説明

ストリーム受信再生装置及びストリーミングネットワークシステム

【課題】ストリームデータの送信側が送信するストリームのレートの制御をすることが不可能であるシステムにおいても、ストリームデータ受信用バッファのアンダーフローの発生頻度を低下させること。
【解決手段】ネットワーク103を介して配信されたストリームデータおよび制御データを受信する端末通信部110と、受信したストリームデータを一時的に蓄積するバッファ111と、蓄積されたストリームデータをデコードするデコーダ112と、端末制御部113を具備する。端末制御部113は、端末通信部110からストリームデータに関する制御情報を受信し、受信した制御情報によりストリームデータの状態が一時停止可能であり、かつ、ストリームデータの蓄積量の増加必要性が有ると判定した場合に、デコーダ112を制御してストリームデータのデコードを一時停止し、バッファ111に蓄積されるストリームデータのデータ量を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声や動画などのデータをネットワーク経由で受信しながら再生するストリーミング技術を用いるストリーム受信再生装置及びストリーミングネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ストリーミング技術は、音声や動画などのリアルタイム性が要求されるデータを、ネットワークを介して配送し、配送しながら再生を行う技術である。
【0003】
ストリーミング技術を用いたストリーム受信再生装置は、全データをダウンロードすることなく再生できるので、
(1)受信側に大容量の記憶装置などが不要となる。
【0004】
(2)全データをダウンロードして再生する方式に比べ、データの配送開始から再生開始までの所要時間を短縮してデータ再生の高速化を図れる。
という特徴がある。
【0005】
しかしながら、ストリーミング技術を用いたストリーム受信再生装置においては、ネットワーク上での通信エラー発生や、無線ネットワーク経由でデータを配信する場合の電波状況の悪化などが原因となって、ストリームデータの受信バッファのアンダーフローが発生するという課題がある。
【0006】
このようなストリームデータの受信バッファのアンダーフローが発生すると聴感上の雑音発生などの問題が生じる。
【0007】
この問題を解決する技術として、例えば特許文献1に示す「伝送システム」がある。図5は、特許文献1記載の伝送システムの構成を示すブロック図である。
【0008】
図5において、サーバ30は、ネットワーク10を介してクライアント端末20と接続されている。
【0009】
サーバ30には、画像と音声を多重化した多重化レートの異なる複数の多重化ファイル(ストリームデータ)が格納されている。
【0010】
サーバ30から送られた多重化データは、まずクライアント端末20の入力バッファ21でバッファリングされ多重分離部22に渡される。
【0011】
多重分離部22は、データストリームを画像データと音声データとに分離し、画像復号部23及び音声復号部24にデータを送る。
【0012】
画像復号部23は、画像データを復号し、画像バッファ25に復号データを送る。
【0013】
音声復号部24は、音声データを復号し、音声バッファ26に復号データを送る。
【0014】
画像バッファ25と音声バッファ26は、画像復号部23と音声復号部24の復号時間差を吸収し、画像と音声の同期をとる役割を担う。
【0015】
同期がとられた画像データと音声データは、ディスプレイ27とスピーカ28からそれぞれ画像、音声として出力される。
【0016】
レート計算部29は、例えばサーバ30からネットワーク10を経由して入力バッファ21へ送られてくる単位時間内のデータ量を常にカウントし、実質の伝送レートを計算し、その伝送レート情報をサーバ30に通知する。このような通知は、例えば所定の時間ごとに行う。
【0017】
サーバ30は、画像と音声を多重化した符号化レートが異なる多重化ファイル(ストリームデータ)31〜33と、クライアント端末20側から送られてくる伝送レート情報によってファイルを切り替える多重化ファイル切換スイッチ34と、を備える。
【0018】
多重化ファイル31〜33は、符号化レートが異なる同一のコンテンツ、すなわち符号化レートが異なる同一データを蓄積する。符号化レートは、例えば60kbps、45kbps、30kbpsのように設定する。
【0019】
この伝送システムにおいてストリ一ミング再生を開始すると、サーバ30は、クライアント端末20に対して動画像の伝送を始める。
【0020】
