説明

スパッタリング装置

【課題】 スパッタ熱を充分に抑制することができ、連続膜形成における被処理体に形成される膜質の変化およびターゲットの表面荒れを抑制し、安定した膜を形成することができるスパッタリング装置を提供する。
【解決手段】 ターゲット5を冷却するターゲット冷却手段152と、被処理体4を冷却する被処理体冷却手段124と、被処理体保持手段とターゲット保持手段との間に設けられ、被処理体4の膜形成部分を除く残余の部分への膜の形成を阻止するシールド2と、シールド2を冷却するシールド冷却手段150と、被処理体保持手段とターゲット保持手段との間に介在され、被処理体保持手段に保持される被処理体4の膜形成部分への膜の形成を阻止する阻止位置と、阻止位置から退避した退避位置とにわたって変位可能に設けられるシャッタ3と、シャッタ3を冷却するシャッタ冷却手段151とを含むスパッタリング装置1で、被処理体4に膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば半導体基板の薄膜形成に用いられるスパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路(I ntegrated Circuit;IC)および大規模集積回路(Large Scale
Integration;LSI)などの半導体装置の製造工程において、ターゲットと呼ばれる高純度の金属の塊にイオンを衝突させ、被処理体として半導体基板にターゲット成分を付着させるスパッタリング装置が用いられる。
【0003】
スパッタリング装置を用いるスパッタ処理では、スパッタ室内に導入したプロセスガスがプラズマ化するように、被処理体とターゲットとの間に電界を発生させ、プラズマ中のイオンをターゲットに衝突させる。ターゲットにイオンが衝突することでターゲット表面の原子が弾き出され、その原子が、ターゲットに対向する位置にある被処理体に付着することで、ターゲット成分から成るメタル膜が半導体基板に形成される。
【0004】
スパッタ処理では、イオンが衝突することによってターゲットに熱が発生し、またターゲット表面から弾き出された原子が衝突することによって被処理体に熱が発生する。このようなスパッタ処理によって発生する熱(以下「スパッタ熱」という)は、ターゲットおよび被処理体に蓄積する。これによってターゲットおよび被処理体が高温になることによって、被処理体に形成されたメタル膜およびメタルから成るターゲットの溶解が引き起こされる。また、被処理体およびターゲットから伝わる熱によってスパッタ室が高温の状態となり、被処理体の温度(以下「スパッタ温度」という)を制御することができなくなる。
【0005】
図12は、従来のスパッタリング装置50の構成を模式的に示す断面図である。スパッタリング装置50は、スパッタ室が形成される収容容器12と、被処理体4を保持する被処理体治具6と、ターゲット5を保持するターゲット治具7と、被処理体4において膜を形成させる部分を除く残余の部分への膜の形成を阻止するシールド2と、被処理体4の膜形成部分への膜の形成を阻止するシャッタ3と、スパッタ室にプロセスガスを供給するガス配管8とを含む(たとえば、特許文献1および2参照)。
【0006】
図12で示すように、特許文献1および特許文献2に開示のスパッタリング装置50では、スパッタ熱を抑制するために、収容容器12の側壁112、被処理体治具6およびターゲット治具7に冷却水が流れる構造となっている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−158283号公報
【特許文献2】特開平5−331637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図12で示すようなスパッタリング装置50において、たとえば被処理体4に積層構造のメタル膜を形成するために連続してスパッタ処理を行うと、スパッタ熱の抑制が不充分となり、ターゲット5および被処理体4に徐々に熱が蓄積する。同様に電気抵抗を下げることを目的として、被処理体4のメタル膜の厚さを厚くするために、スパッタ処理を行う時間が長くなると、スパッタ熱の抑制が不充分となり、ターゲット5および被処理体4に徐々に熱が蓄積する。このようにスパッタ熱が充分に抑制できていない状態でスパッタ処理を続けることによって、スパッタ熱によるスパッタ室の温度上昇の影響を受け、被処理体4に形成されたメタルの膜質が変化するおそれがある。またターゲット5において、メタル表面荒れが生じるおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、スパッタ熱を充分に抑制することができ、連続膜形成における被処理体に形成される膜質の変化およびターゲットの表面荒れを抑制し、安定した膜を形成することができるスパッタリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、被処理体の予め定める膜形成部分に膜を形成するスパッタリング装置であって、
被処理体の膜形成部分に形成される膜の原料を含むターゲットを保持するターゲット保持手段と、
ターゲットを冷却するターゲット冷却手段と、
被処理体の膜形成部分がターゲットに対向するように被処理体を保持する被処理体保持手段と、
被処理体を冷却する被処理体冷却手段と、
被処理体およびターゲットを収容するスパッタ室が形成される収容容器と、
スパッタ室にガスを供給するガス供給手段と、
ガス供給手段によって供給されるガスがプラズマ化するように、被処理体とターゲットとの間に電界を発生させる電界発生手段と、
被処理体保持手段とターゲット保持手段との間に設けられ、被処理体の膜形成部分を除く残余の部分への膜の形成を阻止するシールドと、
シールドを冷却するシールド冷却手段とを含むことを特徴とするスパッタリング装置である。
【0011】
また本発明は、被処理体の予め定める膜形成部分に膜を形成するスパッタリング装置であって、
被処理体の膜形成部分に形成される膜の原料を含むターゲットを保持するターゲット保持手段と、
ターゲットを冷却するターゲット冷却手段と、
被処理体の膜形成部分がターゲットに対向するように被処理体を保持する被処理体保持手段と、
被処理体を冷却する被処理体冷却手段と、
被処理体およびターゲットを収容するスパッタ室が形成される収容容器と、
スパッタ室にガスを供給するガス供給手段と、
ガス供給手段によって供給されるガスがプラズマ化するように、被処理体とターゲットとの間に電界を発生させる電界発生手段と、
被処理体保持手段とターゲット保持手段との間に介在され、被処理体保持手段に保持される被処理体の膜形成部分への膜の形成を阻止する阻止位置と、阻止位置から退避した退避位置とにわたって変位可能に設けられるシャッタと、
