説明

スクリーン印刷方法及び印刷装置

【課題】 機構部をより簡単化し、かつ最適な印刷ができるようにしたドラムスクリーン印刷方法及び装置。
【解決手段】 スクリーンとして、スクリーンホルダー22に対し円筒状に保持した印刷用開口パターン付きのドラムスクリーン23を用いたドラムユニット20と、ドラムユニット20を印刷面上に沿って転動させる水平駆動手段40と、ドラムユニット20の内側に配置されて、収容したペースト状材を吐出口から排出可能なペースト抽出ユニット25とを少なくとも備えている。ドラムユニット20を印刷面の一端側から他端側に向かって転動し、かつ、ドラムスクリーン23の内周に排出されたベースト状材5をドラムスクリーン23を介し印刷面上に印刷する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プリント配線基板等の被印刷物上にソルダーペースト等のペースト状材をスクリーンを介し塗布して印刷するスクリーン印刷方法及び印刷装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図12乃至図17は従来のスクリーン印刷装置例を示す動作状態図で、同図を用いて従来のスクリーン印刷装置を印刷手順を説明しつつ明らかにする。先ず、回路基板101は不図示の駆動手段、例えばモータ等にて駆動されるベルト102に載せられて搬送され、図12の如く印刷装置の所定の位置で停止される。そして、図13に示す如く、モータ103が回転駆動されると、カップリング104及びボールネジ105を通じてカム106が同図中の矢印L方向に移動させる。すると、カム106に当接しているカムフォロワー107がカム106の移動に連動して上昇されると共に、バックアップピン108を配したバックアッププレート109も上昇される。これにより、回路基板101はバックアップピン108により支持されて、エッジクランプ110の上面と略同一平面まで上昇される。この高さは、モータ103へのパルス制御にて予め決められた位置で停止するようプログラミングされている。
【0003】その後、ベルト102の左右両側に配設されているクランプエアシリンダ111を各々作動させて、各エッジクランプ110を突出すことにより回路基板101を両端から押さえて固定する。次いで、バックアップアクチュエータ112が作動し、第2ベース113より上部全体を、回路基板101の上面がスクリーン114の下面に接触する高さまで上昇させる。
【0004】続いて、図14に示す如くスキージユニット130が動作される。スキージユニット130は対のスキージ体131a,131bで構成され、何れもが上下エアシリンダ115a,115bと、スキージホルダ116a,116bと、スキージ117a,117bとを有している。そして、各スキージ体131a,131bは、駆動モータ118とカップリング119及びボールネジ120により左右方向に一体に移動される。また、上下エアシリンダ115a,115bを別々に駆動させることにより、スキージ117a,117bを独立して上下方向に移動させることができる。ここでは、先ず、図14の如く上下エアシリンダ115aにより、スキージホルダ116aに支持したスキージ117aをスクリーン114の略上面まで下降する。
【0005】続いて、駆動モータ118が回転駆動されて、カップリング119及びボールネジ120を通じて、スキージユニット130の全体を図15中の左端から右端に向かって移動させる。このとき、スクリーン114上のソルダーペースト121をスキージ117aが掻いて、スクリーン114に印刷用パターンとして設けられている図示せぬ印刷用開口にソルダーペースト121を充填し印刷する。印刷が終了すると、図16に示す如くバックアップアクチュエータ112が作動し、第2ベース113より上部全体を元の高さに下降させることで、回路基板101をスクリーン114から剥離させる。
