説明

セルロースアシレートフィルムおよびその製造方法、並びに、これを用いた反射防止フィルム、偏光板、光学補償フィルムおよび液晶表示装置。

【課題】一方の面上に反射防止層などの層を形成した場合であっても、湿度変動や高温高湿環境によって層が剥がれたりひび割れたりしないセルロースアシレートフィルムを提供すること。
【解決手段】下式(1)〜(3)を満足するセルロースアシレートを含有し、25℃における吸湿膨張係数が1.0×10-5〜10×10-5/%RHであることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
式(1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(2) 0≦X≦2.0
式(3) 1.2≦Y≦3.0
[式中、Xはアセチル基の置換度を表し、Yは炭素数3〜7のアシル基の置換度の総和を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースアシレートフィルムおよびその製造方法に関する。また、前記セルロースアシレートフィルムを用いた、反射防止性能および/または物理強度に優れる反射防止フィルム、偏光板、光学補償フィルムおよび液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の画像表示装置(LCD、PDP、CRT等)の大画面化が進むとともに、反射防止フィルムを配置した液晶表示装置が増加してきており、高価な大画面の画像表示装置を保護するため、加熱、加湿の環境における反射防止フィルムの物理的な安定性の向上が望まれている。また、液晶表示装置(LCD)において偏光板は不可欠な光学材料である。偏光板は一般に、偏光膜と透明保護膜とからなっている。該偏光膜は、一般的に、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料の水溶液を含浸させ、さらにこのフィルムを一軸延伸することにより得られる。該偏光板はこの偏光膜の両側に二枚の透明保護膜を貼りつけた構成を有する。液晶表示装置の構成部材の数を減らし、生産性および製造コストを削減する観点から、偏光板の保護フィルムに防眩性反射防止機能を付与すること、且つ加工適性および生産性の向上が望まれている。
【0003】
透明保護膜としては通常、セルロースアセテートフィルムなどのセルロースアシレートフィルムを使用する。セルロースアセテートフィルムを製造する際に、ジクロロメタンのような塩素系有機溶剤に溶解し、これを基材上に流延、乾燥して製膜する溶液流延法が主に実施されている。塩素系有機溶剤としてジクロロメタン(沸点約40℃)は、従来からセルロースアシレートの良溶媒として用いられ、製造工程の製膜および乾燥工程において沸点が低いことから乾燥させ易いという利点により好ましく使用されている。近年環境保全の観点で低沸点である塩素系有機溶媒は、密閉設備でも取り扱い工程での漏れを著しく低減されるようになった。例えば徹底的なクローズドシステムによる系からの漏れ防止、万が一漏れても外気に出す前にガス吸収塔を設置し、有機溶媒を吸着させて処理する方法が進められた。さらに、排出する前に火力による燃焼あるいは電子線ビームによる塩素系有機溶媒の分解などで、殆ど有機溶媒を排出することはなくなったが、完全な非排出までにはさらに研究する必要がある。
【0004】
このような必要性に応えるための技術としてこのような対策として、有機溶剤を用いずにセルロースアシレートの溶融製膜方法が、特許文献1及び特許文献2に公開されている。これは、セルロースアシレートのエステル基の炭素鎖を長くすることで融点を下げ溶融製膜しやすくしたものである。具体的には、セルロースアセテートから、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレート等に変えることで溶融製膜を可能にしている。
【特許文献1】特表平6−501040号公報
【特許文献2】特開2000−352620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの方法で溶融製膜したものを反射防止偏光板の保護フィルムとして、特許文献2の実施例などにしたがって作製した反射防止フィルムは、湿度変動または高温高湿環境による反射防止膜の剥がれ、ひび割れ、カール等が生じ易いと言う問題がある。さらに、これらの技術を用いた反射防止偏光板は、液晶表示装置の寸法に合わせて裁断(あるいは打ち抜き)する際に、この裁断の衝撃によりフィルムの切断部に剥離を生じることが多く、裁断の屑が、光学的な欠陥(液晶表示装置の表示画面上に生じる「輝点故障」)の発生原因となる。このため、これらの問題の改良が望まれている。
【0006】
本発明は、少なくとも一方の面上に層を形成した場合であっても、湿度変動や高温高湿環境によって層が剥がれたりひび割れたりしないセルロースアシレートフィルムを提供することを目的とする。本発明は、そのような性質を有するセルロースアシレートフィルムの簡便な製造方法を提供することも目的とする。また本発明は、セルロースアシレートフィルム上に反射防止層を形成した構造を有していて、湿度変動や高温高湿環境によって反射防止層が剥がれたりひび割れたりせず、加工性および生産性に優れ、十分な無欠陥性を有する反射防止フィルムを提供することも目的とする。さらに、優れた光学的性質を有する偏光板および光学補償フィルムを提供し、さらに視認性が優れる画像表示装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、セルロースアシレート透明支持体上に形成される反射防止層の剥れやひび割れなどの現象が、用いたセルロースアシレートフィルム透明支持体の吸湿膨張係数、熱膨張係数および高温高湿環境下の寸法変化に起因するものと考え、その改良に取り組んだ。すなわち、用いたセルロースアシレートフィルム透明支持体の吸湿膨張係数、熱膨張係数および高温高湿環境下の寸法変化率を一定範囲内にすることによって、該フィルム上に積層する反射防止層の剥れやひび割れなどの問題を抑制する効果を得ることに成功した。また、反射防止フィルムの吸湿膨張係数、熱膨張係数および高温高湿環境下の寸法変化率を一定範囲内にすることで、裁断屑を大幅に低減できるという相乗効果があることも見いだした。さらに、セルロースアシレートフィルムの溶融製膜条件を適切な範囲に制御することによって、得られるセルロースアシレートフィルムの黄色味および物理強度を向上させ、破断伸びを改善し、裁断する際の衝撃によりフィルムの切断部に剥離や裁断の屑の発生を大幅に抑制することに成功した。上記の発見に基づいて製造した反射防止フィルムを組み込んだ偏光板を用いて液晶表示装置を製造したところ、画像が極めて良好になることも見出した。
【0008】
すなわち、上記目的は、以下の構成を有する本発明により達成される。
[1] 下式(1)〜(3)を満足するセルロースアシレートを含有し、25℃における吸湿膨張係数が1.0×10-5〜10×10-5/%RHであることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
