説明

スクリーン印刷装置

【課題】構造が簡単でコストを抑えつつ印刷の質を向上させることができるスクリーン印刷装置を提供する。
【解決手段】スクリーン版24に供給されたペースト状のインクをスキージ42によりスクリーン版24に形成された開口を介してワーク12に付着させ、スクリーン版24に描かれた印刷パターンをワーク12に転写することにより印刷するスクリーン印刷装置10において、スキージ42によりワーク12に押し付けたスクリーン版24がワーク12から離れる版離れの遅れにより印刷の質が低下するのを防止するために、印刷中のスキージ位置と版離れ位置とを計測し、これらのスキージ位置と版離れ位置とを一致させるためにスキージ42の移動速度を制御するスキージ速度制御装置105を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のスクリーン印刷装置として、スキージ移動中のペーストのローリング状態と、印刷終了時のスクリーンマスクの版離れ状態とをそれぞれカメラで撮像するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−161783公報
【0003】
特許文献1の図1に示すスクリーン印刷装置1は、箱形の印刷台2と、この印刷台2を昇降駆動する印刷台駆動部3と、印刷台2に配置したスクリーン支持枠4と、このスクリーン支持枠4の上方に配置したスキージヘッド5と、このスキージヘッド5を往復駆動するスキージ駆動部6とを備える。
【0004】
スキージヘッド5は、スキージホルダ8によりスキージ9を把持したものである。スクリーン支持枠4は、被印刷物であるガラス基板11を配置したものであり、ガラス基板11の上面にメタルマスク10が配置される。
【0005】
また、スクリーン印刷装置1は、メタルマスク10上を移動するソルダペースト17のローリング状態を撮像する第1のカメラ15と、印刷終了時にメタルマスク10の版離れ状態を撮像する第3のカメラ16とを備え、これらの第1のカメラ15及び第2のカメラ16は、スキージ9と共に移動するように取り付けられる。
【0006】
第1のカメラ15は、画像解析装置25に接続され、この画像解析装置25は、第1のカメラ15により撮像されたソルダペースト17のローリング状態の画像に基づいて解析を行い、ソルダペースト17のローリング速度を算出する。そして、このローリング速度に基づいてコントロールユニット12はスキージ速度を制御する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のスクリーン印刷装置1では、スキージ速度を制御するために、第1のカメラ15でソルダペースト17を撮像し、画像解析装置25で画像を解析して、ソルダペースト17のローリング速度を算出するが、第1のカメラ15で撮像した画像の解析を瞬時に行うために、高速処理が可能な高価な画像解析装置25及びコントロールユニット12が必要になる。
【0008】
また、ソルダペースト17のローリング速度を求めるための第1のカメラ15と、メタルマスク10の版離れ状態、すなわち、ソルダペースト17のガラス基板11への密着状態を管理する第3のカメラ16とを用いることで、印刷の質を向上させているが、カメラを複数使用することで設備のコストが嵩む。
【0009】
さらに、第1のカメラ15及び第2のカメラ16は、スキージ9と共に移動するため、これらのカメラ15,16の撮像精度が低下しないように、カメラ15,16が振れ難い構造にする必要がある。例えば、カメラ15,16を支持するスキージヘッド5に補強等を施さなければならないので構造が複雑になる。
【0010】
本発明の目的は、構造が簡単でコストを抑えつつ印刷の質を向上させることができるスクリーン印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、スクリーン版に供給されたペースト状のインクをスキージによりスクリーン版に形成された開口を介して被印刷物に付着させ、スクリーン版に描かれた印刷パターンを被印刷物に転写することにより印刷するスクリーン印刷装置において、スキージにより被印刷物に押し付けたスクリーン版が被印刷物から離れる版離れの遅れにより印刷品質が低下するのを防止するために、印刷中のスキージ位置と版離れ位置とを計測し、これらのスキージ位置と版離れ位置とを一致させるためにスキージの移動速度を制御するスキージ速度制御装置を設けたことを特徴とする。