クライアント端末20は、入力バッファ21で多重化データのバッファリングを開始しながら、レート計算部29において実質伝送レート(bps)の計算を開始する。この実質伝送レートは、サーバ30の負荷が上がったり、ネットワーク10が混雑したりすると低下の方向に向かう。この伝送レート情報は、例えば一定の時間間隔でサーバ30に通知される。
【0021】
サーバ30は、一定の時間間隔でクライアント端末20から通知される伝送レート情報に基づき、多重化ファイル切換スイッチ34で通知されたレートに近いかそれ以下になる多重化ファイル31〜33を選択し、切り替える。
【0022】
このように、特許文献1の「伝送システム」では、ネットワーク10が混雑したり、サーバ30の負荷が増大したりすることによってクライアント端末20での実質の受信レートが変動した場合、一定周期でクライアント端末20からサーバ30に送られている伝送レート情報に基づいて、その伝送レート以下の最も近いファイルに切り替える。
【0023】
これにより、この「伝送システム」では、クライアント端末20側で実質伝送レートが変動した場合でも、ストリーミング再生において途切れ途切れになることがなくシームレスな再生を行うことができ、動画像の見にくさが解消される。
【特許文献1】特開平11−205390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、前記従来の構成では、ストリームデータの送信側(サーバ)が符号化レートの異なる多重化ファイル(ストリームデータ)を送信可能なシステムにしか適用することができないという課題を有していた。
【0025】
また、前記従来の構成では、ストリームデータの受信側(クライアント端末)が、ストリームデータの実質の受信レートであるレート情報をストリームデータの送信側(サーバ)に通知し、ストリームデータの送信側(サーバ)が前記レート情報を元にストリーム配信のレートの制御をすることが可能であるシステムにしか適用することができないという課題も有していた。
【0026】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、ストリームデータの送信側が符号化レートの異なるストリームデータを送信不可能なシステムや、ストリームデータの受信側の通知したレート情報を元にストリームデータの送信側がストリーム配信のレートの制御をすることが不可能であるシステムにおいても、ストリームデータ受信用バッファのアンダーフローの発生頻度を低下させることができるストリーム受信再生装置及びストリーミングネットワークシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
かかる課題を解決するため、本発明のストリーム受信再生装置は、配信されたストリームデータおよび制御データを受信する通信手段と、前記通信手段により受信した前記ストリームデータを一時的に蓄積する蓄積手段と、前記蓄積手段により蓄積された前記ストリームデータをデコードするデコード手段と、前記通信手段が受信した前記ストリームデータに関する制御情報により、前記ストリームデータの状態が一時停止可能であり、かつ前記ストリームデータの蓄積量の増加必要性が有ると判定した場合に、前記デコード手段を制御して前記ストリームデータのデコードを一時停止し、前記蓄積手段に蓄積される前記ストリームデータのデータ量を増加させる制御手段と、を具備する構成を採る。
【発明の効果】
【0028】
本発明のストリーム受信再生装置及びストリーミングネットワークシステムによれば、ストリームデータの送信側が符号化レートの異なるストリームデータを送信不可能なシステムや、ストリームデータの受信側の通知したレート情報を元にストリームデータの送信側がストリーム配信のレートの制御をすることが不可能であるシステムにおいても、ストリームデータ受信用バッファのアンダーフローの発生頻度を低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施の形態に係るストリーミングネットワークシステムの構成を示す図である。
【0031】
図1に示すように、本例のストリーミングネットワークシステム100は、ストリーム受信再生装置(クライアント)101と、サーバ102と、ネットワーク103から構成される。なお、図1において、ネットワーク103は、本例では無線ネットワークを例示しているが、これに限らず、有線ネットワークでも良い。
【0032】
ストリーム受信再生装置101は、端末通信部110と、バッファ111と、デコーダ112と、端末制御部113と、を備えている。
