説明

スクリーン印刷で形成したシリコーン樹脂層を有する発光装置

【課題】 発光素子が耐熱性、紫外線等の短波長の光に対する耐光性、機械的強度に優れたシリコーン樹脂層により被覆された発光装置を提供すること。
【解決手段】 発光素子と、該発光素子を被覆するようにスクリーン印刷された樹脂層とを有し、 前記樹脂層が、 (イ)下記平均組成式(1): R(OX)SiO(4−a−b)/2 (1)(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基、アルケニル基またはアリール基であり、Xは水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルコキシアルキル基またはアシル基であり、aは1.05〜1.5の数、bは0<b<2を満たす数、但し、a+bは1.05<a+b<2を満たす数である。)で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が5×10以上であるオルガノポリシロキサン、(ロ)縮合触媒、(ハ)溶剤、および(ニ)微粉末無機充填剤を含有する硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物からなる発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶のバックライト、照明光源、各種インジケーター、ディスプレイ及び交通信号灯などに利用可能な発光装置に関し、特に発光素子がシリコーン樹脂で被覆されている発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED等の発光素子を使用する発光装置では、発光素子を蛍光体含有層、レンズなどとして機能する透明な樹脂層で被覆することが行われている。このような被覆層の材料としては従来エポキシ樹脂が使用され、最近耐熱性が高いことからシリコーン樹脂が注目されている。
【0003】
しかし、青色LEDや紫外LEDなどの短波長のLEDが開発されるに至り、樹脂層は素子の発熱に耐えるだけでなくこのような高エネルギーの短波長の光にも耐えるより強靭な材料が求められている。従来提案されてきたシリコーン樹脂はヒドロシリル化反応を利用する付加硬化型のものであったため、硬化物中のシリエチレン結合の割合が多い。シリエチレン結合は光や熱により開裂し易いため、硬化物中の主骨格が劣化するとともに低分子量で流動性のオイル状シリコーンがブリードアウトし易くなる。その結果、硬化物の機械的強度が低下して脆くなり易く、熱変形を起こし易くなる。また、ブリードアウトした低分子量のシリコーン成分は様々の障害を起こす恐れがある。さらに、このような状態になると、発光時に色ムラや色調変化が起こり易くなって発光素子の色調特性が影響を受けることがある。
従来、封止用の樹脂を発光素子に施すには樹脂を発光素子に滴下する方法が用いられてきた。しかし、この方法で形成される樹脂層の膜厚は均一性が低いため発光時に色ムラの原因となっていた。このような滴下法の欠点を解決するためにスクリーン印刷法が使用されるに至った。スクリーン印刷法では、使用される樹脂が印刷時にメタルマスクから剥がれ易いことと、硬化後に発光素子との密着性が高いことが求められるが、これらを十分に満たす樹脂材料は知られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の課題は、発光素子が耐熱性、紫外線等の高エネルギーの光に対する耐光性、機械的強度に優れ、さらにスクリーン印刷法による形成に適したシリコーン樹脂層により被覆された発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決する手段として、
発光素子と、該発光素子を被覆するようにスクリーン印刷された樹脂層とを有し、
前記樹脂層が、
(イ)下記平均組成式(1):
(OX)SiO(4−a−b)/2 (1)
(式中、Rは、独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、アルケニル基またはアリール基であり、Xは、独立に、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルコキシアルキル基またはアシル基であり、aは1.05〜1.5の数であり、bは0<b<2を満たす数であり、但し、a+bは1.05<a+b<2を満たす数である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が5×10以上であるオルガノポリシロキサン、
(ロ)縮合触媒、
(ハ)溶剤、および
(ニ)微粉末無機充填剤
を含有してなる硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物からなる発光装置を提供する。
本発明は、また、発光素子上に上記の硬化性シリコーン樹脂組成物をスクリーン印刷により塗布し、得られた組成物層を硬化させて硬化樹脂層で被覆することを含む発光装置の製造方法をも提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の発光装置において発光素子の被覆に用いられるシリコーン樹脂組成物はその硬化物中にシリエチレン結合を有しないので耐熱性、耐光性に優れ、機械的強度が高く、さらに光学的透明性に優れ複屈折率が小さい。
【0007】
また、該樹脂層はスクリーン印刷により形成されているため膜厚の均一性が高く、発光素子の発光時に色ムラが起こりにくい。さらに、使用される樹脂組成物はスクリーン印刷においてメタルマスク等のマスクから剥がれ易い一方で、硬化後は発光素子との密着性が高く、耐久性が高いという利点を有している。
【0008】
したがって、本発明の発光装置は、長期に渡って光学的特性が安定し高い信頼性を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の発光装置に使用される素子、材料等について説明する。
【0010】
〔硬化性シリコーン樹脂〕
本発明の発光装置において、樹脂層は、蛍光体含有層、レンズ、発光素子保護層等として設けられる。該樹脂層は前記(イ)〜(ニ)成分を含有する硬化性シリコーン樹脂の硬化物により構成される。該組成物の各成分を以下詳しく説明する。なお、以下の説明においては、特記しない限り室温とは24±2℃を意味する。
<(イ)オルガノポリシロキサン>
(イ)成分であるオルガノポリシロキサンは、前記平均組成式(1)で表され、ポリスチレン換算の重量平均分子量が5×10以上のものである。
【0011】
上記平均組成式(1)中、Rで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。これらの中でも、硬化物が耐熱性、耐紫外線性等に優れるので、Rとしては、メチル基が好ましい。
【0012】
Xで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基が挙げられる。アルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基等が挙げられる。アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。これらの中でも、Xとしては、水素原子、メチル基、イソブチル基が好ましい。
【0013】
aは1.15〜1.25の数であることが好ましく、bは0.01≦b<1.4、特に0.01≦b≦1.0、とりわけO.05≦b≦0.3を満たす数であることが好ましい。aが1.05未満である場合には、得られた硬化物にクラックが入り易く、1.5を超える場合には、該硬化物は強靭性がなく脆くなり易かったり、耐熱性、耐紫外線性に劣ったりすることがある。bが0である場合には、基材に対する接着性に劣ることがあり、2以上の場合には、硬化物が得られないことがある。また、a+bは、好ましくは1.06≦a+b≦1.8、より好ましくは1.1≦a+b≦1.7を満たす数である。
【0014】
また、本成分のオルガノポリシロキサンは、硬化物の耐熱性がより優れたものとなるので、該オルガノポリシロキサン中のメチル基等に代表されるRの比率(質量基準)を、通常、32質量%以下、好ましくは15〜32質量%、とりわけ20〜32質量%、特に25〜31質量%とすることが好ましい。かかるRの比率が少なすぎると、被膜形成性や被膜の耐クラック性に劣ることがある。
