説明

スタータ制御装置

【課題】メモリ機能付きの駆動回路を備えるスタータ制御装置にて、マイコンが制御処理の実行期間中に暴走してしまうことで不要なスタータ駆動がされてしまうのを防止する。
【解決手段】スタータ制御装置は、マイコンからの駆動指令を受けるとマイコンからの停止指令を受けるまでの間、スタータに駆動電流を流す方の出力オン状態を維持する駆動回路と、マイコンの暴走を検知するとマイコンをリセットして再起動させるリセット回路とを備えている。そして、マイコンは、起動直後に初期処理を一回実行した後、スタータを制御するための通常処理(上記指令を出す制御処理)を繰り返し実行するようになっている。更にマイコンは、初期処理の中で、駆動回路が出力オン状態であると判定するとバックアップRAM内のカウンタCをインクリメントし、カウンタ値が所定値(例えば3)に達したと判定すると駆動回路に停止指令を出力して該駆動回路を出力オフ状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンを始動させるスタータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スタータの制御装置においては、スタータを制御するための制御処理を行うマイコンが、エンジン始動時のバッテリ電圧低下に伴う当該マイコンへの電源電圧の低下によってリセットされたとしても、スタータを駆動し続けることができるように、マイコンとスタータリレーとの間に、マイコンからの駆動指令を記憶するメモリ機能付きの駆動回路を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
スタータリレーは、オンすることでスタータに駆動電流を流すリレーである。そして、上記駆動回路は、スタータリレーをオンさせる出力段と、メモリ回路とからなり、そのメモリ回路は、マイコンから駆動指令が出力されると、その駆動指令を記憶して、出力段にスタータリレーをオンさせるセット状態となり、その後、マイコンから出力される停止指令よってリセットされると、出力段にスタータリレーをオフさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−522883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の制御装置では、マイコンが制御処理によって駆動指令を出力してから該制御処理によって停止指令を出力するまでの間に暴走し、リセットされても制御処理の実行期間中に再び暴走してしまう、という不具合が生じた場合に、上記メモリ機能付きの駆動回路が、スタータに駆動電流を流す方の出力オン状態(上記の例では、メモリ回路がセット状態で、出力段がスタータリレーをオンさせる状態)のままとなってしまう。このため、スタータを不要に駆動し続けることとなり、延いては、バッテリ電圧の低下やスタータの劣化を招く可能性が生じる。
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、メモリ機能付きの駆動回路を備えるスタータ制御装置において、マイコンが制御処理の実行期間中に暴走してしまうことで不要なスタータ駆動が行われてしまうことを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のスタータ制御装置は、マイコンと、メモリ機能付きの駆動回路と、監視手段とを備えている。
マイコンは、車両のエンジンを始動させるスタータを制御するための制御処理を行うと共に、正常に動作していることを示す特定動作を定期的に行う。
【0008】
そして、駆動回路は、マイコンからスタータの駆動を指令する駆動指令が出力されると、該駆動指令を記憶して、スタータに駆動電流を流す方の状態である出力オン状態を維持し、その後、マイコンからスタータの駆動停止を指令する停止指令が出力されると、スタータに駆動電流を流さない方の状態である出力オフ状態に戻る。
【0009】
また、監視手段は、マイコンが動作すべき期間中においてマイコンの前記特定動作を監視し、その特定動作が規定時間以上行われなければ、マイコンをリセットして再起動させる。
【0010】
そして特に、このスタータ制御装置において、マイコンは、起動直後に初期処理を一回実行した後、スタータの制御処理を繰り返し実行するようになっている。更に、マイコンは、初期処理の中で、駆動回路が所定時間以上継続して出力オン状態であるか否かを判定する判定処理と、その判定処理により駆動回路が所定時間以上継続して出力オン状態であると判定された場合に駆動回路へ停止指令を出力する停止処理と、を行うようになっている。
【0011】
このようなスタータ制御装置においては、前述の不具合(即ち、マイコンが制御処理によって駆動指令を出力してから該制御処理によって停止指令を出力するまでの間に暴走し、リセットされても制御処理の実行期間中に再び暴走してしまう、という不具合)が生じた場合、「マイコンの暴走→監視手段によるマイコンのリセット→マイコンの再起動→マイコンの暴走」という状況が繰り返されることとなる。そして、この場合、マイコンは、監視手段によりセットされて再起動した直後の初期処理において、判定処理により駆動回路が所定時間以上継続して出力オン状態であるか否かを判定することとなり、その判定処理で肯定判定した場合には停止処理により駆動回路へ停止指令を出力することとなる。
【0012】
このため、前述の不具合が生じた場合でも、マイコンは初期処理によって(詳しくは、初期処理の中の停止処理によって)駆動回路に停止指令を出力して該駆動回路を出力オフ状態に戻すことができる。よって、不要なスタータ駆動が行われてしまうことを防止することができる。
【0013】
次に、請求項2のスタータ制御装置では、請求項1のスタータ制御装置において、マイコンは、初期処理の中の停止処理によって停止指令を出力した場合には、制御処理を実行する状態へ移行せずに、初期処理を実行する状態で留まるようになっている。つまり、この場合、マイコンは制御処理を実行する状態へ移行しても暴走すると考えられるため、その状態に移行しないようにしている。
【0014】
この構成によれば、制御処理が正しく実行されないこと自体を阻止することができ、制御の信頼性を向上させることができる。特に、正しく実行されない制御処理によって、不要な駆動指令が再び出力されてしまうことを阻止することができる。