シャッタを冷却するシャッタ冷却手段と
を含むことを特徴とするスパッタリング装置である。
【0012】
また本発明は、被処理体の予め定める膜形成部分に膜を形成するスパッタリング装置であって、
被処理体の膜形成部分に形成される膜の原料を含むターゲットを保持するターゲット保持手段と、
ターゲットを冷却するターゲット冷却手段と、
被処理体の膜形成部分がターゲットに対向するように被処理体を保持する被処理体保持手段と、
被処理体を冷却する被処理体冷却手段と、
被処理体およびターゲットを収容するスパッタ室が形成される収容容器と、
スパッタ室にガスを供給するガス供給手段と、
ガス供給手段によって供給されるガスがプラズマ化するように、被処理体とターゲットとの間に電界を発生させる電界発生手段と、
被処理体保持手段とターゲット保持手段との間に設けられ、被処理体の膜形成部分を除く残余の部分への膜の形成を阻止するシールドと、
シールドを冷却するシールド冷却手段と
被処理体保持手段とターゲット保持手段との間に介在され、被処理体保持手段に保持される被処理体の膜形成部分への膜の形成を阻止する阻止位置と、阻止位置から退避した退避位置とにわたって変位可能に設けられるシャッタと、
シャッタを冷却するシャッタ冷却手段とを含むことを特徴とするスパッタリング装置である。
【0013】
また本発明は、シールド冷却手段は、
シールドの内部に形成される冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給手段を含むことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、シャッタ冷却手段は、
シャッタの内部に形成される冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給手段を含むことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、冷媒は、ガス状の冷却ガスであり、
冷媒流路には、冷却ガスが流出する流出口が形成されることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、シールド冷却手段は、シールドの内部に形成される冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給手段を含み、
シャッタ冷却手段は、シャッタの内部に形成される冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給手段を含み、
冷媒は、ガス状の冷却ガスであり、
各冷媒流路には、冷却ガスが流出する流出口が形成され、
シールド冷却手段の冷媒供給手段と、シャッタ冷却手段の冷媒供給手段とは、互いに異なる冷媒を冷媒流路に供給することを特徴とする。
【0017】
また本発明は、冷媒供給手段は、
冷媒の温度を調整する温度調整手段と、
冷媒の流量を調整する流量調整手段とを含むことを特徴とする。
【0018】
また本発明は、電界発生手段が被処理体とターゲットとの間に電界を発生させる電界発生状態にあるとき、冷媒流路に冷媒を供給し、電界発生手段が被処理体とターゲットとの間に電界を発生させない非発生状態にあるとき、冷媒流路への冷媒の供給を停止するように、冷媒供給手段を制御する制御手段を含むことを特徴とする。
【0019】
また本発明は、スパッタ室に被処理体が収容される収容状態にあるとき、冷媒流路に冷媒を供給し、スパッタ室に被処理体が収容されない非収容状態にあるとき、冷媒流路への冷媒の供給を停止するように、冷媒供給手段を制御する制御手段を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、スパッタリング装置は、被処理体の予め定める膜形成部分に膜を形成する装置であって、ターゲット保持手段と、ターゲット冷却手段と、被処理体保持手段と、被処理体冷却手段と、収容容器と、ガス供給手段と、電界発生手段と、シールドと、シールド冷却手段とを含む。被処理体の膜形成部分に形成される膜の原料(以下「膜原料」ということがある)を含むターゲットは、ターゲット保持手段によって保持され、ターゲット冷却手段によって冷却される。被処理体は、被処理体の膜形成部分がターゲットに対向するように被処理体保持手段によって保持され、被処理体冷却手段によって冷却される。被処理体およびターゲットは、収容容器に形成されるスパッタ室に収容される。スパッタ室には、ガス供給手段によってガスが供給される。このガス供給手段によって供給されるガスがプラズマ化するように、電界発生手段によって被処理体とターゲットとの間に電界が発生される。この電界によってスパッタ室内のガスがプラズマ化し、ターゲットに衝突する。これによってターゲットから膜原料が弾き出され、被処理体に衝突して付着し、膜が形成される。被処理体保持手段とターゲット保持手段との間にはシールドが設けられるので、被処理体の膜形成部分を除く残余の部分への膜の形成を阻止することができる。このシールドは、シールド冷却手段によって冷却される。
【0021】
ターゲットは、ターゲット冷却手段によって冷却されるので、プラズマ化したガスが衝突するときの発熱によるターゲットの温度上昇を抑制することができる。また被処理体は、被処理体冷却手段によって冷却されるので、ターゲットから弾き出された膜原料が衝突するときの発熱による被処理体の温度上昇を抑制することができる。プラズマ化したガスおよびターゲットから弾き出された膜原料は、ターゲット保持手段と被処理体保持手段との間に設けられるシールドにも衝突するが、シールドは、シールド冷却手段によって冷却されるので、プラズマ化したガスおよびターゲットから弾き出された膜原料が衝突するときの発熱によるシールドの温度上昇を抑制することができる。このようにシールド冷却手段、被処理体冷却手段およびターゲット冷却手段を含むことによって、ターゲット、被処理体およびシールドの温度上昇を抑制することができるので、スパッタ熱を充分に抑制することができる。したがって、連続膜形成のときの被処理体に形成される膜質の変化およびターゲットの表面荒れを抑制することができるので、安定した膜を形成することができる。
【0022】
