説明

スピンドルモータおよびそれを用いたディスク駆動装置

【課題】モータ効率が高く、オイル漏れが発生せず、ディスクの回転軸方向の振れ成分が小さく安定性の良好なスピンドルモータおよびディスク駆動装置を提供する。
【解決手段】円盤状のフランジ部201と円筒状のシャフト部203とからなるロータハブ20と、フランジ部201の一主面に固着されたリング状の回転磁石16と、回転磁石16に対向する電機子14と、シャフト部203を軸支するスリーブ80と、電機子14とスリーブ80を固定するシャーシ15とからなる構成であって、フランジ部201とシャフト部203とは磁性材料で一体的に構成され、回転磁石16を取り付けるための取り付け面とスリーブの端面に対向する対向面との間に突出部を有さず、かつ取り付け面と対向面とはシャフト部203の中心軸方向に対して垂直な同一高さの平面内にあるか、もしくは取り付け面が対向面に対して階段状にディスク受け部の側に後退している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動圧軸受を備えたスピンドルモータおよびこのスピンドルモータを用いたディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク等のディスク状記録媒体を回転させて記録再生を行うディスク装置等で使用されるスピンドルモータの軸受については、シャフトとスリーブとを相対的に回転自在に支持するために、両者の間に介在させたオイル等の潤滑流体の流体圧力を利用する動圧軸受が種々提案されている。
【0003】
このような動圧軸受を使用するスピンドルモータに関しては、構造の簡略化と所望の軸受剛性を維持しつつ、オイル内に負圧が発生することを防止でき、かつさらなる薄型化と低コスト化を可能とすることが要求されている。このような課題に対して、例えば図13に示すようなスピンドルモータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、上記例には、このスピンドルモータを用いたディスク駆動装置についても示されている。
【0004】
図13は、上記例に示されているスピンドルモータの断面図である。図13に示すように、このスピンドルモータは、ロータハブ901とシャフト902と回転磁石903とによりロータ900が構成されている。ロータハブ901は、略円盤状のフランジ部(天板)904と、このフランジ部904の外周縁部から下方に垂下する円筒状のバックヨーク905とから構成される。また、シャフト902は、このロータハブ901のフランジ部904の中央部に、一方の端部が外嵌固定されている。さらに、ロータ900の回転時に、オイルに流体動圧を誘記するラジアル動圧軸受部906、907が、スリーブ908の内周面とシャフト902の外周面との間に設けられている。
【0005】
また、スリーブ908の上端面およびロータハブ901のフランジ部904の少なくともいずれか一方に動圧発生溝(図示せず)が設けられており、スラスト軸受部909が構成されている。なお、動圧発生溝は、ロータ900の回転時にオイルに対して半径方向内方に向かう圧力を付与するように設けられている。
【0006】
そして、スリーブ908の上端面とロータハブ901のフランジ部904の下面との間、このフランジ部904に続くシャフト902の外周面とスリーブ908の内周面との間、およびこれに連続するシャフト902の端面とシールキャップ910の内面との間には、一連の微小間隙が形成されている。この微小間隙中には、オイルが途切れることなく連続して保持されており、いわゆるフルフィル構造の動圧軸受を構成している。シャフト902の端部側には、スラスト軸受部909内のオイル圧力と実質上均衡する圧力を用いた軸受部が構成されている。これによって、簡略な構造で、しかも所望の軸受剛性を維持しつつ、オイル内に負圧が発生することを防止し、さらなる薄型化と低コスト化とを可能としている。
【0007】
また、図14は、別の従来構成のスピンドルモータの例である(例えば、特許文献2参照)。図14に示すように、この例では、シャフト923がロータハブ921と一体的に構成されているスピンドルモータが提案されている。さらに、ベースプレート931上において界磁用磁石922に対向する位置に、界磁用磁石922との間に磁気吸引力を発生する磁性体935を設けている。これによって、スラスト力が発生するように構成されている。
【特許文献1】特開2003−88042号公報(第8頁、図2)
【特許文献2】特開2004−248344号公報(第14頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記第1の例では、ロータハブのフランジ部とシャフトの固定部とに若干の隙間ができ、その隙間に動圧軸受として充填されたオイルが毛細管現象により入り込む場合がある。その結果、ロータの上面中央部のロータハブとシャフトの境界面からオイルが漏れるという課題があった。
【0009】
さらに、ロータハブとシャフトとを固定する際に、シャフトの軸方向に対するディスク載置面の振れ精度を確保することが困難である。このため、ディスク(図示せず)を固定した際、ディスク面の軸方向の振れ成分が大きくなることが生じる。あるいは、ディスク面の軸方向の振れ成分のばらつきが大きくなるという課題があった。
【0010】
また、上記第2の例では、シャフトを加工するとき、円筒状のバックヨークがあるために加工し難い、あるいは要求される精度を得難いという課題があった。また、シャフトの軸方向の直径の測定ができないことから工程管理が困難である。
【0011】
また、ベースプレート上において、界磁用磁石に対向する位置に、界磁用磁石との間に磁気吸引力を発生させる磁性体を固定することが要求されるが、スピンドルモータを薄型にするためには、以下のような課題が生じる。すなわち、スピンドルモータを薄型にするためには、磁性体の厚みも薄くすることが要求される。しかし、磁性体の厚みを薄くすると、その強度が十分に確保され難くなる。このため、円周方向に歪みが生じる。したがって、界磁用磁石と磁性体との空隙量を一定にできなくなり、ロータハブの回転につれ、回転軸方向の振れ成分が発生するという課題があった。
【0012】
さらには、ベースプレート上に固定されている磁性体が、経年変化、温度変化等による接着力の低下により脱離する可能性があり、脱離した場合、スラスト方向の力が発生しなくなるので、軸受性能が劣化するという課題もあった。
【0013】
本発明は、上記課題を解決し、モータ効率が高く、オイル漏れが発生せず、かつディスクの回転軸方向の振れ成分を小さくして安定性を向上させたスピンドルモータおよびこのスピンドルモータを用いたディスク駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を達成するために本発明のスピンドルモータは、一主面にディスクを載置するためのディスク受け部を有する円盤状のフランジ部とフランジ部のディスク受け部と反対側の一主面の中央部に形成されて外周が円筒状をなすシャフト部とからなるロータハブと、フランジ部のディスク受け部と反対側の一主面にシャフト部の中心軸に対してシャフト部と同心状に固着されたリング状の回転磁石と、回転磁石に対向するとともに、回転磁石に対してシャフト部の中心軸を中心として回転力を発生する電機子と、フランジ部のディスク受け部と反対側の一主面に対向するとともに、シャフト部を軸支するスリーブと、電機子とスリーブを固定するシャーシとからなる構成であって、ロータハブのフランジ部とシャフト部とは、磁性材料で一体的に構成され、フランジ部のディスク受け部と反対側の一主面において、回転磁石を取り付けるための取り付け面とスリーブの端面に対向する対向面との間に突出部を有さず、かつ取り付け面と対向面とはシャフト部の中心軸方向に対して垂直な同一高さの平面内にあるか、もしくは取り付け面が対向面に対して階段状にディスク受け部の側に後退している構成を有する。
【0015】
この構成によって、ロータハブを簡単な形状とすることができ、ロータハブを安価、か
つ高精度に加工することができる。なお、ロータハブのフランジ部とシャフト部とは、磁性材料で一体的に、かつ均質に形成されていることが好ましい。
【0016】
