説明

セラミックヒータ

【課題】昇降温特性に優れ、被加熱物を迅速に加熱、冷却することができるとともに、充分な機械的強度を有するセラミックヒータを提供すること
【解決手段】、セラミック基板の表面または内部に発熱体が形成されたセラミックヒータであって、上記セラミック基板の加熱面、または、上記加熱面と反対側の面に、溝部が形成されていることを特徴とするセラミックヒータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、半導体製造、検査装置、光分野等において使用されるセラミックヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックヒータとしては、熱伝導率が高く、強度も大きい窒化物セラミックや炭化物セラミックを使用し、これらのセラミックからなるセラミック基板の表面に、金属粒子を焼結して形成した発熱体が形成され、この発熱体の端部に半田を用いて外部端子が接着されたセラミックヒータが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなヒータは、セラミック基板を構成するセラミック自体の強度が高いため、加熱の際に熱膨張しても、セラミック基板に反り、歪み等は発生しにくく、また、セラミック基板の厚さをある程度薄くすることができるため、印加電圧や電流量の変化に対する温度追従性も良好であった。
【特許文献1】特開平11−40330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来のセラミックヒータでは、セラミック自体の強度によりセラミック基板の厚さをある程度薄くすることができる。また、セラミック基板の厚さが薄くなるとセラミック基板の熱容量が小さくなるため、セラミック基板を薄くすることにより、セラミックヒータの昇温降温特性は向上することとなる。
しかしながら、薄くできるとはいうものの、セラミック基板の反りや歪み等の発生を抑えるためには、セラミック基板の剛性を確保しなければならず、セラミック基板の厚さを薄くするにも限界があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、昇降温特性に優れ、被加熱物を迅速に加熱、冷却することができるとともに、充分な機械的強度を有するセラミックヒータを提供することを目的する。
【0006】
本発明のセラミックヒータは、セラミック基板の表面または内部に発熱体が形成されたセラミックヒータであって、
上記セラミック基板の加熱面、または、上記加熱面と反対側の面に、溝部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
上記セラミックヒータにおいて、上記溝部は、上記セラミック基板の加熱面と反対側の面に垂直な方向において、上記発熱体と重ならない位置に形成されていることが望ましい。
【0008】
上記セラミックヒータにおいて、上記セラミック基板は、非酸化物セラミックであることが望ましく、その厚さは20mm以下であることが望ましく、5mm以下であることがより望ましい。
また、上記セラミック基板の形状は円板状であることが望ましく、その直径は、200mm以上であることが望ましい。
【0009】
上記セラミックヒータにおいて、上記溝部の深さは上記セラミック基板の厚さの60%以下であることが望ましく、特に、上記溝部の深さは上記セラミック基板の厚さの10〜60%であることがより望ましい。
上記溝部は、上記セラミック基板の加熱面と反対側の面の30%以上の領域に形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のセラミックヒータでは、セラミック基板の加熱面と反対側の面に溝部が形成されているため、セラミック基板の剛性を確保ししつつ、その熱容量が小さくなっている。従って、昇降温特性に優れ、被加熱物を迅速に加熱、冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のセラミックヒータは、セラミック基板の表面または内部に発熱体が形成されたセラミックヒータであって、
上記セラミック基板の加熱面、または、上記加熱面と反対側の面に、溝部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
以下、本発明のセラミックヒータの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のセラミックヒータの一例を模式的に示す底面図であり、図2は、図1に示すセラミックヒータの断面図である。
【0013】
図1に示すように、セラミック基板11は、円板状に形成されており、このセラミック基板11の底面11bには、同心円形状からなる複数の発熱体12が形成されている。これら発熱体12は、互いに近い二重の同心円同士が一組の回路として、一本の線になるように形成され、これらの回路を組み合わせて、加熱面11aでの温度が均一になるように設計されている。
また、発熱体12からなる回路の両端部分には、入出力の端子となる外部端子13が金属被覆層12aを介して接続されている。なお、金属被覆層12aは、必要に応じて形成されていればよい。
また、中央に近い部分には、半導体ウエハ19を支持するリフターピン16を挿入するための貫通孔15が形成され、さらに、溝部17内には、測温素子18を挿入するための有底孔14が形成されている。
【0014】
リフターピン16は、その上にシリコンウエハ19を載置して上下させることができるようになっており、これにより、シリコンウエハ19を図示しない搬送機に渡したり、搬送機からシリコンウエハ19を受け取ったりすることができるとともに、シリコンウエハ19をセラミック基板11の加熱面11aに載置して加熱したり、シリコンウエハ19を加熱面11aから50〜2000μm離間させた状態で支持し、加熱することができるようになっている。
【0015】
また、セラミック基板11に貫通孔や凹部を設け、この貫通孔または凹部に先端が尖塔状または半球状の支持ピンを挿入した後、支持ピンをセラミック基板11よりわずかに突出させた状態で固定し、この支持ピンでシリコンウエハ19を支持することにより、加熱面11aから50〜2000μm離間させた状態で加熱することができるようにしてもよい。
【0016】
さらに、セラミック基板11の底面11bの発熱体12からなる回路同士の間には、複数の円弧状の溝部17が形成されている。このような溝部17を形成することにより、セラミック基板11の剛性を高く維持しつつ、セラミック基板11の熱容量を小さくすることができる。また、図1では、円弧状の溝部が形成されているが、溝部の形状は、円環状であってもよい。但し、セラミック基板の剛性を確保するとの観点からは、図1のように、複数(例えば、4つ)の円弧状の溝部を円環状に配置して形成することが望ましい。
なお、本明細書において、剛性が高いとは、単位体積あたりの剛性が高いことをいう。
