説明

スクリーンの製造方法及び製造装置、並びにスクリーン

【課題】外光の反射による影響を低減して投射光をコントラストのより改善された画像品質の安定した投影ができるスクリーンを提供するとともに、当該スクリーンを比較的省スペースで簡易に製造できるスクリーンの製造方法及びスクリーンの製造装置を提供すること。
【解決手段】スクリーンの製造装置100において、スクリーン基板1は、ホルダHDにより内壁面130aに沿って所定の位置で固定される。蒸発源装置120により成膜物質Wを加熱して、蒸発させる。チャンバ130内は、所望の真空状態となっているため、成膜物質Wの射出軌道EVは、蒸発源装置120から放射状に射出するものとなり、スクリーン基板1上に堆積する。これにより、スクリーン基板1上に成膜物質Wによる反射膜が形成され、スクリーンが製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方のプロジェクタ等の投影装置からの投射光を反射して投影画像を映し出すスクリーンの製造方法及び製造装置、並びにスクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、投影画像を反射させる反射スクリーンとして、下方からの斜め投射して正面側で観察可能にするものであって、スクリーン基板上に同一形状の多数の凸状の単位形状部を2次元的に規則的に配置させるものが知られている(特許文献1参照)。このスクリーンは、各単位形状部の表面にプロジェクタ等の投影機からの投影位置に応じて部分的に投射光の反射面を形成することにより、上方からの外光を遮断して高コントラストでありながらも、高輝度なものとなっている。
【特許文献1】特開2006−215162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、プロジェクタ等からの投射光は、点状の光源からの射出光に類似し、スクリーンに対して放射状に拡がって入射するのに対し、主に照明等による上方からの外光は、一般に線状または面状の光源からのものであり、スクリーン全体にある入射角度分布で平均的に入射する。従って、コントラストをさらに良くするには、以上のような投射光と外光とでスクリーンへの入射状態の違いに対応した反射面を有する必要があるが、このような反射面となる反射膜の形成は必ずしも容易ではない。また、上記のような反射面を有するサイズの大きなスクリーンを作成するために、スクリーン展開した状態で収容する装置を設計すると装置を大型化させることになる。
【0004】
そこで、本発明は、外光の反射による影響を低減して投射光をコントラストのより改善された画像品質の安定した投影ができるスクリーンを提供するとともに、当該スクリーンを比較的省スペースで簡易に製造できるスクリーンの製造方法及びスクリーンの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係るスクリーンの製造方法は、(a)内部空間に円筒形状の内壁面を含むチャンバ内において、複数の立体部を前面側に有するスクリーン基板を内壁面に沿って設置する設置工程と、(b)チャンバ内において円筒形状の略中心軸上に配置された材料源から、スクリーンの反射膜となる成膜物質を射出させてスクリーン基板上に堆積させる蒸着工程とを有する。ここで、材料源が円筒形状の略中心軸上に配置される場合については、材料源が円筒の中心軸上に配置される場合に加え、中心軸の近傍に配置される場合も該当する。また、それら双方に複数配置される場合も含まれる。なお、スクリーン基板の製法としては、例えば光吸収性のシート状の部材の一面をプレス加工することにより、多数の立体形状の形成されたスクリーン基板を得ることが考えられる。
【0006】
上記スクリーンの製造方法では、スクリーン基板を円筒形状の内壁面に沿って設置し、当該円筒形状の略中心軸上に配置された材料源からスクリーン基板上に向けて成膜物質を射出させて堆積させる。以上により製造されるスクリーンは、スクリーン基板の前面側において複数の立体部により形成された表面に投射光と外光とでの入射状態の違いに対応した所望の状態の反射面を有し、スクリーン前面の中央部分に限らず、周辺部分等どの位置においても、ある入射角度分布で平均的に入射する外光を遮断でき、点状の光源から入射する投射光の反射効率をほとんど劣化させることがないので、コントラストの高い画像が形成されるものとなる。また、上記スクリーンの製造方法では、スクリーンを小さなチャンバ内に収めることができ、比較的省スペースで簡易にスクリーンを製造することができる。
【0007】
また、本発明の具体的な態様によれば、設置工程において、円筒形状の円周方向をスクリーン基板の長手方向とする。この場合、横長のスクリーンについて、投射光と外光とを考慮した反射膜の形成が可能となる。
【0008】
また、本発明の別の態様によれば、円筒形状の半径と材料源の位置とは、スクリーン前面に対する投射光の投射距離と投射角度とに対応して調整される。この場合、投射光の投射距離や投射角度といったスクリーンの使用態様に正確に対応させた反射膜の形成が可能である。
【0009】
また、本発明の別の態様によれば、設置工程において、スクリーン基板を内壁面に固定する。この場合、成膜装置を簡単な構造とすることができる。また、所望の状態の反射膜を形成させるために、スクリーン基板を材料源に対して適した位置で安定した状態で支持することもできる。
【0010】
また、本発明の別の態様によれば、設置工程において、スクリーン基板を内壁面に沿って移動可能に設置する。この場合、例えば反射膜の形成処理中にスクリーン基板を移動させることで、大面積のスクリーンの製造を省スペースで連続的に行うことができる。
【0011】
