説明

スケールの製造方法、スケール、および、エンコーダー装置

【課題】耐摩耗性を向上させることが可能なスケールの製造方法、スケール、および、これを備えたエンコーダーを提供する。
【解決手段】台座26の上面にスケール基材17を配置する。また、このスケール基材17の上面に、パターン部18の材料としてのパターン基材18´を積層する。この積層状態で、パターン基材18´をスケール基材17に向けてプレス加工で打ち抜く。これにより、打ち抜いたパターン基材18´が、スケール基材17の肉厚内に埋め込み保持され、パターン部18が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スケールの製造方法、スケール、および、エンコーダー装置に関し、特に、耐摩耗性を向上させたスケールの製造方法、スケール、および、これを備えたエンコーダー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアエンコーダーは、長尺帯状のスケール基材の表面に一定間隔で複数形成されたパターン部を、検出ヘッド(センサー)で読み取ることにより、測定対象物の位置や移動距離の測定を行う。例えば、液体噴射装置の一種であるインクジェット式記録装置(プリンター)で用いられるリニアエンコーダーは、キャリッジに搭載されたインクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッドの一種。以下、記録ヘッドという。)の主走査方向の移動位置や速度を検出するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。また、記録紙などの記録媒体を無端ベルト(搬送ベルト)などで搬送する構成の場合(例えば、特許文献2参照)、この無端ベルトに添設されたリニアエンコーダーによって記録媒体の搬送量を検出する。さらに、リニアエンコーダーの検出信号は、記録ヘッドで液体を吐出する駆動源(圧力発生手段)を駆動するための駆動信号の発生タイミングを規定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−192892号公報
【特許文献2】特開2006−187872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のリニアスケールは、スケール基材の表面に印刷や蒸着等でパターン部を形成するのが一般的であった。このような従来のリニアエンコーダーでは、リニアスケールのパターン部印刷面にセンサーや制御信号を送るためのケーブル等が接触するなどしてパターン部が磨耗したり剥がれたりする虞があった。これにより、パターン部をセンサーが検出できなくなり、その結果、正常な検出動作が阻害されるおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐摩耗性を向上させることが可能なスケールの製造方法、スケール、および、これを備えたエンコーダー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、スケール基材の表面上にパターン基材を積層した状態でパターン基材をスケール基材に向けてプレス加工で打ち抜き、打ち抜いたパターン基材の少なくとも一部をスケール基材の肉厚内に埋め込み保持させることでパターン部を形成したことを特徴とする。
また、本発明は、前記パターン部を一定間隔で複数列設して検出用パターンを形成する構成に好適である。
そして、前記打ち抜きは、前記スケール基材の位置に応じて、少なくとも互いに異なる2通りの打ち抜きを所定の順序で行うこともできる。
【0007】
上記構成によれば、スケール基材の表面上にパターン基材を積層した状態でパターン基材をスケール基材に向けてプレス加工で打ち抜き、打ち抜いたパターン基材をスケール基材の肉厚内に埋め込み保持させることでパターン部を形成するので、従来よりもパターン部の耐摩耗性を向上させることが可能となる。即ち、例えば、検出用パターンが他の部品等に接触した場合におけるパターン部の磨耗や剥離を抑制することができる。その結果、エンコーダーの検出精度の低下を防止することが可能となる。また、耐久性をより確実に向上させることができる。
【0008】
また、上記構成において、パターン部の全体をスケール基材の肉厚内に埋め込むことが望ましい。
【0009】
