説明

ステージおよびステージの製造方法

【課題】 載置される基板の加工または検査を高精度に行なう要求に応える。
【解決手段】 外側第1リニアガイド6aは、ステージベース5に接続された、第1方向に沿って直線状である外側第1レール11aと、外側第1レール11aに取り付けられ、外側第1レール11a上を第1方向に沿って移動可能であるとともに、第1テーブル7に接続された外側第1スライダ12aとを有する。内側第1リニアガイド12bは、ステージベース5に接続された、第1方向に沿って直線状である内側第1レール11bと、内側第1レール11bに取り付けられ、内側第1レール11b上を第1方向に沿って移動可能であるとともに、第1テーブル7に接続された内側第1スライダ12bとを有する。第2リニアガイド8の第2レール18の熱膨張率は、第1テーブル7の熱膨張率よりも大きい。内側第1スライダ12bの高さHbは、外側第1スライダ12aの高さHaよりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造装置または液晶製造装置においてウェハまたはガラス基板の搬送に用いられるステージおよびステージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造装置または液晶製造装置においては、ウェハまたはガラス基板などの基板を搬送し、所定位置に位置決めするステージが用いられている。
【0003】
このステージとしては、例えば、特許文献1に、テーブルベースと、このテーブルベース上に位置するX軸駆動テーブルと、このX軸駆動テーブル上に位置するY軸駆動テーブルとを備えた構成が記載されている。さらに、特許文献1のステージにおいては、X軸駆動テーブルとテーブルベースの間に、X軸方向に平行に延びる一対のX軸レールとこのX軸レールに取り付けられてスライドするX軸ガイドとが設けられており、X軸駆動テーブルとY軸テーブルとの間に、Y軸方向に平行に延びる一対のY軸レールとこのY軸レールに取り付けられてスライドするY軸ガイドとが設けられている。
【0004】
この特許文献1のステージにおいて、例えば、セラミック製のX軸テーブルと金属製のY軸レールとを用いると、Y軸レールの熱膨張率がX軸テーブルの熱膨張率よりも大きくなることがある。この場合、ステージと同時に使用されるポンプやレーザー干渉計などの装置によってステージの周囲の温度が上がると、上述した熱膨張率の違いによって、X軸テーブルがY軸レールに対して凸状に反ることがある。このようにX軸テーブルの平坦性が低下すると、ステージ上に載置される基板に傾きが生じ、基板の加工または検査の精度が低下しやすくなる。
【0005】
それ故、載置される基板の加工または検査を高精度に行なうことが可能なステージが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−349494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、載置される基板の加工または検査を高精度に行なう要求に応えるステージを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係るステージは、ステージベースと、該ステージベース上に設けられ、第1方向に沿って直線状であるとともに該第1方向に交差する第2方向に沿って配列された複数の第1リニアガイドと、該複数の第1リニアガイド上に設けられた第1テーブルと、該第1テーブル上に設けられ、前記第2方向に沿って直線状であるとともに前記第1方向に沿って配列された複数の第2リニアガイドと、該複数の第2リニアガイド上に設けられた第2テーブルとを備える。
【0009】
前記複数の第1リニアガイドは、両端に位置する1組の外側第1リニアガイドと、該1組の外側第1リニアガイドの間に位置する内側第1リニアガイドとを有する。前記外側第1リニアガイドは、前記ステージベースに接続された、前記第1方向に沿って直線状であ
る外側第1レールと、該外側第1レールに取り付けられ、該外側第1レール上を前記第1方向に沿って移動可能であるとともに、前記第1テーブルに接続された外側第1スライダとを有する。前記内側第1リニアガイドは、前記ステージベースに接続された、前記第1方向に沿って直線状である内側第1レールと、該内側第1レールに取り付けられ、該内側第1レール上を前記第1方向に沿って移動可能であるとともに、前記第1テーブルに接続された内側第1スライダとを有する。
【0010】
前記複数の第2リニアガイドのそれぞれは、前記第1テーブルに接続された、前記第2方向に沿って直線状である第2レールと、該第2レールに取り付けられ、該第2レール上を前記第2方向に沿って移動可能であるとともに、前記第2テーブルに接続された第2スライダとを有する。
【0011】