【0012】
作用として、印刷中に移動するスキージの位置に対して、スクリーン版が被印刷物から離れる版離れ位置が遅れてくると、印刷の質が低下する。スキージの移動速度を遅くすれば、版離れ位置の遅れは小さくなる。そこで、スキージ速度制御装置により、印刷中のスキージ位置と版離れ位置とを計測し、これらのスキージ位置と版離れ位置と一致させるようにスキージ速度を制御することで、版離れの遅れを無くし、印刷の質の向上を図るものである。
【0013】
請求項2に係る発明は、スキージ速度制御装置を、スキージを駆動するスキージ駆動手段と、スクリーン版の版離れを検知するために被印刷物を支持する支持部側に固定した版離れ検知手段と、この版離れ検知手段からの検知信号に基づいてスキージ駆動手段に駆動信号を送ることでスキージ速度を制御する制御装置とから構成したことを特徴とする。
【0014】
作用として、スキージ速度制御装置を、スキージ駆動手段と、版離れ検知手段と、制御装置とから構成することで、スクリーン印刷装置の構造が簡単になる。また、版離れ検知手段は被印刷物を支持する支持部側に固定したものであるから、振れ等が発生し難く補強等を必要としない。
【0015】
請求項3に係る発明は、版離れ検知手段を、光源の光を検知する複数のセンサを一直線状に並べたラインセンサとし、光源及びラインセンサを、スキージの移動方向と直交する方向に並べるとともにスクリーン版を挟むように配置したことを特徴とする。
【0016】
作用として、光源とラインセンサとをスキージの移動方向に直交する方向に並べるとともにスクリーン版を挟むように配置し、スキージによって被印刷物に押し付けられたスクリーン版によって光源からラインセンサに向かう光が遮られた状態から、スクリーン版が被印刷物から離れて光源の光がラインセンサに達したときに、版離れ位置を検知する。ラインセンサは複数のセンサを一直線状に並べたものであるから、版離れ位置を精度良く検知することが可能になる。
【0017】
請求項4に係る発明は、版離れ検知手段を、投光器及びこの投光器から発する光を検知する受光器からなる光センサとし、これらの投光器及び受光器を、スキージの移動方向と直交する方向に並べるとともにスクリーン版を挟むように配置したことを特徴とする。
【0018】
作用として、投光器と受光器とをスキージの移動方向に直交する方向に並べるとともにスクリーン版を挟むように配置し、スキージによって被印刷物に押し付けられたスクリーン版によって投光器から受光器に向かう光が遮られた状態から、スクリーン版が被印刷物から離れて投光器の光が受光器に達した状態になったときに、版離れ位置を検知する。投光器及び受光器からなる光センサは安価でありコストアップが抑えられる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明では、スキージにより被印刷物に押し付けたスクリーン版が被印刷物から離れる版離れの遅れにより印刷の質が低下するのを防止するために、印刷中のスキージ位置と版離れ位置とを計測し、これらのスキージ位置と版離れ位置とを一致させるためにスキージの移動速度を制御するスキージ速度制御装置を設けたので、従来のような高価な解析装置やコントロールユニットを使用することなしにコストを抑えながら、スキージ位置と版離れ位置とを一致させることができ、印刷の質を向上させることができるものである。
【0020】
請求項2に係る発明では、スキージ速度制御装置を、スキージを駆動するスキージ駆動手段と、スクリーン版の版離れを検知するために被印刷物を支持する支持部側に固定した版離れ検知手段と、この版離れ検知手段からの検知信号に基づいてスキージ駆動手段に駆動信号を送ることでスキージ速度を制御する制御装置とから構成したので、スクリーン印刷装置を簡単な構造とすることができ、コストを低減することができる。