説明

セラミック原料粉体、その製造方法、誘電体磁器組成物、電子部品及び積層セラミックコンデンサ

【課題】 EIAJ規格で規定するX7R特性及びJIS規格で規定するB特性のいずれも満足するといった静電容量の温度安定性が良好であり、かつ、絶縁抵抗値、比誘電率などの特性が良好で、さらに絶縁抵抗の加速寿命が長い積層セラミックコンデンサなどの電子部品を得ることが可能なセラミック原料粉体を提供すること。
【解決手段】 チタン酸バリウムで構成される主成分粒子の表面に副成分添加物で構成される被覆層を有するセラミック原料粉体であって、前記主成分粒子の平均半径をrとし、前記被覆層の平均厚みを△rとしたときに、前記△rを、0.015r以上0.055r以下の範囲内に制御することを特徴とするセラミック原料粉体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸バリウムなどの主成分原料粉体の粒子(以下、単に「主成分粒子」と言うこともある)の表面に、副成分添加物で構成される皮膜状の被覆層を有するセラミック原料粉体及びその製造方法と、そのセラミック原料粉体を用いて製造され、たとえば積層セラミックコンデンサの誘電体層などとして用いられる誘電体磁器組成物と、その誘電体磁器組成物を誘電体層として用いる積層セラミックコンデンサなどの電子部品とに、関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサは、小型、大容量、高信頼性の電子部品として広く利用されており、1台の電子機器の中で使用される個数も多数にのぼる。近年、機器の小型・高性能化に伴い、積層セラミックコンデンサの更なる小型、大容量、低価格、高信頼性化への要求はますます厳しくなっている。
【0003】
積層セラミックコンデンサは、通常、内部電極層用のペーストと誘電体層用のペーストとを、シート法や印刷法等により積層し、一体同時焼成して製造される。内部電極層の導電材には、比較的安価なNiやNi合金等の卑金属が使用されている。内部電極層の導電材として卑金属を用いる場合、大気中で焼成を行なうと内部電極層が酸化してしまうため、誘電体層と内部電極層との同時焼成を、還元性雰囲気中で行なう必要がある。しかし、還元性雰囲気中で焼成すると、誘電体層が還元され、比抵抗が低くなってしまうため、非還元性の誘電体材料が提案されている。
【0004】
非還元性の誘電体材料として、現在、EIAJ(日本電子機械工業会規約)で規定するX7R特性(−55℃〜125℃の温度範囲で、25℃を基準に静電容量変化率が±15%以内)、またはJIS規格で規定するB特性(−25〜85℃の温度範囲で、20℃を基準に静電容量変化率が±10%以内)を満足するといった静電容量の温度安定性の良好なものが主流となっている。
【0005】
しかし、非還元性の誘電体材料を用いた積層セラミックコンデンサは、絶縁抵抗IRの寿命が短くなり、信頼性が低いという問題がある。
【0006】
薄層化が急激に進む状況下において、誘電体層の中の副成分添加物の分散の不均一や偏析は、セラミック電子部品の特性、品質、信頼性等に重大な欠陥をもたらす原因となる。このため、この種のセラミクス電子部品の特性、品質、信頼性を保持するためには、誘電体層の中の副成分添加物の均一な分散が不可欠となっている。その為には、原料粉体段階で、目的にあった原料粉体組織を作りこんでおくことが不可欠である。
【0007】
従来から、副成分添加物の偏りを抑制する方法として、微細な副成分添加物を用いる方法や、複数の副成分添加物を予め加熱により化合物化しておいた後に微細に粉砕して添加する方法が提案されている。これらの方法で製造された誘電体材料を用いれば、ある程度は偏析を抑えることができる。
【0008】
しかしながら、副成分添加物の粒径を小さくすると凝集が生じ易く、根本的な解決方法となっていなかった。
【0009】
均質化を実現するためには、個々のセラミック主成分粒子に確実に副成分元素を分布させることが重要である。そのための方策として、セラミック主成分粒子に副成分添加物を均一に被覆させたセラミック原料粉体の製造、及びこの被覆されたセラミック原料粉体を焼結することによる高性能セラミック電子部品の製造が求められている。
【0010】
セラミック主成分粒子に副成分添加物を均一に被覆させる方法として、幾つかの提案が為されている。
【0011】
たとえば特許文献1では、金属酸化物粉末を、該金属酸化物粉末の成分と異なる金属元素成分を含む金属塩の溶液中に分散して該金属酸化物の表面に該金属元素成分を付着させる方法が提案されている。
【0012】
特許文献2では、誘電体セラミック基本組成物粉末を水に分散させたスラリーに、Si化合物を前記スラリーに添加して、前記誘電体セラミック基本組成粉末に沈着させ、次に前記Si化合物を付着させた誘電体セラミック基本組成物粉末を含むスラリーに、該スラリーを攪拌しながら、前記化合物を構成する金属元素を含む溶液と、該金属元素と反応して沈澱を形成する沈澱剤を添加して所望の金属元素を副成分元素として誘電体セラミック基本組成物粉末表面に付着させる方法が提案されている。
【0013】
特許文献3では、セラミック基本組成物粉末を有機溶媒及び界面活性剤と共に混合粉砕しスラリー化し、次にこのスラリーに金属元素を含む複合アルコキシド溶液を添加混合し、その後このスラリーから有機溶媒を除去して表面が前記金属元素を含む複合アルコキシドで被覆処理する方法が提案されている。
近年、積層セラミックコンデンサの更なる薄層多層化が要求され、これに伴って、その誘電体層に対しても、比誘電率および絶縁抵抗値、負荷寿命特性などの諸特性が更に優れることが要求されている。この誘電体層の特性に影響を及ぼす要因としては、誘電体層を構成するセラミックの微細構造が挙げられる。この微細構造は、原料粉体の状態と、焼結時における原料粉体同士の反応機構により変化するものと考えられる。
【0014】
しかしながら、従来、このような原料粉体の反応機構が十分に考慮されているとは言い難かった。上述したように原料粉体の被覆状態の均一性改善に関する試み(特許文献1〜3参照)は広く行われていたが、例えば副成分添加物で構成される被覆層の平均厚みと最終的に得られるコンデンサの諸特性などに関しては、十分に解明されているとは言い難く、これらの解明が求められていた。
【特許文献1】特開昭63−141204号公報
【特許文献2】特許第3397156号公報
【特許文献3】特開平10−139553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、EIAJ規格で規定するX7R特性及びJIS規格で規定するB特性のいずれも満足するといった静電容量の温度安定性が良好であり、かつ、絶縁抵抗値、比誘電率などの特性が良好で、さらに絶縁抵抗の加速寿命が長い積層セラミックコンデンサなどの電子部品を得ることが可能なセラミック原料粉体及びその製造方法と、
該セラミック原料粉体を用いて製造され、たとえば積層セラミックコンデンサの誘電体層などとして用いられる誘電体磁器組成物と、
該誘電体磁器組成物を誘電体層として用いる積層セラミックコンデンサなどの電子部品とを、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明によれば、
主成分粒子の表面に副成分添加物で構成される被覆層を有するセラミック原料粉体であって、
前記主成分粒子の平均半径をrとし、前記被覆層の平均厚みを△rとしたときに、前記△rを、r(α−β)以上r(α+β)以下の範囲内に制御することを特徴とするセラミック原料粉体が提供される。
