説明

ステアリング装置の支持構造

【課題】ステアリングギヤボックスをより確実に搭乗者から遠ざけることでステアリングホイールが搭乗者の体に当たる衝撃をより緩和する構造を提供。
【解決手段】フロントサスペンションフレーム20にステアリング装置40のステアリングギヤボックス41を支持するためのステアリング支持部33が形成されるステアリング装置40の支持構造において、フロントサスペンションフレーム20は、フロントサスペンションフレーム20前部に設けられ、車輌上方に起立して上端部21dがサイドメンバ10に取付けられる起立部21aと、起立部21aの下端から車輌後方に向かって延設され、ブラケット33が設けられると共に後端部がサイドメンバ10に取付けられる水平部21bとを有して構成されており、水平部21bのステアリング支持部33より前方の位置には、車輌前突時に下方へ折れ曲がるように形成された曲げ変形許容部22とが設けられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌に搭載されるステアリング装置の支持構造に関し、特に前面衝突の際にステアリングホイールによる搭乗者への衝撃を緩和するものに関する。
【背景技術】
【0002】
車輌が前面衝突する際にステアリングホイールが搭乗者の体に当たる衝撃を緩和する引き込み式のステアリング装置が知られている(例えば特許文献1参照)。このステアリング装置の支持構造では、車輌のボディフレームの下方にサブフレームが配設されている。サブフレームの前端は前上がりの傾斜部を形成している。傾斜部の前端部が前記ボディフレームの前端部に接続されている。傾斜部の中央にはステアリングギヤが取付けられている。サブフレームの前記傾斜部より後方には曲げ変形許容部が形成されている。
上述したステアリング装置の支持構造では、前面衝突の際にボディフレームの前端部がバンパから力を受けて座屈変形する。これと同時に傾斜部の前端部に後方の力が働く。これに伴って、サブフレームの傾斜部が起立するように曲げ変形許容部が変形する。こうして傾斜部に取付けられたステアリング装置の下端が下方に引き込まれる。以上により搭乗者への衝撃が緩和される。
【特許文献1】特開平8−156827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したステアリング装置の支持構造にあっては次のような問題があった。すなわち、ステアリングギヤは、サブフレームの前上がりの傾斜部中央に取付けられているため、傾斜部が起立する曲げ変形に伴って後方に移動する。そのためステアリングギヤが搭乗者から遠ざかる距離を十分にとることができなかった。
【0004】
また通常、搭乗者がステアリングホイールに衝突した場合、ステアリング装置が車体側から離脱して車両前方側に移動するように構成されているが、上述したステアリング装置の構造では、ステアリングシャフト自体がステアリング装置の移動を邪魔するおそれがあり、搭乗者に対する衝撃を十分に緩和できるものではない。
そこで本発明は、ステアリングギヤをより確実に搭乗者から遠ざける構成とすることで車輌の衝突によって搭乗者がステアリングホイールに衝突した際に衝撃を十分に緩和できるステアリング装置の支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決する第1の発明に係るステアリング装置の支持構造は、車体フレームの下方に設けられてフロントサスペンションを支持するフロントサスペンションフレーム
にステアリング装置のステアリングギヤを支持するためのステアリング支持部が形成されるステアリング装置の支持構造において、前記フロントサスペンションフレームは、フロントサスペンションフレーム前部に設けられ、車輌上方に起立して上端部が前記車体フレームに取付けられる起立部と、前記起立部の下端から車輌後方に向かって延設され、前記ステアリング支持部が設けられると共に後端部が前記車体フレームに取付けられる水平部とを有して構成されており、さらに、前記起立部と前記水平部との間の屈曲部に同屈曲部の変形を防止するための補強部材が設けられると共に、前記水平部の前記ステアリング支持部より前方の位置には、車輌前突時に下方へ折れ曲がるように形成された曲げ変形許容部とが設けられることを特徴とする。
上記の課題を解決する第2の発明に係るステアリング装置の支持構造は、前記起立部の下端前方に、衝撃力を吸収するクラッシュボックスを備えたことを特徴とする。
上記の課題を解決する第3の発明に係るステアリング装置の支持構造は、前記曲げ変形許容部は、前記水平部の一部が屈曲されて形成されていることを特徴とする。
上記の課題を解決する第4の発明に係るステアリング装置の支持構造は、前記起立部は、前記上端部が取付部材を介して前記車体フレームに取付けられており、該上端部と前記車体フレームとの間には隙間が設けられることを特徴とする。
