説明

シート

【課題】複数の被調整部を操作するための複数の操作部材の操作性が良好なシートを得る。
【解決手段】車両用シート10は、着座するためのシート本体に設けられ第1の操作系から伝達される操作力によって調整されるシートリフタ22と、シート本体に設けられ第2の操作系から伝達される操作力によって調整されるリクライニング機構20と、シート本体の所定位置に着座者による操作可能に設けられた操作力付与部28とを備える。操作力付与部28は、リフタノブ32を操作してシートリフタ22を調整する第1の状態と、リクライニングレバー30を操作してリクライニング機構20を調整する第2の状態とを独立して取り得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば乗員が着座するために自動車等に搭載されるシートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートとして、リクライニング機構のロックを解除してシートバックの角度調整を可能にするための操作レバーと、シートクッション後部の高さを調整するためのノブとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。操作レバーとノブとは、それぞれシートの幅方向外端部に互いに離間して配置されることで、互いに干渉することなく独立して操作可能とされている。
【0003】
また、リクライニングレバーを2段階操作可能とし、第1段階の操作でリクライニング機構のロックを解除してシートバックの角度調整を可能にし、第2段階の操作でシートバックの角度調整を可能にしたままハイトレバーが引かれてシートが上昇するように構成した車両用シートが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−130294号公報
【特許文献2】特開平8−26007号公報
【特許文献3】特開2000−255295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の前者の技術では、操作レバー及びノブを別個に設けているため、両者を共に操作性の良好な位置に配置することが困難であった。一方、後者の技術では、シート高さロック機構のロック解除(ハイトレバー操作)をリクライニングのロック解除から独立して行うことができず、操作性の向上には寄与しない。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、複数の被調整部を操作するための複数の操作部材の操作性が良好なシートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係るシートは、着座するためのシート本体に設けられ、第1の操作系から伝達される操作力によって調整される第1の被調整部と、前記シート本体に設けられ、第2の操作系から伝達される操作力によって調整される第2の被調整部と、前記シート本体の所定位置に着座者により操作可能に設けられ、前記第1の操作系に操作力を入力する第1の操作状態と、前記第2の操作系に操作力を入力する第2の操作状態とを独立して取り得る操作力付与部と、を備えている。
【0007】
請求項1記載のシートでは、操作部を第1の操作状態になるように操作すると、この操作力によって(機械的に)第1の被調整部が調整されるか、又は、この操作力によって第1の被調整部が調整可能な状態(例えば、ロック解除状態等)になる。一方、操作部を第2の操作状態になるように操作すると、この操作力によって第2の被調整部が調整されるか、又は、この操作力によって第2の被調整部が調整可能な状態になる。
【0008】
これにより、シート本体の所定位置に設けられた操作力付与部によって、2つの被調整部を独立して調整することができる。このように1つの(共通の)操作力付与部に2つの操作力付与機能を持たせることで、2つの被調整部を操作するための2つ操作部を独立して(離間して)設けた構成と比較して、着座者による操作部位の配置や大きさに対する制約が低減され、設計自由度の向上が図られる。これにより例えば、2つの被調整部を独立して操作し得る操作力付与部を、シート本体における操作性の良好な位置に配置することで、2つの被調整部を共に良好な操作性で操作することが可能になる。
【0009】
このように、請求項1記載のシートでは、複数の被調整部を操作するための複数の操作部材の操作性が良好である。なお、3つ以上の被調整部とこれらに対応した3つ以上の操作力付与機能を有する操作力付与部とを備えた構成としても良い。
【0010】
請求項2記載の発明に係るシートは、請求項1記載のシートにおいて、前記第1の操作力付与部は、前記シート本体に対し相対変位することで非操作位置と操作位置とを取り得るように設けられ、前記非操作位置から操作位置への操作力によって前記第1の被調整部を調整するための第1操作部材と、前記シート本体に対し相対変位することで非操作位置と操作位置とを取り得るように設けられ、前記非操作位置から操作位置への操作力によって前記第2の被調整部を調整するための第2操作部材と、前記第1操作部材と第2操作部材とを、該第1操作部材及び第2操作部材の互いの非操作位置での配置スペース又は操作スペースがオーバラップするように、少なくとも前記第1操作部材を支持する操作系支持部と、を備えている。
【0011】
請求項2記載のシートでは、操作力付与部は、独立して操作可能な第1操作部材と第2操作部材とを含んで構成されている。第1操作部材を非操作位置から操作位置に操作すると、この操作力によって(機械的に)第1の被調整部が調整されるか、又は、この操作力によって第1の被調整部が調整可能な状態(例えば、ロック解除状態等)になる。一方、第2操作部材を非操作位置から操作位置に操作すると、この操作力によって第2の被調整部が調整されるか、又は、この操作力によって第2の被調整部が調整可能な状態になる。
【0012】
ここで、操作系支持部に直接的に支持された第1操作部材と、操作系支持部に直接的又は間接的に支持された第2操作部材とは、それぞれの非操作位置で少なくとも一部が互いにオーバラップする(占有空間を共用する)か、それぞれの操作スペース(操作位置への移動軌跡)がオーバラップするか、又は何れか一方の被操作位置での占有空間が他方の非操作位置への操作スペースにオーバラップするため、それぞれを操作性の良好な位置に配置することができる。すなわち、着座者にとって操作性の良好な範囲は限られるが、第1操作部材と第2操作部材との配置又は操作スペースをオーバラップさせることで、これらの配置や大きさに対する制約が低減され、設計自由度の向上が図られた。また、独立して操作可能な第1操作部材と第2操作部材とを備えることで、1つの操作部材で2つ被調整部を操作するための制約をなくすことができる。
【0013】
請求項3記載の発明に係るシートは、請求項2記載のシートにおいて、前記第2操作部材は、非操作位置に位置する状態で、非操作位置に位置する前記第1操作部材に格納される。
【0014】
請求項3記載のシートでは、非操作位置に位置する第2操作部材が非操作位置に位置する第1操作部材に格納される(ほぼ全体としてオーバラップする)ため、特に第1操作部材と第2操作部材との配置に対する制約が低減された。
【0015】
請求項4記載の発明に係るシートは、請求項2又は請求項3記載のシートにおいて、前記第2操作部材は、前記シート本体に対する相対変位可能に前記第1操作部材に支持されている。
【0016】
請求項4記載のシートでは、第2操作部材が第1操作部材を介して操作系支持部(シート本体)に支持されている。このため、第1操作部材、第2操作部材のそれぞれの操作(操作位置への移動)に伴う干渉が生じ難い構成が実現される。
【0017】
請求項5記載の発明に係るシートは、請求項4記載のシートにおいて、前記第1操作部材は、一端側が所定軸線廻りに回動可能に前記シート本体に支持されると共に他端側が操作されて前記軸線廻りに回動するようになっており、前記第2操作部材は、第2の被調整部を調整する際の操作力が前記第1操作部材の回動軸心を通る方向に沿って作用するように、該第1操作部材に支持されている。
【0018】
請求項5記載のシートでは、第1操作部材を所定の軸線廻りに回動することで第1の被調整部に操作力を伝え、第2操作部材を被操作位置から操作位置に移動して第1の被調整部に操作力を伝える。この第2操作部材を操作する際の操作力は、第1操作部材の回動軸線を通る(交差する)ように第1の操作部材に支持されるため、第2操作部材の操作に伴って第1操作部材が作動してしまうことが防止される。
【0019】
請求項6記載の発明に係るシートは、請求項2乃至請求項5の何れか1項記載のシートにおいて、前記第1操作部材は、シート前後方向の一端側がシート幅方向に沿う軸線廻りに回動可能に前記シート本体に支持されて、シート前後方向の他端側がシート上下方向に操作されるようになっており、前記第2操作部材は、シート前後方向の一端側がシート幅方向に沿う軸線廻りに回動可能に前記シート本体又は前記第1操作部材に支持されて、シート前後方向の他端側がシート上下方向に操作されるようになっている。
【0020】
請求項6記載のシートでは、第1操作部材と第2操作部材とは、互いに同軸的又は平行となるシート幅方向に沿った軸線廻りに独立して回動可能に支持されており、該支持端とは前後反対側の端部を略上下方向に操作するようになっている。第1操作部材と第2操作部位との操作方向が同じであるため、着座者(操作者)に対し違和感のない操作感を与えることができる。
【0021】
請求項7記載の発明に係るシートは、請求項6記載のシートにおいて、前記第2操作部材は、前記第1操作部材の回動軸線と平行な回動軸線廻りに回動可能に該第1操作部材に支持されると共に、前記第2の被調整部にケーブルを介して調整可能に連結されており、かつ前記第2の被調整部を調整するための操作に伴う前記ケーブルの引張方向が前記第1操作部材の回動軸心を通るシート前後方向に沿うようになっている。
【0022】
請求項7記載のシートでは、第1操作部材を操作してシート幅方向に沿う軸線廻りに回動させると、第1の被調整部に操作力が伝わる。第2操作部材を操作してシート幅方向に沿う軸線廻りに回動させると、第1の被調整部に操作力が伝わる。このとき、操作力はケーブルのシート前後方向に沿った張力として第2の被調整部に伝わる。そして、この張力作用方向が第1操作部材の回動軸線を通る(交差する)ため、第1操作部材に支持された第2操作部材の操作に伴って該第1操作部材が作動してしまうことが防止される。
【0023】
請求項8記載の発明に係るシートは、請求項2乃至請求項5の何れか1項記載のシートにおいて、前記第1操作部材は、シート前後方向の一端側がシート幅方向に沿う軸線廻りに回動可能に前記シート本体に支持されて、シート前後方向の他端側がシート上下方向に操作されるようになっており、前記第2操作部材は、シート幅方向の一端側がシート前後方向に沿う軸線廻りに回動可能に前記シート本体又は前記第1操作部材に支持されて、シート幅方向の他端側がシート上下方向に操作されるようになっている。
【0024】
請求項8記載のシートでは、第1操作部材と第2操作部材との操作方向が異なるため、着座者の意図しない調整対象の操作部材の操作が防止され、着座者に対し良好な操作感を与えることができる。
【0025】
請求項9記載の発明に係るシートは、請求項2乃至請求項5の何れか1項記載のシートにおいて、前記第1操作部材は、シート前後方向の一端側がシート幅方向に沿う軸線廻りに回動可能に前記シート本体に支持されて、シート前後方向の他端側がシート上下方向に操作されるようになっており、前記第2操作部材は、シート前後方向の一端側がシート上下方向に沿う軸線廻りに回動可能に前記シート本体又は前記第1操作部材に支持されて、シート前後方向の他端側がシート幅方向に操作されるようになっている。
【0026】
請求項9記載のシートでは、第1操作部材と第2操作部材との操作方向が異なるため、着座者の意図しない調整対象の操作部材の操作が防止され、着座者に対し良好な操作感を与えることができる。
【0027】
