ステアリング制御装置
【課題】車両の発進直後のステアリング操作性を向上させる。
【解決手段】ステアリング制御装置1は、車両2の直進に対応する中立位置を含む範囲で回転操作されるステアリングホイール5に対してトルクを付与するモータ10と、ステアリングホイール5の回転操作に応じて変動する車両2の操舵角を検出する操舵角センサ11と、車両2が発進直後であるか否かを判定する発進判定部22と、車両2が発進直後であると発進判定部22が判定したとき、操舵角センサ11が検出した操舵角に基づいて、中立位置へ向かって作用する中立方向トルクのトルク量を決定し、決定したトルク量の中立方向トルクをモータ10に発生させるトルク制御部22と、を備える。
【解決手段】ステアリング制御装置1は、車両2の直進に対応する中立位置を含む範囲で回転操作されるステアリングホイール5に対してトルクを付与するモータ10と、ステアリングホイール5の回転操作に応じて変動する車両2の操舵角を検出する操舵角センサ11と、車両2が発進直後であるか否かを判定する発進判定部22と、車両2が発進直後であると発進判定部22が判定したとき、操舵角センサ11が検出した操舵角に基づいて、中立位置へ向かって作用する中立方向トルクのトルク量を決定し、決定したトルク量の中立方向トルクをモータ10に発生させるトルク制御部22と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の発進直後に好適なトルクをステアリングホイールに対して付与するステアリング制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004−322855号公報には、パワーステアリング装置を備える車両が記載されている。このパワーステアリング装置は、操舵輪を操舵するためのハンドルと、操舵輪へ操舵トルクを付加する電動パワーステアリング機構と、電動パワーステアリング機構が付加する操舵トルクの大きさを制御するECUとを備える。ドライバがIGスイッチをオンにして、車両を走行させようとすると、ECUは、ハンドルを中立位置へ戻すように電動パワーステアリング機構を制御し、ハンドルが自動的に中立位置へ復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−322855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のパワーステアリング装置では、車両の発進前にハンドルが自動的に回転するので、運転者は、自身の手などがハンドルに巻き込まれないように、車両の発進前に注意を払う必要が生じる。
【0005】
また、運転者は、車両の発進後のハンドル操作の簡素化及び容易化のため、ハンドルを中立位置から所望の方向へ意図的に回転させ、発進に好適な角度で操舵輪を停止させたまま車両を駐停車する場合がある。このような場合において、上記従来のパワーステアリング装置では、車両の発進前にハンドルが自動的に中立位置へ復帰してしまうので、運転者の事前のハンドル操作が無駄となり、操作性の低下を招く。
【0006】
そこで、本発明は、車両の発進直後のステアリング操作性を向上させることが可能な操舵制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明の第1の態様のステアリング制御装置は、トルク発生手段と、操舵角検出手段と、発進判定手段と、トルク制御手段と、を備える。
【0008】
トルク発生手段は、車両の直進に対応する中立位置を含む範囲で回転操作されるステアリングホイールに対してトルクを付与する。操舵角検出手段は、ステアリングホイールの回転操作に応じて変動する車両の操舵角を検出する。発進判定手段は、車両が発進直後であるか否かを判定する。トルク制御手段は、車両が発進直後であると発進判定手段が判定したとき、操舵角検出手段が検出した操舵角に基づいて、中立位置へ向かって作用する中立方向トルクのトルク量を決定し、決定したトルク量の中立方向トルクをトルク発生手段に発生させる。
【0009】
上記構成では、車両が発進直後であると発進判定手段が判定すると、トルク制御手段は、中立位置へ向かって(中立方向へ)作用する中立方向トルクのトルク量を操舵角に基づいて決定し、決定したトルク量の中立方向トルクをトルク発生手段に発生させる。すなわち、車両の発進直後において、操舵角に応じたトルク量の中立方向トルクがステアリングホイールに付与され、中立方向へステアリングホイールが回転する。
【0010】
したがって、操舵輪が非直進方向を向いていることを認識せずに(操舵輪が直進方向を向いていると誤認した状態で)、運転者が車両を発進させた場合であっても、運転者からの操作を待たずにステアリングホイールが中立方向へ回転し、車両が直進走行状態に近づく。このため、運転者が、操舵輪の方向を適正に認識せず、前方または後方に注意を集中させて車両を発進した場合であっても、周囲との意図しない接触や衝突が発生し難く、発進直後の周囲との接触や衝突の発生を防止することができる。
【0011】
また、車両の発進直後に運転者が積極的にステアリングホイールを中立位置へ回転操作する場合には、発生した中立方向トルクによって回転操作が補助されるので、車両を直進する状態に復帰させ易くなる。このため、比較的早く車両を直進走行状態に復帰させることができる。
【0012】
また、操舵輪が非直進方向を向いた状態で車両を発進させた際のセルフアライニングトルク(操舵輪を直進方向へ回転させるトルク)の発生は、運転者が通常体感していることであるため、発進直後のステアリングホイールに対する中立方向トルクの付与は、運転者に違和感を与えることがなく、良好な操作性が維持される。
【0013】
さらに、車両が発進する前のステアリングホイールは、車両の駐停車時の回転位置に維持されるので、運転者は、車両の発進時にステアリングホイールを把持することによって、ステアリングホイールの中立方向への回転を阻止することができる。したがって、ステアリングホイールを中立位置から所望の方向へ意図的に回転させ、発進に好適な角度で操舵輪を停止させて車両を駐停車した運転者は、事前のステアリングホイールの操作を無駄にすることなく、車両を発進させることができる。
【0014】
このように、上記構成によれば、車両の発進直後のステアリング操作性を向上させることができる。
【0015】
本発明の第2の態様のステアリング制御装置は、トルク発生手段と、車速検出手段と、発進判定手段と、トルク制御手段と、を備える。
【0016】
トルク発生手段は、車両の直進に対応する中立位置を含む範囲で回転操作されるステアリングホイールに対してトルクを付与する。車速検出手段は、車両の車速を検出する。発進判定手段は、車両が発進直後であるか否かを判定する。トルク制御手段は、車両が発進直後であると発進判定手段が判定したとき、車速検出手段が検出した車速に基づいて、中立位置へ向かって作用する中立方向トルクのトルク量を決定し、決定したトルク量の中立方向トルクをトルク発生手段に発生させる。
【0017】
上記構成では、トルク制御手段は、車両が発進直後であると発進判定手段が判定したとき、車速に基づいて、中立位置へ向かって作用する中立方向トルクのトルク量を決定し、決定したトルク量の中立方向トルクをトルク発生手段に発生させる。このため、車両の発進直後において、車速に応じたトルク量の中立方向トルクがステアリングホイールに付与される。したがって、上記第1の態様と同様に、車両の発進直後のステアリング操作性を向上させることができる。
【0018】
また、第1及び第2のステアリング制御装置は、ステアリングホイールが中立位置から離れる方向へ回転しているか否かを検知する回転方向検知手段を備えてもよい。この場合、車両が発進直後であると発進判定手段が判定し、且つ中立位置から離れる方向へステアリングホイールが回転していると回転方向検知手段が検知したとき、トルク制御手段は、中立方向トルクをトルク発生手段に発生させない。
【0019】
上記構成では、車両の発進直後に運転者がステアリングホイールを中立位置から離れる方向に回転操作すると、トルク制御手段は、中立方向トルクをトルク発生手段に発生させない。したがって、運転者のステアリング操作に対して抵抗力となる中立方向トルクがステアリングホイールに作用しないので、車両の発進時のステアリング操作性がさらに向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車両の発進直後のステアリング操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態のステアリング制御装置を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態の発進判定処理を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態のトルク制御処理を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態における操舵角とトルク量との関係の一例を示す図である。
【図5】第1の実施形態における操舵角とトルク量との関係の他の例を示す図である。
【図6】第1の実施形態における操舵角とトルク量との関係のさらに他の例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における車速とトルク量との関係の一例を示す図である。
【図8】第2の実施形態における車速とトルク量との関係の他の例を示す図である。
【図9】第2の実施形態における車速とトルク量との関係のさらに他の例を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施形態のトルク制御処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の変形例における操舵角及び車速とトルク量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1の実施形態について図1〜図3を参照して説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係るステアリング制御装置1は、ステアバイワイヤシステムを採用する車両2に搭載され、車両2は、運転者が操作するステアリングホイール5と、ステアリングシャフト6とを含む操舵機構3と、車輪(操舵輪)7の方向を変化させる転舵機構4とを備える。
【0024】
