説明

セラミック接合体及びセラミックヒータ

【課題】 高温、低温の繰返しの激しい厳しい使用条件下でも電極パッドと接続端子との密着性およびセラミック基体と電極パッドとの密着性を向上させることができるセラミック接合体及びセラミックヒータの提供。
【解決手段】 表面に基体105中の発熱抵抗体141と導通する電極用の電極パッド121を備えたセラミックヒータ100において、電極パッド121が基体105と接する第1層122と、ろう材部124と接する第2層123とを有する多孔質層からなり、第1層122はセラミック成分を20〜50vol%含有し、第2層123は接合部の成分が含浸されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック接合体及びセラミックヒータに関し、詳しくは、セラミック接合体の電極パッドに対するセラミック基体または接続端子との密着性を向上させたセラミックヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、セラミックヒータとしてアルミナ等のセラミック基体中に、タングステンやモリブデン等の高融点金属からなる発熱抵抗体を埋設したものが広く用いられている。例えば、ガスセンサのセンサ素子に内挿されるセラミックヒータは、発熱抵抗体が形成されたセラミックのグリーンシートをセラミック製の碍管に巻き付け、一体に焼成することによって形成される。さらに、セラミックヒータの外周面には、発熱抵抗体と電気的に接続された電極パッドが設けられており、この電極パッドには発熱抵抗体に外部から電圧を印加するための接続端子がろう付けにより接合されている。この電極パッドは、発熱抵抗体と同様に、タングステンやモリブデン等の高融点金属を用いている。
【0003】
しかし、セラミック基体と電極パッドとでは、異種材料であるが故に密着性が問題になることがある。特にセラミックヒータでは、高温での繰返し使用や機械的負荷のかかる使用方法が多く、電極パッドがセラミック基体から剥離してしまう虞があった。
【0004】
そこで、焼成時に未焼成セラミック基体中のガラス成分を、未焼成電極パッド中へ侵入させて、このガラス成分の接着力によりセラミック基体と電極パッドの接合強度を向上させる方法が報告されている(特許文献1、特許文献2参照)。なお、未焼成セラミック基体とは、焼成後にセラミック基体となり、未焼成電極パッドとは、焼成後に電極パッドとなる。また、未焼成セラミック基体と未焼成電極パッドとの間に未焼成セラミック基体のセラミック原料粉末と未焼成電極パッドの金属粉末を含む接合材を塗布し、これを焼成してセラミック基体と電極パッドの接合強度を上げる方法の報告がある(特許文献3参照)。
【0005】
他方、接続端子と電極パッドとの接合についても、高温での繰返し使用や機械的負荷のかかる使用方法が多く接続端子が電極パッドから剥離してしまう虞があった。そこで、電極パッドと接続端子との接着性を向上させる方法として、電極パッドと接合部材との両者との接着力が高いろう材の組成を選定したものがある(特許文献4参照)。
【0006】
【特許文献1】特開昭49−076711号公報
【特許文献2】特開昭57−082188号公報
【特許文献3】特開昭58−120579号公報
【特許文献4】特開平11−292649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特に、最近のようにセラミックヒータの使用温度がさらに高くなり、冷熱頻度が高い使用方法では、セラミック基体と電極パッド、及び電極パッドと接続端子との接合について、従来の技術では十分な接合強度ではなくなり、その結果満足される寿命が得られなくなってきた。
そこで本発明においては、高温、低温の繰返しの激しい厳しい使用条件下でも電極パッドと接続端子との密着性およびセラミック基体と電極パッドとの密着性を向上させることができるセラミック接合体及びセラミックヒータの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のセラミック接合体は、セラミック基体と、該セラミック基体の表面に設けられた電極パッドと、外部と電気的に導通する接続端子と、該電極パッドと接続端子とを連結する接合部とを備えるセラミック接合体において、前記電極パッドは前記セラミック基体と接する第1層と、前記接合部と接する第2層とを有する多孔質層からなり、前記第1層はセラミック成分を20〜50vol%含有し、前記第2層には、該接合部の成分が含浸されていることを特徴とする。