【0015】
本成分のオルガノポリシロキサンは、下記一般式(2):
SiR(OR4−c (2)
(式中、Rは、独立に、前述のとおりであり、Rは、独立に、前記Xのうち水素原子を除くものと同じであり、cは1〜3の整数である。)
で表されるシラン化合物を、加水分解および縮合させることにより、あるいは該一般式(2)で表されるシラン化合物と下記一般式(3):
Si(OR (3)
(式中、Rは、独立に、前記と同じである。)
で表されるアルキルシリケートおよび/または該アルキルシリケートの縮重合物(アルキルポリシリケート)(以下、「アルキル(ポリ)シリケート」という)とを、共加水分解および縮合させることにより得られる。
【0016】
これらのシラン化合物およびアルキル(ポリ)シリケートは、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0017】
上記一般式(2)で表されるシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等が挙げられ、好ましくはメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランである。これらのシラン化合物は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0018】
上記一般式(3)で表されるアルキルシリケートとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロピルオキシシラン等のテトラアルコキシシランが挙げられ、該アルキルシリケートの重縮合物(アルキルポリシリケート)としては、例えば、メチルポリシリケート、エチルポリシリケートなどが挙げられる。これらのアルキル(ポリ)シリケートは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0019】
これらの中でも、得られる硬化物が耐クラック性および耐熱性により優れたものとなるので、本成分のオルガノポリシロキサンは、メチルトリメトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン50〜95モル%とジメチルジメトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン50〜5モル%とからなるものが好ましく、メチルトリメトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン75〜85モル%とジメチルジメトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン25〜15モル%とからなるものがより好ましい。
【0020】
好ましい実施形態では、本成分のオルガノポリシロキサンは、上記シラン化合物を加水分解および縮合させることにより、あるいは上記シラン化合物とアルキル(ポリ)シリケートを共加水分解および縮合させることにより得ることができ、その方法は特に限定されないが、例えば、以下の条件を適用することができる。
【0021】
上記シラン化合物、アルキル(ポリ)シリケートは、通常、アルコール類、ケトン類、エステル類、セロソルブ類、芳香族化合物類等の有機溶剤に溶解させて使用することが好ましい。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール系が好ましく、得られる組成物の硬化性及び硬化物の強靭性が優れたものとなるので、イソブチルアルコールがより好ましい。
【0022】
さらに、上記シラン化合物、アルキル(ポリ)シリケートは、例えば、酢酸、塩酸、硫酸等の酸触媒を併用して加水分解および縮合を行うことが好ましい。加水分解および縮合させる際に添加される水の量は、上記シラン化合物、あるいは上記シラン化合物アルキル(ポリ)シリケート中のアルコキシ基の合計量1モルに対して、通常、0.9〜1.5モルであり、好ましくは1.0〜1.2モルである。この配合量が0.9〜1.5モルの範囲を満たすと、組成物は作業性に優れ、その硬化物は強靭性に優れたものとなる。
【0023】
本成分のオルガノポリシロキサンのポリスチレン換算の重量平均分子量は、熟成によって分子量をゲル化寸前の分子量にすることが望ましく、取り扱い上の観点からポットライフを考慮して、5×10以上であることが必要であり、好ましくは5×10〜3×10、特に好ましくは1×10〜1×10である。この分子量が5×10未満である場合には、得られる組成物の硬化時にクラックが入りやすくなる。なお、この分子量が大きすぎると、該組成物がゲル化しやすく作業性に劣ることがある。
【0024】
前記熟成を行う温度は、0〜40℃が好ましく、室温がより好ましい。この熟成温度が0〜40℃であると、本成分のオルガノポリシロキサンがラダー状構造を有するものとなるので、得られる硬化物が耐クラック性に優れたものとなる。
【0025】
(イ)成分のオルガノポリシロキサンは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0026】
<(ロ)縮合触媒>
(ロ)成分である縮合触媒は、前記(イ)成分のオルガノポリシロキサンを硬化させるために必要とされる成分である。縮合触媒としては、特に限定されないが、前記オルガノポリシロキサンの安定性や、硬化物の硬度、耐紫外線性等に優れるので、通常、有機金属系触媒が用いられる。この有機金属系触媒としては、例えば、亜鉛、アルミニウム、チタン、錫、コバルト等の原子を含有するものが挙げられ、好ましくは亜鉛、アルミニウム、チタン原子を含有するものである。その具体例としては、有機酸亜鉛、ルイス酸触媒、有機アルミニウム化合物、有機チタニウム化合物等が挙げられ、より具体的には、例えば、オクチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p-tert-ブチル安息香酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、塩化アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムブトキシビスエチルアセトアセテート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、オクチル酸錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸錫等が挙げられ、好ましくはオクチル酸亜鉛である。
【0027】
(ロ)成分の配合量は、(イ)成分100質量部に対して、通常、0.05〜10質量部であり、得られる組成物が硬化性および安定性に優れたものとなるので、好ましくは0.1〜5質量部である。(ロ)成分の縮合触媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0028】
<(ハ)溶剤>
(ハ)成分である溶剤は、特に組成物をスクリーン印刷する際の硬化物の成形性を良好なものとするために必要とされる。この溶剤は、特に限定されないが、沸点が、好ましくは64℃以上、より好ましくは70〜230℃、特に好ましくは80〜200℃である。かかる範囲を満たすと、スクリーン印刷する際に、組成物乃至硬化物に泡によるブツ(ボイド)の発生もなく、さらに表面の白化現象もなくなるので、良好な成形物が得られる。
【0029】
本成分の溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶媒;オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン等の沸点が150℃未満の有機溶媒や、セロソルブアセテート、シクロヘキサノン、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、シクロヘキサノール、ジグライム、トリグライム等の沸点が150℃以上の有機溶媒等が挙げられ、好ましくは、キシレン、イソブチルアルコール、ジグライム、トリグライムである。
【0030】
これらの有機溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよいが、組成物の塗布表面のレベリング性が良好となるので、二種以上を併用することが好ましい。さらに、組成物のスクリーン印刷時に該組成物を良好に硬化させ、作業性に優れた硬化物が得られるので、沸点が150℃以上の有機溶媒を少なくとも一種含有することが特に好ましい。特に、本成分中において、沸点が150℃以上の有機溶媒が5〜30質量%であることが好ましく、7〜20質量%であることがより好ましく、8〜15質量%であることがさらに好ましい。