また本発明によれば、スパッタリング装置は、被処理体の予め定める膜形成部分に膜を形成する装置であって、ターゲット保持手段と、ターゲット冷却手段と、被処理体保持手段と、被処理体冷却手段と、収容容器と、ガス供給手段と、電界発生手段と、シャッタと、シャッタ冷却手段とを含む。膜原料を含むターゲットは、ターゲット保持手段によって保持され、ターゲット冷却手段によって冷却される。被処理体は、被処理体の膜形成部分がターゲットに対向するように被処理体保持手段によって保持され、被処理体冷却手段によって冷却される。被処理体およびターゲットは、収容容器に形成されるスパッタ室に収容される。スパッタ室には、ガス供給手段によってガスが供給される。このガス供給手段によって供給されるガスがプラズマ化するように、電界発生手段によって被処理体とターゲットとの間に電界が発生される。この電界によってスパッタ室内のガスがプラズマ化し、ターゲットに衝突する。これによってターゲットから膜原料が弾き出され、被処理体に衝突して付着し、膜が形成される。シャッタは、被処理体保持手段に保持される被処理体の膜形成部分への膜の形成を阻止する阻止位置と、阻止位置から退避した退避位置とにわたって変位可能に設けられるので、シャッタが阻止位置にあるときに、被処理体の膜形成部分への膜の形成を阻止することができる。このシャッタは、シャッタ冷却手段によって冷却される。
【0023】
ターゲットは、ターゲット冷却手段によって冷却されるので、プラズマ化したガスが衝突するときの発熱によるターゲットの温度上昇を抑制することができる。また被処理体は、被処理体冷却手段によって冷却されるので、ターゲットから弾き出された膜原料が衝突するときの発熱による被処理体の温度上昇を抑制することができる。プラズマ化したガスおよびターゲットから弾き出された膜原料は、ターゲット保持手段と被処理体保持手段との間に設けられるシャッタにも衝突するが、シャッタは、シャッタ冷却手段によって冷却されるので、プラズマ化したガスおよびターゲットから弾き出された膜原料が衝突するときの発熱によるシャッタの温度上昇を抑制することができる。このようにシャッタ冷却手段、被処理体冷却手段およびターゲット冷却手段を含むことによって、ターゲット、被処理体およびシャッタの温度上昇を抑制することができるので、スパッタ熱を充分に抑制することができる。したがって、連続膜形成のときの被処理体に形成される膜質の変化およびターゲットの表面荒れを抑制することができるので、安定した膜を形成することができる。
【0024】
また本発明によれば、スパッタリング装置は、被処理体の予め定める膜形成部分に膜を形成する装置であって、ターゲット保持手段と、ターゲット冷却手段と、被処理体保持手段と、被処理体冷却手段と、収容容器と、ガス供給手段と、電界発生手段と、シールドと、シールド冷却手段と、シャッタと、シャッタ冷却手段とを含む。膜原料を含むターゲットは、ターゲット保持手段によって保持され、ターゲット冷却手段によって冷却される。被処理体は、被処理体の膜形成部分がターゲットに対向するように被処理体保持手段によって保持され、被処理体冷却手段によって冷却される。被処理体およびターゲットは、収容容器に形成されるスパッタ室に収容される。スパッタ室には、ガス供給手段によってガスが供給される。このガス供給手段によって供給されるガスがプラズマ化するように、電界発生手段によって被処理体とターゲットとの間に電界が発生される。この電界によってスパッタ室内のガスがプラズマ化し、ターゲットに衝突する。これによってターゲットから膜原料が弾き出され、被処理体に衝突して付着し、膜が形成される。被処理体保持手段とターゲット保持手段との間にはシールドが設けられるので、被処理体の膜形成部分を除く残余の部分への膜の形成を阻止することができる。このシールドは、シールド冷却手段によって冷却される。シャッタは、被処理体保持手段に保持される被処理体の膜形成部分への膜の形成を阻止する阻止位置と、阻止位置から退避した退避位置とにわたって変位可能に設けられるので、シャッタが阻止位置にあるときに、被処理体の膜形成部分への膜の形成を阻止することができる。このシャッタは、シャッタ冷却手段によって冷却される。
【0025】
ターゲットは、ターゲット冷却手段によって冷却されるので、プラズマ化したガスが衝突するときの発熱によるターゲットの温度上昇を抑制することができる。また被処理体は、被処理体冷却手段によって冷却されるので、ターゲットから弾き出された膜原料が衝突するときの発熱による被処理体の温度上昇を抑制することができる。プラズマ化したガスおよびターゲットから弾き出された膜原料は、シールドおよびターゲット保持手段と被処理体保持手段との間に設けられるシャッタにも衝突するが、シールドは、シールド冷却手段によって冷却され、シャッタは、シャッタ冷却手段によって冷却されるので、プラズマ化したガスおよびターゲットから弾き出された膜原料が衝突するときの発熱によるシールドおよびシャッタの温度上昇を抑制することができる。このようにシールド冷却手段、シャッタ冷却手段、被処理体冷却手段およびターゲット冷却手段を含むことによって、ターゲット、被処理体、シールドおよびシャッタの温度上昇を確実に抑制することができるので、スパッタ熱をより充分に抑制することができる。したがって、連続膜形成のときの被処理体に形成される膜質の変化およびターゲットの表面荒れを確実に抑制することができるので、安定した膜を確実に形成することができる。
【0026】
また本発明によれば、シールド冷却手段は、シールドの内部に形成される冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給手段を含む。シールド冷却手段が、シールド内部に形成される冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給手段を含むことによって、シールドを内部から冷却することができるので、スパッタ熱を充分に抑制することができる。したがって、被処理体に形成されるメタル膜質の変化およびターゲットのメタル表面荒れをより確実に抑制することができるので、安定したメタル膜をより確実に形成することができる。
【0027】
また本発明によれば、シャッタ冷却手段は、シャッタの内部に形成される冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給手段を含む。シャッタ冷却手段が、シャッタ内部に形成される冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給手段を含むことによって、シャッタを内部から冷却することができるので、スパッタ熱を充分に抑制することができる。したがって、被処理体に形成されるメタル膜質の変化およびターゲットのメタル表面荒れをより確実に抑制することができ、安定したメタル膜をより確実に形成することができる。
【0028】