【0009】
本発明において、セラミック基体と接する第1層は、セラミック成分の含有量が20〜50vol%である。これによりセラミック基体と電極パッド(第1層)の密着性が向上し、セラミック基体から電極パッドが剥離するのを抑制できる。なお、セラミック含有量が20vol%未満であれば、上記効果を得ることが難しい。一方、セラミック含有量が50vol%を超えると、電極パッド中のセラミック含有量が多いため、電極パッドの電気導通性が低下する。なお、本発明のセラミック成分とは、アルミナ、マグネシア、シリカ、ムライト等を指す。
【0010】
他方、接合部と接する第2層には、接合部の成分が含浸されているので、接合部と電極パッド(第2層)の密着性が向上し、接続端子が電極パッドから剥離するのを抑制できる。
【0011】
さらに、本発明のセラミック接合体は、第2層の開孔率が10%vol以上50vol%以下であることが好ましい。第2層の開孔率を10%以上50%以下とすることで接合部の成分を十分に含侵させることができる。開孔率が10%未満では、含浸される接合部の成分の量が少なくなるので、上記効果を得ることが難しいことがある。一方、開孔率が50vol%を超えると、第2層中に接合部の成分が含浸しすぎて、電極パッドの内部応力が増大し、第2層と第1層との密着性が低下することがある。なお、『開孔率』とは、第2層全体積中に対する第2層中に接合部の成分が含浸することができる領域の割合である。このうち、第2層の全体積は、第2層の稜部に仮想線を引いたときの領域の体積であり、第1層の体積等も同様の体積である。また、第2層中に接合部の成分が含浸することができる領域とは、充填部及び第2層中の空孔部(本来は接合部の成分が含浸されうるものの、含浸量等により含浸されなかった部位)のことを指す。なお、充填部は、接合部の成分が含浸することができる領域の90%以上(空孔部が10%未満)となることがこのましい。
【0012】
さらに本発明のセラミック接合体は、第1層の開孔率が3vol%以下であることが好ましい。第1層の開孔率を3vol%以下とすることにより、第1層中へ含浸される接合部の成分の量を低減できる。
【0013】
さらに本発明のセラミック接合体は、第1層中には接合部の成分が実質的に含侵していないことが好ましい。これにより、セラミック基体と第1層との密着性が十分に確保することができ、セラミック基体から電極パッドが剥離するのを防止できる。なお、『実質的に』とは、第1層が不可避に接合部の成分を含有しないことを意味する。
【0014】
さらに本発明のセラミック接合体は、電極パッドが、接合部に近づくにつれて開孔率(vol%)が高くなることが好ましい。例えば、電極パッドが、第1層および第2層の2つの多孔質層で構成されている場合、第2層の開孔率が第1層の開孔率よりも大きいことを意味する。さらに、電極パッドが第1層、中間層、第2層の順で、3つの多孔質層で構成されている場合、中間層の開孔率が第1層と第2層との間の開孔率となることを指す。中間層の開孔率が、第1層の開孔率よりも小さくなる場合、第1層との密着力は得ることができるが、中間層に接合部の成分が含浸しにくいので、第2層と中間層との間の密着力が低下することがある。他方、中間層の開孔率が、第2層の開孔率よりも大きくなる場合、中間層に接合部の成分が含浸しやすいので、第2層と中間層とのより高い密着力を得ることができるが、第1層と第2層との密着力は低下することがある。よって、接合部に近づくにつれて開孔率が高くなることで、2層以上の多層構造であっても、セラミック基体と電極パッドとの密着力をより確保しつつ、接合部と電極パッドとのより高い密着力を得ることができる。
【0015】
さらに本発明のセラミック接合体は、第2層のセラミック成分の含有量が10vol%以下であることが好ましい。第2層にセラミック成分の含有量が少ないことで、接合部との熱膨張差が小さくなり、接合部と電極パッドとの密着力をさらに得ることができる。
【0016】
なお、本発明において、第1層に含有されるセラミック成分と、第2層に含有されるセラミック成分は、適宜選択できるが、いずれもセラミック基体のセラミック成分と同一材料であることが密着性の点から最も良い。
【0017】
