説明

スパイラルインダクタと発振器を用いた計測装置

【課題】本発明は、スパイラルインダクタ間に発生する相互インダクタンスの変動や、スパイラルインダクタンスの金属や比透磁率が1とは大きく違う物質を利用した自己インダクタンスの変動を利用した、交角や回転角度,位置、速度、加速度、傾き、振動などの計測を行う装置に対する、ノイズに強い測定手法を提供する。
【解決手段】本発明は、前記スパイラルインダクタを含めて構築された発振器を用いて、相互インダクタンスの変動や自己インダクタンスの変動を発振周波数の変動として検出するため、ノイズに強く、センサー部から測定部までの距離がある程度離れていても問題なく安易に安価に測定できるシステムを構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ、もしくは複数のスパイラルインダクタを用いた発振器を構成し、スパイラルインダクタの自己インダクタンス、またはスパイラルインダクタ間に発生する相互インダクタンスの変動を発振周波数によって計測することによって、交差する2つの物体間の交角や、回転する物体の回転角度、物体の位置や速度、加速度、傾き、振動の度合いなどを計測する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近代になり、遠隔操作や自動操作が進み、セキュリティ面では扉の開閉の監視が重要になり、工場などにおいてはロボットアームなどの精密な制御が必要となってきている。以上のような人間が近づくことが可能な場所に対する扉の開閉や、ネジのゆるみ、ロボットアームなどの関節部の制御は、目視による修正も可能な場合も多いが、人間が2度と近づくことが不可能なような場所、例えば、宇宙船などの遠隔操作における扉の開閉やロボットアームの制御などにおいて、どの程度開閉したか、また、アームなどがどの程度回転したか、どの程度の速度で動いたかなどを人間に頼ることなく正確に計測し知ることは非常に重要である。
【0003】
簡単で単価も安く交角や回転角度の計測を行う手法として、スパイラルインダクタなどのインダクタを複数用いて計測するシステムが開発されつつあるが、これらのシステムは、1次側から2次側に電圧が伝わる電圧の伝送効率などを利用した手法であり、計測場所から計測器までの距離が長いと、外部からのノイズにも弱いため、それぞれの計測場所に対して最適化を行う必要があり、運用をしていくことが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2010-194144
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】森下慎哉・山内将行著、「プリンテッド・スパイラル・インダクタを用いた開口角度の計測に関する研究」、電子情報通信学会2011年総合大会、 A−2−20、 2011年2月28日発行、p.59
【非特許文献2】吉松和久・国広崇・南口達也・山内将行著、「スパイラルインダクタ間の相互インダクタンスを利用した動き検出の実験に関する考察」 2008年電子情報通信学会総合大会、 A−1−2、2008年3月5日発行、p.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の、スパイラルインダクタ間に発生する相互インダクタンスを利用した交角計測システムや回転角度計測システムでは、特許文献1や非特許文献1に記載されているような一方のスパイラルインダクタから、もう一方のスパイラルインダクタへ電圧が伝わる効率を利用した方式などがあるが、これらの方式では外部からのノイズの影響を大きく受けやすく、最適化の必要もあり、離れた地点からの計測に向いているとは言えない。このため、計測部を統一し、複数個所センサーを設置して計測を行うには、個別の調整を要し、運用が難しいと言える。
【0007】
また、非特許文献2に記載されているのと同じような技術であり、前記交角計測システムや回転角度計測システムの応用である、重ねられたスパイラルインダクタにおいて、一方のスパイラルインダクタを水平に動かすことや、2枚のスパイラルインダクタの間に、金属や透磁率の違う物体を挟み、挟んだ物体を動かすことにより実現可能な位置・振動・加速度・速度・傾きなどの計測装置においても、電圧や電力の伝送効率を用いる手法では設置環境やノイズに弱く、運用が難しい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、本発明は、交角測定においては図1のように交わった部材12と部材13にそれぞれ設置できる基体16と基体17上に形成された、もしくは、部材12と部材13に直接形成された、円形・方形・多角形・歪んだ卵型などを基本とした形状で渦巻状に銅などの導体を配置した素子である第1のスパイラルインダクタ(例えばスパイラルインダクタ14)と、第2のスパイラルインダクタ(例えばスパイラルインダクタ15)を有し、部材12と部材13の間の交わった所を中心に交角が変わり、部材12か部材13、もしくは両方が動くのに伴ってスパイラルインダクタ14とスパイラルインダクタ15の間の距離や重なり具合、交角などが変化し、それに伴うスパイラルインダクタ14とスパイラルインダクタ15の間の相互インダクタンスの変化を検出できる手段を備えることを特徴とした交角計測システムに対して、例えばスパイラルインダクタ15にキャパシタ18を並列に接続し、スパイラルインダクタ14・15、及びキャパシタ18を用いた発振器19を作成してスパイラルインダクタ14とスパイラルインダクタ15の間の相互インダクタンスの大きさの変化により周波数を変調させて、交角、または交角の変動を計測することを特徴とする。スパイラルインダクタ14と15は、通電しないように間をわずかにあけるか、絶縁体を挟む形で装置は構築される。
【0009】
上記問題を解決するために、本発明は、回転角度測定に対しても、図2のように部材20と部材21にそれぞれ設置できる基体上、もしくは部材20と部材21に直接形成された、円形・方形・多角形・扇形・卵型などのきれいな形状やそれらを歪ませた形状を基本とした渦巻状に銅などの導体を配置した素子である第1のスパイラルインダクタ(例えばスパイラルインダクタ14)と、第2のスパイラルインダクタ(例えばスパイラルインダクタ15)を有し、部材20と部材21の間の回転角度が変化し、それに伴うスパイラルインダクタ14とスパイラルインダクタ15の間の相互インダクタンスの変化を検出できる手段を備えることを特徴とした回転角度計測システムに対して、例えばスパイラルインダクタ15にキャパシタ18を並行に接続し、スパイラルインダクタ14・15、及びキャパシタ18を用いた発振器19を作成してスパイラルインダクタ14とスパイラルインダクタ15の間の相互インダクタンスの大きさの変化により周波数を変調させて回転角度、または回転角度の変動を計測することを特徴とする。スパイラルインダクタ14と15は、通電しないように間をわずかにあけるか、絶縁体を挟む形で装置は構築される。
【0010】
上記問題を解決するために、前記交角測定システムや回転角度測定システムと同様に、図3のようなシステムを構築する。通電しないように間に絶縁体を挟むか、またはわずかな隙間を有するように重ねあわせて設置される、基体16上に構築されたスパイラルインダクタ14と基体17上に構築されたスパイラルインダクタ15と、キャパシタ18、及びキャパシタ・抵抗を含んだ発振器19を構築し、基体17とキャパシタ18、すなわち、スパイラルインダクタ15とキャパシタ18が同時に左右、もしくは前後に動くことにより、スパイラルインダクタ14とスパイラルインダクタ15間の相互インダクタンスが変動し、それによって発振器19の発振周波数が変化する。この発振周波数の変化を計測する手段を有し、基体17の基体16に対する位置を逆算できる手段を有することを特徴とする。スパイラルインダクタ14と15の形状は円形・方形・多角形・扇形・卵型などのきれいな整った形状やそれらを歪ませた形状を基本とした渦巻状に銅などの導体を配置した素子であるとする。
【0011】
上記問題を解決するために、前記手法と同様に、図4のようなシステムを構築する。基体16上に構築されたスパイラルインダクタ14と基体17上に構築されたスパイラルインダクタ15と、スパイラルインダクタ14とスパイラルインダクタ15の間に比透磁率が1とは大きく違う部材22を挟み、キャパシタ18、及びキャパシタ・抵抗を含んだ発振器19を構築し、基体17とキャパシタ18、すなわち、スパイラルインダクタ15とキャパシタ18が同時に左右、または前後に動く、もしくは、部材22のみが左右、または前後に動くことにより、スパイラルインダクタ14とスパイラルインダクタ15間の相互インダクタンスが変動し、それによって発振器19の発振周波数が変化する。この発振周波数の変化を計測する手段を有し、基体17の基体16に対する位置、もしくは、基体16に対する部材22の位置を逆算できる手段を有することを特徴とする。スパイラルインダクタ14と15の形状は円形・方形・多角形・扇形・卵型などのきれいな整った形状やそれらを歪ませた形状を基本とした渦巻状に銅などの導体を配置した素子であるとする。部材22が導体である場合、スパイラルインダクタ14と15が、部材22と通電しないように、間をわずかにあけるか、絶縁体を挟む形で構築される。
【0012】
これら、発振器を利用した前記計測装置において、スパイラルインダクタ15に抵抗を接続しても良い。
【0013】
これら、発振器を利用した前記計測装置において、スパイラルインダクタ14とスパイラルインダクタ15を直列、もしくは並列に接続しても良い。
