説明

ズームレンズ、撮像装置および情報装置

【課題】 広角端における半画角を38度以上と充分な広画角とし、10倍以上の高変倍比とすることができ、小型で且つ変倍領域全域にわたって1000万〜1500万画素の撮像素子に対応する高解像力を得る。
【解決手段】 物体側から、順次、正の第1レンズ群G1と、負の第2レンズ群G2と、絞りADと、正の第3レンズ群G3と、正の第4レンズ群G4とを配置する。第3レンズ群G3は、物体側から、順次、両凸形状の正レンズL31と、物体側に凸面を有する正レンズL32と、像側に凹面を有する負レンズL33とを配置する。第3レンズ群G3の先頭の正レンズL31のd線に対する屈折率をNdp、分散をνdp、部分分散比をPg,Fp、そして焦点距離をf31とし、そして第3レンズ群G3の焦点距離をf3として、正レンズL31が、
〔1〕 1.50<Ndp<1.65
〔2〕 60.0<νdp<75.0
ほか、〔2式〕を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点距離を変化させて画角を変化させる変倍機能を有するレンズに係り、主として、固体撮像素子を用いて被写体のデジタル画像データを取得する、いわゆるデジタルカメラやビデオカメラ等に好適なズームレンズ、そのようなズームレンズを撮像用光学系として用いる撮像装置およびそのような撮像機能を有する情報装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を用いて被写体のデジタル画像データを取得する、いわゆるデジタルカメラ等の市場は、非常に大きな市場となっており、この種のデジタルカメラ等に対するユーザの要望も多岐にわたっている。中でも、高画質化と小型化は、常にユーザの欲するところであり、ユーザのデジタルカメラに対する要望の大きなウエイトを占めている。この種のデジタルカメラ等における撮影レンズとしては、焦点距離を変化させて画角を変化させる変倍機能を有するズームレンズが広く用いられている。このようなデジタルカメラ等に撮影レンズとして用いられるズームレンズにも、高性能化と小型化の両立が求められている。
この場合、小型化という面では、まず、使用時のレンズ全長(最も物体側のレンズ面から像面までの距離)を短縮することが必要となり、また、各レンズ群の厚みを縮小して、収納時の全長を抑えることも重要である。さらに、高性能化という面では、少なくとも、1000万〜1500万画素の撮像素子に対応した解像力を全ズーム域にわたって有することが必要である。
また、多くのユーザが撮影レンズの広画角化を望んでおり、この種のズームレンズの短焦点端、つまり広角端での半画角は、38度以上であることが望ましい。半画角38度は、35mm銀塩フィルム(いわゆるライカ判)用のレンズに換算した焦点距離で28mmに相当する。
【0003】
さらに、変倍比についてもなるべく大きな変倍比とすることが望まれている。35mm銀塩カメラ換算の焦点距離で28〜200mm相当程度(約7.1倍)のズームレンズであれば、一般的な撮影のほとんど全てをこなすことが可能と考えられるが、最近では、35mm銀塩カメラ換算の焦点距離で28〜300mm相当程度(約10.7倍)以上を望むユーザも増加している。
この種のデジタルカメラ等に用いるズームレンズとしては、多くの種類が考えられるが、高変倍化に適するタイプとして、物体側から、順次、正の屈折力、つまり正の焦点距離を有する第1レンズ群、負の屈折力つまり負の焦点距離を有する第2レンズ群、正の焦点距離(正の屈折力)を有する第3レンズ群、そして正の焦点距離(正の屈折力)を有する第4レンズ群を配設し、広角端(短焦点端)から長焦点端つまり望遠端への変倍に伴って、第1レンズ群と第2レンズ群との間隔が増大し、第2レンズ群と第3レンズ群との間隔が減少し、そして第3レンズ群と第4レンズ群との間隔が変化するタイプのズームレンズがある。
【0004】
従来のこのタイプのズームレンズとしては、変倍に際して、第1レンズ群が固定されるタイプ、または、第1レンズ群が像側に凸となる弧状の軌跡を描いて往復移動するタイプ等があるが、これらのタイプの場合、変倍作用の多くを負担する第2レンズ群の移動量を大きく確保しようとすると、第3レンズ群近傍に配設される絞りが広角端においても第1レンズ群から離れることになり、広角化および高変倍化のためには第1レンズ群を非常に大きな寸法のものとせざるを得なくなってしまう。このため、広角・高変倍で且つ小型のズームレンズを実現するためには、第1レンズ群が、望遠端において広角端におけるよりも物体側に位置するように移動するタイプが望ましい。広角端におけるレンズ全長が、望遠端に比べて短くなるようにすることにより、第1レンズ群の大型化を抑制しつつ、充分な広角化を実現することが可能となる。
さらに、第3レンズ群を、物体側から、順次、正レンズ−正レンズ−負レンズの3枚を配置して構成することにより、収差補正能力を保ったまま第3レンズ群の主点位置を前方に偏倚させることが可能となり、望遠端における最大全長を抑制しつつ、ズーミングの高変倍化が可能となる。
【0005】
負レンズと物体側の面を凸面とした正レンズとを有し、全体として正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、そして正の屈折力を有する第4レンズ群を物体側から、順次、配設し、広角端から望遠端への変倍に伴って、第1レンズ群と第2レンズ群との間隔が増大し、第2レンズ群と第3レンズ群との間隔が減少し、そして第3レンズ群を、物体側から、順次、正レンズ−正レンズ−負レンズの3枚を配置して構成した光学系の例が、特許文献1(特開2010−102096号)、特許文献2(特開2010−91881号)、特許文献3(特開2008−203453号)および特許文献4(特開2001−318312号)等に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4に開示された光学系の構成は、いずれも変倍比に比して望遠端における全長が充分に短いとはいえない。すなわち、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4等に示された構成をもとに試算すると、充分な変倍比を得ようとすると、望遠端における全長が長くなってしまって大型化を招き、望遠端における全長を充分に短くしようとすると、変倍比を大きくとることができなくなってしまう。また、特許文献1に示された構成は、特にレンズ枚数が多く、収納状態での全長が長くなって大型化してしまい、しかも広角端における画角も充分に大きくすることができない。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、広角端(短焦点端)における半画角を38度以上と充分な広画角とし、10倍以上の高変倍比とすることができ、小型で且つ変倍領域全域にわたって1000万〜1500万画素の撮像素子に対応する高解像力を得ることの可能なズームレンズ、該ズームレンズを用いる撮像装置および情報装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るズームレンズは、上述した目的を達成するために、
物体側から、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群とを配置してなり、
広角端から望遠端への変倍に伴って、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間隔が漸次増大し、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔が漸次減少し、そして前記第1レンズ群および前記第3レンズ群がいずれも望遠端で広角端におけるよりもより物体側に位置するように移動するズームレンズにおいて、
前記第3レンズ群は、物体側から、順次、両凸形状の正レンズと、物体側に凸面を有する正レンズと、像側に凹面を有する負レンズとを配置するとともに、
前記第3レンズ群内の先頭の前記正レンズのd線に対する屈折率をNdp、前記第3レンズ群内の先頭の前記正レンズの分散をνdp、前記第3レンズ群内の先頭の前記正レンズの部分分散比をPg,Fp、前記第3レンズ群内の先頭の前記正レンズの焦点距離をf31、そして前記第3レンズ群の焦点距離をf3とし、且つ
部分分散比Pg,Fは、
g線、F線およびC線に対する屈折率をそれぞれn、nおよびnとして、
g,F=(n−n)/(n−n
であらわされるとき、
前記第3レンズ群内の先頭の両凸形状の前記正レンズが、
条件式:
〔1〕 1.50<Ndp<1.65
〔2〕 60.0<νdp<75.0
〔3〕 0.007<Pg,Fp−(−0.001802×νdp+0.6483)
<0.025
〔4〕 0.50<f31/f3<1.00
を満足することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、広角端(短焦点端)における半画角を38度以上と充分な広画角とし、10倍以上の高変倍比とすることができ、小型で且つ変倍領域全域にわたって1000万〜1500万画素の撮像素子に対応する高解像力を得ることの可能なズームレンズ、該ズームレンズを用いる撮像装置および情報装置を提供することができる。
すなわち、請求項1に記載の発明に係るズームレンズによれば、
物体側から、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群とを配置してなり、
