説明

スルホン化ブロックコポリマー、これらの製造方法およびこれらのようなブロックコポリマーの種々の使用

本発明は、少なくとも2つのポリマー末端ブロックAおよび少なくとも1つのポリマー内側ブロックBを含む固体ブロックコポリマーであり、ここで各Aブロックはスルホン化を受けにくいポリマーブロックであり、各Bブロックはスルホン化を受けやすいポリマーブロックであり、前記AおよびBブロックは有意水準のオレフィン不飽和を含有しない。好ましくは、各Aブロックは、重合した(i)パラ置換スチレンモノマー、(ii)エチレン、(iii)3から18炭素原子のαオレフィン、(iv)10水素化された1,3−シクロジエンモノマー、(v)水素化の前に35モルパーセント未満のビニル含有量を有する、水素化された共役ジエンモノマー、(vi)アクリル酸エステル、(vii)メタクリル酸エステル、および(viii)これらの混合物から選択される1以上のセグメントを含み;各Bブロックは、(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、15(iv)α−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレン、(vi)1,2−ジフェニルエチレン、および(vii)これらの混合物から選択される、1以上の重合したビニル芳香族モノマーのセグメントを含む。このようなブロックコポリマーの製造プロセスならびにこのようなブロックコポリマーの種々の最終用途および応用もまた請求される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン化ブロックコポリマーおよびこのようなブロックコポリマーの製造方法に関する。特に、本発明は、スルホン化を受けにくい少なくとも2つのポリマー末端ブロック、およびスルホン化を受けやすい少なくとも1つのポリマー内側ブロックを有する、スルホン化ブロックコポリマーに関する。加えて、本発明はスルホン酸官能基をほとんど含有しない少なくとも2つのポリマー末端ブロック、およびスルホン酸官能基の有効量を含有する少なくとも1つポリマー内側ブロックを有する、ブロックコポリマーに関する。本発明はさらに、種々の物品または種々の物品の1以上の部品を製造するための、本発明のスルホン化ブロックコポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレンジエンブロックコポリマー(「SBC」)の製造方法は既知である。典型的な合成方法において、1つのモノマーの重合を開始させるために開始剤が使用される。すべてのモノマーが消費され、リビングホモポリマーが得られるまで反応が行われる。このリビングホモポリマーに、第1のモノマーとは化学的に異なる第2のモノマーを加える。第1のポリマーのリビング末端は、継続する重合部位として役立ち、これによって第2のモノマーが別個のブロックとして線状ポリマー中に組み込まれる。このように成長するブロックコポリマーは、停止するまで重合活性である。停止反応により、ブロックコポリマーのリビング末端は非活性種に変換され、これによりポリマーはモノマーまたはカップリング剤に対して非反応性になる。このように停止されたポリマーは通常ジブロックコポリマーと呼ばれる。ポリマーが停止されない場合、リビングブロックコポリマーはさらなるモノマーと反応して、逐次線状ブロックコポリマーを形成することができる。もしくは、通常カップリング剤と呼ばれる多官能性反応剤とリビングブロックコポリマーを接触させることができる。リビング末端の2つを連結させることにより、元のリビングジブロックコポリマーの2倍の分子量を有する線状トリブロックコポリマーが生成する。リビング末端の3以上を連結させることにより、少なくとも3アームを有するラジアルブロックコポリマー構造体を生成する。
【0003】
スチレンとブタジエンの線状ABAブロックコポリマーに関する最初の特許の1つに米国特許第3,149,182号がある。次に、米国特許第3,595,942号およびRe27,145号に記載されているように、より安定なブロックコポリマーを形成させるために、これらのポリマーを水素化することができる。このようなポリマーのポリジエンセグメントにおけるC=C部分を取り除くための選択的な水素化は、優れた耐熱性および耐薬品性、特に酸化分解耐性を有するブロックコポリマーの製造において重要である。
【0004】
長年の間、このようなブロックコポリマーを変化させ、特性を改良するために多くの改変がなされてきた。このような改良の1つに、ブロックコポリマーのスルホン化があった。このような最初のスルホン化ブロックコポリマーの1つは、例えば、Winklerへの米国特許第3,577,357号に開示されている。得られたブロックコポリマーは、一般配置A−B−(B−A)1−5(式中、各Aは非弾性スルホン化モノビニルアレーンポリマーブロックであり、各Bは実質的に飽和弾性α−オレフィンポリマーブロックである。)を有するとして特徴付けられ、前記ブロックコポリマーは、全ポリマー中に少なくとも1重量%の硫黄および各モノビニルアレーンユニットについて1つまでのスルホン化成分を供給するのに十分な程度にスルホン化されている。スルホン化ポリマーはこのままでも使用できるし、これらの酸、アルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩の形で使用することもできる。Winklerの特許において、ポリスチレン−水素化ポリイソプレン−ポリスチレントリブロックコポリマーが、三酸化硫黄/リン酸トリエチルの1,2−ジクロロエタン溶液を含むスルホン化剤で処理された。このようなブロックコポリマーは、水浄化膜などに有用な可能性のある水分吸収特性を示した。
【0005】
不飽和スチレン−ジエンブロックコポリマーのスルホン化は、O’Neillらへの、米国特許第3,642,953号に開示されている。ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンは、クロロスルホン酸のジエチルエーテル溶液を用いてスルホン化された。ポリマー中に組み込まれたスルホン酸官能基は酸化を促進し、ポリマー骨格中に残存するC=C部位は酸化を受けやすいので、これらのポリマーの有用性は限定されていた。該特許の第3段、38行目には以下のように述べられている:「本方法により得られる不飽和ブロックコポリマースルホン酸は、空気中で急速な酸化分解を受けやすい。従って、最終形に溶液を成形し、中和またはイオン交換によってより安定な塩に変換するまで、これらを嫌気条件で扱うおよび/または抗酸化薬で安定化する必要がある」。O’Neillらの特許の実施例中に概略が述べられている実験で製造されるスルホン化した不飽和ブロックポリマーを、薄膜が形成されるように成形した。このフィルムは過度の膨潤(最大1600重量%の水取り込み量)を示し、非常に弱かった。成形フィルムは、過剰の塩基で処理することにより安定化でき、これらの特性は中和によりいくぶん改良されたが(なお、引張強度300から500psiにとどまる。)、スルホン酸塩形のフィルムはもはや不溶性であり再成形は不能であった。同様に、Makowskiらの米国特許第3,870,841号には、t−ブチルスチレン/イソプレンランダムコポリマーのスルホン化の例が含まれる。これらのスルホン化ポリマーはこれらの主鎖中にC=C部位を有するので、これらもまたスルホン酸形では酸化的に安定であるとは期待されない。これらのポリマーは限定された柔軟性を必要とする応用に使用されたが、許容される全体的な物理的特性を有するとは期待されない。他のスルホン化スチレン/ブタジエンコポリマーは、米国特許第6,110,616号(Sheikh−Aliら)に開示されている。該特許において、SBR系ランダムコポリマーがスルホン化されている。
【0006】
スルホン化ブロックコポリマーを製造するための他の経路は、Balasらの米国特許第5,239,010号に開示されている。該特許において、少なくとも1つの共役ジエンブロックおよび1つのアルケニルアレーンブロックを含む、選択的に水素化されたブロックコポリマーと硫酸アシルが反応させられる。水素化の後、主にアルケニルアレーンブロック(Aブロック)にスルホン酸官能基を結合させることにより、ブロックコポリマーが改質される。官能基化の程度(スルホン化量)、およびスルホン酸基からスルホン酸金属塩への中和度を変化させることにより、力学的性能を変更および調節することができる。
【0007】
Pottickらの米国特許第5,516,831号において、スルホン酸官能基がグラフトされ、機能化され、選択的に水素化されたブロックコポリマーと、脂肪族炭化水素油とのブレンドが開示されている。Pottickらのブロックコポリマーにおいて、実質的に完全に水素化された共役ジエンブロックコポリマーBとは対照的に、アルケニルアレーンポリマーブロックAのブロックコポリマーに、スルホン酸官能基の実質的に全部がグラフトされている。酸基の金属塩への中和は、非油展力学的性能の相当量を保持した油展ブレンドを調製するために好ましかった。このブロックコポリマーブレンドを、接着剤およびシーラントに、または修飾剤(滑沢剤、燃料などの)として用いた。
【0008】
近年、燃料電池のためのスルホン化ブロックコポリマーの使用に、より注目が集まっている。例えば、Ehrenbergら(米国特許第5,468,574号)は、スルホン化スチレンとブタジエンのグラフトコポリマーを含む膜の使用を開示している。この実施例において、SEBSブロックコポリマー(すなわち、選択的に水素化されたスチレン/ブタジエン/スチレントリブロックコポリマー)が、ブロックコポリマー中のスチレンユニット数を基準にして少なくとも25モルパーセントの範囲まで三酸化硫黄でスルホン化された。特許に示されているように、スルホン酸基はすべてスチレンユニットに結合されている。このような膜における、水による膨潤の悪影響については、J.Wonらによる論文「Fixation of Nanosized Proton Transport Channels in Membranes」,Macromolecules,2003,36,3228−3234(April 8,2003)において議論されている。Macromoleculesの論文に開示されているようにして、スルホン化(スチレン含有量に基づいて45mol%)SEBS(分子量約80,000、28%wスチレン)ポリマーの試料(Aldrichから入手)をガラス上に溶媒成形することにより膜が調製された。この膜を水に浸漬し、膨潤の結果として水中でこの乾量の70%以上を吸収することが見いだされた。ついで水で膨潤した膜を介するメタノール透過度を試験し、これが不要に高いことが見いだされた。電池の1区画のみへのメタノールの隔離が電力を発生させる装置に必須である直接メタノール型燃料電池(DMFC)への応用には、これは好ましい結果ではない。これらの応用のためには、「燃料電池性能を改善するために、プロトン伝導性および機械強度を維持しながら、メタノールクロスオーバーを低減する必要がある」。J.Wonらの報告に記載されているように、最初にスチレン−ジエンブロックコポリマーのフィルムを成形し、このフィルム(cSBS)を放射線架橋し、ついで予備成形品をスルホン化することにより、ある程度この問題は克服された。スルホン化の前にブロックコポリマーを架橋させることにより、外部ブロックが選択的にスルホン化されたS−E/B−Sポリマーが膜の形成のために使用される場合に観察される過度の膨潤の問題が克服されたが、架橋技術は、放射線源により容易に透過される薄くて透明な物品に、この有用性が限定されている。加えて、架橋品のスルホン化は時間がかかり、過剰のジクロロエタン(DCE)を使用する。J.Wonらは以下のように報告している。「cSBSフィルムを、終夜過剰量のDCE中で膨潤させた。溶液を50℃に加熱し、窒素で30分間パージした。ついで、硫酸アセチル溶液(前述の手順で調製した)を加えた。」「この溶液をこの温度で4時間撹拌し、ついで2−プロパノールを加えて反応を停止し、スルホン化SBS架橋膜(scSBS)を得た。」スルホン化品の洗浄にもまた問題があった。「膜を沸騰水で洗浄し、冷水で何度も洗浄した。残留酸が最終生成物の特性を妨害する可能性があるので、スルホン化後に最終生成物から残留酸を完全に除去することは重要である。」
【0009】
内側ブロック中にブタジエンのみを含有する通常のブロックコポリマーとは異なり、過去においてスルホン化されたさらに他のタイプのブロックコポリマーには、スチレンとブタジエンの両方を含有する、調節された分布の内側ブロックを有する、選択的に水素化されたスチレン/ブタジエンブロックコポリマーがある。このようなブロックコポリマーは、米国公開特許公報第2003/0176582号および第2005/0137349号ならびにPCT公開公報WO2005/03812に開示されている。
【0010】
上記のスルホン化ブロックコポリマーにおいて、外部のブロックにおけるスチレンの存在により、常に外部(硬い)ブロックがスルホン化される。このことは、水への暴露による、材料中の硬いドメインの水和により、これらのドメインの可塑化および顕著な軟化がもたらされることを意味する。硬いドメインのこの軟化により、これらのブロックコポリマーから調製される膜の機械的結合性の顕著な低下がもたらされるであろう。このように、水に暴露されたとき、これらの先行技術のスルホン化ブロックコポリマーにより支えられる構造は、いずれもこの形状を維持するための十分な強度を有さない恐れがある。従って、このようなブロックコポリマーの使用法には限定があり、この最終用途にも限定がある。
【0011】
末端ブロックおよび内側ブロックが水素化ジエンを含まない、他の先行技術スルホン化ポリマーが教示されている。Roseらへの米国特許第4,505,827号は、Bブロックが疎水性ブロック(アルキルまたはスルホン化ポリ(t−ブチルスチレン)など)であり、Aブロックが親水性ブロック(スルホン化ポリ(ビニルトルエン)など)である、「水分散性」BABトリブロックコポリマーに関する。Roseらにより開示されたポリマーに想定された用途は、掘削泥水または粘度改良のためのものであるため、該ポリマーの重要な態様は、これが「水分散性」でなければならないことである。Roseらは、第3段51から52行目に、ポリマーが「水性媒体に分散されるとき、疎水会合する能力を有する」と述べている。Roseらはこれに続いて、53から56行目に、「本発明の目的上、このようなポリマーは、水と混合されるとき、得られる混合物は透明または半透明であり、水不溶性ポリマーの分散液の場合、乳白色ではない」と述べている。Roseらのポリマーは、t−ブチルスチレンブロックが大きくないため水分散性である(通常、該ブロックコポリマーはBブロックの20モルパーセント未満、好ましくは約0.1から約2モルパーセントである)。加えて、B末端ブロックはかなりの量がスルホン化されていると考えられる。
【0012】
Valintらへの米国特許第4,492,785号は、水の粘性改良剤である、「水溶性ブロックポリマー」に関する。これらの水溶性ブロックコポリマーは、t−ブチルスチレン/金属スチレンスルホナートのジブロックポリマーか、t−ブチルスチレン/金属スチレンスルホナート/t−ブチルスチレンのトリブロックポリマーのどちらかである。所与の構造および特性から、内側ブロックスチレンは100%スルホン化されていると思われる。これはポリマーに水溶性をもたらすであろう。さらにまた、所与の構造において、末端ブロックのそれぞれはポリマーの0.25から7.5モルパーセントを含むと考えられる。完全にスルホン化されたこのように大きな内側ブロックを有し、比較的小さな末端ブロックを有する場合、ポリマーは常に水溶性になると思われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の先行技術文献のどれも、水の存在下で固体状態であり、高い水透過性と十分な湿潤強度の両方を有する、スチレンおよび/またはt−ブチルスチレンベースのスルホン化ポリマーを開示していない。従って、さまざまな応用のために、十分な湿潤強度を維持しながら、高い水透過性を有する半透膜が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
驚いたことに、今回、スルホン化を受けやすい1以上の内部ブロックおよびスルホン化を受けにくい外部ブロックを有するスルホン化ブロックコポリマーを用いることにより、さまざまな応用のために、十分な湿潤強度を維持しながら、高い水透過性を達成することが可能であることが見いだされた。本発明のこれらのスルホン化飽和ブロックコポリマーは、以前は達成しえなかった、水透過、湿潤強度、寸法安定性および加工性を含む特性バランスを示す。スルホン化がブロックコポリマーの1以上の内部ブロックに限定される場合、外部ブロックの疎水性は保持され、これにより水和中心またはゴム相の存在下でこれらの保全性は保持されることが見いだされた。これは、例えば、外部ブロックにパラ−tert−ブチルスチレンなどのパラ置換スチレン系モノマーを使用することにより、内部または内側ブロックに選択的にスルホン化が進行するであろうことを意味する。スチレン環のパラ位にある大きいアルキル置換基によりスルホン化に対する環の反応性が抑制され、これによりポリマーの内部または内側ブロック(単数または複数)の1以上にスルホン化が進行する。
【0015】
スルホン化を受けにくい末端ブロックを有するスルホン化ブロックコポリマーの重要な特徴は、これらが過剰の水の存在下であってもこれらの固体的性質を保持する固形物または物品に形成することができることである。固体は、それ自体の重量の応力下で流れない材料として識別される。本発明のポリマーを成形して固体膜を作成することができる。これらの膜は効率よく水蒸気を透過させるが、過剰の水の存在下であってもこれらは固体である。水中でのこれらの膜の固体的性質は、水に浸漬している間に引張応力下で流れに対するこれらの抵抗を試験することにより明らかにすることができる。この膜を水浴に浸漬している間に、簡単な引張試験(ASTM D412に概説されている方法に基づいて)をこの膜に実施することができる。この測定は、この材料の湿潤強度の尺度としてみなすことができる。この試験は、通常、過剰の水で平衡化した膜について行われる。断面積1平方インチあたり100ポンドを超える湿潤時の引張強度を示す材料は強固な固体である。重要なことに、これらは過剰の水の存在下であっても強固な固体である。明らかに、これらの材料は水に可溶性ではない。上記で概略を述べたASTM D412の変法を用いて評価するとき、水可溶性物質は測定可能な強度を示さない。さらにまた、このような材料は水に分散されない。ポリマーの水性分散液は、上記のようにASTM D412の変法を用いて試験するとき、測定可能な強度を示さないであろう。本発明のポリマー膜は水に可溶性ではなく、過剰の水と接触させるとき分散液を形成しない。この新しく発見されたポリマー膜は優れた水蒸気透過性を有し、水で平衡化するとき100psiを超える引張強度を有する。これらは湿潤状態であっても固体である。
【0016】
内側ブロックが選択的にスルホン化された本発明のブロックコポリマーの顕著な特徴は、水で平衡化した場合であっても、強度、水蒸気透過挙動、寸法安定性、および加工性を含む、以前は達成しえなかった有用な特性バランスを有する物品に形成することができることである。疎水性ブロックおよび、ブロックコポリマー鎖の末端でのこれらの位置は、これらのポリマーおよびこれらから形成される物品の湿潤強度、寸法安定性および加工性に寄与する。コポリマーの内側に位置するスルホン化ブロック(単数または複数)は、効率的な水蒸気透過を可能にする。この組み合わせた特性により、固有の材料が提供される。上記の結果として、本発明のスルホン化ブロックコポリマーは、先行技術のスルホン化ポリマーでは、水中でのこれらのポリマーの脆弱性により欠陥があることがわかっているさまざまな用途において、より効率的に使用できる。本質的に「水溶性」または「水分散型」であるスルホン化ブロックコポリマーは、本明細書に開示した応用のための十分な引張強度を有さないであろうことに留意されたい。
【0017】
従って、本発明は、
広く、少なくとも2つのポリマー末端ブロックおよび少なくとも1つの飽和ポリマー内側ブロックを含み、
a.各末端ブロックはスルホン化を受けにくいポリマーブロックであり、各内側ブロックはスルホン化を受けやすい飽和ポリマーブロックであり、前記末端および内側ブロックは有意水準のオレフィン不飽和を含有せず;
b.各末端ブロックの数平均分子量は、独立して約1,000から約60,000であり、各内側ブロックの数平均分子量は、独立して約10,000から約300,000であり;
c.前記内側ブロックは10から100モルパーセントの範囲までスルホン化され;および
d.ここで前記スルホン化ブロックコポリマーは物品に形成されるとき、ASTM D412に基づいて水の存在下で100psiを超える引張強度を有する、
水中で固体である物品を製造するためのスルホン化ブロックコポリマー
を含む。
【0018】
通常、スルホン化ブロックコポリマーにおいて、末端ブロックのモルパーセントは、ブロックコポリマーが水に不溶であり、水に非分散性となるのに十分である。前記ブロックコポリマーにおいて、末端ブロックのモルパーセントは15%を超えることができ、好ましくは20%を超えることができる。他の例において、末端ブロックのモルパーセントは20%を超えならびに70%未満であり、好ましくは20%を超えならびに50%未満であってよい。末端ブロックの疎水性ユニットはブロックコポリマーの不溶性に寄与する。さらにまた、末端ブロックのモルパーセントがより低い値に近づく場合、全体のブロックコポリマーの疎水性は、内側ブロック(Bブロックと同様Aブロックも含む。)中に疎水性モノマーユニットを組み込むことにより調節できる。
【0019】
本発明に関しては、本願を通して以下の用語は以下の意味を有する。「スルホン化を受けにくい」は、ブロックのスルホン化がほとんど起こらないことを意味する。「スルホン化を受けやすい」は、引用されたブロック中にスルホン化が非常に起こりやすいことを意味する。末端ブロックに関して本発明に用いられる表現「スルホン化を受けにくい」、および内側ブロックに関する表現「スルホン化を受けやすい」は、スルホン化がコポリマーの内側ブロックに主に起こり、このため、ブロックコポリマーの全スルホン化度に対して内側ブロックのスルホン化度が、あらゆる場合において末端ブロックのスルホン化度よりも高いことを表すことを意味する。内側ブロックのスルホン化度は、ブロックコポリマーの全スルホン化度の少なくとも85%である。別の実施形態において、内側ブロックのスルホン化度は、全スルホン化の少なくとも90%であり、この実施形態において好ましい量は全スルホン化の少なくとも95%である。一部の実施形態において、末端ブロックはスルホン化を何も受けないこともできる。本明細書を通して、末端ブロックおよび内側ブロックに関して議論されることに留意されたい。多くの例において、「A」で表される末端ブロックに関する構造、および「B」により表される内側ブロックに関する構造が用いられる。このような議論は、特記しない限り、「A」末端ブロックおよび「B」内側ブロックを含有する本発明のスルホン化ブロックコポリマーのみに限定されず、スルホン化を受けにくい末端ブロックが「A」、「A1」、または「A2」ブロックにより表され、スルホン化を受けやすい内側ブロックが「B」、「B1」、「B2」、「D」、「E」または「F」ブロックで表される、本発明の実施形態のすべての構造の典型である議論であるものとする。さらにまた、場合によって、2以上の内側ブロックがスルホン化を受けやすい場合もあることに留意されたい。これらの例において、ブロックは同一であっても、異なっていてもよい。