式(1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(2) 0≦X≦2.0
式(3) 1.2≦Y≦3.0
[式中、Xはアセチル基の置換度を表し、Yは炭素数3〜7のアシル基の置換度の総和を表す。]
[2] 25℃から80℃における熱膨張係数が5〜120ppm/℃であることを特徴とする[1]に記載のセルロースアシレートフィルム。
[3] 60℃・相対湿度90%の環境に500時間放置したときの放置前後のフィルムの寸法変化率が0〜0.1%であることを特徴とする[1]または[2]に記載のセルロースアシレートフィルム。
【0009】
[4] 下式(1)〜(3)を満足するセルロースアシレートをダイから押し出して溶融製膜するセルロースアシレートフィルムの製造方法であって、溶融温度が185〜230℃であり、ダイの吐出口における溶融セルロースアシレート樹脂の流速をV0、冷却ドラムの表面速度V1とした際に、1≦V1/V0≦15を満たすことを特徴とする、セルロースアシレートフィルムの製造方法。
式(1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(2) 0≦X≦2.0
式(3) 1.2≦Y≦3.0
[Xはアセチル基の置換度を表し、Yは炭素数3〜7のアシル基の置換度の総和を表す。]
[5] タッチロールを用いて溶融製膜することを特徴とする[4]に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
[6] [4]または[5]に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法で作製されたことを特徴とする、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
【0010】
[7] [1]〜[3]または[6]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの少なくとも一方の面に、少なくとも1層のハードコート層と最外層に位置する低屈折率層とを有することを特徴とする反射防止フィルム。
[8] 25℃における吸湿膨張係数が1.0×10-5〜10×10-5/%RHであることを特徴とする、[7]に記載の反射防止フィルム。
[9] 25℃から80℃における熱膨張係数が5〜120ppm/℃であることを特徴とする、[7]または[8]に記載の反射防止フィルム。
[10] 60℃・相対湿度90%の環境に500時間放置した前後の、フィルムの寸法変化率が0〜0.1%であることを特徴とする、[7]〜[9]のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
[11] 450nmから650nmの平均反射率が1.8%以下であることを特徴とする、[7]〜[10]のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【0011】
[12] [1]〜[3]または[6]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1枚を、偏光膜の保護膜として有することを特徴とする偏光板。
[13]
[1]〜[3]または[6]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを有することを特徴とする光学補償フィルム。
[14] [1]〜[3]または[6]のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム、[7]〜[11]のいずれか1項に記載の反射防止フィルム、[12]に記載の偏光板および[13]に記載の光学補償フィルムからなる群より選択される1枚以上のフィルムを有する液晶表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、優れた吸湿膨張係数、熱膨張係数、寸法安定性を有しており、少なくとも一方の面上に層を形成した場合であっても、湿度変動や高温高湿環境によって層が剥がれたりひび割れたりしない。本発明の製造方法によれば、そのような性質を有するセルロースアシレートフィルムを簡便に製造することができる。また、本発明の反射防止フィルムは、湿度変動や高温高湿環境においても安定で、優れた反射防止性能および物理強度を有している。さらに、本発明の偏光板および光学補償フィルムは光学的性質が優れており、本発明の液晶表示装置は視認性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明のセルロースアシレートフィルムおよび製造方法並びに反射防止フィルム、偏光板、光学補償フィルムおよび液晶表示装置にについて詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
《セルロースアシレートフィルム》
《特徴》
(吸湿膨張係数)
本発明のセルロースアシレートフィルムおよびそれを用いた反射防止フィルムの吸湿膨張係数(25℃・相対湿度10%から25℃・相対湿度80%における)は、いずれも1.0×10-5〜10×10-5/%RHであることを特徴とする。吸湿膨張係数は1.0×10-5〜8.0×10-5/%RHであることがより好ましく、さらに好ましくは、1.0×10-5〜5.0×10-5/%RHである。吸湿膨張係数は、25℃において相対湿度を変化させた時の試料の寸法(長さ)の変化量を示す。吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は1.0×10-5/%RH以上である。吸湿膨張係数が10×10-5/%RHを超えると、湿度変動による反射防止塗布層の剥れ、ひび割れなどの現象の発生がし易くなる。このように、吸湿膨張係数が本発明の範囲に満たすセルロースアシレートフィルムを用いれば、該フィルム上に積層する反射防止層が湿度変動によって剥れたり、ひび割れたりすることを防止することできる。
【0015】
吸湿膨張係数の測定方法について以下に示す。ロール状のフィルムに場合には、作製したセルロースアシレートフィルムの流延方向(長手方向:MD)および横方向(幅方向:TD)から、50mm幅×150mm長さの試験片を各5枚採取する。試験片の両端に6mmφの穴をパンチで100mm間隔に開ける。これを、25℃、相対湿度10%の室内で4時間以上調湿する。温度は25℃のまま、相対湿度を10%にして、自動ピンゲージ(新東科学(株)製)を用いて、パンチ間隔の原寸(L0)を最小目盛り1/1000mmまで測定する。次に測定済みの試験片を25℃、相対湿度80%の室内に4時間以上調湿した後、25℃・相対湿度80%の環境に、自動ピンゲージでパンチ間隔の変動寸法(L1)を測定する。吸湿膨張係数は下式により算出した。ここに言う吸湿膨張係数はn=5のMD、TDの平均値である。
吸湿膨張係数[/%RH]={(L1−L0)/L0}/(80−10)
【0016】
(熱膨張係数(CTE))
