説明

スライドレール、アクチュエータ

【課題】コンパクト化を実現したスライドレールと、このスライドレールを備えるアクチュエータを提供する。
【解決手段】スライドレール10は、固定部材に取り付けられる固定側レール11と、固定部材に対してスライド移動する移動部材に取り付けられる移動側レール12と、固定側レール11及び移動側レール12のそれぞれに設けられた転動体転走面11b,12bの転走面間に転動自在に介装される複数の転動体13と、複数の転動体13を転走面間内で転動自在に保持する転動体保持器14と、を備えており、端面側から見た場合の外郭形状が円弧形状を含んで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドレール及びアクチュエータに係り、特に、端面側から見た場合の外郭形状が円弧形状を含んで構成されているスライドレールと、このスライドレールを備えるアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、取付部の長手方向に沿って一対のボール転走部を曲げ起こしてチャネル状に形成されたアウターレールと、このアウターレールよりも一回り小さく形成され、やはり一対のボール転走部を曲げ起こしてチャネル状に形成されたインナーレールと、これらアウターレールのボール転走部の内側とインナーレールのボール転走部の外側を転走する多数のボールと、上記アウターレールとインナーレールとの間でボールを所定の間隔で整列させるリテーナとから構成されたスライドレールが知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。この種のスライドレールでは、上記インナーレールがボールを介してアウターレールの内側に嵌合していることから、インナーレールをアウターレールに収納された状態から自在に引き出すことが可能であり、インナーレールの引き出しに伴って上記リテーナがボールを保持しながらアウターレール内を移動するようになっている。
【0003】
また、上述したようなスライドレールに対して、スライド移動のための移動力を発生させる移動力発生手段を付与したものが知られている。例えば、下記特許文献2には、移動力発生手段にリニアモータを用い、このリニアモータとスライドレールとを組み合わせることで、自動引き戸を構成した技術が開示されている。下記特許文献2に記載された技術によれば、ドアの駆動源にはリニアモータが採用される一方、リニアモータの固定子が取り付けられるレール取付部材には、スライドレールの移動側メンバーが吊り金具を介して連結されている。そして、リニアモータの可動子とドアとを機械的に連結することで、ドアを開閉方向に移動自在とした自動引き戸が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−187633号公報
【特許文献2】特開2004−131993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上掲した特許文献1に開示のスライドレールに代表されるように、従来のスライドレールは、端面側から見た場合の外郭形状が平板形状で形成されるものであった。かかる形状のスライドレールの場合、断面二次モーメントの数値を向上させるには、スライドレールの高さ寸法を大きくすることが必要であった。しかしながら、スライドレールの高さ寸法を大きくすることは、設置領域を大きく取らなければならなくなるため、例えば、省スペース化が求められるような設置箇所の場合には制約がある。したがって、従来技術に係るスライドレールには、単位体積当たりの断面二次モーメントの向上に限界があった。
【0006】
また、上掲した特許文献2に示すような、リニアモータとスライドレールとを組み合わせる場合の従来技術は、単にリニアモータとスライドレールとを外的に組み合わせたものに過ぎず、その外形寸法は必然的に大きくならざるを得ないものであった。また、リニアモータとスライドレールとを一体化することで、コンパクト化を実現した技術は、これまで提供されてこなかった。したがって、特に省スペース化を要求される箇所には、移動力発生手段を備えるスライドレールを設置することが困難であった。
【0007】
