説明

スキンケアにおける植物由来の組み換え増殖因子の使用

【課題】局所用医薬および/または化粧品への適用に使用するための増殖因子、またはトランスジェニック植物から精製された増殖因子、またはトランスジェニック植物由来の増殖因子の混合物を抽出物または精製形態として含有するトランスジェニック植物抽出物を含む、スキンケアのための化粧品および医薬組成物を提供する。
【解決手段】重要なことに、本発明は、化粧品および局所用治療に使用するのに安全に利用可能な増殖因子を作製する。それらの増殖因子は、動物または動物細胞に基づく発現系から生じる可能性がある望ましくない汚染物質および感染性物質の危険性を有さず、植物発現系を提供する組み換え増殖因子は翻訳後に改変されたタンパク質である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、スキンケアのための増殖因子を含む化粧品および医薬組成物、ならびに化粧品を製造するための方法に関する。具体的には、本発明は、組み換え非植物増殖因子、好ましくはトランスジェニック植物から得たヒトまたは哺乳動物増殖因子、ならびに化粧品および医薬製品におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、保護、障壁、温度制御、排出および呼吸などの様々な機能を実施するヒトの身体の最も大きな器官である。それは、保護、障壁、温度制御、排出および呼吸などの様々な機能を行う。時間および年齢とともに、それらの機能は急速に衰え、種々の生理学的変化が皮膚に起こる。それらの変化は、皮膚の主な成分である表皮、真皮および皮下組織の厚さの減少として現れる。脂質組成の変化は脂質層の水分障壁の役割を弱め、皮膚の乾燥を生じる。さらに、年齢とともに、しみ、そばかす、色素沈着または種々の皮膚損傷の発生も増える。汚染物質および紫外線などの環境要素が皮膚の老齢化を加速し得る。活性酸素種およびフリーラジカルおよび疲労またはストレスなどの一部の生理学的状態が、タンパク質、核酸および膜脂質に対して特に有害であり、皮膚の老化を生じる。従って、しわ、しみ、そばかす、皮膚弾力性の損失、色素沈着、および皮膚の乾燥の発生についての数多くの研究がある。
【0003】
日光によって引き起こされるしわ、たるみ、および皮膚の弾力性の減少を改善する目的として、種々の化粧品組成物が、皮膚の老化およびしわの問題を予防または遅延させるために開発されている。特許文献1は、コラーゲンの合成によって皮膚のしわを改善するための方法を開示している。それは、コラーゲン代謝を促進するためにコラーゲンを分解するコラゲナーゼの活性が、架橋コラーゲン増加およびしわの増加をもたらす老化を減少させる可能性があることを教示している。
【0004】
増殖因子は、細胞の増殖および分化を調節する際の中心的存在であり、障害または損傷を受けた表皮および基底膜を再構成するのに関与する。それらは細胞の再生に重要であり、従って、老化のいくつかの局面を妨げることができる。
【0005】
増殖因子は組織の完全性の維持および細胞間連絡における中心的存在であり、従って、表皮組織の変性に抵抗する際に保護の役割を果たす。
【0006】
線維芽細胞増殖因子は、上皮細胞に対して増殖促進効果を有し、動物モデルにおいて骨折および創傷治癒を促進することが発見されている。繊維芽細胞増殖因子4は、胎児の四肢発生の間の中心的役割を果たし、インビトロにおいて、FGF−4は、線維芽細胞および内皮細胞に対して分裂促進的であり、インビボにおける強力な血管形成プロモーターであることが示されている。
【0007】
線維芽細胞増殖因子5は、出生前発達の間、および出生後成長ならびに細胞増殖および分化を促進する種々の組織の再生において主要な役割を果たす。特に、発毛周期の再生において役割を果たす。線維細胞増殖因子6は、細胞増殖および分化を促進することによって、種々の組織の増殖および再生において中心的役割を果たし、線維芽細胞に対する強力な分裂促進因子は骨格筋再生に重要であり、血管形成活性を有し得る。
【0008】
線維芽細胞増殖因子8は、細胞増殖および分化を促進することによって、種々の組織の増殖および再生において中心的役割を果たし、上皮−間葉線維を媒介する。
【0009】
線維芽細胞増殖因子9は、細胞増殖および分化を促進する、胚発生および出生後成長および種々の組織の再生の間の主要な役割を果たす。
【0010】
ヘパリン結合EGF様増殖因子は、EGF受容体を介してシグナルを伝達し、平滑筋細胞、線維芽細胞、上皮細胞およびケラチノサイトの増殖を刺激し、単球およびマクロファージにおいて産生される。それは創傷治癒において重要な役割を果たし得る。
【0011】
インターロイキン4は、抗炎症性、かつ免疫抑制サイトカインであり、細胞外基質分解に対する保護効果を示す。関節炎を有するマウスの治療に使用されるIL−4とIL−10との組み合わせは、軟骨破壊を顕著に保護するように見える。
【0012】
インターロイキン15は、NK−細胞に対する特異的成熟因子として機能するように見え、樹立T細胞系CTLL−2の増殖を刺激し、CD8(+)記憶T細胞は増殖のためにIL15を必要とする。
【0013】
ノギンは、出生後の皮膚の新しい発毛ウェーブの開始および正常な皮膚のアポトーシスによって駆動される毛包退行において重要な役割を果たすと仮定されており、ノギンの外生導入は、lama5(−/−)皮膚において毛包発達を回復させることができる。胎盤成長因子は、血管漏出および炎症を著しく向上させずに血管形成を刺激する強力な血管新生因子であり、皮膚創傷治癒の間に現れ、血管形成を向上させることによって創縫合を改善する。ヒトおよび動物におけるSCFの発現は、毛包再生を誘発する皮膚乳頭細胞の能力と関連する。髪の色素は、SCFと、そのクラスIII受容体チロシンキナーゼ、c−キットとの相互作用を含む、いくつかの要因によって調節される。Flt3リガンドは、FLT3チロシンキナーゼ受容体についてのリガンドであり、早期造血細胞の増殖を調節する小集団の増殖因子に属する。Flt3リガンドの複数のアイソフォームが同定されている。Flt3リガンドは、チロシンキナーゼ受容体Flt3を発現する細胞に結合する。Flt3リガンド単独では、増殖を刺激できないが、他のCSFおよびインターロイキンと十分に相乗作用して、増殖および分化を誘発し、従って、1つ以上の増殖因子を含有する組成物に加えて、適切である。増殖因子は、細胞再生および増殖を促進することができ、創傷の治癒課程の天然要素である。
【0014】
その全体が本明細書に参照として援用される特許文献2は、皮膚の老化を減少させ、皮膚の外観を改善するためのEGF、TGF−aおよびFGFを含む、化粧品組成物を開示している。
【0015】
特許文献3は、EGFが、化粧品において使用されるレチノールの効果を著しく向上させ、また、レチノールの皮膚炎を効果的に軽減することを教示している。
【0016】
増殖因子が、種々の皮膚障害および皮膚損傷に対して有益な効果を有し得、細胞レベルにおける防御機構を損なうか、または悪化した結果である老化の作用を妨げることは認識されている。
