スペクトル測定装置およびスペクトル測定方法
【課題】物質間の物理的・化学的相互作用の変化により吸収スペクトルの波長変化やバックグラウンドの変化が起こっても精度の高い測定ができるようにする。
【解決手段】光源2より出射された光は、試料2を透過した後、結像光学系3で薄膜干渉フィルタ4上に結像され、薄膜干渉フィルタ4上に設置された光検出器5により検出される。光検出器5の出力信号はデータ処理装置6に入力され、ここでデータ処理される。薄膜干渉フィルタ4は、光の入射角を変化させて透過中心波長を調整できるように回転可能に設置されており、試料2の吸収ピーク波長に合わせるように調整される。
【解決手段】光源2より出射された光は、試料2を透過した後、結像光学系3で薄膜干渉フィルタ4上に結像され、薄膜干渉フィルタ4上に設置された光検出器5により検出される。光検出器5の出力信号はデータ処理装置6に入力され、ここでデータ処理される。薄膜干渉フィルタ4は、光の入射角を変化させて透過中心波長を調整できるように回転可能に設置されており、試料2の吸収ピーク波長に合わせるように調整される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトル測定装置およびスペクトル測定方法に関し、特に透過中心波長を可変としたフィルタを用いて試料の化学的変化を光学的に検出するスペクトル測定装置およびスペクトル測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物質間の物理的・化学的相互作用により生じる変化を、物質の吸収(発光)スペクトルを利用して検出する方法は、微量物質の高感度検出などに広く用いられている(例えば、非特許文献1参照)。吸収(発光)スペクトルを測定しその変化を検出する方法として、プリズムや回折格子などの波長分散素子を用いる方法や、バンドパスフィルタ(Band Pass Filter; BPFと略す)などの波長選択素子を用いる方法などがある。プリズムや回折格子などの波長分散素子を用いる方法に比較し、BPFなどの波長選択素子を用いる方法は、透過光や発光の光路に関する制限がゆるく、1次元や2次元光検出器を用いて、多くの試料の同時検出や試料内部の差などを検出する能力に優れている。
【0003】
図17は、特許文献1にて開示された、波長選択素子を用いて微量物質の検出を行う蒸気暴露装置10の概略図である。図17に示すように、センサプレート11上には試薬である複数種の金属ポルフィリン(metalloporphyrin)12がマトリックス状に配置されている。そのセンサプレート11は、透明窓13を有する反応セル14内に収容されており、そして通常のカラーフィルタが装着されたスキャナ15により走査される。被検出微量物質を含む溶液16は、バブラー17内に収められている。検出に当たってまず窒素のみが給気管18を介して反応セル14に供給される。そしてそのときの光学情報(RGB値)がスキャナ15を介して測定される。その後、窒素が給気管19を介してバブラー17に供給され、バブラー17より出力される飽和蒸気は給気管20を介して反応セル14に供給される。反応後の試薬(金属ポルフィリン12)の光学情報がスキャナ15を介して測定され、そして反応後のRGB値から反応前のRGB値が減算され、微量物質種とその濃度が推測される。反応セル14に供給されたガスは、排気管21より排気される。
【0004】
上記した従来の検出装置では、分光のためにカラー映像を取得する目的などに用いられる可視領域を三原色に分解するBPFが採用されている。図18は、RGBカラーフィルタの光透過特性を示す特性図である。図において、点線は比視感度特性を補正したものである。一般にこの種カラーフィルタの半値幅は50nm程度である。通常、カラーフィルタは、ガラスなどの透明な媒体に光吸収物質を分散し、その物質の吸収特性を利用して選択的透過光領域を決めている。このため、透過光の中心波長は固定となっている。
【非特許文献1】N.A.Rakow et al. 「Molecular Recognition and Discrimination of Amines with a Colorimetric Array」 Angew. Chem., 2005, 44, pp.4528-4532
【特許文献1】米国特許第6,368,558号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の測定装置では、透過光の中心波長が固定でかつ半値幅が広いBPFを用いて光検出を行っていたため、物質間の物理的・化学的相互作用の変化により吸収スペクトルの強度変化に波長変化がつけ加わる場合には、定性的な測定しかできず、さらには誤った結果を与える場合もある。また、相互作用を発生するための操作によりバックグラウンドの変化が変化する場合には、透過光の中心波長が固定したBPFを用いた場合、注目しているスペクトルの変化とバックグラウンドによる変化を区別することは困難となる。一方、波長分散素子を用いて測定を行なう場合にはこれらの不都合を解消することができるが、装置が複雑になる上に測定に多大の時間を要する。
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解決することであって、その目的は、物質間の物理的・化学的相互作用の変化により吸収スペクトルの波長やバックグラウンドが変化する場合であっても比較的簡素な装置で容易に精度よく定量的測定ができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明によれば、光源と、該光源の出射光が照射される試薬が搭載された試薬キャリアを保持するキャリアホルダーと、前記試薬を透過または反射した光が入射される薄膜干渉フィルタと、前記薄膜干渉フィルタを透過した光を検出する光検出器と、前記光検出器の出力を処理する信号処理手段と、前記薄膜干渉フィルタに入射する光の入射角を可変するための、前記薄膜干渉フィルタを回転させる回転機構と、を備えたスペクトル測定装置、が提供される。
【0007】
また、上記の目的を達成するため、本発明によれば、光源と、該光源の出射光が入射される薄膜干渉フィルタと、前記薄膜干渉フィルタの透過光が照射される、試薬が搭載された試薬キャリアを保持するキャリアホルダーと、前記試薬を透過または反射した光を検出する光検出器と、前記光検出器の出力を処理する信号処理手段と、前記薄膜干渉フィルタに入射する光の入射角を可変するための、前記薄膜干渉フィルタを回転させる回転機構と、を備えたスペクトル測定装置、が提供される。
【0008】
また、上記の目的を達成するため、本発明によれば、試薬キャリアに搭載された試薬に光を照射し、その透過光または反射光を薄膜干渉フィルタを介して光検出器により検出するスペクトル測定方法であって、前記試薬を透過または反射した光のスペクトルのピークとなる波長と、前記薄膜干渉フィルタの透過光の中心波長が一致するように前記薄膜干渉フィルタへの光入射角度を制御することを特徴とするスペクトル測定方法、が提供される。
【0009】
また、上記の目的を達成するため、本発明によれば、試薬キャリアに搭載された試薬に薄膜干渉フィルタを介して光を照射し、その透過光または反射光を、光検出器により検出するスペクトル測定方法であって、前記試薬を透過または反射した光のスペクトルのピークとなる波長と、前記薄膜干渉フィルタの透過光の中心波長が一致するように前記薄膜干渉フィルタへの光入射角度を制御することを特徴とするスペクトル測定方法、が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、半値幅がRGBカラーフィルタよりも狭く、光の入射角を変更することによって透過光ピークの波長を可変できる薄膜干渉フィルタ(Thin-Film Interference Filter;以下、適宜TFIFと略す)を用い、そして試料の吸収ピークないし発光ピークの波長にTFIF透過光ピークの波長を合わせて分光を行うので、物質間の物理的・化学的相互作用の変化により吸収スペクトルの波長やバックグラウンドが変化しても容易に精度よく測定することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、吸収スペクトル変化が起こる試料を対象として説明するが、発光スペクトル変化が起こる試料についても同様の説明が成立する。