また、本発明の別の態様によれば、成膜物質が、アルミニウム、銀及び誘電体のいずれかである。反射特性のよいスクリーンの作製が可能となる。
【0012】
また、本発明の別の態様によれば、スクリーン上に形成された反射膜が、鏡面反射の特性を有する。この場合、製造されたスクリーンは、投射光をより強く反射させるものとなる。
【0013】
また、本発明の別の態様によれば、蒸着工程において、成膜物質の成膜方法が、真空蒸着法、イオンアシスト法、スパッタ法のいずれかである。この場合、材料源から射出される成膜物質に高い指向性をもたせることができ、良好な反射特性を有する反射膜を所望の状態で形成させることができる。
【0014】
また、本発明の別の態様によれば、(a)スクリーン基板が、複数の立体部を円弧上に並べることによってそれぞれ形成されるとともに並行して配列される複数の円弧状の列を前面側に有し、(b)複数の円弧状の列が、スクリーン前面における投射光の入射方向に対して略直交する方向に延びる。ここで、立体部には、凹面を有するもの、凸面を有するもの、あるいはその双方が組み合わされたもののいずれも含まれる。この場合、製造されたスクリーンは、投射光と外光とでスクリーンへの入射状態の違いに対応した反射面を有し、スクリーン前面の中央部分に限らず、周辺部分等どの位置においても、ある入射角度分布で平均的に入射する外光を遮断して、点状の光源から入射する投射光の反射効率をほとんど劣化させることなく反射するので、コントラストの高い画像が形成されるものとなる。
【0015】
上記課題を解決するため、本発明に係るスクリーンの製造装置は、(a)内部空間に円筒形状の内壁面を含み、スクリーン基板を内壁面に沿って設置できるチャンバと、(b)チャンバ内において円筒形状の略中心軸上に配置され、スクリーンの反射膜となる成膜物質を射出させてスクリーン基板上に堆積させる材料源とを有する。
【0016】
上記スクリーンの製造装置では、チャンバが、スクリーン基板を円筒形状の内壁面に沿って設置できるものであり、比較的省スペースで簡易にスクリーンを製造できる。また、上記製造装置により製造されるスクリーンは、投射光と外光とでの入射状態の違いに対応した所望の状態の反射面を有し、スクリーン前面の中央部分に限らず、周辺部分等どの位置においても、ある入射角度分布で平均的に入射する外光を遮断でき、点状の光源から入射する投射光の反射効率をほとんど劣化させることがないので、コントラストの高い画像が形成されるものとなる。
【0017】
また、本発明の具体的な態様によれば、スクリーンの製造装置が、スクリーン基板を円筒形状の円周方向を長手方向として設置するホルダをさらに備える。この場合、ホルダにより、所望の状態の反射膜を形成させるために、スクリーン基板を材料源に対して適した位置に安定した状態で支持することができる。また、この場合、横長のスクリーンについて、投射光と外光とを考慮した反射膜の形成が可能となる。
【0018】
また、本発明の別の態様によれば、スクリーンの製造装置が、スクリーン基板を内壁面に沿って移動可能にするスクリーン基板移動装置をさらに備える。この場合、スクリーン基板移動装置が、例えば反射膜の形成処理中にスクリーン基板を移動させることで、大画面のスクリーンの製造を省スペースで連続的に行うことができる。
【0019】
また、本発明の別の態様によれば、円筒形状の半径と材料源の位置とが、スクリーン前面に対する投射光の投射距離と投射角度とに対応して調整される。この場合、投射光の投射距離や投射角度といったスクリーンの使用態様に正確に対応させた反射膜の形成ができる。
【0020】
また、本発明のさらに別の態様によれば、スクリーンの製造装置が、材料源の中心軸方向についての位置を調整する位置調整装置をさらに備える。この場合、スクリーンの使用態様に対応させた多様な反射膜の形成ができ、特に、投射光の投射角度に応じた調整が可能となる。
【0021】
上記課題を解決するため、本発明に係るスクリーンは、(a)複数の立体部を円弧上に並べることによってそれぞれ形成されるとともに並行して配列される複数の円弧状の列を前面側に有するスクリーン基板と、(b)複数の立体部の表面上にそれぞれ形成される複数の反射膜とを備え、(c)複数の反射膜の境界が、スクリーン基板の基準面に対して平行で、かつ、投射光の投射距離と投射角度とに対応する位置にある基準線上の各点から、当該基準線に垂直な方向に沿ってスクリーン基板に投影をすることにより、スクリーン基板の表面に形成される影の輪郭に一致している。ここで、スクリーン基板の基準面とは、スクリーン基板に複数の立体部による凹凸を無視して平坦な面であると仮定した場合の仮想的な平面を意味する。
【0022】
上記スクリーンでは、スクリーン基板の前面側が、複数の円弧状の列を有することにより、投射光のロスを抑えて高輝度に保って、より適切な状態で反射させるものとなる。この際、特に、複数の反射膜の境界が、スクリーン基板の基準面に対して平行である、もしくは、投射光の投射距離と投射角度とに対応する位置にある、基準線上の各点から、当該基準線に垂直な方向に沿ってスクリーン基板に投影をすることにより、スクリーン基板の表面に形成される影の輪郭に一致して形成されている。これにより、当該スクリーンは、投射光のロスを抑えながらも、外光を効率よく遮断してコントラストの高い画像が得られるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る第1実施形態のスクリーンについて図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態のスクリーン10の全体的な使用状態を説明する図である。スクリーン10は、図中水平方向即ちx方向を長手方向とし、垂直方向即ちy方向を短手方向とする横長の長方形状を有する。スクリーン10は、その前側下方に設置された投影装置等からの投射光PLを、スクリーン10の主として前方に反射光として射出させる反射型スクリーンである。