動方向に対応するスイッチカム部119Rのいずれかの端部119a,119bに押圧されることで、時計回り又は反時計回りに回動する。これにより、前述の態様で回転モータ36が正転又は逆転する。
【0196】
回転モータ36が回転すると、その回転は、入力用トルクケーブル37、ハスバ歯車104,105及び筒部材55を介してリクライナ用シャフト54Rに伝達される。従って、リクライナ用シャフト54Rの回転がリクライナ用トルクケーブル35を介してリクライナ用ギヤボックス33に伝達されることで、その回転方向に応じてシートクッション7に対してシートバック8が回動(傾動)するようにリクライナ機構M4が作動する。
【0197】
その後、リクライナ用操作ハンドル118Rの操作力を解放すると、該リクライナ用操作ハンドル118Rはカム部材111と共に引張りばね113に付勢されて、図31に示す初期位置に復帰する。同時に、カム部材111は中立位置に復帰する。リクライナ用操作ハンドル118Rと共にカム部材111を中立位置に復帰させる引張りばね113の付勢力が、筒部材55を移動させる圧縮ばね59の付勢力よりも大きいことは既述のとおりである。これにより、ハスバ歯車105の回転が筒部材55を介してリクライナ用シャフト54Rに伝達不能となる。
【0198】
一方、リクライナ用操作ハンドル118Rの初期位置への復帰に伴い、前述の態様でスイッチ77を介した回転モータ36と電源との接続が遮断される。これにより、回転モータ36の回転が停止する。
【0199】
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)(4)〜(10)(12)(14)の効果に加えて以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、操作ハンドル118R,118S,118T,118Lは、互いに同一の回転軸(軸受部102a等の軸線)周りに回動するように軸支されていることで、これら操作ハンドル118R,118S,118T,118Lを当該回転軸周りに集約して配置でき、装置全体としてより小型化することができる。
【0200】
(2)本実施形態では、いずれかの操作ハンドル118R,118S,118T,118Lがその回転軸周りに回動すると、該当のスイッチカム部119R,119S,119T,119Lがスイッチレバー76を押圧することで、操作ハンドル118R,118S,118T,118Lの回動方向(操作方向)に応じた極性でスイッチ77が作動する。従って、いずれかの操作ハンドル118R,118S,118T,118Lの操作に連動するスイッチ77の作動を極めて簡易な構造で実現することができる。また、スイッチカム部119R,119S,119T,119Lは、該当の操作ハンドル118R,118S,118T,118Lに一体的に設けられていることで、装置全体としてより小型化することができる。
【0201】
(3)本実施形態では、操作ハンドル118R,118S,118T,118Lが初期位置に復帰する際には、即ちカム部材111を中立位置に復帰する際には、引張りばね113に付勢されるばね取付部材112(本体部112b)がカム部材111の案内部111hに嵌入することになる。これにより、操作ハンドル118R,118S,118T,118Lが初期位置に復帰する際に確実な節度感を付与することができる。
【0202】
(4)本実施形態では、複数の操作ハンドル118R,118S,118T,118Lの全ての非操作時、スイッチカム部119R,119S,119T,119Lの両端部119a,119bと、スイッチレバー76の先端部との間に隙間がそれぞれ形成されていることで、複数の操作ハンドル118R,118S,118T,118Lのいずれか一つの操作時には、該当のスイッチカム部119R,119S,119T,119Lの一方の端部119a,119bが隙間分の空走区間を経てスイッチレバー76の先端部を押圧する。これにより、スイッチレバー76が回動する。この場合、スイッチレバー76の先端部と、非操作である他の操作ハンドル118R,118S,118T,118L(スイッチカム部119R,119S,119T,119L)の他方の端部119a,119bとの間に隙間が形成されていることで、スイッチレバー76の先端部が他の操作ハンドル118R,118S,118T,118Lの他方の端部119a,119bを押圧してこれを一体的に回動させてしまうことを抑制できる。
【0203】
また、スイッチレバー76の回動時、その先端部は、他の操作ハンドル118R,118S,118T,118L(スイッチカム部119R,119S,119T,119L)の他方の端部119a,119bとの間の隙間分の空走区間を経て当該端部119a,119bに当接又は近接する。従って、スイッチレバー76の先端部により、他の操作ハンドル118R,118S,118T,118L(スイッチカム部119R,119S,119T,119L)の回動を規制することができる。
【0204】
(第3の実施形態)
図34〜図41を参照して本発明の第3の実施形態について説明する。なお、第3の実施形態は、いずれか一つの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作に伴い該当の第1カム部材61又は第2カム部材62を回動させた際に、第1カム部材61又は第2カム部材62(カム部61b,62b)と筒部材55(押圧片55b)との間で押圧力を仲介する仲介部材を設けたことが前記第1の実施形態と主に異なる構成であるため、同様の部分については同一の符号を付してその説明を一部省略する。
【0205】
図34に示すように、各筒部材55の筒部55aは、本体ケース41に支持された略四角枠状の仲介部材131に遊挿されている。すなわち、図35及び図36に示すように、本体ケース41には、各隣り合う筒部材55の押圧片(外向きフランジ)55b及びウォームホイール51(52)間で上下方向(図面に直交する方向)に延在する略半円溝状の軸受溝130が形成されている。
【0206】
一方、仲介部材131は、軸受溝130に軸支される略優弧柱状の軸部132を有するとともに、筒部材55の筒部55aをその軸線方向に略直交する方向に横切る略四角枠状の本体部133を有する。そして、仲介部材131は、本体部133に形成された略円形の挿通孔133aにおいて筒部55aが遊挿されている。従って、仲介部材131は、筒部55aに阻害されることなく、軸受溝130周りの一定範囲の回動が可能である。この回動範囲における周方向は、筒部材55の軸線方向に合致するその移動方向に沿っている。
【0207】
仲介部材131の軸部132から離隔する先端部134は、第1カム部材61(第2カム部材62)のカム部61b(62b)に軸受溝130を中心とする周方向で対向配置されており、図37及び図38に示すように、その上下方向中央部は、第1カム部材61側に突出する突部134aを形成する。また、仲介部材131は、先端部134寄りの挿通孔133aを挟んでその上側及び下側に配設された一対の押圧壁部135を有する(図37及び図38では上側のみ図示)。これら押圧壁部135は、上下方向に延在しており、軸部132側に向かうに従い筒部材55の押圧片55bに向かうように隆起する。
【0208】
ここで、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが操作されておらず、第1及び第2カム部材61,62が前記中立位置にあるときには、図36の右側及び図37に示すように、第1カム部材61(第2カム部材62)がそのカム部61b(62b)で仲介部材131の先端部134(突部134a)を押圧することで、仲介部材131は、先端部134がウォームホイール51(ウォームホイール52)から離隔する側に軸部132を中心に回動した状態にある。
【0209】
このとき、仲介部材131は、圧縮ばね59の付勢力に抗して両押圧壁部135で筒部材55の押圧片55bを押圧することで、筒部材55へのウォームホイール51(ウォームホイール52)の嵌挿を外す。つまり、前記中立位置にある第1カム部材61(第2カム部材62)は、該当の仲介部材131の両押圧壁部135を介して筒部材55の押圧片55bを押圧している。筒部材55は、押圧片55bが両押圧壁部135による2点(又は直線)で押圧されていることで、例えば1点で押圧される場合に比べてその姿勢がより安定化される。
【0210】
そして、いずれか一つの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが操作されて前記中立位置から回動すると、該当の第1カム部材61又は第2カム部材62が回動して、図36の左側及び図38に示すように、第1カム部材61(第2カム部材62)のカム部61b(62b)が仲介部材131の先端部134(突部134a)を解放する。これにより、圧縮ばね59に付勢される筒部材55は、ウォームホイール51(52)側に移動するとともに、これに伴い筒部材55の押圧片55bに押圧される仲介部材131は、先端部134がウォームホイール51(ウォームホイール52)に近付く側に軸部132を中心に回動する。
【0211】
このとき、仲介部材131は、筒部材55の軸線方向(移動方向)に略直交する方向に筒部55aを横切る。つまり、先端部134の軸部132を中心とする周方向は、筒部材55の軸線方向(移動方向)に略一致している。筒部材55がウォームホイール51(52)に近付く側に移動することで、該ウォームホイール51(52)に嵌挿されることは前記第1の実施形態と同様である。
【0212】
その後、当該操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作が解放されて前記中立位置へと回動すると、図36の右側及び図37に示すように、第1カム部材61(第2カム部材62)がそのカム部61b(62b)で仲介部材131の先端部134(突部134a)を押圧することで、仲介部材131は、先端部134がウォームホイール51(ウォームホイール52)から離隔する側に軸部132を中心に回動する。
【0213】
このとき、仲介部材131は、圧縮ばね59の付勢力に抗して両押圧壁部135で筒部材55の押圧片55bを押圧することで、筒部材55へのウォームホイール51(ウォームホイール52)の嵌挿を外す。このとき、筒部材55は、押圧片55bが両押圧壁部135による2点(又は直線)で押圧されることで、例えば1点で押圧される場合に比べてその移動がより円滑化されている。
【0214】
図38に示すように、本実施形態のウォームホイール51(ウォームホイール52)は、略2枚羽根形状の嵌合部53L,53T,53R,53Sに代えて、円柱形状と該円柱形状から等角度間隔で径方向に延出する3つの円弧柱形状とが組み合わされた略3枚羽根形状の外形を有する嵌合部136を備える。そして、嵌合部136は、その外形に合わせて略3枚羽根形状の嵌合孔137aの形成された、例えばエラストマやゴムなどからなる略円環状の緩衝部材137に嵌挿されている。この緩衝部材137は、嵌合部136の基端側の周縁部となるウォームホイール51(ウォームホイール52)の筒部材55に対向する先端面に密着する。
【0215】
なお、筒部材55には、略2枚羽根形状の嵌合孔55cに代えて、嵌合部136の嵌合可能な略3枚羽根形状の嵌合孔(図示略)が形成されていることはいうまでもない。従って、緩衝部材137は、ウォームホイール51(ウォームホイール52)の前記先端面と筒部材55の嵌合孔の周縁部となるウォームホイール51(ウォームホイール52)に対向する先端面との間に介装されている。これにより、筒部材55の嵌合孔にウォームホイール51(ウォームホイール52)の嵌合部136が嵌挿された際には、筒部材55の前記先端面が緩衝部材137を介してウォームホイール51(ウォームホイール52)の前記先端面に当接することになる。従って、筒部材55に該当のウォームホイール51(ウォームホイール52)が嵌挿される際のこれら両先端面の当り音が緩和される。
【0216】
図39に示すように、本実施形態のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sには、ギヤ部72L,72T,72R,72S及び円弧部73L,73T,73R,73S間に挟まれる外周部の上側からスイッチ用軸受部49を中心とする径方向外側に一対の爪状の係合部141,142が突設されている。
【0217】
一方、本実施形態のカバー43には、スイッチ用軸受部49の上側でその軸線と平行に延びる軸線を有する第3の回転軸としての軸143が突設されている。この軸143には、スイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの上側に配置された略三つ葉形状のストップカム145がその中央部において軸支されている。
【0218】
図40及び図41(a)(b)に示すように、このストップカム145は、軸143を中心とする径方向に突出する被押圧部146及び該被押圧部146を挟む軸143を中心とする周方向両側から径方向に突出する一対の略扇状の規制部147,148を有する。これら被押圧部146及び両規制部147,148は、全てのスイッチカム部材71L,71T,71R,71S(係合部141,142)の軸線方向の位置を含むように当該方向に沿って延在する。
【0219】
また、図41(a)(b)に示すように、ストップカム145の回動軸周りには、捩りばね150が巻回されている。この捩りばね150の両端のフック部150aの根元部はストップカム145のストッパ部149に接触して回転止めされ、フック部150aの先端部はカバー43の係止壁151にて位置決めされる。ストップカム145は、捩りばね150に付勢されることで、所定の初期回動位置(中立位置)に保持されている。
【0220】
ここで、全ての操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが操作されておらず、該当の所定の初期位置に配置されているとする。このとき、図41(a)に示すように、所定の初期回動位置に配置されているストップカム145は、被押圧部146が全てのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの両係合部141,142のスイッチ用軸受部49周りの回動軌跡を遮るように配置されている。そして、被押圧部146は、全てのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの両係合部141,142間に挟まれる中央部に配置され、これら係合部141,142との間にそれぞれ隙間C1を形成する。また、ストップカム145の規制部147,148は、その先端が係合部141,142の先端にそれぞれ近接して、これら両係合部141,142のスイッチ用軸受部49周りの回動軌跡を開放する。
【0221】
従って、いずれか一つの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの回動操作に伴い該当のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sが回動すると、係合部141,142は、隙間C1分の空走区間を経てストップカム145の被押圧部146を押圧し始める。そして、ストップカム145は、被押圧部146が係合部141,142に押圧されることで、当該操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作方向に応じた方向に回動する。このとき、ストップカム145により、他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動が抑制されるようになっている。
【0222】
例えば、リフタ用操作ハンドル63Lの回動操作によりリフタ用スイッチカム部材71Lを図41(a)において反時計回りに回動させると、該リフタ用スイッチカム部材71Lは図示右側の隙間C1分の空走区間を経て該当の係合部142でストップカム145の被押圧部146を押圧する。これにより、ストップカム145が軸143を中心に図示時計回りに回動すると、図41(b)に示すように、図示右側の規制部148がチルト用スイッチカム部材71Tの図示右側の係合部142の回動軌跡を遮る。従って、ストップカム145の図示右側の規制部148により、チルト用スイッチカム部材71Tの反時計回りの回動が規制される。
【0223】
また、ストップカム145の被押圧部146は、チルト用スイッチカム部材71Tの係合部141との隙間C1分の空走区間を経てこれに当接又は近接する。換言すれば、図41(a)において左側に隙間C1があることで、リフタ用スイッチカム部材71Lの図示反時計回りの回動に伴いストップカム145が回動しても、被押圧部146がチルト用スイッチカム部材71Tの係合部141を押圧してこれを図示反時計回りに回動させることがないようになっている。
【0224】
さらに、ストップカム145の回動時、被押圧部146は、チルト用スイッチカム部材71Tの図示左側の係合部141との間の隙間C1分の空走区間を経て当該係合部141に当接又は近接する。従って、ストップカム145の被押圧部146により、チルト用スイッチカム部材71Tの時計回りの回動が規制される。
【0225】
反対に、リフタ用操作ハンドル63Lの回動操作によりリフタ用スイッチカム部材71Lを図41(a)において時計回りに回動させると、該リフタ用スイッチカム部材71Lは図示左側の隙間C1分の空走区間を経て該当の係合部141でストップカム145の被押圧部146を押圧する。これにより、ストップカム145が軸143を中心に図示反時計回りに回動すると、図示左側の規制部147がチルト用スイッチカム部材71Tの図示左側の係合部141の回動軌跡を遮る。従って、ストップカム145の図示左側の規制部147により、チルト用スイッチカム部材71Tの時計回りの回動が規制される。
【0226】
また、ストップカム145の被押圧部146は、チルト用スイッチカム部材71Tの係合部142との隙間C1分の空走区間を経てこれに当接又は近接する。換言すれば、図41(a)において右側に隙間C1があることで、リフタ用スイッチカム部材71Lの図示時計回りの回動に伴いストップカム145が回動しても、被押圧部146がチルト用スイッチカム部材71Tの係合部142を押圧してこれを図示時計回りに回動させることがないようになっている。
【0227】
さらに、ストップカム145の回動時、被押圧部146は、チルト用スイッチカム部材71Tの図示右側の係合部142との間の隙間C1分の空走区間を経て当該係合部142に当接又は近接する。従って、ストップカム145の被押圧部146により、チルト用スイッチカム部材71Tの反時計回りの回動が規制される。
【0228】
リフタ用操作ハンドル63Lを回動操作した際の他のリクライナ用スイッチカム部材71R及びスライド用スイッチカム部材71Sの動作についても同様である。これにより、いずれか一つのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sが回動しても、ストップカム145により他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動が規制される。また、いずれか一つのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sが回動しても、左右の隙間C1によりストップカム145が他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sを回動させることはない。
【0229】
以上により、全てのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sが同軸上に配設されていても、いずれか一つのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sが最初に回動すれば、ストップカム145により他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動が規制される。また、左右の隙間C1により、いずれか一つのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sに押圧されるストップカム145が、他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sを回動させてしまうことが抑制される。そして、他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動に伴いこれに連結された該当の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが揺動することも抑制される。
【0230】
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1の実施形態と同様の効果に加えて以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、いずれかの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sを該当の捩りばね65,66の付勢力に抗して初期位置から操作すると、第1カム部材61又は第2カム部材62のカム部61b,62bによる仲介部材131を介した筒部材55の押圧片55bの押圧が解放される。これにより、圧縮ばね59に付勢される該当の筒部材55へのウォームホイール51,52の嵌挿が許容される。そして、該当する位置調整機構(M1〜M4)への出力軸(リフタ用シャフト54L、チルト用シャフト54T、リクライナ用シャフト54R、スライド用シャフト54S)とウォームホイール51,52とが接続される。一方、該当の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作を解放すると、該当の捩りばね65,66に付勢される操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが初期位置へと復帰する。このとき、仲介部材131は、該当のカム部61b,62bに押圧されることで、圧縮ばね59の付勢力に抗して押圧片55bを押圧する。これにより、筒部材55へのウォームホイール51,52の嵌挿が外れる。この際、仲介部材131は、筒部材55の移動方向に沿う周方向の回動を行って押圧片55bを押圧するため、例えばカム部61b,62bで直に押圧片55bを押圧する場合のような一点での押圧に代えて、両押圧壁部135による複数点(又は直線)での押圧にすることができ、圧縮ばね59の付勢力に抗した筒部材55の移動をより円滑化することができる。
【0231】
(2)本実施形態では、各筒部材55及び該当のウォームホイール51,52の互いに対向する両先端面間に介装される緩衝部材137により、各筒部材55に該当のウォームホイール51,52が嵌挿される際のこれら両先端面の当り音を緩和することができる。
【0232】
(3)本実施形態では、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの全ての非操作時、スイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの両係合部141,142と、ストップカム145の被押圧部146との間に隙間C1がそれぞれ形成されていることで、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sのいずれか一つの操作時には、該当のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの一方の係合部141,142が隙間C1分の空走区間を経てストップカム145の被押圧部146を押圧する。これにより、ストップカム145が軸143周りに回動することで、一方の規制部147,148が他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの一方の係合部141,142の回動軌跡を遮る。従って、ストップカム145の一方の規制部147,148により、他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動を規制することができる。
【0233】
また、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの全ての非操作時、スイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの両係合部141,142と、ストップカム145の被押圧部146との間に隙間C1がそれぞれ形成されていることで、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sのいずれか一つの操作時、ストップカム145の被押圧部146が非操作である他の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sに対応するスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの他方の係合部141,142を押圧してこれを一体的に回動させてしまうことを抑制できる。
【0234】
さらに、ストップカム145の回動時、被押圧部146は、他の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sに対応するスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの他方の係合部141,142との間の隙間C1分の空走区間を経て当該係合部141,142に当接又は近接する。従って、ストップカム145の被押圧部146により、他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動を規制することができる。
【0235】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記第1及び第2の実施形態において、前記第3の実施形態に準じた仲介部材(131)、緩衝部材(137)及びストップカム(145)を択一的又は選択的に組み合わせて配設してもよい。ただし、前記第2の実施形態においては、スイッチカム部材がないことから、ストップカム(145)を設ける組み合わせは不可である。
【0236】
・前記第1及び第3の実施形態において、スイッチカム部材71L,71T,71R,71S(スイッチカム部74L,74T,74R,74S)を割愛するとともに操作ハンドル63L,63T,63R,63Sに適宜のスイッチカム部を設けて、該操作ハンドル63L,63T,63R,63Sにて直にスイッチレバー76を押圧できるようにしてもよい。