また、版離れ検知手段を被印刷物を支持する支持部側に固定したので、構造を複雑にすることなしに検知精度を高めることができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、版離れ検知手段を、光源の光を検知する複数のセンサを一直線状に並べたラインセンサとし、光源及びラインセンサを、スキージの移動方向と直交する方向に並べるとともにスクリーン版を挟むように配置したので、複数のセンサによって版離れ位置を精度良く検知することができ、スキージ位置と版離れ位置とをより精度良く一致させることができ、印刷の質をより一層向上させることができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、版離れ検知手段を、投光器及びこの投光器から発する光を検知する受光器からなる光センサとし、これらの投光器及び受光器を、スキージの移動方向と直交する方向に並べたので、投光器及び受光器からなる光センサという安価な構成で版離れ位置を検知することができ、コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るスクリーン印刷装置(第1実施形態)の断面図であり、スクリーン印刷装置10は、ベース部材11と、被印刷物としてのワーク12を載せるために上記ベース部材11に支柱13〜15で支持した印刷テーブル17と、該印刷テーブル17の両側方に配置すると共にそれぞれ支柱18で支持した版枠ホルダ21,22と、これらの版枠ホルダ21,22で支持した版枠23と、この版枠23に取り付けたスクリーン版24と、版枠23を押え付けて固定するために版枠ホルダ21に取付け部材26を介して取り付けた複数の版枠固定用シリンダ27と、版枠ホルダ21,22の外側方に配置するとともにベース部材11から立ち上げた外支柱31,32と、これらの外支柱31,32の上部側部にそれぞれ取り付けた一対のレール33,34と、これらのレール33,34にスライドガイド36,37を介して水平移動自在に取り付けたスキージヘッド38と、印刷中のワーク12からのスクリーン版24の離れる位置を検知するために版枠ホルダ21,22に取り付けた版離れ検知手段としての版離れ検知装置41と、スキージヘッド38に設けたスキージ42の位置を検知するために一方のレール34側及びスキージヘッド38に取り付けた位置センサ43とを備える。
【0024】
版枠固定用シリンダ27は、シリンダ本体51と、このシリンダ本体51内に移動自在に挿入したピストン(不図示)と、このピストンに取り付けたロッド52と、このロッド52の先端に取り付けた押圧プレート53とからなり、シリンダ本体51に接続した空圧又は油圧配管からシリンダ本体51内に空圧又は油圧を作用させてピストンを移動させ、ロッド52を介して押圧プレート53で版枠23を押え付ける。
【0025】
スキージヘッド38は、スライドガイド36,37に取り付けた板状のヘッド基部61と、このヘッド基部61に取り付けたヘッド昇降駆動部62と、このヘッド昇降駆動部62の下端に取り付けたスキージ支持部63と、このスキージ支持部63に取り付けたスキージ42とからなる。
【0026】
ヘッド基部61は、後述するヘッド水平駆動部の駆動力によってレール33,34に沿って水平移動する部分である。67はヘッド基部38に取り付けたナットである。ヘッド昇降駆動部62は、ヘッド基部61の中央部に取り付けたスキージ昇降シリンダ71と、横幅の広いスキージ65が傾かないように安定して昇降させる一対のガイド機構72,72とからなる。
【0027】
スキージ昇降シリンダ71は、シリンダ本体75と、このシリンダ本体75内に移動自在に挿入したピストン(不図示)と、このピストンに取り付けたロッド76と、このロッド76の先端に取り付けるとともにスキージ支持部63に連結した押圧プレート77とからなり、シリンダ本体75に接続した空圧又は油圧配管からシリンダ本体75内に空圧又は油圧を作用させてピストンを移動させ、ロッド76、押圧プレート77、スキージ支持部63を介してスキージ42を昇降させる。ガイド機構72は、シリンダ部81と、このシリンダ部81内に一端側を移動自在に挿入したロッド82とからなり、ロッド82の下端をスキージ支持部63に取り付けた。
【0028】
スキージ42は、ウレタンゴム製の平型のものである。版離れ検知装置41は、一方の版枠ホルダ22に取り付けた光源85と、この光源85から発した光を受けるために他方の版枠ホルダ21に取り付けたラインセンサ86とからなり、これらの光源85及びラインセンサ86は、スキージ42の移動方向(図の表裏方向)に対して直交する方向(図の左右方向)に並べるとともに、スクリーン版24の両側方にスクリーン版24を挟むように配置したものである。
