説明

ステンシルマスク及びその製造方法

【課題】構造及び製造工程を実質的に複雑化することなしに熱膨張による変形を補償できるステンシルマスク及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ステンシルマスクは、シリコン基板の一面に形成した薄膜部2と、薄膜部に形成した一つ、もしくは複数の開孔部5と、荷電粒子線の入射によって発生する熱応力を緩和するための応力緩和構造6とによって構成され、少なくともSOI基板1を酸化する工程と、表面側の酸化膜に表面開孔部のマスクとなる開孔部5を開孔する工程と、酸化膜マスクを用いて薄膜部に開孔部を形成する工程と、薄膜部に形成した開孔部の側壁を酸化する工程と、裏面側の酸化膜に裏面開孔部のマスクとなる開孔を形成する工程と、裏面酸化膜マスクを用いて支持基板に開孔部を形成する工程と、表面側酸化膜と裏面側酸化膜と表裏面の開孔部によって露出した埋込酸化膜をエッチングする工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置を製造する際に、荷電粒子ビームを用いて半導体装置に所望のパターンを描画するのに用いるステンシルマスク及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ステンシルマスクは、荷電粒子線が通過する開孔部と荷電粒子線を遮蔽する遮蔽部とを備えて構成されている。荷電粒子線がステンシルマスクに入射すると、荷電粒子線ビームの形状は遮蔽部によって整形される。ステンシルマスクによって整形された荷電粒子ビームを用いて半導体装置に所望のパターンを描画する。
【0003】
ステンシルマスクの遮蔽部に入射した荷電粒子のエネルギーは遮蔽部に吸収されるため、遮蔽部の温度が上昇する。一方、ステンシルマスクの遮蔽部は、例えばシリコン単結晶のような単一の材料で構成されているため熱抵抗率のステンシルマスク面内分布はない。しかしながら、荷電粒子ビームを遮蔽する構造体の形状が等方的ではなく、その厚さも場所により異なるため、熱抵抗率と形状の関数である遮蔽部の熱抵抗は異方性を有する。またステンシルマスクの単位面積あたりに入射する荷電粒子ビームのエネルギー密度は面内で均一である。
【0004】
遮蔽構造体の温度は、吸収されたエネルギー量と熱抵抗によって決まり、遮蔽部の熱抵抗が面内で分布を持ち、かつ荷電粒子ビームのエネルギー密度が面内で均一であるため、荷電粒子の遮蔽構造(ステンシルマスク)に温度分布が発生する。
【0005】
ステンシルマスクは周囲をイオン注入装置などの装置に固定されているため、ステンシルマスクに吸収された熱エネルギーはステンシルマスクの周囲を通じて装置へと流出する。従って、ステンシルマスクの中央部は周辺部に比べて温度が高くなる。熱膨張量は(熱膨張率)×(例えば室温である基準温度との温度差)のため、遮蔽構造体に温度分布の発生したステンシルマスクは、温度の高低に従い熱膨張量の分布が発生する。遮蔽構造体に熱膨張量の分布が生じると、遮蔽構造体に応力の不均一な面分布、変形、極端な場合には遮蔽構造体を構成する梁などの座屈が発生する。こうして、遮蔽構造体が変形し荷電粒子の通路である開孔部に侵入すると、荷電粒子ビームが遮蔽構造体に遮蔽されるため荷電粒子のビーム形状も変形し、描画パターンの寸法精度が劣化するという問題があった。
【0006】
このような熱膨張による問題点を解決するため、二枚の基板を中間層を介して貼り合わせ、一方の基板に荷電ビームの透過孔を形成し、他方の基板における、上記透過孔に相当する位置に開口部を形成し、該開口部の形成される他方の基板の外側の面に基板反り防止膜を形成したステンシルマスクが提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
また、マスク母体に、転写パターンを複数の矩形状サブフィールドに分割して形成し、各矩形状サブフィールドの周囲に、応力の大きさを調整できる応力調整領域を額縁状に設けた露光マスクも提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
さらに、開口を備えたパターニング用マスクと、パターニング用マスクと離間して配置された少なくとも一つの熱吸収用マスクとを備え、パターニング用マスクの開口と熱吸収用マスクの開口とを位置合わせして構成した露光マスクも提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−151385号公報
【特許文献2】特開2004−111713号公報
【特許文献3】特許第3392859号(WO2002/052622)
【0009】
しかし、このような従来提案されてきたマスクでは、マスクの構造及び製造工程が複雑となり、そのため、マスクのコストが高なるという別の問題が生ずる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上述の熱膨張、熱膨張量の分布の問題を、マスクの構造及び製造工程を実質的に複雑にすることなしに解決しようとするものである。従って、本発明は、構造及び製造工程を実質的に複雑化することなしに熱膨張による変形を補償できるステンシルマスク及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の発明によれば、シリコン基板の一面に形成した薄膜部と、該薄膜部に形成した少なくとも一つの転写パターン開孔部と、薄膜部に形成した転写パターン開孔部を囲む薄膜部の領域に形成され、荷電粒子線の入射によって発生する熱応力を緩和する応力緩和開孔部とを有して成るステンシルマスクが提供される。
【0012】
応力緩和開孔部は、薄膜部に形成した転写パターン開孔部全体を囲む薄膜部の領域にコ字状に連続して形成され、転写パターン開孔部の形成された薄膜部は片持ち梁構造として構成され得る。
【0013】
代わりに、応力緩和開孔部は、薄膜部に形成した転写パターン開孔部全体を囲む薄膜部の領域における三辺の各々に形成された開孔部から成り、これら隣接した開孔部の間に、荷電粒子線の入射によって発生する熱応力による変形に対するばね機能をもつ薄膜部領域を残して構成され得る。