【0020】
加えて、用語「有意水準の不飽和を含有しない」は、ブロックコポリマーの残留オレフィン不飽和が、ポリマー1gあたり炭素−炭素二重結合2.0ミリ当量未満であり、好ましくはブロックコポリマー1gあたり炭素−炭素二重結合0.2ミリ当量未満であることを意味する。このことは、例えば、前記スルホン化ブロックコポリマー中に存在する任意の共役ジエンポリマー成分に関して、このような共役ジエンが水素化されて、二重結合の少なくとも90%が水素化により還元され、好ましくは二重結合の少なくとも95%が水素化により還元され、より好ましくは二重結合の少なくとも98%が水素化により還元されていなければならないことを意味する。
【0021】
一実施形態において、本発明は、広く、
a.各Aブロックはスルホン化を受けにくいポリマーブロックであり、各Bブロックはスルホン化を受けやすいポリマーブロックであり、前記AおよびBブロックは有意水準のオレフィン不飽和を含有せず;
b.各Aブロックの数平均分子量は、独立して約1,000から約60,000であり、各Bブロックの数平均分子量は、独立して約10,000から約300,000であり;
c.各Aブロックは、重合した(i)パラ置換スチレンモノマー、(ii)エチレン、(iii)3から18炭素原子のαオレフィン;(iv)1,3−シクロジエンモノマー、(v)水素化の前に35モルパーセント未満のビニル含有量を有する共役ジエンモノマー、(vi)アクリル酸エステル、(vii)メタクリル酸エステルおよび(viii)これらの混合物から選択される1以上のセグメントを含み、重合した1,3−シクロジエンまたは共役ジエンを含有するセグメントは次に水素化され、および重合したエチレンまたは水素化された共役非環式ジエンポリマーを含む任意のAブロックは50℃を超える融点、好ましくは80℃を超える融点を有し;
d.各Bブロックは、重合した(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、(iv)α−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレン、(vi)1,2−ジフェニルエチレンおよび(vii)これらの混合物から選択される1以上のビニル芳香族モノマーセグメントを含み;
e.前記Bブロックは、前記Bブロック中のビニル芳香族モノマーユニットを基準にして10から100モルパーセントの範囲までスルホン化されており;
f.各Bブロックにおいて、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレンおよび1,2−ジフェニルエチレンであるビニル芳香族モノマーのモルパーセントは10モルパーセントから100モルパーセントであり;および
g.前記スルホン化ブロックコポリマーは物品に形成されるとき、ASTM D412に基づいて水の存在下で100psi以上の引張強度を有する
少なくとも2つのポリマー末端ブロックAおよび少なくとも1つのポリマー内側ブロックBを含むスルホン化ブロックコポリマーを含む。
【0022】
この実施形態において、Aブロックは、Bブロックに関して言及したモノマーを15モルパーセント以下含有することもできる。この実施形態のこのようなスルホン化ブロックコポリマーは、構造A−B−A、(A−B−A)X、(A−B)Xまたはこれらの混合物(式中、nは2から約30の整数であり、Xはカップリング剤残基であり、AおよびBは上記のものである。)により表されることができる。
【0023】
他の実施形態において、本発明は、構造(A1−B1−B2)X、(A1−B2−B1)X、(A2−B1−B2)X、(A2−B2−B1)X、(A1−A2−B1)X、(A1−A2−B2)X、(A2−A1−B1)X、(A2−A1−B2)X、(A1−A2−B1−B2)X、(A1−A2−B2−B1)X、(A2−A1−B1−B2)Xまたは(A2−A1−B2−B1)X(式中、nは2から30の整数であり、Xはカップリング剤残基である。)を有し、ここで:
a.各A1ブロックおよび各A2ブロックはスルホン化を受けにくいポリマーブロックであり、各B1ブロックおよびB2ブロックはスルホン化を受けやすいポリマーブロックであり、前記A1、A2、B1およびB2ブロックは有意水準のオレフィン不飽和を含有せず;
b.各A1ブロックおよび各A2ブロックは、独立して数平均分子量約1,000から約60,000を有し、各B1およびB2ブロックは独立して数平均分子量約10,000から約300,000を有し;
c.各A1ブロックは、重合した(i)エチレンおよび(ii)水素化の前に35モルパーセント未満のビニル含有量を有し、次いで水素化される共役ジエンからなる群より選択され;
d.各A2ブロックは、重合した(i)パラ置換スチレンモノマー、および(ii)1,3−シクロジエンモノマー(重合した1,3−シクロジエンモノマーはついで水素化される。)からなる群より選択され;
e.各B1ブロックは、重合した(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、(iv)α−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレン、(vi)1,2−ジフェニルエチレンおよび(vii)これらの混合物から選択される1以上のビニル芳香族モノマーセグメントを含み;
f.各B2ブロックは、水素化された、少なくとも1つの共役ジエンと、(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、(iv)α−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレン、(vi)1,2−ジフェニルエチレンおよび(vii)これらの混合物から選択される少なくとも1つのモノアルケニルアレーンとのコポリマーセグメントであり;
g.各B1および各B2ブロックは10から100モルパーセントの範囲までスルホン化されており;および
h.前記スルホン化ブロックコポリマーは物品に形成されるとき、ASTM D412に基づいて水の存在下で100psiを超える引張強度を有する、
ポリマーブロックA1、A2、B1およびB2を含むスルホン化ブロックコポリマーに関する。
【0024】
さらに他の態様において、本発明は、20℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1つのブロックDもまた含有するスルホン化ブロックコポリマーを含む。このようなブロックの1つは、水素化の前にビニル含有量20から80モルパーセントを有し、数平均分子量が約1000から約50,000である、水素化されたイソプレン、1,3−ブタジエンおよびこれらの混合物から選択される共役ジエンのポリマーまたはコポリマーを含む。他のブロックDは、数平均分子量が約1000から約50,000であるアクリル酸ポリマーモノマーまたはシリコーンポリマーを含むことができる。他のブロックDは、数平均分子量約1,000から約50,000を有する重合したイソブチレンであってよい。この実施形態において、本発明は、全般的な配置A−D−B−D−A、A−B−D−B−A、(A−D−B)X、(A−B−D)X、またはこれらの混合物(式中、nは2から約30の整数であり、Xはカップリング剤残基である。)を有し、ここにおいて:
a.各Aブロックおよび各Dブロックはスルホン化を受けにくいポリマーブロックであり、各Bブロックはスルホン化を受けやすいポリマーブロックであり、前記A、BおよびDブロックは有意水準のオレフィン不飽和を含有せず;
b.各Aブロックは、独立して数平均分子量約1,000から約60,000を有し、各Dブロックは、独立して数平均分子量約1000から約50,000を有し、各Bブロックは、独立して数平均分子量約10,000から約300,000を有し;
c.各Aブロックは、重合した(i)パラ置換スチレンモノマー、(ii)エチレン、(iii)3から18炭素原子のαオレフィン;(iv)1,3−シクロジエンモノマー、(v)水素化の前に35モルパーセント未満のビニル含有量を有する共役ジエンモノマー、(vi)アクリル酸エステル、(vii)メタクリル酸エステルならびに(viii)これらの混合物から選択される1以上のセグメントを含み、ここにおいて、重合した1,3−シクロジエンまたは重合した共役ジエンを含有するいずれのセグメントもついで水素化され;
d.各Bブロックは、重合した(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、(iv)α−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレン、(vi)1,2−ジフェニルエチレンおよび(vii)これらの混合物から選択される1以上のビニル芳香族モノマーセグメントを含み;
e.各Dブロックは、ガラス転移温度20℃未満および数平均分子量約1,000から約50,000を有するポリマーを含み、前記Dブロックは、(i)水素化の前にビニル含有量20から80モルパーセントを有する、イソプレン、1,3−ブタジエンから選択される重合または共重合した共役ジエン、(ii)重合したアクリラートモノマー、(iii)重合したシリコン、(iv)重合したイソブチレンおよび(v)これらの混合物からなる群より選択され、ここで重合した1,3−ブタジエンまたはイソプレンを含有する任意のセグメントがついで水素化され;
f.ここで前記Bブロックは、前記Bブロック中のビニル芳香族モノマーユニットを基準にして10から100モルパーセントの範囲までスルホン化されており;
g.非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレンおよび1,2−ジフェニルエチレンであるビニル芳香族モノマーのモルパーセントは、各Bブロックにおいて10モルパーセントから100モルパーセントであり;および
h.前記スルホン化ブロックコポリマーは物品に形成されるとき、ASTM D412に基づいて水の存在下で100psiを超える引張強度を有する、
スルホン化ブロックコポリマーを含む。
【0025】
この実施形態のさらに他の選択肢において、本発明は、2以上のDブロックを有し、ここで第2のDブロックが重合したアクリラートモノマーまたは重合したシリコンポリマーであるスルホン化ブロックコポリマーを含む。
【0026】
他の実施形態において、本発明は、
少なくとも2つのポリマー末端ブロックAおよび少なくとも1つのポリマー内側ブロックBを含み、
a.各Aブロックは、本質的にスルホン酸またはスルホナート官能基を含有しないポリマーブロックであり、各Bブロックは、Bブロックのモノマーユニット数を基準にしてスルホン酸またはスルホナート官能基を10から100モルパーセント含有するポリマーブロックであり、前記AおよびBブロックは有意水準のオレフィン不飽和を含有せず;および
b.各Aブロックの数平均分子量は、独立して約1,000から約60,000であり、各Bブロックの数平均分子量は、独立して約10,000から約300,000である
前記ブロックコポリマー
を含む、水中で固体である物品を製造するためのブロックコポリマー
【0027】
本発明の他の実施形態において、上記のBブロックを構成するモノマーはスルホン酸官能性モノマーである。好ましい実施形態において、該モノマーはナトリウムp−スチレンスルホナート、リチウムp−スチレンスルホナート、カリウムp−スチレンスルホナート、アンモニウムp−スチレンスルホナート、アミンp−スチレンスルホナート、エチルp−スチレンスルホナート、ナトリウムメタリルスルホナート、ナトリウムアリルスルホナート、ナトリウムビニルスルホナートおよびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0028】
よりさらなる態様において、本発明は、スルホン酸官能基の一部がイオン化金属化合物で中和され、金属塩を形成したスルホン化ブロックコポリマーに関する。
【0029】
本発明のよりさらなる実施形態は、少なくとも2つのポリマー末端ブロックA、少なくとも1つのポリマー内側ブロックE、および少なくとも1つのポリマー内側ブロックFを含み、構造A−E−F−E−A、A−F−E−F−A、(A−F−E)Xまたは(A−E−F)X(式中、nは2から30の整数であり、Xはカップリング剤残基である。)を有し、ここで:
a.各Aブロックはスルホン化を受けにくいポリマーブロックであり、各EおよびFブロックはスルホン化を受けやすいポリマーブロックであり、前記A、EおよびFブロックは有意水準のオレフィン不飽和を含有せず;
b.各Aブロックは、独立して数平均分子量約1,000から約60,000を有し、各EおよびFブロックは独立して数平均分子量約10,000から約300,000を有し;
c.各Aブロックは、重合した(i)パラ置換スチレンモノマー、(ii)エチレン、(iii)3から18炭素原子のαオレフィン;(iv)1,3−シクロジエンモノマー、(v)共役ジエンモノマー(水素化の前に35モルパーセント未満のビニル含有量を有する)、(vi)アクリル酸エステル、(vii)メタクリル酸エステルならびに(viii)これらの混合物から選択される1以上のセグメントを含み、ここで重合した1,3−シクロジエンまたは共役ジエンを含有するいずれのセグメントもついで水素化され;
d.各Fブロックは、重合した(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、(iv)α−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレン、(vi)1,2−ジフェニルエチレンおよび(vii)これらの混合物から選択される1以上のビニル芳香族モノマーセグメントを含み;
e.各Eブロックは、水素化された少なくとも1つの共役ジエンと、(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、(iv)α−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレン、(vi)1,2−ジフェニルエチレンおよび(vii)これらの混合物から選択される少なくとも1つのモノアルケニルアレーンとの共重合されたブロックであり;
f.前記EおよびFブロックは、前記EおよびFブロック中のビニル芳香族モノマーユニットを基準にして10から100モルパーセントの範囲までスルホン化されており;および
g.前記スルホン化ブロックコポリマーは物品に形成されるとき、ASTM D412に基づいて水の存在下で100psiを超える引張強度を有する
スルホン化ブロックコポリマーを含む。
【0030】
この実施形態の好ましい選択肢において、Aブロックはパラ−tert−ブチルスチレンのポリマーブロックであり、Fブロックは非置換スチレンのポリマーブロックであり、Eブロックは水素化された1,3−ブタジエンと非置換スチレンとのコポリマーブロックである。
【0031】
出願人は、本発明のスルホン化ブロックコポリマーの製造方法をも、この発明として請求する。スルホン化ブロックコポリマーの製造方法の1つは、ブロックコポリマーと、少なくとも2つのポリマー末端ブロックAおよび少なくとも1つのポリマー内側ブロックBを含むブロックコポリマーのBブロックを選択的にスルホン化するスルホン化剤とを反応させることを含み、ここで:
a.各Aブロックはスルホン化を受けにくいポリマーブロックであり、各Bブロックはスルホン化を受けやすいポリマーブロックであり、前記AおよびBブロックは有意水準のオレフィン不飽和を含有せず;
b.各Aブロックは、独立して数平均分子量約1,000から約60,000を有し、各Bブロックは独立して数平均分子量約10,000から約300,000を有し、ここでA末端ブロックのモルパーセントは20から50パーセントであり;
c.前記Bブロックは10から100モルパーセントの範囲までスルホン化され;および
d.前記スルホン化ブロックコポリマーは、ASTM D412に基づいて水の存在下で100psi以上の引張強度を有する。
【0032】
他の製造方法は、少なくとも2つのポリマー末端ブロックAおよび少なくとも1つのポリマー内側ブロックBを有し、水中で固体である物品を製造するためのスルホン化ブロックコポリマーを製造することを含み、前記方法は、前記ブロックBが実質的にスルホン化されるまで前記内側ブロックBをスルホン化することを含み、
a.各前記Aブロックはエチレンのポリマーのみ、または水素化された共役ジエンポリマーのみであり;
b.ここで前記ブロックコポリマーは水不溶性であり;および
c.ここで前記末端ブロックAは本質的にスルホン化モノマーを含有しない。
【0033】
本発明の特に好ましい一実施形態において、用いられるスルホン化剤は硫酸アシルであり、特に好ましい代替実施形態において、用いられるスルホン化剤は三酸化硫黄である。
【0034】
任意の数の前駆体分子を、本発明のスルホン化ブロックコポリマーの製造に用いることができる。本発明の好ましい一実施形態において、前駆体ブロックコポリマーは、水素化の前に、全般的な配置A−B−A、(A−B−A)X、(A−B)X、A−D−B−D−A、A−B−D−B−A、(A−D−B)X、(A−B−D)Xまたはこれらの混合物(式中、nは2から約30の整数であり、Xはカップリング剤残基である。)を有し、ここで:
a.各Aブロックはスルホン化を受けにくいポリマーブロックであり、各Dブロックはスルホン化を受けにくいポリマーブロックであり、各Bブロックはスルホン化を受けやすいポリマーブロックであり、前記A、DおよびBブロックは有意水準のオレフィン不飽和を含有せず;
b.各Aブロックは、独立して数平均分子量約1,000から約60,000を有し、各Dブロックは、独立して数平均分子量約1,000から約50,000を有し、各Bブロックは、独立して数平均分子量約10,000から約300,000を有し;
c.各Aブロックは、重合した(i)パラ置換スチレンモノマー、(ii)エチレン、(iii)3から18炭素原子のαオレフィン;(iv)1,3−シクロジエンモノマー、(v)水素化の前に35モルパーセント未満のビニル含有量を有する共役ジエンモノマー、(vi)アクリル酸エステルおよび(vii)メタクリル酸エステルならびに(viii)これらの混合物から選択される1以上のセグメントを含み;
d.各Bブロックは、重合した(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、(iv)α−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレンおよび(vi)1,2−ジフェニルエチレンならびに(vii)これらの混合物から選択される1以上のビニル芳香族モノマーセグメントを含み;
e.各Dブロックはガラス転移温度20℃未満をおよび数平均分子量約1000から約50,000を有するポリマーを含み、前記Dブロックは、(i)水素化の前にビニル含有量20から80モルパーセントを有する、重合または共重合したイソプレン、1,3−ブタジエンから選択される共役ジエン、(ii)重合したアクリラートモノマー、(iii)重合したシリコン、(iv)重合したイソブチレンおよび(v)これらの混合物からなる群より選択され、ここで重合した1,3−ブタジエンまたはイソプレンを含有するいずれのセグメントもついで水素化され;および
f.各Bブロックにおいて、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレンおよび1,2−ジフェニルエチレンであるビニル芳香族モノマーのモルパーセントが、10モルパーセントから100モルパーセントである。
【0035】
本発明の他の好ましい実施形態において、前駆体ブロックコポリマーは、水素化の前に、全般的な配置(A1−B1−B2)X、(A1−B2−B1)X、(A2−B1−B2)X、(A2−B2−B1)X、(A1−A2−B1)X、(A1−A2−B2)X、(A2−A1−B1)X、(A2−A1−B2)X、(A1−A2−B1−B2)X、(A1−A2−B2−B1)X、(A2−A1−B1−B2)Xまたは(A2−A1−B2−B1)X(式中、nは2から30の整数であり、Xはカップリング剤残基である。)を有し、
a.各A1ブロックおよび各A2ブロックはスルホン化を受けにくいポリマーブロックであり、各B1および各B2ブロックはスルホン化を受けやすいポリマーブロックであり、前記A1、A2、B1およびB2ブロックは有意水準のオレフィン不飽和を含有せず;
b.各A1ブロックおよび各A2ブロックは、独立して数平均分子量約1,000から約60,000を有し、各B1およびB2ブロックは独立して数平均分子量約10,000から約300,000を有し;
c.各A1ブロックは、重合した(i)エチレン、および(ii)水素化の前に35モルパーセント未満のビニル含有量を有する共役ジエンからなる群より選択され;
d.各A2ブロックは、重合した(i)パラ置換スチレンモノマーおよび(ii)1,3−シクロジエンモノマーからなる群より選択され;
e.各B1ブロックは、重合した(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、(iv)α−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレン、(vi)1,2−ジフェニルエチレンおよび(vii)これらの混合物から選択される1以上のビニル芳香族モノマーセグメントを含み;
f.各B2ブロックは、少なくとも1つの共役ジエンと、(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、(iv)α−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレン、(vi)1,2−ジフェニルエチレンおよび(vii)これらの混合物から選択される少なくとも1つのモノアルケニルアレーンとの重合したセグメントであり;および
g.各B1および各B2ブロックは、10から100モルパーセントの範囲までスルホン化されている。
【0036】
さらに他のクラスの前駆体は、全般的な配置A−E−F−E−Aまたは(A−E−F)X(式中、nは2から30の整数であり、Xはカップリング剤残基である。)の前駆体を含み、
a.各Aブロックはスルホン化を受けにくいポリマーブロックであり、各EおよびFブロックはスルホン化を受けやすいポリマーブロックであり、前記A、EおよびFブロックは有意水準のオレフィン不飽和を含有せず;
b.各Aブロックは、独立して数平均分子量約1,000から約60,000を有し、各EおよびFブロックは、独立して数平均分子量約10,000から約300,000を有し;
c.各Aブロックは、重合した(i)パラ置換スチレンモノマーからなる群より選択され;
d.各Fブロックは、重合した(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、(iv)α−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレン、(vi)1,2−ジフェニルエチレンおよび(vii)これらの混合物から選択される1以上のビニル芳香族モノマーセグメントを含み;
e.各Eブロックは、少なくとも1つの共役ジエンと、(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、(iv)α−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレン、(vi)1,2−ジフェニルエチレンおよび(vii)これらの混合物から選択される少なくとも1つのモノアルケニルアレーンとの重合したブロックであり;および