【0029】
光源85は、複数の光ケーブル85Aにより供給される光によって発光する。ラインセンサ86は、1次元センサ又はリニアセンサとも称され、光源85からの光を収束させるレンズ86Aと、このレンズ86Aによって収束した光を検知する検知部86Bとを備えるカメラである。
【0030】
検知部86Bは、複数の受光部、例えば、フォトダイオードを一直線状に等間隔に並べたものであり、各受光部で一定時間毎の撮像・読み出し動作(走査)が行われる。なお、86Cは各受光部から信号を出力する導線を束ねたケーブルである。
【0031】
位置センサ43は、外支柱32の上端に取り付けた長尺のスケール87と、ヘッド基部61の端部に取り付けた磁気ヘッド88とからなり、スケール87に備える等間隔の磁化パターンを磁気ヘッド88で検出することでスキージ42の位置を出力する。
【0032】
図2は本発明に係るスクリーン印刷装置(第1実施形態)の説明図であり、スキージ42の移動方向に直交する方向から見た図である。スキージヘッド38を水平に移動させるスキージ駆動手段としてのヘッド水平駆動部95は、スキージヘッド38に設けたナット67と、このナット67にボールを介してねじ結合するねじ軸96と、このねじ軸96にジョイント97を介して回転軸98を取り付けた電動モータ101とからなるボールねじ駆動機構である。
【0033】
スクリーン印刷装置10は、スキージ42の移動速度、すなわち、スキージ速度を制御するスキージ速度制御装置105を備える。スキージ速度制御装置105は、スキージヘッド38(図3参照)、詳しくは、スキージ42を駆動するヘッド水平駆動部95と、スクリーン版24の版離れを検知する版離れ検知装置41と、この版離れ検知装置41(詳しくは、ラインセンサ86)からの検知信号に基づいてヘッド水平駆動部95に駆動信号を送ることでスキージ速度を制御する制御装置106とを備える。なお、108は印刷条件(例えば、スキージ速度、スキージをスクリーン版を介してワークに押し付ける押圧力〈印圧〉、スキージの押し込み量、スクリーン版とワークとのクリアランス、スキージの水平移動量〈スキージストローク〉等である。)を入力するために制御装置106に接続した入力装置である。なお、図中のワーク12上に示した逆三角形は、左側が印刷開始位置109A、右側が印刷終了位置109Bを表す。
【0034】
上記したように、スクリーン版24に供給されたペースト状のインクをスキージ42によりスクリーン版24に形成された開口を介してワーク12に付着させ、スクリーン版24に描かれた印刷パターンをワーク12に転写することにより印刷するスクリーン印刷装置10において、スキージ42によりワーク12に押し付けたスクリーン版24がワーク12から離れる版離れの遅れにより印刷の質が低下するのを防止するために、印刷中のスキージ位置と版離れ位置とを計測し、これらのスキージ位置と版離れ位置とを一致させるためにスキージ42の移動速度を制御するスキージ速度制御装置105を設けた。
【0035】
図3は本発明に係るスクリーン印刷装置(第2実施形態)の断面図であり、第1実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。スクリーン印刷装置110は、ベース部材11と、印刷テーブル17と、版枠ホルダ21,22と、版枠23と、スクリーン版24と、版枠固定用シリンダ27と、外支柱31,32と、レール33,34と、スキージヘッド38と、印刷中のワーク12からのスクリーン版24の離れる位置を検知するために版枠ホルダ21,22に取り付けた版離れ検知手段としての光センサ110aと、位置センサ43とを備える。
【0036】
光センサ110aは、一方の版枠ホルダ22に取り付けた投光器110bと、この投光器110bから発した光を受けるために他方の版枠ホルダ21に取り付けた受光器110cとからなり、これらの投光器110b及び受光器110cは、スキージ42の移動方向(図の表裏方向)に対して直交する方向(図の左右方向)に並べて配置したものである。
【0037】