広角端から望遠端への変倍に伴って、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間隔が漸次増大し、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔が漸次減少し、そして前記第1レンズ群および前記第3レンズ群がいずれも望遠端で広角端におけるよりもより物体側に位置するように移動するズームレンズにおいて、
前記第3レンズ群は、物体側から、順次、両凸形状の正レンズと、物体側に凸面を有する正レンズと、像側に凹面を有する負レンズとを配置するとともに、
前記第3レンズ群内の先頭の前記正レンズのd線に対する屈折率をNdp、前記第3レンズ群内の先頭の前記正レンズの分散をνdp、前記第3レンズ群内の先頭の前記正レンズの部分分散比をPg,Fp、前記第3レンズ群内の先頭の前記正レンズの焦点距離をf31、そして前記第3レンズ群の焦点距離をf3とし、且つ
部分分散比Pg,Fは、
g線、F線およびC線に対する屈折率をそれぞれn、nおよびnとして、
g,F=(n−n)/(n−n
であらわされるとき、
前記第3レンズ群内の先頭の両凸形状の前記正レンズが、
条件式:
〔1〕 1.50<Ndp<1.65
〔2〕 60.0<νdp<75.0
〔3〕 0.007<Pg,Fp−(−0.001802×νdp+0.6483)
<0.025
〔4〕 0.50<f31/f3<1.00
を満足することにより、
広角端の半画角が約38度以上と充分に広画角であって、しかも10倍以上の高い変倍比を得ることが可能となり、小型で且つ1000万〜1500万画素の撮像素子に対応する高い解像力を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る実施例1におけるズームレンズの光学系の構成およびズーミングに伴うズーム軌跡を示す図であり、(a)は広角端、(b)は広角端と中間焦点距離との中間の焦点距離、(c)は中間焦点距離、(d)は中間焦点距離と望遠端との中間の焦点距離および(e)は望遠端のそれぞれにおける光軸に沿った断面図である。
【図2】図1に示す本発明の実施例1によるズームレンズの広角端における球面収差、非点収差、歪曲収差および横収差を示す収差曲線図である。
【図3】図1に示す本発明の実施例1によるズームレンズの中間焦点距離における球面収差、非点収差、歪曲収差および横収差を示す収差曲線図である。
【図4】図1に示す本発明の実施例1によるズームレンズの望遠端における球面収差、非点収差、歪曲収差および横収差を示す収差曲線図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る実施例2におけるズームレンズの光学系の構成およびズーミングに伴うズーム軌跡を示す図であり、(a)は広角端、(b)は広角端と中間焦点距離との中間の焦点距離、(c)は中間焦点距離、(d)は中間焦点距離と望遠端との中間の焦点距離および(e)は望遠端のそれぞれにおける光軸に沿った断面図である。
【図6】図5に示す本発明の実施例2によるズームレンズの広角端における球面収差、非点収差、歪曲収差および横収差を示す収差曲線図である。
【図7】図5に示す本発明の実施例2によるズームレンズの中間焦点距離における球面収差、非点収差、歪曲収差および横収差を示す収差曲線図である。
【図8】図5に示す本発明の実施例2によるズームレンズの望遠端における球面収差、非点収差、歪曲収差および横収差を示す収差曲線図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る実施例3におけるズームレンズの光学系の構成およびズーミングに伴うズーム軌跡を示す図であり、(a)は広角端、(b)は広角端と中間焦点距離との中間の焦点距離、(c)は中間焦点距離、(d)は中間焦点距離と望遠端との中間の焦点距離および(e)は望遠端のそれぞれにおける光軸に沿った断面図である。
【図10】図9に示す本発明の実施例3によるズームレンズの広角端における球面収差、非点収差、歪曲収差および横収差を示す収差曲線図である。
【図11】図9に示す本発明の実施例3によるズームレンズの中間焦点距離における球面収差、非点収差、歪曲収差および横収差を示す収差曲線図である。
【図12】図9に示す本発明の実施例3によるズームレンズの望遠端における球面収差、非点収差、歪曲収差および横収差を示す収差曲線図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る実施例1〜実施例3で適用することを前提としている画像処理による歪曲収差の電子的な補正を説明するための撮像視野の模式図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置としてのデジタルカメラの物体側から見た外観構成を示す図であり、(a)は本発明に係るズームレンズを用いて構成した撮像レンズがデジタルカメラのボディー内に沈胴埋没している状態を示す斜視図、(b)は撮像レンズがデジタルカメラのボディーから突出している状態を部分的に示す一部詳細斜視図である。
【図15】図14のデジタルカメラの撮影者側から見た外観構成を示す斜視図である。
【図16】図14および図15のデジタルカメラの機能構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係るズームレンズ、撮像装置および情報装置を詳細に説明する。具体的な実施例について説明する前に、まず、本発明の原理的な実施の形態を説明する。
本発明のような、物体側から、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、そして正の屈折力を有する第4レンズ群を配置した、いわゆる正−負−正−正の4レンズ群を有するズームレンズでは、一般に、第2レンズ群が変倍作用を主に負担する、いわゆるバリエータとして構成される。しかしながら、本発明においては、第3レンズ群にも変倍作用を分担させて、変倍作用に対する第2レンズ群の負担を軽くして、広角化および高変倍化に伴って困難性が増大する収差補正の自由度を確保するようにしている。また、広角端(短焦点端)から望遠端(長焦点端)への変倍に伴って、第1レンズ群を物体側へ大きく移動させることにより、広角端において第1レンズ群を通過する光線高さを低くして、広角化に伴う第1レンズ群の大型化を抑制するとともに、望遠端では第1レンズ群と第2レンズ群との間隔を大きく確保して、長焦点化を達成するようにしている。
【0011】
すなわち、広角端から望遠端への変倍に伴って、第1レンズ群と第2レンズ群との間隔は漸次大きくなり、第2レンズ群と第3レンズ群との間隔は漸次小さくなって、第2レンズ群および第3レンズ群の倍率(絶対値)はどちらも増加して、変倍作用を互いに分担する。
さらに、本発明に係るズームレンズにおいては、第3レンズ群に関し、物体側から、順次、両凸形状の正レンズと、物体側に凸面を有する正レンズと、像側に凹面を有する負レンズ、(例えば像側に曲率の大きい凹面を有する両凹レンズからなる負レンズ)とを順次配置して、第3レンズ群を構成するとともに、第3レンズ群内の先頭の両凸形状の正レンズが、次の条件式を満足するようにした(請求項1に対応する)。
〔1〕 1.50<Ndp<1.65
〔2〕 60.0<νdp<75.0
〔3〕 0.007<Pg,Fp−(−0.001802×νdp+0.6483)
<0.025
〔4〕 0.50<f31/f3<1.00
ここで、Ndpは、第3レンズ群内先頭の正レンズのd線に対する屈折率を、νdpは、第3レンズ群内の先頭の正レンズの分散を、Pg,Fpは、第3レンズ群内の先頭の正レンズの部分分散比を、f31は、第3レンズ群内の先頭の正レンズの焦点距離を、そしてf3は、第3レンズ群の焦点距離を、それぞれあらわしている。なお、部分分散比Pg,Fは、Pg,F=(n−n)/(n−n)であり、n、nおよびnは、それぞれ、g線、F線およびC線に対する屈折率である。
【0012】
第3レンズ群を、上述のように、色収差補正に最低限必要な、正レンズと負レンズのペアの物体側に正レンズを一つ配置する構成とすることによって、3枚という比較的少ない構成枚数で、収差補正能力を確保することと、第3レンズ群の主点位置をより物体側へ配置することとが可能となる。このように、第3レンズ群の主点位置をより物体側に配置することは、望遠端における全長を短縮するために効果がある。また、第3レンズ群の最終面を、像側に凹の面とすることによって、コマ収差およびサジタル像面湾曲の良好な補正に効果がある。加えて、第3レンズ群内の先頭の正レンズの焦点距離と第3レンズ群の焦点距離の比を条件式〔4〕を満たすように適切に設定することによって、球面収差と軸上の色収差の良好な補正に効果がある。しかしながら、第3レンズ群内の先頭の正レンズの焦点距離と第3レンズ群の焦点距離の比が、条件式〔4〕の下限値を下回ると、第3レンズ群の2枚目の正レンズにパワーを持たせにくくなって、その像側に位置する負レンズとペアで行う軸上色収差の補正が不十分となるおそれがあり、条件式〔4〕の上限値を超えると、第3レンズ群内先頭のレンズにパワーを持たせにくくなって球面収差の補正が不十分となるおそれがある。
【0013】
また、第3レンズ群内先頭の正レンズのd線に対する屈折率Ndpが、条件式〔1〕の下限値を下回ると、その物体側凸面の曲率半径が小さくなって第3レンズ群の厚さ寸法が増大し、カメラサイズが増大するおそれがある。また、上述した条件式〔2〕および〔3〕を満足する光学ガラスを採用すると、色収差の良好な補正に効果がある。第3レンズ群内の先頭の正レンズの分散νdpが、条件式〔2〕の下限値を下回ると色収差の補正が不十分となる。また、条件式〔3〕の下限値を下回ると色収差の二次スペクトルの補正が不十分となる。さらに、条件式〔1〕、〔2〕および〔3〕の上限を超えるような光学ガラスは存在しないか、または仮に存在したとしても非常に特殊で且つ高価であり、現実的でない。