本発明は、上述した従来技術が有する問題の存在に鑑みて成されたものであって、その目的は、移動力発生手段を備えるスライドレールにおいて、コンパクト化を実現することで単位体積当たりの断面二次モーメントの数値が向上するとともに、省スペース化を要求される箇所に設置可能な従来にはない全く新しいスライドレールを提供するとともに、このスライドレールを備えるアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るスライドレールは、固定部材に取り付けられる固定側レールと、前記固定部材に対してスライド移動する移動部材に取り付けられる移動側レールと、前記固定側レール及び前記移動側レールのそれぞれに設けられた転動体転走面の転走面間に転動自在に介装される複数の転動体と、前記複数の転動体を前記転走面間内で転動自在に保持する転動体保持器と、を備え、端面側から見た場合の外郭形状が円弧形状を含んで構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明に係るアクチュエータは、端面側から見た場合の外郭形状に円弧形状を含む固定部材と、端面側から見た場合の外郭形状に円弧形状を含むとともに、前記固定部材に対してスライド移動する移動部材と、前記固定部材と前記移動部材の間に設置される上記のスライドレールと、を備え、前記スライドレールが、対向配置される前記固定部材の円弧形状と前記移動部材の円弧形状との対向円弧面間に設置されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るスライドレール及びアクチュエータによれば、コンパクト化を実現することで単位体積当たりの断面二次モーメントの数値が向上するとともに、省スペース化を要求される箇所に設置可能な従来にはない全く新しいスライドレールと、このスライドレールを備えたアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係るスライドレールの外観形状を示した外観斜視図である。
【図2】本実施形態に係るスライドレールの外郭形状を示すために、スライドレールを端面側から見た場合の正面図である。
【図3】本実施形態に係るスライドレールの平面図である。
【図4】本実施形態に係るスライドレールのスライド方向に対して縦方向に直交する断面で見た場合の縦断面であり、特に、図3中に示されるIV−IV断面を示している。
【図5】本実施形態に係るスライドレールを構成する部品を示す図であり、固定側レールを示している。
【図6】本実施形態に係るスライドレールを構成する部品を示す図であり、移動側レールを示している。
【図7】本実施形態に係るスライドレールを構成する部品を示す図であり、複数のボールとこれら複数のボールを整列させるリテーナとを示している。
【図8】本実施形態に係るスライドレールを構成する部品を示す図であり、固定側レールに設置される磁気回路ユニットを示している。
【図9】本実施形態に係るスライドレールを構成する部品を示す図であり、コイルの設置された移動側レールを示している。
【図10】実施例1に係るアクチュエータを示した外観斜視図であり、アクチュエータが動作前である初期状態を示す図である。
【図11】実施例1に係るアクチュエータを示した外観斜視図であり、アクチュエータの動作後の状態を示す図である。
【図12】実施例1に係るアクチュエータにおける移動側レールの取付状態を示した図である。
【図13】実施例1に係るアクチュエータにおける固定側レールの取付状態を示した図である。
【図14】実施例2に係るアクチュエータを示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、本実施形態に係るスライドレールの外観形状を示した外観斜視図である。また、図2は、本実施形態に係るスライドレールの外郭形状を示すために、スライドレールを端面側から見た場合の正面図である。さらに、図3は、本実施形態に係るスライドレールの平面図であり、また、図4は、本実施形態に係るスライドレールのスライド方向に対して縦方向に直交する断面で見た場合の縦断面であり、特に、図3中に示されるIV−IV断面を示している。またさらに、図5〜図9は、本実施形態に係るスライドレールを構成する部品を示す図であり、図5が固定側レールを、図6が移動側レールを、図7が複数のボールとこれら複数のボールを整列させるリテーナと、図8が固定側レールに設置される磁気回路ユニットを、図9がコイルの設置された移動側レールを示している。
【0014】
本実施形態に係るスライドレール10は、固定側レール11と、移動側レール12と、複数の転動体である複数のボール13と、転動体保持器であるリテーナ14と、移動力発生手段15と、を備えて構成されている。
【0015】