請求項10記載の発明に係るシートは、請求項2乃至請求項9の何れか1項記載のシートにおいて、前記第2操作部材は、前記シート本体に対する相対変位可能に前記第1操作部材に支持されると共に、被覆部が前記第1操作部材に固定された被覆ケーブルのケーブルを介して前記第2の被調整部に該第2の被調整部の調整可能に連結されており、前記被覆ケーブルは、前記第1操作部材の前記操作位置への移動に伴って前記被覆部に張力を生じさせない長さを有する。
【0028】
請求項10記載のシートでは、第2操作部材を操作すると、被覆内のケーブルが引っ張られて(被覆に対し相対移動して)第2の被調整部に操作力が伝わる。被覆ケーブルの長さは、第1操作部材が操作位置に至っても被覆部に張力が作用しない(被覆部の変位を吸収し得る)ように設定されているため、第1操作部材を操作した場合に、被覆ケーブルを構成する被覆の固定端が第1操作部材と共に変位する。このため、第1操作部材に支持された第2操作部材(ケーブル)と被覆との相対変位は生じることがなく、第1操作部材の操作力が第2の被調整部に伝達されてしまうことが防止される。
【0029】
請求項11記載の発明に係るシートは、請求項2乃至請求項5の何れか1項記載のシートにおいて、前記第1操作部材は、シート前後方向の一端側がシート幅方向に沿う軸線廻りに回動可能に前記シート本体に支持されて、シート前後方向の他端側がシート上下方向に操作されるようになっており、前記第2操作部材は、シート前後方向に移動可能に前記第1操作部材に支持されて、該シート前後方向に操作されるようになっている。
【0030】
請求項11記載のシートでは、第1操作部材と第2操作部材との操作方向が異なるため、着座者の意図しない調整対象の操作部材の操作が防止され、着座者に対し良好な操作感を与えることができる。
【0031】
請求項12記載の発明に係るシートは、請求項11記載のシートにおいて、前記第2操作部材は、非操作位置で前記第1操作部材のシート前後方向端部から一部が突出しており、該第1操作部材の内方に押し込むように操作される。
【0032】
請求項12記載のシートでは、第1操作部材におけるシート幅方向に沿う軸線廻りの回動操作に対し、第2操作部材は第1操作部材内に対する押し込み操作で第2の被調整部に操作力が伝わる。このため、着座者の意図しない調整対象の操作部材の操作が確実に防止される。
【0033】
請求項13記載の発明に係るシートは、請求項11又は請求項12記載のシートにおいて、前記第2操作部材は、前記第1操作部材の回動軸線に対し前記第2の被調整部とはシート前後方向の反対側に位置すると共に、該第2の被調整部に操作力を伝達するためのリンク機構を介して連結されており、前記リンク機構は、前記第2操作部材が前記非操作位置に位置する状態で前記第1操作部材の回動軸線と同軸的に位置するリンク軸を含む。
【0034】
請求項13記載のシートでは、第2操作部材を第1操作部材に対し第2の被調整部側に向けて押し込むと、この押し込み操作力は、主にリンク機構(を構成するリンク)の圧縮力として第2の被調整部に伝わる。一方、第2操作部材が非操作位置に位置する状態で第1操作部材を操作すると、リンク機構は第1操作部材の回動軸と同軸的に位置するリンク軸において角変位することで、該第1操作部材の操作位置への角変位を許容する。
【0035】
このように、第2操作部材から第2の被調整部への荷重伝達にリンク機構を用いたため、第1操作部材の操作を妨げないように、第2操作部材を第1操作部材の回動軸線に対し第2の被調整部とは反対側に配置することができる。
【0036】
請求項14記載の発明に係るシートは、請求項13記載のシートにおいて、前記第2の被調整部は、前記リンク機構から伝達されるシート前後方向に沿う操作力をシート幅方向に沿う所定の軸線廻りのモーメントに変換するアーム部材を有しており、前記リンク機構は、前記第2操作部材からの荷重入力部位と前記アーム部材への荷重出力部位と野シート上下方向の高さが異なる。
【0037】
請求項14記載のシートでは、リンク機構がアーム部材に操作力を伝達すると、アーム部材が変換したモーメントによって第2の被調整部が調整される。リンク機構は、例えば中間部が屈曲や湾曲等することで、荷重入力部位と出力部位との高さが異っている。このため、第2操作材部位の操作力や操作ストロークの設定を行うことが可能となる。
【0038】
例えばリンク機構を第2の被調整部の所定の軸線に近い位置でアーム部材に連結して(モーメントアームを短くして)操作ストロークを短くしたり、また例えばリンク機構を第2の被調整部の所定の軸線から遠い位置でアーム部材に連結して(モーメントアームを長くして)操作力を小さくしたりすることができる。特に、リンク軸に対し第2の被調整部側のリンクに上記屈曲部等を設けた構成では、第1及び第2操作部材の第2の被調整部(シート本体)に対する位置を変更することなく、該被調整部側のリンクのアーム部材との連結位置に応じた形状変更等によって操作力や操作ストロークを設定することができる。
【0039】
請求項15記載の発明に係るシートは、請求項13又は請求項14記載のシートにおいて、前記第1操作部材又は前記シート本体に設けられ、前記第2操作部材の非操作位置から操作位置への移動に伴う前記リンク機構の前記リンク軸廻りの角変位を規制するリンクガイドをさらに備えた。
【0040】
請求項15記載のシートでは、リンクガイドによって、第1操作部材の非操作時でかつ第2操作部材の操作時におけるリンク機構のリンク軸での角変位が規制されるので、第2操作部材の操作力を第2の被調整部に確実に伝えることができる。
【0041】
請求項16記載の発明に係るシートは、請求項15記載のシートにおいて、前記リンクガイドは、前記第1操作部材に一体に形成されている。
【0042】
請求項16記載のシートでは、第1操作部材にリンクガイドを一体に設けたので、構造が簡単である。
【0043】
請求項17記載の発明に係るシートは、請求項15記載のシートにおいて、前記第1操作部材及び第2操作部材は、前記シート本体のシート幅方向端部に配置されており、前記リンクガイドは、前記シート本体を構成し前記リンク機構をシート幅方向外側から覆うカバー部材に一体に形成されている。
【0044】
請求項17記載のシートでは、シート本体のシート幅方向端部(側部)に配設されたリンク機構を覆うカバー部材にリンクガイドを一体に設けたので、構造が簡単である。
【0045】
請求項18記載の発明に係るシートは、請求項11記載のシートにおいて、前記第2操作部材は、前記非操作位置で前記第1操作部材のシート前後方向端部から一部が突出しており、該第1操作部材の外方に引き出すように操作される。
【0046】
請求項18記載のシートでは、第1操作部材におけるシート幅方向に沿う軸線廻りの回動操作に対し、第2操作部材は第1操作部材からの引き出し操作で第2の被調整部に操作力が伝わる。このため、着座者の意図しない調整対象の操作部材の操作が確実に防止される。
【0047】
請求項19記載の発明に係るシートは、請求項18記載のシートにおいて、前記第2操作部材は、前記第1操作部材の回動軸線に対し前記第2の被調整部とはシート前後方向の反対側に位置すると共に、該第2の被調整部に操作力を伝達するためのリンク機構を介して連結されており、前記リンク機構は、前記第2操作部材が前記非操作位置に位置する状態で前記第1操作部材の回動軸線と同軸的に位置するリンク軸を含む。
【0048】
請求項19記載のシートでは、第2操作部材を第1操作部材に対し第2の被調整部とは反対側に向けて引き出すと、この引き出し操作力は、主にリンク機構(を構成するリンク)の引張力として第2の被調整部に伝わる。一方、第2操作部材が非操作位置に位置する状態で第1操作部材を操作すると、リンク機構は第1操作部材の回動軸と同軸的に位置するリンク軸において角変位することで、該第1操作部材の操作位置への角変位を許容する。
【0049】
このように、第2操作部材から第2の被調整部への荷重伝達にリンク機構を用いたため、第1操作部材の操作を妨げないように、第2操作部材を第1操作部材の回動軸線に対し第2の被調整部とは反対側に配置することができる。
【0050】
請求項20記載の発明に係るシートは、請求項18記載のシートにおいて、前記第2操作部材は、前記第2操作部材は、前記第1操作部材の回動軸線に対し前記第2の被調整部とはシート前後方向の反対側に位置すると共に、前記第2の被調整部にケーブルを介して操作力の伝達可能連結されている。
【0051】
請求項20記載のシートでは、第2操作部材を第1操作部材に対し第2の被調整部とは反対側に向けて引き出すと、この引き出し操作力は、ケーブルの張力として第2の被調整部に伝わる。一方、第2操作部材が非操作位置に位置する状態で第1操作部材を操作すると、ケーブルは適宜湾曲することで、該第1操作部材の操作位置への角変位を許容する。
【0052】
このように、第2操作部材から第2の被調整部への荷重伝達にケーブルを用いたため、第1操作部材の操作を妨げないように、第2操作部材を第1操作部材の回動軸線に対し第2の被調整部とは反対側に配置することができる。
【0053】
請求項21記載の発明に係るシートは、請求項1乃至請求項20の何れか1項記載のシートにおいて、前記第1の被調整部は、前記シート本体の上下方向の位置を調整するための高さ調整機構である。
【0054】
請求項21記載のシートでは、第1操作部材を操作する操作力で高さ調整機構が作動してシートの高さが調整される。比較的操作量、操作力が大きいシート高さ調整用途に対し、例えば相対的に(第2操作部材よりも)大型とすることができる第1操作部材を用いることで、シート高さ調整の良好な操作性を得ることができる。
【0055】
請求項22記載の発明に係るシートは、請求項1乃至請求項21の何れか1項記載のシートにおいて、前記第2の被調整部は、シートクッションに対するシートバックの角度のロック状態とロック解除状態とを切り替えるためのリクライニング機構である。
【0056】
請求項22記載のシートでは、第2操作部材を操作する操作力でリクライニングロック機構のロック解除が行われる。通常1動作で行われるロック解除用途に、例えば相対的に(第1操作部材よりも)小型とすることができる第2操作部材を用いることで、相対的に操作力又は操作量が大きく高い他の用途(例えば、請求項21の高さ調整)に第1操作部材を用いることができる。
【発明の効果】
【0057】
以上説明したように本発明に係るシートは、複数の被調整部を操作するための複数の操作部材の操作性が良好であるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
本発明の第1の実施形態に係るシートとしての車両用シート10について、図1乃至図5に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印Wは、それぞれ車両用シート10が適用された自動車の前方向(進行方向)、上方向、車幅方向を示しており、これらの上方向、前方向、幅方向は、車両用シート10の上方向、前方向、幅方向に一致している。以下単に前後方向、上下方向、幅方向というときは上記した車両用シート(自動車)を基準とした各方向を示す。
【0059】
図3には、車両用シート10の概略全体構成が正面図にて示されている。この図に示される如く、車両用シート10は、自動車の乗員が着座するシートクッション12と、着座した乗員の上体を背後から支持するシートバック14とを有する。図5に示される如く、シートクッション12を構成するシートクッションフレーム16の後端部とシートバック14を構成するシートバックフレーム18の下端部とは、第2の被調節部としてのリクライニング機構20を介して相対角度の調整可能に連結されている。リクライニング機構20は、幅方向の両端にそれぞれ設けられており、これらのリクライニング機構20は、図示しない連動機構にて連動するようになっている。
【0060】