本発明によれば、主成分粒子の表面に副成分添加物で構成される被覆層を有するセラミック原料粉体を製造する方法であって、
粉末状の主成分粒子と、溶液状の副成分添加物との混合溶液を準備する工程と、 前記混合溶液を熱処理する工程を有し、
前記熱処理の処理温度と処理時間を変化させ、前記被覆層の平均厚み△rを、前記主成分粒子の平均半径rに対して、r(α−β)以上r(α+β)以下の範囲内に制御することを特徴とするセラミック原料粉体の製造方法が提供される。
【0017】
ここで、αとβの値は、主成分粒子の組成や被覆層を構成する副成分添加物の種類などにより決定される定数を示す。
【0018】
主成分粒子としては、特に限定されないが、ペロブスカイト型結晶構造を持つ酸化物などが例示される。ペロブスカイト型(ABO型)結晶構造を持つ酸化物としては、特に限定されないが、単純ペロブスカイトの他に、欠陥ペロブスカイト、複合ペロブスカイトなどが例示される。単純ペロブスカイトとしては、特に限定されないが、BaTiO、CaTiO、SrTiO、CaZrO、SrZrOなどが例示される。中でも、主成分粒子として、BaTiOなどのチタン酸バリウムを用いることが特に好ましい。
【0019】
主成分粒子がチタン酸バリウムのケースでは、上記αが0.035であり、上記βが0.020であることが、本発明者らの実験により確認されている。
【0020】
すなわち、本発明によれば、
チタン酸バリウムで構成される主成分粒子の表面に副成分添加物で構成される被覆層を有するセラミック原料粉体であって、
前記主成分粒子の平均半径をrとし、前記被覆層の平均厚みを△rとしたときに、前記△rを、0.015r以上0.055r以下の範囲内に制御することを特徴とするセラミック原料粉体が提供される。
本発明によれば、チタン酸バリウムで構成される主成分粒子の表面に副成分添加物で構成される被覆層を有するセラミック原料粉体を製造する方法であって、
粉末状の主成分粒子と、溶液状の副成分添加物との混合溶液を準備する工程と、 前記混合溶液を熱処理する工程を有し、
前記熱処理の処理温度と処理時間を変化させ、前記被覆層の平均厚み△rを、前記主成分粒子の平均半径rに対して、0.015r以上0.055r以下の範囲内に制御することを特徴とするセラミック原料粉体の製造方法が提供される。
【0021】
主成分粒子がチタン酸バリウムで構成される場合に、被覆層を構成する副成分添加物は、少なくとも、酸化マグネシウム及び/又は焼成後に酸化マグネシウムになる化合物と、酸化マンガン及び/又は焼成後に酸化マンガンになる化合物並びに酸化クロム及び/又は焼成後に酸化クロムになる化合物の少なくとも1種とを、含有することが好ましい。
【0022】
さらに副成分添加物として、酸化バナジウム及び/又は焼成後に酸化バナジウムになる化合物、酸化タングステン及び/又は焼成後に酸化タングステンになる化合物、酸化タンタル及び/又は焼成後に酸化タンタルになる化合物、並びに、酸化ニオブ及び/又は焼成後に酸化ニオブになる化合物、の少なくとも1種を、含有させることも好ましい。
【0023】
さらに副成分原料として、R酸化物(ただし、Rは、Sc、Er、Tm、Yb、Lu、Y、Dy、Ho、Tb、Gd及びEuの少なくとも1種)及び/又は焼成後にR酸化物になる化合物を、含有させることも好ましい。
【0024】
さらに副成分原料として、酸化珪素及び/又は焼成後に酸化珪素になる化合物を、含有させることも好ましい。
【0025】
さらに副成分原料として、酸化バリウム及び/又は焼成後に酸化バリウムになる化合物、酸化ストロンチウム及び/又は焼成後に酸化ストロンチウムになる化合物、並びに、酸化カルシウム及び/又は焼成後に酸化カルシウムになる化合物を、含有させることも好ましい。
【0026】
本発明のセラミック原料粉体は、コンデンサ、PTC素子などの電子部品の構成材料として、好適に用いることができる。
【0027】
本発明によれば、
上記いずれかのセラミック原料粉体を用いて製造された誘電体磁器組成物であって、
主として主成分から構成される主相と、
該主相と組成及び結晶構造が異なり、副成分を酸化物換算で10重量%以上含む領域である偏析相とを、有し、
前記誘電体磁器組成物の断面を観察した際の、前記偏析相の面積比率が、観察視野面積の8%以下である誘電体磁器組成物が提供される。
【0028】
本発明に係る電子部品は、誘電体層を有する電子部品であれば、特に限定されず、たとえば誘電体層と共に内部電極層とが交互に複数積層してある素子本体を有する積層セラミックコンデンサである。本発明では、前記誘電体層が、上記誘電体磁器組成物で構成してある。内部電極層に含まれる導電材としては、特に限定されないが、たとえばNiまたはNi合金である。
【0029】
電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、チタン酸バリウムなどの主成分粒子の表面に副成分添加物で構成される被覆層を有するセラミック原料粉体に関し、被覆層の平均厚み△rを、主成分粒子の平均半径rに対して所定の関係を満足するように制御している。このため、EIAJ規格で規定するX7R特性及びJIS規格で規定するB特性のいずれも満足するといった静電容量の温度安定性が良好であり、かつ、絶縁抵抗値、比誘電率などの特性が良好で、さらに絶縁抵抗の加速寿命が長い積層セラミックコンデンサなどの電子部品を得ることが可能なセラミック原料粉体と、該セラミック原料粉体を用いて製造され、たとえば積層セラミックコンデンサの誘電体層などとして用いられる誘電体磁器組成物と、該誘電体磁器組成物を誘電体層として用いる積層セラミックコンデンサなどの電子部品とを、提供できる。
本発明のセラミック原料粉体の製造方法によると、粉末状の主成分粒子と、溶液状の副成分添加物との混合溶液を熱処理する際に、熱処理温度と熱処理時間を変化させる。これにより、前記被覆層の平均厚み△rを、前記主成分粒子の平均半径rに対して、所定の関係を満足するように制御する。その結果、EIAJ規格で規定するX7R特性及びJIS規格で規定するB特性のいずれも満足するといった静電容量の温度安定性が良好であり、かつ、絶縁抵抗値、比誘電率などの特性が良好で、さらに絶縁抵抗の加速寿命が長い積層セラミックコンデンサなどの電子部品を得ることが可能なセラミック原料粉体を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図、
図2は図1の積層セラミックコンデンサを製造するために用いるセラミック原料粉末を模式的に示した断面図、
図3は走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いた本発明の実施例に相当する試料2のセラミック原料粉末の明視野観察像を示す写真、
図4は本発明の実施例に相当する試料2のセラミック原料粉末について、BaTiO粒子の外側から内側に向けて電子線をライン状に走査した際に検出されたYの特性X線(K線)のカウント数をプロットしたグラフ、
図5はYの特性X線(K線)を用いた本発明の実施例に相当する試料2のセラミック原料粉末の元素マッピング像を示す写真、
図6はSTEMを用いた実施例2に相当する試料6の焼結体の明視野観察像を示す写真、
図7はBaの特性X線(K線)を用いた実施例2に相当する試料6の焼結体の元素マッピング像を示す写真、
図8はTiの特性X線(K線)を用いた実施例2に相当する試料6の焼結体の元素マッピング像を示す写真、
図9はSiの特性X線(K線)を用いた実施例2に相当する試料6の焼結体の元素マッピング像を示す写真、
図10はYの特性X線(K線)を用いた実施例2に相当する試料6の焼結体の元素マッピング像を示す写真、である。
【0032】
積層セラミックコンデンサ