本発明のセルロースアシレートフィルムおよびそれを用いた反射防止フィルムの熱膨張係数(25℃から80℃における)は5〜120ppm/℃であることが好ましい。熱膨張係数は5〜100ppm/℃であることがより好ましく、さらに好ましくは10〜90ppm/℃である。吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、5ppm/℃以上の値である。このように、熱膨張係数が本発明の範囲に満たすことで、セルロースアシレートフィルム上に積層する反射防止層(防眩性反射防止塗布層)が熱によって剥れたり、ひび割れたりすることを防止することできる。
熱膨張係数の測定方法について以下に示す。サンプルフィルムの流延方向(MD)および横方向(TD)に、5mm幅×20mm長さのサンプル片を採取する。線膨張係数はTMA(Thermomechanical Analysis)(理学電械(株)製、TMA8310)を用いて、
100ml/min窒素雰囲気中に、フィルムの厚みが100μmに当り50mNの応力で定引張荷重法にて測定を行う。測定温度は20℃〜140℃の温度範囲、昇温速度は3℃/minとする。熱膨張係数(CTE)は下式に示すように25℃から80℃の間の平均膨張係数として求める。ここに言う熱膨張係数はMD、TDの平均値である。
CTE={(L80−L25)/(L25×(80−25))}×106 (ppm/℃)
[式中、L80は80℃におけるサンプル片の長さ、L25は25℃におけるサンプル片の長さを表す。]
【0017】
(高温高湿環境下の寸法変化率)
本発明のセルロースアシレートフィルムおよびそれを用いた反射防止フィルムの高温高湿環境下の寸法変化率(60℃・相対湿度90%の環境に放置500時間前後)は好ましくは0〜0.1%であり、より好ましくは0〜0.08%、さらに好ましくは0〜0.05%である。このように、寸法変化率を小さくすることで、高温高湿環境下における支持体の寸法変化による、防眩性反射防止層の剥れ、ひび割れなど発生を防止することできる。
ここに言う高温高湿環境下の寸法変化率は60℃・相対湿度90%の環境に500時間放置する前後の、フィルムの縦方向および横方向の寸法変化率の絶対値の平均値である。その測定方法を以下に示す。セルロースアシレートフィルムの流延方向(長手方向:MD)および横方向(幅方向:TD)より、50mm幅×150mm長さの試験片を各5枚採取する。試験片の両端に6mmφの穴をパンチで100mm間隔に開ける。これを、25℃、相対湿度60%の室内で24時間以上調湿する。自動ピンゲージ(新東科学(株)製)を用いて、パンチ間隔の原寸(L1 )を最小目盛り1/1000mmまで測定する。次に試験片を60℃、相対湿度90%の恒温器に無荷重で吊して500時間熱処理し、その後25℃相対湿度60%の室内で24時間以上調湿した後、自動ピンゲージで熱処理後のパンチ間隔の寸法(L2)を測定する。そして、次式により湿熱寸法変化率を算出する。ここに言う寸法変化率はn=5のMD、TDの平均値である。
寸法変化率(%)={|(L1−L2)|/L1}×100
【0018】
シート上のフィルムの場合には、フィルムの面内の遅相軸方向と、面内の遅相軸に直交する方向から試験片をサンプリングすることにより、吸湿膨張係数、熱膨張係数および高温高湿環境下の寸法変化率を同様に測定することができる。
【0019】
このような特徴を有するセルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートの置換度と溶融製膜条件(溶融温度およびキャスティング条件)を制御する本発明の製造方法により簡便に製造することができる。
【0020】
以下において、セルロースアシレート素材、溶融製膜条件(溶融温度およびキャスティング条件)、および該フィルム上に積層する反射防止機能層の順に詳細な説明を行う。
まず、セルロースアシレートフィルムおよびその製造方法について説明する。本発明のセルロースアシレートフィルムについては、セルロースアシレート素材、合成法、添加剤および溶融製膜の順に詳細な説明を加える。
【0021】
《セルロースアシレート》
本発明で用いられるセルロースアシレートは下記式(1)〜(3)を満足する。
式(1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(2) 0≦X≦2.0
式(3) 1.2≦Y≦3.0
〔式中、Xはアセチル基の置換度を表し、Yは炭素数3〜7のアシル基の置換度の総和を表す。〕
【0022】
本発明で用いられるセルロースアシレートは、下記式(4)〜(6)の全てを満足することがより好ましく、下記式(7)〜(9)の全てを満たすことが特に好ましい。
【0023】
式(4) 2.4≦X+Y≦3.0
式(5) 0.05≦X≦1.8
式(6) 1.3≦Y≦2.99
【0024】
式(7) 2.5≦X+Y≦2.95
式(8) 0.1≦X≦1.6
式(9) 1.4≦Y≦2.95
【0025】
このようにアセチル基の含率を低くし、炭素数3〜7のアシル基の含有率を多くすることによって、フィルム化したときの透水度を抑制することができ、さらに、高温高湿環境下における偏光板の耐久性をも向上させることができる。
前記炭素数3〜7のアシル基の置換度であるYの対象となる、炭素数3〜7のアシル基のうち好ましいものは、プロピオニル基、ブチリル基、2−メチルプロピオニル基、ペンタノイル基、3−メチルブチリル基、2−メチルブチリル基、2,2−ジメチルプロピオニル(ピバロイル)基、ヘキサノイル基、2−メチルペンタノイル基、3−メチルペンタノイル基、4−メチルペンタノイル基、2,2−ジメチルブチリル基、2,3−ジメチルブチリル基、3,3−ジメチルブチリル基、シクロペンタンカルボニル基、ヘプタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、ベンゾイル基などを挙げることができ、より好ましくは、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ベンゾイル基であり、特に好ましくは、プロピオニル基、ブチリル基であり、最も好ましくは、プロピオニル基である。本発明に用いられるセルロースアシレートを構成するアシル基は、単一種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0026】
次に、本発明のセルロースアシレートの製造方法について詳細に説明する。本発明のセルロースアシレートの原料綿や合成方法については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁の記載を適用することもできる。
【0027】
(原料)
セルロース原料としては、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、綿花リンター由来のものが好ましく用いられる。セルロース原料としては、α−セルロース含量が92〜99.9質量%の高純度のものを用いることが好ましい。
【0028】
(活性化)
セルロース原料はアシル化に先立って、活性化剤と接触させる処理(活性化)を行うことが好ましい。活性化剤としては、カルボン酸または水を用いることができる。添加方法としては噴霧、滴下、浸漬などの方法から選択することができる。
【0029】