【0237】
・前記第1及び第3の実施形態において、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sは、全てが互いに異なる回転軸周りに回動するように軸支されていてもよい。この場合、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sにて直にスイッチレバー76を押圧できるようにしてもよいし、スイッチカム部材を介してスイッチレバー76を押圧できるようにしてもよい。
【0238】
・前記第1及び第3の実施形態において、ウォームホイール51,52の一方を割愛して、2系統の出力(即ち2つの位置調整機構)としてもよい。あるいは、ウォームホイール51,52の一方に接続可能な出力を1系統として、3系統の出力(即ち3つの位置調整機構)としてもよい。
【0239】
・前記第1及び第3の実施形態においては、トラベルリンク17をフロントリンク4に連結したが、例えばリアリンク5やロアアーム20の適当な位置に連結されていてもよい。要はロアアーム20(駆動装置40)の昇降動作に追従して方向変換ギヤ装置15が回動可能であればよい。
【0240】
・前記第1及び第3の実施形態において、リフタ機構M2の作動に伴うフロントリンク4の揺動に追従して方向変換ギヤ装置15を揺動させるリンク構成を割愛してもよい。
・前記第1及び第3の実施形態において、駆動装置40(サイドカバー)の上側部は、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜していなくてもよい。
【0241】
また、これに併せて、回転モータ36を、その軸線がシート幅方向内側に向かうに従い下方に向かうように配置しなくてもよい。
・前記第2の実施形態において、4つの操作ハンドル118L,118T,118R,118Sを2組に分けてもよい。そして、これら2組の操作ハンドルは、互いに異なる2つの回転軸周りに回動するように軸支されていてもよい。この場合、操作ハンドル118L,118T,118R,118Sにて直にスイッチレバー76を押圧できるようにしてもよいし、スイッチカム部材を介してスイッチレバー76を押圧できるようにしてもよい。
【0242】
・前記第2の実施形態において、4つの操作ハンドル118L,118T,118R,118Sは、前記第1の実施形態に準じてスイッチカム部材を介してスイッチレバー76を押圧できるようにしてもよい。
【0243】
・前記第2の実施形態において、スライド用ギヤボックス13とスライド用トルクケーブル16との間を方向変換ギヤ装置(15)を介して連結するとともに、リフタ機構M2の作動に伴うフロントリンク4の揺動に追従して方向変換ギヤ装置が揺動するように前記第1の実施形態に準じたリンク構成を適用してもよい。
【0244】
・前記第2の実施形態において、駆動装置100は、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜していてもよい。
また、これに併せて、回転モータ36を、その軸線がシート幅方向内側に向かうに従い下方に向かうように配置してもよい。
【0245】
・前記第2の実施形態において、ハスバ歯車105,106の一方を割愛して、2系統の出力(即ち2つの位置調整機構)としてもよい。あるいは、ハスバ歯車105,106の一方に接続可能な出力を1系統として、3系統の出力(即ち3つの位置調整機構)としてもよい。
【0246】
・前記各実施形態において、筒部材55の嵌合孔55cが嵌合部53L,53T,53R,53Sから外れる側に筒部材55を付勢する適宜の付勢部材を設けるとともに、第1及び第2カム部材61,62又はカム部材111の回動に伴い付勢部材の付勢力に抗して嵌合孔55cが嵌合部53L,53T,53R,53Sに嵌合する側に筒部材55を移動させる構成であってもよい。
【0247】
・前記各実施形態において、各ギヤボックス13,21,27,33の構造は一例である。例えば一対のハスバ歯車で方向変換を行うものであってもよい。またこの場合には、一対のハスバ歯車間で減速することなく等速で回転伝達させてもよい。
【0248】
・前記各実施形態においては、駆動装置40,100を、ロアアーム20において、複数の位置調整機構の伝達装置(ギヤボックス)に挟まれる中央部に配置したが、その配置は任意である。
【0249】
・前記各実施形態において、各種操作ハンドルは、その軸線を中心とする径方向に延在していなくてもよい。
【符号の説明】
【0250】
C,C1…隙間、M1,M11…スライド機構(位置調整機構)、M2…リフタ機構(位置調整機構)、M3,M13…チルト機構(位置調整機構)、M4…リクライナ機構(位置調整機構)、1…ロアレール、2…アッパレール、3…ブラケット、4…フロントリンク、5…リアリンク、7…シートクッション、10…サイドカバー、10a…凹部、15…方向変換ギヤ装置(伝達装置)、16…スライド用トルクケーブル(トルクケーブル)、17…トラベルリンク(リンク)、20…ロアアーム、21…リフタ用ギヤボックス(伝達装置)、22…リフタ用トルクケーブル(トルクケーブル)、27…チルト用ギヤボックス(伝達装置)、28…チルト用トルクケーブル(トルクケーブル)、33…リクライナ用ギヤボックス(伝達装置)、35…リクライナ用トルクケーブル(トルクケーブル)、36…回転モータ、38…ウォーム、41,42…本体ケース(筐体)、42a,42b…軸受部、42g,42h…軸受孔、43a…軸(第2の回転軸)、43…カバー(筐体)、44…スイッチカバー(筐体)、49…スイッチ用軸受部、51,52…ウォームホイール(入力軸)、53L,53T,53R,53S…嵌合部、54L…リフタ用シャフト(出力軸)、54T…チルト用シャフト(出力軸)、54R…リクライナ用シャフト(出力軸)、54S…スライド用シャフト(出力軸)、54a…出力軸側嵌合部、55…筒部材(クラッチ機構)、55b…押圧片(外向きフランジ)、55c…嵌合孔、59…圧縮ばね(第1付勢部材)、63L,63T,63R,63S,118R,118S,118T,118L…操作ハンドル(操作部材)、61…第1カム部材(カム部材)、61b,62b…カム部、62…第2カム部材(カム部材)、65,66…捩りばね(第2付勢部材)、71L,71T,71R,71S…スイッチカム部材、74L,74T,74R,74S…スイッチカム部、74a,74b,119a,119b…端部(押圧部)、76…スイッチレバー、77…スイッチ、104…ハスバ歯車、105,106…ハスバ歯車(入力軸)、111…カム部材、119R,119S,119T,119L…スイッチカム部、131…仲介部材、137…緩衝部材、141,142…係合部、143…軸(第3の回転軸)、145…ストップカム、146…被押圧部、147,148…規制部、149…ストッパ部、150…捩りばね。
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の回転モータにより複数の位置調整機構を選択的に作動させるシート駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、こうしたシート駆動装置として種々のものが提案されている。例えば特許文献1に記載されたシート駆動装置は、3つの位置調整機構(前後一対の上下調整機構、前後調整機構)を備えている。そして、これら位置調整機構への出力軸は、それぞれに対応する電磁クラッチ及びギヤ機構を介して単一の回転モータに駆動連結可能である。
【0003】
すなわち、図42に示すように、各位置調整機構の操作に係る操作スイッチ201,202,203は、その操作方向に応じた極性で単一の回転モータ204に通電するととともに、当該位置調整機構への出力軸と回転モータ204とが駆動連結されるように該当の電磁クラッチのソレノイド206,207,208に通電する。これにより、当該位置調整機構が電磁クラッチ及びギヤ機構を介して回転モータ204に駆動されて、該当する位置調整がなされる。
【0004】
また、特許文献2に記載されたシート駆動装置は、2つの位置調整機構(前後一対の上下調整機構)を備えている。そして、図43に示すように、両位置調整機構への出力軸211,212は、それぞれに対応して設けられた2つのロック機構213,214によって動作が切り替わる差動歯車機構215を介して単一の回転モータに駆動連結可能である。すなわち、この差動歯車機構215は、入力系統が回転モータ側に連結され、2つの出力系統が両位置調整機構への出力軸211,212にそれぞれ連結されている。
【0005】
そして、一の位置調整機構を作動させる際には、他の位置調整機構への出力軸211(212)をロックするべく該当のロック機構213(214)のプランジャ213a(214a)を作動させる。これにより、当該位置調整機構への出力軸211(212)が差動歯車機構215を介して回転モータに駆動連結されて、該当する位置調整がなされる。
【0006】
さらに、特許文献3に記載されたシート駆動装置は、2つの位置調整機構(リクライニング機構、前後調整機構)を備えている。そして、図44に示すように、一の位置調整機構への出力軸221は、一対の摩擦車222,223に接触するとともに、当該接触状態のままそれらの移動を許容する。また、両摩擦車222,223間には、スプリング224が張架されるとともに、これら摩擦車222,223を移動させる制御ノブ225が配置されている。この制御ノブ225は、当該位置調整機構に係る操作ボタン226に、作動板227及び操作レバー228を介して連係されている。制御ノブ225は、操作ボタン226の操作に伴い操作方向に応じて作動板227が往復移動する際に操作レバー228が揺動することで、いずれか一方の摩擦車222,223が回転モータMの回転軸Rに駆動連結されるようにこれら摩擦車222,223を移動させる。
【0007】
同様に、他の位置調整機構への出力軸231は、一対の摩擦車232,233に接触するとともに、当該接触状態のままそれらの移動を許容する。また、両摩擦車232,233間には、スプリング234が張架されるとともに、これら摩擦車232,233を移動させる制御ノブ235が配置されている。この制御ノブ235は、当該位置調整機構に係る操作ボタン236に、作動板237及び操作レバー238を介して連係されている。制御ノブ235は、操作ボタン236の操作に伴い操作方向に応じて作動板237が往復移動する際に操作レバー238が揺動することで、いずれか一方の摩擦車232,233が回転モータMの回転軸Rに駆動連結されるようにこれら摩擦車232,233を移動させる。
【0008】
なお、操作ボタン226,236は、回転モータMへの通電を断接するスイッチSWと該当の作動板227,237を介して連係されており、その操作に伴い操作方向に応じて作動板227,237を往復移動させることで、該当する極性で回転モータMへの通電を同時に行う。
【0009】
従って、例えば一の位置調整機構を作動させるべく、該当の操作ボタン226(236)の操作によって制御ノブ225(235)とともに両摩擦車222,223(232,233)を移動させ、操作方向に応じたいずれかの摩擦車222,223(232,233)を回転軸Rに連結するとともに操作方向に応じた極性で回転モータMへの通電を行うと、回転軸Rが該当の摩擦車222,223(232,233)を介して出力軸221(231)に連結される。これにより、当該位置調整機構による位置調整がなされる。他の位置調整機構を作動させる場合も同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭58−97528号公報
【特許文献2】特公平6−9945号公報
【特許文献3】特開昭63−199139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、特許文献1では、これら位置調整機構への出力数と同数の操作スイッチ201〜203及び電磁クラッチ(ソレノイド206〜208)がそれぞれ必要になるため、例えば位置調整機能の増加に伴って電気回路の複雑化を余儀なくされる。
【0012】
また、特許文献2では、少なくとも両位置調整機構への出力数と同数のロック機構213,214(プランジャ213a,224a)が必要になるため、電気回路の複雑化を余儀なくされる。加えて、両位置調整機構の選択的な作動に、1つの入力系統と2つの出力系統を持つ差動歯車機構215を利用することから、その出力数は「2」のみとなり、シートの位置調整機能としては不十分となる。
【0013】
さらに、特許文献3では、操作ボタン226,236の操作時、3個の摩擦車を移動させるというダイナミックな移動となって、必要な操作力の増大を余儀なくされる。また、これら3個の摩擦車は、互いに異なる回転軸周りにそれぞれ回転するため、装置全体としての大型化を余儀なくされる。
【0014】
本発明の目的は、装置全体として大型化することなく、且つ、電気的構成を複雑化することなく、シートの位置調整に係る機能数の制約をより緩和することができるシート駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、単一の回転モータと、複数の位置調整機構に対応して個別に配設された複数の操作部材と、前記複数の位置調整機構に対応して個別に配設され、前記複数の操作部材のいずれかの操作に伴い、該当する前記位置調整機構への出力軸と前記回転モータに回転駆動される入力軸とを選択的に接続する複数のクラッチ機構と、前記複数の操作部材のいずれかの操作に伴い、操作方向に応じた極性で前記回転モータに通電する単一のスイッチとを備えたことを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、前記回転モータや前記スイッチは単一であるため、その電気的構成をより簡易化することができる。また、前記複数のクラッチ機構の各々は、該当する前記位置調整機構への前記出力軸と前記入力軸とを接続する構造(いわゆる軸継手)であるため、前記出力軸等の周りに集約的に配置することができ、装置全体としてより小型化することができる。さらに、前記出力軸の本数分だけシートの位置調整に係る機能数(位置調整機構の個数)を増やすことができるため、該機能数の制約をより緩和することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシート駆動装置において、前記複数の操作部材は、互いに同一の回転軸周りに回動するように軸支されていることを要旨とする。
同構成によれば、前記複数の操作部材は、前記回転軸周りに集約して配置されることで、装置全体としてより小型化することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のシート駆動装置において、前記複数の操作部材は、同一の回転軸周りに回動するように軸支されている前記操作部材を1組とする複数組に分けられていることを要旨とする。
【0019】
同構成によれば、前記複数の操作部材は、複数組に分けられて、これら複数組の操作部材が互いに異なる複数の回転軸周りに回動するように軸支される。従って、前記複数の操作部材の全てを互いに同一の回転軸周りに回動するように軸支した場合に比べて、これら複数の操作部材の相互干渉を抑制することができる。そして、前記操作部材の操作時、該当の前記位置調整機構をより精度よく動作させることができる。また、前記複数の操作部材が複数箇所に分散して軸支されることで、前記操作部材の配置やその操作をよりわかりやすくすることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、前記各クラッチ機構は、該当の前記出力軸が一体回転するように、且つ、軸線方向に移動可能に嵌挿され、前記入力軸側への軸線方向の移動に伴い該入力軸が一体回転するように嵌挿される筒部材を備え、前記入力軸が嵌挿される側に前記各筒部材を軸線方向に付勢する第1付勢部材と、前記各操作部材に駆動連結され、該操作部材が所定の初期位置にあるときに該当の前記筒部材への前記入力軸の嵌挿を外すとともに、前記操作部材の前記初期位置からの操作に伴い前記第1付勢部材に付勢される該当の前記筒部材への前記入力軸の嵌挿を許容するカム部材と、前記各操作部材が前記初期位置に保持されるように前記第1付勢部材の付勢力に抗して該当の前記操作部材を付勢する第2付勢部材とを備えたことを要旨とする。
【0021】
同構成によれば、いずれかの前記操作部材を前記第2付勢部材の付勢力に抗して前記初期位置から操作すると、前記カム部材により前記第1付勢部材に付勢される該当の前記筒部材への前記入力軸の嵌挿が許容される。従って、前記回転モータに回転駆動される前記入力軸の回転が該当の前記筒部材を介して前記出力軸に伝達されて、該当の前記位置調整機構が作動する。このとき、該当の前記出力軸と前記入力軸との接続状態は、前記第1付勢部材によって維持されており、従って前記出力軸等の回転が前記カム部材や前記操作部材へと伝達されることを抑制でき、ひいては前記出力軸等の回転振動が該当の前記操作部材を介してこれを操作する手などに伝わる不快感を解消できる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載のシート駆動装置において、前記スイッチが前記回転モータに通電するように前記スイッチを作動させる単一のスイッチレバーを備え、前記複数の操作部材は、前記回転軸周りの回動に伴い、回動方向に応じた極性で前記スイッチが作動するように前記スイッチレバーを押圧するスイッチカム部をそれぞれ有することを要旨とする。
【0023】
同構成によれば、いずれかの前記操作部材が前記回転軸周りに回動すると、該当の前記スイッチカム部が前記スイッチレバーを押圧することで、前記操作部材の回動方向(操作方向)に応じた極性で前記スイッチが作動する。従って、いずれかの前記操作部材の操作に連動する前記スイッチの作動を極めて簡易な構造で実現することができる。また、前記スイッチカム部は、該当の前記操作部材に一体的に設けられていることで、装置全体としてより小型化することができる。
【0024】
請求項6に記載の発明は、請求項3に記載のシート駆動装置において、前記スイッチが前記回転モータに通電するように前記スイッチを作動させる単一のスイッチレバーと、前記複数の操作部材とは異なる互いに同一の回転軸周りに軸支され、前記複数の操作部材にそれぞれ駆動連結された複数のスイッチカム部材を備え、前記複数のスイッチカム部材は、該当の前記操作部材の前記回転軸周りの回動に伴い、回動方向に応じた極性で前記スイッチが作動するように前記スイッチレバーを押圧するスイッチカム部をそれぞれ有することを要旨とする。
【0025】
同構成によれば、いずれかの前記操作部材が前記回転軸周りに回動すると、該操作部材に駆動連結された該当の前記スイッチカム部材の前記スイッチカム部が前記スイッチレバーを押圧することで、前記操作部材の回動方向(操作方向)に応じた極性で前記スイッチが作動する。従って、前記複数の操作部材が、互いに異なる回転軸周りに回動する複数組に分けられていても、いずれかの前記操作部材の操作に連動する前記スイッチの作動を、該当の前記スイッチカム部材を介することで実現することができる。また、前記複数のスイッチカム部材は、互いに同一の回転軸周りに集約して配置されることで、装置全体としてより小型化することができる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項4に記載のシート駆動装置において、前記各カム部材は、該当の前記筒部材の軸線に対して非平行な回転軸周りに軸支されており、前記各筒部材に形成された外向きフランジと、前記各カム部材に形成され、該当の前記操作部材が前記所定の初期位置にあるときに該当の前記筒部材の前記外向きフランジに近付くとともに、該当の前記操作部材の前記初期位置からの操作に伴い回動して該当の前記筒部材の前記外向きフランジから離隔するカム部と、前記各外向きフランジ及び該当の前記カム部の間で前記筒部材の移動方向に沿う周方向の回動が自在に設けられ、該当の前記操作部材が前記初期位置にあるときに前記カム部に押圧されることで前記筒部材への前記入力軸の嵌挿が外れるように前記外向きフランジを押圧し、該当の前記操作部材の前記初期位置からの操作に伴い該当の前記カム部から解放されることで前記外向きフランジを解放する仲介部材とを備えたことを要旨とする。
【0027】
同構成によれば、いずれかの前記操作部材を前記第2付勢部材の付勢力に抗して前記初期位置から操作すると、前記カム部材の前記カム部による前記仲介部材を介した前記筒部材の前記外向きフランジの押圧が解放される。これにより、前記第1付勢部材に付勢される該当の前記筒部材への前記入力軸の嵌挿が許容される。そして、該当する前記位置調整機構への前記出力軸と前記入力軸とが接続される。一方、該当の前記操作部材の操作を解放すると、前記第2付勢部材に付勢される前記操作部材が前記初期位置へと復帰する。このとき、前記仲介部材は、該当の前記カム部に押圧されることで、前記第1付勢部材の付勢力に抗して前記外向きフランジを押圧する。これにより、前記筒部材への前記入力軸の嵌挿が外れる。この際、前記仲介部材は、前記筒部材の移動方向に沿う周方向の回動を行って前記外向きフランジを押圧するため、例えば前記カム部で直に前記外向きフランジを押圧する場合のような一点での押圧に代えて、複数点での押圧や直線での押圧にすることができ、前記第1付勢部材の付勢力に抗した前記筒部材の移動をより円滑化することができる。
【0028】
請求項8に記載の発明は、請求項4又は7に記載のシート駆動装置において、前記各筒部材及び該当の前記入力軸の互いに対向する両先端面間に介装される緩衝部材を備えたことを要旨とする。
【0029】
同構成によれば、前記各筒部材及び該当の前記入力軸の互いに対向する両先端面間に介装される前記緩衝部材により、前記各筒部材に該当の前記入力軸が嵌挿される際のこれら両先端面の当り音を緩和することができる。
【0030】
請求項9に記載の発明は、請求項5に記載のシート駆動装置において、前記スイッチレバーは、前記複数の操作部材とは異なる第2の回転軸周りに回動するように軸支されており、前記複数の操作部材は、前記回転軸周りの回動に伴い、回動方向に応じて前記スイッチカム部で前記スイッチレバーの先端部を押圧することで、前記スイッチレバーを前記第2の回転軸周りに回動させて前記スイッチを作動させるものであり、前記複数の操作部材の全ての非操作時、これら複数の操作部材の全てにおいて、前記スイッチカム部が前記スイッチレバーの先端部を押圧可能な両押圧部と、前記スイッチレバーの先端部との間に、前記第2の回転軸を中心とする周方向の隙間がそれぞれ形成されていることを要旨とする。
【0031】
同構成によれば、前記複数の操作部材の全ての非操作時、前記スイッチカム部の前記両押圧部と、前記スイッチレバーの先端部との間に前記隙間がそれぞれ形成されていることで、前記複数の操作部材のいずれか一つの操作時には、該当の前記スイッチカム部の一方の前記押圧部が前記隙間分の空走区間を経て前記スイッチレバーの先端部を押圧する。これにより、前記スイッチレバーは、前記第2の回転軸周りに回動する。この場合、前記スイッチレバーの先端部と、非操作である他の前記操作部材(スイッチカム部)の他方の前記押圧部との間に前記隙間が形成されていることで、前記スイッチレバーの先端部が他の前記操作部材の他方の前記押圧部を押圧してこれを一体的に回動させてしまうことを抑制できる。
【0032】
また、前記スイッチレバーの回動時、その先端部は、他の前記操作部材(スイッチカム部)の他方の前記押圧部との間の前記隙間分の空走区間を経て当該押圧部に当接又は近接する。従って、前記スイッチレバーの先端部により、他の前記操作部材(スイッチカム部)の回動を規制することができる。
【0033】
請求項10に記載の発明は、請求項6に記載のシート駆動装置において、前記スイッチレバーは、前記複数の操作部材及び前記複数のスイッチカム部材とは異なる第2の回転軸周りに回動するように軸支されており、前記複数の操作部材は、前記回転軸周りの回動に伴い、回動方向に応じて前記スイッチカム部で前記スイッチレバーの先端部を押圧することで、前記スイッチレバーを前記第2の回転軸周りに回動させて前記スイッチを作動させるものであり、前記複数の操作部材の全ての非操作時、前記複数のスイッチカム部材の全てにおいて、前記スイッチカム部が前記スイッチレバーの先端部を押圧可能な両押圧部と、前記スイッチレバーの先端部との間に、前記第2の回転軸を中心とする周方向の隙間がそれぞれ形成されていることを要旨とする。
【0034】
同構成によれば、前記複数の操作部材の全ての非操作時、前記スイッチカム部の前記両押圧部と、前記スイッチレバーの先端部との間に前記隙間がそれぞれ形成されていることで、前記複数の操作部材のいずれか一つの操作時には、該当の前記スイッチカム部の一方の前記押圧部が前記隙間分の空走区間を経て前記スイッチレバーの先端部を押圧する。これにより、前記スイッチレバーは、前記第2の回転軸周りに回動する。この場合、前記スイッチレバーの先端部と、非操作である他の前記操作部材に対応する前記スイッチカム部材(スイッチカム部)の他方の前記押圧部との間に前記隙間が形成されていることで、前記スイッチレバーの先端部が他の前記スイッチカム部材の他方の前記押圧部を押圧してこれを一体的に回動させてしまうことを抑制できる。
【0035】
また、前記スイッチレバーの回動時、その先端部は、他の前記操作部材に対応する前記スイッチカム部材(スイッチカム部)の他方の前記押圧部との間の前記隙間分の空走区間を経て当該押圧部に当接又は近接する。従って、前記スイッチレバーの先端部により、他の前記スイッチカム部材(スイッチカム部)の回動を規制することができる。
【0036】
請求項11に記載の発明は、請求項6又は10に記載のシート駆動装置において、前記複数の操作部材及び前記複数のスイッチカム部材とは異なる第3の回転軸周りに回動するように軸支され、該第3の回転軸を中心とする径方向に突出する被押圧部及び該被押圧部を挟む前記第3の回転軸を中心とする周方向両側から径方向に突出する一対の規制部を有するストップカムと、前記複数のスイッチカム部材にそれぞれ形成され、回動方向に応じて前記被押圧部を選択的に押圧する一対の係合部とを備え、前記複数の操作部材の全ての非操作時、前記複数のスイッチカム部材の全てにおいて、前記両係合部と前記被押圧部との間に、前記第3の回転軸を中心とする周方向の隙間がそれぞれ形成されており、前記複数の操作部材のいずれか一つの操作時、該当の前記スイッチカム部材の前記係合部に前記被押圧部が押圧されて前記ストップカムが回動する際に、前記規制部が他の前記スイッチカム部材の前記係合部の回動軌跡を遮ることを要旨とする。
