説明

スタンパ供給装置及びスタンパ供給方法

【課題】スタンパをスタンパホルダに積載する際におけるスタンパの脱落を抑制できる信頼性が高いスタンパ供給装置及びスタンパ供給方法を提供する。
【解決手段】スタンパ供給装置は、板状のスタンパ20の中心孔にピン部16が嵌合して台座部12の上に複数のスタンパ20を重ねた状態で保持可能であるスタンパホルダ22と、スタンパホルダ22のピン部16の変形の度合いを測定可能であるピン部測定装置(反射型センサ56)と、スタンパ20をスタンパホルダ22に積載するためのスタンパ積載装置と、を含み、ピン部16の変形の度合いが所定の基準の範囲内であるスタンパホルダ22にのみスタンパ積載装置がスタンパ20を積載し、ピン部16の変形の度合いが基準の範囲外であるスタンパホルダ22にはスタンパ積載装置がスタンパ20を積載しないように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心孔を有する板状のスタンパを供給するためのスタンパ供給装置及びスタンパ供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凹凸パターンの記録層を有する情報記録媒体を製造するために、被加工体の上に樹脂材料を塗布し、所定の凹凸パターンが形成されたスタンパを樹脂材料に当接させて樹脂材料に凹凸パターンを転写すると共にスタンパを介して樹脂材料に紫外線等のエネルギー線を照射して樹脂材料を硬化させる手法が知られている。尚、スタンパの材料としては各種の透光性の樹脂やガラス等が用いられている。
【0003】
例えば、2層以上の情報層を有する光記録媒体は、情報層と他の情報層との間に透光性のスペーサ層が設けられている。まず、凹凸パターンの基板の上に1層目の情報層を形成し、この上に紫外線硬化性の樹脂材料を塗布しスタンパを樹脂材料に当接させて樹脂材料に凹凸パターンを転写すると共にスタンパを介して樹脂材料に紫外線を照射して樹脂材料を硬化させることにより両面が凹凸パターンであるスペーサ層が形成される。このスペーサ層の上に2層目の情報層を形成することで2層の凹凸パターンの情報層を形成できる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
尚、光記録媒体の中心孔の直径は一般的に15mmであり、光記録媒体の記録領域の内径は約50mmである。このように光記録媒体の記録領域の内周は光記録媒体の中心孔の内周から15mm程度も離れているため、光記録媒体を製造するためのスタンパには光記録媒体と同様の直径が15mmの中心孔を形成すればよい。
【0005】
以下のような事情により磁気記録媒体を製造するためにも、このようにスタンパを用いて凹凸パターンの樹脂層を形成する手法を利用することが期待されている。
【0006】
ハードディスク等の磁気記録媒体は、記録層を構成する磁性粒子の微細化、材料の変更、ヘッド加工の微細化等の改良により著しい面記録密度の向上が図られており、今後も一層の面記録密度の向上が期待されている。
【0007】
しかしながら、ヘッド加工の限界、記録磁界の広がりに起因する記録対象のトラックに隣り合うトラックへの誤った情報の記録、再生時のクロストーク等の問題が顕在化し、従来の改良手法による面記録密度の向上は限界にきており、一層の面記録密度の向上を実現可能である磁気記録媒体の候補として、記録層を多数の記録要素に分割してなるディスクリートトラックメディアやパターンドメディアが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
記録層を凹凸パターンに加工する技術としては、Ar等の希ガスを用いたIBE(イオンビームエッチング)やNHガス等の含窒素ガスが添加されたCOガスを反応ガスとするRIE(反応性イオンエッチング)を利用しうる。
【0009】
具体的には、基板の上に連続膜の記録層等が形成された被加工体の上に凹凸パターンの樹脂層を形成し、この凹凸パターンの樹脂層に基づいてエッチングすることにより記録層を凹凸パターンに加工することが可能である。尚、記録層と樹脂層の層との間に一又は複数のマスク層を形成し、樹脂層に基づいてマスク層、記録層を順次エッチングして凹凸パターンに加工することも提案されている。
【0010】
記録層の上に凹凸パターンの樹脂層を形成するために上記のようなスタンパを用いた手法を利用することが期待されている。尚、ディスクリートトラックメディアやパターンドメディアのような磁気記録媒体にも光記録媒体と同様に中心孔が形成されており、磁気記録媒体を製造するためのスタンパにも中心孔が形成される。ディスクリートトラックメディアやパターンドメディアでは、中心から半径が5mm程度(直径が10mm程度)の領域から記録領域として使用されることが想定されており、これに対応してスタンパにも中心から半径が5mm程度の領域から記録層の凹凸パターンに相当する凹凸パターンが形成されると想定されている。
【0011】
ディスクリートトラックメディアやパターンドメディアのような磁気記録媒体を量産する生産ラインでは、このような板状のスタンパをインプリント装置に供給する場合、複数のスタンパをスタンパホルダで保持した状態でインプリント装置に供給する案が考えられる。スタンパホルダとしては、例えば台座部及び棒状で長手方向の一方の基端部において台座部に取付けられたピン部を有し中心孔を有する板状のスタンパの中心孔にピン部が嵌合して台座部の上に複数のスタンパを重ねた状態で保持可能である構造が考えられる。
【0012】
ディスクリートトラックメディアやパターンドメディアを製造するためのスタンパには、上記のように中心から半径が5mm程度の領域から記録層の凹凸パターンに相当する凹凸パターンが形成されると想定されているのでスタンパの中心孔の直径は10mmよりも小さくする必要がある。更に、中心孔の内周が凹凸パターンに近いと紫外線等の照射で樹脂材料を硬化させる際にむらが生じることが懸念されるため、スタンパの中心孔の内周は凹凸パターンが形成される領域の内周から充分に離れている必要がある。又、スタンパの中心孔はパンチによる打ち抜き等で形成され、中心孔の内周の近傍は不規則に変形している可能性があるため、この点でも中心孔の内周は凹凸パターンが形成される領域の内周から充分に離れている必要がある。従って、ディスクリートトラックメディアやパターンドメディアを製造するためのスタンパの中心孔は直径が数mm程度(例えば4mm程度)の小さな孔である必要がある。
【0013】