f.前記EおよびFブロックは、前記EおよびFブロック中のビニル芳香族モノマーユニットを基準にして、10から100モルパーセントの範囲までスルホン化される。
【0037】
当業者は、上記にあげた構造が、本発明のブロックコポリマーを製造するための可能な前駆体の完全なリストであることを必ずしも意図されていないことを理解する。上記の前駆体は、最終生成物が本発明の必要条件を満たす限りにおいて、上に述べた方法を用いる本発明のスルホン化ブロックコポリマーを製造するための方法においてのみならず、当分野で容易に利用できる任意の他の方法においても出発物質として使用できる。これらの必要条件は、スルホン化ブロックコポリマーが水の存在下で固体であり、内側ブロック(単数または複数)がスルホン化後に1以上のスルホン酸官能基を含有し、スルホン化ブロックコポリマーは、物品に形成されるとき、ASTM D412に基づいて水の存在下で100psiを超える引張強度を有することを含む。
【0038】
さらに他の態様において、本発明は本発明のスルホン化ブロックコポリマーを含む組成物から少なくとも一部分が形成される物品を含む。特に、本発明は、例えば、燃料電池、燃料電池のためのプロトン交換膜、(電極組立物(燃料電池のための電極接合体を含む。)に使用するスルホン化ポリマーセメント中の)金属含浸炭素粒子分散液、織物、被覆された織物、外科用材料および装置、濾過膜、空気調整膜、熱回収膜、脱塩膜、接着剤、家庭用衛生物品、超吸収性物品、超吸収剤用結合剤および防汚被覆剤などの物品を意図している。このような物品の具体例は、限定するものではないが、スルホン化ブロックコポリマーを含む組成物から一部分が形成される選択透過膜を含む。他の用途は、繊維、チューブ、織物、シート、織布および不織布用被覆剤および薄層を含む。特定の応用は、限定するものではないが、第1応答者のための通気性の良い防御用被服および手袋(有害の可能性のある材料を取り扱うことに関与する警察官、消防士、化学および生物学労働者、農業労働者、医療従業員、および軍要員のための);スポーツおよび娯楽用被服;テント;工業、医療および水精製への応用のための選択膜;ならびに壁内および住宅の床と土台の間に水分が蓄積するのを防ぐシステムを含む。他の特定の応用には、家庭用衛生用品があり、おむつまたは失禁物品における超吸収剤のための超吸収剤または結合剤としての用途が含まれる。より他の特定の応用には、一般に、海洋被覆剤および防汚被覆剤が含まれる。より他の応用には、膜用の被覆剤、例えば、ポリスルホン脱塩膜上の被覆剤などが含まれる。
【0039】
さらに他の態様において、本発明は、本発明のスルホン化ブロックコポリマーから製造される1以上の膜を組み込んだ燃料電池を含む。より具体的には、本発明は:
a.スルホン化ブロックコポリマーから製造される膜;
b.前記膜と接触している第1および第2対向電極;
c.前記第1電極に燃料を供給する手段;および
d.酸化剤を前記第2電極に接触させることを可能にする手段
を含む燃料電池を含む。
【0040】
特定の理論に拘束されることを意図しないが、本発明者は、本発明の重要性はブロックコポリマーの2つの構造的特徴によると考えている:1)外部Aブロックと内側Bブロック間の著しい極性の差異により、物理的特性[a)コポリマーのブロックの相分離、b)膜を介する水輸送、ならびにc)水およびプロトン以外の種に対するこれらのポリマーのバリア特性]が調節される;および2)これらのポリマーから製造される材料の強度および寸法安定性は、官能基をほとんど有さないAブロックによって決まる。B内側ブロックの極性は、B内側ブロックセグメントに結合しているビニル芳香族部分のスルホン化に由来する。固相において、これらの芳香族スルホン酸種(−SO3H中心)は、極めて親水性の高い連続的な極性相に自己集合する。この相は、プロトンまたは水が膜の一方から他方へ容易に通過するための通路を提供する。この相における−SO3H部位の密度(ブロックコポリマーの−SO3H/gのmol)が大きければ大きいほど、複合材料を介する水分子の透過は速くなる。これらの経路は、おおよそ十から数千オングストロームの幅のミクロ相で分離されたイオンまたは水チャンネルとして考えられる。この多相材料において、これらのチャンネルは、コポリマーの疎水性Aブロックで構成される、非極性の疎水性相により束縛されている。Aブロックは反応中心をほとんど含有しないため、スルホン化後にAブロックはスルホン酸官能基をほとんど有さない。結果として、B内側ブロックとは対照的に、Aブロックは水またはプロトン種による透過を大変に妨害する。多相材料のAブロック相の特性は、プロトン材料または水を加えても、容易に影響を受けない。従って、コポリマー材料の非極性Aブロック相は、水を加えても顕著には弱められない。例えば、各B内側ブロックが2つのAブロック外部セグメントに化学的に結合している、本発明の一実施形態に関して、複合材料である多相材料は湿潤状態においても実質的な強度を有する。実際、選択的にスルホン化されたブロックコポリマーから製造されたフィルムまたは膜の強度を、湿潤時と乾燥時でこの強度を試験して比較することは、コポリマーのAブロック中の官能基が存在しない(またはほぼ存在しない。)ことの優れた目安になる。湿潤強度は、乾燥試料の強度の少なくとも30%以上であるべきである。
【0041】
さらにまた、非極性の疎水性相は、連続的であることができ、共連続多相構造を与える。この場合、この相の強度および水の存在下で膨潤に対するこの耐性により、親水性相において生じうる膨潤のレベルが抑制および限定される。このようにして、二次加工品の寸法安定性が調節される。疎水性Aブロック相が分散していたとしても、この相の強度は、水中のスルホン化されたBブロックの拡張性により定義される限界に親水性相の膨潤を抑える。Bブロックの末端は、水により可塑化されないAブロックにつながれているため、Bブロックは、これらの鎖長により限定される範囲までしか膨潤することができない。膨潤は、AおよびBブロック(外部および内側ブロック)を結び付けている化学結合の強度に打ち勝つことができない。
【0042】
これらのブロックコポリマーから製造される複合材料の材料特性(硬度、強度、剛性および温度耐性)は、Aブロックポリマーの性質および疎水性相の連続性またはこの欠如により強く影響を受ける。他方では、これらの材料の水およびプロトン透過性、弾性、柔軟性ならびに靱性は、多相材料のBブロックのポリマーまたはコポリマーにより強く影響を受ける。ブロックコポリマーの内側セグメントの製造に用いるモノマーの選択に応じて、選択的にスルホン化されたブロックコポリマーにより、非常に弾性のある柔らかい材料を提供することもできるし、非常に強靭ではあるが、剛性の材料を製造することもできる。水は、親水性相におけるスルホン化された部分の相互作用を可塑化するため、これらの複合材料へ水を添加することにより、これらが柔らかくなり、剛性が弱められる傾向がもたらされる。
【0043】
これらの材料のバリア特性は、複合材料の親水性および疎水性相の両方の特性により影響を受ける。非極性気体および非極性液体の透過は、親水性相の高い極性および凝集エネルギーにより強く限定されている。また、親水性相は連続または共連続していなければならない。疎水性相は、場合により連続していなくともよく、この場合、非極性相を通して分子の流れの連続性はない。疎水性相がイオンチャンネルと共連続している場合、疎水性相の密度(非多孔性の固体)により、材料のこの相を通過する拡散分子は妨害される。
【0044】
スルホン化を受けにくい外部セグメント(Aブロック)、およびスルホン化を受けやすい内側セグメント(飽和Bブロック)を有するブロックコポリマーは、選択的にスルホン化されて固有の2相構造を有する材料を提供することができる。この構造の結果として、有用な特性の固有のバランス(優れた寸法安定性、驚くべき水透過度、および水の存在下での驚くべき強度)を有する非架橋ポリマーを製造できる。具体的な応用のために必要とされる特定の特性バランスは、コポリマーAおよびBブロックの性質または寸法、ポリマーのスルホン化のレベル、スルホン化の前の出発ポリマーにおける直線性または分岐度、および−SO3H部位の中和量(もしあれば)を調節することにより調和させることができる。これらのタイプの特性を有する材料の必要性は大きい。フィルム、膜、繊維(不織布繊維を含む)、被覆剤、接着剤、成形品などの無数の応用が明らかにされている。化学および生物学剤に対する保護を提供するため、水流を精製するため、カビおよび微生物の増殖から保護するため、表面への水の透過(特に発汗により)により蒸発冷却を可能にするため、湿潤時に放射エネルギーの吸収を促進するため、および水を吸い上げるためのこれらの物品の使用が考えられる。このように、本発明の有用性は大きいと考えられる。
【0045】
発明の詳細な説明
本発明のスルホン酸含有ブロックコポリマーを製造するために必要とされるベースポリマーは、アニオン重合、調整されたアニオン重合、カチオン重合、チーグラーナッタ重合、およびリビングまたは安定フリーラジカル重合を含む、多くの異なる方法により製造できる。アニオン重合は、以下の詳細な説明、および引用した特許において説明されている。スチレン系ブロックコポリマーを製造するための調整されたアニオン重合プロセスは、例えば、米国特許第6,391,981号、第6,455,651号および第6,492,469号(それぞれが参照により本明細書に組み込まれる。)に開示されている。ブロックコポリマーを製造するためのカチオン重合プロセスは、例えば、米国特許第6,515,083号および第4,946,899号(それぞれが参照により本明細書に組み込まれる。)に開示されている。ブロックコポリマーを製造するために使用できるリビングチーグラーナッタ重合プロセスは、最近G.W.Coates、P.D.Hustad、およびS.Reinartzにより、Angew.Chem.Int.Ed.,2002,41,2236−2257において総説された。H.ZhangおよびK.Nomura(JACS Communications,2005)は、続く発表により、スチレン系ブロックコポリマーを具体的に製造するためのリビングZ−N技術の使用を記載している。ニトロキシドを介するリビングラジカル重合化学における広範な研究が総説されている(CJ.Hawker,A.W.Bosman,and E.Harth,Chemical Reviews,101(12),pp.3661−3688(2001))。この総説に概説されているように、スチレン系ブロックコポリマーはリビングまたは安定フリーラジカル技術を用いて製造できる。本発明のポリマーのために、ニトロキシドを介する重合方法は、好ましいリビングまたは安定フリーラジカル重合プロセスであろう。
【0046】
1.ポリマー構造
本発明の重要な態様の1つは、スルホン化ブロックコポリマーの構造に関する。一実施形態において、本発明により製造されるこれらのブロックコポリマーは、少なくとも2つのポリマー末端(すなわち外部ブロックA)および少なくとも1つの飽和ポリマー内側ブロックBを有し、ここで各Aブロックはスルホン化を受けにくいポリマーブロックであり、各Bブロックはスルホン化を受けやすいポリマーブロックである。
【0047】
好ましい構造は、一般的配置A−B−A、(A−B)(A)、(A−B−A)、(A−B−A)X、(A−B)X、A−B−D−B−A、A−D−B−D−A、(A−D−B)(A)、(A−B−D)(A)、(A−B−D)X、(A−D−B)Xまたはこれらの混合物(式中、nは2から約30の整数であり、Xはカップリング剤残基であり、A、BおよびDは上記のものである。)を有する。
【0048】
最も好ましい構造は、線状のA−B−A、(A−B)2X、(A−B−D)X2Xおよび(A−D−B)X2X構造、またはラジアル構造(A−B)Xおよび(A−D−B)X(式中、nは3から6である。)のいずれかである。このようなブロックコポリマーは、通常、アニオン重合、カチオン重合またはチーグラーナッタ重合により製造される。好ましくは、ブロックコポリマーはアニオン重合により製造される。いずれの重合においても、ポリマー混合物は、任意の線状および/またはラジアルポリマーに加えて、A−Bジブロックコポリマーの一定量を含むことが認められる。
【0049】
Aブロックは、重合した(i)パラ置換スチレンモノマー、(ii)エチレン、(iii)3から18炭素原子のαオレフィン;(iv)1,3−シクロジエンモノマー、(v)水素化の前に35モルパーセント未満のビニル含有量を有する共役ジエンモノマー、(vi)アクリル酸エステル、(vii)メタクリル酸エステル、および(viii)これらの混合物から選択される1以上のセグメントである。Aセグメントが1,3−シクロジエンまたは共役ジエンのポリマーである場合、これらのセグメントは重合に続いて水素化される。
【0050】
パラ置換スチレンモノマーは、パラメチルスチレン、パラエチルスチレン、パラ−n−プロピルスチレン、パラ−iso−プロピルスチレン、パラ−n−ブチルスチレン、パラ−sec−ブチルスチレン、パラ−iso−ブチルスチレン、パラ−t−ブチルスチレン、パラ−デシルスチレン異性体、パラ−ドデシルスチレン異性体および上記のモノマーの混合物から選択される。好ましいパラ置換スチレンモノマーはパラ−t−ブチルスチレンおよびパラメチルスチレンであり、パラ−t−ブチルスチレンが最も好ましい。モノマーは、特定の供給元に応じて、モノマーの混合物であってよい。パラ置換スチレンモノマーの全体の純度は、望ましいパラ置換スチレンモノマーの、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、およびより好ましくは少なくとも98重量%であることが望ましい。
【0051】
Aブロックがエチレンポリマーの場合、上記のG.W.Coatesらによる総説中の引用文献において教示されているように、チーグラーナッタ法によりエチレンを重合させることが有用な場合がある(この開示は参照により本明細書に組み込まれる。)。米国特許第3,450,795号に教示されているように、アニオン重合技術を用いてエチレンブロックを製造することが好ましい(この開示は参照により本明細書に組み込まれる。)。このようなエチレンブロックのブロック分子量は通常約1,000から約60,000である。
【0052】
Aブロックが3から18炭素原子のαオレフィンのポリマーである場合、上記のG.W.Coatesらによる総説中の引用文献に教示されているように、このようなポリマーはチーグラーナッタ法により製造される(この開示は参照により本明細書に組み込まれる。)。好ましくは、αオレフィンはプロピレン、ブチレン、ヘキサンまたはオクテンであり、プロピレンが最も好ましい。このようなαオレフィンブロックのブロック分子量は、通常約1,000から約60,000である。
【0053】
Aブロックが水素化された、1,3−シクロジエンモノマーのポリマーである場合、このようなモノマーは、1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエンおよび1,3−シクロオクタジエンからなる群より選択される。好ましくは、シクロジエンモノマーは1,3−シクロヘキサジエンである。このようなシクロジエンモノマーの重合は、米国特許第6,699,941号に開示されている(この開示は参照により本明細書に組み込まれる。)。水素化されていない重合したシクロジエンブロックはスルホン化を受けやすいため、シクロジエンモノマーを用いる場合は、Aブロックを水素化する必要がある。
【0054】
Aブロックが、水素化の前に35モルパーセント未満のビニル含有量を有する、水素化された、共役非環式ジエンのポリマーである場合、この共役ジエンは1,3−ブタジエンであることが好ましい。水素化の前に、ポリマーのビニル含有量は35モルパーセント未満である必要があり、好ましくは30モルパーセント未満である必要がある。特定の実施形態において、水素化の前に、ポリマーのビニル含有量は25モルパーセント未満であり、より好ましくは20モルパーセント未満であり、さらにより好ましくは15モルパーセント未満であり、より都合のよいポリマーのビニル含有量の1つは、水素化の前に10モルパーセント未満である。この場合、Aブロックは、ポリエチレンと同様に、結晶構造を有するであろう。このようなAブロック構造は米国特許第3,670,054号および第4,107,236号に開示されている(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。)。
【0055】
Aブロックは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのポリマーであることもできる。これらのポリマーブロックは、米国特許第6,767,976号に開示されている方法に従って製造できる(この開示は参照により本明細書に組み込まれる。)。メタクリル酸エステルの具体例は、第一級アルコールとメタクリル酸とのエステル、例えば、メチルメタクリラート、エチルメタクリラート、プロピルメタクリラート、n−ブチルメタクリラート、イソブチルメタクリラート、ヘキシルメタクリラート、2−エチルヘキシルメタクリラート、ドデシルメタクリラート、ラウリルメタクリラート、メトキシエチルメタクリラート、ジメチルアミノエチルメタクリラート、ジエチルアミノエチルメタクリラート、グリシジルメタクリラート、トリメトキシシリルプロピルメタクリラート、トリフルオロメチルメタクリラート、トリフルオロエチルメタクリラートなど;第二級アルコールとメタクリル酸とのエステル、例えば、イソプロピルメタクリラート、シクロヘキシルメタクリラートおよびイソボルニルメタクリラートなど;ならびに第三級アルコールとメタクリル酸とのエステル、例えばtert−メタクリル酸ブチルなどを含む。アクリル酸エステルの具体例は、第一級アルコールとアクリル酸とのエステル、例えば、メチルアクリラート、エチルアクリラート、プロピルアクリラート、n−ブチルアクリラート、イソブチルアクリラート、ヘキシルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、ドデシルアクリラート、ラウリルアクリラート、メトキシエチルアクリラート、ジメチルアミノエチルアクリラート、ジエチルアミノエチルアクリラート、グリシジルアクリラート、トリメトキシシリルプロピルアクリラート、トリフルオロメチルアクリラート、トリフルオロエチルアクリラートなど;第二級アルコールとアクリル酸とのエステル、例えば、イソプロピルアクリラート、シクロヘキシルアクリラートおよびイソボルニルアクリラートなど;ならびに第三級アルコールとアクリル酸とのエステル、例えば、tert−ブチルアクリラートなどを含む。本発明において、必要に応じて、原料(単数または複数)として(メタ)アクリル酸エステルと共に他のアニオン重合性モノマーの1以上を使用できる。場合により使用できるアニオン重合性モノマーの例は、メタクリルまたはアクリルモノマー、例えば、トリメチルシリルメタクリラート、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド、トリメチルシリルアクリラート、N−イソプロピルアクリルアミド、およびN−tert−ブチルアクリルアミドなどを含む。さらに、この分子中に2以上のメタクリルまたはアクリル構造を有する多官能価アニオン重合性モノマー、例えば、メタクリル酸エステル構造またはアクリル酸エステル構造など(例えば、エチレングリコールジアクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、1,4−ブタンジオールジアクリラート、1,4−ブタンジオールジメタクリラート、1,6−ヘキサンジオールジアクリラート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラートおよびトリメチロールプロパントリメタクリラートなど)を使用することができる。
【0056】
アクリル酸またはメタクリル酸エステルポリマーブロックを製造するために使用する重合プロセスにおいて、モノマーの1つのみを、例えば(メタ)アクリル酸エステル1つを使用することもでき、もしくは、これらの2以上を組み合わせて使用することもできる。モノマーの2以上が組み合わせて使用される場合、ランダム、ブロック、テーパー状ブロックなどの共重合形から選択される任意の共重合形は、選択できる条件、例えば、モノマーの組み合わせおよび重合系へのモノマーの添加のタイミング(例えば、2以上のモノマーの同時添加、または所定時間間隔での別々の添加)などによりもたらすことができる。
【0057】
Aブロックはまた、Bブロックに関して述べたビニル芳香族モノマーの15モルパーセント以下を含有することもできる。一部の実施形態において、Aブロックは、Bブロックにおいて述べたビニル芳香族モノマーの10モルパーセント以下を含有することができ、好ましくはAブロックは5モルパーセント以下を含有するのにとどまり、特に好ましくは2モルパーセント以下を含有するのにとどまる。しかしながら、最も好ましい実施形態において、Aブロックは、Bブロックにおいて述べたビニルモノマーを含有しない。従って、Aブロックにおけるスルホン化レベルは、Aブロックにおける全モノマーの0から15モルパーセントであり得る。この範囲は、上記のモルパーセントのすべての組み合わせを含むことができることに留意されたい。
【0058】
飽和Bブロックに関して、各Bブロックは、重合した、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレンモノマー、1,1−ジフェニルエチレンモノマー、1,2−ジフェニルエチレンモノマーおよびこれらの混合物から選択される1以上のビニル芳香族モノマーのセグメントを含む。直前に述べたモノマーおよびポリマーに加えて、Bブロックは、水素化された、20から80モルパーセントのビニル含有量を有する、このようなモノマーと、1,3−ブタジエン、イソプレンおよびこれらの混合物から選択される共役ジエンとのコポリマーを含むこともできる。水素化されたジエンを有するこれらのコポリマーは、ランダムコポリマー、テーパー状コポリマー、ブロックコポリマーまたは制御された分布のコポリマーであってよい。従って、2つの好ましい構造がある。この1つにおいて、Bブロックは水素化され、このパラグラフに記載されている共役ジエンとビニル芳香族モノマーとのコポリマーを含む。このもう1つにおいて、Bブロックは非置換スチレンモノマーブロックであり、これはモノマーの性質に由来して飽和であり、水素化の工程段階を加える必要がない。制御分布構造を有するBブロックは、米国公開特許公報第2003/0176582号に開示されている(この開示は参照により本明細書に組み込まれる。)。また、米国公開特許公報第2003/0176582号は、本発明に記載の構造ではないが、スルホン化ブロックコポリマーの製造方法を開示している。スチレンブロックを含むBブロックは、本明細書に記載されている。好ましい一実施形態において、飽和Bブロックは非置換スチレンブロックである。このポリマーは、別の水素化工程を必要としないからである。
【0059】
加えて、本発明の他の態様は、ガラス転移温度20℃未満を有する、少なくとも1つの耐衝撃性改良剤ブロックDを含む。このような耐衝撃性改良剤ブロックDの例の1つは、水素化の前にビニル含有量20から80モルパーセントを有し、数平均分子量1,000から50,000の、水素化された、イソプレンポリマーまたはコポリマー、1,3−ブタジエンポリマーまたはコポリマーおよびこれらの混合物から選択される共役ジエンポリマーまたはコポリマーを含む。他の例には、数平均分子量1,000から50,000を有する、アクリラートまたはシリコーンポリマーがある。より他の例において、Dブロックは、数平均分子量1,000から50,000のイソブチレンのポリマーである。