【0015】
尚、マイコンは、初期処理を実行する状態で留まる場合にも、監視手段によって監視される特定動作を上記規定時間よりも短い時間毎に行うようになっていれば良い。このようになっていれば、マイコンは、初期処理を実行する状態で留まっていても、監視手段によってリセットされないからである。
【0016】
次に、請求項3のスタータ制御装置では、請求項1,2のスタータ制御装置において、監視手段によりマイコンがリセットされても記憶内容を保持可能な記憶手段を有している。更に、マイコンが起動直後に実行する初期処理の中には、判定処理を成すステップとして、駆動回路が出力オン状態であるか否かを判定する第1ステップと、該第1ステップにより駆動回路が出力オン状態であると判定された場合に、記憶手段内のカウンタをインクリメントする第2ステップと、カウンタの値が1よりも大きい所定値以上であるか否かを判定する第3ステップとが含まれている。
【0017】
そして、このスタータ制御装置では、第3ステップにてカウンタの値が所定値以上であると判定されることが、判定処理により駆動回路が所定時間以上継続して出力オン状態であると判定されることに該当している。このため、初期処理においては、第3ステップによりカウンタの値が所定値以上であると判定された場合に、停止処理によって駆動回路へ停止指令が出力される。
【0018】
この構成によれば、マイコンは、初期処理において、例えば時刻情報を取得しなくても、駆動回路が所定時間以上継続して出力オン状態であるか否かを判定することができる。
尚、上記所定値をNとし、上記規定時間をT1とし、監視手段がマイコンをリセットする継続時間をT2とすると、第3ステップによりカウンタの値が所定値(N)以上であると判定された場合には、駆動回路は、少なくとも「(T1+T2)×(N−1)+T2」の時間は継続して出力オン状態であると考えられ、その「(T1+T2)×(N−1)+T2」の時間が、上記所定時間であると見なすことができる。
【0019】
また、上記所定値(N)は1よりも大きい値であるため、マイコンは、当該マイコンへの電源電圧の低下によりリセットされて再起動したときに、初期処理によって停止指令を出力してしまうことはない。このため、駆動回路の本来の役割(即ち、エンジン始動時のバッテリ電圧低下に伴いマイコンへの電源電圧が低下してマイコンがリセットされたとしても、スタータを駆動し続けることができるようにする役割)は確保することができる。
【0020】
一方、請求項4のスタータ制御装置では、請求項1,2のスタータ制御装置において、監視手段によりマイコンがリセットされても記憶内容を保持可能な記憶手段を有している。
【0021】
そして、マイコンが実行する制御処理の中には、当該制御処理によって駆動回路に駆動指令を出力した時刻を、駆動開始時刻として記憶手段に記憶する時刻記憶用ステップが含まれている。
【0022】
更に、マイコンが起動直後に実行する初期処理の中には、判定処理を成すステップとして、駆動回路が出力オン状態であるか否かを判定する第1ステップと、該第1ステップにより駆動回路が出力オン状態であると判定された場合に、記憶手段に記憶されている駆動開始時刻から現在時刻までの時間が所定時間以上であるか否かを判定する第2ステップとが含まれている。
【0023】
そして、このスタータ制御装置では、第2ステップにて前記時間が所定時間以上であると判定されることが、判定処理により駆動回路が所定時間以上継続して出力オン状態であると判定されることに該当している。このため、初期処理においては、第2ステップにより前記時間が所定時間以上であると判定された場合に、停止処理によって駆動回路へ停止指令が出力される。
【0024】
この構成によれば、マイコンは、初期処理において、駆動回路が所定時間以上継続して出力オン状態であるか否かを、精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態のスタータ制御装置の構成を表す構成図である。
【図2】マイコンが実行する処理の全体を表すフローチャートである。
【図3】第1実施形態のスタータ制御処理を表すフローチャートである。
【図4】第1実施形態の初期処理を表すフローチャートである。
【図5】第1実施形態の作用及び効果を説明する説明図である。
【図6】第2実施形態の初期処理を表すフローチャートである。
【図7】第2実施形態の作用及び効果を説明する説明図である。
【図8】第3実施形態のスタータ制御処理を表すフローチャートである。
【図9】第3実施形態の初期処理を表すフローチャートである。
【図10】第3実施形態の作用及び効果を説明する説明図である。
【図11】第4実施形態の初期処理を表すフローチャートである。
【図12】第4実施形態の作用及び効果を説明する説明図である。
【図13】変形例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明が適用された実施形態のスタータ制御装置について説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態のスタータ制御装置1は、車両のエンジン3を始動させるスタータ5を制御するための制御処理を行うマイコン7と、車両のバッテリ9からスタータ5に駆動電流を流す通電経路に設けられているスタータリレー11を、マイコン7からの指令に従い駆動する(オン/オフさせる)メモリ機能付きの駆動回路13と、車両に搭載されているスイッチ手段15を介してバッテリ9から当該装置1に供給されるバッテリ電圧(バッテリ9の電圧)VBを降圧して一定の電源電圧Vmを出力すると共に、バッテリ9から当該装置1に常時供給されるバッテリ電圧VBを降圧して一定の電源電圧Vsを出力する電源IC17と、を備えている。
【0027】
尚、スイッチ手段15は、車両の使用者によって当該車両のイグニッションスイッチ(以下、IGスイッチという)がオンされるとオンし、IGスイッチがオフされてから所定の電源遮断許可条件が成立すると(例えば、マイコン7が電源遮断許可信号を出力すると)オフする、給電用リレーである。また、スイッチ手段15は、IGスイッチであっても良い。
【0028】