【0017】
上記溝部17の形成領域は特に限定されるものではないが、上記セラミック基板の加熱面11aと反対側の面(底面11b)に垂直な方向において、上記発熱体と重ならない位置に形成されていることが望ましい。隣接回路間の熱干渉を妨げることができるからである。
【0018】
本発明のセラミックヒータにおいて、上記溝部の断面視形状は特に限定されず、例えば、矩形状(図2参照)、半円状、直線と円弧を組み合わせた形状(図4参照)等が挙げられる。
上記溝部の深さは、上記セラミック基板の厚さの60%以下であることが望ましい。60%を超えると、強度が低下するため、上記セラミック基板に反りが発生しやすく、セラミック基板の平坦度が低下することがあり、さらに、上記セラミック基板における温度均一性が低下することがあるからである。
また、上記溝部の深さは、上記セラミック基板の厚さの10%以上であることがより望ましい。10%未満であると、昇温、降温時間が長くなる傾向にあるからである。
【0019】
上記溝部は、上記セラミック基板の加熱面と反対側の面の30%以上の領域に形成されていることが望ましい。形成領域を30%以上とすることにより、昇温、降温時間が短くなる傾向にあるのに対し、形成領域が30%未満では、溝部を形成する効果を充分に得ることができない場合があるからである。
また、上記セラミック基板の加熱面と反対側の面における溝部の形成位置は、図1に示したように、隣接する発熱体同士の間のみであってもよいし、発熱体が形成された領域以外の全領域であってもよい。また、図1に示したセラミックヒータでは、一の発熱体パターンが形成された領域の内側には、溝部が形成されていないが、この部分に溝部が形成されていてもよい。但し、隣接する発熱体同士の間にのみ溝部が形成されていることが望ましい。上記溝部を形成する際に、発熱体を傷付けるおそれがないからである。
また、上記溝部は、セラミック基板の加熱面に形成されていてもよい。この場合にも、上述したような、セラミック基板の加熱面と反対側の面に溝部を形成した場合と同様の効果を得ることができる。
なお、上記溝部の形成方法については、後に詳述する。
【0020】
次に、本発明のセラミックヒータの材質や形状等について、さらに詳しく説明する。
本発明のセラミックヒータにおける、セラミック基板の直径は、200mm以上が望ましい。大きな直径を持つセラミックヒータほど、熱容量が大きくなるため、本発明の構成が有効に機能するからである。また、このような大きな直径を持つ基板は、大口径の半導体ウエハを載置することができるからである。
セラミック基板の直径は、特に12インチ(300mm)以上であることが望ましい。次世代の半導体ウエハの主流となるからである。
【0021】
また、上記セラミック基板の厚さは、20mm以下であることが望ましい。上記セラミック基板の厚さが20mmを超えると温度追従性が低下するからである。また、その厚さは、0.5mm以上であることが望ましい。0.5mmより薄いと、セラミック基板の強度自体が低下するため破損しやすくなる。より望ましくは、1.5mmを超え5mm以下である。5mmより厚くなると、熱が伝搬しにくくなり、加熱の効率が低下する傾向が生じ、一方、1.5mm以下であると、セラミック基板中を伝搬する熱が充分に拡散しないため加熱面に温度ばらつきが発生することがあり、また、セラミック基板の強度が低下して破損する場合があるからである。なお、本明細書において、セラミック基板の厚さとは、溝部が形成されていない部分の厚さをいう。
【0022】
本発明のセラミックヒータ10において、セラミック基板11には、底面11bから加熱面11aに向けて有底孔14を設けるとともに、有底孔14の底を発熱体12よりも相対的に加熱面11aに近く形成し、この有底孔14に熱電対等の測温素子18を設けることが望ましい。
【0023】
また、有底孔14の底と加熱面11aとの距離は、0.1mm〜セラミック基板の厚さの1/2であることが望ましい。
これにより、測温場所が発熱体12よりも加熱面11aに近くなり、より正確な半導体ウエハの温度の測定が可能となるからである。
【0024】
有底孔14の底と加熱面11aとの距離が0.1mm未満では、放熱してしまい、加熱面11aに温度分布が形成され、厚さの1/2を超えると、発熱体の温度の影響を受けやすくなり、温度制御できなくなり、やはり加熱面11aに温度分布が形成されてしまうからである。
【0025】
有底孔14の直径は、0.3mm〜5mmであることが望ましい。これは、大きすぎると放熱性が大きくなり、また小さすぎると加工性が低下して加熱面11aとの距離を均等にすることができなくなるからである。
【0026】
有底孔14は、図1に示したように、セラミック基板11の中心に対して対称で、かつ、十字を形成するように複数配列することが望ましい。これは、加熱面全体の温度を測定することができるからである。
なお、図1、2において、有底孔14は、溝部17内に形成されているが、有底孔14の形成位置は、溝部17に限定されるわけではなく、設計に応じて適宜選択すればよい。
【0027】
上記測温素子としては、例えば、熱電対、白金測温抵抗体、サーミスタ等が挙げられる。
また、上記熱電対としては、例えば、JIS−C−1602(1980)に挙げられるように、K型、R型、B型、S型、E型、J型、T型熱電対等が挙げられるが、これらのなかでは、K型熱電対が好ましい。
【0028】
上記熱電対の接合部の大きさは、素線の径と同じか、または、それよりも大きく、0.5mm以下であることが望ましい。これは、接合部が大きい場合は、熱容量が大きくなって応答性が低下してしまうからである。なお、素線の径より小さくすることは困難である。
【0029】
上記測温素子は、金ろう、銀ろうなどを使用して、有底孔14の底に接着してもよく、有底孔14に挿入した後、耐熱性樹脂で封止してもよく、両者を併用してもよい。
上記耐熱性樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、特にはエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記金ろうとしては、37〜80.5重量%Au−63〜19.5重量%Cu合金、81.5〜82.5重量%:Au−18.5〜17.5重量%:Ni合金から選ばれる少なくとも1種が望ましい。これらは、溶融温度が、900℃以上であり、高温領域でも溶融しにくいためである。
銀ろうとしては、例えば、Ag−Cu系のものを使用することができる。
【0031】
本発明のセラミックヒータを形成するセラミックとしては、窒化物セラミック、炭化物セラミック、酸化物セラミックが挙げられる。これらのなかでは、窒化物セラミックおよび炭化物セラミックの非酸化物セラミックが望ましい。