前記第2レールの熱膨張率は、前記第1テーブルの熱膨張率よりも大きい。前記内側第1スライダにおける前記第1レール側から前記第1テーブル側への高さは、前記外側第1スライダにおける前記第1レール側から前記第1テーブル側への高さよりも小さい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一形態に係るステージによれば、内側第1スライダの高さを外側第1スライダの高さよりも小さくすることによって、ステージを使用する際に第1テーブルの反りを低減できる。したがって、ステージに載置される基板の傾きを低減することができるため、この基板の加工または検査を高精度に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態に係るステージの平面視であり、図1(b)は、図1(a)に示したステージの側面視である。
【図2】図2(a)は、図1(b)における外側第1リニアガイドの部分拡大図であり、図2(b)は、図1(b)における内側第1リニアガイドの部分拡大図である。
【図3】図3(a)は、実験例2の平面視であり、図3(b)は、図3(a)に示したステージの側面視である。
【図4】図4(a)は、実験例1のステージにおいて、真空チャンバ内を22℃から26℃に変化させたときの真直度を測定したグラフであり、図4(b)は、実験例2のステージにおいて、真空チャンバ内を22℃から26℃に変化させたときの真直度を測定したグラフである。
【図5】図5(a)は、実験例2において、真空チャンバ内の温度を上昇させたときのステージの平面視であり、図5(b)は、図5(a)に示したステージの側面視である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態に係るステージを用いた位置決め装置を、図1および図2に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1に示した位置決め装置1は、半導体製造装置または液晶製造装置において、加工または検査の対象であるウェハまたはガラス基板などの基板を所定の場所に位置決めするものである。以下、半導体製造装置においてウェハを位置決めする場合を例に説明する。
【0016】
この位置決め装置1は、中空状の容器である真空チャンバ2と、この真空チャンバ2内でチャンバベース3に支持されたステージ4とを含んでいる。ウェハ(図示せず)は、真空チャンバ2内に収納されるとともに、ステージ4上に載置される。
【0017】
真空チャンバ2は、ウェハおよびステージ3の周囲を真空状態として、空気に起因した
光や電子ビームの干渉を低減するものである。この真空チャンバ2の内部は、気圧が例えば10−5Pa以上100Pa以下といった真空状態に保たれている。また、このように真空チャンバ2の内部を真空状態に保つため、真空チャンバ2にはポンプなどの排気手段が設置される。
【0018】
ステージ4は、ウェハの位置決めを行なうものである。このステージ4は、第1方向(X方向)および第2方向(Y方向)に平行な主面(XY平面)を有する平板状のステージベース5と、このステージベース5上に設けられ、第1方向に沿って直線状である複数の第1リニアガイド6と、この複数の第1リニアガイド6上に設けられ、第1方向および第2方向に平行な主面を有する平板状の第1テーブル7と、この第1テーブル7に接続した第1駆動部(図示せず)と、第1テーブル7上に設けられ、第2方向に沿って直線状である複数の第2リニアガイド8と、この複数の第2リニアガイド8上に設けられ、第1方向および第2方向に平行な主面を有する平板状の第2テーブル9と、この第2テーブル9に接続した第2駆動部(図示せず)とを含んでいる。なお、本実施形態において、第1方向と第2方向とは、直交している。
【0019】
ステージベース5は、ステージ4を構成する他の部材を支持するものである。このステージベース5は、アルミナ、コージエライト、窒化ケイ素または炭化ケイ素などのセラミック材料によって形成することができる。なかでも、セラミック材料としてアルミナを用いることが望ましい。その結果、ステージベース5を高剛性且つ低熱膨張として、ステージ4の位置決め精度を高めることができる。
【0020】
ステージベース5の高さ(Z方向)は、例えば50mm以上100mm以下に設定されている。また、ステージベース5の熱膨張率は、例えば0.1ppm/℃以上8ppm/℃以下に設定されている。なお、ステージベース5の熱膨張率は、市販のTMA(Thermo-Mechanical Analysis)装置を用いて、JISK7197−1991に準じた測定方法によって測定される。以下、各部材の熱膨張率は、ステージベース5と同様の方法で測定される。
【0021】
