説明

スキャニングソナー装置および追尾方法

【課題】指定した追尾対象の追尾を継続することができるスキャニングソナー装置および追尾方法を提供する。
【解決手段】前回の観測結果において追尾対象とした像の重心の座標の絶対位置を基準位置とし、その周囲に追尾対象が含まれるように設定した領域を第1の観測領域として設定する第1の領域設定手順と、第1の領域設定手順によって設定された第1の観測領域内の基準位置に今回の観測結果による追尾対象の候補が存在するか否かが最初の判断である判断方法により次に追尾対象とする当該候補を設定する追尾対象設定手順と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚群等の追尾に用いるスキャニングソナー装置および追尾方法に関する。
【背景技術】
【0002】
漁労用の船舶に装備され、魚群の探査に用いられる漁労用のスキャニングソナー装置は、該スキャニングソナー装置から海中の全方位方向へ、水平面に対して所定の角度θ(以下、この所定の角度θを「俯角θ」という)で、俯角方向の幅が狭い傘状の送波指向特性で超音波(以下、「探査ビーム」という)を送波し、所定の比較的狭い(指向性の強い)受波指向特性を、探査ビームに沿って高速(予め定められた速度)で複数回回転させて観測(スキャン)する装置である(図4(a)参照)。この受波指向特性によるスキャンによって、探査ビームが海中の魚群や岩などの物体から反射してくる反射波を観測する。
【0003】
スキャニングソナー装置は、観測した反射波の強度に基づく信号データを、探査ビームを送波してから反射波を観測した時間と、受波指向特性の回転角度とに応じて平面的な画像に展開して海中の物体を平面的な画面に表示する。これは、観測した反射波の強度に基づく信号データを受波指向特性の回転に応じた渦巻き状の画像に展開することに相当する(図4(b)参照)。
【0004】
また、図4(b)において、スキャニングソナー装置の表示画面の中心は、該スキャニングソナー装置を装備した船舶を表しており、画面に表示されている方向φが、海中の物体が存在する方向、すなわち、スキャニングソナー装置を装備した船舶の進行方向に対する物体の方向を表している。
【0005】
また、表示画面の中心から、観測した反射波の強度に基づく信号データが示す位置までの距離Rを、スキャニングソナー装置を装備した船舶から物体までの距離として認識することができる。すなわち、探査ビームは、海中において一定の速度で伝搬するため、物体との距離によって反射波が観測されるまでの時間が異なることを利用して、探査ビームを送波したときから、探査ビームが物体に反射した反射波が観測されるまでの時間を計測し、この計測された時間の半分の時間で伝搬する超音波の距離が物体までの距離となる。
例えば、スキャニングソナー装置に表示された海中の反射波の強度に基づく信号データが示す位置が、表示画面の中心に近い場合は物体との距離が近く、表示画面の中心から遠い場合は物体との距離が遠いことを示す。
【0006】
また、従来のスキャニングソナー装置において、追尾対象として指定された反射波の強度に基づく信号データ、すなわち、目的とする魚群を自動で追尾する、自動追尾の機能を備えたスキャニングソナー装置が提案されている。
この従来の自動追尾の機能を備えたスキャニングソナー装置は、例えば、最初に追尾対象として指定された像を中心とした一定大きさの追尾範囲を設定して観測し、この追尾範囲内から検出した追尾対象の候補のうち、各候補の像の強度と像の面積とからなる総合反射強度が最大である候補を追尾対象とする。以後、前回抽出した追尾対象の位置を中心として、総合反射強度の大きさに応じた追尾範囲を設定して、その追尾範囲内で総合反射強度が最大である候補を追尾対象として追尾するように制御されている(図5参照)。
【0007】
また、特許文献1の自動追尾機能を備えたスキャニングソナー装置では、追尾対象の各候補の像の強度、像の面積、前回観測した像の中心からの距離、像の面積の縦横比を算出して、それぞれの値に対して該スキャニングソナー装置の利用者(操作者)が設定できる重み付けによって、複数の候補が抽出領域内に存在した場合に追尾対象とする候補の絞り込み方法が開示されている。
【特許文献1】特許第4106124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の自動追尾機能を備えたスキャニングソナー装置では、抽出領域内に追尾対象として指定したい像よりも、海底など、より大きな総合反射強度の像が存在すると、狙った追尾対象の像を指定できないという問題がある。