【0031】
(ハ)成分の配合量は、特に限定されないが、前記(イ)成分100質量部に対して、好ましくは233質量部以下、より好ましくは10〜100質量部、特に好ましくは20〜80質量部である。即ち、(イ)成分と(ハ)成分の合計に対する(イ)成分の含有量が好ましくは30質量%以上、より好ましくは50〜91質量%、特に好ましくは55〜83質量%である。かかる範囲を満たすと、硬化物の成形性がより良好なものとなり、さらに該硬化物の厚さを、乾燥状態で、典型的には10μm〜3mm、より典型的には100μm〜3mmとなるように加工することが容易になる。
【0032】
<(ニ)微粉末無機充填剤>
(ニ)成分である微粉末無機充填剤は、スクリーン印刷時に必要なチキソ性を組成物に付与するものである。さらに、該無機充填剤を配合することにより、硬化物の光の散乱(例えば、低複屈折率)や組成物の流動性が適切な範囲となったり、該組成物を利用した材料が高強度化されたりする等の効果がある。
【0033】
微粉末無機充填剤のBET法による比表面積(BET比表面積)は、特に限定されないが、例えば、組成物をスクリーン印刷に使用する場合には、100m/g以上(通常、100〜400m/g)であることが好ましく、180m/g以上であることがより好ましく、200〜350m/gであることが特に好ましい。かかる範囲を満たすと、成形性の維持に良好なチキソ性が得られるので、本成分の配合量を軽減することができる。
【0034】
微粉末無機充填剤を構成する無機充填剤としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、ベンガラ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等が挙げられ、一般的には、粒径、純度等が適切であるので、シリカが好適に使用される。
【0035】
前記シリカ、即ち微粉末シリカとしては、公知のものでよく、湿式シリカであっても、乾式シリカであってもよい。その具体例としては、例えば、沈降シリカ、シリカキセロゲル、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、結晶性シリカ、あるいはその表面を有機シリル基で疎水化処理したもの等が挙げられる。これらの市販品としては、例えば、商品名で、アエロジル(日本アエロジル(株)製)、ニプシル(日本シリカ(株)製)、キャボシル(米国キャボット社製)、サントセル(米国モンサント社製)等が挙げられる。
【0036】
(ニ)成分の配合量は、特に限定されないが、前記(イ)成分100質量部に対して、好ましくは5〜40質量部、より好ましくは15〜25質量部、特に好ましくは18〜20質量部である。かかる範囲を満たすと、組成物は作業性が良好なものとなるだけでなく、スクリーン印刷に必要なチキソ性を十分に有するものとなる。
【0037】
(ニ)成分の微粉末無機充填剤は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0038】
<その他の成分>
本組成物には、上記(イ)〜(ニ)成分のほかに、本発明の作用・効果を損なわない範囲で、その他の成分を配合することができる。その他の成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0039】
−蛍光体−
蛍光体は必要に応じて本組成物に加えられる代表的な任意成分である。
【0040】
前記蛍光体としては、例えば、LEDに広く利用されている、イットリウム・アルミニウムガーネット系のYAG系蛍光体、ZnS系蛍光体、YS系蛍光体、赤色発光蛍光体、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体等が挙げられる。以下、代表的な蛍光体をさらに詳細に説明する。
【0041】
まず、発光素子から発光された光を励起させて発光できるセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体をべースとした蛍光体が挙げられる。
具体的なイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体としては、YAlO:Ce、YAl12:Ce(YAG:Ce)やYAl:Ce、更にはこれらの混合物などが挙げられる。イットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体にBa、Sr、Mg、Ca、Znの少なくとも一種が含有されていてもよい。また、Siを含有させることによって、結晶成長の反応を抑制し蛍光体の粒子を揃えることができる。
【0042】
本明細書においては、Ceで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体は特に広義に解釈するものとし、イットリウムの一部あるいは全体が、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素で置換され、あるいは、アルミニウムの一部あるいは全体がBa、Tl、Ga、Inの1種以上で置換され、または、イットリウムとアルミニウムの両方がそのように置換され蛍光作用を有する蛍光体を含む広い意味に使用する。
【0043】
更に詳しくは、一般式(YGd1−zAl12:Ce(但し、0<z≦1)で示されるフォトルミネッセンス蛍光体や一般式(Re1−aSmRe‘12:Ce(但し、0≦a<1、0≦b≦1、Reは、Y、Gd、La、Scから選択される少なくとも一種、Re’は、Al、Ga、Inから選択される少なくとも一種である。)で示されるフォトルミネッセンス蛍光体である。
【0044】
この蛍光体は、ガーネット構造(ざくろ石型構造)のため、熱、光及び水分に強く、励起スペクトルのピークを450nm付近にさせることができる。また、発光ピークも、580nm付近にあり700nmまで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。
【0045】
またフォトルミネセンス蛍光体は、結晶中にGd(ガドリニウム)を含有することにより、460nm以上の長波長域の励起発光効率を高くすることができる。Gdの含有量の増加により、発光ピーク波長が長波長に移動し全体の発光波長も長波長側にシフトする。すなわち、赤みの強い発光色が必要な場合、Gdの置換量を多くすることで達成できる。一方、Gdが増加すると共に、青色光によるフォトルミネセンスの発光輝度は低下する傾向にある。さらに、所望に応じてCeに加えTb、Cu、Ag、Au、Fe、Cr、Nd、Dy、Co、Ni、Ti、Euらを含有させることもできる。
【0046】
しかも、ガーネット構造を持ったイットリウム・アルミニウム・ガーネット(ざくろ石型)系蛍光体の組成のうち、Alの一部をGaで置換することで発光波長が短波長側にシフトする。また、組成のYの一部をGdで置換することで、発光波長が長波長側にシフトする。
【0047】
Yの一部をGdで置換する場合、Gdへの置換を1割未満にし、且つCeの含有(置換)を0.03から1.0にすることが好ましい。Gdへの置換が2割未満では緑色成分が大きく赤色成分が少なくなるが、Ceの含有量を増やすことで赤色成分を補え、輝度を低下させることなく所望の色調を得ることができる。このような組成にすると温度特性が良好となり発光ダイオードの信頼性を向上させることができる。また、赤色成分を多く有するように調整されたフォトルミネセンス蛍光体を使用すると、ピンク等の中間色を発光することが可能な発光装置を形成することができる。
【0048】
このようなフォトルミネセンス蛍光体は、Y、Gd、Al、及びCeの原料として酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し、それらを化学量論比で十分に混合して原料を得る。又は、Y、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムとを混合して混合原料を得る。これにフラックスとしてフッ化バリウムやフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して坩堝に詰め、空気中1350℃〜1450℃の温度範囲で2〜5時間焼成して焼成品を得、つぎに焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通すことで得ることができる。