【0037】
同構成によれば、前記複数の操作部材の全ての非操作時、前記スイッチカム部材の前記両係合部と、前記ストップカムの前記被押圧部との間に前記隙間がそれぞれ形成されていることで、前記複数の操作部材のいずれか一つの操作時には、該当の前記スイッチカム部材の一方の前記係合部が前記隙間分の空走区間を経て前記ストップカムの前記被押圧部を押圧する。これにより、前記ストップカムが前記第3の回転軸周りに回動することで、一方の前記規制部が他の前記スイッチカム部材の一方の前記係合部の回動軌跡を遮る。従って、前記ストップカムの一方の前記規制部により、他の前記スイッチカム部材の回動を規制することができる。
【0038】
また、前記複数の操作部材の全ての非操作時、前記スイッチカム部材の前記両係合部と、前記ストップカムの前記被押圧部との間に前記隙間がそれぞれ形成されていることで、前記複数の操作部材のいずれか一つの操作時、前記ストップカムの前記被押圧部が非操作である他の前記操作部材に対応する前記スイッチカム部材の他方の前記係合部を押圧してこれを一体的に回動させてしまうことを抑制できる。
【0039】
さらに、前記ストップカムの回動時、前記被押圧部は、他の前記操作部材に対応する前記スイッチカム部材の他方の前記係合部との間の前記隙間分の空走区間を経て当該係合部に当接又は近接する。従って、前記ストップカムの前記被押圧部により、他の前記スイッチカム部材の回動を規制することができる。
【0040】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、シートクッションの側部に取着され、前記複数のクラッチ機構を収容する筐体を備え、前記複数の位置調整機構は、前記シートクッションの側部に取着され、該当の前記出力軸にトルクケーブルを介して駆動される伝達装置をそれぞれ備え、前記筐体は、前記複数の伝達装置に挟まれる前記シートクッションの側部の中央部に配置されていることを要旨とする。
【0041】
同構成によれば、前記シートクッションの側部において、前記筐体が前記複数の伝達装置に挟まれる中央部に配置されていることで、各々までの前記筐体からの距離が概ね均等になって、前記トルクケーブルの長さも概ね均等になる。このため、一部の前記トルクケーブルのみが長くなることによる、当該トルクケーブルの質量増加、摺動音増加による高騒音化、摺動抵抗増加による低効率化を抑制できる。
【0042】
請求項13に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、シートクッションの側部の骨格をなすロアアームに取着され、前記複数のクラッチ機構を収容する筐体を備え、前記複数の位置調整機構は、車両フロアに固定されるロアレール、該ロアレールに前後方向に移動可能に装着されるアッパレール、該当の前記出力軸にトルクケーブルを介して駆動され前記ロアレールに対して前記アッパレールを前後方向に移動させる伝達装置とを備えるスライド機構と、前記アッパレール及び前記ロアアームの前端部にそれぞれ回動自在に連結されるフロントリンク、前記アッパレールの後端部及び前記ロアアームの後端部にそれぞれ回動自在に連結されるリアリンクを備え、前記アッパレールに対して前記ロアアームを昇降させるリフタ機構とを含み、
前記伝達装置は、シート幅方向に延びる軸線周りに前記アッパレールに回動自在に連結されており、前記伝達装置に一方の端部が回動自在に連結され、前記フロントリンク及び前記リアリンクのいずれか一方又は前記ロアアームに他方の端部が回動自在に連結されたリンクを備えたことを要旨とする。
【0043】
同構成によれば、前記スライド機構(伝達装置)により、前記ロアレールに対して前記アッパレールが前後方向に移動されることで、車両フロアに対する前記シートクッション(ロアアーム)の位置が前後方向に調整される。また、リフタ機構により、前記アッパレールに対して前記ロアアームが昇降されることで、前記シートクッション(ロアアーム)の位置が上下方向に調整される。このとき、前記筐体が前記ロアアームと共に昇降することで、これに追従して前記トルクケーブルの姿勢が変化する。しかしながら、前記フロントリンク及び前記リアリンクのいずれか一方又は前記ロアアーム、前記リンク、前記伝達装置、並びに前記アッパレールは、前記リンクを媒介節(連接節)とする4節回転連鎖を構成する。従って、前記シートクッション(ロアアーム)の位置が上下方向に調整されたとしても、前記フロントリンク及び前記リアリンクのいずれか一方の揺動又は前記ロアアームの昇降に追従して前記伝達装置が揺動することで、該伝達装置及び前記筐体間の距離が略一定に保たれて、前記トルクケーブルの長さが過不足になることが抑制される。
【0044】
請求項14に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、シートクッションの側部の骨格をなすロアアームに取着され、前記複数のクラッチ機構を収容する筐体と、前記複数の操作部材を除き、前記筐体を含めて前記シートクッションの側部を覆うサイドカバーとを備え、前記複数の操作部材の少なくとも一つは、シート幅方向に延びる軸線周りに回動するように前記筐体に軸支されてその軸線を中心とする径方向に延在していることを要旨とする。
【0045】
同構成によれば、該当の操作部材を操作する際には、例えば前記サイドカバーのシート幅方向外側面(一般面)に手の平を置いたまま当該操作部材に一本の指を押し当てて、手首を支点に手指を回動させればよい。つまり、当該操作部材の操作のためにこれをつまむ必要のないことから、シート幅方向外側に指が立ったりすることもない。このため、該当の操作部材の操作に必要な空間をより縮小できる。
【0046】
請求項15に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、シートクッションの側部の骨格をなすロアアームのシート幅方向外側面に取着され、前記複数のクラッチ機構を収容する筐体を備え、前記複数の操作部材は、前記筐体のシート幅方向外側面に支持されており、前記筐体は、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜していることを要旨とする。
【0047】
同構成によれば、前記筐体は、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜していることで、例えば前記筐体の姿勢を略垂直にする場合に比べて、前記複数の操作部材のシート幅方向外側への突出長をより短縮できる。そして、例えば前記複数の操作部材等と、それらのシート幅方向外側に対向する車両ドアのドアトリムとの距離を確保することができる。
【0048】
請求項16に記載の発明は、請求項15に記載のシート駆動装置において、前記回転モータは、その軸線がシート幅方向内側に向かうに従い下方に向かうように、前記シートクッションの下方で前記筐体に取着されていることを要旨とする。
【0049】
同構成によれば、前記回転モータは、その軸線がシート幅方向内側に向かうに従い下方に向かうことで、シート幅方向内側に向かうに従い前記シートクッションとの間の高さ方向の隙間に余裕が生まれる。従って、前記シートクッションとその下方(即ち尻下)に配置される前記回転モータとの間の高さ方向の隙間を確保することができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明では、装置全体として大型化することなく、且つ、電気的構成を複雑化することなく、シートの位置調整に係る機能数の制約をより緩和することができるシート駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態が適用される8ウェイパワーシートの斜視図。
【図2】同実施形態を示す側面図。
【図3】同実施形態を示す斜視図。
【図4】同実施形態を示す側面図。
【図5】同実施形態を示す分解斜視図。
【図6】同実施形態を示す分解斜視図。
【図7】(a)(b)は、第1カム部材及び第2カム部材を示す斜視図。
【図8】同実施形態を示す平面図。
【図9】図8のA−A線に沿った断面図。
【図10】図8のB−B線に沿った断面図。
【図11】図8のC−C線に沿った断面図。
【図12】図8のD−D線に沿った断面図。
【図13】スイッチレバー及びその動作を示す拡大図。
【図14】スイッチレバー及びその動作を示す拡大図。
【図15】操作ハンドルの操作態様を説明する側面図。
【図16】操作ハンドルの操作態様を併せて説明する、図2のE−E線に沿った断面図。
【図17】従来例の操作ハンドルの操作態様を説明する側面図。
【図18】従来例の操作ハンドルの操作態様を説明する断面図。
【図19】同実施形態の動作を示す斜視図。
【図20】同実施形態の動作を示す斜視図。
【図21】同実施形態の電気的構成を示す等価回路図。
【図22】本発明の第2の実施形態が適用される8ウェイパワーシートの斜視図。
【図23】同実施形態を示す側面図。
【図24】同実施形態を示す分解斜視図。
【図25】同実施形態を示す分解斜視図。
【図26】(a)(b)は、カム部材を示す斜視図。
【図27】同実施形態を示す平面図。
【図28】図27のA1−A1線に沿った断面図。
【図29】図27のB1−B1線に沿った断面図。
【図30】図27のC1−C1線に沿った断面図。
【図31】同実施形態の動作を示す斜視図。
【図32】同実施形態の動作を示す斜視図。
【図33】同実施形態の動作を示す斜視図。
【図34】本発明の第3の実施形態を示す分解斜視図。
【図35】同実施形態を示す断面図。
【図36】図35の拡大図。
【図37】同実施形態の動作を示す斜視図。
【図38】同実施形態の動作を示す斜視図。
【図39】同実施形態を示す分解斜視図。
【図40】同実施形態を示す断面図。
【図41】(a)(b)は、同実施形態の動作を示す断面図。
【図42】従来形態の電気的構成を示す説明図。
【図43】別の従来形態を示す説明図。
【図44】別の従来形態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0052】
(第1の実施形態)
図1〜図21を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。図1に示すように、車両フロアには、シート幅方向に並設されて前後方向に延在する対のロアレール1が固定されるとともに、該ロアレール1には、アッパレール2が前後方向に移動可能に装着されている。
【0053】
両アッパレール2には、板材からなるブラケット3がそれぞれ立設されている。そして、両ブラケット3には、各々の前部及び後部に配設されたフロントリンク4及びリアリンク5を介して乗員の着座部を形成するシート6が支持されている。このシート6は、座面を形成するシートクッション7と、該シートクッション7の後端部に傾動(回動)自在に支持されたシートバック8と、該シートバック8の上端部に支持されたヘッドレスト9とを備えて構成される。
【0054】
そして、シート6は、両側のロアレール1及びアッパレール2を相対移動させることでその前後位置が調整可能であるとともに、両側のフロントリンク4及びリアリンク5を昇降させることでその上下位置が調整可能である。また、シート6は、シートクッション7の後部に対する前部の傾斜角度が調整可能であるとともに、シートクッション7に対するシートバック8の傾斜角度が調整可能である。これにより、当該シート6の着座者は、例えばその体格に合わせて目線の位置を調整可能である。
【0055】
次に、シート6の位置調整に係る構造について更に説明する。図2に示すように、各側のロアレール1には、前後方向に貫通する雌ねじ部を有するスライド用ナット部材11が固定されており、各側のアッパレール2には、スライド用ナット部材11の雌ねじ部と螺合する雄ねじ部を有して前後方向に延在するスライド用リードスクリュ12が軸支されている。
【0056】
また、各アッパレール2の前端部には、スライド用ギヤボックス13が取着されている。このスライド用ギヤボックス13は、前後方向(リードスクリュ12の軸線方向)及びシート幅方向にそれぞれ軸線が延びる一対のハスバ歯車(図示略)を内蔵している。前後方向に軸線が延びる一方のハスバ歯車は、リードスクリュ12に一体回転するように連結されており、シート幅方向に軸線が延びる他方のハスバ歯車は、当該方向に延びる軸線を有して両側のスライド用ギヤボックス13間に橋渡しされる多角柱状のスライド用連結ロッド14に一体回転するように連結されている。
【0057】
さらに、片側(シート前方に向かって右側)のアッパレール2には、スライド用ギヤボックス13の外側で方向変換ギヤ装置15が並設されている。この方向変換ギヤ装置15は、シート幅方向(スライド用連結ロッド14の軸線方向)及び概ね前後方向にそれぞれ軸線が延びる一対のハスバ歯車15a,15bを内蔵している。一方のハスバ歯車15aは、スライド用連結ロッド14に一体回転するように連結されており、他方のハスバ歯車15bは、方向変換ギヤ装置15の後方に延在するスライド用トルクケーブル16に一体回転するように連結されている。
【0058】
従って、スライド用トルクケーブル16が回転すると、その回転が方向変換ギヤ装置15の入力側であるハスバ歯車15b及び出力側であるハスバ歯車15a間で90°方向変換されてスライド用連結ロッド14に伝達される。そして、スライド用連結ロッド14の回転は、両側のスライド用ギヤボックス13において90°方向変換されて両側のスライド用リードスクリュ12に伝達される。これにより、各側のスライド用リードスクリュ12及びスライド用ナット部材11のねじ作用でスライド用リードスクリュ12の回転運動がスライド用ナット部材11に対するスライド用リードスクリュ12の直線運動に変換されて、ロアレール1に対してアッパレール2が前後方向に移動する。
【0059】
なお、スライド用ギヤボックス13の入力側のハスバ歯車のギヤ径よりも出力側のハスバ歯車のギヤ径の方が大きく設定されており、前記した方向変換時に入力側のハスバ歯車の回転が減速されて出力側のハスバ歯車(及びスライド用リードスクリュ12)に伝達されるようになっている。スライド用ナット部材11、スライド用リードスクリュ12、スライド用ギヤボックス13、スライド用連結ロッド14及び方向変換ギヤ装置15は、ロアレール1及びアッパレール2とともに位置調整機構としてのスライド機構M1を構成する。
【0060】
各側のフロントリンク4は、一方の端部が前記ブラケット3に回動自在に連結されるとともに、他方の端部がシートクッション7側部の骨格をなす板材からなるロアアーム20に回動自在に連結されている。また、各側のリアリンク5は、一方の端部が前記ブラケット3に回動自在に連結されるとともに、他方の端部がロアアーム20に回動自在に連結されている。従って、ブラケット3(アッパレール2)、フロントリンク4、リアリンク5及びロアアーム20は、該ロアアーム20を媒介節(連接節)とする4節回転連鎖を構成する。
【0061】
片側(シート前方に向かって右側)のリアリンク5には、ロアアーム20側の支持軸を中心にその前側に略扇状に広がるセクタギヤ部5aが形成されている。そして、当該側のロアアーム20には、その外側でリフタ用ギヤボックス21が取着されている。このリフタ用ギヤボックス21は、ウォーム21a及びウォームホイール21b(即ちウォームギヤ)からなる減速機構を内蔵するとともに、ウォームホイール21bと同軸でこれと一体回転するリフタ用ピニオン21cを露出する。このリフタ用ピニオン21cは、シート幅方向に延びる軸線を有してリアリンク5のセクタギヤ部5aと噛合する。そして、ウォーム21aは、リフタ用ギヤボックス21の前方に延在するリフタ用トルクケーブル22に一体回転するように連結されている。
【0062】
従って、リフタ用トルクケーブル22が回転すると、その回転がリフタ用ギヤボックス21の入力側であるウォーム21a及び出力側であるウォームホイール21b間で減速されてリフタ用ピニオン21cに伝達される。そして、リフタ用ピニオン21cの回転は、該リフタ用ピニオン21cにセクタギヤ部5aで噛合するリアリンク5に伝達されて、該リアリンク5がロアアーム20側の支持軸を中心に回動する。これにより、4節回転連鎖を構成するフロントリンク4及びリアリンク5が共にブラケット3側の支持軸を中心に回動し、ブラケット3に対してロアアーム20(シート6)が昇降する。フロントリンク4、リアリンク5及びリフタ用ギヤボックス21は、ブラケット3(アッパレール2)及びロアアーム20とともに位置調整機構としてのリフタ機構M2を構成する。
【0063】
なお、図3に併せ示すように、片側(シート前方に向かって右側)のフロントリンク4には、ブラケット3側の支持軸の近傍で、トラベルリンク17の一方の端部が回動自在に連結されている。一方、前記方向変換ギヤ装置15は、該当するアッパレール2の前端部に固定された板材からなるサポートブラケット18に対し、その出力側であるハスバ歯車15a(スライド用連結ロッド14)と同軸で回動自在に連結されている。そして、トラベルリンク17の他方の端部は、ハスバ歯車15bの近傍で方向変換ギヤ装置15に回動自在に連結されている。
【0064】
従って、図4に示すように、フロントリンク4、トラベルリンク17、方向変換ギヤ装置15、並びに実質的に一体化されたアッパレール2、ブラケット3及びサポートブラケット18は、トラベルリンク17を媒介節(連接節)とする4節回転連鎖を構成する。これは、リフタ機構M2の作動に伴うフロントリンク4の揺動に追従して方向変換ギヤ装置15を揺動させ、該方向変換ギヤ装置15に接続されるスライド用トルクケーブル16の長さが過不足になることを解消するためである。
【0065】
図2に示すように、各側のロアアーム20には、その前後方向中間部において、シートクッション7の側部前部の骨格をなす板材からなるチルトアーム25の後端部が回動自在に連結されている。各チルトアーム25の前端部は、フロントリンク4のロアアーム20側の支持軸と同軸で該ロアアーム20に回動自在に連結されたチルトリンク26に回動自在に連結されている。
【0066】
片側(シート前方に向かって右側)のチルトリンク26には、ロアアーム20側の支持軸を中心にその前側に略扇状に広がるセクタギヤ部26aが形成されている。そして、当該側のロアアーム20には、その外側でチルト用ギヤボックス27が取着されている。このチルト用ギヤボックス27は、ウォーム27a及びウォームホイール27b(即ちウォームギヤ)からなる減速機構を内蔵するとともに、ウォームホイール27bと同軸でこれと一体回転するチルト用ピニオン27cを露出する。このチルト用ピニオン27cは、シート幅方向に延びる軸線を有してチルトリンク26のセクタギヤ部26aと噛合する。そして、ウォーム27aは、チルト用ギヤボックス27の後方に延在するチルト用トルクケーブル28に一体回転するように連結されている。
【0067】
従って、チルト用トルクケーブル28が回転すると、その回転がチルト用ギヤボックス27の入力側であるウォーム27a及び出力側であるウォームホイール27b間で減速されてチルト用ピニオン27cに伝達される。そして、チルト用ピニオン27cの回転は、該チルト用ピニオン27cにセクタギヤ部26aで噛合するチルトリンク26に伝達されて、該チルトリンク26がロアアーム20側の支持軸を中心に回動する。
【0068】
これにより、チルトリンク26に連結されたチルトアーム25がその前端部を昇降するように後端部を中心に回動し、ロアアーム20に対してチルトアーム25の前端部(シート6の前端部)が昇降する。そして、ロアアーム20に対するチルトアーム25(シート6の後部に対する前部)の傾斜角度が増減する。なお、チルトリンク26のチルトアーム25側の支持軸は、チルトリンク26の回動に伴うチルトアーム25の回動を共用するためにチルトリンク26に対して一定範囲内の移動が許容されている。チルトリンク26及びチルト用ギヤボックス27は、ロアアーム20及びチルトアーム25とともに位置調整機構としてのチルト機構M3を構成する。
【0069】
各側のロアアーム20後端部には、板材からなるリクライナプレート31が固定されるとともに、該リクライナプレート31には、略円盤状のリクライナ32を介してシートバック8の下端部が連結されている。このリクライナ32は、周知のハイポサイクロイド減速機を構成するものである。すなわち、リクライナ32は、内歯歯車を有してリクライナプレート31に固定される第1ディスクと、内歯歯車の歯数よりも少ない歯数でこれに噛合する外歯歯車を有する第2ディスクと、内歯歯車及び外歯歯車を噛合すべくこれらの偏心状態を保つ楔部材と、第1ディスク(内歯歯車)と同軸に配置されて第2ディスクが軸支され楔部材を移動させるカム軸等とを備えて構成される。そして、リクライナ32は、第2ディスクにおいてシートバック8に固定されている。リクライナ32は、カム軸の回転に伴う楔部材の移動により、内歯歯車及び外歯歯車の噛合状態を保ったまま第2ディスクを公転させることで、この公転時における第2ディスクの自転数としてカム軸の回転を減速する。そして、第1ディスクに対する第2ディスクの回転により、シートクッション7に対してシートバック8が回動(傾動)する。
【0070】
片側(シート前方に向かって右側)のリクライナプレート31には、その外側でリクライナ用ギヤボックス33が取着されている。このリクライナ用ギヤボックス33は、ウォーム33a及びウォームホイール33b(ウォームギヤ)からなる減速機構を内蔵する。ウォームホイール33bは、シート幅方向に延びる軸線を有して両側のリクライナ32間に橋渡しされる多角柱状のリクライナ用連結ロッド34に一体回転するように連結されている。このリクライナ用連結ロッド34は、両側のリクライナ32を貫通してそれらのカム軸に一体回転するように連結されている。一方、ウォーム33aは、リクライナ用ギヤボックス33の前方に延在するリクライナ用トルクケーブル35に一体回転するように連結されている。
【0071】
従って、リクライナ用トルクケーブル35が回転すると、その回転がリクライナ用ギヤボックス33の入力側であるウォーム33a及び出力側であるウォームホイール33b間で減速されてリクライナ用連結ロッド34に伝達される。そして、リクライナ用連結ロッド34の回転は、リクライナ32のカム軸に伝達される。これにより、前述の態様でリクライナ32の第1ディスクに対して第2ディスクが回転し、シートクッション7に対してシートバック8が回動(傾動)する。リクライナ32、リクライナ用ギヤボックス33及びリクライナ用連結ロッド34は、リクライナプレート31(ロアアーム20)及びシートバック8とともに位置調整機構としてのリクライナ機構M4を構成する。
【0072】
つまり、本実施形態は、スライド機構M1、リフタ機構M2、チルト機構M3及びリクライナ機構M4の各々における正方向及び逆方向のシート位置の調整が可能な、いわゆる8ウェイパワーシートとなっている。
【0073】
片側(シート前方に向かって右側)のロアアーム20のリフタ用ギヤボックス21及びチルト用ギヤボックス27間に挟まれる前後方向中間部には、駆動装置40が取着されている。
【0074】
すなわち、図5に示すように、ロアアーム20の前後方向中間部には、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜する傾斜部20aが形成されており、該傾斜部20aにおいて駆動装置40が締結されている。この駆動装置40は、例えばブラシモータからなる回転モータ36の概ねシート幅方向(傾斜部20aに略直交する方向)に軸線の延びる回転軸36aに、該回転軸36aと同軸の入力用トルクケーブル(鉄線を撚ったもの)37を介して駆動連結されている。この入力用トルクケーブル37は、回転モータ36の回転軸36aに一体回転するように挿入されている。
【0075】
詳述すると、図6に示すように、駆動装置40は、回転軸36aの軸線方向に2分された一対の本体ケース41,42、本体ケース42を外側及び下側からそれぞれ覆うカバー43及びスイッチカバー44にてその筐体をなしている。本体ケース41,42は、これらの四隅を回転軸36aの軸線方向と平行に貫通する4本のスクリュ45にて締結されている。
【0076】
なお、駆動装置40は、本体ケース41,42においてロアアーム20の傾斜部20aに締結されている。従って、本体ケース41,42の姿勢は、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜している。また、回転軸36a(回転モータ36)の軸線は、シート幅方向内側に向かうに従い下方に向かうように傾斜している。
【0077】
本体ケース42には、図10及び図11に併せ示すように、前後方向(図示左右方向)並設された一対の軸受部42a,42bが回転軸36aの軸線方向と平行に外向きに突設されている。軸受部42aは、基端側に配置されたリフタ用軸受部46L及び該リフタ用軸受部46Lよりも縮径されたリクライナ用軸受部46Rを有して段付き円柱状を呈しており、軸受部42bは、基端側に配置されたチルト用軸受部46T及び該チルト用軸受部46Tよりも縮径されたスライド用軸受部46Sを有して段付き円柱状を呈している。
【0078】
さらに、本体ケース42には、軸受部42aと同心でその上側及び下側に略円弧柱状のガイド部42c,42dが突設されるとともに、軸受部42bと同心でその上側及び下側に略円弧柱状のガイド部42e,42fが突設されている。本体ケース42及びカバー43は、該カバー43の上側部を回転軸36aの軸線方向(即ち傾斜部20aに略直交する方向)と平行に貫通する4本のスクリュ47が両軸受部42a,42b及び両ガイド部42d,42fにそれぞれ締め付けられることで締結されている。
【0079】
また、本体ケース42の下側に配置されるスイッチカバー44には、図6に示すように、その上端の前後方向両端からシート幅方向外側に一対の柱状の支持部44a,44bが突設されている。カバー43及びスイッチカバー44は、カバー43の下側部を<回転軸36aの軸線方向と平行に>貫通する2本のスクリュ48が両支持部44a,44bにそれぞれ締め付けられることで締結されている。
【0080】
なお、本体ケース42に締結されるカバー43の上側部は、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜しており、カバー43の下側部は、略垂直に起立している。従って、カバー43の下側部に締結されるスイッチカバー44の姿勢は略水平になっている。
【0081】