マイコン7は、プログラムを実行するCPU21、CPU21が実行するプログラムを記憶するROM22、CPU21による演算結果等を記憶するRAM23及び入出力インターフェース(I/O)24等に加え、常時給電されるバックアップRAM(BRAM)25も備えている。
【0029】
そして、マイコン7には、電源IC17が出力する2つの電源電圧Vm,Vsが供給され、該マイコン7におけるバックアップRAM25以外の部分は、電源電圧Vmによって動作する。また、バックアップRAM25は電源電圧Vsによって動作する。尚、電源IC17が出力する2つの電源電圧Vm,Vsは、例えば5Vである。
【0030】
また、マイコン7は、電源電圧Vmを受けて動作している間は、特定の処理を定期的に実行することにより、パルス信号であるウォッチドッグパルスを、電源IC17へ、タイムアウト判定用の規定時間(以下、タイムアウト時間という)よりも短い一定時間毎に出力するようになっている。
【0031】
そして、電源IC17は、マイコン7をリセットするリセット回路19を備えており、そのリセット回路19は、下記(F1)〜(F3)の機能を有している。
(F1)IGスイッチがオンされて当該電源IC17が電源電圧Vmの出力を開始してから、電源電圧Vmが安定すると考えられる一定の時間が経過するまで、マイコン7のリセット端子にリセット信号を与える、パワーオンリセット機能。
【0032】
(F2)当該電源IC17が出力している電源電圧Vmを監視して、電源電圧Vmが、マイコン7の動作を保証可能な所定の下限電圧よりも下がると、その時点から、電源電圧Vmが上記下限電圧あるいは該下限電圧よりも高い所定の復帰電圧を上回るまで、マイコン7のリセット端子にリセット信号を与える、電圧低下時リセット機能。
【0033】
(F3)当該電源IC17が電源電圧Vmを出力しており、且つ、上記(F1),(F2)の機能によってマイコン7をリセットしていない期間(即ち、マイコン7が動作すべき期間)において、マイコン7からのウォッチドッグパルスを監視し、そのウォッチドッグパルスが出力されない継続時間が上記タイムアウト時間に達すると(つまり、ウォッチドッグパルスを出力する動作がタイムアウト時間以上行われなければ)、マイコン7が暴走したと判断して、マイコン7のリセット端子にパルス状のリセット信号を与えて該マイコン7を再起動(リセットスタート)させる、ウォッチドッグタイマ機能。
【0034】
一方、スタータ制御装置1の外部において、スタータリレー11のコイル11aの一端(上流側端部)には、スタータスイッチ31を介してバッテリ電圧VBが供給されるようになっている。尚、スタータスイッチ31と前述のIGスイッチは、車両の運転席のイグニッションキーシリンダに車両のキーが差し込まれて該キーが捻り操作されるとオンするスイッチであり、スタータスイッチ31は、IGスイッチがオンしている場合にオンされるようになっている。
【0035】
そして、駆動回路13は、オンすることでスタータリレー11のコイル11aの他端(下流側端部)をグランドラインに接続させる出力段としてのトランジスタ33と、マイコン7からの指令に応じてトランジスタ33をオン/オフさせる出力メモリ回路35とを備えている。
【0036】
出力メモリ回路35は、例えば、電源電圧Vmによって動作するRS(リセット/セット)型のフリップフロップからなり、当該回路35の出力信号がトランジスタ33へ駆動信号として供給される。尚、この例では、トランジスタ33がNPNトランジスタであるため、出力メモリ回路35の出力信号は、トランジスタ33のベース端子に供給される。また、図1において、抵抗36は、トランジスタ33のベース電流を制限するための抵抗であり、抵抗37は、トランジスタ33の誤動作を防止するためのプルダウン用抵抗である。
【0037】
そして、出力メモリ回路35は、マイコン7から駆動回路13に(詳しくは、当該出力メモリ回路35に)出力されるセット信号によってセット状態となり、セット状態になると、当該出力メモリ回路35の出力信号がトランジスタ33をオンさせる方のアクティブレベル(この例ではハイ)になる。また、出力メモリ回路35は、マイコン7から駆動回路13に(詳しくは、当該出力メモリ回路35に)出力されるリセット信号によってリセット状態に戻り、リセット状態になると、当該出力メモリ回路35の出力信号が非アクティブレベル(この例ではロー)になる。このため、出力メモリ回路35は、セット状態になるとトランジスタ33をオンさせ、リセット状態ではトランジスタ33をオフさせることとなる。
【0038】
また、スタータリレー11のコイル11aの上流側端部にバッテリ電圧VBが供給されている状態で、トランジスタ33がオンすると、コイル11aに電流が流れて、スタータリレー11がオンし、そのスタータリレー11を介してバッテリ9からスタータ5に駆動電流が流れる。そして、本実施形態では、スタータリレー11をオンさせてスタータ5に駆動電流を流すことが、スタータ5を駆動することに相当している。
【0039】
このため、マイコン7から駆動回路13に出力される信号のうち、セット信号は、スタータ5の駆動を指令する駆動指令信号に該当し、リセット信号は、スタータ5の駆動停止を指令する停止指令信号に該当する。そして、駆動回路13は、マイコン7から駆動指令信号が出力されると、その駆動指令信号を記憶して、スタータ5に駆動電流を流す方の状態(本実施形態では、出力メモリ回路35がセット状態であってトランジスタ33をオンする状態であり、以下、この状態を「出力オン状態」という)を維持し、その後、マイコン7から停止指令信号が出力されると、スタータ5に駆動電流を流さない方の状態(本実施形態では、出力メモリ回路35がリセット状態であってトランジスタ33をオフする状態であり、以下、この状態を「出力オフ状態」という)に戻ることとなる。
【0040】
また、スタータ制御装置1には、スタータスイッチ31を介して当該装置1に入力されるバッテリ電圧VBを、マイコン7が入力可能な電圧の信号(具体的には、ハイレベルが電源電圧Vmと同じ電圧の信号)にレベル変換する入力回路38が備えられており、その入力回路38でレベル変換された信号が、スタータスイッチ31のオン/オフ状態を示すスタータスイッチ信号としてマイコン7に入力される。
【0041】