なお、さらに望ましくは、以下の条件式を満足するようにする。
〔1′〕 1.55<Ndp<1.65
〔2′〕 63.0<νdp<72.0
〔3′〕 0.008<Pg,Fp−(−0.001802×νdp+0.6483)
<0.020
〔4′〕 0.60<f31/f3<0.80
さらに高性能にするには、第3レンズ群内の負レンズと、その物体側に隣接して位置する正レンズとを互いに接合して接合レンズとすることが望ましい(請求項2に対応する)。
【0014】
ペアとして色収差を補正する正レンズと負レンズを接合して接合レンズとすることにより、各レンズの偏心による性能劣化を抑制することが可能である。加えて、第3レンズ群を2つのレンズ要素で構成することとなり、第3レンズ群内で偏心調整を行う場合にも、比較的簡便な構造で対応することが可能となる。
さらに高性能にするには、第3レンズ群内の先頭の正レンズが少なくとも1面の非球面を有する構成とすることが望ましい(請求項3に対応する)。
このタイプのズームレンズにおいて、主たる結像群としての役割を担う第3レンズ群の中で、最も絞りに近い先頭の正レンズを、少なくとも1面の非球面を持たせるようにすることによって、良好な収差補正を保ちながら一層の小型化を進めることが可能となる。
より良好な収差補正のためには、第3レンズ群の先頭の正レンズが、次の条件式〔5〕を満足するようにすることが望ましい(請求項4に対応する)。
〔5〕 1.5<|r3R|/fw<4.0
ここで、r3Rは、第3レンズ群内の先頭の正レンズの像側の面の曲率半径を、そしてfwは、広角端における全系の焦点距離を、それぞれあらわしている。
【0015】
条件式〔5〕の下限値を下回ると球面収差が補正過剰になり易く、そして条件式〔5〕の上限値を超えると逆に球面収差が補正不足になり易い。さらに、条件式〔5〕の範囲外では球面収差と同様に、コマ収差のバランスも取りにくく、軸外周辺部で外向性または内向性のコマ収差が発生し易くなる。
なお、さらに望ましくは、以下の条件式〔5′〕を満足するようにする。
〔5´〕 1.8<|r3R|/fw<3.0
また、他の収差を良好に補正しつつ光学系全体を小型化するために、次の条件式〔6〕を満足することが望ましい(請求項5に対応する)。
〔6〕 5.0<f1/fw<8.0
ここで、f1は、第1レンズ群の焦点距離を、そしてfwは、広角端における全系の焦点距離を、それぞれあらわしている。
条件式〔6〕の下限値を下回ると、第2レンズ群の結像倍率が等倍に近付いて変倍効率が上がり、高変倍化には有利であるが、第1レンズ群内の各レンズに大きな屈折力が必要になって、特に望遠端での色収差が悪化するなどの弊害があるばかりか、第1レンズ群が厚肉化および大口径化するなどして、特に収納状態における小型化を実現する上で不利となる。
【0016】
一方、条件式〔6〕の上限値を超えると、第2レンズ群の変倍への寄与が小さくなってしまい、高変倍化が困難になる。
さらに、広角化(短焦点化)および望遠化(長焦点化)のために重要な第1レンズ群の移動量に関連して、次の条件式〔7〕を満足するようにすることにより、充分な収差補正が可能となる(請求項6に対応する)。
〔7〕 0.10<X/f<0.35
ここで、Xは、広角端から望遠端への変倍に伴う第1レンズ群の総移動量を、そしてfは、望遠端における全系の焦点距離を、それぞれあらわしている。
条件式〔7〕の下限値を下回ると、第2レンズ群の変倍への寄与が小さくなって、第3レンズ群の負担が増加するか、または第1レンズ群および第2レンズ群の屈折力を強めなければならなくなるかして、いずれにせよ、各種収差の悪化を招く。また、広角端におけるレンズ全長が長くなって、第1レンズ群を通過する光線高さが増大し、第1レンズ群の大型化を招く。一方、条件式〔7〕の上限値を超えると、広角端での全長が短くなり過ぎるか、または望遠端での全長が長くなり過ぎるかすることになる。広角端での全長が短くなり過ぎると、第3レンズ群の移動スペースが限定され、第3レンズ群の変倍への寄与が小さくなって、全体の収差補正が困難となる。望遠端での全長が長くなり過ぎると、光軸に沿う長さ方向の小型化の妨げになるだけでなく、望遠端での周辺光量確保のために必要な径方向寸法が増大して大型化したり、また、鏡胴の倒れなどの製作誤差による像性能の劣化も招き易くなったりする。
【0017】
なお、さらに望ましくは、次の条件式〔7′〕を満足するようにすると良い。
〔7′〕 0.15<X/f<0.30
また、第2レンズ群と変倍作用を分担する第3レンズ群の移動量に関して、次の条件式〔8〕を満足するようにすることが望ましい(請求項7に対応する)。
〔8〕 0.10<X/f<0.30
ただし、Xは広角端から望遠端への変倍に際する第3レンズ群の総移動量を、そしてfは、望遠端における全系の焦点距離を、それぞれあらわしている。
条件式〔8〕の下限値を下回ると、第3レンズ群の変倍への寄与が小さくなって、第2ンズ群の負担が増加するか、または第3レンズ群自体の屈折力を強めるかしなければならなくなって、いずれにせよ、各種収差の悪化を招く。一方、条件式〔8〕の上限値を超えると、広角端におけるレンズ全長が長くなって、第1レンズ群を通過する光線高さが増大し、第1レンズ群の大型化を招く。
【0018】
なお、さらに望ましくは、次の条件式〔8′〕を満足するようにすると良い。
〔8′〕 0.14<X/f<0.20
加えて、収差補正の上から、各群の屈折力に関しての次の条件式〔9〕を満足することが望ましい(請求項8に対応する)。
〔9〕 0.50<|f|/f<0.85
ここで、fは、第2レンズ群の焦点距離を、そしてfは、第3レンズ群の焦点距離を、それぞれあらわしている。
条件式〔9〕の下限値を下回ると、第2レンズ群の屈折力が強くなり過ぎ、そして条件式〔9〕の上限値を超えると、第3レンズ群の屈折力が強くなり過ぎて、いずれにせよ、変倍に伴う収差変動が増大し易くなる。
なお、さらに望ましくは、次の条件式〔9′〕を満足すると良い。
〔9′〕 0.55<|f|/f<0.70
上述した本発明の第1の実施の形態に係るズームレンズにおいて、第1レンズ群は、物体側から、順次配置される、1枚の負レンズと、1枚の正レンズとを有する構成であることが望ましい。
【0019】
さらに具体的には、物体側から、順次、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズと、物体側に強い凸面(曲率が大きな面)を向けた正レンズとの2枚で構成するか、またはそれらの後方(像側)にさらに1個の正レンズを加えた構成にすることが望ましい。
高変倍化するため、特に望遠端の焦点距離を長くするためには、望遠端における第2レンズ群−第3レンズ群−第4レンズ群の合成倍率を大きくしなければならず、それだけ、第1レンズ群で発生した収差が像面上で拡大されることになる。このため、高変倍化を進めるためには、第1レンズ群で発生する収差量を充分に小さく抑える必要があり、そのためには第1レンズ群を上述したような構成とすることが望ましい。
また、第2レンズ群は、物体側から、順次、像側に曲率の大きな面を向けた負レンズと、像側に曲率の大きな面を向けた負レンズと、物体側に曲率の大きな面を向けた正レンズとの3枚から構成することが望ましい。このように、物体側から、順次、負レンズ−負レンズ−正レンズという配置とすることによって、第2レンズ群の主点を像側に下げることが可能となり、望遠端における光学系全長の短縮に寄与することが可能となる。
【0020】
このとき、第2レンズ群の各レンズは、次の条件式〔10〕、〔11〕および〔12〕を満足するようにすることが望ましい。
〔10〕 1.75<N21<2.10
25<ν21<55
〔11〕 1.75<N22<2.10
25<ν22<55
〔12〕 1.75<N23<2.10
15<ν23<35
ここで、N2iは、第2レンズ群中で物体側から数えてi番目のレンズの屈折率を、そしてν2iは、第2レンズ群中で物体側から数えてi番目のレンズのアッベ数を、それぞれあらわしている。
これらの条件を満足するような硝種を選択することにより、単収差を充分に小さく抑えた上で、色収差をより良好に補正することが可能となる。
【0021】
そして、第3レンズ群は、物体側から、順次、正レンズと、正レンズと、負レンズとの3枚を配置して構成することが望ましい。ここで、物体側から2番目のレンズと3番目のレンズとは適宜接合しても良い。
さらに、上述した本発明のズームレンズにおいて、第4レンズ群は、主として射出瞳距離の確保(テレセントリック性の確保)およびその移動によるフォーカシングのために設けられている。光学系の小型化のためには、第4レンズ群はなるべく簡単な構成である必要があり、例えば、正レンズ1枚で構成することが望ましい。
また、本発明のズームレンズは、上述したような4群の構成に限ったものではなく、変倍に伴う収差の変動を抑えるなど、性能確保のために自由度を増加させる必要から、第4レンズ群の像側に第5レンズ群を配置する構成とすることもできる。
また、良好な収差補正を保ちながら、より小型化を進めるためには、非球面の利用が不可欠であり、少なくとも第2レンズ群および第3レンズ群には、それぞれ1面以上の非球面を有する構成とすることが望ましい。特に、第2レンズ群においては、最も物体側レンズの物体側面を非球面とすると、広角化に伴って増大しがちな、歪曲収差および非点収差等の補正に顕著な効果が得られる。
【0022】
なお、非球面レンズとしては、光学ガラスや光学プラスチックをモールド成型したもの(ガラスモールド非球面やプラスチックモールド非球面と称される)や、ガラスレンズの表面上に薄い樹脂層を形成し、その樹脂層の表面を非球面としたもの(ハイブリッド非球面またはレプリカ非球面等と称される)等を使用することができる。
絞りの開放径は、変倍状態にかかわらず一定とすることが機構上簡略となって好ましい。ただし、望遠端の開放径を広角端に比べて大きくすることによって、変倍に伴うFナンバ(F値)の変化を小さくするようにすることもできる。像面に到達する光量を減少させる必要があるときには、開口絞り径を小径化するようにしても良いが、絞り径を大きく変えることなく、NDフィルタ(中間濃度フィルタ)等を挿入することにより、光量を減少させるようにするほうが、回折現象による解像力の低下を防止することができて好ましい。
本発明の第2の実施の形態は、上述した本発明の第1の実施の形態に係るズームレンズを、撮像用光学系として用いて構成した、いわゆるデジタルカメラ等の撮像装置である(請求項9に対応する)。
このような撮像装置は、撮像用光学系として、上述したようなズームレンズを具備することにより、小型で高画質を得ることが可能となる。
【0023】
また、カメラ機能等の撮像機能を有するいわゆる携帯情報端末装置等の情報装置における撮像機能部の撮像用光学系として、上述したようなズームレンズを用いて構成することもできる(請求項10に対応する)。
このような情報装置は、撮像機能を有し、撮像用光学系として、上述したようなズームレンズを具備することにより、小型で高画質を得ることが可能となる。
したがって、上述した本発明の第1の実施の形態に係るズームレンズは、少なくとも、
物体側から、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群とを配置してなり、
広角端から望遠端への変倍に伴って、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間隔が漸次増大し、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔が漸次減少し、そして前記第1レンズ群および前記第3レンズ群がいずれも望遠端で広角端におけるよりもより物体側に位置するように移動するズームレンズにおいて、
前記第3レンズ群は、物体側から、順次、両凸形状の正レンズと、物体側に凸面を有する正レンズと、像側に凹面を有する負レンズとを配置するとともに、
前記第3レンズ群内の先頭の正レンズのd線に対する屈折率をNdp、前記第3レンズ群内の先頭の正レンズの分散をνdp、前記第3レンズ群内の先頭の正レンズの部分分散比をPg,Fp、前記第3レンズ群内の先頭の正レンズの焦点距離をf31、そして前記第3レンズ群の焦点距離をf3とし、且つ
部分分散比Pg,Fは、
g線、F線およびC線に対する屈折率をそれぞれn、nおよびnとして、
g,F=(n−n)/(n−n
であらわされるとき、
前記第3レンズ群内の先頭の両凸形状の正レンズが、
条件式:
〔1〕 1.50<Ndp<1.65
〔2〕 60.0<νdp<75.0
〔3〕 0.007<Pg,Fp−(−0.001802×νdp+0.6483)
<0.025
〔4〕 0.50<f31/f3<1.00
を満足することを特徴としている(請求項1)。
【0024】
また、前記第3レンズ群は、
該第3レンズ群内における前記負レンズと、その物体側に隣接して位置する前記正レンズとが互いに接合されてなることが望ましい(請求項2)。
さらに、前記第3レンズ群は、
前記第3レンズ群内の先頭の前記正レンズが少なくとも1面の非球面を有してなることが望ましい(請求項3)。
そして、より望ましくは、前記第3レンズ群内の先頭の前記正レンズの像側面の曲率半径をr3R、そして広角端における全系の焦点距離をfwとして、
前記第3レンズ群内の先頭の前記正レンズが、
条件式:
〔5〕 1.5<|r3R|/fw<4.0
を満足するようにしても良い(請求項4)。
【0025】
また、さらに望ましくは、第1レンズ群の焦点距離をf1、広角端における全系の焦点距離をfwとして、
条件式:
〔6〕 5.0<f1/fw<8.0
を満足するようにしても良い(請求項5)。
さらに、望ましくは、
広角端から望遠端への変倍に伴う前記第1レンズ群の総移動量をX、そして望遠端における全系の焦点距離をfとして、
条件式:
〔7〕 0.10<X/f<0.35
を満足するようにしても良い(請求項6)。
また、より望ましくは、
広角端から望遠端への変倍に伴う前記第3レンズ群の総移動量をX、そして望遠端における全系の焦点距離をfとして、
条件式:
〔8〕 0.10<X/f<0.30
を満足するようにしても良い(請求項7)。
【0026】
さらに、一層望ましくは、
前記第2レンズ群の焦点距離をf、そして前記第3レンズ群の焦点距離をfとして、
条件式:
〔9〕 0.50<|f|/f<0.85
を満足するようにしても良い(請求項8)。
そして、上述した本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置は、
撮像用光学系として、上述したいずれかのズームレンズを具備して構成する(請求項9)。
また、撮像機能を有する情報装置は、撮像機能部の撮像用光学系として、上述したいずれかのズームレンズを具備して構成すれば良い(請求項10)。
【実施例1】
【0027】
次に、上述した本発明の実施の形態に基づく、具体的な実施例を詳細に説明する。以下に述べる実施例1〜実施例3は、本発明の第1の実施の形態に係るズームレンズの数値例による具体的な構成の実施例である。図1〜図4は、本発明の第1の実施の形態に係る実施例1におけるズームレンズを説明するためのものであり、図5〜図8は、本発明の第1の実施の形態に係る実施例2におけるズームレンズを説明するためのものであり、そして図9〜図12は、本発明の第1の実施の形態に係る実施例3におけるズームレンズを説明するためのものである。
なお、実施例1〜実施例3の全ての実施例において、最大像高は3.93mmである。但し、広角端においては、意図的に発生させた負の歪曲収差分だけ画像を拡大して生成することによる歪曲補正画像処理を適用するようにする。このため、歪曲収差量を考慮して、次表のように、最大像高を小さく設定してある。
【0028】
【表1】

【0029】
上述したように、実施例1〜実施例3のズームレンズにおいては、歪曲収差の画像処理による収差補正を行う。すなわち、実施例1〜実施例3のズームレンズにおいては、図13に、受光素子の撮像範囲(並びに中間焦点距離および望遠端(長焦点端)における撮像範囲)をTFとし、広角端(短焦点端)における撮像範囲をWFとして、それぞれ示すように、矩形の受光素子受光面TF上に、広角端においては、撮像範囲WFのような樽型の歪曲収差が発生する。一方、中間焦点距離およびその近傍の状態や望遠端においては、歪曲収差の発生が抑えられている。歪曲収差を電気的に補正するために、有効撮像範囲を、広角端では樽型形状(WF)とし、中間焦点距離や望遠端では矩形状(TF)となるようにしている。そして、広角端における有効撮像範囲(WF)を画像処理により画像変換し、歪みを低減させた矩形の画像情報に変換する。そのため、表1に示したように、実施例1〜実施例3においては、広角端での像高を、中間焦点距離での像高や望遠端での像高よりも小さくなるように設定している。
【0030】
実施例1〜実施例3のズームレンズは、いずれも、物体側から、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、そして正の屈折力を有する第4レンズ群を配置した、いわゆる正−負−正−正の4群構成のズームレンズである。
実施例1〜実施例3の各実施例のズームレンズにおいて、第4レンズ群の像面側に配設される平行平板からなる光学要素は、光学ローパスフィルタおよび赤外カットフィルタ等の各種光学フィルタや、CMOS(相補型金属酸化物半導体)イメージセンサまたはCCD(電荷結合素子)イメージセンサ等の受光撮像素子のカバーガラス(シールガラス)を想定したものであり、ここでは、等価的な透明平行平板として、各種フィルタFGと総称することにする。
また、実施例1〜実施例3の各実施例のズームレンズにおいて、各レンズ群を構成するレンズを形成する材質は、全ての実施例のズームレンズにおける第2レンズ群の先頭のレンズの非球面部APおよび第4レンズ群の正レンズが光学プラスチックで形成されており、それら以外の全てのレンズの材質が光学ガラスである。なお、これら実施例1〜実施例3の各実施例において用いている光学ガラスの硝材は、HOYA株式会社(HOYA)、株式会社オハラ(OHARA)、株式会社住田光学ガラス(SUMITA)および光ガラス株式会社(HIKARI)の製品の光学硝種名で示している。
【0031】
実施例1〜実施例3の各実施例のズームレンズにおける収差は、充分に補正されており、1000万〜1500万画素またはそれ以上の画素数の受光素子に対応することが可能となっている。本発明の第1の実施の形態に従ってズームレンズを構成することによって、充分な小型化を達成しながら、非常に良好な像性能を確保し得ることは、実施例1〜実施例3の各実施例より明らかである。
実施例1〜実施例3に共通な記号の意味は、次の通りである。
f:光学系全系の焦点距離
F:Fナンバ(F値)
ω:半画角(度)
R:曲率半径(非球面については近軸曲率半径)
D:面間隔
Nd:屈折率
νd:アッベ数
K:非球面の円錐定数
:4次の非球面係数
:6次の非球面係数
:8次の非球面係数
10:10次の非球面係数