【0014】
これら、発振器を利用した前記計測装置において、スパイラルインダクタ15とキャパシタ18を用いず、比透磁率が大きく1ではない基材をスパイラルインダクタ15の代わりに設置し、自己インダクタンスの大きさを変動させ、発振周波数から前記角度や速度などを計測しても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明を用いることにより、複数のスパイラルインダクタを用い、それらの間の相互インダクタンスの変動を利用した、2つの交わった物体間の開閉角度や傾斜角度などの交角や、開閉速度などの交角の変動速度、また、ある物体に対するある物体の回転角度や回転速度、また、位置・速度・加速度・傾き・振動の度合いなどのいずれかを検出する装置の精度を上げるだけでなく、センサー部から測定装置までの距離を伸ばすことが可能となり、結果、1つの計測器が計測するセンサー部の数を増やせるため、より安価で精度の良いシステムの構築が可能となる。
【0016】
本発明を用いることにより、スパイラルインダクタの上に乗せた比透磁率が大きく1ではない基材の位置の変動により、前記スパイラルインダクタの自己インダクタンスの変動を発振周波数の変化に置きかえ測定することにより、精度を上げられるだけでなく、センサー部から測定装置までの距離を伸ばすことが可能となり、結果、1つの計測器が計測するセンサー部の数を増やせるため、より安価で精度の良いシステムの構築が可能となる。

【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を交角計測装置に着けた場合のブロック図である。
【図2】本発明を回転角度計測装置に着けた場合のブロック図である。
【図3】本発明を位置・速度・加速度・傾き・振動計測装置に着けた場合のブロック図である。
【図4】本発明をスパイラルインダクタ間に比透磁率が大きく1ではない物体をはさんだ形状である、位置・速度・加速度・傾き・振動計測装置に着けた場合のブロック図である。
【図5】円形のスパイラルインダクタの例である。
【図6】本実施例で周波数の変動より交角と回転角度を求める際に用いた、図1〜図4におけるスパイラルインダクタ14と15、及びキャパシタ18を含んだ変形コルピッツ発振器19に本実施例で用いた測定回路の等価回路312を加えた回路図である。
【図7】図6の回路を用いて、交角を1°ごとに変動させた際の発振周波数の実測結果とシミュレーション結果である。
【図8】図6の回路を用いて、回転角度を1°ごとに変動させた際の発振周波数の実測結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1を参照して、第1番目の本実施形態に係る、交角計測システムについて説明する。
【0019】
図1に示した、本実施形態に係る交角検出システムは、交角を求める対象である部材12と部材13を含めたセンサー部11、接続配線部110、および計測部300から構成され、部材12と部材13に設置された、基体16と基体17上に形成されたスパイラルインダクタ14とスパイラルインダクタ15間に発生する相互インダクタンスの、部材12と13の間の交角の変化による変動を検出することにより、交角を求める。
【0020】
スパイラルインダクタ14とスパイラルインダクタ15は、部材12と13の交角が0°になった時、きれいに重なるように配置し、部材12、および部材13にそれぞれ固定する。また、スパイラルインダクタ14と15が部材12と13の交角が0°になった時に接触しないように表面を誘電率が低い薄い絶縁体で覆うか、隙間をわずかにあけるようにする。
【0021】
センサー部11には、部材12・13、スパイラルインダクタ14・15、基体16・17以外に、発振器を利用してスパイラルインダクタ14と15の間に発生する相互インダクタンスを計測するため、発振器の回路を構成する発振器回路19と、スパイラルインダクタ15に接続するキャパシタ18を含む。
【0022】
計測部300に含まれる、ユーザーが操作するためのユーザーインターフェースである操作部316より、例えば、ユーザーが測定開始のボタンを押すことにより、制御部313に計測を行うための信号を送り、これらの信号を受けて制御部313が、任意の直流電圧を発生させられる直流電圧印可部315から、直流電圧を、接続部311、接続端子301と302、そしてそれらに接続されている接続配線111と112を介して、スパイラルインダクタ14に接続された発振器回路19に供給し、スパイラルインダクタ14と相互インダクタンスで結合されたスパイラルインダクタ15とスパイラルインダクタ15に結合されたキャパシタ18を用いて発振器回路19が発振する。
【0023】