【0033】
サーバ102は、サーバ制御部120と、ストリームデータ送出部121と、サーバ通信部122と、ストリームデータ蓄積部123と、を備えている。
【0034】
まず、クライアントであるストリーム受信再生装置101の構成について説明する。
【0035】
図1において、端末通信部110は、ネットワーク103を介してストリームデータを受信し、受信したストリームデータをバッファ111へ出力する。
【0036】
クライアント側の蓄積手段としてのバッファ111は、端末通信部110から入力したストリームデータを一時的に蓄積する。そして、バッファ111は、蓄積したストリームデータをデコーダ112へ出力する。
【0037】
デコーダ112は、バッファ111から入力したストリームデータをデコードしてスピーカ114へ出力する。
【0038】
端末制御部113は、端末通信部110から受信したストリームデータに関する制御情報と、バッファ111の状態とに基づいて、デコーダ112を制御する。具体的には、端末制御部113は、ストリームデータの状態が一時停止可能であり、ストリームデータの蓄積量の増加必要性があると判定した場合には、デコーダ112を制御してストリームデータのデコードを一時停止し、バッファ111に蓄積されるストリームデータのデータ量を増加させるように制御する。
【0039】
スピーカ114は、デコーダ112から入力したストリームデータが表す音楽等を外部へ出力する。
【0040】
次に、サーバ102の構成について説明する。
【0041】
ストリームデータ蓄積部123は、配信するストリームデータ及びストリームデータに関する制御情報、例えば、曲名、アルバム名、アーティスト名、曲の長さなどの時間情報、といった曲情報を蓄積し、ストリームデータをストリームデータ送出部121に出力する。
【0042】
ストリームデータ送出部121は、サーバ制御部120の制御に基づいて、ストリームデータをサーバ通信部122へ出力する。
【0043】
サーバ制御部120は、ストリームデータ送出部121を制御する。また、サーバ制御部120は、ストリームデータ蓄積部123から制御情報を読み出し、読み出した制御情報をサーバ通信部122へ出力する。
【0044】
サーバ通信部122は、ストリームデータ送出部121から入力したストリームデータ、及びサーバ制御部120から入力した制御情報を、ネットワーク103を介してストリーム受信再生装置101へ送信する。
【0045】
次に、図2を用いて、上述のように構成されたストリーミングネットワークシステム100の動作について説明する。図2は、本発明の一実施の形態に係るストリーミングネットワークシステムの動作を示すフローチャートである。
【0046】
通常のストリーミング再生の基本動作では、ストリーム受信再生装置101は、ネットワーク103を介してストリームデータの受信を開始し、受信開始から一定時間内(例えばTini)に受信したストリームデータをバッファ111に蓄える。
【0047】
なお、ストリーム受信再生装置101は、一定時間内に受信したストリームデータをバッファ111に蓄えるように構成されている場合に限らず、一定量のストリームデータをバッファ111に蓄えるように構成されていても良い。
【0048】
端末制御部113は、一定時間Tiniが経過するか、またはバッファ111に一定量のストリームデータが蓄積されると、ストリームデータのデコードの開始をデコーダ112に対して指示する。
【0049】
デコーダ112は、端末制御部113からの指示に応答して、バッファ111に蓄積されたストリームデータのデコードを開始し、デコード済みのストリームデータをスピーカ114に与える。
【0050】
このようにして、ストリーム受信再生装置101では、ストリームデータが再生され、受信したストリームデータが表す音楽がスピーカ114から鳴り始める。
【0051】
以降のストリームデータ再生中の状態においては、ストリームデータを受信(ステップST201)し、受信したストリームデータをバッファ111に蓄積する(ステップST202)。
【0052】
端末制御部113は、ストリームデータの受信中に、制御情報を受信したか否か判定する(ステップST203)。
【0053】
そして、ステップST203において、端末制御部113が制御情報を受信していないと判定した場合には、ステップST201〜ステップST203の処理を繰返す。
【0054】
一方、ステップST203において、端末制御部113が制御情報を受信したと判定した場合には、ストリームデータの状態が一時停止可能であるか否かを判定する(ステップST204)。
【0055】