本発明は、バンドパスフィルタの一種であるTFIFを波長選択素子として用い、波長分散素子を用いる方法と同様に、スペクトルの波長変化を考慮にいれた測定ができ、かつバックグラウンドの影響を除外して測定する方法を提供するものである。すなわち、TFIFを波長選択素子として用い、被測定光が検出器に到達する光路に対し、TFIFがなす角度を調整することにより透過光スペクトル領域を可変にし、吸収スペクトル強度の変化のみならず、吸収スペクトルの波長変化を検出し、波長変化を考慮した吸光度変化やバックグラウンドの影響を補正した吸光度変化を測定することが可能となることを特徴とする。
【0012】
[TFIF]
本発明において用いられる薄膜干渉フィルタは、薄膜中での透過光と反射光の干渉を利用したもので、一種のファブリペロー干渉計である。その一例の断面図を図1に示す。図1に示すように、薄膜4bの両面に半透鏡4aを蒸着などにより付着して形成される。この構造のTFIFは、式(1)であらわされる中心波長λ0Mの光を通す。
【0013】
【数1】
ここでnは薄膜の屈折率、dは薄膜の膜厚、φは薄膜内での屈折角、Mは任意の整数であり、通常1の場合を使用する。したがって、屈折角φを制御することにより透過する光の波長を制御することが可能となる。
一般に使用されている干渉フィルタは、高い透過率と狭いスペクトル幅を実現するため誘電体の多層膜が用いられる。米国Newport社から市販されている干渉フィルタの場合は、透過する中心波長λnewportは、式(2)であらわされる。
【0014】
【数2】
ここで、n0は環境の屈折率(空気中では1)、neはフィルタの有効屈折率、θはフィルタへの入射角である。
例えば、θ=0゜での中心波長460nmの干渉フィルタ(バンド幅10nm)はne=1.45であり、θ=45゜のとき透過光の中心波長は401nmに移動する。
【0015】
[測定装置]
本発明において用いられる測定装置の基本的な構成を図2ないし図7に示す。これらはいずれも吸収スペクトルを測定するためのものである。但し、発光スペクトルを測定する場合には光源を必要としないものの、試料と光検出器との間に薄膜干渉フィルタが介在しているタイプのものであれば、以下に説明する測定装置も発光スペクトル測定用に適宜利用可能である。図2ないし図7において、同一機能を有する部分には同一参照記号を付し、重複する説明は省略する。
図2に示すように、光源2より出射された光は、試料2を透過した後、結像光学系3で薄膜干渉フィルタ4の背後に設置された光検出器5に結像され、検出される。光検出器5の出力信号はデータ処理装置6に入力され、ここでデータ処理される。光源1には、タングステンランプなどの広いスペクトルを有するものが用いられる。試料2は、光透過性で平板状のキャリア2a上に試薬2bを付着したものである。図では試薬2bは1個のみが示されているが通常は複数種の試薬が例えばマトリックス状に配置されている。試料2は、キャリア2aの主面に平行に紙面垂直方向および紙面上下方向に移動できる態様にて図示省略した試料ホルダーに支持されている。試料2は、データ処理装置6からの指示を受ける試料移動機構7により試料ホルダーに支持されつつ平行移動される。試料2は、データ処理装置6に格納されたプログラムに従い自動的に移動されるがデータ処理装置6に位置情報をマニュアルで入力することにより任意の位置に移動させることもできる。薄膜干渉フィルタ4は、その透過中心波長を制御するためにデータ処理装置6からの指示を受けるフィルタ回転機構8により回転制御される。薄膜干渉フィルタ4は、光検出器5の出力に従ってデータ処理装置6により回転制御されるが、データ処理装置6に角度情報をマニュアルで入力することにより任意の傾き角に回転制御することもできる。光検出器5は、迷光の光検出器への入射を防止するため薄膜干渉フィルタ4に密着して設置されている。光検出器5には、光電子増倍管あるいはCCD、フォトダイオードなどの半導体センサが用いられる。光検出器5がポイントセンサであるとき、試料2を2次元に移動させることにより、試料2の全体の情報を得ることができる。光検出器5が、例えば紙面垂直方向のリニアセンサであるとき、試料2を紙面上下方向に移動させることにより、試料2の全体の情報を得ることができる。また、光検出器が二次元光検出器の場合試料像を二次元検出器の上に結像することにより試料2の全体の情報を得ることが出来る。データ処理装置6は、光検出器5の出力を収集し、演算を加える。測定が自動的に行われるとき、データ処理装置6は、フィルタ回転機構8に対して、あるいは試料移動機構7およびフィルタ回転機構8に対して指令を発して、薄膜干渉フィルタ4の回転角制御や試料2の位置制御を行なう。データ処理装置6としては、市販のパーソナルコンピュータを利用することができる。
【0016】
図2に示した測定装置は、試料の透過光を観測するものであったが、図3には、試料からの反射光を観測する場合が示されている。この場合、光源1が、試料2の前面側に配置されるが、動作は図2に示した透過型の装置の場合と同様である。
図4、図5には、薄膜干渉フィルタ4が光源1と試料2との間に配置される例が示されている。図4の測定装置は透過型であり、図5の測定装置は反射型である。このように、試料2と薄膜干渉フィルタ4との配置位置を交換しても同様に測定を行なうことができる。
【0017】
図6に示す測定装置においては、傾き角度が少しずつ変化された薄膜干渉フィルタ41、42…4nが紙面垂直方向に配列されている。これらのフィルタは、半値幅が例えば10nmの場合、中心波長の間隔は5nm程度となるようになされている。各薄膜干渉フィルタ41、42…4n上には、それぞれ光検出器51、52…5nが搭載されている。図2〜図5に示した測定装置では、透過中心周波数を調整するために薄膜干渉フィルタ4は回転可能に設置されていたが、図6に示す例では個々の薄膜干渉フィルタの傾き角は固定されており、その内の最適のフィルタが選択されて使用される。薄膜干渉フィルタ41、42…4nは、データ処理装置6からの指示を受けるフィルタ選択手段8aにより紙面垂直方向に移動され、適切なフィルタが所定位置に配置されるようになっている。この制御は、光検出器の出力に従ってデータ処理装置6により自動的に行われるが、またデータ処理装置6に位置情報をマニュアルで入力することにより任意のフィルタを所定位置に選択配置することもできる。薄膜干渉フィルタ41、42…4nの位置を固定して、試料2側を移動させるようにしてもよい。
図6に示す測定装置は、透過型であったが、図7に示すように、反射型の測定装置において、傾き角度の異なる薄膜干渉フィルタ41、42…4nを設置し、適切なフィルタを選択するようにしてもよい。
【0018】
[フィルタの周波数調整]
次に、図2に示す測定装置において薄膜干渉フィルタ4の透過中心周波数の調整方法について説明する。フィルタの角度調整をマニュアルで行う場合、フィルタの傾き角度と透過中心周波数との関係は予め調べられてあり、既知である。試料の吸収のピーク波長が例えば波長分散素子を利用する別の分光装置を用いて測定される。そのピーク波長に薄膜干渉フィルタ4の透過中心周波数が合致するようにフィルタ4の角度調整を行う。すなわち、データ処理装置6にフィルタ4の所望の傾き角が入力され、その角度にフィルタ回転機構8により調整される。
【0019】
次に、薄膜干渉フィルタ4の透過中心周波数を試料の吸収のピーク波長に自動的に一致させる場合の方法について説明する。試料の吸収のピーク波長に薄膜干渉フィルタ4の透過中心周波数が一致するとき、後述される見かけの吸光度ODappが最大となる。したがって、見かけの吸光度ODappが最大となるようにフィルタの角度調整を行えば、試料の吸収のピーク波長に薄膜干渉フィルタ4の透過中心周波数を一致させることができる。