発振器回路19は、相互インダクタンスの大きさによって発振周波数が変動する発振器である必要があり、例えば、インダクタとキャパシタの共振000を利用した、コルピッツ発振器回路などが望ましく、スパイラルインダクタ14・15を利用して発振器回路19が構築される必要がある。
【0024】
交角が変動することによって、スパイラルインダクタ14と15間の相互インダクタンスが変動するため、この発振周波数も変動する。
【0025】
この発振周波数を、接続配線113を介して周波数計測部312で計測する。
【0026】
制御部313において、以上のように計測された周波数から、現在の交角が何度であるか求め、ディスプレイなどのユーザーが確認することができる装置である表示部314に示す。
【0027】
制御部は汎用のコンピュータなどで良く、メモリ上に載ったプログラムに従って動くシステムである。
【0028】
計測場所が複数であっても、センサー部11を増やし、1つの計測部300に接続配線110と接続端子を増やして、時分割方式で、各センサー部をセンシングすれば対処が可能であり、また、計測場所とセンサー間の距離があっても、周波数を計測するため、外部からのノイズが少なく、計測が容易いと考えられる。
【0029】
本実施形態ではスパイラルインダクタ14・15を基体16・17の上に構成しているが、直接部材12・13上に構築しても良い。
【0030】
また、本実施形態ではスパイラルインダクタを2枚用いた例を示しているが、スパイラルインダクタ15の代わりに比透磁率が大きく1ではない物体を設置し、交角の変動によりスパイラルインダクタ14の自己インダクタンスを変動させることにより、計測しても良い。
【0031】
また、本実施形態ではスパイラルインダクタを2枚用いた例を示しているが、複数枚のスパイラルインダクタ、例えば部材12上に設置するスパイラルインダクタの数を3枚とし、部材13に設置するスパイラルインダクタを2枚とし、それらスパイラルインダクタを並列、もしくは直列に接続しても良い。
【0032】
さらに、上記のようにスパイラルインダクタを複数枚用いた場合でも、それぞれ個別で発振器19を構築しても良い。
【0033】
以下、図2を参照して、第2番目の本実施形態に係る、回転角度計測システムについて説明する。
【0034】
図2に示した、本実施形態に係る回転角度検出システムは、回転角度を求める対象である部材20と部材21を含めたセンサー部11、接続配線部110、および計測部300から構成され、部材20と部材21に形成されたスパイラルインダクタ14とスパイラルインダクタ15間に発生する相互インダクタンスの、部材20と21の間の回転角度の変化による変動を検出することにより、回転角度を求める。
【0035】
スパイラルインダクタ14とスパイラルインダクタ15は、部材20と21の回転角度が0°になった時、きれいに重なるように配置することが望ましい。
【0036】
また、スパイラルインダクタ14と15が直接接触しないように表面を誘電率が低い薄い絶縁体で覆うか、隙間をわずかにあけるようにする。
【0037】
センサー部11には、部材20・21、スパイラルインダクタ14・15、スパイラルインダクタ15に接続するキャパシタ18以外に、発振器を利用してスパイラルインダクタ14と15の間に発生する相互インダクタンスを計測するため、スパイラルインダクタ14・15とキャパシタ18を利用して発振器回路を構成する発振器19を含む。
【0038】
計測部300に含まれる、ユーザーが操作するためのユーザーインターフェースである操作部316より、例えば、ユーザーが測定開始のボタンを押すことにより、制御部313に計測を行うための信号を送り、これらの信号を受けて制御部313が、任意の直流電圧を発生させられる直流電圧印可部315から、直流電圧を、接続部311、接続端子301と302、そしてそれらに接続されている接続配線111と112を介して、スパイラルインダクタ14に接続された発振器回路19に供給し、スパイラルインダクタ14と相互インダクタンスで結合されたスパイラルインダクタ15とスパイラルインダクタ15に結合されたキャパシタ18を用いて発振器19が発振する。
【0039】
発振器19は、相互インダクタンスの大きさによって発振周波数が変動する発振器である必要があり、例えば、インダクタとキャパシタの共振を利用した、コルピッツ型発振器回路などが望ましく、スパイラルインダクタ14・15とキャパシタ18を利用して発振器19が構築される必要がある。
【0040】
回転角度が変動することによって、スパイラルインダクタ14と15間の相互インダクタンスが変動するため、この発振周波数も変動する。
【0041】
この発振周波数を、接続配線113を介して周波数計測部312で計測する。
【0042】