【0006】その後、図16に示す如く上下エアシリンダ115aにより、スキージ117aが上昇されると共に、クランプエアシリンダ111によりエッジクランプ110による回路基板101のクランプが解除される。同時に、モータ103が回転してカム106を同図の矢印R方向に移動させる。また、カム106の移動に連動してバックアッププレート109が下降され、回路基板101がベルト102上に再び配置される。続いて、ベルト102が駆動されて、印刷を終えた回路基板101が搬出されると共に、次に印刷処理される回路基板101が新たに搬送されてきて、繰り返し印刷が行われる。また、この場合の一連の動作は、スキージ117aとスキージ117bとの上下が交互に繰り返され、また、スキージ体131a,131bがそれぞれ反対の方向に交互に移動することで行われ、回路基板101への印刷が順次なされるものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述した従来のスクリーン印刷方式では次のような問題があった。
■、被印刷物である回路基板101は、バックアッププレート109により上下動し、その際にエッジクランプ110によって規制されるため位置決めがし難く、回路基板101の位置決め精度を高めることが困難であった。また、そのために複雑な機構が必要となってしまい、高価なものとなっていた。しかも、回路基板101を搬送するベルトコンベア等の機構が必要であり、ベルト102の経年劣化による交換や、外れ等を起きやすくトラブルの原因となっていた。■、スクリーン114は、支持枠又は保持枠に対し平面性を維持して保持しなくてはならず、この平面性が印刷精度に直ちに影響するため保持構造的に複雑化したり、取扱性に問題があった。しかも、印刷精度は、印刷後に回路基板101をスクリーン114から離間させる速度やタイミング等により形成される印刷形態等が左右され、そのため制御管理的にも複雑になる。■、近年、高密度化、接合部の微細化によりソルダーペーストの印刷パターンも微細なものとなってきたが、スキージ117a,117bを使用して往復印刷する方法では、各スキージ方向により印刷塗布の位置ずれが発生し易い。このため、従来はサーボモータ等でその補正をプログラミングすることで行ってきたものの、補正演算を行う装置や実際に補正を行う装置等が必要となり、複雑で、高価なものとなっている。
【0008】そこで、本発明者らは、以上のような背景から、従来問題を解消するため先に新たな印刷装置を完成した(特願平10−81088号等)。本発明は、その開発品について機構部の簡素化及び印刷状態の安定化等を更に改良したものである。すなわち、本発明の目的は、スクリーンを円筒状のドラムスクリーンにした場合にも、機構部をより簡単化し、かつ最適な印刷ができるようにしたスクリーン印刷方法及び装置を提供することにある。更に他の目的は、以下に説明する内容の中で順次明らかにして行く。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明は次の技術手段を講じたことを特徴とする。すなわち、本発明方法は、位置決め配置された被印刷物の印刷面上にペースト状材をスクリーンを介し塗布して印刷するスクリーン印刷方法において、前記スクリーンとして、スクリーンホルダーに対し円筒状に保持した印刷用開口パターン付きのドラムスクリーンを用いたドラムユニットと、前記ドラムユニットを前記印刷面上に沿って転動させる水平駆動手段と、前記ドラムユニットの内側に配置されて、収容したペースト状材を吐出口から排出可能なペースト抽出ユニットとを少なくとも備え、前記ドラムスクリーンを前記印刷面上の一端側に接触した状態で、前記ペースト抽出ユニットから前記ペースト状材を前記ドラムスクリーンの内周に線状に排出した後、前記ドラムユニットを前記印刷面の一端側から他端側に向かって転動し、かつ、前記ドラムスクリーンの内周に排出されたベースト状材を前記ドラムスクリーンを介し前記印刷面上に印刷するようにしたものである。
【0010】また、本発明装置は、位置決め配置された被印刷物の印刷面上にペースト状材をスクリーンを介し塗布して印刷するスクリーン印刷装置において、前記スクリーンとして、スクリーンホルダーに対し円筒状に保持した印刷用開口パターン付きのドラムスクリーンを用いたドラムユニットと、水平に配置されて、前記ドラムユニットの中心を貫通した状態でドラムユニットを回転自在に支持しているシャフトと、前記シャフトを摺動自在に保持した状態で、前記ドラムユニットを前記印刷面上に沿って、シャフト回りに回転しつつ移動させる水平駆動手段と、前記シャフトに着脱可能に取り付けられて、前記ペースト状材を収容し、該ペースト状材を供給される圧縮気体により先端の吐出口から前記ドラムスクリーンの内周に線状に排出するペースト抽出ユニットとを備え、前記ペースト抽出ユニットからペースト状材を排出した状態から、前記ドラムユニットを前記印刷面の一端側から他端側に向かって転動させつつ印刷可能にしたものである。