そして、ステップST204において、ストリームデータの状態が一時停止可能で無いと判定した場合には、ステップST201〜ステップST204の処理を繰返す。
【0056】
一方、ステップST204において、ストリームデータの状態が一時停止可能であると判定した場合には、バッファ111に蓄積されたストリームデータのデータ量(以下、これを「残バッファ量」という)に基づき、ストリームデータの蓄積量の増加必要性があるか否かを判定する(ステップST205)。
【0057】
そして、ステップST205にいて、ストリームデータの蓄積量の増加必要性が無いと判定した場合には、ステップST201〜ステップST205の処理を繰返す。
【0058】
一方、ステップST205にいて、ストリームデータの蓄積量の増加必要性が有ると判定した場合には、端末制御部113はデコーダ112を制御してストリームデータのデコードを一時停止する(ステップST206)。
【0059】
次いで、ストリームデータのデコードを一時停止した状態において、ストリームデータを受信すると(ステップST207)、ストリームデータをバッファ111に蓄積(ステップST208)し、再度、ストリームデータの蓄積量の増加必要性があるか否かを判定する(ステップST209)。
【0060】
そして、ステップST209において、ストリームデータの蓄積量の増加必要性があると判定した場合には、ステップST207〜ステップST209の処理を繰返す。
【0061】
一方、ステップST209において、ストリームデータの蓄積量の増加必要性が無いと判定した場合には、ストリームデータのデコードを再開し(ステップST210)、ステップST201に戻ってステップST201からステップST209の処理を繰返す。
【0062】
次に、ステップST204において、ストリームデータの状態が一時停止可能であるか否かを判定する方法について具体例を挙げて説明する。
【0063】
ここでは、具体例として、ステップST203において端末制御部113が受信の有無を判定する制御情報が、曲名、アルバム名、アーティスト名、曲の長さなどの時間情報、曲の区切りを示す曲の区切り情報、曲のトラック番号情報、曲間の状態を示す曲状態情報、といった曲情報を含んでいる場合について説明する。
【0064】
このように、制御情報が曲情報、例えば曲の区切り情報を含んでいる場合には、ストリームデータが曲の区切りにあるときにストリームデータの状態が一時停止可能であると判定するように端末制御部113を構成することで、ストリームデータの状態が一時停止可能であるか否かを判定することが可能となる。
【0065】
また、制御情報に曲のトラック番号の変化を通知する情報が含まれている場合には、ストリームデータが曲と曲の間の状態にあるときにストリームデータの状態が一時停止可能であると判定するように端末制御部113を構成することで、ストリームデータの状態が一時停止可能であるか否かを判定することが可能となる。
【0066】
同様に、制御情報に曲間の状態を示す情報が含まれていた場合には、ストリームデータが曲と曲の間の状態にあるときにストリームデータの状態が一時停止可能であると判定するように端末制御部113を構成することで、ストリームデータの状態が一時停止可能であるか否かを判定することが可能となる。
【0067】
次に、ステップST205において、ストリームデータの蓄積量の増加必要性があるか否かを判定する方法について具体例を挙げて説明する。
【0068】
ストリームデータの蓄積量の増加必要性の有無の判定方法としては、例えば、ある一定の閾値(例えばBth_Pause)を設けておき、残バッファ量が閾値Bth_Pause以下であれば、ストリームデータの蓄積量の増加必要性があると判定すれば良い。
【0069】
また、他の判定方法としては、残バッファ量を定期的に観測し、残バッファ量が減少傾向にあるならば、ストリームデータの蓄積量の増加必要性があると判定しても良い。
【0070】
なお、ステップST209におけるストリームデータの蓄積量の増加必要性があるか否かを判定する方法については、ステップST205と同じ判定基準による判定方法を用いても良いし、あるいは異なった判定方法を用いても良い。
【0071】
ステップST205と異なった判定方法としては、例えば、ステップST209において判定に用いる閾値をBth_Restartとし、残バッファ量がBth_Restart以下であれば、ストリームデータの蓄積量の増加必要性があると判定すれば良い。
【0072】
すなわち、この判定方法では、言い換えれば、残バッファ量がBth_Restartを超えればストリームデータのデコードを再開するということになる。