また、ステージベース5は、第1リニアガイド6側の一主面に、複数の第1リニアガイド6のそれぞれを支持する複数の凸部10を有している。この凸部10は、第1リニアガイド6を固定するものであり、それぞれの凸部10は、第1方向に沿って直線状であるとともに、第2方向に沿って配列している。この凸部10の高さ(ステージベース5側から第1リニアガイド6側への高さ(Z方向))は、例えば1mm以上20mm以下に設定されている。なお、凸部10は、ステージベース5に形成されていなくても構わない。
【0022】
ここで、便宜上、複数の凸部10のうち、両端に位置する1組の凸部10を外側凸部10aとし、外側凸部10aの間に位置する凸部10を内側凸部10bとする。
【0023】
また、図1において、ステージベース5は、第1リニアガイド6側に配された平板状の上側ステージベース5aと、第1リニアガイド6と反対側に配された平板状の下側ステージベース5bとからなるが、ステージベース5は、1つの部材のみから構成されても構わない。
【0024】
複数の第1リニアガイド6は、転がり方式の直線運動によって、第1テーブル7の移動する方向を第1方向に規定するものである。それぞれの第1リニアガイド6は、図2に示すように、ステージベース5の凸部10に接続し、第1方向に沿って直線状である第1レール11と、この第1レール11に取り付けられ、第1レール11上を第1方向に沿って移動可能であるとともに、第1テーブル7に接続した第1スライダ12と、第1レール11と第1スライダ12との間に介された球状の第1ボール13とを含んでいる。
【0025】
ここで、便宜上、図2に示すように、複数の第1リニアガイド6のうち、両端に位置する1組の第1リニアガイド6を外側第1リニアガイド6aとし、外側第1リニアガイド6aの間に位置する第1リニアガイド6を内側第1リニアガイド6bとする。
【0026】
第1レール11は、第1スライダ12を所定の方向(第1方向)に移動させるためのレールとして機能するものである。この第1レール11は、例えばステンレスまたはベリリウム銅などの金属材料によって形成することができる。なかでも、金属材料としてステンレスを用いることが望ましい。その結果、第1レール11を長寿命化することができる。
【0027】
第1レール11の高さ(Z方向)は、例えば5mm以上20mm以下に設定されている。また、第1レール11の熱膨張率は、例えば15ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定されている。
【0028】
また、第1レール11の側面には、第1方向に渡って第1レール溝14が形成されている。この第1レール溝14の内側には、第1ボール13の一部が配置される。
【0029】
なお、便宜上、外側第1リニアガイド6aの第1レール11を外側第1レール11aとし、内側第1リニアガイド6bの第1レール11を内側第1レール11bとする。
【0030】
第1スライダ12は、第1レール11上を第1方向に沿って移動することによって、第1テーブル7を第1方向に沿って移動させるものである。この第1スライダ12は、例えばステンレスまたはベリリウム銅などの金属材料によって形成することができる。なかでも、金属材料としてステンレスを用いることが望ましく、その結果、第1スライダ12を長寿命化することができる。また、第1スライダ12は、第1レール11と同一材料からなることが望ましい。その結果、第1スライダ12と第1レール11との熱膨張率の差を低減し、第1スライダ12と第1レール11との間における熱応力を低減できる。
【0031】
第1スライダ12の高さ(第1レール11側から第1テーブル7側への高さ(Z方向))は、例えば5mm以上30mm以下に設定されている。この第1スライダ12の高さは、第1レール11の上面と対向する第1スライダ12の下面から、第1テーブル7の下面と対向する第1スライダ12の上面までの高さである。また、第1スライダ12の熱膨張率は、例えば15ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定されている。
【0032】
また、第1スライダ12には、第1方向に渡って凹部15が形成されており、この凹部15の内側には、第1レール11が嵌め合わさられる。この凹部15の深さ(Z方向)は、例えば5mm以上20mm以下に設定されている。
【0033】
また、凹部15の内側の側面には、第1方向に渡って第1スライダ溝16が形成されている。この第1スライダ溝16の内側には、第1ボール13の一部が配置される。
【0034】
ここで、便宜上、外側第1リニアガイド6aの第1スライダ12を外側第1スライダ12aとし、内側第1リニアガイド6bの第1スライダ12を内側第1スライダ12bとする。
【0035】
第1ボール13は、第1スライダ12が移動する際に回転することによって、第1レール11と第1スライダ12との間における摩擦を低減し、第1スライダ12の移動を高精度化、高速化および省力化するものである。この第1ボール13は、例えば窒化ケイ素またはジルコニアなどのセラミック材料によって形成することができる。なかでも、セラミック材料として窒化ケイ素を用いることが望ましい。その結果、第1レール11および第