図4は本発明に係るスクリーン印刷装置(第2実施形態)の説明図であり、スキージ42の移動方向に直交する方向から見た図である。スクリーン印刷装置110は、スキージ42の移動速度、すなわち、スキージ速度を制御するスキージ速度制御装置107を備える。スキージ速度制御装置107は、ヘッド水平駆動部95と、スクリーン版24の版離れを検知する複数の光センサ110A〜110C(光センサ110A〜110Cは光センサ110aと同一構造であるが、識別のために区別した。)と、これらの光センサ110A〜110Cからの検知信号に基づいてヘッド水平駆動部95に駆動信号を送ることでスキージ速度を制御する制御装置106とを備える。
【0038】
図中のワーク12上に示した黒塗りの逆三角形は、左側が印刷開始位置109C、右側が印刷終了位置109Dを表す。印刷開始位置109C、印刷終了位置109D、光センサ110A〜110Cは、印刷開始位置109Cと印刷終了位置109Dとの距離をSとしたときに、それらの間隔をS/4としたものである。
【0039】
すなわち、光センサ110Bは、印刷開始位置109Cと印刷終了位置109Dとの中央位置、光センサ110Aは、印刷開始位置109Cと光センサ110Bとの中央位置、また、光センサ110Cは、光センサ110Bと印刷終了位置109Dとの中央位置にそれぞれ配置したものである。
【0040】
上記したように、スクリーン版24に供給されたペースト状のインクをスキージ42によりスクリーン版24に形成された開口を介してワーク12に付着させ、スクリーン版24に描かれた印刷パターンをワーク12に転写することにより印刷するスクリーン印刷装置10において、スキージ42によりワーク12に押し付けたスクリーン版24がワーク12から離れる版離れの遅れにより印刷の質が低下するのを防止するために、印刷中のスキージ位置と版離れ位置とを計測し、これらのスキージ位置と版離れ位置とを一致させるためにスキージ42の移動速度を制御するスキージ速度制御装置107を設けた。
【0041】
図5は本発明に係る光センサの配置を示す斜視図(第2実施形態)であり、一方の版枠ホルダ22に複数の溝111を設け、これらの溝111にそれぞれ投光器110bを配置し、他方の版枠ホルダ21に同様に複数の溝112を設け、これらの溝112にそれぞれ受光器110cを配置したことを示す。なお、114は投光器110bの後端に繋いだ信号入力用の導線、115は受光器110cの後端に繋いだ信号出力用の導線である。
【0042】
次に、スキージ速度制御装置107の作用を説明する。図6は本発明に係るスキージ速度制御装置の作用を示す第1作用図(第2実施形態)である。
まず、スキージヘッドを下降させてスキージ42でスクリーン版24を押し下げ、所定の押圧力でワーク12を押し付ける(すなわち、印刷開始位置109Cを押し付ける)。そして、スキージ42を白抜き矢印の向きに所定の速度で移動させる。
【0043】
図では、各光センサの識別が容易に行えるように、スキージ42の印刷開始位置109C(想像線の逆三角形で示す)に「S」、光センサ110Aに「1」、光センサ110Bに「2」、光センサ110Cに「3」、スキージ42の印刷終了位置109D(黒塗り逆三角形で示す)に「E」を付した。
【0044】
また、投光器110bは小さな丸印、受光器110cは大きな丸印で示した。投光器110bは発射した光がワーク12の上面12aすれすれに受光器110cに向かうため、スクリーン版24がワーク12の上面に密着したときには、投光器110bの光が遮られて受光器110cに到達しない。この状態を光センサが「OFF」であるとする。スクリーン版24がワーク12の上面12aから離れたときには、投光器110bの光は受光器110cに到達する。この状態を光センサが「ON」であるとする。したがって、図示した状態では、光センサ110A〜110Cは、いずれも「ON」状態にある。
【0045】
図7(a),(b)は本発明に係るスキージ速度制御装置の作用を示す第2作用図である。
(a)は、スキージ42が、例えば、光センサ110Aの位置に至った状態を示す。スキージ42は、スクリーン版24の版枠23に近い部分を押し付けているため、スクリーン版24の張力は大きな状態にあり、スクリーン版24は、スキージ42に押し付けられている部分以外はワークに密着していない。
【0046】
(b)は、(a)の部分拡大図であり、スキージ42によるスクリーン版24の押し付け位置が光センサ110Aに至ったことで、光がスクリーン版24に遮られ、光センサ110Aは「ON」から「OFF」に切り換わるが、スキージ42が光センサ110Aの位置を通過した後は、光センサ110Aは再び「ON」になる。