ここで、回転モータ36側の本体ケース41には、図12に示すように、入力用トルクケーブル37(回転軸36a)と同心で該入力用トルクケーブル37側に略円筒状の保持部41aが突設されている。この保持部41a内には、円環状の軸受BE1が嵌着されるとともに、有底略円筒状のプラグPLがねじ込まれている。そして、軸受BE1の中心部には、プラグPLに挿通された入力用トルクケーブル37が配置されており、軸受BE1には、入力用トルクケーブル37と同軸に配置されたウォーム38の基端部が軸支されている。ウォーム38は、その基端部に形成された四角穴に入力用トルクケーブル37が嵌合することでこれに一体回転するように連結されている。このウォーム38の先端部は、回転モータ36から離隔する側の本体ケース42に、円筒状の軸受BE2を介して軸支されている。
【0082】
なお、本体ケース42には、ウォーム38(回転軸36a)と同心で該ウォーム38から離隔する側にスイッチ用軸受部49が突設されている。このスイッチ用軸受部49は、基端側から先端側に向かって段階的に縮径された軸受部49L,49T,49R,49S及び支持部49aを有して段付き円柱形状を呈しており、該支持部49aにおいてカバー43の上側部に嵌挿・支持されている。図10及び図11に併せ示すように、スイッチ用軸受部49の中心は、両軸受部42a,42b間の中心に配置されている。
【0083】
図6に示すように、本体ケース41,42には、ウォーム38の上側及び下側で前後方向に軸線の延びる一対の入力軸としてのウォームホイール51,52が配設されている。
つまり、回転モータ36と、該回転モータ36(回転軸36a)にウォーム38を介して連結されるウォームホイール51,52は、いわゆるT型構成となっている。
【0084】
ウォームホイール51,52は、ウォーム38に対して互いに異なるねじれの位置でこれに噛合しており、互いに同等の1以上の減速比に設定されている。すなわち、図7に併せ示すように、一方のウォームホイール51は、ウォーム38の上側でこれに噛合するギヤ部51aを有するとともに、該ギヤ部51aの後側及び前側に突設されて本体ケース41,42にワッシャWAを介して軸支される一対の軸部51b,51cを有する。そして、ウォームホイール51は、軸部51bの更に後側及び軸部51cの更に前側にそれぞれ突設された嵌合部53L,53Tを有する。
【0085】
同様に、他方のウォームホイール52は、ウォーム38の下側でこれに噛合するギヤ部52aを有するとともに、該ギヤ部52aの後側及び前側に突設されて本体ケース41,42にワッシャWAを介して軸支される一対の軸部52b,52cを有する。そして、ウォームホイール52は、軸部52bの更に後側及び軸部52cの更に前側にそれぞれ突設された嵌合部53R,53Sを有する。これら嵌合部53L,53T,53R,53Sの外形は、円柱形状と該円柱形状の互いに相反する径方向に延出する一対の円弧柱形状とが組み合わされてなる略2枚羽根形状を呈している。
【0086】
また、本体ケース41,42には、ウォームホイール51の後側及び前側で該ウォームホイール51と同軸に、出力軸としてのリフタ用シャフト54L及びチルト用シャフト54Tが互いに対称となる姿勢でそれぞれ軸支されている。リフタ用シャフト54Lは、その先端部に形成された四角穴に前記リフタ用トルクケーブル22が嵌入することでこれに一体回転するように連結されており、チルト用シャフト54Tは、その先端部に形成された四角穴に前記チルト用トルクケーブル28が嵌入することでこれに一体回転するように連結されている。
【0087】
さらに、本体ケース41,42には、ウォームホイール52の後側及び前側で該ウォームホイール52と同軸に、出力軸としてのリクライナ用シャフト54R及びスライド用シャフト54Sが互いに対称となる姿勢でそれぞれ軸支されている。リクライナ用シャフト54Rは、その先端部に形成された四角穴に前記リクライナ用トルクケーブル35が嵌入することでこれに一体回転するように連結されており、スライド用シャフト54Sは、その先端部に形成された四角穴に前記スライド用トルクケーブル16が嵌入することでこれに一体回転するように連結されている。
【0088】
なお、これらリフタ用シャフト54L、チルト用シャフト54T、リクライナ用シャフト54R及びスライド用シャフト54Sは、それらの配置態様等を除けば互いに同一形状を有しているため、以下ではリフタ用シャフト54Lを代表してその周辺構造を説明する。
【0089】
リフタ用シャフト54Lは、略円柱形状を呈しており、本体ケース41,42の軸受部からウォームホイール51に対向する側に延伸する先端部は、互いに相反する径方向に一対の扇形状が突設されて、前記嵌合部53Lの外形と略同一形状を呈する出力軸側嵌合部54aを形成する。
【0090】
ウォームホイール51の嵌合部53L及びリフタ用シャフト54L間には、筒部材55が介設されている。筒部材55は、筒部55aと、該筒部55aのリフタ用シャフト54Lに対向する先端から径方向外側に突設されたフランジ状の押圧片55bとを有する。そして、筒部材55には、リフタ用シャフト54Lと一体回転するように、且つ、該リフタ用シャフト54Lに対して軸線方向に移動可能に出力軸側嵌合部54aに嵌合する嵌合孔55cが形成されている。筒部材55は、軸線方向にウォームホイール51側に移動することで、該ウォームホイール51と一体回転するようにその嵌合孔55cを嵌合部53Lに嵌合可能である。
【0091】
つまり、ウォームホイール51の回転は、筒部材55の移動に伴い嵌合部53L及び嵌合孔55cが嵌合することで筒部材55を介してリフタ用シャフト54Lに伝達可能であり、嵌合部53L及び嵌合孔55cの嵌合が外れることで筒部材55を介したリフタ用シャフト54Lへの伝達が不能になる。ウォームホイール51の嵌合部53L、リフタ用シャフト54Lの出力軸側嵌合部54a及び筒部材55は、ウォームホイール51及びリフタ用シャフト54Lを選択的に接続するクラッチ機構を構成する。
【0092】
リフタ用シャフト54Lの回転は、前記リフタ用トルクケーブル22を介してリフタ用ギヤボックス21に伝達されることで、前述の態様でリフタ機構M2が作動する。なお、図9に示すように、リフタ用シャフト54Lは、その軸線方向中間部の外周部にEリング56が嵌着されるとともに、筒部材55の押圧片55bに当接する円環状のワッシャ57に挿通され、更に本体ケース41,42及びEリング56間に介装された円環状のワッシャ58に挿通されている。
【0093】
また、リフタ用シャフト54Lは、Eリング56及びワッシャ57間でコイルばねからなる第1付勢部材としての圧縮ばね59に挿通されている。そして、筒部材55は、圧縮ばね59によりその嵌合孔55cがウォームホイール51の嵌合部53Lに嵌合する側、即ちウォームホイール51の回転をリフタ用シャフト54Lに伝達可能な側に常時付勢されている。換言すれば、ウォームホイール51の回転がリフタ用シャフト54Lに伝達不能な状態では、圧縮ばね59の付勢力に抗して嵌合部53L及び嵌合孔55cの嵌合が外れる側に筒部材55が移動していることになる。
【0094】
ウォームホイール51及びチルト用シャフト54T間、ウォームホイール52及びリクライナ用シャフト54R間並びにウォームホイール52及びスライド用シャフト54S間にも、それらを選択的に接続する同様のクラッチ機構が構成されている。つまり、本体ケース41,42内には、8ウェイパワーシートの4つの出力軸(リフタ用シャフト54L、チルト用シャフト54T、リクライナ用シャフト54R及びスライド用シャフト54S)に対応する4系統のクラッチ機構の全てが収納されている。また、回転モータ36に入力用トルクケーブル37を介して駆動されるウォーム38及びウォームホイール51,52は、4つの筒部材55を介していずれかの出力軸(リフタ用シャフト54L、チルト用シャフト54T、リクライナ用シャフト54R又はスライド用シャフト54S)に回転伝達する動力伝達機構を構成する。従って、この動力伝達機構も本体ケース41,42内に収納されている。
【0095】
図6に示すように、本体ケース42には、軸受部42a及びスイッチ用軸受部49間の上側及び下側に一対の略円形の軸受孔42g,42hが形成されている。また、軸受部42b及びスイッチ用軸受部49間の上側及び下側にも同様の軸受孔42g,42hが形成されている。そして、上側の両軸受孔42gには、一対のカム部材としての第1カム部材61がそれぞれ軸支されており、下側の両軸受孔42hには、一対のカム部材としての第2カム部材62がそれぞれ軸支されている。
【0096】
図7(a)に併せ示すように、第1カム部材61は、軸受孔42gに軸支される略円柱状の大径軸部61aを有するとともに、軸受孔42gから本体ケース42内に突出する略卵形状のカム部61bを有し、更に軸受孔42gから本体ケース42の外側に突出して軸受孔42gの外側周縁部に摺接するフランジ部61cを有する。また、第1カム部材61は、フランジ部61cに隣接して本体ケース42の外側に配置されたギヤ部61dを有するとともに、該ギヤ部61dに隣接して本体ケース42の更に外側に配置された円柱部61eを有し、更に該円柱部61eよりも縮径されてカバー43に軸支される略円柱状の小径軸部61fを有する。
【0097】
図19に示すように、リフタ用シャフト54L側の第1カム部材61は、カム部61bにおいて筒部材55の筒部55aの外周面に当接又は近接して押圧片55bに当接可能に配置されている。そして、カム部61bの長手方向が筒部材55等の軸線方向に一致する回転位置、即ちウォームホイール51から筒部材55を最も離隔させる回転位置(以下、第1カム部材61の「中立位置」ともいう)にあるときに、圧縮ばね59の付勢力に抗してウォームホイール51の嵌合部53Lから筒部材55の嵌合孔55cを外す。
【0098】
また、図20に示すように、第1カム部材61は、回動に伴いカム部61bの長手方向が筒部材55等の軸線方向から外れると、圧縮ばね59に付勢される筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール51の嵌合部53Lに嵌合するように筒部材55の移動を許容する。一方、第1カム部材61は、回動に伴いカム部61bで筒部材55の押圧片55bを圧縮ばね59の付勢力に抗して押圧しつつ、該カム部61bの長手方向が筒部材55等の軸線方向に再び一致するように筒部材55を移動させると、ウォームホイール51の嵌合部53Lから筒部材55の嵌合孔55cを外す。なお、チルト用シャフト54T側の第1カム部材61の動作も同様である。
【0099】
一方、図7(b)に併せ示すように、第2カム部材62は、軸受孔42hに軸支される略円柱状の大径軸部62aを有するとともに、軸受孔42hから本体ケース42内に突出する略卵形状のカム部62bを有し、更に軸受孔42hから本体ケース42の外側に突出して軸受孔42hの外側周縁部に摺接するフランジ部62cを有する。また、第2カム部材62は、フランジ部62cに隣接して本体ケース42の外側に配置された円柱部62dを有するとともに、該円柱部62dに隣接して本体ケース42の更に外側に配置されたギヤ部62eを有し、更に円柱部62dよりも縮径されてカバー43に軸支される略円柱状の小径軸部62fを有する。つまり、第1及び第2カム部材61,62は、それらのギヤ部61d,62e及び円柱部61e,62dが軸線方向で互い違いになるように配置されていることを除いて互いに同一形状を有している。
【0100】
そして、リクライナ用シャフト54R側の第2カム部材62は、カム部62bにおいて筒部材55の筒部55aの外周面に当接又は近接して押圧片55bに当接可能に配置されている。そして、カム部62bの長手方向が筒部材55等の軸線方向に一致する回転位置、即ちウォームホイール52から筒部材55を最も離隔させる回転位置(以下、第2カム部材62の「中立位置」ともいう)にあるときに、圧縮ばね59の付勢力に抗してウォームホイール52の嵌合部53Rから筒部材55の嵌合孔55cを外す。
【0101】
また、第2カム部材62は、回動に伴いカム部62bの長手方向が筒部材55等の軸線方向から外れると、圧縮ばね59に付勢される筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール52の嵌合部53Rに嵌合するように筒部材55の移動を許容する。一方、第2カム部材62は、回動に伴いカム部62bで筒部材55の押圧片55bを圧縮ばね59の付勢力に抗して押圧しつつ、該カム部62bの長手方向が筒部材55等の軸線方向に再び一致するように筒部材55を移動させると、ウォームホイール52の嵌合部53Rから筒部材55の嵌合孔55cを外す。なお、スライド用シャフト54S側の第2カム部材62の動作も同様である。
【0102】
図10に示すように、前記軸受部42aのリフタ用軸受部46Lには、ガイド部42c,42dの内周面に摺接する態様で操作部材としてのリフタ用操作ハンドル63Lが軸支されている。このリフタ用操作ハンドル63Lは、第1カム部材61のギヤ部61dに噛合するとともに第2カム部材62の円柱部62dの位置を空走するギヤ部64Lを有する。従って、例えばリフタ用操作ハンドル63Lを回動操作すると、ギヤ部64L,61d間の回転伝達によって第1カム部材61(カム部61b)が回動する。これにより、筒部材55が前述の態様で軸線方向に移動する。
【0103】
なお、リフタ用操作ハンドル63Lの回動軸周りには、第2付勢部材としての捩りばね65が巻回されている。このばね65の両端のフック部65aの根元部はリフタ用操作ハンドル63Lのストッパ部に接触して回転止めされ、フック部66aの先端部はガイド部42c,42dにて位置決めされる。リフタ用操作ハンドル63Lは、捩りばね65に付勢されることで、リフタ用軸受部46Lの後方に延在する所定の初期位置に保持されている。このとき、リフタ用操作ハンドル63Lと一体回動する第1カム部材61は、前記中立位置に配置されるように設定されている。そして、リフタ用操作ハンドル63Lを初期位置に保持する捩りばね65の付勢力は、筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール51の嵌合部53Lに嵌合するように筒部材55を移動させる圧縮ばね59の付勢力よりも大きく設定されている。
【0104】
従って、通常は、リフタ用操作ハンドル63Lは初期位置に保持されており、これに伴って第1カム部材61は中立位置に配置されている。つまり、通常は、筒部材55を介したウォームホイール51及びリフタ用シャフト54L間の回転伝達が不能な状態に保持されている。そして、捩りばね65の付勢力に抗してリフタ用操作ハンドル63Lを回動操作すると、これに伴う第1カム部材61の回動によって該第1カム部材61が中立位置から外れ、圧縮ばね59の付勢力によって筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール51の嵌合部53Lに嵌合するように筒部材55が移動する。これにより、ウォームホイール51の回転が筒部材55を介してリフタ用シャフト54Lに伝達可能となる。
【0105】
一方、前記軸受部42bのチルト用軸受部46Tには、ガイド部42e,42fの内周面に摺接する態様で操作部材としてのチルト用操作ハンドル63Tが軸支されている。このリフタ用操作ハンドル63Tは、第1カム部材61のギヤ部61dに噛合するとともに第2カム部材62の円柱部62dの位置を空走するギヤ部64Tを有する。このチルト用操作ハンドル63Tの動作は、リフタ用操作ハンドル63Lの動作と同様である。すなわち、通常は、筒部材55を介したウォームホイール51及びチルト用シャフト54T間の回転伝達が不能な状態に保持されている。そして、捩りばね65の付勢力に抗してチルト用操作ハンドル63Tを回動操作すると、これに伴う第1カム部材61の回動によって該第1カム部材61が中立位置から外れ、圧縮ばね59の付勢力によって筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール51の嵌合部53Tに嵌合するように筒部材55が移動する。これにより、ウォームホイール51の回転が筒部材55を介してチルト用シャフト54Tに伝達可能となる。
【0106】
つまり、本実施形態では、リフタ用操作ハンドル63L及びチルト用操作ハンドル63Tは、駆動装置40の前後方向中心に対して左右対称に配置されている。
図11に示すように、前記軸受部42aのリクライナ用軸受部46Rには、ガイド部42c,42dの内周面に摺接する態様で操作部材としてのリクライナ用操作ハンドル63Rが軸支されている。このリクライナ用操作ハンドル63Rは、第2カム部材62のギヤ部62eに噛合するとともに第1カム部材61の円柱部61eの位置を空走するギヤ部64Rを有する。従って、例えばリクライナ用操作ハンドル63Rを回動操作すると、ギヤ部64R,62e間の回転伝達によって第2カム部材62(カム部62b)が回動する。これにより、筒部材55が前述の態様で軸線方向に移動する。
【0107】
なお、リクライナ用操作ハンドル63Rの回動軸周りには、第2付勢部材としての捩りばね66が巻回されている。このばね66の両端のフック部66aの根元部はリクライナ用操作ハンドル63Rのストッパ部に接触して回転止めされ、フック部66aの先端部はガイド部42c,42dにて位置決めされる。リクライナ用操作ハンドル63Rは、捩りばね66に付勢されることで、リクライナ用軸受部46Rの上方に延在する所定の初期位置に保持されている。このとき、リクライナ用操作ハンドル63Rと一体回動する第2カム部材62は、前記中立位置に配置されるように設定されている。そして、リクライナ用操作ハンドル63Rを初期位置に保持する捩りばね66の付勢力は、筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール52の嵌合部53Rに嵌合するように筒部材55を移動させる圧縮ばね59の付勢力よりも大きく設定されている。
【0108】
従って、通常は、リクライナ用操作ハンドル63Rは初期位置に保持されており、これに伴って第2カム部材62は中立位置に配置されている。つまり、通常は、筒部材55を介したウォームホイール52及びリクライナ用シャフト54R間の回転伝達が不能な状態に保持されている。そして、捩りばね66の付勢力に抗してリクライナ用操作ハンドル63Rを回動操作すると、これに伴う第2カム部材62の回動によって該第2カム部材62が中立位置から外れ、圧縮ばね59の付勢力によって筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール52の嵌合部53Rに嵌合するように筒部材55が移動する。これにより、ウォームホイール52の回転が筒部材55を介してリクライナ用シャフト54Rに伝達可能となる。
【0109】
なお、リフタ用操作ハンドル63L及びリクライナ用操作ハンドル63Rは、共通の軸受部42aに軸支されている。すなわち、リフタ用操作ハンドル63L及びリクライナ用操作ハンドル63Rは、互いに同一の回転軸周りに回動するように軸支される1組をなしている。しかしながら、既述のようにリフタ用操作ハンドル63Lのギヤ部64L及びこれに噛合する第1カム部材61のギヤ部61dと、リクライナ用操作ハンドル63Rのギヤ部64R及びこれに噛合する第2カム部材62のギヤ部62eとは、軸受部42aの軸線方向で互いに異なる位置に配設されている。従って、リフタ用操作ハンドル63L及びリクライナ用操作ハンドル63Rのいずれか一方の回動操作によって、いずれか他方に対応する第1カム部材61又は第2カム部材62が回動することはない。
【0110】
一方、前記軸受部42bのスライド用軸受部46Sには、ガイド部42e,42fの内周面に摺接する態様で操作部材としてのスライド用操作ハンドル63Sが軸支されている。このスライド用操作ハンドル63Sは、第2カム部材62のギヤ部62eに噛合するとともに第1カム部材61の円柱部61eの位置を空走するギヤ部64Sを有する。このスライド用操作ハンドル63Sの動作は、リクライナ用操作ハンドル63Rの動作と同様である。すなわち、通常は、筒部材55を介したウォームホイール52及びスライド用シャフト54S間の回転伝達が不能な状態に保持されている。そして、捩りばね66の付勢力に抗してスライド用操作ハンドル63Sを回動操作すると、これに伴う第2カム部材62の回動によって該第2カム部材62が中立位置から外れ、圧縮ばね59の付勢力によって筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール52の嵌合部53Sに嵌合するように筒部材55が移動する。これにより、ウォームホイール52の回転が筒部材55を介してスライド用シャフト54Sに伝達可能となる。
【0111】
つまり、本実施形態では、リクライナ用操作ハンドル63R及びスライド用操作ハンドル63Sは、駆動装置40の前後方向中心に対して左右対称に配置されている。
なお、チルト用操作ハンドル63T及びスライド用操作ハンドル63Sは、共通の軸受部42bに軸支されている。すなわち、リクライナ用操作ハンドル63R及びスライド用操作ハンドル63Sは、互いに同一の回転軸周りに回動するように軸支される1組をなしている。しかしながら、既述のようにチルト用操作ハンドル63Tのギヤ部64T及びこれに噛合する第1カム部材61のギヤ部61dと、スライド用操作ハンドル63Sのギヤ部64S及びこれに噛合する第2カム部材62のギヤ部62eとは、軸受部42bの軸線方向で互いに異なる位置に配設されている。従って、チルト用操作ハンドル63T及びスライド用操作ハンドル63Sのいずれか一方の回動操作によって、いずれか他方に対応する第1カム部材61又は第2カム部材62が回動することはない。
【0112】
図12に示すように、スイッチ用軸受部49の軸受部49Lには、略円環状のスイッチカム部材としてのリフタ用スイッチカム部材71Lが軸支されている。図6に示すように、このリフタ用スイッチカム部材71Lは、リフタ用操作ハンドル63Lのギヤ部64Lに対向する側の外周部に形成されてこれに噛合するギヤ部72Lを有するとともに、チルト用操作ハンドル63Tのギヤ部64Tに対向する側の外周部に形成されてこれを空走する円弧部73Lを有する。また、リフタ用スイッチカム部材71Lは、ギヤ部72L及び円弧部73L間に挟まれる外周部の下側を径方向内側に切り欠いてなるスイッチカム部74Lを有する。従って、例えばリフタ用操作ハンドル63Lを回動操作すると、リフタ用スイッチカム部材71L(スイッチカム部74L)は、円弧部73Lにおいてチルト用操作ハンドル63Tのギヤ部64Tを空走しつつ、ギヤ部64L,72L間の回転伝達によって回動する。
【0113】
図12に示すように、スイッチ用軸受部49の軸受部49Tには、略円環状のスイッチカム部材としてのチルト用スイッチカム部材71Tが軸支されている。図10に示すように、このチルト用スイッチカム部材71Tは、チルト用操作ハンドル63Tのギヤ部64Tに対向する側の外周部に形成されてこれに噛合するギヤ部72Tを有するとともに、リフタ用操作ハンドル63Lのギヤ部64Lに対向する側の外周部に形成されてこれを空走する円弧部73Tを有する。また、チルト用スイッチカム部材71Tは、ギヤ部72T及び円弧部73T間に挟まれる外周部の下側を径方向内側に切り欠いてなるスイッチカム部74Tを有する。従って、例えばチルト用操作ハンドル63Tを回動操作すると、チルト用スイッチカム部材71T(スイッチカム部74T)は、円弧部73Tにおいてリフタ用操作ハンドル63Lのギヤ部64Lを空走しつつ、ギヤ部64T,72T間の回転伝達によって回動する。
【0114】
図12に示すように、スイッチ用軸受部49の軸受部49Rには、略円環状のスイッチカム部材としてのリクライナ用スイッチカム部材71Rが軸支されている。図6に示すように、このリクライナ用スイッチカム部材71Rは、リクライナ用操作ハンドル63Rのギヤ部64Rに対向する側の外周部に形成されてこれに噛合するギヤ部72Rを有するとともに、スライド用操作ハンドル63Sのギヤ部64Sに対向する側の外周部に形成されてこれを空走する円弧部73Rを有する。また、リクライナ用スイッチカム部材71Rは、ギヤ部72R及び円弧部73R間に挟まれる外周部の下側を径方向内側に切り欠いてなるスイッチカム部74Rを有する。従って、例えばリクライナ用操作ハンドル63Rを回動操作すると、リクライナ用スイッチカム部材71R(スイッチカム部74R)は、円弧部73Rにおいてスライド用操作ハンドル63Sのギヤ部64Sを空走しつつ、ギヤ部64R,72R間の回転伝達によって回動する。
【0115】
図12に示すように、スイッチ用軸受部49の軸受部49Sには、略円環状のスイッチカム部材としてのスライド用スイッチカム部材71Sが軸支されている。図11に示すように、このスライド用スイッチカム部材71Sは、スライド用操作ハンドル63Sのギヤ部64Sに対向する側の外周部に形成されてこれに噛合するギヤ部72Sを有するとともに、リクライナ用操作ハンドル63Rのギヤ部64Rに対向する側の外周部に形成されてこれを空走する円弧部73Sを有する。また、スライド用スイッチカム部材71Sは、ギヤ部72S及び円弧部73S間に挟まれる外周部の下側を径方向内側に切り欠いてなるスイッチカム部74Sを有する。従って、例えばスライド用操作ハンドル63Sを回動操作すると、スライド用スイッチカム部材71S(スイッチカム部74S)は、円弧部73Sにおいてリクライナ用操作ハンドル63Rのギヤ部64Rを空走しつつ、ギヤ部64S,72S間の回転伝達によって回動する。
【0116】
図12に示すように、カバー43には、スイッチ用軸受部49の下側でその軸線と平行に延びる軸線を有する軸43aが突設されている。この軸43aには、図10及び図11に示すように、スイッチカム部74L,74T,74R,74Sの下側に配置された略逆T字形状のスイッチレバー76がその中央部において軸支されている。このスイッチレバー76の先端部は、スイッチカム部74L,74T,74R,74Sの下向きに延出する両端部(押圧部)74a,74bのスイッチ用軸受部49周りの回動軌跡を遮るように配置されている。従って、いずれかの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの回動操作に伴い該当のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sが回動すると、スイッチレバー76は、その先端部がスイッチカム部74L,74T,74R,74S(端部74a,74b)に押圧されることで、当該操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作方向に応じた方向に回動する。
【0117】