【0011】以上の本発明によれば、円筒状に保持されたドラムスクリーンないしはドラムユニットを用いて、印刷面上を一端側から他端側に回転させながら移動し、この過程において、ドラムスクリーンの内側からペースト抽出ユニットより抽出させたペースト状材をドラムスクリーンを介し被印刷物の印刷面上に印刷する。このため、この印刷構造では、装置構成がコンパクト(小型)になり、しかも従来の如く水平に固定されたスクリーン上に対しその一端から他端にスキージを移動することによる不具合がなく、またドラムスクリーンに対するペースト抽出ユニット(の吐出口又はプレート)の相対的な位置が固定されていることから、従来スキージの方向別による印刷位置のずれがなく、しかも印刷後に被印刷物をスクリーンから離間する速度管理やタンミング等に煩わされることもなくなり、常に安定した良好な印刷が実現される。これらは、先の特願平10−81088号記載のものとほぼ同じである。この構造では、これに加え、収容されたペースト状材をドラムスクリーンの内周に線状に排出するペースト抽出ユニットを有していることから、ドラムユニット内へのペースト状材の供給が容易となり、ペースト状材の不用意なにじみだしが抑止され、ペースト状材の補充作業が簡単に行える。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態は好適な具体例であり、本発明の範囲を制約するものではない。
【0013】図1乃至図6は本発明の実施形態として示すスクリーン印刷装置を示し、図7乃至図11はその印刷装置の印刷手順例を模式的に示している。このうち、図1は印刷装置の概略外観図、図2は印刷装置の概略側面図、図3は装置要部を構成しているペースト抽出ユニットの周辺構成を示す概略分解図である。図4はペースト抽出ユニットの概略分解構成図、図5(a),(b)はペースト抽出ユニットの側面及び図3のA−A線断面図、図6(a),(b)は前記ドラムユニットの外観と回転規制手段の作動を示す模式外観図である。また、図7R>7乃至図11では、理解し易くするためドラムユニットの側面部分等を省略して示している。したがって、図面はあくまでも参考用として使用し、細部は以下の記載を優先するものとする。
【0014】(装置構造)この形態のスクリーン印刷装置1は、図1,図2,図7の如く被印刷物である回路基板2をキャリア3を介して移動配置するベース側機構部4と、ソルダーペースト等のペースト状材5(図5参照)を印刷するスキージ側機構部6とに大別される。そして、両機構部4,6は、ベース7上にあって、機構部4が前方下側に設置され、機構部6がベース支柱8及び上ベース9を介し機構部4の後方上側に設置されて一体の装置を構成している。なお、図1にはスキージ側機構部6が専ら表れている。
【0015】(ベース側機構部)この機構部4は、先の特願平10−81088号記載のものと原理的に同じくしているので、細部説明を省略する。要は、位置調整用ユニット10と、図7の如くキャリア3を前後移動すると共に前後方向の位置決めを行う搬送手段11及び不図示の左右方向の位置決め手段等を備えている。このうち、搬送手段11は、調整ステージ16上において、キャリア3を前後移動し、かつ前後の位置決めを行うものであり、エアシリンダ12及びストッパ部材13等で構成されている。調整用ユニット10は、ベース7上に設置されたY方向の調整ステージ14と、ステージ14上に保持されたX方向の調整ステージ15と、Xステージ15上に保持されたθ方向の調整ステージ16とからなる。そして、調整ステージ16上に投入されたキャリア3上の回路基板2は、エアシリンダ12及びストッパ部材13及び左右の位置決め手段により位置固定された状態から、X,Y,θ方向の位置が調整される。なお、調整ステージ14,15,16の駆動はサーボモータ等にて実現されている。キャリア3は、上面が回路基板2に対応する凹部3aに設けられ、凹部3aに対し被印刷物である回路基板2が印刷面を上向きにした状態で位置決め保持された後、自動移送等にて調整ステージ16上に投入される。