図5に示される如く、リクライニング機構20は、シートクッションフレーム16に固定されるクッション側ブラケット20Aと、リクライニング軸20Bを介してクッション側ブラケット20Aに連結されると共にシートバックフレーム18に固定されるバック側ブラケット20Cと、クッション側ブラケット20Aとバック側ブラケット20Cとの、リクライニング軸20B廻りの相対角度を多段階又は無段階に調整可能でかつ任意の相対角度でロック可能なロック連結部20Dと、クッション側ブラケット20Aとバック側ブラケット20Cとの相対角変位を阻止するロック側にロック連結部20Dを付勢するトーションスプリング20Eとを主要構成要素として構成されている。また、シート幅方向一方側(例えば車幅方向外側)のリクライニング機構20は、長手方向の一端側がリクライニング軸20Bに一体回転可能に連結されたロック解除アーム20Fを備えている。ロック連結部20Dについては公知の各種構造を取り得るので、構造の説明は省略する。
【0061】
これら一対のリクライニング機構20は、ロック連結部20Dのロック状態において、シートクッション12(シートクッションフレーム16)に対しシートバック14(シートバックフレーム18)を任意の傾斜角で保持する構成である。また、一対のリクライニング機構20は、トーションスプリング20Eの付勢力に抗してロック解除アーム20Fを図5に示す矢印A方向に回動すると、この回動によって直接的に、又は連動機構によってこの回動が伝達されて、それぞれのロック連結部20Dによるロック状態を解除するようになっている。
【0062】
シートクッション12とシートバック14との間には、図示しないリターンスプリングが配設されており、各リクライニング機構20のロック解除状態でシートバック14に負荷を掛けない場合には、シートバック14がシートクッション12に対し所定位置まで前傾するようになっている。一方、各リクライニング機構20のロック解除状態においてシートバック14に所定値以上の後向き荷重を作用させると、シートバック14がシートクッション12に対し後傾するようになっている。そして、シートバック14のシートクッション12に対する任意の傾斜角で、ロック解除アーム20Fの操作力を解除すると、トーションスプリング20Eの付勢力によってリクライニング機構20がロック状態に復帰し、該シートクッション12に任意の傾斜角でシートバック14を保持するようになっている。
【0063】
これらリクライニング機構20のロック解除は、リクライニングレバー30からの操作力を第2の操作系としての被覆ケーブル36(何れも後述)がロック解除アーム20Fに伝達することで果たされるようになっている。
【0064】
また、車両用シート10は、図4に示される如き第1の被調整部としてのシートリフタ22を備えている。シートリフタ22は、それぞれ上下端がアッパレール24とシートクッションフレーム16とに回転自在に連結された前後一対のリンク22A、22Bを備えており、該アッパレール24とシートクッションフレーム16と共に4節リンクを構成している。アッパレール24は、車体フロアに固定されたロアレール26(図3参照)に前後方向のスライド可能に支持されている。
【0065】
前後のリンク22A、22Bは、それぞれの上下の連結部(回転軸)を結ぶ仮想直線が略平行となるように互いに後傾して配置されており、その後傾角度を変化させることで、シートクッションフレーム16をアッパレール24に対し上下方向に接離させる構成とされている。なお、図4の実線、想像線は、それぞれシートクッションフレーム16(シートクッション12)のアッパレール24に対する下限位置、上限位置を示している。
【0066】
また、シートリフタ22は、シートクッションフレーム16に回転自在に軸支されたリフタギヤ22Cを備えており、該リフタギヤ22Cにおける回転軸の上方部分には連結リンク22Dの前端部が回転自在に連結されている。連結リンク22Dの後端は、リンク22Bとシートクッションフレーム16との連結部に回転自在に連結されている。これにより、シートリフタ22では、該リフタギヤ22Cを矢印B方向に回動させるとリンク22Bが起立側に回動してシートクッションフレーム16が上方に変位し、該リフタギヤ22Cを矢印Bとは逆の矢印C方向に回動させるとリンク22Bが後傾側に回動してシートクッションフレーム16が下方に変位するようになっている。
【0067】
シートリフタ22は、リフタギヤ22Cに噛み合わされたピニオン22Eを備え、ピニオン22Eは、後に詳述するリフタノブ32と第1の操作系としてのポンプ式リフタ機構22Fを介して連結されている。ポンプ式リフタ機構22Fは、シートクッションフレーム16に支持されており、リフタノブ32の矢印D方向への回動によってピニオン22Eを介してリフタギヤ22Cを矢印B方向に回動させ、リフタノブ32の矢印D側への回動位置(以下、上側操作位置という)から非操作位置としての中立位置への復帰の際にはピニオン22Eに操作力を伝達しない構成とされている。
【0068】
同様に、ポンプ式リフタ機構22Fは、リフタノブ32の矢印E方向への回動によってピニオン22Eを介してリフタギヤ22Cを矢印C方向に回動させ、リフタノブ32の矢印E側への回動位置(以下、下側操作位置という)から中立位置への復帰の際にはピニオン22Eに操作力を伝達しない構成とされている。
【0069】
また、ポンプ式リフタ機構22Fは、リフタギヤ22C側からの力でピニオン22Eが反転しないようにブレーキ機能を有する。なお、ポンプ式リフタ機構22Fは、リフタノブ32を中立位置側に付勢する付勢部材を含んでおり、リフタノブ32の中立位置への復帰には操作力を要しない構成とされている。
【0070】
以上により、シートリフタ22は、リフタノブ32を中立位置と矢印D側の回動位置との間で往復揺動操作することで車体フロアに対しシートクッション12を上昇させ、リフタノブ32を中立位置と矢印E側の回動位置との間で往復揺動操作することで車体フロアに対しシートクッション12を下降させ、かつシートクッション12を着座荷重に抗して任意の高さで保持することができるようになっている。
【0071】
図3に示される如く、シートクッション12の幅方向端部(例えば車幅方向外側)には、車両用シート10のリクライニング角度及びフロアに対する高さを調整するための操作力付与部28が配設されている。この実施形態では、操作力付与部28は、シートクッション12の側端部の一部及びリクライニング機構20を幅方向外側から覆うカバー部材42に対する幅方向外側から着座者による操作可能に配置されている。
【0072】
図1及び図3に示される如く、操作力付与部28は、リクライニング機構20を操作するための第2操作部材としてのリクライニングレバー30と、シートリフタ22を操作するための第1操作部材としてのリフタノブ32とを有して構成されている。
【0073】
リフタノブ32は、前後方向に長手とされ、後端側に幅方向外側に膨出して設けられたリフタ連結部32Aが、シートリフタ22(ポンプ式リフタ機構22F)における操作荷重入力部22Gに同軸的かつ一体に回転するように固定的に連結されている。また、リフタノブ32の前端部からは、略弓形に湾曲した上縁に沿って指掛け部32Bが幅方向外向きに突設されている。これにより、リフタノブ32は、車両用シート10の着座者が指掛け部32Bの下面に手指を掛けながら上向きに引くことで中立位置に対する矢印D側への操作を行い、着座者が指掛け部32Bの上面を掌で押すことで中立位置に対する矢印E側への操作を行うようになっている。
【0074】
これにより、リフタノブ32の中立位置に対する矢印D側又は矢印E側の揺動操作(シートクッション12に対する相対変位)する操作力が操作荷重入力部22G、ポンプ式リフタ機構22F、ピニオン22Eを経由してリフタギヤ22Cに伝達される構成とされている。すなわち、シートリフタ22に直接的に取り付けられたリフタノブ32は、該シートリフタ22に直接的に操作力を伝えるようになっており、シートリフタ22はリフタノブ32からの操作力(着座者である操作者の力)によってシートクッション12の高さ調整を行う構成とされている。
【0075】
ここで、操作力付与部28では、リクライニングレバー30は、リフタノブ32及びシートクッション12のそれぞれに対する相対変位可能にリフタノブ32に支持されている。具体的には、リフタノブ32の後部からは、幅方向に沿う軸線を有する幅方向外向きに支軸32Cが突設されている。前後方向に長手とされたリクライニングレバー30は、その後端部に形成された軸支持部30Aが支軸32Cに遊嵌することで、該支軸32Cの軸心廻りに回動自在に支持されている。この回動により、リクライニングレバー30は、図1に実線にて示す非操作位置と、非操作位置から矢印F側の操作位置とを取り得る構成とされている。この実施形態では、シートリフタ22を介してリフタノブ32を支持するシートクッションフレーム16が本発明における操作系支持部に相当する。
【0076】
図1に示される如く、非操作位置に位置するリクライニングレバー30は、側面視で上縁がリフタノブ32の上縁に沿うように、指掛け部32Bの後方に連続する如き姿勢を取るようになっている。したがって、非操作位置に位置するリクライニングレバー30は、中立位置に位置するリフタノブ32に側面視で全体的にオーバラップし、該リフタノブ32に格納される構成である。また、図3に示される如く、非操作位置に位置するリクライニングレバー30は、平面視でリフタ連結部32Aと指掛け部32Bとの間に入り込むようになっており、該平面視においてもリフタノブ32内に格納されるようになっている。
【0077】
さらに、図1に示される如く、指掛け部32Bは、非操作位置に位置するリクライニングレバー30を下側から受けるように、その後端部をリクライニングレバー30の前端部に当接させている。すなわち、指掛け部32Bはストッパとしても機能し、これにより、リクライニングレバー30は、非操作位置に対し矢印Fとは反対側への移動が規制される構成である。
【0078】
また、図1に示される如く、リクライニングレバー30の軸支持部30Aからはアーム34が略下向きに突設されている。アーム34は、リクライニングレバー30と一体に支軸32C廻りに回動するようになっている。なお、アーム34を、リクライニングレバー30が非操作位置に対し矢印Fとは反対側に移動することを規制するストッパとしても機能させるようにしても良い。そして、リクライニングレバー30は、このアーム34及び被覆ケーブル36を介してリクライニング機構20に操作力を伝達可能に連結されている。
【0079】
具体的には、被覆ケーブル36は、ケーブル36Aと、ケーブル36Aを被覆する被覆36Bとを有して構成されている。被覆36Bは、一端がシートクッションフレーム16(クッション側ブラケット20A)に固定されたケーブル固定ブラケット38に固定されると共に、他端がリフタノブ32のリフタ連結部32A(操作荷重入力部22G)に固定されたケーブル固定ブラケット40に固定されている。一方、両端が被覆36Bから突出したケーブル36Aは、一端がロック解除アーム20Fの自由端側に係止されると共に、他端がアーム34の自由端側に係止されている。
【0080】
被覆ケーブル36の長手方向中間部には、ループ36Cが形成されており、ケーブル固定ブラケット38に対するケーブル固定ブラケット40相対移動のストロークを吸収するようになっている。これにより、操作力付与部28は、図2に示される如くリフタノブ32を操作した場合に、被覆ケーブル36がリフタノブ32の操作(中立位置と上下の操作位置とのストローク)を阻害しない構成である。また、ケーブル固定ブラケット40がリフタノブ32と一体に回動することで、換言すれば、リフタノブ32に対する非操作位置に位置するリクライニングレバー30にケーブル固定ブラケット40が追従することで、リフタノブ32の操作力がリクライニング機構20に伝達されない構成とされている。
【0081】
そして、図1に想像線にて示される如くリクライニングレバー30非操作位置から操作位置に操作すると、この操作力がケーブル36Aを介してロック解除アーム20Fに伝わり、リクライニング機構20のロック連結部20Dによるロック状態が解除されるようになっている。リクライニングレバー30の操作力を解消すると、リクライニング機構20はトーションスプリング20Eの付勢力でロック状態に復帰し、この付勢力が36Aを介して伝えられたリクライニングレバー30は非操作位置に復帰する構成である。
【0082】
なお、操作力付与部28の後部を構成するリフタノブ32のリフタ連結部32A、アーム34、ケーブル固定ブラケット40は、カバー部材42によって幅方向外側から覆われている。