また本発明によれば、冷媒は、ガス状の冷却ガスであり、冷媒流路には、冷却ガスが流出する流出口が形成される。冷媒が冷却ガスであり、冷媒流路に冷却ガスが流出する流出口が形成されることによって、流出口からスパッタ室に流れ出た冷却ガスを、スパッタ室に供給されるガス(以下「プロセスガス」という)として使用することができる。したがって、従来技術に比べて、ターゲットに近い位置からプロセスガスを供給することができるので、効率的にプロセスガスの供給を行うことができる。
【0029】
また冷媒供給手段とガス供給手段とによって互いに異なるプロセスガスをスパッタ室に供給することが可能であるので、種々の膜を被処理体に形成することが可能である。たとえば、ターゲットから膜原料を弾き出すためのガスをガス供給手段から供給し、膜の原料となるガスを冷媒供給手段から供給することによって、ターゲットに含まれる膜原料と冷却ガスとを原料とする膜を被処理体に形成することができる。またシールド冷却手段もしくはターゲット冷却手段、またはシールド冷却手段およびターゲット冷却手段をガス供給手段として機能させることによって、スパッタリング装置の構成を簡単化することが可能である。
【0030】
また本発明によれば、シールド冷却手段は、シールドの内部に形成される冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給手段を含み、シャッタ冷却手段は、シャッタの内部に形成される冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給手段を含み、冷媒は、ガス状の冷却ガスであり、各冷媒流路には、冷却ガスが流出する流出口が形成され、シールド冷却手段の冷媒供給手段と、シャッタ冷却手段の冷媒供給手段とは、互いに異なる冷媒を冷媒流路に供給する。シールド冷却手段の冷媒供給手段と、シャッタ冷却手段の冷媒供給手段とで、互いに異なる冷却ガスを冷媒として冷媒流路に供給することによって、プロセスガスとして2種類の冷却ガスをスパッタ室に供給することができるので、種々の膜を被処理体に形成することができる。たとえば、ターゲットから膜原料を弾き出すためのガスをシールド冷却手段の冷媒供給手段から供給し、膜の原料となるガスをシャッタ冷却手段の冷媒供給手段から供給することによって、ターゲットに含まれる膜原料と冷却ガスとを原料とする膜を被処理体に形成することができる。
【0031】
また本発明によれば、冷媒供給手段は、冷媒の温度を調整する温度調整手段と、冷媒の流量を調整する流量調整手段とを含む。冷媒供給手段が温度調節手段と、流量調節手段とを含むことによって、冷媒流路に供給される冷媒の温度および流量をそれぞれ調整することができるので、膜の形成条件を変えることができ、目的の膜を被処理体に形成することができる。
【0032】
また本発明によれば、冷媒供給手段は、電界発生手段が被処理体とターゲットとの間に電界を発生させる電界発生状態にあるとき、冷媒流路に冷媒を供給し、電界発生手段が被処理体とターゲットとの間に電界を発生させない非発生状態にあるとき、冷媒流路への冷媒の供給を停止するように、制御手段によって制御される。これによって、非発生状態であって、被処理体への膜形成が行われないときには冷媒流路への冷媒の供給が停止されるので、冷媒による冷却を効果的に行うことができる。
【0033】
また本発明によれば、冷媒供給手段は、スパッタ室に被処理体が収容される収容状態にあるとき、冷媒流路に冷媒を供給し、スパッタ室に被処理体が収容されない非収容状態にあるとき、冷媒流路への冷媒の供給を停止するように、制御手段によって制御される。これによって、非収容状態であって、被処理体がスパッタ室に収容されていないときには冷媒流路への冷媒の供給が停止されるので、冷媒による冷却を効果的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1は、本発明の第1の実施形態であるスパッタリング装置1を示す断面図である。スパッタリング装置1は、被処理体4の予め定める膜形成部分に膜を形成する装置である。スパッタリング装置1は、ターゲット治具7と、ターゲット冷却手段152と、被処理体治具6と、被処理体冷却手段124と、収容容器12と、プロセスガス配管8と、電界発生手段123と、シールド2と、シャッタ3と、第1から第3ボンベ122a〜122c、第1から第3入水用配管9a〜9cと、第1から第3排水用配管10a〜10cと、第1から第3流量制御器18a〜18cとを含む。ターゲット治具7は、ターゲット保持手段に相当し、被処理体治具6は、被処理体保持手段に相当し、プロセスガス配管8は、ガス供給手段に相当する。
【0035】
本実施形態において、膜原料を含むターゲット5は、ターゲット保持手段によって保持され、ターゲット冷却手段152によって冷却される。被処理体4は、被処理体4の膜形成部分がターゲット5に対向するように被処理体保持手段によって保持され、被処理体冷却手段によって冷却される。被処理体4およびターゲット5は、収容容器12に形成されるスパッタ室に収容される。本実施形態において、「スパッタ室」とは、収容容器12によって形成される内部空間である。スパッタ室には、ガス供給手段によってガスが供給される。このガス供給手段によって供給されるガスがプラズマ化するように、電界発生手段123によって被処理体4とターゲット5との間に電界が発生される。この電界によってスパッタ室内のガスがプラズマ化し、ターゲット5に衝突する。これによってターゲット5から膜原料が弾き出され、被処理体4に衝突して付着し、膜が形成される。被処理体保持手段とターゲット保持手段との間にはシールド2が設けられるので、被処理体4の膜形成部分を除く残余の部分への膜の形成を阻止することができる。このシールド2は、シールド冷却手段150によって冷却される。シャッタ3は、被処理体保持手段に保持される被処理体4の膜形成部分への膜の形成を阻止する阻止位置と、阻止位置から退避した退避位置とにわたって変位可能に設けられるので、シャッタ3が阻止位置にあるときに、被処理体4の膜形成部分への膜の形成を阻止することができる。
【0036】
図2は、スパッタ室を上から見た、退避位置でのシャッタ3を示す概略図である。図2に示すように、阻止位置で被処理体4の膜形成部分への膜の形成を阻止したシャッタ3は、後述するシャッタ3の長方形部分161に設けられ、上下方向に平行な回転軸を軸として、矢符80の方向に回動する。退避位置は、スパッタ室内であり、かつ阻止位置と重ならない位置である。このシャッタ3は、シャッタ冷却手段151によって冷却される。
【0037】