この構成によれば、パターン部の全体をスケール基材の肉厚内に埋め込むことで、耐摩耗性を一層向上させることが可能となる。
【0010】
そして、前記検出用パターンは、組成が異なる複数種類の金属製のパターン部が所定の順番で繰り返されてもよいし、あるいは、色彩が異なる複数種類のパターン部が所定の順番で繰り返されてもよい。さらには、前記スケール基材の表面からパターン部の表面までの深さが複数種類異なり、且つこの複数種類の深さが所定の順番で繰り返されて深さが異なるパターン部から構成されてもよい。
【0011】
この様に、検出用パターンを、組成、色彩、あるいは深さが異なる複数種類のパターン部を所定の順番で配置し、この配置を繰り返して構成すると、パターン部の種類に適合したセンサーを使用できるので、センサーの特性を加味して使用環境に応じて適合するものを使用できる。また、例えば、3種類以上のパター部を所定の順番で配置すれば、スケールの相対的移動の方向が判別可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】プリンターの構成を説明する概略平面図である。
【図2】プリンターの構成を説明する概略側面図である。
【図3】図1における領域Aの拡大図である。
【図4】図1におけるB−B線断面図である。
【図5】プレス機構の構成を説明する要部断面図である。
【図6】(a)〜(c)は、パターン部の形成工程を説明する模式図である。
【図7】パターン部の深さを異ならせて検出用パターンを構成したリニアスケールの他の実施形態の一部欠截平面図である。
【図8】パターン部の金属素材を異ならせて検出用パターンを構成したリニアスケールの他の実施形態の一部欠截平面図である。
【図9】パターン部の色彩を異ならせて検出用パターンを構成したリニアスケールの他の実施形態の一部欠截平面図である。
【図10】パターン部を磁性体と非磁性体として両者を交互に配置して検出用パターンを構成したリニアスケールの他の実施形態の一部欠截平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下の説明では、本発明におけるスケール(リニアスケール)およびこれを備えるエンコーダー装置(リニアエンコーダー)を、インクジェット式記録装置(以下、単にプリンターという)に適用した場合の構成を例示する。
【0014】
図1は、プリンター1の構成を説明する概略平面図、図2は、プリンター1の構成を説明する概略側面図である。また、図3は、図1における領域Aの拡大図、図4は、図1におけるB−B線断面図である。このプリンター1は、記録紙14(記録媒体の一種)の搬送方向に沿って複数配設された記録ヘッド2(2a〜2d)と、記録紙14を搬送ベルト3に供給する給紙ローラー10と、給紙ローラー10を駆動する給紙モーター9と、搬送ベルト3によって記録紙14を搬送する搬送機構16と、リニアスケール13と検出ヘッド7(本発明におけるセンサに相当)からなるリニアエンコーダーと、を備えて概略構成されている。本実施形態におけるプリンター1は、記録の際に記録紙14の搬送のみを行い、記録ヘッド2の移動を伴わない所謂ラインヘッド型インクジェット記録装置である。
【0015】
給紙ローラー10は、搬送機構16の上流側に配設され、図示しない給紙部から給紙された記録紙14を挟持した状態で互いに反対方向に同期回転可能な上下一対のローラー10a,10b(図2参照)により構成されている。この給紙ローラー10は、給紙モーター9からの動力で駆動され、図示しないスキュー補正ローラーと共働して記録紙14の搬送方向に対する傾き及び搬送方向に直交する方向の位置ずれを補正してから、この記録紙14を搬送機構16側に供給するように構成されている。
【0016】
搬送機構16は、搬送ベルト3の駆動源である搬送モーター12と、搬送モーター12から動力が伝達される駆動ローラー4と、駆動ローラー4よりも上流側に配設された従動ローラー5と、駆動ローラー4及び従動ローラー5の間に張設される無端状の搬送ベルト3と、搬送ベルト3に張力を付与するテンションローラー6(図2参照)と、記録紙14を搬送ベルト3側に押圧する圧接ローラー11(図2参照)と、搬送ベルト3を帯電させるベルト帯電部20(図2参照)とにより構成されている。テンションローラー6は、駆動ローラー4と、従動ローラー5との間に配設され、搬送ベルト3に内接し、ばね等の付勢部材の付勢力により搬送ベルト3に張力を付与している。また、圧接ローラー11は、搬送ベルト3を挟んで従動ローラー5の直上に配設され、搬送ベルト3に当接している。