図5に示される固定側レール11は、固定部材に取り付けられる部材であり、端面側から見た場合の外郭形状が円弧形状11aを含んで構成されている。また、固定側レール11は、円弧形状11aの両端から立設される一対の転動体転走面11b,11bを備えている。さらに、固定側レール11は、後述する移動力発生手段15の一部を固定設置するための固定孔11cを備えている。なお、本実施形態に係る固定側レール11は、弾性力のある金属板を加工して形成されている。
【0016】
図6に示される移動側レール12は、固定部材に対してスライド移動する移動部材に取り付けられる部材であり、前述した固定側レール11と同様に、端面側から見た場合の外郭形状が円弧形状12aを含んで構成されている。また、移動側レール12は、円弧形状12aの両端から立設される一対の転動体転走面12b,12bを備えている。さらに、移動側レール12は、後述する移動力発生手段15の一部を固定設置するための固定孔12cを備えている。なお、本実施形態に係る移動側レール12についても、弾性力のある金属板を加工することで形成されている。
【0017】
図7には、複数の転動体である複数のボール13と、転動体保持器であるリテーナ14が描かれている。本実施形態に係るボール13は、固定側レール11及び移動側レール12のそれぞれに設けられた転動体転走面11b,12bの転走面間に転動自在に介装される部材である。本実施形態の固定側レール11及び移動側レール12は、転動体転走面11b,12bをそれぞれ一対ずつ備えているので、固定側レール11の転動体転走面11bと、移動側レール12の転動体転走面12bとが対向配置されて形成される転走面間は、2列のボール通路として形成されている。したがって、本実施形態に係る複数のボール13は、スライドレール10に組み込まれた状態において、2つのボール列となるように構成されている。なお、本実施形態の場合には、2列のボール通路のそれぞれに2個ずつ、合計4個のボール13が設置されている。
【0018】
これら複数のボール13を転走面間内で転動自在に保持するのが、本発明に係る転動体保持器として構成されるリテーナ14である。本実施形態に係るリテーナ14は、2列のボール通路内のそれぞれに配置される2枚のボール保持板14a,14aと、これら2枚のボール保持板14a,14aを接続する接続板14bとで構成されており、これら2枚のボール保持板14a,14aと接続板14bとは、一部材として一体的に構成されている。2枚のボール保持板14a,14aのそれぞれには、ボール13の安定的な保持とスムーズな転動動作を実現するために、ボール13を配置するための開口部14aと、この開口部14aにボール13を転動自在な状態で安定して保持するためのボール保持爪14aとが形成されている。なお、1つの開口部14aには、2つのボール保持爪14aが形成されている。さらに、2枚のボール保持板14a,14aを接続する接続板14bは、端面側から見た場合の外郭形状が円弧形状で形成されている。この接続板14bは、固定側レール11の円弧形状11aと、移動側レール12の円弧形状12aとが対向して配置される箇所の間に存在する隙間に配置されるので、接続板14bの円弧形状の作用により、固定側レール11に対する移動側レール12の相対的なスライド移動が接続板14bによって阻害されることはない。また、本実施形態に係るリテーナ14では、2枚のボール保持板14a,14aと、これら2枚のボール保持板14a,14aを接続する接続板14bが、一部材として一体的に構成されているので、2列のボール通路内にそれぞれ配置されるボール13が各列内で同じ状態となるように保持されることとなる。したがって、本実施形態に係るリテーナ14によれば、2列のボール通路内のそれぞれに配置される2つのボール列が同一条件で保持され、かつ転動するので、固定側レール11に対する移動側レール12の相対的なスライド移動を安定して実現することが可能となっている。
【0019】
図8及び図9には、本実施形態に係る移動力発生手段15の構成部材が示されており、図8には固定側レール11に設置される磁気回路ユニット16が、図9には移動側レール12に設置されたコイル18が示されている。なお、本実施形態に係る移動力発生手段15は、磁気回路ユニット16とコイル18とを組み合わせることで実現されるリニアモータとして構成されるものである。以下、本実施形態に係る移動力発生手段15について説明する。
【0020】