【0049】
このようなフォトルミネセンス蛍光体は、2種類以上のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(ざくろ石型)蛍光体や他の蛍光体を混合させてもよい。
【0050】
また、蛍光体の粒径は1μm〜50μmの範囲が好ましく、より好ましくは3μm〜30μmである。3μmより小さい粒径を有する蛍光体は、比較的凝集体を形成しやすく、液状樹脂中において密になって沈降し易いため、光の透過効率を減少させてしまう。前記の好ましい範囲の粒径では、このような蛍光体による光の隠蔽を抑制でき発光装置の出力を向上させる。また同粒径範囲にある蛍光体は光の吸収率及び変換効率が高く且つ励起波長の幅が広い。このように、光学的に優れた特徴を有する大粒径蛍光体を含有させることにより、発光素子の主波長周辺の光をも良好に変換し発光することができる。
【0051】
ここで、粒径とは、体積基準粒度分布曲線により得られる値である。前記体積基準粒度分布曲線は、レーザ回折・散乱法により粒度分布を測定し得られるもので、具体的には、気温25℃、湿度70%の環境下において、濃度が0.05%であるヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に各物質を分散させ、レーザ回折式粒度分布測定装置(SALD−2000A)により、粒径範囲0.03μm〜700μmにて測定し得られたものである。この体積基準粒度分布曲線において積算値が50%のときの粒径値であり、前記組成物に用いられる蛍光体の中心粒径は3μm〜30μmの範囲であることが好ましい。また、この中心粒径値を有する蛍光体が頻度高く含有されていることが好ましく、頻度値は20%〜50%が好ましい。このように粒径のバラツキが小さい蛍光体を用いることにより製品毎の色度バラツキが低減され良好な色調を有する発光装置が得られる。
【0052】
蛍光体は、樹脂層中に均一に分散されていることが好ましいが、蛍光体を樹脂層中に沈降させてもよい。
【0053】
また、上記YAG蛍光体に限られず、種々の蛍光体を用いることができる。例えば、MSi:Eu(Mは、Ca、Sr、Baなどのアルカリ土類金属である。)やMSi:Eu(Mは、Ca、Sr、Baなどのアルカリ土類金属である。)、LaS:Eu、SrAl:R、M(POX:R(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種以上である。Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれか1以上である。)などを用いることができる。
その他の蛍光体として、ユウロピウムで付活されたアルカリ土類金属珪酸塩を含有することもできる。該アルカリ土類金属珪酸塩は、以下のような一般式で表されるアルカリ土類金属オルト珪酸塩が好ましい。
【0054】
(2−x−y)SrO・x(Ba,Ca)O・(1−a−b−c−d)SiO・aPbAlcBdGeO:yEu2+(式中、0<x<1.6、0.005<y<0.5、0<a、b、c、d<0.5である。)
【0055】
(2−x−y)BaO・x(Sr,Ca)O・(1−a−b−c−d)SiO・aPbA1cBdGeO:yEu2+(式中、0.01<x<1.6、0.05<y<0.5、0<a、b、c、d<0.5である。)
【0056】
ここで、好ましくは、a、b、cおよびdの値のうち、少なくとも一つが0.01より大きい。
【0057】
アルカリ土類金属塩からなる蛍光体として、上述したアルカリ土類金属珪酸塩の他、ユウロピウムおよび/またはマンガンで付活されたアルカリ土類金属アルミン酸塩やY(V,P,Si)O:Eu、または次式で示されるアルカリ土類金属―マグネシウム―二珪酸塩を含有することもできる。
【0058】
Me(3−x−y)MgSi:xEu,yMn(式中、0.005<x<0.5、0.005<y<0.5、Meは、Baおよび/またはSrおよび/またはCaを示す。)
【0059】
上記のアルカリ土類金属珪酸塩からなる蛍光体は次のようにして製造される。目的とする所要組成のアルカリ土類金属珪酸塩に応じて出発物質アルカリ土類金属炭酸塩、二酸化珪素ならびに酸化ユウロピウムの化学量論的量を密に混合し、かつ、蛍光体の製造に常用の固体反応で、還元性雰囲気のもと、温度1100℃および1400℃で所望の蛍光体に変換する。この際、0.2モル未満の塩化アンモニウムまたは他のハロゲン化物を添加することが好ましい。また、必要に応じて珪素の一部をゲルマニウム、ホウ素、アルミニウム、リンで置換することもできるし、ユウロピウムの一部をマンガンで置換することもできる。
【0060】
上述したような蛍光体、即ち、ユウロピウムおよび/またはマンガンで付活されたアルカリ土類金属アルミン酸塩やY(V,P,Si)O:Eu、YS:Eu3+の一つまたはこれらの蛍光体を組み合わせることによって、所望の色温度を有する発光色および高い色再現性を得ることができる。
【0061】
―拡散剤―
前記硬化性シリコーン樹脂に添加してもよい別の任意成分として、拡散剤が挙げられる。拡散剤を含有することにより、光の拡散効果と、増粘性と、応力拡散効果などが得られる。具体的な拡散剤としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等が好適に用いられる。これによって良好な指向特性を有する発光装置が得られる。拡散剤は、中心粒径が1nm以上5μm未満であることが好ましい。中心粒径がおよそ400nm以上の拡散剤は、発光素子及び蛍光体からの光を良好に乱反射させ、大きな粒径の蛍光体を用いることにより生じやすい色ムラを抑制することができる。一方、中心粒径がおよそ400nm未満の拡散剤は、発光素子からの光波長に対する干渉効果が低いことから、透明度が高く、光度を低下させることなく樹脂粘度を高めることができる。これにより、ポッティング等により色変換部材を配置させる場合、シリンジ内において樹脂組成物中の蛍光体をほぼ均一に分散させその状態を維持することが可能となり、比較的取り扱いが困難である粒径の大きい蛍光体を用いた場合でも歩留まり良く生産することが可能となる。このように拡散剤は粒径範囲により作用が異なるので使用方法に合わせて選択若しくは組み合わせて用いることが望ましい。
【0062】
―その他の任意成分―
さらにその他の任意成分としては、例えば、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、カップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤等が挙げられる。
【0063】
―組成物の調製方法―
前記の硬化性シリコーン樹脂組成物は、前記(イ)〜(ニ)成分、および場合により含有されるその他の成分を任意の方法により混合して調製することができる。具体的には、例えば、(イ)成分のオルガノポリシロキサンと(ハ)成分の溶剤と(ニ)成分の微粉末無機充填剤とを三本ロールで混合し、混合物を得る。その後、この混合物と(ロ)成分の縮合触媒およびその他の成分を、例えば、THINKY CONDITIONING MIXER((株)シンキー製)などのミキサーに入れて混合することにより、組成物を調製することができる。組成物調製の各段階で適宜脱泡操作を行うことが望ましい。
【0064】
〔スクリーン印刷方法・硬化方法〕
前記組成物をスクリーン印刷法により発光素子の表面に塗布する方法を説明する。まず、発光素子の表面を所要パターンの開口部を有するマスクで覆い、スキージ部に組成物を投入する。次いで、スキージを移動させて組成物を加圧しながらマスク上を移動させることにより、該マスキング部材の開口部に組成物を充填する(充填工程)。次に、マスクを取り外す。こうして、前記発光素子の表面を組成物で被覆する。
スクリーン印刷の実際に採用される条件、たとえばスキージ速度、印圧、クリアランス(印刷時のマスクと被印刷面とのギャップ)、スキージ角度、押し込み量等の条件にもよるが、一般に、前記組成物の23℃における粘度は1×10Pa・s〜1×105Pa・sが好ましく、より好ましくは50Pa・s〜2000Pa・s(米国ブルックフィールド社製DV−IIデジタル粘度計、回転数0.3rpm使用)であり、チキソー係数は1.0〜15.0が好ましく、より好ましくは、3.0〜9.0である。
