説明

スチルベン誘導体並びにがん細胞増殖及び微生物増殖の阻害方法

本発明は、抗新生物活性及び/又は抗微生物活性を有するスチルベン由来化合物を提供する。本発明の好ましい化合物には、式(I)の化合物(式中:RはDap、Dap−Dil、Dap−Dil−Val、又はDap−Dil−Val−Dovであり;RはH、OH、又はPONaであり;そしてR及びRは連帯して−CH−であるか、又はそれぞれ独立してH、OH、CH、若しくはPONaである);及び式(II)、(III)の化合物、並びにそれらの塩(式中:R及びRは独立してH又はP(O)(OH)である)が含まれる。更に、本発明は、がん細胞増殖及び/又は微生物増殖の阻害方法、並びにそれとともに用いる組成物にかかるものである。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2005年5月12日出願の米国仮特許出願第60/680,289号に基づいて優先権を主張するものであり、その開示は本明細書にその全体が援用される。
【0002】
連邦支援研究の明示
本発明への財政援助は国立衛生研究所の助成番号5R01 CA090441を通して米国政府によって提供されたものである。したがって、米国政府は本発明に対し一定の権利を有することができる。
【0003】
発明の分野
本発明は、抗新生物活性及び/又は抗微生物活性を有する、スチルベン由来化合物にかかるものである。更に、本発明は、それに苦しむ宿主において、スチルベン由来化合物を苦しむ宿主へ投与することにより、がん細胞増殖及び/又は微生物増殖を阻害する方法にかかるものである。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
本発明者らは、近年、コンブレタスタチンA−4リン酸塩プロドラッグ(CA4P)(2h)(参考文献5〜10)によって生ずる強力ながん血管標的化の顕著な成功(参考文献2〜4)に力を得て、コンブレタスタチンA−2(参考文献1)(2c)の3’−アミノ誘導体(1a〜b、1d〜j)の合成を完了した(以下の構造を参照されたい)。その後、チロシンスチルベンアミド(1i)の2つのリン酸誘導体(3a、b)の合成と初期抗がん評価に着手した。コンブレタスタチンAシリーズとBシリーズ(参考文献1、11〜13)における3’−フェノール位へのリン酸基の結合については詳細に調査されている。本研究では、リン酸基の結合(3a)に関し、チロシンアミド(1i)の4”−フェノール基を用いることを選択するとともに、チロシンアミド(1i)をアミン基(参考文献14)及びフェノール基でリン酸化することによってジホスホリル誘導体(3b)を得ることにした。
【0005】
本発明の同等に重要な目的は、3’−アミノ基(1b)へ結合するためにドラスタチン10(4a)のテトラペプチドセグメントを利用することを含んでいた。インド洋アメフラシ タツナミガイから単離されたドラスタチン10(D−10、4a)は(参考文献15〜17)、優れた抗新生物剤として(参考文献19〜22)、前臨床(参考文献18)及び臨床開発を通して進歩し続けている。ドラスタチン10(4a)及び各種合成誘導体はクリプトコッカス・ネオフォルマンスに対する特異的抗真菌活性も有する(参考文献23〜26)。先のSAR研究により、D−10(4a)が、ビンカ部位近傍のβ−チューブリンサブユニットへ結合することにより、微小管重合を阻害することが確認されている。更なるSAR研究により、des−Doeテトラペプチドユニット(4b、Dov−Val−Dil−Dap)が強力な抗がん活性に必要であることが示されている(参考文献25〜26)。本発明者らは、本明細書において、Dov−Val−Dil−Dap(4b)を含むスチルベン誘導体の合成の成功について報告する。
【0006】
参考文献及び
【非特許文献1】Pettit,G.R.;Moser,B.R.;Boyd,M.R.;Schmidt,J.M.;Pettit,R.K.;Chapuis,J.C.、抗新生物剤460、コンブレタスタチンA−2プロドラッグの合成。Anti−Cancer Drug Des.、2002、16、185−194.
【非特許文献2】Kanthou,C;Tozer,G.M.、腫瘍血管標的化剤コンブレタスタチンA−4−リン酸は、ヒト内皮細胞においてアクチン細胞骨格の再生及び初期膜ブレブ形成を誘発する。Blood 2002、99、2060−2069.
【非特許文献3】Beauregard,D.A.;Pedley,R.B.;Hill,S.A.;Brindle,K.M.、2つの腺癌異種移植片の、抗血管薬コンブレタスタチンA4リン酸塩及び5,6−ジメチルキサンテノン−4−酢酸に対する異なる感受性、MRI及びMRSによる評価。NMR in Biomed.2002、15、99−105.
【非特許文献4】Eikesdal,H.P.;Landuyt,W.;Dahl,O.BT4Anラット神経膠腫におけるコンブレタスタチンA−4及びビンブラスチンの間質液圧に対する影響。Cancer Lett.2002、178、209−217.
【非特許文献5】Li,L.;Rojiani,A.M.;Siemann,D.W.カポジ肉腫治療における血管標的化剤コンブレタスタチンA−4リン酸ナトリウム塩と慣用の抗がん療法との併用療法の前臨床評価。Acta Oncol.2002、41、91−97.
【非特許文献6】Boehle,A.S.;Sipos,B.;Kliche,U.;Kalthoff,H.;Dohrmann,P.コンブレタスタチンA−4プロドラッグは、マウス異種移植モデルにおいて、ヒト非小細胞肺癌の増殖を阻害する。Ann.Thoracic Surg.2001、71、1657−1665.
【非特許文献7】Dowlati,A.;Robertson,K.;Cooney,M.;Petros,W.P.;Stratford,M.;Jesberger,J.;Rafie,N.;Overmoyer,B.;Makkar,V.;Stambler,B.;Taylor,A.;Waas,J.;Lewin,J.S.;McCrae,K.R.;Remick,S.C.新規血管標的化剤コンブレタスタチンA−4リン酸塩の進行癌患者における単一用量静脈内スケジュールに関する第I相薬理動態及び翻訳試験。Cancer Res.2002、62、3408−3416.
【非特許文献8】Remick,S.C;Dowlati,A.;Robertson,K.;Spiro,T.;Connell,C;Levitan,N.;Stratford,M.単一用量静脈内(IV)コンブレタスタチンA−4プロドラッグ(CA4P)の進行癌患者(Pt)における第I相薬理動態試験。『分子標的及びがん療法の発見、開発、及び臨床評価』、AACR−NCI−EORTC国際会議議事録、ワシントンDC:1999:4.
【非特許文献9】Rustin,G.J.S.;Galtraith,S.M.;Taylor,N.J.;Maxwell,R.;Tozer,G.;Baddeley,H.;Wilson,L.;Prise V.コンブレタスタチンA−4リン酸塩(CA4P)は動物及びヒトの腫瘍において選択的に血管を標的とする。『分子標的及びがん療法の発見、開発、及び臨床評価』、AACR−NCI−EORTC国際会議議事録、ワシントンDC:1999:4.
【非特許文献10】Pettit,G.R.;Temple,C;Narayanan,V.L.;Varma,R.;Simpson,M.M.;Boyd,M.R.;Rener,G.A.;Bansal,N.抗新生物剤322、コンブレタスタチンA−4プロドラッグの合成。Anti−Cancer Drug Des.1995、10、299−309.
【非特許文献11】Pettit,G.R.;Minardi,M.D.;Boyd,M.R.;Pettit,R.K.抗新生物剤463、コンブレタスタチンA−3二リン酸塩プロドラッグの合成。Anti−Cancer Drug Des.2000、15、397−404.
【非特許文献12】Pettit,G.R.;Lippert,J.W.抗新生物剤429、コンブレタスタチンA−1及びコンブレタスタチンB−1プロドラッグの合成。Anti−Cancer Drug Des.2000、15、203−216.
【非特許文献13】Pettit,G.R.;Rhodes,M.R.抗新生物剤389、コンブレタスタチンA−4プロドラッグの新規合成。Anti−Cancer Drug Des.1998、13、183−191.
【非特許文献14】Chakravarty,P.K.;Greenlee,W.J.;Parsons,W.H.;Patchett,A.A.;Combs,P.;Roth,A.;Busch,R.D.;Mellin,T.N.D−アラニン:D−アラニンリガーゼの新規阻害剤としての(3−アミノ−2−オキソアルキル)ホスホン酸及びそれらの類似体。J.Med.Chem.1989、32、1886−1890.
【非特許文献15】Pettit G.R.;Kamano Y.;Herald C.L.;Tuinman A.A.;Boettner F.E.;Kizu H.;Schmidt J.M.;Baczynsky,L.;Tomer,K.B.;Bontems,R.J.抗新生物剤136、海洋動物の顕著な抗新生物成分−ドラスタチン10の単離及び構造。J.Amer.Chem.Soc.1987、109、6883−6885.
【非特許文献16】Pettit,G.R.ドラスタチン。Herz,W.;Kirby,G.W.;Moore,R.E.;Steglich,W.;Tamm,Ch.編、『有機天然産物の化学の進展70』ニューヨーク:Springer Wien;1997:1−79.
【非特許文献17】Pettit,G.R.抗がん薬の進化的生合成。Ojima,I;Vite,G.D.;Altmann,K−H.編、『抗がん剤、がん化学療法の最先端』、ワシントンDC:米国化学会;2001:16−42.
【非特許文献18】Dang,L.H.;Bettegowda,C;Huso,D.L.;Kinzler,K.W.;Vogelstein,B.実験腫瘍の治療のための併用溶菌療法。Prod.Natl.Acad.Sci.2001、98,15155−15160.
【非特許文献19】Thamm,D.H.;MacEwen,E.G.;Phillips,B.S.;Hershey,A.E.;Burgess,K.M.;Pettit,G.R.;Vail D.M.自然新生物を有するイヌにおけるドラスタチン−10の前臨床試験。Cancer Chemother.Pharmacol.2002、49、251−255.
【非特許文献20】Margolin,K.;Longmate,J.;Synold,T.W.;Gandara,D.R.;Weber,J.;Gonzalez,R.;Johansen,M.J.;Newman,R.;Baratta,T.;Doroshow,J.H.転移性黒色腫におけるドラスタチン−10:カリフォルニアがんコンソーシアムの第II相薬理動態試験。Invest.New Drugs 2001、19、335−340.
【非特許文献21】Vaishampayan,U.;Glode,M.;Du,W.;Kraft,A.;Hudes,G.;Wright,J.;Hussain,M.ドラスタチン−10のホルモン抵抗性転移性前立腺腺癌患者における第II相試験。Clin.Cancer Res.2000、6、4205−4208.
【非特許文献22】Krug,L.M.;Miller,V.A.;Kalemkerian,G.P.;Kraut,M.J.;Ng,K.K.;Heelan,R.T.;Pizzo,B.S.;Perez,W.;McClean,N.;Kris,M.G.進行非小細胞肺癌患者におけるドラスタチン−10の第II相試験。Ann.Oncol.2000、11、227−228.
【非特許文献23】Pettit,R.K.;Pettit,G.R.;Hazen,K.C.ドラスタチン10及びペプチド誘導体のクリプトコッカス・ネオフォルマンスに対する特異的活性。Antimicrob.Agents Chemother.1998、42、2961−2965.
【非特許文献24】Woyke,T.;Pettit,G.R.;Winkelmann,G.;Pettit,R.K.強力なドラスタチン10誘導体アウリスタチンPHEのin vitro活性及び後抗真菌効果。Antimicrob.Agents Chemother.2001、45、3580−3584.
【非特許文献25】Pettit,G.R.;Srirangam J.K.;Barkoczy J.;Williams M.D.;Boyd M.R.;Hamel E.;Pettit R.K.;Hogan F.;Bai R.;Chapuis J−C;McAllister S.C.;Schmidt J.M.抗新生物剤365、ドラスタチン10 SARプローブ。Anti−Cancer Drug Des.1998、13、243−277.
【非特許文献26】Pettit,G.R.;Srirangam,J.K.;Barkoczy,J.;Williams,M.D.;Durkin,K.P.M.;Boyd,M.R.;Bai,R.L.;Hamel,E.;Schmidt,J.M.;Chapuis,J.C.(1995)抗新生物剤337、ドラスタチン10構造改変体の合成。Anti−Cancer Drug Des.1995、10、529−544.
【非特許文献27】Pettit,G.R.;Anderson,C.R.;Herald,D.L.;Jung,M.K.;Lee,D.J.;Hamel,E.;Pettit,R.K.抗新生物剤487、抗新生物剤3,4−メチレンジオキシ−5,41−ジメトキシ−31−アミノ−Z−スチルベン及び派生アミノ酸アミドの合成及び生物学的評価。J.Med.Chem.2003、46、525−531.
【非特許文献28】Coste,J.;Dufour,M−N.;Pantaloni,A.;Bertrand,C.Brop:N−メチル化アミノ酸をカップリングするための新規試薬。Tetrahedron Lett.1990、31、669−672.
【非特許文献29】Lott,R.S.;Chauhan,V.S.;Stammer,CH.ペプチド脱ブロッキング剤としてのヨウ化トリメチリシリル。J.Chem.Soc.Chem.Commun.1979、495−496;1979.
【非特許文献30】Ho,T−L.;Olah,G.A.エステル及びエーテルのヨードトリメチルシランによる切断。Angew.Chem.Intl.編(Engl.)1976、15、774−775.
【非特許文献31】Mehta,A.;Jaouhari,R.;Benson,TJ.;Douglas,K.T.ペプチド合成における改善された有効性及び選択性:t−ブチルエステル及びt−ブトキシカルボニル−保護部位の脱保護における炭素陽イオンスカベンジャーとしてのトリエチルシランの使用。Tetrahedron Lett.1992、33、5441−5444;1992.
【非特許文献32】Pettit,G.R.;Srirangam,J.K.;Singh,S.B.;Williams,M.D.;Herald,D.L.;Barkoczy,J.;Kantoci,D.;Hogan,F.ドラスタチン24、(−)−ドラスタチン10の合成。−NN−ジメチルバリル−バリル−dolaisoleuine tert−ブチルエステルのX線分子構造。J.Chern.Soc.,Perkin Trans.1、1996、859−863.
【非特許文献33】Pettit,G.R.;Burkett,D.D.;Barkoczy,J.;Breneman,G.L.;Pettit,W.E.ドラスタチン18、Dolaproineの立体特異的合成。Synthesis 1996、719−725.
【非特許文献34】Bai,R.;Pettit,G.R.;Hamel,E.ドラスタチン10、海洋動物由来の強力な細胞増殖抑制ペプチド:ビンカ・アルカロイド結合ドメインによって介在されるチューブリン重合の阻害。Biochem.Pharmacol.1990、39、1941−1949.
【非特許文献35】Bai,R.;Pettit,G.R.;Hamel,E.交換可能ヌクレオチド及びビンカ・アルカロイド部位近傍の、ペプチド抗分裂剤とは異なる部位におけるドラスタチン10のチューブリンへの結合。J.Biol.Chem.1990、265、17141−17149.
【非特許文献36】Lin,C.M.;Singh,S.B.;Chu,P.S.;Dempcy,R.O.;Schmidt,J.M.;Pettit,G.R.;Hamel,E.チューブリンと、抗分裂剤コンブレタスタチンの強力な天然及び合成類似体との相互作用、構造−活性試験。Mol.Pharmacol.1988、34、200−208.
【非特許文献37】Lin,C.M.;Ho,H.H.;Pettit,G.R.;Hamel,E.抗分裂性天然産物コンブレタスタチンA−4及びコンブレタスタチンA−2:コルヒチンのチューブリンへの結合の阻害メカニズムに関する研究。Biochemistry 1989、28、6984−6991.
【非特許文献38】Hamel,E.;Lin,C.M.活性チューブリンと微小管結合タンパク質との超遠心分離、及び微小管束の形成を引き起こす成分の単離。Biochemistry 1984、23、4173−4184.
【非特許文献39】Hamel,E.精製チューブリン重合に対する効果の定量的比較による抗分裂剤の評価。Cell Biochem.Biophys.2003、38、1−21.
【非特許文献40】Verdier−Pinard,P.;Lai,J.−Y.;Yoo,H.−D.;Yu,J.;Marquez,B.;Nagle,D.G.;Nambu,M.;White,J.D.;Falck,J.R.;Gerwick,W.H.;Day,B.W.;Hamel,E.、強力なコルヒチン部位抗分裂剤Curacin Aと、チューブリンとの相互作用の構造−活性解析、及びMCF−7乳癌細胞の増殖に対する類似体の効果。Mol.Pharmacol.1998、55、62−76.
【非特許文献41】Hamel,E.;Lin,C.M.、グアノシン 5’−O−(3−チオトリホスフェート)、微小管重合の強力なヌクレオチド阻害剤。J.Biol.Chem.1984、259、11060−11069.
【非特許文献42】Skehan,P.;Storeng,R.;Scudiero,D.;Monks,A.;McMahon,J.;Vistica,D.;Warren,J.T.;Bokesch,H.;Kenney,S.;Boyd,M.R.、抗がん剤スクリーニングのための新規比色細胞障害性アッセイ。J.Nad.Cancer Inst.1990、82、1107−1112.
【非特許文献43】NCCLS、好気性増殖細菌用希釈抗微生物感受性試験法;認可基準−第5版。NCCLS Document M7−A5;2000.
【非特許文献44】NCCLS、酵母の液体希釈抗真菌感受性試験のための参照方法;認可基準−第2版。NCCLS Document M27−A2;2002.
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、癌性細胞株に対する抗新生物活性及び/又は抗微生物活性を有する特定の新規スチルベン誘導体にかかるものである。本発明は、式:
【0008】
【化1】