【0060】
各Aブロックは、独立して数平均分子量約1,000から約60,000を有し、各Bブロックは、独立して数平均分子量約10,000から約300,000を有する。好ましくは、各Aブロックは数平均分子量2,000から50,000を有し、より好ましくは3,000から40,000、よりさらに好ましくは3,000から30,000を有する。好ましくは、各Bブロックは数平均分子量15,000から250,000を有し、より好ましくは20,000から200,000、よりさらに好ましくは30,000から100,000を有する。これらの範囲は、ここに記載された前記数平均分子量のすべての組み合わせを含むことができることに留意されたい。これらの分子量は、光散乱測定により最も正確に測定され、数平均分子量として表される。好ましくは、スルホン化ポリマーは、Aブロックの約8モルパーセントから約80モルパーセントを有し、好ましくは約10から約60モルパーセントを有し、より好ましくはAブロックの15モルパーセントより多くを有し、よりさらに好ましくは、Aブロックの約20から約50モルパーセントを有する。
【0061】
スルホン化ブロックコポリマー中の、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレンモノマー、1,1−ジフェニルエチレンモノマー、および1,2−ジフェニルエチレンモノマーであるビニル芳香族モノマーの相対量は、約5から約90モルパーセントであり、好ましくは約5から約85モルパーセントである。別の実施形態において、量は約10から約80モルパーセントであり、好ましくは約10から約75モルパーセントであり、より好ましくは約15から約75モルパーセントであり、最も好ましくは約25から約70モルパーセントである。範囲は、ここに記載されたすべてのモルパーセントの組み合わせを含むことができることに留意されたい。
【0062】
好ましい一実施形態において、飽和Bブロックに関して、各Bブロック中の、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレンモノマー、1,1−ジフェニルエチレンモノマー、および1,2−ジフェニルエチレンモノマーであるビニル芳香族モノマーのモルパーセントは、約10から約100モルパーセントであり、好ましくは約25から約100モルパーセントであり、より好ましくは約50から約100モルパーセントであり、よりさらに好ましくは約75から約100モルパーセントであり、最も好ましくは100モルパーセントである。これらの範囲は、ここに記載したモルパーセントのすべての組み合わせを含むことができることに留意されたい。
【0063】
スルホン化のレベルに関して、典型的なレベルは、各Bブロックが1以上のスルホン酸官能基を含有するレベルである。スルホン化の好ましいレベルは、各Bブロック中の、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレンモノマー、1,1−ジフェニルエチレンモノマーおよび1,2−ジフェニルエチレンモノマーであるビニル芳香族モノマーのモルパーセントを基準にして、10から100モルパーセントであり、より好ましくは約20から95モルパーセントであり、よりさらに好ましくは約30から90モルパーセントである。スルホン化の範囲は、ここに記載したモルパーセントのすべての組み合わせを含むことができることに留意されたい。スルホン化のレベルは、テトラヒドロフランで再溶解した乾燥ポリマー試料を、混合したアルコールおよび水溶媒中のNaOH標準溶液で滴定することにより測定される。
【0064】
2.ポリマーを製造するためのアニオン法全般
ポリマーの製造方法に関しては、アニオン重合プロセスは、リチウム開始剤を含有する溶液中で適切なモノマーを重合させることを含む。重合ビヒクルとして使用される溶媒は、形成ポリマーのリビングアニオン鎖末端と反応せず、市販の重合ユニットにおいて取り扱いが容易であり、生成物ポリマーに対して適切な溶解特性を示す、任意の炭化水素であり得る。例えば、一般に、イオン化する水素原子を有さない非極性脂肪族炭化水素は、特に適切な溶媒である。しばしば用いられるものに、環状アルカン、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、およびシクロオクタンなどがあり、これらのすべては比較的非極性である。他の適切な溶媒は、当業者に公知であり、プロセス条件の所与のセット(考慮しなければならない主要な要素の1つに重合温度がある。)において、効果を発揮するように選択されることができる。
【0065】
本発明のブロックコポリマーを製造するための出発物質は、上記の出発モノマーを含む。アニオン共重合のための他の重要な出発物質は、1以上の重合開始剤を含む。本発明において、このような開始剤は、例えば、アルキルリチウム化合物(s−ブチルリチウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、アミルリチウムなど)および他の有機リチウム化合物(二官能性開始剤、例えばm−ジイソプロペニルベンゼンのジ−sec−ブチルリチウム付加体などを含む。)を含む。他のこのような二官能性開始剤は、米国特許第6,492,469号に開示されている(それぞれは参照により本明細書に組み込まれる。)。種々の重合開始剤の中で、s−ブチルリチウムが好ましい。開始剤は、重合混合物(モノマーおよび溶媒を含む。)中に、所望のポリマー鎖あたり1つの開始剤分子を基準として算出した量で使用できる。リチウム開始剤法は公知であり、例えば、米国特許第4,039,593号およびRe第27,145号に記載されている(この記載は、参照により本明細書に組み込まれる。)。
【0066】
本発明のブロックコポリマーを製造するための重合条件は、通常、一般のアニオン重合に用いられる条件と類似している。本発明において、重合は、好ましくは約−30℃から約150℃の温度で行われ、より好ましくは約10℃から約100℃、最も好ましくは、工業上の観点から、約30℃から約90℃で行われる。重合は、不活性雰囲気下(好ましくは窒素)で行われ、約0.5から約10バールの範囲内の加圧下で達成されることもできる。この共重合は、一般に約12時間未満を必要とし、温度、モノマー成分の濃度、および所望のポリマーの分子量にもよるが、約5分間から約5時間以内に達成することができる。モノマーの2以上が組み合わせて使用される場合、ランダム、ブロック、テーパー状ブロック、制御された分布のブロックなどの共重合形から選択される任意の共重合形を使用することができる。
【0067】
アニオン重合プロセスは、ルイス酸、例えば、アルキルアルミニウム、アルキルマグネシウム、アルキル亜鉛またはこれらの組み合わせなどの添加により調節できることがわかる。重合プロセスに対する添加されたルイス酸の影響は、1)リビングポリマー溶液の粘度を低下させ、より高いポリマー濃度で稼動するプロセスを可能にし、これによってより少ない溶媒量ですむこと、2)リビングポリマー鎖末端の耐熱性を向上させ、これによってより高い温度での重合が可能となり、重ねて、ポリマー溶液の粘度が低下され、より少ない溶媒の使用が可能となること、および3)反応速度を低下させ、これにより、標準的なアニオン重合プロセスで使用されてきた反応熱を除去するための同じ技術を用いながら、より高い温度での重合を可能にすることである。アニオン重合技術を調節するためにルイス酸を使用するプロセスメリットは、米国特許第6,391,981号;第6,455,651号;および第6,492,469号に開示されている(これらは、参照により本明細書に組み込まれる。)。関連した情報は、米国特許第6,444,767号および第6,686,423号に開示されている(これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。)。このような調整されたアニオン重合プロセスにより製造されるポリマーは、通常のアニオン重合プロセスを用いて製造されるものと同じ構造を有することができ、これにより、このプロセスは本発明のポリマーを製造することにおいて有用であり得る。ルイス酸で調整されたアニオン重合プロセスのためには、反応温度100℃から150℃が好ましいが、これらの温度においては、非常に高いポリマー濃度で反応を実施する利点を得ることが可能である。化学量論的過剰のルイス酸を使用することはできるが、大抵の場合、過剰のルイス酸のコストに見合う十分なプロセスメリットの改善は見られない。調整されたアニオン重合技術を用いるプロセス性能の改善を達成するために、リビングアニオン鎖末端1モルあたり、ルイス酸約0.1から約1モルの使用が好ましい。
【0068】
ラジアル(分岐)ポリマーの製造には、「カップリング」と呼ばれる後重合段階を必要とする。上記のラジアルポリマー式において、nは、2から約30の整数であり、好ましくは約2から約15、より好ましくは2から6の整数であり、Xはカップリング剤の残部または残基である。種々のカップリング剤は当分野で公知であり、本発明の連結したブロックコポリマーの製造に使用できる。これらは、例えば、ジハロアルカン、シリコンハロゲン化物、シロキサン、多官能価エポキシド、シリカ化合物、カルボン酸と一価アルコールとのエステル(例えばメチルベンゾアートおよびジメチルアジパート)ならびにエポキシ化植物油を含む。星型ポリマーは、例えば、米国特許第3,985,830号;第4,391,949号;および第4,444,953号;ならびにカナダ特許第716,645号に開示されているようにして、ポリアルケニルカップリング剤を用いて製造される(これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。)。適切なポリアルケニルカップリング剤は、ジビニルベンゼンを含み、好ましくは、m−ジビニルベンゼンを含む。テトラアルコキシシラン、例えば、テトラメトキシシラン(TMOS)およびテトラエトキシシラン(TEOS)など、トリアルコキシシラン、例えば、メチルトリメトキシシラン(MTMS)など、脂肪族ジエステル、例えばジメチルアジパートおよびジエチルアジパートなど、ならびにジグリシジル芳香族エポキシ化合物、例えば、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応から誘導されるジグリシジルエーテルなどが好ましい。
【0069】
3.水素化されたブロックコポリマーの製造方法
前述のように、場合によっては−すなわち、(1)B内側ブロック中にジエンが存在する場合、(2)Aブロックが1,3−シクロジエンのポリマーである場合、(3)耐衝撃性改良剤であるブロックDが存在する場合、および(4)Aブロックが35モルパーセント未満のビニル含有量を有する共役ジエンのポリマーである場合−ブロックコポリマーを選択的に水素化してエチレン性不飽和をすべて除去する必要がある。水素化により、一般に、耐熱性、紫外線安定性、酸化安定性、および、これによる、最終ポリマーの耐候性が改善され、AブロックまたはDブロックのスルホン化の可能性が低下する。
【0070】
水素化は、先行技術において知られている多くの水素化または選択的水素化プロセスのいずれかにより実施できる。例えば、このような水素化は、例えば、米国特許第3,595,942号、第3,634,549号、第3,670,054号、第3,700,633号、およびRe第27,145号で教示されている方法を用いて達成されてきた(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。)。これらの方法は、エチレン性不飽和を含有するポリマーを水素化するために作用し、適切な触媒の作用に基づいている。このような触媒、または触媒前駆体は、好ましくはニッケルまたはコバルトなどの第VIII族金属を含み、適切な還元剤、たとえば、アルキルアルミニウムまたは、元素周期律表のI−A、II−AおよびIII−B族から選択される金属、特にリチウム、マグネシウムまたはアルミニウムの水素化物と混合される。この製造方法は、約20℃から約80℃で適切な溶媒または希釈剤中で達成できる。有用な他の触媒は、チタニウムベース触媒系を含む。
【0071】
共役ジエン二重結合の少なくとも約90パーセントが還元され、アレーン二重結合の0から10パーセントが還元されるという条件で、水素化を実施することができる。好ましくは、共役ジエン二重結合の少なくとも約95パーセントが還元され、より好ましくは共役ジエン二重結合の約98パーセントが還元される。
【0072】
水素化が完了したら、ポリマー溶液1部に対して酸水溶液約0.5部の容量比で、ポリマー溶液を比較的大量の酸水溶液(好ましくは1から30重量パーセントの酸)を用いて撹拌することにより、触媒を酸化し、抽出することが好ましい。酸の性質は重要ではない。適切な酸は、リン酸、硫酸および有機酸を含む。この撹拌は、酸素と窒素の混合物を散布しながら、約30から約60分間、約50℃で続けられる。この段階において、酸素および炭化水素の爆発性混合物が形成されないように注意する必要がある。
【0073】
4.スルホン化ポリマーの製造方法
ポリマーが重合され、必要に応じて水素化されたら、このポリマーはスルホン化剤を用い、当分野で公知のプロセス、例えば、米国特許第3,577,357号;第5,239,010号および第5,516,831号において教示されているプロセスにより、スルホン化される(これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。)。プロセスの1つに硫酸アシルを用いるものがある。硫酸アシルは、「Sulfonation and Related Reactions」,E.E.Gilbert、Robert E.Krieger Publishing Co.,Inc.,Huntington,NY,pp 22,23,and 33(1977)(First edition published by John Wiley & Sons,Inc.(1965))に記載されているように、当分野で公知である。好ましいスルホン化剤は硫酸アセチルである。
【0074】
硫酸アセチル経路のスルホン化は、過酷さが最も少なく、最もきれいな方法の1つといわれている。硫酸アセチル経路において、適切な溶媒、例えば1,2−ジクロロエタン中で、濃硫酸とモル過剰量の無水酢酸を混合することにより硫酸アセチルが製造される。硫酸アセチルは、反応の前、またはポリマーの存在下で「その場で」のいずれかで製造される。報告されているスルホン化の温度範囲は0℃から50℃であり、反応時間は通常2から6時間の程度である。硫酸アセチルは通常できたてのものを用いるが、これ自体が時間の経過と共に、または高い反応温度で反応して、スルホ酢酸(HSO3CH2COOH)を生成する場合があるからである。硫酸アセチルを用いるスルホン化は定量的ではないことが多く、スチレンブロックコポリマーのスルホン化に関しては、硫酸アセチルによる変換は50%から60%であってよいが、より広い範囲も達成可能である。
【0075】
スルホン化ポリマーの分離は、多くは蒸気ストリッピングまたは沸騰水による凝固によってなされる。スルホン化反応が完了したら、ブロックコポリマーは、前段階でブロックコポリマーを分離する必要はなく、物品形(例えば、膜)に直接に成形することができる。改質ブロックコポリマー中のスルホン酸またはスルホナート官能基を含有する分子ユニットの量は、この中のアルケニルアレーンの含有量と芳香族構造によって決まる。これらのパラメーターが確定したら、存在するこのような基の数は、これらのパラメーターに基づいた官能度の最小および最大の間の望ましい官能度によって決まる。最小の官能度は、ブロックコポリマーの1分子あたり、平均で少なくとも約1(1)、好ましくは少なくとも約3(3)のスルホン酸またはスルホナート基に該当する。Bブロックの非パラ置換芳香族基あたり、約1(1)スルホン酸またはスルホナート基の付加が限度であると現在考えられている。好ましくは、官能度は、Bブロック中の非パラ置換芳香族基の約10から100%であり、より好ましくはこのような基の約20から約90%であり、最も好ましくは約25から約75モルパーセントである。
【0076】
ポリマーをスルホン化するための他の経路には、米国特許第5,468,574号に開示されている三酸化硫黄の使用がある(参照により本明細書に組み込まれる。)。ポリマーをスルホン化する他の経路は、(1)三酸化硫黄とエーテルの錯体を用いる反応、および(2)米国特許第5,239,010号に開示されているリン酸トリエチル/三酸化硫黄付加体を用いる反応(参照により本明細書に組み込まれる。)を含む。関連したリン試薬を用いる同様な技術は、PCT公開WO2005/030812A1に開示されている、三酸化硫黄と、五酸化リンおよびトリス(2−エチルヘキシル)ホスファートの錯体との反応を含む。この公開公報はまた、スルホン化反応のための、硫酸(好ましくは触媒として硫酸銀を用いて)、種々のクロロスルホン酸反応剤、および二酸化硫黄と塩素ガスの混合物の開示を含む。
【0077】
5.スルホン化ポリマーの中和法
本発明の他の実施形態には、塩基を用いて改質ブロックコポリマーを「中和する」ことがある。このことは、ポリマーの改善された安定性または高温でのポリマーの増強された強度が必要とされる場合に望ましいことがある。スルホン化ブロックコポリマーの中和はまた、酸部分の腐食性を低下させる傾向があり、ブロックコポリマー中の相分離の駆動力を高め、炭化水素溶媒に対する耐性を改善し、多くの場合、スルホン化反応の副生成物からスルホン化ポリマーの回収率を改善する。
【0078】
スルホン化ブロックコポリマーは、少なくとも部分的に中和されていることができ、ここでスルホン酸官能基、プロトン供与体またはブレンステッド酸の一部が、塩基、ブレンステッドまたはルイス塩基で中和されている。Advanced Organic Chemistry,Reactions,Mechanisms,and Structures,Fourth Edition by Jerry March,John Wiley & Sons,New York,1992の第8章およびこの中の引用文献にあるブレンステッドおよびルイス塩基の定義を用いれば、塩基は電子対を供与できる化合物である。場合により、塩基はポリマー性であっても非ポリマー性であっても良い。非ポリマー性塩基の基の実施例は、スルホン化ブロックコポリマーのブレンステッド酸中心と反応して金属塩を形成するイオン化金属化合物を含む。一実施形態において、イオン化金属化合物は水酸化物、酸化物、アルコラート、カルボキシラート、ホルマート、アセタート、メトキシド、エトキシド、ニトラート、カルボナートまたはビカルボナートを含む。好ましくは、イオン化金属化合物は水酸化物、アセタート、またはメトキシドである。より好ましくは、イオン化金属化合物は水酸化物である。個々の金属について言えば、イオン化金属化合物は、Na+、K+、Li+、Cs+、Ag+、Hg+、Cu+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Cu2+、Cd2+、Hg2+、Sn2+、Pb2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Al3+、Sc3+、Fe3+、La3+またはY3+化合物を含むことが好ましい。好ましくは、イオン化金属化合物は、Ca2+、Fe3+、またはZn2+化合物、例えば亜鉛アセタートであり、より好ましくはイオン化金属化合物はCa2+化合物である。もしくは、アミンは塩基として本発明のスルホン化ブロックコポリマーの酸中心と反応してアンモニウムイオンを形成する。適切な非ポリマー性アミンは、置換基が直鎖、分岐鎖、もしくは環状の脂肪族もしくは芳香族部分、または種々のタイプの置換基の混合物である、第一級、第二級および第三級アミンならびにこれらの混合物を含む。脂肪族アミンは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミンなどを含む。適切な芳香族アミンはピリジン、ピロール、イミダゾールなどを含む。類似の高分子アミンはポリエチレンアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジンなどを含む。中和レベルに関しては、レベルはスルホン化部位の5から100モルパーセントが好ましく、より好ましくはレベルは20から100モルパーセントであり、よりさらに好ましくは、レベルはスルホン化部位の50から100モルパーセントである。このような中和は、米国特許第5,239,010号および第5,516,831号に教示されている(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。)。
【0079】
他の中和技術は、米国特許第6,653,408号に教示されているような、前記スルホン酸官能基の一部がアルミニウムアセチルアセトナートで中和されているプロセス、および米国特許第5,003,012号に教示されているような、式MRx(式中、Mは金属イオンであり、Rは独立して水素およびヒドロカルビル基からなる群より選択され、xは整数1から4である。)で表される薬剤との反応を含む。米国特許第6,653,408号および第5,003,012号の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
さらに他の実施形態において、スルホン化ブロックコポリマーは、塩基(ブレンステッドまたはルイス塩基)を用いる水素結合相互作用により改質される。Advanced Organic Chemistry,Reactions,Mechanisms,and Structures,Fourth Edition by Jerry March,John Wiley & Sons,New York,1992の第8章およびこの中の引用文献にあるブレンステッドおよびルイス塩基の定義を用いれば、塩基は電子対を供与できる化合物である。この場合、塩基はスルホン化ブロックコポリマー中のブレンステッド酸中心を中和するのに十分な強度を有さないが、水素結合相互作用によりスルホン化ブロックコポリマーへの有意な引力を及ぼすのに十分な強度を有する。上で述べたように、窒素化合物は多くは供与できる電子対を有し、酸種を効果的に中和することなく、水素結合によりスルホン酸中心と相互作用することができる。このような窒素含有材料の例は、ニトリル、ウレタン、およびアミドを含む。これらのポリマーアナログであるポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ABS、およびポリウレタンもまた同様に、水素結合相互作用によりスルホン化ブロックコポリマーと相互作用する改質剤として使用できる。同様に、供与できる電子対を有する酸素含有化合物は、塩基としてスルホン化ブロックコポリマー中の酸中心と相互作用して種々のオキソニウムイオンを形成する。このように、ポリマー性および非ポリマー性の両方のエーテル、エステルおよびアルコールは、本発明のスルホン化ブロックコポリマーの改質に使用できる。本発明のスルホン化ポリマーは、グリコール(単独または他の置換基を有する、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコール、またはポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールの混合物(すなわち、Pluronics(登録商標)およびPepgel)などを含む)、ポリテトラヒドロフラン、エステル(ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、脂肪族ポリエステルなどを含む。)、ならびにアルコール(ポリビニルアルコール、多糖、およびデンプンを含む。)と混合されるとき、酸−塩基水素結合相互作用により改質できる。