図1に示すように、本発明の電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサ1は、層間誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両側端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。内部電極層3は、各側端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。
【0033】
一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
【0034】
コンデンサ素子本体10の外形や寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、通常、外形はほぼ直方体形状とし、寸法は通常、縦(0.4〜5.6mm)×横(0.2〜5.0mm)×高さ(0.2〜1.9mm)程度とすることができる。
【0035】
コンデンサ素子本体10において、内部電極層3および層間誘電体層2の積層方向の両外側端部には、外側誘電体層20が配置してあり、素子本体10の内部を保護している。
【0036】
層間誘電体層2および外側誘電体層20の組成は、本発明では特に限定されないが、たとえば以下の誘電体磁器組成物で構成される。
【0037】
本実施形態の誘電体磁器組成物は、たとえばチタン酸バリウムを主成分として有する誘電体磁器組成物である。
誘電体磁器組成物中に主成分と共に含まれる副成分としては、Mn,Cr,Ca,Ba,Mg,V,W,Ta,Nb及びR(RはYなどの希土類元素の1種以上)の酸化物並びに焼成により酸化物になる化合物を一種類以上含有するものが例示される。副成分を添加することにより、還元雰囲気焼成においてもコンデンサとしての特性を得ることができる。なお、不純物として、C,F,Li,Na,K,P,S,Clなどの微量成分が0.1重量%以下程度、含有されてもよい。ただし、本発明では、層間誘電体層2及び外側誘電体層20の組成は、上記に限定されるものではない。
【0038】
本実施形態では、層間誘電体層2および外側誘電体層20として、以下の組成のものを用いることが好ましい。
【0039】
その組成は、主成分としてチタン酸バリウムを含有し、副成分として酸化マグネシウムと、酸化マンガン及び酸化クロムの少なくとも1種とを含有するものである。
【0040】
さらに副成分として酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化タンタル及び酸化ニオブの少なくとも1種を含有するものであることが好ましい。
【0041】
さらに副成分としてR酸化物(ただし、Rは、Sc、Er、Tm、Yb、Lu、Y、Dy、Ho、Tb、Gd及びEuの少なくとも1種)を含有するものであることが好ましい。
【0042】
さらに副成分として酸化珪素を含有するものであることが好ましい。
【0043】
さらに副成分として酸化バリウム、酸化ストロンチウム及び酸化カルシウムを含有するものであることが好ましい。
【0044】
層間誘電体層2の積層数や厚み等の諸条件は、目的や用途に応じ適宜決定すればよいが、本実施形態では、層間誘電体層2の厚みは、5μm以下、好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下と薄層化されている。
また、層間誘電体層2は、グレインと粒界相とで構成され、層間誘電体層2のグレインの平均粒子径は、0.1〜5μm程度あることが好ましい。この粒界相は、通常、誘電体材料あるいは内部電極材料を構成する材質の酸化物や、別途添加された材質の酸化物、さらには工程中に不純物として混入する材質の酸化物を成分とし、通常ガラスないしガラス質で構成されている。
特に、層間誘電体層2は、主として主成分から構成される主相と、該主相と組成及び結晶構造が異なり、副成分を酸化物換算で10重量%以上含む領域である偏析相とで構成されている。ここで、偏析相とは、各種副成分添加物からなる副成分が偏析し、主として主成分から構成されている主相と比較して、副成分が比較的高濃度に存在している領域を意味する。なお、偏析相を、副成分を酸化物換算で”10重量%以上”含む領域と定義した理由は、10重量%未満の場合には、主相に副成分が固溶した状態であり、シェル部に相当するからである。
そして、前記層間誘電体層2の断面を観察した際の、前記偏析相の面積比率が、観察視野面積の8%以下、好ましくは6%以下、より好ましくは4%以下である。偏析相の面積比率が観察視野面積の8%を超えると、比誘電率は比較的十分な値が得られるが、IR加速寿命が極端に短くなる傾向にあり、しかも温度特性も悪化する傾向にある。
なお、偏析相の組成は、例えば、走査型透過電子顕微鏡(STEM)もしくは透過型電子顕微鏡(TEM)付属のEDS装置を用いて各元素の存在比を測定することにより求めることができる。主相と偏析相の結晶構造の違いは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた電子線回折法により判断することが可能である。
【0045】
内部電極層3は、実質的に電極として作用する卑金属の導電材で構成されることが好ましい。導電材として用いる卑金属としては、Ni又はNi合金が好ましい。
【0046】
外部電極4としては、通常Ni,Pd,Ag,Au,Cu,Pt,Rh,Ru,Ir等の少なくとも1種又はそれらの合金を用いることができる。通常は、Cu,Cu合金、Ni又はNi合金等や、Ag,Ag−Pd合金、In−Ga合金等が使用される。
【0047】
積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1を製造する方法の一例を説明する。
【0048】
(1)本実施形態では、焼成後に図1に示す層間誘電体層2及び外側誘電体層20を形成するための焼成前層間誘電体層及び焼成前外側誘電体層を構成することとなる誘電体層用ペーストと、焼成後に図1に示す内部電極層3を形成するための焼成前内部電極層を構成することとなる内部電極層用ペーストを準備する。また、外部電極用ペーストも準備する。
【0049】
誘電体層用ペーストは、セラミック原料粉末と有機ビヒクルとを混練して調製する。
【0050】
セラミック原料粉末
本実施形態で用いるセラミック原料粉末200は、図2に示すように、主成分粒子201の表面に副成分添加物で構成される被覆層202を有する複合酸化物で構成されている。
【0051】
主成分粒子201としては、チタン酸バリウムが用いられる。チタン酸バリウムは、図1に示す層間誘電体層2及び外側誘電体層20を構成することとなる誘電体磁器組成物の主成分を、焼成後に構成する成分である。チタン酸バリウムの組成は、本発明では特に限定されないが、組成式(BaO)・TiOで表され、前記式中のモル比mが、m=0.990〜1.020のものを用いることが好ましい。
【0052】
副成分添加物としては、
少なくとも、
酸化マグネシウム及び/又は焼成後に酸化マグネシウムになる化合物と、
酸化マンガン及び/又は焼成後に酸化マンガンになる化合物並びに酸化クロム及び/又は焼成後に酸化クロムになる化合物の少なくとも1種とが、用いられる。
この場合、チタン酸バリウムをBaTiOに、酸化マグネシウムをMgOに、酸化マンガンをMnOに、酸化クロムをCrにそれぞれ換算したとき、BaTiO100モルに対する比率がMgO:0〜3モル(ただし、0モルを除く)、MnO+Cr:0〜0.5モル(ただし、0モルを除く)、であることが好ましい。
【0053】
