説明

ステージ装置

【課題】本発明は、移動部材を所望の精度で移動させる際に、リニアモータで発生する熱の影響を可能な限り低減させるようにしたステージ装置を提供する。
【解決手段】略直方のブロック体をなす鋼製の取付けブラケット20には、スライダベースプレート10dに向けて突出する凸部20aにおける第1の着座面21が設けられ、第1の着座面21には、3本の第1のボルト22のそれぞれが貫通する3個の第1のボルト穴23aが形成されている。第1のボルト穴23aに連通する第1のボルト貫通孔23は、上下方向に延在するので、取付けブラケット20の上面20bから第1のボルト22を第1のボルト貫通孔23内に差し込むことができ、スライダベースプレート10dに形成された雌ネジ部(不図示)に第1のボルト22が螺着される。これにより、取付けブラケット20は、スライダベースプレート10dにしっかりと固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、液晶パネル、プラズマディスプレイパネルなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造や検査に利用されるステージ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2000−116104号公報がある。この公報に記載されたステージ装置は、定盤に固定された左右一対のリニアモータを備え、このリニアモータは、ワークの搬送方向に延在する固定子と、固定子に沿って移動する可動子とからなる。この可動子は、連結部材(取付けブラケット)を介してYガイド(移動部材)の一端に固定されている。このステージ装置に利用されるリニアモータは、固定子として電機子ユニットが利用され、可動子としてマグネットが利用されたムービングマグネット型である。また、ステージ装置には、可動子にコイルが利用されているムービングコイル型のリニアモータ(例えば特開2001−169529号公報)の適用も可能である。
【0003】
【特許文献1】特開2000−116104号公報
【特許文献2】特開2001−169529号公報
【特許文献3】特開2004−88981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイルへの通電により可動子自体に熱が発生し易いムービングコイル型のリニアモータを適用したステージ装置にあっては、可動子の熱が連結部材に伝達されると、連結部材に捻れや熱膨張が引き起こされ、連結部材の変形量がYガイドに伝達されて、Yガイドに反りや歪みが発生する。このような変形によって、Yガイドに固定された測定機器などを精密に移動させることができないといった問題点があった。また、可動子の熱が連結部材を介してYガイドに伝達されると、Yガイド自体も捻れや熱膨張が発生する。
【0005】
本発明は、移動部材を所望の精度で移動させる際に、リニアモータで発生する熱の影響を可能な限り低減させるようにしたステージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るステージ装置は、移動部材の移動方向に延在する固定子と、移動部材に固定されて固定子に沿って移動する可動子とを有するリニアモータを備えたステージ装置において、
可動子は、移動部材に取付けブラケットを介して固定され、取付けブラケットは、移動部材に接触する第1の着座面と、可動子に接触する第2の着座面とを有し、第1の着座面の接触範囲における長さは、第2の着座面の接触範囲における長さより短いことを特徴とする。
【0007】
このステージ装置において、取付けブラケットの歪み量は、取付けブラケットと可動子との接触にあたって、第2の着座面の接触範囲における長さ(B)に依存する。従って、取付けブラケットと移動部材との接触にあたって、第1の着座面の接触範囲における長さ(A)を、A<Bの関係に設計すれば、取付けブラケットの歪みの全てが移動部材に伝わらないため、取付けブラケットの歪み量>移動部材の歪み量の関係になる。このことは、移動部材を所望の精度で移動させる際に、リニアモータで発生する熱の影響を可能な限り低減させることができる。
【0008】
また、取付けブラケットには、移動部材に向けて突出する第1の着座面が設けられ、第1の着座面には、第1のボルトが貫通する第1のボルト穴が形成されていると好適である。
【0009】
この場合、取付けブラケットの第1の着座面と移動部材の端部とが接触し、第1の着座面上に位置する第1のボルト穴を貫通するボルトによって、取付けブラケットが移動部材に固定されているので、可動子から伝達される熱による取付けブラケットの熱変形や取付けブラケットの熱が移動部材の端部に伝達され難くなる。従って、可動子に向けて突出する第1の着座面の面積を必要最小限にすることで、取付けブラケットから移動部材の端部に伝達される変形や熱を必要最小限に抑えることができるといった優れた効果を有する。なお、第1の着座面の接触面積は、第1のボルト穴を貫通するボルトで取付けブラケットと移動部材とを連結する際に必要な強度を考慮して決定される。
【0010】
また、取付けブラケットには、可動子に向けて突出する第2の着座面が設けられ、第2の着座面には、第2のボルトが貫通する第2のボルト穴が形成されていると好適である。