また、特許文献1に開示された自動追尾機能を備えたスキャニングソナー装置においては、該スキャニングソナー装置の利用者が設定した重み付けによって追尾対象の候補を選択するため、例えば、抽出領域内に追尾対象として指定したい像よりも大きな像が存在する場合に、追尾対象を切り替えないことと、複数の候補が存在する場合に、最も大きい候補を追尾対象とすることとを両立することができない。
【0009】
本発明は、上記の課題認識に基づいてなされたものであり、自動追尾機能を備えたスキャニングソナー装置において、指定した追尾対象の追尾を継続することができるスキャニングソナー装置および追尾方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の追尾方法は、漁労用の船舶等に装備され、所定の俯角を持って送波した超音波の反射波を観測して得られた当該反射波の強度に基づく信号を画像として表示し、前記反射波の強度に基づく信号が一定値以上になる像を追尾対象として指定し、追尾するスキャニングソナー装置の追尾方法において、前回の観測結果において追尾対象とした像の重心の座標の絶対位置を基準位置とし、その周囲に前記追尾対象が含まれるように設定した領域を第1の観測領域として設定する第1の領域設定手順と、前記第1の領域設定手順によって設定された第1の観測領域内の基準位置に今回の観測結果による追尾対象の候補が存在するか否かが最初の判断である判断方法により次に追尾対象とする当該候補を設定する追尾対象設定手順と、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の前記追尾対象設定手順は、前記第1の領域設定手順によって設定された第1の観測領域内の基準位置に追尾対象の候補が存在するときは、当該候補を次の追尾対象に設定し、前記第1の領域設定手順によって設定された第1の観測領域内の基準位置に追尾対象の候補が存在しないときは、前記第1の観測領域内で観測された候補の内、各候補の像内に含まれる反射波の強度に基づく信号と像の面積からなる総合反射強度が最大である前記候補を次の追尾対象に設定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の前記追尾対象設定手順は、前記指定された追尾対象の像の重心の絶対位置を基準とし、その周囲に予め定められた寸法の領域を第2の観測領域として設定する第2の領域設定手順を含み、前記第2の領域設定手順によって設定された第2の観測領域内の基準位置に前記指定された追尾対象の候補が存在するときは、当該候補を次の追尾対象に設定し、前記第2の領域設定手順によって設定された第2の観測領域内の基準位置に前記指定された追尾対象の候補が存在しないときは、前記第2の観測領域内で観測された候補の内、各候補の像内に含まれる反射波の強度に基づく信号と像の面積からなる総合反射強度が最大である前記候補を次の追尾対象に設定することを含む、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の本発明のスキャニングソナー装置は、漁労用の船舶等に装備され、所定の俯角を持って送波した超音波の反射波を観測して得られた当該反射波の強度に基づく信号を画像として表示し、前記反射波の強度に基づく信号が一定値以上になる像を追尾対象として指定し、追尾するスキャニングソナー装置において、前回の観測結果において追尾対象とした像の重心の座標の絶対位置を基準位置とし、その周囲に前記追尾対象が含まれるように設定した領域を第1の観測領域として設定する第1の領域設定手段と、前記第1の領域設定手段によって設定された第1の観測領域内の基準位置に今回の観測結果による追尾対象の候補が存在するか否かが最初の判断である判断方法により次に追尾対象とする当該候補を設定する追尾対象設定手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、自動追尾機能を備えたスキャニングソナー装置において、前回の観測で抽出した追尾対象の重心の座標の絶対位置を基準位置とし、その周囲に追尾対象が含まれるように観測領域を設定し、今回の観測による表示画像の基準位置に追尾対象の候補が存在する場合、この候補を追尾対象とすることで、魚漁対象となる魚種と大きさの魚群においては、自船の移動や旋回の影響を受けない追尾対象の重心位置の探査毎の移動が前回の探査で抽出した追尾対象の像の範囲を超えないことを利用し、観測領域内に追尾したい魚群よりも強い反射波の強度を示す像(岩などの魚群ではない反射波も含む)を観測しても、追尾対象が切り替わることがないという効果が得られる。