さらに、シャフト部がロータハブに一体的に形成されているため、ラジアル軸受部およびスラスト軸受部を構成するロータハブのそれぞれの面を高精度に加工することも容易にできる。さらに、動圧発生のためのオイルが漏れるのを防止することができ、安価で、高効率で、高安定性、かつ高信頼性を有するスピンドルモータを実現することができる。
【0017】
また、上記構成において、リング状の回転磁石の内周側に円管状の磁性材料からなるバックヨークを取り付けた構成としてもよい。この構成によって、通常に磁場配向したマグネットを使用することができる。さらに、ロータハブのディスク受け部、同一の平面内にある回転磁石の取り付け面と平面部、およびシャフト部を一体的に精度よく加工できるため、回転振れ精度に優れたスピンドルモータを実現することが可能となる。
【0018】
また、上記構成において、回転磁石が磁化容易軸を半径方向(ラジアル方向)に配向し、かつ外周面を作用面として極異方に配向した磁石である構成としてもよい。
【0019】
この構成によって、スピンドルモータの効率を向上させるとともに、スピンドルモータの薄型化を実現することができる。また、回転磁石の内周側に磁性材料からなるバックヨークを配設する必要がなく、したがって、ロータハブの断面形状を比較的単純な形状とすることが可能となる。その結果、シャフト部の加工が簡単になるとともに、軸方向の直径の寸法精度を把握することが容易になる。したがって、シャフト部の外周面とスリーブの内周面との隙間量の管理が容易になるため、ラジアル動圧軸受部の性能を容易に管理することができ、ラジアル動圧軸受部の性能を安定的に保つことが可能となる。
【0020】
また、上記構成において、シャーシを磁性材料で構成し、回転磁石のシャーシに対向する面に、回転磁石とシャーシとの間に発生するスラスト力を調整するための磁性材料からなるスラスト調整板を配設した構成としてもよい。
【0021】
この構成によって、シャフト部がロータハブと一体的に形成されるため、ロータハブを安価に加工することができる。また、スラスト調整板によりスラスト力を最適な値に調整することができる。さらに、シャフト部とロータハブとが一体的に構成されているので、シャフト部とフランジ部の間には隙間が存在しない。このため、動圧発生のために軸受内部に充填されているオイルが漏れることがなくなる。
【0022】
さらに、シャフト部とロータハブとが一体的に構成されているので、シャフト部の回転に対するロータハブのシャフト中心軸方向の振れ量を小さくすることができる。これによって、ロータハブに載置されている回転磁石と離間対向しているシャーシとの空隙量の変化を小さくすることができ、回転磁石とシャーシ間に発生する円周方向の吸引力の変動を少なくすることができる。これにより、振動が発生し難く、かつディスク状記録媒体を載置するロータハブのディスク受け部のシャフト中心軸方向の面振れを小さく抑えることができる。しかも、安価で、高い信頼性を有するスピンドルモータを実現することができる。
【0023】
また、上記構成において、スラスト調整板は、その外周半径が回転磁石の外周半径と同一もしくは回転磁石の外周半径より大であり、かつその内周半径が回転磁石の内周半径より大きい円環形状としてもよい。
【0024】
この構成によって、回転磁石と磁性材料からなるシャーシとの距離変動によるスラスト力の変動を抑制できるため、ロータハブの軸方向の振れを小さく抑えることができる。ま
た、ロータハブにおけるスラスト軸受部を構成する面およびディスク受け部等の面の軸方向の振れ成分を小さく抑えることもできる。したがって、安価で、高精度、かつ高信頼性のスピンドルモータを実現することができる。
【0025】
また、上記構成において、スラスト調整板は、その内周半径が回転磁石の内周半径と同一もしくは回転磁石の内周半径より小であり、その外周半径が回転磁石の外周半径より小さい円環形状としてもよい。この場合に、スラスト調整板の内周部が、スリーブの外周部においてシャフト部の中心軸に対して垂直に設けられた段差面と所定の距離を持ってシャフト部の中心軸方向に対向する構成としてもよい。
【0026】
これらの構成によって、回転磁石の作製時に発生しやすい回転磁石の内周部の欠けや割れ等によるスラスト力の変動を抑制することができる。したがって、ロータハブのスラスト軸受部を構成する面およびディスク受け部等の面の軸方向の振れ成分を抑制することができる。また、ロータがスリーブから軸方向に抜けるのを防止するための抜け止めとして、スラスト調整板を兼用することができるので部品点数を削減できる。したがって、安価で、高精度、かつ高信頼性を有するスピンドルモータを実現することができる。
【0027】
また、上記構成において、スリーブが軸受保持部材を介してシャーシに固定され、スリーブ、軸受保持部材およびシャーシは、各々の線膨張係数がスリーブ、軸受保持部材、シャーシの順に大きい材質よりなるか、あるいはスリーブと軸受保持部材とが同じ材質で構成され、その線膨張係数よりもシャーシの線膨張係数を大きい材質で構成するか、あるいはスリーブ、軸受保持部材、シャーシの順に小さい材質よりなるか、もしくはスリーブと軸受保持部材とが同じ材質で構成され、その線膨張係数よりもシャーシの線膨張係数を小さい材質で構成してもよい。
【0028】
この構成によって、スピンドルモータを組み立てるとき、スリーブと軸受保持部材およびその軸受保持部材とシャーシとを接着する場合に、接着硬化後に発生するスリーブの歪みを小さくすることができる。したがって、ラジアル軸受部およびスラスト軸受部の軸受性能を安定化させることができるとともに、シャーシと軸受保持部材の接着強度の劣化も抑制できる。さらに、保存温度等の変動による接着強度の劣化や使用温度の変動による軸受保持部材の形状の変化を小さくすることができる。
【0029】
また、上記構成において、スリーブの下部を閉塞し、ロータハブのシャフト部の端面およびこの端面に対向するようにスリーブに固着されたスラストプレートのうち少なくともいずれか一方に動圧発生溝が形成され、ロータハブのシャフト部の端面とスラストプレートによってスラスト軸受部を形成してもよい。
【0030】
また、スリーブの上端面と、それに対向するフランジ部のディスク受け部とは反対側の一主面のうち少なくともいずれか一方に動圧発生溝が形成され、スリーブの上端面とそれに対向するフランジ部のディスク受け部とは反対側の一主面によってスラスト軸受部を形成してもよい。
【0031】
この構成によって、シャフト部がロータハブに一体的に形成されるため、ロータハブにおけるスラスト軸受部を構成する面の軸方向の面振れを小さく抑えることができる。また、高精度に加工することも容易となり、動圧軸受の性能を安定化させることができる。
【0032】
また、本発明のディスク駆動装置は、情報を記録するためのディスク状記録媒体が装着されるディスク駆動装置において、ハウジングと、ハウジングの内部に固定され、ディスク状記録媒体を回転させるスピンドルモータと、ディスク状記録媒体の所要の位置に情報を書き込みまたは読み出すための情報アクセス手段とを有し、このスピンドルモータが上
記記載のスピンドルモータである構成からなる。
【0033】
この構成によって、ディスク状記録媒体の面振れを非常に小さく抑えることができるため、安定した記録と再生を行うことができ、薄型で、高い安定性と信頼性を有したディスク駆動装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のスピンドルモータは、ロータハブの断面形状を簡単な形状にすることができるため、ロータハブを安価に作製することができる。また、シャフト部の外周面とスリーブの内周面の隙間量の管理が容易になり、ラジアル軸受部の軸受性能を安定化させることができる。さらに、回転磁石に磁化容易軸を半径方向(ラジアル方向)に配向し、かつ外周面を作用面として極異方に配向した磁石を用いたとき、モータ効率を向上させることもできる。これらの効果に加え、薄型化を実現することもできるという大きな効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ要素については同じ符号を付しており、説明を省略する場合がある。
【0036】
(第1の実施の形態)