【0014】
本発明の第2の発明によれば、シリコン基板の一面に形成した薄膜部と、上記薄膜部に形成した少なくとも一つの転写パターン開孔部と、シリコン基板の他面に形成した荷電粒子遮蔽部とを有し、上記荷電粒子遮蔽部が、薄膜部に形成した転写パターン開孔部の一つ又は複数を囲む薄膜部の領域に沿って一端側から他端側に向って伸び、荷電粒子線の入射によって該荷電粒子遮蔽部に発生する熱応力を緩和する応力緩和領域部を構成して成るステンシルマスクが提供される。
【0015】
応力緩和領域部は、薄膜部に形成した転写パターン開孔部の一つ又は複数を囲む薄膜部の領域に沿って一端側から他端側に向って伸びる片持ち梁構造として構成され得る。
【0016】
代わりに、応力緩和領域部は、薄膜部に形成した転写パターン開孔部の一つ又は複数を囲む薄膜部の領域に沿って一端側から他端側に向って伸び、他端側すなわち自由端側が、荷電粒子線の入射によって発生する熱応力による変形に対するばね機能をもつ領域で互いに結合して構成され得る。
【0017】
本発明の第3の発明によれば、少なくともSOI基板を酸化する工程と、表面側の酸化膜に表面開孔部のマスクとなる開孔部を開孔する工程と、酸化膜マスクを用いて薄膜部に開孔部を形成する工程と、薄膜部に形成した開孔部の側壁を酸化する工程と、裏面側の酸化膜に裏面開孔部のマスクとなる開孔を形成する工程と、裏面酸化膜マスクを用いて支持基板に開孔部を形成する工程と、表面側酸化膜と裏面側酸化膜と表裏面の開孔部によって露出した埋込酸化膜をエッチングする工程とを含んで成るステンシルマスクの製造方法が提供される。
【0018】
本発明の第3の発明によるステンシルマスクの製造方法において、裏面酸化膜マスクを用いて支持基板に開孔部を形成する工程は、ドライエッチング法により実施され得る。
【0019】
代わりに、裏面酸化膜マスクを用いて支持基板に開孔部を形成する工程は、アルカリ性エッチング液を用いて結晶異方性ウエットエッチング法により実施され得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1の発明によるステンシルマスクにおいては、シリコン基板の一面に形成した薄膜部と、該薄膜部に形成した少なくとも一つの荷電粒子ビームの形状を整形する転写パターン開孔部と、薄膜部に形成した転写パターン開孔部を囲む薄膜部の領域に形成され、荷電粒子線の入射によって発生する熱応力を緩和する応力緩和開孔部とによって構成されているので、荷電粒子ビームの入射、遮蔽によりステンシルマスクに吸収されたエネルギーによってステンシルマスクに温度分布が生じ、熱膨張量に分布が発生した場合でも、この熱膨張によって発生する応力を応力緩和開孔部によって吸収することができる。それにより、応力によるステンシルマスクを構成する梁の座屈などの変形を抑制することが可能となり、荷電粒子ビームの形状が変形する荷電粒子ビーム密度の閾値を大きくすることができる。このため高密度の荷電粒子ビームを利用することが可能となり、パターン描画時間を短縮し、生産性を向上することができるようになる。
【0021】
また、本発明の第1の発明によるステンシルマスクにおいて、応力緩和開口部が、薄膜部に形成した転写パターン開孔部全体を囲む薄膜部の領域にコ字状に連続して形成され、転写パターン開孔部の形成された薄膜部が片持ち梁構造として構成される場合には、荷電粒子ビームを遮蔽することによって薄膜遮蔽構造体に吸収された荷電粒子ビームのエネルギーによって薄膜遮蔽構造体が熱膨張しても、薄膜遮蔽構造体が片持ち梁の自由端の方向に自由に伸びることができるため薄膜遮蔽構造体に発生する応力を緩和することができる。その結果、荷電粒子ビームの形状を整形するための開孔部を構成する梁の座屈などの変形を抑制することが可能となる。
【0022】
さらに、本発明の第1の発明によるステンシルマスクにおいて、応力緩和開孔部が、薄膜部に形成した転写パターン開孔部全体を囲む薄膜部の領域における三辺の各々に形成された開孔部から成り、これら隣接した開孔部の間に、荷電粒子線の入射によって発生する熱応力による変形に対するばね機能をもつ薄膜部領域を残して構成される場合には、薄膜部に発生する熱応力を緩和し、荷電粒子ビームの形状を整形するための開孔部の変形を抑制することができると共に、薄膜部が外力等によって機械的に振動することを抑制することができるため、荷電粒子ビームの形状の寸法精度と位置精度を向上することができる。
【0023】
本発明の第2の発明によるステンシルマスクにおいては、シリコン基板の他面に形成した荷電粒子遮蔽部を設け、該荷電粒子遮蔽部が、薄膜部に形成した転写パターン開孔部の一つ又は複数を囲む薄膜部の領域に沿って一端側から他端側に向って伸び、荷電粒子線の入射によって該荷電粒子遮蔽部に発生する熱応力を緩和する応力緩和領域部を構成しているので、高密度の荷電粒子線を入射した際でも熱応力による荷電粒子遮蔽部の座屈などの変形を抑制することが可能となり、荷電粒子遮蔽部が変形することによって荷電粒子ビームの通路に侵入し、荷電粒子ビーム形状が変形することを抑制することができる。従って、荷電粒子ビームの形状が変形する荷電粒子ビーム密度の閾値を大きくすることができる。このためパターン描画に高密度の荷電粒子ビームを利用することが可能となり、パターン描画時間を短縮し、生産性を向上することができる。また、荷電粒子ビームを整形する薄膜遮蔽構造体に入射する荷電粒子ビームの一部を荷電粒子遮蔽部によって遮蔽する構造としたため、薄膜遮蔽構造体に入射する荷電粒子ビームのエネルギー量を少なくすることが可能となり、薄膜遮蔽構造体の温度上昇や温度分布の発生、それに伴う薄膜遮蔽構造体の変形を抑制することができる。
【0024】
本発明の第2の発明によるステンシルマスクにおいて、応力緩和領域部が、薄膜部に形成した転写パターン開孔部の一つ又は複数を囲む薄膜部の領域に沿って一端側から他端側に向って伸びる片持ち梁構造として構成される場合には、荷電粒子ビームを遮蔽することによって荷電粒子遮蔽部に吸収された荷電粒子ビームのエネルギーのため荷電粒子遮蔽部が熱膨張し、かつ、この熱膨張量に面分布が発生しても、荷電粒子遮蔽部が片持ち梁構造の自由端方向に自由に伸長することができるため、熱膨張量の面分布に伴う応力の発生を抑制することができる。その結果、荷電粒子遮蔽部の座屈などを抑制することが可能となり、荷電粒子遮蔽部が熱応力で変形することによって荷電粒子ビームの通路に侵入し、荷電粒子ビームの形状が変形することを抑制することができる。