そして電極パッドは、セラミック基体に近づくにつれてセラミック成分の含有量(vol%)が多くすることが好ましい。例えば、電極パッドが、第1層および第2層の2つの多孔質層で構成されている場合には、第1層に含まれるセラミック成分の含有量が第2層に含まれるセラミック成分の含有量よりも多いことを意味する。さらに、電極パッドが、第1層、中間層、第2層の順で、3つの多孔質層で構成されている場合、中間層のセラミック成分の含有量が第1層と第2層との間のセラミック成分の含有量となることを指す。中間層が、第1層と同等のセラミック成分の含有量である場合、第1層との密着力は得ることができるが、中間層に接合部の成分が含浸しにくいので、第2層と中間層との密着力が低下することがある。他方、中間層が、第2層と同等のセラミック成分の含有量である場合、中間層に接合部の成分が含浸しやすいので、接合部と電極パッドとのより高い密着力を得ることができるが、第1層と第2層との密着力は低下することがある。よって、セラミック基体に近づくにつれてセラミック成分の含有量が多くすることでセラミック基体と電極パッドとの密着力を確保しつつ、接合部と電極パッドとのより高い密着力を得ることができる。
【0018】
さらに、セラミック接合体は、セラミック基体中に埋設された内部配線と、該内部配線と電極パッドを接続するビア導体と、を有し、内部配線及びビア導体には、セラミック成分が含有されており、内部配線及びビア導体の該セラミック成分の含有量は、第1層のセラミック成分の含有量以下であることが好ましい。セラミック接合体には、発熱体や電極等の内部配線が配置され、且つこの内部配線と電極パッドを電気的に接続するビア導体が形成される。このとき、内部配線やビア導体についてもセラミック基体との密着性の向上のために、セラミック成分を含有させることがあるが、このセラミック成分は、第1層のセラミック成分の含有量以下にすることで、内部配線の機能の維持、及び内部配線及びビア導体の電気導通性を維持している。なお、内部配線及びビア導体の該セラミック成分の含有量は、第1層のセラミック成分の含有量以下であればよく、含有量が互いに同じである必要はない。
【0019】
また、本発明のセラミック接合体をセラミックヒータに用いることで、高温、低温の繰返しの激しい厳しい使用条件下で使用されるセラミックヒータの電極パッドと接続端子との密着性およびセラミック基体と電極パッドとの密着性を十分に維持させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を具体化したセラミックヒータの実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、図1〜図3を参照して、セラミックヒータ100の構造について説明する。図1は、セラミックヒータ100の斜視図である。図2は、セラミックヒータ100の基体105の分解斜視図である。図3は、セラミックヒータ100の電極部120付近の拡大断面図である。なお、本実施の形態において、セラミックヒータ100の加熱部110側を先端側とし、電極部120側を後端側として説明する。
【0021】
図1に示すように、セラミックヒータ100は、図示しない有底筒状をなす固体電解質管の内外面それぞれに電極層が形成されたセンサ素子に内挿され、センサ素子を加熱するためのものであり、その基体105は丸棒状をなしている。セラミックヒータ100は発熱抵抗体141を埋設し、後端側の電極部120より電圧が印加され、先端側の加熱部110にて発熱を行うものである。なお、基体105が、特許請求の範囲の「セラミック基体」に相当する。
【0022】
図2に示すように、セラミックヒータ100は、丸棒状のアルミナセラミック製碍管101の外周に絶縁性の高いアルミナセラミック製のグリーンシート140、146が巻き付けられ、これが焼成されることによって基体105が製造される。グリーンシート140上には、ヒートパターンとしてのタングステン系の発熱抵抗体141が形成されている。発熱抵抗体141は、加熱部110(図1参照)に相当する位置に形成される発熱部142、および発熱部142の両端のそれぞれに接続される一対のリード部143により構成される。また、リード部143の後端側にはそれぞれスルーホール144が穿設され、このスルーホール144を介し、セラミックヒータ100の外表面上に形成される2つの電極パッド121と、両リード部143との電気的な接続が行われる。このうち、発熱抵抗体141及びスルーホール144には、基体105との密着性を向上させるために、基体105(グリーンシート144、146)と同一材料のアルミナが含有されており、その含有量が35vol%である。なお、発熱抵抗体141が特許請求の範囲の「内部配線」に相当し、スルーホール144が特許請求の範囲の「ビア導体」に相当する。