ここで、スタータ制御装置1のマイコン7は、車両の使用者によってスタータスイッチ31がオンされた場合に、エンジン3を始動させるためにスタータ5を駆動するが、車両には、車両盗難防止用のイモビライザ制御(車両のイグニッションキーシリンダに差し込まれたキーが正規のキーであることを確認した場合にエンジン3の始動を許可する制御)を行うイモビライザ制御装置が搭載されており、そのイモビライザ制御装置から始動許可信号を受けたことを条件にして、スタータ5を駆動するようになっている。このため、マイコン7には、イモビライザ制御装置からの上記始動許可信号が入力されるようになっている。
【0042】
また更に、車両には、エンジン3の運転中に所定の自動停止条件が成立するとエンジン3を自動的に停止させ、その後、所定の自動始動条件が成立するとエンジン3を自動的に再始動させるアイドルストップ制御(自動停止/再始動制御)を行うアイドルストップ制御装置が搭載されており、そのアイドルストップ制御装置は、自動停止させたエンジン3を再始動させるときに、スタータ制御装置1へ始動指令信号を出力するようになっている。
【0043】
そして、スタータ制御装置1のマイコン7は、アイドルストップ制御装置からの上記始動指令信号を受け取った場合にも、エンジン3を始動させるためにスタータ5を駆動する。
【0044】
このため、スタータ制御装置1には、スタータスイッチ31とは別の経路でスタータリレー11のコイル11aの上流側端部にバッテリ電圧VBを供給するためのトランジスタ39が備えられている。そして、そのトランジスタ39は、マイコン7からの制御信号に従いオンすることで、コイル11aの上流側端部にバッテリ電圧VBを供給する。尚、図1においては、トランジスタ39を駆動するための回路は図示を省略している。
【0045】
次に、マイコン7が実行する処理について、図2〜図4を用い説明する。
まず図2は、マイコン7が実行する処理の全体を表すフローチャートである。
図2に示すように、マイコン7は、起動すると、まずS110にて、初期処理を行う。そして、その初期処理を終了すると、S120に移行して、通常処理を行い、以後は、その通常処理を一定時間毎に繰り返し実行する。このため、マイコン7は、起動直後に初期処理を一回実行した後、通常処理を繰り返し実行することとなる。
【0046】
また、通常処理としては、少なくとも、スタータ5を制御するための制御処理(以下、スタータ制御処理ともいう)と、ウォッチドッグパルスを出力するためのウォッチドッグパルス出力用処理とがあり、それらの各処理は、例えば、マルチタスクのかたちで並列的に実行される。
【0047】
尚、通常処理としての各処理の実行周期は、同じであっても、それぞれ異なっていても、何れでも良い。また、ウォッチドッグパルス出力用処理は、スタータ制御処理の中に含まれていても良い。一方、本実施形態では、初期処理の実行所要時間が、リセット回路19のウォッチドッグタイマ機能におけるタイムアウト時間よりも十分に短いため、マイコン7は、初期処理の中でウォッチドッグパルス出力用処理は行わないが、勿論、初期処理の中でウォッチドッグパルス出力用処理を行うようになっていても良い。
【0048】
次に図3は、スタータ制御処理を表すフローチャートである。
図3に示すように、マイコン7は、スタータ制御処理の実行を開始すると、まずS210にて、エンジン3の始動条件(エンジン3を始動させる条件)が成立しているか否かを判定する。
【0049】
判定対象の始動条件としては二種類ある。一種類目の始動条件は、「スタータスイッチ31がオンされており、且つ、イモビライザ制御装置からの始動許可信号を受け取った」という条件であり、この条件は、IGスイッチがオンされてから最初にエンジン3を始動させるときの条件である。また、二種類目の始動条件は、「アイドルストップ制御装置からの始動指令信号を受け取った」という条件であり、この条件は、自動的に停止されたエンジン3を自動的に再始動させるときの条件である。そして、S210では、このような二種類の始動条件について、成立しているか否かを判定する。尚、スタータスイッチ31のオン/オフ状態は、入力回路38からのスタータスイッチ信号によって判定することができる。
【0050】
このS210にて、始動条件が成立していると判定した場合には、S220に進む。
S220では、駆動回路13にセット信号を出力して、出力メモリ回路35をセット状態にする(即ち、駆動回路13を出力オン状態にする)と共に、バックアップRAM25に記憶されているエンジン始動中フラグを“1”にする。また、S210で成立していると判定された始動条件が上記二種類目の始動条件である場合(即ち、エンジン3を自動的に再始動させる場合)には、S220では、更にトランジスタ39をオンさせる処理を行う。
【0051】
このS220の処理により、スタータリレー11がオンしてスタータ5に駆動電流が流れ、スタータ5がエンジン3をクランキングさせることとなる。
すると、エンジン3を制御するエンジン制御装置により、エンジン3に対する燃料噴射と点火とが行われる。尚、エンジン3がディーゼルエンジンであるならば、点火は行われず、燃料噴射だけが行われることとなる。また、エンジン制御装置としての機能を、スタータ制御装置1が果たすようになっていても良い。
【0052】
そして、マイコン7は、上記S220の処理を行った後、S230に進む。
また、上記S210にて、始動条件が成立していないと判定した場合には、そのままS230に進む。
【0053】
S230では、エンジン始動中(つまり、エンジン3を始動している最中であり、換言すれば、スタータ5の駆動中)であるか否かを判定する。具体的には、バックアップRAM25内のエンジン始動中フラグを参照して、エンジン始動中フラグが“1”であれば、エンジン始動中であると判定し、逆に、エンジン始動中フラグが“0”であれば、エンジン始動中ではないと判定する。また例えば、出力メモリ回路35の出力信号のレベルを読み取って、その読み取ったレベルがハイであれば、エンジン始動中であると判定し、逆に、読み取ったレベルがローであれば、エンジン始動中ではないと判定しても良い。尚、この場合、エンジン始動中フラグは不要になる。
【0054】
