説明

セラミックス摺動部材を用いた純水用回転機械

【課題】純水や超純水中で使用可能であり、長期に亘って安定して使用できるセラミックス摺動部材を用いた純水用回転機械を提供する。
【解決手段】互いに摺動して軸を回転自在に支承する回転側部材51と固定側部材52とを備え、回転側部材51及び固定側部材52の少なくとも一方を、少なくとも一部にβ−SiCを含むSiC製としたセラミックス摺動部材を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ、タービン、コンプレッサー、ブロワ等の回転機械に使用するのに適した軸受またはシール部材を備えたセラミックス摺動部材を用いた回転機械に関し、特に取扱液が純水または超純水であるセラミックス摺動部材を用いた純水用回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、回転機械であるキャンドモータポンプは、一般に、主軸を両側で支える2つのラジアル滑り軸受と、負荷側及び反負荷側の両軸方向のスラスト荷重を支える2つのスラスト滑り軸受を備えている。これらの滑り軸受として、耐摩耗性及び耐腐食性に優れたセラミックス軸受が広く使用されている。そして、取扱液を自己循環させ、取扱液によって、滑り軸受(セラミックス軸受)の潤滑とモータの冷却を行うようにしている。
【0003】
回転機械には、固定側と回転側の両部品の端面や摺動面に接して運転される構造のものが多く、回転体と固定体とが機械的に摺動する部分に取付けられる部品、例えば、滑り軸受やシール部材等の摺動部材が使用されている。
例えば、滑り軸受は、主軸側に固定されて主軸側と一体に回転する回転側部材と、ケーシング側に固定される固体側部材を有し、両者を互いに摺動させるようにしており、セラミックス軸受は、これらの回転側部材及び固定側部材の一方を炭化ケイ素(SiC)で、他方を炭素材料(C)で構成したり、両者を共にSiCで構成したりすることが広く行われている。このSiCは、六法晶を含むウルツ鉱型の結晶構造を有するα−SiCからなる。
【0004】
また、回転機械において、主軸とケーシングとの間を水密的にシールするシール部材としても、α−SiCからなるセラミックスシール部材が広く使用されている。
つまり、回転機械には、セラミックス軸受やセラミックスシール部材等のセラミックス摺動部材が広く使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、電気抵抗で0.01MΩ・cm程度以上の水道水を取扱液とし、滑り軸受としてセラミックス軸受を使用したキャンドモータポンプにあっては、セラミックス軸受(滑り軸受)の摺動面を水道水(取扱液)で有効に潤滑しながら、セラミックス軸受の長期に亘る使用が可能である。しかし、電気抵抗で1MΩ・cm程度以上の純水や、電気抵抗で10MΩ・cm程度以上の超純水を取扱液とし、滑り軸受としてセラミックス軸受を使用したキャンドモータポンプにあっては、セラミックス軸受の摺動面を純水や超純水(取扱液)で潤滑するときに該摺動面に純水や超純水中で徐々にすべり摩耗痕が発生し、摺動面の滑り損傷と考えられる摩耗に繋がってしまうことがある。
【0006】
下記の表1は、α−SiC同士を、電気抵抗の異なる取扱液(水道水、純水及び超純水)の存在下で、0.5MPaの圧力で押圧しながら、周速7.59m/sで互いに100時間摺動させる摩擦摩耗試験を行った結果を示す。
【0007】
【表1】