【0017】
ベルト帯電部20は、帯電ローラー8と、帯電用電源15とを備えている。帯電ローラー8は搬送ベルト3を挟んで従動ローラー5の上流側下方に配設され、搬送ベルト3に当接している。帯電用電源15は、帯電ローラー8と導通接続されており、帯電ローラー8に交流電圧を印加する。なお、従動ローラー5は、図2に示すように、接地されており、搬送ベルト3を挟んで対向する帯電ローラー8に対する対向電極となっている。このベルト帯電部20は、帯電用電源15が帯電ローラー8を介して搬送ベルト3に電荷を供給し搬送ベルト3を帯電させる。そして、帯電された搬送ベルト3に載置される記録紙14には、誘電分極が発生し、搬送ベルト3との間に静電吸着力が作用する。さらに、圧接ローラー11は、帯電された搬送ベルト3に載置される記録紙14を搬送ベルト3に押し付けて、記録紙14の搬送ベルト3に対する密着性を高める。
【0018】
図1および図4に示すように、搬送ベルト3の外周面には、リニアスケール13がベルト全周に渡って配設されている。このリニアスケール13は、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の合成樹脂からなるスケール基材17に検出用パターン19をスケール基材17の長手方向に沿って配列して構成されている。図3に示すように、検出用パターン19は、後述する検出ヘッド7の検出光を反射する材質からなるパターン部18を記録紙搬送方向に一定間隔で複数列設して構成されている。なお、本実施形態において、各パターン部18は、例えばステンレス鋼等の金属製の薄手の板材(後述するパターン基材18´)から作製されており、記録紙搬送方向に180LPI(Lines Per Inch)のピッチで配列されている。また、パターン部18の厚さは、スケール基材17よりも薄く、例えば、スケール基材17の厚みの1/3〜1/2程度となっている。
【0019】
図4に示すように、スケール基材17は、その幅が搬送ベルト3の幅に揃えられており、搬送ベルト3の全面を覆うように設けられている。検出用パターン19は、スケール基材17の幅方向一端部(図1において下側、図4において左側)であって、最大サイズの記録紙14から外れた位置に形成されている。そして、この検出用パターン19を構成する各パターン部18は、スケール基材17の肉厚内に埋め込まれている。この点については後述する。
【0020】
検出ヘッド7は、発光素子及び受光素子を備えた反射型の光学式センサーで構成され、搬送ベルト3のスケール基材17の検出用パターン19に対向する位置でスケール基材17との間に隙間を保って配設されている。この検出ヘッド7は、発光素子から搬送ベルト3に向けて出力された検出光がパターン部18によって反射され、反射された検出光が受光素子に入力されることによりパターン部18を検出する。つまり、検出ヘッド7からの出力信号(以下、エンコーダー信号と呼ぶ)は、検出光が受光素子に入力されると、LoレベルからHiレベルにパルス状に変化してON状態となる。そして、検出光がパターン部18から外れてスケール基材17で乱反射したり、スケール基材17に吸収されたりすると、エンコーダー信号は、HiレベルからLoレベルにパルス状に変化してOFF状態となる。そして、このエンコーダー信号は、プリンター1の図示しない制御部に出力される。したがって、制御部は、このエンコーダー信号に基づいて、搬送機構16(搬送ベルト3)による記録紙14の搬送量を把握することができる。また、このエンコーダー信号は、記録ヘッド2の圧力発生手段を駆動するための駆動信号の発生タイミングを規定する。
【0021】
記録ヘッド2は、図1に示すように、イエロー(Y)色のインクを吐出(噴射)するイエロー記録ヘッド2aと、マゼンタ(M)色のインクを吐出するマゼンタ記録ヘッド2bと、シアン(C)色のインクを吐出するシアン記録ヘッド2cと、ブラック(K)色のインクを吐出するブラック記録ヘッド2dとから構成されている。各色の記録ヘッド2a、2b、2c、2dのノズル面21(図2参照)には、複数のノズル(図示せず)が記録紙14の紙幅以上の長さに亘って配列形成されている。これらの記録ヘッド2a、2b、2c、2dは、ノズル面21を記録紙14に向けて、且つノズル面21と記録紙14との間に一定の隙間を保って配設されている。ここで、記録ヘッド2のインク吐出方式には、静電アクチュエーター方式、ピエゾ方式、膜沸騰方式などを採用することができる。