この場合、データ処理装置は、図8に示すアルゴリズムに従い、フィードバック制御を行なう。最初のステップS1では、時刻t0において見かけの吸光度ODapp(t0)が検出(算出)され、続くステップS2において、薄膜干渉フィルタ4を微小角度θ0回転させる。次のステップS3においてn=1に設定し、続くステップS4では、見かけの吸光度ODapp(tn)の検出が行われた後、見かけの吸光度の差分
ΔODapp=ODapp(tn)−ODapp(tn−1)
が正かどうかを判定し(ステップS5)、正であれば、前のステップと同じ方向に角度θn(=θn-1)フィルタを回転させ(ステップS6)、正でなければ、前のステップと逆方向に角度θn(=−θn-1)フィルタを回転させる(ステップS7)。その後、ステップS8において、今回の見かけの吸光度ODapp(tn)が前値ODapp(tn−1)と置き換えられ、ステップS9において、今回の回転角θnが前回転角θn−1と置き換えられる。そして、ステップS10においてnがインクリメントされた後、ステップS4に戻り、同様の過程が繰り返される。回転角度を徐々に小さくするために、ステップS6ないしステップS7での回転角度θnを例えばθn-1/n(または−θn-1/n)としてもよい。適当な時間経過後、制御は打ち切られる。
このようなアルゴリズムにより、見かけの吸光度ODappが最大となるように、換言すれば試料の吸収のピーク波長に薄膜干渉フィルタ4の透過中心周波数が一致するように、フィルタの角度調整を行うことができる。
【0020】
次に、図6に示す測定装置における薄膜干渉フィルタ41、42…4nの選択方法について説明する。フィルタの選択をマニュアルで行う場合、各フィルタと透過中心周波数との関係は予め調べられてあり、既知である。試料の吸収のピーク波長が例えば波長分散素子を利用する別の分光装置を用いて測定される。そのピーク波長に最も近い中心波長を有する薄膜干渉フィルタが選択される。すなわち、データ処理装置6に所望の薄膜干渉フィルタが所定位置に配置される位置データが入力され、そのフィルタがフィルタ選択手段8aにより所定位置に選択配置される。
また、フィルタの選択は次のように行なうこともできる。すなわち、薄膜干渉フィルタ41、42…4nを順次入れ換えて測定を行い、測定された光強度〔∫I(λ)dλ〕が最小となるか、または、見かけの吸光度ODappが最大となる薄膜干渉フィルタを選択する。
また、図8に示したフローと同様のアルゴリズムを用いれば、試料の吸収ピーク波長に中心周波数が最も近いフィルタを自動的に選択することができる。
【0021】
[見かけの吸光度の検出]
吸収スペクトルおよびTFIFの透過特性を以下の式を用いて近似し、図2〜図7の装置で検出される見かけの吸光度を見積もる。
目的としている物質の吸収スペクトルの形を、Lorentz関数で式(3)のように近似し、ピーク値を1に規格化する。
【0022】
【数3】
ここに
λ;波長(nm)
λ0,A;吸収ピーク波長(nm)
OD(λ);吸光度(ピーク値を1とする)
ΓA;吸収スペクトルの半値幅
c;物質の濃度
d;試料の光路長
次に、フィルタの透過特性をGauss関数で式(4)のように近似し、ピーク値を1に規格化する。
【0023】
【数4】
ここに
I0(λ);透過光強度
λ0,F;フィルタの透過光の中心波長(nm)
ΓF;フィルタの透過特性の半値幅
物質による光の吸収はLambert-Beerの法則で表されるとする。物質に吸収されずに透過する光の強度I(λ)は、式(5)となる。
【0024】
【数5】
図2〜図7の装置において得られる、見かけの吸光度ODappは、検出器に入射する光量を用い、次の式(6)で表される。
【0025】
【数6】
【0026】
[従来例と本発明により得られる特性の比較]
従来例と本発明とにより得られる結果の違いを明らかにするために、次のフィルタを用いてそれぞれ測定を行なう。
従来例において用いられるフィルタ:透過光ピーク波長〜500nm(固定)、ピーク波長での透過率〜1、半値幅〜50nmのBPF
本発明において用いられるフィルタ:透過光ピーク波長はフィルタの傾き角に依存して式(2)で表され、それぞれのピーク波長での透過率は1に規格化された、半値幅〜10nmのTFIF
また、試料の反応前の吸収スペクトルは、下記(c)(ロ)の場合を除き、吸収ピーク波長〜500nm、半値幅〜10nmとする。
【0027】
(a)吸収スペクトルの形および位置は変化せず、吸光度のみが減少する場合(図9、図10)
試料の吸光度が、OD(λ0=500nm)=1(反応前) → OD(λ0=500nm)=0.9(反応後)と変化したものとすると、BPFを用いた場合のフィルタの透過光強度I0および反応前後の試料透過光強度Iは、図9に示すようになり、これによりODapp(before)とODapp (after)が求められ、ΔODappと変化率ΔODapp / ODapp(before)が下記のように算出される。
【0028】
【数7】
【0029】
【数8】
一方、上記のTFIFを用いた場合のフィルタの透過光強度I0および反応前後の試料透過光強度Iは、図10に示すようになり、これによりODapp(before)とODapp (after)が求められ、ΔODappと変化率ΔODapp / ODapp(before)が下記のように算出される。
【0030】
【数9】
【0031】
【数10】
TFIFを用いることにより、変化量ΔODapp/ODappは、0.09と0.1(1-0.9)に近い値となっており、また検出感度は、ΔODapp(TFIF) /ΔODapp(BPF)=0.058/0.013=4.5と高くなっている。
【0032】
(b)反応によりバックグラウンドが変化した場合(図11、図12)
波長依存性がないバックグラウンドが吸光度に換算して0.1増加し、吸光度は1のまま変化しないとする。上記のBPFとTFIFを用いた場合の反応後の試料透過光強度Iは、それぞれ図11において実線と点線で示すようになり、それぞれの場合の誤差ΔODapp/ ODappは下記のように求められる。
(BPFの場合)
【0033】
【数11】
(TFIFの場合)
【0034】
【数12】
すなわち、反応によりBack Groundが変化(吸光度で0.1増加)すると、誤差はBPFでは56%、TFIFでは15%となる。
【0035】
次に、図12に示すように、TFIFの角度を調整し中心波長を吸光度が十分低くなる530nmとして吸光度を測定、そこで得られたI0、Iより求められたODapp(=0.1285)を近似的にBase Line(試料の吸光度が0)とする。これにより補正を行うと、
【0036】
【数13】
となる。すなわち、反応によりバックグラウンドが変化(吸光度で0.1増加)しても、TFIFを用いベースライン補正を行うと4.5%の誤差に収まる。
【0037】
(c)吸収スペクトルの形は変わらず、ピークは赤方移動、吸光度が減少する場合(図13〜図16)
(イ)反応前の吸収極大が、BPFの透過極大と一致しており、反応後の吸収極大(λ0)の波長が500nm→510nmと遷移し、吸光度OD(λ0)が 1→0.9と変化した場合の特性を図13に示す。
ΔODapp=0.1795−0.1498=0.0297
が得られ、変化量が次のように求められる。
【0038】
【数14】
(ロ)反応後の吸収極大(λ0)の波長が490nm→500nmと遷移し、吸光度OD(λ0)が 1→0.9と変化し、反応後の吸収極大が、BPFの透過極大と一致する場合の特性を図14に示す。
ΔODapp=0.1617−0.1663=−0.046
が得られ、この場合の変化量が次のように求められる。
【0039】
【数15】
この場合のように、従来の測定方法では被測定物質の吸収極大とフィルタの透過特性の組み合わせにより、誤った結果を与えることがある。
(ハ)反応後の吸収極大(λ0)の波長が500nm→510nmと遷移し、吸光度OD(λ0)が 1→0.9と変化し、TFIFの角度を変えず(透過ピーク波長;500nmに固定)に測定した場合の特性を図15に示す。
ΔODapp=0.6404−0.2099=0.4305
が得られ、この場合の変化量が次のように求められる。