窒化物セラミック、炭化物セラミックおよび酸化物セラミックは、熱膨張係数が金属よりも小さく、機械的な強度が金属に比べて格段に高いため、セラミック基板の厚さを薄くしても、加熱により反ったり、歪んだりしない。そのため、セラミック基板を薄くて軽いものとすることができる。さらに、セラミック基板の熱伝導率が高く、セラミック基板自体が薄いため、セラミック基板の表面温度が、発熱体の温度変化に迅速に追従する。即ち、電圧、電流値を変えて発熱体の温度を変化させることにより、セラミック基板の表面温度を制御することができるのである。
【0032】
上記窒化物セラミックとしては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
また、炭化物セラミックとしては、例えば、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
さらに、酸化物セラミックとしては、金属酸化物セラミック、例えば、アルミナ、ジルコニア、コージュライト、ムライト等が挙げられる。
これらのセラミックは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
これらのなかでは、窒化物セラミックおよび炭化物セラミックの非酸化物セラミックが望ましく、窒化アルミニウムが最も望ましい。熱伝導率が180W/m・Kと最も高く、温度追従性に優れるからである。
【0036】
なお、本発明のセラミックヒータにおいて、セラミック基板として窒化物セラミック、炭化物セラミックまたは酸化物セラミック等を使用する際、必要により、絶縁層を形成してもよい。窒化物セラミックは酸素固溶等により、高温で体積抵抗値が低下しやすく、また炭化物セラミックは特に高純度化しない限り導電性を有しており、絶縁層を形成することにより、高温時あるいは不純物を含有していても回路間の短絡を防止して温度制御性を確保できるからである。
【0037】
上記絶縁層としては、酸化物セラミックが望ましく、具体的には、シリカ、アルミナ、ムライト、コージェライト、ベリリア等を使用することができる。
このような絶縁層としては、アルコキシドを加水分解重合させたゾル溶液をセラミック基板にスピンコートして乾燥、焼成を行ったり、スパッタリング、CVD等の処理を施したりすることにより形成することができる。また、セラミック基板表面を酸化処理して酸化物層を設けてもよい。
【0038】
上記絶縁層の厚さは、0.1〜1000μmであることが望ましい。0.1μm未満では、絶縁性を確保できず、1000μmを超えると発熱体からセラミック基板への熱伝導性を阻害してしまうからである。
さらに、上記絶縁層の体積抵抗率は、上記セラミック基板の体積抵抗率の10倍以上(同一測定温度)であることが望ましい。10倍未満では、回路の短絡を防止できないからである。
【0039】
また、上記セラミック基板は、カーボンを含有し、その含有量は、200〜5000ppmであることが望ましい。電極を隠蔽することができ、また黒体輻射を利用しやすくなるからである。
【0040】
なお、上記セラミック基板は、明度がJIS Z 8721の規定に基づく値でN6以下のものであることが望ましい。この程度の明度を有するものが輻射熱量、隠蔽性に優れるからである。
ここで、明度のNは、理想的な黒の明度を0とし、理想的な白の明度を10とし、これらの黒の明度と白の明度との間で、その色の明るさの知覚が等歩度となるように各色を10分割し、N0〜N10の記号で表示したものである。
そして、実際の測定は、N0〜N10に対応する色票と比較して行う。この場合の小数点1位は0または5とする。
【0041】
また、セラミック基板の表面に発熱体を設ける場合は、加熱面は発熱体形成面の反対側であることが望ましい。セラミック基板が熱拡散の役割を果たすため、加熱面の温度均一性を向上させることができるからである。
【0042】
本発明のセラミックヒータにおいては、金属粒子を含む導体ペーストをセラミック基板の表面に塗布して所定パターンの導体ペースト層を形成した後、これを焼き付け、セラミック基板の表面で金属粒子を焼結させる方法が好ましい。なお、金属の焼結は、金属粒子同士および金属粒子とセラミックとが融着していれば充分である。
【0043】
セラミック基板の表面に発熱体を形成する場合、発熱体の厚さは、1〜30μmが好ましい。
さらに、発熱体の幅は、0.1〜20mmが好ましく、0.1〜5mmがより好ましい。
発熱体は、その幅や厚さにより抵抗値に変化を持たせることができるが、上記した範囲が最も実用的である。抵抗値は、薄く、また、細くなる程大きくなる。
【0044】
発熱体の形成位置をこのように設定することにより、発熱体から発生した熱が伝搬していくうちに、セラミック基板全体に拡散し、被加熱物(半導体ウエハ)を加熱する面の温度分布が均一化され、その結果、被加熱物の各部分における温度が均一化される。
【0045】
また、本発明のセラミックヒータにおける発熱体のパターンとしては、図1に示したパターンに限らず、例えば、渦巻き状のパターン、偏心円状のパターン、屈曲線の繰り返しパターン等も用いることができる。また、これらは併用してもよい。
また、最外周に形成された発熱体パターンを、円周方向に分割されたパターンとすることで、温度が低下しやすいセラミックヒータの最外周で細かい温度制御を行うことが可能となり、セラミックヒータの温度のばらつきを抑えることが可能である。さらに、円周方向に分割された発熱体のパターンは、セラミック基板の最外周に限らず、その内部にも形成してもよい。
【0046】
発熱体は、断面が矩形であっても楕円であってもよいが、偏平であることが望ましい。偏平の方が加熱面に向かって放熱しやすいため、加熱面の温度分布ができにくいからである。
断面のアスペクト比(発熱体の幅/発熱体の厚さ)は、10〜5000であることが望ましい。
この範囲に調整することにより、発熱体の抵抗値を大きくすることができるとともに、加熱面の温度の均一性を確保することができるからである。
【0047】
発熱体の厚さを一定とした場合、アスペクト比が上記範囲より小さいと、セラミック基板の加熱面方向への熱の伝搬量が小さくなり、発熱体のパターンに近似した熱分布が加熱面に発生してしまい、逆にアスペクト比が大きすぎると発熱体の中央の直上部分が高温となってしまい、結局、発熱体のパターンに近似した熱分布が加熱面に発生してしまう。従って、温度分布を考慮すると、断面のアスペクト比は、10〜5000であることが好ましいのである。
本発明のセラミックヒータにおいては、アスペクト比を10〜200とすることが望ましい。
【0048】
また、発熱体を形成する際に用いる、導体ペーストとしては特に限定されないが、導電性を確保するための金属粒子または導電性セラミックが含有されているほか、樹脂、溶剤、増粘剤などを含むものが好ましい。
【0049】
上記金属粒子としては、例えば、貴金属(金、銀、白金、パラジウム)、鉛、タングステン、モリブデン、ニッケルなどが好ましく、中でも、貴金属(金、銀、白金、パラジウム)がより好ましい。また、これらは、単独で用いてもよいが、2種以上を併用することが望ましい。これらの金属は、比較的酸化しにくく、発熱するに充分な抵抗値を有するからである。