ここで用いられる非球面形状は、近軸曲率半径の逆数(近軸曲率)をC、光軸からの高さをH、そして円錐定数をKとし、上記各次数の非球面係数を用い、Xを光軸方向における非球面量として、次の式〔13〕で定義され、近軸曲率半径および円錐定数、並びに非球面係数を与えて形状を特定する。
【0032】
【数1】

【0033】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る実施例1のズームレンズの光学系のレンズ構成および広角端から所定の中間焦点距離を経て望遠端へのズーミングに伴うズーム軌跡を模式的に示しており、(a)は短焦点端、すなわち広角端(WIDE)における断面図、(b)は所定の中間焦点距離(MEAN)の広角寄りの焦点距離、すなわち広角端(WIDE)と中間焦点距離(MEAN)との中間の焦点距離における断面図、(c)は所定の中間焦点距離(MEAN)における断面図、(d)は所定の中間焦点距離(MEAN)の望遠寄りの焦点距離、すなわち望遠端(TELE)と中間焦点距離(MEAN)との中間の焦点距離における断面図、そして(e)は長焦点端、すなわち望遠端(TELE)における断面図である。なお、実施例1のレンズ群配置を示す図1において、図示左側が物体(被写体)側である。
図1に示すズームレンズは、物体側から、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、そして正の屈折力を有する第4レンズ群G4とを配置し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に開口絞りADを配している。
【0034】
第1レンズ群G1は、第1レンズL11、第2レンズL12および第3レンズL13を有してなり、第2レンズ群G2は、第1レンズL21、第2レンズL22および第3レンズL23を有してなり、第3レンズ群G3は、第1レンズL31、第2レンズL32および第3レンズL33を有してなり、そして第4レンズ群G4は、単一のレンズL40を有してなる。
第1レンズ群G1〜第4レンズ群G4は、それぞれ各群毎に適宜なる共通の支持枠等によって支持され、ズーミング等に際しては各群毎に一体的に動作し、開口絞りADは、各群とは独立に動作する。図1には、各光学面の面番号(R1〜R3)も示している。なお、図1における各参照符号は、参照符号の桁数の増大による説明の煩雑化を避けるため、各実施例毎に独立に用いており、そのため他の実施例に係る図面と共通の参照符号を付していてもそれらは他の実施例とはかならずしも共通の構成ではない。
短焦点端(広角端)から長焦点端(望遠端)への変倍に際しては、第1レンズ群G1〜第4レンズ群G4の全群が移動して、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔が増大し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が減小し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔が増大し、そして第1レンズ群および第3レンズ群は、それぞれの長焦点端における位置が、短焦点端における位置よりも物体側に位置するように移動する。
【0035】
第1レンズ群G1は、物体側から、順次、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズからなる第1レンズ(負レンズ)L11と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる第2レンズ(第1正レンズ)L12と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる第3レンズ(第2正レンズ)L13とを配している。第1レンズL11と第2レンズL12の2枚のレンズは、互いに密接して貼り合わせられて一体に接合され、2枚接合からなる接合レンズを形成している。
第2レンズ群G2は、物体側から、順次、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズであって、その物体側に光学プラスチック製の非球面部APを被着して非球面を形成している非球面レンズからなる第1レンズ(第1負レンズ)L21と、像側に凹面を向けた平凹負レンズからなる第2レンズ(第2負レンズ)L22と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる第3レンズ(正レンズ)L23とを配している。
開口絞りADは、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に介挿配置されている。
第3レンズ群G3は、物体側から、順次、物体側により強い(曲率の大きい)凸面を向けた両凸正レンズであり且つ両面に非球面を形成した非球面レンズからなる第1レンズ(第1正レンズ)L31と、物体側により強い凸面を向けた両凸正レンズからなる第2レンズ(第2正レンズ)L32と、像側により強い凹面を向けた両凹負レンズからなる第3レンズ(負レンズ)L33とを配している。第2レンズL32と第3レンズL33の2枚のレンズは、互いに密接して貼り合わせられて一体に接合され、2枚接合からなる接合レンズを形成している。
【0036】
第4レンズ群G4は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズであり、且つ物体側を非球面とした非球面レンズからなる単一の正レンズL40のみからなっている。
この場合、図1に示すように、短焦点端(広角端)から長焦点端(望遠端)への変倍に伴って、第1レンズ群G1は、像側から物体側へほぼ単調に移動し、第2レンズ群G2は、物体側から像側へほぼ単調に移動し、開口絞りADは物体側に凸となる軌跡を描いて移動し、第3レンズ群G3は、像側から物体側へほぼ単調に移動し、そして第4レンズ群G4は、物体側に凸となる軌跡を描いて移動する。
この実施例1においては、全光学系の焦点距離f、FナンバFおよび半画角ωが、ズーミングによって、それぞれf=5.173〜16.626〜53.275、F=3.67〜4.79〜5.78およびω=38.83〜13.77〜4.21の範囲で変化する。各光学要素の光学特性は、次表の通りである。
【0037】
【表2】

【0038】
表2において、面番号に「*(アスタリスク)」を付して示した面番号のレンズ面が非球面である。また、光学ガラスレンズの硝材の硝種名の後には、次の通り製造メーカー名を、HOYA株式会社(HOYA)および株式会社オハラ(OHARA)等として略記した。これらは、他の実施例についても同様である。
すなわち、表2においては、「*」が付された第6面、第14面、第15面および第19面の各光学面が非球面であり、式〔13〕における各非球面のパラメータは、次の通りである。
非球面パラメータ
第6面
K=0.0
=5.24712E−05
=−5.00243E−06
=1.84175E−07
10=−2.05338E−09
第14面
K=−2.35239
A4=4.19285E−04
A6=3.46410E−05
A8=−3.92680E−06
A10= 1.94387E−07
【0039】
第15面
K=−3.02892
A4=−1.61694E−04
A6=5.69894E−05
A8=−5.58140E−06
A10=2.63057E−07
第19面
K=0.0
A4=−1.59683E−04
A6=3.39550E−06
A8=−9.85726E−08
A10=1.10634E−09
この実施例1においては、全光学系の焦点距離f、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間の可変間隔DA、第2レンズ群G2と開口絞りADとの間の可変間隔DB、開口絞りADと第3レンズ群G3との間の可変間隔DC、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間の可変間隔DD、そして第4レンズ群G4と各種フィルタFGとの間の可変間隔DE等の可変量は、ズーミングに伴って次表のように変化させる。
【0040】
【表3】

【0041】
この場合、条件式〔1〕〜条件式〔9〕に対応する値は、次の通りとなり、それぞれ条件式〔1〕〜条件式〔9〕を満足している。
〔1〕 Ndp=1.55332
〔2〕 νdp=71.68
〔3〕 Pg,Fp−(−0.001802×νdp+0.6483)=0.0211
〔4〕 f31/f3=0.773
〔5〕 |r3R|/fw=1.953
〔6〕 f1/fw=6.346
〔7〕 X/f=0.228
〔8〕 X/f=0.148
〔9〕 |f|/f=0.647
また、図2、図3および図4に、それぞれ、実施例1の広角端、中間焦点距離および望遠端における球面収差、非点収差、歪曲収差、並びに横収差の各収差図を示している。なお、これらの収差図において、球面収差図における破線は、正弦条件をあらわし、非点収差図における実線は、サジタル、そして破線は、メリディオナルをそれぞれあらわしている。また、球面収差、非点収差、並びに横収差の各収差図におけるgおよびdは、それぞれ、g線およびd線をあらわしている。これらは、他の実施例の収差図についても同様である。
【実施例2】