【0040】
【数16】
この場合、得られた値は期待値(0.1)から大きくずれている。
(ニ)反応後の吸収極大(λ0)の波長が500nm→510nmと遷移し、吸光度OD(λ0)が 1→0.9と変化し、TFIFの角度を透過ピーク波長に調整して測定した場合の特性を図16に示す。
ΔODapp=0.6404−0.5828=0.0576
が得られ、この場合の変化量が次のように求められる。
【0041】
【数17】
得られた値は0.1に近く、本発明により高い精度の測定が可能であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の測定装置に用いられる薄膜干渉フィルタ(TFIF)の断面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態の測定装置の概略図。
【図3】本発明の第2の実施の形態の測定装置の概略図。
【図4】本発明の第3の実施の形態の測定装置の概略図。
【図5】本発明の第4の実施の形態の測定装置の概略図。
【図6】本発明の第5の実施の形態の測定装置の概略図。
【図7】本発明の第6の実施の形態の測定装置の概略図。
【図8】本発明の第1の実施の形態の測定装置において自動的にフィルタの角度を調整する場合のアルゴリズムを示す流れ図。
【図9】反応により吸光度が減少した場合の中心周波数固定のBPFを用いて測定した特性曲線図。
【図10】反応により吸光度が減少した場合のTFIFを用いて測定した特性曲線図。
【図11】反応によりバックグラウンドが増加した場合のBPFおよびTFIFを用いて測定した特性曲線図。
【図12】反応によりバックグラウンドが増加した場合の本発明の補正方法を説明するための特性曲線図。
【図13】反応により吸収ピークが赤方に移動した場合の、中心周波数が固定したBPFを用いて測定した特性曲線図(その1)。
【図14】反応により吸収ピークが赤方に移動した場合の、中心周波数が固定したBPFを用いて測定した特性曲線図(その2)。
【図15】反応により吸収ピークが赤方に移動した場合の周波数調整を行うことなくTFIFを用いて測定した特性曲線図。
【図16】反応により吸収ピークが赤方に移動した場合の、TFIFの中心波長を試料の吸収ピークに合わせて測定した特性曲線図。
【図17】従来の測定装置の概略図。
【図18】従来の測定装置用いられたカラーフィルタの特性図。
【符号の説明】
【0043】
1 光源
2 試料
2a キャリア
2b 試薬
3 結像光学系
4、41、42〜4n 薄膜干渉フィルタ(TFIF)
4a 半透鏡
4b 薄膜
5 光検出器
6 データ処理装置
7 試料移動機構
8 フィルタ回転機構
8a フィルタ選択手段
10 蒸気暴露装置
11 センサプレート
12 金属ポルフィリン
13 透明窓
14 反応セル
15 スキャナ
16 溶液
17 バブラー
18、19、20 給気管
21 排気管
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトル測定装置およびスペクトル測定方法に関し、特に透過中心波長を可変としたフィルタを用いて試料の化学的変化を光学的に検出するスペクトル測定装置およびスペクトル測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物質間の物理的・化学的相互作用により生じる変化を、物質の吸収(発光)スペクトルを利用して検出する方法は、微量物質の高感度検出などに広く用いられている(例えば、非特許文献1参照)。吸収(発光)スペクトルを測定しその変化を検出する方法として、プリズムや回折格子などの波長分散素子を用いる方法や、バンドパスフィルタ(Band Pass Filter; BPFと略す)などの波長選択素子を用いる方法などがある。プリズムや回折格子などの波長分散素子を用いる方法に比較し、BPFなどの波長選択素子を用いる方法は、透過光や発光の光路に関する制限がゆるく、1次元や2次元光検出器を用いて、多くの試料の同時検出や試料内部の差などを検出する能力に優れている。
【0003】
図17は、特許文献1にて開示された、波長選択素子を用いて微量物質の検出を行う蒸気暴露装置10の概略図である。図17に示すように、センサプレート11上には試薬である複数種の金属ポルフィリン(metalloporphyrin)12がマトリックス状に配置されている。そのセンサプレート11は、透明窓13を有する反応セル14内に収容されており、そして通常のカラーフィルタが装着されたスキャナ15により走査される。被検出微量物質を含む溶液16は、バブラー17内に収められている。検出に当たってまず窒素のみが給気管18を介して反応セル14に供給される。そしてそのときの光学情報(RGB値)がスキャナ15を介して測定される。その後、窒素が給気管19を介してバブラー17に供給され、バブラー17より出力される飽和蒸気は給気管20を介して反応セル14に供給される。反応後の試薬(金属ポルフィリン12)の光学情報がスキャナ15を介して測定され、そして反応後のRGB値から反応前のRGB値が減算され、微量物質種とその濃度が推測される。反応セル14に供給されたガスは、排気管21より排気される。
【0004】
上記した従来の検出装置では、分光のためにカラー映像を取得する目的などに用いられる可視領域を三原色に分解するBPFが採用されている。図18は、RGBカラーフィルタの光透過特性を示す特性図である。図において、点線は比視感度特性を補正したものである。一般にこの種カラーフィルタの半値幅は50nm程度である。通常、カラーフィルタは、ガラスなどの透明な媒体に光吸収物質を分散し、その物質の吸収特性を利用して選択的透過光領域を決めている。このため、透過光の中心波長は固定となっている。
【非特許文献1】N.A.Rakow et al. 「Molecular Recognition and Discrimination of Amines with a Colorimetric Array」 Angew. Chem., 2005, 44, pp.4528-4532
【特許文献1】米国特許第6,368,558号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の測定装置では、透過光の中心波長が固定でかつ半値幅が広いBPFを用いて光検出を行っていたため、物質間の物理的・化学的相互作用の変化により吸収スペクトルの強度変化に波長変化がつけ加わる場合には、定性的な測定しかできず、さらには誤った結果を与える場合もある。また、相互作用を発生するための操作によりバックグラウンドの変化が変化する場合には、透過光の中心波長が固定したBPFを用いた場合、注目しているスペクトルの変化とバックグラウンドによる変化を区別することは困難となる。一方、波長分散素子を用いて測定を行なう場合にはこれらの不都合を解消することができるが、装置が複雑になる上に測定に多大の時間を要する。
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解決することであって、その目的は、物質間の物理的・化学的相互作用の変化により吸収スペクトルの波長やバックグラウンドが変化する場合であっても比較的簡素な装置で容易に精度よく定量的測定ができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明によれば、光源と、該光源の出射光が照射される試薬が搭載された試薬キャリアを保持するキャリアホルダーと、前記試薬を透過または反射した光が入射される薄膜干渉フィルタと、前記薄膜干渉フィルタを透過した光を検出する光検出器と、前記光検出器の出力を処理する信号処理手段と、前記薄膜干渉フィルタに入射する光の入射角を可変するための、前記薄膜干渉フィルタを回転させる回転機構と、を備えたスペクトル測定装置、が提供される。
【0007】