制御部313において、以上のように計測された周波数から、現在の回転角度が何度であるか求め、ディスプレイなどのユーザーが確認することができる装置である表示部314に示す。
【0043】
制御部313は汎用のコンピュータなどで良く、メモリ上に載ったプログラムに従って動くシステムである。
【0044】
計測場所が複数であっても、センサー部11を増やし、1つの計測部300に接続配線110と接続端子を増やして、時分割方式で、各センサー部をセンシングすれば対処が可能であり、また、計測場所とセンサー間の距離があっても、周波数を計測するため、外部からのノイズが少なく、計測が容易いと考えられる。
【0045】
本実施形態ではスパイラルインダクタ14・15を部材20・21の上に直接構成しているが、基体上に作成し部材20・21に設置しても良い。
【0046】
また、本実施形態ではスパイラルインダクタを2枚用いた例を示しているが、スパイラルインダクタ15の代わりに比透磁率が大きく1ではない物体を設置し、回転によりスパイラルインダクタ14の自己インダクタンスを変動させることにより、計測しても良い。
【0047】
また、本実施形態ではスパイラルインダクタを2枚用いた例を示しているが、複数枚のスパイラルインダクタ、例えば部材12上に設置するスパイラルインダクタの数を3枚とし、部材13に設置するスパイラルインダクタを2枚とし、それらスパイラルインダクタを並列、もしくは直列に接続しても良い。
【0048】
さらに、上記のようにスパイラルインダクタを複数枚用いた場合でも、それぞれ個別に発振器19を構築しても良い。
【0049】
以下、図3を参照して、第3番目の本実施形態に係る、位置・振動・速度・加速度・傾斜のいずれかを測定する計測装置について説明する。
【0050】
交角計測システムと回転角度計測システムと、センサー部以外は同じであり、発振器19に直流を計測部から与え、発振器19の発振周波数を周波数計測部312で計測し、制御部313で、発振周波数から逆算し、位置計測の場合は位置情報を、振動計測の場合は振動の情報を、速度の場合は速度の情報を、加速度の場合は加速度の情報を表示部314に表示する。
【0051】
位置・振動・加速度・速度・傾斜のいずれかを計測する装置は、例えば、基体16を前記のいずれかを計測したい物体に設置し、基体17をスパイラルインダクタ14と15がわずかでも重なる範囲内で自由に動くように、例えば基体17の上に重りを載せ、ばねやゴムなどを用いて計測したい物体に設置することによって物体の動きを計測する。これらスパイラルインダクタの形状は円形である必要はなく、歪んだ形の方が良い。
【0052】
例えば、物体が図3の左方向に加速した際には、基体17が慣性で右方向にずれることにより、スパイラルインダクタ14と15間の相互インダクタンスが変動し、発振器19の発振周波数が変化する。この発振周波数を計測部312で計測することによって、基体16に対する基体17の位置が求められる。
【0053】
この基体16に対する基体17の位置情報から、例えばXcm基体16に対して基体17が図3の右にずれていることが周波数より明らかになれば、ばねの強度がXX[N/m]であり、摩擦係数がYYであるので、物体は左に1m/s2で加速しているなどの逆算ができる。
【0054】
この加速データの履歴が制御部313に蓄えられていれば、現在の速度がわかり、最初のスタート地点の情報が蓄えられていれば、基体16・17を設置した物体自体の位置情報がわかる。
【0055】
また、加速度の計算に重量加速度を加味すれば、傾きの大きさがわかる。
【0056】
さらに、加速度センサーの履歴を蓄えられるように設計すれば、どのような振動がどの程度起きたか計測できるようになる。
【0057】
本実施形態では、基体16上にスパイラルインダクタ14を作成しているが、前記基体16を設置する物体自体にスパイルインダクタを作成しても良い。
【0058】
また、本実施形態ではスパイラルインダクタを2枚用いた例を示しているが、複数枚のスパイラルインダクタ、図3の下側にあたるスパイラルインダクタを3枚とし、上にあたるスパイラルインダクタを1枚とし、下側のスパイラルインダクタを並列、もしくは直列に接続して発振器に接続しても良い。
【0059】
さらに、上記のようにスパイラルインダクタを複数枚用いた場合でも、それぞれで発振器19を構築しても良い。
【0060】
以下、図4を参照して、第4番目の本実施形態に係る、位置・振動・速度・加速度・傾斜のいずれかを測定する計測装置について説明する。
【0061】
交角計測システムと回転角度計測システムと、センサー部以外は同じであり、発振器19に直流を計測部300から与え、発振器19の発振周波数を周波数計測部312で計測し、制御部313で、発振周波数から逆算し、位置計測の場合は位置情報を、振動計測の場合は振動の情報を、速度の場合は速度の情報を、加速度の場合は加速度の情報を表示部314に表示する。