上記の課題を解決する第5の発明に係るステアリング装置の支持構造は、ステアリングホイールと前記ステアリングギヤとを繋ぐステアリングシャフトを有し、該ステアリングシャフトは、その回転軸方向に引っ張られることにより前記ステアリングホイール側と前記ステアリングギヤ側に分離する分離部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、フロントサスペンションフレームの前部を車輌上方に起立させた起立部と水平部との間の屈曲部に補強部材を設けるとともに、水平部に衝突時に下方へ折れ曲がるように形成された曲げ変形許容部を設けたことにより、前面衝突時に起立部が屈曲部で折れずに衝突時の入力を水平部の曲げ変形許容部まで伝達できるので、積極的にフロントサスペンションフレームを曲げ変形許容部で下方に折り曲げることができ、ステアリング支持部を確実に下方に移動することができる。この移動によってステアリング装置に下方への引張力が働くのでステアリング装置が搭乗者側へ後退することを防ぐことができる。しかも、ステアリング支持部が曲げ変形許容部より後方に設けられているため全体としてステアリング支持部が移動する距離を大きくすることができ、前面衝突時に搭乗者が受ける衝撃を確実に緩和することができる。
請求項2に記載の発明によれば、起立部の下端前方にクラッシュボックスを設けたことにより、下端の衝撃量を緩和するとともに、水平部の座屈変形を防止して、確実に曲げ変形許容部の曲げ変形を発生させることができる。
請求項3に記載の発明によれば、曲げ変形許容部を水平部の一部を屈曲させることで形成したので、単純な構成でフロントサスペンションフレームを下方に折り曲げることが可能となる。
請求項4に記載の発明によれば、フロントサスペンションフレームの起立部の上端部と車体フレームとの間に隙間を設けたことにより、前面衝突時の車体フレームの座屈変形が起立部によって邪魔されず車体フレームのエネルギー吸収がスムーズに行われる。また、起立部上端部が後方に倒れ易くなっているので、曲げ変形許容部を下方に変形させるためのモーメントを積極的に発生させることができる。
請求項5に記載の発明によれば、ステアリングシャフトに分離部を設けたことにより、前面衝突時にステアリング装置をステアリングハンドル側とステアリングギヤ側とに積極的に分離することができる。要するに衝突時の衝撃がステアリングハンドル側に伝達しないように断絶することでステアリング装置が搭乗者側へ後退することをより確実に防ぐことができる。よって搭乗者への衝撃を確実に軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明の第1実施形態にかかるステアリング装置の支持構造を図1及び図2に従って説明する。なお、図1及び図2において、本発明の主要部分であるフロントサスペンションフレーム20以外の周辺部材については適宜省略して示している。
本実施形態にかかるステアリング装置の支持構造では、車輌1の左右に一対に設けられて車体の骨格を形成するサイドメンバ10(左側のみ図1に図示)の下方にサスペンションを支持するフロントサスペンションフレーム20が配設されている。フロントサスペンションフレーム20には、車輪3を支持するフロントサスペンションのロアアーム5とステアリング装置40のステアリングギヤボックス41が取付けられる。
【0008】
サイドメンバ10は、本発明における車体フレームの一例であり、車輌1の前端に形成されたバンパ2のすぐ後ろ側にその前端が配されるように、車輌1の前後方向に沿って延設されている。サイドメンバ10は、前部が略水平に形成され(水平部11)、ダッシュパネル4前方で斜め下方に傾斜するよう屈曲された(中間部13)後、車両後方に向かって略水平に延ばされている(水平部12)なお、左右のサイドメンバ10は、車幅方向に延びるクロスメンバ(不図示)により連結されている。
【0009】
フロントサスペンションフレーム20はパイプ状の部材で形成されており、車輌1の左右に一対に設けられたサイド部材21と、左右両サイド部材21間に車輌幅方向に渡されるクロス部材30、31とで構成されている。フロントサスペンションフレーム20のサイド部材21は、前部に設けられて車輌上方に起立した起立部21aと、起立部21aの下端から後方に水平に延設された水平部21bとを備えており、起立部21aの上端部と水平部21bの後端部がそれぞれサイドメンバ10に取付けられる。
【0010】
サイド部材21の起立部21aは、サイド部材21の前部を車輌上方へ略鉛直に延びるように折り曲げて形成されており、起立部21aと水平部21bとの間には、屈曲部21cが形成されている。
略鉛直に起立した起立部21aの上端部21dには前方に延出した延出取付部24(取付部材)が形成されており、サイド部材21は、この延出取付部24を介してサイドメンバ10の前端部下面にボルト(不図示)で取付けられている。延出取付部24は、本発明の取付部材の一例に相当する。
【0011】
