説明

ジョイスティック及びその製造方法

【課題】
構成及び製造が簡単かつ容易であり、安価に製造可能なジョイスティック、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
ジョイスティック10を構成する可動部材14は、シャフト部34及び球状部36を備え、駆動部材12は、可動部材14のシャフト部34に固定され、可動部材14を駆動させる。磁石16が、可動部材14の球状部36内において、3軸センサ18の近傍に配置され、駆動部材12の操作により、この磁石16は、3軸センサ18に沿って半球状パターンで移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジョイスティックに関し、特に3軸ホール効果センサを使用して、装置の動作指示を行うジョイスティック、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジョイスティックは、種々の動作のために長年使用されている。ジョイスティックは、ゲーム機のみならず、クレーン及びフォークリフト等の油圧機器の操作等に関連して、広く使用されている。
【0003】
特に、ジョイスティックは、装置の多次元駆動を行うコンパクトな装置である。ジョイスティックには、種々のタイプが知られており、その1つに、「ジンバル」機構に基づくタイプがある。これは、IC(センサ)を中心とする半球形上を磁石が運動するように構成されている。特に、軸方向磁化が行われ、その磁束密度は、次式のようになっている。
Bx = Sin(α) Cos(β)
By = Cos(α) Sin(β)
Bz = Cos(α) Cos(β)
【0004】
既存の他のタイプのジョイスティックは、「ボール及びソケット」ジョイントであり、旋回点を中心とする半球形上を、磁石が移動するものである。特に軸方向の磁化が行われ、その磁束密度は、一層複雑な次式で与えられる。
α = Tan-1(Vx/(KzVz)2 + (KtVy)2)1/2)
β = Tan-1(Vy/((KzVz)2 + (KtVx)2)1/2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した両方の場合において、ジョイスティックの製造には、多くのコンポーネント、即ち部品が使用されている。例えば、前者では、「ジンバル」機構の主シャフトの一端に磁石が設けられ、このシャフトは、3軸センサと整合された中心軸を有する可動デバイスに取り付けられている。従って、シャフトが軸の周りに旋回すると、磁石の移動は、3軸センサにより検出される。このジョイスティックの製造には、多数の部品を備えているため、高価となるという課題を有する。
【0006】
本発明は、従来技術の上述した課題に鑑みなされたものであり、比較的簡単な構成で、3軸方向の運動を検出しうるジョイスティックを提供することを主要目的としている。
【0007】
本発明の他の目的は、比較的安価にジョイスティックを製造する方法を提供することである。
【0008】
本発明の上記した以外の目的、特徴及び効果は、特許請求の範囲、および添付図面を参照して行う以下の実施の形態に関する詳細な説明により理解しうると思う。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ジョイスティックを構成する可動部材は、一体部品からなり、シャフト部から球状部へ延び、シャフト部は、球状部より小さい直径を有する。駆動部材は、可動部材のシャフト部に固定され、可動部材を駆動する。磁石が可動部材の球状部内の底部に、上向きに設けられており、球状部の中心点から離間した位置に配置されている。3軸センサが、球状部の下方の近くに離間して配置され、駆動部の移動により、磁石を3軸センサに沿って、半球状パターンで移動させるようになっている。
【発明の効果】
【0010】
上述の如き特徴的な構成を採用する本発明のジョイスティック及びその製造方法によると、可動部をシャフト部と共にプラスチック材料のインジェクションモールド技法により製造し、かつ磁石をオーバーモールドして一体構造とすることにより、必要な構成部品を最小限とし、信頼性を改善することが可能である。また、組立を、簡単かつ迅速に行うことができるので、安価に製造が可能である。更に、これら可動部材及び駆動部材を光透過性材料により形成したので、内部の磁石をオペレータが見ることが可能である。更に、可動部材の球状部の内部に、LED等の発光素子を設けたことにより、オペレータに対し、これらの光透過性部材を介して、外部から動作状態を監視するという付加機能を提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明によるジョイスティックの一実施形態の全体構成を、一部を切り欠き断面で示す斜視図である。
【図2】図1に示すジョイスティックの中央縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明によるジョイスティックの一実施形態の構成及び動作を詳細に説明する。なお、この実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではない。
【0013】