【0062】
位置・振動・加速度・速度・傾斜のいずれかを計測する装置は、例えば、基体16と基体17を前記のいずれかを計測したい物体に、スパイラルインダクタ14と15をきれいに重なるように設置し、部材22を、スパイラルインダクタ14と15にわずかでも重なる範囲内で自由に動くように、ばねやゴムなどを用いて計測したい物体に設置することによって物体の動きを計測する。これらスパイラルインダクタの形状は円形である必要はなく、歪んだ形の方が良い。
【0063】
例えば、物体が図4の左方向に加速した際には、部材22が慣性で右方向にずれることにより、スパイラルインダクタ14と15間の相互インダクタンスが変動することとなり、発振器19の発振周波数が変動する。
【0064】
この発振周波数を計測部312で計測することによって、基体16・17に対する部材22の位置が求められる。
【0065】
この基体16・17に対する部材22の位置情報から、例えばXcm基体16に対して部材22が図3の右にずれていることが周波数から求められれば、ばねの強度がXX[N/m]であり、摩擦係数がYYであるので、物体は左に1m/s2で加速しているなどの逆算が可能となる。
【0066】
この加速データの履歴が制御部313に蓄えられていれば、現在の速度がわかり、最初のスタート地点の情報も蓄えられていれば、基体16・17を設置した物体自体の位置情報がわかる。
【0067】
また、加速度の計算に重量加速度を加味すれば、傾きの大きさがわかる。
【0068】
さらに、加速度センサーの履歴を蓄えられるように設計すれば、どのような振動がどの程度起きたか計測できるようになる。
【0069】
本実施形態では、基体16上にスパイラルインダクタ14を作成しているが、前記基体16・17を設置する物体自体にスパイルインダクタを設置しても良い。
【0070】
また、本実施形態ではスパイラルインダクタを2枚用いた例を示しているが、スパイラルインダクタ15を用いなくても、スパイラルインダクタ14の自己インダクタンスが部材22の位置により変動するため、このスパイラルインダクタ14の自己インダクタンスの変動を発振周波数の変動を用いて計測し、加速度などの情報を求めても良い。
【0071】
また、本実施形態ではスパイラルインダクタを2枚用いた例を示しているが、複数枚のスパイラルインダクタ、図3の下側にあたるスパイラルインダクタを3枚とし、上にあたるスパイラルインダクタも3枚とし、下側のスパイラルインダクタを並列、もしくは直列に接続して発振器に接続しても良い。
【0072】
さらに、上記のようにスパイラルインダクタを複数枚用いた場合でも、それぞれ個別に発振器19を構築しても良い。
【実施例1】
【0073】
本実施例では、図5のような半円を組み合わせた円形のスパイラルインダクタを利用した変形コルピッツ発振器19を用いた、発振周波数の変動により交角を求める測定手法について示す。
【0074】
図6に変形コルピッツ発振器19を用いた測定回路を示す。インダクタL1、L2と相互インダクタンスM、抵抗R1、R2、R3、r1、r2、そして、キャパシタC1、C2、C3、C4、C5を用いて回路を構成する。ただし、本実施例では、C1=9.67nF、C2=2.37nF、C3=55.0nF、C4=412pF、C5=2.42nF、R1=9.93kΩ、R2=9.96kΩ、R3=50.7Ω、r1=8.80Ω、r2=9.80Ωであり、r1とr2はスパイラルインダクタの内部抵抗である。
【0075】
C6とR4は測定機器の等価回路を示しており(C6=0.270pF、R4=50.0kΩ)、周波数計測部312に含まれる、キャパシタC5は、キャパシタ18のことである。
【0076】
本方式においては、L1とL2の間の交角が変化し、相互インダクタンスMが変化することによって、システムの発振周波数が変化する。すなわち、発振周波数を観測することによって、交角が求められる。
【0077】
上記パラメータで発振器を構成し、交角θ=0°とした場合、発振周波数は2.26MHzとなるため、2.26MHzの時の一次側と二次側のスパイラルインダクタのインダクタンスをLCRメータを用いて測定した結果、一次側と二次側のスパイラルインダクタは共に14.1μHとなった。
【0078】
2つのスパイラルインダクタの重なっている状態を0°とし、1°の間隔で二次側のスパイラルインダクタを180°まで変化させ、周波数を測定した結果を図7に示し、実際に測定された値の一部を表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
また、1°ずつ変化させた時の相互インダクタンスMをLCRメータで測定し、それらの値を用いてシミュレーションを行った結果を同時に図7に示す。
【0081】