【0081】
当業者は、スルホン化ブロックコポリマーと他の置換基、例えば1以上のハロゲン基(例えば、フッ素)などとを、さらに反応させることが望ましい場合があることを認めるであろう。
【0082】
イオン化金属化合物に関して、これらのイオン性コポリマーの高温特性の強化は、金属イオンとBブロックドメイン中の1以上のイオン化したスルホナート官能基間のイオン引力の結果であると考えられる。このイオン引力は、固体状態において生じる、イオン架橋の形成をもたらす。イオン性Bブロックドメインの中和によってもたらされる力学的性能の改善および耐変形性は、中和度、従って、イオン架橋の数および関連する架橋の性質により大きく影響を受ける。非ポリマー性塩基の実施例は、反応して金属塩を形成するイオン化金属化合物を含む。イオン化金属化合物は、水酸化物、酸化物、アルコラート、カルボキシラート、ホルマート、アセタート、メトキシド、エトキシド、ニトラート、カルボナートまたはビカルボナートを含む。
【0083】
あるいは、アミンは、本発明のスルホン化ブロックコポリマー中の酸中心と反応させて、塩基としてアンモニウムイオンを形成させることができる。適切な非ポリマー性アミンは、置換基が直鎖、分岐鎖、もしくは環状の脂肪族もしくは芳香族部分、または種々のタイプの置換基の混合物である、第一級、第二級および第三級アミンならびにこれらの混合物を含む。脂肪族アミンは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミンなどを含む。適切な芳香族アミンはピリジン、ピロール、イミダゾールなどを含む。類似の高分子アミンはポリエチレンアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジンなどを含む。
【0084】
窒素含有材料の例は、ニトリル、ウレタン、およびアミド、ならびにこれらのポリマーアナログである、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ABSおよびポリウレタンを含む。酸素含有化合物の適切な例は、ポリマー性および非ポリマー性の両方のエーテル、エステルおよびアルコールを含む。
【0085】
スルホン化度および中和度はいくつかの技術で測定できる。例えば、赤外分析または元素分析は、全官能度を決定するために使用できる。さらに、ブロックコポリマーの溶液の強塩基を用いる滴定は、官能度および/または中和度(金属スルホン酸塩含有量)を決定することができる。本明細書において、中和は、スルホン酸およびスルホナート官能基の合計に対するスルホン酸イオンの百分率に基づく。反応条件および反応プロセスは、実施例および米国特許第5,239,010号および第5,516,831号においてさらに詳しく開示されている(この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。)。
【0086】
6.スルホン化ポリマーの分離
一実施形態において、すべての重合およびスルホン化反応ならびに望ましい後処理プロセスに続く最終段階は、溶媒から最終ポリマーを取り出すための仕上げ処理である。種々の手段および方法が当業者に公知であり、溶媒を蒸発させるための蒸気の使用およびポリマーの凝固後の濾過を含む。スルホン化ポリマーの分離には、非溶媒を用いる凝固に続く濾過もまた用いられている。使用済みの試薬および副生成物が揮発性の場合、流動層乾燥器による回収が行える。この実施形態におけるこれらの仕上げ処理のいずれか1つに続いて、スルホン化プロセスで残留した試薬残渣を除去するために、得られたポリマーを1回以上水中で洗浄することが好ましい。得られたポリマーに水が添加されるとき、乳白色の液中固体懸濁液が得られる。懸濁液から最終生成物を濾去するか、ポリマーを沈降させた後、水相から取り除くかのいずれかにより、不透明な懸濁液からポリマーが移される。別の実施形態において、スルホン化反応が完了したら、ブロックコポリマーは、前段階でブロックコポリマーを分離する必要はなく、物品形(例えば、膜)に直接に成形されることができる。この特定の実施形態において、物品(例えば、膜)は水に浸漬することができ、水中においてもこの形態(固体)は維持される。すなわちブロックコポリマーは水に溶解したり分散したりしない。
【0087】
分離方法とは無関係に、最終結果は、これらの特性に従って、さまざまな魅力的な応用に有用な「清浄な」ブロックコポリマーである。
【0088】
7.スルホン化ポリマーの特性
本発明のポリマーは、上記のブロックコポリマーの1つの内側セグメント、例えば飽和トリブロックコポリマーの内側セグメントを、選択的にスルホン化した直接の結果として、物理的特性の固有のバランスを有し、これにより種々の応用に極めて有用となっている。本発明のスルホン化ブロックコポリマーは架橋しておらず、これらのコポリマーは膜または被覆剤に成形することができる。成形プロセスにおいて、コポリマーは、ミクロ相分離構造に自己集合する傾向がある。スルホナート基は分離相またはイオンチャンネルに組織化する。これらのチャンネルが膜の両面間の距離にまたがる連続構造を形成すると、水およびプロトンを透過する著しい能力を有する。膜に強度を与えるのは、末端セグメントの分離の結果として形成される相の結合性である。末端セグメントはスルホナート官能基をほとんど有さないため、これらは水の添加のみならずメタノールの添加による可塑化に対して非常に抵抗性を有する。膜に優れた湿潤強度を生じさせるのはこの効果である。膜の硬度および柔軟性は、2つの方法により容易に調整できる。前駆体ブロックコポリマーの内側セグメント(Bブロック)のスチレン含有量は、低レベルから100重量%まで増加させることができる。内側セグメントのスチレン含有量が増すに従って、物品であるスルホン化ブロックコポリマー膜はより硬くなり、より柔軟性が低くなる。あるいは、前駆体ブロックコポリマーの末端セグメント(Aブロック)含有量を、約10重量%から約90重量%まで増加させることができ、ポリマーの末端ブロック含有量が増すに従って、得られたスルホン化ブロックコポリマー膜はより硬くなり、より柔軟性が低くなる。より低い末端ブロック含有量では、膜は弱くなりすぎ、約90重量%以上の末端ブロック含有量では、物品である膜の透過性は不十分となる。
【0089】
前駆体ブロックコポリマーの構造を調整することにより、驚くべき湿潤強度、よく調節された高率の水および/またはプロトンの膜透過性、有機非極性液体および気体に対する別格のバリア特性、調節可能な柔軟性および弾性、抑制されたモジュラス、ならびに酸化安定性および耐熱性を有するスルホン化ポリマー膜を製造できる。これらの膜は、メタノール透過に対する優れた耐性およびメタノールの存在下における特性の優れた保持を有することが予期される。これらの膜は架橋されていないので、溶媒に再溶解し、得られた溶液を再成形することにより、これらを再造形または再加工することができる。これらはまた、種々のポリマーメルトプロセスを用いて再使用または再造形することができる。
【0090】
これらの均一にミクロ相が分離された材料の興味ある特徴は、1つの相が容易に水を吸収し、第2の相がずっと極性の低い熱可塑性樹脂であることである。スルホン化された相中の水は、2から3の例をあげればマイクロ波またはラジオ周波数放射線への暴露など、種々の間接的方法を用いて加熱できる。このようにして加熱された水は、熱可塑性樹脂相に十分な熱を伝達してこの相における軟化または流れを可能にすることができる。このような機構は、熱可塑性樹脂相の直接加熱を必要としない、ポリマー「溶接」または成形作業の基礎となりうるものである。このようなプロセスは、全体を加熱する必要がないので非常に効率的であり、広い範囲にわたって強度が調節できるので非常に迅速であり、放射された領域のみが熱くなり、全体の部分の温度は低くてすむので非常に安全でありうる。このようなプロセスは、織物物品の集成体に非常に適している。物品を縫い合わせる代わりに、「溶接」することができる(縫い目穴がない。)。このようなプロセスはまた、電子アセンブリーおよび建築にも使用できる。関連した考えにおいて、本発明のポリマーから製造されたフィルム(配合接着フィルムを含む。)は、単回使用接着剤として用いることができ、ついで水で処理することにより除去できる。
【0091】
以下の実施例に示すように、本発明のブロックコポリマーは多くの顕著で予想外の特性を有する。例えば、本発明に記載のスルホン化ブロックコポリマーは、ASTM E96−00の「乾燥」方法に基づいて、0.1×10−6g/Pa.m.h.、好ましくは1.0×10−6g/Pa.m.h.を超える水透過度、ASTM D412に基づいて100psi、好ましくは500psiを超える湿潤時の引張強度、および100重量%未満の膨潤性を有する。これに引き換え、実施例に示すように、約1.5mmol/gポリマーを超えるスルホン化レベル(−SO3Hユニットの存在)では、先行技術のポリマーはほとんど湿潤時の引張強度を有さない。ところが、本発明のポリマーは、通常500psiを超え、多くの場合約1000psiを超える湿潤時の引張強度を有する。さらにまた、本発明のポリマーは、0.3を超える、乾燥時の引張強度に対する湿潤時の引張強度の比を有することが示されている。
【0092】
8.最終用途、化合物および応用
本発明に記載のスルホン化ブロックコポリマーは、種々の応用および最終用途に使用できる。選択的にスルホン化された内側ブロックを有するこのようなポリマーは、優れた湿潤強度、優れた水およびプロトン透過性、優れたメタノール耐性、容易なフィルムまたは膜形成、バリア特性、柔軟性および弾性の調節、調節可能な硬度、ならびに熱/酸化安定性の組み合わせが重要な応用において有用性が見いだされる。本発明の一実施形態において、本発明のスルホン化ブロックコポリマーは、電気化学的応用、例えば、燃料電池(セパレーター相)、燃料電池のためのプロトン交換膜、電極組立物に使用するスルホン化ポリマーセメント中の金属含浸炭素粒子の分散液において使用され、燃料電池、水電解槽(電解液)、酸電池(電解液セパレーター)、スーパーキャパシタ(電解液)、金属回収プロセスのための分離セル(電解液バリア)、検出器(特に湿度を検出するため)などの応用を含む。本発明のスルホン化ブロックコポリマーは、脱塩膜、多孔膜への被覆剤、吸収剤、家庭用衛生物品、水ゲルおよび接着剤としても用いられる。さらに、本発明のブロックコポリマーは、膜または織物の一方から他方へ水を迅速に透過させる能力(例えば、着用者の皮膚の表面からの発汗による水分を膜または織物の外に逃すことを可能にすること、逆もまた同様)の結果として、快適性のレベルを提供すると同時に、膜、被覆された織物、および貼り合わせ布が種々の環境要素(風、雨、雪、化学薬剤、生物学的薬剤)からの保護のバリアを提供できる、防御用被服および通気性の良い織物への応用に使用できる。このような膜および織物から製造される完全密閉型スーツは、煙、化学物質流出、または種々の化学または生物学的薬剤への暴露の可能性がある場合に、緊急の場面に第1応答者を保護することができる。同様な必要性は、医療応用、特に外科手術において、バイオハザードへの暴露のリスクがある場合に生じる。これらのタイプの膜から作られる外科用手袋およびドレープは、医療環境において有用な場合の他の応用である。これらのタイプの膜から作られる物品は、米国特許第6,537,538号、第6,239,182号、第6,028,115号、第6,932,619号および第5,925,621号に記載されているように、抗菌性および/または抗ウイルス性および/または抗微生物性を有することができ、ここでは、ポリスチレンスルホナートがHIV(ヒト免疫不全ウイルス)およびHSV(単純ヘルペスウイルス)に対して阻害剤として作用することが指摘されている。家庭用衛生応用において、発汗からの水蒸気を透過させる一方で他の体液の漏れに対するバリアを提供し、湿潤環境においてもこの強度特性を維持する本発明の膜または織物は好都合であろう。このようなタイプのおむつおよび成人失禁用構造物の使用は現在の技術を超える改良となるであろう。
【0093】
織物は、ライナー生地にスルホン化ポリマーを溶液成形するか、またはライナー生地とシェル生地の間にスルホン化ポリマーのフィルムを積層することにより製造できる。
【0094】
本発明のスルホン化ブロックコポリマーは、吸収性物品(特に超吸収性材料を用いた。)に使用することもできる。特に、スルホン化ブロックコポリマーは、超吸収性粒子に水を含有および/または分配させるために使用することができる。例えば、超吸収性粒子は、スルホン化ブロックコポリマーのフィルム中に覆うことができる。他の実施形態において、本発明の材料は、細菌の増殖を防ぐ。使い捨ての吸収性パーソナルケア物品において、超吸収剤として一般に知られる、水膨潤性で一般に水不溶性の吸収性材料の使用が知られている。このような吸収性材料は、一般に、全体の容積を抑える一方で、このような物品の吸収能力を増加させるために、吸収性物品、例えば、おむつ、用便しつけ用のパンツ、成人失禁用物品、および女性用衛生物品として用いられる。このような吸収性材料は、一般に、繊維性基材、例えば木材パルプ毛布の基材と混合した超吸収性粒子(SAP)の複合材料として存在する。木材パルプ毛布の基材は、一般に、毛布1グラムについて液体約6グラムを吸収する能力がある。超吸収性材料(SAM)は、一般に、SAM1グラムについて液体少なくとも約10グラムを吸収する能力を有し、望ましくは、SAM1グラムについて液体少なくとも約20グラム、多くの場合、SAM1グラムについて液体約40グラム以下を吸収する能力を有する。
【0095】
本発明の一実施形態において、超吸収性材料は架橋ポリアクリル酸のナトリウム塩を含む。適切な超吸収性材料は、限定するものではないが:Dow AFA−177−140およびDrytech 2035(両方ともDow Chemical Company、Midland、Mich.から入手できる);Favor SXM−880(Stockhausen,Inc.of Greensboro、N.C.から入手できる);Sanwet IM−632(Tomen America of New York,N.Y.から入手できる。);およびHysorb P−7050(BASF Corporation,Portsmouth,Va.から入手できる)を含む。望ましくは、本発明の吸収性複合材料は、本発明のスルホン化ブロックコポリマーと組み合わせ、場合により、1以上のタイプの繊維原料を含有する繊維性基材を含有する上記の超吸収性材料を含む。
【0096】
飲用水の透過および貯蔵装置のための被覆などの応用は、湿潤環境におけるこれらのポリマーの優れた力学的性能と、生物活性種の増殖を抑制するこれらの傾向との組み合わせをうまく利用するものになる。内側セグメントにおいて選択的にスルホン化されたブロックコポリマーのこの特徴は、排水(下水および工場排水の両方)管および処理施設に応用するのに有用であり得る。同様に、本発明のポリマーは、建築材料の表面のカビの繁殖を抑制するのに使用できる。これらのポリマーは、より大きな生物の増殖も抑制することができ、また種々の海洋応用において汚れを防ぐために有用である。米国特許第6,841,601号に記載されているように、湿度交換セルの建造のための選択的にスルホン化されたブロックコポリマーの自己組織化の特徴の使用が知られている。本出願において、本発明のポリマーは、優れた湿潤強度を有する膜要素の二次加工が可能であり、強化を必要としない。このことにより、膜エネルギー回収装置の建造を容易にすることができる。不織布ハウスラップ材料(DuPont製TYVEK(登録商標)など)は、風および天候要素が住宅の外側に入り込むのを防ぐために、住宅の建造に現在使われている。ある環境においては、この技術は、住宅の壁を通して水蒸気を十分に透過させず、住宅の壁内にカビが繁殖する条件となっている。本発明のポリマーから製造されるアセンブリーは、住宅の壁から水蒸気を効果的に逃がすことを可能にする利点を有すると共に、優れたバリア性能を提供することもできる。同様に、水蒸気の透過を可能にするじゅうたんの下敷材料が求められている。コンクリートスラブ建造物を用いる住宅にとって、湿度が高いか雨量の多い時期に水がコンクリートを通して顕著に流れる場合、この要求は重要である。じゅうたんの下敷材料が水蒸気を等しい速度で透過させない場合、じゅうたんの下敷材料とスラブの表面間に濃縮された水の増加により問題が起こる場合がある。本発明のポリマーに基づくポリマー被覆剤で裏打ちしたじゅうたんにより、この問題を克服することができる。
【0097】
本発明のスルホン化ポリマーはまた、難燃性材料(特に拡大している火事の進路の可燃性物品にスプレーするための)としても使用することができる。このようなスルホン化ポリマーは、通常の炭化水素ポリマーと相溶しづらい、通常の着火遅延材料の優れた「担体」であり得る。
【0098】
さらにまた、本発明のスルホン化ブロックコポリマーは、環境から水分を収集するための膜としても使用できる。従って、このような膜は、一定水準の水が容易に入手できない状況において、大気から新鮮な水を収集するために使用できる。
【0099】
さらにまた、本発明のコポリマーは、コポリマーの特性に悪影響を与えない他の成分と混合することができる。本発明のブロックコポリマーは、様々な他のポリマー(オレフィンポリマー、スチレンポリマー、粘着付与樹脂、親水性ポリマーおよび工業用熱可塑性樹脂を含む。)、高分子液体(イオン液体、天然オイル、芳香剤など)および充填剤(ナノクレイ、カーボンナノチューブ、フラーレン)ならびに従来の充填剤(タルク、シリカなど)と混合することができる。
【0100】
加えて、本発明のスルホン化ポリマーは、通常のスチレン/ジエンおよび水素化されたスチレン/ジエンブロックコポリマー(Kraton Polymers LLCから入手できるスチレンブロックコポリマーなど)と混合できる。これらのスチレンブロックコポリマーは、線状S−B−S、S−I−S、S−EB−S、S−EP−Sブロックコポリマーを含む。スチレンとイソプレンおよび/またはブタジエンベースのラジアルブロックコポリマー、ならびに選択的に水素化されたラジアルブロックコポリマーもまた含む。
【0101】
オレフィンポリマーは、例えば、エチレンホモポリマー、エチレン/α−オレフィンコポリマー、プロピレンホモポリマー、プロピレン/α−オレフィンコポリマー、高強度ポリプロピレン、ブチレンホモポリマー、ブチレン/αオレフィンコポリマー、および他のαオレフィンコポリマーまたは共重合体を含む。典型的なポリオレフィンは、例えば、限定するものではないが、実質的に線状のエチレンポリマー、均一分岐線状エチレンポリマー、不均一分岐線状エチレンポリマーを含み、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度または極低密度ポリエチレン(ULDPEまたはVLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)および高圧低密度ポリエチレン(LDPE)を含む。本明細書において、他のポリマーは、エチレン/アクリル酸(EEA)コポリマー、エチレン/メタクリル酸(EMAA)アイオノマー、エチレン/ビニルアセタート(EVA)コポリマー、エチレン/ビニルアルコール(EVOH)コポリマー、エチレン/環状オレフィンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマーおよびコポリマー、プロピレン/スチレンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリブチレン、エチレン一酸化炭素共重合体(例えば、エチレン/一酸化炭素(ECO)コポリマー、エチレン/アクリル酸/一酸化炭素ターポリマーなど)を含む。本明細書において、より他のポリマーは、ポリ塩化ビニル(PVC)およびPVCと他の材料との混合物を含む。
【0102】
スチレンポリマーは、例えば、結晶ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、中衝撃性ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリルコポリマー、スチレン/アクリロニトリル/ブタジエン(ABS)ポリマー、シンジオタクチックポリスチレン、スルホン化ポリスチレンおよびスチレン/オレフィンコポリマーを含む。典型的なスチレン/オレフィンコポリマーは実質的にランダムなエチレン/スチレンコポリマーであり、好ましくは、共重合したスチレンモノマーを少なくとも20、より好ましくは25重量パーセント以上含有する。
【0103】
本明細書および特許請求の範囲においては、用語「工業用熱可塑性樹脂」は、種々のポリマー、例えば熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、ポリ(アリールエーテル)およびポリ(アリールスルホン)、ポリカーボネート、アセタール樹脂、ポリアミド、ハロゲン化熱可塑性樹脂、ニトリルバリア樹脂、ポリ(メチルメタクリラート)ならびに環状オレフィンコポリマーなどを含み、さらには、米国特許第4,107,131号に記載されている(この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。)。
【0104】
粘着付与樹脂は、ポリスチレンブロック相溶性樹脂および中央ブロック相溶性樹脂を含む。ポリスチレンブロック相溶性樹脂は、クマロン−インデン樹脂、ポリインデン樹脂、ポリ(メチルインデン)樹脂、ポリスチレン樹脂、ビニルトルエン−アルファメチルスチレン樹脂、アルファメチルスチレン樹脂およびポリフェニレンエーテル(特にポリ(2,6−ジメチル−l,4−フェニレンエーテル))の群から選択することができる。このような樹脂は、例えば、商標「HERCURES」、「ENDEX」、「KRISTALEX」、「NEVCHEM」および「PICCOTEX」で販売されている。水素化(内側)ブロックと相溶する樹脂は、相溶性C5炭化水素樹脂、水素化されたC5炭化水素樹脂、スチレン化C5樹脂、C5/C9樹脂、スチレン化テルペン樹脂、完全に水素化されたまたは部分的に水素化されたC9炭化水素樹脂、ロジンエステル、ロジン誘導体およびこれらの混合物からなる群より選択することができる。これらの樹脂は、例えば、商標「REGALITE」、「REGALREZ」、「ESCOREZ」および「ARKON」で販売されている。
【0105】