さらに副成分添加物として、
酸化バナジウム及び/又は焼成後に酸化バナジウムになる化合物、
酸化タングステン及び/又は焼成後に酸化タングステンになる化合物、
酸化タンタル及び/又は焼成後に酸化タンタルになる化合物、並びに、
酸化ニオブ及び/又は焼成後に酸化ニオブになる化合物、の少なくとも1種を、用いることが好ましい。
この場合、酸化バナジウムをVに、酸化タングステンをWOに、酸化タンタルをTaに、酸化ニオブをNbにそれぞれ換算したとき、BaTiO100モルに対する比率が、V+WO+Ta+Nb:0〜0.5モル(ただし、0モルを除く)、であることが好ましい。
【0054】
さらに副成分添加物として、
R酸化物(ただし、Rは、Sc、Er、Tm、Yb、Lu、Y、Dy、Ho、Tb、Gd及びEuの少なくとも1種)及び/又は焼成後にR酸化物になる化合物を、用いることが好ましい。
この場合、R酸化物をRに換算したとき、BaTiO100モルに対する比率が、R:0〜5モル(ただし、0モルを除く)、であることが好ましい。
【0055】
さらに副成分添加物として、
酸化珪素及び/又は焼成後に酸化珪素になる化合物を、用いることが好ましい。
この場合、酸化珪素をSiOに換算したとき、BaTiO100モルに対する比率が、SiO:0.5〜12モル、であることが好ましい。
【0056】
さらに副成分添加物として、
酸化バリウム及び/又は焼成後に酸化バリウムになる化合物、
酸化ストロンチウム及び/又は焼成後に酸化ストロンチウムになる化合物、並びに、
酸化カルシウム及び/又は焼成後に酸化カルシウムになる化合物を、用いることが好ましい。
この場合、酸化バリウムをBaOに、酸化ストロンチウムをSrOに、酸化カルシウムをCaOにそれぞれ換算したとき、BaTiO100モルに対する比率が、BaO+SrO+CaO:0.5〜12モル、であることが好ましい。
【0057】
以上のような各副成分添加物は、図1に示す層間誘電体層2及び外側誘電体層20を構成することとなる誘電体磁器組成物の副成分を、焼成後に構成する成分である。
【0058】
本発明では、被覆層202の平均厚みは、主成分粒子201の平均半径に応じて制御されている。具体的には、主成分粒子201の平均半径をrとし、被覆層202の平均厚みを△rとしたときに、前記△rが、0.015r以上0.055r以下の範囲内に含まれるように制御されている。被覆層202の平均厚み△rを所定範囲に制御する方法は、特に限定されないが、本実施形態では、後述するように、熱処理工程での処理温度と処理時間とを変化させることにより行う。その詳細は後述する。
【0059】
セラミック原料粉末は、平均粒径が、好ましくは5μm以下、より好ましくは0.05〜1.00μm程度とされる。
このような特殊なセラミック原料粉末を用いて製造される誘電体磁器組成物(焼結体)は、上述したように、主として主成分から構成される主相と、該主相と組成及び結晶構造が異なり、副成分を酸化物換算で10重量%以上含む領域である偏析相とを、有し、前記誘電体磁器組成物の断面を観察した際の、前記偏析相の面積比率を、観察視野面積の8%以下とすることが可能である。
【0060】
セラミック原料粉末の製造方法
図2に示す本実施形態で用いるセラミック原料粉末200は、次に示す方法により製造することができる。ただし、本発明では、以下の方法に限定されるものではない。
【0061】
(1−1)まず、粉末状の主成分(主成分粉末)と、溶液状の副成分(副成分溶液)を準備する。
【0062】
本実施形態では、主成分粉末として、一次粒子の平均粒径が所定範囲のチタン酸バリウムを用いることが好ましい。チタン酸バリウムとしては、一次粒子の平均粒径が、好ましくは0.01〜1.0μm、より好ましくは0.05〜0.5μmの粉末を用いることが望ましい。一次粒子の平均粒径が小さすぎると、得られるコンデンサの誘電率が著しく低下するおそれがある。逆に一次粒子の平均粒径が大きすぎると、得られるコンデンサにおいて、短絡や耐電圧不良が発生しやすくなるおそれがある。
【0063】
本実施形態で用いる副成分溶液は、副成分元素を、たとえばアルコキシド化、錯体化または塩化し、金属アルコキシド、金属錯体または金属塩の状態の化合物とした後、該化合物を溶媒に添加して得ることができる。
【0064】
副成分金属元素としては、マグネシウムと、マンガン及びクロムの少なくとも1種とが、用いられる。
さらに副成分金属元素として、バナジウム、タングステン、タンタル及びニオブの少なくとも1種を、用いることが好ましい。
さらに副成分金属元素として、R(ただし、Rは、Sc、Er、Tm、Yb、Lu、Y、Dy、Ho、Tb、Gd及びEuの少なくとも1種)を、用いることが好ましい。
さらに副成分金属元素として、珪素を用いることが好ましい。
さらに副成分金属元素として、バリウム、ストロンチウム及びカルシウムを、用いることが好ましい。
【0065】
アルコキシドとは、アルコールの水酸基の水素を金属元素Mで置換した化合物をいう。アルコキシドとしては、メトキシド(メチラートともいう。CHOM)、エトキシド(エチラートともいう。COM)、プロポキシド、ブトキシド、ペンチルオキシド、エトキシエトキシド、メトキシエトキシドなどが挙げられる。従って、副成分金属元素をアルコキシド化した金属アルコキシドは、例えばBa(OC、Ca(OC、Sr(OC、Mg(OC、Si(OC、V(OC等である。
【0066】
金属アルコキシドにおけるアルコラート配位子の数は、通常1〜6である。また、同一の金属アルコキシドにおいて、金属に配位するアルコラート配位子は、通常同一であるが、場合によっては異なっていてもよい。
【0067】
なお、前記Cr、Y、Mn、W、Zr等は、酢酸塩、蓚酸塩等の錯体として用いることもできる。また、副成分金属元素は、β−ジケトナト錯体としても用いることができる。
【0068】
溶媒としては、アルコール、ベンゼンやその誘導体あるいはクロロホルム等の単体の他に、ベンゼンまたはベンゼン誘導体とアルコールとの混合溶媒なども用いることができる。
【0069】
副成分溶液中の各化合物の含有量(濃度)は、最終的に得られる誘電体磁器組成物中の副成分添加物の含有量に応じて適宜調整される。
【0070】
(1−2)次に、主成分粉末に副成分溶液を混合する。両者の混合割合は、副成分溶液中の各副成分金属元素の化合物の含有量(濃度)や副成分溶液の液量などにより、適宜調整される。
【0071】
(1−3)次に、主成分粉末と副成分溶液の混合溶液を熱処理する。熱処理は、副成分金属元素の化合物が酸化物となるための熱分解反応を起こすために行うものである。熱処理することで、混合溶液中の溶媒を飛ばし、主成分粉末に結合する副成分金属元素の酸化物を、主成分粉末の表面を覆うように析出させる。
【0072】
本実施形態では、熱処理工程での処理温度と処理時間とを変化させる。これにより、主成分粒子としてのチタン酸バリウムの表面に形成される被覆層202の平均厚み△rが制御される。
本実施形態では、被覆層の平均厚み△rが、0.015r以上0.055r以下の範囲内に含まれることとなるように、熱処理温度と熱処理時間とを決定する。
具体的には、熱処理温度は、好ましくは500〜1100℃、より好ましくは600〜1050℃である。熱処理温度が低すぎると、熱分解反応が不十分となり、高すぎると主成分粒子の解砕が困難となる傾向がある。なお、熱処理温度の上限を1100℃程度としたのは、ネックグロースが始まる温度(たとえば1200℃前後)より100℃程度低い温度までで熱処理温度を調整することで、効率よく被覆層を形成することができるものと考えるからである。