つまり、図1の場合、投影装置等に設けた投射レンズPOの投射光源点Sからの投射光PLがスクリーン10の前面10aに投射され、前面10a上に設けた不図示の微細凹凸構造で前方に反射することにより、画像投影がなされる。ここで、投射光源点Sは、スクリーン10に比較的近接した下方位置に設置されている。また、ここでは、図示のように、投射光PLのスクリーン10の中心位置Oに入射する光束軸AXが入射角度αとなっており、投射光源点Sからスクリーン10までの距離(即ち投射光源点Sからスクリーン10の前面10aを含む平面に垂直に下ろして交差する点である交点Hまでの距離)が投射距離dとなっている状態で、下方から斜め上方に向けて投射されている。所謂フロント投射型の場合、スクリーン10は、中心位置Oを基準として、上述した入射角度αや投射距離dによって定まる各位置での投射光PLの入射角度に応じて、前面10a上の微細凹凸構造についての光学的な設計がなされることが望ましい。特に、コントラストの向上のためには、前面10aにおいて、投射光PLは的確に前方に反射される一方、主に上方からの外光OLはなるべく前方に反射されない構造となっていることが望ましい。
【0024】
図2及び図3は、本実施形態に係るスクリーン10の表面構造の一例を模式的に示した正面図及び側方断面図である。なお、図2及び図3は、スクリーン10全体のうちの一部について示すものである。
【0025】
このスクリーン10は、光吸収性材料により形成されるスクリーン基板1と、多数の反射膜RSとを備える。スクリーン基板1には、スクリーン前面側の表面を構成するスクリーン下地面1aに多数の立体部である凹部2aが形成されている。スクリーン基板1は、光吸収性材料により形成されており外光OLによる不要光を吸収する。多数の凹部2aは、それぞれ略半球状の外形を有し、スクリーン10の前面10a側において、後に詳述する規則性をもって密に配列される。投射光PLの反射面となる多数の反射膜RSは、多数の凹部2aの上側の表面上において略水平方向即ちx方向に境界線を有するようにそれぞれ形成されており、投影装置等からの投射光PLを必要な方向に反射し、かつ、上方からの外光OLの反射は抑制できる形状となっている。従って、略半球状の各凹部2aは、上側に反射膜RSが形成され光の反射面として機能する領域を有し、下側にスクリーン下地面1aが露出して光の吸収面として機能する領域を有する状態となっている。なお、スクリーン基板1上において、各凹部2a間には、光の吸収面として機能する平坦部分3が残っている。
【0026】
スクリーン基板1上の各凹部2aは、図2に示すように、中心位置Oを通って上下方向即ちy方向に延びる鉛直軸LXを中心軸として左右対称で上側に凸の円弧状の列を上下に多数並べるような分布で、2次元的に配列されている。つまり、各円弧AC上に並ぶ多数の凹部2aは、数珠状に連なって延びる1つの立体部群2を形成しており、立体部群2は、上下方向即ち図中y方向に並行して多数列設けられている。また、ここで、1つの立体部群2において隣り合う凹部2aは等間隔に近接した状態で密に配列されており、y方向に隣り合う立体部群2も、近接した状態で密に配列されている。以上のように、y方向に多数列設けられた立体部群2は、スクリーン10の前面10aにおいて全体的に密に形成されている。なお、図2及び図3は、既述のように、いずれも模式的な図であり、実際の各凹部2aの径は、好ましくは0.05mm〜0.4mm程度のものとなっており、スクリーン10のサイズによっては、前面10a上に億単位の個数の凹部2aが形成されている。
【0027】
以下、スクリーン10の表面における立体部である凹部2aの配列と投射光PLとの関係について詳しく説明する。既に説明したように、多数の凹部2aは、スクリーン10の中心位置Oでの投射光PLの入射角度αを基準として円弧状に並べられ複数の立体部群2を形成している。各立体部群2を配置する円弧ACの曲率は、それぞれ投射光PLの入射角度に応じて定まっている。より具体的に説明すると、例えば、複数の立体部群2のうち、中心位置Oを通る立体部群2は、スクリーン10の中心位置Oから交点Hまでの距離を曲率半径とする円弧AC上に多数の凹部2aを並べたものである。この場合、中心位置Oを通る立体部群2を形成する各凹部2aには、いずれも投射光PLが基準となる入射角度αで入射するものとなる。また、各凹部2aにおいて、投射光PLは、入射方向が立体部群2のなす円弧ACの接線に対して垂直な状態となる。また、中心位置Oを通らない残りの立体部群2についても、同様に各凹部2aを交点Hを中心として円弧状に並べて構成されている。以上のように、このスクリーン10は、各立体部群2を構成するいずれの凹部2aに入射する投射光PLも、入射方向が立体部群2のなす円弧ACの接線に対して垂直な状態となっている。
【0028】
上記では、隣り合う凹部2aは等間隔に近接した状態で密に配列したものとなっているが、複数の円弧ACに並ぶ1つの立体部群2ごとに凹部2aの配列密度や凹部2aの深さまたは曲率等の形状を調整することで、投射光PLに合わせた反射特性を得ることができる。つまり、この場合、複数の円弧ACに並ぶ1つの立体部群2内での凹部2aの配列状態や深さまたは曲率等の形状を揃えることにより、各立体部群2での表面の形状をそれぞれ入射する投射光PLの入射角度に対応させたものとすることができる。なお、本実施形態では、各立体部群2を構成する凹部2aの密度を一致させ、深さ等を入射角度αに応じて異なるものとしている。
【0029】