【0073】
なお、これらの判定方法は、Bth_Pause=Bth_RestartであればステップST205と同じ判定基準による判定方法となり、Bth_Pause≠Bth_Restartであれば異なる判定基準による判定方法となる。
【0074】
次に、具体例として、図3を用いて、ストリームデータの2曲目の再生中に通信エラーが発生して、2曲目と3曲目の間でバッファ量を回復させる場合について説明する。
【0075】
図3は、本発明の一実施の形態に係る残バッファ量の時刻推移及びストリームデータの状態を示す図である。なお、ここでは、制御情報に曲の区切り情報が含まれている場合を例にとって説明する。
【0076】
図3において、ブロック301は、ストリーム受信再生装置101の端末通信部110が受信したストリームデータの内容の時刻推移を表す。ブロック302は、ストリーム受信再生装置101のデコーダ112がデコードするストリームデータの内容の時刻推移を表す。ブロック303は、ストリーム受信再生装置101のバッファ111に蓄積されているストリームデータの残バッファ量の時刻推移を表す。
【0077】
図3においては、時刻Tdから時刻Teの間に通信エラーが発生し、ストリーム受信再生装置101のバッファ111に蓄積されているストリームデータの残バッファ量が減少している状態を示している。
【0078】
図3に示すように、クライアントであるストリーム受信再生装置101は、時刻Taにストリームデータの受信を開始し、一定時間(Tini)経過後の時刻Tbからデコーダ112によるストリームデータのデコードが開始される。
【0079】
このように、本例のストリーム受信再生装置101においては、バッファ111に一定の残バッファ量のストリームデータを確保するために、時刻Taから時刻Tbの間は、ストリームデータはバッファ111に蓄積されるがストリームデータのデコードは開始されない。
【0080】
そして、時刻Tb以降の、1曲目のストリームデータが配信されている間は、ストリームデータの蓄積とデコードを繰返す。
【0081】
その後、端末制御部113は、1曲目の終了を示す曲の区切り情報が含まれている制御情報を受信すると、残バッファ量に基づきストリームデータの蓄積量の増加必要性があるか否かを判定する。
【0082】
図3に示す例では、1曲目の終了時点での残バッファ量はB1であるので、残バッファ量B1が閾値Bth_Pause以下であるか否か判定する。この例の場合は、B1>Bth_Pauseであるので、ストリームデータの蓄積量の増加必要性は無いと判定し、引き続き2曲目のデコード処理を継続する。
【0083】
その後、端末制御部113は、2曲目の終了を示す曲の区切り情報が含まれている制御情報を受信すると、残バッファ量に基づきストリームデータの蓄積量の増加必要性があるか否かを判定する。
【0084】
図3に示す例では、2曲目の終了時点での残バッファ量はB2であるので、残バッファ量B2が閾値Bth_Pause以下であるか否か判定する。この例の場合は、B2<Bth_Pauseであるので、ストリームデータの蓄積量の増加必要性があると判定し、端末制御部113がデコーダ112を制御してストリームデータのデコードを一時停止する。
【0085】
次いで、デコードを一時停止している状態においてストリームデータを受信すると、ストリームデータの受信とストリームデータのバッファ111への蓄積を行い、ストリームデータの蓄積量の増加必要性があるか否かを判定する。
【0086】
図3に示す例では、時刻Tfから時刻Tgまでの間は残バッファ量がBth_Restart以下であるので、ストリームデータの蓄積量の増加必要性があると判定して、ストリームデータのデコードの一時停止を継続する(デコード停止区間3021)。
【0087】
そして、図3に示す例では、時刻Tgを超えた段階で、残バッファ量がBth_Restartを超えるので、時刻Tgより後では、ストリームデータのデコードが再開されて3曲目がデコードされる。
【0088】
上述のように、本例のストリーム受信再生装置101においては、受信したストリームデータに関する制御情報により、ストリームデータの状態が一時停止可能であるか否かを判定することができる。
【0089】
また、本例のストリーム受信再生装置101においては、バッファ111に蓄積されているストリームデータの残バッファ量から、ストリームデータの蓄積量の増加必要性の有無を判定することができる。
【0090】