ターゲット5は、ターゲット冷却手段によって冷却されるので、プラズマ化したガスが衝突するときの発熱によるターゲット5の温度上昇を抑制することができる。また被処理体4は、被処理体冷却手段124によって冷却されるので、ターゲット5から弾き出された膜原料が衝突するときの発熱による被処理体4の温度上昇を抑制することができる。プラズマ化したガスおよびターゲット5から弾き出された膜原料は、シールド2およびターゲット保持手段と被処理体保持手段との間に設けられるシャッタ3にも衝突するが、シールド2は、シールド冷却手段150によって冷却され、シャッタ3は、シャッタ冷却手段151によって冷却されるので、プラズマ化したガスおよびターゲット5から弾き出された膜原料が衝突するときの発熱によるシールド2およびシャッタ3の温度上昇を抑制することができる。このようにシールド冷却手段150、シャッタ冷却手段151、被処理体冷却手段124およびターゲット冷却手段152を含むことによって、ターゲット5、被処理体4、シールド2およびシャッタ3の温度上昇を確実に抑制することができるので、スパッタ熱をより充分に抑制することができる。したがって、連続膜形成のときの被処理体4に形成される膜質の変化を確実に抑制することができるので、安定した膜を確実に形成することができる。
【0038】
図3(a)は、本発明の第1の実施形態におけるシールド2を示す正面図である。図3(b)は、本発明の第1の実施形態におけるシールド2を示す平面図である。図3に示すように、シールド2内部の第1流路形成部121aには、冷媒が流下する流路(以下「冷媒流路」という)が形成される。冷媒流路には、冷媒供給手段である第1ボンベ122aから第1入水用配管9aを介し、冷媒として冷却水が供給され、冷媒流路を通った冷却水は、第1排水用配管10aを介し、排出される。第1温度調整手段は、第1ボンベ122a内部の冷却水の温度を調整する。第1入水用配管9aには、冷却水の流量を調整する流量調整手段である第1流量制御器18aが設けられる。冷却水の流量は、収容容器12の大きさ、シールド2およびシャッタ3の大きさ、ならびにシールド2およびシャッタ3の形状などに対応して調整される。シールド2内部の第1流路形成部121a、および冷媒供給手段である図1に示す第1ボンベ122a、第1流量制御器18aおよび第1温度調整手段、第1入水用配管9a、ならびに第1排水用配管10aは、シールド冷却手段150を構成する。
【0039】
シールド冷却手段150が、シールド2内部に形成される冷媒流路に冷却水を供給する冷媒供給手段を含むことによって、シールド2を内部から冷却することができるので、スパッタ熱を充分に抑制することができる。したがって、被処理体4に形成されるメタル膜質の変化およびターゲット5のメタル表面荒れをより確実に抑制することができるので、安定したメタル膜をより確実に形成することができる。本発明の他の実施形態においては、シールド冷却手段150は、シャッタ2の内部に形成される冷媒流路に冷却水を供給する冷媒供給手段122aを含まなくてもよい。
【0040】
図4は、図3(a)の切断面線S3−S3からみた断面図である。図4に示すように、第1流路形成部121aには、第1入水用配管9aを介して供給された冷却水が流下する冷媒流路と、第1排水用配管10aを介して排出される冷却水が流下する冷媒流路とが接して形成される。本発明の他の実施形態では、シールドの内部に形成される入水用配管を介して供給される冷却水が流下する冷媒流路と排水用配管を介して排出される冷却水が流下する冷媒流路とが、離れて形成されてもよい。
【0041】
図5は、図3(a)のセクションS4の拡大平面図である。第1流路形成部121aの最も外側に形成される冷媒流路を通り矢符14の方向から供給された冷却水は、第1流路形成部121aに含まれる第1分岐点16で、第1流路形成部121aの最も中心に形成される冷媒流路と、その冷媒流路より一回り外側に形成される冷媒流路とに分かれて流下する。シールド2を冷却しながら冷媒流路を一回りした冷却水は、第1流路形成部121aに含まれる第1合流点17で、合流し、矢符15の方向に排水される。
【0042】
図6は、本発明の第1の実施形態におけるシャッタ3の構成を模式的に示す概略図である。シャッタ3は、前述のように、図1に示す被処理体治具6とターゲット治具7との間に設けられ、被処理体治具6に保持される被処理体4の膜形成部分への膜の形成を阻止する阻止位置と、阻止位置から退避した退避位置とにわたって変位可能に設けられる。シャッタ3は、ターゲット5中の不純物が付着する円形状の部分(以下「円形部分」という)160と、その円形部分160から半径方向外方に延びる長方形状の部分(以下「長方形部分」という)161とを含む。円形部分160の第2流路形成部121bには、冷媒流路が同心円状に形成され、長方形部分161の第2流路形成部121bには、同心円状に形成された冷媒流路と第2入水用配管9bおよび第2排水用配管10bとを繋ぐように、冷媒流路が形成される。
【0043】
図7は、本発明の第1の実施形態におけるシャッタ3の第2流路形成部121bに形成される冷媒流路の構成を模式的に示す図である。図7に示すように、シャッタ3の内部の第2流路形成部121bには、冷媒として冷却水を流すことができる冷媒流路が形成される。第2流路形成部121bの冷媒流路には、冷媒供給手段である第2ボンベ122bから第2入水用配管9bを介し冷却水が供給され、第2流路形成部121bの冷媒流路を流下した冷却水は、第2排水用配管10bを介して排出される。第2温度調整手段は、第2ボンベ122b内部の冷却水の温度を調整する。第2入水用配管9bには、冷却水の流量を調整する、流量調整手段として第2流量制御器18bが設けられる。冷却水の流量は、収容容器12の大きさ、シールド2およびシャッタ3の大きさ、ならびにシールド2およびシャッタ3の形状などに対応して調整される。シャッタ3内部の第2流路形成部121b、および冷媒供給手段である図1に示す第2ボンベ122b、第2流量制御器18b、第2温度調整手段、第2入水用配管9bおよび第2排水用配管10bは、シャッタ冷却手段151を構成する。
【0044】
シャッタ冷却手段151が、シャッタ3内部に形成される冷媒流路に冷却水を供給する冷媒供給手段を含むことによって、シャッタ3を内部から冷却することができるので、スパッタ熱を充分に抑制することができる。したがって、被処理体4に形成されるメタル膜質の変化およびターゲット5のメタル表面荒れをより確実に抑制することができ、安定したメタル膜をより確実に形成することができる。本発明の他の実施形態においては、シャッタ冷却手段151は、シャッタ3の内部に形成される冷媒流路に冷却水を供給する第2冷媒供給手段bを含まなくてもよい。
【0045】