1スライダ12と異なる材料で第1ボール13を形成することによって、第1ボール13の摩耗を低減できる。
【0036】
第1ボール13の直径は、例えば1mm以上6mm以下に設定されている。また、第1ボール13の熱膨張率は、例えば7ppm/℃以上12ppm/℃以下に設定されている。
【0037】
ここで、便宜上、外側第1リニアガイド6aの第1ボール13を外側第1ボール13aとし、内側第1リニアガイド6bの第1ボール13を内側第1ボール13bとする。
【0038】
第1テーブル7は、ウェハを第1方向にて位置決めするとともに、第2リニアガイド8および第2テーブル7を支持するものである。この第1テーブル7は、アルミナ、コージエライト、窒化ケイ素または炭化ケイ素などのセラミック材料によって形成することができる。なかでも、セラミック材料としては、アルミナを用いることが望ましい。その結果、第1テーブル7を高剛性且つ低熱膨張として、ステージ4の位置決め精度を高めることができる。また、第1テーブル7は、ステージベース5と同一材料からなることが望ましい。その結果、第1テーブル7とステージベース5との熱膨張率の差を低減し、第1テーブル7とステージベース5との間における熱応力を低減できる。
【0039】
第1テーブル7の高さ(Z方向)は、例えば20mm以上50mm以下に設定されている。また、第1テーブル7の熱膨張率は、例えば0.1ppm/℃以上8ppm/℃以下に設定されている。
【0040】
第1駆動部は、第1テーブル7を移動させる動力を発生するものである。この第1駆動部としては、例えばボールねじ、リニアモータまたは超音波モータなどを用いることができる。また、第1駆動部は、例えばステージベース5と第1テーブル7との間であって、第1リニアガイド6以外の領域に位置する。
【0041】
複数の第2リニアガイド8は、転がり方式の直線運動によって、第2テーブル9の移動する方向を第2方向に規定するものである。それぞれの第2リニアガイド8は、第1テーブル7に接続し、第2方向に沿って直線状である第2レール18と、この第2レール18に取り付けられ、第2レール18上を第2方向に沿って移動可能であるとともに、第2テーブル9に接続した第2スライダ19と、第2レール18と第2スライダ19との間に介された球状の第2ボール(図示せず)とを含んでいる。
【0042】
第2レール18は、第2スライダ19を所定の方向(第2方向)に移動させるためのレールとして機能するものである。この第2レール18は、第1レール11と同様の構成を有する。
【0043】
第2スライダ19は、第2レール18上を第2方向に沿って移動することによって、第2テーブル9を第2方向に沿って移動させるものである。この第2スライダ19は、第1スライダ12と同様の構成を有する。
【0044】
第2ボールは、第1ボールと同様の機能を有するものであり、同様の構成を有する。
【0045】
第2テーブル9は、ウェハを第2方向にて位置決めするとともに、ウェハを支持するものである。この第2テーブル9は、第1テーブル7と同様の構成を有する。
【0046】
第2駆動部は、第2テーブル9を移動させる動力を発生するものである。この第2駆動部は、第1駆動部と同様の構成を有する。
【0047】
上述した位置決め装置1において、ステージ4は、以下のように動作する。まず、第1駆動部によって発生した動力が第1テーブル7に伝わると、第1テーブル7は、第1リニアガイド6に案内されて第1方向に沿って移動する。次に、第2駆動部によって発生した動力が第2テーブル9に伝わると、第2テーブル9は、第2リニアガイド8に案内されて第2方向に沿って移動する。そして、第1駆動部および第2駆動部を制御することによって、第2テーブル7に載置されたウェハを所望の位置に位置決めすることができる。
【0048】
ところで、第2レール18として金属材料からなるものを用いて、第1テーブル7としてセラミック材料からなるものを用いた場合には、第2レール18の熱膨張率は、第1テーブル7の熱膨張率よりも大きくなりやすい。例えば、第2レール18がステンレスからなる場合に熱膨張率は17ppm/℃程度であり、第1テーブル7がアルミナからなる場合に熱膨張率は7ppm/℃程度である。
【0049】
したがって、例えば、位置決め装置1を使用する際に、真空チャンバ2に設置されるポンプやレーザー干渉計などから熱が発生すると、真空チャンバ2内が高温となってステージ4に熱が加わり、第2レール18が第1テーブル7よりも大きく熱膨張する。その結果、第1テーブル7に熱応力が印加され、第1テーブル7が第2レール18に向かって凸状に反りやすくなる。
【0050】