図1から図10は、本発明の第1の実施の形態にかかるスピンドルモータおよびそれを用いたディスク駆動装置を説明するための図である。図1は、本実施の形態のスピンドルモータの構成を示す断面図である。また、図2は、図1に示すスピンドルモータの動圧軸受部分近傍を示す拡大断面図である。図3は、スピンドルモータの動圧軸受部分近傍の構成の別の一例を示す拡大断面図である。図4は、スピンドルモータの動圧軸受部分近傍の構成のさらに別の一例を示す拡大断面図である。また、図5は、本実施の形態のスピンドルモータに対応した比較例の構成を示す拡大断面図である。また、図6は、回転磁石の配向を示すための斜視図である。図7は、スピンドルモータの動圧軸受部分近傍の構成のまたさらに別の一例を示す拡大断面図である。また、図8は、スピンドルモータの構成の別の一例を示す断面図である。図9は、図8におけるスピンドルモータの動圧軸受部分近傍を示す拡大断面図である。さらに、図10は、ディスク駆動装置の構成を示す模式図である。なお、スピンドルモータの構成を説明するための図1から図9までにおいても、情報を記録するためのディスク板53を取り付けた状態を示している。
【0037】
図1および図2に示すように、本実施の形態のスピンドルモータは、ロータハブ20と、回転磁石16と、電機子14と、スリーブ80と、シャーシ15とを備えている。ロータハブ20は、一主面にディスクを載置するためのディスク受け部202を有する円盤状のフランジ部201と、フランジ部201のディスク受け部202と反対側の一主面の中央部に形成されて外周が円筒状をなすシャフト部203とからなる。回転磁石16は、フランジ部201のディスク受け部202と反対側の一主面にシャフト部203の中心軸に対してシャフト部203と同心状に固着されたリング形状からなる。また、電機子14は、回転磁石16に対向するとともに、回転磁石16に対してシャフト部203の中心軸を中心として回転力を発生させる。スリーブ80は、フランジ部201のディスク受け部202と反対側の一主面に対向するとともに、シャフト部203を軸支する。そして、電機子14とスリーブ80とは、シャーシ15に固定されている。
【0038】
また、ロータハブ20のフランジ部201とシャフト部203とは、磁性材料で一体的に構成されており、フランジ部201のディスク受け部202と反対側の一主面において、回転磁石16を取り付けるための取り付け面204とスリーブ80に対向する対向面205との間に突出部を有さず、かつシャフト部203の中心軸方向に対して垂直な同一高さの平面内にある。このような形状にすることにより、ロータハブ20を安価に、かつ精
度よく加工することができる。
【0039】
この際、回転磁石16を取り付けるための取り付け面204およびスリーブ80の端面802に対向する対向面205が、シャフト部203の中心軸A−A’方向に対して垂直な同一高さの平面内にあればよい。
【0040】
例えば、図3に示すように、取り付け面204と対向面205との間に凹部206のような形状を設けても差し支えない。すなわち、取り付け面204と対向面205とは連続した一平面である必要はない。この場合でも、取り付け面204と対向面205との間には突出部はなく、かつシャフト部203の中心軸方向に対して垂直な同一高さの平面内にある。
【0041】
もしくは、図4に示すように、取り付け面204が対向面205に対して階段状にディスク受け部202の側に後退(リセス)している構成としてもよい。図4では、取り付け面204と対向面205とが、シャフト部203の中心軸A−A’方向に垂直な2つの平面にそれぞれ存在する構成となっている。このように、取り付け面204が対向面205よりもフランジ部201のディスク受け部202側に接近している場合、すなわち対向面205に対して後退(リセス)している場合には、ロータハブ20の加工性はほとんど影響を受けず、容易に加工することができる。したがって、ロータハブ20を安価に、かつ精度よく加工することができる。
【0042】
しかしながら、例えば図5に示すように、取り付け面204と対向面205とがシャフト部203の中心軸A−A’方向と垂直な同一高さの平面内にあっても、取り付け面204と対向面205との間に突出部を設けると、ロータハブ20の加工性が低下する。すなわち、図5に示すようにシャフト部203の中心軸A−A’方向に突出部(この例では、バックヨーク207)を形成した場合には、ロータハブ20を精度よく加工することが困難となる。図5からもわかるように、突出部であるバックヨーク207とシャフト部203とにより囲まれる凹所部分の加工性が著しく低下する。特に、対向面205の加工性が低下する。また、この凹所部分におけるシャフト部203の外径寸法およびその外周面を表面精度よく加工することが困難となり、軸受本来の性能を十分に発揮することができなくなる。
【0043】
再度、図1および図2を主体にして、本実施の形態のスピンドルモータの構成を説明する。
【0044】
中空円筒状のスリーブ80は、ロータハブ20のシャフト部203を回転自在に軸支している。そして、スリーブ80の下部を閉塞し、かつシャフト部203の端面208と対向する面にスラストプレート40が設けられており、シャフト部203の端面208とこのスラストプレート40とにより、スラスト軸受部23が構成されている。スラストプレート40には、ロータハブ20の回転時に、オイルに対して半径方向内方(シャフト部203の中心軸A−A’側)に向かう圧力を誘起するための動圧発生溝(ポンプインのスパイラルグルーブ(図示せず))が形成されている。このスラストプレート40は、接着等の手段によりスリーブ80の下部に固着されている。
【0045】
ここで、ロータハブ20のシャフト部203の対向面205とスリーブ80の端面802との間の空隙距離は、シャフト部203の端面208とスラストプレート40のスパイラルグルーブが形成されている面との空隙距離より大きくなるように構成されている。
【0046】
さらに、フランジ部201の取り付け面204には、図6に示すような回転磁石16が接着等の手段により固着されている。この回転磁石16は、磁化容易軸を半径方向(ラジ
アル方向)に配向し、かつ外周面を作用面として極異方に配向したリング形状からなる。図6における回転磁石16の上端面には、外周面を作用面として極異方に配向した回転磁石の同面内における磁束分布を示している。すなわち、この回転磁石16は、基本的にリングの内周面には磁束を漏洩せず、外周面にN極とS極が交互に現れるような磁束分布を構成するように着磁されている。この回転磁石16とロータハブ20とによってロータ13が構成される。
【0047】
また、電機子14とスリーブ80とは、磁性材料からなるシャーシ15に固定されている。電機子14は、回転磁石16に対して半径方向外方から所定の空隙を介して対向するとともに回転磁石16との間でシャフト部203の中心軸A−A’を中心として回転力を発生させる。
【0048】
そして、シャフト部203の外周面209とスリーブ80の内周面804との間、およびこれに連続するシャフト部203の端面208とスラストプレート40のスパイラルグルーブが形成されている面との間には、一連の微小間隙が形成されている。この微小間隙中には、オイルが途切れることなく連続して保持されており、いわゆるフルフィル構造の動圧軸受を構成している。
【0049】
また、回転磁石16のシャーシ15に対向する面とシャーシ15との間に発生する磁気吸引力によって、スラスト力が発生するように構成されている。
【0050】
さらに、回転磁石16のシャーシ15と対向する面側に磁気吸引力を調整する円環状のスラスト調整板17が接着等の手段によって固定されている。このスラスト調整板17は、外周半径が回転磁石16の外径よりも小さく、内周半径は回転磁石16の内径よりも小さく、さらにスリーブ80の大径側の外径よりも小さな形状からなる。なお、スリーブ80は、シャーシ15側の外周部にシャフト部203の中心軸A−A’に対して垂直に設けられた段差面803と、その下部に小径部801とが形成されている。したがって、スリーブ80は、ロータハブ20のディスク受け部202側が大きい外径、シャーシ15側が小さな外径を有した段付きの形状からなる。段付き形状のスリーブ80のシャーシ15側、すなわち小径部801の外周部はスラスト調整板17の内周部171と遊嵌し、かつスラスト調整板17はスリーブ80に設けられた段差面803と回転軸方向に所定の距離を持って対向している。スラスト調整板17の内周部171と段差面803とによって、ロータハブ20が軸方向に抜けるのを防止している。