【0025】
本発明の第2の発明によるステンシルマスクにおいて、応力緩和領域部が、薄膜部に形成した転写パターン開孔部の一つ又は複数を囲む薄膜部の領域に沿って一端側から他端側に向って伸び、他端側すなわち自由端側が、荷電粒子線の入射によって発生する熱応力による変形に対するばね機能をもつ領域で互いに結合して構成される場合には、荷電粒子遮蔽部に発生する熱応力を緩和することができると共に、荷電粒子遮蔽部が外力等によって機械的に振動することを抑制することができる。従って、荷電粒子遮蔽部が振動することによって荷電粒子ビームの通路に侵入し、荷電粒子ビームの形状の寸法精度や位置精度が低下することを抑制することができる。
【0026】
本発明の第3の発明によるステンシルマスクの製造方法においては、少なくともSOI基板を酸化する工程と、表面側の酸化膜に表面開孔部のマスクとなる開孔部を開孔する工程と、酸化膜マスクを用いて薄膜部に開孔部を形成する工程と、薄膜部に形成した開孔部の側壁を酸化する工程と、裏面側の酸化膜に裏面開孔部のマスクとなる開孔を形成する工程と、裏面酸化膜マスクを用いて支持基板に開孔部を形成する工程と、表面側酸化膜と裏面側酸化膜と表裏面の開孔部によって露出した埋込酸化膜をエッチングする工程を含むことにより、荷電粒子線のビーム形状を整形する表面側開孔部を有する薄膜遮蔽構造体をSOI基板を構成する埋込酸化膜や支持基板から機械的、熱的に分離することが可能となり、荷電粒子線の吸収に起因する温度分布、熱膨張の発生に伴う熱応力を応力緩和機構である片持ち梁構造、又はばね構造により緩和することができる。
【0027】
本発明の第3の発明によるステンシルマスクの製造方法において、裏面側の開孔部のエッチングにドライエッチング技術を用いた場合には、支持基板の結晶方位に依存しない、自由度の高い開孔パターン設計が可能となり、開孔部の面積をより小さくすることが可能となる。
【0028】
本発明の第3の発明によるステンシルマスクの製造方法において、裏面側の開孔部を形成するためのエッチングにウエットエッチング法を用いた場合には、プラズマエッチング装置などの高価な設備を利用するドライエッチング法を用いる場合と比較して製造コストを低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1〜図3には、本発明の第1の実施形態によるステンシルマスクを概略的に示し、1はSOI(Silicon On Insulator)基板であり、薄膜部2と埋込酸化膜3と支持基板4とによって構成されている。薄膜部2には、荷電粒子ビームの形状を所定のパターンで整形する荷電粒子透過孔である複数の表面開孔部5が設けられている。これらの表面開孔部5は、SOI基板1の厚み方向で貫通しており、従って、荷電粒子ビームは薄膜部2における表面開孔部5の形状に従って通過することができる。
【0030】
また、薄膜部2には、薄膜部2に形成された転写パターン表面開孔部5を囲む薄膜部2の領域に、荷電粒子ビームの入射によって発生する熱応力を緩和する応力緩和開孔部6が形成され、この応力緩和開孔部6は、図示実施形態では、薄膜部2に形成された転写パターン表面開孔部5全体を囲む薄膜部の領域にコ字状に連続して形成され、それにより転写パターン表面開孔部5の形成された薄膜部2の部分2aは片持ち梁構造として構成されている。すなわち、薄膜部2のこの片持ち梁構造部分2aは、SOI基板1の薄膜部2の外周部分2bから応力緩和開孔部6によって分離されている。
【0031】
また、7は、SOI基板1の埋込酸化膜3によって画定された空隙部であり、8は支持基板4に形成した開孔部であり、また9は片持ち梁構造部分2aと支持基板4との間の空隙部である。
【0032】
このように構成した第1の実施形態によるステンシルマスクにおいては、荷電粒子ビームの形状を整形するため薄膜部2に開孔部5を有する薄膜遮蔽構造体を片持ち梁構造とした。従って、荷電粒子線が薄膜遮蔽構造体に入射し、薄膜遮蔽構造体に吸収されたエネルギーによって薄膜遮蔽構造体に温度分布が生じて、その結果、薄膜遮蔽構造体の熱膨張量に分布が発生した場合でも、薄膜遮蔽構造体が片持ち梁すなわち薄膜部2の部分2aの自由端の方向に伸びることによって薄膜遮蔽構造体に発生する熱応力を緩和することができ、それにより、熱膨張量の分布に起因する応力を抑制することができる。その結果、開孔部5の形成される薄膜部2の部分2aの座屈などの変形を抑制することが可能となり、荷電粒子線の形状が変形する荷電粒子ビーム強度の閾値を大きくすることができる。従って、高密度の荷電粒子ビームを利用してパターン描画を実施することが可能となり描画時間を短縮することができる。また、応力緩和開孔部6の荷電粒子入射側には支持基板4が存在し、支持基板4に形成した開孔部8と応力緩和開孔部6は重ならない構造としたことにより、荷電粒子ビームは支持基板4に妨げられて応力緩和開孔部6を通過することができない。従って、荷電粒子ビームのパターン形状に影響を及ぼさずに応力緩和開孔部6の形状を最適化することができる。
【0033】
図4には図1〜図3に示すステンシルマスクの製造方法におけるそれぞれの工程を示している。
【0034】
図4の(a)に示すように、ステンシルマスクは、半導体基板、例えばSOI基板1を出発材料とする。SOI基板1は薄膜部2と、埋込酸化膜3と、支持基板4とによって構成されている。
【0035】
最初の工程では、図4の(b)に示すように、まずSOI基板1を酸素雰囲気中で熱酸化させることにより表面側にシリコン酸化膜10aと裏面側にシリコン酸化膜10bを形成する。
【0036】
次の工程では、図4の(c)に示すように、表面側のシリコン酸化膜10a上に、IC、LSI製造の際に利用されるフォトリソグラフィ技術を用いて荷電粒子透過孔である表面開孔部5を構成するパターン5a、応力緩和開孔部6を構成するための開孔部6aが形成される。なお、シリコン酸化膜10aのエッチングには、希釈フッ酸や緩衝フッ酸を用いるウエットエッチング法、もしくはプラズマを用いるドライエッチング法などの技術を用いることができる。