ここでステアバイワイヤシステムとは、操舵機構3と転舵機構4との機械的な連結を排除した操舵システムである。ステアリング制御装置1の制御部20は、運転者の操舵操作を電気信号に変換して、その電気信号に基づいて転舵機構4を駆動させることにより車両2の操舵制御を行う。
【0025】
ステアリングホイール5は、車室内の運転席前部に設けられ、運転者によって回転操作される。ステアリングホイール5は、ステアリングシャフト6の一端に回転可能に支持される。
【0026】
ステアリング制御装置1は、モータ10と、操舵角センサ11と、車速センサ12と、シフトレンジセンサ13と、フットブレーキスイッチ14と、イグニッションスイッチ15と、計時部16と、制御部20と、を備える。
【0027】
モータ10は、出力軸がステアリングシャフト6の他端に連結される。モータ10は、後述のように制御部20によって動作を制御され、ステアリングホイール5に対してトルクを付与する。すなわち、モータ10は、ステアリングホイール5に対してトルクを付与するトルク発生手段を構成する。
【0028】
操舵角センサ11は、車輪7付近に設置された図示しないCCD(Charge Coupled Device)を備え、ステアリングホイール5の回転操作に応じて変動する車輪7の操舵角θを、CCDカメラが撮像した車輪7の画像を処理することで逐次検出し、検出した操舵角θを制御部20へ出力する。すなわち、操舵角センサ11は、ステアリングホイール5の回転操作に応じて変動する車両2の操舵角を逐次検出する操舵角検出手段を構成する。操舵角センサ11は、車両2の直進走行状態において、操舵角θを±0°と検出するように設定されている。また、操舵角センサ11は、運転者によってステアリングホイール5が左方向に回転操作され、車輪7が左方向に回転したときはマイナスの値の操舵角θを検出し、ステアリングホイール5が右方向に回転操作されたときはプラスの値の操舵角θを検出し、制御部20へ出力する。
【0029】
車速センサ12は、ドライブシャフト(図示省略)の回転数を電気的に検出することで車両2の速度(車速V)を逐次検出し、検出した車速Vを制御部20へ出力する。
【0030】
シフトレンジセンサ13は、車室内に設けられて運転者によって操作されるシフトレバー(図示省略)の選択位置を検出するセンサである。シフトレバーは、車両2を前進走行させる際に選択されるDレンジ、後退走行させる際に選択されるRレンジ、エンジンからの動力を非伝達にする際に選択されるNレンジ(ニュートラル位置)、及び駐車する場合などのように、車両2を停止状態に保持する際に選択されるPレンジの4つの位置が選択可能となっている。シフトレンジセンサ13は、運転者によって上記4つの位置のいずれかが選択されたとき、選択に応じて、Dレンジ信号、Rレンジ信号、Nレンジ信号、Pレンジ信号のいずれかを制御部20に出力する。
【0031】
フットブレーキスイッチ14は、運転者によって操作されるフットブレーキペダル(図示省略)の操作の有無を検出するものであり、フットブレーキペダルが操作されている場合にオン状態に、フットブレーキペダルの操作が解除されている場合にはオフ状態に設定される。フットブレーキスイッチ14は、オフ状態からオン状態に移行するとき、フットブレーキオン信号を制御部20に出力し、また、オン状態からオフ状態に移行するとき、フットブレーキオフ信号を制御部20に出力する。
【0032】
イグニッションスイッチ15は、車室内の運転席前部に設けられ、「OFF」、「ACC」、「ON」及び「START」のいずれかの位置に切り替えられる。イグニッションスイッチ15は、「START」位置に切り替えられたとき、スタータ信号を制御部20へ出力する。また、イグニッションスイッチ15は、「OFF」位置に切り替えられたとき、オフ信号を制御部20へ出力する。
【0033】
計時部16は、後述するトルク制御部23が、トルク制御処理を開始した時点からの経過時間を計時し、逐次これを制御部20に出力する。
【0034】
制御部20は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)と、を備える。
【0035】
ROM及びRAMは、制御部20の記憶部21を構成し、ROMは、CPUによって読み出される種々のプログラム(発進判定プログラム及びトルク制御プログラムを含む)や種々のデータ(後述する所定速度Vaや所定時間や操舵角θと中立方向トルクのトルク量Tとの対応関係などを含む)を予め記憶している。なお、ROMに記憶される種々のデータは、実験やシミュレーションなどによって得られた測定値や理論値に基づいて設定される。また、これらのデータは、各プログラムに含まれた状態で記憶されてもよい。
【0036】
RAMには、制御部20が操舵角センサ11及び車速センサ12から受信した各検出結果を記憶するデータ記憶領域が予め設定されている。データ記憶領域は、記憶可能なデータ数の上限(上限データ数)が予め設定された領域であり、記憶されているデータ数が上限データに達すると、制御部20は、新規の検出結果を記憶する際に、既に記憶されている検出結果のうち最初に記憶された最も古いものを削除し、新規の検出結果を記憶させる。上限データ数は、後述する制御部が実行する発進判定処理及びトルク制御処理が確実に実行可能な数に設定されている。
【0037】
また、RAMには、フラグ設定領域が設定されている。フラグ設定領域には、フットブレーキフラグ設定領域及びシフトレバーフラグ設定領域が設けられている。フットブレーキフラグは、制御部20がフットブレーキスイッチ14からフットブレーキオン信号を受信するとオンに設定され、また、フットブレーキオフ信号を受信するとオフに設定される。シフトレバーフラグ設定領域には、Dレンジフラグ設定領域、Rレンジフラグ設定領域、Nレンジフラグ設定領域、Pレンジフラグ設定領域が設けられている。制御部20がシフトレンジセンサ13からDレンジ信号、Rレンジ信号、Nレンジ信号、Pレンジ信号のいずれかを受信すると、受信した信号に応じたフラグをオンに設定し、その他のフラグをオフに設定する。
【0038】
CPUは、発進判定プログラムに従って発進判定処理を実行する発進判定部22、トルク制御プログラムに従ってトルク制御処理を実行するトルク制御部23として機能する。
【0039】
発進判定部22は、制御部20がイグニッションスイッチ15からスタータ信号を受信すると車両2が発進直後であるか否かを判定する発進判定処理を実行する。この発進判定処理において、発進判定部22は、記憶部21のシフトレバーフラグ設定領域を参照し、シフトレバーがNレンジ又はPレンジ以外に設定されているか否かを判定する。また、フットブレーキフラグ設定領域を参照し、フットブレーキがオフ状態であるか否かを判定する。また、車速センサ12が検出した現在の車速V(記憶部21に記憶された車速センサ12の最新の検出値)を記憶部21から読み出し、車速Vが時速0キロメートル(以下、km/hと記載する)であるか否かを判定し、0km/hではないときは、さらに車速Vが予め設定された所定速度Va未満であるか否かを判定する。シフトレバーがNレンジ又はPレンジ以外(Dレンジ又はRレンジ)に設定され、フットブレーキがオフ状態であり、車速Vが0km/hを超えて所定速度Va未満であるとき、発進判定部22は、車両2が発進直後であると判定する。所定速度Vaは、記憶部21に予め記憶されており、上記判定の際に、発進判定部22によって記憶部21から読み出される。なお、所定速度Vaは、発進判定プログラム内に予め設定されてもよい。
【0040】
車両2が発進直後であると発進判定部22が判定すると、トルク制御部23はトルク制御処理を開始する。トルク制御部23は、現在の操舵角θ(記憶部21に記憶された操舵角センサ11の最新の検出値)を記憶部21から読み出し、読み出した操舵角θに対応する中立方向トルクのトルク量Tを、予め設定された操舵角θとトルク量Tとの対応関係(図4に示す)に基づいて決定する。中立方向トルクとは、ステアリングホイール5に対して中立位置へ向かって付与されるトルクである。操舵角θとトルク量Tとの対応関係は、操舵角θの絶対値(│θ│)が所定角度θa未満の場合は中立方向トルクを発生せず(T=0)、操舵角θの絶対値が所定角度θa以上の場合は一定の所定トルク量Taを発生する(T=Ta)ように設定されている。この対応関係は、演算式として設定されてもよく、マップやテーブルとして設定されてもよい。本実施形態では、所定角度θaと所定トルク量Taとが設定されている。トルク制御部23は、読み出した操舵角θの絶対値が所定角度θa以上か否かを判定し、操舵角θの絶対値が所定角度θa以上であると判定すると、トルク量Tを所定トルク量Taに決定し、操舵角θが所定角度θa未満であると判定すると、トルク量Tを「0」に決定する。トルク量Tを決定したトルク制御部23は、決定したトルク量Tの中立方向トルクを発生させるようモータ10にトルク発生指示信号を出力する。トルク発生指示信号には、中立方向トルクを発生させる方向の情報を含む。トルク制御部23は、中立方向トルクを発生させる方向を、記憶部21に記憶された現在の操舵角θに基づいて決定する。すなわち、トルク制御部23は、操舵角θがマイナスの値を示しているとき(車輪7が左方向に回転しているとき)は、ステアリングホイール5を右方向に回転させる中立方向トルクを発生させる発生指示信号を出力し、プラスの値を示しているとき(車輪7が右方向に回転しているとき)は、ステアリングホイール5を左方向に回転させるトルク発生指示信号を出力する。
【0041】
また、トルク制御部23は、モータ10を制御して中立方向トルクを発生させる本処理を、車両2の発進直後の所定時間に限定して実行する。すなわち、トルク制御部23は、計時部16が計時する経過時間が所定時間に達するまでの期間内では、車速Vが所定速度Vaに達するまで、トルク量Taの中立方向トルクを継続して発生させる。一方、計時部16が計時する経過時間が所定時間に達するか、或いは車速Vが所定速度Vaに達すると、トルク制御部23は、中立方向トルクの発生を終了する。なお、操舵角θとトルク量Tとの対応関係(演算式、マップ、テーブル、または所定角度θa及び所定トルク量Ta)、所定時間及び所定速度Vaなどの情報は、記憶部21からトルク制御部23によって随時読み出される。また、これらの情報は、トルク制御プログラム内に予め設定されてもよい。
【0042】
次に本実施形態におけるステアリング制御装置1の発進判定処理について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0043】