このステージ装置では、取付けブラケットの第2の着座面と可動子とが接触し、第2の着座面上に位置する第2のボルト穴を貫通するボルトによって、取付けブラケットが可動子に固定されているので、可動子の熱が取付けブラケットに伝達され難くなる。従って、可動子に向けて突出する第2の着座面の面積を必要最小限にすることで、可動子から取付けブラケットに伝達される熱を必要最小限に抑えることができる。なお、第2の着座面の面積は、第2のボルト穴を貫通するボルトで可動子と取付けブラケットとを連結する際に必要な強度を考慮して決定される。このように、取付けブラケットが、第1及び第2の着座面と第1及び第2のボルト穴を有することで、移動部材側の取付け対策(第1の着座面及び第1ボルト穴)と、可動子側の取付け対策(第2の着座面及び第2のボルト穴)との相乗効果により、可動子に発生する熱による変形や可動子自体の熱が、移動部材に極めて伝達され難くなり、その結果として、移動部材に固定された測定機器やノズルなどを精密に移動させる際の誤差を極めて小さくすることができる。さらに、取付けブラケットに対策が施されているので、設計変更が容易である。
【0011】
また、移動部材の端部には、固定子に向けて突出するブラケット設置用突部が設けられていると好適である。
このようなブラケット設置用突部を採用することで、移動部材の端部で起こり得る熱変形をブラケット設置用突部で吸収させることができるといった優れた効果を有する。
【0012】
また、取付けブラケットの第1の着座面は、移動部材の端部に対向する面の略中央に設けられていると好適である。
このような構成を採用すると、移動部材の端部に取付けブラケットをバランス良く固定させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、移動部材を所望の精度で移動させる際に、リニアモータで発生する熱の影響を可能な限り低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るステージ装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、ステージ装置1は、フラットパネルディスプレイ(FPD)などのワークの製造や検査に利用される。このステージ装置1は、移動部材10を水平方向に直線的に往復運動させるための左右一対のリニアモータ2,3と、リニアモータ2,3の固定子4,5を支持するためのサイドフレーム6,7と、フラットパネルディスプレイ(FPD)などのワークを配置させるための吸着装置を支持する水平な石定盤8と、この石定盤8を支持するための架台9とを主として備えている。なお、吸着装置に代えて、微動用XYステージが石定盤8上に配置される場合もある。
【0016】
また、移動部材10は、図示しないノズル又は検査装置(カメラやレーザ計測器など)が固定される長尺状のメインビーム10aと、メインビーム10aと平行に延在する補強ビーム10b,10cと、メインビーム10a及び補強ビーム10b,10cの両端部に固定されたスライダベースプレート10dとからなる。そして、スライダベースプレート10dには、メインビーム10aを昇降させる昇降機構11を収容するためのハウジング12が固定されている。
【0017】
移動部材10の端部に設けられたスライダベースプレート10dには、石定盤8の両端に固定されたガイド用石定盤13,14の上面13a,14aを滑走するためのエアーパッド16,17が固定されている。さらに、スライダベースプレート10dには、ガイド用石定盤13,14の側面13b,14bを滑走するためのエアーパッド(図示せず)が固定されている。
【0018】
図2に示すように、移動部材10の端部に位置するスライダベースプレート10dは、取付けブラケット20を介して、リニアモータ2の可動子19に固定されている。この可動子19には、所定のコイル19aが埋設され、コイル19aに交番電流を流すことで、可動子19は、マグネットが水平方向に配列された固定子4に沿って移動すると同時に、熱を発生する。なお、リニアモータ3についても同様であるので、その説明は省略する。
【0019】
図3に示すように、略直方のブロック体をなす鋼製の取付けブラケット20には、スライダベースプレート10dに向けて突出する凸部20aにおける第1の着座面21が設けられ、第1の着座面21には、3本の第1のボルト22のそれぞれが貫通する3個の第1のボルト穴23aが形成されている。第1のボルト穴23aに連通する第1のボルト貫通孔23は、上下方向に延在するので、取付けブラケット20の上面20bから第1のボルト22を第1のボルト貫通孔23内に差し込むことができ、スライダベースプレート10dに形成された雌ネジ部(不図示)に第1のボルト22が螺着される。これにより、取付けブラケット20は、スライダベースプレート10dにしっかりと固定される。
【0020】
このステージ装置1では、取付けブラケット20の第1の着座面21とスライダベースプレート10d(移動部材の端部)とが接触し、第1の着座面21上に位置する第1のボルト穴23aを貫通する第1のボルト22によって、取付けブラケット20がスライダベースプレート10dに固定されている。よって、可動子19のコイル19aの発熱に起因した取付けブラケット20の熱による変形や取付けブラケット20の熱がスライダベースプレート10dに伝達され難くなる。
【0021】
従って、第1の着座面21の面積を必要最小限にすることで、取付けブラケット20からスライダベースプレート10dに伝達される変形や熱を必要最小限に抑えることができるといった優れた効果を有する。なお、第1の着座面21の面積は、取付けブラケット20と移動部材10とを連結する際に利用される第1のボルト22の本数によって決定される。
【0022】
さらに、取付けブラケット20には、可動子19に向けて突出する凸部20cにおける第2の着座面26が等間隔で、上下4個ずつの計8個設けられている。各第2の着座面26には、第2のボルト27が貫通する第2のボルト穴28aが形成されている。第2のボルト穴28aに連通する第2のボルト貫通孔28は、水平方向に延在するので、取付けブラケット20の側面20dから第2のボルト27を第2のボルト貫通孔28内に差し込むことができ、可動子19の端部に形成された雌ネジ部(不図示)に第2のボルト27が螺着される。これにより、取付けブラケット20は可動子19にしっかりと固定される。
【0023】