【0037】
図4の(d)に示す工程では、シリコン酸化膜10a上に開孔したパターン5a、6aをマスクにしてSF6プラズマなどを用いたドライエッチング技術を用いてSOI基板1の薄膜部2に開孔部5b、6bが形成される。
【0038】
図4の(e)に示す工程では、SOI基板1を酸素雰囲気中で熱酸化させることにより開孔部5b、6bの側壁部にシリコン酸化膜11が形成される。
【0039】
図4の(f)に示す工程では、裏面側である支持基板4上のシリコン酸化膜10bにフォトリソグラフィ技術を用いて開孔部8aを形成する。
【0040】
図4の(g)に示す工程では、シリコン酸化膜10b上に開孔したパターン8aをマスクにしてSF6プラズマなどを用いたドライエッチング技術を用いてSOI基板1の支持基板4に開孔部8bを形成する。
【0041】
図4の(h)に示す工程では、等方性エッチング技術、例えば希釈フッ酸や緩衝フッ酸を用いるウエットエッチング法を用いて、開孔部8bを形成することによって露出した埋込酸化膜3、表面側に形成されているシリコン酸化膜10aと裏面側のシリコン酸化膜10b、開孔部5b、6bの側壁部に形成されたシリコン酸化膜11をエッチングする。なお、この際、埋込酸化膜3は、埋込酸化膜3がエッチングされるに従って開孔部8bなどによって露出している部分のみならず、薄膜部2や支持基板4によって覆われている部分9にもエッチャントが浸入するため、これらの部分にも空隙部7が形成される。
【0042】
図5〜図7には、本発明の第2の実施形態によるステンシルマスクを概略的に示し、21はSOI基板であり、薄膜部22と埋込酸化膜23と支持基板24とによって構成されている。薄膜部22には、荷電粒子ビームの形状を所定のパターンで整形する荷電粒子透過孔である複数の表面開孔部25が設けられている。これらの表面開孔部25は、SOI基板21の厚み方向で貫通しており、従って、荷電粒子ビームは薄膜部22における表面開孔部25の形状に従って通過することができる。
【0043】
また、薄膜部22には、薄膜部22に形成された転写パターン表面開孔部25を囲む薄膜部22の領域に、荷電粒子ビームの入射によって発生する熱応力を緩和する三つの応力緩和開孔部26a、26b、26cが形成され、これらの応力緩和開孔部26a、26b、26cは、図示実施形態では、薄膜部22に形成された転写パターン表面開孔部25全体を囲む薄膜部の領域にコ字状に連続して形成されているが、隣接した応力緩和開孔部26a、26c及び26b、26c間に、それぞれ転写パターン表面開孔部25の形成された薄膜部22の部分22aを支える薄膜部領域部分22から成るばね機能部27が設けられている。なお、ばね機能部27は図示した単純な直方体形状の他に、複数の折り返しを有する構造でも良く、折り返しの数を多くすることによって、より大きな熱膨張量を吸収することが可能になる。
【0044】
図5〜図7に示す第2の実施形態によるステンシルマスクの製造方法は、基本的には第1の実施形態のステンシルマスクの場合と同じであり、表面側パターン形成工程におけるパターン形状が異なる。
【0045】
このように構成した図5〜図7に示す第2の実施形態によるステンシルマスクにおいては、応力緩和構造として薄膜遮蔽構造体の一端にばね機能部27を設けたことにより、図1〜図3に示す実施形態の構造と同様に荷電粒子ビームを遮蔽することによって薄膜遮蔽構造体に吸収された荷電粒子線のエネルギーによって薄膜遮蔽構造体が熱膨張しても、薄膜遮蔽構造体に発生する応力をばね機能部27で緩和、吸収することができる。また、機械的な振動がステンシルマスクに加わった場合でも、ばね機能部27が薄膜遮蔽構造体の振動を吸収、抑制するため荷電粒子線のパターンの位置精度の低下を抑制することができる。さらに、重力等の影響により薄膜部22の部分22aの位置精度が低下するのは、ばね機能部27によって応力を吸収することにより抑制することができる。
【0046】
図8〜図10には、本発明の第3の実施形態によるステンシルマスクを概略的に示し、31はSOI基板であり、薄膜部32と埋込酸化膜33と支持基板34とによって構成されている。薄膜部32には、荷電粒子ビームの形状を所定のパターンで整形する荷電粒子透過孔である複数の表面開孔部35が設けられている。これらの表面開孔部35は、SOI基板31の厚み方向で貫通しており、従って、荷電粒子ビームは薄膜部32における表面開孔部35の形状に従って通過することができる。
【0047】
この第3の実施形態によるステンシルマスクにおいて、支持基板34には、薄膜部32に形成された転写パターン表面開孔部35を囲む領域に、荷電粒子ビームの入射によって発生する熱応力を緩和する荷電粒子遮蔽部36が設けられ、荷電粒子遮蔽部36は、薄膜部32に形成した転写パターン開孔部35の一つ又は複数を囲む薄膜部32の領域に沿って一端側から他端側に向って伸び、荷電粒子線の入射によって荷電粒子遮蔽部36に発生する熱応力を緩和する応力緩和領域部を構成している。なお、37は荷電粒子遮蔽部36と薄膜部32との間に形成された空隙部である。
【0048】
図8〜図10に示す第3の実施形態によるステンシルマスクの製造方法は、基本的には第1の実施形態のステンシルマスクの場合と同じであり、裏面側パターン形成工程におけるパターン形状が異なる。
【0049】
このように構成した図8〜図10に示す第3の実施形態によるステンシルマスクにおいては、薄膜遮蔽構造体に対して荷電粒子線の入射側に荷電粒子遮蔽部36を設け、片持ち梁構造としたことにより、荷電粒子遮蔽部36は薄膜遮蔽構造体に入射する荷電粒子線の一部を遮蔽することにより、薄膜遮蔽構造体が吸収した荷電粒子線のエネルギーによって熱膨張し、変形、座屈が発生するのを抑制する。なお、荷電粒子遮蔽部36と薄膜部32との間に空隙部37を形成する構造としたことにより、荷電粒子遮蔽部36に入射した荷電粒子によって荷電粒子遮蔽部36の温度が上昇しても、荷電粒子遮蔽部36の熱が直接薄膜部32に伝達することはない。従って、薄膜遮蔽構造体の温度上昇やそれに伴う熱膨張、変形、座屈の発生を抑制することができる。一方、荷電粒子遮蔽部36に入射した荷電粒子線のエネルギーによって発生する荷電粒子遮蔽部36の熱膨張と応力は、荷電粒子遮蔽部36が片持ち梁構造の自由端側に伸びることによって吸収することができる。従って、荷電粒子遮蔽部36が変形し、薄膜遮蔽構造体に形成された表面開孔部35を通過する荷電粒子線を遮蔽することがないため所望の荷電粒子線のビーム形状を得ることができる。