上記導電性セラミックとしては、例えば、タングステン、モリブデンの炭化物などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
これら金属粒子または導電性セラミック粒子の粒径は、0.1〜100μmが好ましい。0.1μm未満と微細すぎると、酸化されやすく、一方、100μmを超えると、焼結しにくくなり、抵抗値が大きくなるからである。
【0051】
上記金属粒子の形状は、球状であっても、リン片状であってもよい。これらの金属粒子を用いる場合、上記球状物と上記リン片状物との混合物であってよい。
上記金属粒子がリン片状物、または、球状物とリン片状物との混合物の場合は、金属粒子間の金属酸化物を保持しやすくなり、発熱体と窒化物セラミック等との密着性を確実にし、かつ、抵抗値を大きくすることができるため有利である。
【0052】
導体ペーストに使用される樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。また、溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。増粘剤としては、セルロースなどが挙げられる。
【0053】
導体ペーストには、上記したように、金属粒子に金属酸化物を添加し、発熱体を金属粒子および金属酸化物を焼結させたものとすることが望ましい。このように、金属酸化物を金属粒子とともに焼結させることにより、セラミック基板である窒化物セラミックまたは炭化物セラミックと金属粒子とを密着させることができる。
【0054】
金属酸化物を混合することにより、窒化物セラミックまたは炭化物セラミックと密着性が改善される理由は明確ではないが、金属粒子表面や窒化物セラミック、炭化物セラミックの表面は、わずかに酸化されて酸化膜が形成されており、この酸化膜同士が金属酸化物を介して焼結して一体化し、金属粒子と窒化物セラミックまたは炭化物セラミックとが密着するのではないかと考えられる。
【0055】
上記金属酸化物としては、例えば、酸化鉛、酸化亜鉛、シリカ、酸化ホウ素(B)、アルミナ、イットリアおよびチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0056】
これらの酸化物は、発熱体の抵抗値を大きくすることなく、金属粒子と窒化物セラミックまたは炭化物セラミックとの密着性を改善することができるからである。
【0057】
上記酸化鉛、酸化亜鉛、シリカ、酸化ホウ素(B)、アルミナ、イットリア、チタニアの割合は、金属酸化物の全量を100重量部とした場合、重量比で、酸化鉛が1〜10、シリカが1〜30、酸化ホウ素が5〜50、酸化亜鉛が20〜70、アルミナが1〜10、イットリアが1〜50、チタニアが1〜50であって、その合計が100重量部を超えない範囲で調整されていることが望ましい。
これらの範囲で、これらの酸化物の量を調整することにより、特に窒化物セラミックとの密着性を改善することができる。
上記金属酸化物の金属粒子に対する添加量は、0.1重量%以上10重量%未満が好ましい。
【0058】
また、発熱体として金属箔や金属線を使用することもできる。上記金属箔としては、ニッケル箔、ステンレス箔をエッチング等でパターン形成して発熱体としたものが望ましい。パターン化した金属箔は、樹脂フィルム等ではり合わせてもよい。金属線としては、例えば、タングステン線、モリブデン線等が挙げられる。
【0059】
また、発熱体を形成した際の面積抵抗率は、0.1mΩ〜10Ω/□が好ましい。面積抵抗率が0.1mΩ/□未満の場合、発熱量を確保するために、発熱体パターンの幅を0.1〜1mm程度と非常に細くしなければならず、このため、パターンのわずかな欠け等で断線したり、抵抗値が変動し、また、面積抵抗率が10Ω/□を超えると、発熱体パターンの幅を大きくしなければ、発熱量を確保できず、その結果、パターン設計の自由度が低下し、加熱面の温度を均一にすることが困難となるからである。
【0060】
セラミック基板の表面に発熱体を形成する場合は、発熱体の表面部分に、金属被覆層が設置されていることが望ましい。内部の金属焼結体が酸化されて抵抗値が変化するのを防止するためである。形成する金属被覆層の厚さは、0.1〜10μmが好ましい。
【0061】
金属被覆層を形成する際に使用される金属は、非酸化性の金属であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、金、銀、パラジウム、白金、ニッケルなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、ニッケルが好ましい。
【0062】
また、図1、2に示した実施形態のセラミックヒータでは、セラミック基板の表面に発熱体が形成されているが、本発明のセラミックヒータにおいて、発熱体の形成位置はセラミック基板の表面に限定されるわけではなく、セラミック基板の内部であってもよい。
以下、セラミック基板の内部に発熱体が形成された実施形態のセラミックヒータについて、図面を参照しながら説明する。
【0063】
図3は、本発明のセラミックヒータの別の一例を模式的に示す底面図であり、図4は、図3に示すセラミックヒータの断面図である。なお、図3中、発熱体は、破線で示している。
図3に示すように、セラミックヒータ30では、セラミック基板31の内部に複数の発熱体32が形成されている。なお、発熱体32の平面視形状は、図1に示した発熱体12と同一である。
そして、発熱体からなる回路の端部の直下には、スルーホール40が形成され、さらに、このスルーホール40を露出させる袋孔40aがセラミック基板31の底面31bに形成され、袋孔40aには、外部端子33が挿入され、ろう材等(図示せず)で接合されている。外部端子33には、例えば、導電線を有するソケット(図示せず)が取り付けられ、この導電線は電源等に接続されている。
なお、セラミックヒータ30について、発熱体32の形成位置および外部端子33の接続態様以外の構成は、図1に示したセラミックヒータ10と同様であるため、その説明を省略する。
【0064】
また、図3に示したセラミックヒータ30においても、セラミック基板31の底面には溝部37が形成されており、セラミック基板31の加熱面31aと反対側の面(底面31b)に垂直な方向において、発熱体32と重ならない位置に形成されている。このような位置に溝部を形成することにより、隣接回路間の熱干渉を妨げることができる。
【0065】
また、本発明のセラミックヒータにおいて、その内部に静電電極層が形成された場合には、上記セラミックヒータは、静電チャックとして機能する。この場合、この静電チャックを
構成するセラミック基板は、静電電極が形成されていることを除いて、図3に示したセラミックヒータと略同様に構成されている。
図5は、本発明に係る静電チャックの一実施形態を模式的に示した縦断面図であり、図6は、図5に示した静電チャックにおけるA−A線断面図である。