発進判定部22は、制御部20がイグニッションスイッチ15からスタータ信号を受信すると車両2が発進直後であるか否かを判定する発進判定処理を実行する。図2のステップS1において、発進判定部22は、記憶部21のシフトレバーフラグ設定領域を参照し、シフトレバーの選択位置としてNレンジ又はPレンジ以外が選択されているか否かを判定する。シフトレバーの選択位置としてNレンジ又はPレンジ以外(Dレンジ又はRレンジ)が選択されていると判定した場合(ステップS1:YES)は、ステップS2に移行する。シフトレバーの選択位置としてNレンジ又はPレンジが選択されていると判定した場合(ステップS1:NO)は、本処理を終了する。
【0044】
ステップS2において、発進判定部22は、記憶部21のフットブレーキフラグ設定領域を参照し、フットブレーキがオフ状態であるか否かを判定する。フットブレーキがオフ状態であると判定した場合(ステップS2:YES)は、ステップS3に移行する。フットブレーキがオン状態であると判定した場合(ステップS2:NO)は、本処理を終了する。
【0045】
ステップS3において、発進判定部22は、現在の車速Vを記憶部21から読み出し、車速Vが0km/hか否かを判定する。車速Vが0km/hであると判定した場合(ステップS3:YES)は、本処理を終了する。車速Vが0km/hでないと判定した場合(ステップS3:NO)は、ステップS4に移行する。
【0046】
ステップS4において、発進判定部22は、現在の車速Vが所定速度Va未満であるか否かを判定する。車速Vが所定速度Va未満である判定した場合(ステップS4:YES)は、ステップS5に移行する。車速Vが所定速度Va以上であると判定した場合(ステップS4:YES)は、本処理を終了する。
【0047】
ステップS5において、発進判定部22は、車両2が発進直後であると判定し、本処理を終了する。
【0048】
なお、発進判定部22は、制御部20がイグニッションスイッチ15からオフ信号を受信するまで、所定時間毎に本発進判定処理を繰り返す。
【0049】
次に、本実施形態におけるステアリング制御装置1のトルク制御処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0050】
車両2が発進直後であると発進判定部22が判定すると、トルク制御部23は、トルク制御処理を開始する。図3のステップS11において、トルク制御部23は、現在の操舵角θを読み出し、この操舵角θが予め設定された所定角度θa以上か否かを判定する。操舵角θが所定角度θa以上である判定した場合は、トルク制御部23は、ステアリングホイール5の中立位置へ向かって作用する中立方向トルクのトルク量Tを所定トルク量Taに決定し、反対に、操舵角θが所定角度θa未満である判定した場合は、中立方向トルクのトルク量Tを「0」に決定して、ステップS12に移行する。
【0051】
ステップS12において、トルク制御部23は、決定したトルク量Tの中立方向トルクを発生させるようモータ10にトルク発生指示信号を出力し、ステップS13に移行する。
【0052】
ステップS13において、計時部16から出力された本処理の開始時点からの経過時間に基づき、経過時間が所定時間を経過したか否かを判定する。所定時間を経過したと判定した場合(ステップS13:YES)は、本処理を終了する。所定時間内と判定した場合(ステップS13:NO)は、ステップS14に移行する。
【0053】
ステップS14において、トルク制御部23は、現在の車速Vを記憶部21から読み出し、車速Vが所定速度Va未満であるか否かを判定する。車速Vが所定速度Va未満と判定した場合(ステップS14:YES)は、ステップS11に移行する。一方、車速Vが所定速度Va以上と判定した場合(ステップS14:NO)は、本処理を終了する。
【0054】
本実施形態によれば、車両2が発進直後であると発進判定部22が判定すると、モータ10は、中立位置へ向かって作用する中立方向トルクのトルク量Tを操舵角θに基づいて決定し、決定したトルク量Tの中立方向トルクをモータ10に発生させる。すなわち、車両2の発進直後において、操舵角θに応じたトルク量Tの中立方向トルクがステアリングホイール5に付与され、中立方向へステアリングホイール5が回転する。
【0055】
したがって、車輪7が非直進方向を向いていることを認識せずに、運転者が車両2を発進させた場合であっても、運転者からの操作を待たずにステアリングホイール5が中立方向へ回転し、車両2が直進走行状態に近づく。このため、運転者が、車輪7の方向を適正に認識せず、前方または後方に注意を集中させて車両2を発進した場合であっても、周囲との意図しない接触や衝突が発生し難く、発進直後の周囲との接触や衝突の発生を防止することができる。
【0056】
また、車両2の発進直後に運転者が積極的にステアリングホイール5を中立位置へ回転操作する場合には、発生した中立方向トルクによって回転操作が補助されるので、車両2を直進する状態に復帰させ易くなる。このため、比較的早く車両2を直進走行状態に復帰させることができる。
【0057】
また、車輪2が非直進方向を向いた状態で車両2を発進させた際のセルフアライニングトルクの発生は、運転者が通常体感していることであるため、発進直後のステアリングホイール5に対する中立方向トルクの付与は、運転者に違和感を与えることがなく、良好な操作性が維持される。
【0058】
さらに、車両2が発進する前のステアリングホイール5は、車両2の駐停車時の回転位置に維持されるので、運転者は、車両2の発進時にステアリングホイールを把持することによって、ステアリングホイール5の中立方向への回転を阻止することができる。したがって、ステアリングホイール5を中立位置から所望の方向へ意図的に回転させ、発進に好適な角度で車輪7を停止させて車両2を駐停車した運転者は、事前のステアリングホイール5の操作を無駄にすることなく、車両2を発進させることができる。
【0059】
以上のように、本実施形態によれば、車両2の発進直後のステアリング操作性を向上させることができる。
【0060】
なお、操舵角θとトルク量Tとの対応関係は、上記関係(図4参照)に限定されるものではなく、操舵角θに対してトルク量Tが一意に対応付けられるものであれば、任意に設定可能である。例えば、図5に示すように、操舵角θの絶対値(│θ│)が所定角度θa以上の場合に、一定の所定トルク量Taではなく、操舵角θと所定角度θaとの差の絶対値(│θ−θa│)に比例して増大するトルク量Tを発生するように、操舵角θとトルク量Tとの対応関係を設定してもよい。また、図6に示すように、トルク量Tを操舵角θの二次関数として設定してもよい。
【0061】
次に本発明の第2の実施形態を図1及び図3を参照して説明する。第1の実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0062】
本実施形態において、トルク制御部23は、トルク制御処理において、現在の操舵角θを記憶部21から読み出し、ステアリングホイール5が中立位置にあるか否か、すなわち操舵角θが0度であるか否かを判定する。0度であると判定した場合は、ステアリングホイール5が中立位置にあるので、トルク制御部23は、中立方向トルクのトルク量Tを「0」に決定する。0度でないと判定した場合は、トルク制御部23は、現在の車速Vを記憶部21から読み出し、読み出した車速Vに対応する中立方向トルクのトルク量Tを、予め設定された車速Vとトルク量Tとの対応関係(図7に示す)に基づいて決定する。車速Vとトルク量Tとの対応関係は、車両Vが所定速度Vb(発進判定処理における所定速度Vaと異なる速度)以上の場合は中立方向トルクを発生せず(T=0)、車速Vが所定速度Vb未満の場合は一定の所定トルク量Tbを発生する(T=Tb)ように設定されている。この対応関係は、演算式として設定されてもよく、マップやテーブルとして設定されてもよい。本実施形態では、所定速度Vbと所定トルク量Tbとが設定されている。トルク制御部23は、読み出した車速Vが所定速度Vb以上か否かを判定し、車速Vが所定速度Vb未満であると判定すると、トルク量Tを所定トルク量Tbに決定し、車速Vが所定速度Vb以上であると判定すると、トルク量Tを「0」に決定する。
【0063】
次に、本実施形態におけるステアリング制御装置1のトルク制御処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。ステップS12〜ステップS14については、第1の実施形態の同ステップと同様のため説明を省略する。
【0064】
トルク制御部23は、車両2が発進直後であると発進判定部22が判定すると、トルク制御処理を開始する。図3のステップS11において、トルク制御部23は、現在の操舵角θを記憶部21から読み出し、ステアリングホイール5が中立位置にあるか否か、すなわち操舵角θが0度であるか否かを判定する。0度であると判定した場合は、ステアリングホイール5が中立位置にあるので、トルク制御部23は、中立方向トルクのトルク量Tを「0」に決定する。0度でないと判定した場合は、現在の車速Vを記憶部21から読み出し、車速Vが所定速度Vb未満であると判定した場合は、中立方向トルクのトルク量Tを予め設定した所定トルク量Tbに決定し、一方、所定速度Vb以上である判定した場合は、中立方向トルクのトルク量Tを「0」に決定し、ステップS12に移行する。
【0065】
本実施形態によれば、トルク制御部23は、車両2が発進直後であると発進判定部22が判定したとき、車速Vに基づいて、中立位置へ向かって作用する中立方向トルクのトルク量Tを決定し、決定したトルク量Tの中立方向トルクをモータ10に発生させる。このため、車両2の発進直後において、車速Vに応じたトルク量Tの中立方向トルクがステアリングホイール5に付与される。したがって、上記第1の実施形態と同様に、車両2の発進直後のステアリング操作性を向上させることができる。
【0066】
なお、車速Vとトルク量Tとの対応関係は、上記関係(図7参照)に限定されるものではなく、車速Vに対してトルク量Tが一意に対応付けられるものであれば、任意に設定可能である。例えば、図8に示すように、車速Vが所定速度Vb未満の場合に、一定の所定トルク量Tbではなく、車速Vに比例して減少するトルク量Tを発生するように、車速Vとトルク量Tとの対応関係を設定してもよい。また、図9に示すように、トルク量Tを車速Vと所定の関数に基づき、車速Vの増加に応じて漸減するように設定してもよい。
【0067】