【0042】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る実施例2のズームレンズの光学系のレンズ構成および広角端から所定の中間焦点距離を経て望遠端へのズーミングに伴うズーム軌跡を示しており、(a)は短焦点端、すなわち広角端(WIDE)における断面図、(b)は所定の中間焦点距離(MEAN)の広角寄りの焦点距離、すなわち広角端(WIDE)と中間焦点距離(MEAN)との中間の焦点距離における断面図、(c)は所定の中間焦点距離(MEAN)における断面図、(d)は所定の中間焦点距離(MEAN)の望遠寄りの焦点距離、すなわち望遠端(TELE)と中間焦点距離(MEAN)との中間の焦点距離における断面図、そして(e)は長焦点端、すなわち望遠端(TELE)における断面図である。なお、実施例2のレンズ群配置を示す図5においても、図示左側が物体(被写体)側である。
図5に示すズームレンズは、物体側から、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、そして正の屈折力を有する第4レンズ群G4とを配置し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に開口絞りADを配している。
【0043】
第1レンズ群G1は、第1レンズL11、第2レンズL12および第3レンズL13を有してなり、第2レンズ群G2は、第1レンズL21、第2レンズL22および第3レンズL23を有してなり、第3レンズ群G3は、第1レンズL31、第2レンズL32および第3レンズL33を有してなり、そして第4レンズ群G4は、単一のレンズL40を有してなる。
第1レンズ群G1〜第4レンズ群G4は、それぞれ各群毎に適宜なる共通の支持枠等によって支持され、ズーミング等に際しては各群毎に一体的に動作し、開口絞りADは、各群とは独立に動作する。図5には、各光学面の面番号も示している。なお、図5における各参照符号は、参照符号の桁数の増大による説明の煩雑化を避けるため、各実施例毎に独立に用いており、そのため他の実施例に係る図面と共通の参照符号を付していてもそれらは他の実施例とはかならずしも共通の構成ではない。
短焦点端(広角端)から長焦点端(望遠端)への変倍に際しては、第1レンズ群G1〜第4レンズ群G4の全群が移動して、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔が増大し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が減小し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔が増大し、そして第1レンズ群および第3レンズ群は、それぞれの長焦点端における位置が、短焦点端における位置よりも物体側に位置するように移動する。
【0044】
第1レンズ群G1は、物体側から、順次、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズからなる第1レンズ(負レンズ)L11と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる第2レンズ(第1正レンズ)L12と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる第3レンズ(第2正レンズ)L13とを配している。第1レンズL11と第2レンズL12の2枚のレンズは、互いに密接して貼り合わせられて一体に接合され、2枚接合からなる接合レンズを形成している。
第2レンズ群G2は、物体側から、順次、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズであって、その物体側に光学プラスチック製の非球面部APを被着して非球面を形成している非球面レンズからなる第1レンズ(第1負レンズ)L21と、像側に凹面を向けた平凹負レンズからなる第2レンズ(第2負レンズ)L22と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる第3レンズ(正レンズ)L23とを配している。
【0045】
開口絞りADは、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に介挿配置されている。
第3レンズ群G3は、物体側から、順次、物体側により強い凸面を向けた両凸正レンズであり且つ両面に非球面を形成した非球面レンズからなる第1レンズ(第1正レンズ)L31と、両面をほぼ同様の(像側に若干大きな曲率の)凸面とした両凸正レンズからなる第2レンズ(第2正レンズ)L32と、像側により強い凹面を向けた両凹負レンズからなる第3レンズ(負レンズ)L33とを配している。第2レンズL32と第3レンズL33の2枚のレンズは、互いに密接して貼り合わせられて一体に接合され、2枚接合からなる接合レンズを形成している。
【0046】
第4レンズ群G4は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズであり、且つ物体側を非球面とした非球面レンズからなる単一の正レンズL40のみからなっている。
この場合、図5に示すように、短焦点端(広角端)から長焦点端(望遠端)への変倍に伴って、第1レンズ群G1は像側から物体側へほぼ単調に移動し、第2レンズ群G2は物体側から像側へほぼ単調に移動し、開口絞りADは物体側に凸となる軌跡を描いて移動し、第3レンズ群G3は像側から物体側へほぼ単調に移動し、そして第4レンズ群G4は物体側に凸となる軌跡を描いて移動する。
この実施例2においては、全光学系の焦点距離f、FナンバFおよび半画角ωが、ズーミングによって、それぞれf=5.176〜16.638〜53.311、F=3.67〜4.96〜5.78およびω=38.87〜13.86〜4.25の範囲で変化する。各光学要素の光学特性は、次表の通りである。
【0047】
【表4】

【0048】
表4においても、面番号に「*」を付して示した面番号のレンズ面が非球面である。また、先に述べたように、光学ガラスレンズの硝材の硝種名の後には、次の通り製造メーカー名を、HOYA株式会社(HOYA)および株式会社オハラ(OHARA)等として略記した。
すなわち、表4においては、「*」が付された第6面、第14面、第15面および第19面の各光学面が非球面であり、式〔13〕における各非球面のパラメータは、次の通りである。
非球面パラメータ
第6面
K=0.0
=6.40952E−05
=−3.56193E−06
=6.04348E−08
10=6.04272E−10
【0049】
第14面
K=−2.28234
=4.51401E−04
=3.86076E−05
=−3.93902E−06
10=2.06300E−07
第15面
K=−3.36875
=−1.47947E−04
=5.63018E−05
=−5.30985E−06
10=2.65127E−07
第19面
K=0.0
=−1.61930E−04
=6.13427E−06
=−2.73538E−07
10=4.24747E−09
【0050】
この実施例2においては、全光学系の焦点距離f、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間の可変間隔DA、第2レンズ群G2と開口絞りADとの間の可変間隔DB、開口絞りADと第3レンズ群G3との間の可変間隔DC、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間の可変間隔DD、そして第4レンズ群G4と各種フィルタFGとの間の可変間隔DE等の可変量は、ズーミングに伴って次表のように変化させる。
【0051】
【表5】

【0052】
この場合、条件式〔1〕〜条件式〔9〕に対応する値は、次の通りとなり、それぞれ条件式〔1〕〜条件式〔9〕を満足している。
〔1〕 Ndp=1.61881
〔2〕 νdp=63.85
〔3〕 Pg,Fp−(−0.001802×νdp+0.6483)=0.0084
〔4〕 f31/f3=0.749
〔5〕 |r3R|/fw=2.181
〔6〕 f1/fw=6.278
〔7〕 X/f=0.239
〔8〕 X/f=0.145
〔9〕 |f|/f=0.627
また、図6、図7および図8に、それぞれ、実施例2の広角端、中間焦点距離および望遠端における球面収差、非点収差、歪曲収差、並びに横収差の各収差図を示している。なお、これらの収差図においても、先に述べたように、球面収差図における破線は正弦条件をあらわし、非点収差図における実線はサジタル、そして破線はメリディオナルをそれぞれあらわしている。
また、球面収差、非点収差、並びに横収差の各収差図におけるgおよびdはそれぞれ、g線およびd線をあらわしている。
【実施例3】
【0053】
図9は、本発明の第1の実施の形態に係る実施例3のズームレンズの光学系のレンズ構成および広角端から所定の中間焦点距離を経て望遠端へのズーミングに伴うズーム軌跡を示しており、(a)は短焦点端、すなわち広角端(WIDE)における断面図、(b)は所定の中間焦点距離(MEAN)の広角寄りの焦点距離、すなわち広角端(WIDE)と中間焦点距離(MEAN)との中間の焦点距離における断面図、(c)は所定の中間焦点距離(MEAN)における断面図、(d)は所定の中間焦点距離(MEAN)の望遠寄りの焦点距離、すなわち望遠端(TELE)と中間焦点距離(MEAN)との中間の焦点距離における断面図、そして(e)は長焦点端すなわち望遠端(TELE)における断面図である。この実施例3のレンズ群配置を示す図9においても、図示左側が物体(被写体)側である。
図9に示すズームレンズは、物体側から、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、そして正の屈折力を有する第4レンズ群G4とを配置し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に開口絞りADを配している。