また、上記の目的を達成するため、本発明によれば、光源と、該光源の出射光が入射される薄膜干渉フィルタと、前記薄膜干渉フィルタの透過光が照射される、試薬が搭載された試薬キャリアを保持するキャリアホルダーと、前記試薬を透過または反射した光を検出する光検出器と、前記光検出器の出力を処理する信号処理手段と、前記薄膜干渉フィルタに入射する光の入射角を可変するための、前記薄膜干渉フィルタを回転させる回転機構と、を備えたスペクトル測定装置、が提供される。
【0008】
また、上記の目的を達成するため、本発明によれば、試薬キャリアに搭載された試薬に光を照射し、その透過光または反射光を薄膜干渉フィルタを介して光検出器により検出するスペクトル測定方法であって、前記試薬を透過または反射した光のスペクトルのピークとなる波長と、前記薄膜干渉フィルタの透過光の中心波長が一致するように前記薄膜干渉フィルタへの光入射角度を制御することを特徴とするスペクトル測定方法、が提供される。
【0009】
また、上記の目的を達成するため、本発明によれば、試薬キャリアに搭載された試薬に薄膜干渉フィルタを介して光を照射し、その透過光または反射光を、光検出器により検出するスペクトル測定方法であって、前記試薬を透過または反射した光のスペクトルのピークとなる波長と、前記薄膜干渉フィルタの透過光の中心波長が一致するように前記薄膜干渉フィルタへの光入射角度を制御することを特徴とするスペクトル測定方法、が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、半値幅がRGBカラーフィルタよりも狭く、光の入射角を変更することによって透過光ピークの波長を可変できる薄膜干渉フィルタ(Thin-Film Interference Filter;以下、適宜TFIFと略す)を用い、そして試料の吸収ピークないし発光ピークの波長にTFIF透過光ピークの波長を合わせて分光を行うので、物質間の物理的・化学的相互作用の変化により吸収スペクトルの波長やバックグラウンドが変化しても容易に精度よく測定することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、吸収スペクトル変化が起こる試料を対象として説明するが、発光スペクトル変化が起こる試料についても同様の説明が成立する。
本発明は、バンドパスフィルタの一種であるTFIFを波長選択素子として用い、波長分散素子を用いる方法と同様に、スペクトルの波長変化を考慮にいれた測定ができ、かつバックグラウンドの影響を除外して測定する方法を提供するものである。すなわち、TFIFを波長選択素子として用い、被測定光が検出器に到達する光路に対し、TFIFがなす角度を調整することにより透過光スペクトル領域を可変にし、吸収スペクトル強度の変化のみならず、吸収スペクトルの波長変化を検出し、波長変化を考慮した吸光度変化やバックグラウンドの影響を補正した吸光度変化を測定することが可能となることを特徴とする。
【0012】
[TFIF]
本発明において用いられる薄膜干渉フィルタは、薄膜中での透過光と反射光の干渉を利用したもので、一種のファブリペロー干渉計である。その一例の断面図を図1に示す。図1に示すように、薄膜4bの両面に半透鏡4aを蒸着などにより付着して形成される。この構造のTFIFは、式(1)であらわされる中心波長λ0Mの光を通す。
【0013】
【数1】
ここでnは薄膜の屈折率、dは薄膜の膜厚、φは薄膜内での屈折角、Mは任意の整数であり、通常1の場合を使用する。したがって、屈折角φを制御することにより透過する光の波長を制御することが可能となる。
一般に使用されている干渉フィルタは、高い透過率と狭いスペクトル幅を実現するため誘電体の多層膜が用いられる。米国Newport社から市販されている干渉フィルタの場合は、透過する中心波長λnewportは、式(2)であらわされる。
【0014】
【数2】
ここで、n0は環境の屈折率(空気中では1)、neはフィルタの有効屈折率、θはフィルタへの入射角である。
例えば、θ=0゜での中心波長460nmの干渉フィルタ(バンド幅10nm)はne=1.45であり、θ=45゜のとき透過光の中心波長は401nmに移動する。
【0015】
[測定装置]
本発明において用いられる測定装置の基本的な構成を図2ないし図7に示す。これらはいずれも吸収スペクトルを測定するためのものである。但し、発光スペクトルを測定する場合には光源を必要としないものの、試料と光検出器との間に薄膜干渉フィルタが介在しているタイプのものであれば、以下に説明する測定装置も発光スペクトル測定用に適宜利用可能である。図2ないし図7において、同一機能を有する部分には同一参照記号を付し、重複する説明は省略する。
図2に示すように、光源2より出射された光は、試料2を透過した後、結像光学系3で薄膜干渉フィルタ4の背後に設置された光検出器5に結像され、検出される。光検出器5の出力信号はデータ処理装置6に入力され、ここでデータ処理される。光源1には、タングステンランプなどの広いスペクトルを有するものが用いられる。試料2は、光透過性で平板状のキャリア2a上に試薬2bを付着したものである。図では試薬2bは1個のみが示されているが通常は複数種の試薬が例えばマトリックス状に配置されている。試料2は、キャリア2aの主面に平行に紙面垂直方向および紙面上下方向に移動できる態様にて図示省略した試料ホルダーに支持されている。試料2は、データ処理装置6からの指示を受ける試料移動機構7により試料ホルダーに支持されつつ平行移動される。試料2は、データ処理装置6に格納されたプログラムに従い自動的に移動されるがデータ処理装置6に位置情報をマニュアルで入力することにより任意の位置に移動させることもできる。薄膜干渉フィルタ4は、その透過中心波長を制御するためにデータ処理装置6からの指示を受けるフィルタ回転機構8により回転制御される。薄膜干渉フィルタ4は、光検出器5の出力に従ってデータ処理装置6により回転制御されるが、データ処理装置6に角度情報をマニュアルで入力することにより任意の傾き角に回転制御することもできる。光検出器5は、迷光の光検出器への入射を防止するため薄膜干渉フィルタ4に密着して設置されている。光検出器5には、光電子増倍管あるいはCCD、フォトダイオードなどの半導体センサが用いられる。光検出器5がポイントセンサであるとき、試料2を2次元に移動させることにより、試料2の全体の情報を得ることができる。光検出器5が、例えば紙面垂直方向のリニアセンサであるとき、試料2を紙面上下方向に移動させることにより、試料2の全体の情報を得ることができる。また、光検出器が二次元光検出器の場合試料像を二次元検出器の上に結像することにより試料2の全体の情報を得ることが出来る。データ処理装置6は、光検出器5の出力を収集し、演算を加える。測定が自動的に行われるとき、データ処理装置6は、フィルタ回転機構8に対して、あるいは試料移動機構7およびフィルタ回転機構8に対して指令を発して、薄膜干渉フィルタ4の回転角制御や試料2の位置制御を行なう。データ処理装置6としては、市販のパーソナルコンピュータを利用することができる。
【0016】
図2に示した測定装置は、試料の透過光を観測するものであったが、図3には、試料からの反射光を観測する場合が示されている。この場合、光源1が、試料2の前面側に配置されるが、動作は図2に示した透過型の装置の場合と同様である。
図4、図5には、薄膜干渉フィルタ4が光源1と試料2との間に配置される例が示されている。図4の測定装置は透過型であり、図5の測定装置は反射型である。このように、試料2と薄膜干渉フィルタ4との配置位置を交換しても同様に測定を行なうことができる。
【0017】
図6に示す測定装置においては、傾き角度が少しずつ変化された薄膜干渉フィルタ41、42…4nが紙面垂直方向に配列されている。これらのフィルタは、半値幅が例えば10nmの場合、中心波長の間隔は5nm程度となるようになされている。各薄膜干渉フィルタ41、42…4n上には、それぞれ光検出器51、52…5nが搭載されている。図2〜図5に示した測定装置では、透過中心周波数を調整するために薄膜干渉フィルタ4は回転可能に設置されていたが、図6に示す例では個々の薄膜干渉フィルタの傾き角は固定されており、その内の最適のフィルタが選択されて使用される。薄膜干渉フィルタ41、42…4nは、データ処理装置6からの指示を受けるフィルタ選択手段8aにより紙面垂直方向に移動され、適切なフィルタが所定位置に配置されるようになっている。この制御は、光検出器の出力に従ってデータ処理装置6により自動的に行われるが、またデータ処理装置6に位置情報をマニュアルで入力することにより任意のフィルタを所定位置に選択配置することもできる。薄膜干渉フィルタ41、42…4nの位置を固定して、試料2側を移動させるようにしてもよい。