一方、本実施形態のステージ4においては、複数の第1リニアガイド6は、両端に位置する1組の外側第1リニアガイド6aと、1組の外側第1リニアガイド6aの間に位置する内側第1リニアガイド6bとを有している。その結果、外側第1リニアガイド6aによって、第1テーブル7の両端を固定しつつ、内側第1リニアガイド6bによって第1テーブル7の内側を固定することができるため、第1テーブル7の反りを低減することができる。
【0051】
ここで、ステージ4に加わる熱が大きくなると、第1テーブル7の内側に接続した内側第1リニアガイド6bは、外側第1リニアガイド6aよりも大きな応力が印加されやすい。このため、内側第1レール11bと内側第1スライダ12bとの取り付け箇所において、内側第1レール11bおよび内側第1スライダ12bのいずれかに弾性変形が生じて、取り付け箇所の構造が変化し、内側第1リニアガイド6bの高さ(ステージベース5側から第1テーブル7側への高さ(Z方向))が、外側第1リニアガイド6aの高さ(ステージベース5側から第1テーブル7側への高さ(Z方向))よりも、大きくなりやすい。
【0052】
一方、本実施形態のステージ4においては、内側第1スライダ12bの高さHb(第1レール11側から第1テーブル7側への高さ(Z方向))は、外側第1スライダ12aの高さHa(第1レール11側から第1テーブル7側への高さ(Z方向))よりも、小さい。
【0053】
その結果、ステージ4を作製する際に、内側第1リニアガイド6bの高さHbを外側第1リニアガイド6aの高さHaよりも小さくし、ひいては第1テーブル7を第2レール18に対して凹状にすることができる。これにより、真空チャンバ2内が高温となって内側第1リニアガイド6bに外側第1リニアガイド6aよりも大きな応力が印加された際に、内側第1リニアガイド6bと外側第1リニアガイド6aとの高さの差を低減することができる。したがって、第1テーブル7の反りを低減し、ステージ4に載置されるウェハの傾きを低減することができ、ひいてはウェハの加工または検査の精度を高めることができる。
【0054】
また、第1テーブル7の反りを低減することによって、第2レール18の変形を低減し
て、第2リニアガイド8の転がり抵抗を低減し、ひいては第2リニアガイド8の移動を高精度化、高速化および省力化することができる。なお、ステージ4を作製する際の温度は、20℃以上25℃以下に設定されている。
【0055】
外側第1スライダ12aの高さHaは、例えば5mm以上30mm以下に設定され、内側第1スライダ12bの高さHbは、例えば5mm以上30mm以下に設定されている。また、外側第1スライダ12aの高さHaと内側第1スライダ12bの高さHbとの差は、例えば2μm以上5μm以下に設定されている。
【0056】
一方、外側第1レール11aの高さ(ステージテーブル5側から第1スライダ12側への高さ(Z方向))は、内側第1レール11bとの高さ(ステージテーブル5側から第1スライダ12側への高さ(Z方向))と同じである。その結果、各第1レール11aを同一工程で加工して生産性を高めることができる。なお、外側第1レール11aと内側第1レール11bとの高さの差は、例えば1μm以下に設定されている。
【0057】
また、本実施形態においては、複数の第1リニアガイド6が、1組の外側第1リニアガイド6aとその間の内側第1リニアガイド6bといった、3つの第1リニアガイド6からなる。この場合に、内側第1リニアガイド6bは、第1テーブル7の中央に位置することが望ましい。その結果、第1テーブル7の変形を低減し、ステージ4に載置されるウェハの傾きを低減できる。この場合に、一方の外側第1リニアガイド6aと内側第1リニアガイド6bとの距離は、他方の外側第1リニアガイド6aと内側第1リニアガイド6bとの距離の例えば0.9倍以上1.1倍以下に設定されている。
【0058】
次に、上述した位置決め装置1の製造方法を説明する。
【0059】
(1)ステージベース5、第1ベース7、第1ボール13、第2ベース9および第2ボールといったセラミック製の各部材を作製する。具体的には、例えば以下のように行なう。
【0060】
まず、セラミック粉末を種々の成形方法を用いて成形して成形体を得た後、この成形体を所定の温度で焼成して焼結体を得る。次に、この焼結体を所望の形状に研削加工することによって、セラミック製の各部材を作製することができる。
【0061】
(2)第1レール11、第1スライダ12、第2レール18および第2スライダ19といった金属製の各部材を作製する。具体的には、例えば以下のように行なう。
【0062】
金属材を所望の形状に研削加工することによって、金属製の各部材を作製することができる。このように研削加工で金属材を所望の形状とするため、外側第1スライダ12aおよび内側第1スライダ12bの高さを容易に調整することができる。その結果、上述した如く、内側第1スライダ12bの高さを外側第1スライダ12aの高さよりも容易に小さくすることができる。
【0063】
(3)第1リニアガイド6および第2リニアガイド8を作製する。具体的には、例えば以下のように行なう。