なお、全ての操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが操作されておらず、該当の所定の初期位置に配置されているとする。このとき、図13に拡大して示すように、スイッチレバー76の先端部は、全てのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの両端部74a,74b間に挟まれる中央部に配置されており、これら端部74a,74bとの間にそれぞれ隙間Cを形成する。従って、いずれか一つの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sを回動操作した際、該当のスイッチカム部材71L,71T,71R,71S(スイッチカム部74L,74T,74R,74S)は、隙間C分の空走区間を経て該当の端部74a,74bでスイッチレバー76の先端部を押圧し始める。
【0118】
ここで、いずれか一つのスイッチカム部材71L,71T,71R,71S(スイッチカム部74L,74T,74R,74S)がスイッチレバー76の先端部を押圧しているとき、他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動が抑制されるようになっている。
【0119】
例えば、リフタ用操作ハンドル63Lの回動操作によりリフタ用スイッチカム部材71L(スイッチカム部74L)を図13において反時計回りに回動させると、該リフタ用スイッチカム部材71Lは図示左側の隙間C分の空走区間を経て該当の端部74aでスイッチレバー76の先端部を押圧する。これにより、スイッチレバー76が軸43a(第2の回転軸)を中心に図示時計回りに回動すると、図14に示すように、その先端部がスイッチカム部74Tの端部74bとの隙間C分の空走区間を経てこれに当接又は近接する。換言すれば、図13において右側に隙間Cがあることで、リフタ用スイッチカム部材71Lの図示反時計回りの回動に伴いスイッチレバー76が回動しても、その先端部がチルト用スイッチカム部材71T(スイッチカム部74T)の端部74bを押圧してこれを図示反時計回りに回動させることがないようになっている。また、スイッチレバー76の先端部がスイッチカム部74Tの端部74bに当接又は近接することで、チルト用スイッチカム部材71Tの図示時計回りの回動が規制されている。
【0120】
反対に、リフタ用操作ハンドル63Lの回動操作によりリフタ用スイッチカム部材71L(スイッチカム部74L)を図13において時計回りに回動させると、該リフタ用スイッチカム部材71Lは図示右側の隙間C分の空走区間を経て該当の端部74bでスイッチレバー76の先端部を押圧する。これにより、スイッチレバー76が軸43aを中心に図示反時計回りに回動すると、その先端部がスイッチカム部74Tの端部74aとの隙間C分の空走区間を経てこれに当接又は近接する。換言すれば、図13において左側に隙間Cがあることで、リフタ用スイッチカム部材71Lの図示時計回りの回動に伴いスイッチレバー76が回動しても、その先端部がチルト用スイッチカム部材71T(スイッチカム部74T)の端部74aを押圧してこれを図示時計回りに回動させることがないようになっている。また、スイッチレバー76の先端部がスイッチカム部74Tの端部74aに当接又は近接することで、チルト用スイッチカム部材71Tの図示時計回りの回動が規制されている。
【0121】
リフタ用操作ハンドル63Lを回動操作した際の他のリクライナ用スイッチカム部材71R及びスライド用スイッチカム部材71Sの動作についても同様である。これにより、いずれか一つのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動に伴いスイッチレバー76が回動しても、左右の隙間Cにより他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sを回動させることはない。また、いずれか一つのスイッチカム部材71L,71T,71R,71S(スイッチカム部74L,74T,74R,74S)がスイッチレバー76の先端部を押圧しているとき、該スイッチレバー76により他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動が規制される。
【0122】
以上により、全てのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sが同軸上に配設されていても、いずれか一つのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動によって他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sが回動することが抑制される。そして、他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動に伴いこれに連結された該当の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが揺動することも抑制される。
【0123】
なお、スイッチレバー76の下面両側には一対のボス76aが突設されている。一方、図12に示すように、スイッチカバー44には、いわゆるシーソータイプのボタン77aを備えるスイッチ77が設置されている。そして、スイッチレバー76が回動すると、その回動方向に応じたいずれかのボス76aに押圧されることで、ボタン77aが所定の中立位置から傾くようになっている。スイッチ77は、ボタン77aが中立位置にあるときには回路を開き(オフし)、ボタン77aが中立位置から傾いたときにその傾き方向に応じた極性で回路を閉じる(オンする)。従って、スイッチ77によって決定される電流方向は、ボタン77aが右側に傾く状態及び左側に傾く状態で互いに逆向きとなる。
【0124】
図5に示すように、スイッチ77は、ワイヤハーネスWに電気的に接続されて、その一方及び他方がそれぞれ回転モータ36及び電源(図示略)に接続される。そして、ボタン77aが中立位置にあるとき、図21の等価回路で示したように、回転モータ36の両端子がスイッチ77を介して共に接地されるように回路が開いて、回転モータ36と電源とが遮断される。また、ボタン77aの傾きに伴い、例えばスイッチ77を介して図示2点差線のようにいずれかに回路が閉じて回転モータ36と電源とが接続されると、その極性に応じて回転モータ36が正転又は逆転する。
【0125】
図1に示すように、シートクッション7の片側(シート前方に向かって右側)の側部には、例えば樹脂材からなるサイドカバー10が装着されている。このサイドカバー10には、駆動装置40を含めてシートクッション7の側部の略全体を覆うもので、図15に示すように、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが露出するようにそれらの位置に合わせて略U字状の凹部10aを有する。
【0126】
また、サイドカバー10は、駆動装置40(カバー43等)の外形に合わせて、その下側部が略垂直に起立するとともに、凹部10aを含む上側部が上方に向かうに従ってシート幅方向内側に向かうように傾斜している。換言すれば、駆動装置40の上側部(カバー43の上側部、本体ケース41,42)は、サイドカバー10の上側部と共に傾斜することで、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sのシート幅方向外側への突出長を短縮可能としている。
【0127】
詳述すると、図16に示すように、シートクッション7の下部は、段差7aを介してシート幅方向に縮幅されており、該段差7aの下方に空間Sを形成する。駆動装置40は、基本的に空間S内で上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜することで、高さ方向に比較的余裕のある空間Sを有効利用して搭載されている。
【0128】
そして、駆動装置40の上側部(カバー43の上側部、本体ケース41,42)は、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜していることで、例えば駆動装置40の上側部の姿勢を略垂直にする場合に比べて、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sのシート幅方向外側への突出長がより短縮される。これにより、例えば複数の操作ハンドル63L,63T,63R,63S等と、それらのシート幅方向外側に対向する車両ドアのドアトリムDとの距離が確保される。
【0129】
ここで、図15及び図16に示すように、例えばチルト用操作ハンドル63Tを操作する際には、サイドカバー10のシート幅方向外側面(一般面)に手の平を置いたまま凹部10a内に進入させた一本の指(ここでは人差し指)を当該チルト用操作ハンドル63Tに押し当てて、手首を支点に手指を回動させればよい。これは、チルト用操作ハンドル63Tがシート幅方向(カバー43の上側部等に直交する方向)に延びる軸線周りに回動するように軸支されていることによる。このとき、親指をチルト用操作ハンドル63T近傍のサイドカバー10上端に添えて操作時の支えとしてもよい。
【0130】
この場合、チルト用操作ハンドル63Tの操作に必要な空間は、基本的にサイドカバー10のシート幅方向外側面(一般面)からシート幅方向外側に突出する略延ばした指の分の小さな距離L1でよい。従って、チルト用操作ハンドル63Tの操作に必要な空間がより縮小される。そして、サイドカバー10(駆動装置40)のシート幅方向外側にドアトリムDが迫っていたとしても、該ドアトリムDに阻害されることなくチルト用操作ハンドル63Tの操作が可能となる。他の操作ハンドル63L,63R,63Sを操作する際も、操作に係る指が異なることを除き同様である。
【0131】
ここで、図17及び図18に示す従来例の場合について説明する。同図に示すように、シートクッション7の片側の側部に装着されるサイドカバー250は、略垂直に起立している。そして、サイドカバー250の略垂直に起立する外側面には、シート幅方向外側に突出する態様で、移動操作ノブ251が前後方向に延設されるとともに、リクライニング操作ノブ252が高さ方向に延設されている。移動操作ノブ251は、シート6の前後位置の調整操作、上下位置の調整操作及びシートクッション7の後部に対する前部の傾斜角度の調整操作に兼用のもので、前後方向に移動可能に、後端部が前端部に対して上下方向に傾動可能に、且つ、前端部が後端部に対して上下方向に傾動可能に支持されている。リクライニング操作ノブ252は、シートクッション7に対するシートバック8の傾斜角度の調整操作に使用されるもので、上端部が下端部に対して前後方向に傾動可能に支持されている。
【0132】
この場合、例えば移動操作ノブ251を操作する際には、親指と人差し指とで移動操作ノブ251をつまんで操作することになり、シート幅方向外側に指が立ってしまう。このため、移動操作ノブ251の操作に必要な空間は、基本的にサイドカバー250のシート幅方向外側面(一般面)からシート幅方向外側に突出する折り曲げた指の分の大きな距離L2となる。従って、チルト用操作ハンドル63Tの操作に必要な空間が拡大される。そして、移動操作ノブ251の操作時、これに迫るドアトリムDによって操作が阻害される可能性がある。
【0133】
なお、図16に示すように、シートクッション7の段差7aよりもシート幅方向内側では、通常、シートクッション7(シートクッションパッド)とその下方に配置される回転モータ36との間の高さ方向の隙間に余裕がない。しかしながら、前述の態様で傾けて配置した駆動装置40に取着される回転モータ36(回転軸36a)の軸線は、シート幅方向内側に向かうに従い下方に向かうように傾斜することで、高さ方向の隙間に余裕が生まれている。
【0134】
次に、本実施形態の動作について説明する。なお、リフタ用操作ハンドル63L、チルト用操作ハンドル63T、リクライナ用操作ハンドル63R及びスライド用操作ハンドル63Sの回動操作と、これに対応する各機構M1〜M4の動作については、調整対象の駆動に係る該当のトルクケーブル16,22,28,35等への回転伝達を除けば概ね同等である。そこで、以下ではリフタ用操作ハンドル63L(リフタ機構M2)を代表してその動作を説明する。
【0135】
まず、図19に示すように、リフタ用操作ハンドル63Lが操作されておらず、従ってウォームホイール51の回転がリフタ用シャフト54Lに伝達不能な状態にあり、回転モータ36と電源との接続がスイッチ77を介して遮断されているものとする。この状態で、図20に示すように、リフタ用操作ハンドル63Lを捩りばね65の付勢力に抗して時計回り又は反時計回りに回動操作すると、ギヤ部64L,61dにおける回転伝達によって第1カム部材61が回動する。これにより、第1カム部材61が中立位置から外れ、圧縮ばね59の付勢力によって筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール51の嵌合部53Lに嵌合するように筒部材55が移動する。そして、ウォームホイール51の回転が筒部材55を介してリフタ用シャフト54Lに伝達可能となる。
【0136】
一方、リフタ用操作ハンドル63Lを時計回り又は反時計回りに回動操作すると、ギヤ部64L,72Lにおける回転伝達によってリフタ用スイッチカム部材71Lがリフタ用操作ハンドル63Lの操作方向に対応して時計回り又は反時計回りに回動する。このとき、スイッチレバー76は、リフタ用スイッチカム部材71Lの回転方向に対応するスイッチカム部74Lのいずれかの端部74a,74bに押圧されることで、軸43a周りに時計回り又は反時計回りに回動する。そして、軸43a周りのスイッチレバー76の回動により、該当のボス76aにてスイッチ77のボタン77aが押圧される。これにより、スイッチ77のボタン77aが中立位置から傾いて、その傾き方向に応じた極性でスイッチ77を介して回転モータ36と電源とが接続される。そして、回転モータ36が正転又は逆転する。つまり、リフタ用操作ハンドル63Lの操作方向によってボタン77aの押される方向(即ち傾き方向)が決まり、回転モータ36の回転方向が決まる。
【0137】
回転モータ36が回転すると、その回転は、入力用トルクケーブル37、ウォーム38、ウォームホイール51及び筒部材55を介してリフタ用シャフト54Lに伝達される。従って、リフタ用シャフト54Lの回転がリフタ用トルクケーブル22を介してリフタ用ギヤボックス21に伝達されることで、その回転方向に応じてシート6が昇降するようにリフタ機構M2が作動する。
【0138】
なお、第1カム部材61が中立位置から外れた際、圧縮ばね59の付勢力によって移動しようとする筒部材55の嵌合孔55cがウォームホイール51の嵌合部53Lに合致しないそれらの相対位置にあれば、これら嵌合孔55c及び嵌合部53Lは嵌合不能となる。しかしながら、回転モータ36と共にウォームホイール51が回転し始めると、嵌合孔55c及び嵌合部53Lが合致するそれらの相対位置になって嵌合可能となる。
【0139】
その後、リフタ用操作ハンドル63Lの操作力を解放すると、該リフタ用操作ハンドル63Lは捩りばね65に付勢されて、図19に示す初期位置に復帰する。これに伴い、ギヤ部64L,61dにおける回転伝達によって第1カム部材61が圧縮ばね59の付勢力に抗して回動し、第1カム部材61が中立位置に復帰する。第1カム部材61と共にリフタ用操作ハンドル63Lを初期位置に復帰させる捩りばね65の付勢力が、筒部材55を移動させる圧縮ばね59の付勢力よりも大きいことは既述のとおりである。これにより、ウォームホイール51の回転が筒部材55を介してリフタ用シャフト54Lに伝達不能となる。
【0140】
一方、リフタ用操作ハンドル63Lの初期位置への復帰に伴い、ギヤ部64L,72Lにおける回転伝達によってリフタ用スイッチカム部材71Lが回動し、図19に示す状態に復帰する。これに伴い、スイッチレバー76と共にスイッチ77のボタン77aが中立位置に復帰し、スイッチ77を介した回転モータ36と電源との接続が遮断される。これにより、回転モータ36の回転が停止する。
【0141】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、回転モータ36やスイッチ77は単一であるため、その電気的構成をより簡易化することができる。また、複数の筒部材55等(クラッチ機構)の各々は、該当する位置調整機構(M1〜M4)への出力軸(リフタ用シャフト54L、チルト用シャフト54T、リクライナ用シャフト54R、スライド用シャフト54S)とウォームホイール51,52とを接続する構造(いわゆる軸継手)であるため、出力軸等の周りに集約的に配置することができ、装置全体としてより小型化することができる。さらに、出力軸の本数(4本)分だけシートの位置調整に係る機能数(位置調整機構の個数)を増やすことができるため、該機能数の制約をより緩和することができる。
【0142】
(2)本実施形態では、4つの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sは、操作ハンドル63L,63Rからなる組と、操作ハンドル63T,63Sからなる組の2組に分けられて、これら2組の操作ハンドルが互いに異なる2つの回転軸(軸受部42a,42b)周りに回動するように軸支される。従って、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの全てを互いに同一の回転軸周りに回動するように軸支した場合に比べて、これら操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの相互干渉を抑制することができる。そして、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作時、該当の位置調整機構(M1〜M4)をより精度よく動作させることができる。また、複数の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが複数箇所に分散して軸支されることで、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの配置やその操作をよりわかりやすくすることができる。
【0143】
(3)本実施形態では、いずれかの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが回転軸(軸受部42a,42b)周りに回動すると、該操作ハンドル63L,63T,63R,63Sに駆動連結された該当のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sのスイッチカム部74L,74T,74R,74Sがスイッチレバー76を押圧することで、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの回動方向(操作方向)に応じた極性でスイッチ77が作動する。従って、複数の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが、互いに異なる回転軸周りに回動する複数組に分けられていても、いずれかの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作に連動するスイッチ77の作動を、該当のスイッチカム部74L,74T,74R,74Sを介することで実現することができる。また、前記複数のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sは、互いに同一の回転軸周りに集約して配置されることで、装置全体としてより小型化することができる。
【0144】
(4)本実施形態では、いずれかの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sを捩りばね65,66の付勢力に抗して初期位置から操作すると、カム部材61,62により圧縮ばね59に付勢される該当の筒部材55へのウォームホイール51,52(嵌合部53L,53T,53R,53S)の嵌挿が許容される。従って、回転モータ36に回転駆動されるウォームホイール51,52の回転が該当の筒部材55を介して出力軸(リフタ用シャフト54L、チルト用シャフト54T、リクライナ用シャフト54R、スライド用シャフト54S)に伝達されて、該当の位置調整機構(M1〜M4)が作動する。このとき、該当の出力軸とウォームホイール51,52との接続状態は、圧縮ばね59によって維持されており、従って出力軸等の回転がカム部材61,62や操作ハンドル63L,63T,63R,63Sへと伝達されることを抑制できる。そして、出力軸等の回転振動が該当の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sを介してこれを操作する手などに伝わる不快感を解消できる。
【0145】
(5)本実施形態では、単一の回転モータ36及び単一のスイッチ77で、回転モータ36の駆動力を正逆共に複数の位置調整機構(M1〜M4)へと出力できる。
(6)本実施形態では、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの回動操作に伴い、これに機械的に連係されたクラッチ機構及びスイッチレバー76(スイッチ77)を作動させることができるため、例えば従来のようなクラッチ専用の駆動装置やそれを制御する電気回路を不要にできる。その結果、スイッチの簡素化や回転モータに電源供給する電線の単純化・短縮化を図ることができ、ひいてはコストを削減することができる。
【0146】
(7)本実施形態では、ウォーム38に噛合する2個のウォームホイール51,52で4系統の出力を得ることができる。従って、出力軸数(4本)に比べて歯車数が少なく、騒音の発生部位を少なくできる。また、ウォーム38及びウォームホイール51,52(ウォームギヤ)で回転速度の減速を行っていることで、騒音の発生を抑制することができる。
【0147】
(8)本実施形態では、筒部材55(クラッチ機構)を介した動力の接続に圧縮ばね59の付勢力を利用していることで、筒部材55を移動させる際にその嵌合孔55cがウォームホイール51,52の嵌合部53L,53T,53R,53Sに合致せず干渉したとしても、それらの間に無理な力が加わることを回避できる。また、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作に伴い回転モータ36が回転し始めれば、ウォームホイール51,52の回転に伴いその嵌合部53L,53T,53R,53Sが筒部材55の嵌合孔55cに合致可能となる。従って、筒部材55の移動に伴い、嵌合孔55cと嵌合部53L,53T,53R,53Sとが嵌合し、筒部材55(クラッチ機構)を介した動力の接続が可能となる。
【0148】
(9)本実施形態では、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sを初期位置から回動操作することで、該当のクラッチ機構を接続するとともに、スイッチ77により操作方向に応じた極性で回転モータ36に通電できる。従って、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作方向に合わせて回転モータ36を正転又は逆転させることができ、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作方向と位置調整機構(M1〜M4)の調整方向とがよりわかりやすい関係になるように設定できる。
【0149】
(10)本実施形態では、調整機能ごと、即ち位置調整機構(M1〜M4)ごとにその作動に係る操作ハンドル63L,63T,63R,63Sを分割・独立配置した。そして、位置調整機構(M1〜M4)を単一の回転モータ36で作動させるため、いずれか一つの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作に伴い、該当の位置調整機構(M1〜M4)を作動させた場合には、それ以外の位置調整機構(M1〜M4)を作動させることができない構造となっている。従って、ユーザに対し、作動させたい位置調整機構(M1〜M4)に対応するいずれか一つの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sを意識させることができ、該当の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作へと誘導することができる。
【0150】
なお、従来例(図17及び図18参照)のように、シート6の前後位置の調整操作、上下位置の調整操作及びシートクッション7の後部に対する前部の傾斜角度の調整操作に兼用の移動操作ノブ251では、例えば無意識で移動操作ノブ251の前端部及び後端部を同時に上下方向に移動させてしまう可能性、即ちシート6の上下位置の調整操作及びシートクッション7の後部に対する前部の傾斜角度の調整操作が同時に行われる可能性があった。しかしながら、本実施形態では、このような同時操作が行われることを解消できる。
【0151】
(11)本実施形態では、複数の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの全ての非操作時、スイッチカム部74L,74T,74R,74Sの両端部74a,74bと、スイッチレバー76の先端部との間に隙間Cがそれぞれ形成されていることで、複数の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sのいずれか一つの操作時には、該当の74L,74T,74R,74Sの一方の端部74a,74bが隙間C分の空走区間を経てスイッチレバー76の先端部を押圧する。これにより、スイッチレバー76は、軸43a周りに回動する。この場合、スイッチレバー76の先端部と、非操作である他の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sに対応するスイッチカム部材71L,71T,71R,71S(スイッチカム部74L,74T,74R,74S)の他方の端部74a,74bとの間に隙間Cが形成されていることで、スイッチレバー76の先端部が他の前記スイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの他方の端部74a,74bを押圧してこれを一体的に回動させてしまうことを抑制できる。
【0152】
また、スイッチレバー76の回動時、その先端部は、他の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sに対応するスイッチカム部材71L,71T,71R,71S(スイッチカム部74L,74T,74R,74S)の他方の端部74a,74bとの間の隙間C分の空走区間を経て当該端部74a,74bに当接又は近接する。従って、スイッチレバー76の先端部により、他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71S(スイッチカム部74L,74T,74R,74S)の回動を規制することができる。