中心孔にピン部が嵌合して複数のスタンパを重ねた状態で保持するこのようなスタンパホルダからスタンパを1枚ずつ自動的にピックアップし、ピックアップされたスタンパの転写領域が被加工体に接触するようにピックアップされたスタンパを被加工体に設置し、更に加圧用治具でスタンパ及び被加工体を加圧し被加工体に凹凸パターンを転写する工程を繰り返すことによりディスクリートトラックメディアやパターンドメディアのような磁気記録媒体を量産することが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−40459号公報
【特許文献2】特開平9−97419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記のような磁気記録媒体を製造するためのスタンパをスタンパホルダに積載しようと試みたところ、光記録媒体を製造するためのスタンパをスタンパホルダに積載する場合に比べてスタンパの中心孔にスタンパホルダのピン部が嵌合しにくいことがあった。このためスタンパがスタンパホルダに積載されずに脱落してしまうことがあった。
【0016】
本発明は、以上の問題に鑑みてなされたものであって、スタンパをスタンパホルダに積載する際におけるスタンパの脱落を抑制できる信頼性が高いスタンパ供給装置及びスタンパ供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、台座部及び棒状で長手方向の一方の基端部において台座部に取付けられたピン部を有し中心孔を有する板状のスタンパの中心孔にピン部が嵌合して台座部の上に複数のスタンパを重ねた状態で保持可能であるスタンパホルダと、スタンパホルダのピン部の変形の度合いを測定可能であるピン部測定装置と、スタンパをスタンパホルダに積載するためのスタンパ積載装置と、を含み、ピン部測定装置において測定されたピン部の変形の度合いが所定の基準の範囲内であるスタンパホルダにのみスタンパ積載装置がスタンパを積載し、ピン部の変形の度合いが基準の範囲外であるスタンパホルダにはスタンパ積載装置がスタンパを積載しないように構成されたスタンパ供給装置により上記目的を達成するものである。
【0018】
又、本発明は、台座部及び棒状で長手方向の一方の基端部において台座部に取付けられたピン部を有し中心孔を有する板状のスタンパの中心孔にピン部が嵌合して台座部の上に複数のスタンパを重ねた状態で保持可能であるスタンパホルダのピン部の変形の度合いを測定するピン部測定工程と、ピン部測定工程において測定されたピン部の変形の度合いが所定の基準の範囲内であるか否かを判定するピン部変形判定工程と、ピン部の変形の度合いが基準の範囲内であるスタンパホルダにスタンパを積載するスタンパ積載工程と、を含み、スタンパ積載工程においてピン部の変形の度合いが基準の範囲外であるスタンパホルダにはスタンパを積載しないスタンパ供給方法により上記目的を達成するものである。
【0019】
発明者らは、本発明に想到する過程において、スタンパの中心孔にスタンパホルダのピン部が嵌合しないことがある原因について鋭意検討した。発明者らは、当初、作製されたスタンパホルダの形状的な精度に問題があると考えた。しかしながら、使用前にスタンパホルダの形状等を検査し、検査で問題が発見されなかったスタンパホルダを使用しても、スタンパの中心孔にスタンパホルダのピン部が嵌合しないことがあった。
【0020】
発明者らは、検査で問題が発見されなかったスタンパホルダを使用してもスタンパの中心孔にスタンパホルダのピン部が嵌合しないことがある原因について更に鋭意検討した。この結果、検査では問題がなかったスタンパホルダのピン部が繰り返し使用されるうちに変形し、スタンパの中心孔にスタンパホルダのピン部が嵌合しにくくなることを突き止めた。スタンパホルダを搬送する際にピン部を保持したり、誤ってスタンパホルダを落下させたこと等が原因でピン部が変形したと推定される。尚、ピン部の先端部の半径方向の変形量は1mm以下であり目視で判別することは困難なレベルであるが、この程度の変形が生じただけでもスタンパの中心孔にスタンパホルダのピン部が嵌合しにくくなる。
【0021】
上記のようにディスクリートトラックメディアやパターンドメディアを製造するためのスタンパの中心孔は数mm程度(例えば4mm程度)の小さな直径である必要があるため、スタンパの中心孔に嵌合するスタンパホルダのピン部の直径も数mm程度(例えば4mm程度)である必要がある。このようにディスクリートトラックメディアやパターンドメディアを用のスタンパを保持するためのスタンパホルダのピン部は細いため、検査では問題がなかったスタンパホルダであっても繰り返し使用されるうちにピン部が変形することがあると考えられる。
【0022】
尚、上記のように光記録媒体用のスタンパには直径が15mmの中心孔が形成され、スタンパホルダのピン部の直径も15mm程度である。このように光記録媒体用のスタンパを保持するためのスタンパホルダのピン部は太いため、検査で問題がなければ、その後繰り返し使用されてもスタンパホルダのピン部の変形が生じにくいと考えられる。
【0023】
これに対し、測定されたピン部の変形の度合いが所定の基準の範囲内であるスタンパホルダにのみスタンパを積載し、ピン部の変形の度合いが基準の範囲外であるスタンパホルダにはスタンパを積載しないようにすることで、スタンパをスタンパホルダに積載する際におけるスタンパの脱落を抑制できる。
【0024】
尚、反射型センサを用いてピン部の先端部に基端部と反対側から投光し、且つ、先端部からの反射光を受光してピン部の先端部からの反射光の強度に基づいてスタンパホルダのピン部の変形の度合いを測定することが好ましい。この手法はピン部測定装置が簡単な構造でありながら、目視で判別することは困難なレベルであるピン部の先端部の半径方向の変位を高精度で測定することができる。又、ピン部が撓む方向に拘わらずピン部の先端部の半径方向の変位を確実に測定できる。
【0025】
即ち、次のような本発明により、上記目的は達成される。
【0026】
(1)台座部及び棒状で長手方向の一方の基端部において前記台座部に取付けられたピン部を有し中心孔を有する板状のスタンパの前記中心孔に前記ピン部が嵌合して前記台座部の上に複数の前記スタンパを重ねた状態で保持可能であるスタンパホルダと、前記スタンパホルダの前記ピン部の変形の度合いを測定可能であるピン部測定装置と、前記スタンパを前記スタンパホルダに積載するためのスタンパ積載装置と、を含み、前記ピン部測定装置において測定された前記ピン部の変形の度合いが所定の基準の範囲内であるスタンパホルダにのみ前記スタンパ積載装置が前記スタンパを積載し、前記ピン部の変形の度合いが前記基準の範囲外であるスタンパホルダには前記スタンパ積載装置が前記スタンパを積載しないように構成されたことを特徴とするスタンパ供給装置。