また、所定速度Vbを上述の発進判定処理やトルク制御処理のステップS14における所定速度Vaとを同じ速度としてもよい。この場合、発進判定部22が車両2が発進直後であると判定した場合、車速Vは所定速度Va,Vb未満であるため、トルク制御処理は、ステアリングホイール5が中立位置にあるか否かのみを判定することで、トルク量Tを所定トルク量Tbに決定することができる。また、この場合、トルク制御処理のステップS14(図3参照)を省略してもよい。車速Vが所定速度Va,Vbに達した以降は、上述のようにステップS11でトルク量Tを「0」に決定するので、ステップS14を省略しても、車速Vが所定速度Va,Vbに達した以降(すなわち、車両2が発進直後でない場合)に中立方向トルクを発生させることはない。
【0068】
次に本発明の第3の実施形態について説明する。なお、本実施形態の構成のうち第1の実施形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0069】
本実施形態の記憶部21(図1参照)は、CPUによって読み出される回転方向検知プログラムを予め記憶しており、CPUは回転方向検知プログラムに従って回転方向検知処理を実行する回転方向検知部24(図1中に二点鎖線で示す)として機能する。
【0070】
回転方向検知部24は、回転方向検知処理を実行する。具体的には、回転方向検知部24は、記憶部21に記憶されている操舵角センサ11が検出した最新の操舵角θと最新の一つ前の操舵角θbを読み出し、ステアリングホイール5の回転方向を検知する。例えば、最新の一つ前の操舵角θbが+45°で、最新の操舵角θが60度の場合、車輪7が車両2の直進に対応する中立位置方向から離れる方向に回転しているので、それに伴ってステアリングホイール5も中立位置方向から離れる方向に回転していると検知する。一方、最新の一つ前の操舵角θbが45度で、最新の操舵角θが30度の場合、車輪7が車両2の直進に対応する中立位置方向に回転しているので、それに伴ってステアリングホイール5も中立位置方向に回転していると検知する。また、回転方向検知部24は、最新の一つ前の操舵角θbと最新の操舵角θが等しい場合、車輪7が同じ操舵角で維持されているので、ステアリングホイール5が同じ位置で維持されていると検知する。
【0071】
トルク制御部23は、トルク制御処理において、トルク発生信号をモータ10に送信する前に、回転方向検知部24の検知結果に基づいて、ステアリングホイール5が中立位置方向から離れる方向に回転しているか否かを判定する。中立位置方向から離れる方向に回転していると判定した場合、トルク制御部23は、トルク発生信号をモータ10に送信しないで、トルク制御処理を終了する。すなわち、中立方向トルクをモータ10に発生させない。一方、ステアリングホイール5が中立位置方向に回転している又は同じ位置に維持され、回転していないと判定した場合、決定したトルク量Tの中立方向トルクを発生させるようモータ10にトルク発生指示信号を出力する。
【0072】
次に本実施形態におけるトルク制御処理について、図10のフローチャートを参照して説明する。なお、ステップS21及びステップS23〜ステップS25については、第1の実施形態のトルク制御処理(図3参照)のステップS11〜ステップS14と同様のため説明を省略する。
【0073】
S22において、トルク制御部23は、回転方向検知部24の検知結果が、ステアリングホイール5が中立位置方向から離れる方向に回転しているか否かを判定する。中立位置方向から離れる方向に回転していると判定した場合(ステップS22:YES)は、トルク制御部23は、本処理を終了し、中立方向トルクをモータ10に発生させない。ステアリングホイール5が中立位置方向に回転している又は同じ位置に維持され、回転していないと判定した場合(ステップS22:NO)は、ステップS23に移行する。
【0074】
本実施形態では、車両2の発進直後に運転者がステアリングホイール5を中立位置から離れる方向に回転操作すると、トルク制御部23は、中立方向トルクをモータ10に発生させない。したがって、運転者のステアリング操作に対して抵抗力となる中立方向トルクがステアリングホイール5に作用しないので、車両2の発進時のステアリング操作性がさらに向上する。
【0075】
また、発車直後にステアリングホイール5が同じ位置に維持され、回転していない場合にも中立方向トルクをモータ10に発生させるので、ステアリングホイール5を把持し、同じ位置に維持している運転者に、付与される中立方向トルクによって、車両2が中立位置にないことを認識させることができる。
【0076】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明に限定されることはない。 例えば、本実施形態では、操舵角センサ11が検出した車輪7の操舵角θに基づいて、トルク制御部23は中立方向トルクのトルク量Tを決定し、また、回転方向検知部24は回転方向を検知したが、ステアリングシャフト6に設けられた光学式のロータリーエンコーダ、又は、ギアなどを介した回転式可変抵抗器を操舵角センサ11として用いて、検出結果であるステアリングシャフト6の操舵角に基づいて、トルク制御部23は中立方向トルクのトルク量Tを決定してもよいし、また、回転方向検知部24は回転方向を検知してもよい。同様に、ステアリングコラムに取り付けたロータリーエンコーダを操舵角センサ11として用いて、検出結果であるステアリングホイールの操舵角に基づいて、トルク制御部23は中立方向トルクのトルク量Tを決定してもよいし、また、回転方向検知部24は回転方向を検知してもよい。
【0077】
また、上記操舵角θとトルク量Tとの対応関係や車速Vとトルク量Tとの対応関係に代えて、操舵角θ及び車速Vとトルク量Tとの対応関係を設定してもよい。この場合、トルク制御部23は、操舵角θと車速Vとに基づいてトルク量Tを決定する。操舵角θ及び車速Vとトルク量Tとの対応関係は、例えば、図11に示すように、操舵角θと車速Vとトルク量Tとによって規定される3次元空間内に所定の平面として設定することができる。図11に示す対応関係は、操舵角θの絶対値(│θ│)が所定角度θa以上であって所定の最大角度θc未満であり、車速Vが所定速度Va未満である場合に、操舵角θと所定角度θaとの差の絶対値(│θ−θa│)に比例してトルク量Tが増大し、また、車速Vに比例してトルク量Tが減少するように設定されている。なお、図11では、操舵角θが正の場合のみを示し、操舵角θが負の場合を省略している。
【0078】
また、ステアリング制御装置1に、運転者がステアリングホイール5を回転させるために入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出部(例えば、磁歪式操舵トルクセンサ)を設けてもよい。この場合、トルク制御部23は、操舵トルク検出部によって検出された操舵トルクが予め設定されている所定トルク量以上の場合、中立方向へのトルクをモータ10に発生させないようにしてもよい。
【0079】
また、ステアリング制御装置1を、運転者のステアリングホイール5の回転操作に応じて、運転車の操作力を補助するアシストトルクをモータ10に発生させるパワーステアリングシステムと併用してもよい。この場合、ステアリング制御装置1は、パワーステアリングシステムのアシストトルクに付加する追加アシストトルクのトルク量を決定し、アシストトルクに決定したトルク量の追加アシストトルクを付加したトルクをモータ10に発生させる。
【0080】
また、本実施形態の発進判定部22は、シフトレバーの位置、ブレーキペダルの操作の有無、車速Vに基づいて、車両2が発車直後か否かを判定したが、これらのいずれか一つに基づいて、判定をしてもよい。
【0081】
また、ステアリング制御装置1に、エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出部とアクセルペダルが操作されているか否かを検知するアクセルペダルスイッチを設け、発進判定部22は、車両2が発進直後であるか否かの判定を、エンジン回転数検出部が検出するエンジン回転数と、アクセルペダルスイッチが検出したアクセルペダルの操作の有無とに基づいて、車両2が発進直後であるか否かを判定してもよい(例えば、エンジン回転数が所定回転数以下の場合は、発車直後と判定し、また、アクセルペダル操作が有れば、発進直後と判定する)。
【0082】
また、本実施形態では、ステアバイワイヤシステムを採用した車両2にステアリング制御装置1を搭載した例を説明したが、ステアリング制御装置を操舵機構3と転舵機構4とが機械的に連続している車両に搭載してもよい。
【0083】
すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のステアリング制御装置は、ステアリングホイールを有する車両に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1:ステアリング制御装置
2:車両
3:操舵機構
4:転舵機構
5:ステアリングホイール
6:ステアリングシャフト
7:車輪
10:モータ(トルク発生手段)
11:操舵角センサ(操舵角検出手段)
12:車速センサ(車速検出手段)
13:シフトレンジセンサ
14:フットブレーキスイッチ
15:イグニッションスイッチ
16:計時部
20:制御部
21:記憶部
22:発進判定部(発進判定手段)
23:トルク制御部(トルク制御手段)
24:回転方向検知部(回転方向検知手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の発進直後に好適なトルクをステアリングホイールに対して付与するステアリング制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004−322855号公報には、パワーステアリング装置を備える車両が記載されている。このパワーステアリング装置は、操舵輪を操舵するためのハンドルと、操舵輪へ操舵トルクを付加する電動パワーステアリング機構と、電動パワーステアリング機構が付加する操舵トルクの大きさを制御するECUとを備える。ドライバがIGスイッチをオンにして、車両を走行させようとすると、ECUは、ハンドルを中立位置へ戻すように電動パワーステアリング機構を制御し、ハンドルが自動的に中立位置へ復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−322855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のパワーステアリング装置では、車両の発進前にハンドルが自動的に回転するので、運転者は、自身の手などがハンドルに巻き込まれないように、車両の発進前に注意を払う必要が生じる。
【0005】