活性化剤として好ましいカルボン酸は、炭素数2〜7のカルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸など)であり、より好ましくは、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸であり、特に好ましくは酢酸である。活性化の際は、必要に応じて更に硫酸などのアシル化の触媒を、セルロースに対して好ましくは0.1質量%〜10質量%加えることもできる。また、2種類以上の活性化剤を併用したり、炭素数2〜7のカルボン酸の酸無水物を添加してもよい。
【0030】
活性化剤の添加量は、セルロースに対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。活性化剤の添加量の上限は生産性を低下させない限りにおいて特に制限はないが、セルロースに対して質量で100倍以下であることが好ましく、20倍以下であることがより好ましく、10倍以下であることが特に好ましい。
【0031】
活性化の時間は20分以上であることが好ましく、上限については生産性に影響を及ぼさない範囲であれば特に制限はないが、好ましくは72時間以下、更に好ましくは24時間以下、特に好ましくは12時間以下である。また、活性化の温度は0℃〜90℃が好ましく、15℃〜80℃が更に好ましく、20℃〜60℃が特に好ましい。
【0032】
(アシル化)
本発明におけるセルロースアシレートを製造する方法においては、セルロースとカルボン酸の酸無水物とをブレンステッド酸またはルイス酸を触媒として反応させることで、セルロースの水酸基をアシル化することが好ましい。
【0033】
セルロース混合アシレートを得る方法としては、アシル化剤として2種のカルボン酸無水物を混合または逐次添加により反応させる方法、2種のカルボン酸の混合酸無水物(例えば、酢酸・プロピオン酸混合酸無水物)を用いる方法、カルボン酸と別のカルボン酸の酸無水物(例えば、酢酸とプロピオン酸無水物)を原料として反応系内で混合酸無水物(例えば、酢酸・プロピオン酸混合酸無水物)を形成させてセルロースと反応させる方法、置換度が3に満たないセルロースアシレートを一旦合成し、酸無水物や酸ハライドを用いて、残存する水酸基を更にアシル化する方法などを用いることができる。
6位置換度の大きいセルロースアシレートの合成については、特開平11−5851号、特開2002−212338号、特開2002−338601号などの各公報に記載がある。
【0034】
(酸無水物)
カルボン酸の酸無水物として、好ましくはカルボン酸としての炭素数が2〜7であり、例えば、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、ヘキサン酸無水物、安息香酸無水物などを挙げることができる。より好ましくは、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、ヘキサン酸無水物などであり、特に好ましくは、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物である。
酸無水物は、セルロースに対して、通常は過剰当量添加する。すなわち、セルロースの水酸基に対して1.1〜50当量添加することが好ましく、1.2〜30当量添加することがより好ましく、1.5〜10当量添加することが特に好ましい。
【0035】
(触媒)
本発明におけるセルロースアシレートの製造に用いるアシル化の触媒には、ブレンステッド酸またはルイス酸を使用することが好ましい。ブレンステッド酸およびルイス酸の定義については、例えば、「理化学辞典」第五版(2000年)に記載されている。触媒としては、硫酸または過塩素酸がより好ましく、硫酸が特に好ましい。触媒の好ましい添加量は、セルロースに対して0.1〜30質量%であり、より好ましくは1〜15質量%であり、特に好ましくは3〜12質量%である。
【0036】
(溶媒)
アシル化を行う際には、粘度、反応速度、攪拌性、アシル置換比などを調整する目的で、溶媒を添加してもよい。溶媒として好ましくはカルボン酸であり、更に好ましくは、炭素数2以上7以下のカルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、安息香酸)などを挙げることができる。特に好ましくは、酢酸、プロピオン酸、酪酸などを挙げることができる。これらの溶媒は混合して用いてもよい。
【0037】
(アシル化の条件)
アシル化剤はセルロースに対して一度に添加しても、分割して添加してもよい。また、アシル化剤に対してセルロースを一度に添加しても、分割して添加してもよい。アシル化の際の反応熱による反応容器内の温度上昇を制御するために、アシル化剤は予め冷却しておくことが好ましい。
【0038】
本発明のセルロースアシレートを製造する方法においては、アシル化の際の最高到達温度が50℃以下であることが好ましい。より好ましくは40℃以下であり、特に好ましくは35℃以下である。反応の最低温度は−50℃以上が好ましく、−30℃以上がより好ましく、−20℃以上が特に好ましい。
【0039】
アシル化の反応時間は0.5時間〜24時間が好ましく、1時間〜12時間がより好ま
しく、1.5時間〜10時間が特に好ましい。
アシル化の終点は、目的とする置換度、重合度に応じて、光線透過率、溶液粘度、反応系の温度変化、反応物の有機溶媒に対する溶解性、顕微鏡観察などの手段により決定することができる。
【0040】
(反応停止剤)
本発明に用いられるセルロースアシレートを製造する方法においては、アシル化反応の後に、反応停止剤を加えることが好ましい。
反応停止剤としては、酸無水物を分解するものであればいかなるものでもよく、好ましい例として、水、アルコール(例えばエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなど)又はこれらを含有する組成物などを挙げることができるが、水とカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸等)との混合物が更に好ましく、カルボン酸としては酢酸が特に好ましい。水とカルボン酸との組成比は任意の割合で用いることができるが、水の含有量が5質量%〜80質量%、さらには10質量%〜60質量%、特には15質量%〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0041】
(中和剤)
アシル化の反応停止工程あるいはアシル化の反応停止工程後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解、カルボン酸及びエステル化触媒の一部または全部の中和、残留硫酸根量と残留金属量の調整などのために、中和剤またはその溶液を添加してもよい。
中和剤の好ましい例としては、アンモニウム、有機4級アンモニウム、アルカリ金属、2族の金属、3〜12族の金属、または13〜15族の元素の、炭酸塩、炭酸水素塩、有機酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩、フタル酸水素塩、クエン酸塩、酒石酸塩など)、水酸化物又は酸化物などを挙げることができる。