サイド部材21は、起立部21aの上端部21dとサイドメンバ10との間に隙間を設けた状態で取付けられており、前面衝突時に起立部21aの上端部21d側が後方に倒れ易く構成されている。また、フロントサスペンションフレーム20がサイドメンバ10に取付けられた状態で起立部21aの下端はサイドメンバ10の前端部より少し後ろ側に位置している。
【0012】
水平部21bの前後方向略中央部には、後ろ上がりに傾斜するように屈曲されて前面衝突時に下方に折れ曲がる曲げ変形許容部22が形成されている。曲げ変形許容部22の曲げ強度はサイド部材21の中で最も低く構成されている。したがって水平部21bに圧縮力が入力された場合に他の部分よりも曲げ変形しやすい。水平部21bの後端部には取付部25が形成されており、この取付部25においてフロントサスペンションフレーム20の後方側がサイドメンバ10の下面にボルト(不図示)を介して取付けられている。なお、平面視における左右のサイド部材21の間隔は、曲げ変形許容部22付近で最も小さく、後端部で最も大きくなっている。
【0013】
水平部21bにはブラケット28、29が形成されており、このブラケット28、29に、車輪3を支持するロアアーム5が取付けられる。また、後方のブラケット29にはスタビライザブッシュ29aが設けられており、左右のブラケット29に車幅方向に延ばされたスタビライザ6がスタビライザブッシュ29aを介して支持されている。
【0014】
起立部21aと水平部21bの間の屈曲部21cの外側(車輌前方側)には、クラッシュボックス26が設けられている。クラッシュボックス26の車体前後方向の長さは50mm程度であり、車輌1の前面衝突時起立部21aの下端に力が加わると、クラッシュボックス26が潰れて起立部21aの下端における初期入力が緩和される。すなわちクラッシュボックス26の衝撃吸収によりサイド部材21の水平部21bが座屈変形しないように構成されている。なおクラッシュボックス26は、バンパ2への取付け機構を兼ねている。
【0015】
屈曲部21cの内側(車輌後方側)には、補強部材27が取付けられている。この補強部材27は、起立部21aと水平部21bとの間の相対角度が縮まらないように補強する機能を有しており、補強部材27の曲げ強度は、上述した水平部21bの曲げ変形許容部22の曲げ強度よりも高く構成されている。
【0016】
フロントサスペンションフレーム20の左右のサイド部材21間には車幅方向に伸びるクロス部材30、31が掛け渡されている。クロス部材30は起立部21aの下端付近に配置され、クロス部材31は曲げ変形許容部22の後方側に配置されている。前方のクロス部材30には2箇所にブラケット32が形成され、後方のクロス部材31には2箇所にブラケット33が形成されている。前方のブラケット32にはラジエータ(不図示)が取付けられている。
【0017】
後方のブラケット33にはステアリング装置40のステアリングギヤボックス41が取付けられている。ブラケット33は本発明のステアリング支持部の一例に相当する。なお、後方のクロス部材31の両端と、その直ぐ後ろの水平部21bとに渡って補強部材34が斜めに架け渡されている。
ステアリング装置40は、車室内に配されるステアリングホイール53とステアリングギヤボックス41とが複数の部材を介して作動的に連結されて構成されている。以下構成を具体的に説明する。
ブラケット33に取付けられたステアリングギヤボックス41の右寄りには伝達シャフト43が連結されている。伝達シャフト43の上端部の周囲はステアリングジョイントカバー45で覆われている。このステアリングジョイントカバー45はダッシュパネル4に形成された挿通孔(不図示)の周縁に嵌合されている。一方、伝達シャフト43はダッシュパネル4に形成された挿通孔(不図示)に挿通され、後ろ斜め上方に傾斜して延びている。
【0018】
伝達シャフト43の上端に自在継手44を介して中間ステアリングシャフト46が連結されている。
中間ステアリングシャフト46は外筒部47と当該外筒部47に挿入された内筒部48とを備えている。この外筒部47と内筒部48とは接続部49においてセレーション機構により結合されている。すなわち外筒部47と内筒部48とは、相対回転が規制され、かつ、回転軸方向に相対移動可能となっている。また、接続部49において外筒部47と内筒部48とが回転軸方向において互いに離れる向きに移動すると、内筒部48が外筒部47から外れて分離する。この接続部49は本発明における分離部の一例に相当する。
【0019】
中間ステアリングシャフト46の上端には、自在継手50を介して、アッパステアリングシャフト51が連結されている。アッパステアリングシャフト51の外側にはステアリングコラム52が囲設されている。アッパステアリングシャフト51はこのステアリングコラム52を介して例えばインストルメントパネルのフレーム等の車体構造部材(不図示)によって車輌1の車室内に支持されている。アッパステアリングシャフト51の上端は運転席に設けられたステアリングホイール53に連結されている。
【0020】