図6に示す測定装置は、透過型であったが、図7に示すように、反射型の測定装置において、傾き角度の異なる薄膜干渉フィルタ41、42…4nを設置し、適切なフィルタを選択するようにしてもよい。
【0018】
[フィルタの周波数調整]
次に、図2に示す測定装置において薄膜干渉フィルタ4の透過中心周波数の調整方法について説明する。フィルタの角度調整をマニュアルで行う場合、フィルタの傾き角度と透過中心周波数との関係は予め調べられてあり、既知である。試料の吸収のピーク波長が例えば波長分散素子を利用する別の分光装置を用いて測定される。そのピーク波長に薄膜干渉フィルタ4の透過中心周波数が合致するようにフィルタ4の角度調整を行う。すなわち、データ処理装置6にフィルタ4の所望の傾き角が入力され、その角度にフィルタ回転機構8により調整される。
【0019】
次に、薄膜干渉フィルタ4の透過中心周波数を試料の吸収のピーク波長に自動的に一致させる場合の方法について説明する。試料の吸収のピーク波長に薄膜干渉フィルタ4の透過中心周波数が一致するとき、後述される見かけの吸光度ODappが最大となる。したがって、見かけの吸光度ODappが最大となるようにフィルタの角度調整を行えば、試料の吸収のピーク波長に薄膜干渉フィルタ4の透過中心周波数を一致させることができる。
この場合、データ処理装置は、図8に示すアルゴリズムに従い、フィードバック制御を行なう。最初のステップS1では、時刻t0において見かけの吸光度ODapp(t0)が検出(算出)され、続くステップS2において、薄膜干渉フィルタ4を微小角度θ0回転させる。次のステップS3においてn=1に設定し、続くステップS4では、見かけの吸光度ODapp(tn)の検出が行われた後、見かけの吸光度の差分
ΔODapp=ODapp(tn)−ODapp(tn−1)
が正かどうかを判定し(ステップS5)、正であれば、前のステップと同じ方向に角度θn(=θn-1)フィルタを回転させ(ステップS6)、正でなければ、前のステップと逆方向に角度θn(=−θn-1)フィルタを回転させる(ステップS7)。その後、ステップS8において、今回の見かけの吸光度ODapp(tn)が前値ODapp(tn−1)と置き換えられ、ステップS9において、今回の回転角θnが前回転角θn−1と置き換えられる。そして、ステップS10においてnがインクリメントされた後、ステップS4に戻り、同様の過程が繰り返される。回転角度を徐々に小さくするために、ステップS6ないしステップS7での回転角度θnを例えばθn-1/n(または−θn-1/n)としてもよい。適当な時間経過後、制御は打ち切られる。
このようなアルゴリズムにより、見かけの吸光度ODappが最大となるように、換言すれば試料の吸収のピーク波長に薄膜干渉フィルタ4の透過中心周波数が一致するように、フィルタの角度調整を行うことができる。
【0020】
次に、図6に示す測定装置における薄膜干渉フィルタ41、42…4nの選択方法について説明する。フィルタの選択をマニュアルで行う場合、各フィルタと透過中心周波数との関係は予め調べられてあり、既知である。試料の吸収のピーク波長が例えば波長分散素子を利用する別の分光装置を用いて測定される。そのピーク波長に最も近い中心波長を有する薄膜干渉フィルタが選択される。すなわち、データ処理装置6に所望の薄膜干渉フィルタが所定位置に配置される位置データが入力され、そのフィルタがフィルタ選択手段8aにより所定位置に選択配置される。
また、フィルタの選択は次のように行なうこともできる。すなわち、薄膜干渉フィルタ41、42…4nを順次入れ換えて測定を行い、測定された光強度〔∫I(λ)dλ〕が最小となるか、または、見かけの吸光度ODappが最大となる薄膜干渉フィルタを選択する。
また、図8に示したフローと同様のアルゴリズムを用いれば、試料の吸収ピーク波長に中心周波数が最も近いフィルタを自動的に選択することができる。
【0021】
[見かけの吸光度の検出]
吸収スペクトルおよびTFIFの透過特性を以下の式を用いて近似し、図2〜図7の装置で検出される見かけの吸光度を見積もる。
目的としている物質の吸収スペクトルの形を、Lorentz関数で式(3)のように近似し、ピーク値を1に規格化する。
【0022】
【数3】
ここに
λ;波長(nm)
λ0,A;吸収ピーク波長(nm)
OD(λ);吸光度(ピーク値を1とする)
ΓA;吸収スペクトルの半値幅
c;物質の濃度
d;試料の光路長
次に、フィルタの透過特性をGauss関数で式(4)のように近似し、ピーク値を1に規格化する。
【0023】
【数4】
ここに
I0(λ);透過光強度
λ0,F;フィルタの透過光の中心波長(nm)
ΓF;フィルタの透過特性の半値幅
物質による光の吸収はLambert-Beerの法則で表されるとする。物質に吸収されずに透過する光の強度I(λ)は、式(5)となる。
【0024】
【数5】
図2〜図7の装置において得られる、見かけの吸光度ODappは、検出器に入射する光量を用い、次の式(6)で表される。
【0025】
【数6】
【0026】
[従来例と本発明により得られる特性の比較]
従来例と本発明とにより得られる結果の違いを明らかにするために、次のフィルタを用いてそれぞれ測定を行なう。
従来例において用いられるフィルタ:透過光ピーク波長〜500nm(固定)、ピーク波長での透過率〜1、半値幅〜50nmのBPF
本発明において用いられるフィルタ:透過光ピーク波長はフィルタの傾き角に依存して式(2)で表され、それぞれのピーク波長での透過率は1に規格化された、半値幅〜10nmのTFIF
また、試料の反応前の吸収スペクトルは、下記(c)(ロ)の場合を除き、吸収ピーク波長〜500nm、半値幅〜10nmとする。
【0027】
(a)吸収スペクトルの形および位置は変化せず、吸光度のみが減少する場合(図9、図10)
試料の吸光度が、OD(λ0=500nm)=1(反応前) → OD(λ0=500nm)=0.9(反応後)と変化したものとすると、BPFを用いた場合のフィルタの透過光強度I0および反応前後の試料透過光強度Iは、図9に示すようになり、これによりODapp(before)とODapp (after)が求められ、ΔODappと変化率ΔODapp / ODapp(before)が下記のように算出される。
【0028】
【数7】
【0029】
【数8】
一方、上記のTFIFを用いた場合のフィルタの透過光強度I0および反応前後の試料透過光強度Iは、図10に示すようになり、これによりODapp(before)とODapp (after)が求められ、ΔODappと変化率ΔODapp / ODapp(before)が下記のように算出される。
【0030】
【数9】
【0031】
【数10】
TFIFを用いることにより、変化量ΔODapp/ODappは、0.09と0.1(1-0.9)に近い値となっており、また検出感度は、ΔODapp(TFIF) /ΔODapp(BPF)=0.058/0.013=4.5と高くなっている。
【0032】
(b)反応によりバックグラウンドが変化した場合(図11、図12)
波長依存性がないバックグラウンドが吸光度に換算して0.1増加し、吸光度は1のまま変化しないとする。上記のBPFとTFIFを用いた場合の反応後の試料透過光強度Iは、それぞれ図11において実線と点線で示すようになり、それぞれの場合の誤差ΔODapp/ ODappは下記のように求められる。
(BPFの場合)
【0033】
【数11】
(TFIFの場合)
【0034】
【数12】
すなわち、反応によりBack Groundが変化(吸光度で0.1増加)すると、誤差はBPFでは56%、TFIFでは15%となる。
【0035】