中和剤として更に好ましくは、アルカリ金属または2族の金属の、炭酸塩、炭酸水素塩、有機酸塩、水酸化物又は酸化物などであり、特に好ましくは、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウムの、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩または水酸化物である。
中和剤の溶媒としては、水、有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸など)および、これらの混合溶媒を好ましい例として挙げることができる。
【0042】
(部分加水分解)
このようにして得られたセルロースアシレートは、全置換度がほぼ3に近いものであるが、所望の置換度のものを得る目的で、少量の触媒(一般には、残存する硫酸などのアシル化触媒)と水との存在下で、20〜90℃に数分〜数日間保つことによりエステル結合を部分的に加水分解し、セルロースアシレートのアシル置換度を所望の程度まで減少させること(いわゆる熟成)が一般的に行われる。
【0043】
所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を、前記のような中和剤またはその溶液を用いて完全に中和し、部分加水分解を停止させることが好ましい。反応溶液に対して溶解性が低い塩を生成する中和剤(例えば、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウムなど)を添加することにより、溶液中あるいはセルロースに結合した触媒(例えば、硫酸エステル)を効果的に除去することも好ましい。
【0044】
(ろ過)
セルロースアシレート中の未反応物、難溶解性塩、その他の異物などを除去または削減する目的として、反応混合物(ドープ)のろ過を行うことが好ましい。ろ過は、アシル化の完了から再沈殿までの間のいかなる工程において行ってもよい。ろ過圧や取り扱い性の制御の目的から、ろ過に先立って適切な溶媒で希釈することも好ましい。
【0045】
(再沈殿)
このようにして得られたセルロースアシレート溶液を、水もしくはカルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸など)水溶液のような貧溶媒中に混合するか、セルロースアシレート溶液中に、貧溶媒を混合することにより、セルロースアシレートを再沈殿させ、洗浄及び安定化処理により目的のセルロースアシレートを得ることができる。再沈殿は連続的に行っても、一定量ずつバッチ式で行ってもよい。
【0046】
(洗浄)
生成したセルロースアシレートは洗浄処理することが好ましい。洗浄溶媒はセルロースアシレートの溶解性が低く、かつ、不純物を除去することができるものであればいかなるものでも良いが、通常は水または温水が用いられる。洗浄の進行はいかなる手段で追跡を行ってよいが、水素イオン濃度、イオンクロマトグラフィー、電気伝導度、ICP、元素分析、原子吸光スペクトル、カルボン酸臭の官能検査などの方法を好ましい例として挙げることができる。
【0047】
(安定化)
洗浄後のセルロースアシレートは、安定性を更に向上させたり、カルボン酸臭を低下させるために、安定化剤またはその水溶液などで処理することも好ましい。
安定化剤としては、弱アルカリが挙げられ、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどの炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、酸化物などが好ましい。
【0048】
(乾燥)
本発明においてセルロースアシレートの含水率を好ましい量に調整するためには、セルロースアシレートを乾燥することが好ましい。乾燥温度として好ましくは0〜200℃であり、さらに好ましくは40〜180℃であり、特に好ましくは50〜160℃である。本発明のセルロースアシレートは、その含水率が2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0.7質量%以下であることが特に好ましい。
【0049】
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、平均重合度100〜700、好ましくは120〜550、さらに好ましくは120〜400であり、特に好ましくは平均重合度130〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)に記載されるように、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分子量分布測定などの方法により測定できる。さらに、平均重合度の測定方法については、特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
【0050】
本発明で用いられるセルロースアシレートは、質量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.5〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.5〜5.0であり、さらに好ましくは2.0〜4.5であり、さらに好ましくは2.0〜4.5のセルロースアシレートが用いられる。
【0051】
これらのセルロースアシレートは1種類のみを用いてもよく、2種以上混合してもよい。また、セルロースアシレート以外の高分子成分を適宜混合したものでもよい。混合される高分子成分はセルロースアシレートと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上であることが好ましい。セルロースアシレートはペレット化することが好ましく、好ましいペレットの大きさは1mm3〜10cm3であり、より好ましくは5mm3〜5cm3、さらに好ましくは10mm3〜3cm3である。この後、上述の条件で乾燥する。得られたセルロースアシレートは、その保存は環境による影響を受けにくくするために、低温暗所で保存することが望ましい。さらに、保管用としてアルミニウムなどの防止素材で作製された防湿袋や、SUS製ドラムあるいはコンテナに保存することがさらに好ましい。
【0052】
セルロースアシレートの具体的な合成法については、後述の合成例1および合成例2を参考にすることができる。
【0053】
《添加剤》
セルロースアシレートには添加剤を加えてもよい。本発明では、炭素数3以上の脂肪族基または炭素数6以上の芳香族基のような疎水性の添加剤(可塑剤、紫外線防止剤、レターデーション調整剤、安定剤等)を添加することが好ましく、これらの添加剤を添加することによってセルロースアシレートの吸湿膨張係数を低減することができる。
【0054】
(可塑剤)
可塑剤としては、例えば、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、リン酸エステルやカルボン酸エステル、多価アルコール系の可塑剤等が挙げられる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類として例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