以下、反射膜RSの形状について説明する。上述のように、プロジェクタ等からの投射光PLは、点状の光源として投射光源点Sから射出され、スクリーン10に対して放射状に拡がるのに対し、上方からの外光OLは、主に照明等によるものが多く、スクリーン10の全体にある入射角度分布で平均的に入射する。このような光の入射方向についての性質の違いから、例えば、比較例として図4に示すように、反射膜の形成について、平面状に拡げたスクリーン基板1に反射性塗料を投射光源点Sから吹き付けるといった投射光PLの反射効率をよくすることのみを優先した反射膜RSの形成を行うと、スクリーン前面の中央部分では外光OLの反射を効率的に防ぐものの、スクリーン前面の周辺部では、投射光PLとともに外光OLも反射してしまうことになる可能性がある。
これに対して、図2に示すように、スクリーン10では、円弧AC上の位置に関係なく反射膜RSの境界が略水平方向となるようにしている。これにより、投射光PLの反射率を確保することと、コントラストをさらに良くするために外光OLの反射を抑えることとのバランスを考慮したものとなっている。
【0030】
次に、上述したスクリーン10の製造方法について説明する。まず、スクリーン10のうち、スクリーン基板1の作製について説明する。スクリーン基板1は、例えば光吸収性を有する黒色のPET(ポリエチレンテレフタレート)やポリ塩化ビニル等を原材料とするシート状の部材の表面に多数の凹部2aとなる凹面を形成することにより作製される。例えば、当該シート状の部材の表面に光吸収性を有するUV硬化樹脂を塗布する、あるいは、当該シート状の部材の表面を加熱して軟化させた後、多数の凹部2aに対応する凸形状を有するガラス型で当該箇所をプレス加工する。以上により、スクリーン基板1が作製される。
【0031】
本実施形態では、以上のようにして作製されたスクリーン基板1の表面に、円筒形状の内壁面を有するスクリーンの製造装置を用いることにより、上述した形状の反射膜RSを有するスクリーン10を製造する。
【0032】
以下、スクリーンの反射膜部分についての製造方法の一例について説明する。図5、図6(A)及び6(B)は、本実施形態に係るスクリーンの製造装置100について説明するための斜視図、平面図及び側断面図である。製造装置100は、例えば抵抗加熱により成膜材料を蒸発させて真空蒸着による成膜を行う真空蒸着装置である。製造装置100は、材料源となる蒸発源装置120と、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる真空容器であるチャンバ130と、チャンバ130内を真空の状態にするための排気系であり、例えばロータリポンプ等で構成される真空ポンプ140と、各部を統括して装置全体の制御を行う制御装置150とを備える。
【0033】
製造装置100は、所定半径の円筒形状を有しており、チャンバ130により形成される内部空間ISも円筒形状となっている。蒸発源装置120は、当該円筒形状の中心軸CX上に位置する。蒸発源装置120は、ボート上に成膜物質Wをマウントし、制御装置150から供給される電力を用いた抵抗加熱等により成膜物質Wを加熱して蒸発させることで成膜を行う。なお、ここでは、成膜物質Wの一例としてアルミニウムを用いている。チャンバ130は、内部空間IS中に、中心軸CX、半径Rの円筒形状部分の側面である内壁面130aを有する。半径Rと中心軸CX上の蒸発源装置120の位置とは、図1等のスクリーン10の使用態様に応じて定められている。
【0034】
図5等に示すように、スクリーン基板1は、この内壁面130aに沿って設置される(設置工程)。より具体的に説明すると、まず、スクリーン基板1は、図5に示すように、内壁面130aに沿って筒状に配置されており、スクリーン基板1の長手方向(スクリーン10の長手方向に相当)が当該円筒形状の円周方向となっている。また、図6(A)及び6(B)に示すように、スクリーン基板1は、ホルダHDにより内壁面130aに沿ってスクリーン10の使用態様に応じた高さ位置で固定されている。なお、ホルダHDは、図5に示すスクリーン基板1のうち有効領域VD外の周辺部分である余白部分MPのみに接触している。余白部分MPは、成膜処理の後、必要に応じてカットされる。
【0035】
以下、製造装置100の動作について説明する。まず、真空ポンプ140の排気口140aから排気がなされ、チャンバ130内部が所定値以下(例えば10−3Pa以下)の真空状態になる。次に、蒸発源装置120により成膜物質Wを加熱して、蒸発させる。チャンバ130内は、所望の真空状態となっているため、成膜物質Wの射出軌道EVは、図5等に矢印で示すように蒸発源装置120から放射状に射出するものとなり、スクリーン基板1上に堆積する(蒸着工程)。これにより、スクリーン基板1上に成膜物質Wによる反射膜が形成され、スクリーン10が製造される。
【0036】
スクリーン10の製造の際、図6(A)に示すように平面視した場合において、蒸発源装置120は、円筒形状の中心部に位置し、スクリーン基板1は、1つの円周上に位置する。また、図6(B)に矢印で示されるように、成膜物質Wの射出軌道EVはスクリーン基板1に対して対称なものとなっている。つまり、スクリーン基板1上において、上下の短手方向(スクリーン10の短手方向に相当)については、いずれも等しい状態で成膜がなされるものとなる。これにより、図2及び図3に示した反射膜RSの形成が可能となる。つまり、多数の凹部2aの上側の表面上において略水平方向即ちx方向に境界線を有するように反射膜RSを形成することができる。これにより、反射膜RSを外光OLの反射を抑制できる形状にすることができる。
【0037】