次に、図12に示すように、TFIFの角度を調整し中心波長を吸光度が十分低くなる530nmとして吸光度を測定、そこで得られたI0、Iより求められたODapp(=0.1285)を近似的にBase Line(試料の吸光度が0)とする。これにより補正を行うと、
【0036】
【数13】
となる。すなわち、反応によりバックグラウンドが変化(吸光度で0.1増加)しても、TFIFを用いベースライン補正を行うと4.5%の誤差に収まる。
【0037】
(c)吸収スペクトルの形は変わらず、ピークは赤方移動、吸光度が減少する場合(図13〜図16)
(イ)反応前の吸収極大が、BPFの透過極大と一致しており、反応後の吸収極大(λ0)の波長が500nm→510nmと遷移し、吸光度OD(λ0)が 1→0.9と変化した場合の特性を図13に示す。
ΔODapp=0.1795−0.1498=0.0297
が得られ、変化量が次のように求められる。
【0038】
【数14】
(ロ)反応後の吸収極大(λ0)の波長が490nm→500nmと遷移し、吸光度OD(λ0)が 1→0.9と変化し、反応後の吸収極大が、BPFの透過極大と一致する場合の特性を図14に示す。
ΔODapp=0.1617−0.1663=−0.046
が得られ、この場合の変化量が次のように求められる。
【0039】
【数15】
この場合のように、従来の測定方法では被測定物質の吸収極大とフィルタの透過特性の組み合わせにより、誤った結果を与えることがある。
(ハ)反応後の吸収極大(λ0)の波長が500nm→510nmと遷移し、吸光度OD(λ0)が 1→0.9と変化し、TFIFの角度を変えず(透過ピーク波長;500nmに固定)に測定した場合の特性を図15に示す。
ΔODapp=0.6404−0.2099=0.4305
が得られ、この場合の変化量が次のように求められる。
【0040】
【数16】
この場合、得られた値は期待値(0.1)から大きくずれている。
(ニ)反応後の吸収極大(λ0)の波長が500nm→510nmと遷移し、吸光度OD(λ0)が 1→0.9と変化し、TFIFの角度を透過ピーク波長に調整して測定した場合の特性を図16に示す。
ΔODapp=0.6404−0.5828=0.0576
が得られ、この場合の変化量が次のように求められる。
【0041】
【数17】
得られた値は0.1に近く、本発明により高い精度の測定が可能であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の測定装置に用いられる薄膜干渉フィルタ(TFIF)の断面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態の測定装置の概略図。
【図3】本発明の第2の実施の形態の測定装置の概略図。
【図4】本発明の第3の実施の形態の測定装置の概略図。
【図5】本発明の第4の実施の形態の測定装置の概略図。
【図6】本発明の第5の実施の形態の測定装置の概略図。
【図7】本発明の第6の実施の形態の測定装置の概略図。
【図8】本発明の第1の実施の形態の測定装置において自動的にフィルタの角度を調整する場合のアルゴリズムを示す流れ図。
【図9】反応により吸光度が減少した場合の中心周波数固定のBPFを用いて測定した特性曲線図。
【図10】反応により吸光度が減少した場合のTFIFを用いて測定した特性曲線図。
【図11】反応によりバックグラウンドが増加した場合のBPFおよびTFIFを用いて測定した特性曲線図。
【図12】反応によりバックグラウンドが増加した場合の本発明の補正方法を説明するための特性曲線図。
【図13】反応により吸収ピークが赤方に移動した場合の、中心周波数が固定したBPFを用いて測定した特性曲線図(その1)。
【図14】反応により吸収ピークが赤方に移動した場合の、中心周波数が固定したBPFを用いて測定した特性曲線図(その2)。
【図15】反応により吸収ピークが赤方に移動した場合の周波数調整を行うことなくTFIFを用いて測定した特性曲線図。
【図16】反応により吸収ピークが赤方に移動した場合の、TFIFの中心波長を試料の吸収ピークに合わせて測定した特性曲線図。
【図17】従来の測定装置の概略図。
【図18】従来の測定装置用いられたカラーフィルタの特性図。
【符号の説明】
【0043】
1 光源
2 試料
2a キャリア
2b 試薬
3 結像光学系
4、41、42〜4n 薄膜干渉フィルタ(TFIF)
4a 半透鏡
4b 薄膜
5 光検出器
6 データ処理装置
7 試料移動機構
8 フィルタ回転機構
8a フィルタ選択手段
10 蒸気暴露装置
11 センサプレート
12 金属ポルフィリン
13 透明窓
14 反応セル
15 スキャナ
16 溶液
17 バブラー
18、19、20 給気管
21 排気管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、該光源の出射光が照射される試薬が搭載された試薬キャリアを保持するキャリアホルダーと、前記試薬を透過または反射した光が入射される薄膜干渉フィルタと、前記薄膜干渉フィルタを透過した光を検出する光検出器と、前記光検出器の出力を処理する信号処理手段と、前記薄膜干渉フィルタに入射する光の入射角を可変するための、前記薄膜干渉フィルタを回転させる回転機構と、を備えたスペクトル測定装置。
【請求項2】
光源と、該光源の出射光が入射される薄膜干渉フィルタと、前記薄膜干渉フィルタの透過光が照射される、試薬が搭載された試薬キャリアを保持するキャリアホルダーと、前記試薬を透過または反射した光を検出する光検出器と、前記光検出器の出力を処理する信号処理手段と、前記薄膜干渉フィルタに入射する光の入射角を可変するための、前記薄膜干渉フィルタを回転させる回転機構と、を備えたスペクトル測定装置。
【請求項3】
光源と、該光源の出射光が照射される試薬が搭載された試薬キャリアを保持するキャリアホルダーと、前記試薬を透過または反射した光が入射される複数の薄膜干渉フィルタと、各薄膜干渉フィルタ毎に備えられた、各薄膜干渉フィルタを透過した光を検出する光検出器と、前記光検出器の出力を処理する信号処理手段と、を備え、前記複数の薄膜干渉フィルタは入射する光の入射角が互いに異なるように互いに異なる角度に傾けられて設置されており、いずれかの薄膜干渉フィルタと光検出器の組を選択して使用することが可能であることを特徴とするスペクトル測定装置。
【請求項4】
光源と、該光源の出射光が入射される複数の薄膜干渉フィルタと、前記薄膜干渉フィルタの透過光が照射される、試薬が搭載された試薬キャリアを保持するキャリアホルダーと、前記試薬を透過または反射した光を検出する光検出器と、前記光検出器の出力を処理する信号処理手段と、を備え、前記複数の薄膜干渉フィルタは入射する光の入射角が互いに異なるように互いに異なる角度に傾けられて設置されており、いずれかの薄膜干渉フィルタを選択して使用することが可能であることを特徴とするスペクトル測定装置。
【請求項5】
前記光検出器が、ライン状に光情報を検出可能なリニアセンサであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のスペクトル測定装置。
【請求項6】
前記キャリアホルダーは、前記試薬キャリアをそのキャリアの主面に平行に移動させるように、1次元ないし2次元方向に移動可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のスペクトル測定装置。
【請求項7】
前記光検出器の検出値に基づいて前記薄膜干渉フィルタの角度を制御する機構または前記複数の薄膜干渉フィルタの中からいずれかの薄膜干渉フィルタを選択する機構が備えられていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のスペクトル測定装置。
【請求項8】
前記試薬を透過または反射した光のスペクトルのピーク(負側にピークである場合を含む)となる波長と、前記薄膜干渉フィルタの透過光の中心波長が近づくように、前記薄膜干渉フィルタの角度を制御するか薄膜干渉フィルタを選択することを特徴とする請求項7に記載のスペクトル測定装置。
【請求項9】