図9に示されるコイル18は、スライド方向に対して縦方向に直交する断面で見た場合の縦断面形状が円弧形状を含む形状にて構成されており、より具体的には、端面側から見た場合の外郭形状が中空楕円形を円弧状に折り曲げた形状で構成されている(図4参照。)。さらに、本実施形態に係るコイル18の形状は、移動側レール12が含む円弧形状12aに沿った円弧形状18aと、この円弧形状18aに対向配置される円弧形状18bと、2つの円弧形状18a,18bを接続する接続部18c,18cとを有して構成されている(図4及び図9等参照。)。これら2つの円弧形状18a,18bと接続部18c,18cとで構成されるコイル18は、銅線を巻き回すことで一部材として形成されている。また、2つの円弧形状18a,18bと接続部18c,18cとで囲まれた範囲は、貫通孔18dとして形成されている。なお、コイル18が含む円弧形状18a,18bと、移動側レール12が含む円弧形状12aとは、それぞれが異心同径、同心異径、もしくは異心異径の円弧として設計されている。本実施形態に係るコイル18は、移動側レール12に形成された固定孔12cに対して取り付けられている。
【0021】
一方、図8で示される磁気回路ユニット16は、コイル18の貫通孔18dを貫通する断面円弧形状のセンターヨーク16aと、コイル18の円弧形状18bの外部側(すなわち、移動側レール12の反対側)に配置される断面円弧形状のアウターヨーク16bと、センターヨーク16aとアウターヨーク16bをコイル18の移動範囲の両端で接続するサイドヨーク16c,16cと、アウターヨーク16bのコイル18に対向する面に備えられ、スライド方向に対して縦方向に直交する断面で見た場合の縦断面形状が、円弧形状を含んで構成される永久磁石17と、を有して構成されている。センターヨーク16a、アウターヨーク16b及び永久磁石17がそれぞれ備える円弧形状についても、移動側レール12が含む円弧形状12aやコイル18が含む円弧形状、さらには固定側レール11が含む円弧形状11aと異心同径、同心異径、もしくは異心異径の円弧として設計されている。
【0022】
また、図8における紙面奥側のサイドヨーク16cは、センターヨーク16aの一端側を折り曲げることで形成されており、センターヨーク16a、サイドヨーク16c及びアウターヨーク16bのその他の接続箇所は、凹凸形状を嵌め込むことで、各部材の接続が行われている。また、本実施形態に係るアウターヨーク16bは、固定側レール11に形成された固定孔11cを用いて取り付けられている。
【0023】
なお、本実施形態に係るコイル18は、円形断面の銅線を巻き回すことで形成されているが、銅線の面積当たりの充填率を高めるために、角型断面の銅線を用いてもよい。さらに、本実施形態に係る永久磁石17については、ネオジウムなどの希土類からなる磁石など、残留磁束密度などの磁気特性の優れた磁石を用いることが望ましいが、酸化鉄を主原料とするフェライト磁石などを用いてもよい。また、永久磁石17は、その厚み方向に着磁されている。一方、センターヨーク16a、アウターヨーク16b及びサイドヨーク16cは、純鉄などの電磁軟鉄材料を用いるのが好適である。また、各ヨーク16a,16b,16cには、防錆のためにメッキを施すことが望ましい。
【0024】
図8で示される磁気回路ユニット16が備える永久磁石17に対して、図9で示されるコイル18が磁気的空隙を介して永久磁石17と対向するように配置されることで、移動力発生手段15としてのリニアモータが構成されている。このリニアモータについても、端面側から見た場合の外郭形状は、対向配置される磁気回路ユニット16とコイル18がそれぞれ備える2つの円弧形状(特に、アウターヨーク16bとコイル18の円弧形状)によって形成される扇面形状として構成されている(図4参照。)。
【0025】
そして、このリニアモータは、固定側レール11と移動側レール12との間に設置されることで、固定側レール11に対する移動側レール12の長手方向での相対的なスライド移動のための移動力を発生させることが可能となっている。この移動力の発生機構をより具体的に説明すると、本実施形態に係る移動力発生手段15としてのリニアモータでは、コイル18に直流電流を流し、この直流電流と磁気回路ユニット16が発生する磁界とが相互作用を行うことにより、磁気回路ユニット16に対してコイル18に推力が発生し、コイル18と磁気回路ユニット16との相対的なスライド移動が可能となっている。つまり、以上説明した構成部材により、図1〜図4に示すスライドレール10が構成されており、本実施形態に係る移動力発生手段15としてのリニアモータの作用によって、固定側レール11に対する移動側レール12の長手方向での相対的なスライド移動が実現されている。