【0083】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0084】
上記の構成の車両用シート10では、着座者が着座高さを高くする方向に調整する際には、着座者は、リフタノブ32の指掛け部32Bに手指を掛け(把持し)、該リフタノブ32を中立位置と上操作位置との間で揺動(往復回動)させる。リフタノブ32の操作のうち中立位置から上操作位置へ向かう動作に伴う操作力がシートリフタ22に伝達され、シートクッション12すなわち車両用シート10が全体として上方に変位する。所望の高さでリフタノブ32の操作を停止すると、シートリフタ22によってシートクッション12の高さが調整した高さに維持される。
【0085】
同様に、着座者が着座高さを低くする方向に調整する際には、着座者は、リフタノブ32の指掛け部32Bを掌で押しつつ、該リフタノブ32を中立位置と下操作位置との間で揺動(往復回動)させる。リフタノブ32の操作のうち中立位置から下操作位置へ向かう動作に伴う操作力がシートリフタ22に伝達され、シートクッション12すなわち車両用シート10が全体として下方に変位する。所望の高さでリフタノブ32の操作を停止すると、シートリフタ22によってシートクッション12の高さが調整した高さに維持される。
【0086】
一方、着座者がシートバック14のシートクッション12に対する角度を調整する際には、着座者は、リクライニングレバー30に手指を掛けて該リクライニングレバー30を非操作位置から操作位置に引き上げる。すると、被覆36Bに対し相対変位するケーブル36Aがロック解除アーム20Fを矢印A側に回動し、リクライニング機構20のロックが解除される。着座者は、シートバック14に体重を掛けて該シートバック14を後傾させて所望にしで停止し、又はリターンスプリングの付勢力で立ち上がるシートバック14を所望の位置で停止させる。着座者がリクライニングレバー30から操作力を解除すると、トーションスプリング20Eの付勢力によって、リクライニング機構20はロック状態に復帰し、リクライニングレバー30は非操作位置に復帰する。
【0087】
ここで、車両用シート10では、リクライニングレバー30とリフタノブ32とは、それぞれの非操作位置(中立位置)に位置する状態で互いにオーバラップするため、該リクライニングレバー30とリフタノブ32とを着座者にとって操作性の良好な位置に配置することができる。特に、車両用シート10を構成する操作力付与部28では、非操作位置に位置するリクライニングレバー30がリフタノブ32に格納される構成であるため、着座者にとって操作性の良好な限られた位置にこれらを共に配置する構成が実現された。
【0088】
さらに図22の比較例との比較で説明すると、該比較例に係るシート200では、シート高さ調整用のリフタノブ202と、リクライニングロック解除用のリクライニングレバー204とは、互いに独立して操作されるように、着座者による被操作部202A、204Aが大きく離間して配置されている。このため、調整用のリフタノブ202、リクライニングレバー204のそれぞれについて、必要な最低限の寸法、独立した操作スペースを確保する必要があり、これらリフタノブ202、リクライニングレバー204の寸法形状や配置に対する制約が大きい。具体的には、シート200では、着座者にとって操作性の良い位置には、被操作部202A、204Aの何れか一方しか配置することができず、この比較例では、リクライニングレバー204は、その位置が後方であるため手が届き難く、シートベルト装置206(バックル係止部)などが干渉してしまう虞もある。また、リフタノブ202、リクライニングレバー204は共にアーム長(前後長)が短く制限されるので、操作力の軽減には限界がある。さらに、リフタノブ202、リクライニングレバー204の上記した制約の範囲で各機能の確保が優先されるので、シート200は意匠、設計の自由度が少ない。
【0089】
このように、車両用シートにおいて、着座者にとって操作性の良好な範囲は限られるが、車両用シート10では、リクライニングレバー30、リフタノブ32の非操作時の配置スペース、操作スペースの一部を共通化した操作力付与部28を有するため、リクライニングレバー30及びリフタノブ32の配置や大きさに対する制約が低減され、設計自由度の向上が図られた。例えば車両用シート10では、1つの操作力付与部28を構成することで、リクライニングレバー30、リフタノブ32共に、バックルとの干渉を避けかつ手指の届き易い適切な位置に2つの操作系を含む操作力付与部28を配置することができ、また十分なアーム長が確保されて操作力や操作ストロークを適切に設定することが容易である。
【0090】
また、車両用シート10では、リクライニングレバー30がリフタノブ32に支軸32C廻りに回動可能に支持されているため、換言すれば、リクライニングレバー30は非操作位置(被支持姿勢)を維持しながらリフタノブ32の操作に追従するため、リクライニングレバー30がリフタノブ32の動作を妨げることが防止される。しかも、被覆ケーブル36にループ36Cを形成すると共にケーブル固定ブラケット40がリフタノブ32に固定されているため、換言すれば、リフタノブ32の操作に伴うリクライニングレバー30とケーブル固定ブラケット40との相対位置(姿勢)が一定であるため、上記の通りリクライニングレバー30をリフタノブ32支持させながら、該リフタノブ32の操作力がリクライニング機構20に伝わらない構成が実現された。
【0091】
またここで、車両用シート10では、リクライニングレバー30とリフタノブ32とが互いに車幅方向に沿う平行な軸線廻りに回動可能とされ、前端部を上下方向に操作するようになっているため、換言すれば、リクライニングレバー30とリフタノブ32とは操作方向が略同じであるため、着座者(操作者)に対し違和感のない操作感を与えることができる。
【0092】
このように、第1の実施形態に係る車両用シート10では、複数の被調整部を操作するためのリクライニングレバー30、リフタノブ32を有する操作力付与部28の操作性が良好である。
【0093】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品、部分については、上記第1の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付して説明を省略し、また図示を省略する場合がある。
【0094】
(第2の実施形態)
図6には、第2の実施形態に係る車両用シート50を構成する操作力付与部52が側面図にて示されている。この図に示される如く、操作力付与部52は、アーム34におけるケーブル36Aの係止部位と、ケーブル固定ブラケット40における被覆36Bの固定部位とを結ぶ仮想直線が、リフタノブ32の回動軸線を通る(交差する)ように設定されている点で、第1の実施形態とは異なる。
【0095】
具体的には、操作力付与部52では、アーム34が操作力付与部28におけるアーム34よりも短く形成され、またケーブル固定ブラケット40の設置位置が操作力付与部28における設置位置に対しリフタノブ32の後端部に移設されている。車両用シート50の他の構成は、車両用シート10の対応する構成と同じである。
【0096】
したがって、第2の実施形態に係る車両用シート50によっても、第1の実施形態に係る車両用シート10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0097】
また、車両用シート50では、リクライニングレバー30を非操作位置から操作位置に操作すると、車両用シート10と同様にケーブル36Aが引っ張られてリクライニング機構20のロックが解除され、これに伴ってリフタノブ32にはケーブル36Aを介してアーム34がケーブル固定ブラケット40を引っ張る力が作用する。そして、この引張力の作用方向が32の回動軸線を通る方向にほぼ沿うため、リクライニングレバー30の操作によって生じるリフタノブ32を回動しようとするモーメントが極めて小さくなる。これにより、車両用シート50では、リフタノブ32に支持されたリクライニングレバー30を過大な力操作した場合でも、該操作に伴ってリフタノブ32が操作されてしまうことが確実に防止される。
【0098】
(第3の実施形態)
図7には、第3の実施形態に係る第2の実施形態に係る車両用シート60を構成する操作力付与部62が側面図にて示されている。この図に示される如く、操作力付与部62は、リクライニングレバー30とリフタノブ32とが独立してシートクッションフレーム16に支持されている点で、第1、第2の実施形態に係る操作力付与部28、52とは異なる。
【0099】
具体的には、リクライニングレバー30は、シートクッションフレーム16に固定されたカバー部材42から幅方向外向きに突設された支軸64に軸支されている。なお、支軸64は、シートクッションフレーム16に設けても良い。また、ケーブル固定ブラケット40は、カバー部材42に固定されている。リクライニングレバー30とリフタノブ32との相対位置は、互いに非操作位置(中立位置)に位置する状態では、第1の実施形態における相対位置と同じである。
【0100】
また、操作力付与部62では、指掛け部32Bの後端が32の上側操作位置への操作に伴ってリクライニングレバー30に干渉しない形状にされている。このため、指掛け部32Bは、トーションスプリング20Eの付勢力に抗してリクライニングレバー30を非操作位置に保持するストッパとしては機能しない構成とされ、このストッパ機能は互いに摺動可能に接触しているアーム34とリフタノブ32のリフタ連結部32Aとが果たすようになっている。
【0101】
以上により、操作力付与部62では、リクライニングレバー30とリフタノブ32とは独立して操作される(連動することなく操作位置に移動する)ようになっており、図7に想像線にて示される如く、リフタノブ32を操作した場合にリクライニングレバー30が非操作位置に保持される構成とされている。このため、この実施形態におけるリフタノブ32には、支軸64との干渉を避けるためのスリット66が、その操作軌跡に沿った円弧状に形成されている。車両用シート60の他の構成は、車両用シート10の対応する構成と同じである。
【0102】
したがって、車両用シート60によっても、リフタノブ32がリクライニングレバー30を支持することによる作用効果を除いて、車両用シート10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、リクライニングレバー30とリフタノブ32とは、配置上はオーバラップして共通の操作力付与部62を構成するが、互いに独立して操作されるため、一方の操作力が他方に伝達されることがない。
【0103】
なお、上記第1乃至第3の実施形態では、リクライニングレバー30とリフタノブ32とが平行軸廻りに回動操作可能である例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、リクライニングレバー30とリフタノブ32とが同軸的かつ独立して回動可能である構成としても良い。
【0104】
(第4の実施形態)
図8には、第4の実施形態に係る車両用シート70を構成する操作力付与部72が斜視図にて示されている。この図に示される如く、操作力付与部72は、それぞれ上下方向の操作力が付与されるリフタノブ32、リクライニングレバー30に代えて、操作力の付与方向が互いに異なるリフタノブ74、リクライニングレバー76を備える点で、第1の実施形態に係る車両用シート10とは異なる。以下、具体的に説明する。
【0105】
リフタノブ74は、リフタノブ32と似た形状に形成されており、後端側に幅方向外側に膨出して設けられたリフタ連結部74Aがシートリフタ22(ポンプ式リフタ機構22F)における操作荷重入力部22Gに同軸的かつ一体に回転するように固定的に連結されている。また、リフタノブ74の前端部からは、指掛け部74Bが幅方向外向きに突設されている。これにより、リフタノブ74は、車両用シート10の着座者が指掛け部74Bの下面に手指を掛けながら上向きに引くことで中立位置から上側操作位置への操作を行い、着座者が指掛け部74Bの上面を掌で押すことで中立位置から下側操作位置への操作を行うようになっている。