第2入水用配管9bを介して供給された冷却水は、第2流路形成部121bに含まれる第2分岐点103で円形部分160における第2流路形成部121bの最も外側に形成される冷媒流路と、その最も外側に形成される冷媒流路よりも内側に形成される冷媒流路とに分かれて流れ、第2流路形成部121bに含まれる第3分岐点104において、円形部分160における第2流路形成部121bの最も外側に形成される冷媒流路より一回り内側に形成される冷媒流路と、円形部分160における第2流路形成部121bの最も内側に形成される冷媒流路とに分かれて流下する。シャッタ3を冷却しながら一回りした冷却水は、第2流路形成部121bに含まれる第2合流点106および第3合流点107において合流し、第2排水用配管10bを介して排出される。
【0046】
図8(a)は、接続前のジョイント102を示す図である。図8(b)は、接続後のジョイント102を示す図である。第1流路形成部121aに形成された冷媒流路に繋がる第1入水用配管9aおよび第1排水用配管10aと、冷却供給手段に繋がる第1入水用配管9aおよび冷却水が排出される第1排水用配管10aとは、ジョイント102によってそれぞれ接続される。
【0047】
また第2流路形成部121bに形成された冷媒流路に繋がる第2入水用配管9bおよび第2排水用配管10bと、冷媒供給手段に繋がる第2入水用配管9bおよび冷却水が排出される第2排水用配管10bとは、ジョイント102によってそれぞれ接続される。
【0048】
本実施形態において、冷媒供給手段は、冷媒供給手段が温度調節手段と、流量調節手段とを含むことによって、冷媒流路に供給される冷却水の温度および流量をそれぞれ調整することができる。したがって、膜の形成条件を変えることができ、目的の膜を被処理体4に形成することができる。
【0049】
本実施形態では、冷媒供給手段は、電界発生手段123が被処理体4とターゲット5との間に電界を発生させる電界発生状態にあるとき、冷媒流路に冷却水を供給し、電界発生手段123が被処理体4とターゲット5との間に電界を発生させない非発生状態にあるとき、冷媒流路への冷却水の供給を停止するように、図1に示す制御手段105によって制御される。これによって、非発生状態であって、被処理体4への膜形成が行われないときには冷媒流路への冷却水の供給が停止されるので、冷却水による冷却を効果的に行うことができる。
【0050】
本発明の他の実施形態では、冷媒供給手段は、スパッタ室に被処理体4が収容される収容状態にあるとき、冷媒流路に冷媒を供給し、スパッタ室に被処理体が収容されない非収容状態にあるとき、冷媒流路への冷媒の供給を停止するように、制御手段によって制御される。これによって、非収容状態であって、被処理体4がスパッタ室に収容されていないときには冷媒流路への冷媒の供給が停止されるので、冷媒による冷却を効果的に行うことができる。
【0051】
本発明の他の実施形態においては、シールド冷却手段150またはシャッタ冷却手段151のどちらかを含まない構成としてもよい。
【0052】
また本実施形態においては、冷媒として冷却水を用いたが、冷却水に限定されず冷却水以外の液体または気体を用いることもできる。
【0053】
また本実施形態においては、第1から第3ボンベ122a〜122cに温度調整手段をそれぞれに設けたが、本発明の他の実施形態では、たとえば、温度調整手段で、工場のタンクに貯めた冷却水をある一定の温度になるように調整し、この冷却水をスパッタリング装置だけではなく、工場内の冷却機構を必要とする他の設備で使用する。
【0054】
以下に、本発明の第2の実施形態のスパッタリング装置について説明する。第2の実施形態のスパッタリング装置は、図1に示すスパッタリング装置1とシールド2、シールド冷却手段150、シャッタ3およびシャッタ冷却手段151以外は、同様の構成であるので、説明を省略する。
【0055】
本実施形態において、冷媒は、ガス状の冷却ガスである。第2の実施形態におけるシールド冷却手段は、図9に示す第4流路形成部121d、第1送り用ガス配管108a、図1に示す第2流量制御器aと同様の機能を持つ流量制御器および第1ボンベaと同様の機能を持つボンベによって構成される。第2の実施形態におけるシールド冷却手段に含まれる冷媒供給手段であるボンベからは、冷媒として冷却ガスが供給される。
【0056】
第2の実施形態におけるシャッタ冷却手段は、第5流路形成部121e、第2送り用ガス配管108b、図1に示す第2流量制御器bと同様の機能を持つ流量制御器および第2ボンベbと同様の機能を持つボンベによって構成される。第2の実施形態におけるシャッタ冷却手段に含まれる冷媒供給手段であるボンベからは、冷媒として冷却ガスが供給される。
【0057】
冷媒流路には、冷却ガスが流出する流出口21が形成される。冷媒が冷却ガスであり、冷媒流路に冷却ガスが流出する流出口21が形成されることによって、流出口21からスパッタ室に流れ出た冷却ガスを、スパッタ室に供給されるガス(以下「プロセスガス」という)として使用することができる。冷却ガスの流出量は、収容容器12の大きさ、シールド20およびシャッタ30の大きさ、ならびにシールド20およびシャッタ30の形状などに対応して調整される。冷却ガスは、スパッタ室に固定量の冷却ガスを流出させ、またはスパッタ室の真空度を一定に保つように流出させる。
【0058】
図9(a)は、本発明の第2の実施形態におけるシールド20の構成を模式的に示す正面図である。図9(b)は、本発明の第2の実施形態におけるシールド20の構成を模式的に示す平面図である。シールド20内部に形成される冷媒流路には冷却ガスが第1送り用ガス配管108aを介して冷媒供給手段から供給される。供給された冷却ガスは、シールド20内部の冷媒流路に形成される流出口21からスパッタ室に流出し、プロセスガスとして使用される。流出口21は、シールド20において、ターゲット5に対向する面に形成される。したがって、従来技術に比べて、ターゲット5に近い位置からプロセスガスを供給することができるので、効率的にプロセスガスの供給を行うことができる。
【0059】
冷媒流路に形成される流出口21の数、直径および第4流路形成部121dでの位置は、冷却ガスを第4流路形成部121d全体に、均一に流れるように調整する必要がある。
【0060】
本実施形態では、図9(b)に示すように、シールド20内部の第4流路形成部121dにおいて最も外側に形成される冷媒流路に4つ、最も内側の冷媒流路に4つの流出口21が均等に形成される。また、シールド20内部の第4流路形成部121bの最も外側に形成される流出口21の直径は、内側に形成される流出口21の直径より小さい。これによって、第4流路形成部121d全体に、均一に流れるように調整することができ、最も外側に形成される流出口21から流出する冷却ガスの流出量が内側に形成される流出口21から流出する冷却ガスの流出量より多くなることがなく、全ての流出口21から均等に冷却ガスを流出させることができる。