【0009】
を有する化合物又はその塩を提供するものであり、式中:RはDap、Dap−Dil、Dap−Dil−Val、又はDap−Dil−Val−Dovであり;RはH、OH、又はPONaであり;そしてR及びRは連帯して−CH−であるか、又はそれぞれ独立してH、OH、CH、又はPONaである。好ましい態様では、RはDap又はDap−Dil−Val−Dovであり、RはHである。
【0010】
他の態様では、本発明は、式:
【0011】
【化2】

【0012】
の化合物及びその塩に関するものであり、式中:R及びRは独立してH又はP(O)(OH)である。この態様では、RはP(O)(OH)であることが好ましい。
更に他の態様では、本発明は、以下の化合物を提供する。
【0013】
【化3】

【0014】
更に、本発明は、がん細胞増殖及び/又は微生物増殖の阻害方法にかかるものである。好ましい態様では、本方法は、少なくとも1つの本明細書に開示のスチルベン誘導体をがん又は微生物感染に苦しむ宿主へ投与することを含む。本化合物は、具体的には、宿主におけるがん細胞増殖又は微生物増殖の阻害に十分な治療的有効量である。
【0015】
本発明は医薬組成物も包含する。本発明の組成物は、少なくとも1つの本明細書に開示のスチルベン誘導体化合物及び医薬的に許容可能な担体を含む。
したがって、本発明の第1の目的は、抗新生物活性が改善されたスチルベン由来化合物を提供することである。好ましい目的は、チューブリンのビンカドメイン及びコルヒチン部位への結合能を有するスチルベン由来化合物を提供することである。本発明の更なる目的は、抗微生物活性、好ましくは広範囲の抗微生物活性を有するスチルベン由来化合物を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
発明の詳細な説明
上記のように、本発明は、新規スチルベン誘導体にかかるものである。新規スチルベン誘導体は抗新生物活性及び/又は抗微生物活性を有することが好ましい。具体的には、本発明の1つの態様では、スチルベン誘導体は、式:
【0017】
【化4】