こうして、ステアリングホイール53が運転者により回転操作されると、その回転がアッパステアリングシャフト51、中間ステアリングシャフト46及び伝達シャフト43を介してステアリングギヤボックス41に伝達され、操舵機構を介して左右の車輪3が操舵される。
【0021】
また、ステアリングコラム52は、取付けブラケット54によって車体構造部材にボルト等より取付けられているが、車輌衝突時に搭乗者がステアリングホイール53に衝突するとステアリングコラム52が車輌前方側に離脱可能となるように構成されている。
【0022】
次に、本実施形態にかかるステアリング装置の支持構造の衝突時における変形動作について図1、図3及び図4を参照して説明する。
図1に示す車輌1の前面に物体が衝突すると、バンパ2を介してサイドメンバ10の前端部に後方向の衝撃力Pが入力される。図3に示すように、この後方向の衝撃力Pを受けると、サイドメンバ10は後方に座屈変形する。サイドメンバ10の座屈変形に伴い、延出取付部24及び起立部21aの上端部21dに後方向の力が加わる。一方、起立部21aの下端の屈曲部21c前方に設けられたクラッシュボックス26にも後方向の力が加わるが、クラッシュボックス26が潰れることにより入力が緩和される。
こうして、起立部21aには、上端部21dが下端の屈曲部21cより後ろに位置するように後方に傾斜する力が働く。しかも、起立部21aの上端部21dは、サイドメンバ10と隙間を設けて取付けられているため、サイドメンバ10の座屈変形を邪魔することがなく、起立部21a上端部21d側が後方に傾斜し易くなっている。
ここで、起立部21aの下端の屈曲部21c後方に補強部材27が設けられて補強されているため、起立部21aと水平部21bの相対角度変化(屈曲部21cの変形)が抑制される。したがって、起立部21aの後方への傾斜に伴い、水平部21b前部が車輌上方に傾斜する力、すなわち補強部材27を中心とする回転モーメントAが発生する。
水平部21bの略中央部には曲げ変形許容部22が形成されているため、上記水平部21bに屈曲部21cを中心とした回転モーメントAが働くと、曲げ変形許容部22付近が下方に折れて水平部21bがV字状に屈曲する。すなわち、曲げ変形許容部22より前側が前方上がりに傾斜し、曲げ変形許容部22より後ろ側は後方上がりに傾斜する。
【0023】
図4に示すように、屈曲に伴って曲げ変形許容部22が下方に移動すると、前後方向において曲げ変形許容部22と水平部21b後端の取付部25との間に位置するクロス部材31も下方に移動する。したがって、クロス部材31に取付けられているステアリングギヤボックス41も下方に移動する。
【0024】
こうして、ステアリングギヤボックス41に連結された伝達シャフト43、及び中間シャフトの外筒部47が下方に引っ張られる。
ここで、外筒部47と内筒部48とは、接続部49においてセレーション機構により回転軸方向に相対移動可能、かつ、分離可能に構成されているため、回転軸方向において互いに離れる方向へ移動し、互いに分離する。こうして、ステアリングホイール53が連結された内筒部48とステアリングギヤボックス41が連結された外筒部47とが分離すると、衝撃力が断絶されるため、ステアリング装置40が搭乗者側に後退することを確実に防ぐことができる。また、車輌衝突時に搭乗者がステアリングホイール53に体を衝突させるとステアリングコラム52が車体構造部材から離脱されてステアリング装置40が車輌前方側に移動するが、中間ステアリングシャフト46が分割されるのでステアリング装置40の車輌前方への移動が邪魔されずスムーズとなり、搭乗者への衝撃力が確実に緩和される。
【0025】
本実施の形態にかかるステアリング装置40は以下に掲げる効果を奏する。すなわち、フロントサスペンションフレーム20のサイド部材21前部を車輌上方に起立させた起立部21aと水平部21bとの間の屈曲部21cに補強部材27を設けるとともに、水平部21bに下方へ折れ曲がるように形成された曲げ変形許容部22を設けたので、衝突時の入力を水平部21bの曲げ変形許容部22まで伝達でき、積極的にフロントサスペンションフレーム20を下方に折り曲げることができる。よってブラケット33(ステアリング支持部)を確実に下方に移動させることができ、ステアリング装置40が搭乗者側へ後退することを防ぐことができる。しかも曲げ変形許容部22よりも後方に形成されたクロス部材31のブラケット33(ステアリング支持部)にステアリングギヤボックス41を連結したため、衝突による水平部21bの曲げ変形に伴ってステアリングギヤボックス41を下方に大きく移動させることができる。また、上述した特許文献1ではフロントサスペンションフレーム(特許文献1におけるサブフレーム)が衝撃力により曲げ変形でなく座屈変形してしまう場合があるが、本実施形態によれば、略鉛直に起立した起立部21aと補強部材27と曲げ変形許容部22との作用により座屈変形を防止して確実に水平部21bの下方への曲げ変形を発生させることができる。よって確実に搭乗者への衝撃を緩和することができる。