このS230にて、エンジン始動中であると判定した場合には、S240に進み、スタータ5の駆動停止条件が成立したか否かを判定する。例えば、クランク軸センサやカム軸センサからの回転信号に基づき算出されるエンジン回転数が、エンジン3が完爆状態(始動が完了した状態であり、いわゆるエンジン3がかかった状態)になったと考えられる完爆判定値以上であるか否かを判定し、エンジン回転数が完爆判定値以上であれば、スタータ5の駆動停止条件が成立したと判定する。
【0055】
そして、このS240にて、スタータ5の駆動停止条件が成立したと判定した場合には、S250に進み、駆動回路13にリセット信号を出力して、出力メモリ回路35をリセット状態にする(即ち、駆動回路13を出力オフ状態にする)と共に、バックアップRAM25内のエンジン始動中フラグを“0”にする。更にS250では、トランジスタ39をオフさせる処理も行う。尚、トランジスタ39をオフさせる処理は、以前のS220でトランジスタ39をオンさせていた場合にだけ行うようになっていても良い。
【0056】
このS250の処理により、駆動回路13が出力オフ状態になり、スタータリレー11がオフしてスタータ5の駆動が停止する。そして、S250の処理が終わると、当該スタータ制御処理も終了する。
【0057】
一方、上記S230にて、エンジン始動中ではないと判定した場合には、そのままS250に進む。尚、この場合に、S250もスキップして当該スタータ制御処理を終了しても良い。
【0058】
また、上記S240にて、スタータ5の駆動停止条件が成立していないと判定した場合には、スタータ5の駆動を続けるために、S250をスキップして、そのまま当該スタータ制御処理を終了する。
【0059】
尚、駆動回路13の出力メモリ回路35は、前述したようにマイコン7と同じ電源電圧Vmによって動作するが、出力メモリ回路35の最低動作電圧は、マイコン7の最低動作電圧よりも低く、且つ、リセット回路19が前述の電圧低下時リセット機能によってマイコン7をリセットするときの電源電圧Vmの値(前述の下限電圧)よりも低い。また、バッテリ9の充電状態が正常であれば、エンジン始動時にバッテリ電圧VBが低下しても、電源電圧Vmは、出力メモリ回路35の最低動作電圧を下回ることはない。このため、エンジン始動時のバッテリ電圧VBの低下に伴い電源電圧Vmが低下して、マイコン7がリセット回路19の電圧低下時リセット機能によってリセットされても、出力メモリ回路35のセット状態(駆動回路13の出力オン状態)は維持される。
【0060】
そして、こうしたことはバックアップRAM25についても同様である。つまり、バッテリ9の充電状態が正常であれば、エンジン始動時のバッテリ電圧VBの低下に伴い電源電圧Vmが低下して、マイコン7がリセット回路19の電圧低下時リセット機能によってリセットされても、電源電圧VsはバックアップRAM25の最低動作電圧を下回らず、バックアップRAM25の記憶内容は保持される。また、バックアップRAM25の記憶内容は、マイコン7がリセット回路19のウォッチドッグタイマ機能によってリセットされても保持される。
【0061】
次に図4は、マイコン7が起動直後に実行する初期処理を表すフローチャートである。
図4に示すように、マイコン7は、初期処理の実行を開始すると、まずS310にて、出力メモリ回路35の出力信号のレベルを読み取って、駆動回路13が出力オン状態であるか否か(出力メモリ回路35がセット状態であるか否か)を判定する。
【0062】
そして、駆動回路13が出力オン状態ではないと判定した場合には、S320に進み、バックアップRAM25に記憶されているカウンタCの値を0に初期化し、その後、当該初期処理を終了する。
【0063】
また、上記S310にて、駆動回路13が出力オン状態であると判定した場合には、S330に進み、カウンタCをインクリメント(+1)する。
そして、次のS340にて、カウンタCの値が1よりも大きい所定値Nth以上であるか否かを判定し、カウンタCの値が所定値Nth以上でなければ、そのまま当該初期処理を終了する。
【0064】
また、上記S340にて、カウンタCの値が所定値Nth以上であると判定した場合には、S350に進み、駆動回路13にリセット信号を出力して、出力メモリ回路35をリセット状態にする(即ち、駆動回路13を出力オフ状態にする)。尚、このS350でも、図3のS250と同様に、バックアップRAM25内のエンジン始動中フラグを“0”にする処理と、トランジスタ39をオフさせる処理とを、更に行っても良い。そして、続くS360にて、カウンタCの値を0に初期化し、その後、当該初期処理を終了する。
【0065】
つまり、初期処理では、駆動回路13が出力オン状態であると判定した回数が所定値Nthに達したら、駆動回路13にリセット信号を出力して、駆動回路13を出力オフ状態に戻すようにしている。
【0066】
次に、マイコン7が図4の初期処理を実行することによって得られる作用及び効果について、図5を用い説明する。
図5は、IGスイッチがオンされてから最初にエンジン3を始動させる場合(つまり、スタータスイッチ31のオンに伴ってエンジン3を始動させる手動始動の場合)に、マイコン7が、スタータ制御処理(図3)のS220で駆動回路13を出力オン状態にしてから、スタータ制御処理のS250で駆動回路13を出力オフ状態にするまでの間に暴走し、リセット回路19のウォッチドッグタイマ機能によってリセットされてもスタータ制御処理の実行期間中に再び暴走してS250の処理が行われなくなってしまう、という不具合が生じた場合を表している。また、図5の例では、初期処理(図4)におけるS340の判定で用いられる上記所定値Nthが「3」に設定されている。
【0067】
尚、図5において、「リセット回路の出力」とは、リセット回路19からマイコン7のリセット端子に出力されるローアクティブのリセット信号のことであり、そのリセット信号がローである間、マイコンはリセットされる。また、図5における「マイコンの状態」の段において、「初期」とは、マイコン7が初期処理を実行している期間を示し、「通常」とは、マイコン7が初期処理の実行を終了した後の期間であって、スタータ制御処理とウォッチドッグパルス出力用処理を含む通常処理を実行している期間を示している。そして、これらのことは、後述する他の図についても同様である。
【0068】
