シールドケース搭載基板
【課題】金属ケースと基板との接合強度を確保することが可能でかつ金属ケースの位置決めが高い精度で可能なシールドケース搭載基板を提供する。
【解決手段】シールドケース搭載基板のシールドケース170の垂下部を、基板200の表面に設けられた第1ランドパターン210と第2ランドパターン220とで半田接続する。第1ランドパターン210の、垂下部の厚み方向の幅は、第2ランドパターンの、垂下部の厚み方向の幅よりも大きくする。
【解決手段】シールドケース搭載基板のシールドケース170の垂下部を、基板200の表面に設けられた第1ランドパターン210と第2ランドパターン220とで半田接続する。第1ランドパターン210の、垂下部の厚み方向の幅は、第2ランドパターンの、垂下部の厚み方向の幅よりも大きくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シールド用金属ケースが搭載されたシールドケース搭載基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの電子機器には、機器を駆動するために複数の電子部品(抵抗、コンデンサ、ダイオード、コイル、発信器等)が搭載された回路基板が用いられる。これらの回路基板には、実装された電子部品自体から発する電気的なノイズや、外部から電子部品に飛び込むノイズを遮断するために、電子部品の周囲を金属ケースで覆ったシールド構造が一般的に用いられている。
【0003】
シールド構造は、金属ケースの一部を回路基板上に設けられたグランド端子に接続する構造が一般的である。特に、金属ケースに形成された突起部と、基板上に形成された接続端子とを半田接続することで、金属ケースをグランド端子へ接地した構造が多用されている。
【0004】
ところで近年では、電子機器の小型化にともない、機器周辺に配置される回路基板や、これに搭載される部品の小型化の要求が強くなっている。同時に電子部品の実装領域や、これを覆うための金属ケース自体のサイズや、その接合領域の小型化の要求が強い。従来の金属ケースの接続構造では、要求に対応して接合領域を小型化することが困難な状況にある。
【0005】
このような課題を解決するためのシールド用金属ケースの搭載構造を開示したものとして、特許文献1(特開2006−344812号公報)および特許文献2(特開2003−309397号公報)がある。
【0006】
特許文献1には、図19に示すように、金属ケース1012の各コーナー部に、コーナー部を挟む2つの辺に斜交する板状の脚部1014を設けている。脚部1014に対応する基板1011の側には、脚部1014の下端が、その斜辺に沿って電気的に接合される三角形状のランドパターン1015が形成されている。
【0007】
また、特許文献1に開示された構造においては、基板1011の側に形成された嵌合部1011aと金属ケース1012に形成された突起部1018aとを嵌合することで位置決めを行なっている。
【0008】
また、特許文献2の構造においては、図20および図21に示すように、プリント基板2025の両端にアースパッド2026を設けている。プリント基板2025に取り付ける金属キャップ2029は、平板の両端を折り曲げて脚部2020を形成した構造としている。アースパッド2026と金属キャップ2029とは半田接続される。プリント基板2025上に搭載された最も背の高い電子部品2003の上面に接着剤2028を塗布し、金属キャップ2029を接着固定している。
【特許文献1】特開2006−344812号公報
【特許文献2】特開2003−309397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の構造においては、金属ケース1012の脚部1014を基板1011に設けられた4点のランドパターン1015に半田接合する。回路基板のランドパターン1015は金属ケース1012の脚部1014の下端より大きく形成されているため、半田リフローにより実装した際に、金属ケース1012に形成された脚部1014の下端がランドパターン1015内を移動する。これにより金属ケースの位置ずれが生じるという問題点を有している。この課題を解決する為にランドパターン1015を小さくする事が考えられるが、この場合、半田接合強度が低下し、金属ケース1012が剥離するという問題がある。
【0010】
また、特許文献1に記載の構造においては、位置ずれの発生を防止するために、基板1011の一部に切り欠き部1011aを形成し、金属ケース1012に形成された突起部1018aと嵌合することで位置ズレの発生を防止する構造が記載されている。しかし、基板がフレキシブルプリント回路基板などの薄型基板の場合には基板自体の剛性が低く、嵌合部を設けたとしても金属ケース101を固定することができない。
【0011】
また、強度を十分に保つため嵌合部を大きくした場合には、省スペース化を妨げるという問題を有している。
【0012】
一方、特許文献2に記載の構造においては、プリント基板2025の両端で半田接合すると共に、プリント基板2025に搭載された最も背の高い電子部品2003の上面に接着剤2028を塗布し、金属キャップ2029を接着固定する構造が開示されている。本構造では、電子部品の実装と金属ケースの実装とは接合方法が異なるため全く別の工程となり、コストアップが問題となる。また、接着を省略すると、金属キャップ2029の脚部2020とアースパッド2026とのはんだ接合のみとなるが、接合強度が十分確保できないという問題がある。
【0013】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、金属ケースと基板との接合強度を確保することが可能でかつ金属ケースの位置決めが高い精度で可能なシールドケース搭載基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に基づいた、シールドケース搭載基板に従えば、基板と、該基板上に搭載された電子部品と、該電子部品の上方を覆う本体部と、該本体部の端部に連続し上記基板の方向に垂下した垂下部とを含む金属ケースと、上記基板表面に設けられ、対応する上記垂下部の下端部が半田接合された第1ランドパターンと、上記基板表面に設けられ、対応する上記垂下部の下端部が半田接合された第2ランドパターンとを備えている。上記第1ランドパターンの、上記垂下部の厚み方向の幅は、上記第2ランドパターンの、上記垂下部の厚み方向の幅よりも大きくされている。
【0015】
上記シールドケース搭載基板において好ましくは、垂下部の厚みをL1とし、上記第2ランドパターンの上記垂下部の厚み方向の幅をL2としたとき、L1およびL2が1<(L2/L1)≦5の関係を満たすように構成されている。
【0016】
上記シールドケース搭載基板において好ましくは、上記第1ランドパターンおよび上記第2ランドパターンはそれぞれ複数個設けられている。
【0017】
上記シールドケース搭載基板において好ましくは、上記本体部の外縁は直線状に延びる4つの辺を有し、上記垂下部は、該4つの辺の端縁から垂下するように形成され、上記第2ランドパターンは、少なくとも4個設けられ、上記第2ランドパターンは、上記4辺それぞれに対応する位置に少なくとも1つずつ設けられている。
【0018】
上記シールドケース搭載基板において好ましくは、上記第2ランドパターンに対応する垂下部は、その下端に切り欠き部を有している。
【0019】