この静電チャック50では、図3に示したセラミックヒータと同様、円板形状のセラミック基板51の内部に、発熱体52からなる回路が形成されている。また、セラミック基板51の内部に、チャック正極静電層62とチャック負極静電層63とからなる静電電極層が埋設されており、この静電電極層の上に薄いセラミック層64(以下、セラミック誘電体膜という)が形成されている。また、静電チャック50上には、半導体ウエハ59が載置され、接地されている。なお、セラミック誘電体膜54の厚さは、5〜5000μmが好ましい。耐電圧を高く保ちながら、半導体ウエハ59を充分な吸着力で吸着させるためである。
【0066】
図6に示したように、チャック正極静電層62は、半円弧状部62aと櫛歯部62bとからなり、チャック負極静電層63も、同じく半円弧状部63aと櫛歯部63bとからなり、これらのチャック正極静電層62とチャック負極静電層63とは、櫛歯部62b、63bを交差するように対向して配置されており、このチャック正極静電層62およびチャック負極静電層63には、それぞれスルーホール65を介して直流電源の+側と−側とが接続され、直流電圧Vが印加されるようになっている。
【0067】
また、セラミック基板51の内部には、半導体ウエハ59の温度をコントロールするために、図3に示したような、平面視同心円形状の発熱体52からなる回路が設けられており、発熱体52の両端には、外部端子が接続、固定され、スルーホール60を介して電圧Vが印加されるようになっている。
セラミック基板51の底面には、図3に示したような複数の円弧状の溝部57が形成されている。そして、溝部57は、セラミック基板51の加熱面と反対側の面(図中、下側の面)に垂直な方向において、発熱体52と重ならない位置に形成されている。
【0068】
また、図5には示していないが、このセラミック基板51には、測温素子を挿入するための有底孔と半導体ウエハ59を支持して上下させるリフターピンを挿通するためのリフターピン用貫通孔とが形成されている(図3、4参照)。
【0069】
この静電チャック50を機能させる際には、チャック正極静電層62とチャック負極静電層63とに直流電圧Vを印加する。これにより、半導体ウエハ59は、チャック正極静電層62とチャック負極静電層63との静電的な作用によりこれらの電極にセラミック誘電体膜64を介して吸着され、固定されることとなる。このようにして半導体ウエハ59を静電チャック50上に固定させた後、この半導体ウエハ59に、CVD等の種々の処理を施す。
【0070】
上記静電電極としては、例えば、金属または導電性セラミックの焼結体、金属箔等が挙げられる。金属焼結体としては、タングステン、モリブデンから選ばれる少なくとも1種からなるものが好ましい。金属箔も、金属焼結体と同じ材質からなることが望ましい。これらの金属は比較的酸化しにくく、電極として充分な導電性を有するからである。また、導電性セラミックとしては、タングステン、モリブデンの炭化物から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0071】
図7および図8は、他の静電チャックにおける静電電極を模式的に示した水平断面図であり、図7に示す静電チャック70では、セラミック基板71の内部に半円形状のチャック正極静電層72とチャック負極静電層73が形成されており、図8に示す静電チャック80では、セラミック基板81の内部に円を4分割した形状のチャック正極静電層82a、82bとチャック負極静電層83a、83bが形成されている。また、2枚の正極静電層82a、82bおよび2枚のチャック負極静電層83a、83bは、それぞれ交差するように形成されている。
なお、円形等の電極が分割された形態の電極を形成する場合、その分割数は特に限定されず、5分割以上であってもよく、その形状も扇形に限定されない。
【0072】
また、本発明のセラミックヒータは、その表面にチャックトップ導体層を設け、内部にガード電極、グランド電極等を設けることにより、ウエハプローバ用のチャックトップ板として機能させることもできる。
【0073】
次に、本発明のセラミックヒータの製造方法について説明する。
ここでは、まず、セラミック基板の表面に発熱体が形成されたセラミックヒータ10(図1、2参照)の製造方法を、図9を参照しながら説明する。図9は、本発明のセラミックヒータの製造方法の一例を説明するための模式図である。
【0074】
(1)セラミック基板の作製
まず、上述した窒化アルミニウムや炭化珪素等のセラミックの粉末に、必要に応じて、イットリア(Y)やBC等の焼結助剤、Na、Caを含む化合物、バインダ等を配合してスラリーを調製した後、このスラリーをスプレードライ等の方法で顆粒状にし、この顆粒を金型に入れて加圧することにより板状等に成形し、生成形体(グリーン)を作製する。
上記バインダとしては、アクリル系バインダ、エチルセルロース、ブチルセルロース、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0075】
次に、この生成形体を加熱、焼成して焼結させ、セラミック製の板状体を製造する。この後、所定の形状に加工することにより,セラミック基板11を作製するが、焼成後、そのまま使用することができる形状としてもよい。加圧しながら、加熱、焼成を行うことにより、気孔のないセラミック基板11を製造することが可能となる。加熱、焼成は、焼結温度以上であればよいが、窒化物セラミックや炭化物セラミックでは、1000〜2500℃である。つた、酸化物セラミックでは、1500〜2000℃である。
【0076】
さらに、ドリル加工を実施し、熱電対などの測温素子を埋め込むための有底孔14、リフターピンを挿通するための貫通孔15を形成する(図9(a)参照)。
【0077】
(2)セラミック基板に導体ペーストを印刷する工程
導体ペーストは、一般に、金属粒子、樹脂、溶剤からなる粘度の高い流動物である。この導体ペーストをスクリーン印刷などを用い、発熱体12を設けようとする部分に印刷を行うことにより、導体ペースト層を形成する。
導体ペースト層は、焼成後の発熱体12の断面が、方形で、扁平な形状となるように形成することが望ましい。
【0078】
(3)導体ペーストの焼成
セラミック基板11の底面に印刷した導体ペースト層を加熱焼成して、樹脂、溶剤を除去するとともに、金属粒子を焼結させ、セラミック基板11の底面に焼き付け、発熱体12を形成する(図9(b)参照)。加熱焼成の温度は、500〜1000℃が望ましい。
導体ペースト中に上述した酸化物を添加しておくと、金属粒子、セラミック基板および酸化物が焼結して一体化するため、発熱体12とセラミック基板11との密着性が向上する。
【0079】
(4)金属被覆層の形成
次に、発熱体12の表面に、金属被覆層(図示せず)を形成する。金属被覆層は、電解めっき、無電解めっき、スパッタリング等により形成することができるが、量産性を考慮すると、無電解めっきが最適である。
【0080】
(5)溝部の形成