【0018】
を有するものであり、式中:RはDap、Dap−Dil、Dap−Dil−Val、又はDap−Dil−Val−Dovであり;RはH、OH、又はPONaであり;そしてR及びRは連帯して−CH−であるか、又はそれぞれ独立してH、OH、CH、又はPONaである。好ましい態様では、RはDapであり、RはHである;RはDap−Dil−Val−Dovであり、RはHである;そしてRはDap又はDap−Dil−Val−Dovであり、R及びRはCHである。
【0019】
本明細書において、本発明の化合物への言及は、特に示されていない限り、その塩への言及を含むことが理解される。本明細書において「塩」という用語は、無機及び/又は有機の酸及び塩基とともに形成される酸性及び/又は塩基性の塩を意味する。本発明の化合物の塩は、例えば塩が沈殿するような媒体又は水性媒体中で、化合物をある量、例えば等量の酸又は塩基と反応させ、凍結乾燥させることによって形成することができる。塩の形成は、十分に、当該技術分野に熟練した者の能力の範囲内である。本発明の化合物の具体的な塩の例を本明細書に提供するが、それらに限定されることを意図するものではない。
【0020】
本発明の好ましい化合物は、がん細胞増殖及び/又は寄生微生物増殖を阻害する。好ましい態様では、化合物は2重標的活性を有し、例えば本化合物は、コルヒチンとチューブリンのビンカ領域とを標的とする。本化合物は、白血病、膵臓癌、乳癌、CNSの癌、肺NSC癌、大腸癌、又は前立腺癌から成る群より選択されるがん細胞を阻害することが好ましい。
【0021】
他の態様では、宿主においてがん細胞の増殖を阻害するための方法が提供される。本方法は、少なくとも1つの本明細書に開示のスチルベン誘導体をがんに苦しむ宿主へ投与することを含む。本化合物は医薬組成物で投与されることが好ましい。好ましい医薬組成物を以下に詳細に考察する。投与される化合物は、典型的には宿主においてがん細胞増殖を阻害するのに十分な治療的有効量である。宿主は動物であることが好ましく、より好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。
【0022】
いくつかの態様では、本方法は、有効量の本発明の化合物、及び少なくとも1つの追加の治療剤をそれを必要とする宿主へ投与することを含む。1つの態様では、追加の治療剤は、限定されるものではないが、メトトレキサート、タキソール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシウレア、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルバジン、エトポシド、campathecins、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、アスパラギナーゼ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、及びそれらの混合物を含めた化学療法剤である。
【0023】
他の態様では、本発明は、好ましくは上記のような宿主において、微生物増殖を阻害する方法にかかるものである。本方法は、少なくとも1つの本明細書に開示のスチルベン誘導体を宿主において微生物増殖を阻害するのに十分な治療的有効量で宿主へ投与することを含む。本発明の化合物は、真菌感染や細菌感染のような微生物感染、又はそのような感染の組み合わせを治療するために、単独で投与することも、1以上の追加の抗微生物剤と組み合わせて投与することもできる。
【0024】
したがって、1つの特定の態様では、本発明は、真菌感染がフルコナゾールなどのアゾール抗真菌剤に対して耐性であるか、又は感受性である微生物感染を治療するための方法である。本発明の方法は、第2の抗微生物剤との共投与を更に含むことができ、追加の抗真菌剤及び/又は抗細菌剤を投与する。
【0025】
真菌感染には、皮膚、皮下、又は全身性であり得る真菌感染(真菌症)が含まれる。表在性真菌症には、頭部白癬、体部白癬、足白癬、爪甲真菌症、爪囲真菌症、癜風、口腔カンジダ症、並びに膣、気道、胆管、食道、及び尿道のカンジダ症などの他のカンジダ症が含まれる。全身性真菌症には、全身性及び皮膚粘膜性のカンジダ症、クリプトコッカス症、アスペルギルス症、ムコール菌症(藻菌症)、パラコクシジオイデス症、北アメリカ分芽菌症、ヒストプラズマ症、コクシジオイデス症、並びにスポロトリクム症が含まれる。真菌感染には、特にAIDSを伴う者のような免疫不全の患者における、日和見真菌感染が含まれる。真菌感染は髄膜炎及び肺疾患又は気道疾患の原因となる。
【0026】
病原体には、皮膚糸状菌(例えば犬小胞子菌及び他の小胞子菌種;並びに紅色白癬菌及び毛瘡白癬菌などの白癬菌種)、酵母(例えばカンジダ・アルビカンス、カンジダ・トロピカリス、又は他のカンジダ種)、トルロプシス・グラブラータ、エピデルモフィトン・フロコスム(Epidermophyton floccosum)、癜風菌(ピチロスポルム・オルビクラーレ又はピチロスポルム・オバーレ)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、アスペルギルス・フミガーツス、及び他のアスペルギルス種、接合菌類(例えばクモノスカビ、ケカビ)、パラコシジオイド・ブラシリエンシス、ブラストミセス・デルマチチジス、ヒストプラズマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミティス、並びにスポロトリクス・シェンキーが含まれる。真菌感染には、クラドスポリウム・ククメリヌム、エピデルモフィトン・フロコスム、及びMicrospermum ypseumが含まれる。最新の抗真菌薬の例としては、ニスタチン、クロトリマゾール、アンフォテリシンB、ケトコナゾール、フルコナゾール、及びイトラコナゾールが挙げられる。
【0027】
細菌感染は、菌血症、肺炎、髄膜炎、骨髄炎、心内膜炎、静脈洞炎、関節炎、尿路感染症、破傷風、壊疽、大腸炎、急性胃腸炎、気管支炎、及びさまざまな腫瘍などの疾患、院内感染、並びに日和見感染を生ずる。病原菌には、黄色ブドウ球菌、化膿連鎖球菌(A群)、連鎖球菌種(ビリダンス群)、連鎖球菌(B群)、ストレプトコッカス・ボービス、連鎖球菌(嫌気性種)、肺炎連鎖球菌、及び腸球菌種などのグラム陽性球菌;淋菌、髄膜炎菌、及びブランハメラ・カタラーリスなどのグラム陰性球菌;炭疽菌、ジフテリア菌及び類ジフテリア菌であるコリネバクテリウム種(好気性及び嫌気性)、リステリア・モノサイトゲネス、破傷風菌、クロストリジウム・ディフィシルなどのグラム陽性桿菌、大腸菌、エンテロバクター種、プロテウス・ミラビリス、並びに他の種、緑膿菌、肺炎桿菌、サルモネラ菌、赤痢菌、セラチア菌、及びカンピロバクター・ジェジュニが含まれる。
【0028】
用いる化合物は、ナイセリア属、腸球菌属、連鎖球菌属、又はクリプトコッカス属由来の微生物を阻害することが好ましく、淋菌;大便連鎖球菌;肺炎連鎖球菌;及びクリプトコッカス・ネオフォルマンスから成る群より選択される微生物を阻害することがより好ましい。
【0029】
医薬組成物及び剤形
医薬組成物は、単一剤形の調製に用いることができる。必然的に、本発明の医薬組成物及び剤形は、本明細書に開示の活性成分を含む。「活性成分」という表記は、本明細書に記載の本発明の化合物又はその塩を意味する。本発明の医薬組成物及び剤形は、医薬的に許容可能な担体を更に含むことができる。
【0030】
1つの態様では、「医薬的に許容可能な」という用語は、動物、より具体的にはヒトにおける使用に関して、連邦政府又は州政府の監督官庁によって認証されているか、米国薬局方又は他の一般に認識されている薬局方に記載されていることを意味する。「担体」という用語は、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを表し、それとともに活性成分を投与する。そのような医薬担体は、ピーナッツ油、ダイズ油、ミネラルオイル、ゴマ油などのような、石油、動物油、植物油、又は合成由来のものを含めた水及びオイルなどの液体であり得る。医薬担体は、生理食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素などであり得る。更に、他の賦形剤を用いることができる。
【0031】
本発明の単位剤形は、患者への経口投与、粘膜投与(例えば鼻腔、舌下、膣内、口腔、又は直腸)、非経口(例えば皮下、静脈内、ボーラス注入、筋肉内、又は動脈内)、又は経皮投与に好適である。剤形の例としては、限定されるものではないが、錠剤;カプレット;軟ゼラチンカプセルのようなカプセル;カシェ(cachet);トローチ;ロゼンジ;分散剤;坐薬;軟膏;パップ剤(湿布);ペースト;粉末;包帯剤;クリーム;こう薬;液剤;パッチ;エアロゾル(例えば鼻腔用スプレー又は吸入器);ジェル;懸濁液(例えば水性又は非水性の液体懸濁液、水中油型乳剤、又は油中水型乳剤)、液剤、及びエリキシル剤を含めた患者への経口投与又は粘膜投与に好適な液体剤形;患者への非経口投与に好適な液体剤形;並びに患者への非経口投与に好適な液体剤形を提供するために再構成され得る滅菌固体(例えば結晶性固体又は無定形固体)が挙げられる。
【0032】
本発明の剤形の組成、形状、及び種類は、具体的にはその用途に応じて変更されるであろう。例えば、腫瘍性疾患又は細菌感染の急性期治療に用いる剤形は、それが含む1以上の活性成分を、同一疾患の長期治療に用いられる剤形よりも多量に含有することができる。同様に、非経口剤形は、それが含む1以上の活性成分を、同一疾患を治療するために用いられる経口剤形よりも少量含有することができる。本発明に包含される特定剤形が互いに変更されるこれら及び他の方法は、当該技術分野に熟練した者には容易に明らかであろう。例えばレミントンの薬学、第18版、Mack出版社、イーストン、ペンシルバニア州(1990)を参照されたい。
【0033】
典型的な医薬組成物及び剤形は、1以上の賦形剤を含む。好適な賦形剤は、製薬分野に熟練した者には周知であり、好適な賦形剤の非限定的な例を本明細書に提供する。特定の賦形剤が医薬組成物又は剤形への取り込みに好適であるかどうかは、限定されるものではないが、剤形を患者に投与する方法を含めた当該技術分野において周知のさまざまな要因に依存する。例えば、錠剤のような経口剤形は、非経口剤形における使用に好適でない賦形剤を含有することができる。特定賦形剤の好適性は剤形中の特定活性成分にも依存し得る。例えば、いくつかの活性成分の分解が、乳糖などのいくつかの賦形剤によって、又は水に曝露されたとき加速され得る。
【0034】
本発明は、活性成分の分解速度を低下させる1以上の化合物を含む医薬組成物及び剤形を更に包含する。本明細書において「安定化剤」と称するそのような化合物には、限定されるものではないが、アスコルビン酸、pH緩衝剤、又は塩緩衝液などの抗酸化剤が含まれる。
【0035】
本明細書において、「治療的有効量」とは、腫瘍若しくは悪性血液疾患の形成を阻害し(部分的に又は全体的に)、又はその更なる進行を軽減させるか、あるいは目的微生物の増殖を阻害するために十分な量である。用量は、処置の特定の条件又は方法に対して公知の方法を用いて経験的に決定され、用いる特定化合物の生物活性、投与手段、宿主の年齢、健康状態、及び体重;症状の性質及び程度;治療頻度;他の療法の投与及び所望の効果などの事実に依存するであろう。以下に各種の可能な用量及び投与方法を記載するが、以下は説明することのみを意図するものであることが理解される。実際の用量及び投与又は送達方法は、当該技術分野に熟練した者によって決定することができる。
【0036】
本発明の典型的な具体的剤形は、本発明の化合物又は化合物の混合物を活性成分として、約1mg〜約2000mg、より好ましくは約25mg〜約1000mg、更により好ましくは約50mg〜約750mg、最も好ましくは約100mg〜約500mgの量で含む。
【0037】
具体的な目的のために投与される活性成分の投与量レベルは:宿主体重に対し、静脈内で0.01〜約20mg/kg;筋肉内で0.1〜約50mg/kg;経口で0.05〜約100mg/kg;鼻腔内点滴で0.5〜約100mg/kg;エアロゾルで0.5〜約100mg/kgであり得る。
【0038】
濃度で表現すると、本発明の組成物中に活性成分は、皮膚、鼻腔内、咽頭、気管支、膣内、直腸内、又は眼内の局所用途で組成物の約0.01〜約50%w/wの濃度、好ましくは約1〜約20%w/wの濃度;非経口用途で組成物の約0.05〜約50%w/vの濃度、好ましくは約5〜約20%w/vの濃度で存在し得る。
【0039】
抗新生物剤又は抗微生物剤として用いるべき活性成分は、それ自体が当該技術分野で利用可能な製薬材料の利用により、そのような単位剤形で容易に調製することができ、また、確立された手順によって調製することができる。以下の調製は本発明の剤形の調製を例証するものであり、それらに限定されるものではない。
【0040】
経口剤形
経口投与に好適な本発明の医薬組成物は、限定されるものではないが、錠剤(例えばチュアブル錠)、カプレット、カプセル、及び液剤(例えば香りのするシロップ)などの別個の剤形として提供することができる。そのような剤形は所定量の活性成分を含有することができ、当該技術分野に熟練した者に周知の製薬方法によって調製することができる。一般に、レミントンの薬学、第18版、Mack出版社、イーストン、ペンシルバニア州(1990)を参照されたい。
【0041】
本発明の典型的な経口剤形は、慣用の医薬配合技術にしたがい、緊密な混合剤中で活性成分を少なくとも1つの賦形剤と組み合わせることによって調製する。賦形剤は、投与に望ましい製剤の形態に応じて広範な形態を採ることができる。例えば経口用の溶液又はエアロゾル剤形における使用に好適な賦形剤には、限定されるものではないが、水、グリコール、オイル、アルコール、着香料、保存料、及び着色料が含まれる。固体経口剤形(例えば粉末、錠剤、カプセル、及びカプレット)における使用に好適な賦形剤の例としては、限定されるものではないが、デンプン、糖、微晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、及び崩壊剤が挙げられる。