【0022】
次に、リニアスケール13の製造方法について説明する。
図5は、スケール基材17に検出用パターン19を形成するためのプレス機25の構成を説明する要部断面図である。例示したプレス機25は、台座(定盤)26、ストリッパープレート27、パンチホルダー28、及び、パンチ29等を備えて構成されている。パンチ29は、パターン部18の形成間隔の整数倍(例えば、2倍)の間隔で複数設けられている。ストリッパープレート27は、コイルスプリングなどの付勢部材を巻装したストリッパーボルト(図示せず)によって下方、即ち、台座26側に付勢された状態でパンチホルダー28に対して相対的に近接・離隔可能に取付けられている。
【0023】
ストリッパープレート27には、パンチ29が挿通されるガイド穴30が開設されている。このストリッパープレート27のガイド穴30に胴部29bを挿通し、パンチ先端部29aを下方に向けた状態で、複数のパンチ29がパンチホルダー28に取付けられている。このパンチホルダー28は、台座26に対して上下動可能に構成されている。
【0024】
スケール基材17に検出用パターン19を形成するには、まず、台座26の上面にスケール基材17を配置する。このスケール基材17の上面に、パターン部18の材料であるパターン基材18´を載置する。このパターン基材18´は、上述したように薄手の金属製板材である。そして、この状態でパンチホルダー28を台座26側に向けて下降させる。すると、まずストリッパープレート27の下面がパターン基材18´の表面(上面)に当接する。その後、コイルスプリングの付勢力に抗しながらパンチホルダー28をさらに下方に押し下げると、ストリッパープレート27のガイド穴30に案内されつつ、図6(a)に示すように、パンチ29(パンチ先端部29a)がパターン基材18´の表面側から裏面側に向けて押し込まれる。この際、パンチ29は、パターン基材18´の素材の一部を流動させながら内部に進入し、このパンチ29からの押圧力を受けたパターン基材18´の一部が、スケール基材17の弾性力に抗しつつパターン基材18´の裏面側に押し出されて膨隆部33となる。
【0025】
続いて、図6(b)に示すように、スケール基材17の弾性力に抗しながら、パンチ29をスケール基材17の肉厚方向の奥側(下側)へさらに押し込む。このときのパターン基材表面からパンチ下死点までの距離、即ち、スケール基材内へのパンチ29の押し込み量は、パターン基材18´の厚さの2倍以上であることが望ましい。これにより、膨隆部33がパターン基材18´の本体から完全に離脱して打ち抜かれ、スケール基材17の肉厚内に埋め込まれる。
【0026】
その後、パンチホルダー28を上昇させる。すると、下方に付勢されたストリッパープレート27がパターン基材18´に圧接したまま、パンチ29がスケール基材17およびパターン基材18´から引き抜かれる。その後、パンチホルダー28が上死点に戻るにつれて、ストリッパープレート27がパターン基材18´の表面から上方に離れる。そして、図6(c)に示すように、スケール基材17の肉厚内には、膨隆部33だった部分がパターン部18として埋め込まれて保持される。これにより、接着や蒸着によらずスケール基材17にパターン部18を形成することができる。また、雌型(ダイ)を用いる必要がないので、プレス機を簡素化することができる。
【0027】
以上のようにして、パターン基材18´とスケール基材17とを積層状態で順次送りながらスケール基材17にパターン部18を規定間隔H(本実施形態においては180LPI)で形成していく。これにより、図3に示すように、スケール基材17に複数のパターン部18が規定間隔Hで一列に列設されてストライプ状の検出用パターン19が形成される。
【0028】
このように、スケール基材17の表面上にパターン基材18´を積層した状態でパターン基材18´をスケール基材17に向けてプレス加工で打ち抜き、打ち抜いたパターン基材18´をスケール基材17の肉厚内に埋め込み保持させることでパターン部18を形成するので、検出用パターン19を構成するパターン部18の耐摩耗性を従来よりも向上させることが可能となる。即ち、例えば、制御信号を伝送するためのケーブルや帯電ローラー8等のプリンター1の構成部品に検出用パターン19が接触した場合におけるパターン部18の磨耗や剥離を抑制することができる。これにより、リニアエンコーダーの検出精度の低下を防止することが可能となる。