【0051】
また、スリーブ80の内周面804には、シャフト部203の外周面209との間でラジアル動圧軸受部22が構成されている。シャフト部203の外周面209には、ロータハブ20の回転時にオイルに流体動圧を誘起する動圧発生溝として、回転方向に対して相反する方向に傾斜する一対のスパイラル溝を連結して構成されるヘリングボーン形状(herring bone pattern、矢筈模様)のグルーブが形成されており、内周面804と外周面209との間でラジアル動圧軸受部22を構成している。ラジアル動圧軸受部22では、ロータ13の回転に伴い、ヘリングボーングルーブによるポンピング力が高まり、流体動圧が生じてシャフト部203はスリーブ80によって軸支される。
【0052】
同様に、ロータハブ20の回転に伴い、ポンプインのスパイラルグルーブによって、オイルに半径方向内方に向かう圧力が誘起される。この半径方向内方に向かう圧力によってオイルの流動が促され、オイルの内圧が高められて前記スラスト力と逆の方向、すなわちロータハブ20を浮上させる方向に作用する流体動圧がスラスト軸受部23に発生する。この作用により動圧によるスラスト軸受が成立する。
【0053】
図6に示すように、磁化容易軸を半径方向(ラジアル方向)に配向し、かつ外周面を作
用面として極異方に配向した回転磁石16を用いることにより、スピンドルモータの効率を向上でき、しかも薄型化を実現することができる。
【0054】
また、回転磁石16はラジアル方向に、かつ外周面を作用面として極異方に配向しているため、回転磁石16の内周側に磁性材料からなるバックヨークを配設する必要がない。この理由は、以下のとおりである。すなわち、通常の磁石の使用では、回転磁石の内周側に配設したバックヨークの厚み不足等により外周面から発生する磁力の低下が生じる。しかしながら、本実施の形態の回転磁石16の場合にはこのようなことが生じないことによる。したがって、ロータハブ20の断面形状を、図1および図2に示すように比較的単純な形状とすることが可能となる。その結果、シャフト部203の加工が簡単になるとともに軸方向の直径の寸法精度を確保することが容易になる。つまり、シャフト部203の外周面209とスリーブ80の内周面804との隙間量の管理が容易になるので、ラジアル動圧軸受部22の性能を容易に管理することができるだけでなく、その性能を安定的に保つことが可能となる。
【0055】
また、ロータハブ20の形状が簡単になるので、ロータハブ20を作製する際の加工精度を向上でき、シャフト部203に対してディスク受け部202と端面208の面振れを非常に小さくすることが可能となる。したがって、ディスク受け部202に載置されたディスク板53のシャフト部203の中心軸A−A’方向の面振れを小さくすることができるだけでなく、スラスト軸受部23の性能も安定させることができる。
【0056】
さらに、回転磁石16において、ロータハブ20に固着された面とは反対側の面とシャーシ15との間に発生する磁気吸引力によって、スラスト力が発生するように構成されている。そのため、回転磁石16とそれに対向するシャーシ15との空隙量の変動が発生し難く、ディスク受け部202および端面208の軸方向の面振れを小さくすることも可能となる。
【0057】
また、一般的に焼結磁石は、以下のような工程で作製される。最初に、軸方向寸法および半径方向の外形が最終形状より大きな中空円筒の型を使用して成形し、焼結する。その後、外周部を所定の寸法に研磨もしくは切削で加工し、その後、所定の厚みにスライスして所望の形状に作製する。以上の工程で作製するが、このとき磁石の内周部の加工を行わないことが多い。また、スライスして所望の形状に作製するとき、磁石の内周部エッジに欠けが発生することが多い。ロータハブ20が軸方向に抜けるのを防止するために、スラスト調整板17の内周半径が回転磁石16の内径より小さく、さらにスリーブ80の大径側の外径よりも小さくなるように構成しているので、回転磁石16の作製時に発生する回転磁石16の内周部エッジの欠けの部分をスラスト調整板17により覆い隠すことができる。このような構成とすることによって、回転磁石16の内周部に生じた欠けの部分におけるシャーシ15と回転磁石16との間の磁気吸引力、すなわちスラスト力の変動を抑制することができ、軸方向の振れを低減することができる。例えば、回転磁石16の内周部に7箇所欠けが有る場合、スラスト調整板17によって、内周部の欠けを覆い隠さないようなモータ構成にすると、軸方向の振れが1回転に7回生じることになる。
【0058】
ここで、回転磁石16を焼結磁石で構成した場合の実験結果について説明する。スラスト調整板17の外径が回転磁石16の外径と略同一で、その内径が回転磁石16の内径より大きな形状のスラスト調整板17を用いた場合を実施例1とする。したがって、この場合には、回転磁石16の内周部エッジの欠けの部分を覆い隠すことはできない。また、スラスト調整板17の外径が回転磁石16の外径よりも小さく、その内径が回転磁石16の内径より小さな形状のスラスト調整板17を用いた場合を実施例2とする。この場合には、回転磁石16の内周部エッジの欠けの部分を覆い隠すことができる。これらにおいて、シャーシ15と回転磁石16との間に発生するスラスト力が同一の値となるように、それ
ぞれを構成した状態で、ディスク板53の外周部でのそれぞれの軸方向の振れ(1回転の12倍以上に相当する周波数帯域のオーバーオール値:例えばスピンドルモータの回転数が3600rpmの場合には720Hz以上、今回のデータは、800Hzまでの成分のオーバーオール値)を測定した。この結果を(表1)に示す。なお、この比較検討には、それぞれ4個のサンプルを用いて検討した。
【0059】
【表1】

【0060】
(表1)から明らかなように、実施例1および実施例2ともに、ディスク板53の外周部における軸方向の振れ量は非常に小さくなるが、回転磁石16の内周部を覆うように構成した実施例2のほうが、軸方向の振れ量をさらに一層低減できることが見出された。
【0061】
上述の回転磁石16の加工については、磁石材料が焼結法によって作製されたマグネットの場合のものであるが、回転磁石16として樹脂マグネットを用いてもよい。樹脂マグネットを回転磁石16として用いる場合には、回転磁石16としての所望の形状に形成するための成形の段階で磁石の内周部エッジ等の部分に割れや欠けが発生するようなことはない。このような樹脂成形された樹脂マグネットを回転磁石16として用い、上述のような形状のスラスト調整板17を固着したときの回転磁石16とシャーシ15との間のスラスト力は、焼結材製の回転磁石16の場合と同じスラスト力とすることが可能である。
【0062】
ところで、スラスト調整板17の外周半径より大きい部分の回転磁石16の外周側部分は、スラスト調整板17から露出している。このため、回転磁石16の外周振れがあると、回転軸を傾斜させようとするモーメントが発生してディスク状記録媒体の外周部における軸方向の振れが発生し得る。
【0063】
焼結法によって作成されたマグネットの場合は、上述の内周側の欠けにより発生するモーメントが回転磁石16の外周振れによるモーメントよりも大きいので、上述のように磁石内周側を覆うようにすることで、回転軸を傾斜させようとするモーメントを小さくすることができる。
【0064】
一方、樹脂マグネットのように割れや欠けが発生しない材料を用いて作製された磁石を回転磁石16として用いた場合には、回転磁石16の外周側においてスラスト調整板17から露出した部分が発生しないように、以下のようにすることが望ましい。すなわち、スラスト調整板17の外周半径を回転磁石16の外周半径と同一あるいは回転磁石16の外周半径より大きく、その内周半径は回転磁石16の内周半径より大きく、かつ回転磁石16とシャーシ15との間のスラスト力が上述の焼結材製の回転磁石16におけるのと同じスラスト力を得るようにした形状にスラスト調整板17を形成する。
【0065】
このようにすると、吸引力は同一であってもその発生する半径位置は、外周側を覆ったほうが小さくできるので、マグネットの取り付け誤差によって発生する回転軸を傾斜させようとするモーメントをより小さくすることが可能になる。
【0066】