【0054】
第1レンズ群G1は、第1レンズL11、第2レンズL12および第3レンズL13を有してなり、第2レンズ群G2は、第1レンズL21、第2レンズL22および第3レンズL23を有してなり、第3レンズ群G3は、第1レンズL31、第2レンズL32および第3レンズL33を有してなり、そして第4レンズ群G4は、単一のレンズL40を有してなる。
第1レンズ群G1〜第4レンズ群G4は、それぞれ各群毎に適宜なる共通の支持枠等によって支持され、ズーミング等に際しては各群毎に一体的に動作し、開口絞りADは、各群とは独立に動作する。図9には、各光学面の面番号も示している。
短焦点端(広角端)から長焦点端(望遠端)への変倍に際しては、第1レンズ群G1〜第4レンズ群G4の全群が移動して、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔が増大し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が減小し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔が増大し、そして第1レンズ群および第3レンズ群は、それぞれの長焦点端における位置が、短焦点端における位置よりも物体側に位置するように移動する。
【0055】
第1レンズ群G1は、物体側から、順次、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズからなる第1レンズ(負レンズ)L11と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる第2レンズ(第1正レンズ)L12と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる第3レンズ(第2正レンズ)L13とを配している。第1レンズL11と第2レンズL12の2枚のレンズは、互いに密接して貼り合わせられて一体に接合され、2枚接合からなる接合レンズを形成している。
第2レンズ群G2は、物体側から、順次、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズであって、その物体側に光学プラスチック製の非球面部APを被着して非球面を形成している非球面レンズからなる第1レンズ(第1負レンズ)L21と、像側に凹面を向けた平凹負レンズからなる第2レンズ(第2負レンズ)L22と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる第3レンズ(正レンズ)L23とを配している。
開口絞りADは、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に介挿配置されている。
第3レンズ群G3は、物体側から、順次、物体側により強い凸面を向けた両凸正レンズであり且つ両面に非球面を形成した非球面レンズからなる第1レンズ(第1正レンズ)L31と、像側により強い凸面を向けた両凸正レンズからなる第2レンズ(第2正レンズ)L32と、像側により強い凹面を向けた両凹負レンズからなる第3レンズ(負レンズ)L33とを配している。
【0056】
第2レンズL32と第3レンズL33の2枚のレンズは、互いに密接して貼り合わせられて一体に接合され、2枚接合からなる接合レンズを形成している。
第4レンズ群G4は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズであり、且つ物体側を非球面とした非球面レンズからなる単一の正レンズL40のみからなっている。
この場合、図9に示すように、短焦点端(広角端)から長焦点端(望遠端)への変倍に伴って、第1レンズ群G1は像側から物体側へほぼ単調に移動し、第2レンズ群G2は物体側から像側へほぼ単調に移動し、開口絞りADは物体側に凸となる軌跡を描いて移動し、第3レンズ群G3は像側から物体側へほぼ単調に移動し、そして第4レンズ群G4は物体側に凸となる軌跡を描いて移動する。
この実施例3においては、全光学系の焦点距離f、FナンバFおよび半画角ωが、ズーミングによって、それぞれf=5.179〜16.648〜53.316、F=3.68〜4.85〜5.79およびω=38.86〜12.04〜4.22の範囲で変化する。各光学要素の光学特性は、次表の通りである。
【0057】
【表6】

【0058】
表6においても、面番号に「*」を付して示した面番号のレンズ面が非球面である。また、先に述べたように、光学ガラスレンズの硝材の硝種名の後には、次の通り製造メーカー名を、HOYA株式会社(HOYA)、株式会社オハラ(OHARA)および光ガラス株式会社(HIKARI)等として略記した。
すなわち、表6においては、「*」が付された第6面、第14面、第15面および第19面の各光学面が非球面であり、式〔13〕における各非球面のパラメータは、次の通りである。
非球面パラメータ
第6面
K=0.0
=3.11874E−05
=−2.54805E−06
=7.26409E−08
10=−6.63856E−10
第14面
K=−2.03124
=5.16222E−04
=3.69767E−05
=−4.05747E−06
10=1.78856E−07
【0059】
第15面
K=−3.19701
=−1.47306E−04
=5.46536E−05
=−5.66383E−06
10=2.42378E−07
第19面
K=0.0
=−31.39089E−04
=5.48446E−06
=−2.40629E−07
10=4.08517E−09
この実施例3においては、全光学系の焦点距離f、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間の可変間隔DA、第2レンズ群G2と開口絞りADとの間の可変間隔DB、開口絞りADと第3レンズ群G3との間の可変間隔DC、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間の可変間隔DD、そして第4レンズ群G4と各種フィルタFGとの間の可変間隔DE等の可変量は、ズーミングに伴って次表のように変化させる。
【0060】
【表7】

【0061】
この場合、条件式〔1〕〜条件式〔9〕に対応する値は、次の通りとなり、それぞれ条件式〔1〕〜条件式〔9〕を満足している。
〔1〕 Ndp=1.59255
〔2〕 νdp=67.86
〔3〕 Pg,Fp−(−0.001802×νdp+0.6483)=0.0181
〔4〕 f31/f3=0.672
〔5〕 |r3R|/fw=2.355
〔6〕 f1/fw=6.561
〔7〕 X/f=0.173
〔8〕 X/f=0.164
〔9〕 |f|/f=0.673
また、図10、図11および図12に、それぞれ、実施例3の広角端、中間焦点距離および望遠端における球面収差、非点収差、歪曲収差、並びに横収差の各収差図を示している。なお、これらの収差図においても、先に述べたように、球面収差図における破線は正弦条件をあらわし、非点収差図における実線はサジタル、そして破線はメリディオナルをそれぞれあらわしている。また、球面収差、非点収差、並びに横収差の各収差図におけるgおよびdはそれぞれ、g線およびd線をあらわしている。
[第2の実施の形態]
【0062】
次に、上述した本発明の第1の実施の形態に係るズームレンズを撮像用光学系として採用して構成した本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置について図14〜図16を参照して説明する。図14は、本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置としてのデジタルカメラを物体側から見た外観構成を模式的に示しており、(a)は本発明に係るズームレンズを用いて構成した撮像レンズがデジタルカメラのボディー内に沈胴埋没している状態を示す斜視図、そして(b)は撮像レンズがデジタルカメラのボディーから突出している状態を部分的に示す一部詳細斜視図である。図15は、当該デジタルカメラを撮影者側から見た外観構成を示す斜視図である。また、図16は、当該デジタルカメラの機能構成を模式的に示すブロック図である。なお、図14〜図16には、撮像装置としてのデジタルカメラについて説明しているが、ビデオカメラおよびフィルムカメラ等を含む主として撮像専用の撮像装置だけでなく、携帯電話機や、PDA(personal data assistant)などと称される携帯情報端末装置、さらにはこれらの機能を組み合わせたスマートフォンなどと称される携帯端末装置を含む種々の情報装置にデジタルカメラ等に相当する撮像機能が組み込まれることが多い。このような情報装置も外観は若干異にするもののデジタルカメラ等と実質的に全く同様の機能・構成を含んでおり、このような情報装置に上述した本発明の第1の実施の形態に係るズームレンズを撮像用光学系として用いることもできる。
【0063】
図14および図15に示すように、デジタルカメラは、撮影レンズ101、シャッタボタン102、ズームレバー103、ファインダ104、ストロボ105、液晶モニタ106、操作ボタン107、電源スイッチ108、メモリカードスロット109および通信カードスロット110等を備えている。さらに、図16に示すように、デジタルカメラは、受光素子111、信号処理装置112、画像処理装置113、中央演算装置(CPU)114、半導体メモリ115および通信カード等116も備えている。