【0029】
なお、パターン部18の全体がスケール基材17の肉厚内に埋め込まれることが望ましい。これにより、耐摩耗性を一層向上させることができる。しかしながら、必ずしもパターン部18の全体がスケール基材17の肉厚内に埋め込まれていなくても良く、パターン部18の少なくとも一部がスケール基材17の肉厚内に埋め込まれていれば、従来よりも耐摩耗性を向上させることができる。
【0030】
また、上記実施形態においては、スケール基材17とパターン部18との間で光学反射率を変えた反射型光学スケールを例示したが、これには限られない。例えば、スケール基材17の表面(上面)に対してパターン部18を窪ませる又は突出させることによる凹凸を利用したスケール、或いは、パターン部18を着磁させることによる磁気スケール、又は、スケール基材17を透光性とする一方、パターン部18を遮光性とする透過型光学スケール等を採用することができる。また、リニアスケール13の構成に応じて、検出ヘッド7として接触式、磁気式、光学式など運用条件に合わせていずれかの方式のものを選択することができる。
要するに、パターン部18を検出することができるセンサーを適宜に選択して両者を組み合わせれば、使用目的に適した使用形態となる。以下、パターン部18の他の実施形態と併せて説明する。
【0031】
まず、パターン部18の全体をスケール基材17の肉厚内に埋め込む場合に、検出用パターン19は、スケール基材17の表面からパターン部18の表面までの深さを複数種類異ならせ、且つこの複数種類の深さを所定の順番で1つずつ設定し、この順番通りに繰り返して深さを異ならせたパターン部18から構成してもよい。例えば、図7に示すように、スケール基材17の表面からパターン部18の表面までの深さdが0.1ミリ、0.2ミリ、0.3ミリというように異なる3つのパターン部18d1,18d2,18d3を深さの小さいものから大きいものへ順に所定の間隔Hで配置し、この順番を繰り返すことにより検出用パターン19を構成してもよい。なお、異なる深さの種類は、前記した3種類に限定されるものではないし、深さの数値も適宜設定することができる。
【0032】
この様に、深さを異ならせたパターン部18を所定の順番で配置して検出用パターン19を構成すると、光学式センサーによりパターン部18を検出することができると共に各パターン部18の深さdを検出することができ、検出したパターン部18の深さdの順番に基づいてセンサーとの相対的移動方向を検出することができる。即ち、固定したセンサーにより移動中の検出用パターン19のパターン部18を検出して、その検出信号が深さの浅いものから深いものへと順に検出した場合には、図7(a)中の矢印で示す左側方向に移動していると判断することができ、深いものから浅いものへと順に検出した場合には逆方向であると判断することができる。
【0033】
センサーとの相対的移動方向を検出可能とするには、前記した深さを3種類異ならせたパターン部18を埋め込むものに限らず、3種類以上の異なる情報を持たせたパターン部18を使用すればよく、4種類や10種類などでもよい。例えば、図8に示す検出用パターン19の他の実施形態は、組成(素材)が異なる複数種類の金属製のパターン部18を所定の順番で1つずつ選択し、この順番通りに繰り返して配置することにより構成されている。具体的には、ステンレス製のパターン部18sus、その右隣に銅製のパターン部18cu、その右隣にアルミニューム製のパターン部18alというように3種類の異なる金属製のパターン部18を前記した所定の順番で繰り返して配置する。この様に構成しても、前記した実施形態と同様に、移動方向を判別することができる。なお、金属の組成は前記したものに限定されるものではなく、また、種類の数も3種類に限らず適宜設定することができる。
【0034】
また、検出用パターン19は、色彩が異なる複数種類のパターン部18を所定の順番で1つずつ選択し、この順番通りに繰り返して配置してもよい。具体的には、図9に示すように、赤色のプラスチック製パターン部18r、その右隣に白色のプラスチック製パターン部18w、その右隣に黄色のプラスチック製パターン部18yというように3種類の異なる色彩のプラスチック製のパターン部18を前記した所定の順番で繰り返して配置する。この様に構成しても、前記した実施形態と同様に、移動方向を判別することができる。なお、色彩は前記したものに限定されるものではなく、また、色彩の種類の数も3色に限定されずに適宜設定することができる。