【0008】
この原因は、必ずしも明確ではないが、セラミックス軸受の摺動面が水道水の存在下で滑り接触する時に、摺動面に潤滑膜としてシリコン系水酸化物またはゲル状のシリコン系水和物が形成され、これが摺動面を保護するものと考えられているが、セラミックス軸受の摺動面を極端に溶存酸素が少ない純水や超純水中で摩擦する時には、摺動面にこれらの膜が形成されないためであると考えられる。
このことは、SiCからなるセラミックスシール部材においても同様である。
【0009】
本発明は上述の事情に鑑みなされたもので、純水や超純水中で使用可能であり、長期に亘って安定して使用できるセラミックス摺動部材を用いた純水用回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、互いに摺動して軸を回転自在に支承する回転側部材と固定側部材とを備え、前記回転側部材及び前記固定側部材の少なくとも一方を、少なくとも一部にβ−SiCを含むSiC製としたセラミックス摺動部材を用いた純水用回転機械である。
閃亜鉛型で立方晶の結晶構造を持つβ−SiCを一部に含むSiC部材は、針状結晶が互いに強固に絡み合って、上記のような潤滑膜が形成されない厳しい摺動条件でも良好な摩擦摩耗特性を示すものと考えられる。実際、摺動面(表面)を純水や超純水中で滑り接触させても該摺動面に発生する摩耗を軽微に抑えられることが確かめられている。これによって、回転側部材と固定側部材の少なくとも一方を、少なくとも一部にβ−SiCを含むSiC製としたセラミックス摺動部材は、例え摺動面を純水や超純水中で滑り接触するようにしても、長期に亘って安定した使用が可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記β−SiCのSiC中に占める割合は、20%以上であることを特徴とする請求項1記載の純水用回転機械である。
一部にβ−SiCの結晶構造を含むSiCの場合、SiCの他の結晶構造はα−SiCとなるが、β−SiCのSiC中に占める割合を20%以上とすることで、純水や超純水に触れたときにSiCの表面に純水や超純水中で滑り摩耗痕が発生することをより軽減することができる。このため、β−SiCのSiC中に占める割合は、20%以上であることが好ましく、30%以上であることが更に好ましい。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記セラミックス摺動部材は、ラジアル滑り軸受であることを特徴とする請求項2記載の純水用回転機械である。
請求項4に記載の発明は、前記セラミックス摺動部材は、スラスト滑り軸受であることを特徴とする請求項2記載の純水用回転機械である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記純水用回転機械は、キャンドモータポンプであることを特徴とする請求項4記載の純水用回転機械である。
これにより、純水や超純水を取扱液とした場合にあっても、主軸を回転自在に支承するセラミックス軸受等のセラミック摺動部材の摺動面を純水や超純水(取扱液)で潤滑するときに該摺動面に純水や超純水中で滑り摩耗痕が発生することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、セラミックス摺動部材の摺動面を、例え純水や超純水で潤滑するようにしても、摺動面に純水や超純水中で滑り摩耗痕が発生することを抑制して、セラミックス摺動部材の長期に亘る安定した使用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、キャンドモータポンプに適用した本発明の実施の形態の純水用回転機械の断面図を示す。図1に示すように、キャンドモータポンプ(純水用回転機械)は、吸込側ケーシング1と、吐出側ケーシング5と、この吸込側ケーシング1と吐出側ケーシング5との間を接続する外筒9とを備えている。吸込側ケーシング1、外筒9及び吐出側ケーシング5は、開口部側の端部外周部に、それぞれ外方に延設された鍔部1a,9a,9b,5aを備えている。そして、吸込側ケーシング1と外筒9とは、相隣接する鍔部1a,9aを鋳鉄等の鋳物製のフランジ20,20により挟持するとともに、ボルト45を締め付けることで一体に接続されている。また、吐出側ケーシング5と外筒9とは、同様に、相隣接する鍔部5a,9bを鋳鉄等の鋳物製のフランジ21,21により挟持するとともに、ボルト45を締め付けられることで一体に接続されている。そして、これら吸込側ケーシング1、吐出側ケーシング5及び外筒9とでポンプケーシングが構成され、このポンプケーシング内にキャンドモータ22が配設されている。
【0016】
吸込側ケーシング1は、円錐台状の本体部2と、この本体部2より吸込側に延設された吸込ノズル3とを備えている。また、吐出側ケーシング5も、吸込側ケーシング1と同様に、円錐台状の本体部6と、この本体部6より吐出し側に延設された吐出ノズル7とを備えている。
【0017】
吸込側ケーシング1の内側には内ケーシング10が設けられており、この内ケーシング10は、容器状の本体部11と、この本体部11より吸込側に延設された円筒状の吸込側部12とから構成されており、本体部11と吸込側部12との間にはOリング等の弾性材からなるシール部材18が介装されている。そして、内ケーシング10の本体部11の内側にガイドベーンまたはボリュートを構成する案内装置13が設置されている。案内装置13はインロー嵌合部を有し、このインロー嵌合部がキャンドモータ22のモータフレーム23と嵌合されている。このキャンドモータ22のモータフレーム23は高い剛性を有している。モータフレーム23に案内装置13が支持されるため、結果として、内ケーシング10は、高い剛性を有したキャンドモータ22のモータフレーム23に支持されることになる。
【0018】
内ケーシング10の吸込側部12の一端は、吸込ノズル3の近傍まで延びている。そして、内ケーシング10の吸込側部12の端部と吸込側ケーシング1の吸込ノズル3との間隙にはシール部材14が介装されており、このシール部材14によって吸込側(低圧側)と吐出側(高圧側)とがシールされている。
【0019】
内ケーシング10の内側には羽根車15が収容されており、この羽根車15は、キャンドモータ22の主軸16に固定され支持されている。また、吸込ノズル3及び吐出ノズル7には、それぞれ中間リング46,46を介して吸込フランジ48及び吐出フランジ49がそれぞれ固定されている。
【0020】
前記キャンドモータ22のモータフレーム23は、略円筒状のフレーム外胴24と、このフレーム外胴24の両側開口部に設けられたフレーム側板25,26とから構成されている。フレーム外胴24は、その外周部に軸方向に沿って放射状に複数のリブ24aが形成されている。この複数のリブ24aは、プレス成形によってフレーム外胴24に一体に形成され、そして、これらリブ24aの外側面がポンプケーシングの外筒9の内周面に嵌合されるとともに、この嵌合部で両者はスポット溶接等で接合され一体化されている。
【0021】
前記モータフレーム23内には、ステータ27及びロータ28が配設されている。ロータ28は、主軸16によって支持されており、ステータ27の内側には円筒状のキャン29が嵌着されている。フレーム側板25と主軸16との間には、ラジアル滑り軸受としてのセラミックス軸受(セラミックス摺動部材)30が設けられている。
【0022】
前記セラミックス軸受(ラジアル滑り軸受)30は、主軸16に固定された該主軸と16と一体に回転する回転側部材としての内輪51と、フレーム側板25に固定された固定側部材としての外輪52とを備えている。このセラミックス軸受30の内輪(回転側部材)51及び外輪(固定側部材)52は、共に少なくとも一部にβ−SiCを含むSiC製である。
【0023】
閃亜鉛型で立方晶の結晶構造を持つβ−SiCを一部に含むSiC部材は、針状結晶が互いに強固に絡み合って、摺動面に潤滑膜としてシリコン系水酸化物またはゲル状のシリコン系水和物が形成されない、純水や超純水中の厳しい摺動条件で滑り接触させて使用しても、該摺動面に発生する摩耗を軽微に抑えられることが確かめられている。これによって、セラミックス軸受30の内輪(回転側部材)51及び外輪(固定側部材)52は、共に少なくとも一部にβ−SiCを含むSiC製とすることで、例え摺動面を純水や超純水で潤滑するようにしても、セラミックス軸受30の長期に亘って安定した使用が可能となる。
【0024】
なお、この例では、内輪51及び外輪52の双方を、少なくとも一部にβ−SiCを含むSiC製としたが、内輪51及び外輪52の一方のみを、少なくとも一部にβ−SiCを含むSiC製としてもよい。
【0025】
ここで、β−SiCを含まないSiC同士、β−SiCの占める割合が5%,21%,32%,65%,及び72%のSiC同士を、超純水(10MΩ・cm)の存在下で、0.5MPaの圧力で押圧しながら、周速7.59m/sで互いに100時間摺動させる摩擦摩耗試験を行った結果を表2に示す。
【0026】
【表2】