図5に示すように、上記不具合が生じた場合には、マイコン7がスタータ制御処理のS220で駆動回路13を出力オン状態にしてから、「マイコン7が暴走→リセット回路19がマイコン7の暴走を検知してマイコン7をリセット→マイコン7が再起動して初期処理(図4)を実行→マイコン7がスタータ制御処理を実行する状態に移行(換言すれば、実行対象の処理が初期処理から通常処理へ移行)→マイコン7の暴走」という状況が繰り返されることとなる。
【0069】
そして、この場合、マイコン7は、再起動した直後毎に実行する初期処理(図4)において、駆動回路13が出力オン状態であると判定し(S310:YES)、カウンタCをインクリメントする(S330)こととなる。そして、マイコン7は、最初に暴走してリセットされてから3回目の初期処理におけるS340にて、カウンタCの値が所定値Nth(この例では3)以上であると判定することとなり、その回の初期処理におけるS350にて、駆動回路13にリセット信号を出力して、該駆動回路13を出力オフ状態に戻すこととなる。また、その3回目の初期処理におけるS360により、カウンタCの値も0に戻される。
【0070】
このため、上記の不具合が生じた場合に、マイコン7は、初期処理により、駆動回路13が所定時間以上継続して出力オン状態であることを検知して該駆動回路13を出力オフ状態に戻すことができる。よって、不要なスタータ5の駆動が行われてしまうことを防止することができる。
【0071】
尚、リセット回路19のウォッチドッグタイマ機能について、タイムアウト時間をT1とし、マイコン7をリセットする継続時間をT2とすると、マイコン7が最初に暴走してリセットされるまでの時間は0になり得るため、初期処理のS340で「カウンタCの値が所定値Nth以上である」と判定された場合、駆動回路13は、少なくとも「(T1+T2)×(Nth−1)+T2」の時間は継続して出力オン状態であると考えられ、その時間が、上記所定時間であると見なすことができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、マイコン7は、初期処理において、例えば時刻情報を取得しなくても、駆動回路13が所定時間以上継続して出力オン状態であるか否かを判定することができる。
【0073】
また、上記所定値Nthは1よりも大きい値に設定されているため、マイコン7は、リセット回路19の電圧低下時リセット機能によりリセットされて再起動したときには、初期処理のS340で「NO」と判定することとなり、駆動回路13にリセット信号を出力してしまうことはない。このため、駆動回路13の本来の役割、即ち、エンジン始動時のバッテリ電圧VBの低下に伴い電源電圧Vmが低下してマイコン7がリセットされたとしても、スタータ5を駆動し続けることができるようにする役割は、確保することができる。
【0074】
尚、本実施形態では、リセット回路19が監視手段の一例に相当し、ウォッチドッグパルスを出力するマイコン7の動作が、正常に動作していることを示す特定動作の一例に相当している。また、マイコン7から駆動回路13(出力メモリ回路35)に出力される信号のうち、セット信号が駆動指令の一例に相当し、リセット信号が停止指令の一例に相当している。そして、図4の初期処理のうち、S310,S330及びS340が判定処理の一例に相当しており、また、S310は第1ステップの一例に相当し、S330は第2ステップの一例に相当し、S340は第3ステップの一例に相当している。そして、S350が停止処理の一例に相当している。また、バックアップRAM25が、記憶手段の一例に相当している。
【0075】
[第2実施形態]
第2実施形態のスタータ制御装置1は、第1実施形態と比較すると、マイコン7が、図4の初期処理に代えて、図6の初期処理を実行する点が異なっている。
【0076】
そして、図6の初期処理では、図4の初期処理と比較すると、S360でカウンタCの値を0に初期化した後、当該初期処理を終了せずに(即ち、通常処理へ移行せずに)、S350へ戻る点が異なっている。また、図示は省略しているが、マイコン7は、S360からS350に戻って、そのS350及びS360の処理を繰り返す状態になると、前述したタイムアウト時間よりも短い一定時間毎にウォッチドッグパルス出力用処理を行う。
【0077】
つまり、本第2実施形態において、マイコン7は、図7における右端部分に示すように、初期処理で駆動回路13にリセット信号を出力して該駆動回路13を出力オフ状態にした場合には、通常処理(スタータ制御処理)を実行する状態へ移行せずに、初期処理を実行する状態で留まるようになっている。
【0078】
このような第2実施形態によれば、マイコン7においてスタータ制御処理が正しく実行されないこと自体を阻止することができ、スタータ制御の信頼性を向上させることができる。特に、正しく実行されないスタータ制御処理によって駆動回路13が再び出力オン状態にされてしまうことを阻止することができる。
【0079】
[第3実施形態]
第3実施形態のスタータ制御装置1は、第1実施形態と比較すると、マイコン7が、図3のスタータ制御処理に代えて、図8のスタータ制御処理を行う点と、図4の初期処理に代えて、図9の初期処理を実行する点とが異なっている。
【0080】
そして、図8のスタータ制御処理では、図3のスタータ制御処理と比較すると、S220とS230との間に、S225が追加されており、そのS225にて、現在時刻を、バックアップRAM25に、スタータ5の駆動開始時刻Taとして記憶する。このため、バックアップRAM25には、マイコン7がスタータ制御処理のS220で駆動回路13にセット信号を出力した時刻が、駆動開始時刻Taとして記憶される。
【0081】
尚、現在時刻は、例えば、スタータ制御装置1に備えられている時計機能ブロックから取得しても良いし、また、車両に搭載されている他の装置のうちで、時刻情報を有している装置(例えば、ナビゲーション装置や、車両外の通信設備と無線通信する通信制御用の装置等)から、車両内通信によって取得するようになっていても良い。
【0082】
次に、図9の初期処理について説明する。
図9に示すように、マイコン7が初期処理の実行を開始すると、まずS410にて、図4のS310と同じ判定を行う。そして、そのS410にて、駆動回路13が出力オン状態ではないと判定した場合には、S420に進み、前述したバックアップRAM25内の駆動開始時刻Taと、後述する時刻Tbとを、0に初期化し、その後、当該初期処理を終了する。