【0061】
図10は、本発明の第2の実施形態におけるシャッタ30の構成を模式的に示す平面図である。シャッタ30は、ターゲット5中の不純物が付着する円形部分165と、その円形部分165から半径方向外方に延びる長方形部分166とを含む。円形部分165の第5流路形成部121eには、冷媒流路が同心円状に形成され、長方形部分166の第5流路形成部121eには、同心円状に形成された冷媒流路と第1送り用ガス配管108bを繋ぐように、冷媒流路が形成される。
【0062】
シャッタ30内部に形成される冷媒流路には冷媒として冷却ガスが第2送り用ガス配管108bを介して冷媒供給手段から供給される。供給された冷却ガスは、シャッタ30内部の冷媒流路に形成される流出口21からスパッタ室に流出し、プロセスガスとして使用される。流出口21は、シャッタ30において、ターゲット5に対向する面に形成される。したがって、従来技術に比べて、ターゲット5に近い位置からプロセスガスを供給することができるので、効率的にプロセスガスの供給を行うことができる。冷媒流路に形成される流出口21の数、直径および第5流路形成部121eでの位置は、冷却ガスを第5流路形成部121e全体に、均一に流れるように調整する必要がある。
【0063】
本実施形態では、冷却ガスが第5流路形成部121e全体に、均一に流下させるために、図10に示すように、流出口21は、シャッタ30の円形部分165において、第1送り用ガス配管108bの位置を0°とすると、90°、180°および270°の位置に形成される。
【0064】
本実施形態では、冷媒供給手段とガス供給手段とによって互いに異なるプロセスガスをスパッタ室に供給することが可能であるので、種々の膜を被処理体4に形成することが可能である。たとえば、ターゲット5から膜原料を弾き出すためのガスをガス供給手段から供給し、膜の原料となるガスを冷媒供給手段から供給することによって、ターゲット5に含まれる膜原料と冷却ガスとを原料とする膜を被処理体4に形成することができる。またシールド冷却手段もしくはターゲット冷却手段、またはシールド冷却手段およびターゲット冷却手段をガス供給手段として機能させることによって、スパッタリング装置の構成を簡単化することが可能である。
【0065】
第2の実施形態におけるシールド冷却手段は、シールド20の内部に形成される冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給手段を含み、シャッタ冷却手段は、シャッタ30の内部に形成される冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給手段を含み、冷媒は、ガス状の冷却ガスであり、各冷媒流路には、冷却ガスが流出する流出口21が形成され、シールド冷却手段の冷媒供給手段と、シャッタ冷却手段の冷媒供給手段とは、互いに異なる冷媒を冷媒流路に供給する。シールド冷却手段の冷媒供給手段と、シャッタ冷却手段の冷媒供給手段とで、互いに異なる冷却ガスを冷媒として冷媒流路に供給することによって、プロセスガスとして2種類の冷却ガスをスパッタ室に供給することができるので、種々の膜を被処理体4に形成することができる。たとえば、ターゲット5から膜原料を弾き出すためのガスをシールド冷却手段の冷媒供給手段から供給し、膜の原料となるガスをシャッタ冷却手段の冷媒供給手段から供給することによって、ターゲット5に含まれる膜原料と冷却ガスとを原料とする膜を被処理体4に形成することができる。具体的な例としては、チタンをターゲットとして、アルゴンガスのみをスパッタ室に供給してスパッタ処理を行なった場合には、被処理体4にはTi膜が形成されるが、シールド冷却手段の冷媒供給手段からアルゴンガスを供給し、シャッタ冷却手段の冷媒供給手段から窒素ガスを供給することによって、被処理体4にTiN膜を形成することができる。
【0066】
本実施形態では、第1および第2送り用ガス配管108a,bで供給される冷却ガスは全てスパッタ室に流れ出るが、供給された冷却ガスの一部はスパッタ室に流出し、残りは排出される構成としてもよい。このような構成として、シャッタ40を図11に示す。
【0067】
図11は、本発明の第3の実施形態のシャッタ40の構成を模式的に示す概略図である。
【0068】
シャッタ40を用いると、第3送り用ガス配管108cによって供給された冷却ガスは、一部は流出口21からスパッタ室に流れ出し、スパッタ室に流れ出さない冷却ガスは戻り用ガス配管111を介して排出される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施形態であるスパッタリング装置1を示す断面図である。
【図2】スパッタ室を上から見た、退避位置でのシャッタ3を示す概略図である。
【図3】図3(a)は本発明の第1の実施形態におけるシールド2を示す正面図であり、図3(b)は本発明の第1の実施形態におけるシールド2を示す平面図である。
【図4】図3(a)の切断面線S3−S3からみた断面図である。
【図5】図3(a)のセクションS4の拡大平面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態におけるシャッタ3の構成を模式的に示す概略図である。
【図7】本発明の第1の実施形態におけるシャッタ3の第2流路形成部121bに形成される冷媒流路の構成を模式的に示す図である。
【図8】図8(a)は接続前のジョイント102を示す図であり、図8(b)は接続後のジョイント102を示す図である。
【図9】図9(a)は本発明の第2の実施形態におけるシールド20の構成を模式的に示す正面図であり、図9(b)は本発明の第2の実施形態におけるシールド20の構成を模式的に示す平面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態におけるシャッタ30の構成を模式的に示す平面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態のシャッタ40の構成を模式的に示す概略図である。
【図12】従来のスパッタリング装置50の構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 スパッタリング装置
2 シールド
3 シャッタ
4 被処理体
6 被処理体治具
7 ターゲット治具
8 プロセスガス配管
12 収容容器
123 電界発生手段
124 被処理体冷却手段
125 ターゲット冷却手段
122a 第1ボンベ
122b 第2ボンベ
122c 第3ボンベ
9a 第1入水用配管