【0035】
さらにまた、図10に示すように、鉄やニッケル等の磁性体からなるパターン部18mとアルミニューム等の非磁性体からなるパターン部18uとを所定の間隔Hで交互に配置して検出用パターン19を構成してもよい。この様な検出用パターン19では、高速時には磁気センサーで磁性体製のパターン部18mを検出し、低速時には光学式センサーで両方の検出用パターン部18m,18uを検出するなどして速度に応じて使い分けても良い。
【0036】
また、パターン部18の形状は、図3に例示したスリット状には限定されない。例えば、円形状や正方形状等、種々の形状のものを採用することができる。
【0037】
そして、以上では、搬送ベルト3による記録紙の搬送量を検出するリニアエンコーダーを例に挙げて説明したが、勿論、本発明に係るリニアエンコーダー(リニアスケール)を他の用途に用いることができる。例えば、記録ヘッドを往復移動させながら記録を行う構成のプリンターの場合、この記録ヘッドの主走査方向の移動位置や速度を検出するためのリニアエンコーダーとして用いることも可能である。
また、スケールの形状も長尺状に限られるものではなく、円盤状などその他の形状であっても良い。
さらに、エンコーダーを備えたエンコーダー装置は、プリンターでなくても、移動を行う移動部を備え、その移動部の位置や速度を測定する必要がある装置であればよい。
【符号の説明】
【0038】
1…プリンター,2…記録ヘッド,3…搬送ベルト,7…検出ヘッド,13…リニアスケール,14…記録紙,16…搬送機構,17…スケール基材,18…パターン部,19…検出用パターン,25…プレス機,26…台座,27…ストリッパープレート,28…パンチホルダー,29…パンチ,30…ガイド穴,33…膨隆部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケール基材の表面上にパターン基材を積層した状態でパターン基材をスケール基材に向けてプレス加工で打ち抜き、打ち抜いたパターン基材の少なくとも一部をスケール基材の肉厚内に埋め込み保持させることでパターン部を形成したことを特徴とするスケールの製造方法。
【請求項2】
前記パターン部を一定間隔で複数列設して検出用パターンを形成したことを特徴とする請求項1に記載のスケールの製造方法。
【請求項3】
前記パターン部の全体を、スケール基材の肉厚内に埋め込んだことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスケールの製造方法。
【請求項4】
前記打ち抜きは、前記スケール基材の位置に応じて、少なくとも互いに異なる2通りの打ち抜きを所定の順序で行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスケールの製造方法。
【請求項5】
スケール基材と、前記スケール基材の肉厚内に埋め込まれたパターン部と、を有し、複数の前記パターン部を一定間隔で列設して検出用パターンを形成したことを特徴とするスケール。
【請求項6】
前記パターン部の全体が、スケール基材の肉厚内に埋め込まれたことを特徴とすることを特徴とする請求項5に記載のスケール。
【請求項7】
前記検出用パターンは、組成が異なる複数種類の金属製のパターン部が所定の順番で繰り返されていることを特徴とする請求項5又は6に記載のスケール。
【請求項8】
前記検出用パターンは、色彩が異なる複数種類のパターン部が所定の順番で繰り返されていることを特徴とする請求項5又は6に記載のスケール。
【請求項9】
前記検出用パターンは、前記スケール基材の表面からパターン部の表面までの深さが複数種類異なり、且つこの複数種類の深さが所定の順番で繰り返されていることを特徴とする請求項6に記載のスケール。
【請求項10】
移動を行う移動部と、
請求項5から請求項9のいずれか一項に記載のスケールと、
当該スケールの検出用パターンを検出するセンサと、
を備えたことを特徴とするエンコーダー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−216703(P2009−216703A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29226(P2009−29226)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】