【0026】
そして、本実施形態に係るスライドレール10では、上述したように、各構成部材が異心同径、同心異径、もしくは異心異径の円弧として設計された円弧形状(11a,12a,18a,18b等)を含んでいるので、スライドレール10の外郭形状は、端面側から見た場合において、図2に示すように扇面形状として構成されている。この扇面形状は、対向配置される2つの円弧形状、すなわち、固定側レール11の円弧形状11aと、移動側レール12の円弧形状12aとによって形成されている。なお、扇面形状を構成する2つの円弧形状11a,12aについては、円周方向中央部の間隔が円周方向両端部の間隔と同じかより小さくなるように構成することができる。また、本実施形態に係るスライドレール10では、固定側レール11の円弧形状11aと、移動側レール12の円弧形状12aとの間に、円弧形状を含んで構成される磁気回路ユニット16及びコイル18が収納されているので、スライドレール10全体として非常にコンパクトな外郭形状を有して構成されている。
【0027】
上述した構成を有する本実施形態に係るスライドレール10によれば、例えば、固定側レール11が取り付けられる固定部材や、移動側レール12が取り付けられる移動部材が、円筒形状あるいは円筒形状を含む形状の場合に、これら固定部材や移動部材にスペース効率良くスライドレール10を設置することができるので、アクチュエータ全体としての構成のコンパクト化を図ることができる。
【0028】
また、本実施形態に係るスライドレール10は、端面側から見た場合に扇面形状として構成されており、かつ、スライドレール10の最外郭を構成する固定側レール11と移動側レール12についても、端面側から見た場合の外郭形状が円弧形状を含んで構成されている。かかる構成は、半径方向での断面二次モーメントが大きいという有意な作用効果を発揮するものであるので、この半径方向に加わる大きな荷重に対して十分な耐性を備えたスライドレール10、及びこのスライドレール10を備えたアクチュエータを実現することが可能となっている。
【0029】
さらに、固定側レール11の円弧形状11aと移動側レール12の円弧形状12aとは、その円弧形状の作用によって撓み変形することが可能となっているので、例えば、加工誤差の存在によってボール13に対する多大な予圧が発生することを好適に防止することが可能である。またさらに、例えば、外部から荷重が加わった際には、上記撓み変形が好適に作用するので、本実施形態に係るスライドレール10は、外力に対して高い耐性を備えた装置であるということができる。
【0030】
なお、上述した本実施形態では、図5にて示したレール部材を固定側レール11とし、図6にて示したレール部材を移動側レール12として説明したが、これは説明の便宜のために選択されたものであり、図5で示したレール部材を移動側レールとし、図6で示したレール部材を固定側レールとしてもよい。また、スライドレールを端面側から見た場合の外郭形状である扇面形状について、上述した本実施形態では、移動側レール12の側が扇面形状の外周側(すなわち、大径側)となるように曲げられた形状であったが、扇面形状の曲げ方向と固定側/移動側の設定については、どちらのパターンであってもよい。さらに、上述した実施形態では、図5にて示した固定側レール11の側に磁気回路ユニット16が設置され、図6にて示した移動側レール12の側にコイル18が設置された場合を例示して説明したが、これらの取付関係については逆であってもよく、固定側レールの側にコイルを設置し、移動側レールの側に磁気回路ユニットを設置する構成を採用してもよい。すなわち、本発明に係るスライドレールにおいては、永久磁石が固定側レール及び移動側レールのいずれか一方に設置されるとともに、コイルが固定側レール及び移動側レールのいずれか他方に設置される構成を採用することができる。
【実施例1】
【0031】
以上、本実施形態に係るスライドレール10の具体的な構成を説明したが、このスライドレール10を組み込むことで、スライド移動動作を行うことのできるアクチュエータを実現することができる。そこで、図10〜図13を用いて、実施例1に係るアクチュエータを説明する。
【0032】
ここで、図10は、実施例1に係るアクチュエータを示した外観斜視図であり、アクチュエータが動作前である初期状態を示す図である。また、図11は、実施例1に係るアクチュエータを示した外観斜視図であり、アクチュエータの動作後の状態を示す図である。さらに、図12は、実施例1に係るアクチュエータにおける移動側レールの取付状態を示した図であり、図13は、実施例1に係るアクチュエータにおける固定側レールの取付状態を示した図である。