【0055】
前記リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。さらに特表平6−501040号公報の請求項3〜7に記載のリン酸エステル系可塑剤を用いることが好ましい。上述のようにリン酸エステルはセルロースアシレートの結晶化を促しスジを発生させる効果があるが、本低分子化合物と併用することでこの効果は抑制される。このため本低分子化合物とリン酸エステルと併用することも可能である。
【0056】
カルボン酸エステルとしては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートおよびジエチルヘキシルフタレート等のフタル酸エステル類;およびクエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸エステル類、ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(ブチルジグリコールアジペート)等のアジピン酸エステルを挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン等を単独あるいは併用するのが好ましい。
【0057】
前記多価アルコール系可塑剤は、セルロースアシレートとの相溶性が良く、また熱可塑化効果が顕著に現れるグリセリンエステル、ジグリセリンエステルなどグリセリン系のエステル化合物や、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールの水酸基にアシル基が結合した化合物などである。
具体的なグリセリンエステルとして、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートミスチレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートカプレート、グリセリンジアセテートノナネート、グリセリンジアセテートオクタノエート、グリセリンジアセテートヘプタノエート、グリセリンジアセテートヘキサノエート、グリセリンジアセテートペンタノエート、グリセリンジアセテートオレート、グリセリンアセテートジカプレート、グリセリンアセテートジノナネート、グリセリンアセテートジオクタノエート、グリセリンアセテートジヘプタノエート、グリセリンアセテートジカプロエート、グリセリンアセテートジバレレート、グリセリンアセテートジブチレート、グリセリンジプロピオネートカプレート、グリセリンジプロピオネートラウレート、グリセリンジプロピオネートミスチレート、グリセリンジプロピオネートパルミテート、グリセリンジプロピオネートステアレート、グリセリンジプロピオネートオレート、グリセリントリブチレート、グリセリントリペンタノエート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンプロピオネートラウレート、グリセリンオレートプロピオネートなどが挙げられるがこれに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
この中でも、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンジアセテートペラルゴネート、グリセリンジアセテートカプレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートミリステート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートオレートが好ましい。
【0058】
ジグリセリンエステルの具体的な例としては、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラバレレート、ジグリセリンテトラヘキサノエート、ジグリセリンテトラヘプタノエート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトラペラルゴネート、ジグリセリンテトラカプレート、ジグリセリンテトララウレート、ジグリセリンテトラミスチレート、ジグリセリンテトラパルミテート、ジグリセリントリアセテートプロピオネート、ジグリセリントリアセテートブチレート、ジグリセリントリアセテートバレレート、ジグリセリントリアセテートヘキサノエート、ジグリセリントリアセテートヘプタノエート、ジグリセリントリアセテートカプリレート、ジグリセリントリアセテートペラルゴネート、ジグリセリントリアセテートカプレート、ジグリセリントリアセテートラウレート、ジグリセリントリアセテートミスチレート、ジグリセリントリアセテートパルミテート、ジグリセリントリアセテートステアレート、ジグリセリントリアセテートオレート、ジグリセリンジアセテートジプロピオネート、ジグリセリンジアセテートジブチレート、ジグリセリンジアセテートジバレレート、ジグリセリンジアセテートジヘキサノエート、ジグリセリンジアセテートジヘプタノエート、ジグリセリンジアセテートジカプリレート、ジグリセリンジアセテートジペラルゴネート、ジグリセリンジアセテートジカプレート、ジグリセリンジアセテートジラウレート、ジグリセリンジアセテートジミスチレート、ジグリセリンジアセテートジパルミテート、ジグリセリンジアセテートジステアレート、ジグリセリンジアセテートジオレート、ジグリセリンアセテートトリプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリブチレート、ジグリセリンアセテートトリバレレート、ジグリセリンアセテートトリヘキサノエート、ジグリセリンアセテートトリヘプタノエート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンアセテートトリペラルゴネート、ジグリセリンアセテートトリカプレート、ジグリセリンアセテートトリラウレート、ジグリセリンアセテートトリミスチレート、ジグリセリンアセテートトリパルミテート、ジグリセリンアセテートトリステアレート、ジグリセリンアセテートトリオレート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンステアレート、ジグリセリンカプリレート、ジグリセリンミリステート、ジグリセリンオレートなどのジグリセリンの混酸エステルなどが挙げられるがこれらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
この中でも、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトララウレートが好ましい。
【0059】
前記ポリアルキレングリコールの具体的な例としては、平均分子量が200〜1000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられるがこれらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
【0060】