【0065】
こうして形成された組成物層を次に硬化させる。硬化は、ステップキュアさせることが好ましく、例えば、60〜100℃で加熱し(例えば、1〜2時間)、次に120〜160℃で加熱し(例えば、1〜2時間)、さらに180〜220℃で加熱して(例えば、6〜12時間)硬化させる。これらの段階を経たステップキュアにより、組成物は十分に硬化され、硬化物は気泡の発生が適切に抑制されたものとなる。得られた硬化樹脂層の厚さを、前述のように、乾燥状態で、典型的には10μm〜3mm、より典型的には100μm〜3mmである。
【0066】
前記組成物を硬化させて得られる硬化物のガラス転移点(Tg)は、通常、市販の測定器(例えば、真空理工(株)製の熱機械試験器(商品名:TM-7000、測定範囲:25〜200℃))では検出されないほど高いので、該硬化物は極めて耐熱性に優れたものである。
【0067】
〔発光素子〕
本発明において発光素子は特に限定されず、赤色系、緑色系に発光する発光素子に限られず、青色系に発光する発光素子も使用することができる。また、これらの可視光に発光する発光素子だけでなく、可視光の短波長領域から紫外線領域で発光する発光素子、例えば360nm近傍の紫外線領域で発光する発光素子も使用することができる。但し、発光装置に、蛍光体を用いる場合、該蛍光体を励起可能な発光波長を発光できる発光層を有する半導体発光素子が好ましい。このような半導体発光素子としてZnSeやGaNなど種々の半導体を挙げることができるが、蛍光体を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(InxAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に挙げられる。また所望に応じて、前記窒化物半導体にボロンやリンを含有させることも可能である。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルヘテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
【0068】
窒化物半導体を使用した場合、半導体用基板にはサファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、およびGaN等の材料が好適に用いられる。結晶性の良い窒化物半導体を量産性よく形成させるためにはサファイア基板を用いることが好ましい。このサファイア基板上にMOCVD法などを用いて窒化物半導体を形成させることができる。サファイア基板上にGaN、AlN、GaAlN等のバッファー層を形成しその上にpn接合を有する窒化物半導体を形成させる。
【0069】
窒化物半導体を使用したpn接合を有する発光素子例として、バッファー層上に、n型窒化ガリウムで形成した第1のコンタクト層、n型窒化アルミニウム・ガリウムで形成させた第1のクラッド層、窒化インジウム・ガリウムで形成した活性層、p型窒化アルミニウム・ガリウムで形成した第2のクラッド層、p型窒化ガリウムで形成した第2のコンタクト層を順に積層させたダブルヘテロ構成などが挙げられる。
【0070】
窒化物半導体は、不純物をドープしない状態でn型導電性を示す。発光効率を向上させるなど所望のn型窒化物半導体を形成させる場合は、n型ドーパントとしてSi、Ge、Se、Te、C等を適宜導入することが好ましい。一方、p型窒化物半導体を形成させる場合は、p型ドーパントであるZn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等をドープさせる。窒化物半導体は、p型ドーパントをドープしただけではp型化しにくいためp型ドーパント導入後に、炉による加熱やプラズマ照射等により低抵抗化させることが好ましい。電極形成後、半導体ウエハーからチップ状にカットさせることで窒化物半導体からなる発光素子を形成させることができる。
【0071】
発光装置において、白色系を発光させるには、蛍光体からの発光波長との補色関係や透光性樹脂の劣化等を考慮して、発光素子の発光波長は400nm以上530nm以下が好ましく、420nm以上490nm以下がより好ましい。発光素子と蛍光体との励起、発光効率をそれぞれより向上させるためには、450nm以上475nm以下がさらに好ましい。
【0072】
以下、本発明の発光装置を図面に示した実施形態に即してより詳しく説明する。この実施形態の発光装置は発光素子であるLEDをサブマウントにフリップチップ実装したものをガラスレンズを兼ねる蓋体で気密封止したタイプであるが、これは一例であって、本発明の発光装置はこの実施形態に限定されない。他のタイプとしては、たとえば、スクリーン印刷した発光素子を更にシリコーン等の樹脂で被覆するタイプ、気密でなくガラスレンズの蓋体で覆うタイプ、ガラスに代えてエポキシ樹脂を使用するタイプ等が挙げられる。いずれのタイプの場合でも、発光素子を前記硬化性シリコーン樹脂組成物で被覆、硬化してなる樹脂層を設けることにより所期の効果を得ることができる。
【0073】
〔実施の形態〕
次に、本発明の発光装置のより具体的な実施形態に即して説明する。
【0074】
図1は、本実施形態に係る発光装置100の支持体の主面(素子が設置される側の面)に垂直な切断面における概略的な断面図である。各構成要素および部材の寸法は説明の便
宜上誇張して描かれており、実際の寸法および相対比を必ずしも表していない。
【0075】
発光装置100は、発光素子101がフリップチップ実装されたサブマウント102と、サブマウント102を支持する支持体103aと、支持体103aの主面側に配される透光性部材であるガラスレンズ104とを有する。ガラスレンズ104は、発光装置100を上方から見たとき、発光素子101を視認する方向に凸であり、発光素子101に対向する内壁面が凹面状となっている半球状レンズである。発光装置100は、ガラスレンズ104の内壁面と支持体103aの主面などで包囲された中空部105を有し、発光素子101は気密封止されている。
図2は、サブマウント102とその上にフリップチップ実装された発光素子101のみを拡大して示した平面図であり、図3はその正面図である。サブマウント102は、厚さ1mmの窒化アルミニウム板からなり、Auを材料とするスパッタリングにより電極106a,106bが形成されている。サブマウントの材料としては他に例えば窒化アルミニウムに金属パターンを施したもの、Cu等の金属材料にアルミナ等の絶縁層をパターニングしたもの等を用いることもできる。発光素子101は、サブマウント102を向く面に正負一対の電極を有し、それらの電極が金バンプを介してサブマウント102上の電極106a,106bに荷重、超音波および熱を加えられて溶着され、電気的および機械的に接続されている。
図4は、このようにして、多数の六角形状のサブマウント102の各々の上に発光素子101を設署した状態を示す平面図である。これに、所要の開口部を有するマスク材を使用して樹脂組成物のスクリーン印刷を施し、発光素子101を樹脂層で被覆する。すなわち、図5はスクリーン印刷の方法を説明するための断面端面図でサブマウント102にフリップチップ実装された発光素子101の上にメタルマスク111が密着させて配置され、スキージ112に投入された樹脂組成物113をスキージ112を矢印112aの方向に移動させることによりメタルマスク111の開口部114に樹脂組成物113を充填する。その後、メタルマスクを取り外す。図6はサブマウント102にフリップチップ実装された発光素子101が樹脂組成物113により被覆された状態を示す断面図である。その後、樹脂組成物層113を所定の条件でステップキュアし硬化樹脂層114を形成する。
この実施形態では、発光素子101とサブマウント102との間に空洞の空間115が形成されている。該空間115も硬化樹脂層114で充填されていてもよい。しかし、空間115が硬化樹脂で充填されていると、該硬化樹脂が熱膨張した時に発光素子101が浮き上がるという不都合が生じることがある。空間115が空洞であるとこのダイス浮きを防止できる利点がある。空洞空間115は、例えば、樹脂組成物113の粘度を調整することによって形成することができる。
こうして樹脂層114で被覆後の各発光素子101をサブマウント102ごと切断し、該サブマウント102を支持体103aの上面に固定する。