【0050】
図11〜図13には、本発明の第4の実施形態によるステンシルマスクを概略的に示し、41はSOI基板であり、薄膜部42と埋込酸化膜43と支持基板44とによって構成されている。薄膜部42には、荷電粒子ビームの形状を所定のパターンで整形する荷電粒子透過孔である複数の表面開孔部45が設けられている。これらの表面開孔部45は、SOI基板41の厚み方向で貫通しており、従って、荷電粒子ビームは薄膜部42における表面開孔部45の形状に従って通過することができる。
【0051】
この第4の実施形態によるステンシルマスクにおいて、支持基板44には、薄膜部42に形成された転写パターン表面開孔部45を囲む領域に、荷電粒子ビームの入射によって発生する熱応力を緩和する荷電粒子遮蔽部46が設けられ、荷電粒子遮蔽部46は、薄膜部42に形成した転写パターン開孔部45の一つ又は複数を囲む薄膜部42の領域に沿って一端側から他端側に向って伸び、荷電粒子遮蔽部46の自由端は荷電粒子遮蔽部46を支える支持基板44の部分から成るばね機能部47が設けられている。
【0052】
図11〜図13に示す第4の実施形態によるステンシルマスクの製造方法は、基本的には第1の実施形態のステンシルマスクの場合と同じであり、裏面側パターン形成工程におけるパターン形状が異なる。
【0053】
このように構成した図11〜図13に示す第4の実施形態によるステンシルマスクにおいては、応力緩和構造として荷電粒子遮蔽部46の非固定端にばね機能部47を設けたことにより、第3の実施形態の構造と同様に荷電粒子ビームを遮蔽することによって荷電粒子遮蔽部46に吸収された荷電粒子線のエネルギーによって荷電粒子遮蔽部46が熱膨張しても、荷電粒子遮蔽部46に発生する応力をばね機能部47で緩和、吸収することができる。また、機械的な振動がステンシルマスクに加わった場合でも、ばね機能部47が荷電粒子遮蔽部46の振動を吸収、抑制するため荷電粒子遮蔽部46が薄膜遮蔽構造体に形成された表面開孔部45を通過する荷電粒子線を遮蔽することを抑制することができる。さらに、重力等の影響により荷電粒子遮蔽部46の位置精度が低下し、荷電粒子遮蔽部46が薄膜遮蔽構造体に形成された表面開孔部45を通過する荷電粒子線を遮蔽することは、ばね機能部47によって応力を吸収することにより抑制することができる。
【0054】
図14〜図16には、本発明の第5の実施形態によるステンシルマスクを概略的に示し、51はSOI基板であり、薄膜部52と埋込酸化膜53と支持基板54とによって構成されている。薄膜部52には、荷電粒子ビームの形状を所定のパターンで整形する荷電粒子透過孔である複数の表面開孔部55が設けられている。これらの表面開孔部55は、SOI基板51の厚み方向で貫通しており、従って、荷電粒子ビームは薄膜部52における表面開孔部55の形状に従って通過することができる。
【0055】
また、薄膜部52には、薄膜部52に形成された転写パターン表面開孔部55を囲む薄膜部52の領域に、荷電粒子ビームの入射によって発生する熱応力を緩和する応力緩和開孔部56が形成され、この応力緩和開孔部56は、図示実施形態では、薄膜部52に形成された転写パターン表面開孔部55全体を囲む薄膜部の領域にコ字状に連続して形成され、それにより転写パターン表面開孔部55の形成された薄膜部52の部分52aは片持ち梁構造として構成されている。すなわち、薄膜部52のこの片持ち梁構造部分52aは、SOI基板51の薄膜部52の外周部分52bから応力緩和開孔部56によって分離されている。
【0056】
また、520は裏面すなわち支持基板54の開孔部の平行四辺形を構成する鋭角を頂点に埋込酸化膜に向かって暫時拡大していくSi{111}で構成される三角形の面であり、また58は支持基板54に形成した開孔部であり、さらに59は埋込酸化膜53をエッチングするための開孔部である。
【0057】
図17には図14〜図16に示すステンシルマスクの製造方法におけるそれぞれの工程を示している。
【0058】
図17の(a)に示すように、ステンシルマスクは、半導体基板、例えばSOI基板51を出発材料とする。SOI基板51は薄膜部52と、埋込酸化膜53と、Si(110)を表面、Si(1−11)をオリエントフラット面に有する支持基板54とによって構成されている。
【0059】
最初の工程では、図17の(b)に示すように、まずSOI基板51を酸素雰囲気中で熱酸化させることにより表面側にシリコン酸化膜510aと裏面側にシリコン酸化膜510bを形成する。
【0060】
図17の(c)に示すように、表面側のシリコン酸化膜510a上に、IC、LSI製造の際に利用されるフォトリソグラフィ技術を用いて荷電粒子透過孔である表面開孔部55を構成するパターン55a、応力緩和開孔部56を構成するための開孔部56a、後の工程で埋込酸化膜53をエッチングするための開孔部となるパターン59aを形成する。なお、シリコン酸化膜510aのエッチングには、希釈フッ酸や緩衝フッ酸を用いるウエットエッチング法、もしくはプラズマを用いたドライエッチング法などの技術を用いることができる。
【0061】
図17の(d)に示す工程では、シリコン酸化膜510a上に開孔した表面開孔部55となるパターン55a、片持ち梁構造を形成するための開孔部56となるパターン56a、後の工程で埋込酸化膜53をエッチングするための開孔部59となるパターン59aをマスクにしてSF6プラズマなどを用いたドライエッチング技術を用いてSOI基板51の薄膜部52に表面開孔部55b、片持ち梁構造を形成するための開孔部56b、後の工程で埋込酸化膜53をエッチングするための開孔部59bを形成する。
【0062】