ポリアルキレングリコールの水酸基にアシル基が結合した化合物の具体的な例として、ポリオキシエチレンアセテート、ポリオキシエチレンプロピオネート、ポリオキシエチレンブチレート、ポリオキシエチレンバリレート、ポリオキシエチレンカプロエート、ポリオキシエチレンヘプタノエート、ポリオキシエチレンオクタノエート、ポリオキシエチレンノナネート、ポリオキシエチレンカプレート、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンミリスチレート、ポリオキシエチレンパルミテート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート、ポリオキシエチレンリノレート、ポリオキシプロピレンアセテート、ポリオキシプロピレンプロピオネート、ポリオキシプロピレンブチレート、ポリオキシプロピレンバリレート、ポリオキシプロピレンカプロエート、ポリオキシプロピレンヘプタノエート、ポリオキシプロピレンオクタノエート、ポリオキシプロピレンノナネート、ポリオキシプロピレンカプレート、ポリオキシプロピレンラウレート、ポリオキシプロピレンミリスチレート、ポリオキシプロピレンパルミテート、ポリオキシプロピレンステアレート、ポリオキシプロピレンオレート、ポリオキシプロピレンリノレートなどが挙げられるがこられに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
これらの可塑剤は、セルロースアシレートフィルムに対し、好ましくは0〜20質量%であり、より好ましくは1〜20質量%であり、さらに好ましくは2〜15質量%である。これらの可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0061】
(マット剤)
本発明におけるセルロースアシレートには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度を低くでき好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0062】
これらの微粒子は、通常平均粒子サイズが0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子サイズは0.2μm〜1.5μmが好ましく、0.4μm〜1.2μmがさらに好ましく、0.6μm〜1.1μmが最も好ましい。1次若しくは2次粒子サイズはフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒子サイズとした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子サイズとした。
【0063】
前記二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。また、前記酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976およびR811(以上、日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、これらを使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vが、1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0064】
(紫外線吸収剤)
次に本発明におけるセルロースアシレートには、紫外線防止剤を含有することが好ましく、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有させてもよい。紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。前記紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物であり、中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースアシレートに対する不要な着色が少ないことから、好ましい。
【0065】
好ましい紫外線防止剤として具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。
【0066】
さらに、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物、また紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載のポリマータイプの紫外線吸収剤なども好ましく用いられる。
【0067】
また、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンなどのヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどの燐系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースアシレートに対して質量割合で1ppm〜3.0%が好ましく、10ppm〜2%がさらに好ましい。
【0068】
これらの紫外線吸収剤は、市販品として下記のものがあり利用できる。
ベンゾトリアゾール系としてはTINUBIN P(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、TINUBIN 234(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、TINUBIN 320(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、TINUBIN 326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、TINUBIN 327(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、TINUBIN 328(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、スミソーブ340(住友化学(株)製)などがある。また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、シーソーブ100(シプロ化成(株)製)、シーソーブ101(シプロ化成(株)製)、シーソーブ101S(シプロ化成(株)製)、シーソーブ102(シプロ化成(株)製)、シーソーブ103(シプロ化成(株)製)、アデカスタイプLA−51(旭電化(株)製)、ケミソープ111(ケミプロ化成(株)製)、UVINUL D−49(BASF社製)などを挙げられる。オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤としては、TINUBIN 312(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)やTINUBIN 315(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)がある。またサリチル酸系紫外線吸収剤としては、シーソーブ201(シプロ化成(株)製)やシーソーブ202(シプロ化成(株)製)が上市されており、シアノアクリレート系紫外線吸収剤としてはシーソーブ501(シプロ化成(株)製)、UVINUL N−539(BASF社製)がある。