また、既述のように、チャンバ130内において、円筒形状の半径Rと中心軸CX上の蒸発源装置120の位置とは、図1等のスクリーン10の使用態様に応じて正確に定められている。より具体的には、半径Rの値は、図1等に示す投射光PLの投射距離dと対応し、蒸発源装置120の位置は、投射光PLの投射光源点Sに対応して調整されている。つまり、成膜物質Wの射出軌道EVの方向は、投射光PLの方向を考慮したものとなっている。以上により、投射光源点Sに対応して円弧AC上に配列される凹部2aの表面に形成される反射膜RSは、スクリーン10の使用態様に対応したものとなっており、投影装置等からの投射光PLの反射効率の劣化を防ぐべく考慮された形状になっている。
【0038】
なお、上記の場合、成膜物質Wにより、図2の多数の凹部2a間に存在する平坦部分3にも反射膜が形成される。この平坦部分3における処理については、例えば、スクリーン10の反射膜RSの形成後、ローラ等を利用して光吸収剤を前面10aに印刷することにより、多数の凹部2a内に入り込むことなく平坦部分3のみに光吸収材を塗布することができる。また、成膜物質Wによる成膜を行う前に、ローラ等を用いて平坦部分3上にレジストによるマスクを形成し、反射膜RSの蒸着後にマスク部分をエッチングして平坦部分3上に形成された蒸着膜とともに除去してもよい。
【0039】
また、以上によって形成されるスクリーン10では、図7(A)及び図7(B)に示すように、投射光PLは、スクリーン10の上方側の入射角度αが下方側の入射角度αより大きく、これに伴って、反射膜の形成される面積も上方側が小さく、下方側が大きくなっている。つまり、より外光OLの影響を受けやすい上方側において外光OLを前方に反射し難いものとなっている。
【0040】
以上において、成膜物質Wとしてアルミニウムを用いているが、アルミニウムの他にも、例えば銀や種々の誘電体等を用いることも可能である。なお、誘電体を用いる場合、蒸発源装置120として、例えば複数種類の蒸発源を備えるものを用いればよい。
【0041】
また、上記では成膜物質Wの成膜方法の一例として、真空蒸着法を用いているが、この他にも、例えばイオンアシスト法、スパッタ法等によって成膜を行うことも可能である。
【0042】
また、上記では蒸発源装置120を中心軸CX上に設置するものとしているが、設置位置は、中心軸CX上だけでなくその近傍にあってもよく、また、蒸発源装置120を中心軸CX上またはその近傍に複数配置してもよい。
【0043】
また、上記では、チャンバ130の内壁面130aをにスクリーン基板1を設置するための内壁面として用いているが、当該内壁面は、チャンバ130内に別途設けてもよい。
【0044】
〔第2実施形態〕
図8は、第2実施形態に係るスクリーンの正面図であり、図9は、図8に示すスクリーン110の一部を拡大した図である。つまり、図9は、図8中におけるスクリーン110の右下に位置する領域PDについて示す図である。また、図10は、スクリーンの表面形状を示す斜視図である。本実施形態に係るスクリーン110は、図1等のスクリーン10と同様に、多数の凹部102aを円弧状に配列して、複数の立体部群102を形成している。特に、本スクリーン110では、図9において破線で示す設計上の仮想的な円CRに対応して半球状の凹面を有する凹部102aが形成されるが、円CRは1つの立体部群102において重なり合い、さらに、立体部群102間でも重なり合うように配列している。つまり、1つの立体部群102内での凹部102a間の配列密度は、円CRの直径の逆数より大きく、立体部群102間の配列密度も仮想的な凹面CFの直径の逆数より大きくなっている。従って、図9及び図10に示すように、各凹部102は、それぞれ正面視六角形であり、かつ、半球状の凹面を有する形状となっている。なお、本実施形態のスクリーン110の場合、図2等に示すスクリーン10と異なり、多数の凹部102a間には平坦部分が生じることはない。
【0045】
ここで、スクリーン110の製造方法については、図1等に示すスクリーン10と略同様である。つまり、まず、光吸収性のシート状の部材に表面においてプレス加工により多数の凹部102aを形成することで、スクリーン基板101が作製される。次に、製造装置100によりスクリーン基板101上に反射膜RSが形成される。以上により、スクリーン110が作製される。なお、上述のように、凹部102a間には平坦部分が生じないので、反射膜RSの形成後に光吸収材を塗布する等のコート処理は必要ない。
【0046】
スクリーン110の作製において、スクリーン10の作製のときと同様に、成膜物質Wの射出軌道EVは、図5等に矢印で示すように蒸発源装置120から放射状に射出するものとなる。従って、図8のようにスクリーン110を平面状に展開した場合、スクリーン110の成膜に対応する仮想的な射出軌道EVは、図中破線矢印で示すようなものとなる。より具体的に説明すると、まず、スクリーン110上に形成された多数の凹部102を無視して平坦な面であると仮定した場合の仮想的な平面(基準面)に対して平行で、かつ、図1等の投射光PLの投射光源点S(図5の場合、蒸発源装置120の位置に相当する。)に対応する点を通る直線を基準線SLとする。仮想的な射出軌道EVは、この基準線SLの各点から、当該基準線に垂直な方向に沿ってスクリーン110に射出されるものに等しく、スクリーン110の反射膜RSは、仮想的な射出軌道EVから射出される成膜物質Wによって形成されたものと等しい状態で形成されていることになる。
【0047】
本スクリーン110の場合、各凹部102aは、上述したように図9の正面図及び図10の斜視図に示すような形状を有している。これにより、反射膜RSは、下方に隣接する凹部102aとの境界の影響を受けて形成されるものとなり、例えば、図11に示すように反射膜RSの境界線BLが形成される。なお、図11は、図9に対応し、スクリーン110の右下部分での状態を示している。この場合、境界線BLは、スクリーン基板の表面に形成されている各凹部102aのエッジEGの影の輪郭に一致したものとなっている。つまり、例えば図11において破線矢印で示す射出軌道EVに応じて、1つの凹部102aの有する頂点Pに対応する点が、他の凹部102a上の反射膜RSの境界線BL上の頂点P´として形成されている。同様にして、1つの凹部102aのエッジEGの影の輪郭に一致して他の凹部102a上の反射膜RSの境界線BLが形成されている。なお、境界線BLの形状は、スクリーン110上の位置に応じて即ち各位置での凹部102aと射出軌道EVとの関係に応じて異なるものとなる。図9に対応している図11の場合、頂点Pの影として、頂点P´が図中左上の部分に映っているが、場所によっては、頂点Pのような影が発生しないこともあり、略水平方向即ちx方向に延びる境界線が形成されることもある。