【0047】
図8(a),(b)は本発明に係るスキージ速度制御装置の作用を示す第3作用図である。
(a)において、スキージ42が、さらに白抜き矢印の向きに移動して、例えば、光センサ110A,110B間に至ったときに、(b)に示すように、スクリーン版24が、スキージ42の後方(図の左方)でワーク12に密着したことを示す。
【0048】
版離れ位置がスキージ42の位置に対して次第に遅れてくると、遅れた部分にインクが過剰に残り、部分的に濃淡(インク塗布高さの高低)が顕著に出て、印刷パターンの位置精度が低下する。
【0049】
上記したように、スクリーン版24の密着終了位置(版離れ位置)が光センサ110Aに至ると、光センサ110Aは「OFF」から「ON」に切り換わる。この時、光センサ110AからのON信号が制御装置に送られ、版離れ位置がスキージ42の位置とともに制御装置106(図4参照)内の記憶装置に記憶される。そして、制御装置106は、スキージ24の位置と版離れ位置との距離Dを算出する。このように、版離れ位置がスキージ位置に対して遅れてきたときには、スキージ42の移動速度、すなわち、スキージ速度を所定の速度に遅くする。
【0050】
図9は本発明に係るスキージ速度制御装置の作用を示す第4作用図であり、スキージ速度を遅くすることで、スクリーン版24のワーク12への密着が解消される。すなわち、スキージ位置と版離れ位置とが一致したことを示す。
【0051】
版離れ位置の遅れが生じているときに、スキージ速度をどの位まで遅らせるかについては、例えば、光センサ110Aで版離れ位置を検出し、次に、光センサ110Bで版離れ位置を検出したときに、これらより、版離れ位置の移動速度、すなわち、版離れ速度を求め、この版離れ速度にスキージ速度を一致させる。
【0052】
このように、版離れ位置が遅れる場合には、スキージ速度を遅くすることでスキージ位置と版離れ位置との距離をゼロにする、すなわち、スキージ位置と版離れ位置とを一致させる。本発明は、印刷中のスクリーン版24の版離れ位置を検知することで、スキージ速度を制御し、印刷の質の向上を図るものである。
【0053】
図1及び図2で説明したように、印刷中のスキージ位置と版離れ位置とを計測し、これらのスキージ位置と版離れ位置とを一致させるためにスキージ42の移動速度を制御するスキージ速度制御装置105を設けたので、従来のような高価な解析装置やコントロールユニットを使用することなしにコストを抑えながら、スキージ位置と版離れ位置とを一定量に保つことができ、印刷の質を向上させることができる。
【0054】
また、スキージ速度制御装置105を、スキージ42を駆動するスキージ駆動手段としてのヘッド水平駆動部95と、スクリーン版24の版離れを検知するためにワーク12を支持する支持部としての印刷テーブル17側に固定した版離れ検知手段としての版離れ検知装置41と、この版離れ検知装置41からの検知信号に基づいてヘッド水平駆動部95に駆動信号を送ることでスキージ速度を制御する制御装置106とから構成したので、スクリーン印刷装置10を簡単な構造とすることができ、コストを低減することができる。また、版離れ検知装置41をワーク12を支持する印刷テーブル17側に固定したので、版離れ検知装置41が振動し難いために補強等が不要になり、構造を複雑にすることなしに検知精度を高めることができる。
【0055】
さらに、版離れ検知装置41を、光源85の光を検知する複数のセンサを一直線状に並べたラインセンサ86とし、光源85及びラインセンサ86を、スキージ42の移動方向と直交する方向に並べるとともにスクリーン版24を挟むように配置した。
【0056】
これにより、複数のセンサによって版離れ位置を精度良く検知することができ、スキージ位置と版離れ位置とをより精度良く一致させることができ、印刷の質をより一層向上させることができる。
【0057】