【0083】
一方、上記S410にて、駆動回路13が出力オン状態であると判定した場合には、S430に進み、現在時刻を、時刻Tbとして記憶する。尚、時刻Tbは、バックアップRAM25に記憶しても、通常のRAM23に記憶しても、何れでも良い。
【0084】
そして、次のS440にて、時刻Tbから駆動開始時刻Taを引いた時間であって、スタータ制御処理(図8)のS220で駆動回路13を出力セット状態にした時から現在までの経過時間(=Tb−Ta)が、所定時間Tth以上であるか否かを判定し、その時間が所定時間Tth以上でなければ、そのまま当該初期処理を終了する。
【0085】
また、S440にて、上記時間(Tb−Ta)が所定時間Tth以上であると判定した場合には、S450に進み、図4のS350と同じ処理を行う。そして、続くS460にて、S420と同様に、時刻Taと時刻Tbとを0に初期化し、その後、当該初期処理を終了する。
【0086】
次に、第3実施形態の作用及び効果について、図10を用い説明する。尚、図10は、図5を用いて説明した不具合と同じ不具合が生じた場合を表している。
図10に示すように、マイコン7は、スタータ制御処理(図8)のS220で駆動回路13を出力オン状態にすると、そのときの時刻(図10の例ではt0)を、駆動開始時刻TaとしてバックアップRAM25に記憶する(図8のS225)。
【0087】
また、本第3実施形態のスタータ制御装置1においても、前述の不具合が生じた場合には、マイコン7がスタータ制御処理のS220で駆動回路13を出力オン状態にしてから、「マイコン7が暴走→リセット回路19がマイコン7の暴走を検知してマイコン7をリセット→マイコン7が再起動して初期処理(図9)を実行→マイコン7がスタータ制御処理(通常処理)を実行する状態に移行→マイコン7の暴走」という状況が繰り返されることとなる。
【0088】
そして、この場合、マイコン7は、再起動した直後毎に実行する初期処理(図9)において、駆動回路13が出力オン状態であると判定し(S410:YES)、その時の時刻Tb(図10の例ではt1,t2,t3の各々)から駆動開始時刻Taを引いた時間(即ち、駆動回路13が出力オン状態になっている継続時間(=Tb−Ta))が、所定時間Tth以上であるか否かを判定する(S440)こととなる。
【0089】
このため、マイコン7は、駆動開始時刻Ta(t0)から所定時間Tthが経過した後の最初の初期処理におけるS440にて、上記時間(Tb−Ta)が所定時間Tth以上であると判定することとなり、その回の初期処理におけるS450にて、駆動回路13にリセット信号を出力して、該駆動回路13を出力オフ状態に戻すこととなる。
【0090】
このような第3実施形態のスタータ制御装置1によっても、上記の不具合が生じた場合に、マイコン7は、初期処理により、駆動回路13が所定時間Tth以上継続して出力オン状態であることを検知して該駆動回路13を出力オフ状態に戻すことができる。よって、不要なスタータ5の駆動が行われてしまうことを防止することができる。また、マイコン7は、初期処理において、駆動回路13が所定時間Tth以上継続して出力オン状態であるか否かを、精度良く判定することができる。
【0091】
尚、本実施形態では、図8のS225が、時刻記憶用ステップの一例に相当している。また、図9の初期処理のうち、S410,S430及びS440が判定処理の一例に相当しており、S410は第1ステップの一例に相当し、S440は第2ステップの一例に相当している。そして、S450が停止処理の一例に相当している。
【0092】
[第4実施形態]
第4実施形態のスタータ制御装置1は、第3実施形態と比較すると、マイコン7が、図9の初期処理に代えて、図11の初期処理を実行する点が異なっている。
【0093】
そして、図11の初期処理では、図9の初期処理と比較すると、S460で時刻Taと時刻Tbを0に初期化した後、当該初期処理を終了せずに(即ち、通常処理へ移行せずに)、S450へ戻る点が異なっている。また、図示は省略しているが、マイコン7は、S460からS450に戻って、そのS450及びS460の処理を繰り返す状態になると、前述したタイムアウト時間よりも短い一定時間毎にウォッチドッグパルス出力用処理を行う。
【0094】
つまり、本第4実施形態において、マイコン7は、図12における右端部分に示すように、初期処理で駆動回路13にリセット信号を出力して該駆動回路13を出力オフ状態にした場合には、通常処理(スタータ制御処理)を実行する状態へ移行せずに、初期処理を実行する状態で留まるようになっている。
【0095】
そして、このような第4実施形態によれば、第2実施形態について述べた効果と同じ効果を得ることができる。
[変形例]
上記各実施形態のスタータ制御装置1が搭載される車両としては、イグニッションキーシリンダ(IGスイッチ及びスタータスイッチ31)を備えない車両であっても良く、例えば、使用者がプッシュスイッチ(より具体的にはプッシュ式のエンジンスタートスイッチ)を操作することでイグニッション電源のオン/オフや、アクセサリ電源のオン/オフや、スタータ5の駆動が行われるプッシュスイッチ式車両であっても良い。
【0096】
プッシュスイッチ式車両の場合、使用者によるプッシュスイッチやブレーキペダル等に対する操作の組み合わせに応じて、車両におけるイグニッション電源及びアクセサリ電源のオン/オフを制御したり、スタータリレー11のコイル11aにバッテリ電圧VBを供給したりする電子制御装置(以下、プッシュスタートECUという)が存在する。
【0097】
このため、プッシュスイッチ式車両の場合、図13に例示するように、スタータリレー11のコイル11aの上流側端部には、プッシュスタートECU41からバッテリ電圧VBが供給されるようになっていれば良い。また、この場合、スイッチ手段15のオン/オフも、プッシュスタートECU41が行うように構成することができる。
【0098】