【0106】
リクライニングレバー76は、リフタノブ32に対するリクライニングレバー30と同様に、非操作位置においては、平面視でリフタ連結部74Aと指掛け部74Bとの間に配設されると共に側面視で上縁がリフタノブ74の上縁に沿うように配置されている。したがって、リクライニングレバー76は、非操作位置に位置する状態でリフタノブ74に格納される構成である。リクライニングレバー76は、その後端部に設けられた軸支持部76Aがリフタノブ74の支軸74Cに回動自在に軸支されている。支軸74Cは、リフタノブ74におけるリフタ連結部74Aの近傍に軸線が上下方向に沿うように突設されている。
【0107】
この支軸74C廻りの矢印G方向への回動によってリクライニングレバー76は、図8に実線にて示す非操作位置に対して、想像線にて示す如く前端を幅方向外向きに移動させた操作位置とを取り得る構成とされている。この想像線にて示される如く、リクライニングレバー76は、正面視で下向きに開口するコ字状に形成されており、その手指を掛け易い形状とされている。
【0108】
図9(A)に示される如く、リクライニングレバー76の後端からは、アーム78が略幅方向内向きに突設されている。アーム78は、カバー部材42に設けられた貫通孔42Aを貫通して、その先端78Aをシートクッションフレーム16とカバー部材42との間に位置させている。このアーム78の先端78Aには、一端がロック解除アーム20F(図示省略)に係止されたケーブル36Aの他端が係止されている。一端がケーブル固定ブラケット38(図示省略)に固定されケーブル36Aを被覆する被覆36Bの他端は、ケーブル固定ブラケット40に固定されている。この実施形態では、ケーブル固定ブラケット40は、リフタノブ74と同軸的かつ一体に回動する操作荷重入力部22Gに固定されている。
【0109】
車両用シート70の他の構成は、車両用シート10の対応する構成と同じである。
【0110】
したがって、車両用シート70では、シート高さ調整については、車両用シート10と同様にリフタノブ74を中立位置と上下何れかの操作位置との間で揺動操作することで果たされる。このリクライニングレバー76を相対的な非操作位置に保持したリフタノブ74の揺動に対し、図9(B)に示される如く操作荷重入力部22Gに固定されたケーブル固定ブラケット40が追従するため、換言すれば、アーム78とケーブル固定ブラケット40との相対位置が変化しないため、リフタノブ74の操作力がシートリフタ22に伝わってしまうことがない。
【0111】
一方、着座者がシートバック14のシートクッション12に対する角度を調整する際には、着座者は、リクライニングレバー76に手指を掛けて該リクライニングレバー76を非操作位置から操作位置に(幅方向外向きに向けて)引き出す。すると、アーム78の先端78Aが前方に移動し、被覆36Bに対し相対変位するケーブル36Aがロック解除アーム20Fを矢印A側に回動する。これにより、リクライニング機構20のロックが解除される。着座者は、シートバック14に体重を掛けて該シートバック14を後傾させて所望にしで停止し、又はリターンスプリングの付勢力で立ち上がるシートバック14を所望の位置で停止させる。着座者がリクライニングレバー76から操作力を解除すると、トーションスプリング20Eの付勢力によって、リクライニング機構20はロック状態に復帰し、リクライニングレバー76は非操作位置に復帰する。
【0112】
このように、車両用シート70においても、共通の操作力付与部72に機能が異なるリフタノブ74、リクライニングレバー76が設けられているため、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、車両用シート70では、リクライニングレバー76とリフタノブ74とは、それぞれの非操作位置(中立位置)に位置する状態で互いにオーバラップするため、該リクライニングレバー76とリフタノブ74とを着座者にとって操作性の良好な位置に配置することができる。特に、車両用シート70を構成する操作力付与部72では、非操作位置に位置するリクライニングレバー76がリフタノブ74に格納される構成であるため、着座者にとって操作性の良好な限られた位置にこれらを共に配置する構成が実現された。すなわち、着座者にとって操作性の良好な範囲は限られるが、本操作力付与部28ではリクライニングレバー76及びリフタノブ74の配置や大きさに対する制約が低減され、設計自由度の向上が図られた。
【0113】
また、車両用シート70では、リクライニングレバー76がリフタノブ74に支軸74C廻りに回動可能に支持されているため、換言すれば、リクライニングレバー76は非操作位置(被支持姿勢)を維持しながらリフタノブ74の操作に追従するため、リクライニングレバー76がリフタノブ74の動作を妨げることが防止される。しかも、ケーブル固定ブラケット40がリフタノブ74と一体に回動する操作荷重入力部22Gに固定されているため、換言すれば、リフタノブ74の操作に伴うリクライニングレバー76とケーブル固定ブラケット40との相対位置(姿勢)が一定であるため、上記の通りリクライニングレバー76をリフタノブ74支持させながら、該リフタノブ74の操作力がリクライニング機構20に伝わらない構成が実現された。
【0114】
またここで、車両用シート70では、リクライニングレバー76の操作方向がリフタノブ74の操作方向とは異なるため、リクライニングレバー76の操作力がシートリフタ22に伝えられることも防止される。すなわち、着座者である車両乗員の意図しない調整対象が操作されることが防止され、着座者に対し良好な操作感を与えることができる。
【0115】
このように、第4の実施形態に係る車両用シート70では、複数の被調整部を操作するためのリクライニングレバー76、リフタノブ74を有する操作力付与部28の操作性が良好である。
【0116】
(第5の実施形態)
図10には、第5の実施形態に係る車両用シート80を構成する操作力付与部82が斜視図にて示されている。この図に示される如く、操作力付与部82は、それぞれ幅方向に沿う軸線廻りに回動するリフタノブ32、リクライニングレバー30に代えて、幅方向に沿う軸線廻りに回動するリフタノブ84、前後方向に沿う軸線廻りに回動するリクライニングレバー86を備える点で、第1の実施形態に係る車両用シート10とは異なる。以下、具体的に説明する。
【0117】
リフタノブ84は、リフタノブ74と似た形状に形成されており、後端側に幅方向外側に膨出して設けられたリフタ連結部84Aがシートリフタ22(ポンプ式リフタ機構22F)における操作荷重入力部22Gに同軸的かつ一体に回転するように固定的に連結されている。また、リフタノブ84の前端部からは、指掛け部84Bが幅方向外向きに突設されている。これにより、リフタノブ84は、車両用シート10の着座者が指掛け部84Bの下面に手指を掛けながら上向きに引くことで中立位置から上側操作位置への操作を行い、着座者が指掛け部84Bの上面を掌で押すことで中立位置から下側操作位置への操作を行うようになっている。
【0118】
リクライニングレバー86は、リフタノブ32に対するリクライニングレバー30と同様に、非操作位置においては、平面視でリフタ連結部84Aと指掛け部84Bとの間に配設されると共に側面視で上縁がリフタノブ84の上縁に沿うように配置されている。したがって、リクライニングレバー86は、非操作位置に位置する状態でリフタノブ84に格納される構成である。図11(A)にも示される如く、リクライニングレバー86は、非操作位置で指掛け部84Bの後方に連続するように位置する上壁86Aと、上壁86Aの幅方向外端から垂下された外壁86Bとを有し、正面視でL字状に形成されている。
【0119】
このリクライニングレバー86における上壁86Aの幅方向内端部には、前後方向に沿う軸線を有する支軸部材88が一体回転可能に設けられている。支軸部材88は、リクライニングレバー86から前後に張り出した両端部が、それぞれリフタノブ84のリフタ連結部84A、指掛け部84Bに回転可能に支持されている。この支軸部材88廻りの矢印H方向への回動によってリクライニングレバー86は、図10に実線にて示す非操作位置に対して、想像線にて示す如く上壁86Aを幅方向内側に向けるように傾斜した操作位置とを取り得る構成とされている。
【0120】
図11(A)に示される如く、支軸部材88は、その後端がロック解除アーム20Fとリフタ連結部84Aとの間に形成された空間Rに入り込んでおり、該後端から一体回転可能に垂下されたアーム88Aを有する(図11(B)参照)。アーム88Aの下端には、一端がロック解除アーム20Fに係止されると共にカバー部材42の貫通孔42Aを貫通したケーブル36Aの他端が係止されている。一端がケーブル固定ブラケット38(図示省略)に固定されケーブル36Aを被覆する被覆36Bの他端は、ケーブル固定ブラケット40に固定されている。この実施形態では、ケーブル固定ブラケット40は、リフタノブ84と同軸的かつ一体に回動する操作荷重入力部22Gに固定されている。
【0121】
車両用シート80の他の構成は、車両用シート10の対応する構成と同じである。
【0122】
したがって、車両用シート80では、シート高さ調整については、車両用シート10と同様にリフタノブ84を中立位置と上下何れかの操作位置との間で揺動操作することで果たされる。このリクライニングレバー86を相対的な非操作位置に保持したリフタノブ84の揺動に対し、操作荷重入力部22Gに固定されたケーブル固定ブラケット40が追従するため、換言すれば、アーム88Aとケーブル固定ブラケット40との相対位置が変化しないため、リフタノブ84の操作力がシートリフタ22に伝わってしまうことがない。
【0123】
一方、着座者がシートバック14のシートクッション12に対する角度を調整する際には、着座者は、リクライニングレバー86の外壁86Bに手指を掛けて該リクライニングレバー86を非操作位置から操作位置に引き上げる。すると、アーム88Aの下端が幅方向外側に移動し、被覆36Bに対し相対変位するケーブル36Aがロック解除アーム20Fを矢印A側に回動する。これにより、リクライニング機構20のロックが解除される。着座者は、シートバック14に体重を掛けて該シートバック14を後傾させて所望にしで停止し、又はリターンスプリングの付勢力で立ち上がるシートバック14を所望の位置で停止させる。着座者がリクライニングレバー86から操作力を解除すると、トーションスプリング20Eの付勢力によって、リクライニング機構20はロック状態に復帰し、リクライニングレバー86は非操作位置に復帰する。
【0124】
このように、車両用シート80においても、共通の操作力付与部82に機能が異なるリフタノブ84、リクライニングレバー86が設けられているため、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、車両用シート80では、リクライニングレバー86とリフタノブ84とは、それぞれの非操作位置(中立位置)に位置する状態で互いにオーバラップするため、該リクライニングレバー86とリフタノブ84とを着座者にとって操作性の良好な位置に配置することができる。特に、車両用シート80を構成する操作力付与部82では、非操作位置に位置するリクライニングレバー86がリフタノブ84に格納される構成であるため、着座者にとって操作性の良好な限られた位置にこれらを共に配置する構成が実現された。すなわち、着座者にとって操作性の良好な範囲は限られるが、本操作力付与部28ではリクライニングレバー86及びリフタノブ84の配置や大きさに対する制約が低減され、設計自由度の向上が図られた。
【0125】
また、車両用シート80では、リクライニングレバー86がリフタノブ84に支軸部材88廻りに回動可能に支持されているため、換言すれば、リクライニングレバー86は非操作位置(被支持姿勢)を維持しながらリフタノブ32の操作に追従するため、リクライニングレバー86がリフタノブ84の動作を妨げることが防止される。しかも、ケーブル固定ブラケット40がリフタノブ84と一体に回動する操作荷重入力部22Gに固定されているため、換言すれば、リフタノブ84の操作に伴うリクライニングレバー86とケーブル固定ブラケット40との相対位置(姿勢)が一定であるため、上記の通りリクライニングレバー86をリフタノブ84支持させながら、該リフタノブ84の操作力がリクライニング機構20に伝わらない構成が実現された。