上記シールドケース搭載基板において好ましくは、上記基板はフレキシブルプリント回路基板である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るシールドケース搭載基板によると、金属ケースと基板との接合強度を確保することが可能でかつ金属ケースの位置決めを高い精度で行なうことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明に基づいた各実施の形態におけるシールドケース搭載基板の構造について、図を参照しながら説明する。なお、各実施の形態において、同一または相当箇所については同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さないこととする。
【0022】
(実施の形態1)
本実施の形態に係るシールドケース搭載基板100は、回路基板200と回路基板200上に搭載された電子部品230bと、電子部品230bの上方を覆う本体部172と、本体部172の端部に連続し回路基板200の方向に垂下した垂下部180とを含むシールドケース170と、回路基板200の表面に設けられ、対応する垂下部180の下端部が半田接合された第1ランドパターン210と、回路基板200の表面に設けられ、対応する垂下部180の下端部が半田接合された第2ランドパターン220とを備えている。
【0023】
図1は、本実施の形態におけるシールドケースの構造を示す斜視図である。本実施の形態においては、シールドケース170は、金属材料を曲げ加工して形成している。シールドケース170は、電子部品の上方を覆う板状の本体部172と電子部品の側方を覆う板状の垂下部180とを有している。
【0024】
本体部172の外縁は、直線状の4辺を有し、平面視略矩形に構成されている。本体部172の角部の一つは、丸みを帯びて形成されている。本体部172の端部からは、本体部172に対して直角に折れ曲がった垂下部180が連続している。ここでは、垂下部180を本体部172に対して直角に折り曲げているが、必ずしも直角でなくてもよい。
【0025】
本実施の形態のシールドケース170は、金属材料を金型プレス加工により4辺曲げを行なうことで作製している。あくまでも一例であるが、本実施の形態で用いた金属材料の厚みは0.1mmである。
【0026】
図2は、本実施の形態で用いた回路基板の構造を示す斜視図である。本実施の形態においては、回路基板200として、フレキシブルプリント回路基板を用いている。回路基板200には、周知のフォトリソグラフィー工程により、種々の配線パターン240,250、電子部品搭載領域230のランドパターン、および、シールドケース170を搭載するためのランドパターン210,220を形成している。
【0027】
具体的には、回路基板200上には、コンデンサ、抵抗、コイル、ダイオードなどの電子部品を搭載するための電子部品搭載領域230(電子部品は図示せず)が設けられている。電子部品搭載領域230には、電子部品を搭載するためのランドパターンが設けられている。
【0028】
また、回路基板200には、シールドケース170を搭載するためのランドパターン210,220が設けられている。シールドケース170は、電子部品搭載領域230から発生するノイズや、外部から電子部品搭載領域230へ入射するノイズを遮断する。
【0029】
回路基板200には、電子機器本体(図示せず)からの制御信号を伝送する為の電子機器接続端子240、および、電子機器本体から受け取った制御信号を液晶表示素子(図示せず)に供給するための液晶表示素子接続端子250が設けられている。
【0030】
図3は、本実施の形態のシールドケース搭載基板の構造を示す斜視図である。
図3に示すように、本実施の形態においては、シールドケース170の垂下部180の下端が、対応するランドパターン210,220の上に位置している。本実施の形態においては、シールドケース170の垂下部180と回路基板200とが略直角方向に当接するようにしている。ただし、垂下部180と回路基板200とが当接する方向は必ずしも直角でなくてもよい。シールドケース170と回路基板200とは相互に半田により接続されている。具体的な接続工程については後述する。
【0031】
図4は、本実施の形態の回路基板とシールドケースとの位置関係を示す平面図である。図5は、図4におけるV−V矢視断面図である。図6は、図4におけるVI−VI矢視断面図である。図7は、図6におけるA部拡大図である。
【0032】
図4に示すように、ランドパターン210は、シールドケース170の4つの角部に対応する位置に配置されている。このランドパターン210は、シールドケース170を固定するためのランドパターン(固定用ランドパターン)である。本実施の形態では、4つの固定用のランドパターン210のうち3つを正方形で構成している。
【0033】
具体的には、一辺が0.75mmの正方形で構成し、垂下部180の厚み(0.1mm)に対して十分大きい厚みを有するようにしている。固定用ランドパターン210の垂下部180の厚み方向の幅は、垂下部180の厚みを考慮して、十分な大きさとすることが好ましい。これにより半田とランドパターン210との接触面積を確保することができ、十分な半田の剥離強度を確保することができる。
【0034】
湾曲したコーナー部に位置するランドパターン210(図4において右上に位置する)は、シールドケース170の垂下部180の形状に沿って湾曲させている。ただし、湾曲していない辺(垂下部180と直交する辺)の長さは、正方形のランドパターン210と同一である。
【0035】
ランドパターン220は、シールドケース170を半田リフローにより固定する工程において、シールドケース170が移動できる範囲を制限するためのランドパターン(位置決め用ランドパターン)である。そのため、固定用ランドパターン210の垂下部180の厚み方向の幅よりも、垂下部180の厚み方向の幅L2が小さくなるように構成されている。
【0036】
あくまでも一例であるが、本実施の形態では、位置決め用のランドパターン220の長辺を1.0mm、短辺を0.5mmの長方形に構成している。ランドパターン220は、シールドケース170の4辺それぞれに対応する位置に各1個ずつ、計4個を配置している。
【0037】
半田リフロー時には、シールドケース170の垂下部180は、ランドパターン220内を移動する。位置決め用のランドパターン220の短辺の長さL2が0.5mmであり、垂下部180の厚みL1が0.1mmであるので、シールドケース170を上下左右方向に±0.2mmの位置精度で半田接合することができる。
【0038】
本実施の形態では、シールドケース170の垂下部180の厚みL1を0.1mmとしており、ランドパターン220の垂下部180の厚み方向の幅L2を0.5mmにとしているため、したがって、長さ比(L2/L1)は5である。このようにランドパターン220を形成することで、シールドケース170の位置決め精度を確保することができる。併せて、シールドケース170を搭載するために必要な基板上の面積を小さくすることができる。
【0039】
同時に、シールドケース170の角部には、ランドパターン220よりも幅広の固定用のランドパターン210を設けているので、半田による接合強度を十分に確保することができる。固定用のランドパターン210を別途設けて半田による接合強度を確保しているので、位置決め用のランドパターン220をさらに小さくすることが可能である。それにより、シールドケース170の垂下部180の下端が移動できる範囲がさらに小さくなるので、シールドケース170の位置決め精度をさらに向上させることができる。