【0153】
(12)本実施形態では、ロアアーム20において、駆動装置40が位置調整機構(M1〜M4)の方向変換ギヤ装置15(スライド用ギヤボックス13)、リフタ用ギヤボックス21、チルト用ギヤボックス27及びリクライナ用ギヤボックス33に挟まれる中央部に配置されていることで、各々までの駆動装置40からの距離が概ね均等になって、トルクケーブル16,22,28,35の長さも概ね均等になる。このため、一部のトルクケーブル16,22,28,35のみが長くなることによる、当該トルクケーブルのコストの増加、質量増加、摺動音増加による高騒音化、摺動抵抗増加による低効率化を抑制できる。
【0154】
(13)本実施形態では、リフタ機構M2の作動に伴うフロントリンク4の揺動に追従して方向変換ギヤ装置15を揺動させたことで、該方向変換ギヤ装置15に接続されるスライド用トルクケーブル16の長さが過不足になることを解消することができる。
【0155】
すなわち、図4に示すように、フロントリンク4及びリアリンク5を介してロアアーム20が上昇した姿勢にあるものとして、4節回転連鎖を構成するフロントリンク4、リアリンク5及びロアアーム20、並びに、同じく4節回転連鎖を構成するフロントリンク4、トラベルリンク17、方向変換ギヤ装置15を太実線にて模式的に描画する。また、このときのスライド用トルクケーブル16を太実線にて併せて描画する。
【0156】
そして、リアリンク5の回動により、フロントリンク4及びリアリンク5を介してロアアーム20が下降したとする。このとき、フロントリンク4の回動により、トラベルリンク17を介して方向変換ギヤ装置15がスライド用連結ロッド14と同軸で回動する。このときの4節回転連鎖を構成するフロントリンク4、リアリンク5及びロアアーム20、並びに、同じく4節回転連鎖を構成するフロントリンク4、トラベルリンク17、方向変換ギヤ装置15を太2点鎖線にて模式的に描画する。また、このときのスライド用トルクケーブル16を太2点鎖線にて併せて描画する。
【0157】
同図から明らかなように、ロアアーム20の下降に伴って、該ロアアーム20に配置された駆動装置40も下降することになるが、フロントリンク4の揺動に追従して方向変換ギヤ装置15が揺動することで、該方向変換ギヤ装置15及び駆動装置40間の距離が略一定に保たれて、スライド用トルクケーブル16の長さが過不足になることが抑制される。特に、スライド用トルクケーブル16の長さを、不足分を考慮して長めにする必要がないことから、該スライド用トルクケーブル16が長くなることによるコストの増加、質量増加、摺動音増加による高騒音化、摺動抵抗増加による低効率化を抑制できる。
【0158】
(14)本実施形態では、該当の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sを操作する際には、例えばサイドカバー10のシート幅方向外側面(一般面)に手の平を置いたまま当該操作ハンドル63L,63T,63R,63Sに一本の指を押し当てて、手首を支点に手指を回動させればよい。つまり、当該操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作のためにこれをつまむ必要のないことから、シート幅方向外側に指が立ったりすることもない。このため、該当の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作に必要な空間(距離L1)をより縮小できる。
【0159】
(15)本実施形態では、駆動装置40の上側部(カバー43の上側部、本体ケース41,42)は、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜していることで、例えば駆動装置40の上側部の姿勢を略垂直にする場合に比べて、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sのシート幅方向外側への突出長をより短縮できる。そして、例えば複数の操作ハンドル63L,63T,63R,63S等と、それらのシート幅方向外側に対向するドアトリムDとの距離を確保することができる。
【0160】
(16)本実施形態では、回転モータ36は、その軸線がシート幅方向内側に向かうに従い下方に向かうことで、シート幅方向内側に向かうに従いシートクッション7との間の高さ方向の隙間に余裕が生まれる。従って、シートクッション7とその下方(即ち尻下)に配置される回転モータ36との間の高さ方向の隙間を確保することができる。
【0161】
(第2の実施形態)
図22〜図33を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態は、主として第1の実施形態の4つの操作ハンドルの全てを互いに同一の回転軸周りに回動するように変更した構成であるため、同様の部分については同一の符号を付してその説明を一部省略する。
【0162】
図23に示すように、本実施形態におけるスライド機構M11では、前記方向変換ギヤ装置15及び前記トラベルリンク17に代えて、片側(シート前方に向かって左側)のスライド用ギヤボックス13内のシート幅方向に軸線が延びるハスバ歯車13aと噛合するギヤ81を備える。このギヤ81は、前記スライド用トルクケーブル16と同軸でこれに一体回転するように連結されている。
【0163】
従って、スライド用トルクケーブル16が回転すると、その回転がギヤ81から片側のスライド用ギヤボックス13内のハスバ歯車13aに伝達されるとともに、前記スライド用連結ロッド14を介して反対側のスライド用ギヤボックス13内のハスバ歯車13aに伝達される。これにより、両側のスライド用ギヤボックス13内のハスバ歯車13aの回転が、スライド用ギヤボックス13内の前後方向に軸線が延びるハスバ歯車13bに90°方向変換して伝達されて、両側の前記スライド用リードスクリュ12に伝達される。これにより、前述の態様でロアレール1に対してアッパレール2が前後方向に移動する。
【0164】
また、本実施形態におけるチルト機構M13では、前記チルトリンク26に代えて、第1チルトリンク82及び第2チルトリンク83を備える。第1チルトリンク82は、その中央部が前記フロントリンク4のロアアーム20側の支持軸の前側で該ロアアーム20に回動自在に連結されており、前端部が第2チルトリンク83の下端部に回動自在に連結されている。そして、第2チルトリンク83の上端部は、前記チルトアーム25の前端部に回動自在に連結されている。従って、ロアアーム20、チルトアーム25、第1チルトリンク82及び第2チルトリンク83は、該第2チルトリンク83を媒介節(連接節)とする4節回転連鎖を構成する。
【0165】
片側の第1チルトリンク82には、ロアアーム20側の支持軸を中心にその後側に略扇状に広がるセクタギヤ部82aが形成されている。このセクタギヤ部82aは、前記チルト用ギヤボックス27のチルト用ピニオン27cと噛合する。
【0166】
従って、前記チルト用トルクケーブル28が回転すると、その回転がチルト用ギヤボックス27のチルト用ピニオン27cに伝達される。そして、チルト用ピニオン27cの回転は、該チルト用ピニオン27cにセクタギヤ部82aで噛合する第1チルトリンク82に伝達されて、該第1チルトリンク82がロアアーム20側の支持軸を中心に回動する。これにより、第1チルトリンク82に第2チルトリンク83を介して連結されたチルトアーム25がその前端部を昇降するように後端部を中心に回動し、ロアアーム20に対してチルトアーム25の前端部(シート6の前端部)が昇降する。そして、ロアアーム20に対するチルトアーム25(シート6の後部に対する前部)の傾斜角度が増減する。
【0167】
本実施形態における駆動装置100は、片側(シート前方に向かって右側)のロアアーム20のリフタ用ギヤボックス21及びチルト用ギヤボックス27間に挟まれる前後方向中間部において、そのシート幅方向内側に締結されている。図24に示すように、この駆動装置100(本体ケース101)には、スクリュ110により前記回転モータ36が締結されており、その回転軸36aに前記入力用トルクケーブル37を介して駆動連結されている。
【0168】
詳述すると、図25に示すように、駆動装置100は、回転軸36aの軸線方向に2分された一対の本体ケース101,102、本体ケース102を外側から覆うカバー103にてその筐体をなしている。本体ケース101,102は、これらの四隅を回転軸36aの軸線方向と平行に貫通する4本のスクリュ(図示略)にて締結されており、本体ケース102及びカバー103は、同じくこれらの四隅を回転軸36aの軸線方向と平行に貫通する4本のスクリュ(図示略)にて締結されている。
【0169】
ここで、図27及び図28に示すように、回転モータ36側の本体ケース101には、入力用トルクケーブル37(回転軸36a)と同心で該入力用トルクケーブル37側に有底略筒状の保持部101aが突設されている。この保持部101aには、略円筒状の軸受BE11が嵌着されている。そして、軸受BE11の中心部には、入力用トルクケーブル37が配置されており、軸受BE11には、入力用トルクケーブル37と同軸でこれに一体回転するように連結されたハスバ歯車104の基端部が軸支されている。一方、回転モータ36から離隔する側の本体ケース102の中央部には、図25に併せ示すように、略円筒状の軸受部102aがハスバ歯車104(回転軸36a)の軸線方向と平行に外向きに突設されるとともに、軸受部102aと同心でその右下側に略円弧柱状のガイド部102bが同じく外向きに突設されている。ハスバ歯車104の先端部は、軸受部102aに嵌着された略円筒状の軸受BE12を介して本体ケース102に軸支されている。
【0170】
図25に示すように、本体ケース101,102には、ハスバ歯車104の上側及び下側で前後方向に軸線の延びる一対の入力軸としてのハスバ歯車105,106が配設されている。ハスバ歯車105,106は、ハスバ歯車104に対して互いに異なるねじれの位置でこれに噛合しており、互いに同等の1以上の減速比に設定されている。
【0171】
つまり、回転モータ36と、該回転モータ36(回転軸36a)にハスバ歯車104を介して連結されるハスバ歯車105,106は、いわゆるT型構成となっている。
また、本体ケース101,102には、前記リフタ用シャフト54L、チルト用シャフト54T、リクライナ用シャフト54R及びスライド用シャフト54Sがそれぞれ軸支されている。本実施形態では、リクライナ用シャフト54R及びスライド用シャフト54Sが上側のハスバ歯車105と同軸でその後側及び前側に互いに対称となる姿勢で配設されており、リフタ用シャフト54L及びチルト用シャフト54Tが下側のハスバ歯車105と同軸でその後側及び前側に互いに対称となる姿勢で配設されている。
【0172】
ハスバ歯車105及びリクライナ用シャフト54R間、ハスバ歯車105及びスライド用シャフト54S間、ハスバ歯車106及びリフタ用シャフト54L間並びにハスバ歯車106及び54T間に構成されるクラッチ機構の構造は前記第1の実施形態と同様である。従って、本実施形態においても、本体ケース101,102内には、8ウェイパワーシートの4つの出力軸(リフタ用シャフト54L、チルト用シャフト54T、リクライナ用シャフト54R及びスライド用シャフト54S)に対応する4系統のクラッチ機構の全てが収納されている。また、回転モータ36に入力用トルクケーブル37を介して駆動されるハスバ歯車104及びハスバ歯車105,106は、4つの筒部材55を介していずれかの出力軸(リフタ用シャフト54L、チルト用シャフト54T、リクライナ用シャフト54R又はスライド用シャフト54S)に回転伝達する動力伝達機構を構成する。従って、この動力伝達機構も本体ケース101,102内に収納されている。
【0173】
本体ケース102には、軸受部102aを中心とする四隅に等角度(90°)間隔で4つの略円形の軸受孔102cが形成されている。また、本体ケース102には、対角線上に配置される各2つの軸受孔102cから互いに離隔する径方向に延在する4つのガイド孔102dが形成されている。そして、各軸受孔102cにはカム部材111が軸支されている。
【0174】
図26(a)(b)に併せ示すように、カム部材111は、軸受孔102cに軸支される略円柱状の大径軸部111aを有するとともに、軸受孔102cから本体ケース102内に突出する略卵形状のカム部111bを有し、更に軸受孔102cから本体ケース102の外側に突出して軸受孔102cの外側周縁部に摺接するフランジ部111cを有する。また、カム部材111は、フランジ部111cに隣接して本体ケース102の外側に配置されたセクタギヤ部111dを有するとともに、該セクタギヤ部111dに隣接して本体ケース102の更に外側に配置されカバー103に軸支される略円柱状の小径軸部111eを有する。さらに、カム部材111は、セクタギヤ部111dとは異なる周方向の範囲でフランジ部111cに隣接して本体ケース102の外側に配置された略扇柱状の支持部111fを有するとともに、セクタギヤ部111d(小径軸部111e)の軸線方向と平行に支持部111fの中央部に突設された略円柱状のばね掛止部111gを有する。なお、支持部111fの外周部中央部には、径方向内側に切り欠かれてなる案内部111hが形成されている。
【0175】
図31に示すように、リクライナ用シャフト54R側のカム部材111は、カム部111bにおいて前記筒部材55の筒部55aの外周面に当接又は近接して押圧片55bに当接可能に配置されている。そして、カム部111bの長手方向が筒部材55等の軸線方向に一致する回転位置、即ちハスバ歯車105から筒部材55を最も離隔させる回転位置(以下、カム部材111の「中立位置」ともいう)にあるときに、前記圧縮ばね59の付勢力に抗してハスバ歯車105の嵌合部53Rから筒部材55の嵌合孔55cを外す。
【0176】
また、図32及び図33に示すように、カム部材111は、回動に伴いカム部111bの長手方向が筒部材55等の軸線方向から外れると、圧縮ばね59に付勢される筒部材55の嵌合孔55cがハスバ歯車105の嵌合部53Rに嵌合するように筒部材55の移動を許容する。一方、カム部材111は、回動に伴いカム部111bで筒部材55の押圧片55bを圧縮ばね59の付勢力に抗して押圧しつつ、該カム部111bの長手方向が筒部材55等の軸線方向に再び一致するように筒部材55を移動させると、ハスバ歯車105の嵌合部53Rから筒部材55の嵌合孔55cを外す。なお、スライド用シャフト54S側、リフタ用シャフト54L側及びチルト用シャフト54T側の各カム部材111の動作も同様である。
【0177】
図25に示すように、本体ケース102の各ガイド孔102dには、ばね取付部材112がその長手方向(軸受孔102cの径方向)に移動自在に取着されている。すなわち、各ばね取付部材112は、ガイド孔102dに摺動自在に装着される摺動部112aを有するとともに、該摺動部112aに隣接して本体ケース102の外側に配置された略長円形の本体部112bを有する。また、図30に示すように、各ばね取付部材112は、カム部材111のばね掛止部111gと平行に本体部112bに突設された略円柱状のばね掛止部112cを有する。なお、本体部112bは、その移動方向(カム部材111の径方向)で支持部111fに対向配置されている。
【0178】
ばね取付部材112のばね掛止部112cには、カム部材111のばね掛止部111gに一側脚部が係止された引張りばね113の他側脚部が係止されている。これにより、カム部材111及びばね取付部材112は、引張りばね113が短縮する方向に常時付勢されている。すなわち、カム部材111は、そのばね掛止部111gがばね取付部材112のばね掛止部112cに近接する側でこれと軸受孔102cの径方向に直線上に並ぶ回動方向に常時付勢されている。
【0179】
ばね掛止部111g,112cが軸受孔102cの径方向に直線上に並ぶときのカム部材111の回転位置は、前記中立位置に一致するように設定されている。つまり、カム部材111は、引張りばね113により中立位置に付勢・保持されている。このとき、カム部材111の案内部111hは、ばね取付部材112(本体部112b)の移動方向(軸受孔102cの径方向)でこれに対向する。従って、引張りばね113に付勢されるばね取付部材112は、カム部材111が中立位置に配置されているときに本体部112bを案内部111hに嵌入する。あるいは、ばね取付部材112は、カム部材111を引張りばね113の付勢力に抗して中立位置から外す際に、本体部112bが案内部111hを乗り上げることで、ガイド孔102dに沿って引っ込む。
【0180】
カム部材111を中立位置に保持する引張りばね113の付勢力は、筒部材55の嵌合孔55cが嵌合部53L,53T,53R,53Sに嵌合するように筒部材55を移動させる圧縮ばね59の付勢力よりも大きく設定されている。従って、通常は、カム部材111は中立位置に配置・保持されている。つまり、通常は、筒部材55を介した前述の回転伝達が不能な状態に保持されている。そして、引張りばね113の付勢力に抗してカム部材111を回動させると、該カム部材111が中立位置から外れ、圧縮ばね59の付勢力によって筒部材55の嵌合孔55cが嵌合部53L,53T,53R,53Sに嵌合するように筒部材55が移動する。これにより、筒部材55を介した前述の回転伝達が可能となる。
【0181】
図25及び図28に示すように、前記軸受部102aには、その外周側で有底略円筒状の切替軸114Rが軸支されている。この切替軸114Rは、基端から径方向外側に延出してガイド部102bに摺接する円環状のフランジ部115Rを有するとともに、該フランジ部115Rの図25において左上側の角度位置から径方向外側に延出して該当のカム部材111のセクタギヤ部111dに噛合するセクタギヤ部116Rを有する。従って、切替軸114Rが回転すると、セクタギヤ部116R,111d間の回転伝達によって該当のカム部材111が回動する。なお、切替軸114Rの先端部には、略2枚羽根形状の嵌合部117Rが形成されている。
【0182】
また、切替軸114Rには、その外周側で略円筒状の切替軸114Sが軸支されている。この切替軸114Sは、基端から径方向外側に延出してガイド部102bの先端面及びフランジ部115Rの先端面に摺接する円環状のフランジ部115Sを有するとともに、該フランジ部115Sの図25において右上側の角度位置から径方向外側に延出して該当のカム部材111のセクタギヤ部111dに噛合するセクタギヤ部116Sを有する。従って、切替軸114Sが回転すると、セクタギヤ部116S,111d間の回転伝達によって該当のカム部材111が回動する。なお、切替軸114Rの先端部には、径方向で対向する角度位置を切り欠いてなる嵌合部117Sが形成されている。
【0183】
さらに、切替軸114Sには、その外周側で略円筒状の切替軸114Tが軸支されている。この切替軸114Tは、その基端がフランジ部115Sの先端面に摺接するとともに、基端部の図25において右下側の角度位置から径方向外側に延出して該当のカム部材111のセクタギヤ部111dに噛合するセクタギヤ部116Tを有する。従って、切替軸114Tが回転すると、セクタギヤ部116T,111d間の回転伝達によって該当のカム部材111が回動する。なお、切替軸114Tの先端部には、径方向で対向する角度位置を切り欠いてなる嵌合部117Tが形成されている。
【0184】
さらにまた、切替軸114Tには、その外周側で略円筒状の切替軸114Lが軸支されている。この切替軸114Lは、基端部の図30において左下側の角度位置から径方向外側に延出して該当のカム部材111のセクタギヤ部111dに噛合するセクタギヤ部116Lを有する。従って、切替軸114Lが回転すると、セクタギヤ部116L,111d間の回転伝達によって該当のカム部材111が回動する。なお、切替軸114Lの先端部には、径方向で対向する角度位置を切り欠いてなる嵌合部117Lが形成されている。
【0185】
なお、本体ケース102の外側に露出する切替軸114R,114S,114T,114Lのセクタギヤ部116R,116S,116T,116Lやこれと噛合するカム部材111等は、本体ケース102に締結されるカバー103との間に収納されている。そして、切替軸114R,114S,114T,114Lは、カバー103を貫通してその先端部をカバー103の外側に露出している。
【0186】
切替軸114R,114S,114T,114Lは、この順番で外径が増加するとともに、本体ケース102から先端までの軸線方向の離隔距離が短縮する。そして、最大径の切替軸114Lは、カバー103にも軸支されている。つまり、カバー103は、直接的・間接的に全ての切替軸114R,114S,114T,114Lを軸支する。図24に示すように、カバー103の外側に露出する切替軸114R,114S,114T,114Lは、ロアアーム20を貫通してそれらの先端部(嵌合部)を外側に突出させている。
【0187】
切替軸114Lの嵌合部117Lには、後側に延在する操作部材としてのリフタ用操作ハンドル118Lが一体回動するように嵌合する。また、切替軸114Tの嵌合部117Tには、リフタ用操作ハンドル118Lの外側で前側に延在する操作部材としてのチルト用操作ハンドル118Tが一体回動するように嵌合する。さらに、切替軸114Sの嵌合部117Sには、チルト用操作ハンドル118Tの外側で上側に延在する操作部材としてのスライド用操作ハンドル118Sが一体回動するように嵌合する。さらにまた、切替軸114Rの嵌合部117Rには、スライド用操作ハンドル118Sの外側で上側に延在する操作部材としてのリクライナ用操作ハンドル118Rが一体回動するように嵌合する。なお、リクライナ用操作ハンドル118Rは、スクリュ120により切替軸114Rに締結されることで、その内側に同軸上に配置されるスライド用操作ハンドル118S、チルト用操作ハンドル118T及びリフタ用操作ハンドル118Lと共に軸線方向に抜け止めされている。
【0188】
従って、例えばリクライナ用操作ハンドル118Rを回動操作すると、これと一体回動する切替軸114Rのセクタギヤ部116R及びカム部材111のセクタギヤ部111d間の回転伝達によってカム部材111(カム部111b)が回動する。これにより、筒部材55が前述の態様で軸線方向に移動する。既述のように、カム部材111は、引張りばね113により中立位置に付勢・保持されている。従って、カム部材111と一体回転するリクライナ用操作ハンドル118Rは、カム部材111の中立位置に対応する回転位置(以下、「初期位置」ともいう)にあるとき、引張りばね113の付勢力にて安定した状態で保持される。
【0189】
つまり、通常は、筒部材55を介したハスバ歯車105及びリクライナ用シャフト54R間の回転伝達が不能な状態に保持されている。また、リクライナ用操作ハンドル118Rが初期位置に復帰する際には、引張りばね113に付勢されるばね取付部材112(本体部112b)がカム部材111の案内部111hに嵌入することになる。これにより、リクライナ用操作ハンドル118Rが初期位置へと回動する際に節度感が生まれることになる。
【0190】
なお、他の操作ハンドル118S,118T,118Lの動作も、リフタ用操作ハンドル118Lの動作と同様である。本実施形態では、リクライナ用操作ハンドル118R及びスライド用操作ハンドル118Sは、駆動装置100の前後方向中心の上側でシート幅方向に重ねて配置されており、チルト用操作ハンドル118T及びリフタ用操作ハンドル118Lは、駆動装置100の前後方向中心に対して左右対称に配置されている。
【0191】
ここで、操作ハンドル118R,118S,118T,118Lは、それらの下側の外周部を径方向内側に切り欠いてなるスイッチカム部119R,119S,119T,119Lをそれぞれ有する。一方、ロアアーム20には、これらスイッチカム部119R,119S,119T,119Lの下側で前記スイッチ77が、ブラケット121を介して固定されている。そして、前記スイッチレバー76の先端部は、スイッチカム部119R,119S,119T,119Lの下向きに延出する両端部(押圧部)119a,119b(図23参照)の軸受部102a周りの回動軌跡を遮るように配置されている。従って、いずれかの操作ハンドル118R,118S,118T,118Lを回動操作すると、スイッチレバー76は、その先端部が該当のスイッチカム部119R,119S,119T,119L(端部119a,119b)に押圧されることで、当該操作ハンドル118R,118S,118T,118Lの操作方向に応じた方向に回動する。スイッチレバー76が回動すると、その回動方向(ボタン77aの傾き方向)に応じた極性でスイッチ77が回路を閉じることは既述のとおりである。
【0192】
なお、全ての操作ハンドル118R,118S,118T,118Lが操作されておらず、該当の所定の初期位置に配置されているとする。このとき、前記第1の実施形態と同様、スイッチレバー76の先端部は、全てのスイッチカム部119R,119S,119T,119Lの両端部119a,119b間に挟まれる中央部に配置されており、これら端部119a,119bとの間にそれぞれ隙間を形成する。従って、前記第1の実施形態に準じて、いずれか一つの操作ハンドル118R,118S,118T,118L(スイッチカム部119R,119S,119T,119L)がスイッチレバー76の先端部を押圧しているとき、他の操作ハンドル118R,118S,118T,118Lの回動が抑制されるようになっている。
【0193】
次に、本実施形態の動作について説明する。なお、リクライナ用操作ハンドル118R、スライド用操作ハンドル118S、チルト用操作ハンドル118T及びリフタ用操作ハンドル118Lの回動操作と、これに対応する各機構M2,M4,M11,M13の動作については、調整対象の駆動に係る該当のトルクケーブル16,22,28,35等への回転伝達を除けば概ね同等である。そこで、以下ではリクライナ用操作ハンドル118R(リクライナ機構M4)を代表してその動作を説明する。
【0194】
まず、図31に示すように、リクライナ用操作ハンドル118Rが初期位置から操作されておらず、従ってハスバ歯車105の回転がリクライナ用シャフト54Rに伝達不能な状態にあり、回転モータ36と電源との接続がスイッチ77を介して遮断されているものとする。この状態で、図32又は図33に示すように、リクライナ用操作ハンドル118Rを初期位置から時計回り又は反時計回りに回動操作すると、セクタギヤ部116R,111dにおける回転伝達によって該当のカム部材111が回動する。これにより、カム部材111が中立位置から外れ、圧縮ばね59の付勢力によって筒部材55の嵌合孔55cがハスバ歯車105の嵌合部53Rに嵌合するように筒部材55が移動する。そして、ハスバ歯車105の回転が筒部材55を介してリクライナ用シャフト54Rに伝達可能となる。