また、基準位置に追尾対象の候補が存在しない場合に、例えば、検出した複数の候補の中から最も大きい候補を追尾対象とすることで、目標とする魚群の追尾を継続することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態によるスキャニングソナー装置の構成を示したブロック図である。図1において、スキャニングソナー装置1は、操作制御部10、俯角制御部30、送受波部40、標的像抽出部50、表示制御部60、自船位置検出部70、から構成される。図1におけるスキャニングソナー装置1は、漁労用の船舶に装備され、海中の魚群を探査する装置である。また、スキャニングソナー装置1は、スキャニングソナー装置1の利用者(操作者)によって指定された魚群(以下、指定された魚群を「追尾標的」という)の追尾を行う。
海中の追尾標的の探査を行う場合、スキャニングソナー装置1は、まず、海中の全方位方向へ水平面に対して所定の俯角θを持った傘状の探査ビームを送波する。続いて、スキャニングソナー装置1は、受波指向特性を高速回転させて探査ビームの反射波を複数回スキャンする。続いて、スキャニングソナー装置1は、スキャンした結果を受波指向特性に応じた平面画像に展開して画面に表示する。
【0016】
操作制御部10は、操作者が操作することによって、本実施形態のスキャニングソナー装置1を制御するための、例えば、キーボードやマウス等の入力装置101を含む制御ブロックである。
操作者が入力装置101を操作して指定した内容は、表示制御部60によって制御される表示装置601に表示される。なお、表示制御部60の表示装置601を介して表示する項目は、操作者が操作制御部10を操作することによって指示することができる。
【0017】
スキャニングソナー装置1が操作者によって操作される、すなわち、手動でスキャニングソナー装置1が操作されるとき、操作制御部10は、操作者によって指示された俯角(以下、「指示俯角θa」という)を俯角制御部30に出力し、また、操作者によって指示された、探査ビームの送波の開始を表す探査開始指示信号を送受波部40に出力することによって海中の魚群の探査を行う。
また、操作制御部10は、送受波部40から送受波状態を表す送受波状態信号を入力し、表示制御部60の表示装置601を介して、操作者に伝える。
【0018】
スキャニングソナー装置1が指定された魚群を自動で追尾を行うとき、操作制御部10は、操作者によって指定された追尾標的を示す追尾標的指定信号と、自動追尾の開始を表す自動追尾開始指示信号とを標的像抽出部50に出力することによって指定された海中の魚群の自動探査を行う。
【0019】
俯角制御部30は、送波する探査ビームおよび探査ビームの反射波をスキャンする受波指向特性の俯角を制御するブロックである。
俯角制御部30は、操作制御部10から入力された指示俯角θaに従って、送受波部40によって送波される探査ビームと、探査ビームの反射波をスキャンする受波指向特性の俯角の設定値を出力する。
【0020】
送受波部40は、俯角制御部30から入力された俯角の設定値に従って、探査ビームを送波し、受波指向特性による探査ビームの反射波のスキャンした結果を標的像抽出部50と、表示制御部60とに出力する。
なお、送受波部40は、受波指向特性によってスキャンされた探査ビームの反射波の強度に基づく信号データを、追尾標的までの距離と、受波指向特性の回転角度とに基づいて、平面的な画像に展開(以下、展開された画像を「フレームデータ」という)し、展開したフレームデータを標的像抽出部50と、表示制御部60とに出力する。また、現在の送受波状態を表す送受波状態信号を操作制御部10に出力する。送受波部40は、探査ビーム送波部401、受波信号観測部402、フレーム変換部403、から構成される。
【0021】
探査ビーム送波部401は、俯角制御部30から入力された俯角の設定値に従って、探査ビームを送波する。
受波信号観測部402は、俯角制御部30から入力された俯角の設定値に従って、探査ビームの反射波を観測し、得られた反射波の強度(以下、反射波の強度を「エコー強度」という)に応じたデータ(以下、反射波の強度に応じたデータを「エコー強度データ」という)と、探査ビームを送波してから反射波を観測するまでの時間を追尾標的までの距離Rに変換したデータと、受波指向特性の回転角度φとをフレーム変換部403に出力する。