支持体103aにはガラスレンズ104を支持する支持体103bと103cとが絶縁材料を介して接合されていて、サブマウント102の電極106aは支持体103a上に形成された電極107に、電極106bは支持体103b上に設けられた電極108に、それぞれ、ワイヤ109a、109bにより電気的に接続されている。
中空部105は窒素ガスが封入されている。中空部に封入されるガスは空気または不活性ガスであるが、金属材料の腐食を防ぐために不活性ガスが好ましく、たとえば窒素、アルゴンあるいはヘリウムなどであってもよい。
【0076】
支持体103a、103b、103cには、厚さ約1.5mmの窒化アルミニウム板が用いられている。該支持体は、窒化アルミニウム以外の絶縁性基板、たとえば炭化ケイ素、BTレジンなどでもよい。
【実施例】
【0077】
−合成例−
以下の合成例で用いたメチルトリメトキシシランは信越化学工業(株)製のKBM13(商品名)であり、ジメチルジメトキシシランは信越化学工業(株)製のKBM22(商品名)である。
【0078】
<合成例1>
1Lの3つ口フラスコに、撹拌装置および冷却管をセットした。このフラスコに、メチルトリメトキシシラン109g(0.8モル)と、ジメチルジメトキシシラン24g(0.2モル)と、イソブチルアルコ−ル106gとを入れ、氷冷しながら撹拌した。系中の温度を0〜20℃に保ちながら、0.05Nの塩酸溶液60.5gを滴下した。滴下終了後、80℃の還流温度で7時間攪拌した。次いで、反応液を室温まで冷却した後、該反応液にキシレン150gを入れて希釈した。その後、該反応液を分液ロートに入れて水300gで洗浄し、水洗液の抽出水伝導度が2.0μS/cm以下になるまで洗浄を継続した。そして、前記洗浄済み反応液を共沸脱水することにより、水を留去し、揮発分を30質量%に調整した後、室温で12時間熟成することにより、下記式(4):
(CH)1.2(OX)0.25SiO1.28 (4)
(式中、Xは、水素原子、メチル基およびイソブチル基の組み合わせである)
で表される重量平均分子量19,000のオルガノポリシロキサン1(79.1g)と混合アルコール33.9gとの混合物を得た。
【0079】
<合成例2>
1Lの3つ口フラスコに、撹拌装置および冷却管をセットした。このフラスコに、メチルトリメトキシシラン68.1g(0.5モル)と、ジメチルジメトキシシラン60.1g(0.5モル)と、イソブチルアルコ−ル118gとを入れ、氷冷しながら撹拌した。系中の温度を0〜20℃に保ちながら、0.05Nの塩酸溶液54gを滴下した。滴下終了後、80℃の還流温度で7時間攪拌した。次いで、反応液を室温まで冷却した後、該反応液にキシレン150gを入れて希釈した。その後、該反応液を分液ロートに入れて水300gで洗浄し、水洗液の抽出水伝導度が2.0μS/cm以下になるまで洗浄を継続した。そして、前記洗浄済み反応液を共沸脱水することにより、水を留去し、揮発分を30質量%に調整した後、室温で12時間熟成することにより、下記式(5):
(CH)1.5(OX)0.22SiO1.14 (5)
(式中、Xは、水素原子、メチル基およびイソブチル基の組み合わせである)
で表される重量平均分子量9,000のオルガノポリシロキサン2(76.3g)と混合アルコール32.7gとの混合物を得た。
【0080】
<合成例3>
1Lの3つ口フラスコに、撹拌装置および冷却管をセットした。このフラスコに、メチルトリメトキシシラン115.8g(0.85モル)と、ジメチルジメトキシシラン18.0g(0.15モル)と、イソブチルアルコ−ル102gとを入れ、氷冷しながら撹拌した。系中の温度を0〜20℃に保ちながら、0.05Nの塩酸溶液78.3gを滴下した。滴下終了後、80℃の還流温度で7時間攪拌した。次いで、反応液を室温まで冷却した後、該反応液にキシレン150gを入れて希釈した。その後、該反応液を分液ロートに入れて水300gで洗浄し、水洗液の抽出水伝導度が2.0μS/cm以下になるまで洗浄を継続した。そして、前記洗浄済み反応液を共沸脱水することにより、水を留去し、揮発分を30質量%に調整した後、室温で長時間(72時間)熟成することにより、下記式(6):
(CH)1.15(OX)0.23SiO1.31 (6)
(式中、Xは、水素原子、メチル基およびイソブチル基の組み合わせである)
で表される重量平均分子量98,000のオルガノポリシロキサン3(68.6g)と混合アルコール29.4gとの混合物を得た。
【0081】
<合成例4>
1Lの3つ口フラスコに、撹拌装置および冷却管をセットした。このフラスコに、メチルトリメトキシシラン27.2g(0.2モル)と、ジメチルジメトキシシラン96.2g(0.8モル)と、イソブチルアルコ−ル106gとを入れ、氷冷しながら撹拌した。系中の温度を0〜20℃に保ちながら、0.05Nの塩酸溶液57.1gを滴下した。滴下終了後、80℃の還流温度で7時間攪拌した。次いで、反応液を室温まで冷却した後、該反応液にキシレン150gを入れて希釈した。その後、該反応液を分液ロートに入れて水300gで洗浄し、水洗液の抽出水伝導度が2.0μS/cm以下になるまで洗浄を継続した。そして、前記洗浄済み反応液を共沸脱水することにより、水を留去し、揮発分を30質量%に調整することにより、下記式(7):
(CH)1.8(OX)0.22SiO0.99 (7)
(式中、Xは、水素原子、メチル基およびイソブチル基の組み合わせである)
で表される重量平均分子量16,000のオルガノポリシロキサンC1(69.3g)と混合アルコール29.7gとの混合物を得た。
【0082】
<合成例5>
1Lの3つ口フラスコに、撹拌装置および冷却管をセットした。このフラスコに、メチルトリメトキシシラン136.2g(1.0モル)と、イソブチルアルコ−ル106gとを入れ、氷冷しながら撹拌した。系中の温度を0〜20℃に保ちながら、0.05Nの塩酸溶液81gを滴下した。滴下終了後、80℃の還流温度で7時間攪拌した。次いで、反応液を室温まで冷却した後、該反応液にキシレン150gを入れて希釈した。その後、該反応液を分液ロートに入れて水300gで洗浄し、水洗液の抽出水伝導度が2.0μS/cm以下になるまで洗浄を継続した。そして、前記洗浄済み反応液を共沸脱水することにより、水を留去し、揮発分を30質量%に調整し、室温で12時間熟成することにより、下記式(8):
(CH)1.0(OX)0.24SiO1.38 (8)
(式中、Xは、水素原子、メチル基およびイソブチル基の組み合わせである)
で表される重量平均分子量23,000のオルガノポリシロキサンC2(73.5g)と混合アルコール31.5gとの混合物を得た。
【0083】
<合成例6>
1Lの3つ口フラスコに、撹拌装置および冷却管をセットした。このフラスコに、メチルトリメトキシシラン109g(0.8モル)と、ジメチルジメトキシシラン24g(0.2モル)と、イソブチルアルコ−ル106gとを入れ、氷冷しながら撹拌した。系中の温度を0〜20℃に保ちながら、0.05Nの塩酸溶液60.5gを滴下した。滴下終了後、室温で24時間攪拌した。次いで、得られた反応液にキシレン150gを入れて希釈した。その後、該反応液を分液ロートに入れて水300gで洗浄し、水洗液の抽出水伝導度が2.0μS/cm以下になるまで洗浄を継続した。そして、前記洗浄済み反応液を共沸脱水することにより、水を留去し、揮発分を30質量%に調整することにより、下記式(9):
(CH)1.2(OX)1.21SiO0.79 (9)
(式中、Xは、水素原子、メチル基およびイソブチル基の組み合わせである)
で表される重量平均分子量3,100のオルガノポリシロキサンC3(67.2g)と混合アルコール28.8gとの混合物を得た。
【0084】
<合成例7>
1Lの3つ口フラスコに、撹拌装置および冷却管をセットした。このフラスコに、メチルトリメトキシシラン40.9g(0.3モル)と、ジフェニルジメトキシシラン170.8g(0.7モル)と、イソブチルアルコ−ル106gとを入れ、氷冷しながら撹拌した。系中の温度を0〜20℃に保ちながら、0.05Nの塩酸溶液55.1gを滴下した。滴下終了後、80℃の還流温度で7時間攪拌した。次いで、反応液を室温まで冷却した後、該反応液にキシレン150gを入れて希釈した。その後、該反応液を分液ロートに入れて水300gで洗浄し、水洗液の抽出水伝導度が2.0μS/cm以下になるまで洗浄を継続した。そして、前記洗浄済み反応液を共沸脱水することにより、水を留去し、揮発分を30質量%に調整することにより、下記式(10):