このステージ装置1では、取付けブラケット20の第2の着座面26と可動子19の端部とが接触し、第2の着座面26上に位置する第2のボルト穴28aを貫通する第2のボルト27によって、取付けブラケット20が可動子19に固定されているので、可動子19の熱が取付けブラケット20に伝達され難くなる。
【0024】
従って、可動子19に向けて突出する第2の着座面26の面積を必要最小限にすることで、可動子19から取付けブラケット20に伝達される変形や熱を必要最小限に抑えることができる。なお、各第2の着座面26の面積や個数は、可動子19と取付けブラケット20とを第2のボルト27で連結する際に必要な強度を考慮して決定される。
【0025】
このように、スライダベースプレート10d側の取付け対策(第1の着座面21及び第1ボルト穴23a)と、可動子19側の取付け対策(第2の着座面26及び第2のボルト穴28a)との相乗効果により、可動子19のコイル19aの発熱に起因した熱や熱変形が、スライダベースプレート10dに極めて伝達され難くなり、その結果として、移動部材10に固定された測定機器やノズルなどを精密に移動させる際の誤差を極めて小さくすることができる。さらに、取付けブラケット20に前述した取付け対策が施されているので、設計変更が容易である。
【0026】
さらに、スライダベースプレート10dには、固定子4,5に向けて突出するブラケット設置用突部30が設けられ、このブラケット設置用突部30は、取付けブラケット20と略同じ長さを有している。このようなブラケット設置用突部30を採用することで、スライダベースプレート10dで起こり得る熱変形をブラケット設置用突部30で吸収させることができるといった優れた効果を有する。
【0027】
さらに、第1の着座面21は、スライダベースプレート10dに対向する面20eの略中央の位置に設けられている。このような構成を採用することで、スライダベースプレート10dに取付けブラケット20をバランス良く固定させることができる。
【0028】
図3に示すように、第1の着座面21の接触範囲における長さ(A)は、第2の着座面26の接触範囲における長さ(B)より短い。取付けブラケット20の歪み量は、取付けブラケット20と可動子19との接触にあたって、第2の着座面26の接触範囲における長さ(B)に依存する。従って、取付けブラケット20と移動部材10との接触にあたって、第1の着座面21の接触範囲における長さ(A)を、A<Bの関係に設計すれば、取付けブラケット20の歪みの全てが移動部材10に伝わらないため、取付けブラケット20の歪み量>移動部材10の歪み量の関係になる。このことは、移動部材10を所望の精度で移動させる際に、リニアモータで発生する熱の影響を可能な限り低減させることができる。
【0029】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。前述した実施形態では、ムービングマグネット型リニアモータを利用しているが、ムービングマグネット型リニアモータであっても、可動子に熱が発生するので、本発明を適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るステージ装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るステージ装置の要部拡大斜視図である。
【図3】取付けブラケットを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1…ステージ装置、2,3…リニアモータ、4,5…固定子、10…移動部材、10d…スライダベースプレート(移動部材の端部)、19…可動子、20…取付けブラケット、20e…対向面、21…第1の着座面、22…第1のボルト、23a…第1のボルト穴、26…第2の着座面、27…第2のボルト、28a…第2のボルト穴、30…ブラケット設置用突部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動部材の移動方向に延在する固定子と、前記移動部材に固定されて前記固定子に沿って移動する可動子とを有するリニアモータを備えたステージ装置において、
前記可動子は、前記移動部材に取付けブラケットを介して固定され、前記取付けブラケットは、前記移動部材に接触する第1の着座面と、前記可動子に接触する第2の着座面とを有し、前記第1の着座面の接触範囲における長さは、前記第2の着座面の接触範囲における長さより短いことを特徴とするステージ装置。
【請求項2】
前記取付けブラケットには、前記移動部材に向けて突出する前記第1の着座面が設けられ、前記第1の着座面には、第1のボルトが貫通する第1のボルト穴が形成されていることを特徴とする請求項1記載のステージ装置。
【請求項3】
前記取付けブラケットには、前記可動子に向けて突出する前記第2の着座面が設けられ、前記第2の着座面には、第2のボルトが貫通する第2のボルト穴が形成されていることを特徴とする請求項1記載のステージ装置。
【請求項4】
前記移動部材の端部には、前記固定子に向けて突出するブラケット設置用突部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のステージ装置。
【請求項5】
前記取付けブラケットの前記第1の着座面は、前記移動部材の端部に対向する面の略中央に設けられていることを特徴とする請求項1記載のステージ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−247172(P2009−247172A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92928(P2008−92928)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】