親水性ポリマーは、供与できる電子対を有することで特徴付けられる高分子塩基を含む。このような塩基の例は、高分子アミン、例えばポリエチレンアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジンなど;窒素含有材料の高分子アナログ、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ABS、ポリウレタンなど;酸素含有化合物の高分子アナログ、例えば、高分子エーテル、エステル、およびアルコールなど;およびグリコールと混合したときの酸−塩基水素結合相互作用、例えば、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールなど、ポリテトラヒドロフラン、エステル(ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、脂肪族ポリエステルなどを含む)、ならびにアルコール(ポリビニルアルコールを含む。)、多糖、およびデンプンを含む。使用できる他の親水性ポリマーは、スルホン化ポリスチレンを含む。イオン液体などの親水性液体を本発明のポリマーと組み合わせて膨潤した導電フィルムまたはゲルを製造することができる。米国特許第5,827,602号および第6,531,241号(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。)に記載されているようなイオン液体は、前もって成形した膜を膨潤させるか、または膜、フィルム・コーティングまたは繊維を成形する前に溶媒系に添加することにより、スルホン化ポリマーに添加することができる。このような組み合わせは、固体電解質または水透過性膜において有用であってよい。
【0106】
添加成分として使用できる典型的な材料は、限定するものではないが:
1)色素、抗酸化剤、安定化剤、界面活性剤、ワックス、および流れ促進剤;
2)粒子、充填剤およびオイル;ならびに
3)組成物の加工性および取り扱い性を高めるために添加する溶媒および他の材料
を含む。
【0107】
色素、抗酸化剤、安定化剤、界面活性剤、ワックスおよび流れ促進剤に関して、組成物中に本発明のスルホン化ブロックコポリマーと共に用いる場合、これらの成分は、組成物の全重量に対して10%以下、すなわち0から10%の量を含むことができる。これらの成分のいずれか1つ以上が存在する場合、これらは約0.001から約5%の量で存在することができ、よりさらに好ましくは約0.001から約1%の量で存在することができる。
【0108】
粒子、充填剤およびオイルに関しては、このような成分は、組成物の全重量に対して、50%以下、すなわち0から50%の量で存在することができる。これらの成分いずれか1つ以上が存在する場合、約5から約50%の量、好ましくは約7から約50%の量で存在することができる。
【0109】
組成物の加工性および取り扱い性を高めるために添加する溶媒および他の材料の量は、多くの場合、配合される特定の組成物ならびに添加する溶媒および/または他の材料によって決まることを当業者は理解するであろう。通常、これらの量は、組成物の全重量に対して50%を超えない。
【0110】
本発明のスルホン化ブロックコポリマーは、上記の任意の物品を製造するために使用できるが、多くの場合、多くの任意の形態、例えば、フィルム、シート、被覆剤、バンド、ストリップ、異形材、成形品、フォーム、テープ、織物、糸、フィラメント、リボン、繊維、複数の繊維または、繊維織物などの形態をとることができる。このような物品は、種々のプロセス、例えば流延、射出成形、上乗せ成形、浸漬、押出(ブロックコポリマーが中和形である場合)、回転成形、スラッシュ成形、繊維紡糸(ブロックコポリマーが中和形の場合のエレクトロスピニングなど)、フィルム製造、塗装または発泡などにより製造することができる。
【0111】
出願人は、さらに本発明のブロックコポリマーからのフィルム成形物の透過性を変化させる方法を請求する。極性溶媒および無極性溶媒から選択される2以上の溶媒を含む溶媒混合物を用いることにより、水を蓄える異なる機構を示す異なる構造を得ることが可能である。このことはまた、単一のクラスのブロックコポリマー、すなわち本発明のブロックコポリマーを用いる特定の用途のために透過性を微調整するための、本発明のブロックコポリマーの使用を可能にする。好ましくは、本発明の方法に用いられる極性溶媒は、水、アルコール(1から20炭素原子、好ましくは1から8炭素原子、より好ましくは1から4炭素原子を有する。);エーテル(1から20炭素原子、好ましくは1から8炭素原子、より好ましくは1から4炭素原子を有する。)(環状エーテルを含む。);カルボン酸エステル、硫酸エステル、アミド、カルボン酸、酸無水物、スルホキシド、ニトリル、ならびにケトン(1から20炭素原子、好ましくは1から8炭素原子、より好ましくは1から4炭素原子を有する。)(環状ケトンを含む。)から選択される。より具体的には、極性溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、置換および非置換フラン、オキセタン、ジメチルケトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、置換および非置換テトラヒドロフラン、メチルアセタート、エチルアセタート、プロピルアセタート、メチルスルファート、ジメチルスルファート、二硫化炭素、ギ酸、酢酸、スルホ酢酸、無水酢酸、アセトン、クレゾール、クレオソール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、シクロヘキサノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、水およびジオキサンから選択され、水、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、酢酸、スルホ酢酸、メチルスルファート、ジメチルスルファート、およびIPAがより好ましい極性溶媒である。
【0112】
好ましくは、本発明の方法に用いる無極性溶媒は、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロメタン、四塩化炭素、トリエチルベンゼン、メチルシクロヘキサン、イソペンタン、およびシクロペンタンから選択され、トルエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソペンタン、およびジクロロエタンが最も好ましい無極性溶媒である。前述のように、この方法は2以上の溶媒を用いる。このことは、極性溶媒単独、無極性溶媒単独または極性溶媒および無極性溶媒の組み合わせから選択される2、3、4またはこれ以上の溶媒を使用できることを意味する。溶媒のお互いの比率は広く変えることができる。例えば、2つの溶媒を有する溶媒混合物において、比率は99.99:0.01から0.01:99.9の範囲であってよい。フィルムが成形される条件は変えることができる。好ましくは、フィルムは、空気中、10℃から200℃の温度、好ましくは室温で、フィルムを容易に剥離することができる表面上へ成形される。もしくは、成形溶液をポリマーのための非溶媒と接触させることができ、これにより溶媒が除去されて固体のフィルムまたは物品が形成される。もしくは、織布または不織布をポリマー溶液に通過させることにより、被覆処理した織物を製造することができる。ついで、乾燥またはポリマーのための非溶媒を用いる抽出により溶媒を除去できる。
【0113】
以下の実施例は、例示を意図したものに過ぎず、本発明の範囲を多少なりとも限定することを意図したものではなく、またこのように解釈してはならない。
【実施例1】
【0114】
ポリスチレンはパラ位に選択的にスルホン化されているので、本発明者らは、パラ位をブロックするアルキル基を有するポリスチレンは、よりスルホン化を受けずらい(スルホン化の速度が低下するか、または完全にスルホン化を受けにくくなる。)であろうと推測した。この仮説を試験するために、ポリスチレン(48,200Mn)とポリ(パラ−tert−ブチルスチレン)(約22,000Mn)の50/50(w/w)混合物に実験を行った。ポリスチレンセグメントの30mol%がスルホン化されるのを目標にして混合物をスルホン化した。スルホン化ポリマー材料を除去するために、スルホン化反応混合物を全部、アルミナに2度直接に通過させた。ついで、吸着されなかったポリマー溶液を乾燥し、得られたベージュ色のポリマーをメタノールで抽出してスルホン化剤を除いた。ポリマーを再度減圧下で乾燥した。スルホン化し、吸着されなかった混合物と元の未反応混合物とを定量的13C NMRおよび1H NMRで分析し、存在するスチレンおよびパラ−tert−ブチルスチレンの量を測定した(表1)。
【0115】
【表1】

【0116】
明らかに、ポリ−パラ−tert−ブチルスチレン残基よりもポリスチレン残基の方がスルホン化反応は起こりやすい。従って、パラ−tert−ブチルスチレンのポリマーブロックはスルホン化を受けにくく、非置換スチレンのポリマーブロックはスルホン化を受けやすい。
【実施例2】
【0117】
この実施例において、本発明者らはスルホン化前の種々のポリマーを特徴付けた。スルホン化の実施例に用いたブロックコポリマーを以下の表2に示す。
【0118】
【表2】

ただし、S=スチレン、E=エチレン、B=ブチレン、ptBS=パラ−tert−ブチルスチレン、E/Bは水素化されたポリブタジエンであり、pMS=p−メチルスチレンであり、PE=水素化された低いビニル含有量の(およそ10%の1,2−付加)ポリブタジエンであり、(ptBS−E/B−S)xポリマーに関して、「内側ブロックPSC(%)」を算出するためにE/B−Sを内側ブロックとみなし、「見掛けの分子量2−アーム(kg/mol)」は、GPC(ポリスチレンで較正)で測定した生成物混合物の線状トリブロック成分(連結したポリマーに関して2アーム)の分子量であり、「真の分子量2−アーム(kg/mol)」は、ポリスチレン換算分子量を真の分子量値に合わせるために、以下の係数(モノマーの分子量に基づいて調整された。)を用いてトリブロックコポリマーの実際の分子量を算出するために調整された見掛けの分子量値である:ポリスチレンについては、見掛けの分子量にポリスチレン(重量%)×1.0をかける、水素化されたポリブタジエン(E/B)については、見掛けの分子量に水素化されたポリブタジエン(重量%)×0.54をかける、ptBSについては、見掛けの分子量にポリ−パラ−tert−ブチルスチレン(重量%)×1.6をかける、およびpMSについては、見掛けの分子量にパラメチルスチレン(重量%)×1.2をかける。「Aldrich−1」は、Aldrich Chemical Companyから購入したものを用いた(物品番号448885)。
【0119】
Aldrich−1試料に添付されている情報には、スルホン化され、選択的に水素化されたS−B−Sトリブロックコポリマーであると指摘されていた。G−1およびG−2と表示されているポリマーは、KRATON Polymersから入手できる選択的に水素化されたS−B−Sトリブロックコポリマーである。A−1、A−2およびA−3と表示されているポリマーは、選択的に水素化されたABAトリブロックコポリマーであり、ここでAブロックは、スチレンポリマーブロックであり、水素化の前のBブロックは、スチレンとブタジエンの制御された分布のブロックコポリマーであり、米国公開特許公報第2003/0176582号に開示された方法に従って製造した。上記の公開特許公報に記載の手順を用いて水素化することにより、ポリマーA−1、A−2およびA−3を得た。
【0120】
T−1、T−2およびT−2.1と表示されているポリマーは、選択的に水素化された(A−B)Xブロックコポリマーであり、ここでAブロックは、スルホン化を受けにくいことが見いだされたパラ−tert−ブチルスチレンのポリマーブロックであり、Bブロックは、スルホン化を受けやすいことが見いだされた水素化されたブタジエンとスチレンの制御された分布のブロックである。これらの3つのポリマーは、本質的に同じプロセスを用い、わずかに異なる量の種々のモノマーを用いて製造した。Aブロックは、開始剤としてs−BuLiを用い、シクロヘキサン(約40℃)中でp−t−ブチルスチレン(ptBS)をアニオン重合させることにより製造した。リビングポリ−p−t−ブチルスチレンのシクロヘキサン溶液に分布制御剤(ジエチルエーテル(DEE)、6重量%)を混合した。米国公開特許公報第2003/0176582号に記載の手順を用いて、ポリ−p−t−ブチルスチレン末端セグメントに、ブタジエン中にスチレンを制御分布させたポリマーセグメントを重合させた。得られたジブロックコポリマーをメチルトリメトキシシラン(Si/Li=0.45/l(mol/mol))を用いて連結した。連結したポリマーは、大部分線状A−B−Aトリブロックコポリマーであった。標準的なCo2+/トリエチルアルミニウム法を用いて水素化し、表2に示すポリマーを得た。
【0121】
T−3と表示されているポリマーは、Aブロックが非置換スチレンとp−t−ブチルスチレンとのランダムコポリマーブロックであることを除いては、T−2と類似している。このポリマーは、p−t−ブチルスチレンとスチレン(90/10(wt/wt))との混合物をAブロックコポリマーのアニオン重合に用いるということを除いて、同様なプロセスで製造される。合成の残りの部分は、T−2の製造に関して記載したものと同じである。再び、大部分線状ポリマーであるトリブロックコポリマーが得られた。非置換スチレンモノマーの97%以上がコポリマーのBブロック中にあるので、Aブロックはスルホン化を受けにくく、Bブロックはスルホン化受けやすかった。
【0122】
T−4およびT−5と表示されているポリマーは、水素化されていないブロックコポリマー(A−B)Xであり、ここでAブロックはパラ−tert−ブチルスチレンのポリマーブロックであり、Bブロックは非置換スチレンのポリマーブロックである。T−4およびT−5の製造において、シクロヘキサン中でs−BuLiを用いてp−t−ブチルスチレンのアニオン重合を開始し、推定分子量約26,000g/molを有するAブロックを得た。リビングポリ−p−t−ブチルスチレンのシクロヘキサン溶液をスチレンモノマーで処理した。続いて起こる重合により、ポリスチレンのみからなるBブロックを有するリビングジブロックコポリマーが得られた。リビングポリマー溶液をテトラメトキシシラン(Si/Li=0.40/1(mol/mol))を用いて連結した。分岐ポリマー(主成分)および線状ポリマーの混合物が得られた。これらのポリマーの内側セグメントがポリスチレンのみを含有し、末端セグメントがポリ−p−t−ブチルスチレンのみを含有するため、これらのポリマーの内側セグメントは、末端セグメントよりもより一層スルホン化を受けやすかった。
【0123】
P−1と表示されているポリマーは、水素化されていないブロックコポリマーである(A−B)Xブロックコポリマーであり、ここでAブロックはパラメチルスチレンのポリマーブロックであり、Bブロックは非置換スチレンのポリマーブロックである。P−1の合成において、シクロヘキサン中でs−BuLiを用いてp−メチルスチレン(Deltechから入手したものを用いた)のアニオン重合を開始した。温度範囲30℃から65℃で重合を調節し、分子量(スチレン換算)20,100を有するAブロックを得た。リビングポリ−p−メチルスチレンのシクロヘキサン溶液をスチレンモノマー(50℃)で処理した。続いて起こる重合により、ポリスチレンのみからなるBブロックを有するリビングジブロックコポリマー(スチレン換算分子量=60,200)を得た。テトラメトキシシラン(Si/Li=0.53/1(mol/mol))を用いてリビングポリマー溶液を連結した。分岐ポリマー(少量成分)および線状連結ポリマーの混合物を得た。これらのポリマーの内側セグメントはポリスチレンのみを含有し、末端セグメントはポリ−p−メチルスチレンのみを含有するため、これらのポリマーの内側セグメントは末端セグメントよりもより一層スルホン化を受けやすいと考えられる。
【0124】
E−1と表示されているポリマーは選択的に水素化された(A−B)Xブロックコポリマーであり、ここでAブロックは水素化された低ビニル含有量ポリブタジエンの半結晶性ポリエチレン様ブロックであり、スルホン化を受けにくいことが見いだされ、Bブロックはポリスチレンであり、スルホン化を受けやすいことが見いだされた。シクロヘキサン中で、開始剤としてs−BuLiを用い、温度範囲30℃から60℃で1,3−ブタジエンのアニオン重合を行うことによりAブロックを製造した。重合を完了させるのに、1時間と少しかかった。MeOHを添加してリビングポリマー溶液のアリコートをクエンチし、H−NMR技術を用いて分析した。ブタジエン9%のみが1,2−付加(ビニル付加)により重合していた。シクロヘキサン溶液中でリビング低ビニル含有量ポリブタジエンをスチレン(50℃、約半時間)と反応させてBブロックを製造した。得られたリビングジブロックコポリマーをテトラメトキシシラン(Si/Li=0.52/1(mol/mol))を用いて連結した。カップリング反応を70℃で終夜進行させた。連結したポリマーは大部分線状A−B−Aトリブロックコポリマーであった。標準的Co2+/トリエチルアルミニウム(30ppmCo)法を用いて水素化(70℃、650psig、約2時間)し、表2に記載したポリマーを得た。ポリマー溶液のアリコートを乾燥して溶媒を除去した。乾燥ポリマーは200℃(半結晶性Aブロックの融点のかなり上)で薄膜に容易に圧縮成形された。これによりブロックコポリマーの熱可塑性があきらかになった。
【0125】
TS−1と表示されているポリマーは、選択的に水素化された(A−D−B)Xブロックコポリマーであり、ここでAブロックはパラ−tert−ブチルスチレンのポリマーブロックであり、Bブロックは非置換スチレンのポリマーブロックである。Dと表示されているブロックは、水素化されたブタジエンであり、Xはカップリング剤の残基を含有するシリコンである。TS−1の合成において、シクロヘキサン中でs−BuLiを用いてp−t−ブチルスチレンのアニオン重合を開始し、推定分子量約22,000g/molを有するAブロックを得た。リビングポリ−p−t−ブチルスチレン(ptBS−Li)のシクロヘキサン溶液に、ジエチルエーテル(全溶液の6重量%)を加えた。エーテルで改質された溶液を十分なブタジエンで処理して、分子量28,000g/molを有する第2のセグメント(ptBS−Bd−Li)を得た。ポリブタジエンセグメントは、40重量%の1,2−付加量を有していた。リビング(ptBS−Bd−Li)ジブロックコポリマー溶液をスチレンモノマーで処理した。続いて起こる重合により、ポリスチレンのみからなる第3ブロック(Sブロック分子量=25,000g/mol)を有するリビングトリブロックコポリマー(ptBS−Bd−S−Li)を得た。テトラメトキシシラン(Si/Li=0.41/1(mol/mol))を用いてリビングポリマー溶液を連結した。分岐ポリマー((ptBS−Bd−S)3)(主成分)および線状ポリマー((ptBS−Bd−S)2)の混合物を得た。T−1およびT−2に関して前述した方法を用いて水素化して、ペンタブロックコポリマーのブタジエン部分のC=C不飽和を除去し、所望の(A−D−B)Xブロックコポリマーを得た。このポリマーの内側セグメントはポリスチレンのみを含有し、末端セグメントはポリ−p−t−ブチルスチレンのみを含有していたので、これらのポリマーの内側セグメントは、末端セグメントよりもより一層スルホン化を受けやすかった。水素化されたBdセグメント(E/Bコポリマー)はスルホン化を受けにくく、ポリ−p−t−ブチルスチレン末端セグメントとスルホン化ポリスチレン中心セグメント間の強化スペーサーブロックとしての役を果たした。ポリマーTS−2、TS−3、およびTS−4は、前述のポリマーTS−1の製造方法を用い、異なる量のモノマーを用いて製造し、表に2記載されている材料を得た。
【実施例3】
【0126】
実施例2に記載されているポリマーを、本発明の手順に従ってスルホン化した。
【0127】
典型的な実験において、スルホン化を受けにくい末端セグメントおよびスルホン化を受けやすい内側セグメントを有する弾性トリブロックコポリマー(表2でT−2と表示されているポリマー)を、スルホン化剤である硫酸アセチルで処理した。ポリ−t−ブチルスチレン(ptBS)末端セグメントおよび、2つのモノマーの制御分布を有するブタジエン(Bd)およびスチレン(S)とのコポリマーを選択的に水素化することにより合成される内側セグメント(S/E/B)を有するトリブロックコポリマー(ptBS−S/E/B−ptBS(20g))を、1,2−ジクロロエタン(DCE)(400ml)に溶解し、溶液を43Cに加熱した。別の容器中で、無水酢酸(AcOAc)(10.85g,0.106mol)のDCE(40ml)冷(氷浴)溶液と冷硫酸(6.52g,0.067mol)とを混合することにより、硫酸アセチル試薬を調製した。ポリマーのDCE溶液に撹拌しながら硫酸アセチルの冷溶液を加えた。スルホン化条件を4.5時間続けた。内側セグメントが選択的にスルホン化されたトリブロックコポリマーを沸騰水で分離し、過剰の水(洗浄水のpHが中性になるまで)で洗浄し、減圧下で乾燥した。乾燥した選択的にスルホン化されたポリマーのアリコート(2.34g)をテトラヒドロフラン(THF)およびメタノール(MeOH)の混合物(5/1(v/v))に溶解し、ポリマーに結合したスルホン酸官能基を、水酸化ナトリウム(NaOH)(0.245N)のメタノール/水(80/20(w/w))溶液を用いて、チモールブルーの終点まで滴定した。この分析により、ブロックコポリマー中のポリスチレン部位の33.6mol%がスルホン化されたことが見いだされた。
【0128】
表3において、T−1、T−3、TS−1、TS−2、TS−3およびTS−4と表示されているポリマーは、本質的に同じ技術を用いてスルホン化された。続く実験に用いた試薬の量はわずかに異なっており、これによりわずかに異なるレベルのスルホン化が行われた(スルホナート(mmol)/ポリマー(g))。
【0129】
関連した実験において、スルホン化を受けにくい末端セグメントおよびスルホン化を受けやすい内側セグメントを有する可塑性トリブロックコポリマーを、硫酸アセチルでスルホン化した。ポリ−p−t−ブチルスチレン(ptBS)末端セグメントおよび、ポリスチレン(S)内側セグメントを有するトリブロックコポリマー(ptBS−S−ptBS(ポリマーT−4.1と表示されている、表2)(20g))を、1,2−ジクロロエタン(DCE)(500g)に溶解し、溶液を49Cに加熱した。別の容器中で、無水酢酸(AcOAc)(18g,0.18mol)のDCE(20から30ml)冷(氷浴)溶液と硫酸(10.4g,0.11mol)とを混合することにより、硫酸アセチル試薬を調製した。ポリマーのDCE溶液に、撹拌しながら硫酸アセチルの冷溶液を加えた。スルホン化条件を4.1時間続けた。内側セグメントが選択的にスルホン化されたトリブロックコポリマーを過剰の水で凝固させることにより分離し、ポリマーに結合していない酸性残渣を除去するために水で洗浄(洗浄水のpHが中性になるまで)し、減圧下で乾燥した。乾燥した選択的にスルホン化されたポリマーのアリコート(1.04g)をトルエンおよびメタノール(MeOH)の混合物(1/2(v/v))に溶解し、ポリマーに結合したスルホン酸官能基を水酸化ナトリウム(NaOH)(0.10N)のメタノール/水(80/20(w/w))溶液を用い、チモールブルーの終点まで滴定した。この分析により、コポリマーの内側ブロックのポリスチレン部位の37mol%がスルホン化されたことが見いだされた。
【0130】
わずかに異なる量のスルホン化剤を用いてこの手順を数回繰り返して、表3に示したデータを得た。
【0131】