【0016】(スキージ側機構部)この機構部6は、印刷主要部となるドラムユニット20と、ドラムユニット20内に配置されるペースト抽出ユニット25と、ペースト抽出ユニット25に接続される圧縮気体供給手段30と、ドラムユニット20を保持するシャフト32等の支持ユニット35と、ドラムユニット20を支持ユニット35にガイドしつつ前後方向に移動する水平駆動手段40と、ドラムユニット20の回転を正常に維持する回転規制手段45等を備えている。
【0017】このうち、ドラムユニット20は、上ベース9上に移動可能に配置される左右の円盤21と、図3等の如く両円盤21の間にあって、円盤21に連結した状態に配置されているスクリーンホルダ22と、スクリーンホルダ22に保持されているドラムスクリーン23からなる。
【0018】スクリーンホルダ22は、両側の半円部分22aの間が2本の連結部22bにより結合一体化され、中間部が連結部22bを除いて大きく欠如した形状となっている。ドラムスクリーン23は、両半円部分22a及び連結部22bの外面側にあって、一段低く形成された位置決め部に保持されている。すなわち、このドラムスクリーン23は、金属製等の薄板材であり、回路基板2の印刷面上にペースト状材5を決められたパターンで印刷するための印刷用開口パターン(不図示)が形成されている。そして、前記薄板材は、両半円部分22a及び連結部22bの外面側の位置決め部に対し巻き付けるように配置され、不図示の止め手段により着脱可能に固定されている。したがって、ドラムスクリーン23は、スクリーンホルダ22に対し円筒状に形状保持されている。また、スクリーンホルダ22は、ドラムスクリーン23を保持していない側を大きく開口22Aしている。この開口22Aはドラムユニット20の転動範囲で、下側に位置せず常に開口を上向き位置している。また、スクリーンホルダ22には、両側の各半円部分22aに対し円盤21が一体的に結合される。
【0019】各円盤21は、径大部21aの内側に径小部21bを一体化しており、中心に設けられてシャフト32を貫通する孔21cを有している。径大部21aには、シャフト32を枢支する軸受け24が内設されている。径小部21bは、スクリーンホルダ22の半円部分22a内に係合され、その半円部分22aの内側に圧入又は適宜な止め構造により固定される。そして、円盤21とスクリーンホルダ22とは、シャフト32に対し回転自在に枢支されている。
【0020】ペースト抽出ユニット25は、図4の如くペースト状材5を収容する押圧板26aを組として有したケース本体26と、ケース本体26をシャフト32に着脱可能に装着する取付ブラケット27A,27Bと、圧縮気体をケース本体26内に導入する導入口28a及び導入経路28b,28cと、ケース本体26の吐出口26bを形成しスキージを兼ねる板部材29とを有している。
【0021】ケース本体26は、図5の如く下側断面が略V形になっており、そのV形の両側面を板部材29により形成した容器であり、両板部材29の先端間に隙間を持たせることにより吐出口26bを形成している。したがって、この吐出口26bは、ドラムユニット20に配置された場合、ドラムスクリーン23の幅方向に延びた線状の隙間(この寸法は約0.5mmであるが、ペースト状材5の物性に応じて設定される)になっている。このケース本体26は押圧板26aを組として有している。そして、収容されたペースト状材5は、その上に押圧板26aが載せられ、押圧板26aが下向きの外力を受けると、その外力に応じたペースト状材5の定量を吐出口26bから排出される。また、取付ブラケット27A,27Bは、ケース本体26をシャフト32に着脱する取付部27となるもので、圧縮気体をケース本体26内に導入する導入口28a及び導入経路28b,28cを形成している。すなわち、両取付ブラケット27A,27Bは矩形板からなり、対向内面にそれぞれ設けられた位置決め溝27b,27bと、取付ブラケット27Aの前側肉厚内に設けられた導入口28aと、取付ブラケット27Aの肉厚内から下向きに貫通した導入経路28bと、取付ブラケット27Bに上下貫通した状態に設けられて、導入経路28bと連通される導入経路28cを有している。