【0040】
垂下部180とランドパターン210,220との半田接合の状態は、図7に示すとおりである。固定用のランドパターン210および位置決め用のランドパターン220上に、半田ペースト210a,220aを形成する。半田ペースト210a,220aの上に垂下部180の下端を位置させ、リフロー処理を施すことで、垂下部180の側面には、半田ペースト210a,220aが溶融してフィレット210b、220bが形成される。
【0041】
本実施の形態においては、垂下部180と位置決め用のランドパターン220との半田接合強度は1箇所あたり0.48kgfである。その一方、垂下部180と固定用のランドパターン210との半田接合強度は1箇所あたり0.54kgfであった。ここで、上述のように位置決め用のランドパターン220の長辺の長さは1.0mmであり、固定用のランドパターン210の長さは0.75mmである。固定用のランドパターン210は位置決め用のランドパターン220よりも短いが、固定用ランドパターン210の垂下部180の幅を十分に大きくしたことにより、位置決め用のランドパターン220よりも高い半田接合強度が得られた。
【0042】
なお、半田接合強度の測定にはプッシュプルゲージ(アイコーエンジニアリング製 CPU Gage MODEL−RX−10,Push pull gage stand Model−1308)を用いた。また、測定においては大気リフローFPC基板を用い、プル強度を測定した。
【0043】
位置決め用ランドパターン220よりも垂下部180の厚み方向の幅が大きい固定用のランドパターン210を設けたことにより、位置決め用のランドパターン220のみを設けた場合よりも、半田接合強度が向上する。
【0044】
また、位置決め用のランドパターン220の幅を大きくすれば、剥離に対する強度をさらに改善することができるが、シールドケース搭載部が大型化し、シールドケース170の位置決めの精度が低下するため好ましくない。シールドケース170の垂下部180の厚みL1と位置決め用のランドパターン220の幅L2との関係は、その比が1<(L2/L1)≦5となるように形成することが好ましい。これにより位置精度の向上を図ることができる。
【0045】
上記の構成により、シールドケース170の位置決め精度の確保とシールドケース170の半田接合強度の確保の両立を図ることができる。すなわち、幅が大きい固定用ランドパターン210により半田接合強度を確保し、幅が小さい位置決め用ランドパターン220により位置決め精度を確保することで、これらの両立を図ることができる。また、全てのランドパターンを大型化した場合よりも、実装面積を小さくすることができる。
【0046】
続いてシールドケース170を回路基板200に固定する工程について図8から図12を用いて説明する。図8から図12は、本実施の形態のシールドケースを回路基板に固定する各工程を示す斜視図である。
【0047】
図8は、電子部品搭載領域230およびランドパターン210,220が形成された回路基板200を示す。この実施の形態においては、回路基板200は、フィルムの上に回路を構成する銅箔などからなる配線パターンを配設した、フレキシブルプリント回路基板を用いている。
【0048】
図9は、回路基板200上に半田ペースト413を塗布する工程を示している。図9に示すように、半田ペースト413が、開口マスク411を用いて印刷機412により塗布される。開口マスク411には、回路基板200上に形成された電子部品搭載領域230に設けられたランドパターンおよびシールドケースを搭載するためのランドパターン210,220のそれぞれに対応する位置に開口が設けられている。
【0049】
電子部品搭載領域230のランドパターンおよびランドパターン210,220のそれぞれに半田ペースト213を塗布すると、図10に示すような状態となる。
【0050】
次に、図11に示すように、電子部品搭載領域230に、電子部品(コンデンサ、抵抗、コイル、ダイオードなど)230bが搭載される。続いて、シールドケース170が、ランドパターン210,220に対応する位置に搭載される。本実施の形態では、電子部品230bおよびシールドケース170は、マウンター装置を用いて回路基板200上に搭載している。
【0051】
図10に示すように、電子部品230bおよびシールドケース170が回路基板200上に搭載された状態で、高温槽の中を通過させ、半田ペースト210a,220a,230aを溶融させる。溶融した半田ペースト210a,220a,230aにより電子部品230bおよびシールドケース170を接合することで、本実施の形態のシールドケース搭載基板100が形成される。
【0052】
以上、説明したようなシールドケース搭載基板の製造方法によると、回路基板200上に電子部品230bを搭載するためのランドパターン、シールドケース170を固定するためのランドパターン210、および、シールドケース170を主として位置決めするためのランドパターン220を設けているので、電子部品の半田接合およびシールドケース170の位置決めおよび固定を一つの工程で行なうことができる。すなわち、シールドケース170の固定のために接着などの工程が増加することがない。シールドケース170の高い位置決め精度と、シールドケース170の高い固定強度とを両立すると共に、最小限の工程でこれを実現することができる。
【0053】
本実施の形態においては、シールドケース170を平面視矩形に構成し、それぞれの辺に対応する位置に位置決め用のランドパターン220を設けた。すなわち、位置決め用ランドパターン220を相互に直交する方向に配置した。位置決め用のランドパターン220は、垂下部180の厚み方向の移動を主として制限するので、複数個の位置決め用ランドパターン220を直交方向に配置することにより、平面視矩形のシールドケース170の位置決めを正確に行なうことができる。
【0054】
また、本実施の形態においては、シールドケース170の接合強度は、主として固定用ランドパターン210により確保されるので、機械的な嵌合構造などが不要となる。これにより本実施の形態のように、回路基板200としてフレキシブルプリント回路基板を用いた場合でもシールドケース170を強固に固定することができる。
【0055】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について図面に基づいて説明する。
【0056】
基本的な構成は、実施の形態1と同じであるが、本実施の形態においては、ランドパターン210,220と接合するシールドケース170の垂下部180の下端に、接合強度を向上させるための切り欠き部185を設けた点が主として異なる。
【0057】
図13は、本実施の形態のシールドケースの構造を示す斜視図であり、図14は、図13におけるB部拡大図である。
【0058】
図13および図14に示すように、シールドケース170の垂下部180の下端部には、四角形の切り欠き部185を設けている。切り欠き部185を設けることで、シールドケース170の垂下部180とランドパターン210,220とは、垂下部180の下端部の矩形片187により接合される。
【0059】
1つの垂下部180に複数の切り欠き部185を設けている。具体的には、図14に示すように、1つの垂下部180に2つの切り欠き部185を設け、3つの矩形片187によりランドパターン210,220と接合している。
【0060】