【0033】
実施例1に係るアクチュエータ30は、基準となるベース部材31と、このベース部材31に対して固定設置された固定部材としての固定環32と、固定部材である固定環32に対してスライド移動する移動部材としての移動環33と、を備えており、さらに、対向配置される固定環32の円弧形状と移動環33の円弧形状との対向円弧面間に対して、上述した本実施形態に係るスライドレール10が設置された構成を有している。
【0034】
固定環32は、端面側から見た場合の外郭形状に円弧形状を含んでおり、また、移動環33についても、固定環32の円弧形状と同様の円弧形状を有して構成される部材である。図12に示すように、移動環33には、スライドレール10の移動側レール12が固定されており、一方、図13に示すように、固定環32には、スライドレール10の固定側レール11が固定されている。そして、図10で示すアクチュエータ30の初期状態から、スライドレール10の移動力発生手段15を駆動して移動側レール12をスライド移動させると、図11に示すように、ベース部材31に対して固定設置された固定環32から移動環33が突出することができるようになっている。つまり、実施例1に係るアクチュエータ30では、移動力発生手段15が有するコイル18に対して流される電流を制御することで、この移動環33の固定環32に対する突出/収納動作を制御することが可能である。かかる構成によれば、コンパクトであり、外部荷重等に対する耐性が強く、安定した動作の可能なアクチュエータ30を提供することが可能となる。
【実施例2】
【0035】
なお、上述した実施例1に係るアクチュエータ30については、本実施形態に係るスライドレール10を1つ設置した場合を例示して説明した。しかしながら、本発明に係るアクチュエータについては、特許請求の範囲の記載の範囲内で、あらゆる変形形態を採用することができる。例えば、図14は、実施例2に係るアクチュエータを示した正面図であるが、図14で例示するアクチュエータ40のように、実施例1に係るアクチュエータ30の構成に加えて、新たに1台の移動力発生手段付きのスライドレール41を追加した構成を採用することができる。
【0036】
なお、本発明に係るアクチュエータに対して追加できるスライドレールについては、図14で例示するように、端面側から見た場合の外郭形状が円弧形状を含まないものを追加してもよいし、あるいは、本実施形態に係るスライドレール10と同様の円弧形状を含むスライドレールを追加してもよい。さらに、本発明に係るアクチュエータに対して追加可能なスライドレールについては、1つだけでなく、複数のスライドレールを追加することが可能である。また、追加されるスライドレールの形状や個数については、アクチュエータを構成する固定環32(固定部材)及び移動環33(移動部材)の形状や寸法、用途等に応じて、あらゆる形態を選択可能である。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態及び実施例1,2に記載の範囲には限定されない。上述した実施形態及び実施例1,2で示した構成については、特許請求の範囲に記載の構成を有するとともに同様の作用効果を発揮できる範囲において、任意に変形形態を採用したり改良を加えたりすることが可能である。
【0038】
例えば、上述した実施形態では、2列のボール通路のそれぞれに2個ずつ、合計4個のボール13が設置されている場合を例示して説明を行ったが、本発明に係る転動体の個数は任意に変更可能である。また、本発明の転動体については、ボール13だけではなく、ローラやコロなどといった他の転動体を採用することも可能であり、採用された転動体の形状や個数等に応じて、転動体転走面11b,12bやリテーナ14の形状を変形することが可能である。
【0039】
また、本実施形態に係る移動力発生手段15については、図示された形式のリニアモータに限られず、上述したリニアモータと同様の移動力を発生可能なあらゆる移動力発生手段を用いることが可能である。
【0040】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0041】