また、運転者は、車両の発進後のハンドル操作の簡素化及び容易化のため、ハンドルを中立位置から所望の方向へ意図的に回転させ、発進に好適な角度で操舵輪を停止させたまま車両を駐停車する場合がある。このような場合において、上記従来のパワーステアリング装置では、車両の発進前にハンドルが自動的に中立位置へ復帰してしまうので、運転者の事前のハンドル操作が無駄となり、操作性の低下を招く。
【0006】
そこで、本発明は、車両の発進直後のステアリング操作性を向上させることが可能な操舵制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明の第1の態様のステアリング制御装置は、トルク発生手段と、操舵角検出手段と、発進判定手段と、トルク制御手段と、を備える。
【0008】
トルク発生手段は、車両の直進に対応する中立位置を含む範囲で回転操作されるステアリングホイールに対してトルクを付与する。操舵角検出手段は、ステアリングホイールの回転操作に応じて変動する車両の操舵角を検出する。発進判定手段は、車両が発進直後であるか否かを判定する。トルク制御手段は、車両が発進直後であると発進判定手段が判定したとき、操舵角検出手段が検出した操舵角に基づいて、中立位置へ向かって作用する中立方向トルクのトルク量を決定し、決定したトルク量の中立方向トルクをトルク発生手段に発生させる。
【0009】
上記構成では、車両が発進直後であると発進判定手段が判定すると、トルク制御手段は、中立位置へ向かって(中立方向へ)作用する中立方向トルクのトルク量を操舵角に基づいて決定し、決定したトルク量の中立方向トルクをトルク発生手段に発生させる。すなわち、車両の発進直後において、操舵角に応じたトルク量の中立方向トルクがステアリングホイールに付与され、中立方向へステアリングホイールが回転する。
【0010】
したがって、操舵輪が非直進方向を向いていることを認識せずに(操舵輪が直進方向を向いていると誤認した状態で)、運転者が車両を発進させた場合であっても、運転者からの操作を待たずにステアリングホイールが中立方向へ回転し、車両が直進走行状態に近づく。このため、運転者が、操舵輪の方向を適正に認識せず、前方または後方に注意を集中させて車両を発進した場合であっても、周囲との意図しない接触や衝突が発生し難く、発進直後の周囲との接触や衝突の発生を防止することができる。
【0011】
また、車両の発進直後に運転者が積極的にステアリングホイールを中立位置へ回転操作する場合には、発生した中立方向トルクによって回転操作が補助されるので、車両を直進する状態に復帰させ易くなる。このため、比較的早く車両を直進走行状態に復帰させることができる。
【0012】
また、操舵輪が非直進方向を向いた状態で車両を発進させた際のセルフアライニングトルク(操舵輪を直進方向へ回転させるトルク)の発生は、運転者が通常体感していることであるため、発進直後のステアリングホイールに対する中立方向トルクの付与は、運転者に違和感を与えることがなく、良好な操作性が維持される。
【0013】
さらに、車両が発進する前のステアリングホイールは、車両の駐停車時の回転位置に維持されるので、運転者は、車両の発進時にステアリングホイールを把持することによって、ステアリングホイールの中立方向への回転を阻止することができる。したがって、ステアリングホイールを中立位置から所望の方向へ意図的に回転させ、発進に好適な角度で操舵輪を停止させて車両を駐停車した運転者は、事前のステアリングホイールの操作を無駄にすることなく、車両を発進させることができる。
【0014】
このように、上記構成によれば、車両の発進直後のステアリング操作性を向上させることができる。
【0015】
本発明の第2の態様のステアリング制御装置は、トルク発生手段と、車速検出手段と、発進判定手段と、トルク制御手段と、を備える。
【0016】
トルク発生手段は、車両の直進に対応する中立位置を含む範囲で回転操作されるステアリングホイールに対してトルクを付与する。車速検出手段は、車両の車速を検出する。発進判定手段は、車両が発進直後であるか否かを判定する。トルク制御手段は、車両が発進直後であると発進判定手段が判定したとき、車速検出手段が検出した車速に基づいて、中立位置へ向かって作用する中立方向トルクのトルク量を決定し、決定したトルク量の中立方向トルクをトルク発生手段に発生させる。
【0017】
上記構成では、トルク制御手段は、車両が発進直後であると発進判定手段が判定したとき、車速に基づいて、中立位置へ向かって作用する中立方向トルクのトルク量を決定し、決定したトルク量の中立方向トルクをトルク発生手段に発生させる。このため、車両の発進直後において、車速に応じたトルク量の中立方向トルクがステアリングホイールに付与される。したがって、上記第1の態様と同様に、車両の発進直後のステアリング操作性を向上させることができる。
【0018】
また、第1及び第2のステアリング制御装置は、ステアリングホイールが中立位置から離れる方向へ回転しているか否かを検知する回転方向検知手段を備えてもよい。この場合、車両が発進直後であると発進判定手段が判定し、且つ中立位置から離れる方向へステアリングホイールが回転していると回転方向検知手段が検知したとき、トルク制御手段は、中立方向トルクをトルク発生手段に発生させない。
【0019】
上記構成では、車両の発進直後に運転者がステアリングホイールを中立位置から離れる方向に回転操作すると、トルク制御手段は、中立方向トルクをトルク発生手段に発生させない。したがって、運転者のステアリング操作に対して抵抗力となる中立方向トルクがステアリングホイールに作用しないので、車両の発進時のステアリング操作性がさらに向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車両の発進直後のステアリング操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態のステアリング制御装置を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態の発進判定処理を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態のトルク制御処理を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態における操舵角とトルク量との関係の一例を示す図である。
【図5】第1の実施形態における操舵角とトルク量との関係の他の例を示す図である。
【図6】第1の実施形態における操舵角とトルク量との関係のさらに他の例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における車速とトルク量との関係の一例を示す図である。
【図8】第2の実施形態における車速とトルク量との関係の他の例を示す図である。
【図9】第2の実施形態における車速とトルク量との関係のさらに他の例を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施形態のトルク制御処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の変形例における操舵角及び車速とトルク量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1の実施形態について図1〜図3を参照して説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係るステアリング制御装置1は、ステアバイワイヤシステムを採用する車両2に搭載され、車両2は、運転者が操作するステアリングホイール5と、ステアリングシャフト6とを含む操舵機構3と、車輪(操舵輪)7の方向を変化させる転舵機構4とを備える。
【0024】
ここでステアバイワイヤシステムとは、操舵機構3と転舵機構4との機械的な連結を排除した操舵システムである。ステアリング制御装置1の制御部20は、運転者の操舵操作を電気信号に変換して、その電気信号に基づいて転舵機構4を駆動させることにより車両2の操舵制御を行う。
【0025】
ステアリングホイール5は、車室内の運転席前部に設けられ、運転者によって回転操作される。ステアリングホイール5は、ステアリングシャフト6の一端に回転可能に支持される。
【0026】
ステアリング制御装置1は、モータ10と、操舵角センサ11と、車速センサ12と、シフトレンジセンサ13と、フットブレーキスイッチ14と、イグニッションスイッチ15と、計時部16と、制御部20と、を備える。
【0027】
モータ10は、出力軸がステアリングシャフト6の他端に連結される。モータ10は、後述のように制御部20によって動作を制御され、ステアリングホイール5に対してトルクを付与する。すなわち、モータ10は、ステアリングホイール5に対してトルクを付与するトルク発生手段を構成する。
【0028】
操舵角センサ11は、車輪7付近に設置された図示しないCCD(Charge Coupled Device)を備え、ステアリングホイール5の回転操作に応じて変動する車輪7の操舵角θを、CCDカメラが撮像した車輪7の画像を処理することで逐次検出し、検出した操舵角θを制御部20へ出力する。すなわち、操舵角センサ11は、ステアリングホイール5の回転操作に応じて変動する車両2の操舵角を逐次検出する操舵角検出手段を構成する。操舵角センサ11は、車両2の直進走行状態において、操舵角θを±0°と検出するように設定されている。また、操舵角センサ11は、運転者によってステアリングホイール5が左方向に回転操作され、車輪7が左方向に回転したときはマイナスの値の操舵角θを検出し、ステアリングホイール5が右方向に回転操作されたときはプラスの値の操舵角θを検出し、制御部20へ出力する。
【0029】
車速センサ12は、ドライブシャフト(図示省略)の回転数を電気的に検出することで車両2の速度(車速V)を逐次検出し、検出した車速Vを制御部20へ出力する。
【0030】
シフトレンジセンサ13は、車室内に設けられて運転者によって操作されるシフトレバー(図示省略)の選択位置を検出するセンサである。シフトレバーは、車両2を前進走行させる際に選択されるDレンジ、後退走行させる際に選択されるRレンジ、エンジンからの動力を非伝達にする際に選択されるNレンジ(ニュートラル位置)、及び駐車する場合などのように、車両2を停止状態に保持する際に選択されるPレンジの4つの位置が選択可能となっている。シフトレンジセンサ13は、運転者によって上記4つの位置のいずれかが選択されたとき、選択に応じて、Dレンジ信号、Rレンジ信号、Nレンジ信号、Pレンジ信号のいずれかを制御部20に出力する。
【0031】