【0023】
また、グリーンシート146は、グリーンシート140の発熱抵抗体141が形成される側の面に圧着されるシートである。その圧着面とは反対側の表面にアルミナペーストが塗布され、この塗布面を内側にしてグリーンシート140、146が碍管101に巻き付けられて外周が押圧されることにより、セラミックヒータ成形体が形成される。その後、セラミックヒータ成形体が焼成されることにより、セラミックヒータ100の基体105として形成される。
【0024】
次に、図1に示すように、セラミックヒータ100の基体105の電極部120には、陽極側および陰極側となる2つ(図2参照)の電極パッド121が形成されている。この電極パッド121は、上記した4つのスルーホール144(図2参照)に対応するグリーンシート140の外面の位置に2ヶ所、それぞれ設けられている。発熱抵抗体141のリード部143との導通は、各スルーホール144内壁に導電性ペ一ストが印刷されることにより行われる。
【0025】
この電極パッド121は、図3に示すように、基体105に接合する第1層122と第1層122上に形成される第2層123との2つの多孔質層から形成されている。この第1層122や第2層123は、タングステンやモリブデン等を主成分としている。さらに第1層122には、基体105と同一材料のアルミナが含有されており、その含有量が45vol%である。このように第1層122のセラミック成分の含有量を20〜50vol%とすることで、基体105と電極パッド121(具体的には、第1層122)との密着性が向上し、基体105から電極パッド121が剥離するのを抑制できる。
【0026】
なお、発熱抵抗体141及びビア導体144に含有されるセラミック成分の含有量が、第1層122のセラミック成分の含有量より少ない。これにより、発熱抵抗体141の発熱性能、及び発熱抵抗体141及びスルーホール144の電気導通性を維持している。
【0027】
さらに、第1層122中には、後述するろう材部124の成分が実質的に含侵していない。このように、第1層122中にろう材部124の成分が実質的に含浸していないので、基体105と第1層122との密着性が十分に確保することができ、基体105から電極パッド121が剥離するのを防止できる。なお、本実施形態では、第1層122の開孔率が3vol%以下(本実施例では1vol%)となっている。
【0028】
他方、第2層123は、後述するろう材部124の成分が含浸している。このように、第2層にろう材部124の成分が含浸することで、ろう材部124と電極パッド121との密着性が向上し、後述する接続端子130が電極パッド121から剥離するのを抑制できる。なお、本実施形態では、第2層123の開孔率が40%となっている。このように、第2層123の開孔率が10%以上50%以下となることでろう材部124の成分を十分に含侵させることができる。
【0029】
さらに、第2層123においても基体105と同一材料のアルミナが含有されており、アルミナの含有量が6vol%である。このように、第2層123中のセラミック成分が10vol%以下であることで、ろう材部124の成分が含浸しやすくなり、ろう材部124と電極パッド121との密着力を得ることができる。このように、第2層123のセラミック成分の含有量は、発熱抵抗体141及びビア導体144に含有されるセラミック成分の含有量よりもさらに少なくなっている。
【0030】
さらに、電極パッド121には、セラミックヒータ100に外部から電圧を印加するための接続端子130の対向部131および接続部132が、銀系のろう材部124(図3参照)により接合されている。接続端子130は板棒状のニッケル系合金からなり、真っ直ぐ延びる胴部133の一端を厚み方向に段状に折り曲げて接続部132および対向部131が形成されている。すなわち、胴部133の一端側を折り曲げて接続部132を形成し、さらに段状となるように折り返すことによって対向部131が形成されている。なお、固化して接続端子130と電極パッド121との接合を行うろう材部124が、特許請求の範囲の「接合部」に相当する。
【0031】