【0064】
まず、第1レール11の第1レール溝14および第1スライダ12の第1スライダ溝16の双方に第1ボール13の少なくとも一部を配置することによって、第1レール11と第1スライダ12との間に第1ボール13を介在させつつ、第1レール11上に第1スライダ12を取り付ける。これにより、第1リニアガイド6を作製することができる。また、第1リニアガイド6と同様にして、第2リニアガイド8を作製することができる。
【0065】
ここで、工程(2)において、内側第1スライダ12bの高さを外側第1スライダ12aの高さよりも小さくしているため、内側第1リニアガイド6bの高さを外側第1リニアガイド6aの高さよりも容易に小さくすることができる。
【0066】
(4)スライドベース5に第1リニアガイド6を介して第1テーブル7を接続する。具体的には、例えば以下のように行なう。
【0067】
まず、第1レール11を第1方向に渡って複数箇所でスライドベース5にねじ止めすることによって、スライドベース5に第1リニアガイド6を固定する。次に、第1リニアガイド6を第1テーブル7にねじ止めすることによって、第1テーブル7に第1リニアガイド6を接続する。
【0068】
ここで、工程(3)にて、内側第1リニアガイド6bの高さを外側第1リニアガイド6aの高さよりも小さくしているため、第1テーブル7を凹状にしつつ、複数の第1リニアガイド6上に設けることができる。
【0069】
なお、本工程は、温度が例えば20℃以上25℃以下に設定されている。
【0070】
(5)第1テーブル7に第2リニアガイド8を介して第2テーブル9を接続する。具体的には、例えば、工程(4)と同様に行なう。
【0071】
以上のようにして、ステージ4を作製することができる。
【0072】
(6)ステージ4を、チャンバステージ3を介して真空チャンバ2内に設置することによって、図1に示す位置決め装置1を作製することができる。
【0073】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良、組み合わせなどが可能である。
【0074】
例えば、上述した実施形態において、内側第1スライダの高さを外側第1スライダの高さよりも小さくした構成を例に説明したが、ステージを作製する際の温度(20℃以上25℃以下)で内側第1リニアガイドの高さが外側第1リニアガイドの高さよりも小さければよい。このような構成の例として、内側凸部の高さを外側凸部の高さよりも例えば2μm以上5μm以下小さくしても構わない。また、内側第1レールの高さを外側第1レールの高さよりも例えば2μm以上5μm以下小さくしても構わない。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0076】
(ステージの準備)
上述した製造方法を用いて、実験例1のステージ4を作製し、真空チャンバ2内に設置した。なお、実験例1のステージ4は、外側第1スライダ12aと内側第1スライダ12bとの高さの差が2μmに設定されている。
【0077】
また、上述した製造方法において、図3に示すように、内側第1リニアガイド6bを形成せずに実験例2のステージ4を作製し、真空チャンバ2内に設置した。
【0078】
ここで、実験例1および2のステージ4は、周囲の温度を23℃に維持して作製した。
【0079】
(評価方法)
実験例1および2において、真空チャンバ2内の温度を22℃から26℃まで変化させて、第1テーブル7の形状を観察し、第1テーブル7の真直度をカールマール社製電気マイクロメータ装置によって測定した。なお、真直度は、JISB0182−1993に準ずる。
【0080】
(評価結果)
実験例1のステージ4は、図4(a)に示すように、真空チャンバ2内の温度が22℃においては第1テーブル7が凹形状となり真直度が1.5μmであり、真空チャンバ2内の温度が26℃においては第1テーブル7が凸形状となり真直度が1μmであった。
【0081】
一方、実験例2のステージ4は、図4(b)に示すように、真空チャンバ2内の温度が22℃においては第1テーブル7が凹形状となり真直度が1μmであり、真空チャンバ2内の温度が26℃においては第1テーブル7が凸形状となり真直度が5μmであった。この実験例2のステージ4は、真空チャンバ2内の温度を上昇させると、図5に示すように、第1テーブル7が凸形状に大きく反った。
【0082】
以上の結果より、本発明のステージ4によれば、内側第1スライダ12bの高さを外側第1スライダ12aの高さよりも小さくすることによって、ステージ4の周囲の温度が上がった際に、第1テーブル7の反りを低減できることが確かめられた。
【符号の説明】
【0083】
1 位置決め装置
2 真空チャンバ
3 チャンバベース
4 ステージ
5 ステージベース
6 第1リニアガイド
7 第1テーブル
8 第2リニアガイド
9 第2テーブル
10 凸部