あくまでも一例であるが、本実施の形態においては、切り欠き部185の大きさは、高さHが0.3mm、幅Wが0.3mmとした。切り欠き部185の個数、大きさおよびピッチは、必要に応じて種々変更することができる。
【0061】
図15は、本実施の形態で用いた回路基板の構造を示す斜視図である。本実施の形態においては、位置決め用ランドパターン220を、シールドケース170の長辺に対応する箇所には2箇所設けている。位置決め用ランドパターン220の、垂下部180の厚み方向の幅L2(図4参照)は、0.2mmとしている。位置決め用ランドパターン220の長辺は1.4mmとしている。これは対応する3個の矩形片187の一方の端部から他方の端部までの長さに略相当する。
【0062】
図16は、本実施の形態のシールドケース搭載基板の構造を示す斜視図である。図16に示すように、シールドケース170を回路基板200に固定した状態において、垂下部180の下端の各矩形片187は、対応するランドパターン210,220の上に位置する。
【0063】
本実施の形態では、シールドケース170の位置決めを行なうためのランドパターン220を、その長辺が1.4mm、短辺(L2)が0.2mmの大きさに形成した。シールドケース170の4辺に対応するように、計6個の位置決め用のランドパターン220を設けた。垂下部180の厚み(L1)は0.1mmであるので、シールドケース170の位置決め誤差は、上下左右方向に±0.05mmの範囲となり、極めて高精度の位置決めが可能である。
【0064】
次に、本実施の形態のシールドケース170と回路基板200との接合構造の詳細に関し、図17を用いて説明する。
【0065】
図17および図18は、回路基板上に搭載したシールドケースの接続部の構造を示す拡大断面図である。
【0066】
本実施の形態のシールドケース170を実施の形態1と同様の工程にて半田接合すると、図17に示すように、垂下部180の矩形片187の側面には、半田フィレット220bが形成される。
【0067】
図18に示すように、同時に矩形片187,187間の対向する側面(切り欠き部185側の側面)にも半田フィレット220bが形成される。さらには、ランドパターン220の切り欠き部185に対応する部分には半田ペースト220aが十分な厚み残留する。
【0068】
これにより半田ペーストがランドパターン220に接触する面積を十分に確保することができる。これらの効果により垂下部180とランドパターン220との接合強度は、1箇所あたり0.38kgfとなった。切り欠き部185がない場合に比べて、約1.4倍の接合強度を得ることができた。
【0069】
なお、切り欠き部の形状は本実施の形態の形状には限定されず、半田とランドパターン220との接合面積、および、半田と垂下部180との接合面積が増加するような形状であればよい。
【0070】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるのではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】この発明に基づいた実施の形態1におけるシールドケースの構造を示す斜視図である。
【図2】この発明に基づいた実施の形態1で用いた回路基板の構造を示す斜視図である。
【図3】この発明に基づいた実施の形態1におけるシールドケース搭載基板の構造を示す斜視図である。
【図4】この発明に基づいた実施の形態1における回路基板とシールドケースとの位置関係を示す平面図である。
【図5】この発明に基づいた実施の形態1における回路基板とシールドケースとの接合構造を示し、図4におけるV−V矢視断面図である。
【図6】この発明に基づいた実施の形態1における回路基板とシールドケースとの接合構造を示し、図4におけるVI−VI矢視断面図である。
【図7】この発明に基づいた実施の形態1における回路基板とシールドケースとの接合構造を示し、図6におけるA部拡大図である。
【図8】実施の形態1のシールドケースを回路基板に固定する工程を示す斜視図である。
【図9】実施の形態1のシールドケースを回路基板に固定する工程を示す斜視図である。
【図10】実施の形態1のシールドケースを回路基板に固定する工程を示す斜視図である。
【図11】実施の形態1のシールドケースを回路基板に固定する工程を示す斜視図である。
【図12】実施の形態1のシールドケースを回路基板に固定する工程を示す斜視図である。
【図13】この発明に基づいた実施の形態2におけるシールドケースの構造を示す斜視図である。
【図14】この発明に基づいた実施の形態2におけるシールドケースの構造を示し、図13におけるB部拡大図である。
【図15】この発明に基づいた実施の形態2で用いた回路基板の構造を示す斜視図である。
【図16】この発明に基づいた実施の形態2のシールドケース搭載基板の構造を示す斜視図である。
【図17】この発明に基づいた実施の形態2における回路基板上に搭載したシールドケースの接続部の構造を示す拡大断面図である。
【図18】この発明に基づいた実施の形態2における回路基板上に搭載したシールドケースの接続部の構造を示す拡大断面図である。
【図19】従来のシールドケース搭載基板の構造を示す斜視図である。
【図20】従来のシールドケース搭載基板の構造を示す分解斜視図である。
【図21】従来のシールドケース搭載基板の構造を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0072】
100 シールドケース搭載基板、170 シールドケース、172 本体部、180 垂下部、185 切り欠き部、187 矩形片、200 回路基板、210 (固定用)ランドパターン、220 (位置決め用)ランドパターン、210a,213,220a,230a 半田ペースト、210b,220b 半田フィレット、230 電子部品搭載領域、230b 電子部品、240 電子機器接続端子、250 液晶表示素子接続端子、411 開口マスク、412 印刷機、413 半田ペースト。
【技術分野】
【0001】
この発明は、シールド用金属ケースが搭載されたシールドケース搭載基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの電子機器には、機器を駆動するために複数の電子部品(抵抗、コンデンサ、ダイオード、コイル、発信器等)が搭載された回路基板が用いられる。これらの回路基板には、実装された電子部品自体から発する電気的なノイズや、外部から電子部品に飛び込むノイズを遮断するために、電子部品の周囲を金属ケースで覆ったシールド構造が一般的に用いられている。
【0003】
シールド構造は、金属ケースの一部を回路基板上に設けられたグランド端子に接続する構造が一般的である。特に、金属ケースに形成された突起部と、基板上に形成された接続端子とを半田接続することで、金属ケースをグランド端子へ接地した構造が多用されている。
【0004】
ところで近年では、電子機器の小型化にともない、機器周辺に配置される回路基板や、これに搭載される部品の小型化の要求が強くなっている。同時に電子部品の実装領域や、これを覆うための金属ケース自体のサイズや、その接合領域の小型化の要求が強い。従来の金属ケースの接続構造では、要求に対応して接合領域を小型化することが困難な状況にある。
【0005】
このような課題を解決するためのシールド用金属ケースの搭載構造を開示したものとして、特許文献1(特開2006−344812号公報)および特許文献2(特開2003−309397号公報)がある。
【0006】