図5と表1の測定結果をみると、周波数と交角が1対1対応しており、周波数を測定することにより、交角が求まることがわかる。
【0082】
シミュレーションと実測では、測定環境による誤差と思われる誤差が生じているが、概ねシミュレーションと同様の結果が得られていることから、測定環境や計測システムにも大きく影響をうけないものと考えられる。
【0083】
これらの結果より、このパラメータにおいては特に90°付近までが計測しやすく、それ以降は周波数測定部312の精度をあげる必要があると思われる。
【0084】
もし、θ=180°まで計測する必要があるなら、このパラメータを用いた場合は、前述の90°まで効率よく測れるセンサー部を2組用意し、1組目で0〜90度まで測定し、2組目で、90〜180度までを測定する必要があると考えられる。
【実施例2】
【0085】
本実施例では、円形ではなく、扇形をしたスパイラルインダクタを利用し、変形コルピッツ発振器19を用いた、発振周波数の変動により回転角度を求める測定手法について示す。
【0086】
図6に変形コルピッツ発振器19を用いた測定回路を示す。インダクタL1、L2と相互インダクタンスM、抵抗R1、R2、R3、r1、r2、そして、キャパシタC1、C2、C3、C4、C5を用いて回路を構成する。ただし、本実施例では、C1=10.2nF、C2=2.12nF、C3=160nF、C4=301nF、C5=3.82nF、R1=7.51kΩ、R2=47.2kΩ、R3=870Ω、r1=10.0Ω、r2=10.0Ωであり、r1とr2はスパイラルインダクタの内部抵抗である。
【0087】
C6とR4は測定機器の等価回路を示しており(C6=0.270pF、R4=50.0kΩ)、周波数計測部312に含まれる、キャパシタC5は、キャパシタ18のことである。
【0088】
本方式においては、L1に対してL2が回転することによって、L1とL2の間の重なり具合が変化し、相互インダクタンスMが変化して、システムの発振周波数が変化する。すなわち、発振周波数を観測することによって、回転角度が求められる。
【0089】
上記パラメータで発振器を構成し、回転角度θ=0°とした場合の発振周波数は概ね1.83MHzとなるため、1.83MHzの時の一次側と二次側のスパイラルインダクタのインダクタンスをLCRメータを用いて測定した結果、一次側のスパイラルインダクタが18.7μHとなり二次側のスパイラルインダクタが18.3μHとなった。
【0090】
2つのスパイラルインダクタがずれなく重なっている状態を0°とし、1°の間隔で二次側のスパイラルインダクタを360°まで変化させ、実際に周波数を測定した結果を図8に示し、実際に測定した結果の値の一部を表2に示す。
【0091】
【表2】

【0092】
図8と表2の測定結果をみると、扇形のスパイラルインダクタでは、0度・360度と180度付近では回転角度の計測が困難であるが、基本的に周波数と対応が取れており、測定の履歴があれば、回転角度が求まることがわかる。
【0093】
前記0度・360度付近と180度付近での計測上の困難は、スパイラルインダクタ自体の形状を歪ませるなど、形状を変化させることにより、明確に観測できるようになる。
【符号の説明】
【0094】
1 発振器を用いた交角計測装置全体図を指す。
2 発振器を用いた回転角度計測装置全体図を指す。
3 発振器を用いた位置・速度・加速度・傾き・振動計測装置全体図を指す。
4 発振器を用いたスパイラルインダクタ間に比透磁率が大きく1ではない部材を挟んだ位置・速度・加速度・傾き・振動計測装置全体図を指す。
11 本発明のセンサー部を示す。
12 交角測定を行う対象である部材の一方を指す。
13 交角測定を行う対象である部材のもう一方を指す。
14 本発明で用いるスパイラルインダクタの一つを指す。
15 本発明で用いるスパイラルインダクタのスパイラルインダクタ14と組みにして用いる一つを指す。
16 スパイラルインダクタ14を生成する基体を指す。
17 スパイラルインダクタ15を生成する基体を指す。
18 スパイラルインダクタ15に並列に接続するキャパシタを指す。
19 スパイラルインダクタ14とスパイラルインダクタ15、及びキャパシタ18と、複数の抵抗と複数のキャパシタ、及びトランジスタを含む発振器を指す。本実施例においては、スパイラルインダクタ14とスパイラルインダクタ15、及びキャパシタ18と、抵抗R1、抵抗R2、抵抗R3、キャパシタC1、キャパシタC2、キャパシタC3、キャパシタC4、およびトランジスタを含む変形コルピッツ発振器を指す。
20 回転角度を測定する対象である部材の一方を指す。
21 回転角度を測定する対象である部材のもう一方を指す。
22 スパイラルインダクタ14と15の間に挟む比透磁率が大きく1ではない部材を指す。