【0042】
投与の容易性により、錠剤及びカプセルが最も有益な経口単位剤形であり、この場合、固体賦形剤が使用される。所望により、錠剤は標準の水性又は非水性技術によりコーティングすることができる。そのような剤形は如何なる製薬方法によっても調製することができる。一般に、医薬組成物及び剤形は、活性成分を液体担体、微粉固体担体、又は両方と均一且つ緊密に混合し、必要ならば産物を所望の形態に形成することによって調製する。
【0043】
例えば、錠剤は圧縮又は成形によって調製することができる。圧縮錠剤は、好適な機械で活性成分を粉末や顆粒などのフリーフロー型に圧縮し、場合により賦形剤と混合することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混合物を好適な機械で成形することによって作製することができる。
【0044】
本発明の経口剤形に使用できる賦形剤の例としては、限定されるものではないが、結合剤、充填剤、崩壊剤、及び潤滑剤が挙げられる。医薬組成物及び剤形における使用に好適な結合剤には、限定されるものではないが、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、又は他のデンプン、ゼラチン、アカシアなどの天然ゴム又は合成のゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、トラガカント粉末、グァーガム、セルロース及びその誘導体(例えばエチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、プレゼラチン化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばNo.2208、No.2906、No.2910)、微晶性セルロース、及びそれらの混合物が含まれる。
【0045】
微晶性セルロースの好適な形態には、限定されるものではないが、AVICEL−PH−101、AVICEL−PH−103、AVICEL RC−581、AVICEL−PH−105(FMC社、American Viscose Division、Avicel Sales、マーカスフック、ペンシルバニア州から市販されている)として販売される材料、又はそれらの混合物が含まれる。特定の結合剤は、AVICEL RC−581として販売される微晶性セルロースとカルボキシメチルセルロースナトリウムとの混合物である。好適な無水若しくは低水分の賦形剤又は添加剤には、AVICEL−PH−103.TM.及びStarch 1500LMが含まれる。
【0046】
本明細書に開示の医薬組成物及び剤形における使用に好適な充填剤の例としては、限定されるものではないが、タルク、炭酸カルシウム(例えば顆粒又は粉末)、微晶性セルロース、セルロース粉末、デキストラン酸塩(dextrate)、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、プレゼラチン化デンプン、及びそれらの混合物が挙げられる。本発明の医薬組成物中の結合剤又は充填剤は、典型的には医薬組成物又は剤形の約50〜約99重量%で存在する。
【0047】
崩壊剤は、水性環境に曝露させると分解する錠剤を提供するために本発明の組成物中に使用する。過剰量の崩壊剤を含有する錠剤は保存中に分解し得るが、過少量含有するものは所望の速度で又は所望の条件下で分解し得ない。したがって、活性成分の放出を有害に変更するような過剰量でも過少量でもない十分量の崩壊剤を用いて、本発明の固体経口剤形を形成する必要がある。用いる崩壊剤の量は製剤の種類に基づいて変化し、当該技術分野において通常の技術を有する者に容易に認識されるものである。典型的な医薬組成物は、約0.5〜約15重量%、好ましくは約1〜約5重量%の崩壊剤を含む。
【0048】
本発明の医薬組成物及び剤形に使用できる崩壊剤には、限定されるものではないが、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、他のデンプン、プレゼラチン化デンプン、他のデンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ゴム、及びそれらの混合物が含まれる。
【0049】
本発明の医薬組成物及び剤形に使用できる潤滑剤には、限定されるものではないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイル、ライトミネラルオイル、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(例えばピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、及びダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、アガー、及びそれらの混合物が含まれる。更なる潤滑剤には、例えば、syloidシリカゲル(AEROSIL 200、W.R.Grace社製、ボルティモア、メリーランド州)、合成シリカの凝固エアロゾル(Degussa社販売、プレーノー、テキサス州)、CAB−O−SIL(発熱性の二酸化ケイ素製品、Cabot社販売、ボストン、マサチューセッツ州)、及びそれらの混合物が含まれる。仮に使用する場合、潤滑剤は、典型的には、それらが組み込まれる医薬組成物又は剤形の約1重量%未満の量で用いられる。
【0050】
本発明の好ましい固体経口剤形は、活性成分、無水乳糖、微晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸、コロイド状無水シリカ、及びゼラチンを含む。
遅延放出剤形
本発明の活性成分は、当該技術分野において通常の技術を有する者に周知の制御放出手段によって又は送達装置によって投与することができる。例として、限定されるものではないが、それぞれ本明細書に援用される米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,598,123号;及び第4,008,719号、第5,674,533号、第5,059,595号、第5,591,767号、第5,120,548号、第5,073,543号、第5,639,476号、第5,354,556号、及び第5,733,566号に記載のものが挙げられる。そのような剤形は、1以上の活性成分の徐放性又は制御放出を提供するために用いることができ、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、浸透圧システム、多層コーティング、マイクロ粒子、リポソーム、マイクロスフェア、又はそれらの組み合わせを用いて、さまざまな割合で所望の放出プロファイルを提供する。本明細書に記載のものを含めた、当該技術分野において通常の技術を有する者に公知の好適な制御放出製剤は、本発明の活性成分を用いた使用のために容易に選択することができる。このように、本発明は、限定されるものではないが、制御放出に適応した錠剤、カプセル、ジェルキャップ、及びカプレットなどの、経口投与に好適な単位剤形を包含する。
【0051】
全ての制御放出医薬製品は、非制御製品によって達成されるよりも改善された薬物療法という共通のゴールを有する。理想的には、最適にデザインされた制御放出製剤の医療における使用は、最短時間で病態を治療又は制御するために使用される薬物物質が最小量であることを特徴とする。制御放出製剤の利点には、長時間の薬物活性、投薬頻度の減少、及び患者の薬剤服用順守の向上が含まれる。更に、制御放出製剤は、作用又は血中薬物レベルのような他の特徴の開始時間に影響を及ぼすために使用することができ、したがって、副作用(例えば有害作用)の発生に影響を及ぼすことができる。
【0052】
多くの制御放出製剤は、所望の治療効果を早期に生ずる所定量の薬物(活性成分)を最初に放出し、この治療効果又は予防効果のレベルを長期間にわたって維持するために他の量の薬物を徐々にそして継続的に放出するようにデザインされている。体内で薬物のこの一定レベルを維持するには、薬物は、代謝されて体内から排泄される薬物の量に置き代わる速度で剤形から放出される必要がある。活性成分の制御放出は、限定されるものではないが、pH、温度、酵素、水、若しくは他の生理条件、又は化合物を含めたさまざまな条件によって刺激することができる。
【0053】
非経口剤形
非経口剤形は、限定されるものではないが、皮下、静脈内、ボーラス注入、筋肉内、及び動脈内を含めたさまざまな経路で患者に投与することができる。それらの投与は典型的には汚染物質に対する患者の自然防御を回避するため、非経口剤形は、滅菌されているか又は患者へ投与する前に滅菌可能であることが好ましい。非経口剤形の例としては、限定されるものではないが、直ちに注射できる溶液、注射用に医薬的に許容可能なビヒクルにすぐに溶解又は懸濁できる乾燥産物、直ちに注射できる懸濁液、及び乳剤が挙げられる。
【0054】
本発明の非経口剤形を提供するために使用できる好適なビヒクルは、当該技術分野に熟練した者に周知である。例として、限定されるものではないが:注射用水USP;限定されるものではないが塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、ブドウ糖注射液、ブドウ糖及び塩化ナトリウム注射液、並びに乳酸加リンゲル注射液などの水性ビヒクル;限定されるものではないがエチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールなどの水混和性ビヒクル;並びに限定されるものではないがコーン油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジルなどの非水性ビヒクルが挙げられる。
【0055】
本明細書に開示の1以上の活性成分の溶解性を高める化合物を、本発明の非経口剤形へ組み込むこともできる。
経皮剤形、局所剤形、及び粘膜剤形
本発明の経皮剤形、局所剤形、及び粘膜剤形には、限定されるものではないが、点眼液、スプレー、エアロゾル、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、溶液、乳剤、懸濁液、又は当該技術分野に熟練した者に公知の他の形態が含まれる。例えばレミントンの薬学、第16版及び第18版、Mack出版社、イーストン、ペンシルバニア州(1980及び1990);並びに医薬剤形序論、第4版、Lea&Febiger、フィラデルフィア(1985)を参照されたい。口腔内の粘膜組織の治療に好適な剤形は、うがい薬として又は経口ゲルとして処方することができる。更に、経皮剤形には、「リザーバー型」又は「マトリックス型」のパッチが含まれ、これらは、所望量の活性成分の浸透を可能にするように皮膚に適用し、特定期間装着することができる。
【0056】
本発明に包含される経皮剤形、局所剤形、及び粘膜剤形を提供するために使用できる好適な賦形剤(例えば担体及び希釈剤)及び他の材料は、製薬分野に熟練した者に周知であり、所定の医薬組成物又は剤形が適用される特定組織に依存する。その事実を踏まえて、典型的な賦形剤には、限定されるものではないが、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミネラルオイル、及びそれらの混合物が含まれ、非毒性であって医薬的に許容可能なローション、チンキ剤、クリーム、乳剤、ゲル、又は軟膏を形成する。保湿剤又は湿潤剤を必要に応じて医薬組成物及び剤形に適用することもできる。そのような追加成分の例は当該技術分野において周知である。例えばレミントンの薬学、第16版及び第18版、Mack出版社、イーストン、ペンシルバニア州(1980及び1990)を参照されたい。
【0057】
処置すべき特定組織に応じて、処置の前、同時に、又はその後、本発明の活性成分とともに追加成分を用いることができる。例えば、活性成分を組織に送達する際の助けとなるように浸透促進剤を用いることができる。好適な浸透促進剤には、限定されるものではないが:アセトン;各種アルコール、例えばエタノール、オレイル、及びテトラヒドロフリル;アルキルスルホキシド、例えばジメチルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ピロリドン、例えばポリビニルピロリドン;Kollidon grade(ポビドン、ポリビドン);尿素;並びに各種水溶性又は非水溶性の糖エステル、例えばTween80(ポリソルベート80)及びSpan60(モノステアリン酸ソルビタン)が含まれる。
【0058】
医薬組成物若しくは剤形のpH、又は医薬組成物若しくは剤形を適用する組織のpHを調整して、1以上の活性成分の送達を改良することもできる。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度、又は等張性を調整して送達を改良することができる。ステアリン酸塩などの化合物を医薬組成物又は剤形に加えて、1以上の活性成分の親水性又は親油性を有利に変更し、送達を改良することもできる。これに関し、ステアリン酸塩は、製剤の脂質ビヒクルとして、乳化剤又は界面活性剤として、及び送達促進剤又は浸透促進剤として役立つことができる。活性成分のさまざまな塩を用いて、得られた組成物の特性を更に調整することができる。
【0059】
本発明を、以下の非限定的な実施例によって説明する。
【実施例】
【0060】
スチルベン誘導体の合成
チロシンスチルベンアミド1i(参考文献27)の合成は、コンブレタスタチンシリーズの2つの更なるリン酸塩プロドラッグ3a及び3bを開発する機会を与えた(以下の化学構造を参照されたい)。
【0061】
【化5】