また、図3及び図4に示したように、光センサ110A,110B,110Cを、投光器110b及びこの投光器110bから発する光を検知する受光器110cから構成し、これらの投光器110b及び受光器110cを、スキージ42の移動方向と直交する方向に並べたので、投光器110b及び受光器110cからなる光センサ110aという安価な構成で版離れ位置を検知することができ、コストを低減することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、図4に示したように、スクリーン印刷装置110に光センサ110aを3組備えたが、センサの設置間隔はできるだけ狭いことが望ましく、例えば、5ないし10mm間隔程度に設置する。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のスクリーン印刷装置は、電子機器、燃料電池の製造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係るスクリーン印刷装置(第1実施形態)の断面図。
【図2】本発明に係るスクリーン印刷装置(第1実施形態)の説明図。
【図3】本発明に係るスクリーン印刷装置(第2実施形態)の断面図。
【図4】本発明に係るスクリーン印刷装置(第2実施形態)の説明図。
【図5】本発明に係る光センサの配置を示す斜視図(第2実施形態)。
【図6】本発明に係るスキージ速度制御装置の作用を示す第1作用図(第2実施形態)。
【図7】本発明に係るスキージ速度制御装置の作用を示す第2作用図(第2実施形態)。
【図8】本発明に係るスキージ速度制御装置の作用を示す第3作用図(第2実施形態)。
【図9】本発明に係るスキージ速度制御装置の作用を示す第4作用図(第2実施形態)。
【符号の説明】
【0061】
10,110 スクリーン印刷装置
12 ワーク
17 支持部(印刷テーブル)
24 スクリーン版
41,110a,110A,110B,110C 版離れ検知手段(版離れ検知装置、光センサ)
42 スキージ
85 光源
86 ラインセンサ
95 スキージ駆動手段(ヘッド水平駆動部)
105,107 スキージ速度制御装置
106 制御装置
110b 投光器
110c 受光器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン版に供給されたペースト状のインクをスキージによりスクリーン版に形成された開口を介して被印刷物に付着させ、前記スクリーン版に描かれた印刷パターンを被印刷物に転写することにより印刷するスクリーン印刷装置において、
前記スキージにより被印刷物に押し付けた前記スクリーン版が被印刷物から離れる版離れの遅れにより印刷品質が低下するのを防止するために、印刷中のスキージ位置と版離れ位置とを計測し、これらのスキージ位置と版離れ位置とを一致させるために前記スキージの移動速度を制御するスキージ速度制御装置を設けたことを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項2】
前記スキージ速度制御装置は、前記スキージを駆動するスキージ駆動手段と、前記スクリーン版の版離れを検知するために被印刷物を支持する支持部側に固定した版離れ検知手段と、この版離れ検知手段からの検知信号に基づいて前記スキージ駆動手段に駆動信号を送ることでスキージ速度を制御する制御装置とから構成されることを特徴とする請求項1記載のスクリーン印刷装置。
【請求項3】
前記版離れ検知手段は、光源の光を検知する複数のセンサを一直線状に並べたラインセンサであり、前記光源及び前記ラインセンサを、前記スキージの移動方向と直交する方向に並べるとともに前記スクリーン版を挟むように配置したことを特徴とする請求項2記載のスクリーン印刷装置。
【請求項4】
前記版離れ検知手段は、投光器及びこの投光器から発する光を検知する受光器からなる光センサであり、これらの投光器及び受光器を、前記スキージの移動方向と直交する方向に並べるとともに前記スクリーン版を挟むように配置したことを特徴とする請求項2記載のスクリーン印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−185823(P2007−185823A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4445(P2006−4445)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000111270)ニューロング精密工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】