試薬キャリアに搭載された試薬に光を照射し、その透過光または反射光を薄膜干渉フィルタを介して光検出器により検出するスペクトル測定方法であって、前記試薬を透過または反射した光のスペクトルのピーク(負側にピークである場合を含む)となる波長と、前記薄膜干渉フィルタの透過光の中心波長が一致するように前記薄膜干渉フィルタへの光入射角度を制御することを特徴とするスペクトル測定方法。
【請求項10】
試薬キャリアに搭載された試薬に、薄膜干渉フィルタを介して光を照射し、その透過光または反射光を、光検出器により検出するスペクトル測定方法であって、前記試薬を透過または反射した光のスペクトルのピーク(負側にピークである場合を含む)となる波長と、前記薄膜干渉フィルタの透過光の中心波長が一致するように前記薄膜干渉フィルタへの光入射角度を制御することを特徴とするスペクトル測定方法。
【請求項11】
前記薄膜干渉フィルタへの光入射角度の制御が自動的に行われることを特徴とする請求項9または10に記載のスペクトル測定方法。
【請求項12】
前記薄膜干渉フィルタへの光入射角度の制御は、前記薄膜干渉フィルタを回転させることによって行われることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載のスペクトル測定方法。
【請求項13】
前記薄膜干渉フィルタへの光入射角度の制御は、傾き角が異なって設けられた複数の薄膜干渉フィルタの中からいずれか一つを選択することによって行われることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載のスペクトル測定方法。
【請求項14】
試薬での吸光度を無視できる波長において測定を行い、そこで得られた測定値によって、前記薄膜干渉フィルタの透過光の中心波長を前記試薬の透過または反射光のスペクトルのピーク波長と一致ないし概略一致させた測定値を補正することを特徴とする請求項9から13のいずれかに記載のスペクトル測定方法。
【請求項1】
光源と、該光源の出射光が照射される試薬が搭載された試薬キャリアを保持するキャリアホルダーと、前記試薬を透過または反射した光が入射される薄膜干渉フィルタと、前記薄膜干渉フィルタを透過した光を検出する光検出器と、前記光検出器の出力を処理する信号処理手段と、前記薄膜干渉フィルタに入射する光の入射角を可変するための、前記薄膜干渉フィルタを回転させる回転機構と、を備えたスペクトル測定装置。
【請求項2】
光源と、該光源の出射光が入射される薄膜干渉フィルタと、前記薄膜干渉フィルタの透過光が照射される、試薬が搭載された試薬キャリアを保持するキャリアホルダーと、前記試薬を透過または反射した光を検出する光検出器と、前記光検出器の出力を処理する信号処理手段と、前記薄膜干渉フィルタに入射する光の入射角を可変するための、前記薄膜干渉フィルタを回転させる回転機構と、を備えたスペクトル測定装置。
【請求項3】
光源と、該光源の出射光が照射される試薬が搭載された試薬キャリアを保持するキャリアホルダーと、前記試薬を透過または反射した光が入射される複数の薄膜干渉フィルタと、各薄膜干渉フィルタ毎に備えられた、各薄膜干渉フィルタを透過した光を検出する光検出器と、前記光検出器の出力を処理する信号処理手段と、を備え、前記複数の薄膜干渉フィルタは入射する光の入射角が互いに異なるように互いに異なる角度に傾けられて設置されており、いずれかの薄膜干渉フィルタと光検出器の組を選択して使用することが可能であることを特徴とするスペクトル測定装置。
【請求項4】
光源と、該光源の出射光が入射される複数の薄膜干渉フィルタと、前記薄膜干渉フィルタの透過光が照射される、試薬が搭載された試薬キャリアを保持するキャリアホルダーと、前記試薬を透過または反射した光を検出する光検出器と、前記光検出器の出力を処理する信号処理手段と、を備え、前記複数の薄膜干渉フィルタは入射する光の入射角が互いに異なるように互いに異なる角度に傾けられて設置されており、いずれかの薄膜干渉フィルタを選択して使用することが可能であることを特徴とするスペクトル測定装置。
【請求項5】
前記光検出器が、ライン状に光情報を検出可能なリニアセンサであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のスペクトル測定装置。
【請求項6】
前記キャリアホルダーは、前記試薬キャリアをそのキャリアの主面に平行に移動させるように、1次元ないし2次元方向に移動可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のスペクトル測定装置。
【請求項7】
前記光検出器の検出値に基づいて前記薄膜干渉フィルタの角度を制御する機構または前記複数の薄膜干渉フィルタの中からいずれかの薄膜干渉フィルタを選択する機構が備えられていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のスペクトル測定装置。
【請求項8】
前記試薬を透過または反射した光のスペクトルのピーク(負側にピークである場合を含む)となる波長と、前記薄膜干渉フィルタの透過光の中心波長が近づくように、前記薄膜干渉フィルタの角度を制御するか薄膜干渉フィルタを選択することを特徴とする請求項7に記載のスペクトル測定装置。
【請求項9】
試薬キャリアに搭載された試薬に光を照射し、その透過光または反射光を薄膜干渉フィルタを介して光検出器により検出するスペクトル測定方法であって、前記試薬を透過または反射した光のスペクトルのピーク(負側にピークである場合を含む)となる波長と、前記薄膜干渉フィルタの透過光の中心波長が一致するように前記薄膜干渉フィルタへの光入射角度を制御することを特徴とするスペクトル測定方法。
【請求項10】
試薬キャリアに搭載された試薬に、薄膜干渉フィルタを介して光を照射し、その透過光または反射光を、光検出器により検出するスペクトル測定方法であって、前記試薬を透過または反射した光のスペクトルのピーク(負側にピークである場合を含む)となる波長と、前記薄膜干渉フィルタの透過光の中心波長が一致するように前記薄膜干渉フィルタへの光入射角度を制御することを特徴とするスペクトル測定方法。
【請求項11】
前記薄膜干渉フィルタへの光入射角度の制御が自動的に行われることを特徴とする請求項9または10に記載のスペクトル測定方法。
【請求項12】
前記薄膜干渉フィルタへの光入射角度の制御は、前記薄膜干渉フィルタを回転させることによって行われることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載のスペクトル測定方法。
【請求項13】
前記薄膜干渉フィルタへの光入射角度の制御は、傾き角が異なって設けられた複数の薄膜干渉フィルタの中からいずれか一つを選択することによって行われることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載のスペクトル測定方法。
【請求項14】
試薬での吸光度を無視できる波長において測定を行い、そこで得られた測定値によって、前記薄膜干渉フィルタの透過光の中心波長を前記試薬の透過または反射光のスペクトルのピーク波長と一致ないし概略一致させた測定値を補正することを特徴とする請求項9から13のいずれかに記載のスペクトル測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−3045(P2008−3045A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175347(P2006−175347)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(502177369)財団法人濱野生命科学研究財団 (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(502177369)財団法人濱野生命科学研究財団 (14)
【Fターム(参考)】
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