【0022】そして、以上のケース本体26は図4の如く、各位置決め溝27b,27bの間にシャフト32を配置した状態から、複数の取付ねじSを各取付穴28d,28e,28fに螺入し締め付けることにより、シャフト32に対し取付ブラケット27A,27Bと共に固定される。この取付状態では、図5(b)の如く取付ブラケット27Bとケース本体26とが密封されて、圧縮気体が導入口28a及び導入経路28b,28cからケース本体26の上部内に供給されると、その圧力により押圧板26aが下向きに押され、ペースト状材5を吐出口26bからピストン方式で排出可能になる。なお、このようなケース本体26は、これに限られず、例えば、シャフト32側に装着された部材に対し単独で着脱することも可能である。スキージは2枚の板部材29により形成されているが、ケース本体26の側面用部材と別の専用のスキージ部材を付設することも可能である。
【0023】圧縮気体供給手段30は、前記した導入口28aに不活性ガス等の気体を供給するものであり、細部を省略しているが、印刷装置1に隣接して設置された圧縮気体源から専用の配管により、ドラムユニット20の開口22Aを通じてペースト抽出ユニット25の導入口28aに接続される。この場合には、接続具31が導入口28aに装着されること、配管としてフレキシブルチュープが用いられていること、その配管がドラムユニット20の回転を妨げないように配置される、等の配慮がなされる。
【0024】支持ユニット35は、ドラムユニット20を枢支しているシャフト32に関連する機構であり、ドラムユニット20が後述する水平駆動手段40により転動((回転しつつ移動される意味)されるときにガイドするものである。この形態では、上ベース9の上にそれぞれ対に設けられた水平ガイド手段36及び固定ブロック37等からなる。水平ガイド手段36は、上ベース9の上面両側に固定されて前後方向に延びている固定レール33と、固定レール33に沿って前後移動自在に嵌合されているリニアガイド34とからなり、リニアガイド34上に固定ブロック37が設けられている。リニアガイド34は、両側に設けられたガイド片34aを有し、固定レール33に対し両ガイド片34aにてガイドされつつ前後動される。そして、両側の固定ブロック37には、左右方向の貫通穴が設けられており、その貫通穴に対し前記した円盤21を貫通したシャフト32の対応端部を挿通している。符号38は抜け止め部材である。この抜け止め部材38は固定ブロック37に支持されているシャフト32の抜け止めを行うものである。また、両側の固定ブロック37には連結アーム39により連結されている。この連結アーム39は、コ形の中間片部をドラムユニット20の上に位置し、両側片部を固定ブロック37上に接合した状態に設けている。
【0025】水平駆動手段40は、図1,図2等の如くシリンダ41で構成されている。このシリンダ41は、ドラムユニット20の背面側にあって、上ベース9の後方中間位置に設置されたアングル42上に固定されている。シリンダ41の伸縮ロッド41aは、その先端が連結アーム39に結合されている。したがって、このシリンダ40は、ロッド40aの伸縮作動により、水平ガイド手段36にガイドされつつドラムユニット20の全体を連結アーム39を介し前後方向へ水平移動することができる。
【0026】回転規制手段45は、円盤21を利用して配置されており、ドラムユニット20が、水平駆動手段40により水平移動しつつシャフト32回りに回転されるときに、その転動が精度よく行われるようにするものである。これ自体は、先の特願平10−174854号記載のものと原理的にほぼ同じくしているので、細部説明を省略する。要は、図6の如く細長い薄板からなる規制部材43A,43Bにて構成されている。規制部材43A,43Bは、円盤21の外周に自在に巻つき、巻きほぐされる材質からなり、両円盤21に各2本づつ用いられて、各円盤21と上ベース9側との間に配置されている。そして、規制部材43A,43Bの両端部は、一端側が円盤21の外周に係止され、他端側が上ベース9側に係止されている点で同じくしているが、互いに異なる端部を円盤21と上ベース9側に係止している点で異なっている。このように、各規制部材43A,43Bは、円盤21へ異方向から巻き付けられることにより、図6(a)の状態を印刷開始位置、図6(b)の状態を印刷完了位置とすると、ドラムユニット20が水平移動により図6(a)から図6(b)の状態に移動されたり、逆に移動されるときに、シャフト32を中心として滑ることなく回転されるようにする。つまり、各規制部材43A,43Bの円盤21への異方向からの巻き付け作用により、ドラムユニット20の移動量と回転量とが常に規則正しく連動されるようにする。