熱処理時間は、好ましくは1〜12時間、より好ましくは1〜8時間である。同じ処理時間でも処理温度を高くし、あるいは同じ処理温度でも処理時間を長くすることで、被覆層の平均厚みが厚く形成される傾向がある。このため、主成分粒子の組成や副成分添加物の種類などにより、熱処理温度及び時間を適宜調整する必要がある。
その他の熱処理条件は、次に示す条件で行う。昇温速度は、好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間である。処理雰囲気は、通常、空気(大気)中である。
【0073】
(1−4)次に、熱処理後の粉末をアルミナロールなどで解砕し、必要に応じてボールミルなどで純水などの分散媒とともに混合し、これを脱水・乾燥して、本実施形態のセラミック原料粉末が得られる。
【0074】
乾燥条件は、次に示す条件で行うことが好ましい。乾燥温度は、好ましくは80〜120℃である。乾燥時間は、好ましくは5〜20時間である。
【0075】
被覆層の平均厚みや被覆状態の確認は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査型透過電子顕微鏡(STEM)を使用した分析により確認することができる。被透過型電子顕微鏡を用いた高分解能電子顕微鏡法や、電子エネルギー損失分光法(electron energy loss spectroscopy:EELS)や、エネルギー分散型X線分光法(energy−dispersive x−ray spectroscopy:EDS)を用いることにより、被覆領域を確認することができ、被覆膜厚を測定することができる。
【0076】
TEMやSTEMでの観察には、たとえば特開2003−294594号公報に記載された方法で作製した観察用試料を用いることができる。具体的には、上述したセラミック原料粉末と樹脂を混合して混合体を得た後、この混合体に圧力を付与して膜厚が20μm以下の領域が存在する観察用試料を作製することができる。
【0077】
セラミック原料粉末と混合される樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が用いられる。中でも熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。熱硬化性樹脂は、100℃程度に加熱することにより粘度が低下するため、硬化が始まるまでの間に粉体と樹脂とを容易に混合することができ、しかも気泡が残りにくいため、樹脂に対するセラミック原料粉末の比率を高くすることができるからである。熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂,フェノール系樹脂,メラミン系樹脂等が挙げられるが、短時間で硬化し、電子線に対して比較的強いという特徴をもつエポキシ系樹脂が特に好ましい。また、光硬化性樹脂は、一般にモノマー、オリゴマー、光重合開始剤、各種添加剤(安定剤、フィラー、顔料など)から構成される組成物で構成される。
【0078】
本実施形態では、樹脂に対するセラミック原料粉末の比率(体積比)を2以上とすることが好ましい。こうすることで、試料中のセラミック原料粉末密度を大幅に高めることができ、TEMでの観察でも、観察面積あたりの粉末の粒子数を増大させることが可能となる。よって、粉末の粒子の情報を十分に得ることが可能となる。樹脂に対するセラミック原料粉末の比率(体積比)は、樹脂の種類、セラミック原料粉末のサイズ等により変動するが、好ましくは2〜8、より好ましくは3〜8、さらに好ましくは5〜8とする。試料中の粉末密度を高めるためには、樹脂に対する粉末の比率(体積比)をできるだけ高めることが好ましいため、樹脂に対する粉体の比率(体積比)を好ましくは2以上とする。一方、樹脂に対する粉末の比率(体積比)が大きすぎると、粉末を固定する包埋剤として機能する樹脂量が少なくなるため、試料を作成することが困難となる傾向がある。
【0079】
観察用試料をTEM観察に供する場合には、上述した混合体の形成、圧力付与後に、さらに、試料切り出しとイオン研磨を施す。
【0080】
試料の切り出しでは、圧力付与後に得られた試料を、TEM試料用サイズに切り出す。この切り出しの作業は、例えばナイフを用いて行うことができる。TEM試料としては通常、その径が3mmφのものが用いられる。よって、直接3mmφに切り出してTEM試料としてもよく、もしくは例えば2mm×2mm程度の矩形状の試料を、その外径が3mmφの単孔メッシュ(いわゆるTEM用メッシュ)の単孔部分に樹脂などで接着してTEM試料としてもよい。
【0081】
イオン研磨は、公知のミリング装置を用いて行うことができる。イオン研磨加工に要する時間は、切り出した試料の大きさによっても異なるが、通常は1〜2時間程度である。なお、イオン研磨には、通常、Arイオン等を用いることができる。このイオン研磨工程を経ることにより、試料の厚さは100nm以下となり、TEM観察用試料として用いることが可能となる。
【0082】
有機ビヒクルは、バインダおよび溶剤を含有するものである。バインダとしては、例えばエチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂などの通常の各種バインダを用いることができる。溶剤も、特に限定されるものではなく、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、キシレン、エタノールなどの有機溶剤が用いられる。
【0083】
誘電体層用ペーストは、セラミック原料粉末と、水中に水溶性バインダを溶解させたビヒクルを混練して、形成することもできる。水溶性バインダは、特に限定されるものではなく、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、水溶性アクリル樹脂、エマルジョンなどが用いられる。
【0084】
内部電極層用ペーストは、上述した各種導電性金属や合金からなる導電材料あるいは焼成後に上述した導電材料となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上述した有機ビヒクルとを混練して調製される。
【0085】
外部電極用ペーストも、この内部電極層用ペーストと同様にして調製される。
【0086】
各ペーストの有機ビヒクルの含有量は、特に限定されず、通常の含有量、たとえば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されても良い。
【0087】
(2)次に、セラミック原料粉末を含有する誘電体層用ペーストと、内部電極層用ペーストとを用いて、焼成前誘電体層と焼成前内部電極層とが積層されたグリーンチップを作製し、脱バインダ工程、焼成工程、必要に応じて行われるアニール工程を経て形成された、焼結体で構成されるコンデンサ素子本体10に、外部電極4を形成して、積層セラミックコンデンサ1が製造される。
【0088】
中でも、本実施形態では、脱バインダ後のグリーンチップの焼成を、次の条件で行うことが好ましい。昇温速度が、好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間である。
【0089】
焼成保持温度が、好ましくは1200〜1350℃、より好ましくは1200〜1320℃であり、該保持温度の保持時間は、好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは1〜3時間である。焼成保持温度が低すぎると、該保持温度の保持時間を長くしても緻密化が不十分となり、高すぎると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層を構成する導電材の拡散による容量温度特性の悪化、誘電体層を構成する誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。特に本実施形態では、特定の焼成保持温度及び保持時間で焼成することにより、上述した本発明の目的をより一層簡易に達成することができる点で有効である。