【0027】
β‐SiCの粉末を出発原料としても、焼結SiCには、β‐SiCばかりでなく、α‐SiCも存在する。β‐SiCの占める割合は、焼成条件等により、変わることが分かっている。
【0028】
β‐SiCの定量分析は、多形のX線回折を用いた定量分析方法で行った。産業に利用されている多くのSiC材料に表れる多形は、通常、2H,3C,4H,6H,15Rである。各多形からのX線回折ピークは互いに重なる場合が多いので、複数の回折線の理論強度と測定強度を比較して行った。表3は、2H,3C,4H,6H,15Rの多形の回折強度を格子面間隔d=0.267〜0.154 nmまで計算したものである。
【表3】

【0029】
2H,3C,4H,6H,15Rの多形の含有量を各々xi(i=1,2…,5)、ピーク1〜22のX線回折強度の測定値をyj(j=1,2…,22)とすると、xiの係数ajiは、表3に示す値で、各ピークの強度は以下のようになる。
y1=39.697x1+0x2+9.924x3+0x4+3.197x5
・・・・・・
yj=aj1x1+aj2x2+aj3x3+aj4x4+aj5x5
・・・・・・
y22=22.172x1+44.328x2+22.164x3+33.243x4+25.710x5
このような多数の式を近似するxiの推定値は回帰分析で決められる。回帰では、yjを従属変数にajiを説明変数にとり、回帰係数xi を計算した。
【0030】
実際の計算例を以下に説明する。
X線回折から得られた各ピーク強度を図2に、このピーク強度を表3に書き込んだものを表4に示す。
【表4】