【0027】(印刷手順又は作動例)次に、以上のスクリーン印刷装置1について、その動作を図7から図11にて説明しつつ更に細部構成を明らかにする。先ず、回路基板2は、キャリア3の上面に設けられた凹部3aに収納セットされる。そして、回路基板16を保持したキャリア3は、図7の如く調整ステージ16上に投入されて、搬送手段11及び調整用ユニット10等により図8の如く印刷開始位置に固定される。また、この初期状態では、図2,8の如くシリンダー41がロッド41aを退避した状態にある。そして、シリンダー41はその初期状態から駆動されてロッド41aを突出し、ドラムユニット20を転動しつつ図9の如く印刷開始位置まで移動される。このとき、ドラムユニット20の回転位相は、上記した回転規制手段45により正常に維持される。ペースト抽出ユニット25は、常にシャフト33に位置固定されており、吐出口26bを真下のドラムスクリーン23の内周部分に軽く接している。また、ここまでに至る過程では、圧縮気体供給手段30が作動されず、圧縮気体がケース本体26へ供給されていない。
【0028】圧縮気体供給手段30は、ドラムユニット20が図9の印刷開始位置に移動された時点で、不図示の制御部のスイッチ操作により作動され、導入口28a及び導入経路28b,28cを通してケース本体26の上空間に導入される。すると、ケース本体26に収容されているペースト状材5は、押圧板26aを介してその気体導入圧に応じた適量を吐出口26bから、ドラムスクリーン23の対応内面に線状に排出される。圧縮気体供給手段30は、ペースト状材5の適量を排出されるようその供給気体量等が設定されており、その適量を排出した後に停止される。なお、前記制御部のスイッチ操作は自動制御される。この状態から、印刷が開始される。すなわち、シリンダー41がロッド41aを退避する方向に駆動される。すると、ドラムユニット20が支持ユニット35にガイドされながら、図9の印刷開始位置から図10の印刷完了位置まで水平移動され、この移動過程にて印刷が行われる。この移動過程でもドラムユニット20の回転位相が上記した回転規制手段45により正常に維持される。そして、この印刷過程では、ペースト抽出ユニット25の吐出口26bを形成している板部材29の先端(プレート)が常にドラムスクリーン23の内周面に近接しており、ペースト状材5をドラムスクリーン23の印刷用開口パターンに充填しつつ印刷が行われる。シリンダー41は、ドラムユニット20が図10の印刷完了位置に到着したときに停止する。
【0029】印刷が完了した後は、図11の如くキャリア3が調整用ユニット10等により原点戻りすると共に、搬送手段11等によりキャリア3の拘束を解放し、ソルダーペースト印刷の工程から、次の工程に送られる。以上で、この工程の1サイクルを完了するものである。
【0030】したがって、以上のスクリーン印刷装置1を用いた印刷を行うと、回路基板2がキャリア3に予め保持されてベース機構部4に投入されるため、回路基板2の形状(外形寸法誤差や反りの度合い等)に左右されずに位置決めが可能となり、従来のようなベルトコンベア方式等で搬送して、その搬送から被印刷物を停止させて位置決めする方式に対し、回路基板2の位置決め精度を向上できる。また、ベルト等の経年劣化する要素のある部品を使用していないため、搬送が安定し、正確な位置決めが可能になる。同時に、スキージ側機構部6の構造では、印刷方向が一方向であるため、従来のスキージの如く方向別による印刷位置のずれがなくなり、常に安定した良好な印刷が実現可能となる。具体的には、板状のスクリーンを枠部材に保持させる従来構造に対し、ドラムスクリーン23が円筒状に保持されていることから、保持構造が簡易で、スクリーンホルダ22による小型化(枠部材に比して面的に小さい)と、取扱性や装置スペース的に大きく改善される。また、印刷後の制御系、つまり従来の如く被印刷物をスクリーンから離間する速度管理やタンミング等に煩わされることもなく、機構的にもより簡易化できる等の利点が得られる。