【0027】
(2) (1)において、前記ピン部測定装置は、前記ピン部の先端部に前記基端部と反対側から投光可能、且つ、前記先端部からの反射光を受光可能である反射型センサを有し、前記反射型センサが受光する前記ピン部の前記先端部からの反射光の強度に基づいて前記スタンパホルダの前記ピン部の変形の度合いを測定可能であることを特徴とするスタンパ供給装置。
【0028】
(3) (2)において、前記ピン部の前記先端部の先端面は略球面形であることを特徴とするスタンパ供給装置。
【0029】
(4) (2)又は(3)において、前記ピン部の前記先端部の側面は前記基端部から離れる方向に外径が縮小する略円錐面であることを特徴とするスタンパ供給装置。
【0030】
(5) (1)乃至(4)のいずれかにおいて、前記スタンパ積載装置により前記スタンパホルダに前記スタンパが積載されるスタンパ積載位置から前記スタンパホルダを搬出するためのスタンパホルダ搬出装置を更に含み、前記ピン部の変形の度合いが前記基準の範囲外であるスタンパホルダを前記スタンパが積載されていない状態で搬出するように構成されたことを特徴とするスタンパ供給装置。
【0031】
(6) (1)乃至(5)のいずれかにおいて、前記ピン部の変形の度合いが前記基準の範囲外であるスタンパホルダを回収するためのスタンパホルダ回収装置を更に含むことを特徴とするスタンパ供給装置。
【0032】
(7) (1)乃至(6)のいずれかにおいて、前記ピン部は前記台座部に着脱自在であり前記ピン部が交換可能であることを特徴とするスタンパ供給装置。
【0033】
(8)台座部及び棒状で長手方向の一方の基端部において前記台座部に取付けられたピン部を有し中心孔を有する板状のスタンパの前記中心孔に前記ピン部が嵌合して前記台座部の上に複数の前記スタンパを重ねた状態で保持可能であるスタンパホルダの前記ピン部の変形の度合いを測定するピン部測定工程と、前記ピン部測定工程において測定された前記ピン部の変形の度合いが所定の基準の範囲内であるか否かを判定するピン部変形判定工程と、前記ピン部の変形の度合いが前記基準の範囲内であるスタンパホルダに前記スタンパを積載するスタンパ積載工程と、を含み、前記スタンパ積載工程において前記ピン部の変形の度合いが前記基準の範囲外であるスタンパホルダには前記スタンパを積載しないことを特徴とするスタンパ供給方法。
【0034】
(9) (8)において、前記ピン部測定工程において反射型センサを用いて前記ピン部の先端部に前記基端部と反対側から投光し、且つ、前記先端部からの反射光を受光して前記反射型センサが受光する前記ピン部の前記先端部からの反射光の強度に基づいて前記スタンパホルダの前記ピン部の変形の度合いを測定することを特徴とするスタンパ供給方法。
【0035】
(10) (9)において、前記ピン部の前記先端部の先端面は略球面形であることを特徴とするスタンパ供給方法。
【0036】
(11) (9)又は(10)において、前記ピン部の前記先端部の側面は前記基端部から離れる方向に外径が縮小する略円錐面であることを特徴とするスタンパ供給方法。
【0037】
(12) (8)乃至(11)のいずれかにおいて、前記スタンパホルダに前記スタンパが積載されるスタンパ積載位置から前記スタンパホルダを搬出するスタンパホルダ搬出工程を更に含み、前記スタンパホルダ搬出工程において前記ピン部の変形の度合いが前記基準の範囲外であるスタンパホルダを前記スタンパが積載されていない状態で搬出することを特徴とするスタンパ供給方法。
【0038】
(13) (8)乃至(12)のいずれかにおいて、前記ピン部の変形の度合いが前記基準の範囲外であるスタンパホルダを回収するスタンパホルダ回収工程を更に含むことを特徴とするスタンパ供給方法。
【0039】
(14) (8)乃至(13)のいずれかにおいて、前記ピン部は前記台座部に着脱自在であり前記ピン部が交換可能であり、前記スタンパホルダ回収工程の後に前記ピン部を交換するピン部交換工程が設けられたことを特徴とするスタンパ供給方法。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、スタンパをスタンパホルダに積載する際におけるスタンパの脱落を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスタンパ供給装置の概略構造を模式的に示す平面図
【図2】同スタンパ供給装置で供給されるスタンパの構造を拡大して模式的に示す平面図
【図3】同スタンパ供給装置のスタンパホルダの構造を拡大して示す側面図
【図4】同スタンパホルダのピン部の先端部を更に拡大して示す側面図
【図5】同スタンパ供給装置を用いたスタンパ供給方法の概要を示すフローチャート
【図6】前記ピン部の先端部が変位した状態を模式的に示す側面図
【図7】本発明の第2実施形態に係るスタンパホルダのピン部の先端部を拡大して示す側面図
【図8】本発明の実施例1に係るピン部の先端部の変位と反射光の強度との関係を示すグラフ
【図9】本発明の実施例2に係るピン部の先端部の変位と反射光の強度との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0043】
図1〜4に示されるように、本発明の第1実施形態に係るスタンパ供給装置10は、台座部12及び棒状で長手方向の一方の基端部14において台座部12に取付けられたピン部16を有し中心孔18を有する板状のスタンパ20の中心孔18にピン部16が隙間嵌め状態で嵌合して台座部12の上に複数のスタンパ20を重ねた状態で保持可能であるスタンパホルダ22と、スタンパホルダ22のピン部16の変形の度合いを測定可能であるピン部測定装置24と、スタンパ20をスタンパホルダ22に積載するためのスタンパ積載装置26と、を含み、ピン部測定装置24において測定されたピン部16の変形の度合いが所定の基準の範囲内であるスタンパホルダ22にのみスタンパ積載装置26がスタンパ20を積載し、ピン部16の変形の度合いが基準の範囲外であるスタンパホルダ22にはスタンパ積載装置26がスタンパ20を積載しないように構成されている。
【0044】