図1及び図2に示す本発明によるジョイスティック10は、可動部材14の駆動に使用されるつまみ状の駆動部材12を備えている。可動部材14の内部には、磁石又はマグネット16が設けられ、可動部材14の運動は、3軸センサ18により検出される。
【0014】
この3軸センサ18は、PCB(プリント回路基板)20に電気的に接続され、その構成部品は、ハウジング22内に収容され、ハウジング22は、円錐状ばね24により、可動部材14に接続されている。3軸センサ18は、3軸方向の運動を検出可能な如何なるセンサでもよい。好適実施形態では、3軸センサ18は、3軸ホール効果センサである。駆動部材12は、任意の軸方向へ運動可能であり、円錐状ばね24により、非駆動位置、すなわち中立位置に付勢され、この位置では、駆動部材12には力は全く加えられない。
【0015】
駆動部材12は、円錐状であり、上面の中央に凹み部26を有している。その頂壁28は、中央の凹み部26から外方向に、かつ下方向に延びている。駆動部材12の下面中央には、筒部30が下方向へ延び、これに可動部材14が支持されている。シール32が、駆動部材12の底面、及びハウジング22の周囲と接触し、ハウジング22を駆動部材12に接続している。この構成により、駆動部材12は、あらゆる方向へ運動可能である。
【0016】
可動部材14は、シャフト部34、及びこのシャフト部34から下方へ延びる球状部36を備えている。シャフト部34の直径は、球状部36の直径よりも小さい。シャフト部34及び球状部36の両方は、中心軸38を中心としており、可動部材14は、この中心軸38を中心として回転可能である。シャフト部34は、回転部材14の第1端40において、円形部42を有し、円形部42は、駆動部材12の筒部30内に、回転可能に係合している。球状部36は、中心軸38上に中心点44を有し、かつ磁石16が配置されている第2端46へ延びている。磁石16は、第2端46から、球状部36の中心点44へ向けて延びている。好適な実施形態では、磁石16は筒状磁石であり、中心点44までは延びておらず、中心点44から離間している。
【0017】
磁石16の下方には、互いに離間する3軸センサ18が配置されている。この3軸センサ18は、上述した如くPCB20に電気的に接続されている。このPCB20には、LED(ダイオード)48が接続されている。LED48の作動は、独立して制御される。LED48は、特定の動作モードを示すために、トリガすることができるか、又はバックライト、即ち背面照明用として連続的にON状態とすることもできる。好適な実施形態においては、駆動部材12及び可動部材14の両方は、透明な材料で製造され、LED48が放射する光を、ユーザが検知しうるようになっている。更に、好適な実施形態においては、透明な材料は、プラスチック、特にインジェクションモールドされたプラスチックである。
【0018】
ハウジング22は、第1端50から、PCB20の近傍の第2端54まで延びている。円錐ばね24は、第1端50及び可動部材14のシャフト部34の周りの間へ延び、駆動部材12にバイアス力を加えている。従って、円錐状ばね24は、駆動部材12を常時非駆動又は中立位置に保持している。更に、ハウジング22の周りにおける、ハウジング22の第2端54の近傍には、リテーナ56が設けられ、ジョイスティック10をデバイス内に配置し、かつ保持しうるようになっている。
【0019】
このジョイスティック10の製造中に、プラスチックをインジェクションモールドして、可動部材14は形成される。プラスチックをモールドして、シャフト部34及び球状部36は形成される。シャフト部34の直径は、球状部36のそれより小さい。このプラスチックのインジェクションモールド工程において、磁石16は、球状部36にオーバーモールドされる。これにより、シャフト部34、球状部36及び磁石16は、単一部品となる。好適な実施形態では、プラスチックは透明プラスチックであり、インジェクションモールド中に、観察者は磁石16を見ることができる。
【0020】
次に、製造工程中において、駆動部材12は、可動部材14の円形部42に取り付けられる。次に、3軸センサ18をPCB20上に配置し、発光ダイオード(LED)48を、この3軸センサ18の近傍に配置する。この時点で、PCB20は、可動部材14の第2端46の下部で、かつその近傍に配置され、駆動部材12を運動させると、磁石16が、球形パターン内で3軸センサ18に沿って移動するようになっている。
【0021】
PCB20及び可動部材14は、ハウジング22内に配置され、PCB20は、ハウジング22の第2端54に隣接している。円錐状ばね24が、ハウジング22の第1端50及び可動部材14のシャフト部34の間に装着され、必要なバイアス力を付与する。この時点で、シール32を駆動部材12及びハウジング22の間に固定する。これにより、ジョイスティック10の製造が完了する。
【0022】
上述の如く製造されたジョイスティック10は、可動部材14内に埋め込まれた磁石16を有し、ジョイスティック10のアプリケーションに応じて、3軸センサ18のトリガに使用される。3軸センサ18は、その表面中央に対する磁石16の相対位置を検知する。磁石16の位置の移動は、ボール及びソケットタイプのデザインにより行われる。
【0023】