例えば、プッシュスタートECU41は、車両の使用者がブレーキペダルを踏みながらプッシュスイッチを押す、といったエンジン3の手動始動操作を行うと、スイッチ手段15をオンして、車両におけるイグニッション電源のラインにバッテリ電圧VBを供給すると共に、スタータリレー11のコイル11aの上流側端部にバッテリ電圧VBを供給し、エンジン3が完爆したことを検知するとコイル11aへのバッテリ電圧VBの供給を停止する、といった処理や、車両の使用者がイグニッション電源をオフするための所定の操作(例えば、プッシュスイッチを再び押す操作)を行うと、スタータ制御装置1及び他の装置からの電源遮断許可信号を受けたことを条件にしてスイッチ手段15をオフさせる、といった処理を行えば良い。
【0099】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0100】
例えば、バックアップRAM25の代わりに、データの書き換えが可能な不揮発性メモリ(EEPROMやフラッシュメモリ等)を用いても良い。
また、マイコン7が正常に動作していることを示す特定動作としては、ウォッチドッグパルスを出力する動作に限らず、例えば、特定のデータを出力する動作でも良い。その場合、電源IC17のリセット回路19は、マイコン7から出力されるデータが正しい値のデータであるか否かを判定するようになっていても良い。
【0101】
また、リセット回路19のウォッチドッグタイマ機能と同様の機能を有するハードウェアが、マイコン7に内蔵されていても良い。
また、図6の初期処理では、S360からS350に戻ることに代えて、実質的な処理を行わない命令(いわゆるノンオペレーション命令)を繰り返し実行することで、その初期処理に留まるようにしても良い。そして、このような変形は、図11の初期処理についても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1…スタータ制御装置、3…エンジン、5…スタータ、7…マイコン、9…バッテリ
11…スタータリレー、11a…コイル、13…メモリ機能付きの駆動回路
15…スイッチ手段、17…電源IC、19…リセット回路、21…CPU
22…ROM、23…RAM、24…入出力インターフェース
25…バックアップRAM、31…スタータスイッチ、33,39…トランジスタ
35…出力メモリ回路、36,37…抵抗、38…入力回路
41…プッシュスタートECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンを始動させるスタータを制御するための制御処理を行うと共に、正常に動作していることを示す特定動作を定期的に行うマイコンと、
前記マイコンから前記スタータの駆動を指令する駆動指令が出力されると、該駆動指令を記憶して、前記スタータに駆動電流を流す方の状態である出力オン状態を維持し、その後、前記マイコンから前記スタータの駆動停止を指令する停止指令が出力されると、前記スタータに駆動電流を流さない方の状態である出力オフ状態に戻る駆動回路と、
前記マイコンが動作すべき期間中において前記マイコンの前記特定動作を監視し、前記特定動作が規定時間以上行われなければ、前記マイコンをリセットして再起動させる監視手段と、
を備えたスタータ制御装置において、
前記マイコンは、起動直後に初期処理を一回実行した後、前記制御処理を繰り返し実行するようになっており、
更に前記マイコンは、前記初期処理の中で、前記駆動回路が所定時間以上継続して前記出力オン状態であるか否かを判定する判定処理と、該判定処理により前記駆動回路が前記所定時間以上継続して前記出力オン状態であると判定された場合に前記駆動回路へ前記停止指令を出力する停止処理と、を行うこと、
を特徴とするスタータ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスタータ制御装置において、
前記マイコンは、前記初期処理の中の前記停止処理によって前記停止指令を出力した場合には、前記制御処理を実行する状態へ移行せずに、前記初期処理を実行する状態で留まるようになっていること、
を特徴とするスタータ制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスタータ制御装置において、
前記監視手段により前記マイコンがリセットされても記憶内容を保持可能な記憶手段を有しており、
前記初期処理の中には、前記判定処理を成すステップとして、前記駆動回路が前記出力オン状態であるか否かを判定する第1ステップと、該第1ステップにより前記駆動回路が前記出力オン状態であると判定された場合に、前記記憶手段内のカウンタをインクリメントする第2ステップと、前記カウンタの値が1よりも大きい所定値以上であるか否かを判定する第3ステップとが含まれており、
前記第3ステップにて前記カウンタの値が前記所定値以上であると判定されることが、前記判定処理により前記駆動回路が前記所定時間以上継続して前記出力オン状態であると判定されることに該当すること、
を特徴とするスタータ制御装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のスタータ制御装置において、
前記監視手段により前記マイコンがリセットされても記憶内容を保持可能な記憶手段を有しており、
前記制御処理の中には、当該制御処理によって前記駆動回路に前記駆動指令を出力した時刻を、駆動開始時刻として前記記憶手段に記憶する時刻記憶用ステップが含まれており、
前記初期処理の中には、前記判定処理を成すステップとして、前記駆動回路が前記出力オン状態であるか否かを判定する第1ステップと、該第1ステップにより前記駆動回路が前記出力オン状態であると判定された場合に、前記記憶手段に記憶されている前記駆動開始時刻から現在時刻までの時間が前記所定時間以上であるか否かを判定する第2ステップとが含まれており、
前記第2ステップにて前記時間が前記所定時間以上であると判定されることが、前記判定処理により前記駆動回路が前記所定時間以上継続して前記出力オン状態であると判定されることに該当すること、
を特徴とするスタータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−64385(P2013−64385A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204547(P2011−204547)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】