特許文献1には、図19に示すように、金属ケース1012の各コーナー部に、コーナー部を挟む2つの辺に斜交する板状の脚部1014を設けている。脚部1014に対応する基板1011の側には、脚部1014の下端が、その斜辺に沿って電気的に接合される三角形状のランドパターン1015が形成されている。
【0007】
また、特許文献1に開示された構造においては、基板1011の側に形成された嵌合部1011aと金属ケース1012に形成された突起部1018aとを嵌合することで位置決めを行なっている。
【0008】
また、特許文献2の構造においては、図20および図21に示すように、プリント基板2025の両端にアースパッド2026を設けている。プリント基板2025に取り付ける金属キャップ2029は、平板の両端を折り曲げて脚部2020を形成した構造としている。アースパッド2026と金属キャップ2029とは半田接続される。プリント基板2025上に搭載された最も背の高い電子部品2003の上面に接着剤2028を塗布し、金属キャップ2029を接着固定している。
【特許文献1】特開2006−344812号公報
【特許文献2】特開2003−309397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の構造においては、金属ケース1012の脚部1014を基板1011に設けられた4点のランドパターン1015に半田接合する。回路基板のランドパターン1015は金属ケース1012の脚部1014の下端より大きく形成されているため、半田リフローにより実装した際に、金属ケース1012に形成された脚部1014の下端がランドパターン1015内を移動する。これにより金属ケースの位置ずれが生じるという問題点を有している。この課題を解決する為にランドパターン1015を小さくする事が考えられるが、この場合、半田接合強度が低下し、金属ケース1012が剥離するという問題がある。
【0010】
また、特許文献1に記載の構造においては、位置ずれの発生を防止するために、基板1011の一部に切り欠き部1011aを形成し、金属ケース1012に形成された突起部1018aと嵌合することで位置ズレの発生を防止する構造が記載されている。しかし、基板がフレキシブルプリント回路基板などの薄型基板の場合には基板自体の剛性が低く、嵌合部を設けたとしても金属ケース101を固定することができない。
【0011】
また、強度を十分に保つため嵌合部を大きくした場合には、省スペース化を妨げるという問題を有している。
【0012】
一方、特許文献2に記載の構造においては、プリント基板2025の両端で半田接合すると共に、プリント基板2025に搭載された最も背の高い電子部品2003の上面に接着剤2028を塗布し、金属キャップ2029を接着固定する構造が開示されている。本構造では、電子部品の実装と金属ケースの実装とは接合方法が異なるため全く別の工程となり、コストアップが問題となる。また、接着を省略すると、金属キャップ2029の脚部2020とアースパッド2026とのはんだ接合のみとなるが、接合強度が十分確保できないという問題がある。
【0013】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、金属ケースと基板との接合強度を確保することが可能でかつ金属ケースの位置決めが高い精度で可能なシールドケース搭載基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に基づいた、シールドケース搭載基板に従えば、基板と、該基板上に搭載された電子部品と、該電子部品の上方を覆う本体部と、該本体部の端部に連続し上記基板の方向に垂下した垂下部とを含む金属ケースと、上記基板表面に設けられ、対応する上記垂下部の下端部が半田接合された第1ランドパターンと、上記基板表面に設けられ、対応する上記垂下部の下端部が半田接合された第2ランドパターンとを備えている。上記第1ランドパターンの、上記垂下部の厚み方向の幅は、上記第2ランドパターンの、上記垂下部の厚み方向の幅よりも大きくされている。
【0015】
上記シールドケース搭載基板において好ましくは、垂下部の厚みをL1とし、上記第2ランドパターンの上記垂下部の厚み方向の幅をL2としたとき、L1およびL2が1<(L2/L1)≦5の関係を満たすように構成されている。
【0016】
上記シールドケース搭載基板において好ましくは、上記第1ランドパターンおよび上記第2ランドパターンはそれぞれ複数個設けられている。
【0017】
上記シールドケース搭載基板において好ましくは、上記本体部の外縁は直線状に延びる4つの辺を有し、上記垂下部は、該4つの辺の端縁から垂下するように形成され、上記第2ランドパターンは、少なくとも4個設けられ、上記第2ランドパターンは、上記4辺それぞれに対応する位置に少なくとも1つずつ設けられている。
【0018】
上記シールドケース搭載基板において好ましくは、上記第2ランドパターンに対応する垂下部は、その下端に切り欠き部を有している。
【0019】
上記シールドケース搭載基板において好ましくは、上記基板はフレキシブルプリント回路基板である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るシールドケース搭載基板によると、金属ケースと基板との接合強度を確保することが可能でかつ金属ケースの位置決めを高い精度で行なうことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明に基づいた各実施の形態におけるシールドケース搭載基板の構造について、図を参照しながら説明する。なお、各実施の形態において、同一または相当箇所については同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さないこととする。
【0022】
(実施の形態1)
本実施の形態に係るシールドケース搭載基板100は、回路基板200と回路基板200上に搭載された電子部品230bと、電子部品230bの上方を覆う本体部172と、本体部172の端部に連続し回路基板200の方向に垂下した垂下部180とを含むシールドケース170と、回路基板200の表面に設けられ、対応する垂下部180の下端部が半田接合された第1ランドパターン210と、回路基板200の表面に設けられ、対応する垂下部180の下端部が半田接合された第2ランドパターン220とを備えている。
【0023】
図1は、本実施の形態におけるシールドケースの構造を示す斜視図である。本実施の形態においては、シールドケース170は、金属材料を曲げ加工して形成している。シールドケース170は、電子部品の上方を覆う板状の本体部172と電子部品の側方を覆う板状の垂下部180とを有している。
【0024】
本体部172の外縁は、直線状の4辺を有し、平面視略矩形に構成されている。本体部172の角部の一つは、丸みを帯びて形成されている。本体部172の端部からは、本体部172に対して直角に折れ曲がった垂下部180が連続している。ここでは、垂下部180を本体部172に対して直角に折り曲げているが、必ずしも直角でなくてもよい。
【0025】
本実施の形態のシールドケース170は、金属材料を金型プレス加工により4辺曲げを行なうことで作製している。あくまでも一例であるが、本実施の形態で用いた金属材料の厚みは0.1mmである。
【0026】