そして、本例のストリーム受信再生装置101においては、ストリームデータの状態が一時停止可能であり、かつ、ストリームデータの蓄積量の増加必要性があると判定した場合に、端末制御部113が、デコーダ112を制御してストリームデータのデコードを一時停止し、バッファ111に蓄積されているストリームデータの残バッファ量を増加させるように制御する。
【0091】
従って、本例のストリーム受信再生装置101を用いたストリーミングネットワークシステムにおいては、ストリームデータの受信側であるストリーム受信再生装置101だけの制御により、ネットワーク103上での通信エラーや、無線電波状況の悪化などが原因により発生するバッファ111のアンダーフローの発生頻度を抑えることができる。
【0092】
なお、ここでは、図3に示すように、制御情報に曲の終了を示す「曲の区切り情報」が含まれている場合を例にとって説明したが、本例のストリーム受信再生装置101は、図4に示すように、制御情報に曲のトラック番号の変化通知する情報あるいは曲間の状態を示す情報が含まれている場合でも同様に制御することができる。
【0093】
図4に示す例の場合は、曲の終了を示す「曲の区切り情報」の代わりに「曲間の状態」を示す情報が制御情報に含まれている。
【0094】
図4に示す例は、例えば時刻Tcにおいて、1曲目の終了を示す「曲の区切り情報」の変わりに「曲間の状態」を示す制御情報を用いて、ストリームデータの状態が一時停止可能であるか否か、及びストリームデータの蓄積量の増加必要性があるか否かを判定する点が、図3に示した例の場合と異なる。
【0095】
また、図4に示す例は、時刻Tfにおいて、2曲目の終了を示す「曲の区切り情報」の変わりに「曲間の状態」を示す制御情報を用いて、ストリームデータの状態が一時停止可能であるか否か、及びストリームデータの蓄積量の増加必要性があるか否かを判定する点が、図3に示した例の場合と異なる。
【0096】
なお、以上の説明では、無線通信方式に関しては特に限定されるものではないが、例えば近距離無線通信技術のBluetoothや無線LANを用いても良い。
【0097】
ここで、無線通信方式にBluetoothを用いる場合は、例えばストリームデータはA2DP(Advanced Audio Distribution Profile)で送信して良い。
【0098】
また、ストリームデータに関する制御情報は、例えばAVRCP(Audio/Video Remote Control Profile)におけるVendor Dependent Commandで送信しても良い。
【0099】
また、ストリームデータに関する制御情報は、AVRCPにおけるVendor Unique Operation_Idを持つPass Through Commandで送信しても良い。
【0100】
ここで、A2DPは、Bluetoothにおいて音楽データなどのストリームデータを送受信するための技術的仕様である。
【0101】
また、AVRCPは、Bluetoothにおいてストリームの制御コマンド(Play、Stopなど)を送受信するための技術的仕様である。
【0102】
さらに、Vendor Dependent CommandやVendor Unique Operation_Idは、AVRCPにおいて各ベンダーが独自の拡張をすることができるコマンドである。
【0103】
なお、上記説明では具体値を上げて説明した部分もあるが本発明がそれに限定されないことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明に係るストリーミングネットワークシステム及びストリーム受信再生装置は、ストリームデータの送信側が符号化レートの異なるストリームデータを送信不可能なシステムや、ストリームデータの受信側の通知したレート情報を元にストリームデータの送信側がストリーム配信のレートの制御をすることが不可能であるシステムにおいても、ストリームデータ受信用バッファのアンダーフローの発生頻度を低下させることができるので、音声や動画などのデータをネットワーク経由で受信しながら再生するストリーミング技術を用いたストリーミングネットワークシステム及びストリーム受信再生装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の一実施の形態に係るストリーミングネットワークシステムの構成を示すブロック図
【図2】本発明の一実施の形態に係るストリーミングネットワークシステムの動作を示すフローチャート
【図3】本発明の一実施の形態に係る残バッファ量の時刻推移及びストリームデータの状態を示す図
【図4】本発明の一実施の形態に係る残バッファ量の時刻推移及びストリームデータの他の状態を示す図