【0017】
増殖因子は凝固相の間の創傷部位において放出され、好中球、マクロファージおよび線維芽細胞についての化学誘因物質として作用する。これらの細胞は、細菌を殺傷し、創傷部位における壊死片を除去するのに重要な役割を果たす。活性化されたマクロファージは、次いで、血管形成を促進し、B細胞およびT細胞により媒介される免疫応答と連絡する増殖因子を放出する。マクロファージは、線維芽細胞を刺激する増殖因子を分泌して、新しい細胞外基質を産生し、血管形成を刺激する。ケラチノサイトが創傷床を分割し、覆うため、上皮形成が進行する。表皮増殖因子は、線維芽細胞およびケラチノサイトの増殖を刺激する。従って、増殖因子が、治癒課程の重要なメディエーターであることは十分に確立され、研究により、感染による糖尿病患者の腫瘍形成を治療するために一部の増殖因子が有益であり得ることが示されている。
【0018】
動物の組織または血液から単離された増殖因子は、望ましくない汚染物質および、限定されないが、ウイルス、ビリオン、プリオン、他の同時精製増殖因子などの伝染性物質の危険性を保有する。伝染性物質および内因性増殖因子を汚染する同様の危険性が、生物工学技術によって動物またはヒト細胞において生成される増殖因子に存在する。生物工学手段を用いて細菌において生成される増殖因子は、発熱性であり、免疫系を阻害することが知られている細菌内毒素のキャリーオーバーの危険性を引き起こす。さらに、細菌はタンパク質を糖化できず、一部の場合において、タンパク質を不安定性にさせ、プロテアーゼにより分解しやすくなることが知られている。伝染性物質、内毒素または汚染物質の危険性は、開放創を処理するために、細菌、酵母または動物細胞において生成される増殖因子の使用についての明らかな懸念材料である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平5−246838号公報
【特許文献2】米国特許第5,618,544号明細書
【特許文献3】米国特許第6,589,540号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記の問題および不都合を最小化または除去するように調製される、高品質の増殖因子および他の生物学的に活性なタンパク質についての継続された要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
植物で産生される組み換え増殖因子およびサイトカインは、動物またはヒトのウイルス、ビリオンおよびプリオンおよび細菌内毒素などの伝染する感染性因子を含まない。ヒトに感染し得る多数の動物疾患と対照的に、ヒトに疾患を引き起こし得る植物の病気の症例は報告されていない。従って、植物は、増殖因子を産生するための上記の細胞種類より安全に産生される生物体から構成される。植物は、シグナル伝達要素として増殖因子の作用および関与を必要とする動物の免疫系に匹敵する免疫系を欠く。植物自体は、動物またはヒトの増殖因子と同様の増殖因子を産生しない。植物はまた、糖化タンパク質であり、それらのタンパク質の安定性を向上させ、それらの活性に作用することができるので、植物系は、細菌で産生されるものと比べて優れた増殖因子を産生できる。本発明による生物工学的手段を用いる植物における増殖因子の産生により、これらの安全性および純度の問題が回避される。従って、抽出形態であろうと精製形態であろうと、植物由来の増殖因子は、化粧品または局所治療に使用するのに、現在の産生方法で産生された増殖因子より、安全かつ純粋である。
【0022】
植物は、植物において防御的役割を果たす多くのタンパク質を産生し、脱水および酸化ストレスなどの非生物および生物要因によって引き起こされるストレスを軽減する。これらのタンパク質のいくつかは、特に、細胞組織の脱水に関与する種子成熟時に植物の種子において蓄積する。デヒドリンは、乾燥などのストレスに応答して、または種子発生などの成熟課程の一部として蓄積するタンパク質のクラスである。従って、トランスジェニック植物における発現を通して化粧品製品のための増殖因子を産生すること、および前記増殖因子を含む前記植物から植物抽出物を調製することによって、その抽出物は、生物学的リスクのないプロセスを介する有益な増殖因子だけではなく、ボーナス効果として、同じトランスジェニック植物由来の同じ植物抽出物中の植物由来の他の有益な組成物を提供できる基質中の増殖因子もまた提供する。
【0023】
本発明の目的は、化粧品的使用または治療的使用のいずれかまたは両方を有することができるスキンケアのための組成物を提供することであり、その組成物は、局所的治療および化粧品に使用するための、組み換え増殖因子、またはトランスジェニック植物から精製された組み換え増殖因子、または抽出物として、もしくは精製形態でのトランスジェニック植物由来の増殖因子の混合物を含むトランスジェニック植物抽出物を含む。重要なことに、本発明は、化粧品および局所的治療に使用するためのより安全な増殖因子を生成する。
【0024】
これらの植物により生成された増殖因子は、タンパク質の安定性を向上させることが知られており、それらの生物学的活性に作用し得る特徴である、それらのアミノ酸骨格にグリコシル化部位を有する場合、植物中でグリコシル化され得る。上記のように、それは、原核細胞系などの他の発現系の欠点であり、それらの系は、発現された異種タンパク質のグリコシル化についての機構を欠く。植物は異種タンパク質をグリコシル化できるだけでなく、そのグリコシル化機構は、ヒトなどの動物に見出されているものとは異なる。一部の臨床的用途において、これは不都合があるが、多くの他の用途について臨床的関連はなく、実際には、本発明の植物由来の異種タンパク質のかなりの驚くべき安定性に起因し得る。
【0025】
化粧品における敏感な生体材料、特に増殖因子の実際の使用について、それらの材料は不安定であるという重大な問題が存在する。消費者は通常、適度に長期間保存できる化粧品を期待し、そのような製品を室温で保存することを望む。すなわち、化粧品を冷して保存しなければならない場合、商業的な不利益が著しく生じる。化粧品は、保存可能期間のラベルをそれらの製品に付け始めているが、通常、好ましい保存条件について少ししか、または全く情報が与えられていない。以下の実施例に示すように、本発明によって与えられる増殖因子および増殖因子抽出物は、極端な条件においてさえも驚くべき良好な安定性を示す。
【0026】