図17の(e)に示す工程では、SOI基板51を酸素雰囲気中で熱酸化させることにより、表面開孔部55b、片持ち梁構造を形成するための開孔部56b、後の工程で埋込酸化膜53をエッチングするための開孔部59bの側壁部にシリコン酸化膜511を形成する。
【0063】
図17の(f)に示す工程では、裏面側である支持基板54上のシリコン酸化膜510bにフォトリソグラフィ技術を用いて裏面開孔部となるパターン58aを形成する。
【0064】
図17の(g)に示す工程では、シリコン酸化膜510b上に開孔した裏面開孔部58となるパターン58aをマスクにしてTMAH(Tetra-Methyl Ammonium Hydroxide)、KOH、ヒドラジン、エチレンジアミンピロカテコールなどのアルカリ性エッチング液を用いた結晶異方性ウエットエッチング技術を用いてSOI基板51の支持基板54に裏面開孔部58bを形成する。アルカリ性エッチング液を用いた結晶異方性ウエットエッチング技術は、アルカリ性のエッチング液でシリコン単結晶をエッチングする際、シリコンの結晶面によってウエットエッチング速度が異なる現象を利用したエッチング方法で、Si(111)のエッチング速度がSi(100)などのエッチング速度と比較して遅いという特徴がある。一方、SOI基板51の支持基板54は、埋込酸化膜53と接している面と反対側の面、すなわちSOI基板51の裏面がSi(110)、オリエントフラットをSi(1−11)としたため、裏面開孔部58bの側壁を裏面に対して垂直なSi{111}で構成することができる。なお、裏面開孔部58bのパターンである平行四辺形を構成する鋭角を頂点に埋込酸化膜53に向かって暫時拡大していくSi{111}で構成される三角形の面57が形成される。
【0065】
図17の(h)に示す工程では、等方性エッチング技術、例えば希釈フッ酸や緩衝フッ酸を用いるウエットエッチング法を用いて、開孔部58bを形成することによって露出した埋込酸化膜53、表面側に形成されているシリコン酸化膜510aと裏面側のシリコン酸化膜510b、開孔部55b、片持ち梁構造を形成するための開孔部56b、後の工程で埋込酸化膜53をエッチングするための開孔部59bの側壁部に形成されたシリコン酸化膜511をエッチングする。なお、この際、埋込酸化膜53は埋込酸化膜53がエッチングされるに従って裏面開孔部58bなどによって露出している部分のみならず、薄膜部52や支持基板54によって覆われている部分にもエッチャントが浸入するため、これらの部分にも空隙部57が形成される。
【0066】
このように構成した第5の実施形態によるステンシルマスクにおいては、第1の実施形態によるステンシルマスクの裏面側の開孔をドライエッチング技術の代わりにTMAHなどのアルカリ性エッチング液をいた結晶面異方性を有するウエットエッチング技術で形成したことを特徴としている。第5の実施形態によるステンシルマスクではウエットエッチング技術を用いることによって、高価なドライエッチング装置を用いることなく裏面側の開孔部を形成することができる。また、支持基板54の面方位がSi(110)、オリエントフラット面がSi(1−11)であるSOI基板を用いたことによって、裏面開孔部の側壁を裏面であるSi(110)と垂直なSi{111}で形成することができる。従って、Si(100)基板を支持基板として用いた場合のように側壁が斜面とならないため、1枚のSOI基板に複数の薄膜遮蔽構造体を形成する場合でも薄膜遮蔽構造体の間隔を狭くすることが可能になり、より微細なパターンに対応することが可能になる。また、表面側に埋込酸化膜をエッチングするための開孔部を設置したことにより、薄膜部52の片持ち梁構造部分52aを支持基板54から分離するための埋込酸化膜をエッチングするための時間を短縮することが可能となる。
【0067】
図18〜図20には、本発明の第6の実施形態によるステンシルマスクを概略的に示し、61はSOI基板であり、薄膜部62と埋込酸化膜63と支持基板64とによって構成されている。薄膜部62には、荷電粒子ビームの形状を所定のパターンで整形する荷電粒子透過孔である複数の表面開孔部65が設けられている。これらの表面開孔部65は、SOI基板61の厚み方向で貫通しており、従って、荷電粒子ビームは薄膜部62における表面開孔部65の形状に従って通過することができる。
【0068】
また、薄膜部62には、薄膜部62に形成された転写パターン表面開孔部65を囲む薄膜部62の領域に、荷電粒子ビームの入射によって発生する熱応力を緩和する三つの応力緩和開孔部66a、66b、66cが形成され、これらの応力緩和開孔部66a、66b、66cは、図示実施形態では、薄膜部62に形成された転写パターン表面開孔部65全体を囲む薄膜部の領域にコ字状に連続して形成されているが、隣接した応力緩和開孔部66a、66c及び66b、66c間に、それぞれ転写パターン表面開孔部65の形成された薄膜部62の部分62aを支える薄膜部領域部分62から成るばね機能部67が設けられている。なお68は支持基板64に形成した開孔部である。
【0069】
図18〜図20に示す第6の実施形態によるステンシルマスクの製造方法は、基本的には第5の実施形態のステンシルマスクの場合と同じであり、表面側パターン形成工程におけるパターン形状が異なる。
【0070】
このように構成した図18〜図20に示す第6の実施形態によるステンシルマスクにおいては、応力緩和構造として薄膜遮蔽構造体の一端にばね機能部67を設けたことによって、荷電粒子ビームを遮蔽することによって薄膜遮蔽構造体に吸収された荷電粒子線のエネルギーによって薄膜遮蔽構造体が熱膨張しても、薄膜遮蔽構造体に発生する応力をばね機能部67で緩和、吸収することができる。また、機械的な振動がステンシルマスクに加わった場合でも、ばね機能部67が薄膜遮蔽構造体の振動を吸収、抑制するため荷電粒子線のパターンの位置精度の低下を抑制することができる。また、ウエットエッチング技術を用いることによって、高価なドライエッチング装置を用いることなく裏面側の開孔部を形成することができる。
【0071】