9b 第2入水用配管
9c 第3入水用配管
10a 第1排水用配管
10b 第2排水用配管
10c 第3排水用配管
18a 第1流量制御器
18b 第2流量制御器
18c 第3流量制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体の予め定める膜形成部分に膜を形成するスパッタリング装置であって、
被処理体の膜形成部分に形成される膜の原料を含むターゲットを保持するターゲット保持手段と、
ターゲットを冷却するターゲット冷却手段と、
被処理体の膜形成部分がターゲットに対向するように被処理体を保持する被処理体保持手段と、
被処理体を冷却する被処理体冷却手段と、
被処理体およびターゲットを収容するスパッタ室が形成される収容容器と、
スパッタ室にガスを供給するガス供給手段と、
ガス供給手段によって供給されるガスがプラズマ化するように、被処理体とターゲットとの間に電界を発生させる電界発生手段と、
被処理体保持手段とターゲット保持手段との間に設けられ、被処理体の膜形成部分を除く残余の部分への膜の形成を阻止するシールドと、
シールドを冷却するシールド冷却手段とを含むことを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
被処理体の予め定める膜形成部分に膜を形成するスパッタリング装置であって、
被処理体の膜形成部分に形成される膜の原料を含むターゲットを保持するターゲット保持手段と、
ターゲットを冷却するターゲット冷却手段と、
被処理体の膜形成部分がターゲットに対向するように被処理体を保持する被処理体保持手段と、
被処理体を冷却する被処理体冷却手段と、
被処理体およびターゲットを収容するスパッタ室が形成される収容容器と、
スパッタ室にガスを供給するガス供給手段と、
ガス供給手段によって供給されるガスがプラズマ化するように、被処理体とターゲットとの間に電界を発生させる電界発生手段と、
被処理体保持手段とターゲット保持手段との間に介在され、被処理体保持手段に保持される被処理体の膜形成部分への膜の形成を阻止する阻止位置と、阻止位置から退避した退避位置とにわたって変位可能に設けられるシャッタと、
シャッタを冷却するシャッタ冷却手段とを含むことを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項3】
被処理体の予め定める膜形成部分に膜を形成するスパッタリング装置であって、
被処理体の膜形成部分に形成される膜の原料を含むターゲットを保持するターゲット保持手段と、
ターゲットを冷却するターゲット冷却手段と、
被処理体の膜形成部分がターゲットに対向するように被処理体を保持する被処理体保持手段と、
被処理体を冷却する被処理体冷却手段と、
被処理体およびターゲットを収容するスパッタ室が形成される収容容器と、
スパッタ室にガスを供給するガス供給手段と、
ガス供給手段によって供給されるガスがプラズマ化するように、被処理体とターゲットとの間に電界を発生させる電界発生手段と、
被処理体保持手段とターゲット保持手段との間に設けられ、被処理体の膜形成部分を除く残余の部分への膜の形成を阻止するシールドと、
シールドを冷却するシールド冷却手段と
被処理体保持手段とターゲット保持手段との間に介在され、被処理体保持手段に保持される被処理体の膜形成部分への膜の形成を阻止する阻止位置と、阻止位置から退避した退避位置とにわたって変位可能に設けられるシャッタと、
シャッタを冷却するシャッタ冷却手段とを含むことを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項4】
シールド冷却手段は、
シールドの内部に形成される冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給手段を含むことを特徴とする請求項1または3に記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
シャッタ冷却手段は、
シャッタの内部に形成される冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給手段を含むことを特徴とする請求項2または3に記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
冷媒は、ガス状の冷却ガスであり、
冷媒流路には、冷却ガスが流出する流出口が形成されることを特徴とする請求項4または5に記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
シールド冷却手段は、シールドの内部に形成される冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給手段を含み、
シャッタ冷却手段は、シャッタの内部に形成される冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給手段を含み、
冷媒は、ガス状の冷却ガスであり、
各冷媒流路には、冷却ガスが流出する流出口が形成され、
シールド冷却手段の冷媒供給手段と、シャッタ冷却手段の冷媒供給手段とは、互いに異なる冷媒を冷媒流路に供給することを特徴とする請求項3に記載のスパッタリング装置。
【請求項8】
冷媒供給手段は、
冷媒の温度を調整する温度調整手段と、
冷媒の流量を調整する流量調整手段とを含むことを特徴とする請求項4〜7のいずれか1つに記載のスパッタリング装置。
【請求項9】
電界発生手段が被処理体とターゲットとの間に電界を発生させる電界発生状態にあるとき、冷媒流路に冷媒を供給し、電界発生手段が被処理体とターゲットとの間に電界を発生させない非発生状態にあるとき、冷媒流路への冷媒の供給を停止するように、冷媒供給手段を制御する制御手段を含むことを特徴とする請求項4〜8のいずれか1つに記載のスパッタリング装置。
【請求項10】
スパッタ室に被処理体が収容される収容状態にあるとき、冷媒流路に冷媒を供給し、スパッタ室に被処理体が収容されない非収容状態にあるとき、冷媒流路への冷媒の供給を停止するように、冷媒供給手段を制御する制御手段を含むことを特徴とする請求項4〜8のいずれか1つに記載のスパッタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−127090(P2009−127090A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303600(P2007−303600)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】