【0031】
この表4に示す値を使用し、市販の表計算ソフトを用いて回帰分析を行った結果を表5に示す。表5に示す係数は、各多形の含有率(%)である。
【表5】

【0032】
X線回折結果から4Hと15Rは検出されなかったため、これらの含有率を0%とし、2H,3C,6Hの合計が100%となるように計算したのを表6に示す。
【表6】

【0033】
2H,4H,6H,15Rはα−SiCで、3Cはβ−SiCであるので、この例の場合、α−SiCの含有率は、5.5+22.1=27.6%、β−SiCの含有率は72.4%となる。
【0034】
一部にβ−SiCの結晶構造を含むSiCの場合、他の結晶構造はα−SiCとなる。上記の表2から、SiC中にβ−SiCを含むことで、超純水中におけるSiCの摺動面の損傷を軽減できることが判る。特に、SiC中にβ−SiCの占める割合を20%以上、更には30%以上とすることで、超純水中におけるSiCの摺動面の損傷を更に軽減することができる。このため、β−SiCのSiC中に占める割合は、20%以上であることが好ましく、30%以上であることが更に好ましい。
【0035】
結晶構造の平均アスペクト比(縦横比)の異なるSiC同士を、超純水(10MΩ・cm)の存在下で、0.5MPaの圧力で押圧しながら、周速7.59m/sで互いに100時間摺動させる摩擦摩耗試験を行った結果を表7に示す。
【0036】
【表7】