次に、セラミック基板11の発熱体12を形成した側の面に、溝部17を形成する(図9(c)参照)。溝部の形成は、切削加工や、ソフトブラスト、サンドブラスト等のブラスト加工等により行うことができる。
なお、本工程は、(2)導体ペーストを印刷や、(4)金属被覆層の形成を行う前に行ってもよい。
また、上記溝部は、加熱面(発熱体12を形成した側と反対側の面)に形成されていてもよい。
【0081】
(6)端子等の取り付け
発熱体12の端部に、電源との接続のための端子(外部端子13)を半田で取り付ける。また,有底孔14に銀ろう、金ろう等で熱電対(図示せず)を固定し、ポリイミド等の耐熱樹脂で封止し、セラミックヒータ10の製造を終了する(図9(d)参照)。
【0082】
次に、セラミック基板の内部に発熱体32が形成されたセラミックヒータ30(図3、4参照)の製造方法について、図10を参照しながら説明する。図10は、本発明のセラミックヒータの製造方法の別の一例を説明するための模式図である。
【0083】
(1)グリーンシートの作製方法
まず、上述した窒化アルミニウムや炭化珪素等のセラミックの粉末をバインダ、溶剤等と混合してペーストを調製し、これを用いてグリーンシート130を作製する。
また、ペーストを調製する際には、必要に応じて、イットリア(Y)やBC等の焼結助剤、Na、Caを含む化合物を加えてもよい。
上記バインダとしては、セラミックヒータ10の製造で用いるものと同様のものを用いることができる。
【0084】
上記溶剤としては、α−テルピネオール、グリコール等を用いることができる。
これらを混合して得られるペーストをドクターブレード法でシート状に成形して、グリーンシート130を作製する。
また、グリーンシート130には、パンチング等により、スルーホールを形成する部分に貫通孔を形成する。
なお、グリーンシート130には、貫通孔35や有底孔34となる部分に貫通孔を形成しておくことも可能である。グリーンシートの厚さは、0.1〜5mmが望ましい。
【0085】
(2)グリーンシート上に導体ペーストを印刷する工程
グリーンシート130上に、発熱体32を形成するための金属ペーストまたは導電性セラミックを含む導体ペーストを印刷し、導体ペースト層120を形成し、貫通孔にスルーホール用の導体ペースト充填層160を形成する。
これらの導電ペースト中には、金属粒子または導電性セラミック粒子が含まれている。
【0086】
タングステン粒子、モリブデン粒子の平均粒径は、0.1〜5μmが望ましい。平均粒径が0.1μm未満であるか、5μmを超えると、導体ペーストを印刷しにくいからである。
このような導体ペーストとしては、例えば、金属粒子または導電性セラミック粒子85〜87重量部;アクリル系、エチルセルロース、ブチルセロソルブ、ポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種のバインダ1.5〜10重量部;および、α−テルピネオール、グリコールから選ばれる少なくとも1種の溶媒を1.5〜10重量部混合した組成物(ペースト)等が挙げられる。
【0087】
(3)グリーンシート積層工程
導体ペーストを印刷していないグリーンシート130を、導体ペーストを印刷したグリーンシート130の上側に積層する(図10(a)参照)。
このとき、導体ペーストを印刷したグリーンシート130が、積層したグリーンシートの厚さに対して、底面から60%以下の位置になるように積層することが望ましい。
また、上側のグリーンシートの積層数は20〜50枚が望ましい。
【0088】
(4)グリーンシート積層体の焼成
グリーンシート積層体の加熱、加圧を行い、グリーンシートおよび内部の導体ペーストを焼結させる(図10(b)参照)。
また、加熱温度は、1000〜2000℃が望ましく、加圧の圧力は、10〜20MPaが望ましい。加熱は、不活性ガス雰囲気中で行う。不活性ガスとしては、例えば、アルゴン、窒素等を使用することができる。
【0089】
(5)溝部の形成
次に、得られた焼結体の底面に溝部37を形成する。溝部の形成は、切削加工や、ソフトブラスト、サンドブラスト等のブラスト加工等により行うことができる。
なお、上記溝部は、グリーンシート130の溝部に対応する位置に予め貫通孔を形成しておき、この貫通孔の形成されたグリーンシートを上述したように積層することにより、形成してもよい。
また、溝部は、加熱面(得られた焼結体の上面)に形成してもよい。
【0090】
次に、得られた焼結体に、熱電対などの測温素子を埋め込むための有底孔34、リフターピンを挿通するための貫通孔35、発熱体32をスルーホール40を介して外部端子33と接続するため袋孔40a等を形成する(図10(c)参照)。
【0091】
上述の有底孔34や貫通孔35を形成する工程は、上記グリーンシート積層体に対して行ってもよいが、上記焼結体に対して行うことが望ましい。焼結過程において、変形するおそれがあるからである。
なお、有底孔34や貫通孔35は、研磨処理後に、サンドブラスト等のブラスト処理を行うことにより形成することができる。
【0092】
(6)外部端子の取り付け
セラミック基板31の内部に形成された発熱体32と接続するためのスルーホール40に外部端子33を接続し、加熱してリフローする。加熱温度は、200〜500℃が好適である。そして、有底孔34にリード線を有する測温素子(図示せず)を銀ろう、金ろうを用いて取り付け、ポリイミド等の耐熱性樹脂で封止し、セラミックヒータ30の製造を終了する(図10(d)参照)。なお、外部端子の取り付け方法は、上述した方法に限定されるわけではなく、例えば、弾性部材の弾性力を利用して圧着する方法や、スルーホールにネジ溝が切られており、ねじ部を有する外部端子をねじ込む方法等を用いることもできる。
【0093】
また、セラミック基板の内部に発熱体が形成されたセラミックヒータを製造する際に、セラミック基板の内部に静電電極を設けることにより、静電チャックを製造することができる。ただし、この場合は、静電電極と外部端子とを接続するためのスルーホールを形成する必要があるが、リフターピンを挿入するための貫通孔を形成する必要はない。
セラミック基板の内部に静電電極を形成する場合には、発熱体を形成する場合と同様に、グリーンシートの表面に静電電極ととなる導体ペースト層を形成すればよい。
【実施例】
【0094】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1−1)
セラミックヒータ(図1、2および図9参照)の製造
(1)窒化アルミニウム粉末(トクヤマ社製、平均粒径0.6μm)100重量部、イットリア(平均粒径0.4μm)4重量部、アクリルバインダ12重量部およびアルコールからなる組成物のスプレードライを行い、顆粒状の粉末を作製した。
【0095】
(2)次に、この顆粒状の粉末を金型に入れ、平板状に成形して生成形体(グリーン)を得た。
【0096】
(3)次に、この生成形体を1800℃、圧力20MPaでホットプレスし、厚さが15mmの窒化アルミニウム基板を得た。