フレーム変換部403は、受波信号観測部402から入力されたエコー強度データをフレーム毎に記憶し、記憶したフレーム毎のエコー強度データを、受波信号観測部402から入力された追尾標的までの距離Rと、受波指向特性の回転角度φに基づいて、R−φ座標の平面データに展開したフレームデータを作成し、作成したフレームデータを標的像抽出部50と、表示制御部60とに出力する。
ここで、平面展開したR−φ座標のフレームデータとは、2次元で表されるX−Y座標系のデータであり、例えば、X方向を受波指向特性の回転角度φとし、Y方向を追尾標的までの距離Rとして示し、エコー強度データを展開したデータである。
【0022】
表示制御部60は、操作制御部10を介して操作者が指示した指示内容および送受波状態信号と、フレーム変換部403から入力されたフレームデータとを、例えば、ブラウン管ディスプレイや液晶ディスプレイ等の表示装置601に表示する。フレームデータは通常、極座標変換により、地表面と同等の位置関係に変換した後に表示される。
なお、表示制御部60の表示装置601への表示内容は、操作者が操作制御部10を操作することによって指示した項目を表示することができる。
【0023】
標的像抽出部50は、操作制御部10から入力された自動追尾開始指示信号に応じて自動追尾を開始あるいは停止を制御する。
また、標的像抽出部50は、操作制御部10から入力された追尾標的指定信号、あるいは前回算出した追尾対象の重心の絶対位置を用いて探査範囲を設定し、フレーム変換部403から入力されたフレームデータから追尾対象の像(以下、追尾対象の像を「標的像」という)を抽出し、抽出した標的像の自船に対する相対位置を算出して表示制御部60に出力する。
また、標的像抽出部50は、算出した相対位置と、自船位置検出部70から入力された自船の絶対位置とから標的像の絶対位置を算出し、さらに標的像の寸法を算出する。標的像抽出部50は、算出した標的像の絶対位置と寸法とを記憶する。
【0024】
自船位置検出部70は、例えば、ジャイロ装置、GPS(Global Positioning System)装置、等により構成され、自船位置および進行方向を含む自船情報を、標的像抽出部50に出力する。
【0025】
次に、本実施形態のスキャニングソナー装置1による探査範囲の設定について説明する。図2は、本実施形態のスキャニングソナー装置1における探査範囲の設定方法を示した図である。
【0026】
海中の追尾標的の探査を行う場合、図2(a)に示すように、探査ビームの反射波を受波指向特性で観測すると、魚群以外に海底や岩などからの反射波が観測される。また、この海底や岩などからの反射波は、比較的エコー強度が強く、例えば、魚群と同様または魚群以上のエコー強度となることがある。このときの受波指向特性によって観測されたエコー強度の表示画面の例を図2(b−1)〜(b−3)に示す。
【0027】
スキャニングソナー装置1が自動追尾を行うとき、図2(b−1)の標的像A1が操作者によって追尾対象として操作制御部10から入力されることによって指定された場合、標的像抽出部50は、操作制御部10より指定された追尾標的指定信号の指定位置の絶対位置を、探査範囲の基準位置として設定し、探査範囲の寸法を予め定められた値に設定する。
【0028】
続いて、観測した結果、図2(b−2)に示すような反射波の強度を示す像が観測された場合、標的像抽出部50は、設定した基準位置と探査範囲の寸法とから探査範囲Aを設定し、その設定した探査範囲Aの内部から標的像A2抽出して追尾対象とする。続いて、標的像抽出部50は、追尾対象とした標的像A2の重心の絶対位置を次の探査範囲の基準位置として設定し、さらに、追尾対象とした標的像A2の寸法から、次の探査範囲の寸法を設定する。
【0029】
続いて、観測した結果、標的像A2が移動したことにより、図2(b−3)に示すような反射波の強度を示す像が観測された場合、標的像抽出部50は、上記と同様な方法により次の探査範囲2を設定し、その設定した探査範囲2の内部から標的像A3抽出して追尾対象とし、上記と同様な方法により次の探査範囲の基準位置と寸法とを設定する。
【0030】
以後、同様に設定した探査範囲の観測と次の探査範囲の設定を繰り返すことにより、操作者によって指定された標的像の追尾を行う。