110 センサー部11と計測部300を繋ぐ配線を指す。
111 センサー部11に含まれる発振器19に計測部300から直流電圧を送る配線を指す。
112 センサー部11と計測部300の電圧の基準となるグランドを結ぶ配線を指す。
113 センサー部11の発振器19によって得られる発振信号を計測部300に伝える配線を指す。
300 本発明の計測部全体を指す。
301 配線111を計測部300に繋ぐ接続部311への接続端子を指す。センサー部が増えた場合は、この接続端子301の数もセンサーの数と同じだけ設けられる。
302 配線112を計測部300に繋ぐ接続部311への接続端子を指す。センサー部が増えた場合は、この接続端子302の数もセンサーの数と同じだけ設けられる。
303 配線113を計測部300に繋ぐ接続部311への接続端子を指す。センサー部が増えた場合は、この接続端子303の数もセンサーの数と同じだけ設けられる。
311 計測部300のセンサー部への信号や電力の受け渡しの出入り口である接続部を指す。時分割などによって、複数のセンサーを接続する際には、接続部311で計測対象となるセンサー部を切り替えることとなる。
312 センサー部11から入力された信号の周波数を測定する周波数計測部を指す。図4においては、本実施例で周波数測定を行った機器の等価回路を表している。
313 周波数計測部312によって計測された周波数から、交角、回転角度、位置、速度、加速度、振動、傾きなどの値に逆算する制御部を指す。時分割方式などにより複数のセンサー部11を共有する際には、この制御部313によって、対象とするセンサーを決定し、信号を接続部311に送り、計測することとなる。また、求めた各種の値を表示部314に表示する信号を送る。制御部は汎用のコンピュータなどで良く、メモリ上に載ったプログラムに従って動くシステムである。
314 制御部313より送られて来た結果を表示する表示部を指す。人間に解るように表示しても良いし、別のシステムへ信号を送る装置であっても良い。
315 センサー部11に含まれる発振器19を動かすための直流電圧印可部を指す。
316 制御部300を操作する操作部を指す。人間による操作を受け付けるコンソールであっても良いし、他のシステムからの制御を受け付ける部品であっても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイラルインダクタとキャパシタ、トランジスタ、及び抵抗を有する発振器を利用した角度・振動・位置・傾き・速度・または加速度の計測装置。
【請求項2】
前記スパイラルインダクタを複数とキャパシタ、トランジスタ、及び抵抗を用いて発振器を構成し、スパイラルインダクタ間の相互インダクタンスの変動を発振周波数の変動によって計測する装置。
【請求項3】
前記スパイラルインダクタを複数とキャパシタ、トランジスタ、及び抵抗を用いて発振器を構成し、スパイラルインダクタ間の相互インダクタンスの変動を発振周波数の変動によって交角や交角の変動を計測する計測装置。
【請求項4】
前記スパイラルインダクタを複数とキャパシタ、トランジスタ、及び抵抗を用いて発振器を構成し、スパイラルインダクタ間の相互インダクタンスの変動を発振周波数の変動によって回転角度や回転角度の変動を計測する計測装置。
【請求項5】
前記スパイラルインダクタを複数とキャパシタ、トランジスタ、及び抵抗を用いて発振器を構成し、スパイラルインダクタ間の相互インダクタンスの変動を発振周波数の変動によって一方のスパイラルインダクタに対して他方のスパイラルインダクタの位置の変化を利用した位置・傾き・振動・加速度を計測する計測装置。
【請求項6】
前記スパイラルインダクタ間に比透磁率が1ではない物体や導体である金属を挟んだ物と、キャパシタ、トランジスタ、及び抵抗を用いて発振器を構成し、スパイラルインダクタ間の相互インダクタンスの変動を発振周波数の変動によって、位置・傾き・振動・速度・加速度のいずれかを計測する計測装置。
【請求項7】
前記計測装置において、1つのスパイラルインダクタと比透磁率が1ではない物体か導体である金属を用いて、スパイラルインダクタに対する物体の位置の動きにより、自己インダクタンスの大きさを変動させ、周波数を変化させ、交角、回転角度、位置、傾き、振動、速度、加速度のいずれかを計測する計測装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−76672(P2013−76672A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217803(P2011−217803)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(595115592)学校法人鶴学園 (39)
【Fターム(参考)】