化粧品および/または局所的治療使用の組成物についての増殖因子などの活性成分の産生は、本発明によってより安価になる。植物発現系により、所望の組み換えタンパク質のスケールアップした産生が可能となり、単純かつ強力な精製スキームが、有用な植物抽出物を提供するためにセルロース植物材料からタンパク質を抽出するのに使用され得る。多くの場合において、タンパク質は、上記のように、そのような植物抽出物における多くの成分容量が皮膚に害を与えず、有益であり得るため、広範囲に精製されることを必要としない。特定の有用な実施形態において、本発明の組成物に使用される植物抽出物は、抽出物の全タンパク質含有量の重量(wt)%として測定して、目的の増殖因子の約0.01%〜70%の範囲、例えば全タンパク質の約0.1%〜約30%の範囲、全タンパク質の0.1〜1%および0.1〜5%、および全タンパク質の1〜10%、1〜30%の部分的な範囲、ならびに適切な中間値、限定されないが、抽出物中の全タンパク質の約0.1%または約1%を含む。他の実施形態において、抽出物は十分に実質的に精製され得、約90%までまたはそれ以上の増殖因子タンパク質、例えば抽出物中の全タンパク質含有量の約95%以上、または99%以上を含む。従って、特定の実施形態において、本発明による抽出物は、通常、全タンパク質の%として、約0.01%〜約99.9%の範囲の前記の増殖因子、好ましくは、約0.1%〜約99.9%の範囲、例えば約0.01〜約70%および約0.1〜約40%の部分的な範囲、約40〜70%の範囲の増殖因子を含む。
【0027】
より具体的には、本発明の目的は、組み換え増殖因子、より好ましくは本明細書に記載される増殖因子のいずれかを含む化粧品および/または治療用スキンケア組成物であり、必要に応じて抽出物中のデヒドリンおよびグロブリンなどの他の天然の植物ベースの有益なポリペプチドを組成物中に含む、化粧品および/または治療用スキンケア組成物を提供することである。これらの種子タンパク質は、細胞における保護機能ならびに本発明の目的の植物および増殖因子との特有の組み合わせにおける生化学レベルを有し、それらは成長条件および治癒条件を与え、細胞レベルでの脱水および酸化的ストレスを軽減する。
【0028】
本発明のさらなる目的は、座瘡の化粧品または臨床治療、皮膚のしわ、しみ、そばかす、発疹、または他の色素沈着の改善、ならびに皮膚および創傷治癒の保湿に適切なスキンケア組成物を提供することである。
【0029】
別の態様において、本発明は、局所用化粧品および/または医薬製品を製造する方法を提供し、その方法は、組み換え異種増殖因子を含むトランスジェニック植物抽出物を提供する工程を含む。植物により産生された非植物由来の組み換え増殖因子は、上皮細胞増殖因子(EGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、エリスロポエチン(Epo)、線維芽細胞増殖因子4、5、6、8および9(FGF4、FGF5、FGF6、FGF8およびFGF9)、線維芽細胞増殖因子aおよびb、Flt3リガンド、ヘパリン結合−EGF(Hb−EGF)、インスリン様成長因子−I(IGF−I)、インスリン様成長因子−II(IGF−II)、インターロイキン−1(IL−1;IL−1αおよびIL1−βを含む)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−8(IL−8)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−15(IL−15)、インターロイキン−18(IL−18)、インターロイキン−20(IL−20)、白血病抑制因子(LIF)、ノギン、胎盤成長因子−1(PIGF−1)、幹細胞因子(SCF)、TGF b3を含む、形質転換成長因子αおよびβ(TGFaおよびTGFb)、腫瘍壊死因子−a(TNF−a)、腫瘍壊死因子−b(TNF−b)、インターフェロン−g(INF−g)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、神経成長因子(NGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、骨形成タンパク質(BMP−4)、およびサイモシンβ4からなる群より選択され得る。特定の好ましい実施形態において、トランスジェニック植物抽出物はオオムギ種子抽出物である。産生された増殖因子は、化粧品組成物を製造するのに特に有用である。
【0030】
さらなる態様において、本発明は、トランスジェニック植物から単離された1つ以上の組み換え異種増殖因子を提供する。増殖因子はまた、当業者に公知の他の用途において使用されてもよい。
【0031】
本発明のさらなる態様において、増殖因子を含有する新規の植物抽出物は、化粧品および/または治療目的に、ならびに膏薬または局所用医薬組成物の他の形態などの活性成分として使用されるために提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、mSCFおよびトランスジェニック植物抽出物から単離したmSCFを含有するトランスジェニック植物抽出物での染色ゲルおよび免疫ブロットを示す(実施例2を参照のこと)。
【図2】図2は、フコースに対する一次抗体で処理された、植物および細菌において産生された組み換えインターフェロンγのウェスタンブロットを示す(実施例3を参照のこと)。
【図3】図3は、キシロースに対する一次抗体で処理された、植物および細菌において産生された組み換えインターフェロンγのウェスタンブロットを示す(実施例3)。
【図4】図4は、種々の温度でインキュベートされ、種々の時間に保存された植物により生成されたIL−1a(凍結乾燥し、再構成した)での染色ゲルを示す(実施例4を参照のこと)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書中で使用される場合、「植物に由来する」増殖因子または「植物由来の増殖因子」とは、トランスジェニック植物またはトランスジェニック植物の子孫から得た組み換え増殖因子を示す。本発明による増殖因子は、通常、異種の非植物由来増殖因子であり、好ましくは任意のヒトまたは非ヒト増殖因子、例えば好ましくは哺乳動物増殖因子であり得、その遺伝子は、好ましくは組み換え技術を用いて前記トランスジェニック植物またはその植物の前駆体に導入されている。単離された増殖因子は、化粧品組成物または局所的医薬組成物における活性成分として使用され得る。
【0034】
植物に外来性遺伝子を導入および発現するための方法は当該分野において周知である。遺伝子的に形質転換され得る植物は、その植物内に、コード領域についてのDNA配列を含む異種DNA配列が、導入され、発現され、安定に維持され、次の世代の子孫に伝達され得る、植物である。遺伝子操作および形質転換法は、例えば、ビアラホスまたはバスタを含む除草剤抵抗性、あるいは選択マーカーとしてハイグロマイシン耐性などの抗生物質耐性を使用するオオムギ植物を産生するために使用されている。
【0035】
適切な栽培品種が選択され、外来性遺伝子の導入のための適切な方法が選択される。用語「形質転換」または「遺伝形質転換」とは、遺伝的に安定な遺伝形質を生じる、宿主生物のゲノムへの核酸分子の移入を指す。形質転換された核酸フラグメントを含有する宿主生物は「トランスジェニック」生物という。本発明の「トランスジェニック植物宿主細胞」は、ゲノムに安定に融合する少なくとも1つの外因性、好ましくは2つの外因性核酸分子を含む。植物形質転換の方法の実施例としては、Agrobacterium−mediated transformation(De Blaereら,1987)およびparticle−bombardment or 「gene gun」 transformation technology(Kleinら,(1987);米国特許第4,945,050号)が挙げられる。