【0062】
それに応じて、4”−フェノール及びα−アミノ基を、亜リン酸ジベンジルを用いて1工程でリン酸化した(1i→5)(スキーム1)。
【0063】
【化6】

【0064】
得られたリン酸ジエステル(5)の脱ベンジル化は、ブロモトリメチルシランを用いて達成し、遊離酸(3b)を提供し、続いてこれをナトリウムメトキシドのメタノール溶液を用いてナトリウム塩6へ変換した(参考文献11〜12)。4”-フェノール位のみのリン酸化は、PyBroPをカップリング試薬として用いた3’−アミノスチルベン1aとO−tert−ブチル−Nα−Z−L−Tyrとのカップリングにより達成し(参考文献28)、アミド7を提供した(スキーム2)。
【0065】
【化7】

【0066】
TFAのDCM溶液を用いてtert−ブチルを除去し、その後リン酸化することにより、ジベンジルエステル8を提供した。エステルにおける脱ベンジル化と、アミンにおけるベンジルオキシカルボニルの除去は同時に達成し、アセトニトリル中のヨウ化ナトリウムとクロロトリメチルシランとの反応からヨウ化トリメチルシリル(TMSI)をin situで生成した(参考文献29〜30)。この方法は、リン酸塩プロドラッグ3aを即時沈殿させた。驚くべきことに、リン酸及び対応のナトリウム塩はともに水に難溶性であることが証明された。第1に1iの塩酸塩を作製し(スキーム3)、第2にアミン1aとアスパラギン酸とをカップリングさせてβ−アスパラギン酸ナトリウム塩11(スキーム4)に変換することによって、可溶性アミド誘導体を作製する可能性について更に調査した。
【0067】
【化8】

【0068】
【化9】

【0069】
アミド形成はPyBroPを用いて達成し、続いて、トリエチルシランの存在下、β−tert−ブチル保護基を除去した(参考文献31)。得られたカルボン酸を、その後ナトリウムメトキシドのメタノール溶液で処理し、ナトリウム塩11を生じた。塩酸塩9及びナトリウム塩11は、ともに本質的に水に不溶性であった(<0.1mg/mL)。本発明者らは、コンブレタスタチンA−2のリン酸塩プロドラッグ(2d)は、そのコンブレタスタチンA−1(2b)及びA−3対応物(2f)と比較して水溶性が低下したことを以前に発見していた(参考文献11〜12)が、新規CA2修飾(1b、3a、6、9、及び11)が、おそらくスチルベンによって作り出された疎水性により、ほんのわずかな水溶性を示すことを発見したことに驚いた(表1)。興味深いことに、リン酸基をチロシンアミド1iに付加して3aを生ずることにより、抗癌活性が低下した(表2)。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
表2に記載したそれぞれの物質について得たがん細胞株の結果は溶液中で得たため、おそらくわずかな水溶性はあまり細胞株の結果及び有効性に影響を及ぼさなかった。しかしながら、in vitroでの水素結合能の低下は重要であろう。
【0073】
1984年に単離された強力な抗がん剤ドラスタチン10(D−10、4a)のdes−Doeテトラペプチド単位(4b)(参考文献15)を選択して、アミン1aとカップリングさせた。D−10のDoe部分をアミン1aと置換することにより、コルヒチン及び/又はチューブリンのビンカ領域と結合する可能性を有するスチルベンペプチドを合成することを計画した。公開された方法により、トリペプチドDov−Val−Dil TFA塩(15)及びBoc−Dap(12)を得た(参考文献32、33)。アミン1aをBoc−Dap(12)とPyBroPカップリングさせ、続いてTFAのDCM溶液でBoc脱保護することにより、化合物14を提供した(スキーム5)。
【0074】
【化10】