【0048】
また、本実施形態のスクリーン110の場合においても、図2等に示すスクリーン10の場合と同様に、形成される反射膜RSの面積は、スクリーン110の上方と下方とで異なるものとなっている。図12(A)及び12(B)は、スクリーン110の上方側及び下方側についての側断面図である。スクリーン110の場合も、全般に、図7(A)及び7(B)に示したスクリーン10の場合と同様に、投射光PLについて、上方側の入射角度αが下方側の入射角度αより大きく、これに伴って、反射膜RSの形成されている面積も上方側が小さく、下方側が大きくなっている。但し、既述のように、反射膜RSの境界線BLは、エッジEGの影の輪郭に一致しており、例えば凹部102aの有する頂点Pがあるところでは、頂点Pに対応する頂点P´が反射膜RSの下端となっている。
【0049】
以上のように、本実施形態の場合、半球状の凹面を重なり合うようにして多数の凹部102aを形成している。これにより、スクリーン110の前面には平坦面が存在しない。従って、より効率的に投射光PLを反射させることができる。一方、反射膜RSについては、スクリーン10の場合と同様に形成させているので、外光OLの反射を抑制できる形状を有するものとすることができる。
【0050】
なお、上記においても、図5等に示す蒸発源装置120の設置位置は、中心軸CX上に限らず、その近傍であってもよい。この場合、図8において、基準線SLは、基準面に対する間隔を一定範囲内に保つが、正確には平行でないものとなる。
【0051】
〔第3実施形態〕
図13及び図14は、第3実施形態に係るスクリーンの製造装置について説明するための平面図及び斜視図である。本実施形態に係る製造装置200は、第1実施形態の製造装置100の変形例であり、帯状のスクリーン基板201を内壁面130aに沿って移動可能にするスクリーン基板移動装置260をさらに備える。また、製造装置200は、スクリーン基板201を内壁面130aに沿って略等間隔に配置される複数のガイド部材270を備える。なお、製造装置200の構造は、スクリーン基板移動装置260等を有することを除いて、第1実施形態の製造装置100と同様であるので平面図及び斜視図以外の図示等を省略する。また、帯状のスクリーン基板201は、スクリーン基板1等の1つ分または複数分に相当し、製造装置200の円周方向を長手方向としている。なお、図14では、スクリーン基板移動装置260を省略している。
【0052】
図13に示すように、スクリーン基板移動装置260は、スクリーン基板201をチャンバ130内へ挿入するための一対のローラ及びアクチュエータで構成される挿入ローラ部260aと、スクリーン基板201をチャンバ130外へ送出するための一対のローラ及びアクチュエータで構成される送出ローラ部260bと、チャンバ130内部の真空を破ることなく各ローラ部260a、260bでのスクリーン基板201を出し入れさせるために各ローラ部260a、260bを囲むように取り付けられた一対の真空ゲート260c、260dとを有する。なお、各ローラ部260a、260bを駆動させるためのモータ等は図示を省略している。スクリーン基板移動装置260は、各ローラ部260a、260bと一対の真空ゲート260c、260dとを有することにより、真空を破ることなくスクリーン基板201をチャンバ130内で移動させることができる。複数のガイド部材270は、スクリーン基板移動装置260によるスクリーン基板201の移動動作に伴って自転することにより、スクリーン基板201を内壁面130aに沿って移動させるとともに、スクリーン基板201を設置箇所で固定させるホルダとして機能する。なお、スクリーン基板201は、例えば内壁面130aに沿ってレール状に設けられる不図示のガイド等により内壁面130aから離れることなく移動する。また、図14に示すように、複数のガイド部材270は、スクリーン基板201の余白部分MPのみに接触している。
【0053】
以下、製造装置200の動作について説明する。まず、挿入ローラ部260aからスクリーン基板201の先端をチャンバ130内に挿入し、ガイド部材270に沿ってスクリーン基板201を取り付ける。さらに、スクリーン基板201の先端を送出ローラ部260bから送出し、スクリーン基板201の前面に形成されている微細な凹凸構造によるパターン上に成膜物質が蒸着可能となる所定の位置で固定する。ここで、複数のガイド部材270は、自転可能であり、スクリーン基板201を内壁面130aに沿って移動させるとともに、スクリーン基板201を内壁面130aの所定の位置に固定するためのホルダとして機能する。以上のようにして、スクリーン基板201が内壁面130aに沿って初期位置に設置された状態となった後、製造装置100と同様に、チャンバ130内が真空状態に減圧され、蒸発源装置120により反射膜RSの形成がなされる。
【0054】
本実施形態の場合、スクリーン基板201は、スクリーン基板移動装置260により内壁面130aに沿って矢印に示す方向に移動可能となっている。従って、製造装置200は、一旦真空状態を形成すれば、真空を破ることなくスクリーン基板201を移動させることができるので、スクリーンの製造を連続的に行うことができる。これにより、スクリーンの長手方向が内壁面130aの円周よりも長い場合にもスクリーンの製造ができ、また、複数枚のスクリーンを連続して製造することもできる。