胴部133の他端側には外部回路接続用のリード線が加締め固定される加締め部134が形成されている(図1参照)。加締め部134は、幅広に形成した胴部133の他端を、胴部133の長手方向に対して略直角にひねるようにねじ曲げ、両側の縁部分を一方の面側に折り返すことで、リード線を加締める部分が構成されている。なお、セラミック基体105、電極パッド121、ろう材部124、接続端子130により、本発明における「セラミック接合体」を形成している。
【0032】
次に、電極パッド121と接続端子130との接合について説明する。まず、電極パッド121(第2層123)上にNi等のメッキ層(図示せず)を形成する。このメッキ層は、ろう材部124が第2層123内に含浸することを促進することができる。そして、接続端子130の対向部131を電極パッド121上に配置し、対向部131を覆い、電極パッド121上に広がるように銀ろうを塗布する。そして、銀ろうが固化することでろう材部124が形成される。なお、本実施例では、メッキ層はろう材部124中に混ざって消失している。そして、ろう材部124の腐食等を防止するため、ろう材部124を覆うように、Ni等のメッキ層が形成される(図示せず)。このようにして、電極パッド121と接続端子130が接合される。
【0033】
次に、本発明の他の実施の形態について図4を参照して説明する。図4は、セラミックヒータ200の電極部220付近の拡大断面図である。なお、他の実施の形態のセラミックヒータ200は、本実施の形態とは電極パッド221の形状が異なるものであり、その他の部分については本実施の形態と同符号を用い、説明を一部省略する。
【0034】
図4に示すように、セラミックヒータ200の基体105の電極部220には、陽極側および陰極側となる2つの電極パッド221が形成されている。そして、電極パッド221には、セラミックヒータ200に外部から電圧を印加するための接続端子130の対向部131が、銀系のろう材部124により接合されている。
【0035】
この電極パッド221は、基体105に接合する第1層222と、第1層222上に形成される中間層224と、中間層上に形成される第2層223との3つの金属層から形成されている。この第1層222、第2層223や中間層224は、タングステンやモリブデン等を主成分としている。そして、さらに第1層222には、アルミナが45vol%含有されている。また、ろう材部124の成分が実質的に含浸していない。他方、第2層123もアルミナが5vol%含有されており、さらにろう材部124の成分が含浸している。
【0036】
そして、中間層224には、アルミナが25vol%含有されており、中間層224の開孔率が20%である。つまり、開孔率が第1層、中間層、第2層の順に、ろう材部124に近づくにつれて高くなっている。この結果、基体105と電極パッド221との密着力を確保しつつ、ろう材部124と電極パッド221とのより高い密着力を得ることができる。また、セラミック成分の含有量が第2層、中間層、第1層の順に基体105に近づくにつれてセラミック成分の含有量が多くなっている。この結果、基体105と電極パッド221との密着力を確保しつつ、ろう材部部124と電極パッド221とのより高い密着力を得ることができる。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
アルミナ93wt%、焼結助剤7wt%からなる原料粉末混合してスラリーとし、このスラリーからドクターブレード法により厚さ0.3mmの平板を作った。そして、長さ60mm、幅10mmの板状に打ち抜いてグリーンシート140を作成した。このグリーンシート140に電極パッド121との導通用のスルーホール144を4つ開けて、4つのスルーホール144を基点として片面にタングステンを主成分とする金属ペーストにより発熱抵抗体を印刷した。スルーホール144にも金属ペーストを充填し導電性を確保した。
【0038】
次に、グリーンシート140の反対面にも、サンプル毎に別途作っておいた金属ペーストで2層の電極パッド121をパターン印刷により形成した。電極パッド121はおよそ2.5mm×5mmである。そして、この発熱抵抗体、電極パッド等を形成したグリーンシート140の発熱抵抗体側にさらにグリーンシート140と同材料のグリーンシート146を積層し、別途作っておいたアルミナ製の長さ60mm、外周10mm、内径3mmの碍管101に巻きつける。これを焼成炉にて1500〜1550℃で焼成してそれぞれ焼成体を作った。この焼成体の電極パッド121の厚さはおよそ15〜20μmであった。
【0039】