図21〜図23には、本発明の第7の実施形態によるステンシルマスクを概略的に示し、71はSOI基板であり、薄膜部72と埋込酸化膜73と支持基板74とによって構成されている。薄膜部72には、荷電粒子ビームの形状を所定のパターンで整形する荷電粒子透過孔である複数の表面開孔部75が設けられている。これらの表面開孔部75は、SOI基板71の厚み方向で貫通しており、従って、荷電粒子ビームは薄膜部72における表面開孔部75の形状に従って通過することができる。
【0072】
この第7の実施形態によるステンシルマスクにおいて、支持基板74には、薄膜部72に形成された転写パターン表面開孔部75を囲む領域に、荷電粒子ビームの入射によって発生する熱応力を緩和する荷電粒子遮蔽部76が設けられ、荷電粒子遮蔽部76は、薄膜部72に形成した転写パターン開孔部75の一つ又は複数を囲む薄膜部72の領域に沿って一端側から他端側に向って伸び、荷電粒子線の入射によって荷電粒子遮蔽部76に発生する熱応力を緩和する応力緩和領域部を構成している。なお、77は荷電粒子遮蔽部76と薄膜部72との間に形成された空隙部、78は支持基板74に形成した開孔部である。
【0073】
図21〜図23に示す第7の実施形態によるステンシルマスクの製造方法は、基本的には第5の実施形態のステンシルマスクの場合と同じであり、裏面側パターン形成工程におけるパターン形状が異なる。
【0074】
このように構成した図21〜図23に示す第7の実施形態によるステンシルマスクにおいては、裏面側の開孔をドライエッチング技術の代わりにTMAHなどのアルカリ性エッチング液をいた結晶面異方性を有するウエットエッチング技術で形成したことを特徴としている。ウエットエッチング技術を用いることによって、高価なドライエッチング装置を用いることなく裏面側の開孔部を形成することができる。
【0075】
図24〜図26には、本発明の第8の実施形態によるステンシルマスクを概略的に示し、81はSOI基板であり、薄膜部82と埋込酸化膜83と支持基板84とによって構成されている。薄膜部82には、荷電粒子ビームの形状を所定のパターンで整形する荷電粒子透過孔である複数の表面開孔部85が設けられている。これらの表面開孔部85は、SOI基板81の厚み方向で貫通しており、従って、荷電粒子ビームは薄膜部82における表面開孔部85の形状に従って通過することができる。
【0076】
この第8の実施形態によるステンシルマスクにおいて、支持基板84には、薄膜部82に形成された転写パターン表面開孔部85を囲む領域に、荷電粒子ビームの入射によって発生する熱応力を緩和する荷電粒子遮蔽部86が設けられ、荷電粒子遮蔽部86は、薄膜部82に形成した転写パターン開孔部85の一つ又は複数を囲む薄膜部82の領域に沿って一端側から他端側に向って伸び、荷電粒子遮蔽部86の自由端は荷電粒子遮蔽部86を支える支持基板84の部分から成るばね機能部87が設けられている。また、裏面から埋込酸化膜83に向かって暫時拡大していくSi{111}で構成される三角形の面88は、荷電粒子遮蔽構造体86を支えるばね機能部87の側壁部に形成され、裏面から埋込酸化膜83に向かって暫時拡大していくSi{111}で構成される三角形の面88を構成する斜辺よりばね機能部87を長くすることにより、荷電粒子遮蔽構造体86の熱膨張による応力を緩和することが可能になる。なお、89は荷電粒子遮蔽部86と薄膜部82との間に形成された空隙部である。
【0077】
図24〜図26に示す第8の実施形態によるステンシルマスクの製造方法は、基本的には第5の実施形態のステンシルマスクの場合と同じであり、裏面側パターン形成工程におけるパターン形状が異なる。
【0078】
このように構成した図24〜図26に示す第8の実施形態によるステンシルマスクにおいては、荷電粒子遮蔽構造体の応力緩和構造として荷電粒子遮蔽部86の一端にばね機能部87を設けたことによって、荷電粒子ビームを遮蔽することによって荷電粒子遮蔽構造体に吸収された荷電粒子線のエネルギーによって荷電粒子遮蔽構造体が熱膨張しても、荷電粒子遮蔽構造体に発生する応力をばね機能部87で緩和、吸収することができる。また、機械的な振動がステンシルマスクに加わった場合でも、ばね機能部87が荷電粒子遮蔽構造体の振動を吸収、抑制するため荷電粒子遮蔽構造体が薄膜遮蔽構造体に形成された表面開孔部85を通過する荷電粒子線を遮蔽することを抑制することができる。また、重力等の影響により荷電粒子遮蔽部86の位置精度が低下し、荷電粒子遮蔽部86が薄膜遮蔽構造体に形成された表面開孔部85を通過する荷電粒子線を遮蔽することは、ばね機能部87によって応力を吸収することにより抑制することができる。さらに、ウエットエッチング技術を用いることによって、高価なドライエッチング装置を用いることなく裏面側の開孔部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態によるステンシルマスクを示す概略平面図。
【図2】図1における線A−A′に沿った概略断面図。
【図3】図1における線B−B′に沿った概略断面図。
【図4】図1〜図3に示すにおける第1の実施形態によるステンシルマスクの製造方法のそれぞれの工程を示す概略断面図。
【図5】本発明の第2の実施形態によるステンシルマスクを示す概略平面図。
【図6】図5における線A−A′に沿った概略断面図。
【図7】図5における線B−B′に沿った概略断面図。
【図8】本発明の第3の実施形態によるステンシルマスクを示す概略平面図。
【図9】図8における線A−A′に沿った概略断面図。
【図10】図8における線B−B′に沿った概略断面図。
【図11】本発明の第4の実施形態によるステンシルマスクを示す概略平面図。
【図12】図11における線A−A′に沿った概略断面図。
【図13】図11における線B−B′に沿った概略断面図。
【図14】本発明の第5の実施形態によるステンシルマスクを示す概略平面図。
【図15】図14における線A−A′に沿った概略断面図。
【図16】図14における線B−B′に沿った概略断面図。
【図17】図14〜図16に示すにおける第5の実施形態によるステンシルマスクの製造方法のそれぞれの工程を示す概略断面図。
【図18】本発明の第6の実施形態によるステンシルマスクを示す概略平面図。
【図19】図18における線A−A′に沿った概略断面図。
【図20】図18における線B−B′に沿った概略断面図。