【0090】
降温速度は、好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間である。
【0091】
本実施形態では、焼成を還元雰囲気で行う。還元雰囲気における雰囲気ガスとしては、たとえばNとHとの混合ガスを加湿して用いることが好ましい。
【0092】
焼成雰囲気中の酸素分圧は、好ましくは6×10−8〜10−4Paである。酸素分圧が低すぎると内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがあり、高すぎると内部電極層が酸化する傾向にある。
【0093】
本実施形態で得られる積層セラミックコンデンサ1は、本発明のセラミック原料粉末を用いて製造されているので、信頼性の悪化や、電気容量の低下も小さく、高容量かつ高信頼性を有する。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0095】
本実施形態で用いるセラミック原料粉末は、上述した製造方法以外に、セラミック誘電体の基本組成物粉体に、添加すべき金属元素の炭酸塩もしくは酸化物またはそれらの混合物を添加し、混合粉砕した後、仮焼する乾式方法を用いて製造したものでもよい。この方法では、セラミック基本組成物粉体に対して添加金属元素の炭酸塩または酸化物を混合工程のみでミクロ的に均一に分散させることは不可能である。しかし、その後の仮焼き工程にて、副成分添加物のチタン酸バリウム粒子表面への拡散が生じる。チタン酸バリウム粒子同士のネッキングが起こる温度以下で、仮焼き温度がより高く、仮焼き温度がより長くなるほど副成分添加物を含有する被覆層は厚く成長させることが出来る。よって、仮焼き温度、仮焼き時間、および副成分添加物量を、適宜コントロールすることにより被覆層厚みを制御することが可能である。
【実施例】
【0096】
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0097】
セラミック原料粉末の製造
まず、主成分粒子としての、平均粒径が約0.2〜0.4μmのBaTiOと、副成分添加物としての、MgO、MnCO、V、Y、BaCO、CaCO及びSiOとを、準備した。
【0098】
次に、各副成分添加物を、元素換算でのトータル100原子%に対して、Mg:10原子%、Mn:2原子%、V:1原子%、Y:35原子%、Ba:16原子%、Ca:11原子%及びSi:25原子%となるように、下記の組成の副成分溶液により、主成分粒子としてのBaTiOに対して加えた。この副成分添加物の添加量は、主成分粒子100重量部に対して2.2重量部である。
【0099】
本実施例では、副成分添加物を溶液状とする溶媒として、メタノールを用いた。なお、下記のBaは副成分として加えるバリウム成分である。
【0100】
各副成分添加物の下に付記するモル/Lは、各添加物の濃度であり、添加量は主成分粒子としてのBaTiO/100gに対して添加する液量である。
【0101】
Ba(C:ビス(2,4−ペンタンジオナト)、バリウム濃度:0.65モル/L、添加量:850ml。
Ca(C:ビス(2,4−ペンタンジオナト)、カルシウム濃度:0.70モル/L、添加量:320ml。
Si(OC:テトラエトキシシラン、濃度:0.75モル/L、添加量:440ml。
(C・9HO:蓚酸イットリウム、濃度:0.50モル/L、添加量:1250ml。
Mg(C)・2HO:蓚酸マグネシウム、濃度:0.71モル/L、添加量:1580ml。
Cr(C)・6HO:蓚酸クロム、濃度:0.20モル/L、添加量:565ml。
VO(C:ビス(2,4−ペンタンジオナト)、酸化バナジウム濃度:0.10モル/L、添加量:323ml。
【0102】
次に、得られた副成分溶液を下記の順序で主成分粒子に加え、混合、熱処理を繰り返した。
【0103】
第1に、主成分粒子100gに対し、Ba(CとCa(Cとを前記濃度と添加量で同時に加え、混合攪拌した。次にこの溶液中の溶媒を飛ばし、表1に示す処理温度及び処理時間で熱処理した。これにより主成分粒子の表面に副成分添加物であるBa、Caが主成分粒子に結合する酸化物として主成分を覆うように析出させた。
【0104】
第2に、前記Ba、Ca酸化物を表面に結合した主成分粒子としてのBaTiOに対して、前記Si(OCを前記濃度と添加量で加え、混合攪拌した。次にこの溶液中の溶媒を飛ばし、表1に示す処理温度及び処理時間で熱処理した。これにより主成分粒子の表面にさらに前記Siを、主成分粒子および前記副成分添加物に結合する酸化物として主成分を覆うように析出させた。
【0105】
第3に、前記Ba、Ca、Siを結合させた主成分粒子BaTiOに対して、さらに、Y(C・9HO、Mg(C)・2HO、Cr(C)・6HOを、前記濃度と添加量で同時に加え、混合攪拌した。次にこの溶液中の溶媒を飛ばし、表1に示す処理温度及び処理時間で熱処理した。これにより主成分粒子の表面に、さらに前記Y、Mg、Crを主成分粒子および前記副成分添加物に結合する酸化物として主成分を覆うように形成した。
【0106】
第4に、前記Ba、Ca、Si、Y、Mg、Crを表面に結合させた主成分粒子BaTiOに対して、さらに、VO(Cを前記濃度と添加量で同時に加え、混合攪拌した。次にこの溶液中の溶媒を飛ばし、表1に示す処理温度及び処理時間で熱処理した。これにより主成分粒子の表面に、さらに前記Vを主成分粒子および前記副成分添加物に結合する酸化物として主成分を覆うように形成した。
【0107】
さらにボールミルにて純水を分散媒として用いて湿式混合粉砕をした後、100℃で12時間、脱水乾燥を行い、セラミック原料粉末を得た。
【0108】
主成分粒子の平均半径、被覆層の平均厚み及び被覆状態
得られたセラミック原料粉末中の、主成分粒子の平均半径、被覆層の平均厚み及び被覆状態を確認するために、次の方法で観察用試料を作製した。まず、得られたセラミック原料粉末をエポキシ樹脂に、樹脂に対するセラミック原料粉末の比率(体積比)が7程度となるように、練り込むようにして混合し、混合体を得た。次に、得られた混合体に150℃の温度と適当な圧力を付与し、薄く伸ばし、これを固化させて厚み10μmとした。試料を切り出した後にイオン研磨を施し、厚み100nm以下の部位を有する観察用試料を作成した。
【0109】
作製された観察用試料を用い、セラミック原料粉末の、副成分添加物で構成される被覆領域を確認した。走査型透過電子顕微鏡(STEM)による明視野観察像を図3に示す。図3に示すように、主成分粒子としてのBaTiOの表面に、被覆層が所定厚みで存在していることが確認できる。
【0110】
主成分粒子としてのBaTiOの表面に存在している被覆層の平均厚みを、STEMに付属したEDS(energy−dispersive x−ray spectroscopy)装置を用いて求めた。具体的には、電子線を、BaTiO粒子の外側から内側に向けてライン状に走査し、この際に検出されたYの特性X線(K線)のカウント数をプロットしたグラフを図4に示す。そして図4に示すグラフから、主成分粒子としてのBaTiOの表面付近で、図4のラインプロファイルの半値幅(=ピーク高さの2分の1の高さにおけるピークの拡がり幅)を求め、その値を副成分添加物で構成される被覆層の平均厚みと判断した。このような測定を数十カ所行い、その平均値を被覆層の平均厚みとした。結果を表1に示す。図4に示す例では、半値は13カウント付近であり、その幅は5nmとなる。また、Yの特性X線(K線)を用いた試料2のセラミック原料粉末の元素マッピング像を示す写真を図5に示す。図5に示すように、主成分粒子としてのBaTiOの表面に、被覆層中のYが所定厚みで存在していることが確認できる。