【0036】
国際公開第2006/016381号は、形質転換しやすい特定の有用なオオムギ栽培品種を開示しており、適切な形質転換法を詳細に記載している。この文献はその全体が本明細書に参照として援用される。
【0037】
国際公開第2005/021762号は、ラージスケールで容易に精製されるキメラタンパク質を作製することによって植物発現系において改変されたタンパク質を産生するための方法を開示している。この文献もまた、その全体が本明細書に参照として援用される。
【0038】
本発明に従って適切に産生され、使用される増殖因子は、上記の増殖因子のいずれかから選択され得、より好ましくは、線維芽増殖因子4、5、6、8および9(FGF4、FGF5、FGF6、FGF8およびFGF9)、Flt3リガンド、ヘパリン結合−EGF(Hb−EGF)、インターロイキン4および15(IL−4、IL−15)、白血病抑制因子(LIF)、ノギン、胎盤成長因子−1(PIGF−1)、幹細胞因子(SCF)、形質転換成長因子β3(TGF b3)からなる群より選択され得る。
【0039】
本発明の特定の実施形態において、トランスジェニック植物において産生される目的のポリペプチドは、ポリペプチドのN末端またはC末端のいずれか、あるいは両端においてアフィニティー標識を含有する。そのようなタグとしては、反復HQ配列、ポリ−ヒスチジン−テイル、GST(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)、CBM(炭水化物結合分子)またはアフィニティー精製を可能にする、異種ペプチドの精製を簡単にする任意の他の有用なアフィニティー標識が挙げられ得る。
【0040】
上記のように、植物におけるグリコシル化機構は、哺乳動物などの動物に見出されるものとは異なり、酵母におけるグリコシル化系とも異なり、異種の組み換えタンパク産物についての別の共通の発現系である。植物は、複雑なN結合型グリカンを有するタンパク質を産生できる。植物糖タンパク質は、哺乳動物に見出されないα−1,3結合コアフコースおよびβ−1,2結合キシロース残基を含有する複雑なN結合型グリカンを有する。植物は、β(1,4)−ガラクトシルトランスフェラーゼもα(2,6)シアリルトランスフェラーゼも含有しないので、植物糖タンパク質は、哺乳動物に見出される複雑なN−グリカンを含有する特徴的なガラクトース(NeuAcα2、6Galβ1,4)を欠く。また、α1,6結合コアフコースも見出されない。
【0041】
従って、本発明は、一実施形態において、α−1,3結合フコースおよび/またはβ−1,2結合キシロースを含有するグリカンを含む、1つ以上の植物特異的グリカンでグリコシル化された、組み換え非植物由来の増殖因子を含む植物抽出物を含む、上記の化粧品および/または医薬組成物を含む。
【0042】
用量:局所用の化粧品および/または治療用途のための、本発明に従う化粧品的または治療的に活性な成分の適切な用量である、異種増殖因子タンパク質の量は、典型的に、0.01〜100ppm(μg/グラム)の範囲内の組成物である。皮膚の老化または脱毛の治療のための局所用化粧品組成物は、好ましくは、組成物中に0.1〜5ppmの活性物質を含む。
【0043】
治療の長さは病状または所望の効果に応じて変わる。強皮症治療の場合において、適用は病状の重症度によって1日〜12ヶ月の範囲である。皮膚の自然老化または早期老化に対する治療の場合において、適用は1〜400日の範囲、好ましくは少なくとも30日間であり得る。同様に、脱毛を予防または毛髪再成長を促進するための治療の場合において、適用は、好ましくは、1〜400日の範囲である。
【0044】
好ましくは、トランスジェニック植物抽出物は、前述のタンパク質のいずれか1つを含むオオムギの粒、それらの模倣物または増殖因子受容体に結合でき、活性化するその少なくとも1つのドメインから調製される。以下に例として挙げるのは、Hb−EGF、mSCF、FGF5、IL4、およびFGF6を含む、異なる増殖因子を含有するトランスジェニックオオムギ抽出物を示す。
【0045】
化粧品および医薬組成物の局所適用のための多くの賦形剤が公知である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Gennaro,A R,ed.,第20版,2000:WilliamsおよびWilkins PA,米国を参照のこと。化粧品組成物の局所的投与に通常利用される全ての組成物は、例えば、クリーム、ローション、ゲル、包帯剤、シャンプー、チンキ剤、ペースト、軟膏、膏薬、粉末、液剤または半液剤、パッチ、リポソーム調製物、溶液、懸濁液、リポソーム懸濁液、W/OまたはO/Wエマルション、ポマードおよびペーストなどに使用され得る。適切な場合、前記組成物の適用は、例えば、窒素、二酸化炭素、フロンなどの推進剤を含むか、またはポンプスプレー、ドロップ、ローションなどの推進剤を含まないエアロゾル、あるいはスワブによって適用され得る厚化組成物などの半固体によってでもよい。特定の組成物において、膏薬、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、軟膏などの半固体組成物は、簡便に使用される。
【0046】
本発明の組成物は、非経口、全身または局所的使用のために提供され得、溶液、懸濁液、リポソーム懸濁液、W/O(水/油)またはO/W(油/水)エマルションを含む。好ましい実施形態において、活性物質は、適切な凍結乾燥添加剤と混合され、治療的に許容可能な希釈剤で容易に再溶解される凍結乾燥形態で処方される。有用な凍結乾燥添加剤は、緩衝剤、多糖、スクロース、トレハロース、マンニトール、イノシトール、ポリペプチド、アミノ酸および活性物質と適合性のある任意の他の添加剤である。非経口使用に適切な希釈剤は、水、生理溶液、糖溶液、含水アルコール溶液、油状希釈剤、ポリオール、同様のグリセロール、エチレンまたはポリプロピレングリコール、あるいは無菌、pH、イオン強度および粘性などの投与方法と適合性のある任意の他の希釈剤を使用する。
【0047】
エマルションまたは懸濁液の場合において、組成物は、医薬製剤に通常使用される非イオン性、両性イオン性、アニオン性またはカチオン性型の適切な界面活性剤を含んでもよい。油/水(O/W)親水性エマルションは非経口の全身的使用に好適であるが、水/油(W/O)親油性エマルションは局部または局所的使用に好適である。
【0048】
さらに、本発明の組成物は、糖またはポリアルコール、緩衝剤、キレート剤、抗酸化物質、抗菌剤などの等張剤などの任意の添加剤を含んでもよい。
【0049】
本発明による液体形態は溶液またはローションを含み得る。それらは、水性、含水アルコール、エタノール/水など、またはアルコールであってもよく、凍結乾燥物質を可溶化することによって得られる。