インジェクションモールド工程を採用しているため、磁石16、球状部36及びシャフト部34の3つのエレメントを、一体部品とすることができる。磁石16は、シャフト部34の中心軸38に沿って軸方向に、球状部36の中心点44から離れた位置に配置されている。これにより磁石16を、3軸センサ18の表面に沿って、可動部材14の球状部36の中心点44の周りに、無限球形パターン状に位置させることができる。
【0024】
また、このデザイン又は構成を使用することにより、磁石の軸方向の回転を、ジョイスティック10の他の潜在的な機能に使用できる。他方、駆動部材12及び可動部材14に透明材料を使用すると共に、PCB20を使用するシステムにLED48を組み込むことにより、光をオペレータのインタフェースに使用できる。プラスチック材料、インジェクションモールド工程及び部分組み込みの使用により、ジョイスティック10全体のコストを低減させることが可能である。可動部材、特にシャフト部34及び球状部36を、磁石16と共に、全て単一工程又は作業でオーバーモールドにより、インジェクションモールドするのが好ましい。
【0025】
上述したジョイスティック10及びその製造方法は、従来技術に比して優れた、幾つかの特有の効果を奏する。特に、シャフト部34及び球状部36の両方を有する可動部材14を、単一コンポーネントとして、オーステナイト材料よりなる一体物とするという特徴により、製造コストを大幅に低減し、かつLED48が点灯した時、その光を見ることができる。更に、磁石16を球状部36内に配置し、シャフト部34の中心軸38に沿う軸方向かつ球状部36の内部に配置することは、新たな構成であり、検知及び動作を改善させることができる。
【0026】
本発明の他の特徴及び効果は、球状部36の軸方向回転機能と、駆動シャフト組立体との結合である。更に、円錐状ばね24の使用により、このばね24が上部ハウジング及び可動部材14に作用して、可動部材14を中立位置へ復帰させることができる。特に、円錐状ばね24は、駆動中に曲げ負荷を生じ、この負荷の解放後の反力を使用することにより、可動部材14及び駆動部材12を中立位置へ復帰させることができる。
【0027】
本発明の更に他の効果は、ジョイスティック10内にLED48を使用していることである。これにより、可動部材14及び駆動部材12を透明又は光透過性材料で製造する場合には、LED48からの発光を、オペレータのインタフェース位置へ移動させることができる。従って、少なくとも、上述した本発明の目的のすべてが達成される。
【0028】
以上、本発明によるジョイスティック及びその製造方法の好適な実施形態について詳述した。しかし、この実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではない。本発明の精神や範囲から逸脱することなく、種々の変形変更が可能であることは、当業者には容易に理解できると思う。従って、これらすべての変更変形も、本発明に包含されるものであることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
10 ジョイスティック
12 駆動部材
14 可動部材
16 磁石
18 3軸センサ
20 PCB(回路基板)
22 ハウジング
24 円錐状ばね
26 凹み部
28 頂壁
30 筒部
32 シール
34 シャフト部
36 球状部
38 中心軸
40 第1端
42 円形部
44 中心点
46 第2端
48 LED
50 ハウジングの第1端
54 ハウジングの第2端
56 リテーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端のシャフト部から第2端で終端する球状部へ延び、前記シャフト部は前記球状部よりも小さい直径を有する可動部材と、
前記可動部材のシャフト部に取付けられた駆動部材と、
前記可動部材の前記球状部の第2端から、前記球状部内へ延びるように配置された磁石と、
前記可動部材の球状部の下方で、可動部材の第2端の下方近傍に配置された3軸センサとを備え、
前記駆動部材の移動により、前記磁石を前記3軸センサに沿って、半球上パターンで移動させるようになっていることを特徴とするジョイスティック。
【請求項2】
前記可動部材は一体構造であることを特徴とする請求項1に記載のジョイスティック。
【請求項3】
プラスチックをインジェクションモールドして、第1端にシャフト部を有すると共に球状部で終端する第2端を有し、前記シャフト部が前記球状部より小さい直径を有する可動部材を形成するステップと、
前記可動部材のインジェクションモールド中に、前記球状部に磁石をオーバーモールドするステップと、
前記可動部材の第1端に駆動部材を固定するステップと、
前記可動部材の第2端の下方かつ近傍に、3軸センサを配置し、前記駆動部材の移動により、前記磁石を前記3軸センサに沿って半球状パターンで移動させるステップ
とを備えることを特徴とするジョイスティックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−245421(P2009−245421A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−37610(P2009−37610)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(501004464)サウアー ダンフォス インコーポレイテッド (31)
【Fターム(参考)】