11 第1レール
12 第1スライダ
13 第1ボール
14 第1レール溝
15 凹部
16 第1スライダ溝
18 第2レール
19 第2スライダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージベースと、
該ステージベース上に設けられ、第1方向に沿って直線状であるとともに該第1方向に交差する第2方向に沿って配列された複数の第1リニアガイドと、
該複数の第1リニアガイド上に設けられた第1テーブルと、
該第1テーブル上に設けられ、前記第2方向に沿って直線状であるとともに前記第1方向に沿って配列された複数の第2リニアガイドと、
該複数の第2リニアガイド上に設けられた第2テーブルと
を備え、
前記複数の第1リニアガイドは、両端に位置する1組の外側第1リニアガイドと、該1組の外側第1リニアガイドの間に位置する内側第1リニアガイドとを有し、
前記外側第1リニアガイドは、前記ステージベースに接続された、前記第1方向に沿って直線状である外側第1レールと、該外側第1レールに取り付けられ、該外側第1レール上を前記第1方向に沿って移動可能であるとともに、前記第1テーブルに接続された外側第1スライダとを有し、
前記内側第1リニアガイドは、前記ステージベースに接続された、前記第1方向に沿って直線状である内側第1レールと、該内側第1レールに取り付けられ、該内側第1レール上を前記第1方向に沿って移動可能であるとともに、前記第1テーブルに接続された内側第1スライダとを有し、
前記複数の第2リニアガイドのそれぞれは、前記第1テーブルに接続された、前記第2方向に沿って直線状である第2レールと、該第2レールに取り付けられ、該第2レール上を前記第2方向に沿って移動可能であるとともに、前記第2テーブルに接続された第2スライダとを有し、
前記第2レールの熱膨張率は、前記第1テーブルの熱膨張率よりも大きく、
前記内側第1スライダにおける前記第1レール側から前記第1テーブル側への高さは、前記外側第1スライダにおける前記第1レール側から前記第1テーブル側への高さよりも小さいことを特徴とするステージ。
【請求項2】
請求項1に記載のステージにおいて、
前記内側第1リニアガイドは、前記内側第1レールと前記内側第1スライダとの間に介在して、前記内側第1スライダを前記第1レール上で移動可能とする球状の内側第1ボールをさらに備えることを特徴とするステージ。
【請求項3】
請求項2に記載のステージにおいて、
前記内側第1レールおよび前記内側第1スライダは、金属材料からなり、
前記内側第1ボールは、セラミック材料からなることを特徴とするステージ。
【請求項4】
請求項1に記載のステージにおいて、
前記第2レールは、金属材料からなり、
前記第1テーブルは、セラミック材料からなることを特徴とするステージ。
【請求項5】
ステージベースを準備する工程と、
第1方向に沿って直線状であり、該第1方向に交差する第2方向に沿って配列した複数の第1レールを前記ステージベース上に設け、前記複数の第1レールのうち、両端に位置する1組の前記第1レールを外側第1レールとし、該外側第1レールの間に位置する前記第1レールを内側第1レールとする工程と、
前記外側第1レール上を前記第1方向に沿って移動可能な外側第1スライダを前記外側第1レールに取り付ける工程と、
前記第1レール側からの高さが前記外側第1スライダの高さよりも小さく、前記内側第1
レール上を前記第1方向に沿って移動可能な内側第1スライダを、前記内側第1レールに取り付ける工程と、
前記外側第1スライダおよび前記内側第1スライダに第1テーブルを接続する工程と、
前記第2方向に沿って直線状であり、前記第1方向に沿って配列した、前記第1テーブルよりも熱膨張率の大きい複数の第2レールを前記第1テーブル上に設ける工程と、
前記第2レール上を前記第2方向に沿って移動可能な複数の第2スライダのそれぞれを、前記複数の第2レールに取り付ける工程と、
前記複数の第2スライダに第2テーブルを接続する工程と
を備えることを特徴とするステージの製造方法。
【請求項6】
ステージベースと、
該ステージベース上に設けられ、第1方向に沿って直線状であるとともに該第1方向に交差する第2方向に沿って配列された複数の第1リニアガイドと、
該複数の第1リニアガイド上に設けられた第1テーブルと、
該第1テーブル上に設けられ、前記第2方向に沿って直線状であるとともに前記第1方向に沿って配列された複数の第2リニアガイドと、
該複数の第2リニアガイド上に設けられた第2テーブルと
を備え、
前記複数の第1リニアガイドは、両端に位置する1組の外側第1リニアガイドと、該1組の外側第1リニアガイドの間に位置する内側第1リニアガイドとを有し、
前記外側第1リニアガイドは、前記ステージベースに接続された、前記第1方向に沿って直線状である外側第1レールと、該外側第1レールに取り付けられ、該外側第1レール上を前記第1方向に沿って移動可能であるとともに、前記第1テーブルに接続された外側第1スライダとを有し、