【0050】
あるいは、活性物質溶液は、デンプン、グリセリン、ポリエチレン、ペンチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(メタ)アクリレート、イソプロピルアルコール、およびヒドロキシステアリン酸などの公知のゲル化剤を添加することによってゲルの形態で処方されてもよい。
【0051】
局所的使用のための他の種類の組成物は、ポマード、ペースト、クリームの形態のエマルションまたは懸濁液である。より速い吸収を与える、W/Oエマルションが好適である。親油性賦形剤の例は、液体パラフィン、無水ラノリン、ホワイトワセリン、セチルアルコール、ステアリルアルコール、植物油、鉱油である。薬剤は皮膚透過性を増加させるので、吸収を促進し、有益に使用され得る。そのような薬剤の例は、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールまたはジメチルスルホキシド(DMSO)などの生理的に許容可能な添加剤である。
【0052】
局所用組成物に使用される他の添加剤は、糖またはポリアルコール、緩衝剤、キレート剤、抗酸化剤、抗菌剤、増粘剤、分散剤などの等張剤である。
【0053】
調製物は、油、脂質、ワックス、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、抗酸化剤、粘度安定剤、キレート剤、緩衝剤、防腐剤、香料、染料、低級アルカノールなどを含む、本明細書に記載される調製物に通常利用される、従来の組成物をさらに含んでもよい。
【0054】
局所または全身的使用のための遅延放出組成物が有用であり得、ポリ乳酸、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、および当該分野において公知の他の物質などのポリマーを含む。例えば、ポリ乳酸または他の生分解ポリマーに基づいた皮下埋め込み形態の遅延放出組成物も同様に有用であり得る。
【0055】
活性物質は、好ましくは、凍結乾燥され、従って安定な形態でパッケージされるが、医薬組成物は、有利には、活性な単量体、二量体または多量体形態において植物由来の異種の増殖因子を安定化させる物質を含む。そのような安定剤は、分子間ジスルフィド結合の形成を阻害し、従って活性な物質の重合を防ぐ。しかしながら、安定剤の量は、活性物質の不活性の形態への還元を同時に防ぐために、注意深く測定されなければならない。そのような物質の例は、還元型のシステイン、システアミン、またはグルタチオンである。
【0056】
油の非限定的な例としては、脂質ならびにオリーブ油および水素化油などの油;蜜ろうおよびラノリンなどのワックス;流動パラフィン、セレシン、およびスクアレンなどの炭化水素;ステアリン酸およびオレイン酸などの脂肪酸;セチルアルコール、1,2,ヘキサンジオール、ステアリルアルコール、ラノリンアルコール、アミノメチルプロパノール、およびヘキサデカノールなどのアルコール;ならびにミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピルおよびステアリン酸ブチルなどのエステルが挙げられる。界面活性剤の例としては、ステアリン酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、N−アシルグルタミン酸ナトリウムなどの前述の陰イオン界面活性剤;ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロリドおよびステアリルトリメチルアンモニウムクロリドなどの陽イオン界面活性剤;アルキルアミノエチルグリシン塩酸塩溶液およびレシチンなどの両性界面活性剤;ならびにモノステアリン酸グリセリン、ソルビタンモノステアレート、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール、ペンチレングリコール、モノステアレート、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート、ポリオキシエチレンヤシ脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシプロピレングリコール(例えば、商標「プルロニック(Pluronic)」で販売されている物質)、ポリオキシエチレンヒマシ油、およびポリオキシエチレンラノリンなどの非イオン界面活性剤があり得る。保湿剤の例としては、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,2,ヘキサンジオール、カプリリルグリコールおよびプロピレングリコールが挙げられ;低級アルコールの例としては、エタノールおよびイソプロパノールが挙げられ;増粘剤の例としては、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、アクリレート/C10−30アルキルアクリレートクロスポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ペンチレングリコールおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられ;抗酸化剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、クエン酸およびエトキシキンが挙げられ;キレート剤の例としては、デンテート二ナトリウムおよびエタンヒドロキシ二リン酸塩が挙げられ;緩衝剤の例としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂、およびリン酸水素二ナトリウムが挙げられ、防腐剤の例は、パラオキシ安息香酸メチル、トロポロン、パラオキシ安息香酸エチル、デヒドロ酢酸、サリチル酸および安息香酸である。これらの物質は単に例示のみであり、当業者は他の物質が機能性を失わずに置き換えられてもよいことを認識するだろう。
【0057】
本発明はさらに、本明細書に記載される組成物を製造するための方法を提供し、その方法は、概して、本明細書に記載される異種の増殖因子、好ましくは上記の増殖因子を発現するトランスジェニック植物から植物抽出物を提供する工程と、前記抽出物と、少なくとも1つの化粧品的に許容可能な賦形剤、および好ましくは上記の賦形剤の1つ以上とを混合する工程を含む。その方法はさらに、トランスジェニック植物を収集する工程、植物原料から増殖因子を分離する工程、および増殖因子を含む植物原料から植物抽出物を抽出する工程を含んでもよい。植物の種子において異種の増殖因子を発現する好ましい植物の場合において、分離は、適切には、種子を収集する工程を含んでもよく、これにより、増殖因子の活性に重大な影響を与えずに長期間、簡便に保存され得る。
【実施例】
【0058】
実施例1:組み換え増殖因子およびデヒドリンを含有する部分的に精製されたトランスジェニック植物抽出物