なお、探査範囲の寸法の設定は、予め定められた値で設定することもできるが、追尾する魚群の種類に応じた設定値、例えば、追尾する魚群の行動特性に応じた移動距離を考慮した設定値とすることもできる。
【0031】
次に、本実施形態のスキャニングソナー装置1において追尾標的を追尾する処理手順について説明する。図3は、本実施形態のスキャニングソナー装置1における追尾標的を追尾する処理手順を示したフローチャートである。
【0032】
まず、操作者がスキャニングソナー装置1の操作制御部10を操作することによって、自動追尾が開始され、さらにステップS100において追尾標的の指定がされる。
【0033】
続いて、標的像抽出部50は、ステップS200において、指定された追尾標的の位置を基準位置とした予め定められた一定の大きさの探査範囲を設定する。その後、ステップS300において、俯角制御部30が送受波部40によって送波される探査ビームと、探査ビームの反射波をスキャンする受波指向特性の俯角の設定を行い、送受波部40によって指定された追尾標的の探査が行われる。
【0034】
続いて、標的像抽出部50は、ステップS400において、探査範囲内の指定された追尾標的の位置に標的像の候補が存在するか否かを判断し、標的像の候補が存在する場合は、ステップS500において、この標的像を追尾対象とする。
【0035】
ステップS400において、標的像の候補が存在しない場合、標的像抽出部50は、ステップS600において、探査範囲から抽出された全ての標的像の候補の中で、各候補の像の強度と像の面積とからなる総合反射強度が最大である候補を追尾標的とする。続いて、標的像抽出部50は、ステップS700において、ステップS500あるいはステップS600で追尾対象とした標的像の基準位置と寸法を算出する。
【0036】
続いて、標的像抽出部50は、ステップS800において、追尾が終了か否かを判断し、追尾が終了でない場合は、ステップS900において、前回算出した絶対位置と寸法より、絶対位置を基準位置とした探査範囲を設定する。その後、ステップS1000において、俯角制御部30および送受波部40による追尾標的の探査が行われる。
【0037】
続いて、標的像抽出部50は、ステップS1100において、探査範囲内の基準位置に標的像の候補が存在するか否かを判断し、標的像の候補が存在する場合は、ステップS500に戻って、この標的像を追尾対象とする。
【0038】
ステップS1100において、標的像の候補が存在しない場合は、ステップS600に戻って、探査範囲から抽出された全ての標的像の候補の中で、総合反射強度が最大である候補を追尾標的とする。
【0039】
一方、ステップS800において、追尾が終了である場合は、標的像抽出部50は、処理を完了する。
【0040】
上記に述べたとおり、本発明を実施するための最良の形態によれば、前回の観測で抽出した追尾対象の重心の経度、緯度などの絶対位置を基準として、その周囲に追尾対象が含まれるように観測領域を設定することができる。このことにより、今回の観測による表示画像の基準位置に追尾対象の候補が存在する場合、この候補を追尾対象とすることで、魚漁対象となる魚種と大きさの魚群においては、自船の移動や旋回の影響を受けない追尾対象の重心位置の探査毎の移動が前回の探査で抽出した追尾対象の像の範囲を超えないことを利用し、観測領域内に追尾したい魚群よりも強い反射波の強度を示す像(岩などの魚群ではない反射波も含む)を観測しても、追尾対象が切り替わることがない。
また、基準位置に追尾対象の候補が存在しない場合は、探査範囲から抽出された全ての標的像の候補の中から最も大きい候補を追尾標的として追尾を継続することができる。
【0041】
なお、本実施形態において、ステップS200およびステップS900による探査範囲の設定は、予め定められた範囲の設定、または追尾する魚群の種類や前回の観測情報に応じた設定とすることもできる。
【0042】
なお、上述した実施形態におけるスキャニングソナー装置1の一部、例えば、標的像抽出部50の機能をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時刻の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時刻プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0043】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態によるスキャニングソナー装置の構成を示したブロック図である。