密接に関連した実験において、ポリ−p−メチルスチレン(pMS)末端セグメントおよびポリスチレン(S)内側セグメントを有する可塑性トリブロックコポリマー(pMS−S−pMS(ポリマーP−1と表示されている、表2)(20g))を1,2−ジクロロエタン(DCE)(511g)に溶解し、溶液を55Cに加熱した。別の容器中で、無水酢酸(AcOAc)(20g,0.20mol)のDCE(10g)溶液と冷硫酸(12.2g,0.12mol)とを混合することにより、硫酸アセチル試薬を調製した。ポリマーのDCE溶液に、撹拌しながら硫酸アセチルの冷溶液を加えた。スルホン化条件を4時間続けた。内側セグメントが選択的にスルホン化されたトリブロックコポリマーを過剰の水で凝固させることにより分離し、ポリマーに結合していない酸性残渣を除去するために水で洗浄(洗浄水のpHが中性になるまで)し、減圧下で乾燥した。乾燥した選択的にスルホン化されたポリマーのアリコート(1.0g)をテトラヒドロフランおよびMeOH(2/1(v/v))の混合物に溶解し、ポリマーに結合したスルホン酸官能基を、水酸化ナトリウム(NaOH)(0.135N)のメタノール/水(80/20(w/w))溶液を用い、チモールブルーの終点まで滴定した。コポリマーの内側ブロックのポリスチレン部位の約35mol%がスルホン化されたと考えられる。
【0132】
ポリエチレン様(水素化された低ビニル含有量ポリブタジエン)末端セグメントおよびポリスチレン(S)内側セグメントを有する可塑性トリブロックコポリマー(PE−S−PE(ポリマーE−1と表示されている、表2)(20g))を、1,2−ジクロロエタン(DCE)(500g)に分散し、溶液を65Cに加熱した。別の容器中で、冷無水酢酸(AcOAc)(20g,0.19mol)のDCE(20ml)溶液と硫酸(12.6g,0.13mol)とを混合し、硫酸アセチル試薬を調製した。撹拌しながら、ポリマーのDCEスラリーに硫酸アセチルの冷溶液を加えた。スルホン化条件を4時間続けた。内側セグメントが選択的にスルホン化されたトリブロックコポリマーを使用済のスルホン化剤およびDCEをデカントして除き、ポリマーに結合していない酸性残渣を除去するために水で洗浄(洗浄水のpHが中性になるまで)し、減圧下で乾燥した。乾燥した選択的にスルホン化されたポリマーのアリコートをキシレンの存在下で加熱したが溶解しなかった。このことは、コポリマーの内側ブロックのポリスチレン部位がスルホン化されたことを裏付ける証拠と考えられた。同様に、コポリマーのBブロックに存在する−SO3H部位の強い相互作用の結果として、このポリマーはもはや圧縮成形できなかった。
【0133】
【表3】

ただし、S=スチレン、E=エチレン、B=ブチレン、ptBS=パラ−tert−ブチルスチレンであり、E/Bは水素化されたポリブタジエンであり、出発ポリマーは表2に記載されている。「Aldrich−1」はAldrich Chemical Company(物品番号448885)から購入したものを用いた(官能基はMSDSに記載されている)。「NA」は分析されなかったこと意味する。
【0134】
前述のスルホン化技術を用い、広範囲のポリマーのA−B−Aブロックコポリマーの内側セグメントを選択的にスルホン化した。スルホン化レベルは、本発明のポリマー(ポリマーT−1、T−2、T−3、T−4、およびP−1)のポリマー1グラムについてスルホナート官能基約0.6から約2.8mmolである。前述のスルホン化技術を用い、末端ブロックでスルホン化された(Aブロックのみにおいてスチレン基を有するAldrich−1およびG−1)、またはコポリマーのブロックのすべての場合にわたって無差別にスルホン化された(AおよびBブロックの両方において反応性スチレン基を有するポリマーA−1およびA−2)比較例のポリマーは、この範囲にわたる官能基レベルを有する。これらのポリマーのすべてを膜の合成に進めた。
【実施例4】
【0135】
スルホン化ブロックコポリマーを、空気中、室温で、溶媒(さまざまな量のテトラヒドロフラン(THF)、メタノール(MeOH)、およびトルエン(MeBz)を含有する混合物、スルホン化ブロックコポリマーの溶解特性に合わせて比率を調整した)からテフロン(登録商標)被覆剤処理した箔の表面に成形した。得られたフィルムを成形フィルムとして試験した(「乾燥」と表示されているデータ)。Mini−Dダイスを用いてこれらの膜から試験片を打ち抜いた。引張試験はASTM D412に基づいて行った。記載したデータは、試料結果の変動性および利用できる試料量に応じて、3から5試験試料の結果の平均を表す。
【0136】
典型的な実験において、弾性Bブロックが選択的にスルホン化されたA−B−Aトリブロックコポリマー(表3におけるポリマーT−2)のアリコートをTHF/MeOHの混合物に溶解し、溶液をテフロン(登録商標)コーティング処理した箔表面に成形した。いくつかの膜試料を引張試験のために調製した(Mini−Dダイス)。「乾燥」試料は、引張破壊強度4410psi(平均)、伸び290%を示した。明らかに、これらは強固な弾性のあるフィルムであった。同じフィルムから打ち抜いた試験試料のいくつかを試験の前に水に浸して平衡化(1日間)し、水に完全に浸漬したままで試料を引っ張ることができるように引張試験装置を用いた(表4中で「湿潤」と表示されているデータ)。平均して、湿潤試料は水に浸漬した条件で引張破壊強度1790psi、破壊時伸び280%を示した。湿潤状態においてさえも、この膜は強固で非常に弾性があった。驚いたことに、内側セグメントが選択的にスルホン化されたこのトリブロックコポリマーは、完全に水和されたとき、乾燥状態で試験されたときの類似のポリマーの強度の40%以上を保持していた。湿潤ポリマーは、乾燥状態において試験されたときに観察されるのと本質的に同じ破壊時伸びを示した。本発明のポリマーを溶媒成形することにより、優れた湿潤強度および伸び特性を有するエラストマー膜を調製した。
【0137】
表4に示すように、本発明の実施例である、ポリマーT−1、T−3、T−2.1、およびTS−1のスルホン化生成物は、別格の湿潤強度および弾性を有する膜を提供する。
【0138】
前述のとおり、本発明のポリマーを用いて得られる驚くべき結果と対照的に、比較例のポリマー(末端ブロックが選択的にスルホン化されたポリマー(Aldrich1)および、すべてのセグメントが非選択的にスルホン化されたポリマー(ポリマーA−1.1およびA−2のスルホン化生成物)からのフィルム成形物は不十分な引張強度を示した。Aldrich1ポリマーを用いる例において、湿潤試験フィルムは弱すぎて、引張試験において検出できる応答を示さなかった。ポリマーA−1およびG−1を用いた実験を除いて、比較例のポリマーからのフィルムは、乾燥時に試験した試料について測定された特性と比較して、湿潤状態において試験したときのこれらの強度をほとんどすべて失っていた(引張強度の80から100%以上の減少)。明らかに、これらの構造を有するスルホン化ブロックコポリマーから製造されるフィルムは、膜が湿潤する場合に、応用に不都合が生じる。
【0139】
後に示すように、G−1ポリマーおよびA−1ポリマーは、効率的な水透過性を示すためには十分にスルホン化されていなかった。これらのポリマーは湿潤引張試験においてまずまずの性能を示したが、効率的な半透過膜を生成するためには十分なレベルにまでスルホン化されていなかった。
【0140】
ポリスチレン内側セグメントが選択的にスルホン化された、可塑性ブロックのみを有するA−B−Aブロックコポリマー(ポリ−p−t−ブチルスチレン末端セグメントおよびポリスチレン内側セグメント)(T−4)のアリコートをTHFに溶解し、溶液をテフロン(登録商標)被覆処理した箔表面に成形した。得られた膜のいくつかの試料を引張試験のために調製した(Mini−Dダイス)。「乾燥」試料は、破壊値における引張強度1800psi(平均)、伸び14%を示した。これは非常に可塑性の材料であり、伸びと共に降伏点を通過し、ついで破損した。同じフィルムから打ち抜いた試験試料のいくつかを試験の前に水で平衡化(1日間)し、水に完全に浸漬したままで試料を引っ張ることができるように引張試験装置を用いた(表4中で「湿潤」と表示されているデータ)。平均して、湿潤試料は水に浸漬した条件で引張破壊強度640psi、破壊時伸び38%を示した。湿潤状態において、この膜は強固であり、より柔軟であった。驚いたことに、内側セグメントが選択的にスルホン化されたこのトリブロックコポリマーは、完全に水和されたとき、乾燥状態で試験されたときの類似のポリマーの強度の30%以上を保持していた。湿潤ポリマーは、乾燥状態において試験されたときに観察されるのと比較して実質的に改善された破壊時伸びを示した。水がスルホン化ポリスチレン相を選択的に可塑化した結果として、ポリマーの柔軟性が向上した。本発明のポリマーを溶媒成形することにより、湿潤時に優れた湿潤強度および改善された靱性を有する、しっかりした可塑性膜が調製された。このポリマーは、可塑性トリブロックコポリマーの内側セグメントを選択的にスルホン化することにより調製された。関連したスルホン化ポリマーであるT−5を成形することにより得られる膜は、湿潤引張試験においてずっと優れた結果を示した(表4における実験91−57および91−74参照)。TS−2から調製された膜により例示されるように、スルホン化を受けにくいp−t−BS末端セグメントとスルホン化を受けやすいS内側セグメントの間に短いゴムセグメントを挿入することにより、ずっと優れた湿潤時の力学的性能を有するスルホン化材料が得られた。これらの材料の乾燥状態における力学的性能はまた非常に優れていた(表4におけるポリマーTS−2およびTS−2.1参照)。
【0141】
表4に示すように、ポリ−パラ−メチルスチレン末端セグメントおよびポリスチレン中心セグメントを有する選択的にスルホン化された可塑性トリブロックコポリマーから成形された膜の結果はさらに印象的であった。乾燥状態において、このポリマーはあまりに砕けやすいために、成形された膜である「乾燥」試料から試験試料を打ち抜けなかった。この試験片は打ち抜き操作により粉砕された。ついでフィルムを水に1日間浸漬した。スルホン化ポリスチレンブロックが水により可塑化された後、試験片は湿潤フィルムから容易に打ち抜かれた。水に浸漬する引張試験により、このポリマー膜は優れた強度(破壊時における引張強度1800psi)および驚くほど改善された靱性を有することが示された。ポリエチレン末端セグメントおよびポリスチレン内側ブロックを有する、選択的にスルホン化された可塑性A−B−Aトリブロックコポリマーから調製された、関連する膜に関する結果については、表4のデータを参照のこと。
【0142】
湿潤環境で用いられるとき、Bブロックが選択的にスルホン化された本発明の熱可塑性ブロックコポリマーから調製された膜は、優れた強度、靱性、および柔軟性を有することがこれらのデータから明らかである。本発明の物品に関する応用の多くが湿潤環境におけるものであると考えられるので、これらの材料は実質的に好都合である。
【0143】
【表4】

ただし、S=スチレン、E=エチレン、B=ブチレン、ptBS=パラ−tert−ブチルスチレン、E/Bは水素化されたポリブタジエンであり、PE=水素化された低いビニル含有量ポリブタジエンであり、「Aldrich−1」は、Aldrich Chemical Company(物品番号44885)から購入したものを用い、「Brittle」または「Brit」は、フィルムから引張試験片を打ち抜こうとしたとき粉砕した膜を示し、「Infinite」または「Inf」は、乾燥膜が試験するにはもろすぎる場合に、乾燥特性に対する湿潤特性の比の値に用いた。NA=分析されなかった。
【実施例5】
【0144】
実施例5において、動的粘弾性測定(Dynamic Mechanical Analysis)によりスルホン化ポリマーを試験した。DMA2900(TA Instruments製)を用い、スルホン化ポリマーおよび前駆体ポリマーの両方に関して動的粘弾性測定を行った。溶媒成形フィルム試料に10Hzの発振と2℃/分の昇温をかけてスキャンを行った。試験した温度範囲は、スルホン化ポリマーに関しては−100℃から200℃であり、前駆体ポリマーに関しては−100℃から120℃であった。図1は、スルホン化前と後における試料T−3の貯蔵弾性率の比較を示す。この図はS/EB内側ブロックのガラス−ゴム転移の中点値(Tg)が、おおよそ15℃からおおよそ50℃に移動していることを示す。同様に、図2は、試料T−2の内側ブロックのTgが同様に上昇していることを示す。これらの上昇は、両方の試料において、内側ブロックが、試料の物理的特性に有意な変化を生じる程度にスルホン化されていることを示している。
【実施例6】
【0145】
ポリマー材料についての膨潤試験は、特定の膨潤剤の存在下における、特定のポリマーから製造される物品の寸法安定性の尺度(または寸法安定性の不足)として採用した。この場合において、表4に記載されているスルホン化ブロックコポリマーの溶液成形フィルムについて、水中での膨潤試験を行った。水の存在下で優れた寸法安定性(ほとんど膨潤しない)を有する膜を形成するために、非常に高水準(優れた水透過性能のため)にスルホン化されたポリマーを有することが極めて望ましい。
【0146】
本発明の実施例において、ポリ−p−t−ブチルスチレン末端セグメントおよび水素化されたブタジエンとスチレンとのコポリマーであるエラストマー内側ブロックを有するエラストマーA−B−Aトリブロックコポリマーの選択的にスルホン化された生成物から製造された成形フィルムとしての「乾燥」の重さを計り(ポリマーT−2)、水槽中に1日浸漬し、水から取り出し、拭き取って乾燥し、再度重さを計った。この実験から、水に1日浸漬した結果、フィルムの重量が62%増加したことが見いだされた。短めの時間で採取した試料により、数時間以下でフィルムの重量の増加が平衡に達したことが見いだされた。水に1日浸漬した後の重量増加をこのフィルムの平衡膨潤の尺度として採用した。表5に示すように、エラストマーおよび可塑性前駆体ポリマーの両方に関する、内側セグメントコポリマーが選択的にスルホン化された他のフィルム成形物に関して、平衡膨潤結果は通常低い。これらは湿潤応用に用いられる場合、より優れた寸法安定性を示すと予想される。
【0147】
比較して、ブロックコポリマーの末端ブロックがまたは無差別にすべての部分がスルホン化された、比較例ポリマーからのフィルム成形物について同様な実験の結果は劣っていた。これらの系において、ポリマーの官能基のレベルを抑えることによってのみ膨潤を抑えることができる。有用なスルホン化レベルにおいて、280%までの膨潤レベルが観察された。これらのフィルムは、本発明のポリマーと比較して寸法安定性は非常に劣っている。低レベルのスルホン化を有するポリマーA−1およびG−1を用いた比較例実験において、低レベルの膨潤が認められた。しかしながら、後に示すように、膨潤レベルの抑制は、本質的に水透過性能の犠牲の上に得られる。比較例ポリマーにおいて、湿潤環境における効率的な水透過性および優れた寸法安定性(膨潤実験において測定した)の両方を有する膜を得ることはできなかった。中心ブロックが選択的にスルホン化された本発明のブロックコポリマーは、湿潤環境において寸法安定性に優れたフィルムを提供することが見いだされた。
【0148】
【表5】

この表に用いた記号および略語の説明については表4の脚注を参照のこと。
【実施例7】
【0149】
実施例4に記載されている溶媒成形フィルムおよび表4に記載されている関連する比較例材料を、水が膜の一方から他方へ通過する速度を決定するために試験した。ASTM E96−00の「乾燥」方法を用い、厚さ約1ミルのフィルムについて、水蒸気透過(WVT)度を測定した。この試験において、活性化した乾燥剤を入れた小さなふたなしの容器を、試験する膜を用いてふたをした。容器の上端で膜をシールし、このアセンブリーの重量を計った。この試験装置を1週間、制御温度(75°F(23.9℃))および制御湿度(相対湿度50%)で大気にさらし、水が膜を通過し、乾燥剤に吸収された量を確認するために再計量した。試験時間、膜の厚さおよび露出表面積、ならびに吸収された水の重量を知ることにより、WVT度を算出し、透過度(H2O(g)/Pa.m.h.)として記録できる。
【0150】
本発明のポリマーから調製される膜である選択的にスルホン化されたT−2は、水透過度1.2X10−6g/Pa.m.h.を有し、効率的な透過度を有することが見いだされた。加えて、この膜は優れた湿潤強度および伸び特性を示した。この膜を製造するために用いたポリマーは、エラストマートリブロックコポリマーの内側セグメントを選択的にスルホン化することにより調製した。表6に示すように、本発明の他の選択的にスルホン化された、エラストマーA−B−AポリマーであるポリマーT−1およびT−3から調製された膜もまた、効率的なWVT度を有し、湿潤強度および寸法安定性において、比較ポリマー膜よりも優れていた。
【0151】
本発明のポリマーである、選択的にスルホン化されたT−4から調製された膜は、水透過度9.0X10−6g/Pa.m.h.を有し、効率的な透過度を有することが見いだされた。このWVT度は、表6のいずれの他のポリマーのWVT度よりもすぐれていた(約3倍)。加えて、この膜は優れた湿潤強度を有し、優れた靱性および柔軟性を示し、水の存在下で優れた寸法安定性を示した。この膜を製造するために用いたポリマーは、熱可塑性トリブロックコポリマーの内側セグメントを選択的にスルホン化することにより調製された。表6に示すように、本発明の他の選択的にスルホン化された熱可塑性A−B−Aポリマーである、ポリマーP−1およびE−1から調製された膜はまた、湿潤環境において、別格のWVT度、ならびに優れた湿潤強度および寸法安定性を示した。この特性集合により、水を透過させることができる膜の性能に顕著な進歩がもたらされる。
【0152】
予期されたように、比較例ポリマーのスルホン化生成物から調製される膜のいくつかは、3.6X10−7から2.6X10−6g/Pa.m.h.の値を有する、効率的な水透過度を示した。実験45−28でスルホン化されたスルホン化ポリマーA−1から調製された膜は、注目に値する例外であった。この膜を介して流れる水は本質的にまったくなく、透過度=2.3X10−9g/Pa.m.hであった。ポリマーA−1から製造されるこれらの膜(実験45−28)についての紛れもない問題は、水の存在下で湿潤強度をほとんど示さず、寸法安定性が不十分なことである。これらは湿潤環境が伴う応用に使用することは大変に困難であろう。本発明により調製される膜は、優れた水透過度を有し、水の存在下で強い力学的性能を有する。
【0153】
【表6】

この表に用いた記号および略語の説明については表4の脚注を参照のこと。
【実施例8】
【0154】
選択的にスルホン化された(A−B−D)xブロックコポリマーの製造(仮説例)
リビングトリブロックコポリマーアームであるptBS−S−Bd−Liは、モノマーの逐次添加によるリビングアニオン重合法を用いて製造される。リビングトリブロックコポリマーアームを連結して、スルホン化を受けにくい末端セグメントであるポリ−パラ−tert−ブチルスチレン(ptBS)、スルホン化を受けやすい内側セグメントであるポリスチレン(S)、および耐衝撃性のスルホン化を受けにくいブロックの前駆体である、分子の中心における水素化されたポリブタジエン(E/B)を有する、線状および分岐ポリマー鎖の混合物を得る。
【0155】
典型的な実験において、パラ−tert−ブチルスチレンモノマー(26g)に、シクロヘキサン(940g)および乾燥ジエチルエーテル(60g)を含む混合物中、40℃でsec−BuLi(1mmol)を加えるアニオン重合条件で重合を開始する。モノマーの変換の完了時に、リビングポリ−パラ−tert−ブチルスチレンの分析試料に過剰のMeOHを加えて停止し、停止生成物をGPC法により分析して、ポリマーが真の分子量=26,000g/molを有することが見いだされる。ポリマーアームの第1のブロックを製造した後、リビングポリマー溶液にスチレンモノマー(52g)を加える。モノマーの変換の完了時に、リビングポリ−パラ−t−ブチルスチレン−ポリスチレンジブロックコポリマーの分析試料に過剰のMeOHを添加することにより停止し、停止生成物をGPC法により分析して、ポリマーが真の分子量=78,000g/molを有することが見いだされる。これは、それぞれセグメント分子量26,000−52,000を有するptBS−Sジブロックコポリマーに相当する。コポリマーアームの第2のブロックの製造後、リビングポリマー溶液に1,3−ブタジエンモノマー(20g)を加える。モノマーの変換の完了時に、リビングポリ−パラ−t−ブチルスチレン−ポリスチレン−ポリブタジエントリブロックコポリマーの分析試料に過剰のMeOHを添加することにより停止し、停止生成物をGPC法により分析して、ポリマーが真の分子量=98,000g/molを有することが見いだされる。これはそれぞれ、セグメント分子量26,000−56,000−20,000を有するptBS−S−Bdブロックコポリマーに相当する。H−NMRを用いるトリブロックコポリマーの分析により、ブタジエンの約40%が1,2−付加機構で付加されたことが見いだされることが予想される。コポリマーアームの第3ブロックの製造後に、0.04mmolのテトラメトキシシラン(TMOS)(Si/Li=0.4/1(mol/mol))を添加することにより、リビングポリマーアームを連結する。GPC方法を用いる連結したポリマー溶液の分析により、アームの10%未満が未連結のトリブロックコポリマー鎖として残っている、分岐(主成分)および線状連結ポリマー(ptBS−S−Bd)TMOSの混合物であることが見いだされると予想される。
【0156】
新たに重合した(ptBS−S−Bd)TMOS混合物のシクロヘキサン/ジエチルエーテル溶液を圧力容器に移す。水素を圧力700psigまで加える。Co(ネオデカノアート)2およびトリエチルアルミニウム(Al/Co=2.6/1(mol/mol)を加えることにより誘導される反応生成物を含有する懸濁液(Co0.2g相当量)を、反応器に加えて水素化を開始させる。水素化反応の完了時(H−NMR技術を用いて測定するときC=C中心の99%が水素化されたとき)に、過剰の水素ガスを排出し、選択的に水素化されたポリマー(ptBS−S−E/B)TMOSを過剰の硫酸10重量%に水中で接触させ、空気にさらす(この段階で炭化水素と空気の爆発性混合物の形成を避けるように注意する必要がある。)。過剰の酸の存在下で空気をポリマーセメントと接触させることにより、水素化触媒の酸化が行われ、無機触媒残渣が水相に抽出される。有機相中に存在する可能性のある酸種を除くために、ポリマー溶液を水で洗浄する。選択的に水素化されたポリマー約100gをMeOHを用いる凝固により回収し、濾過により集め、乾燥する。このポリマーのアリコートをDSCにより分析し、耐衝撃性改良剤相のTgが0℃未満であることが見いだされる。
【0157】
新規ポリマー、(ptBS−S−E/B)TMOSのアリコートを用い、T−4に用いた実験43−51に概説した手順を用いて、中心セグメントを選択的にスルホン化する。スルホン化を受けにくい耐衝撃性中心ブロックを有する新規ポリマーの部分20gを1,2−ジクロロエタン(DCE)(500g)に溶解し、溶液を49Cに加熱する。別の容器内で、無水酢酸(AcOAc)(18g,0.18mol)のDCE(20から30ml)冷(氷浴)溶液と冷硫酸(10.4g,0.11mol)を混合して、硫酸アセチル試薬を調製する。撹拌しながら、ポリマーのDCE溶液に硫酸アセチルの冷溶液を加える。スルホン化条件を4.1時間続ける。中央スチレンセグメントが選択的にスルホン化されたマルチブロックコポリマーを、過剰の水で凝固させることにより分離し、ポリマーと結合していない酸性残渣を除去するために水で洗浄(洗浄水のpHが中性になるまで)し、減圧下で乾燥する。乾燥した選択的にスルホン化されたポリマーのアリコート(1.04g)をトルエンおよびメタノール(MeOH)の混合物(1/2(v/v))に溶解し、ポリマーに結合したスルホン酸官能基を、水酸化ナトリウム(NaOH)(0.14N)のメタノール/水(80/20(w/w))溶液を用いてチモールブルーの終点まで滴定する。この分析により、コポリマーの内側ブロックのポリスチレン部位の約37mol%がスルホン化されることが見いだされることが予期される。