本実施の形態のスピンドルモータにおいては、スリーブ80をシャーシ15に固定する際に、図7に示すように軸受保持部材31を介して固定してもよい。この際、スリーブ80、軸受保持部材31およびシャーシ15は、各々の線膨張係数がスリーブ80、軸受保持部材31、シャーシ15の順に大きい材質よりなるようにしてもよい。あるいは、スリーブ80と軸受保持部材31とを同じ材質で構成し、その材質の線膨張係数よりもシャーシ15の線膨張係数を小さい材質で構成してもよい。あるいは、スリーブ80、軸受保持部材31、シャーシ15の順に小さい材質よりなる構成としてもよい。あるいは、スリーブ80と軸受保持部材31とを同じ材質で構成し、その材質の線膨張係数よりもシャーシ15の線膨張係数を大きい材質で構成してもよい。
【0067】
このようないずれかの構成とすることによって、スピンドルモータを組み立てる際のスリーブ80と軸受保持部材31との接着、およびその軸受保持部材31とシャーシ15との接着を行うときに、接着硬化後にスリーブ80に生じる歪みを小さくすることができる。これにより、ラジアル軸受部22およびスラスト軸受部23の軸受性能を安定化させることができるとともに、シャーシ15と軸受保持部材31との接着強度の低下を抑制できる。さらに、保存温度等の変動による接着強度の低下や使用温度の変動による軸受保持部材の形状の変化を小さくすることもできる。
【0068】
ここで、スリーブ80、軸受保持部材31およびシャーシ15を構成する要素の代表的な材質の線膨張係数は、黄銅が20.9×10−6/℃であり、オーステナイト系鉄鋼材料(以下、オーステナイト系とよぶ)が17.3×10−6/℃で、マルテンサイト系鉄鋼材料(以下、マルテンサイト系とよぶ)が10.4×10−6/℃である。そこで、スリーブ80、軸受保持部材31およびシャーシ15の各構成要素に対して、それぞれの材質の組合わせを変え、各構成要素を熱硬化性の接着剤で固定したときのスリーブ80の内周径の変化を構造解析手法により求めた。具体的には、スリーブ80の形状は、外周径を4.1mm、内周径を3mm、全長を1.1mmとし、接着温度を95℃として、95℃の状態で接着硬化させ、その後、常温(25℃)に戻したときのスリーブ80の内周面804の上端部の半径と下端部の半径との差(半径差)を計算により求めた。この結果を(表2)に示す。ここで、(表2)に示す半径差は、ラジアル軸受部22の上端部と下端部のそれぞれの半径の差に相当する。なお、半径差が正の値の場合には下端部の半径のほうが大きいことを示している。
【0069】
【表2】

【0070】
(表2)から明らかなように、スリーブ80の材質を黄銅とし、シャーシ15の材質をマルテンサイト系にした場合、軸受保持部材31の材質により半径差が変化することが見出された。
【0071】
ラジアル軸受部22としての性能を発揮させるためには、シャフト部203の外周面209とスリーブ80の内周面804の半径方向の隙間は、通常2μmから3μmに設定することが要求される。スリーブ80の材質を黄銅とし、シャーシ15および軸受保持部材31の材質をともにマルテンサイト系で構成し、かつ半径方向の隙間の設計中心値を3μmとした場合、所望の軸受剛性を得ることができなくなる。すなわち、ラジアル軸受部2
2の上端部と下端部の半径方向の隙間の差(半径差)が1μmであるため、ラジアル軸受部22の上端部の半径方向の隙間が2.5μm、軸受下端部の半径方向の隙間が3.5μmとなり、上記の隙間の許容範囲から外れることによる。
【0072】
一方、本実施の形態のように、軸受保持部材31の材質の線膨張係数の値を中心とし、スリーブ80、軸受保持部材31およびシャーシ15の各材質の線膨張係数の値がそれぞれ異なる材質で構成する場合、例えば軸受保持部材31の材質をオーステナイト系、スリーブ80の材質を黄銅およびシャーシ15をマルテンサイト系とした場合には、スリーブ80、軸受保持部材31およびシャーシ15を熱硬化性の接着剤で硬化することによって発生するラジアル軸受部22の上端部と下端部の半径方向の隙間の差(半径差)を非常に小さくできる。このことは(表2)から容易に理解される。
【0073】
また、軸受保持部材31とスリーブ80のそれぞれの材質の線膨張係数を同じあるいは略等しい材質で構成する場合、例えば軸受保持部材31の材質を黄銅とし、スリーブ80の材質も黄銅とした場合でも、同様にスリーブ80、軸受保持部材31およびシャーシ15を熱硬化性の接着剤で硬化することによって発生するラジアル軸受部22の上端部と下端部の半径方向の隙間の差(半径差)を非常に小さくできる。
【0074】
したがって、軸受保持部材31の材質の線膨張係数の値を中心とし、スリーブ80、軸受保持部材31およびシャーシ15の各材質の線膨張係数の値がそれぞれ異なる材質を用いて、スリーブ80と軸受保持部材31とを接着し、スリーブ80が接着された軸受保持部材31をシャーシ15に接着する構成であっても、スピンドルモータ、特に動圧軸受を組み立てる際に発生するスリーブ80の歪みを抑制でき、軸受性能を安定化させることができる。
【0075】
また、スリーブ80と軸受保持部材31とを同じ材質、あるいはスリーブ80と軸受保持部材31の材質として、それぞれの線膨張係数が略等しい材質を用いて接着し、スリーブ80が接着された軸受保持部材31をシャーシ15に接着した構成とした場合についても、同様にスピンドルモータ、特に動圧軸受を組み立てる際に発生するスリーブ80の歪みを抑制でき、軸受性能を安定化させることができる。さらに、シャーシ15と軸受保持部材31との間の強い接着強度も得ることができる。さらに、保存温度あるいは動作時の温度上昇等の温度変動に対しても、接着強度の低下が生じ難い。この接着強度の低下について、以下に説明する。各材質の線膨張係数が略等しい場合、保存温度の変化により、各材質は略等しい割合で伸縮するので、接着面の移動がほとんど発生しない。しかしながら、線膨張係数に大きな差があると、接着面位置が変動する。これにより、保存温度、あるいは動作温度の変化の繰り返しにより接着面に疲労破壊が生じる。その結果、接着強度の低下が発生する。したがって、線膨張係数の略等しい材質を使用すれば、接着強度の低下が生じ難くなる。同様に、ラジアル軸受部22の形状の変化も抑制できる。
【0076】
さらに、シャーシ15の材質をアルミニウムとし、スリーブ80の材質をマルテンサイト系あるいはフェライト系で構成した場合について、上述の(表2)と同様の条件で構造解析手法により求めた結果を(表3)に示す。ここで、アルミニウムの線膨張係数は、20.3×10−6/℃である。
【0077】
【表3】

【0078】
(表3)から明らかなように、スリーブ80の材質をマルテンサイト系、シャーシ15の材質をアルミニウムおよび軸受保持部材31の材質を黄銅で構成し、シャフト部203の外周面209とスリーブ80の内周面804における半径方向の隙間の設計中心値を3μmとした場合、ラジアル軸受部22の上部側の動圧が設計値より低くなり、軸受剛性として所望の値が得られなくなる。この理由は以下のとおりである。すなわち、ラジアル軸受部22の上端部と下端部の半径方向の隙間の差(半径差)が−1.1μmとなることから、ラジアル軸受部22の上端部における半径方向の隙間が3.55μm、下端部における半径方向の隙間が2.45μmとなる。したがって、ラジアル軸受部22の上部側の隙間が許容範囲から外れ、動圧が設計値より低くなることによる。
【0079】
一方、(表3)の結果から理解できるように、軸受保持部材31の材質の線膨張係数の値を中心とし、スリーブ80、軸受保持部材31およびシャーシ15を、それぞれの材質の線膨張係数の値がそれぞれ異なる材質で構成する場合、例えば軸受保持部材31の材質をオーステナイト系、スリーブ80の材質をマルテンサイト系もしくはフェライト系の鉄鋼材料およびシャーシ15の材質をアルミニウムとした場合には、スリーブ80、軸受保持部材31およびシャーシ15を熱硬化性の接着剤で硬化することによって発生するラジアル軸受部22の上端部と下端部の半径方向の隙間の差(半径差)を非常に小さくすることができる。
【0080】
あるいは、軸受保持部材31とスリーブ80のそれぞれの線膨張係数を同じあるいは略等しい材質で構成する場合、例えば軸受保持部材31の材質をマルテンサイト系、スリーブ80の材質をマルテンサイト系およびシャーシ15の材質をアルミニウムとした場合にも、スリーブ80、軸受保持部材31およびシャーシ15を熱硬化性の接着剤で硬化することによって発生するラジアル軸受部22の上端部と下端部の半径方向の隙間の差(半径差)を非常に小さくすることができる。