スタンパ供給装置10は、更にピン部測定装置24にスタンパホルダ22を搬入するためのスタンパホルダ搬入装置28と、スタンパ積載装置26によりスタンパホルダ22にスタンパ20が積載されるスタンパ積載位置30にピン部測定装置24からスタンパホルダ22を移載するためのスタンパホルダ移載装置32と、を備えている。
【0045】
又、スタンパ供給装置10は、スタンパ積載位置30からスタンパホルダ22を搬出するためのスタンパホルダ搬出装置34を備え、ピン部測定装置24で測定されたピン部16の変形の度合いが基準の範囲外であるスタンパホルダ22をスタンパ20が積載されていない状態で搬出するように構成されている。
【0046】
又、スタンパ供給装置10は、ピン部16の変形の度合いが基準の範囲外であるスタンパホルダ22を回収するためのスタンパホルダ回収装置36を備えている。
【0047】
又、スタンパ供給装置10は、スタンパピックアップ位置38にスタンパ20を搬入するためのスタンパ搬入装置40を備えている。
【0048】
又、スタンパ供給装置10は、ピン部測定装置24、スタンパ積載装置26、スタンパホルダ搬入装置28、スタンパホルダ移載装置32、スタンパホルダ搬出装置34、スタンパホルダ回収装置36等を制御するための制御装置42を備えている。
【0049】
スタンパ20の外径は例えば60〜120mmである。又、中心孔18の直径は4〜8mmである。スタンパ20の材料としては、例えばポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリル、ガラス等のエネルギー線が透過可能である材料を用いることができる。尚、本出願書類において「エネルギー線」という用語は、流動状態の特定の樹脂を硬化させる性質を有する、例えば紫外線等の電磁波、電子線等の粒子線の総称という意義で用いることとする。スタンパ20の転写領域の外周の直径は33.0〜88.9mm(1.3〜3.5インチ)である。又、転写領域の内周の直径は10〜15mmである。転写領域には、例えばディスクリートトラックメディアやパターンドメディアのトラックピッチに対応する微細なピッチの凹凸パターンが形成されている。
【0050】
図3に示されるように、スタンパホルダ22は、台座部12、ピン部16及びスタンパ受部44を備えている。
【0051】
台座部12は、上端近傍にフランジ部46Aが形成された略円柱状体の上部46と、上部46よりも外径が大きい略円板状体で上部44と同軸的に配置され上端近傍にフランジ部48Aが形成された下部48と、を有している。台座部12の中心には、上部46の上面から下部48の途中の位置までピン部16の基端部14と嵌合可能な上部中心孔12Aが形成されている。尚、上部中心孔12Aの下端と下部46の下面との間には上部中心孔12Aよりも直径が小さい下部中心孔12Bが形成されている。
【0052】
上部46におけるフランジ部46Aよりも下の部分(フランジ部46Aとフランジ部48Aとの間の部分)は、中心軸を含む平面に対して対称的に固定部46Bとロック部材46Cとに略二等分されている。固定部46Bは、フランジ部46A及び下部48と一体である。一方、ロック部材46Cはこれらの他の部分から取り外し可能であり、これらの他の部分に嵌合している。固定部46B及びロック部材46Cはピン部16の基端部14を挟んで保持するように構成されている。又、固定部46B及びロック部材46Cは、一対のねじ46Dにより締結されており、ねじ46Dの軸力によりピン部16の基端部14を固定するようになっている。
【0053】
ピン部16は略丸棒状体で、図4に示されるように、ピン部16の先端部50の先端面52は略球面形である。又、先端部50の側面54は基端部14から離れる方向に外径が縮小する略円錐面である。固定部46B及びロック部材46Cを締結するねじ46Dを緩めることによりピン部16は台座部12から取外し可能である。従って、スタンパホルダ22はピン部16だけを交換することが可能である。
【0054】
スタンパ受部44は、台座部12の上に同軸的に配置された、台座部12の上部46のフランジ部46Aよりも直径が大きい略円板状体で、中心にはピン部16と嵌合可能な中心孔が形成されている。スタンパ受部44の上面における中央部及び外周部を除く部分には中央部及び外周部よりも凹んだ環状の凹部が形成されている。環状の凹部はスタンパ20の転写領域(凹凸パターンが形成された領域)に相当する部分に形成されておりスタンパ20の転写領域に接触しないで中央部及び外周部においてスタンパ20を下方から支持するように構成されている。
【0055】
ピン部測定装置24は、ピン部16の先端部50に基端部14と反対側から投光可能、且つ、先端部50からの反射光を受光可能である反射型センサ56を有し、反射型センサ56が受光するピン部16の先端部50からの反射光の強度に基づいてスタンパホルダ22のピン部16の変形の度合いを測定可能である。ピン部測定装置24においてスタンパホルダ22は、台座部12の下部48等を基準に所定の測定位置に位置決めされて保持されるようになっている。図4に示されるように、反射型センサ56は、投光する光線の中心が、この測定位置に保持された、設計値(設計的な中央値)に対して誤差がないスタンパホルダ22のピン部16の先端部50の先端面52の中心に一致するように設置されている。又、ピン部測定装置24は、必要に応じて反射型センサ56が受光した反射光の強度を増幅するためのアンプ等を備える。
【0056】
スタンパ積載装置26は、アーム26Aの先端部においてスタンパ20の裏面を負圧により吸着して保持し、アーム26Aが回転することによりスタンパピックアップ位置38からスタンパ積載位置30まで搬送するように構成されている。スタンパホルダ22は、台座部12の下部48等を基準にスタンパ積載位置30に位置決めされて保持されるようになっている。スタンパ積載装置26は、スタンパ積載位置30に保持された、設計値に対して誤差がないスタンパホルダ22のピン部16の中心とスタンパ20の中心とが一致するようにスタンパ20をスタンパホルダ22の上方に搬送した後、スタンパ20を解放するように構成されている。尚、スタンパ積載装置26は、アーム26Aの先端部においてスタンパ20の外周部を保持する構成としてもよい。
【0057】