デジタルカメラは、撮影レンズ101とCMOS(相補型金属酸化物半導体)撮像素子やCCD(電荷結合素子)撮像素子等のエリアセンサとしての受光素子111を有しており、撮像用光学系である撮影レンズ101によって形成される撮影対象となる物体、つまり被写体、の像を受光素子111によって読み取るように構成されている。この撮影レンズ101として、実施例1〜実施例3において説明した本発明の第1の実施の形態に係るズームレンズを用いている(請求項9または請求項10に対応する)。
受光素子111の出力は、中央演算装置114によって制御される信号処理装置112によって処理され、デジタル画像情報に変換される。信号処理装置112によってデジタル化された画像情報は、やはり中央演算装置114によって制御される画像処理装置113において所定の画像処理が施された後、不揮発性メモリ等の半導体メモリ115に記録される。
【0064】
この場合、半導体メモリ115は、メモリカードスロット109に装填されたメモリカードでもよく、デジタルカメラ本体に内蔵された半導体メモリでもよい。液晶モニタ106には、撮影中の画像を表示することもできるし、半導体メモリ115に記録されている画像を表示することもできる。また、半導体メモリ115に記録した画像は、通信カードスロット110に装填した通信カード等116を介して外部へ送信することも可能である。
撮影レンズ101は、デジタルカメラの携帯時には図14の(a)に示すように沈胴状態にあってデジタルカメラのボディー内に埋没しており、ユーザが電源スイッチ108を操作して電源を投入すると、図14の(b)に示すように鏡胴が繰り出され、デジタルカメラのボディーから突出する構成とする。ズームレバー103を操作することによって、ズームレンズからなる撮影レンズ101の各レンズ群の配置を変化させ、ズーミング動作させて、広角端から望遠端まで光学的なズーミングを行うことができる。このとき、ファインダ104の光学系も有効画角の変化に連動して変倍するようにすることが望ましい。
多くの場合、シャッタボタン102の半押し操作により、フォーカシングがなされる。上述した本発明の第1の実施の形態に係る実施例1〜実施例3のズームレンズにおいて、フォーカシングは、第2レンズ群G2および第4レンズ群G4の少なくとも一方の移動、あるいは受光素子111の移動によって行うことができる。
【0065】
シャッタボタン102をさらに押し込み全押し状態とすると撮影が行なわれ、その後に上述した通りの処理がなされる。
半導体メモリ115に記録した画像を液晶モニタ106に表示させたり、通信カード等116を介して外部へ送信させる際には、操作ボタン107を所定のごとく操作する。半導体メモリ115および通信カード等116は、メモリカードスロット109および通信カードスロット110等のような、それぞれ専用または汎用のスロットに装填して使用される。
なお、撮影レンズ101が沈胴状態にあるときには、結像レンズの各群は必ずしも光軸上に並んでいなくても良い。例えば、沈胴時に第3レンズ群G3および第4レンズ群G4の少なくとも一方が光軸上から退避して、その他のレンズ群と並列的に収納されるような機構とすれば、デジタルカメラのさらなる薄型化を実現することができる。
上述のようなデジタルカメラ(撮像装置)または情報装置には、既に述べた通り、第1の実施の形態に係る実施例1〜実施例3に示されたようなズームレンズを用いて構成した撮影レンズ101を撮像用光学系として使用することができる。したがって、1000万画素〜1500万画素またはそれ以上の画素数の受光素子を使用した高画質で小型のデジタルカメラ(撮像装置)または情報装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0066】
G1 第1レンズ群(正)
L11 第1レンズ(負レンズ)
L12 第2レンズ(第1正レンズ)
L13 第3レンズ(第2正レンズ)
G2 第2レンズ群(負)
L21 第1レンズ(第1負レンズ)
L22 第2レンズ(第2負レンズ)
L23 第3レンズ(正レンズ)
G3 第3レンズ群(正)
L31 第1レンズ(第1正レンズ)
L32 第2レンズ(第2正レンズ)
L33 第3レンズ(負レンズ)
G4 第4レンズ群(正)
L40 単一正レンズ
AP 非球面部
AD 開口絞り
FG 各種フィルタ
101 撮影レンズ
102 シャッタボタン
103 ズームレバー
104 ファインダ
105 ストロボ
106 液晶モニタ
107 操作ボタン
108 電源スイッチ
109 メモリカードスロット
110 通信カードスロット
111 受光素子(エリアセンサ)
112 信号処理装置
113 画像処理装置
114 中央演算装置(CPU)
115 半導体メモリ
116 通信カード等
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開2010−102096号公報
【特許文献2】特開2010−91881号公報
【特許文献3】特開2008−203453号公報
【特許文献4】特開2001−318312号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群とを配置してなり、
広角端から望遠端への変倍に伴って、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間隔が漸次増大し、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔が漸次減少し、そして前記第1レンズ群および前記第3レンズ群がいずれも望遠端で広角端におけるよりもより物体側に位置するように移動するズームレンズにおいて、
前記第3レンズ群は、物体側から、順次、両凸形状の正レンズと、物体側に凸面を有する正レンズと、像側に凹面を有する負レンズとを配置するとともに、
前記第3レンズ群内の先頭の前記正レンズのd線に対する屈折率をNdp、前記第3レンズ群内の先頭の前記正レンズの分散をνdp、前記第3レンズ群内の先頭の前記正レンズの部分分散比をPg,Fp、前記第3レンズ群内の先頭の前記正レンズの焦点距離をf31、そして前記第3レンズ群の焦点距離をf3とし、且つ
部分分散比Pg,Fは、
g線、F線およびC線に対する屈折率をそれぞれn、nおよびnとして、
g,F =(n−n)/(n−n
であらわされるとき、
前記第3レンズ群内の先頭の両凸形状の前記正レンズが、
条件式:
〔1〕 1.50<Ndp<1.65
〔2〕 60.0<νdp<75.0
〔3〕 0.007<Pg,Fp−(−0.001802×νdp+0.6483)
<0.025
〔4〕 0.50<f31/f3<1.00
を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
前記第3レンズ群は、
該第3レンズ群内における前記負レンズと、その物体側に隣接して位置する前記正レンズとが互いに接合されてなることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記第3レンズ群は、
前記第3レンズ群内の先頭の前記正レンズが少なくとも1面の非球面を有してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記第3レンズ群内の先頭の前記正レンズの像側面の曲率半径をr3R、そして広角端における全系の焦点距離をfwとして、
前記第3レンズ群内の先頭の前記正レンズが、
条件式:
〔5〕 1.5<|r3R|/fw<4.0
を満足することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記第1レンズ群の焦点距離をf1、広角端における全系の焦点距離をfwとして、
条件式:
〔6〕 5.0<f1/fw<8.0
を満足することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
広角端から望遠端への変倍に伴う前記第1レンズ群の総移動量をX、そして望遠端における全系の焦点距離をfとして、
条件式:
〔7〕 0.10<X/f<0.35
を満足することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
広角端から望遠端への変倍に伴う前記第3レンズ群の総移動量をX、そして望遠端における全系の焦点距離をfとして、
条件式:
〔8〕 0.10<X/f<0.30
を満足することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項8】
前記第2レンズ群の焦点距離をf、そして前記第3レンズ群の焦点距離をfとして、
条件式:
〔9〕 0.50<|f|/f<0.85
を満足することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項9】
撮像用光学系として、請求項1〜請求項8のいずれか1項のズームレンズを具備することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
撮像機能を有し、撮像用光学系として、請求項1〜請求項8のいずれか1項のズームレンズを具備することを特徴とする情報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−88584(P2013−88584A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228386(P2011−228386)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】