【0081】
したがって、軸受保持部材31の材質の線膨張係数の値を中心とし、スリーブ80、軸受保持部材31およびシャーシ15の各材質の線膨張係数の値がそれぞれ異なる材質を用いて、スリーブ80と軸受保持部材31とを接着し、スリーブ80が接着された軸受保持部材31をシャーシ15に接着した構成としてもよい。このような構成とすれば、上述の実施の形態に示されたスピンドルモータと同様にスリーブ80の歪みが抑制され、軸受性能が安定化するとともにシャーシ15と軸受保持部材31との間において強い接着強度が得られる。
【0082】
あるいは、スリーブ80と軸受保持部材31とを同じ材質、あるいはスリーブ80と軸受保持部材31の材質として、それぞれの線膨張係数が略等しい材質を用いて接着し、スリーブ80が接着された軸受保持部材31をシャーシ15に接着した構成としてもよい。このような構成とした場合にも、上述の実施の形態に示されたスピンドルモータと同様に、スリーブ80の歪みが抑制され、軸受性能が安定化するとともに、シャーシ15と軸受保持部材31との間において強い接着強度が得られる。さらに、保存温度あるいは動作時の温度上昇等の温度変動に対しても接着強度の低下が生じ難い。また、ラジアル軸受部2
2としての形状の変化も抑制できる。
【0083】
つぎに、本実施の形態の変形例のスピンドルモータについて、図8および図9を用いて説明する。
【0084】
この変形例のスピンドルモータが、第1の実施の形態のスピンドルモータと異なる点は、回転磁石16の内周側にロータハブ20とは別部材のリング状のバックヨーク25を取り付けたことである。このバックヨーク25を取り付けたことにより、回転磁石16を極異方性の磁石から通常の磁場配向した磁石を使用することができる。さらに、ロータハブ20のフランジ部201、特にディスク受け部202、取り付け面204、対向面205およびシャフト部203を一体的に、かつ高精度に加工できるので、回転振れ精度に優れ、かつオイル漏れの少ないスピンドルモータを実現することが可能となる。
【0085】
上記したように、この変形例のスピンドルモータの場合には、回転磁石16として磁化容易軸を半径方向(ラジアル方向)に配向し、かつ外周面を作用面として極異方に配向した磁石に限定されずに、通常の磁場配向した磁石も用いることができる。
【0086】
つぎに、図10を用いて本実施の形態のスピンドルモータを用いて構成するディスク駆動装置50について説明する。ハウジング51の内部は塵埃等が極度に少ないクリーンな空間を形成しており、その内部に情報を記憶する円盤状のディスク板53が装着されたスピンドルモータ52が設置されている。さらに、ハウジング51の内部には、ディスク板53に対して情報を読み書きする情報アクセス手段であるヘッド移動機構57が配置されている。このヘッド移動機構57は、ディスク板53上の情報を読み書きするヘッド56、このヘッド56を支えるアーム55、ヘッド56とアーム55とをディスク板53上の所要の位置に移動させるアクチュエータ部54により構成されている。
【0087】
このようなディスク駆動装置50のスピンドルモータ52として、本実施の形態のスピンドルモータを使用することによって、所望の回転精度を得ることができるだけでなく、ディスク駆動装置50の薄型化と低コスト化を実現することができる。
【0088】
以上のように本実施の形態によれば、回転磁石の内周側に磁性材料からなるバックヨークを配設する必要がなく、ロータハブの断面形状を比較的単純な形状とすることができる。したがって、シャフト部の加工が簡単になり、ロータハブを安価に作製することができるとともに、シャフト部の外周面とスリーブの内周面の隙間量の管理が容易になるため、ラジアル軸受部の性能を容易に管理することができ、ラジアル軸受部としての性能を安定的に保つことができる。
【0089】
また、ロータハブの形状が簡単になるので、シャフト部に対するロータハブのディスク受け部とシャフト部の端面の面振れの発生を抑制するためのロータハブの加工も高精度に行うことができる。さらに、回転磁石と対向するシャーシとの空隙量の変動が発生し難く、回転磁石とシャーシとの間に発生するスラスト力を安定化させることもできる。
【0090】
さらに、回転磁石を作製するときに発生しやすい回転磁石内周部の欠けの部分をスラスト調整板により覆い隠し、回転磁石の欠けの部分におけるシャーシと回転磁石との間のスラスト力の変動を抑制することができるので、ロータハブのディスク受け部およびシャフト部の端面の軸方向の面振れを小さくすることができる。このため、ディスク受け部に載置されたディスク板の回転軸方向の面振れを小さくすることができるとともに、スラスト軸受部の性能を安定させることができる。
【0091】
さらに、回転磁石に磁化容易軸を半径方向(ラジアル方向)に配向し、かつ外周面を作
用面として極異方に配向した磁石を用いるため、モータ効率を向上させるとともに、薄型化を実現することができる。
【0092】
したがって、安定した動圧軸受を有し、高い回転精度を有するディスク受け部を設けたスピンドルモータを実現することができる。
【0093】
また、このようなスピンドルモータを搭載することによって、ディスク板の面振れを非常に小さく抑えることができるため、安定した記録と再生を行うことができ、薄型で、高い安定性と信頼性を有したディスク駆動装置を実現することができる。
【0094】
(第2の実施の形態)
図11および図12は、本発明の第2の実施の形態にかかるスピンドルモータを説明するための図である。図11は、スピンドルモータの構成を示す断面図である。図12は、図11に示すスピンドルモータの動圧軸受部分近傍を示す拡大断面図である。
【0095】
本実施の形態のスピンドルモータの構成が第1の実施の形態のスピンドルモータの構成と異なる主な点は、以下のとおりである。すなわち、第1の実施の形態においては、ロータハブ20のシャフト部203の端面208とそれに対向するスラストプレート40によってスラスト軸受部23を構成しているのに対して、本実施の形態においては、ロータハブ20のフランジ部201の対向面205とスリーブ80の端面802とによってスラスト軸受部23を構成している点である。
【0096】
以下、本実施の形態にかかるスピンドルモータについて、図11および図12を用いて、第1の実施の形態と異なる点を主として説明する。
【0097】
ロータハブ20のシャフト部203を回転自在に支持する中空円筒状のスリーブ80が設けられている。さらに、スリーブ80の下部を閉塞し、かつシャフト部203の端面208と対向する面に、シールキャップ41が接着等の手段によりスリーブ80の下部に固着されている。ロータハブ20において、シャフト部203の中心軸A−A’方向に垂直で、かつスリーブ80の端面802に対向する対向面205と同一平面上にある取り付け面204には、回転磁石16が固着されている。この回転磁石16は、第1の実施の形態における図6に示すような磁化容易軸を半径方向(ラジアル方向)に配向し、かつ外周面を作用面として極異方に配向したものであり、接着等の手段により固着されている。
【0098】
また、スリーブ80の端面802には、ロータハブ20の回転時に、オイルに対して半径方向内方(シャフト部203の中心軸A−A’側)に向かう圧力を誘起するポンプインのスパイラルグルーブ(図示せず)が形成されている。
【0099】
回転磁石16と磁性材料からなるシャーシ15との間に働く磁気吸引力により、ロータハブ20はシャーシ15方向に付勢され、ロータハブ20の対向面205とスリーブ80の端面802に設けられたスパイラルグルーブでスラスト軸受部23を構成している。
【0100】
また、シャフト部203の端面208とシールキャップ41との空隙距離は、スラスト軸受部23を構成しているロータハブ20の対向面205とスリーブ80の端面802のスパイラルグルーブが形成されている面との空隙距離より大きくなるように構成されている。
【0101】
また、回転磁石16と半径方向外方から所定の空隙を介して対向するとともに、回転磁石16との間でシャフト部203の中心軸A−A’を中心として回転力を発生する電機子14が設けられている。この電機子14とスリーブ80とは、磁性材料からなるシャーシ