【0031】また、この印刷装置1では、以上の利点に加えて次のような点で優れている。第1に、ペースト抽出ユニット25は、従来のスキージ及びペースト状材の供給手段に相当している。そして、この構造では、ペースト抽出ユニット25が吐出部26bを常に下方を向いて一定の姿勢で配置されていること、プレート(板部材29)がその吐出口26bを区画形成していること、ペースト状材5の適量を圧縮気体により吐出部26bから排出することにより、スキージ駆動部及びペースト状材の供給構造の簡略化が達成される。第2に、ペースト抽出ユニット25は、ケース本体26が先端の吐出口26bから、収容されているペースト状材5の適量を圧縮気体により線状に排出することから、従来の如くペースト状材の不用意なにじみだしや品質劣化を抑制可能となり、ペースト状材5を安定かつ最適量を確実に供給することができる。特に、ペースト状材5の余分な供給、それに起因する品質上の悪化、及びペースト状材5の無駄がなくなる。第3に、ペースト抽出ユニット25は、シャフト32に対し着脱可能に取り付けられることから、ペースト状材5をユニット交換方式で補充することで量産ラインにおいても効率よく可動できる。
【0032】なお、上記実施形態の構造では、ペースト抽出ユニット25として、ケース本体26を取付ブラケット27A,27Bのシャフト挟持構造にてシャフト31に取り付けるようにしたが、例えば、シャフト32側に取付部を設けておき、その取付部にケース本体26を直に着脱するようにしてもよいものである。また、水平移動手段40として、シリンダー41を用いた構造を開示したが、これに限られず、例えば、電磁アクチュエータ等の駆動力を用いるようにしてもよいものである。このように、本発明は、装置的に請求項に記載された技術要件を具備していればよく、細部的な構成については印刷の量産規模等に応じて種々変形されるものである。
【0033】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明方法及び装置では、円筒状に保持されたドラムスクリーンを、印刷面上で一端側から他端側に向かって転動させ、この過程において、ドラムスクリーンの内側からペースト状材を排出させて被印刷物の印刷面上に転写印刷するので、装置構成のコンパクト(小型)化が可能になる。また、従来印刷装置のように印刷後に被印刷物をスクリーンから離間する速度管理やタイミング等に煩わされることもなくなり、常に安定した良好な印刷が実現される。これに加え、収容されたペースト状材をドラムスクリーンの内周に線状に排出するペースト抽出ユニットを有していることから、ドラムユニット内へのペースト状材の供給が容易となり、ペースト状材の不用意なにじみだしが抑止され、補充作業も簡単に行える。このように、本発明は、従来構造に対し取扱性及び印刷精度と共に装置信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の形態例として示すスクリーン印刷装置の概略外観図である。
【図2】上記印刷装置を異なる態様で示す概略側面図である。
【図3】上記印刷装置のドラムユニットを示す図である。
【図4】上記印刷装置のペースト抽出ユニットを分解して示す図である。
【図5】上記ペースト抽出ユニットの側面と断面図である。
【図6】上記ドラムユニットの作動を示す図である。
【図7】上記印刷装置に回路基板を投入した状態で示す概略側面図である。
【図8】上記印刷装置を印刷開始へ移行する前状態で示す概略側面図である。
【図9】上記印刷装置を印刷開始時の状態で示す概略側面図である。
【図10】上記印刷装置を印刷完了時の状態で示す概略側面図である。
【図11】上記印刷後に図7の位置に移動した状態で示す概略側面図である。
【図12】従来のスクリーン印刷装置例を示す概略側面図である。
【図13】図12の印刷装置を異なる態様で示す概略側面図である。
【図14】図12の印刷装置を印刷開始時の状態で示す概略側面図である。
【図15】図12の印刷装置を印刷完了時の状態で示す概略側面図である。
【図16】図12の印刷装置を異なる態様で示す概略側面図である。
【図17】図12の印刷装置を更に異なる態様で示す概略側面図である。
【符号の説明】
1…スクリーン印刷装置、2…回路基板(被印刷物)、3…キャリア