(CH)0.3(C)1.4(OX)0.16SiO1.07 (10)
(式中、Xは、水素原子、メチル基およびイソブチル基の組み合わせである)
で表される重量平均分子量15,400のオルガノポリシロキサンC4(71.4g)と混合アルコール30.6gとの混合物を得た。
【0085】
−実施例−
<実施例1〜11、比較例1〜8>
合成例1〜7で得られたオルガノポリシロキサン1〜3、C1〜C4、縮合触媒、溶剤(上記混合アルコールを含む)および微粉末無機充填剤を表1に示した割合で配合し、組成物を調製した。この組成物のスクリーン印刷性、および該組成物を硬化させて得られる硬化物(硬化被膜)の特性(耐クラック性、接着性、耐紫外線性、耐熱性)を下記の評価方法に従って、試験・評価した。
【0086】
<評価方法>
―1.スクリーン印刷性―
得られた組成物をステンレスのモールド用テストパターン(10mm×10mm×0.2mm、5mm×5mm×0.2mm、2mm×2mm×0.2mm)にスキージして、塗布した後、80℃で1時間、次いで150℃で1時間、さらに200℃で1時間のステップキュアを行うことにより、乾燥状態での厚さが0.15mmの硬化膜(ほぼ正方形の形状)を作製した。この硬化膜の外観を目視で観察した。前記正方形の硬化膜の角の部分に異常がない(丸みがない)場合をスクリーン印刷性が良好であると評価してAで示し、前記正方形の硬化膜の角の部分にやや丸みがある場合をスクリーン印刷性がやや良好であると評価してBで示し、前記正方形の硬化膜の角の部分が著しく丸くなっている場合をスクリーン印刷性が不良であると評価してCで示す。
【0087】
―2.耐クラック性―
得られた組成物をテフロン(登録商標)でコートした金型(50mm×50mm×2mm)に入れ、80℃で1時間、次いで150℃で1時間、さらに200℃で1時間のステップキュアを行い、その後、200℃で8時間のポストキュアを行うことにより、乾燥状態での厚さが1mmの硬化膜を作製した。この硬化膜のクラックの有無を目視で観察した。前記硬化膜にクラックが認められない場合を耐クラック性が良好であると評価してAと示し、クラックが認められる場合を耐クラック性が不良であると評価してBと示す。また、前記硬化膜が作製できなかった場合には、測定不可としてCと示す。
【0088】
―3.接着性―
得られた組成物をガラス基板に浸漬法で塗布し、80℃で1時間、次いで150℃で1時間、さらに200℃で1時間のステップキュアを行い、その後、200℃で8時間のポストキュアを行うことにより、ガラス基板上に、乾燥状態での厚さが2〜3μmの硬化膜を形成させた。ゴバン目テストにより、該硬化膜の該ガラス基板に対する接着性を調べた。ゴバン目テストは、ガラス基板上に形成された前記硬化膜に鋭利な刃で該基板に達するように、一定のゴバン目(1mm×1mm)に切断し、その表面に粘着テープを貼り、強く押し付けた後、迅速にテープの端を垂直に引き離して行った。全てのゴバン目(100個)中、剥離しなかったゴバン目の個数を表中に示す。また、該硬化膜にクラックが発生したために接着性の測定ができなかった場合には、表中に×と示す。
【0089】
―4.耐紫外線性―
得られた組成物をテフロン(登録商標)でコートした金型(40mm×20mm×0.4mm)に入れ、80℃で1時間、次いで150℃で1時間、さらに200℃で1時間のステップキュアを行い、その後、200℃で8時間のポストキュアを行うことにより、乾燥状態での厚さが0.2mmの硬化膜を作成した。その硬化膜に対して、UV照射装置(商品名:アイ紫外線硬化装置、アイグラフィックス(株)製)によりUV照射(出力:30mW)を24時間行った。UV照射後の硬化膜の表面を目視により観察した。前記硬化膜の表面に全く劣化が認められない場合を耐紫外線性が良好であると評価してAと示し、やや劣化が認められる場合を耐紫外線性がやや不良であると評価してBと示し、著しい劣化が認められる場合を耐紫外線性が不良であると評価してCと示した。また、前記硬化膜が作製できなかった場合には、測定不可として×と示す。
【0090】
―5.耐熱性―
得られた組成物をテフロン(登録商標)でコートした金型(50mm×50mm×2mm)に入れ、80℃で1時間、次いで150℃で1時間、さらに200℃で1時間のステップキュアを行い、その後、200℃で8時間のポストキュアを行うことにより、乾燥状態での厚さが1mmの硬化膜を作製した。この硬化膜を250℃のオーブンに入れ、500時間経過後の残存質量を測定した。この測定値を用いて、式:
残存質量減少率=(500時間経過後の硬化膜の質量)/(作製直後の硬化膜の質量)×100
により、残存質量減少率(%)を求め、耐熱性の指標とした。また、前記硬化膜が作製できなかった場合には、測定不可として×と示す。なお、表中には、耐熱性(%)として示す。
【0091】
<結果>
上記実施例および比較例で得られた結果を下記の表1〜3に示す。
表中、(ニ)成分として用いたアエロジル300は、BET比表面積が300m2/gのヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製)であり、キャボシルMS-7は、BET比表面積が200m2/gのヒュームドシリカ(米国キャボット社製)である。また、オルガノポリシロキサンC5は、合成例1で得られたオルガノポリシロキサン1と混合アルコールの混合物をストリップし、溶剤を除去して得られた不揮発分がほぼ100%の重合体である。また、メチル基含有量は、オルガノポリシロキサン中のメチル基の理論量を表す。なお、各成分の配合量の単位は質量部である。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
−実施例12〜15−
以下の各実施例では、図1に示す型の発光装置を製造した。発光素子101として次のようなLEDチップを使用した。
(1)LEDチップの製造
使用したLEDチップは、透光性基板であるサファイア基板上に、アンドープの窒化物半導体であるGaN層、Siドープのn型電極が形成されたn型コンタクト層となるn型GaN層、アンドープの窒化物半導体であるGaN層を積層させ、さらに、バリア層となるGaN層、井戸層となるInGaN層を1セットとして5セット積層し、最後にバリア層となるGaN層を積層させて活性層とした。該活性層は多重量子井戸構造である。該活性層は、洗浄したサファイア基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジウム)ガス、窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化物半導体を成膜させることにより形成した。ドーパントガスとしてSiHとCpMgを切り替えることによってn型窒化物半導体やp型窒化物半導体となる層を形成させた。さらに、活性層上にMgがドープされたp型クラッド層としてAlGaN層、Mgがドープされたp型コンタクト層であるp型GaN層を順次積層させた構成を有する。なお、サファイア基板上には低温でGaN層を形成させバッファ層とさせてある。
また、p型半導体は、成膜後400℃以上でアニールさせてある。こうして作成されたLEDチップは、上記活性層として単色性発光ピークが可視光である455nmにあるIn0.2Ga0.8N半導体を有する窒化物半導体素子である。
エッチングによりサファイア基板上の窒化物半導体に同一面側で、p型コンタクト層およびn型コンタクト層の各表面を露出させる。次に、p型コンタクト層上にITO(インジウムと錫の複合酸化物)を材料とするスパッタリングを行い、p型コンタクト層のほぼ全面にストライプ状の拡散電極が設ける。このような電極とすることにより、拡散電極を流れる電流がp型コンタクト層の広範囲に広がるようにし、およびLEDチップの発光効率を向上させることができる。
【0096】
さらに、p側拡散電極およびn型コンタクト層の一部に対し、Rh/Pt/AuおよびW/Pt/Auを材料とするスパッタリングをそれぞれ順に行って、金属層として積層させ、p側台座電極とn側台座電極とする。最後に、半導体を積層し上記電極が形成されたウエハをダイシングによりチップ化し、□=1mm×1mmのLEDチップとする。本実施例において、ストライプ状に露出されたn型半導体に形成されたn型台座電極は、LEDチップの対向する二辺の上で絶縁性の保護膜(SiO)から露出される。また、エッチングにより露出されたn型半導体は、LEDチップの上面方向からみて、n型台座電極が露出される隅部の位置からLEDチップの中央方向に向かって細くなった括れ部分を有する。また、互いに対向する一対の括れ部分を結ぶように延伸部を有する。さらに、その延伸部を挟むような位置に、p側の半導体層、拡散電極が配置され、あるいはP側台座電極が保護膜から露出されている。