【0111】
主成分粒子の平均半径rは、透過型電子顕微鏡(TEM)観察によりおこなった。試料はエタノール中に分散させたものを銅製の枠にコロジオン膜を張ったマイクログリッド上に滴下し、乾燥したものを用いた。結果を表1に示す。
【0112】
誘電体層用ペーストの作製
得られたセラミック原料粉末100重量部に対して、バインダーとしてのPVB(ポリビニルブチラール)樹脂10重量部と、可塑剤としてのDOP(フタル酸ジオクチル)5重量部と、溶媒としてのエタノール150重量部とをそれぞれ秤量し、ボールミルで混練し、スラリー化して誘電体層用ペーストを得た。
【0113】
内部電極層用ペーストの作製
平均粒径0.3μmのNi粒子100重量部に対して、有機ビヒクル(エチルセルロース樹脂8重量部をブチルカルビトール92重量部に溶解したもの)40重量部及びブチルカルビトール10重量部とを3本ロールにより混練し、スラリー化して内部電極層用ペーストを得た。
【0114】
外部電極層用ペーストの作製
平均粒径0.5μmのCu粒子100重量部に対して、有機ビヒクル(エチルセルロース樹脂8重量部をブチルカルビトール92重量部に溶解したもの)35重量部及びブチルカルビトール7重量部とを混練し、スラリー化して外部電極層用ペーストを得た。
【0115】
積層セラミックチップコンデンサ試料の作製
得られた誘電体層用ペースト及び内部電極層用ペーストを用い、以下のようにして、図1に示す積層セラミックチップコンデンサ1を製造した。
【0116】
まず、PETフィルム上に誘電体層用ペーストをドクターブレード法によって、所定厚みで塗布し、乾燥することで、厚さ10μmのセラミックグリーンシートを形成した。本実施例では、このセラミックグリーンシートを第1グリーンシート(焼成前層間誘電体層)とし、これを複数枚、準備した。
【0117】
得られた第1グリーンシートの上に、内部電極層用ペーストをスクリーン印刷法によって所定パターンで形成し、電極パターン(厚さ2.0μm)を持つセラミックグリーンシートを得た。本実施例では、このセラミックグリーンシートを第2グリーンシート(焼成前内部電極層+焼成前層間誘電体層)とし、これを複数枚、準備した。
【0118】
第1グリーンシートを厚さが800μmになるまで積層してグリーンシート群(焼成前外側誘電体層)を形成した。このグリーンシート群の上に、第2グリーンシートを5枚積層し、この上にさらに、前記同様のグリーンシート群を積層、形成し、温度80℃及び圧力1トン/cmの条件で加熱・加圧してグリーン積層体(焼成前素子本体)を得た。
【0119】
次に、得られた積層体を所定サイズに切断した後、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記の条件にて行い、焼結体を得た。
【0120】
脱バインダは、昇温速度:30℃/時間、保持温度:250℃、保持時間:8時間、降温速度:200℃/時間、処理雰囲気:空気雰囲気、の条件で行った。
【0121】
焼成は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1300℃、保持時間:2時間、降温速度:200℃/時間、処理雰囲気:還元雰囲気(酸素分圧:10−6PaにNとHとの混合ガスを水蒸気に通して調整した)、の条件で行った。
【0122】
アニールは、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1050℃、保持時間:2時間、降温速度:200℃/時間、処理雰囲気:中性雰囲気(酸素分圧:0.1PaにNガスを水蒸気に通して調整した)、の条件で行った。
偏析相の面積比率
まず、比較例1に相当する試料5と、実施例1に相当する試料7−1と、実施例2に相当する試料6とについて、得られた焼結体(誘電体磁器組成物)を、誘電体層及び内部電極層の積層方向に沿って平行な面で切断し、その切断面を機械研磨した。さらに裏面を機械研磨し、20μm以下の厚みの領域を作製した。その後、イオンミリングを施し、100nm以下の厚みに一部を薄化させたものをSTEM観察用試料とした。次に、この薄化部について、STEMに付属のEDSを用いて、Y元素、Ti元素、Ba元素の元素マッピング測定を行い、その結果から、偏析相の面積比率を測定した。各元素の存在比は、STEMを用い、照射プローブ径5nmφ以下の電子線を測定部位に照射し、試料から発生したX線のエネルギー分析をEDSを用いて行い、測定されたX線の強度分布から計算することにより算出した。元素マッピング測定は、観察視野を、1μm×1μm(一辺が主相の平均粒子径の5倍程度)とした。その結果、偏析相の面積比率は、比較例1に相当する試料5では9%、実施例1に相当する試料7−1では6%、実施例2に相当する試料6では2%、であった。
参考までに、STEMを用いた試料6の焼結体の明視野観察像を示す写真を図6に示す。また、同じ試料6についての元素マッピング測定の結果、得られた写真を図7〜10に示す。図7では明るい色の箇所ほどBa元素の存在量が多いことを意味する。図8では明るい色の箇所ほどTi元素の存在量が多いことを意味する。図9では明るい色の箇所ほどSi元素の存在量が多いことを意味する。図10では明るい色の箇所ほどY元素の存在量が多いことを意味する。
ここで図10を見てみると、主相を構成するコア部及びシェル部と、偏析相が確認できる。各領域での各元素の存在比は、酸化物換算で、次の通りであった。コア部は、BaO:69重量%、TiO:31重量%、SiO:0重量%、Y:0重量%であった。シェル部は、BaO:67重量%、TiO:30重量%、SiO:0重量%、Y:3重量%であった。偏析相は、BaO:27重量%、TiO:4重量%、SiO:17重量%、Y:52重量%であった。
つまり偏析相は、主として主成分から構成される主相(BaTiOである。コア部とシェル部が該当する)と組成及び結晶構造が大きく異なり、副成分(SiOやY)を酸化物換算で10重量%以上(17重量%、52重量%)含む領域であることが理解される。なお、主相と偏析相の結晶構造の違いは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた電子線回折法により判断した。
一方、シェル部には、Y元素がY換算で10重量%未満(具体的には3重量%)しか存在しないことが理解できる。
なお、主相粒子の三重点などに形成される、添加物元素比率が10%以上観察される微細な領域についても、偏析相としてカウントした。
【0123】
次に、得られた焼結体の端面をサンドブラストにて研磨したのち、外部電極用ペーストを端面に転写し、加湿したN+H雰囲気中において、800℃にて10分間焼成して外部電極を形成し、図1に示す構成の積層セラミックコンデンサ試料を得た。
【0124】
得られた各試料のサイズは、縦3.2mm×横1.6mm×高さ1.2mmであり、内部電極層に挟まれた層間誘電体層の数は4、その厚さは6.5μmであり、内部電極層の厚さは1.5μmであった。
【0125】
コンデンサ試料の特性評価
得られたコンデンサ試料の比誘電率(ε)、静電容量の温度特性(TC)及び直流電界下での絶縁抵抗(IR)寿命を評価した。
【0126】