図2は、本実施の形態で用いた回路基板の構造を示す斜視図である。本実施の形態においては、回路基板200として、フレキシブルプリント回路基板を用いている。回路基板200には、周知のフォトリソグラフィー工程により、種々の配線パターン240,250、電子部品搭載領域230のランドパターン、および、シールドケース170を搭載するためのランドパターン210,220を形成している。
【0027】
具体的には、回路基板200上には、コンデンサ、抵抗、コイル、ダイオードなどの電子部品を搭載するための電子部品搭載領域230(電子部品は図示せず)が設けられている。電子部品搭載領域230には、電子部品を搭載するためのランドパターンが設けられている。
【0028】
また、回路基板200には、シールドケース170を搭載するためのランドパターン210,220が設けられている。シールドケース170は、電子部品搭載領域230から発生するノイズや、外部から電子部品搭載領域230へ入射するノイズを遮断する。
【0029】
回路基板200には、電子機器本体(図示せず)からの制御信号を伝送する為の電子機器接続端子240、および、電子機器本体から受け取った制御信号を液晶表示素子(図示せず)に供給するための液晶表示素子接続端子250が設けられている。
【0030】
図3は、本実施の形態のシールドケース搭載基板の構造を示す斜視図である。
図3に示すように、本実施の形態においては、シールドケース170の垂下部180の下端が、対応するランドパターン210,220の上に位置している。本実施の形態においては、シールドケース170の垂下部180と回路基板200とが略直角方向に当接するようにしている。ただし、垂下部180と回路基板200とが当接する方向は必ずしも直角でなくてもよい。シールドケース170と回路基板200とは相互に半田により接続されている。具体的な接続工程については後述する。
【0031】
図4は、本実施の形態の回路基板とシールドケースとの位置関係を示す平面図である。図5は、図4におけるV−V矢視断面図である。図6は、図4におけるVI−VI矢視断面図である。図7は、図6におけるA部拡大図である。
【0032】
図4に示すように、ランドパターン210は、シールドケース170の4つの角部に対応する位置に配置されている。このランドパターン210は、シールドケース170を固定するためのランドパターン(固定用ランドパターン)である。本実施の形態では、4つの固定用のランドパターン210のうち3つを正方形で構成している。
【0033】
具体的には、一辺が0.75mmの正方形で構成し、垂下部180の厚み(0.1mm)に対して十分大きい厚みを有するようにしている。固定用ランドパターン210の垂下部180の厚み方向の幅は、垂下部180の厚みを考慮して、十分な大きさとすることが好ましい。これにより半田とランドパターン210との接触面積を確保することができ、十分な半田の剥離強度を確保することができる。
【0034】
湾曲したコーナー部に位置するランドパターン210(図4において右上に位置する)は、シールドケース170の垂下部180の形状に沿って湾曲させている。ただし、湾曲していない辺(垂下部180と直交する辺)の長さは、正方形のランドパターン210と同一である。
【0035】
ランドパターン220は、シールドケース170を半田リフローにより固定する工程において、シールドケース170が移動できる範囲を制限するためのランドパターン(位置決め用ランドパターン)である。そのため、固定用ランドパターン210の垂下部180の厚み方向の幅よりも、垂下部180の厚み方向の幅L2が小さくなるように構成されている。
【0036】
あくまでも一例であるが、本実施の形態では、位置決め用のランドパターン220の長辺を1.0mm、短辺を0.5mmの長方形に構成している。ランドパターン220は、シールドケース170の4辺それぞれに対応する位置に各1個ずつ、計4個を配置している。
【0037】
半田リフロー時には、シールドケース170の垂下部180は、ランドパターン220内を移動する。位置決め用のランドパターン220の短辺の長さL2が0.5mmであり、垂下部180の厚みL1が0.1mmであるので、シールドケース170を上下左右方向に±0.2mmの位置精度で半田接合することができる。
【0038】
本実施の形態では、シールドケース170の垂下部180の厚みL1を0.1mmとしており、ランドパターン220の垂下部180の厚み方向の幅L2を0.5mmにとしているため、したがって、長さ比(L2/L1)は5である。このようにランドパターン220を形成することで、シールドケース170の位置決め精度を確保することができる。併せて、シールドケース170を搭載するために必要な基板上の面積を小さくすることができる。
【0039】
同時に、シールドケース170の角部には、ランドパターン220よりも幅広の固定用のランドパターン210を設けているので、半田による接合強度を十分に確保することができる。固定用のランドパターン210を別途設けて半田による接合強度を確保しているので、位置決め用のランドパターン220をさらに小さくすることが可能である。それにより、シールドケース170の垂下部180の下端が移動できる範囲がさらに小さくなるので、シールドケース170の位置決め精度をさらに向上させることができる。
【0040】
垂下部180とランドパターン210,220との半田接合の状態は、図7に示すとおりである。固定用のランドパターン210および位置決め用のランドパターン220上に、半田ペースト210a,220aを形成する。半田ペースト210a,220aの上に垂下部180の下端を位置させ、リフロー処理を施すことで、垂下部180の側面には、半田ペースト210a,220aが溶融してフィレット210b、220bが形成される。
【0041】
本実施の形態においては、垂下部180と位置決め用のランドパターン220との半田接合強度は1箇所あたり0.48kgfである。その一方、垂下部180と固定用のランドパターン210との半田接合強度は1箇所あたり0.54kgfであった。ここで、上述のように位置決め用のランドパターン220の長辺の長さは1.0mmであり、固定用のランドパターン210の長さは0.75mmである。固定用のランドパターン210は位置決め用のランドパターン220よりも短いが、固定用ランドパターン210の垂下部180の幅を十分に大きくしたことにより、位置決め用のランドパターン220よりも高い半田接合強度が得られた。
【0042】
なお、半田接合強度の測定にはプッシュプルゲージ(アイコーエンジニアリング製 CPU Gage MODEL−RX−10,Push pull gage stand Model−1308)を用いた。また、測定においては大気リフローFPC基板を用い、プル強度を測定した。
【0043】
位置決め用ランドパターン220よりも垂下部180の厚み方向の幅が大きい固定用のランドパターン210を設けたことにより、位置決め用のランドパターン220のみを設けた場合よりも、半田接合強度が向上する。
【0044】
また、位置決め用のランドパターン220の幅を大きくすれば、剥離に対する強度をさらに改善することができるが、シールドケース搭載部が大型化し、シールドケース170の位置決めの精度が低下するため好ましくない。シールドケース170の垂下部180の厚みL1と位置決め用のランドパターン220の幅L2との関係は、その比が1<(L2/L1)≦5となるように形成することが好ましい。これにより位置精度の向上を図ることができる。
【0045】