15に固定されている。
【0102】
そして、スリーブ80の端面802とロータハブ20の対向面205との間、シャフト部203の外周面209とスリーブ80の内周面804との間、およびこれに連続するシャフト部203の端面208とシールキャップ41の面との間には、一連の微小間隙が形成されている。この微小間隙中には、オイルが途切れることなく連続して保持されており、いわゆるフルフィル構造の動圧軸受を構成している。
【0103】
また、第1の実施の形態と同じ構成を有するラジアル動圧軸受部22では、ロータ13の回転に伴い、ヘリングボーングルーブによるポンピング力が高まり、流体動圧が生じてシャフト部203はスリーブ80によって軸支される。
【0104】
同様に、ロータ13を構成するロータハブ20の回転に伴い、ポンプインのスパイラルグルーブによって、スラスト軸受部23においてはオイルに半径方向内方に向かう圧力が誘起される。この半径方向内方に向かう圧力によって、オイルの流動が促され、オイルの内圧が高められ、ロータハブ20の浮上方向に作用する流体動圧がスラスト軸受部23に発生する。
【0105】
このように、本実施の形態のスピンドルモータでは、スパイラルグルーブが形成されたスリーブ80の端面802とそれに対向する対向面205とによってスラスト軸受部23を構成しているため、スラスト軸受部23を構成する位置を半径方向に大きくすることができる。これにより、スラスト軸受部としての軸受剛性をさらに大きくすることができる。
【0106】
また、シャフト部203の端面208は、特に平坦に仕上げる必要はなく、ロータハブ20としての加工をより簡単にできる。さらに、加工しやすい構成であるためロータハブ20を安価に作製することができる。
【0107】
なお、スラスト調整板17によって、ロータハブ20が軸方向に抜けるのを防止する抜け止め構成やディスク受け部202の軸方向の面振れを抑制する等の効果については、第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0108】
以上のように本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができるだけでなく、さらにロータハブの加工が簡単で、かつ安価にできる。また、スラスト軸受部の軸受剛性を大きくすることができる。したがって、安価で、薄型で、かつ安定した動作をする動圧軸受を有し、信頼性の高いスピンドルモータを実現することができる。
【0109】
また、このようなスピンドルモータを搭載することによって、ディスク板53の面振れを非常に小さく抑えることができるため、安定した記録と再生とを行うことができ、薄型で、高い安定性と信頼性を有したディスク駆動装置を実現することができる。
【0110】
なお、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に取り付け面204および対向面205が設けられている一主面の構成を、図12に示す構成に代えて図3および図4に示す構成とすることも可能であり、同様に本発明の効果を得ることができる。
【0111】
さらに、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に図7に示す軸受保持部材31を介してスリーブ80をシャーシ15に固定する構成を採用してもよい。この際、スリーブ80、軸受保持部材31およびシャーシ15は、各々の線膨張係数がスリーブ80、軸受保持部材31、シャーシ15の順に大きい材質よりなるようにしてもよい。あるいは、スリーブ80、軸受保持部材31、シャーシ15の順に小さい材質よりなる構成とし
てもよい。このような構成とすることによって、第1の実施の形態と同様にスピンドルモータを組み立てる際のスリーブ80と軸受保持部材31との接着およびその軸受保持部材31とシャーシ15との接着を行ったときの接着硬化後に発生するスリーブの歪みを小さくすることができる。したがって、ラジアル軸受部22およびスラスト軸受部23の軸受性能を安定化させることができるとともに、シャーシ15と軸受保持部材31の接着強度の低下も抑制できる。
【0112】
さらに、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に図8および図9に示すロータハブ20とは別部材のバックヨーク25をロータハブ20のフランジ部201のディスク受け部202と反対側の一主面に取り付けた構成としてもよい。
【0113】
なお、第1の実施の形態および第2の実施の形態においては、本発明にもとづくスピンドルモータとディスク駆動装置との一実施の形態について説明したが、本発明はかかる実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形や修正が可能である。
【0114】
例えば、オイルに対して半径方向内方に作用する圧力を発生させるために、スラスト軸受部23に設けられる手段としては、ポンプインタイプのスパイラルグルーブに代えて、半径方向にアンバランスな形状を有するヘリングボーングルーブとすることも可能である。この場合、半径方向外方側に位置するスパイラルグルーブによるポンピング力が、半径方向内方側に位置するスパイラルグルーブによるポンピング力を上回るよう設定することによって、これらのスパイラルグルーブ間のポンピング力のアンバランス量が、オイルに対して半径方向内方に作用する圧力となる。
【0115】
また、第1の実施の形態および第2の実施の形態のラジアル動圧軸受部22およびスラスト軸受部23において、それぞれの軸受部のグルーブを形成している面を対向する面のうち少なくともいずれか一方の面にグルーブを形成してもよい。すなわち、ラジアル動圧軸受部22に対しては、ロータハブ20のシャフト部203の外周面209とスリーブ80の内周面804のうち少なくともいずれか一方の面に形成すればよい。また、スラスト軸受部23に対しては、シャフト部203の端面208とスラストプレート40(第1の実施の形態の構成)、あるいはロータハブ20の対向面205とスリーブ80の端面802(第2の実施の形態の構成)の少なくともいずれか一方の面にそれぞれのグルーブを形成すればよい。
【0116】
さらに、第1の実施の形態および第2の実施の形態においては、スラスト調整板17の外周半径を回転磁石16の外周半径より小さくし、スラスト調整板17の内周半径を回転磁石16の内周半径より小さくすることによって所定のスラスト力を得るように構成した。しかしながら、スラスト調整板17の外周半径を回転磁石16の外周半径と略同一にし、スラスト調整板17の内周半径を回転磁石16の内周半径より小さくすることによって、所定のスラスト力を得るように構成してもよい。
【0117】
特に、回転磁石16が、樹脂を基材とする磁石の場合、その内周部に欠けが発生し難いので、スラスト力の作用する位置をより内周部に位置させることが可能となる。これにより、回転磁石16とシャーシ15の空隙の変化、特にシャーシ15の回転磁石16と対向する面の表面状態の影響を受けることが少なくなり、軸方向の振れを抑制するのに有効である。したがって、スピンドルモータに使用する回転磁石16の基材、あるいは内周の加工状態によってスラスト調整板17の大きさを決めればよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
以上のように本発明にかかるスピンドルモータは、ロータハブを安価に作製することが
できるとともに、シャフト部の外周面とスリーブの内周面の隙間量の管理が容易になり、ラジアル軸受部としての軸受性能を安定化させることができる。また、回転磁石に磁化容易軸を半径方向(ラジアル方向)に配向し、かつ外周面を作用面として極異方に配向した磁石を用いるため、モータ効率を向上させることもできる。さらに、薄型化を実現することも可能であり、例えば外径が1インチのハードディスクを駆動する小型ディスク駆動装置も容易に実現できる。以上のように、本発明のスピンドルモータは、ハードディスク等のディスク駆動装置、光磁気ディスク駆動装置および光ディスク駆動装置等の分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかるスピンドルモータの構成を示す断面図