トランスジェニック植物抽出物を、組み換え増殖因子であるマウス幹細胞因子(mSCF)を含有する収集したトランスジェニックオオムギ種子を粉砕することにより調製して、粉砕機中に微粉(粉末)を得た。抽出緩衝液(50mMリン酸カリウム pH7.0)を、抽出緩衝液:粉砕した粉末の5/1の体積/重量比にて、粉砕したオオムギの粉末に加えた。得られた溶液を4℃にて60分間攪拌した。固体を、15分間、冷凍遠心機(Heraeus Primo R)において8300rpmまたはそれ以上で遠心分離する、遠心力によって液体抽出物から分離し、上清をきれいなバイアルに移した。抽出物の増殖因子含有量を、特異的抗体を用いてSDS−PAGEおよびウェスタンブロッティングによって解析した。この実施形態において、mSCF含有量は、未精製抽出物のタンパク質含有量の約0.1%であった。
【0059】
実施例1からの得られたトランスジェニックオオムギ種子抽出物を、mSCFに効果的に結合するIMACクロマトグラフィー樹脂にその抽出物を加えることによってさらに処理した。抽出物および樹脂の混合物を、50mMリン酸カリウム、0.5M NaCl、50mMイミダゾール;pH7.0中で60分間、+4℃にて攪拌した。IMAC樹脂を、15分間、5000×gでの遠心分離によって液体から分離した。液相を移し、樹脂を洗浄緩衝液(50mMリン酸カリウム、0.5M NaCl、50mMイミダゾール;pH7.0)中で再懸濁し、沈降させ、液相を樹脂から移した。洗浄を3回繰り返した。樹脂を、イミダゾールを含有する溶出緩衝液(50mMリン酸カリウム、0.5M NaCl、500mMイミダゾール;pH7.0)中で再懸濁し、樹脂からmSCFを溶出して、遠心分離後、上清を樹脂に移し、緩衝液交換のためにゲル濾過クロマトグラフィー(脱塩)に流した。得られたタンパク質ピークを、SDS−PAGEおよびウェスタンブロットで解析した。この場合、mSCFはタンパク質抽出物の約40%として存在した。部分的に精製した抽出物を、図1のレーンの印しを付けたPEに示す。
【0060】
実施例2:トランスジェニックオオムギ種子抽出物から精製された組み換え増殖因子mSCFの精製
精製された形態で増殖因子をさらに単離するために、ゲル濾過による緩衝液交換後、実施例1からのIMAC抽出物をイオン交換カラムセファロースFFに付与し、抽出物中のタンパク質を、溶出緩衝液のNaCl含有量を増加させる段階溶離によって分離した。デヒドリンから増殖因子を首尾よく分離することがこの方法で可能であった。バンドは、mSCFのグリコシル化に起因して曖昧である。図1に示すように、増殖因子は、トランスジェニック植物抽出物から単離され、精製されたmSCFを生じるこの方法において95%より大きい(レーン6)高純度まで精製され得る。
【0061】
図1は、トランスジェニック植物抽出物ならびにトランスジェニック植物抽出物からのマウス幹細胞因子(mSCF)の精製および単離を示す。
A)抽出物に存在し、異なる精製工程で全タンパク質を染色するクマシーブルー染色SDS−PAGEゲル。
B)mSCFを含有する抽出物のウェスタンブロット。
レーン:1および7 サイズマーカー;2,3:IMAC溶出物;4:脱塩したIMAC溶出物;5:IEC由来の50%NaCl溶出物;6:100%NaCl溶出物。
PE:部分的に精製した植物抽出物;P:精製したタンパク質;D:デヒドリン、mSCF:マウス幹細胞因子。
【0062】
実施例3:植物中で発現される組み換え増殖因子のグリコシル化
ヒトインターフェロンγをオオムギ中で発現し、全タンパク質の抽出を、170mM NaCl、1% 2−メルカプトエタノール、10mM Tris−HCl pH8.0および1%ポリビニルピロリドン(MW360.000)の存在下において還元条件下で実施した。サンプルを粉砕後、5mlの抽出緩衝液を抽出バイアルに加えた。抽出物を、4℃にて10分間、4000rpmで遠心分離により清澄化させ、続いて分子量5kDaのカットオフを有するUltrafree−4濃縮器(UFV4BCC00−Millipore Corp.Bedford,MA,USA)において10倍の遠心分離濃縮を行った。清澄化させ濃縮した抽出物の100μlのサンプルを、100μlの2×サンプル緩衝液に加え、混合物を加熱水浴中で5分間静置した。冷却後、10μlのサンプルを12%ポリアクリルアミドゲルにかけ、SDS−PAGEにより分離した。比較実施例の結果を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびPVDF膜でのエレクトロブロットによって分離した、植物および細菌で産生された組み換えIFNγのウェスタンブロット(図2を参照のこと)を用いて示す。膜を植物特異的1−3フコースに対する一次抗体で処理した。これは、IFNγ(異なるグリコシル化の2つのバンドを示す)が、1−3フコースを保有することを示すが、隣接するレーンの細菌により産生されたIFNγは、シグナルを示さない。
【0063】
ウェスタンブロットは、5秒の曝露時間で抗フコース一次抗体を用いて作製された。以下のようにサンプルを負荷した:レーン1:MWラダー、レーン2:植物により産生されたIFNγ、レーン3:細菌により産生されたIFNγ、レーン4:植物抽出物(ポジティブコントロール)。
【0064】
同じサンプルの第2のブロットを抗キシロース抗体を用いて作製した。図3は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびPVDF膜でのエレクトロブロットによって分離された、植物および細菌において産生された組み換えインターフェロンγのウェスタンブロットを示す。膜を、植物特異的糖キシロースに対する一次抗体で処理した。
【0065】
これは、IFNγ(異なるグリコシル化の2つのバンドを示す)がキシロースを保有することを示すが、隣接するレーンの細菌により産生されたIFNγは、グリコシル化の欠如によりシグナルを示さない。
【0066】
図3に示すブロットは、5秒の曝露時間で抗フコース一次抗体を用いて作製された。以下のようにサンプルを負荷した:レーン1:MWラダー、レーン2:pl.IFNγ、レーン3:細菌IFNγ、レーン4:植物抽出物(ポジティブコントロール)。
【0067】
実施例4:植物において発現される組み換え増殖因子の安定性
この実施例において、安定性試験を、種々の温度でインキュベートし、+4℃、+37℃および室温(RT)で3週間まで保存した、精製され、再構成され、凍結乾燥された植物により生成されたインターロイキン1a(IL−1a)(1つのN−グリコシル化部位を含有する)について実施した。図4に示す結果は、数週間の37℃、RTおよび+4℃での増殖因子の優れた安定性を示す。
【0068】
細菌(E.coli)により生成されたIL1−aの製造者による詳細によれば、細菌からの精製形態である、再構成された非グリコシル化IL−1aは、2℃〜4℃で1週間のみ安定である(http://ww.cellscience.com/PDF/CRI132.pdfを参照のこと)。この実施例は、植物により生成された増殖因子(この場合、IL−1a)が、細菌系において発現される同じ増殖因子より実質的に十分に安定であることを示す。