【0195】
一方、リクライナ用操作ハンドル118Rを初期位置から時計回り又は反時計回りに回動操作すると、スイッチレバー76は、リクライナ用操作ハンドル118Rの回動方向に対応するスイッチカム部119Rのいずれかの端部119a,119bに押圧されることで、時計回り又は反時計回りに回動する。これにより、前述の態様で回転モータ36が正転又は逆転する。
【0196】
回転モータ36が回転すると、その回転は、入力用トルクケーブル37、ハスバ歯車104,105及び筒部材55を介してリクライナ用シャフト54Rに伝達される。従って、リクライナ用シャフト54Rの回転がリクライナ用トルクケーブル35を介してリクライナ用ギヤボックス33に伝達されることで、その回転方向に応じてシートクッション7に対してシートバック8が回動(傾動)するようにリクライナ機構M4が作動する。
【0197】
その後、リクライナ用操作ハンドル118Rの操作力を解放すると、該リクライナ用操作ハンドル118Rはカム部材111と共に引張りばね113に付勢されて、図31に示す初期位置に復帰する。同時に、カム部材111は中立位置に復帰する。リクライナ用操作ハンドル118Rと共にカム部材111を中立位置に復帰させる引張りばね113の付勢力が、筒部材55を移動させる圧縮ばね59の付勢力よりも大きいことは既述のとおりである。これにより、ハスバ歯車105の回転が筒部材55を介してリクライナ用シャフト54Rに伝達不能となる。
【0198】
一方、リクライナ用操作ハンドル118Rの初期位置への復帰に伴い、前述の態様でスイッチ77を介した回転モータ36と電源との接続が遮断される。これにより、回転モータ36の回転が停止する。
【0199】
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)(4)〜(10)(12)(14)の効果に加えて以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、操作ハンドル118R,118S,118T,118Lは、互いに同一の回転軸(軸受部102a等の軸線)周りに回動するように軸支されていることで、これら操作ハンドル118R,118S,118T,118Lを当該回転軸周りに集約して配置でき、装置全体としてより小型化することができる。
【0200】
(2)本実施形態では、いずれかの操作ハンドル118R,118S,118T,118Lがその回転軸周りに回動すると、該当のスイッチカム部119R,119S,119T,119Lがスイッチレバー76を押圧することで、操作ハンドル118R,118S,118T,118Lの回動方向(操作方向)に応じた極性でスイッチ77が作動する。従って、いずれかの操作ハンドル118R,118S,118T,118Lの操作に連動するスイッチ77の作動を極めて簡易な構造で実現することができる。また、スイッチカム部119R,119S,119T,119Lは、該当の操作ハンドル118R,118S,118T,118Lに一体的に設けられていることで、装置全体としてより小型化することができる。
【0201】
(3)本実施形態では、操作ハンドル118R,118S,118T,118Lが初期位置に復帰する際には、即ちカム部材111を中立位置に復帰する際には、引張りばね113に付勢されるばね取付部材112(本体部112b)がカム部材111の案内部111hに嵌入することになる。これにより、操作ハンドル118R,118S,118T,118Lが初期位置に復帰する際に確実な節度感を付与することができる。
【0202】
(4)本実施形態では、複数の操作ハンドル118R,118S,118T,118Lの全ての非操作時、スイッチカム部119R,119S,119T,119Lの両端部119a,119bと、スイッチレバー76の先端部との間に隙間がそれぞれ形成されていることで、複数の操作ハンドル118R,118S,118T,118Lのいずれか一つの操作時には、該当のスイッチカム部119R,119S,119T,119Lの一方の端部119a,119bが隙間分の空走区間を経てスイッチレバー76の先端部を押圧する。これにより、スイッチレバー76が回動する。この場合、スイッチレバー76の先端部と、非操作である他の操作ハンドル118R,118S,118T,118L(スイッチカム部119R,119S,119T,119L)の他方の端部119a,119bとの間に隙間が形成されていることで、スイッチレバー76の先端部が他の操作ハンドル118R,118S,118T,118Lの他方の端部119a,119bを押圧してこれを一体的に回動させてしまうことを抑制できる。
【0203】
また、スイッチレバー76の回動時、その先端部は、他の操作ハンドル118R,118S,118T,118L(スイッチカム部119R,119S,119T,119L)の他方の端部119a,119bとの間の隙間分の空走区間を経て当該端部119a,119bに当接又は近接する。従って、スイッチレバー76の先端部により、他の操作ハンドル118R,118S,118T,118L(スイッチカム部119R,119S,119T,119L)の回動を規制することができる。
【0204】
(第3の実施形態)
図34〜図41を参照して本発明の第3の実施形態について説明する。なお、第3の実施形態は、いずれか一つの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作に伴い該当の第1カム部材61又は第2カム部材62を回動させた際に、第1カム部材61又は第2カム部材62(カム部61b,62b)と筒部材55(押圧片55b)との間で押圧力を仲介する仲介部材を設けたことが前記第1の実施形態と主に異なる構成であるため、同様の部分については同一の符号を付してその説明を一部省略する。
【0205】
図34に示すように、各筒部材55の筒部55aは、本体ケース41に支持された略四角枠状の仲介部材131に遊挿されている。すなわち、図35及び図36に示すように、本体ケース41には、各隣り合う筒部材55の押圧片(外向きフランジ)55b及びウォームホイール51(52)間で上下方向(図面に直交する方向)に延在する略半円溝状の軸受溝130が形成されている。
【0206】
一方、仲介部材131は、軸受溝130に軸支される略優弧柱状の軸部132を有するとともに、筒部材55の筒部55aをその軸線方向に略直交する方向に横切る略四角枠状の本体部133を有する。そして、仲介部材131は、本体部133に形成された略円形の挿通孔133aにおいて筒部55aが遊挿されている。従って、仲介部材131は、筒部55aに阻害されることなく、軸受溝130周りの一定範囲の回動が可能である。この回動範囲における周方向は、筒部材55の軸線方向に合致するその移動方向に沿っている。
【0207】
仲介部材131の軸部132から離隔する先端部134は、第1カム部材61(第2カム部材62)のカム部61b(62b)に軸受溝130を中心とする周方向で対向配置されており、図37及び図38に示すように、その上下方向中央部は、第1カム部材61側に突出する突部134aを形成する。また、仲介部材131は、先端部134寄りの挿通孔133aを挟んでその上側及び下側に配設された一対の押圧壁部135を有する(図37及び図38では上側のみ図示)。これら押圧壁部135は、上下方向に延在しており、軸部132側に向かうに従い筒部材55の押圧片55bに向かうように隆起する。
【0208】
ここで、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが操作されておらず、第1及び第2カム部材61,62が前記中立位置にあるときには、図36の右側及び図37に示すように、第1カム部材61(第2カム部材62)がそのカム部61b(62b)で仲介部材131の先端部134(突部134a)を押圧することで、仲介部材131は、先端部134がウォームホイール51(ウォームホイール52)から離隔する側に軸部132を中心に回動した状態にある。
【0209】
このとき、仲介部材131は、圧縮ばね59の付勢力に抗して両押圧壁部135で筒部材55の押圧片55bを押圧することで、筒部材55へのウォームホイール51(ウォームホイール52)の嵌挿を外す。つまり、前記中立位置にある第1カム部材61(第2カム部材62)は、該当の仲介部材131の両押圧壁部135を介して筒部材55の押圧片55bを押圧している。筒部材55は、押圧片55bが両押圧壁部135による2点(又は直線)で押圧されていることで、例えば1点で押圧される場合に比べてその姿勢がより安定化される。
【0210】
そして、いずれか一つの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが操作されて前記中立位置から回動すると、該当の第1カム部材61又は第2カム部材62が回動して、図36の左側及び図38に示すように、第1カム部材61(第2カム部材62)のカム部61b(62b)が仲介部材131の先端部134(突部134a)を解放する。これにより、圧縮ばね59に付勢される筒部材55は、ウォームホイール51(52)側に移動するとともに、これに伴い筒部材55の押圧片55bに押圧される仲介部材131は、先端部134がウォームホイール51(ウォームホイール52)に近付く側に軸部132を中心に回動する。
【0211】
このとき、仲介部材131は、筒部材55の軸線方向(移動方向)に略直交する方向に筒部55aを横切る。つまり、先端部134の軸部132を中心とする周方向は、筒部材55の軸線方向(移動方向)に略一致している。筒部材55がウォームホイール51(52)に近付く側に移動することで、該ウォームホイール51(52)に嵌挿されることは前記第1の実施形態と同様である。
【0212】
その後、当該操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作が解放されて前記中立位置へと回動すると、図36の右側及び図37に示すように、第1カム部材61(第2カム部材62)がそのカム部61b(62b)で仲介部材131の先端部134(突部134a)を押圧することで、仲介部材131は、先端部134がウォームホイール51(ウォームホイール52)から離隔する側に軸部132を中心に回動する。
【0213】
このとき、仲介部材131は、圧縮ばね59の付勢力に抗して両押圧壁部135で筒部材55の押圧片55bを押圧することで、筒部材55へのウォームホイール51(ウォームホイール52)の嵌挿を外す。このとき、筒部材55は、押圧片55bが両押圧壁部135による2点(又は直線)で押圧されることで、例えば1点で押圧される場合に比べてその移動がより円滑化されている。
【0214】
図38に示すように、本実施形態のウォームホイール51(ウォームホイール52)は、略2枚羽根形状の嵌合部53L,53T,53R,53Sに代えて、円柱形状と該円柱形状から等角度間隔で径方向に延出する3つの円弧柱形状とが組み合わされた略3枚羽根形状の外形を有する嵌合部136を備える。そして、嵌合部136は、その外形に合わせて略3枚羽根形状の嵌合孔137aの形成された、例えばエラストマやゴムなどからなる略円環状の緩衝部材137に嵌挿されている。この緩衝部材137は、嵌合部136の基端側の周縁部となるウォームホイール51(ウォームホイール52)の筒部材55に対向する先端面に密着する。
【0215】
なお、筒部材55には、略2枚羽根形状の嵌合孔55cに代えて、嵌合部136の嵌合可能な略3枚羽根形状の嵌合孔(図示略)が形成されていることはいうまでもない。従って、緩衝部材137は、ウォームホイール51(ウォームホイール52)の前記先端面と筒部材55の嵌合孔の周縁部となるウォームホイール51(ウォームホイール52)に対向する先端面との間に介装されている。これにより、筒部材55の嵌合孔にウォームホイール51(ウォームホイール52)の嵌合部136が嵌挿された際には、筒部材55の前記先端面が緩衝部材137を介してウォームホイール51(ウォームホイール52)の前記先端面に当接することになる。従って、筒部材55に該当のウォームホイール51(ウォームホイール52)が嵌挿される際のこれら両先端面の当り音が緩和される。
【0216】
図39に示すように、本実施形態のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sには、ギヤ部72L,72T,72R,72S及び円弧部73L,73T,73R,73S間に挟まれる外周部の上側からスイッチ用軸受部49を中心とする径方向外側に一対の爪状の係合部141,142が突設されている。
【0217】
一方、本実施形態のカバー43には、スイッチ用軸受部49の上側でその軸線と平行に延びる軸線を有する第3の回転軸としての軸143が突設されている。この軸143には、スイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの上側に配置された略三つ葉形状のストップカム145がその中央部において軸支されている。
【0218】
図40及び図41(a)(b)に示すように、このストップカム145は、軸143を中心とする径方向に突出する被押圧部146及び該被押圧部146を挟む軸143を中心とする周方向両側から径方向に突出する一対の略扇状の規制部147,148を有する。これら被押圧部146及び両規制部147,148は、全てのスイッチカム部材71L,71T,71R,71S(係合部141,142)の軸線方向の位置を含むように当該方向に沿って延在する。
【0219】
また、図41(a)(b)に示すように、ストップカム145の回動軸周りには、捩りばね150が巻回されている。この捩りばね150の両端のフック部150aの根元部はストップカム145のストッパ部149に接触して回転止めされ、フック部150aの先端部はカバー43の係止壁151にて位置決めされる。ストップカム145は、捩りばね150に付勢されることで、所定の初期回動位置(中立位置)に保持されている。
【0220】
ここで、全ての操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが操作されておらず、該当の所定の初期位置に配置されているとする。このとき、図41(a)に示すように、所定の初期回動位置に配置されているストップカム145は、被押圧部146が全てのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの両係合部141,142のスイッチ用軸受部49周りの回動軌跡を遮るように配置されている。そして、被押圧部146は、全てのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの両係合部141,142間に挟まれる中央部に配置され、これら係合部141,142との間にそれぞれ隙間C1を形成する。また、ストップカム145の規制部147,148は、その先端が係合部141,142の先端にそれぞれ近接して、これら両係合部141,142のスイッチ用軸受部49周りの回動軌跡を開放する。
【0221】
従って、いずれか一つの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの回動操作に伴い該当のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sが回動すると、係合部141,142は、隙間C1分の空走区間を経てストップカム145の被押圧部146を押圧し始める。そして、ストップカム145は、被押圧部146が係合部141,142に押圧されることで、当該操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作方向に応じた方向に回動する。このとき、ストップカム145により、他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動が抑制されるようになっている。
【0222】
例えば、リフタ用操作ハンドル63Lの回動操作によりリフタ用スイッチカム部材71Lを図41(a)において反時計回りに回動させると、該リフタ用スイッチカム部材71Lは図示右側の隙間C1分の空走区間を経て該当の係合部142でストップカム145の被押圧部146を押圧する。これにより、ストップカム145が軸143を中心に図示時計回りに回動すると、図41(b)に示すように、図示右側の規制部148がチルト用スイッチカム部材71Tの図示右側の係合部142の回動軌跡を遮る。従って、ストップカム145の図示右側の規制部148により、チルト用スイッチカム部材71Tの反時計回りの回動が規制される。
【0223】
また、ストップカム145の被押圧部146は、チルト用スイッチカム部材71Tの係合部141との隙間C1分の空走区間を経てこれに当接又は近接する。換言すれば、図41(a)において左側に隙間C1があることで、リフタ用スイッチカム部材71Lの図示反時計回りの回動に伴いストップカム145が回動しても、被押圧部146がチルト用スイッチカム部材71Tの係合部141を押圧してこれを図示反時計回りに回動させることがないようになっている。
【0224】
さらに、ストップカム145の回動時、被押圧部146は、チルト用スイッチカム部材71Tの図示左側の係合部141との間の隙間C1分の空走区間を経て当該係合部141に当接又は近接する。従って、ストップカム145の被押圧部146により、チルト用スイッチカム部材71Tの時計回りの回動が規制される。
【0225】
反対に、リフタ用操作ハンドル63Lの回動操作によりリフタ用スイッチカム部材71Lを図41(a)において時計回りに回動させると、該リフタ用スイッチカム部材71Lは図示左側の隙間C1分の空走区間を経て該当の係合部141でストップカム145の被押圧部146を押圧する。これにより、ストップカム145が軸143を中心に図示反時計回りに回動すると、図示左側の規制部147がチルト用スイッチカム部材71Tの図示左側の係合部141の回動軌跡を遮る。従って、ストップカム145の図示左側の規制部147により、チルト用スイッチカム部材71Tの時計回りの回動が規制される。
【0226】
また、ストップカム145の被押圧部146は、チルト用スイッチカム部材71Tの係合部142との隙間C1分の空走区間を経てこれに当接又は近接する。換言すれば、図41(a)において右側に隙間C1があることで、リフタ用スイッチカム部材71Lの図示時計回りの回動に伴いストップカム145が回動しても、被押圧部146がチルト用スイッチカム部材71Tの係合部142を押圧してこれを図示時計回りに回動させることがないようになっている。
【0227】
さらに、ストップカム145の回動時、被押圧部146は、チルト用スイッチカム部材71Tの図示右側の係合部142との間の隙間C1分の空走区間を経て当該係合部142に当接又は近接する。従って、ストップカム145の被押圧部146により、チルト用スイッチカム部材71Tの反時計回りの回動が規制される。
【0228】
リフタ用操作ハンドル63Lを回動操作した際の他のリクライナ用スイッチカム部材71R及びスライド用スイッチカム部材71Sの動作についても同様である。これにより、いずれか一つのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sが回動しても、ストップカム145により他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動が規制される。また、いずれか一つのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sが回動しても、左右の隙間C1によりストップカム145が他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sを回動させることはない。
【0229】
以上により、全てのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sが同軸上に配設されていても、いずれか一つのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sが最初に回動すれば、ストップカム145により他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動が規制される。また、左右の隙間C1により、いずれか一つのスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sに押圧されるストップカム145が、他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sを回動させてしまうことが抑制される。そして、他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動に伴いこれに連結された該当の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが揺動することも抑制される。
【0230】
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1の実施形態と同様の効果に加えて以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、いずれかの操作ハンドル63L,63T,63R,63Sを該当の捩りばね65,66の付勢力に抗して初期位置から操作すると、第1カム部材61又は第2カム部材62のカム部61b,62bによる仲介部材131を介した筒部材55の押圧片55bの押圧が解放される。これにより、圧縮ばね59に付勢される該当の筒部材55へのウォームホイール51,52の嵌挿が許容される。そして、該当する位置調整機構(M1〜M4)への出力軸(リフタ用シャフト54L、チルト用シャフト54T、リクライナ用シャフト54R、スライド用シャフト54S)とウォームホイール51,52とが接続される。一方、該当の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの操作を解放すると、該当の捩りばね65,66に付勢される操作ハンドル63L,63T,63R,63Sが初期位置へと復帰する。このとき、仲介部材131は、該当のカム部61b,62bに押圧されることで、圧縮ばね59の付勢力に抗して押圧片55bを押圧する。これにより、筒部材55へのウォームホイール51,52の嵌挿が外れる。この際、仲介部材131は、筒部材55の移動方向に沿う周方向の回動を行って押圧片55bを押圧するため、例えばカム部61b,62bで直に押圧片55bを押圧する場合のような一点での押圧に代えて、両押圧壁部135による複数点(又は直線)での押圧にすることができ、圧縮ばね59の付勢力に抗した筒部材55の移動をより円滑化することができる。
【0231】
(2)本実施形態では、各筒部材55及び該当のウォームホイール51,52の互いに対向する両先端面間に介装される緩衝部材137により、各筒部材55に該当のウォームホイール51,52が嵌挿される際のこれら両先端面の当り音を緩和することができる。
【0232】
(3)本実施形態では、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの全ての非操作時、スイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの両係合部141,142と、ストップカム145の被押圧部146との間に隙間C1がそれぞれ形成されていることで、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sのいずれか一つの操作時には、該当のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの一方の係合部141,142が隙間C1分の空走区間を経てストップカム145の被押圧部146を押圧する。これにより、ストップカム145が軸143周りに回動することで、一方の規制部147,148が他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの一方の係合部141,142の回動軌跡を遮る。従って、ストップカム145の一方の規制部147,148により、他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動を規制することができる。
【0233】
また、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sの全ての非操作時、スイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの両係合部141,142と、ストップカム145の被押圧部146との間に隙間C1がそれぞれ形成されていることで、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sのいずれか一つの操作時、ストップカム145の被押圧部146が非操作である他の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sに対応するスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの他方の係合部141,142を押圧してこれを一体的に回動させてしまうことを抑制できる。
【0234】
さらに、ストップカム145の回動時、被押圧部146は、他の操作ハンドル63L,63T,63R,63Sに対応するスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの他方の係合部141,142との間の隙間C1分の空走区間を経て当該係合部141,142に当接又は近接する。従って、ストップカム145の被押圧部146により、他のスイッチカム部材71L,71T,71R,71Sの回動を規制することができる。
【0235】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記第1及び第2の実施形態において、前記第3の実施形態に準じた仲介部材(131)、緩衝部材(137)及びストップカム(145)を択一的又は選択的に組み合わせて配設してもよい。ただし、前記第2の実施形態においては、スイッチカム部材がないことから、ストップカム(145)を設ける組み合わせは不可である。
【0236】