【0158】
スルホン化を受けにくい末端ブロック(ポリ−p−t−ブチルスチレン末端セグメント)および耐衝撃性中心ブロック(水素化されたポリブタジエン)およびスルホン化を受けやすいポリスチレン内部セグメントを有する、選択的にスルホン化されたA−B−D−B−Aブロックコポリマーのアリコートを、THF/MeOH(3/1(v/v))溶媒混合物に溶解し、溶液をテフロン(登録商標)被覆処理した箔表面に成形する。得られた膜のいくつかの試料を引張試験(Mini−Dダイス)用に調製する。「乾燥」試料は、破壊値での引張強度が1800psiを超え(平均)、14%を超える伸びを示すと予想される。これは非常に柔軟な材料である。同じフィルムから打ち抜いた試験試料のいくつかを試験の前に水で平衡化(1日間)させ、水に完全に浸漬したままで試料を引っ張ることができるように引張試験装置を用いる。平均して、湿潤試料は、水に浸漬時に500psiを超える引張破壊強度と、38%を超える破壊時伸びを示すと予想される。湿潤状態において、この膜は強固で柔軟である。驚くべきことに、内側スチレンセグメントが選択的にスルホン化されたこのトリブロックコポリマーは、完全に水和されたとき、乾燥状態で試験されたときの類似のポリマーの強度の30%以上を保持していることが予期される。スルホン化ポリスチレン相を選択的に可塑化する水の結果として、ポリマーの柔軟性が高められる。湿潤時に優れた湿潤強度および改善された靱性を有するしっかりした柔軟な膜は、本発明のポリマーを溶媒成形することにより調製される。このポリマーは、分子の中心(内側)に耐衝撃性ブロックを有するポリマーを選択的にスルホン化することにより調製されるであろう。
【0159】
実施例6に概略を述べたプロセスに従って行う、新規の選択的にスルホン化されたポリマーについての膨潤試験により、選択的にスルホン化された(ptBS−S−E/B)TMOSポリマーは、水中での平衡時に、この重量の100%未満を吸収することが見いだされることが予想される。この結果から、このポリマーから製造される材料は水の存在下で優れた寸法安定性を示すことが結論される。
【0160】
実施例7に概略を述べた手順を用い、選択的にスルホン化された(ptBS−S−E/B)TMOSポリマーから調製された膜の水透過度について試験される。この試験により、これらのポリマーが0.1X10−6g/Pa.m.h.を超える水透過度を示すことが予想される。この結果から、これらの膜は非常に効率的に水を透過させることが結論される。
【0161】
これらの実験により、スルホン化を受けにくい外部ブロック、スルホン化を受けやすい内部セグメント、および分子の中心におけるスルホン化を受けにくい耐衝撃性ブロックを有する選択的にスルホン化されたポリマーから、水の存在下で優れた寸法安定性、有用なレベル強度、優れた靱性および柔軟性ならびに効率的な水透過性を有する物品が製造されることが示されることが予期される。
【実施例9】
【0162】
成形条件による、力学的性能および水の状態の調節
この実施例において、Bブロックが選択的にスルホン化された(A−D−B)Xをベースとするスルホン化ブロックコポリマーTS−1のアリコートを、空気中、室温で、3つの異なる溶媒混合物(表7)からテフロン(登録商標)被覆処理した箔の表面に成形した。得られたフィルムを成形フィルムとして試験した(「乾燥」と表示されているデータ)。水取り込み量、水透過、フィルムにおける水の状態、および湿潤および乾燥状態の両方における引張強度について、試験片を試験した。実施例6に記載されているようにして水膨潤試験を行い、実施例4に記載されているようにして、湿潤および乾燥時における引張強度測定を行った。3つの膜の形態を見るために、原子間力顕微鏡検査を行った。水の状態を、Hicknerと共同研究者による論文「State of Water in Disulfonated Poly(arylene ether sulfone)Copolymers and a Perfluorosulfonic Acid Copolymer(Nafion)and Its Effect on Physical and Electrochemical Properties」,Macromolecules 2003,Volume 36,Number 17,6281−6285および「Transport in sulfonated poly(phenylene)s:Proton conductivity,permeability,and the state of water」,Polymer,Volume 47,Issue 11,Pages 4238−4244.に記載されている示差走査熱量計(DSC)法を用いて測定した。水透過度の測定は、N.S.SchneiderおよびD.Rivinの論文「Solvent transport in hydrocarbon and perfluorocarbon Ionomers」,Polymer,Volume 47,Issue 9,Pages 3119−3131.に記載されている方法により測定した。
【0163】
【表7】

【0164】
原子間力顕微鏡検査(図3)は、3つの異なる成形溶液から異なる構造が形成されたことを示している。3つのフィルムはすべて別格の湿潤および乾燥強度を有しているが、それぞれのフィルムの強度は異なっていた(表7)。各フィルムはまた、同様な水取り込み量18から21重量%を示した(表7)。
【0165】
DSC(図4)で測定されるように、各フィルムが水を蓄える異なる機構を有することは驚くべきことである。図4は、各試料について2つの重なる吸熱ピークを示しており、これらは、弱く結合した水に帰属される−30℃から10℃の範囲の広い融解ピークおよび遊離水による、0℃での鋭い融解ピークからなっている。結合水および遊離水の量は、融解ピークの位置および広さならびにΔHf(表7)の変化により示される。低い値のΔHfは強く結合した水を示す(バルク水に対するΔHfは334J/gである)が、強く結合した水は氷結することができないからである。結合水と遊離水の相対量を変えることにより、単一スルホン化ポリマーによる透過性の微調整が可能となる。この実施例において、結合水の量の変化による3以上の要素により水透過度が増加される。
【実施例10】
【0166】
実施例10において、沸騰水中の力学的安定性について、スルホン化ポリマーを試験した。おおよそ幅0.75インチ、長さ3インチのスルホン化ポリマー膜片を、沸騰水の容器中に浮遊させた。スルホン化膜が水に浮かばないように3gの結合クリップを用いてフィルムの下端を重みで押し下げた。15分間膜を煮沸した後、試料を取り出して寸法の変化を測定した。結果を表8に示す。0091−49および0091−67(A−3およびG−2)試料(比較例)の両方とも、望ましくない結果を与えた。試料が大きく膨潤したので試験中にクリップの位置で裂け始め、試験後にクリップをはずすときに裂けた。驚いたことに、0091−85および0091−91(TS−1およびTS−2)試料(本発明の試料)は著しくは膨潤せず、試験後に元の寸法を維持していた。この特徴は、メタノール燃料電池などの応用に大変望ましい。なぜなら、取り付けられた膜は湿潤および乾燥大気間を循環される可能性があり、寸法安定性が決定的であるからである。
【0167】
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】スルホン化前と後における試料T−3の貯蔵弾性率の比較を示す図である。この図は、S/EB内側ブロックのガラス−ゴム転移の中点値(Tg)が、おおよそ15℃からおおよそ50℃に移動していることを示す。
【図2】試料T−2の内側ブロックのTgが同様に上昇していることを示す図である。これらの上昇は、両方の試料において、内側ブロックが、試料の物理的特性に有意な変化を生じる程度にスルホン化されていることを示している。
【図3】AFMで撮影した、フィルム成形物の構造を示す図である。左:トルエン/メタノール(90/10)、中央:THF/トルエン(80/20)、右:THF/トルエン(50/50)。
【図4】成形溶液に応じた、水の融解における差異を示すDSCプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全般的な配置A−D−B−D−A、A−B−D−B−A、(A−D−B)nX、(A−B−D)nXまたはこれらの混合物(ここにおいて、nは2から約30の整数であり、Xはカップリング剤残基である。)を有し、
a.各Aブロックおよび各Dブロックはスルホン化を受けにくいポリマーブロックであり、各Bブロックはスルホン化を受けやすいポリマーブロックであり、前記A、BおよびDブロックは有意水準のオレフィン不飽和を含有せず;
b.各Aブロックは、独立して数平均分子量1,000から60,000を有し、各Bブロックは、独立して数平均分子量10,000から300,000を有し;
c.各Aブロックは、重合した(i)パラ置換スチレンモノマー、(ii)エチレン、(iii)3から18炭素原子のαオレフィン、(iv)1,3−シクロジエンモノマー、(v)水素化の前に35モルパーセント未満のビニル含有量を有する共役ジエンモノマー、(vi)アクリル酸エステル、(vii)メタクリル酸エステルならびに(viii)これらの混合物から選択される1以上のセグメントを含み、ここで、重合した1,3−シクロジエンまたは重合した共役ジエンを含有するいずれのセグメントもついで水素化され;
d.各Bブロックは、重合した(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、(iv)α−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレン、(vi)1,2−ジフェニルエチレンおよび(vii)これらの混合物から選択される1以上のビニル芳香族モノマーセグメントを含み;
e.各Dブロックは、ガラス転移温度20℃未満を有しおよび数平均分子量1,000から50,000を有するポリマーを含み、前記Dブロックは、(i)水素化の前にビニル含有量20から80モルパーセントを有する、イソプレン、1,3−ブタジエンから選択される重合または共重合した共役ジエン、(ii)重合したアクリラートモノマー、(iii)シリコンポリマー、(iv)重合したイソブチレンおよび(v)これらの混合物からなる群から選択され、ここで重合した1,3−ブタジエンまたはイソプレンを含有するいずれのセグメントもついで水素化され;
f.前記Bブロックは、前記Bブロック中のビニル芳香族モノマーユニットを基準にして10から100モルパーセントの範囲までスルホン化されており;および
g.非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレンおよび1,2−ジフェニルエチレンであるビニル芳香族モノマーのモルパーセントは、各Bブロックにおいて10モルパーセントから100モルパーセントである、
水中で固体である物品を形成するためのスルホン化ブロックコポリマー。
【請求項2】
前記Aブロックが、パラメチルスチレン、パラエチルスチレン、パラ−n−プロピルスチレン、パラ−iso−プロピルスチレン、パラ−n−ブチルスチレン、パラ−sec−ブチルスチレン、パラ−iso−ブチルスチレン、パラ−t−ブチルスチレン、パラ−デシルスチレン異性体およびパラ−ドデシルスチレン異性体から選択される1以上のパラ置換スチレンモノマーのポリマーを含む、請求項1に記載のスルホン化ブロックコポリマー。
【請求項3】
前記Aブロックがパラ−t−ブチルスチレンのポリマーブロックであり、前記Bブロックが非置換スチレンのポリマーブロックである、請求項2に記載のスルホン化ブロックコポリマー。
【請求項4】
前記Aブロックがパラメチルスチレンのポリマーブロックであり、前記Bブロックが非置換スチレンのポリマーブロックである、請求項2に記載のスルホン化ブロックコポリマー。
【請求項5】
前記Dブロックが、水素化の前に1,3−ブタジエンのポリマーブロックであり、ここにおいて、ブロックD中の縮合ブタジエンユニットの20から80モルパーセントは水素化の前に1,2−配置を有する、請求項4に記載のスルホン化ブロックコポリマー。
【請求項6】
物品に形成された前記スルホン化ブロックコポリマーがASTM D412に基づいて水の存在下で100psiを超える引張強度を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のスルホン化ブロックコポリマー。
【請求項7】
水素化の前に、全般的な配置A−B−A、A−B−A−B−A、(A−B−A)nX、(A−B)nX、A−D−B−D−A、A−B−D−B−A、(A−D−B)nX、(A−B−D)nXまたはこれらの混合物(ここにおいて、nは2から約30の整数であり、Xはカップリング剤残基である。)を有し、
a.各Aブロックはスルホン化を受けにくいポリマーブロックであり、各Dブロックはスルホン化を受けにくいポリマーブロックであり、各Bブロックはスルホン化を受けやすいポリマーブロックであり、前記A、DおよびBブロックは有意水準のオレフィン不飽和を含有せず;
b.各Aブロックは、独立して数平均分子量1,000から60,000を有し、各Dブロックは、独立して数平均分子量1,000から50,000を有し、各Bブロックは、独立して数平均分子量10,000から300,000を有し;
c.各Aブロックは、重合した(i)パラ置換スチレンモノマー、(ii)エチレン、(iii)3から18炭素原子のαオレフィン、(iv)1,3−シクロジエンモノマー、(v)水素化の前に35モルパーセント未満のビニル含有量を有する共役ジエンモノマー、(vi)アクリル酸エステル、(vii)メタクリル酸エステルならびに(viii)これらの混合物から選択される1以上のセグメントを含み;
d.各Bブロックは、重合した(i)非置換スチレンモノマー、(ii)オルト置換スチレンモノマー、(iii)メタ置換スチレンモノマー、(iv)α−メチルスチレン、(v)1,1−ジフェニルエチレン、(vi)1,2−ジフェニルエチレンおよび(vii)これらの混合物から選択される1以上のビニル芳香族モノマーセグメントを含み;
e.各Dブロックはガラス転移温度20℃未満を有するポリマーを含み、前記Dブロックは、(i)水素化の前にビニル含有量20から80モルパーセントを有する、重合または共重合したイソプレン、1,3−ブタジエンから選択される共役ジエン、(ii)重合したアクリラートモノマー、(iii)シリコンポリマー、(iv)重合したイソブチレンおよび(v)これらの混合物からなる群から選択され、ここにおいて重合した1,3−ブタジエンまたはイソプレンを含有するいずれのセグメントもついで水素化され;および
f.非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレンおよび1,2−ジフェニルエチレンであるビニル芳香族モノマーの、各Bブロックにおけるモルパーセントが10モルパーセントから100モルパーセントである、
ブロックコポリマー。
【請求項8】
前記Aブロックが、パラメチルスチレン、パラエチルスチレン、パラ−n−プロピルスチレン、パラ−iso−プロピルスチレン、パラ−n−ブチルスチレン、パラ−sec−ブチルスチレン、パラ−iso−ブチルスチレン、パラ−t−ブチルスチレン、パラ−デシルスチレン異性体およびパラ−ドデシルスチレン異性体から選択される、1以上のパラ置換スチレンモノマーのポリマーを含む、請求項7に記載のブロックコポリマー。
【請求項9】
前記Aブロックがパラ−t−ブチルスチレンのポリマーブロックであり、前記Bブロックが非置換スチレンのポリマーブロックである、請求項7に記載のブロックコポリマー。
【請求項10】
前記Aブロックがパラメチルスチレンのポリマーブロックであり、前記Bブロックが非置換スチレンのポリマーブロックである、請求項7に記載のブロックコポリマー。
【請求項11】
前記Dブロックが、水素化の前に1,3−ブタジエンのポリマーブロックであり、ここにおいてブロックD中の縮合ブタジエンユニットの20から80モルパーセントが水素化の前に1,2−配置を有する、請求項7に記載のブロックコポリマー。
【請求項12】
ASTM E96−00の「乾燥」方法に基づいて0.1×10−6g/Pa.m.h.を超える水透過度、ASTM D412に基づいて500psiを超える湿潤時の引張強度、および100重量%未満の膨潤性を有する物品に形成されている、請求項1に記載のスルホン化ブロックコポリマー。
【請求項13】
ASTM E96−00の「乾燥」方法に基づいて1.0×10−6g/Pa.m.h.を超える水透過度およびASTM D412に基づいて1000psiを超える湿潤時の引張強度を有する物品に形成されている、請求項1に記載のスルホン化ブロックコポリマー。
【請求項14】
乾燥時の引張強度に対する湿潤時の引張強度の比が0.3を超える物品に形成されている、請求項1に記載のスルホン化ブロックコポリマー。
【請求項15】
前記ブロックB中の得られたスルホン酸官能基の一部が中和されている、請求項1に記載のスルホン化ブロックコポリマー。
【請求項16】
前記スルホン酸官能基の一部が、イオン化金属化合物で中和されて金属塩を形成する、請求項15に記載のスルホン化ブロックコポリマー。
【請求項17】
スルホン酸官能基の50から100パーセントが中和されている、請求項16に記載のスルホン化ブロックコポリマー。
【請求項18】
イオン化金属化合物がNa+、K+、Li+、Cs+、Ag+、Hg+、Cu+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Cu2+、Cd2+、Hg2+、Sn2+、Pb2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Al3+、Sc3+、Fe3+、La3+またはY3+を含む、請求項16に記載のスルホン化ブロックコポリマー。
【請求項19】
イオン化金属化合物が、水酸化物、酸化物、アルコラート、カルボキシラート、ホルマート、アセタート、メトキシド、エトキシド、ニトラート、カルボナートまたはビカルボナートを含む、請求項16に記載のスルホン化ブロックコポリマー。
【請求項20】
燃料電池、織物、被覆された織物、フィルム、繊維、織物、薄層、接着剤、被覆剤、濾過膜、脱塩膜、空気調整膜、熱回収膜、膜用被覆剤、家庭用衛生物品、接着剤、ヒドロゲル、防汚被覆剤、吸水性物品、電極組立物および海洋被覆剤からなる群から選択される、請求項1に記載のスルホン化ブロックコポリマーを含む組成物から少なくとも一部分が形成されている物品。
【請求項21】
請求項1に記載のスルホン化ブロックコポリマーを含む組成物から一部分が形成されている、選択透過膜。
【請求項22】
a.請求項21に記載の膜;
b.前記膜と接触している第1および第2対向電極;
c.前記第1電極に燃料を供給する手段;および
d.前記第2電極に酸化剤を接触させることを可能にする手段;
を含む、燃料電池。
【請求項23】
請求項1に記載のスルホン化ブロックコポリマーおよび超吸収性材料を含む組成物から形成されている、家庭用衛生物品用吸収コア。
【請求項24】
スルホン化ブロックコポリマーが超吸収性材料を含有するフィルムの形である、請求項23に記載の家庭用衛生物品用吸収コア。
【請求項25】
前記超吸収性材料が繊維材料をも含む、請求項23に記載の吸収コア。
【請求項26】
請求項21に記載の膜のまわりに多層の織布および不織布を含む、衣服。
【請求項27】
請求項1に記載のポリマーで被覆されている、織布または不織布。
【請求項28】
極性溶媒および無極性溶媒からなる群より選択される2またはそれ以上の溶媒を含む溶媒混合物を用いてポリマーを成形することを含む、請求項1に記載のポリマーのフィルム成形物の透過性を変化させる方法。
【請求項29】
極性溶媒が、1から20炭素原子を有するアルコール;1から20炭素原子を有するエーテル;1から20炭素原子を有するカルボン酸エステル、硫酸エステル、アミド、カルボン酸、無水物、ニトリルおよびケトンから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
極性溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、置換および非置換フラン、オキセタン、ジメチルケトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、置換および非置換テトラヒドロフラン、メチルアセタート、エチルアセタート、プロピルアセタート、メチルスルファート、ジメチルスルファート、二硫化炭素、ギ酸、酢酸、アセトン、クレゾール、クレオソール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、シクロヘキサノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、水ならびにジオキサンから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
無極性溶媒が、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロメタン、四塩化炭素、トリエチルベンゼン、メチルシクロヘキサン、イソペンタンおよびシクロペンタンから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
請求項1に記載のスルホン化ブロックコポリマーと、ならびに色素、抗酸化剤、安定化剤、界面活性剤、ワックス、流れ促進剤、粒子、充填剤およびオイルからなる群より選択される添加成分とを含む、組成物。
【請求項33】
請求項1に記載のスルホン化ブロックコポリマーと、ならびに他のポリマー、ポリマー液体および充填剤からなる群より選択される添加成分とを含む、組成物。
【請求項34】
他のポリマーが、オレフィンポリマー、スチレンポリマー、粘着付与樹脂、親水性ポリマーおよび工業用熱可塑性ポリマーからなる群より選択される、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記スチレンポリマーが、結晶ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、中衝撃性ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、スルホン化ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル/ブタジエンポリマーおよびスチレン/オレフィンコポリマーから選択される、請求項34に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−503137(P2009−503137A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521985(P2008−521985)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064517
【国際公開番号】WO2007/010042
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(501140348)クレイトン・ポリマーズ・リサーチ・ベー・ベー (44)
【Fターム(参考)】