【0069】
実施例5:組成物中の植物由来増殖因子の使用
以下の実施例は、本発明による化粧品組成物の処方物を示すが、本発明を決して限定するものではない。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
【表5】

【0075】
処方物1〜5は、上記の詳細な説明に記載したものから選択される任意の代替の増殖因子を用いて同様に処方されてもよい。
【0076】
処方物6:非経口用の溶液
非経口用に、25μgの活性物質および33mgのリン酸緩衝液(10mgのNaHPO/HOおよび23mgのNaHPO/2HO)を含む、58mgの凍結乾燥物質、ならびに約125mlの生理溶液を、使用直前に希釈剤と凍結乾燥製剤とを混合するために、プリセットしたフラスコに別々に入れる。活性物質の可溶化後の濃度は約0.2μg/mlである。活性物質は、上記の詳細な説明に記載した増殖因子のいずれかから適切に選択され得、本明細書に記載されるように、その増殖因子は植物において遺伝子導入で発現され、そこから単離される。
【0077】
処方物7:局所適用のためのW/Oエマルション
20μgの活性物質を含む一定量の凍結乾燥物質を、10%のDMSOを含む5mlの10%エタノール水性アルコール溶液に入れる。溶液を、10より小さいHLB係数を有するW/Oエマルションに適切な界面活性剤を用いて皮膚への塗布のために滅菌した植物油中で乳化する。エマルションは、約2μg/gの組成物に等しい活性物質を含有する。活性物質は、上記の詳細な説明に記載した増殖因子から選択され、宿主植物から単離される植物由来の組み換え増殖因子である。
【0078】
処方物8:O/Wエマルション
約20μgの活性物質を含む一定量の凍結乾燥物質を、30%のDMSOを含む5mlの水性アルコール溶液に可溶化し、植物油ベースの親油性溶媒中で適切な界面活性剤を用いて乳化する。得られたO/Wエマルションは、約3μg/gの組成物の濃度で活性物質を含有する。活性物質は、上記の詳細な説明に記載した増殖因子から選択され、宿主植物から単離される植物由来の組み換え増殖因子である。
【0079】
処方物9:ゲル形態の局所用組成物
10μgの活性物質を含む一定量の凍結乾燥物質を、20mlの10%エタノール水性アルコール溶液に入れる。次いで、溶液を、ペンチレングリコール、アミノメチルプロパノールおよびアクリレート、カプリリルグリコール、およびトロポロンの混合物に加える。活性物質は、0.2μg/gの組成物に等しい一定量で存在する。ゲルは化粧品の適用に適している。活性物質は、上記の詳細な説明に記載した増殖因子から選択され、宿主植物から単離される植物由来の組み換え増殖因子である。
【0080】
【表6】

【0081】
処方物は、従来の方法に従って所定量で上記の成分を用いることによって調製される。具体的には、パラオキシ安息香酸メチルを、注射用に適量の希釈水に溶解し、カルボマー(Carbomer)934Pを溶液に加え、攪拌しながらその中で分散させる。溶液のpHを水酸化ナトリウムでコントロールし、溶液をプロピレングリコールと混合し、加熱によって滅菌する。次いで、濾過し、滅菌した、注射用の希釈水中のHb−EGFの溶液をそれに加えて、100gの処方物を得る。
【0082】
【表7】

【0083】
処方物は、従来の方法に従って所定量で上記の成分を用いることによって調製される。具体的には、リン酸緩衝液を、所定量のリン酸水素ナトリウム、塩化ナトリウムおよびリン酸を用いることによって調製する。防腐剤としてパラオキシ安息香酸メチルをリン酸緩衝液に溶解する。ポロキサマー(Poloxamer)407(BASF、独逸国)を溶液に加え、攪拌しながらその中で分散させる。次いで、溶液をプロピレングリコールと混合し、攪拌しながらその中で分散させる。次いで、溶液のpHを水酸化ナトリウムでコントロールし、溶液をプロピレングリコールと混合し、加熱によって滅菌する。次いで、濾過し、滅菌した、注射用の希釈水中のHb−EGFの溶液をそれに加えて、100gの処方物を得る。
【0084】
【表8】

【0085】
処方物は、従来の方法に従って所定量で上記の成分を用いることによって調製される。具体的には、グリセリンおよびパラオキシ安息香酸メチルを、注射用の適量の希釈水に溶解し、カルボマー(Carbomer)940(BF Goodrich、米国)を溶液に加え、攪拌しながらその中で分散させる。次いで、パラオキシ安息香酸プロピルおよび他のものを溶液に加え、融解しながら乳化する。次いで、溶液を、トリエタノールアミンでpHをコントロールした後に滅菌し、注射用の希釈水中の、植物から発現され、単離された組み換えHb−EGFの濾過し、滅菌した溶液と混合して、100gの処方物を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み換え非植物の、トランスジェニック植物由来の異種増殖因子を含む、化粧品および/または医薬組成物。
【請求項2】
皮膚に塗布するための局所用組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記増殖因子は、前記化粧品組成物に含まれるトランスジェニック植物抽出物の成分として提供される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記増殖因子は、全タンパク質含有量の約0.01%〜約70%の範囲の量で前記トランスジェニック植物抽出物に存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記増殖因子は、一定量、より具体的には、全タンパク質含有量の約0.1%〜約30%の範囲の量で前記トランスジェニック植物抽出物に存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
トランスジェニック植物由来の1つより多い増殖因子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記1つより多い増殖因子は、トランスジェニック植物由来の抽出物の混合物の成分として存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
組み換え異種非植物増殖因子を発現するトランスジェニック植物由来の植物抽出物を含む、化粧品および/または医薬組成物。
【請求項9】
皮膚へ塗布するための局所用組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記植物抽出物は、前記増殖因子を約0.01%〜約99.9%の範囲、好ましくは約0.1%〜約99.9%の範囲で含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記植物抽出物は、前記増殖因子を約0.01%〜約70%の範囲、例えば約0.1%〜約40%の範囲、または約40%〜約70%の範囲で含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