上記の構成により、シールドケース170の位置決め精度の確保とシールドケース170の半田接合強度の確保の両立を図ることができる。すなわち、幅が大きい固定用ランドパターン210により半田接合強度を確保し、幅が小さい位置決め用ランドパターン220により位置決め精度を確保することで、これらの両立を図ることができる。また、全てのランドパターンを大型化した場合よりも、実装面積を小さくすることができる。
【0046】
続いてシールドケース170を回路基板200に固定する工程について図8から図12を用いて説明する。図8から図12は、本実施の形態のシールドケースを回路基板に固定する各工程を示す斜視図である。
【0047】
図8は、電子部品搭載領域230およびランドパターン210,220が形成された回路基板200を示す。この実施の形態においては、回路基板200は、フィルムの上に回路を構成する銅箔などからなる配線パターンを配設した、フレキシブルプリント回路基板を用いている。
【0048】
図9は、回路基板200上に半田ペースト413を塗布する工程を示している。図9に示すように、半田ペースト413が、開口マスク411を用いて印刷機412により塗布される。開口マスク411には、回路基板200上に形成された電子部品搭載領域230に設けられたランドパターンおよびシールドケースを搭載するためのランドパターン210,220のそれぞれに対応する位置に開口が設けられている。
【0049】
電子部品搭載領域230のランドパターンおよびランドパターン210,220のそれぞれに半田ペースト213を塗布すると、図10に示すような状態となる。
【0050】
次に、図11に示すように、電子部品搭載領域230に、電子部品(コンデンサ、抵抗、コイル、ダイオードなど)230bが搭載される。続いて、シールドケース170が、ランドパターン210,220に対応する位置に搭載される。本実施の形態では、電子部品230bおよびシールドケース170は、マウンター装置を用いて回路基板200上に搭載している。
【0051】
図10に示すように、電子部品230bおよびシールドケース170が回路基板200上に搭載された状態で、高温槽の中を通過させ、半田ペースト210a,220a,230aを溶融させる。溶融した半田ペースト210a,220a,230aにより電子部品230bおよびシールドケース170を接合することで、本実施の形態のシールドケース搭載基板100が形成される。
【0052】
以上、説明したようなシールドケース搭載基板の製造方法によると、回路基板200上に電子部品230bを搭載するためのランドパターン、シールドケース170を固定するためのランドパターン210、および、シールドケース170を主として位置決めするためのランドパターン220を設けているので、電子部品の半田接合およびシールドケース170の位置決めおよび固定を一つの工程で行なうことができる。すなわち、シールドケース170の固定のために接着などの工程が増加することがない。シールドケース170の高い位置決め精度と、シールドケース170の高い固定強度とを両立すると共に、最小限の工程でこれを実現することができる。
【0053】
本実施の形態においては、シールドケース170を平面視矩形に構成し、それぞれの辺に対応する位置に位置決め用のランドパターン220を設けた。すなわち、位置決め用ランドパターン220を相互に直交する方向に配置した。位置決め用のランドパターン220は、垂下部180の厚み方向の移動を主として制限するので、複数個の位置決め用ランドパターン220を直交方向に配置することにより、平面視矩形のシールドケース170の位置決めを正確に行なうことができる。
【0054】
また、本実施の形態においては、シールドケース170の接合強度は、主として固定用ランドパターン210により確保されるので、機械的な嵌合構造などが不要となる。これにより本実施の形態のように、回路基板200としてフレキシブルプリント回路基板を用いた場合でもシールドケース170を強固に固定することができる。
【0055】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について図面に基づいて説明する。
【0056】
基本的な構成は、実施の形態1と同じであるが、本実施の形態においては、ランドパターン210,220と接合するシールドケース170の垂下部180の下端に、接合強度を向上させるための切り欠き部185を設けた点が主として異なる。
【0057】
図13は、本実施の形態のシールドケースの構造を示す斜視図であり、図14は、図13におけるB部拡大図である。
【0058】
図13および図14に示すように、シールドケース170の垂下部180の下端部には、四角形の切り欠き部185を設けている。切り欠き部185を設けることで、シールドケース170の垂下部180とランドパターン210,220とは、垂下部180の下端部の矩形片187により接合される。
【0059】
1つの垂下部180に複数の切り欠き部185を設けている。具体的には、図14に示すように、1つの垂下部180に2つの切り欠き部185を設け、3つの矩形片187によりランドパターン210,220と接合している。
【0060】
あくまでも一例であるが、本実施の形態においては、切り欠き部185の大きさは、高さHが0.3mm、幅Wが0.3mmとした。切り欠き部185の個数、大きさおよびピッチは、必要に応じて種々変更することができる。
【0061】
図15は、本実施の形態で用いた回路基板の構造を示す斜視図である。本実施の形態においては、位置決め用ランドパターン220を、シールドケース170の長辺に対応する箇所には2箇所設けている。位置決め用ランドパターン220の、垂下部180の厚み方向の幅L2(図4参照)は、0.2mmとしている。位置決め用ランドパターン220の長辺は1.4mmとしている。これは対応する3個の矩形片187の一方の端部から他方の端部までの長さに略相当する。
【0062】
図16は、本実施の形態のシールドケース搭載基板の構造を示す斜視図である。図16に示すように、シールドケース170を回路基板200に固定した状態において、垂下部180の下端の各矩形片187は、対応するランドパターン210,220の上に位置する。
【0063】
本実施の形態では、シールドケース170の位置決めを行なうためのランドパターン220を、その長辺が1.4mm、短辺(L2)が0.2mmの大きさに形成した。シールドケース170の4辺に対応するように、計6個の位置決め用のランドパターン220を設けた。垂下部180の厚み(L1)は0.1mmであるので、シールドケース170の位置決め誤差は、上下左右方向に±0.05mmの範囲となり、極めて高精度の位置決めが可能である。
【0064】
次に、本実施の形態のシールドケース170と回路基板200との接合構造の詳細に関し、図17を用いて説明する。
【0065】
図17および図18は、回路基板上に搭載したシールドケースの接続部の構造を示す拡大断面図である。
【0066】
本実施の形態のシールドケース170を実施の形態1と同様の工程にて半田接合すると、図17に示すように、垂下部180の矩形片187の側面には、半田フィレット220bが形成される。
【0067】
図18に示すように、同時に矩形片187,187間の対向する側面(切り欠き部185側の側面)にも半田フィレット220bが形成される。さらには、ランドパターン220の切り欠き部185に対応する部分には半田ペースト220aが十分な厚み残留する。
【0068】