スタンパホルダ搬入装置28、スタンパホルダ移載装置32、スタンパホルダ搬出装置34、スタンパ搬入装置40は、例えばベルトコンベア、ローラコンベア等である。スタンパ搬入装置40は、例えば射出成形機(図示省略)で成形されたスタンパを搬入する。スタンパ20が積載されたスタンパホルダ22は、スタンパホルダ搬出装置34を介してインプリント装置(図示省略)に搬送される。又、インプリント装置にスタンパ20が供給されて空になったスタンパホルダ22は、スタンパホルダ搬入装置28を介してピン部測定装置24に搬入される。スタンパ搬入装置40の近傍にはスタンパ20の静電気を除去するための除電装置(図示省略)が設置されている。又、スタンパ20が射出成形機等で成形される場合、スタンパ搬入装置40は、スタンパ20を所定の時間保持してスタンパ20の温度を常温程度に低下させる役割を担う。
【0058】
スタンパホルダ回収装置36は、アーム36Aの先端部においてスタンパホルダ22を台座部12のフランジ部46A又は48A等において保持し、アーム36Aが回転することによりスタンパホルダ搬出装置34の外にスタンパホルダ22を移載して回収するように構成されている。
【0059】
制御装置42は、マイクロコンピュータ、パーソナルコンピュータ等のコンピュータである。
【0060】
次に、図5のフローチャートに沿ってスタンパ供給装置10を用いたスタンパ供給方法について説明する。
【0061】
まず、スタンパホルダ搬入装置28でスタンパホルダ22をピン部測定装置24に搬入する(S102)。
【0062】
次に、スタンパホルダ22のピン部16の変形の度合いを測定する(S104)。具体的には、スタンパホルダ22をピン部測定装置24の測定位置に保持し、反射型センサ56を用いてピン部16の先端部50に基端部14と反対側から投光し、且つ、先端部50からの反射光を受光して反射型センサ56が受光するピン部16の先端部50からの反射光の強度に基づいてピン部16の変形の度合いを測定する。設計値に対して誤差がないスタンパホルダ22であれば、反射型センサ56が投光する光線の中心がピン部16の先端部50の先端面52の中心に一致し、反射型センサ56が受光する先端部50からの反射光の強度は最も強くなる。一方、図6に示されるように、ピン部16が変形しており、ピン部16の先端部50の位置が設計的な正規の位置からずれている場合、反射型センサ56が投光する光線の中心と、ピン部16の先端部50の先端面52の中心とにずれが生じ、反射型センサ56が受光する先端部50からの反射光の強度は相対的に弱くなる。設計的な正規の位置からのピン部16の先端部50の実際の位置のずれ量が大きい程、反射型センサ56が受光する先端部50からの反射光の強度は弱くなる傾向がある。従って、反射型センサ56が受光するピン部16の先端部50からの反射光の強度に基づいてピン部16の変形の度合いを測定することができる。
【0063】
次に、ピン部測定工程(S104)において測定されたピン部16の変形の度合いが所定の基準の範囲内であるか否かを制御装置42が判定する(S106)。例えば、反射型センサ56が受光するピン部16の先端部50からの反射光の強度が所定の閾値以上の場合、ピン部16の変形の度合いが基準の範囲内であると判定する。一方、反射型センサ56が受光するピン部16の先端部50からの反射光の強度が前記閾値よりも小さい場合、ピン部16の変形の度合いが基準の範囲外であると判定する。
【0064】
次に、スタンパホルダ移載装置32でスタンパホルダ22をピン部測定装置24からスタンパ積載位置30に移載してスタンパ積載位置30に保持し、スタンパホルダ22にスタンパ20を積載する(S108)。具体的には、スタンパ搬入装置40に保持されているスタンパ20をスタンパ積載装置26がスタンパピックアップ位置38においてピックアップし、スタンパ積載位置30に移載して、スタンパ積載位置30に保持されたスタンパホルダ22の中心とスタンパ20の中心とが一致するようにスタンパ20をスタンパホルダ22の上方に搬送した後、スタンパ20を解放する。スタンパ20は自重により落下しつつ中心孔18においてスタンパホルダ22のピン16に嵌合してスタンパ受け44の上に積載される。この積載作業を繰り返すことにより、複数のスタンパ20がスタンパホルダ22に順次積載される。
【0065】
尚、スタンパ搬入装置40の近傍に設置された除電装置によりスタンパ20の静電気は除去されている。又、スタンパ20が射出成形機等で成形される場合、スタンパ20は図示しない搬送装置で射出成形機からスタンパ搬入装置40に移載され、スタンパ搬入装置40において所定の時間保持されることによりスタンパ20の温度は常温程度に低下している。
【0066】
この工程(S108)ではピン部16の変形の度合いが基準の範囲内であるスタンパホルダ22にのみスタンパ20を積載し、ピン部16の変形の度合いが基準の範囲外であるスタンパホルダ22にはスタンパ20を積載しない。
【0067】
次に、スタンパ積載位置30からスタンパホルダ22を搬出する(S110)。この工程(S110)では、ピン部16の変形の度合いが基準の範囲内であるスタンパホルダ22をスタンパ20が積載された状態で搬出する。一方、ピン部16の変形の度合いが基準の範囲外であるスタンパホルダ22をスタンパ20が積載されていない状態で搬出する。
【0068】
ピン部16の変形の度合いが基準の範囲内であるスタンパホルダ22はスタンパ20を積載した状態でインプリント装置に搬送され、インプリントが行われる(S112)。具体的には、インプリント装置において、スタンパホルダ22からスタンパ20が1枚ずつピックアップされてディスクリートトラックメディアやパターンドメディアの記録層等の凹凸パターンに相当する凹凸パターンの転写が実行される。
【0069】
インプリント装置にスタンパ20が供給されて空になったスタンパホルダ22は、スタンパホルダ搬入装置28を介して再度ピン部測定装置24に搬入される(S102)。
【0070】
一方、ピン部16の変形の度合いが基準の範囲外でありスタンパ20が積載されていないスタンパホルダ22は、スタンパホルダ回収装置36によりスタンパホルダ搬出装置34の外に移載されて回収される(S200)。回収されたスタンパホルダ22は、ピン部16が交換される(S202)。ピン部16が交換されたスタンパホルダ22は、スタンパホルダ搬入装置28を介して再度ピン部測定装置24に搬入される。
【0071】
生産を続行するか否かを判断し(S114)、生産を続行する場合は、上記の工程を繰り返す。一方、例えば所定の数の製品の生産が完了し、生産を終了する場合は、スタンパホルダ22を用いたスタンパ20の供給を終了する。
【0072】