4…ベース側機構部、5…ペースト状材、6…スキージ側機構部、20…ドラムユニット(21は円盤、22はスクリーンホルダ、23はドラムスクリーン)、25…ペースト抽出ユニット(26はケース本体、26aは押圧板、26bは吐出口、27A,27Bは取付ブラケット、28aは導入口、29はスキージを兼ねる板部材)、30…圧縮気体供給手段、35…支持ユニット(32はシャフト)、40…水平駆動手段、45…回転規制手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 位置決め配置された被印刷物の印刷面上にペースト状材をスクリーンを介し塗布して印刷するスクリーン印刷方法において、前記スクリーンとして、スクリーンホルダーに対し円筒状に保持した印刷用開口パターン付きのドラムスクリーンを用いたドラムユニットと、前記ドラムユニットを前記印刷面上に沿って転動させる水平駆動手段と、前記ドラムユニットの内側に配置されて、収容したペースト状材を吐出口から排出可能なペースト抽出ユニットとを少なくとも備え、前記ドラムスクリーンを前記印刷面上の一端側に接触した状態で、前記ペースト抽出ユニットからペースト状材を前記ドラムスクリーンの内周に線状に排出しつつ、前記ドラムユニットを前記印刷面の一端側から他端側に向かって転動し、かつ、前記ドラムスクリーンの内周に排出されたベースト状材を前記ドラムスクリーンを介し前記印刷面上に印刷することを特徴とするスクリーン印刷方法。
【請求項2】 位置決め配置された被印刷物の印刷面上にペースト状材をスクリーンを介し塗布して印刷するスクリーン印刷装置において、前記スクリーンとして、スクリーンホルダーに対し円筒状に保持した印刷用開口パターン付きのドラムスクリーンを用いたドラムユニットと、水平に配置されて、前記ドラムユニットの中心を貫通した状態でドラムユニットを回転自在に支持しているシャフトと、前記シャフトを摺動自在に保持した状態で、前記ドラムユニットを前記印刷面上に沿って、シャフト回りに回転しつつ移動させる水平駆動手段と、前記シャフトに着脱可能に取り付けられて、前記ペースト状材を収容し、該ペースト状材を供給される圧縮気体により先端の吐出口から前記ドラムスクリーンの内周に線状に排出するペースト抽出ユニットとを備え、前記ペースト抽出ユニットからペースト状材を排出した状態から、前記ドラムユニットを前記印刷面の一端側から他端側に向かって転動させつつ印刷可能にしたことを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項3】 前記スクリーンホルダの両側に連結された円盤を利用して配置されて、前記水平駆動手段により転動される前記ドラムユニットの回転位相を正確に保つ回転規制手段を有している請求項2に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項4】 前記ペースト抽出ユニットは、内部にペースト状材を収容するケース本体と、前記シャフトに装着する取付部と、前記圧縮気体を前記ケース本体内に導入する導入口及び導入経路と、前記ケース本体の吐出口に設けられたプレートとを有している請求項2又は3に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項5】 前記プレートが、前記ケース本体の吐出口を形成している板部材により形成されている請求項4に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項6】 前記取付部が、前記ケース本体に取り付けられ、かつ前記シャフトを挟持する取付ブラケットからなる請求項4に記載のスクリーン印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【図10】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2000−85100(P2000−85100A)
【公開日】平成12年3月28日(2000.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−259622
【出願日】平成10年9月14日(1998.9.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】