これにより半田ペーストがランドパターン220に接触する面積を十分に確保することができる。これらの効果により垂下部180とランドパターン220との接合強度は、1箇所あたり0.38kgfとなった。切り欠き部185がない場合に比べて、約1.4倍の接合強度を得ることができた。
【0069】
なお、切り欠き部の形状は本実施の形態の形状には限定されず、半田とランドパターン220との接合面積、および、半田と垂下部180との接合面積が増加するような形状であればよい。
【0070】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるのではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】この発明に基づいた実施の形態1におけるシールドケースの構造を示す斜視図である。
【図2】この発明に基づいた実施の形態1で用いた回路基板の構造を示す斜視図である。
【図3】この発明に基づいた実施の形態1におけるシールドケース搭載基板の構造を示す斜視図である。
【図4】この発明に基づいた実施の形態1における回路基板とシールドケースとの位置関係を示す平面図である。
【図5】この発明に基づいた実施の形態1における回路基板とシールドケースとの接合構造を示し、図4におけるV−V矢視断面図である。
【図6】この発明に基づいた実施の形態1における回路基板とシールドケースとの接合構造を示し、図4におけるVI−VI矢視断面図である。
【図7】この発明に基づいた実施の形態1における回路基板とシールドケースとの接合構造を示し、図6におけるA部拡大図である。
【図8】実施の形態1のシールドケースを回路基板に固定する工程を示す斜視図である。
【図9】実施の形態1のシールドケースを回路基板に固定する工程を示す斜視図である。
【図10】実施の形態1のシールドケースを回路基板に固定する工程を示す斜視図である。
【図11】実施の形態1のシールドケースを回路基板に固定する工程を示す斜視図である。
【図12】実施の形態1のシールドケースを回路基板に固定する工程を示す斜視図である。
【図13】この発明に基づいた実施の形態2におけるシールドケースの構造を示す斜視図である。
【図14】この発明に基づいた実施の形態2におけるシールドケースの構造を示し、図13におけるB部拡大図である。
【図15】この発明に基づいた実施の形態2で用いた回路基板の構造を示す斜視図である。
【図16】この発明に基づいた実施の形態2のシールドケース搭載基板の構造を示す斜視図である。
【図17】この発明に基づいた実施の形態2における回路基板上に搭載したシールドケースの接続部の構造を示す拡大断面図である。
【図18】この発明に基づいた実施の形態2における回路基板上に搭載したシールドケースの接続部の構造を示す拡大断面図である。
【図19】従来のシールドケース搭載基板の構造を示す斜視図である。
【図20】従来のシールドケース搭載基板の構造を示す分解斜視図である。
【図21】従来のシールドケース搭載基板の構造を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0072】
100 シールドケース搭載基板、170 シールドケース、172 本体部、180 垂下部、185 切り欠き部、187 矩形片、200 回路基板、210 (固定用)ランドパターン、220 (位置決め用)ランドパターン、210a,213,220a,230a 半田ペースト、210b,220b 半田フィレット、230 電子部品搭載領域、230b 電子部品、240 電子機器接続端子、250 液晶表示素子接続端子、411 開口マスク、412 印刷機、413 半田ペースト。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に搭載された電子部品と、
該電子部品の上方を覆う本体部と、該本体部の端部に連続し前記基板の方向に垂下した垂下部とを含む金属ケースと、
前記基板表面に設けられ、対応する前記垂下部の下端部がはんだ接合された第1ランドパターンと、
前記基板表面に設けられ、対応する前記垂下部の下端部がはんだ接合された第2ランドパターンと、を備え、
前記第1ランドパターンの、前記垂下部の厚み方向の幅は、前記第2ランドパターンの、前記垂下部の厚み方向の幅よりも大きい、シールドケース搭載基板。
【請求項2】
前記垂下部の厚みをL1とし、前記第2ランドパターンの前記垂下部の厚み方向の幅をL2としたとき、L1およびL2が1<(L2/L1)≦5の関係を満たす、請求項1に記載のシールドケース搭載基板。
【請求項3】
前記第1ランドパターンおよび前記第2ランドパターンはそれぞれ複数個設けられている、請求項1または2に記載のシールドケース搭載基板。
【請求項4】
前記本体部の外縁は直線状に延びる4つの辺を有し、
前記垂下部は、該4つの辺の端縁から垂下するように形成され、
前記第2ランドパターンは、少なくとも4個設けられ、
前記第2ランドパターンは、前記4辺それぞれに対応する位置に少なくとも1つずつ設けられている、請求項1から3のいずれかに記載のシールドケース搭載基板。
【請求項5】
前記第2ランドパターンに対応する垂下部は、その下端に切り欠き部を有する、請求項1から4のいずれかに記載のシールドケース搭載基板。
【請求項6】
前記基板はフレキシブルプリント回路基板である、請求項1から5のいずれかに記載のシールドケース搭載基板。
【請求項1】
基板と、
該基板上に搭載された電子部品と、
該電子部品の上方を覆う本体部と、該本体部の端部に連続し前記基板の方向に垂下した垂下部とを含む金属ケースと、
前記基板表面に設けられ、対応する前記垂下部の下端部がはんだ接合された第1ランドパターンと、
前記基板表面に設けられ、対応する前記垂下部の下端部がはんだ接合された第2ランドパターンと、を備え、
前記第1ランドパターンの、前記垂下部の厚み方向の幅は、前記第2ランドパターンの、前記垂下部の厚み方向の幅よりも大きい、シールドケース搭載基板。
【請求項2】
前記垂下部の厚みをL1とし、前記第2ランドパターンの前記垂下部の厚み方向の幅をL2としたとき、L1およびL2が1<(L2/L1)≦5の関係を満たす、請求項1に記載のシールドケース搭載基板。
【請求項3】
前記第1ランドパターンおよび前記第2ランドパターンはそれぞれ複数個設けられている、請求項1または2に記載のシールドケース搭載基板。
【請求項4】
前記本体部の外縁は直線状に延びる4つの辺を有し、
前記垂下部は、該4つの辺の端縁から垂下するように形成され、
前記第2ランドパターンは、少なくとも4個設けられ、
前記第2ランドパターンは、前記4辺それぞれに対応する位置に少なくとも1つずつ設けられている、請求項1から3のいずれかに記載のシールドケース搭載基板。
【請求項5】
前記第2ランドパターンに対応する垂下部は、その下端に切り欠き部を有する、請求項1から4のいずれかに記載のシールドケース搭載基板。
【請求項6】
前記基板はフレキシブルプリント回路基板である、請求項1から5のいずれかに記載のシールドケース搭載基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−165685(P2011−165685A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146049(P2008−146049)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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