そして、電極パッドについて、サンプル毎に第1層122のアルミナの含有量、第1層122の含浸度合い、及び第2層123の開孔率を測定した。なお、第1層122のアルミナの含有量はサンプル毎に焼成体を1つ取り出し、その試料の断面を鏡面研磨し、EPMAにて定量分析を行った。具体的には、所定のビーム径(厚み方向の幅相当)をメタライズ層の厚み方向に合わせ、4箇所の位置にて測定し、その平均値とした。また、第1層122の含浸度合いは、日本電子(株)製のFE−SEM(型番:JSM−6500F)のEDS分析装置(型番:EX−23000UB)を用い、測定条件を加速電圧:15kV、照射電流:2×10−10A、ワーキングディスタンス:10mmとして測定した。そして、含浸されているものを○、含浸されていないものを×としている。なお、含浸されていないものとは、上記方法にてろう材成分が検出できないものを指す。また、第2層123の開孔率は、上記SEMの用いて4箇所の位置を撮影した画像を画像解析により比率を求め、その平均値を値とする。これを表1に示す。次に、この焼成体の電極パッド121にNiメッキを施す。
【0040】
一方、0.3mmのニッケル板から長さ15mm、幅1mmで先端が略T字型に膨らんだ形状の小片を打ち抜きにより接続端子130を作成した。そして、焼成体の電極パッド121に接続端子130上に対向部131を配置し、銀ロウによりロウ付けして接合し、ろう付け部124を形成する。その後、ろう付け部124を覆うように、Niメッキを施して図1に示すようなセラミックヒータ100が出来上がる。
【0041】
そして、上記で作製されたセラミックヒータ100について密着性の評価を行った。具体的には、セラミックヒータ100に対し、400℃で5分間加熱後、室温にて5分間冷却を1サイクルとして500サイクル行う冷熱サイクルを行った。そして、冷熱サイクル後、サンプル1〜6の接続端子130をセラミックヒータ100の電極パッド121から引き剥がすことを行った。具体的には、セラミックヒータ100の基体105の軸と直交する方向となるように接続端子130の胴部133を折り曲げ、さらにその方向への接続端子130を3kgの力で引っ張った。そして、接続端子130がセラミックヒータ100から剥がれた状態及びその位置を確認した。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1によれば、サンプル1は、第1層122中のアルミナ含有量が10vol%と少なすぎて基体105と第1層122との境界で剥離した。また、サンプル4は、第2層123にろう材部124の成分が含浸しておらず、ろう材部124と第2層123との境界で剥離した。一方、サンプル2、3については、基体105から電極パッド121が剥離せず、クラックの発生もなかった。なお、サンプル5、6は剥離までは至らなかったものの、一部クラックが入っていた。
【0044】
次に、サンプル1〜7のセラミックヒータ100について電気導通性についての評価を行った。具体的には、セラミックヒータ100の陽極側および陰極側の接続端子130間の抵抗値を計測した。これについても、結果を表1に示す。
【0045】
表1によれば、サンプル1〜3、5〜7については、6Ωであったのに対して、サンプル4については、第1層122中のアルミナ含有量が多いため、6.3Ωと抵抗値が上昇した。
【0046】
なお、本発明を実施の形態に即して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限られず、各種変更が可能である。例えば、接続端子130はニッケル系合金により作製したが、これに限られず、銅、ニッケル、鉄などの金属、あるいはそれらの合金から作製してもよい。また、接続端子130を板材の曲げ加工により作製したが、金属部材の削り出しやプレス加工、鋳造などにより作製してもよい。その形状は板状に限られるものでもなく、少なくとも対向部131、接続部132及び胴部133の部分は丸棒状であってもよいし、多角柱状であってもよい。また、ろう材部124を形成するろう材として銅や金、ニッケルなどの金属、あるいはそれらの合金であってもよい。また、セラミックヒータ100の基体105の形状は丸棒状に限定されず、板状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の接続端子接合セラミックヒータはセンサー用のヒータや半導体製造用のヒータなど高温条件下で繰返し使用され、機械的強度が要求される環境下で精度良く温度制御する長寿命の信頼性の高いヒータとして利用範囲が広い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】セラミックヒータ100の斜視図である。