【0126】
またここで、車両用シート80では、リクライニングレバー86のケーブル36Aへの操作力付与方向がリフタノブ84の操作方向とは異なるため、リクライニングレバー86の操作力がシートリフタ22に伝えられることも防止される。すなわち、着座者である車両乗員の意図しない調整対象が操作されることが防止され、着座者に対し良好な操作感を与えることができる。
【0127】
このように、第5の実施形態に係る車両用シート80では、複数の被調整部を操作するためのリクライニングレバー86、リフタノブ84を有する操作力付与部28の操作性が良好である。
【0128】
(第6の実施形態)
図15には、第6の実施形態に係る車両用シート90が斜視図にて示されている。この図に示される如く、車両用シート90を構成する操作力付与部92は、回動操作するリクライニングレバー30、76、86に代えて、リフタノブ94に対し直線方向に操作するリクライニングノブ95を備える点で、上記各実施形態とは異なる。
【0129】
図14に分解斜視図として示す如く、リフタノブ94は、ポンプ式リフタ機構22Fに連結されたノブ本体94Aと、ノブ本体94Aを幅方向外側から覆うノブカバー94Bとを含んで構成されている。ノブ本体94Aは、前後方向に長手とされており、後端側に設けられたリフタ連結部84Aがシートリフタ22(ポンプ式リフタ機構22F)における操作荷重入力部22Gに同軸的かつ一体に回転するように固定的に連結されている。これにより、上記した各リフタノブ32等と同様に、リフタノブ94の中立位置に対する上下何れか一方側の揺動操作によって、車両用シート10の高さ調整を行うことができる構成である。
【0130】
このリフタノブ94は、ノブ本体94Aにノブカバー94Bが被せられて前向きに開口する空間が内部に形成されている。そして、リクライニングノブ95はブロック状に形成されており、リフタノブ94の開口端に前後方向に沿ったスライド可能に遊嵌している(ガイドされている)。この実施形態では、リクライニングのロック解除は、リクライニングノブ95を矢印Iにて示す後方(リフタノブ94の内方)に押し込むことによって行われるようになっている。そして、この押し込みの操作力は、リンク機構96を介してシートリフタ22のポンプ式リフタ機構22Fに伝達される構成とされている。
【0131】
図12に示される如く、リンク機構96は、前端がリクライニングノブ95に固定された前リンク96Aと、後端がロック解除アーム20Fに相対角変位可能に連結された後リンク96Bと、前リンク96Aの後端と後リンク96Bの前端とを幅方向に沿った軸線廻りの相対角変位可能に連結するリンクピン96Cとを主要構成要素として構成されており、リフタノブ94内の空間を前後方向貫通している。
【0132】
トーションスプリング20Eの付勢力によって非操作位置に位置するリクライニングノブ95は、前半部分がリフタノブ94から突出している。操作力付与部92は、この非操作位置で、リンクピン96Cの軸線方向がリフタノブ94の回動軸線の方向と一致する(延長線上に位置する)構成とされている。これにより、図13(B)に示される如く、リクライニングノブ95が非操作位置に位置する状態でリフタノブ94のスムースな回動操作が可能とされている。なお、リクライニングノブ95は、図示しないストッパが係合することで、リフタノブ94からの所定量以上の突出が規制されて非操作位置に保持されるようになっている。
【0133】
一方、この操作力付与部92では、図13(A)に示される如く、この非操作位置からリクライニングノブ95を後方すなわち操作位置に押し込みと、主にリンク機構96の圧縮力として操作力がロック解除アーム20Fに伝達され、ロック解除アーム20Fが矢印A方向に回動するようになっている。なお、リンク機構96の圧縮荷重で操作力を伝達するこの実施形態では、ケーブルの引張で操作力を伝達する上記各実施形態とは、ロック解除方向である矢印Aの向きが逆とされている。
【0134】
また、操作力付与部92は、リクライニングノブ95の押し込み操作に伴うリンク機構96の変位方向を規制するためのリンクガイド98を備えている。この実施形態では、リンクガイド98は、図14に示される如く、ノブ本体94Aから前後方向に沿って長手とされ幅方向外向きに立設された上下一対のガイド壁98Aにて構成されており、ガイド壁98A間に前リンク96Aを入り込ませることで、該前リンク96Aの変位方向を前後方向に規制している。これにより、リンク機構96は、リクライニングノブ95の押し込み操作によっては前リンク96Aと後リンク96Bとが相対角変位(リンクピン96Cでの折れ)を生じることがない構成とされている。ノブ本体94Aは、樹脂材にて構成されており、リンクガイド98が一体成形されている。
【0135】
車両用シート90の他の構成は、カバー部材42の形状が異なる点を除いて車両用シート10の対応する構成と同じである。
【0136】
したがって、車両用シート90では、シート高さ調整については、車両用シート10と同様にリフタノブ94を中立位置と上下何れかの操作位置との間で揺動操作することで果たされる。このリクライニングレバー76を相対的な非操作位置に保持したリフタノブ94の揺動に対し、図13(B)に示される如くリンク機構96の前リンク96Aが後リンク96Bに対しリンクピン96C廻りに回動するため、換言すれば、前リンク96Aがリフタノブ94と同軸的に回動して該リフタノブ94に追従するため、リフタノブ94の操作がリンク機構96(リクライニングの操作系)によって阻害されることがない。
【0137】
一方、着座者がシートバック14のシートクッション12に対する角度を調整する際には、着座者は、リクライニングノブ95を後向きに押圧して94の内方に押し込む。すると、リンクガイド98にガイドされた前リンク96Aを含むリンク機構96が直線的にロック解除アーム20Fを後方に押して該ロック解除アーム20Fを矢印A側に回動する。これにより、リクライニング機構20のロックが解除される。着座者は、シートバック14に体重を掛けて該シートバック14を後傾させて所望にしで停止し、又はリターンスプリングの付勢力で立ち上がるシートバック14を所望の位置で停止させる。着座者がリクライニングノブ95から操作力を解除すると、トーションスプリング20Eの付勢力によって、リクライニング機構20はロック状態に復帰し、リクライニングノブ95は非操作位置に復帰する。
【0138】
このように、車両用シート90においても、共通の操作力付与部92に機能が異なるリフタノブ94、リクライニングレバー76が設けられているため、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、車両用シート90では、リクライニングレバー76とリフタノブ94とは、それぞれの非操作位置(中立位置)に位置する状態で互いにオーバラップするため、該リクライニングノブ95とリフタノブ94とを着座者にとって操作性の良好な位置に配置することができる。特に、車両用シート90を構成する操作力付与部92では、非操作位置に位置するリクライニングノブ95が外部からの操作可能に一部を突出してリフタノブ94に格納される構成であるため、着座者にとって操作性の良好な限られた位置にこれらを共に配置する構成が実現された。すなわち、着座者にとって操作性の良好な範囲は限られるが、本操作力付与部28ではリクライニングノブ95及びリフタノブ94の配置や大きさに対する制約が低減され、設計自由度の向上が図られた。しかも、この実施形態では、95の操作スペースが94内に設定されているため、他の操作部材を設ける場合の制約も少なくなる。
【0139】
また、車両用シート90では、リクライニングノブ95がリフタノブ94に前後方向にスライド可能に支持されているため、換言すれば、リクライニングノブ95は非操作位置(被支持姿勢)を維持しながらリフタノブ94の操作に追従するため、リクライニングレバー76がリフタノブ94の動作を妨げることが防止される。しかも、リクライニングノブ95が非操作位置に位置する状態で、リンク機構96のリンクピン96Cがリフタノブ94の回動軸線上に位置するため、シートリフタ22(94の回動軸線)に対しリクライニング機構20とは反対側にリクライニングノブ95を配置する操作性が良好な構成が実現された。そして、この構成では、96の屈曲によってシート高さの調整中にリクライニング調整がなされることが防止され、さらに、リンク機構96が94の回動軸線を通って配設されているため、リクライニングノブ95の操作時にリンク機構94の内面やリンクガイド98に作用する摩擦力に基づいて生じるリンク機構94を回動しようとするモーメントが極めて小さく、リクライニング調整中にシート高さの調整が行われることも防止される。
【0140】
またここで、車両用シート90では、リクライニングノブ95の操作方向がリフタノブ94の操作方向とは異なるため、リクライニングノブ95の操作力がシートリフタ22に伝えられること、及びリフタノブ94の操作力がリクライニング機構20に伝えられることも防止される。すなわち、着座者である車両乗員の意図しない調整対象が操作されることが防止され、着座者に対し良好な操作感を与えることができる。
【0141】
さらに、操作力付与部92がリンクガイド98を備えるため、リンク機構96が相対角変位(屈曲)することなく、リクライニングノブ95に付与された操作力が効率的に20Fに伝達される。また、リンクガイド98によって、上記したリフタノブ94の操作中におけるリクライニングノブ95の誤操作時のリクライニング機構20への操作力伝達が確実に防止される。また、このリンクガイド98を樹脂部品であるノブ本体94Aに一体に設けたため、部品点数の増加がなく、構造が簡単である。
【0142】
このように、第6の実施形態に係る車両用シート90では、複数の被調整部を操作するためのリクライニングレバー76、リフタノブ94を有する操作力付与部28の操作性が良好である。
【0143】
(第7の実施形態)
図16には、第7の実施形態に係る車両用シート100を構成する操作力付与部102が側面図にて示されている。この図に示される如く、操作力付与部102は、リフタノブ94に設けられたリンクガイド98に代えて、シートクッションフレーム16に設けられたリンクガイド104を備える点で、第6の実施形態とは異なる。
【0144】
リンクガイド104は、シートクッションフレーム16に固定的に取り付けられたカバー部材42の後部42Bの内面から、前後方向に沿って長手とされ幅方向内向き立設された上下一対のガイド壁104Aにて構成されている。リンクガイド104は、上下一対のガイド壁104A間に後リンク96Bを入り込ませることで、該後リンク96Bの変位方向を前後方向に規制している。これにより、リンク機構96は、リクライニングノブ95の押し込み操作によっては前リンク96Aと後リンク96Bとが相対角変位(リンクピン96Cでの折れ)を生じることがない構成とされている。カバー部材42は、樹脂材にて構成されており、リンクガイド104が一体成形されている。
【0145】
車両用シート100の他の構成は、車両用シート90の対応する構成と同じである。なお、リンクガイド104は、シートクッションフレーム16に設けても良い。
【0146】
したがって、第7の実施形態に係る車両用シート100によっても、第6の実施形態に係る車両用シート90と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、リンクガイド104を樹脂部品であるカバー部材42に一体に設けたため、部品点数の増加がなく、構造が簡単である。
【0147】
(第8の実施形態)
図17には、第8の実施形態に係る車両用シート110を構成する操作力付与部112が側面図にて示されている。この図に示される如く、操作力付与部112は、直線状を成し主に圧縮力として操作力を伝達するリンク機構96に代えて、リンク機構114を備える点で第6の実施形態とは異なる。
【0148】