【図21】本発明の第7の実施形態によるステンシルマスクを示す概略平面図。
【図22】図21における線A−A′に沿った概略断面図。
【図23】図21における線B−B′に沿った概略断面図。
【図24】本発明の第8の実施形態によるステンシルマスクを示す概略平面図。
【図25】図24における線A−A′に沿った概略断面図。
【図26】図24における線B−B′に沿った概略断面図。
【符号の説明】
【0080】
1:SOI基板
2:薄膜部
3:埋込酸化膜
4:支持基板
5:表面開孔部
6:応力緩和開孔部
7:空隙部
8:支持基板4に形成した開孔部
9:片持ち梁構造部分2aと支持基板4との間の空隙部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板の一面に形成した薄膜部と、
該薄膜部に形成した少なくとも一つの荷電粒子ビームの形状を整形する転写パターン開孔部と、
薄膜部に形成した転写パターン開孔部を囲む薄膜部の領域に形成され、荷電粒子線の入射によって発生する熱応力を緩和する応力緩和開孔部と
を有して成ることを特徴とするステンシルマスク。
【請求項2】
応力緩和開孔部が、薄膜部に形成した転写パターン開孔部全体を囲む薄膜部の領域にコ字状に連続して形成され、転写パターン開孔部の形成された薄膜部が片持ち梁構造として構成されることを特徴とする請求項1に記載のステンシルマスク。
【請求項3】
応力緩和開孔部が、薄膜部に形成した転写パターン開孔部全体を囲む薄膜部の領域における三辺の各々に形成された開孔部から成り、これら隣接した開孔部の間に、荷電粒子線の入射によって発生する熱応力による変形に対するばね機能をもつ薄膜部領域を残して構成されることを特徴とする請求項1に記載のステンシルマスク。
【請求項4】
シリコン基板の一面に形成した薄膜部と、
上記薄膜部に形成した少なくとも一つの荷電粒子ビームの形状を整形する転写パターン開孔部と、
シリコン基板の他面に形成した荷電粒子遮蔽部と
を有し、
上記荷電粒子遮蔽部が、薄膜部に形成した転写パターン開孔部の一つ又は複数を囲む薄膜部の領域に沿って一端側から他端側に向って伸び、荷電粒子線の入射によって該荷電粒子遮蔽部に発生する熱応力を緩和する応力緩和領域部を構成して成ることを特徴とするステンシルマスク。
【請求項5】
応力緩和領域部が、薄膜部に形成した転写パターン開孔部の一つ又は複数を囲む薄膜部の領域に沿って一端側から他端側に向って伸びる片持ち梁構造として構成されることを特徴とする請求項4に記載のステンシルマスク。
【請求項6】
応力緩和領域部が、薄膜部に形成した転写パターン開孔部の一つ又は複数を囲む薄膜部の領域に沿って一端側から他端側に向って伸び、他端側が、荷電粒子線の入射によって発生する熱応力による変形に対するばね機能をもつ領域で互いに結合して構成されることを特徴とする請求項4に記載のステンシルマスク。
【請求項7】
SOI基板を酸化する工程と、
表面側の酸化膜に表面開孔部のマスクとなる開孔部を開孔する工程と、
酸化膜マスクを用いて薄膜部に開孔部を形成する工程と、
薄膜部に形成した開孔部の側壁を酸化する工程と、
裏面側の酸化膜に裏面開孔部のマスクとなる開孔を形成する工程と、
裏面酸化膜マスクを用いて支持基板に開孔部を形成する工程と、
表面側酸化膜と裏面側酸化膜と表裏面の開孔部によって露出した埋込酸化膜をエッチングする工程と
を含んで成ることを特徴とするステンシルマスクの製造方法。
【請求項8】
裏面酸化膜マスクを用いて支持基板に開孔部を形成する工程がドライエッチング法により実施されることを特徴とする請求項7に記載のステンシルマスクの製造方法。
【請求項9】
裏面酸化膜マスクを用いて支持基板に開孔部を形成する工程がアルカリ性エッチング液を用いて結晶異方性ウエットエッチング法により実施されることを特徴とする請求項7に記載のステンシルマスクの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図4(d)】
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【図4(e)】
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【図4(f)】
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【図4(g)】
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【図4(h)】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17(a)】
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【図17(b)】
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【図17(c)】
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【図17(d)】
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【図17(e)】
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【図17(f)】
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【図17(g)】
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【図17(h)】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2007−207843(P2007−207843A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22405(P2006−22405)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000101710)アルバック成膜株式会社 (39)
【Fターム(参考)】