上記のように、スタンパ積載工程(S108)ではピン部16の変形の度合いが基準の範囲内であるスタンパホルダ22にのみスタンパ20を積載し、ピン部16の変形の度合いが基準の範囲外であるスタンパホルダ22にはスタンパ20を積載しない。従って、スタンパ20をスタンパホルダ22に積載する際におけるスタンパ20の脱落を防止又は抑制できる。
【0073】
又、ピン部測定工程(S104)において反射型センサ56を用いてピン部16の先端部50に基端部14と反対側から投光し、且つ、先端部50からの反射光を受光して反射型センサ56が受光するピン部16の先端部50からの反射光の強度に基づいてスタンパホルダ22のピン部16の変形の度合いを測定するので、ピン部測定装置24が簡単な構造でありながら、目視で判別することは困難なレベルであるピン部16の先端部50の半径方向の例えば1mm以下の変位を高精度で測定することができる。
【0074】
又、反射型センサ56を用いてピン部16の先端部50に基端部14と反対側から投光し、且つ、先端部50からの反射光を受光して反射型センサ56が受光するピン部16の先端部50からの反射光の強度に基づいてスタンパホルダ22のピン部16の変形の度合いを測定するので、ピン部16が撓む方向に拘わらずピン部16の先端部50の半径方向の変位を確実に測定できる。
【0075】
又、ピン部16の先端部50の先端面52が略球面形であるので、ピン部16の先端部50の半径方向の変位に対する反射光の強度変化の割合が大きくなり、ピン部16の先端部50の半径方向の変位の測定精度が高められている。
【0076】
又、ピン部16の先端部50の側面54が基端部14から離れる方向に外径が縮小する略円錐面であるので、この点でもピン部16の先端部50の半径方向の変位に対する反射光の強度変化の割合が大きくなり、ピン部16の先端部50の半径方向の変位の測定精度が高められている。
【0077】
又、ピン部16の変形の度合いが基準の範囲内であるスタンパホルダ22にのみスタンパ20を積載し、ピン部16の変形の度合いが基準の範囲外であるスタンパホルダ22にはスタンパ20を積載しないので、スタンパ20の中心孔18とピン部16とのクリアランスを小さくでき、複数のスタンパ20を位置精度良く積層することができる。従って、隣り合うスタンパ20の不適切な接触や摩擦を防止又は抑制でき、次工程(インプリント工程)においてスタンパ20を使用する際のエラーを防止又は抑制できる。
【0078】
又、ピン部16は台座部12に着脱自在でありピン部12が交換可能であるので、ピン部16の変形の度合いが所定の基準の範囲外であるスタンパホルダ22は回収された後ピン部16のみの交換で再利用することができ生産コストの低減に寄与する。
【0079】
又、スタンパ供給装置10は、ピン部16の変形の度合いが基準の範囲外であるスタンパホルダ22を回収するためのスタンパホルダ回収装置36を備えているので、ピン部16の変形の度合いが基準の範囲外であるスタンパホルダ22の回収が容易である。
【0080】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0081】
上記第1実施形態に係るピン部16は先端部50の先端面52が略球面形であるのに対し、図7に示されるように本第2実施形態に係るピン部60は、先端部62の先端面64がピン部60の長手方向に垂直な平面であることを特徴としている。尚、先端面64の外周は円形である。又、ピン部60の側面66はピン部16の側面54と同様に略円錐面である。他の構成についても上記第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0082】
このように先端部62の先端面64がピン部60の長手方向に垂直な平面である場合も、上記第1実施形態と同様に、目視で判別することは困難なレベルであるピン部60の先端部62の半径方向の変位を高精度で測定することができる。又、ピン部60が撓む方向に拘わらずピン部60の先端部62の半径方向の変位を確実に測定できる。
【0083】
尚、上記第1及び第2実施形態において、スタンパホルダ搬出工程(S110)において、ピン部16(60)の変形の度合いが基準の範囲外であるスタンパホルダ22はスタンパ20が積載されていない状態でスタンパホルダ搬出装置34でスタンパ積載位置30から搬出され、スタンパホルダ回収装置36によりスタンパホルダ搬出装置34の外に移載されて回収される(S200)が、ピン部16(60)の変形の度合いが基準の範囲外であるスタンパホルダ22はスタンパ積載位置30から回収されてもよい。この場合、スタンパホルダ搬出工程(S110)では、ピン部16(60)の変形の度合いが基準の範囲内でありスタンパ20が積載されたスタンパホルダ22だけがスタンパホルダ搬出装置34で搬出される。
【0084】
又、上記第1及び第2実施形態において、ピン部16(60)の変形の度合いが基準の範囲外であるスタンパホルダ22はスタンパホルダ回収装置36で回収されているが、ピン部16(60)の変形の度合いが基準の範囲外であるスタンパホルダ22を人手により回収してもよい。
【0085】
又、上記第1及び第2実施形態において、ピン部16(60)は台座部12に着脱自在でありスタンパホルダ22はピン部12(60)のみの交換が可能であるが、例えば、台座部のコストが比較的低いような場合には、スタンパホルダはピン部と台座部とが分離できない構成としてもよい。この場合、ピン部の変形の度合いが基準の範囲外であるスタンパホルダは、ピン部だけでなく台座部も含めて他のスタンパホルダと交換すればよい。
【0086】
又、上記第1及び第2実施形態において、ピン部16(60)の先端部50(62)の側面54(66)は基端部14から離れる方向に外径が縮小する略円錐面であるが、ピン部16(60)の先端部50(62)の半径方向の変位を高精度で測定できれば、ピン部16(60)の先端部50(62)の側面の形状は特に限定されない。例えば三角錐や四角錐等の角錐の側面でもよい。又、先端部よりも下の部分と直径が等しい円筒面でもよい。又、先端部よりも下の部分よりも直径が小さい円筒面でもよい。
【0087】
又、上記第1実施形態においてピン部16の先端部50の先端面52は略球面形であり、上記第2実施形態においてピン部60の先端部62の先端面64はピン部60の長手方向に垂直な平面であるが、ピン部の先端部の半径方向の変位を高精度で測定できれば、ピン部の先端部の先端面の形状も特に限定されない。
【0088】