【図5】特許文献1記載の伝送システムの構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0106】
100 ストリーミングネットワークシステム
101 ストリーム受信再生装置
102 サーバ
103 ネットワーク
110 端末通信部
111 バッファ
112 デコーダ
113 端末制御部
114 スピーカ
120 サーバ制御部
121 ストリームデータ送出部
122 サーバ通信部
123 ストリームデータ蓄積部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配信されたストリームデータおよび制御データを受信する通信手段と、
前記通信手段により受信した前記ストリームデータを一時的に蓄積する蓄積手段と、
前記蓄積手段により蓄積された前記ストリームデータをデコードするデコード手段と、
前記通信手段が受信した前記ストリームデータに関する制御情報により、前記ストリームデータの状態が一時停止可能であり、かつ前記ストリームデータの蓄積量の増加必要性が有ると判定した場合に、前記デコード手段を制御して前記ストリームデータのデコードを一時停止し、前記蓄積手段に蓄積される前記ストリームデータのデータ量を増加させる制御手段と、
を具備する、ストリーム受信再生装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記蓄積手段に蓄積されたストリームデータの蓄積量が予め設定した閾値以下である場合に、前記ストリームデータの蓄積量の増加必要性が有ると判定する、請求項1記載のストリーム受信再生装置。
【請求項3】
前記制御情報は、前記ストリームデータの曲情報を含み、前記制御手段は前記ストリームデータが曲間の状態であれば、前記ストリームデータのデコードを一時停止可能であると判定する、請求項1記載のストリーム受信再生装置。
【請求項4】
前記制御情報は、前記ストリームデータの曲情報を含み、前記制御手段は前記ストリームデータにおける曲のトラックの変更を検出した場合に、前記ストリームデータのデコードを一時停止可能であると判定する、請求項1記載のストリーム受信再生装置。
【請求項5】
ストリームデータを配信するサーバと、前記サーバから配信された前記ストリームデータを受信して再生するストリーム受信再生装置と、を含むネットワークで構成されるストリーミングネットワークシステムであって、
前記ストリーム受信再生装置は、配信されたストリームデータおよび制御データを受信する通信手段と、前記通信手段により受信した前記ストリームデータを一時的に蓄積する蓄積手段と、前記蓄積手段により蓄積された前記ストリームデータをデコードするデコード手段と、前記通信手段が受信した前記ストリームデータに関する制御情報により、前記ストリームデータの状態が一時停止可能であり、かつ前記ストリームデータの蓄積量の増加必要性が有ると判定した場合に、前記デコード手段を制御して前記ストリームデータのデコードを一時停止し、前記蓄積手段に蓄積される前記ストリームデータのデータ量を増加させる制御手段と、を具備し、
前記サーバは、前記ストリームデータを蓄積するストリームデータ蓄積手段と、前記ストリームデータ蓄積手段により蓄積された前記ストリームデータを送出するストリームデータ送出手段と、前記ストリームデータに関する制御情報を送出する制御手段と、前記ストリーム受信再生装置に前記ストリームデータを配信するストリームデータ配信手段と、を具備する、ストリーミングネットワークシステム。
【請求項6】
配信されたストリームデータおよび制御データを受信する通信ステップと、
前記通信ステップで受信した前記ストリームデータを一時的に蓄積する蓄積ステップと、
前記蓄積ステップで蓄積された前記ストリームデータをデコードするデコードステップと、
前記通信ステップで受信した前記ストリームデータに関する制御情報により、前記ストリームデータの状態が一時停止可能であり、かつ前記ストリームデータの蓄積量の増加必要性が有ると判定した場合に、前記ストリームデータのデコードを一時停止し、前記蓄積ステップで蓄積される前記ストリームデータのデータ量を増加させる制御ステップと、
を具備する、ストリーム受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−311902(P2007−311902A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136649(P2006−136649)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】