【0075】
更なるカップリングによりdes−Doe D−10スチルベンアミド16を生じた。以下に考察するアミド14の抗微生物作用が広範囲であったように、潜在的に2重機能性の抗がん剤16のがん細胞阻害活性は注目に値するものであった(上記表2)。
【0076】
スチルベン誘導体の抗微生物性評価
臨床研究所規格委員会による液体微量希釈アッセイ(参考文献43〜44)で化合物をスクリーニングした。アッセイは別の日に少なくとも2回繰り返した。化合物14は、クリプトコッカス・ネオフォルマンスATCC90112(MIC=64μg/mL);病原菌の淋菌ATCC49226(MIC=16μg/mL);及び日和見菌の肺炎連鎖球菌ATCC6303(MIC=8〜16μg/mL);大便連鎖球菌ATCC29212(MIC=32〜64μg/mL)の増殖を阻害することを発見した。プロドラッグ3aは、淋菌ATCC49226(MIC=0.125μg/mL);及び大便連鎖球菌ATCC29212(MIC=64μg/ml)を阻害した。プロドラッグ6は、淋菌ATCC49226(MIC=4μg/mL)を阻害した。化合物8は、大便連鎖球菌ATCC29212(MIC=64μg/mL)を阻害した。化合物13は、クリプトコッカス・ネオフォルマンスATCC90112(MIC=64μg/mL)を阻害した。
【0077】
スチルベン誘導体の抗新生物性評価
先の研究は、D−10(4a)が例外的に細胞障害性の抗微生物剤であり、チューブリンのビンカドメイン内で固く結合することによってチューブリン重合を阻害することを示した(チューブリンへのビンブラスチン結合の阻害は大きいが非競合的である)(参考文献34〜35)。逆に、コンブレタスタチンA−4(2g)はコルヒチン部位薬に対してかなり強力であるが、D−10(4a)よりも約100倍細胞障害性が低く、スチルベンはコルヒチン部位にどん欲に結合することによってチューブリン重合を競合的に阻害する(参考文献36〜37)。これらの発見は、以下の表3及び表4に提示した研究において確認された。4a及び2gのチューブリン重合に対する類似の阻害効果、放射性標識されたビンブラスチン及びコルヒチンの結合の阻害に対するそれらの対照的な効果、及び2gよりも100倍も増大した、4aによるMCF−7細胞の増殖阻害に注目されたい。
【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
D−10(参考文献24)(4a)の構造改変による先のSAR研究は、そのC端単位Doeの喪失が細胞増殖に顕著な効果を示し、チューブリンへのリガンド結合に対する阻害効果は、チューブリン重合に対する阻害効果よりも大きいことを示した。したがって、Dov−Val−Dil−Dap(4b)は、重合阻害剤としては4aよりも2倍活性が低いのみであるが、MCF−7細胞増殖阻害剤としては少なくとも6倍活性が低い(表4)。これらのSAR研究は、細胞学アッセイ及び生化学アッセイにおいて、Doe残基をさまざまな芳香族誘導体に置換することにより、D−10(4a)の活性のいくらか又は全てを回復できるであろうことも示している(参考文献23〜24)。
【0081】
コンブレタスタチンA4(参考文献27、36)(2g)の構造操作によるSAR研究は、A環のメチレンジオキシ架橋を2つの隣接メトキシ基に置換するか、又はB環のアミノ基をヒドロキシル基に置換すると、細胞障害性及びチューブリン相互作用に対して比較的小さな効果が観察されることを示した。これらの発見を表3及び表4に再度明示し、これらの変化をともに組み込んだアミン塩酸塩1bをCA4(2g)と比較する。更に、本発明者らは、アミン1aから形成されるさまざまなアミノ酸アミドは、チューブリンに基づいた生化学アッセイにおいて活性を激しく低下させるが、アミンの細胞障害活性は保持することを発見した(参考文献27)。これらの化合物は薬物処理細胞の分裂指数を顕著に増加させたため、最も妥当な説明は、アミドの細胞外加水分解か細胞内加水分解によってアミン1aが再生されたということである。
【0082】
ドラスタチン10−コンブレタスタチンアミンのハイブリッド16について評価すると、[H]コルヒチンの結合に対する効果は比較的弱いが、全ての生化学アッセイにおいて活性であり(表3及び表4)、1aのアミノ酸アミドによって先に観察された弱い活性(参考文献27)と調和することがわかった。逆に、化合物ペプチド16の活性は、チューブリン重合及びチューブリンへの[H]ビンブラスチンの結合の阻害剤としてはD−10(4a)の約半分であった。ペプチド16は最初にD−10(4a)類似体として作用するが、2重活性を有するコンブレタスタチン類似体は、先行技術のスチルベン化合物によって提供されない独特の利点及び特性を有することは明らかである。
【0083】
MCF−7細胞を用いた詳細な比較により、ペプチド16の活性はDov−Val−Dil−Dap(4b)の約2倍であり、塩酸塩1bの4倍であるが、D−10(4a)のわずか1/200であることがわかった。更に、4bと1bとを等モル量で混合すると、16が完全に加水分解された場合に起こるように、MCF−7細胞の増殖阻害に関し、ペプチド16について得られたものとほとんど同一のIC50値が得られた(14対17nM)。16、4b、及び1bについて得られたIC50値は同一範囲にあるため、16の細胞障害性が、比較的弱いD−10(4a)類似体として最初に作用することに由来するのか、比較的強力なコンブレタスタチンA−4(2g)類似体として最初に作用することに由来するのかを決定することは不可能である。16によって得られたIC50値と、その成分4bと1bとの混合物によって得られたIC50値との類似性は、先に研究されたアミド(参考文献27)と同様に、少なくとも部分的な細胞外加水分解か細胞内加水分解を受けることを示している。最後に、16、4b、1b、及び4b+1b混合物に関するIC50値の類似性は、4bと1bとを単一分子内で結合させたものから得られた相乗的で明らかなin vitro細胞障害効果がほとんどがないことを示している。しかしながら、化合物16及び類似のスチルベン誘導体は、有効性、投与、用量、及びin vivo送達に関して利点を有するかもしれない。
【0084】
結論として、3,4−メチレンジオキシ−5,4’−ジメトキシ−3’−アミド−Z−スチルベン チロシンアミド及びアスパラギン酸アミドシリーズから非常に水溶性の誘導体を合成する初期の試みは報いられないことが証明されたが、上で考察したように、ヒトがん細胞株の小さな一団を強力に阻害する3つの新規スチルベン誘導体(9、14、及び16)が発見された。最も重要なのは、潜在的に複数を標的とする化合物(アミド14及びペプチド16)から得られた予備的な生物学的結果は、広範囲の抗微生物活性及び2重抗癌活性に関して更なる調査に値するということである。
【0085】
材料及び方法
エーテルはジエチルエーテルを表し、Arはアルゴンガスを表す。ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロリン酸(PyBroP)、Oβ−tert−ブチル−Nα−Boc−L−アスパラギン酸、及びO−tert−ブチル−Nα−Z−L−チロシンは、Calbiochem−Novabiochem社(サンディエゴ、カリフォルニア州)から入手した。ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、無水メタノール、ナトリウムメトキシド、トリエチルシラン(TES)、及びトリフルオロ酢酸(TFA)は、Acros Organics(Fisher Scientific、ピッツバーグ、ペンシルバニア州)から入手した。他の全ての試薬はシグマ−アルドリッチ・ケミカル社(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)から購入した。
【0086】
短波UV照射下で可視化するAnaltechシリカゲルGHLF Uniplatesを用いた薄層クロマトグラフィで反応をモニターした。水溶液の溶媒抽出物を、無水硫酸マグネシウム又は硫酸ナトリウムで乾燥させた。必要に応じて、E.メルク製フラッシュ(230〜400メッシュ ASTM)シリカ、E.メルク製グラビティ(70〜230メッシュ ASTM)シリカ、又はセファデックスLH−20によるカラムクロマトグラフィで粗産物を分離した。
【0087】
融点は補正せず、電熱9100装置を用いて測定した。パーキン−エルマー241偏光計で旋光度を測定した。[α]値は10−1deg・cm・g−1で示す。重水素化溶媒を用いたVarian Gemini 300、Varian Unity 400、又はVarian Unity 500機器によってH−NMR及び13C−NMRスペクトルを記録し、TMS又は溶媒を基準とした。JEOL LCmate質量分光計にてHRMSデータを記録した。元素解析は、Galbraith Laboratories社、ノックスビル、テネシー州によって行われた。
【0088】
3,4−メチレンジオキシ−5,4’−ジメトキシ−3’−[O,Nα−ジ(ビス−ベンジルホスホリル)−L−Tyr]−アミド−Z−スチルベン(5)
アミン1i(参考文献27)(71mg、0.15ミリモル)のアセトニトリル(1mL)撹拌溶液に、アセトン/氷浴中、−10℃にて、Ar下、四塩化炭素(0.15ml、1.6ミリモル、11当量)を加えた。10分後、DIPEA(0.12mL、0.66ミリモル、4.4当量)及び4−ジメチルアミノピリジン(3.8mg、0.031ミリモル、0.21当量)を加え、1分後、亜リン酸ジベンジル(0.11mL、0.47ミリモル、3.1当量)を滴下した。1時間後、反応物を室温まで温め、0.5M KHPO水溶液を加えた。混合物をEtOAc(3×10mL)で抽出し、一緒にした抽出物をブライン(15mL)及び水(15mL)で洗浄した。真空内で乾燥及び濃縮させ、生成物をグラビティカラムクロマトグラフィ(4:1、DCM:EtOAc)で分離し、無色オイル5を提供した(97mg、65%):R 0.12(4:1、DCM:EtOAc);[α]25 −45.1°(c 0.72、CHCl);P−NMR(400MHz、CDCl)δ5.693,−8.113;H−NMR(400MHz、CDCl)δ2.89(1H,m,−CH−),3.18(1H,m,−CH−),3.56(3H,s,OCH),3.71(3H,s,OCH),4.05(1H,m,αH),4.96(8H,m,4×−CH−),5.87(2H,s,−OCHO−),6.39(1H,d,J=12.0Hz,vinyl H),6.45(3H,m,vinyl H,2×ArH),6.59(1H,d,J=8.4Hz,ArH),6.97(1H,dd,J=8.4,1.6Hz,ArH),6.99(2H,d,J=8.4Hz,2×ArH),7.03(2H,d,J=8.8Hz,2×ArH),7.29(20H,m,20×ArH),8.27(1H,d,J=1.6,ArH),8.36(1H,s);及びHRMS calcd for C545312[M+H]983.3074,found 983.3115.Anal,calcd for C545212;C,65.98;H,5.33;N,2.85.Found:C5,65.51;H,5.55;N,2.84.
【0089】
【化11】

【0090】
3,4−メチレンジオキシ−5,4’−ジメトキシ−3’−(L−Tyr)−アミド−Z−スチルベン 3’−O,Nα−二リン酸ナトリウム(6)
リン酸ベンジル5(76mg、0.077ミリモル)のDCM(1mL)撹拌溶液に、0℃にて、Ar下、ブロモトリメチルシラン(35μL、0.33ミリモル、4.3当量)を加えた。反応混合物を30分間撹拌し、真空下で濃縮した。残渣をEtOH(1mL)に溶解させ、ナトリウムメトキシド(20mg、0.36ミリモル、4.7当量)を加えて沈殿物を得、これを回収してEtOAc及びエーテルで洗浄した。生成物(6)を無色粉末として得た(52mg、95%);融点(分解)188−190℃;[α] −30.6℃(c 0.72、DMSO);P−NMR(400MHz、DMSO)δ6.262,0.585;13C−NMR(300MHz、DMSO)δ143.8,132.3,130.4,130.2,129.7,129.4,127.4,127.2,126.3,122.1,119.7,116.5,115.1,111.0,106.8,101.2,99.5,56.6,56.2,55.9;H−NMR(400MHz、DMSO)δ2.63(1H,m,−CH−),3.10(1H,m,−CH−),3.30(1H,d,J=8.8Hz),3.56(1H,m),3.86(3H,s,OCH),3.87(3H,s,OCH),6.00(2H,s,−OCHO−),6.55(1H,d,J=0.8Hz,ArH),6.99(8H,m,2×vinyl H,6×ArH),7.11(1H,d,J=8.4Hz,ArH),7.23(1H,dd,J=6.8,1.6Hz,ArH),10.12(1H,br s).Anal.calcd for C2625Na12・3HO:C,42.06;H,4.21;N,3.77.Found:C,41.68;H,4.65;N,3.45.
【0091】
【化12】

【0092】
3,4−メチレンジオキシ−5,4’−ジメトキシ−3’−(O−tert−ブチル−Nα−Z−L−Tyr−アミド−Z−スチルベン(7)
アミン1a(0.19g、0.63ミリモル)、O−tert−ブチル−Nα−Z−L−Tyr(0.45g、1.2ミリモル、1.9当量)、及びPyBroP(0.57g、1.2ミリモル、1.9当量)のDCM(2mL)撹拌混合溶液に、0℃にて、Ar下、DIPEA(0.55ml、3.2ミリモル、5.1当量)(参考文献32〜33)を加えた。反応混合物を45分間室温で撹拌し、真空内で濃縮した。生成物をグラビティカラムクロマトグラフィ(4:1、DCM:EtOAc)によって無色オイルとして得た(7、0.38g、93%);R 0.74(4:1、DCM:EtOAc);[α]24 +1.9°(c 1.04、CHCl);H−NMR(300MHz,CDCl)δ1.30(9H,s,tBu),3.05(2H,m,−CH−),3.63(3H,s,OCH),3.68(3H,s,OCH),4.47(1H,m,αH),5.05(2H,d,J=2.4Hz,−CH−),5.60(1H,br),5.85(2H,s,−OCHO−),6.33(1H,d,J=12.0Hz,vinyl H),6.40(3H,m,vinyl H,2×ArH),6.59(1H,d,J=9.0Hz,ArH),6.83(2H,m,ArH),6.91(1H,dd,J=8.1,1.5Hz,ArH),7.05(2H,d,J=8.4Hz,2×ArH),7.26(5H,m,5×ArH),7.92(1H,s),8.22(1H,d,J=2.1Hz,ArH);及びHRMS calcd for C3841[M+H] 653.2863,found 653.2876.Anal.calcd for C3840:C,69.92;H,6.18;N,4.29.Found:C,69.45:H,6.37;N,4.21.
【0093】
【化13】