又、上記第1及び第2実施形態において、ピン部測定工程(S104)において反射型センサ56を用いてピン部16(60)の先端部50(62)に基端部14と反対側から投光し、且つ、先端部50(62)からの反射光を受光して反射型センサ56が受光するピン部16(60)の先端部50(62)からの反射光の強度に基づいてスタンパホルダ22のピン部16(60)の変形の度合いを測定しているが、ピン部16(60)の先端部50(62)の半径方向の変位を高精度で測定できれば、ピン部測定装置の構造も特に限定されない。例えば、ピン部の先端部に水平方向(軸線方向に垂直な方向)の貫通孔を形成し、透過型センサを用いて、設計的な誤差がないスタンパホルダのピン部の先端部の貫通孔を光線が透過するように投光器を設置し、この投光器が投光する光線を受光するように受光器を設置して、受光器が受光する透過光の強度に基づいてスタンパホルダのピン部の変形の度合いを測定してもよい。この場合も、ピン部の先端部の半径方向の変位が大きい程、受光器が受光する透過光の強度は小さくなる。尚、この場合、例えばピン部の先端部に十字上の貫通孔を形成し、透過型センサを2個用いて、設計的な誤差がないスタンパホルダのピン部の先端部の各貫通孔を光線が透過するように2つの透過型センサの投光器を設置することが好ましい。
【0089】
又、上記第1及び第2実施形態において、ディスクリートトラックメディア又はパターンドメディアのような磁気記録媒体を製造するためにインプリント装置にスタンパ20を供給する例が示されているが、光記録媒体等の他の情報記録媒体の製造や半導体製品等の情報記録媒体以外の製品の製造にも本発明は適用可能である。
【実施例1】
【0090】
上記第1実施形態に示されるスタンパホルダ22及びピン部測定装置24を用意した。
【0091】
ピン部16の形状は以下のとおりであった。
【0092】
直径 :φ3.8mm
長さ(台座部から突出した部分):153mm
先端部の先端面の形状 :球面(R1.5)
先端部の側面の形状 :円錐面(軸方向に対するテーパ角10°)
【0093】
又、ピン部測定装置24は以下の反射型センサ56及びアンプを備える構成であった。
【0094】
反射型センサ :ファイバーセンサFU67(株式会社キーエンス製)
投光された光線の直径 :6mm
投光器からピン先端までの距離 :5mm
アンプ :FS−V11(株式会社キーエンス製)
【0095】
反射型センサ56の下にスタンパホルダ22を設置した。まず、反射型センサ56が投光する光線の中心がピン部16の先端部50の先端面52の中心に一致するようにスタンパホルダ22の位置を調整した。尚、反射型センサ56の下端とピン部16の先端部50の上端との距離は5mmだった。この状態で反射型センサ56の投光部からピン部16の先端部50に基端部14と反対側から投光し、且つ、反射型センサ56の受光部で先端部50からの反射光を受光して反射型センサ56が受光するピン部16の先端部50からの反射光の強度を測定した。
【0096】
更に、ピン部16の先端部50が上記の位置から水平方向の両側4mmまでの範囲で0.2mm刻みで変位するようにスタンパホルダ22を段階的に傾斜させた。各傾斜位置において反射型センサ56の投光部からピン部16の先端部50に基端部14と反対側から投光し、且つ、反射型センサ56の受光部で先端部50からの反射光を受光して反射型センサ56が受光するピン部16の先端部50からの反射光の強度を測定した。測定結果を表1及び図8に示す。
【0097】
【表1】

【実施例2】
【0098】
上記第2実施形態に示されるピン部60を備えるスタンパホルダ22を用意した。
【0099】
ピン部60の形状は以下のとおりであった。
【0100】
直径 :φ3.8mm
長さ(台座部から突出した部分):153mm
先端部の先端面の形状 :平面(外周はR1.5の円形)
先端部の側面の形状 :円錐面(軸方向に対するテーパ角10°)
【0101】
他の条件は上記実施例1と同じ条件であった。上記実施例1と同様にピン部60の先端部62が水平方向の両側4mmまでの範囲で0.2mm刻みで変位するようにスタンパホルダ22を段階的に傾斜させた。各傾斜位置において反射型センサ56の投光部からピン部60の先端部62に基端部14と反対側から投光し、且つ、反射型センサ56の受光部で先端部62からの反射光を受光して反射型センサ56が受光するピン部60の先端部62からの反射光の強度を測定した。測定結果を表2及び図9に示す。
【0102】
【表2】

【0103】
実施例1では表1及び図8に示されるように、反射型センサ56の光線の中心がピン部16の先端部50の先端面52の中心に一致する位置から水平方向に0.8mm離れた位置(傾斜角が±0.30degの位置)までは、ピン部16の(反射型センサ56の光線の中心がピン部16の先端部50の先端面52の中心に一致する位置からの水平方向の)変位の増大に伴って、反射型センサ56が受光するピン部16の先端部50からの反射光の強度は単調、且つ、急激に減少していた。
【0104】
このように、ピン部16の先端部50の先端面52が略球面形である実施例1ではピン部の先端部の半径方向の0.8mm以下の変位を高精度で測定できることが確認された。
【0105】
又、実施例2でも表2及び図9に示されるように、ピン部60の(反射型センサ56の光線の中心がピン部60の先端部62の先端面64の中心に一致する位置からの水平方向の)変位の増大に伴って、反射型センサ56が受光するピン部60の先端部62からの反射光の強度は単調に減少していた。尚、反射型センサ56の光線の中心がピン部60の先端部62の先端面64の中心に一致する位置から水平方向に1.2mm離れた位置(傾斜角が±0.45degの位置)までは、ピン部60の先端部62の変位の増大に伴う、反射型センサ56が受光するピン部60の先端部62からの反射光の強度の減少は緩やかであった。一方、反射型センサ56の光線の中心がピン部60の先端部62の先端面64の中心に一致する位置から水平方向に1.2〜2.2mm離れた範囲(傾斜角が±0.45〜0.82degの位置)では、ピン部60の先端部62の変位の増大に伴って、反射型センサ56が受光するピン部60の先端部62からの反射光の強度が急激に減少していた。
【0106】
このように、ピン部60の先端部62の先端面64がピン部60の長手方向に垂直な平面である実施例2では、ピン部16の先端部50の先端面52が略球面形である実施例1よりも、ピン部の先端部の半径方向の変位を広い範囲で測定できることが確認された。又、実施例2でもピン部の先端部の半径方向の変位を一定の範囲において高精度で測定できることが確認された。