比誘電率εについては、コンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1.0Vrmsの条件下で測定された静電容量から算出した(単位なし)。評価基準は、1800以上を良好とした。
【0127】
静電容量の温度特性TCについては、EIAJ規格のX7R特性とJIS規格のB特性について評価した。まず、X7R特性については、コンデンサ試料に対し、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz、入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの条件下で、静電容量を測定し、基準温度を25℃としたとき、−55〜125℃の温度範囲内で、温度に対する静電容量変化率(ΔC/C)がEIAJ規格のX7R特性を満足する(±15%以内)かどうかを調べ、満足する場合を○、満足しない場合を×とした。次に、B特性については、コンデンサ試料に対し、同様の条件下で、静電容量を測定し、基準温度を20℃としたとき、−25〜85℃の温度範囲内で、温度に対する静電容量変化率(ΔC/C)がJIS規格のB特性を満足する(±10%以内)かどうかを調べ、満足する場合を○、満足しない場合を×とした。
【0128】
直流電界下での絶縁抵抗IR寿命については、コンデンサ試料に対し、220℃にて10V/μmの電界下で加速試験を行い、絶縁抵抗(IR)が2×10Ω以下になるまでの時間(単位は時間)を算出した。IR寿命は、5時間以上、好ましくは10時間以上を良好とした。
【0129】
結果を表1に示す。
【0130】
【表1】

【0131】
表1に示すように、被覆層の平均厚み△rが本発明の下限を外れた試料1,5では、比誘電率は十分であるものの、IR加速寿命が極端に短くなり、しかも温度特性も悪化することが確認できた。
被覆層の平均厚み△rが本発明の上限を外れた試料4,8では、IR加速寿命は試料1,5ほど極端に短くはないが未だ十分ではない。試料4については、比誘電率及び温度特性が悪化している。試料8については比誘電率は十分であるが、温度特性が悪化している。
これに対し、被覆層の平均厚み△rが本発明の範囲内である各試料では、比誘電率、温度特性及びIR加速寿命のバランスが優れていることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図である。
【図2】図2は図1の積層セラミックコンデンサを製造するために用いるセラミック原料粉末を模式的に示した断面図である。
【図3】図3は走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いた本発明の実施例に相当する試料2のセラミック原料粉末の明視野観察像を示す写真である。
【図4】図4は本発明の実施例に相当する試料2のセラミック原料粉末について、BaTiO粒子の外側から内側に向けて電子線をライン状に走査した際に検出されたYの特性X線(K線)のカウント数をプロットしたグラフである。
【図5】図5はYの特性X線(K線)を用いた本発明の実施例に相当する試料2のセラミック原料粉末の元素マッピング像を示す写真である。
【図6】図6はSTEMを用いた実施例2に相当する試料6の焼結体の明視野観察像を示す写真である。
【図7】図7はBaの特性X線(K線)を用いた実施例2に相当する試料6の焼結体の元素マッピング像を示す写真である。
【図8】図8はTiの特性X線(K線)を用いた実施例2に相当する試料6の焼結体の元素マッピング像を示す写真である。
【図9】図9はSiの特性X線(K線)を用いた実施例2に相当する試料6の焼結体の元素マッピング像を示す写真である。
【図10】図10はYの特性X線(K線)を用いた実施例2に相当する試料6の焼結体の元素マッピング像を示す写真である。
【符号の説明】
【0133】
1… 積層セラミックコンデンサ
10… コンデンサ素子本体
2… 層間誘電体層
20… 外側誘電体層
200… セラミック原料粉末
201… 主成分粒子
202… 被覆層
3… 内部電極層
4… 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸バリウムで構成される主成分粒子の表面に副成分添加物で構成される被覆層を有するセラミック原料粉体であって、
前記主成分粒子の平均半径をrとし、前記被覆層の平均厚みを△rとしたときに、前記△rを、0.015r以上0.055r以下の範囲内に制御することを特徴とするセラミック原料粉体。
【請求項2】
主成分粒子の表面に副成分添加物で構成される被覆層を有するセラミック原料粉体であって、
前記主成分粒子の平均半径をrとし、前記被覆層の平均厚みを△rとしたときに、前記△rを、r(α−β)以上r(α+β)以下(ただし、αとβの値は主成分粒子の組成や被覆層を構成する副成分添加物の種類などにより決定される定数を示す)の範囲内に制御することを特徴とするセラミック原料粉体。
【請求項3】
前記主成分粒子が、ペロブスカイト型結晶構造を持つ酸化物で構成されている請求項2に記載のセラミック原料粉体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のセラミック原料粉体を用いて製造される誘電体磁器組成物であって、
主として主成分から構成される主相と、
該主相と組成及び結晶構造が異なり、副成分を酸化物換算で10重量%以上含む領域である偏析相とを、有し、
前記誘電体磁器組成物の断面を観察した際の、前記偏析相の面積比率が、観察視野面積の8%以下である誘電体磁器組成物。
【請求項5】
誘電体層を有する電子部品であって、
前記誘電体層が、請求項4に記載の誘電体磁器組成物で構成されている、電子部品。
【請求項6】
内部電極層と誘電体層とが交互に複数積層された素子本体を有する積層セラミックコンデンサであって、
前記誘電体層が、請求項4に記載の誘電体磁器組成物で構成されている、積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
チタン酸バリウムで構成される主成分粒子の表面に副成分添加物で構成される被覆層を有するセラミック原料粉体を製造する方法であって、
粉末状の主成分粒子と、溶液状の副成分添加物との混合溶液を準備する工程と、 前記混合溶液を熱処理する工程を有し、
前記熱処理の処理温度と処理時間を変化させ、前記被覆層の平均厚み△rを、前記主成分粒子の平均半径rに対して、0.015r以上0.055r以下の範囲内に制御することを特徴とするセラミック原料粉体の製造方法。
【請求項8】
主成分粒子の表面に副成分添加物で構成される被覆層を有するセラミック原料粉体を製造する方法であって、
粉末状の主成分粒子と、溶液状の副成分添加物との混合溶液を準備する工程と、 前記混合溶液を熱処理する工程を有し、
前記熱処理の処理温度と処理時間を変化させ、前記被覆層の平均厚み△rを、前記主成分粒子の平均半径rに対して、r(α−β)以上r(α+β)以下(ただし、αとβの値は主成分粒子の組成や被覆層を構成する副成分添加物の種類などにより決定される定数を示す)の範囲内に制御することを特徴とするセラミック原料粉体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−8498(P2006−8498A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133109(P2005−133109)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】