【0055】
〔第4実施形態〕
図15は、第4実施形態に係るスクリーンの製造装置について説明するための平面図である。本実施形態に係る製造装置300は、第3実施形態の製造装置200の変形例であり、チャンバ130内部に納められた帯状のスクリーン基板301を内壁面130aに沿って移動可能にするスクリーン基板移動装置360を備える。なお、製造装置300は、スクリーン基板移動装置360をチャンバ130内部に有する構造であることを除いて、製造装置200等と同様の構造であるので平面図以外の図示等を省略する。また、帯状のスクリーン基板301も、スクリーン基板201と同様のものである。
【0056】
スクリーン基板移動装置360は、帯状のスクリーン基板301を送出する送出機構360aと、スクリーン基板301を巻き取る巻取機構360bとを有する。送出機構360aは、スクリーン基板301の巻きつけられている送り軸361aと、送り軸361aに巻きつけられたスクリーン基板301をチャンバ130の内壁面130aへ送り出すための送り出しローラ361bとを有する。また、送出機構360aは、スクリーン基板301を巻き取るための巻取り軸362aと、巻取り軸362aにスクリーン基板301を導くための巻取りロール362bとを有する。なお、各機構360a、360bに取り付けられるモータ等は図示を省略している。
【0057】
製造装置300は、製造装置200と同様の動作をする。つまり、複数のガイド部材270により、スクリーン基板301の初期位置を確定させた後、蒸発源装置120により反射膜RSの形成がなされる。この場合、スクリーン基板301は、内壁面130aに沿って矢印に示す方向に移動可能となる。従って、製造装置300は、一旦真空状態を形成すれば、真空を破ることなくスクリーン基板301を移動させることができるので、スクリーンの製造を連続的に行うことができる。なお、チャンバ130内には、隔壁WLが設けられている。これにより、帯状のスクリーン基板301のうち、成膜される前の部分及び成膜された後の部分に余剰の成膜物質Wが付着することを防止している。
【0058】
〔第5実施形態〕
図16は、第5実施形態に係るスクリーンの製造装置について説明するための側断面図である。本実施形態に係る製造装置400は、第1実施形態の製造装置100等の変形例であり、蒸発源装置120の位置を調整する位置調整装置470をさらに備える。なお、製造装置400は、位置調整装置470をチャンバ130内部に有する構造であることを除いて、製造装置100等と同様の構造であるので側断面図以外の図示等を省略する。
【0059】
位置調整装置470は、蒸発源装置120を搭載するステージ部470aと、図中往復矢印の方向に伸縮して蒸発源装置120を中心軸CX方向について上下動させる昇降駆動部470bとを有する。つまり、位置調整装置470は、昇降駆動部470bにより、ステージ部470a上の蒸発源装置120を中心軸CX方向に移動可能とする。これにより、スクリーン基板1に対する成膜物質Wの射出位置が調整できる、即ちスクリーンの使用態様に対応させるべく投射光の投射角度に応じた多様な反射膜の形成が可能となる。
【0060】
〔第6実施形態〕
図17は、第6実施形態に係るスクリーンの製造装置について説明するための斜視図である。本実施形態に係る製造装置500は、第1実施形態の製造装置100等の変形例であり、チャンバ530の形状を除いて製造装置100等と同様であるので斜視図以外の図示等を省略する。
【0061】
チャンバ530のうち、蒸発源装置120の設置されない上部側は、図5のチャンバ130と同様に、円筒形状部分の側面である内壁面130aを有するものとなっている。一方、蒸発源装置120の設置される下部側は、中心軸CXを軸とする円錐形状CSとなっている。より具体的には、チャンバ530は、スクリーン基板1の下端部UBにおいても、成膜物質Wの射出軌道EVが到達するように、スクリーン基板1の設置位置よりも下方側において円錐形状CSとなっている。以上のように、チャンバ530の一部を円錐形状とすることにより、スクリーンの製造に必要でない空間を取り除くことで、チャンバ530の容積を小さくし、チャンバ内を真空状態に減圧することがより容易となる。
【0062】
また、上記では、チャンバ530のうち、下部側を円錐形状CSとしているが、チャンバ530の上部側においても、スクリーンの製造に必要でない空間を取り除くことが可能であり、スクリーン基板1の上方側に到達する成膜物質Wの射出軌道EVに合わせて、チャンバ530の上部側を円錐形状にしてもよい。
【0063】
以上、各実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、いずれもスクリーンの前面に形成される微細凹凸構造を多数の凹部2a、102aにより構成しているが、これに限らず、例えば図18に示すようなほぼ半球状の凸部202aを多数設けることにより構成してもよい。なお、図2等の多数の凹部2a等に代えて図18の凸部202aを用いる場合、凸部202aの略下側において反射膜RSを形成させる構造となり、この際、残りの上側については、例えば光を吸収させるための吸収面を形成させる、あるいはスクリーン基板1で光を吸収させるように光を透過させるための透過面を形成させる構造とすればよい。
【0064】
また、凹部2a、102aや凸部202aは、略半球状に限らず、例えば楕円球をにした形状等であってもよい。さらに、凹部と凸部とを組み合わせた構造を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1実施形態のスクリーンの全体的な使用状態を説明する図である。