10 スライドレール、11 固定側レール、11a 円弧形状、11b 転動体転走面、11c 固定孔、12 移動側レール、12a 円弧形状、12b 転動体転走面、12c 固定孔、13 ボール、14 リテーナ、14a ボール保持板、14a 開口部、14a ボール保持爪、14b 接続板、15 移動力発生手段、16 磁気回路ユニット、16a センターヨーク、16b アウターヨーク、16c サイドヨーク、17 永久磁石、18 コイル、18a,18b 円弧形状、18c 接続部、18d 貫通孔、30,40 アクチュエータ、31 ベース部材、32 固定環、33 移動環、41 スライドレール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材に取り付けられる固定側レールと、
前記固定部材に対してスライド移動する移動部材に取り付けられる移動側レールと、
前記固定側レール及び前記移動側レールのそれぞれに設けられた転動体転走面の転走面間に転動自在に介装される複数の転動体と、
前記複数の転動体を前記転走面間内で転動自在に保持する転動体保持器と、
を備え、
端面側から見た場合の外郭形状が円弧形状を含んで構成されていることを特徴とするスライドレール。
【請求項2】
請求項1に記載のスライドレールにおいて、
前記固定側レール及び前記移動側レールは、互いに対向して配置される対向面の少なくとも一部の領域が円弧形状を含んで構成されていることを特徴とするスライドレール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスライドレールにおいて、
端面側から見た場合の外郭形状が、対向配置される2つの円弧形状によって形成される扇面形状として構成され、
前記2つの円弧形状は、円周方向中央部の間隔が円周方向両端部の間隔と同じかより小さいことを特徴とするスライドレール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のスライドレールにおいて、
前記転動体転走面が、前記固定側レール及び前記移動側レールのそれぞれに一対ずつ設けられることで、前記複数の転動体は、二列の転走面間に対して転動自在に介装されており、
前記二列の転走面間に対してそれぞれ介装される前記複数の転動体が、一部材として構成される前記転動体保持器によって保持されていることを特徴とするスライドレール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のスライドレールにおいて、
前記固定側レールと前記移動側レールとの間に設置され、前記固定側レールに対する前記移動側レールの長手方向での相対的なスライド移動のための移動力を発生させる移動力発生手段を備えることを特徴とするスライドレール。
【請求項6】
請求項5に記載のスライドレールにおいて、
前記移動力発生手段は、
スライド方向に対して縦方向に直交する断面で見た場合の縦断面形状が円弧形状を含んで構成される永久磁石と、
スライド方向に対して縦方向に直交する断面で見た場合の縦断面形状が円弧形状を含むとともに、前記永久磁石に対して磁気的空隙を介して対向するように配置されるコイルと、
を備えるリニアモータであり、
前記永久磁石が前記固定側レール及び前記移動側レールのいずれか一方に設置されるとともに、前記コイルが前記固定側レール及び前記移動側レールのいずれか他方に設置されることを特徴とするスライドレール。
【請求項7】
請求項6に記載のスライドレールにおいて、
前記リニアモータは、端面側から見た場合の外郭形状が、対向配置される前記永久磁石と前記コイルがそれぞれ備える2つの円弧形状によって形成される扇面形状として構成されていることを特徴とするスライドレール。
【請求項8】
端面側から見た場合の外郭形状に円弧形状を含む固定部材と、
端面側から見た場合の外郭形状に円弧形状を含むとともに、前記固定部材に対してスライド移動する移動部材と、
前記固定部材と前記移動部材の間に設置される請求項1〜7のいずれか1項に記載のスライドレールと、
を備え、
前記スライドレールが、対向配置される前記固定部材の円弧形状と前記移動部材の円弧形状との対向円弧面間に設置されることを特徴とするアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−87858(P2013−87858A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228658(P2011−228658)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】