【図2】同実施の形態にかかるスピンドルモータにおいて、動圧軸受部分近傍を示す拡大断面図
【図3】同実施の形態にかかるスピンドルモータにおいて、動圧軸受部分近傍の構成の別の一例を示す拡大断面図
【図4】同実施の形態にかかるスピンドルモータにおいて、動圧軸受部分近傍の構成のさらに別の一例を示す拡大断面図
【図5】同実施の形態のスピンドルモータにおいて、これに対応した比較例の構成を示す拡大断面図
【図6】同実施の形態にかかるスピンドルモータにおいて、回転磁石の配向を示すための斜視図
【図7】同実施の形態にかかるスピンドルモータにおいて、動圧軸受部分近傍の構成のまたさらに別の一例を示す拡大断面図
【図8】同実施の形態にかかるスピンドルモータの構成の別の一例を示す断面図
【図9】同実施の形態にかかるスピンドルモータにおいて、図8におけるスピンドルモータの動圧軸受部分近傍を示す拡大断面図
【図10】同実施の形態にかかるスピンドルモータにおいて、ディスク駆動装置の構成を示す模式図
【図11】本発明の第2の実施の形態にかかるスピンドルモータの構成を示す断面図
【図12】同実施の形態にかかるスピンドルモータにおいて、スピンドルモータの動圧軸受部分近傍を示す拡大断面図
【図13】従来のスピンドルモータの構成を示す断面図
【図14】従来のスピンドルモータの構成の他の一例を示す断面図
【符号の説明】
【0120】
13,900 ロータ
14 電機子
15 シャーシ
16,903 回転磁石
17 スラスト調整板
20,901,921 ロータハブ
22,906,907 ラジアル動圧軸受部(ラジアル軸受部)
23,909 スラスト軸受部
25,207,905 バックヨーク
31 軸受保持部材
40 スラストプレート
41,910 シールキャップ
50 ディスク駆動装置
51 ハウジング
52 スピンドルモータ
53 ディスク板
54 アクチュエータ部
55 アーム
56 ヘッド
57 ヘッド移動機構
80,908 スリーブ
171 内周部
201,904 フランジ部
202 ディスク受け部
203 シャフト部
204 取り付け面
205 対向面
206 凹部
208,802 端面
209 外周面
801 小径部
803 段差面
804 内周面
902,923 シャフト
922 界磁用磁石
931 ベースプレート
935 磁性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一主面にディスクを載置するためのディスク受け部を有する円盤状のフランジ部と前記フランジ部の前記ディスク受け部と反対側の一主面の中央部に形成されて外周が円筒状をなすシャフト部とからなるロータハブと、
前記フランジ部の前記ディスク受け部と反対側の一主面に前記シャフト部の中心軸に対して前記シャフト部と同心状に固着されたリング状の回転磁石と、
前記回転磁石に対向するとともに、前記回転磁石に対して前記シャフト部の中心軸を中心として回転力を発生する電機子と、
前記フランジ部の前記ディスク受け部と反対側の一主面に対向するとともに、前記シャフト部を軸支するスリーブと、
前記電機子と前記スリーブを固定するシャーシと
からなるスピンドルモータであって、
前記ロータハブの前記フランジ部と前記シャフト部とは、磁性材料で一体的に構成され、前記フランジ部の前記ディスク受け部と反対側の一主面において、前記回転磁石を取り付けるための取り付け面と前記スリーブの端面に対向する対向面との間に突出部を有さず、かつ前記取り付け面と前記対向面とは、前記シャフト部の中心軸方向に対して垂直な同一高さの平面内にあるか、もしくは前記取り付け面が前記対向面に対して階段状に前記ディスク受け部の側に後退していることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項2】
リング状の前記回転磁石の内周側に円管状の磁性材料からなるバックヨークを取り付けたことを特徴とする請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項3】
前記回転磁石は、磁化容易軸を半径方向に配向し、かつ外周面を作用面として極異方に配向したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスピンドルモータ。
【請求項4】
前記シャーシを磁性材料で構成し、前記回転磁石の前記シャーシに対向する面に、前記回転磁石と前記シャーシとの間に発生するスラスト力を調整するための磁性材料からなるスラスト調整板を配設したことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のスピンドルモータ。
【請求項5】
前記スラスト調整板は、その外周半径が前記回転磁石の外周半径と同一もしくは前記回転磁石の外周半径より大であり、かつ、その内周半径が前記回転磁石の内周半径より大きい円環形状としたことを特徴とする請求項4に記載のスピンドルモータ。
【請求項6】
前記スラスト調整板は、その内周半径が前記回転磁石の内周半径と同一もしくは前記回転磁石の内周半径より小であり、かつ、その外周半径が前記回転磁石の外周半径より小さい円環形状としたことを特徴とする請求項4に記載のスピンドルモータ。
【請求項7】
前記スラスト調整板の内周部が、前記スリーブの外周部において前記シャフト部の中心軸に対して垂直に設けられた段差面と所定の距離を持って前記シャフト部の中心軸方向に対向する構成としたことを特徴とする請求項6に記載のスピンドルモータ。
【請求項8】
前記スリーブが軸受保持部材を介して前記シャーシに固定され、
前記スリーブ、前記軸受保持部材および前記シャーシは、各々の線膨張係数が前記スリーブ、前記軸受保持部材、前記シャーシの順に大きい材質よりなるか、あるいは、
前記スリーブと前記軸受保持部材とが同じ材質で構成され、その線膨張係数よりも前記シャーシの線膨張係数を大きい材質で構成するか、あるいは、
前記スリーブ、前記軸受保持部材、前記シャーシの順に小さい材質よりなるか、もしくは、前記スリーブと前記軸受保持部材とが同じ材質で構成され、その線膨張係数よりも前記
シャーシの線膨張係数を小さい材質で構成することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のスピンドルモータ。
【請求項9】
前記スリーブの下部を閉塞し、前記ロータハブの前記シャフト部の端面および前記端面に対向するように前記スリーブに固着されたスラストプレートのうち少なくともいずれか一方に動圧発生溝が形成され、前記ロータハブの前記シャフト部の前記端面と前記スラストプレートによって、スラスト軸受部を形成したことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のスピンドルモータ。
【請求項10】
前記スリーブの上端面と、それに対向する前記フランジ部の前記ディスク受け部とは反対側の一主面のうち少なくともいずれか一方に動圧発生溝が形成され、前記スリーブの前記上端面とそれに対向する前記フランジ部の前記ディスク受け部とは反対側の前記一主面とによってスラスト軸受部を形成したことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のスピンドルモータ。
【請求項11】
情報を記録するためのディスク状記録媒体が装着されるディスク駆動装置において、
ハウジングと、
前記ハウジングの内部に固定され、前記ディスク状記録媒体を回転させるスピンドルモータと、
前記ディスク状記録媒体の所要の位置に情報を書き込みまたは読み出すための情報アクセス手段とを有し、
前記スピンドルモータが、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載のスピンドルモータであることを特徴とするディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−353082(P2006−353082A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137533(P2006−137533)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】