【図2】本実施形態のスキャニングソナー装置における探査範囲の設定方法を示した図である。
【図3】本実施形態におけるスキャニングソナー装置において追尾標的を追尾する処理手順を示したフローチャートである。
【図4】スキャニングソナー装置における探査の方法を示した図である。
【図5】従来のスキャニングソナー装置による追尾の処理手順を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
1 スキャニングソナー装置、10 操作制御部、101 入力装置、30 俯角制御部、40 送受波部、401 探査ビーム送波部、402 受波信号観測部、403 フレーム変換部、50 標的像抽出部、60 表示制御部、601 表示装置、70 自船位置検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漁労用の船舶等に装備され、所定の俯角を持って送波した超音波の反射波を観測して得られた当該反射波の強度に基づく信号を画像として表示し、前記反射波の強度に基づく信号が一定値以上になる像を追尾対象として指定し、追尾するスキャニングソナー装置の追尾方法において、
前回の観測結果において追尾対象とした像の重心の座標の絶対位置を基準位置とし、その周囲に前記追尾対象が含まれるように設定した領域を第1の観測領域として設定する第1の領域設定手順と、
前記第1の領域設定手順によって設定された第1の観測領域内の基準位置に今回の観測結果による追尾対象の候補が存在するか否かが最初の判断である判断方法により次に追尾対象とする当該候補を設定する追尾対象設定手順と、
を含むことを特徴とする追尾方法。
【請求項2】
前記追尾対象設定手順は、
前記第1の領域設定手順によって設定された第1の観測領域内の基準位置に追尾対象の候補が存在するときは、当該候補を次の追尾対象に設定し、
前記第1の領域設定手順によって設定された第1の観測領域内の基準位置に追尾対象の候補が存在しないときは、前記第1の観測領域内で観測された候補の内、各候補の像内に含まれる反射波の強度に基づく信号と像の面積からなる総合反射強度が最大である前記候補を次の追尾対象に設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の追尾方法。
【請求項3】
前記追尾対象設定手順は、
前記指定された追尾対象の像の重心の絶対位置を基準とし、その周囲に予め定められた寸法の領域を第2の観測領域として設定する第2の領域設定手順を含み、
前記第2の領域設定手順によって設定された第2の観測領域内の基準位置に前記指定された追尾対象の候補が存在するときは、当該候補を次の追尾対象に設定し、
前記第2の領域設定手順によって設定された第2の観測領域内の基準位置に前記指定された追尾対象の候補が存在しないときは、前記第2の観測領域内で観測された候補の内、各候補の像内に含まれる反射波の強度に基づく信号と像の面積からなる総合反射強度が最大である前記候補を次の追尾対象に設定することを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の追尾方法。
【請求項4】
漁労用の船舶等に装備され、所定の俯角を持って送波した超音波の反射波を観測して得られた当該反射波の強度に基づく信号を画像として表示し、前記反射波の強度に基づく信号が一定値以上になる像を追尾対象として指定し、追尾するスキャニングソナー装置において、
前回の観測結果において追尾対象とした像の重心の座標の絶対位置を基準位置とし、その周囲に前記追尾対象が含まれるように設定した領域を第1の観測領域として設定する第1の領域設定手段と、
前記第1の領域設定手段によって設定された第1の観測領域内の基準位置に今回の観測結果による追尾対象の候補が存在するか否かが最初の判断である判断方法により次に追尾対象とする当該候補を設定する追尾対象設定手段と、
を備えることを特徴とするスキャニングソナー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−145222(P2010−145222A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322353(P2008−322353)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】