フットブレーキスイッチ14は、運転者によって操作されるフットブレーキペダル(図示省略)の操作の有無を検出するものであり、フットブレーキペダルが操作されている場合にオン状態に、フットブレーキペダルの操作が解除されている場合にはオフ状態に設定される。フットブレーキスイッチ14は、オフ状態からオン状態に移行するとき、フットブレーキオン信号を制御部20に出力し、また、オン状態からオフ状態に移行するとき、フットブレーキオフ信号を制御部20に出力する。
【0032】
イグニッションスイッチ15は、車室内の運転席前部に設けられ、「OFF」、「ACC」、「ON」及び「START」のいずれかの位置に切り替えられる。イグニッションスイッチ15は、「START」位置に切り替えられたとき、スタータ信号を制御部20へ出力する。また、イグニッションスイッチ15は、「OFF」位置に切り替えられたとき、オフ信号を制御部20へ出力する。
【0033】
計時部16は、後述するトルク制御部23が、トルク制御処理を開始した時点からの経過時間を計時し、逐次これを制御部20に出力する。
【0034】
制御部20は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)と、を備える。
【0035】
ROM及びRAMは、制御部20の記憶部21を構成し、ROMは、CPUによって読み出される種々のプログラム(発進判定プログラム及びトルク制御プログラムを含む)や種々のデータ(後述する所定速度Vaや所定時間や操舵角θと中立方向トルクのトルク量Tとの対応関係などを含む)を予め記憶している。なお、ROMに記憶される種々のデータは、実験やシミュレーションなどによって得られた測定値や理論値に基づいて設定される。また、これらのデータは、各プログラムに含まれた状態で記憶されてもよい。
【0036】
RAMには、制御部20が操舵角センサ11及び車速センサ12から受信した各検出結果を記憶するデータ記憶領域が予め設定されている。データ記憶領域は、記憶可能なデータ数の上限(上限データ数)が予め設定された領域であり、記憶されているデータ数が上限データに達すると、制御部20は、新規の検出結果を記憶する際に、既に記憶されている検出結果のうち最初に記憶された最も古いものを削除し、新規の検出結果を記憶させる。上限データ数は、後述する制御部が実行する発進判定処理及びトルク制御処理が確実に実行可能な数に設定されている。
【0037】
また、RAMには、フラグ設定領域が設定されている。フラグ設定領域には、フットブレーキフラグ設定領域及びシフトレバーフラグ設定領域が設けられている。フットブレーキフラグは、制御部20がフットブレーキスイッチ14からフットブレーキオン信号を受信するとオンに設定され、また、フットブレーキオフ信号を受信するとオフに設定される。シフトレバーフラグ設定領域には、Dレンジフラグ設定領域、Rレンジフラグ設定領域、Nレンジフラグ設定領域、Pレンジフラグ設定領域が設けられている。制御部20がシフトレンジセンサ13からDレンジ信号、Rレンジ信号、Nレンジ信号、Pレンジ信号のいずれかを受信すると、受信した信号に応じたフラグをオンに設定し、その他のフラグをオフに設定する。
【0038】
CPUは、発進判定プログラムに従って発進判定処理を実行する発進判定部22、トルク制御プログラムに従ってトルク制御処理を実行するトルク制御部23として機能する。
【0039】
発進判定部22は、制御部20がイグニッションスイッチ15からスタータ信号を受信すると車両2が発進直後であるか否かを判定する発進判定処理を実行する。この発進判定処理において、発進判定部22は、記憶部21のシフトレバーフラグ設定領域を参照し、シフトレバーがNレンジ又はPレンジ以外に設定されているか否かを判定する。また、フットブレーキフラグ設定領域を参照し、フットブレーキがオフ状態であるか否かを判定する。また、車速センサ12が検出した現在の車速V(記憶部21に記憶された車速センサ12の最新の検出値)を記憶部21から読み出し、車速Vが時速0キロメートル(以下、km/hと記載する)であるか否かを判定し、0km/hではないときは、さらに車速Vが予め設定された所定速度Va未満であるか否かを判定する。シフトレバーがNレンジ又はPレンジ以外(Dレンジ又はRレンジ)に設定され、フットブレーキがオフ状態であり、車速Vが0km/hを超えて所定速度Va未満であるとき、発進判定部22は、車両2が発進直後であると判定する。所定速度Vaは、記憶部21に予め記憶されており、上記判定の際に、発進判定部22によって記憶部21から読み出される。なお、所定速度Vaは、発進判定プログラム内に予め設定されてもよい。
【0040】
車両2が発進直後であると発進判定部22が判定すると、トルク制御部23はトルク制御処理を開始する。トルク制御部23は、現在の操舵角θ(記憶部21に記憶された操舵角センサ11の最新の検出値)を記憶部21から読み出し、読み出した操舵角θに対応する中立方向トルクのトルク量Tを、予め設定された操舵角θとトルク量Tとの対応関係(図4に示す)に基づいて決定する。中立方向トルクとは、ステアリングホイール5に対して中立位置へ向かって付与されるトルクである。操舵角θとトルク量Tとの対応関係は、操舵角θの絶対値(│θ│)が所定角度θa未満の場合は中立方向トルクを発生せず(T=0)、操舵角θの絶対値が所定角度θa以上の場合は一定の所定トルク量Taを発生する(T=Ta)ように設定されている。この対応関係は、演算式として設定されてもよく、マップやテーブルとして設定されてもよい。本実施形態では、所定角度θaと所定トルク量Taとが設定されている。トルク制御部23は、読み出した操舵角θの絶対値が所定角度θa以上か否かを判定し、操舵角θの絶対値が所定角度θa以上であると判定すると、トルク量Tを所定トルク量Taに決定し、操舵角θが所定角度θa未満であると判定すると、トルク量Tを「0」に決定する。トルク量Tを決定したトルク制御部23は、決定したトルク量Tの中立方向トルクを発生させるようモータ10にトルク発生指示信号を出力する。トルク発生指示信号には、中立方向トルクを発生させる方向の情報を含む。トルク制御部23は、中立方向トルクを発生させる方向を、記憶部21に記憶された現在の操舵角θに基づいて決定する。すなわち、トルク制御部23は、操舵角θがマイナスの値を示しているとき(車輪7が左方向に回転しているとき)は、ステアリングホイール5を右方向に回転させる中立方向トルクを発生させる発生指示信号を出力し、プラスの値を示しているとき(車輪7が右方向に回転しているとき)は、ステアリングホイール5を左方向に回転させるトルク発生指示信号を出力する。
【0041】
また、トルク制御部23は、モータ10を制御して中立方向トルクを発生させる本処理を、車両2の発進直後の所定時間に限定して実行する。すなわち、トルク制御部23は、計時部16が計時する経過時間が所定時間に達するまでの期間内では、車速Vが所定速度Vaに達するまで、トルク量Taの中立方向トルクを継続して発生させる。一方、計時部16が計時する経過時間が所定時間に達するか、或いは車速Vが所定速度Vaに達すると、トルク制御部23は、中立方向トルクの発生を終了する。なお、操舵角θとトルク量Tとの対応関係(演算式、マップ、テーブル、または所定角度θa及び所定トルク量Ta)、所定時間及び所定速度Vaなどの情報は、記憶部21からトルク制御部23によって随時読み出される。また、これらの情報は、トルク制御プログラム内に予め設定されてもよい。
【0042】
次に本実施形態におけるステアリング制御装置1の発進判定処理について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0043】
発進判定部22は、制御部20がイグニッションスイッチ15からスタータ信号を受信すると車両2が発進直後であるか否かを判定する発進判定処理を実行する。図2のステップS1において、発進判定部22は、記憶部21のシフトレバーフラグ設定領域を参照し、シフトレバーの選択位置としてNレンジ又はPレンジ以外が選択されているか否かを判定する。シフトレバーの選択位置としてNレンジ又はPレンジ以外(Dレンジ又はRレンジ)が選択されていると判定した場合(ステップS1:YES)は、ステップS2に移行する。シフトレバーの選択位置としてNレンジ又はPレンジが選択されていると判定した場合(ステップS1:NO)は、本処理を終了する。
【0044】
ステップS2において、発進判定部22は、記憶部21のフットブレーキフラグ設定領域を参照し、フットブレーキがオフ状態であるか否かを判定する。フットブレーキがオフ状態であると判定した場合(ステップS2:YES)は、ステップS3に移行する。フットブレーキがオン状態であると判定した場合(ステップS2:NO)は、本処理を終了する。
【0045】
ステップS3において、発進判定部22は、現在の車速Vを記憶部21から読み出し、車速Vが0km/hか否かを判定する。車速Vが0km/hであると判定した場合(ステップS3:YES)は、本処理を終了する。車速Vが0km/hでないと判定した場合(ステップS3:NO)は、ステップS4に移行する。
【0046】
ステップS4において、発進判定部22は、現在の車速Vが所定速度Va未満であるか否かを判定する。車速Vが所定速度Va未満である判定した場合(ステップS4:YES)は、ステップS5に移行する。車速Vが所定速度Va以上であると判定した場合(ステップS4:YES)は、本処理を終了する。
【0047】
ステップS5において、発進判定部22は、車両2が発進直後であると判定し、本処理を終了する。
【0048】
なお、発進判定部22は、制御部20がイグニッションスイッチ15からオフ信号を受信するまで、所定時間毎に本発進判定処理を繰り返す。
【0049】
次に、本実施形態におけるステアリング制御装置1のトルク制御処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0050】
車両2が発進直後であると発進判定部22が判定すると、トルク制御部23は、トルク制御処理を開始する。図3のステップS11において、トルク制御部23は、現在の操舵角θを読み出し、この操舵角θが予め設定された所定角度θa以上か否かを判定する。操舵角θが所定角度θa以上である判定した場合は、トルク制御部23は、ステアリングホイール5の中立位置へ向かって作用する中立方向トルクのトルク量Tを所定トルク量Taに決定し、反対に、操舵角θが所定角度θa未満である判定した場合は、中立方向トルクのトルク量Tを「0」に決定して、ステップS12に移行する。
【0051】
ステップS12において、トルク制御部23は、決定したトルク量Tの中立方向トルクを発生させるようモータ10にトルク発生指示信号を出力し、ステップS13に移行する。