1つ以上の植物由来の精製された非植物増殖因子が、非植物増殖因子を既に含有する前記植物抽出物に加えられる、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
前記増殖因子は、植物特異的グリコシル化でグリコシル化される、請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
前記増殖因子は、上皮細胞増殖因子(EGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、エリスロポエチン(Epo)、線維芽細胞増殖因子4、5、6、8および9(FGF4、FGF5、FGF6、FGF8およびFGF9)、線維芽細胞増殖因子aおよびb、Flt3リガンド、ヘパリン結合−EGF(Hb−EGF)、インスリン様成長因子−I(IGF−I)、インスリン様成長因子−II(IGF−II)、インターロイキン−1(IL−1;IL−1αおよびIL1−βを含む)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−8(IL−8)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−15(IL−15)、インターロイキン−18(IL−18)、インターロイキン−20(IL−20)、白血病抑制因子(LIF)、ノギン、胎盤成長因子−1(PIGF−1)、幹細胞因子(SCF)、TGF b3を含む、形質転換成長因子αおよびβ(TGFaおよびTGFb)、腫瘍壊死因子−a(TNF−a)、腫瘍壊死因子−b(TNF−b)、インターフェロン−g(INF−g)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、神経成長因子(NGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、骨形成タンパク質(BMP−4)、ならびにサイモシンβ4からなる群より選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記植物抽出物は、デヒドリン、グロブリンおよび他の種子タンパク質からなる群より選択される、抽出される植物に由来するタンパク質を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物は、クリーム、ローション、ゲル、包帯剤、シャンプー、チンキ剤、ペースト、軟膏、膏薬、粉末、液剤または半液剤の製剤、パッチ、リポソーム製剤、溶液、懸濁液、リポソーム懸濁液、W/OまたはO/Wエマルション、軟膏、ポマードおよびペーストおよび皮膚軟化剤クリーム、美顔パック、マッサージクリーム、および栄養素クリームまたは栄養素エマルションからなる群より選択される形態中にある、請求項1または14に記載の化粧品組成物。
【請求項17】
異種非植物増殖因子を発現するトランスジェニック植物から植物抽出物を調製する工程と、少なくとも1つの化粧品的に許容可能な賦形剤と混合する工程とを含む、局所用スキンケア製品を製造する方法。
【請求項18】
前記方法は、前記異種増殖因子を発現するトランスジェニック植物を収集する工程と、植物原料から前記植物抽出物を抽出する工程と、をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記植物抽出物は、前記異種増殖因子を約0.01重量%〜約70重量%の範囲で含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記植物抽出物は、デヒドリン、グロブリンおよび他の種子タンパク質からなる群より選択される、抽出される植物に由来するタンパク質を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記トランスジェニック植物抽出物は、オオムギ種子抽出物である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記異種増殖因子は、形質転換成長因子b(またはβ)(TGF−bまたはTGF−β)、形質転換成長因子a(またはα)(TGF−aまたはTGF−α)、TNFα、上皮細胞増殖因子(EGF)、BMP−4、血小板由来成長因子(PDGF)、KGF、線維芽細胞増殖因子aおよびb(aFGFおよびbFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、エリスロポエチン(Epo)、インスリン様成長因子−I(IGF−I)、インスリン様成長因子−II(IGF−II)、IL−1αおよびIL−1βを含むインターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−8(IL−8)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−18(IL−18)、インターロイキン−20(IL−20)、腫瘍壊死因子−a(TNF−a)、腫瘍壊死因子−b(TNF−b)、インターフェロン−g(INF−g)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、神経成長因子(NGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、骨形成タンパク質(BMP−4)、ならびにサイモシンβ4からなる群より選択される、請求項17〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記異種増殖因子を前記トランスジェニック植物抽出物から単離する工程をさらに含む、請求項17〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記単離する工程は、アフィニティークロマトグラフィーを使用する工程を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記単離する工程は、イオン交換クロマトグラフィーを使用する工程を含む、請求項23に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−526623(P2011−526623A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515738(P2011−515738)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/IS2009/000003
【国際公開番号】WO2010/001417
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(511002401)
【Fターム(参考)】