【0026】
また、起立部21aの下端にクラッシュボックス26を設けたため、衝撃量を緩和するとともに、水平部21bの座屈変形を防止して、確実に曲げ変形を発生させることができる。
また、曲げ変形許容部22を水平部21bの一部を屈曲させることで形成したため単純な構成でフロントサスペンションフレーム20を下方に変形させることができる。
【0027】
また、起立部21aの上端部21dとサイドメンバ10との間に隙間を設けているので、前面衝突時にサイドメンバ10の座屈変形を邪魔することがなく、しかも起立部21aが積極的に後方へ傾斜するので、曲げ変形許容部22の下方への変形を促進させることができる。
【0028】
また、中間ステアリングシャフト46を外筒部47と内筒部48とで互いに分離する構成としたので、衝突時の入力がステアリングホイール53側に伝達しないように断絶することができ、ステアリング装置40が搭乗者側へ後退することをより確実に防ぐことができる。さらに、搭乗者がステアリングホイール53に衝突した際のステアリング装置40の車輌前方への移動を妨げるおそれもなく、搭乗者への衝撃を確実に軽減することができる。
【0029】
なお本発明を実施するにあたり、この発明の構成要素を発明の要旨を逸脱しない範囲で各部材の具体的な形状等を種々に変更して実施できることは言うまでもない。
上記実施形態において、曲げ変形許容部は、屈曲させた構造を一例として示したが、この他に凹部を形成するあるいは径を小さくする等により曲げ変形許容部を構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるステアリング装置の支持構造を示す側面図。
【図2】同支持構造を示す平面図。
【図3】衝突による同支持構造の変形過程を示す側面図。
【図4】衝突による同支持構造の変形過程を示す側面図。
【符号の説明】
【0031】
10 サイドフレーム(車体フレーム)
20 フロントサスペンションフレーム
21 サイド部材
21a 起立部
21b 水平部
21c 屈曲部
21d 上端部
22 曲げ変形許容部
24 延出取付部(取付部材)
26 クラッシュボックス
27 補強部材
33 ブラケット(ステアリング支持部)
40 ステアリング装置
49 挿入部(分離部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームの下方に設けられてフロントサスペンションを支持するフロントサスペンションフレームにステアリング装置のステアリングギヤを支持するためのステアリング支持部が形成されるステアリング装置の支持構造において、
前記フロントサスペンションフレームは、該フロントサスペンションフレーム前部に設けられ、車輌上方に起立して上端部が前記車体フレームに取付けられる起立部と、
該起立部の下端から車輌後方に向かって延設され、前記ステアリング支持部が設けられると共に後端部が前記車体フレームに取付けられる水平部とを有して構成されており、
さらに、前記起立部と前記水平部との間の屈曲部に該屈曲部の変形を防止するための補強部材が設けられると共に、
前記水平部の前記ステアリング支持部より前方の位置には、車輌前突時に下方へ折れ曲がるように形成された曲げ変形許容部とが設けられることを特徴とするステアリング装置の支持構造。
【請求項2】
前記起立部の下端前方に、衝撃力を吸収するクラッシュボックスを備えたことを特徴とする請求項1記載のステアリング装置の支持構造。
【請求項3】
前記曲げ変形許容部は、前記水平部の一部が屈曲されて形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のステアリング装置の支持構造。
【請求項4】
前記起立部は、前記上端部が取付部材を介して前記車体フレームに取付けられており、該上端部と前記車体フレームとの間には隙間が設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のステアリング装置の支持構造。
【請求項5】
前記ステアリング装置は、ステアリングホイールと前記ステアリングギヤとを繋ぐステアリングシャフトを有し、該ステアリングシャフトはその回転軸方向に引っ張られることにより前記ステアリングホイール側と前記ステアリングギヤ側に分離する分離部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のステアリング装置の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−137243(P2007−137243A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333121(P2005−333121)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】