リンク機構114は、前リンク96Aと同様に構成された前リンク114Aと、後リンク114Bと、前リンク114Aと後リンク114Bとを連結するリンクピン96Cとを主要構成要素としている。そして、後リンク114Bは、その前後方向に沿う長手方向の中間部が屈曲して、前部が後部よりも高位に位置するクランク形状に形成されている。このため、後リンク114Bの後端に連結されたロック解除アーム20Fは、第6、第7の実施形態におけるロック解除アーム20Fよりも長く形成されている。換言すれば、ケーブル114は、その荷重出力部である後端が荷重入力部である前端よりも低位に構成されている。車両用シート110の他の構成は、車両用シート90の対応する構成と同じである。
【0149】
したがって、第8の実施形態に係る車両用シート110によっても、第6の実施形態に係る車両用シート90と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、リンク機構114の後リンク114Bをクランク形状に形成したため、換言すれば、ロック解除アーム20Fに入力する操作力に基づくロック解除モーメントのモーメントアームを長く設定したため、小さな操作力でリクライニングロックを解除することができる。
【0150】
(第9の実施形態)
図18には、第9の実施形態に係る車両用シート120を構成する操作力付与部122が側面図にて示されている。この図に示される如く、操作力付与部122は、直線状を成し主に圧縮力として操作力を伝達するリンク機構96に代えて、リンク機構124を備える点で第6の実施形態とは異なる。
【0151】
リンク機構124は、前リンク96Aと同様に構成された前リンク124Aと、後リンク124Bと、前リンク124Aと後リンク124Bとを連結するリンクピン96Cとを主要構成要素としている。そして、後リンク124Bは、その前後方向に沿う長手方向の中間部が屈曲して、前部が後部よりも低位に位置するクランク形状に形成されている。このため、後リンク124Bの後端に連結されたロック解除アーム20Fは、第6、第7の実施形態におけるロック解除アーム20Fよりも短く形成されている。換言すれば、ケーブル124は、その荷重出力部である後端が荷重入力部である前端よりも高位に構成されている。車両用シート120の他の構成は、車両用シート90の対応する構成と同じである。
【0152】
したがって、第9の実施形態に係る車両用シート120によっても、第6の実施形態に係る車両用シート90と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、リンク機構124の後リンク124Bをクランク形状に形成したため、換言すれば、ロック解除アーム20Fに入力する操作力に基づくロック解除モーメントのモーメントアームを短く設定したため、小さな操作ストロークでリクライニングロックを解除することができる。
【0153】
(第10の実施形態)
図19には、第10の実施形態に係る車両用シート130を構成する操作力付与部132が側面図にて示されている。この図に示される如く、操作力付与部132は、リフタノブ94の内方に押し込まれてリクライニングロックを解除するリクライニングノブ95に代えて、リフタノブ94の内方から引き出されてリクライニングロックを解除するリクライニングノブ134を備える点で、第6の実施形態とは異なる。
【0154】
リクライニングノブ134は、リフタノブ94の前方外側に突出している部分にて指を掛けるための指掛け部134Aが形成されており、着座者は、該指掛け部134Aに手指を掛けつつリクライニングノブ134を矢印Jにて示す前方に引き出すようになっている。リクライニングノブ134とロック解除アーム20Fとは、リンク機構96を介して連結されている。したがって、この実施形態に係るリクライニング機構20のロック解除方向(矢印A方向)は、第6乃至第9の実施形態とは逆である。
【0155】
また、リクライニングノブ134が非操作位置に位置する状態では、リンク機構96のリンクピン96Cがリフタノブ94の回動軸真に一致するようになっている。なお、リクライニングノブ134は、図示しないストッパが係合することで、リフタノブ94への所定量以上の進入が規制されて非操作位置に保持されるようになっている。車両用シート130の他の構成は、車両用シート90の対応する構成と同じである。
【0156】
したがって、第10の実施形態に係る車両用シート130によっても、リクライニングノブ134を引き出してリクライニングロックを解除する点を除き、第6の実施形態に係る車両用シート90と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。そして、リクライニングノブ134をリンク機構96を介してロック解除アーム20Fに連結することで、リクライニングノブ134をリフタノブ94から引き出す構成においても、リフタノブ94の回動軸心に対しリクライニング機構20とは反対側に134を配置して、操作性の良好な構成が実現された。
【0157】
また、リクライニングノブ134の操作方向がリフタノブ94の操作方向とは異なるため、リクライニングノブ134の操作力がシートリフタ22に伝えられること、及びリフタノブ94の操作力がリクライニング機構20に伝えられることが防止される。すなわち、着座者である車両乗員の意図しない調整対象が操作されることが防止され、着座者に対し良好な操作感を与えることができる。
【0158】
さらに、リクライニングノブ134を引き出す構成では、リンク機構96は主に引張力として操作力を伝達するため、リンクガイド98、104を設ける必要がない。
【0159】
(第11の実施形態)
図20には、第11の実施形態に係る車両用シート140を構成する操作力付与部142が側面図にて示されている。この図に示される如く、操作力付与部142は、リクライニングノブ134とロック解除アーム20Fとを連結するリンク機構96に代えて、リクライニングノブ134とロック解除アーム20Fとを連結するケーブル144を設けた点で第10の実施形態とは異なる。
【0160】
ケーブル144は、相対変位する被覆を有しない構成とされ、一端がロック解除アーム20Fに係止されると共に、他端が134に係止されている。ケーブル144には、リクライニングノブ134が図示しないストッパに当接して非操作位置に位置する状態で、トーションスプリング20Eの付勢力に基づく張力が作用している。またこの状態における側面視で、ケーブル144はリンク機構94の回動軸線上を通るように配置されている。そして、操作力付与部142では、リフタノブ94が上下の操作位置側に回動すると、144の両端の直線距離が短縮されてケーブル144の張力が緩むようになっている。車両用シート140の他の構成は、車両用シート130の対応する構成と同じである。
【0161】
したがって、第11の実施形態に係る車両用シート140によっても、第10の実施形態に係る車両用シート130と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。そして、リクライニングノブ134をケーブル144を介してロック解除アーム20Fに連結することで、リクライニングノブ134をリフタノブ94から引き出す構成においても、リフタノブ94の回動軸心に対しリクライニング機構20とは反対側に134を配置して、操作性の良好な構成が実現された。
【0162】
また、リクライニングノブ134の操作方向がリフタノブ94の操作方向とは異なるため、リクライニングノブ134の操作力がシートリフタ22に伝えられることが防止される。さらに、リフタノブ94の操作状態では、ケーブル144の張力が緩むため、リフタノブ94の操作力がリクライニング機構20に伝達されること、及びリフタノブ94の操作中にリクライニングノブ134の操作力が20に伝達されることが防止される。さらに、ケーブル144の張力でリクライニング解除を行う操作力付与部142では、リンクガイド98、104を設ける必要がない。
【0163】
(第12の実施形態)
図21には、第12の実施形態に係る車両用シート150を構成する操作力付与部152が側面図にて示されている。この図に示される如く、操作力付与部152は、リクライニングノブ134とロック解除アーム20Fとを連結するケーブル144に代えて、リクライニングノブ134とロック解除アーム20Fとを連結する被覆ケーブル154を設けた点で第11の実施形態とは異なる。
【0164】
被覆ケーブル154は、被覆ケーブル36と同様に、ケーブル154Aと、ケーブル154Aの長手方向両端を除く部分を被覆する被覆154Bとを主要構成要素としている。ケーブル154Aは、一端がロック解除アーム20Fに係止されると共に、他端が134に係止されている。被覆154Bは、一端がケーブル固定ブラケット38に固定されると共に、他端がケーブル固定ブラケット40に係止されている。ケーブル固定ブラケット38は、シートクッションフレーム16(クッション側ブラケット20A)に固定されており、ケーブル固定ブラケット40は、リフタノブ94に固定されている。被覆ケーブル154は、リクライニングノブ134が非操作位置に位置する状態で、弛みを有している。車両用シート150の他の構成は、車両用シート140の対応する構成と同じである。
【0165】
したがって、第12の実施形態に係る車両用シート150によっても、第11の実施形態に係る車両用シート130と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。そして、リクライニングノブ134を被覆ケーブル154を介してロック解除アーム20Fに連結することで、リクライニングノブ134をリフタノブ94から引き出す構成においても、リフタノブ94の回動軸心に対しリクライニング機構20とは反対側に134を配置して、操作性の良好な構成が実現された。
【0166】
また、リクライニングノブ134の操作方向がリフタノブ94の操作方向とは異なるため、リクライニングノブ134の操作力がシートリフタ22に伝えられることが防止される。さらに、被覆ケーブル154は弛みを有するため、リフタノブ94の操作力がリクライニング機構20に伝達されること、及び94の操作中に134の操作力が20に伝達されることが防止される。さらに、被覆154Bに対するケーブル154Aの引張変位でリクライニング解除を行う操作力付与部152では、リンクガイド98、104を設ける必要がない。
【0167】
そして、操作力付与部152では、被覆ケーブル154に弛みを設定することができる(張力で操作力を伝達する構成ではない)ため、ケーブル固定ブラケット38を任意の位置に設置することができる。これにより、ロック解除アーム20Fを短くして操作ストロークを短縮した設定としたり、ロック解除アーム20Fを長くして操作力を低減した設定としたりすることができる。すなわち、車両用シート150では、操作力や操作ストローク設定の自由度も向上する。
【0168】
なお、上記各実施形態では、本発明が車両用シート10〜150として適用された例を示したが、本発明はこれに限定されず、各種乗物用シートや安楽椅子、事務椅子などに適用することも可能である。
【0169】