【0052】
ステップS13において、計時部16から出力された本処理の開始時点からの経過時間に基づき、経過時間が所定時間を経過したか否かを判定する。所定時間を経過したと判定した場合(ステップS13:YES)は、本処理を終了する。所定時間内と判定した場合(ステップS13:NO)は、ステップS14に移行する。
【0053】
ステップS14において、トルク制御部23は、現在の車速Vを記憶部21から読み出し、車速Vが所定速度Va未満であるか否かを判定する。車速Vが所定速度Va未満と判定した場合(ステップS14:YES)は、ステップS11に移行する。一方、車速Vが所定速度Va以上と判定した場合(ステップS14:NO)は、本処理を終了する。
【0054】
本実施形態によれば、車両2が発進直後であると発進判定部22が判定すると、モータ10は、中立位置へ向かって作用する中立方向トルクのトルク量Tを操舵角θに基づいて決定し、決定したトルク量Tの中立方向トルクをモータ10に発生させる。すなわち、車両2の発進直後において、操舵角θに応じたトルク量Tの中立方向トルクがステアリングホイール5に付与され、中立方向へステアリングホイール5が回転する。
【0055】
したがって、車輪7が非直進方向を向いていることを認識せずに、運転者が車両2を発進させた場合であっても、運転者からの操作を待たずにステアリングホイール5が中立方向へ回転し、車両2が直進走行状態に近づく。このため、運転者が、車輪7の方向を適正に認識せず、前方または後方に注意を集中させて車両2を発進した場合であっても、周囲との意図しない接触や衝突が発生し難く、発進直後の周囲との接触や衝突の発生を防止することができる。
【0056】
また、車両2の発進直後に運転者が積極的にステアリングホイール5を中立位置へ回転操作する場合には、発生した中立方向トルクによって回転操作が補助されるので、車両2を直進する状態に復帰させ易くなる。このため、比較的早く車両2を直進走行状態に復帰させることができる。
【0057】
また、車輪2が非直進方向を向いた状態で車両2を発進させた際のセルフアライニングトルクの発生は、運転者が通常体感していることであるため、発進直後のステアリングホイール5に対する中立方向トルクの付与は、運転者に違和感を与えることがなく、良好な操作性が維持される。
【0058】
さらに、車両2が発進する前のステアリングホイール5は、車両2の駐停車時の回転位置に維持されるので、運転者は、車両2の発進時にステアリングホイールを把持することによって、ステアリングホイール5の中立方向への回転を阻止することができる。したがって、ステアリングホイール5を中立位置から所望の方向へ意図的に回転させ、発進に好適な角度で車輪7を停止させて車両2を駐停車した運転者は、事前のステアリングホイール5の操作を無駄にすることなく、車両2を発進させることができる。
【0059】
以上のように、本実施形態によれば、車両2の発進直後のステアリング操作性を向上させることができる。
【0060】
なお、操舵角θとトルク量Tとの対応関係は、上記関係(図4参照)に限定されるものではなく、操舵角θに対してトルク量Tが一意に対応付けられるものであれば、任意に設定可能である。例えば、図5に示すように、操舵角θの絶対値(│θ│)が所定角度θa以上の場合に、一定の所定トルク量Taではなく、操舵角θと所定角度θaとの差の絶対値(│θ−θa│)に比例して増大するトルク量Tを発生するように、操舵角θとトルク量Tとの対応関係を設定してもよい。また、図6に示すように、トルク量Tを操舵角θの二次関数として設定してもよい。
【0061】
次に本発明の第2の実施形態を図1及び図3を参照して説明する。第1の実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0062】
本実施形態において、トルク制御部23は、トルク制御処理において、現在の操舵角θを記憶部21から読み出し、ステアリングホイール5が中立位置にあるか否か、すなわち操舵角θが0度であるか否かを判定する。0度であると判定した場合は、ステアリングホイール5が中立位置にあるので、トルク制御部23は、中立方向トルクのトルク量Tを「0」に決定する。0度でないと判定した場合は、トルク制御部23は、現在の車速Vを記憶部21から読み出し、読み出した車速Vに対応する中立方向トルクのトルク量Tを、予め設定された車速Vとトルク量Tとの対応関係(図7に示す)に基づいて決定する。車速Vとトルク量Tとの対応関係は、車両Vが所定速度Vb(発進判定処理における所定速度Vaと異なる速度)以上の場合は中立方向トルクを発生せず(T=0)、車速Vが所定速度Vb未満の場合は一定の所定トルク量Tbを発生する(T=Tb)ように設定されている。この対応関係は、演算式として設定されてもよく、マップやテーブルとして設定されてもよい。本実施形態では、所定速度Vbと所定トルク量Tbとが設定されている。トルク制御部23は、読み出した車速Vが所定速度Vb以上か否かを判定し、車速Vが所定速度Vb未満であると判定すると、トルク量Tを所定トルク量Tbに決定し、車速Vが所定速度Vb以上であると判定すると、トルク量Tを「0」に決定する。
【0063】
次に、本実施形態におけるステアリング制御装置1のトルク制御処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。ステップS12〜ステップS14については、第1の実施形態の同ステップと同様のため説明を省略する。
【0064】
トルク制御部23は、車両2が発進直後であると発進判定部22が判定すると、トルク制御処理を開始する。図3のステップS11において、トルク制御部23は、現在の操舵角θを記憶部21から読み出し、ステアリングホイール5が中立位置にあるか否か、すなわち操舵角θが0度であるか否かを判定する。0度であると判定した場合は、ステアリングホイール5が中立位置にあるので、トルク制御部23は、中立方向トルクのトルク量Tを「0」に決定する。0度でないと判定した場合は、現在の車速Vを記憶部21から読み出し、車速Vが所定速度Vb未満であると判定した場合は、中立方向トルクのトルク量Tを予め設定した所定トルク量Tbに決定し、一方、所定速度Vb以上である判定した場合は、中立方向トルクのトルク量Tを「0」に決定し、ステップS12に移行する。
【0065】
本実施形態によれば、トルク制御部23は、車両2が発進直後であると発進判定部22が判定したとき、車速Vに基づいて、中立位置へ向かって作用する中立方向トルクのトルク量Tを決定し、決定したトルク量Tの中立方向トルクをモータ10に発生させる。このため、車両2の発進直後において、車速Vに応じたトルク量Tの中立方向トルクがステアリングホイール5に付与される。したがって、上記第1の実施形態と同様に、車両2の発進直後のステアリング操作性を向上させることができる。
【0066】
なお、車速Vとトルク量Tとの対応関係は、上記関係(図7参照)に限定されるものではなく、車速Vに対してトルク量Tが一意に対応付けられるものであれば、任意に設定可能である。例えば、図8に示すように、車速Vが所定速度Vb未満の場合に、一定の所定トルク量Tbではなく、車速Vに比例して減少するトルク量Tを発生するように、車速Vとトルク量Tとの対応関係を設定してもよい。また、図9に示すように、トルク量Tを車速Vと所定の関数に基づき、車速Vの増加に応じて漸減するように設定してもよい。
【0067】
また、所定速度Vbを上述の発進判定処理やトルク制御処理のステップS14における所定速度Vaとを同じ速度としてもよい。この場合、発進判定部22が車両2が発進直後であると判定した場合、車速Vは所定速度Va,Vb未満であるため、トルク制御処理は、ステアリングホイール5が中立位置にあるか否かのみを判定することで、トルク量Tを所定トルク量Tbに決定することができる。また、この場合、トルク制御処理のステップS14(図3参照)を省略してもよい。車速Vが所定速度Va,Vbに達した以降は、上述のようにステップS11でトルク量Tを「0」に決定するので、ステップS14を省略しても、車速Vが所定速度Va,Vbに達した以降(すなわち、車両2が発進直後でない場合)に中立方向トルクを発生させることはない。
【0068】
次に本発明の第3の実施形態について説明する。なお、本実施形態の構成のうち第1の実施形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0069】
本実施形態の記憶部21(図1参照)は、CPUによって読み出される回転方向検知プログラムを予め記憶しており、CPUは回転方向検知プログラムに従って回転方向検知処理を実行する回転方向検知部24(図1中に二点鎖線で示す)として機能する。
【0070】
回転方向検知部24は、回転方向検知処理を実行する。具体的には、回転方向検知部24は、記憶部21に記憶されている操舵角センサ11が検出した最新の操舵角θと最新の一つ前の操舵角θbを読み出し、ステアリングホイール5の回転方向を検知する。例えば、最新の一つ前の操舵角θbが+45°で、最新の操舵角θが60度の場合、車輪7が車両2の直進に対応する中立位置方向から離れる方向に回転しているので、それに伴ってステアリングホイール5も中立位置方向から離れる方向に回転していると検知する。一方、最新の一つ前の操舵角θbが45度で、最新の操舵角θが30度の場合、車輪7が車両2の直進に対応する中立位置方向に回転しているので、それに伴ってステアリングホイール5も中立位置方向に回転していると検知する。また、回転方向検知部24は、最新の一つ前の操舵角θbと最新の操舵角θが等しい場合、車輪7が同じ操舵角で維持されているので、ステアリングホイール5が同じ位置で維持されていると検知する。
【0071】
トルク制御部23は、トルク制御処理において、トルク発生信号をモータ10に送信する前に、回転方向検知部24の検知結果に基づいて、ステアリングホイール5が中立位置方向から離れる方向に回転しているか否かを判定する。中立位置方向から離れる方向に回転していると判定した場合、トルク制御部23は、トルク発生信号をモータ10に送信しないで、トルク制御処理を終了する。すなわち、中立方向トルクをモータ10に発生させない。一方、ステアリングホイール5が中立位置方向に回転している又は同じ位置に維持され、回転していないと判定した場合、決定したトルク量Tの中立方向トルクを発生させるようモータ10にトルク発生指示信号を出力する。
【0072】