【0094】
3,4−メチレンジオキシ−5,4’−ジメトキシ−3’−(O−ビス−ベンジルホスホリル−Nα−Z−L−Tyy−アミド−Z−スチルベン(8)
アミド7(0.26g、0.40ミリモル)のDCM(2mL)撹拌溶液に、TFA(2mL)を加えた。反応混合物を20分間撹拌し、溶液を真空下で濃縮し、グラビティカラムクロマトグラフィ(4:1、DCM:EtOAc)によって得た遊離フェノールを、Ar下、アセトニトリル(4mL)中に置いた。混合物を−10℃まで冷却し、四塩化炭素(0.21ml、2.1ミリモル、5.3当量)を加えた。10分後、DIPEA(0.16mL、0.89ミリモル、2.2当量)及び4−ジメチルアミノピリジン(5mg、0.041ミリモル、0.10当量)を加え、1分後、亜リン酸ジベンジル(0.15mL、0.65ミリモル、1.6当量)を滴下した。2時間後、反応混合物を室温まで温め、0.5M KHPO(16mL)水溶液を加えた。リン酸塩5と同一手順を行い、生成物8を無色オイルとして得た(0.24g、71%);R 0.60(4:1、DCM:EtOAc);[α]23 −5.1°(c 0.25、CHCl);P−NMR(400MHz、CDCl)δ−8.095;H−NMR(MHz,CDCl)δ3.08(2H,m,−CH−),3.66(1H,s,OCH),3.72(1H,s,OCH),4.51(1H,m,αH),5.08(2H,d,J=0.9Hz,−CH−),5.11(4H,m,2×−CH−),5.44(1H,br d,J=7.2Hz),5.90(2H,s,−OCHO−),6.39(1H,d,J=12.0Hz,vinyl H),6.46(3H,m,vinyl H,2×ArH),6.62(1H,d,J=8.1Hz,ArH),6.98(1H,dd,J=8.4,1.8Hz,ArH),7.04(2H,d,J=8.1Hz,2×ArH),7.14(2H,d,J=8.1Hz,2×ArH),7.31(15H,m,15×ArH),7.90(1H,s),8.24(1H,d,J=2.4Hz,ArH);及びHRMS calcd for C484611P[M+H] 857.2840,found 857.2853.Anal.calcd for C484511P;C,67.28;H,5.29;N,3.27.Found:C,66.89;H,5.27;N,3.17.
【0095】
【化14】

【0096】
3,4−メチレンジオキシ−5,4’−ジメトキシ−3’−(O−ホスホリル−Nα−L−Tyr)−アミド−Z−スチルベン(3a)
ベンジルエステル8(98mg、0.11ミリモル)のアセトニトリル撹拌溶液に、Ar下、ヨウ化ナトリウム(60mg、0.40ミリモル、3.6当量)を加え、続いてクロロトリメチルシラン(51μL、0.41ミリモル、3.7当量)を加えた。反応混合物を20分間撹拌しながら白色沈殿を形成させた。沈殿物を回収する前に(1%)チオ硫酸ナトリウム水溶液(0.5mL)を混合物へ加え、酢酸エチル、水、及びアセトンで洗浄した。生成物を無色非晶質固体として得た(3a、35mg、58%):融点(分解)175−177℃;[α]25 −6.3°(c 0.35、DMSO);P−NMR(400MHz、DMSO)δ−2.043;13C−NMR(400MHz、DMSO)δ170.6,156.1,149.0,148.8,143.3,136.9,134.2,132.3,129.7,129.6,128.9,128.3,127.7,127.2,127.0,126.4,122.8,119.5,118.9,111.3,106.8,101.2,99.5,65.4,57.0,56.2,36.4;H−NMR(400MHz、DMSO)δ2.78(2H,m,−CH−),3.06(1H,m,−CH−),3.82(3H,s,OCH),3.86(3H,s,OCH),4.49(1H,m,αH),5.98(2H,s,−OCHO−),6.89(1H,d,J=12.8Hz,vinyl H),6.94(1H,s,ArH),7.07(2H,m,vinyl H,ArH),7.22(1H,d,J=6.4Hz,ArH),7.28(2H,d,J=5.6,2×ArH),7.32(2H,d,J=5.6,2×ArH),7.74(1H,d,J=6.4,ArH),8.22(1H,s),9.25(1H,s).
【0097】
【化15】

【0098】
3,4−メチレンジオキシ−5,4’−ジメトキシ−3’−(Nα−L−Tyr)−アミド−Z−スチルベン塩酸塩(9)
アミン1i(27mg、ミリモル)の酢酸エチル(1mL)撹拌溶液に、エーテルHCl(1M)を過剰量加えた。白色固体を直ちに形成し、溶媒を真空内で除去し、得られた固体をエタノール−酢酸エチルから再結晶させ、オフホワイトの粉末を生じた(9、29mg、定量的):融点169−170.5℃;[α]25 82.5°(c 0.73、CHOH);H−NMR(300MHz、CDCl)δ3.07(2H,m,−CH−),3.70(3H,s,OCH),3.79(3H,s,OCH),4.27(1H,m,αH),5.93(2H,s,−OCHO−),6.37(1H,d,J=1.2Hz,ArH),6.42(1H,d,J=12.0Hz,vinyl H),6.46(1H,d,J=12.6Hz,vinyl H),6.49(1H,d,J=1.2Hz,ArH),6.75(2H,d,J=8.4Hz,2×ArH),6.90(1H,d,J=8.1Hz,ArH),7.03(1H,dd,J=8.1,2.1Hz,ArH),7.09(2H,d,J=8.7Hz,2×ArH),7.92(1H,d,J=1.5Hz,ArH);Anal,calcd for C2626ClN:C,59.32;H,5.75;N,5.33.Found:C,59.53;H,5.56;H,5.26.
【0099】
【化16】

【0100】
3,4−メチレンジオキシ−5,4’−ジメトキシ−3’−(Oβ−tert−ブチル−Nα−Boc−L−Asp)−アミド−Z−スチルベン(10)
アミン1a(0.13g、0.43ミリモル)、Oβ−tert−ブチル−Nα−Boc−L−Asp)(0.22g、0.76ミリモル、1.8当量)、及びPyBroP(0.35g、0.76ミリモル、1.8当量)のDCM(3mL)撹拌混合溶液に、0℃にて、Ar下、DIPEA(0.21mL、1.2ミリモル、2.8当量)を加えた。反応混合物を室温で75分間撹拌し、溶媒を真空内で除去した。生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィ(1:1、n−ヘキサン:アセトン)によってオイルとして得た(10、0.22g、88%);R 0.64(1:1、ヘキサン−アセトン);[α]24 −13.0°(c 1.42、CHCl);H−NMR(300MHz、CDCl)δ1.44(9H,s,tBu),1.49(9H,s,tBu),2.88(2H,m,−CH−),3.73(3H,s,OCH),3.84(3H,s,OCH),4.59(1H,m,αH),5.81(1H,br),5.92(2H,s,−OCHO−),6.38(1H,d,J=12.6Hz,vinyl H),6.44(1H,s,ArH),6.46(1H,d,J=12.6Hz,vinyl H),6.47(1H,s,ArH),6.70(1H,d,J=8.1Hz,ArH),6.97(1H,dd,J=8.4,1.8Hz,ArH),8.28(1H,d,J=2.4Hz,ArH),8.76(1H,s);及びHRMS calcd for C3039[M+H] 571.2655,found 571.2617.Anal.calcd for C3038:C,63.14;H,6.71;N,4.91.Found:C,62.64;H,7.00;N,4.89.
【0101】
【化17】

【0102】
3,4−メチレンジオキシ−5,4’−ジメトキシ−3’−(Nα−L−Asp)−アミド−Z−スチルベンナトリウム(11)
t−ブチルエステル10(0.13g、0.23ミリモル)のDCM(1.5mL)溶液に、TFA(0.71mL、9.6ミリモル、42当量)及びTES(0.30mL、1.8ミリモル、7.8当量)の混合物を加え、Ar下で4時間撹拌を継続した。溶媒を真空内で除去し、セファデックスLH−20カラムクロマトグラフィ(溶媒:MeOH)にて得たTFA塩をメタノール(1mL)中に入れた。ナトリウムメトキシド(0.22mg、0.41ミリモル、1.8当量)を反応混合物へ加え、形成した白色沈殿を回収し、DCM−CHOHから再度沈殿させて、生成物11を無色固体として得た(62mg、62%):融点168−170℃;[α]25 +14.0°(c 1.18、CHOH);H−NMR(300MHz,CDOD)δ2.62(1H,m,−CH−),2.77(1H,m,−CH−),2.78(2H,br),3.69(3H,s,OCH),3.87(3H,s,OCH),4.29(1H,m,αH),5.87(2H,s,−OCHO−),6.36(1H,d,J=1.2Hz,ArH),6.40(1H,d,J=12.0Hz,vinyl H),6.45(1H,d,J=12.3Hz,vinyl H),6.50(1H,d,J=0.9Hz,ArH),6.91(1H,d,J=8.4Hz,ArH),7.02(1H,dd,J=8.4,1.8Hz,ArH),7.99(1H,d,J=2.4Hz,ArH),8.52(1H,s);Anal.calcd for C2121NaOO:C,55.51;H,5.10;N,6.16.Found:C,55.81;H,5.70;N,6.16.
【0103】
【化18】

【0104】
3,4−メチエレンジオキシ−5,4’−ジメトキシ−3’−(Nα−Boc−L−Dap)−アミド−Z−スチルベン(13)
アミン1a(51mg、0.17ミリモル)、Nα−Boc−L−Dap12(52mg、0.18ミリモル、1.1当量)32、33、及びPyBroP(87mg、0.19ミリモル、1.1当量)の撹拌混合液に、0℃にて、Ar下、DIPEA(65μL、0.37ミリモル、2.2当量)を加えた。反応混合物を室温で1.5時間撹拌した。DCM(10mL)を加え、混合物をクエン酸水溶液(10wt%、10mL)で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空内で濃縮し、残渣をグラビティカラムクロマトグラフィ(8:1、DCM:EtOAc)に付し、生成物13を無色オイルとして生じた(40mg、41%):R 0.24(8:1、DCM:EtOAc);[α]24 −48.5°(c 1.2、CHCl);13C−NMR(500MHz、CDCl)δ148.5,146.9,143.3,134.2,131.9,130.1,129.5,128.8,127.6,123.8,120.8,109.6,108.5,103.0,101.3,58.7,56.3,55.8,28.5;H−NMR(300MHz、CDCl)δ1.30(3H,d,J=6.9Hz,CH),1.46(9H,s,Boc),1.72(1H,m,Pro),1.90(3H,m,Pro),2.62(1H,m),3.23(1H,m),3.44(1H,m),3.49(3H,s,OCH),3.58(1H,m),3.74(3H,s,OCH),3.85(3H,s,OCH),3.90(1H,m),5.92(2H,s,−OCH−),6.38(1H,d,J=12.3Hz,vinyl H),6.45(1H,s,ArH),6.46(1H,d,J=12.0Hz,vinyl H),6.47(1H,s,ArH),6.69(1H,d,J=8.7,ArH),6.96(1H,dd,J=8.4,1.8Hz,ArH),8.30(1H,d,J=2.4,ArH),8.41(1H,br);及びHRMS calcd for C3141[M+H] 569.2863,found 569.2884.Anal.calcd for C3140:C,65.48;H,7.09;N,4.93.Found:C,64.92;H,7.42;N,4.97.
【0105】
【化19】