【図2】スクリーンの表面構造の一例を示す正面図である。
【図3】スクリーンの表面構造の一例を示す側方断面図である。
【図4】スクリーンの表面構造の比較例の図である。
【図5】スクリーンの製造装置について説明するための斜視図である。
【図6】(A)、(B)は、スクリーンの製造装置の平面図及び側断面図である。
【図7】(A)、(B)は、スクリーンの上方側及び下方側の側断面図である。
【図8】第2実施形態に係るスクリーンの正面図である。
【図9】スクリーンの一部を拡大した平面図である。
【図10】スクリーンの一部を拡大した斜視図である。
【図11】スクリーンの反射膜の状態を示す図である。
【図12】(A)、(B)は、スクリーンの上方側及び下方側の側断面図である。
【図13】第3実施形態に係るスクリーンの製造装置の平面図である。
【図14】第3実施形態に係るスクリーンの製造装置の斜視図である。
【図15】第4実施形態に係るスクリーンの製造装置の平面図である。
【図16】第5実施形態に係るスクリーンの製造装置の側断面図である。
【図17】第6実施形態に係るスクリーンの製造装置の斜視図である。
【図18】スクリーンの表面構造についての変形例の図である。
【符号の説明】
【0066】
10、110…スクリーン、 1、101、201、301…スクリーン基板、 2a、102a…凹部、 2、102…立体部群、 RS…反射膜、 100、200、300、400、500…製造装置、 120…蒸発源装置、 130…チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に円筒形状の内壁面を含むチャンバ内において、複数の立体部を前面側に有するスクリーン基板を前記内壁面に沿って設置する設置工程と、
前記チャンバ内において前記円筒形状の略中心軸上に配置された材料源から、スクリーンの反射膜となる成膜物質を射出させて前記スクリーン基板上に堆積させる蒸着工程と
を有するスクリーンの製造方法。
【請求項2】
前記設置工程において、前記円筒形状の円周方向を前記スクリーン基板の長手方向とする、請求項1記載のスクリーンの製造方法。
【請求項3】
前記円筒形状の半径と前記材料源の位置とは、前記スクリーン前面に対する投射光の投射距離と投射角度とに対応して調整される、請求項1及び請求項2のいずれか一項記載のスクリーンの製造方法。
【請求項4】
前記設置工程において、前記スクリーン基板を前記内壁面に固定する、請求項1から請求項3までのいずれか一項記載のスクリーンの製造方法。
【請求項5】
前記設置工程において、前記スクリーン基板を前記内壁面に沿って移動可能に設置する、請求項1から請求項4までのいずれか一項記載のスクリーンの製造方法。
【請求項6】
前記成膜物質は、アルミニウム、銀及び誘電体のいずれかである、請求項1から請求項5までのいずれか一項記載のスクリーンの製造方法。
【請求項7】
前記スクリーン上に形成された前記反射膜は、鏡面反射の特性を有する、請求項1から請求項6までのいずれか一項記載のスクリーンの製造方法。
【請求項8】
前記蒸着工程において、前記成膜物質の成膜方法は、真空蒸着法、イオンアシスト法、スパッタ法のいずれかである、請求項1から請求項7までのいずれか一項記載のスクリーンの製造方法。
【請求項9】
前記スクリーン基板は、前記複数の立体部を円弧上に並べることによってそれぞれ形成されるとともに並行して配列される複数の円弧状の列を前面側に有し、前記複数の円弧状の列は、スクリーン前面における投射光の入射方向に対して略直交する方向に延びる、請求項1から請求項8までのいずれか一項記載のスクリーンの製造方法。
【請求項10】
内部空間に円筒形状の内壁面を含み、スクリーン基板を前記内壁面に沿って設置できるチャンバと、
前記チャンバ内において前記円筒形状の略中心軸上に配置され、スクリーンの反射膜となる成膜物質を射出させて前記スクリーン基板上に堆積させる材料源と
を有するスクリーンの製造装置。
【請求項11】
前記スクリーン基板を前記円筒形状の円周方向を長手方向として設置するホルダをさらに備える、請求項10記載のスクリーンの製造装置。
【請求項12】
前記スクリーン基板を前記内壁面に沿って移動可能にするスクリーン基板移動装置をさらに備える、請求項10及び請求項11のいずれか一項記載のスクリーンの製造装置。
【請求項13】
前記円筒形状の半径と前記材料源の位置とは、スクリーン前面に対する投射光の投射距離と投射角度とに対応して調整される、請求項10から請求項12までのいずれか一項記載のスクリーンの製造装置。
【請求項14】
前記材料源の前記中心軸方向についての位置を調整する位置調整装置をさらに備える請求項13記載のスクリーンの製造装置。
【請求項15】
複数の立体部を円弧上に並べることによってそれぞれ形成されるとともに並行して配列される複数の円弧状の列を前面側に有するスクリーン基板と、
前記複数の立体部の表面上にそれぞれ形成される複数の反射膜と
を備え、
前記複数の反射膜の境界は、前記スクリーン基板の基準面に対して平行である、もしくは、投射光の投射距離と投射角度とに対応する位置にある基準線上の各点から、当該基準線に垂直な方向に沿って前記スクリーン基板に投影をすることにより、前記スクリーン基板の表面に形成される影の輪郭に一致している、スクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−20210(P2010−20210A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182386(P2008−182386)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】