また、上記各実施形態では、第1の被操作部としてシートリフタ22、第2の被操作部としてリクライニング機構20を備えた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、リフタノブ32とリクライニングレバー30との操作対象を入れ替えてリフタノブ(第2操作部材)がリクライニングレバー(第1操作部材)に格納される構成としても良く、また例えばリクライニングレバー30やリフタノブ32が他の操作対象(被操作部)を操作するように構成しても良い。他の操作対象としては、例えば、シートバック14のシートクッション12の前部の後部に対する高さを調整するためのシート前部チルト機構やフロアに対する座面角度を調整するための座面角調整機構など採ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用シートの操作力付与部のリクライニング操作状態の側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車両用シートの操作力付与部のシートリフタ操作状態の側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る車両用シートの全体構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る車両用シートを構成するシートリフタを示す側面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る車両用シートを構成するリクライニング機構を示す側面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る車両用シート操作力付与部のリクライニング操作状態の側面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る車両用シートの操作力付与部のシートリフタ操作状態の側面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る車両用シートの操作力付与部の斜視図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る車両用シートの操作力付与部を示す図であって、(A)はリクライニング操作状態を示す平面図、(B)はシートリフタ操作状態を示す側面図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係る車両用シートの操作力付与部の斜視図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係る車両用シートの操作力付与部を示す図であって、(A)はリクライニング操作状態を示す正面図、(B)はシートリフタ操作状態を示す側面図である。
【図12】本発明の第6の実施形態に係る車両用シートの操作力付与部の側面図である。
【図13】本発明の第6の実施形態に係る車両用シートの操作力付与部を示す図であって、(A)はリクライニング操作状態を示す側面図、(B)はシートリフタ操作状態を示す側面図である。
【図14】本発明の第6の実施形態に係る車両用シートの操作力付与部の分解斜視図である。
【図15】本発明の第6の実施形態に係る車両用シートの全体構成を示す斜視図である。
【図16】本発明の第7の実施形態に係る車両用シートの操作力付与部の側面図である。
【図17】本発明の第8の実施形態に係る車両用シートの操作力付与部の側面図である。
【図18】本発明の第9の実施形態に係る車両用シートの操作力付与部の側面図である。
【図19】本発明の第10の実施形態に係る車両用シートの操作力付与部の側面図である。
【図20】本発明の第11の実施形態に係る車両用シートの操作力付与部の側面図である。
【図21】本発明の第12の実施形態に係る車両用シートの操作力付与部の側面図である。
【図22】本発明の実施形態に係る車両用シートとの比較例に係るシートを示す側面図である。
【符号の説明】
【0171】
10 車両用シート(シート)
12 シートクッション(シート本体)
14 シートバック(シート本体)
16 シートクッションフレーム(操作系支持部)
20 リクライニング機構(第2の被操作部)
20F ロック解除アーム(アーム部材)
22 シートリフタ(第1の被操作部)
22F ポンプ式リフタ機構(第1の操作系)
28 操作力付与部
30 リクライニングレバー(第2操作部材)
32 リフタノブ(第1操作部材)
36 被覆ケーブル(第2の操作系)
36A ケーブル
36B 被覆(被覆部)
42 カバー部材
50・60・70・80・90・100・110・120・130・140・150 車両用シート(シート)
52・62・72・82・92・102・112・122・132・142・152 操作部
74・84・94 リフタノブ(第1操作部材)
76・86 リクライニングレバー(第2操作部材)
95・134 リクライニングノブ(第2操作部材)
96・114・124 リンク機構
96C リンクピン(リンク軸)
98・104 リンクガイド
144 ケーブル
154 被覆ケーブル(ケーブル)
154A ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座するためのシート本体に設けられ、第1の操作系から伝達される操作力によって調整される第1の被調整部と、
前記シート本体に設けられ、第2の操作系から伝達される操作力によって調整される第2の被調整部と、
前記シート本体の所定位置に着座者により操作可能に設けられ、前記第1の操作系に操作力を入力する第1の操作状態と、前記第2の操作系に操作力を入力する第2の操作状態とを独立して取り得る操作力付与部と、
を備えたシート。
【請求項2】
前記第1の操作力付与部は、
前記シート本体に対し相対変位することで非操作位置と操作位置とを取り得るように設けられ、前記非操作位置から操作位置への操作力によって前記第1の被調整部を調整するための第1操作部材と、
前記シート本体に対し相対変位することで非操作位置と操作位置とを取り得るように設けられ、前記非操作位置から操作位置への操作力によって前記第2の被調整部を調整するための第2操作部材と、
前記第1操作部材と第2操作部材とを、該第1操作部材及び第2操作部材の互いの非操作位置での配置スペース又は操作スペースがオーバラップするように、少なくとも前記第1操作部材を支持する操作系支持部と、
を備えている請求項1記載のシート。
【請求項3】
前記第2操作部材は、非操作位置において、非操作位置に位置する前記第1操作部材に格納される請求項2記載のシート。
【請求項4】
前記第2操作部材は、前記シート本体に対する相対変位可能に前記第1操作部材に支持されている請求項2又は請求項3記載のシート。
【請求項5】
前記第1操作部材は、一端側が所定軸線廻りに回動可能に前記シート本体に支持されると共に他端側が操作されて前記軸線廻りに回動するようになっており、
前記第2操作部材は、第2の被調整部を調整する際の操作力が前記第1操作部材の回動軸心を通る方向に沿って作用するように、該第1操作部材に支持されている請求項4記載のシート。
【請求項6】
前記第1操作部材は、シート前後方向の一端側がシート幅方向に沿う軸線廻りに回動可能に前記シート本体に支持されて、シート前後方向の他端側がシート上下方向に操作されるようになっており、
前記第2操作部材は、シート前後方向の一端側がシート幅方向に沿う軸線廻りに回動可能に前記シート本体又は前記第1操作部材に支持されて、シート前後方向の他端側がシート上下方向に操作されるようになっている請求項2乃至請求項5の何れか1項記載のシート。
【請求項7】
前記第2操作部材は、
前記第1操作部材の回動軸線と平行な回動軸線廻りに回動可能に該第1操作部材に支持されると共に、前記第2の被調整部にケーブルを介して調整可能に連結されており、
かつ前記第2の被調整部を調整するための操作に伴う前記ケーブルの引張方向が前記第1操作部材の回動軸心を通るシート前後方向に沿うようになっている請求項6記載のシート。
【請求項8】
前記第1操作部材は、シート前後方向の一端側がシート幅方向に沿う軸線廻りに回動可能に前記シート本体に支持されて、シート前後方向の他端側がシート上下方向に操作されるようになっており、
前記第2操作部材は、シート幅方向の一端側がシート前後方向に沿う軸線廻りに回動可能に前記シート本体又は前記第1操作部材に支持されて、シート幅方向の他端側がシート上下方向に操作されるようになっている請求項2乃至請求項5の何れか1項記載のシート。
【請求項9】
前記第1操作部材は、シート前後方向の一端側がシート幅方向に沿う軸線廻りに回動可能に前記シート本体に支持されて、シート前後方向の他端側がシート上下方向に操作されるようになっており、
前記第2操作部材は、シート前後方向の一端側がシート上下方向に沿う軸線廻りに回動可能に前記シート本体又は前記第1操作部材に支持されて、シート前後方向の他端側がシート幅方向に操作されるようになっている請求項2乃至請求項5の何れか1項記載のシート。
【請求項10】
前記第2操作部材は、前記シート本体に対する相対変位可能に前記第1操作部材に支持されると共に、被覆部が前記第1操作部材に固定された被覆ケーブルのケーブルを介して前記第2の被調整部に該第2の被調整部の調整可能に連結されており、
前記被覆ケーブルは、前記第1操作部材の前記操作位置への移動に伴って前記被覆部に張力を生じさせない長さを有する請求項2乃至請求項9の何れか1項記載のシート。
【請求項11】
前記第1操作部材は、シート前後方向の一端側がシート幅方向に沿う軸線廻りに回動可能に前記シート本体に支持されて、シート前後方向の他端側がシート上下方向に操作されるようになっており、
前記第2操作部材は、シート前後方向に移動可能に前記第1操作部材に支持されて、該シート前後方向に操作されるようになっている請求項2乃至請求項5の何れか1項記載のシート。
【請求項12】
前記第2操作部材は、非操作位置で前記第1操作部材のシート前後方向端部から一部が突出しており、該第1操作部材の内方に押し込むように操作される請求項11記載のシート。
【請求項13】
前記第2操作部材は、前記第1操作部材の回動軸線に対し前記第2の被調整部とはシート前後方向の反対側に位置すると共に、該第2の被調整部に操作力を伝達するためのリンク機構を介して連結されており、
前記リンク機構は、前記第2操作部材が前記非操作位置に位置する状態で前記第1操作部材の回動軸線と同軸的に位置するリンク軸を含む請求項11又は請求項12記載のシート。
【請求項14】
前記第2の被調整部は、前記リンク機構から伝達されるシート前後方向に沿う操作力をシート幅方向に沿う所定の軸線廻りのモーメントに変換するアーム部材を有しており、
前記リンク機構は、前記第2操作部材からの荷重入力部位と前記アーム部材への荷重出力部位と野シート上下方向の高さが異なる請求項13記載のシート。
【請求項15】
前記第1操作部材又は前記シート本体に設けられ、前記第2操作部材の非操作位置から操作位置への移動に伴う前記リンク機構の前記リンク軸廻りの角変位を規制するリンクガイドをさらに備えた請求項13又は請求項14記載のシート。
【請求項16】
前記リンクガイドは、前記第1操作部材に一体に形成されている請求項15記載のシート。
【請求項17】
前記第1操作部材及び第2操作部材は、前記シート本体のシート幅方向端部に配置されており、
前記リンクガイドは、前記シート本体を構成し前記リンク機構をシート幅方向外側から覆うカバー部材に一体に形成されている請求項15記載のシート。
【請求項18】
前記第2操作部材は、前記非操作位置で前記第1操作部材のシート前後方向端部から一部が突出しており、該第1操作部材の外方に引き出すように操作される請求項11記載のシート。
【請求項19】
前記第2操作部材は、前記第1操作部材の回動軸線に対し前記第2の被調整部とはシート前後方向の反対側に位置すると共に、該第2の被調整部に操作力を伝達するためのリンク機構を介して連結されており、
前記リンク機構は、前記第2操作部材が前記非操作位置に位置する状態で前記第1操作部材の回動軸線と同軸的に位置するリンク軸を含む請求項18記載のシート。
【請求項20】
前記第2操作部材は、前記第1操作部材の回動軸線に対し前記第2の被調整部とはシート前後方向の反対側に位置すると共に、前記第2の被調整部にケーブルを介して操作力の伝達可能連結されている請求項18記載のシート。
【請求項21】
前記第1の被調整部は、前記シート本体の上下方向の位置を調整するための高さ調整機構である請求項1乃至請求項20の何れか1項記載のシート。
【請求項22】
前記第2の被調整部は、シートクッションに対するシートバックの角度のロック状態とロック解除状態とを切り替えるためのリクライニング機構である請求項1乃至請求項21の何れか1項記載のシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−196896(P2007−196896A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19194(P2006−19194)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】