次に、この板状体から直径230mmの円板体を切り出し、セラミック製の板状体(セラミック基板11)とした。
そして、このセラミック基板11にドリル加工を施し、熱電対を埋め込むための有底孔14およびリフターピンを挿通するための貫通孔15を形成した。
【0097】
(4)次に、上記(3)の工程で得られたセラミック基板11の底面に、スクリーン印刷にて導体ペースト層を形成した。印刷パターンは、図1に示したような略同心円形状の発熱体が複数形成されているパターンとした。
上記導体ペーストとしては、Ag48重量%、Pt21重量%、SiO1.0重量%、B2.2重量%、ZnO4.1重量%、PbO3.4重量%、酢酸エチル3.4重量%、ブチルカルビトール17.9重量%からなる組成のものを使用した。
この導体ペーストは、Ag−Ptペーストであり、銀粒子は、平均粒径が4.5μmで、リン片状のものであった。また、Pt粒子は、平均粒径0.5μmの球状であった。
【0098】
(5)さらに、発熱体パターンの導体ペースト層を形成した後、セラミック基板11を780℃で加熱、焼成して、導体ペースト中のAg、Ptを焼結させるとともに、セラミック基板11に焼き付け、発熱体12を形成した(図9(b)参照)。
【0099】
(6)硫酸ニッケル80g/l、次亜リン酸ナトリウム24g/l、酢酸ナトリウム12g/l、ほう酸8g/l、塩化アンモニウム6g/lの濃度の水溶液からなる無電解ニッケルめっき浴に上記(5)で作製したセラミック基板11を浸漬し、銀−鉛の発熱体12の表面に厚さ1μmの金属被覆層12a(ニッケル層)を析出させた。
【0100】
(7)次に、セラミック基板の底面マスクを載置し、発熱体を形成していない領域の一部に、ソフトブラスト処理を施すことにより、溝部17を形成した。溝部17は、平面視円弧状で、断面視矩形状のものを複数形成した(図1参照)。なお、溝部17の深さは、セラミック基板の厚さの10%であり、その形成面積の占める割合は、30%である(図9(c)参照)。
【0101】
次に、電源との接続を確保するための外部端子13を取り付ける部分に、スクリーン印刷により、銀−鉛半田ペースト(田中貴金属社製)を印刷して、半田層(図示せず)を形成した。
次いで、半田層の上に,コバール製の外部端子13を載置して、420℃で加熱リフローし、外部端子13を発熱体12(金属被覆層12a)の表面に取り付けた(図9(d)参照)。
最後に、温度制御のための熱電対(図示せず)をポリイミドで封止し、セラミックヒータ10を得た。
【0102】
(実施例1−2〜1−6)
溝部の深さを、それぞれ、セラミック基板の厚さの20%、50%、60%、70%、80%に変更した以外は、実施例1−1と同様にしてセラミックヒータを得た。
【0103】
(実施例2−1)
実施例1−1の(7)の工程において、溝部を形成する際に、その形成面積の占める割合を40%とした以外は、実施例1−1と同様にしてセラミックヒータを得た。
【0104】
(実施例2−2〜2−6)
溝部の深さを、それぞれ、セラミック基板の厚さの20%、50%、60%、70%、80%に変更した以外は、実施例2−1と同様にしてセラミックヒータを得た。
【0105】
(実施例3−1)
実施例1−1の(7)の工程において、溝部を形成する際に、その形成面積の占める割合を25%とした以外は、実施例1−1と同様にしてセラミックヒータを得た。
【0106】
(実施例3−2〜3−6)
溝部の深さを、それぞれ、セラミック基板の厚さの20%、50%、60%、70%、80%に変更した以外は、実施例3−1と同様にしてセラミックヒータを得た。
【0107】
(実施例4−1)
実施例1−1の(7)の工程において、溝部を形成する際に、その形成面積の占める割合を20%とした以外は、実施例1−1と同様にしてセラミックヒータを得た。
【0108】
(実施例4−2〜4−6)
溝部の深さを、それぞれ、セラミック基板の厚さの20%、50%、60%、70%、80%に変更した以外は、実施例4−1と同様にしてセラミックヒータを得た。
【0109】
(実施例5−1)
実施例1−1の(7)の工程において、溝部を形成する際に、その形成面積の占める割合を15%とした以外は、実施例1−1と同様にしてセラミックヒータを得た。
【0110】
(実施例5−2〜5−6)
溝部の深さを、それぞれ、セラミック基板の厚さの20%、50%、60%、70%、80%に変更した以外は、実施例5−1と同様にしてセラミックヒータを得た。
【0111】
(実施例6−1)
セラミックヒータ(図3、4)の製造
(1)窒化アルミニウム粉末(トクヤマ社製、平均粒径0.6μm)100重量部、アルミナ4重量部、アクリル系樹脂バインダ11.5重量部、分散剤0.5重量部および1−ブタノールとエタノールとからなるアルコール53重量部を混合したペーストを用い、ドクターブレード法により成形を行って、厚さ0.47mmのグリーンシートを作製した。
【0112】
(2)次に、このグリーンシートを80℃で5時間乾燥させた後、スルーホール40となる部分をパンチングにより設けた。
【0113】
(3)平均粒径1μmのタングステンカーバイト粒子100重量部、アクリル系バインダ3.0重量部、α−テルピネオール溶媒3.5重量部および分散剤0.3重量部を混合して導体ペーストAを調整した。
平均粒径3μmのタングステン粒子100重量部、アクリル系バインダ1.9重量部、α−テルピネオール溶媒3.7重量部および分散剤0.2重量部を混合して導体ペーストBを調整した。
【0114】
この導体ペーストAをグリーンシート130上にスクリーン印刷で印刷し、発熱体用の導体ペースト層120を形成した。印刷パターンは、図3に示すような略同心円形状のパターンとした。
さらに、外部端子33を接続するためのスルーホール40となる部分に導体ペーストBを充填し、充填層160とした。
【0115】
(4)上記処理の終わったグリーンシートに、さらに、上記処理を行っていないグリーンシートを上側(加熱面)に37枚、下側に13枚積層し、130℃、8MPaの圧力で圧着して積層体を形成した(図10(a)参照)。
【0116】
(5)次に、得られた積層体を窒素ガス中、600℃で5時間脱脂し、1890℃、圧力15MPaで10時間ホットプレスし、厚さ3mmのセラミック板状体を得た。これを230mmの円板状に切り出し、発熱体32およびスルーホール40を有するセラミック板状体とした(図10(b)参照)。
【0117】
(6)次に、セラミック基板の底面マスクを載置し、発熱体を形成していない領域の一部に、ソフトブラスト処理を施すことにより、溝部37を形成した。溝部37は、平面視円弧状で、断面視形状が直線と円弧とを組み合せた形状のものを、セラミック基板の底面に垂直な方向において、発熱体と重ならない位置に複数形成した(図3参照)。なお、溝部37の深さは、セラミック基板の厚さの10%であり、その形成面積の占める割合は、30%である。