【0037】
表7に示されるように、焼結SiC中のβ−SiCの平均アスペクト比が13以上とすることで、超純水中におけるSiCの摺動面の損傷を更に軽減することができる。このため、平均アスペクト比は、2を超える値であることが好ましく、13以上であることが更に好ましい。前記フレーム側板26には、弾性体44を介して軸受ハウジング32が着脱可能に設けられており、この軸受ハウジング32には、外輪33と固定側リング34とがそれぞれ保持されており、外輪33は、主軸16に固着された内輪35と互いに摺動するようになっている。この外輪33と内輪35とで、前述のセラミックス軸受(セラミックス摺動部材)30と同様な構成のセラミックス軸受(ラジアル滑り軸受)38が構成されている。
【0038】
主軸16の吐出側端部には、スラストディスク36が固定されており、スラストディスク36には、前記固定側リング34と対向して配置されて互いに摺動する回転側リング37が備えられている。この固定側リング(固定側部材)34と回転側リング(回転側部材)37で、スラスト滑り軸受としてセラミックス軸受(セラミックス摺動部材)39が構成されている。このセラミックス軸受(スラスト滑り軸受)39の固定側リング34及び回転側リング37は、前述のセラミックス軸受30の内輪51及び外輪52と同様に、共に少なくとも一部にβ−SiCを含むSiC製である。なお、固定側リング34及び回転側リング37の一方を、少なくとも一部にβ−SiCを含むSiC製としてもよい。
【0039】
フレーム側板26にはフィルタを構成する端板40が固定されている。端板40は、略半球形に突出した整流部41を有し、この整流部41に半径方向内方から外方に放射状に伸びる複数のスリット42が形成されている。端板40の整流部41は、吐出側ケーシング5内の流れの流線に沿うように略半球形状に形成されており、羽根車15から吐出された流体は、外筒9とフレーム外胴24間に形成された流路50を通って吐出側ケーシング5内に流入した後、整流部41の整流作用によって整流されて吐出口に導かれる。
【0040】
整流部41に放射状にスリット42を形成したため、このスリット42がフィルタとして機能し、流体がこのスリット42を通ってキャンドモータ22内に流入する際に、流体内の異物がスリット42に捕捉され除去される。このスリット42は、流れの方向に沿うように形成されているため、一旦、スリット42に捕捉された異物は、流速により流れ方向に押されて移動し、スリット42から除去され、スリット42の目詰まりが防止される。即ち、スリット42は、その形状によって自浄作用を有するようになっている。なお、端板40は、軸受ハウジング32をフレーム側板26に固定するための押え板の役割をも果している。
【0041】
前記キャンドモータポンプの作用を説明すると、吸込ノズル3より吸い込まれた流体は、内ケーシング10の吸込側部12を通って羽根車15内に導かれる。回転する羽根車15から吐出された流体は、案内装置13を経て遠心方向から軸方向に流れ方向が転換された後、外筒9とキャンドモータ22のフレーム外胴24との間に形成された流路50に流入し、この流路50を通って吐出側ケーシング5内に流入する。その後、流体は、端板40の整流部41によって整流された後、吐出側ケーシング5に一体に形成された吐出ノズル7より吐出される。
【0042】
一方、羽根車15の主板15aとフレーム側板25との間には間隙が形成されているため、羽根車15の回転によって、この間隙内に円板摩擦が生じ、この間隙に減圧効果が生ずる。そのため、端板40のスリット42よりキャンドモータ22内に流入した流体は、矢印で示されるように、軸受ハウジング32の開口32aを通り、更にロータ28とステータ27のキャン29との間隙を通って、フレーム側板25の開口25aより羽根車15の主板15aの裏側に流出する循環路が形成される。そして、この取扱液がキャンドモータ22の内部を循環する間に、セラミックス軸受30,38,39の摺動面が取扱液で潤滑され、同時にキャンドモータ22も取扱液で冷却される。
【0043】
この取扱液として、電気抵抗で1MΩ・cm程度以上の純水や、電気抵抗で10MΩ・cm程度以上の超純水を使用しても、セラミックス軸受30,38,39の摺動面に発生する摩耗を軽微に抑え、これによって、セラミックス軸受30,38,39の長期に亘る安定した使用が可能となる。
なお、上記の例では、セラミックス摺動部材としてセラミックス軸受を用いたキャンドモータポンプ(回転機械)に適用した例を示しているが、セラミックス摺動部材としてSiCからなるセラミックシール部材を用いた回転機械に適用することもできる。
【0044】
図3は、セラミックス摺動部材としてセラミックシール部材を用いた本発明の他の実施の形態の純水用回転機械の要部を示す。この例は、回転軸60にスリーブ62を取付け、このスリーブ62の周囲を、互いに端面を摺接する可動シール部材64と静止シール部材66を有するメカニカルシール68でシールするようにしている。そして、この例では、可動シール部材64と静止シール部材66の双方を、少なくとも一部にβ−SiCを含むSiC製としている。なお、可動シール部材64と静止シール部材66の一方のみを、少なくとも一部にβ−SiCを含むSiC製とし、他方をSiCまたは他のセラミックス製としてもよい。
【0045】
この例にあっても、この取扱液として、電気抵抗で1MΩ・cm程度以上の純水や、電気抵抗で10MΩ・cm程度以上の超純水を使用しても、メカニカルシール68の可動シール部材64と静止シール部材66との摺動面に発生する摩耗を軽微に抑え、これによって、メカニカルシール68の長期に亘る安定した使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】キャンドモータポンプに適用した本発明の実施の形態の純水用回転機械を示す断面図である。
【図2】X線解析から得られた各ピーク強度を示す方グラフである。
【図3】セラミックス摺動部材としてセラミックシール部材を用いた本発明の他の実施の形態の純水用回転機械の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 吸込側ケーシング
3 吸込ノズル
5 吐出側ケーシング
7 吐出ノズル
10 内ケーシング
13 案内装置
15 羽根車
16 主軸
22 キャンドモータ
23 モータフレーム
27 ステータ
28 ロータ
29 キャン
30 セラミックス軸受(ラジアル滑り軸受)
32 軸受ハウジング
33 外輪(固定側部材)
34 固定側リング(固定側部材)
35 内輪(回転側部材)
36 スラストディスク
37 回転側リング(回転側部材)
38 セラミックス軸受(ラジアル滑り軸受)
39 セラミックス軸受(スラスト滑り軸受)
51 内輪(回転側部材)
52 外輪(固定側部材)
60 回転軸
64 可動シール部材
66 静止シール部材
68 メカニカルシール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに摺動して軸を回転自在に支承する回転側部材と固定側部材とを備え、
前記回転側部材及び前記固定側部材の少なくとも一方を、少なくとも一部にβ−SiCを含むSiC製としたセラミックス摺動部材を用いた純水用回転機械。
【請求項2】
前記β−SiCのSiC中に占める割合は、20%以上であることを特徴とする請求項1記載の純水用回転機械。
【請求項3】
前記セラミックス摺動部材は、ラジアル滑り軸受であることを特徴とする請求項2記載の純水用回転機械。
【請求項4】
前記セラミックス摺動部材は、スラスト滑り軸受であることを特徴とする請求項2記載の純水用回転機械。
【請求項5】
前記純水用回転機械は、キャンドモータポンプであることを特徴とする請求項3または4記載の純水用回転機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−232013(P2007−232013A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52413(P2006−52413)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】