次に本実施形態におけるトルク制御処理について、図10のフローチャートを参照して説明する。なお、ステップS21及びステップS23〜ステップS25については、第1の実施形態のトルク制御処理(図3参照)のステップS11〜ステップS14と同様のため説明を省略する。
【0073】
S22において、トルク制御部23は、回転方向検知部24の検知結果が、ステアリングホイール5が中立位置方向から離れる方向に回転しているか否かを判定する。中立位置方向から離れる方向に回転していると判定した場合(ステップS22:YES)は、トルク制御部23は、本処理を終了し、中立方向トルクをモータ10に発生させない。ステアリングホイール5が中立位置方向に回転している又は同じ位置に維持され、回転していないと判定した場合(ステップS22:NO)は、ステップS23に移行する。
【0074】
本実施形態では、車両2の発進直後に運転者がステアリングホイール5を中立位置から離れる方向に回転操作すると、トルク制御部23は、中立方向トルクをモータ10に発生させない。したがって、運転者のステアリング操作に対して抵抗力となる中立方向トルクがステアリングホイール5に作用しないので、車両2の発進時のステアリング操作性がさらに向上する。
【0075】
また、発車直後にステアリングホイール5が同じ位置に維持され、回転していない場合にも中立方向トルクをモータ10に発生させるので、ステアリングホイール5を把持し、同じ位置に維持している運転者に、付与される中立方向トルクによって、車両2が中立位置にないことを認識させることができる。
【0076】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明に限定されることはない。 例えば、本実施形態では、操舵角センサ11が検出した車輪7の操舵角θに基づいて、トルク制御部23は中立方向トルクのトルク量Tを決定し、また、回転方向検知部24は回転方向を検知したが、ステアリングシャフト6に設けられた光学式のロータリーエンコーダ、又は、ギアなどを介した回転式可変抵抗器を操舵角センサ11として用いて、検出結果であるステアリングシャフト6の操舵角に基づいて、トルク制御部23は中立方向トルクのトルク量Tを決定してもよいし、また、回転方向検知部24は回転方向を検知してもよい。同様に、ステアリングコラムに取り付けたロータリーエンコーダを操舵角センサ11として用いて、検出結果であるステアリングホイールの操舵角に基づいて、トルク制御部23は中立方向トルクのトルク量Tを決定してもよいし、また、回転方向検知部24は回転方向を検知してもよい。
【0077】
また、上記操舵角θとトルク量Tとの対応関係や車速Vとトルク量Tとの対応関係に代えて、操舵角θ及び車速Vとトルク量Tとの対応関係を設定してもよい。この場合、トルク制御部23は、操舵角θと車速Vとに基づいてトルク量Tを決定する。操舵角θ及び車速Vとトルク量Tとの対応関係は、例えば、図11に示すように、操舵角θと車速Vとトルク量Tとによって規定される3次元空間内に所定の平面として設定することができる。図11に示す対応関係は、操舵角θの絶対値(│θ│)が所定角度θa以上であって所定の最大角度θc未満であり、車速Vが所定速度Va未満である場合に、操舵角θと所定角度θaとの差の絶対値(│θ−θa│)に比例してトルク量Tが増大し、また、車速Vに比例してトルク量Tが減少するように設定されている。なお、図11では、操舵角θが正の場合のみを示し、操舵角θが負の場合を省略している。
【0078】
また、ステアリング制御装置1に、運転者がステアリングホイール5を回転させるために入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出部(例えば、磁歪式操舵トルクセンサ)を設けてもよい。この場合、トルク制御部23は、操舵トルク検出部によって検出された操舵トルクが予め設定されている所定トルク量以上の場合、中立方向へのトルクをモータ10に発生させないようにしてもよい。
【0079】
また、ステアリング制御装置1を、運転者のステアリングホイール5の回転操作に応じて、運転車の操作力を補助するアシストトルクをモータ10に発生させるパワーステアリングシステムと併用してもよい。この場合、ステアリング制御装置1は、パワーステアリングシステムのアシストトルクに付加する追加アシストトルクのトルク量を決定し、アシストトルクに決定したトルク量の追加アシストトルクを付加したトルクをモータ10に発生させる。
【0080】
また、本実施形態の発進判定部22は、シフトレバーの位置、ブレーキペダルの操作の有無、車速Vに基づいて、車両2が発車直後か否かを判定したが、これらのいずれか一つに基づいて、判定をしてもよい。
【0081】
また、ステアリング制御装置1に、エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出部とアクセルペダルが操作されているか否かを検知するアクセルペダルスイッチを設け、発進判定部22は、車両2が発進直後であるか否かの判定を、エンジン回転数検出部が検出するエンジン回転数と、アクセルペダルスイッチが検出したアクセルペダルの操作の有無とに基づいて、車両2が発進直後であるか否かを判定してもよい(例えば、エンジン回転数が所定回転数以下の場合は、発車直後と判定し、また、アクセルペダル操作が有れば、発進直後と判定する)。
【0082】
また、本実施形態では、ステアバイワイヤシステムを採用した車両2にステアリング制御装置1を搭載した例を説明したが、ステアリング制御装置を操舵機構3と転舵機構4とが機械的に連続している車両に搭載してもよい。
【0083】
すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のステアリング制御装置は、ステアリングホイールを有する車両に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1:ステアリング制御装置
2:車両
3:操舵機構
4:転舵機構
5:ステアリングホイール
6:ステアリングシャフト
7:車輪
10:モータ(トルク発生手段)
11:操舵角センサ(操舵角検出手段)
12:車速センサ(車速検出手段)
13:シフトレンジセンサ
14:フットブレーキスイッチ
15:イグニッションスイッチ
16:計時部
20:制御部
21:記憶部
22:発進判定部(発進判定手段)
23:トルク制御部(トルク制御手段)
24:回転方向検知部(回転方向検知手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の直進に対応する中立位置を含む範囲で回転操作されるステアリングホイールに対してトルクを付与するトルク発生手段と、
前記ステアリングホイールの回転操作に応じて変動する前記車両の操舵角を検出する操舵角検出手段と、
前記車両が発進直後であるか否かを判定する発進判定手段と、
前記車両が発進直後であると前記発進判定手段が判定したとき、前記操舵角検出手段が検出した操舵角に基づいて、前記中立位置へ向かって作用する中立方向トルクのトルク量を決定し、決定したトルク量の中立方向トルクを前記トルク発生手段に発生させるトルク制御手段と、を備えた
ことを特徴とするステアリング制御装置。
【請求項2】
車両の直進に対応する中立位置を含む範囲で回転操作されるステアリングホイールに対してトルクを付与するトルク発生手段と、
前記車両の車速を検出する車速検出手段と、
前記車両が発進直後であるか否かを判定する発進判定手段と、
前記車両が発進直後であると前記発進判定手段が判定したとき、前記車速検出手段が検出した車速に基づいて、前記中立位置へ向かって作用する中立方向トルクのトルク量を決定し、決定したトルク量の中立方向トルクを前記トルク発生手段に発生させるトルク制御手段と、を備えた
ことを特徴とするステアリング制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のステアリング制御装置であって、
前記ステアリングホイールが前記中立位置から離れる方向へ回転しているか否かを検知する回転方向検知手段を備え、
前記車両が発進直後であると前記発進判定手段が判定し、且つ前記中立位置から離れる方向へ前記ステアリングホイールが回転していると前記回転方向検知手段が検知したとき、前記トルク制御手段は、前記中立方向トルクを前記トルク発生手段に発生させない
ことを特徴とするステアリング制御装置。
【請求項1】
車両の直進に対応する中立位置を含む範囲で回転操作されるステアリングホイールに対してトルクを付与するトルク発生手段と、
前記ステアリングホイールの回転操作に応じて変動する前記車両の操舵角を検出する操舵角検出手段と、
前記車両が発進直後であるか否かを判定する発進判定手段と、
前記車両が発進直後であると前記発進判定手段が判定したとき、前記操舵角検出手段が検出した操舵角に基づいて、前記中立位置へ向かって作用する中立方向トルクのトルク量を決定し、決定したトルク量の中立方向トルクを前記トルク発生手段に発生させるトルク制御手段と、を備えた
ことを特徴とするステアリング制御装置。
【請求項2】
車両の直進に対応する中立位置を含む範囲で回転操作されるステアリングホイールに対してトルクを付与するトルク発生手段と、
前記車両の車速を検出する車速検出手段と、
前記車両が発進直後であるか否かを判定する発進判定手段と、
前記車両が発進直後であると前記発進判定手段が判定したとき、前記車速検出手段が検出した車速に基づいて、前記中立位置へ向かって作用する中立方向トルクのトルク量を決定し、決定したトルク量の中立方向トルクを前記トルク発生手段に発生させるトルク制御手段と、を備えた
ことを特徴とするステアリング制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のステアリング制御装置であって、
前記ステアリングホイールが前記中立位置から離れる方向へ回転しているか否かを検知する回転方向検知手段を備え、
前記車両が発進直後であると前記発進判定手段が判定し、且つ前記中立位置から離れる方向へ前記ステアリングホイールが回転していると前記回転方向検知手段が検知したとき、前記トルク制御手段は、前記中立方向トルクを前記トルク発生手段に発生させない
ことを特徴とするステアリング制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−224248(P2012−224248A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94358(P2011−94358)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]