さらに、ブラスト処理で表面に測温素子を挿通するための有底孔34を設け、また、ドリル加工により直径5mm、深さ0.5mmの袋孔40aを形成した。
【0118】
(7)次に、スルーホール40が形成されている部分をえぐりとって袋孔40aとし(図10(c)参照)、この袋孔40aにNi−Auからなる金ろうを用い、700℃で加熱リフローしてコバール製の外部端子33を接続させた(図10(d)参照)。
さらに、温度制御のための熱電対(図示せず)を有底孔34に埋め込み、セラミックヒータ30を得た。
【0119】
(実施例6−2〜6−6)
溝部の深さを、それぞれ、セラミック基板の厚さの20%、50%、60%、70%、80%に変更した以外は、実施例6−1と同様にしてセラミックヒータを得た。
【0120】
(実施例7−1)
実施例6−1の(6)の工程において、溝部を形成する際に、その形成面積の占める割合を40%とした以外は、実施例6−1と同様にしてセラミックヒータを得た。
【0121】
(実施例7−2〜7−6)
溝部の深さを、それぞれ、セラミック基板の厚さの20%、50%、60%、70%、80%に変更した以外は、実施例7−1と同様にしてセラミックヒータを得た。
【0122】
(実施例8−1)
実施例6−1の(6)の工程において、溝部を形成する際に、その形成面積の占める割合を10%とした以外は、実施例6−1と同様にしてセラミックヒータを得た。
【0123】
(実施例8−2〜8−6)
溝部の深さを、それぞれ、セラミック基板の厚さの20%、50%、60%、70%、80%に変更した以外は、実施例8−1と同様にしてセラミックヒータを得た。
【0124】
(比較例1)
実施例1−1の(7)の工程、即ち、溝部を形成する工程を行わなかった以外は、実施例1−1と同様にして、セラミックヒータを製造した。
【0125】
(比較例2)
実施例6−1の(6)の工程で溝部を形成しなかった以外は、実施例6−1と同様にして、セラミックヒータを製造した。
【0126】
そして、実施例および比較例に係るセラミックヒータを支持容器より支持、固定した後、以下の評価を行った。
【0127】
評価方法
(1)平坦度
室温から250℃までの昇降温を1000回繰り返した後、反り測定装置(京セラ社製、商品名:ナノウエイ)を用い、セラミック基板の外縁5mm帯を除く領域の平坦度(一番高い位置と一番低い位置との落差)を測定した。
また、平坦度は、上記領域を通る最も距離の長い部分(即ち、セラミック基板の中心を通る部分)で測定した。結果を表1に示した。
【0128】
(2)昇温時間/降温時間
室温〜400℃までの昇温に要した時間、および、200度〜室温までの降温に要した時間を測定した。結果を表1、2に示した。
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】

【0131】
表1、2に示した結果から明らかなように、実施例1−1〜5−6に係るセラミック基板の平坦度は、10〜30μm程度であり、実施例6−1〜8−6に係るセラミック基板の平坦度は、15〜50μm程度であったのに対し、比較例1、2に係るセラミック基板の平坦度は、それぞれ、20μm程度であり、このことから、実施例に係るセラミックヒータは、比較例1、2に係るセラミックヒータに比べて、平坦度に優れることが明らかとなった。
上記平坦度は、溝形成面積が60%以下であると特に優れることが実施例から明らかとなった。
【0132】
また、表1、2に示した結果から明らかなように、実施例に係るセラミックヒータは、比較例1、2に係るセラミックヒータに比べて、昇温時間および降温時間が非常に短く、昇温降温特性に優れることも明らかとなった。
上記昇温降温特性は、溝形成面積が大きくなれば、それに伴って昇温降温時間が短くなることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明のセラミックヒータの一例を模式的に示す底面図である。
【図2】図1に示すセラミックヒータの断面図である。
【図3】本発明のセラミックヒータの別の一例を模式的に示す底面図である。
【図4】図3に示すセラミックヒータの断面図である。
【図5】本発明に係る静電チャックの一実施形態を模式的に示した縦断面図である。
【図6】図5に示した静電チャックにおけるA−A線断面図である。
【図7】本発明に係る他の静電チャックにおける静電電極を模式的に示した水平断面図である。
【図8】本発明に係る他の静電チャックにおける静電電極を模式的に示した水平断面図である。
【図9】本発明のセラミックヒータの製造方法の一例を説明するための模式図である。
【図10】本発明のセラミックヒータの製造方法の一例を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0134】
10、30 セラミックヒータ
11、31 セラミック基板
12、32 発熱体
13、33 外部端子
14、34 有底孔
15、35 貫通孔
16、36 リフターピン
17、37 溝部
18、38 測温素子
40 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック基板の表面または内部に発熱体が形成されたセラミックヒータであって、
前記セラミック基板の加熱面、または、前記加熱面と反対側の面に、溝部が形成されていることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項2】
前記溝部は、前記セラミック基板の加熱面と反対側の面に垂直な方向において、前記発熱体と重ならない位置に形成されている請求項1に記載のセラミックヒータ。
【請求項3】
前記セラミック基板は、非酸化物セラミックである請求項1または2に記載のセラミックヒータ。
【請求項4】
前記セラミック基板の厚さは、20mm以下である請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックヒータ。
【請求項5】
前記セラミック基板の形状は、円板状である請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックヒータ。
【請求項6】
前記セラミック基板の直径は、200mm以上である請求項1〜5のいずれかに記載のセラミックヒータ。
【請求項7】
前記溝部の深さは、前記セラミック基板の厚さの60%以下である請求項1〜6のいずれかに記載のセラミックヒータ
【請求項8】
前記溝部は、前記セラミック基板の加熱面と反対側の面の30%以上の領域に形成されている請求項1〜7のいずれかに記載のセラミックヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−24433(P2006−24433A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200975(P2004−200975)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】