【0106】
3,4−メチレンジオキシ−5,4’−ジメトキシ−3’−(Nα−L−Dap)−アミド−Z−スチルベンTFA塩(14)
アミド13(0.15g、0.26ミリモル)のDCM(0.65mL)撹拌溶液に、0℃にて、TFA(0.20mL、2.6ミリモル、10当量)を加えた。反応混合物を室温で20分間撹拌した。生成物をグラビティカラムクロマトグラフィ(20:1、DCM:MeOH)にてオイルとして得た(14、69mg、46%):R 0.54(8:1、DCM:MeOH);[α]24 −61.9°(c 0.88、CHCl);13C−NMR(300MHz、CDCl)δ170.5,148.1,146.9,142.8,131.3,129.6,128.6,126.3,124.3,120.5,109.3,108.1,102.4,100.8,100.3,80.2,60.5,58.6,55.8,55.3,44.8,41.5,24.1,23.4,12.1;H−NMR(300MHz、CDCl)δ1.27(3H,d,J=6.9,CH),1.98(4H,m),2.94(1H,m),3.33(2H,m),3.57(3H,s,OCH),3.73(1H,s,OCH),3.78(1H,m),3.85(3H,s,OCH),3.89(1H,m),5.91(2H,s,−OCHO−),6.38(1H,d,J=12.6,vinyl H),6.43(3H,m,vinyl H,2×ArH),6.73(1H,d,J=9.0,ArH),7.00(1H,dd,J=8.4,1.8Hz,ArH),8.15(1H,d,J=1.8Hz,ArH),8.35(1H,s);及びHRMS calcd for C2633 [M+H] 469.2339,found 469.2374.Anal.calcd for C303410・2HO:C,49.18;H,5.23;N,3.82.Found:C,49.48;H,5.23;N,4.09.
【0107】
【化20】

【0108】
3,4−メチレンジオキシ−5,4’−ジメトキシ−3’−(Dov−Val−Dil−Dap)−アミド−Z−スチルベン(16)
アミド14(41mg、0.070ミリモル)、Dov−Val−Dil TFA塩15(62mg、0.11ミリモル、1.6当量)、及びPyBroP(50mg、0.11ミリモル、1.6当量)のDCM(0.5mL)撹拌混合溶液に、0℃にて、Ar下、DIPEA(91μL、0.52ミリモル、7.4当量)を加えた。反応混合物を室温で14時間撹拌し、溶媒を真空内で除去した。生成物をグラビティカラムクロマトグラフィ(1:1、n−ヘキサン:アセトン)にて無色オイルとして得た(16、30mg、48%):R 0.34(1:1、n−ヘキサン:アセトン);[α]23 −62°(c 1.05、CHCl);H−NMR(300MHz、CDCl)δ0.79(3H,t,J=6.9Hz,CH),0.91(3H,d,J=6.6Hz,CH),0.94(3H,d,J=6.6Hz),0.94(3H,d,J=6.3Hz,CH),1.00(3H,d,J=6.6Hz,CH),1.01(3H,d,J=6.3Hz,CH),1.32(3H,d,J=6.9Hz,CH),1.35(2H,m),1.80(1H,m),2.0(3H,m),2.31(6H,s,2×NCH),2.34(4H,m),2.62(1H,m),3.00(3H,s,NCH),3.05(1H,m)3.08(1H,s),3.20(1H,m),3.29(1H,m),3.32(3H,OCH),3.34(1H,m),3.44(1H,m),3.45(3H,s,OCH),3.72(3H,s,OCH),3.84(3H,S,OCH),4.06(1H,m),4.12(1H,m),4.20(1H,m),4.79(1H,m),5.90(2H,s,−OCHO−),6.36(1H,d,J=12.0Hz,vinyl H),6.44(3H,m,vinyl H,2×ArH),6.68(1H,d,J=8.7Hz,ArH),6.94(1H,dd,J=8.1,1.5Hz,ArH),8.27(1H,d,J=1.8Hz),8.33(1H,s);及びHRMS calcd for C487410[M+H] 880.5435,found 880.5426.Anal.calcd for C487310:C,65.50;H,8.36;N,7.96.Found:C,65.42;H,8.74;N,7.59.
【0109】
【化21】

【0110】
チューブリン及びがん細胞の手順
ウシ脳チューブリンを準備し、先に記載したようにチューブリン重合及びコルヒチン結合アッセイを行った。重合アッセイでは、反応混合物は、1.0mg/mL(10μM)チューブリン、及びさまざまな濃度の潜在的阻害剤を含有した。コルヒチン結合アッセイでは、反応混合物は、0.1mg/mL(1.0μM)チューブリン、5.0μM[H]コルヒチン、及び記載のような潜在的阻害剤を含有した。ビンブラスチン結合アッセイは、GH−3.8Aスウィング型ローターを備えたベックマンAllegra 6KR遠心分離機を用いてシリンジカラムを2,000rpmにて遠心分離した(参考文献38〜41)以外は、GTP結合に関して先に記載したように遠心ゲルろ過によって行った。反応混合物は、0.5mg/mL(5.0μM)チューブリン、5μM[H]ビンブラスチン、記載のような潜在的阻害剤、0.5mM MgCl、0.1M 4−モルホリンエタンスルホン酸(1.0Mの原液をNaOHでpH6.9に調整)、及び4%(v/v)ジメチルスルホキシドを含有した。インキュベーション(30分)及び遠心ゲルろ過は、室温(20〜22℃)で行った。
【0111】
細胞障害性アッセイは、細胞内タンパク質の形成阻害を測定するスルホローダミンB法(参考文献42)で行った。MCF−7乳癌細胞の分裂指数は、DNA染色液を加える前に薬物の存在下で細胞を16時間インキュベーションした以外は、先に記載したようにして決定した(参考文献27)。
【0112】
先の技術的な開示は、これら新規スチルベン誘導体化合物及びそれらの提唱される用途の具体的態様を記載するものであり、本発明をこれらの正確な態様に限定することを意図するものではない。更に、限定されるものではないが、医薬の塩誘導体を含め、関連分野において通常の技術を有する者に明らかな改変及び/又は修飾、あるいは開示の化学化合物の非機能的変化は、本発明の範囲内に包含されることを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

の化合物又はその塩
(式中、
RはDap、Dap−Dil、Dap−Dil−Val、又はDap−Dil−Val−Dovであり;
はH、OH、又はPONaであり;そして
及びRは連帯して−CH−であるか、又はそれぞれ独立してH、OH、CH、若しくはPONaである)。
【請求項2】
RがDapである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がHである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
化合物が式:
【化2】

である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
RがDap−Dil−Val−Dovである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
がHである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
化合物が式:
【化3】

である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の少なくとも1つの化合物及び医薬的に許容可能な担体を含む組成物。
【請求項9】
化合物が、がん細胞の増殖を阻害するのに十分な治療的有効量である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
化合物が抗クリプトコッカス活性又は抗菌活性を有し、且つ寄生微生物の増殖を阻害するのに十分な治療的有効量である、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
化合物が:淋菌;大便連鎖球菌;肺炎連鎖球菌;及びクリプトコッカス・ネオフォルマンスのうちの少なくとも1つの増殖を阻害する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
式:
【化4】

の化合物及びその塩
(式中、R及びRは独立してH又はP(O)(OH)である)。
【請求項13】
化合物が式:
【化5】

である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
それに苦しむ宿主においてがん細胞の増殖を阻害する方法であって、宿主のがん細胞の増殖を阻害するのに十分な治療的有効量で請求項13に記載の化合物を宿主へ投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
式:
【化6】

の化合物。
【請求項16】
それに苦しむ宿主においてがん細胞の増殖を阻害する方法であって、宿主のがん細胞の増殖を阻害するのに十分な治療的有効量で請求項15に記載の化合物を宿主へ投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
それに苦しむ宿主においてがん細胞の増殖を阻害する方法であって、宿主におけるがん細胞の増殖を阻害するのに十分な治療的有効量で式:
【化7】

の化合物又はその塩を宿主へ投与することを含む、前記方法
(式中、
RはDap、Dap−Dil、Dap−Dil−Val、又はDap−Dil−Val−Dovであり;
はH、OH、又はPONaであり;そして
及びRは連帯して−CH−であるか、又はそれぞれ独立してH、OH、CH、若しくはPONaである)。
【請求項18】
RがDap−Dil−Val−Dovである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
がHである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
化合物が医薬的に許容可能な担体中にあり、宿主がヒトである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
阻害されるがんが、白血病、膵臓癌、乳癌、CNSの癌、肺NSC癌、大腸癌、又は前立腺癌から成る群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
それに苦しむ宿主において微生物の増殖を阻害する方法であって、微生物の増殖阻害に十分な治療的有効量で式:
【化8】

の化合物又はその塩を宿主へ投与することを含む、前記方法
(式中、
RはDap、Dap−Dil、又はDap−Dil−Valであり;
はH、OH、又はPONaであり;そして
及びRは連帯して−CH−であるか、又はそれぞれ独立してH、OH、CH、若しくはPONaである)。
【請求項23】
RがDapである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
がHである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
化合物が:淋菌;大便連鎖球菌;肺炎連鎖球菌;及びクリプトコッカス・ネオフォルマンスのうちの1つの増殖を阻害する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
化合物が医薬的に許容可能な担体中にあり、宿主がヒトである、請求項22に記載の方法。

【公表番号】特表2008−540560(P2008−540560A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511357(P2008−511357)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/018231
【国際公開番号】WO2006/124511
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507096087)アリゾナ・ボード・オブ・リージェンツ・ア・ボディ・コーポレート・オブ・ザ・ステート・オブ・アリゾナ・アクティング・フォー・アンド・オン・ビハーフ・オブ・アリゾナ・ステート・ユニバーシティ (3)
【Fターム(参考)】