【0107】
尚、投光する光線の直径がより小さい反射型センサを用いれば、ピン部16(60)の変位の増大に伴い、反射型センサ56が受光するピン部16(60)の先端部50(62)からの反射光の強度は更に急激に減少する。この場合、ピン部の先端部の半径方向の変位を更に高精度で測定できる。一方、投光する光線の直径がより大きい反射型センサを用いれば、ピン部16(60)の変位の増大に伴い、反射型センサ56が受光するピン部16(60)の先端部50(62)からの反射光の強度が単調に減少する範囲が更に広くなる。この場合、ピン部の先端部の半径方向の変位の測定範囲を拡大できる。又、上記実施例1及び2に示されるようにピン部の先端部の先端面の形状を調整することで、ピン部の先端部の半径方向の変位の測定精度や変位の測定可能範囲を調整することも可能である。又、ピン部の先端部の側面の形状を調整することで、ピン部の先端部の半径方向の変位の測定精度や変位の測定可能範囲を調整することも可能である。
【0108】
尚、実施例1(先端面が球面)における反射光の強度の最高値(約1700mV)よりも実施例2(先端面が平面)における反射光の強度の最高値(約4100mV)が大きいが、先端部の微小な変位をより高精度で測定するためには反射光の強度の絶対値よりも先端部の変位に対する反射光の強度の変化の割合の大きさがより重要である。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、中心孔を有する板状のスタンパの供給に利用できる。
【符号の説明】
【0110】
10…スタンパ供給装置
12…台座部
14…基端部
16、60…ピン部
18…中心孔
20…スタンパ
22…スタンパホルダ
24…ピン部測定装置
26…スタンパ積載装置
28…スタンパホルダ搬入装置
30…スタンパ積載位置
32…スタンパホルダ移載装置
34…スタンパホルダ搬出装置
36…スタンパホルダ回収装置
38…スタンパピックアップ位置
40…スタンパ搬入装置
50、62…先端部
52、64…先端面
54、66…側面
56…反射型センサ
S102…スタンパホルダ搬入工程
S104…ピン部測定工程
S106…ピン部変形判定工程
S108…スタンパ積載工程
S110…スタンパホルダ搬出工程
S112…インプリント工程
S114…生産続行判定工程
S200…スタンパホルダ回収工程
S202…ピン部交換工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座部及び棒状で長手方向の一方の基端部において前記台座部に取付けられたピン部を有し中心孔を有する板状のスタンパの前記中心孔に前記ピン部が嵌合して前記台座部の上に複数の前記スタンパを重ねた状態で保持可能であるスタンパホルダと、前記スタンパホルダの前記ピン部の変形の度合いを測定可能であるピン部測定装置と、前記スタンパを前記スタンパホルダに積載するためのスタンパ積載装置と、を含み、前記ピン部測定装置において測定された前記ピン部の変形の度合いが所定の基準の範囲内であるスタンパホルダにのみ前記スタンパ積載装置が前記スタンパを積載し、前記ピン部の変形の度合いが前記基準の範囲外であるスタンパホルダには前記スタンパ積載装置が前記スタンパを積載しないように構成されたことを特徴とするスタンパ供給装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ピン部測定装置は、前記ピン部の先端部に前記基端部と反対側から投光可能、且つ、前記先端部からの反射光を受光可能である反射型センサを有し、前記反射型センサが受光する前記ピン部の前記先端部からの反射光の強度に基づいて前記スタンパホルダの前記ピン部の変形の度合いを測定可能であることを特徴とするスタンパ供給装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記ピン部の前記先端部の先端面は略球面形であることを特徴とするスタンパ供給装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記ピン部の前記先端部の側面は前記基端部から離れる方向に外径が縮小する略円錐面であることを特徴とするスタンパ供給装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記スタンパ積載装置により前記スタンパホルダに前記スタンパが積載されるスタンパ積載位置から前記スタンパホルダを搬出するためのスタンパホルダ搬出装置を更に含み、前記ピン部の変形の度合いが前記基準の範囲外であるスタンパホルダを前記スタンパが積載されていない状態で搬出するように構成されたことを特徴とするスタンパ供給装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記ピン部の変形の度合いが前記基準の範囲外であるスタンパホルダを回収するためのスタンパホルダ回収装置を更に含むことを特徴とするスタンパ供給装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記ピン部は前記台座部に着脱自在であり前記ピン部が交換可能であることを特徴とするスタンパ供給装置。
【請求項8】
台座部及び棒状で長手方向の一方の基端部において前記台座部に取付けられたピン部を有し中心孔を有する板状のスタンパの前記中心孔に前記ピン部が嵌合して前記台座部の上に複数の前記スタンパを重ねた状態で保持可能であるスタンパホルダの前記ピン部の変形の度合いを測定するピン部測定工程と、前記ピン部測定工程において測定された前記ピン部の変形の度合いが所定の基準の範囲内であるか否かを判定するピン部変形判定工程と、前記ピン部の変形の度合いが前記基準の範囲内であるスタンパホルダに前記スタンパを積載するスタンパ積載工程と、を含み、前記スタンパ積載工程において前記ピン部の変形の度合いが前記基準の範囲外であるスタンパホルダには前記スタンパを積載しないことを特徴とするスタンパ供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−167615(P2010−167615A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10894(P2009−10894)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】