【0097】
(2)サブマウントへの実装
図1、図2および図3に示すように、LEDチップ101は、そのp側およびn側台座電極がAuバンプを介してサブマウント102の導体電極106aおよび106bのそれぞれと対向するように配置され、荷重、超音波および熱をかけることにより、バンプを電極106aおよび106bに溶着させ、サブマウント102に接合される。
【0098】
(3)蛍光体の調製
Y、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させ、これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムとを混合して混合原料を得る。さらにフラックスとしてフッ化バリウムを混合した後堆塙に詰め、空気中1400℃の温度で3時間焼成することにより焼成品が得られる。焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して中心粒径が8μmである(Y0.995Gd0.0052.750Al12:Ce0.250蛍光物質(いわゆるYAG系蛍光体)を形成する。
【0099】
(4)スクリーン印刷用ベース組成物
スクリーン印刷用のベース組成物として、次の組成物AおよびBを用意した。
〈組成物A>
前記実施例1に係る組成物と、(ロ)成分のオクチル酸亜鉛(縮合触媒)が未添加である以外は同一である組成物。
〈組成物B>
組成物Aにさらにアルコキシシラン系カップリング剤を添加した組成物。
【0100】
<実施例12>
上記のサブマウントに実装したLEDを用いて次の手順で白色の発光装置を作製した。
【0101】
べ一ス組成物A5gと前記のYAG蛍光体5gとを所定の容器に秤量し3分間撹搾混合をした後1分間脱泡させた。次いで、得られた混合物に触媒としてオクチル酸亜鉛0.5gを投入し、更に3分間攪拌混合を行った後、1分間脱泡させた。こうして、蛍光体含有シリコーン樹脂ペーストが得られた。該ペーストは、粘度(23℃)70Pa・sであった。
【0102】
図4に示すように多数のサブマウントにフリップチップ実装したLEDに市販の印刷機を用いて前記のペーストをスクリーン印刷により塗布した。すなわち、LED上に所定の開口部パターンを有するメタルマスクを密着させ、図5に即して前述した方法で前記ペーストを塗布し、図6に示すようにLEDを被覆するように成形した。次に、成形物を80℃で1時間加熱して低温硬化させ、次いで150℃で1時間加熱硬化を行い、更に200℃で8時間加熱硬化させた。こうして、厚さ60μmの蛍光体含有シリコーン樹脂層114が発光素子101の周囲に形成され、白色発光素子が作製された。
その後、各LEDをサブマウント102ごと切り離し、サブマウント102を支持体103aに固定した。さらにサブマウント102の電極106aと106bとをそれぞれ支持体103aに設けられた電極107および支持体103bに設けられた電極108とワイヤを介して電気的に接続した。
一方、ガラスレンズ104が支持体103b,103cとが接触する、ガラスレンズ104の縁にエポキシ樹脂(信越化学製)を印刷塗布し、100℃、1時間の加熱処理でBステージ化した。
次に、このガラスレンズ104を上記の白色発光素子(樹脂層被覆発光素子)が実装されたパッケージに被せた後、150℃で10分間加熱硬化させて気密封止した。こうして、白色発光装置が得られた。
【0103】
<実施例13>
べ一ス組成物Aの代わりにべ一ス組成物Bを使用した以外は実施例12と同様にして白色発光装置を作製した。
<実施例14>
YAG蛍光体を添加しなかった以外は実施例12と同様にして発光装置を製造した。
【0104】
<実施例15>
YAG蛍光体を添加しなかった以外は実施例13と同様にして発光装置を製造した。
【0105】
―特性の評価―
実施例12および13で製造した白色発光装置を下記の3種の駆動条件下で点灯し続け、1000時間後の初期値に対する出力維持率および色調維持率を測定し、下記の判定基準により評価した。結果を表4に示す。高い信頼性が示された。
・駆動条件:
(1)温度85℃、湿度85%の恒温槽中で700mAの電流を通電させる。
(2)温度60℃、湿度90%の恒温槽中で700mAの電流を通電させる。
(3)温度25℃、湿度約50%の室内で700mAの電流を通電させる。
・判定基準:
・・出力維持率:初期値の70%以上を「良好」と評価。
・・色調維持率:ΔxおよびΔyがともに、初期値の±0.005以内を「良好」と評価。
【0106】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の発光装置の一実施形態を示す縦断面の端面図である。
【図2】サブマウントにフリップチップ実装した発光素子を示す平面図である。
【図3】図2に示す発光素子の正面図である。
【図4】多数のサブマウントの各々に形成された多数の発光素子を示す平面図。
【図5】サブマウント上の発光素子をスクリーン印刷で被覆する工程を説明する縦断面の端面図である。
【図6】サブマウント上の発光素子が樹脂層で被覆された状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0108】
100 発光装置
101 発光素子
102 サブマウント
104 ガラスレンズ
111 メタルマスク
112 スキージ
113 硬化性シリコーン樹脂組成物
114 樹脂層
115 空洞の空間



【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、該発光素子を被覆するようにスクリーン印刷された樹脂層とを有し、
前記樹脂層が、
(イ)下記平均組成式(1):
(OX)SiO(4−a−b)/2 (1)
(式中、Rは、独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、アルケニル基またはアリール基であり、Xは、独立に、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルコキシアルキル基またはアシル基であり、aは1.05〜1.5の数であり、bは0<b<2を満たす数であり、但し、a+bは1.05<a+b<2を満たす数である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量が5×10以上であるオルガノポリシロキサン、
(ロ)縮合触媒、
(ハ)溶剤、および
(ニ)微粉末無機充填剤
を含有する硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物からなる発光装置。
【請求項2】
前記Rがメチル基である請求項1に係る発光装置。
【請求項3】
前記(イ)オルガノポリシロキサン中の前記Rの比率が32質量%以下である請求項1または2に係る発光装置。
【請求項4】
前記(ロ)縮合触媒が有機金属系触媒である請求項1〜3のいずれか1項に係る発光装置。
【請求項5】
前記の樹脂層が厚さ10μm〜3mmで、無色透明である請求項1〜4のいずれか1項に係る発光装置。
【請求項6】
前記発光素子がサブマウント基板上にフリップチップ実装されており、該発光素子とサブマウント基板とがスクリーン印刷された樹脂層で被覆されている請求項1に係る発光装置。
【請求項7】
該サブマウント基板と前記スクリーン印刷された樹脂層との間に空洞の空間が形成されている請求項6に係る発光装置。
【請求項8】
発光素子上に請求項1に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物をスクリーン印刷により塗布し、得られた組成物層を硬化させて硬化樹脂層で被覆することを含む発光装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−313886(P2006−313886A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96461(P2006−96461)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】