・前記第1及び第3の実施形態において、スイッチカム部材71L,71T,71R,71S(スイッチカム部74L,74T,74R,74S)を割愛するとともに操作ハンドル63L,63T,63R,63Sに適宜のスイッチカム部を設けて、該操作ハンドル63L,63T,63R,63Sにて直にスイッチレバー76を押圧できるようにしてもよい。
【0237】
・前記第1及び第3の実施形態において、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sは、全てが互いに異なる回転軸周りに回動するように軸支されていてもよい。この場合、操作ハンドル63L,63T,63R,63Sにて直にスイッチレバー76を押圧できるようにしてもよいし、スイッチカム部材を介してスイッチレバー76を押圧できるようにしてもよい。
【0238】
・前記第1及び第3の実施形態において、ウォームホイール51,52の一方を割愛して、2系統の出力(即ち2つの位置調整機構)としてもよい。あるいは、ウォームホイール51,52の一方に接続可能な出力を1系統として、3系統の出力(即ち3つの位置調整機構)としてもよい。
【0239】
・前記第1及び第3の実施形態においては、トラベルリンク17をフロントリンク4に連結したが、例えばリアリンク5やロアアーム20の適当な位置に連結されていてもよい。要はロアアーム20(駆動装置40)の昇降動作に追従して方向変換ギヤ装置15が回動可能であればよい。
【0240】
・前記第1及び第3の実施形態において、リフタ機構M2の作動に伴うフロントリンク4の揺動に追従して方向変換ギヤ装置15を揺動させるリンク構成を割愛してもよい。
・前記第1及び第3の実施形態において、駆動装置40(サイドカバー)の上側部は、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜していなくてもよい。
【0241】
また、これに併せて、回転モータ36を、その軸線がシート幅方向内側に向かうに従い下方に向かうように配置しなくてもよい。
・前記第2の実施形態において、4つの操作ハンドル118L,118T,118R,118Sを2組に分けてもよい。そして、これら2組の操作ハンドルは、互いに異なる2つの回転軸周りに回動するように軸支されていてもよい。この場合、操作ハンドル118L,118T,118R,118Sにて直にスイッチレバー76を押圧できるようにしてもよいし、スイッチカム部材を介してスイッチレバー76を押圧できるようにしてもよい。
【0242】
・前記第2の実施形態において、4つの操作ハンドル118L,118T,118R,118Sは、前記第1の実施形態に準じてスイッチカム部材を介してスイッチレバー76を押圧できるようにしてもよい。
【0243】
・前記第2の実施形態において、スライド用ギヤボックス13とスライド用トルクケーブル16との間を方向変換ギヤ装置(15)を介して連結するとともに、リフタ機構M2の作動に伴うフロントリンク4の揺動に追従して方向変換ギヤ装置が揺動するように前記第1の実施形態に準じたリンク構成を適用してもよい。
【0244】
・前記第2の実施形態において、駆動装置100は、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜していてもよい。
また、これに併せて、回転モータ36を、その軸線がシート幅方向内側に向かうに従い下方に向かうように配置してもよい。
【0245】
・前記第2の実施形態において、ハスバ歯車105,106の一方を割愛して、2系統の出力(即ち2つの位置調整機構)としてもよい。あるいは、ハスバ歯車105,106の一方に接続可能な出力を1系統として、3系統の出力(即ち3つの位置調整機構)としてもよい。
【0246】
・前記各実施形態において、筒部材55の嵌合孔55cが嵌合部53L,53T,53R,53Sから外れる側に筒部材55を付勢する適宜の付勢部材を設けるとともに、第1及び第2カム部材61,62又はカム部材111の回動に伴い付勢部材の付勢力に抗して嵌合孔55cが嵌合部53L,53T,53R,53Sに嵌合する側に筒部材55を移動させる構成であってもよい。
【0247】
・前記各実施形態において、各ギヤボックス13,21,27,33の構造は一例である。例えば一対のハスバ歯車で方向変換を行うものであってもよい。またこの場合には、一対のハスバ歯車間で減速することなく等速で回転伝達させてもよい。
【0248】
・前記各実施形態においては、駆動装置40,100を、ロアアーム20において、複数の位置調整機構の伝達装置(ギヤボックス)に挟まれる中央部に配置したが、その配置は任意である。
【0249】
・前記各実施形態において、各種操作ハンドルは、その軸線を中心とする径方向に延在していなくてもよい。
【符号の説明】
【0250】
C,C1…隙間、M1,M11…スライド機構(位置調整機構)、M2…リフタ機構(位置調整機構)、M3,M13…チルト機構(位置調整機構)、M4…リクライナ機構(位置調整機構)、1…ロアレール、2…アッパレール、3…ブラケット、4…フロントリンク、5…リアリンク、7…シートクッション、10…サイドカバー、10a…凹部、15…方向変換ギヤ装置(伝達装置)、16…スライド用トルクケーブル(トルクケーブル)、17…トラベルリンク(リンク)、20…ロアアーム、21…リフタ用ギヤボックス(伝達装置)、22…リフタ用トルクケーブル(トルクケーブル)、27…チルト用ギヤボックス(伝達装置)、28…チルト用トルクケーブル(トルクケーブル)、33…リクライナ用ギヤボックス(伝達装置)、35…リクライナ用トルクケーブル(トルクケーブル)、36…回転モータ、38…ウォーム、41,42…本体ケース(筐体)、42a,42b…軸受部、42g,42h…軸受孔、43a…軸(第2の回転軸)、43…カバー(筐体)、44…スイッチカバー(筐体)、49…スイッチ用軸受部、51,52…ウォームホイール(入力軸)、53L,53T,53R,53S…嵌合部、54L…リフタ用シャフト(出力軸)、54T…チルト用シャフト(出力軸)、54R…リクライナ用シャフト(出力軸)、54S…スライド用シャフト(出力軸)、54a…出力軸側嵌合部、55…筒部材(クラッチ機構)、55b…押圧片(外向きフランジ)、55c…嵌合孔、59…圧縮ばね(第1付勢部材)、63L,63T,63R,63S,118R,118S,118T,118L…操作ハンドル(操作部材)、61…第1カム部材(カム部材)、61b,62b…カム部、62…第2カム部材(カム部材)、65,66…捩りばね(第2付勢部材)、71L,71T,71R,71S…スイッチカム部材、74L,74T,74R,74S…スイッチカム部、74a,74b,119a,119b…端部(押圧部)、76…スイッチレバー、77…スイッチ、104…ハスバ歯車、105,106…ハスバ歯車(入力軸)、111…カム部材、119R,119S,119T,119L…スイッチカム部、131…仲介部材、137…緩衝部材、141,142…係合部、143…軸(第3の回転軸)、145…ストップカム、146…被押圧部、147,148…規制部、149…ストッパ部、150…捩りばね。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の回転モータと、
複数の位置調整機構に対応して個別に配設された複数の操作部材と、
前記複数の位置調整機構に対応して個別に配設され、前記複数の操作部材のいずれかの操作に伴い、該当する前記位置調整機構への出力軸と前記回転モータに回転駆動される入力軸とを選択的に接続する複数のクラッチ機構と、
前記複数の操作部材のいずれかの操作に伴い、操作方向に応じた極性で前記回転モータに通電する単一のスイッチとを備えたことを特徴とするシート駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート駆動装置において、
前記複数の操作部材は、互いに同一の回転軸周りに回動するように軸支されていることを特徴とするシート駆動装置。
【請求項3】
請求項1に記載のシート駆動装置において、
前記複数の操作部材は、同一の回転軸周りに回動するように軸支されている前記操作部材を1組とする複数組に分けられていることを特徴とするシート駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、
前記各クラッチ機構は、該当の前記出力軸が一体回転するように、且つ、軸線方向に移動可能に嵌挿され、前記入力軸側への軸線方向の移動に伴い該入力軸が一体回転するように嵌挿される筒部材を備え、
前記入力軸が嵌挿される側に前記各筒部材を軸線方向に付勢する第1付勢部材と、
前記各操作部材に駆動連結され、該操作部材が所定の初期位置にあるときに該当の前記筒部材への前記入力軸の嵌挿を外すとともに、前記操作部材の前記初期位置からの操作に伴い前記第1付勢部材に付勢される該当の前記筒部材への前記入力軸の嵌挿を許容するカム部材と、
前記各操作部材が前記初期位置に保持されるように前記第1付勢部材の付勢力に抗して該当の前記操作部材を付勢する第2付勢部材とを備えたことを特徴とするシート駆動装置。
【請求項5】
請求項2に記載のシート駆動装置において、
前記スイッチが前記回転モータに通電するように前記スイッチを作動させる単一のスイッチレバーを備え、
前記複数の操作部材は、前記回転軸周りの回動に伴い、回動方向に応じた極性で前記スイッチが作動するように前記スイッチレバーを押圧するスイッチカム部をそれぞれ有することを特徴とするシート駆動装置。
【請求項6】
請求項3に記載のシート駆動装置において、
前記スイッチが前記回転モータに通電するように前記スイッチを作動させる単一のスイッチレバーと、
前記複数の操作部材とは異なる互いに同一の回転軸周りに軸支され、前記複数の操作部材にそれぞれ駆動連結された複数のスイッチカム部材を備え、
前記複数のスイッチカム部材は、該当の前記操作部材の前記回転軸周りの回動に伴い、回動方向に応じた極性で前記スイッチが作動するように前記スイッチレバーを押圧するスイッチカム部をそれぞれ有することを特徴とするシート駆動装置。
【請求項7】
請求項4に記載のシート駆動装置において、
前記各カム部材は、該当の前記筒部材の軸線に対して非平行な回転軸周りに軸支されており、
前記各筒部材に形成された外向きフランジと、
前記各カム部材に形成され、該当の前記操作部材が前記所定の初期位置にあるときに該当の前記筒部材の前記外向きフランジに近付くとともに、該当の前記操作部材の前記初期位置からの操作に伴い回動して該当の前記筒部材の前記外向きフランジから離隔するカム部と、
前記各外向きフランジ及び該当の前記カム部の間で前記筒部材の移動方向に沿う周方向の回動が自在に設けられ、該当の前記操作部材が前記初期位置にあるときに前記カム部に押圧されることで前記筒部材への前記入力軸の嵌挿が外れるように前記外向きフランジを押圧し、該当の前記操作部材の前記初期位置からの操作に伴い該当の前記カム部から解放されることで前記外向きフランジを解放する仲介部材とを備えたことを特徴とするシート駆動装置。
【請求項8】
請求項4又は7に記載のシート駆動装置において、
前記各筒部材及び該当の前記入力軸の互いに対向する両先端面間に介装される緩衝部材を備えたことを特徴とするシート駆動装置。
【請求項9】
請求項5に記載のシート駆動装置において、
前記スイッチレバーは、前記複数の操作部材とは異なる第2の回転軸周りに回動するように軸支されており、
前記複数の操作部材は、前記回転軸周りの回動に伴い、回動方向に応じて前記スイッチカム部で前記スイッチレバーの先端部を押圧することで、前記スイッチレバーを前記第2の回転軸周りに回動させて前記スイッチを作動させるものであり、
前記複数の操作部材の全ての非操作時、これら複数の操作部材の全てにおいて、前記スイッチカム部が前記スイッチレバーの先端部を押圧可能な両押圧部と、前記スイッチレバーの先端部との間に、前記第2の回転軸を中心とする周方向の隙間がそれぞれ形成されていることを特徴とするシート駆動装置。
【請求項10】
請求項6に記載のシート駆動装置において、
前記スイッチレバーは、前記複数の操作部材及び前記複数のスイッチカム部材とは異なる第2の回転軸周りに回動するように軸支されており、
前記複数の操作部材は、前記回転軸周りの回動に伴い、回動方向に応じて前記スイッチカム部で前記スイッチレバーの先端部を押圧することで、前記スイッチレバーを前記第2の回転軸周りに回動させて前記スイッチを作動させるものであり、
前記複数の操作部材の全ての非操作時、前記複数のスイッチカム部材の全てにおいて、前記スイッチカム部が前記スイッチレバーの先端部を押圧可能な両押圧部と、前記スイッチレバーの先端部との間に、前記第2の回転軸を中心とする周方向の隙間がそれぞれ形成されていることを特徴とするシート駆動装置。
【請求項11】
請求項6又は10に記載のシート駆動装置において、
前記複数の操作部材及び前記複数のスイッチカム部材とは異なる第3の回転軸周りに回動するように軸支され、該第3の回転軸を中心とする径方向に突出する被押圧部及び該被押圧部を挟む前記第3の回転軸を中心とする周方向両側から径方向に突出する一対の規制部を有するストップカムと、
前記複数のスイッチカム部材にそれぞれ形成され、回動方向に応じて前記被押圧部を選択的に押圧する一対の係合部とを備え、
前記複数の操作部材の全ての非操作時、前記複数のスイッチカム部材の全てにおいて、前記両係合部と前記被押圧部との間に、前記第3の回転軸を中心とする周方向の隙間がそれぞれ形成されており、
前記複数の操作部材のいずれか一つの操作時、該当の前記スイッチカム部材の前記係合部に前記被押圧部が押圧されて前記ストップカムが回動する際に、前記規制部が他の前記スイッチカム部材の前記係合部の回動軌跡を遮ることを特徴とするシート駆動装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、
シートクッションの側部に取着され、前記複数のクラッチ機構を収容する筐体を備え、
前記複数の位置調整機構は、前記シートクッションの側部に取着され、該当の前記出力軸にトルクケーブルを介して駆動される伝達装置をそれぞれ備え、
前記筐体は、前記複数の伝達装置に挟まれる前記シートクッションの側部の中央部に配置されていることを特徴とするシート駆動装置。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、
シートクッションの側部の骨格をなすロアアームに取着され、前記複数のクラッチ機構を収容する筐体を備え、
前記複数の位置調整機構は、
車両フロアに固定されるロアレール、該ロアレールに前後方向に移動可能に装着されるアッパレール、該当の前記出力軸にトルクケーブルを介して駆動され前記ロアレールに対して前記アッパレールを前後方向に移動させる伝達装置とを備えるスライド機構と、
前記アッパレール及び前記ロアアームの前端部にそれぞれ回動自在に連結されるフロントリンク、前記アッパレールの後端部及び前記ロアアームの後端部にそれぞれ回動自在に連結されるリアリンクを備え、前記アッパレールに対して前記ロアアームを昇降させるリフタ機構とを含み、
前記伝達装置は、シート幅方向に延びる軸線周りに前記アッパレールに回動自在に連結されており、
前記伝達装置に一方の端部が回動自在に連結され、前記フロントリンク及び前記リアリンクのいずれか一方又は前記ロアアームに他方の端部が回動自在に連結されたリンクを備えたことを特徴とするシート駆動装置。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、
シートクッションの側部の骨格をなすロアアームに取着され、前記複数のクラッチ機構を収容する筐体と、
前記複数の操作部材を除き、前記筐体を含めて前記シートクッションの側部を覆うサイドカバーとを備え、
前記複数の操作部材の少なくとも一つは、シート幅方向に延びる軸線周りに回動するように前記筐体に軸支されてその軸線を中心とする径方向に延在していることを特徴とするシート駆動装置。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、
シートクッションの側部の骨格をなすロアアームのシート幅方向外側面に取着され、前記複数のクラッチ機構を収容する筐体を備え、
前記複数の操作部材は、前記筐体のシート幅方向外側面に支持されており、
前記筐体は、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜していることを特徴とするシート駆動装置。
【請求項16】
請求項15に記載のシート駆動装置において、
前記回転モータは、その軸線がシート幅方向内側に向かうに従い下方に向かうように、前記シートクッションの下方で前記筐体に取着されていることを特徴とするシート駆動装置。
【請求項1】
単一の回転モータと、
複数の位置調整機構に対応して個別に配設された複数の操作部材と、
前記複数の位置調整機構に対応して個別に配設され、前記複数の操作部材のいずれかの操作に伴い、該当する前記位置調整機構への出力軸と前記回転モータに回転駆動される入力軸とを選択的に接続する複数のクラッチ機構と、
前記複数の操作部材のいずれかの操作に伴い、操作方向に応じた極性で前記回転モータに通電する単一のスイッチとを備えたことを特徴とするシート駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート駆動装置において、
前記複数の操作部材は、互いに同一の回転軸周りに回動するように軸支されていることを特徴とするシート駆動装置。
【請求項3】
請求項1に記載のシート駆動装置において、
前記複数の操作部材は、同一の回転軸周りに回動するように軸支されている前記操作部材を1組とする複数組に分けられていることを特徴とするシート駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、
前記各クラッチ機構は、該当の前記出力軸が一体回転するように、且つ、軸線方向に移動可能に嵌挿され、前記入力軸側への軸線方向の移動に伴い該入力軸が一体回転するように嵌挿される筒部材を備え、
前記入力軸が嵌挿される側に前記各筒部材を軸線方向に付勢する第1付勢部材と、
前記各操作部材に駆動連結され、該操作部材が所定の初期位置にあるときに該当の前記筒部材への前記入力軸の嵌挿を外すとともに、前記操作部材の前記初期位置からの操作に伴い前記第1付勢部材に付勢される該当の前記筒部材への前記入力軸の嵌挿を許容するカム部材と、
前記各操作部材が前記初期位置に保持されるように前記第1付勢部材の付勢力に抗して該当の前記操作部材を付勢する第2付勢部材とを備えたことを特徴とするシート駆動装置。
【請求項5】
請求項2に記載のシート駆動装置において、
前記スイッチが前記回転モータに通電するように前記スイッチを作動させる単一のスイッチレバーを備え、
前記複数の操作部材は、前記回転軸周りの回動に伴い、回動方向に応じた極性で前記スイッチが作動するように前記スイッチレバーを押圧するスイッチカム部をそれぞれ有することを特徴とするシート駆動装置。
【請求項6】
請求項3に記載のシート駆動装置において、
前記スイッチが前記回転モータに通電するように前記スイッチを作動させる単一のスイッチレバーと、
前記複数の操作部材とは異なる互いに同一の回転軸周りに軸支され、前記複数の操作部材にそれぞれ駆動連結された複数のスイッチカム部材を備え、
前記複数のスイッチカム部材は、該当の前記操作部材の前記回転軸周りの回動に伴い、回動方向に応じた極性で前記スイッチが作動するように前記スイッチレバーを押圧するスイッチカム部をそれぞれ有することを特徴とするシート駆動装置。
【請求項7】
請求項4に記載のシート駆動装置において、
前記各カム部材は、該当の前記筒部材の軸線に対して非平行な回転軸周りに軸支されており、
前記各筒部材に形成された外向きフランジと、
前記各カム部材に形成され、該当の前記操作部材が前記所定の初期位置にあるときに該当の前記筒部材の前記外向きフランジに近付くとともに、該当の前記操作部材の前記初期位置からの操作に伴い回動して該当の前記筒部材の前記外向きフランジから離隔するカム部と、
前記各外向きフランジ及び該当の前記カム部の間で前記筒部材の移動方向に沿う周方向の回動が自在に設けられ、該当の前記操作部材が前記初期位置にあるときに前記カム部に押圧されることで前記筒部材への前記入力軸の嵌挿が外れるように前記外向きフランジを押圧し、該当の前記操作部材の前記初期位置からの操作に伴い該当の前記カム部から解放されることで前記外向きフランジを解放する仲介部材とを備えたことを特徴とするシート駆動装置。
【請求項8】
請求項4又は7に記載のシート駆動装置において、
前記各筒部材及び該当の前記入力軸の互いに対向する両先端面間に介装される緩衝部材を備えたことを特徴とするシート駆動装置。
【請求項9】
請求項5に記載のシート駆動装置において、
前記スイッチレバーは、前記複数の操作部材とは異なる第2の回転軸周りに回動するように軸支されており、
前記複数の操作部材は、前記回転軸周りの回動に伴い、回動方向に応じて前記スイッチカム部で前記スイッチレバーの先端部を押圧することで、前記スイッチレバーを前記第2の回転軸周りに回動させて前記スイッチを作動させるものであり、
前記複数の操作部材の全ての非操作時、これら複数の操作部材の全てにおいて、前記スイッチカム部が前記スイッチレバーの先端部を押圧可能な両押圧部と、前記スイッチレバーの先端部との間に、前記第2の回転軸を中心とする周方向の隙間がそれぞれ形成されていることを特徴とするシート駆動装置。
【請求項10】
請求項6に記載のシート駆動装置において、
前記スイッチレバーは、前記複数の操作部材及び前記複数のスイッチカム部材とは異なる第2の回転軸周りに回動するように軸支されており、
前記複数の操作部材は、前記回転軸周りの回動に伴い、回動方向に応じて前記スイッチカム部で前記スイッチレバーの先端部を押圧することで、前記スイッチレバーを前記第2の回転軸周りに回動させて前記スイッチを作動させるものであり、
前記複数の操作部材の全ての非操作時、前記複数のスイッチカム部材の全てにおいて、前記スイッチカム部が前記スイッチレバーの先端部を押圧可能な両押圧部と、前記スイッチレバーの先端部との間に、前記第2の回転軸を中心とする周方向の隙間がそれぞれ形成されていることを特徴とするシート駆動装置。
【請求項11】
請求項6又は10に記載のシート駆動装置において、
前記複数の操作部材及び前記複数のスイッチカム部材とは異なる第3の回転軸周りに回動するように軸支され、該第3の回転軸を中心とする径方向に突出する被押圧部及び該被押圧部を挟む前記第3の回転軸を中心とする周方向両側から径方向に突出する一対の規制部を有するストップカムと、
前記複数のスイッチカム部材にそれぞれ形成され、回動方向に応じて前記被押圧部を選択的に押圧する一対の係合部とを備え、
前記複数の操作部材の全ての非操作時、前記複数のスイッチカム部材の全てにおいて、前記両係合部と前記被押圧部との間に、前記第3の回転軸を中心とする周方向の隙間がそれぞれ形成されており、
前記複数の操作部材のいずれか一つの操作時、該当の前記スイッチカム部材の前記係合部に前記被押圧部が押圧されて前記ストップカムが回動する際に、前記規制部が他の前記スイッチカム部材の前記係合部の回動軌跡を遮ることを特徴とするシート駆動装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、
シートクッションの側部に取着され、前記複数のクラッチ機構を収容する筐体を備え、
前記複数の位置調整機構は、前記シートクッションの側部に取着され、該当の前記出力軸にトルクケーブルを介して駆動される伝達装置をそれぞれ備え、
前記筐体は、前記複数の伝達装置に挟まれる前記シートクッションの側部の中央部に配置されていることを特徴とするシート駆動装置。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、
シートクッションの側部の骨格をなすロアアームに取着され、前記複数のクラッチ機構を収容する筐体を備え、
前記複数の位置調整機構は、
車両フロアに固定されるロアレール、該ロアレールに前後方向に移動可能に装着されるアッパレール、該当の前記出力軸にトルクケーブルを介して駆動され前記ロアレールに対して前記アッパレールを前後方向に移動させる伝達装置とを備えるスライド機構と、
前記アッパレール及び前記ロアアームの前端部にそれぞれ回動自在に連結されるフロントリンク、前記アッパレールの後端部及び前記ロアアームの後端部にそれぞれ回動自在に連結されるリアリンクを備え、前記アッパレールに対して前記ロアアームを昇降させるリフタ機構とを含み、
前記伝達装置は、シート幅方向に延びる軸線周りに前記アッパレールに回動自在に連結されており、
前記伝達装置に一方の端部が回動自在に連結され、前記フロントリンク及び前記リアリンクのいずれか一方又は前記ロアアームに他方の端部が回動自在に連結されたリンクを備えたことを特徴とするシート駆動装置。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、
シートクッションの側部の骨格をなすロアアームに取着され、前記複数のクラッチ機構を収容する筐体と、
前記複数の操作部材を除き、前記筐体を含めて前記シートクッションの側部を覆うサイドカバーとを備え、
前記複数の操作部材の少なくとも一つは、シート幅方向に延びる軸線周りに回動するように前記筐体に軸支されてその軸線を中心とする径方向に延在していることを特徴とするシート駆動装置。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート駆動装置において、
シートクッションの側部の骨格をなすロアアームのシート幅方向外側面に取着され、前記複数のクラッチ機構を収容する筐体を備え、
前記複数の操作部材は、前記筐体のシート幅方向外側面に支持されており、
前記筐体は、上方に向かうに従いシート幅方向内側に向かうように傾斜していることを特徴とするシート駆動装置。
【請求項16】
請求項15に記載のシート駆動装置において、
前記回転モータは、その軸線がシート幅方向内側に向かうに従い下方に向かうように、前記シートクッションの下方で前記筐体に取着されていることを特徴とするシート駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【公開番号】特開2013−107624(P2013−107624A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−178451(P2012−178451)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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