前記内側第1リニアガイドは、前記ステージベースに接続された、前記第1方向に沿って直線状である内側第1レールと、該内側第1レールに取り付けられ、該内側第1レール上を前記第1方向に沿って移動可能であるとともに、前記第1テーブルに接続された内側第1スライダとを有し、
前記複数の第2リニアガイドのそれぞれは、前記第1テーブルに接続された、前記第2方向に沿って直線状である第2レールと、該第2レールに取り付けられ、前記第2レール上を前記第2方向に沿って移動可能であるとともに、前記第2テーブルに接続された第2スライダとを有し、
前記第2レールの熱膨張率は、前記第1テーブルの熱膨張率よりも大きく、
前記内側第1リニアガイドにおける前記ステージベース側から前記第1テーブル側への高さは、20℃以上25℃以下の温度において、前記外側第1リニアガイドにおける前記ステージベース側から前記第1テーブル側への高さよりも小さいことを特徴とするステージ。
【請求項7】
ステージベースを準備する工程と、
第1方向に沿って直線状であり、該第1方向に交差する第2方向に沿って配列した複数の第1レールを前記ステージベース上に設け、前記複数の第1レールのうち、両端に位置する1組の前記第1レールを外側第1レールとし、該外側第1レールの間に位置する前記第1レールを内側第1レールとする工程と、
前記外側第1レール上を前記第1方向に沿って移動可能な外側第1スライダを前記外側第1レールに取り付けることによって、外側第1リニアガイドを設ける工程と、
前記内側第1レール上を前記第1方向に沿って移動可能な内側第1スライダを前記内側第1レールに取り付けることによって、前記ステージベース側からの高さが前記外側第1リニアガイドの高さよりも小さい内側第1リニアガイドを設ける工程と、
前記外側第1スライダおよび前記内側第1スライダに第1テーブルを接続する工程と、
前記第2方向に沿って直線状であり、前記第1方向に沿って配列した、前記第1テーブル
よりも熱膨張率の大きい複数の第2レールを前記第1テーブル上に設ける工程と、
前記第2レール上を前記第2方向に沿って移動可能な複数の第2スライダのそれぞれを、前記複数の第2レールに取り付ける工程と、
前記複数の第2スライダに第2テーブルを接続する工程と
を備えたことを特徴とするステージの製造方法。
【請求項8】
一主面に設けられ、該一主面に平行な第1方向に沿って直線状であり、該第1方向に交差する第2方向に沿って配列した複数の凸部を有するステージベースと、
該複数の凸部上のそれぞれに設けられ、前記第1方向に沿って直線状であるとともに前記第2方向に沿って配列された複数の第1リニアガイドと、
該複数の第1リニアガイド上に設けられた第1テーブルと、
該第1テーブル上に設けられ、前記第2方向に沿って直線状であるとともに前記第1方向に沿って配列された複数の第2リニアガイドと、
該複数の第2リニアガイド上に設けられた第2テーブルと
を備え、
前記複数の凸部は、両端に位置する1組の外側凸部と、該外側凸部の間に位置する内側凸部とを有し、
前記複数の第1リニアガイドは、両端に位置する1組の外側第1リニアガイドと、該1組の外側第1リニアガイドの間に位置する内側第1リニアガイドとを有し、
前記外側第1リニアガイドは、前記外側凸部に接続された、前記第1方向に沿って直線状である外側第1レールと、該外側第1レールに取り付けられ、該外側第1レール上を前記第1方向に沿って移動可能であるとともに、前記第1テーブルに接続された外側第1スライダとを有し、
前記内側第1リニアガイドは、前記内側凸部に接続された、前記第1方向に沿って直線状である内側第1レールと、該内側第1レールに取り付けられ、該内側第1レール上を前記第1方向に沿って移動可能であるとともに、前記第1テーブルに接続された内側第1スライダとを有し、
前記複数の第2リニアガイドのそれぞれは、前記第1テーブルに接続された、前記第2方向に沿って直線状である第2レールと、該第2レールに取り付けられ、該第2レール上を前記第2方向に沿って移動可能であるとともに、前記第2テーブルに接続された第2スライダとを有し、
前記第2レールの熱膨張率は、前記第1テーブルの熱膨張率よりも大きく、
前記内側凸部における前記ステージベース側から前記第1リニアガイド側への高さは、前記外側凸部における前記ステージベース側から前記第1リニアガイド側への高さよりも小さいことを特徴とするステージ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−115324(P2013−115324A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261950(P2011−261950)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】