【図2】セラミックヒータ100の基体105の分解斜視図である。
【図3】本実施の形態のセラミックヒータ100の電極部120付近の拡大断面図である。
【図4】他の実施の形態のセラミックヒータ200の電極部220付近の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0049】
100:セラミックヒータ、105:基体、110:加熱部、120、220:電極部、121、221:電極パッド、122、222:第1層、123、223:第2層、224中間層、124:ろう材部、130:接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック基体と、該セラミック基体の表面に設けられた電極パッドと、外部と電気的に導通する接続端子と、該電極パッドと接続端子とを連結する接合部とを備えるセラミック接合体において、
前記電極パッドは前記セラミック基体と接する第1層と、前記接合部と接する第2層とを有する多孔質層からなり、
前記第1層はセラミック成分を20〜50vol%含有し、
前記第2層には、該接合部の成分が含浸されていることを特徴とするセラミック接合体。
【請求項2】
前記第2層は、開孔率が10vol%以上50vol%以下であることを特徴とする請求項1に記載のセラミック接合体。
【請求項3】
前記第1層は、開孔率が3vol%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミック接合体。
【請求項4】
前記第1層には、前記接合部の成分が実質的に含浸していないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のセラミック接合体。
【請求項5】
前記電極パッドは、前記接合部に近づくにつれて開孔率が高くなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のセラミック接合体。
【請求項6】
前記第2層には、前記セラミック成分が10vol%以下含有されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のセラミック接合体。
【請求項7】
前記電極パッドは、前記セラミック基体に近づくにつれて前記セラミック成分の含有量が多くなるを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のセラミック接合体。
【請求項8】
前記セラミック成分は、絶縁性セラミックであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のセラミック接合体。
【請求項9】
前記セラミック成分は、前記セラミック基体と同一成分であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のセラミック接合体。
【請求項10】
前記セラミック接合体は、前記セラミック基体中に埋設された内部配線と、該内部配線と前記電極パッドを接続するビア導体と、を有し、
前記内部配線及び前記ビア導体には、前記セラミック成分が含有されており、
前記内部配線及び前記ビア導体の該セラミック成分は、前記第1層の前記セラミック成分の含有量以下であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のセラミック接合体。
【請求項11】
セラミック基体中に発熱抵抗体を埋設させるとともに、該発熱抵抗体と外部とを接続する金属パッドが該セラミック基体の表面に形成されたセラミックヒータにおいて、請求項1乃至10のいずれか一項の前記セラミック接合体が該セラミックヒータに含まれることを特徴とするセラミック接合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−22908(P2007−22908A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163705(P2006−163705)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】