紫外線吸収剤としては上記以外に例えば特開平2001−151901号公報に記載のものが使用できる。紫外線吸収剤は、セルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有させることが好ましい。
【0069】
(安定剤)
本発明においては必要に応じて要求される性能を損なわない範囲内で、熱劣化防止用、着色防止用の安定剤として、ホスファイト系化合物、亜リン酸エステル化合物、フォスフェイト、チオフォスフェイト、弱有機酸、エポキシ化合物等を単独または2種類以上を混合して添加してもよい。ホスファイト系安定剤の具体例としては、特開2004−182979号公報の段落[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を用いることができる。
【0070】
本発明における安定剤の添加量は、セルロースアシレートに対し0.005〜0.5質量%であるのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.4質量%であり、さらに好ましくは0.05〜0.3質量%である。添加量を0.005質量%未満の場合、溶融製膜時の劣化防止および着色抑制の効果が不十分であるため、好ましくない。一方、0.5質量%以上の場合、溶融製膜したセルロースアシレートフィルムの表面にしみ出し、好ましくない。
また、劣化防止剤および酸化防止剤を添加することも好ましい。フェノール系化合物、チオエーテル系化合物、リン系化合物などは劣化防止剤もしくは酸化防止剤として添加することにより、劣化および酸化防止に相乗効果が現れる。さらに、その他の安定剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
【0071】
(その他の添加剤)
上記以外に種々の添加剤、例えば赤外線吸収剤、光学調整剤、界面活性剤および臭気トラップ剤(アミン等)など)を加えることができる。これらの詳細は、発明協会公開技法(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)17〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されるものを使用することができる。赤外吸収染料は、セルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有させることが好ましい。
【0072】
前記光学調整剤としては、例えば特開2001−166144号公報、特開2003−344655号公報、特開2003−248117号公報、特開2003−66230号公報に記載のものを使用することができる。これにより面内のレターデーション(Re),厚み方向のレターデーション(Rth)を制御できる。前記光学調整剤の好ましい添加量は0〜15質量%であり、より好ましくは0〜12質量%であり、さらに好ましくは0〜10質量%である。
【0073】
《セルロースアシレートフィルムの製造》
(1)ペレット化
前記セルロースアシレートと添加物とは溶融製膜に先立ち混合しペレット化するのが好ましい。
ペレット化を行うにあたりセルロースアシレートおよび添加物は事前に乾燥を行うことが好ましいが、ベント式押出機を用いることで、これを代用することもできる。乾燥を行う場合は、乾燥方法として、加熱炉内にて90℃で8時間以上加熱する方法等を用いることができるが、この限りではない。ペレット化は前記セルロースアシレートと添加物を、2軸混練押出機を用い150℃〜250℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを水中で固化し裁断することで作製することができる。また、押出機による溶融後水中に口金より直接押出ながらカットする、アンダーウォーターカット法等によりペレット化を行ってもかまわない。
押出機は十分な、溶融混練が得られる限り、任意の公知の単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。
【0074】
好ましいペレットの大きさは断面積が1mm2〜300mm2、長さが1mm〜30mmがこのましく、より好ましくは断面積が2mm2〜100mm2、長さが1.5mm〜10mmである。
【0075】
またペレット化を行う時に、上記添加物は押出機の途中にある原料投入口やベント口から投入することもできる。
【0076】
押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは、20rpm〜700rpm、さらにより好ましくは30rpm〜500rpmである。これより、回転速度が遅くなると滞留時間が長くなり、熱劣化により分子量が低下したり、黄色味が悪化しやすくなる為、好ましくない。また回転速度が速すぎると剪断により分子の切断がおきやすくなり、分子量低下を招いたり、架橋ゲルの発生は増加するなどの問題が生じやすくなる。
【0077】
ペレット化における押出滞留時間は10秒間〜60分間、より好ましくは、15秒間〜30分間である。十分に溶融ができれば、滞留時間は短い方が、樹脂劣化、黄色み発生を抑えることができる点で好ましい。
【0078】
(2)乾燥
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法においては、上述の方法でペレット化したものを用いるのが好ましく、溶融製膜に先立ちペレット中の含水率を1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは、0.01%以下に乾燥した後、溶融押出し機のホッパーに投入するのが好ましい。このときホッパー内の温度を好ましくは20℃〜110℃、より好ましくは40℃〜100℃、さらに好ましくは50℃〜90°にする。この際、ホッパーは除湿風エアー等で一定風量・温度に保たれていることが好ましいが、目的とする含水率が得られるのであればこの限りでは無い。この際、ホッパー内を真空密閉構造および、窒素等の不活性ガスを封入することがより好ましい。
【0079】
(3)溶融押出し
図1に単軸スクリューの押出機60を示す。図1に示すように、シリンダ62内にはスクリュー軸64にフライト66を有する単軸スクリュー68が配設され、図示しないホッパーからセルロースアシレート樹脂が供給口80を介してシリンダ62内に供給される。シリンダ62内は供給口80側から順に、供給口80から供給されたセルロースアシレート樹脂を定量輸送する上流の供給部(Aで示す領域)と、セルロースアシレート樹脂を混練・圧縮する圧縮部(Bで示す領域)と、下流側のセルロースアシレート樹脂を計量する計量部(Cで示す領域)とで構成される。押出機60で溶融されたセルロースアシレート樹脂は、吐出口82からダイへ連続的に送られる。
樹脂は上述の方法により水分量を低減させるために、乾燥することが好ましいが、残存する酸素による溶融樹脂の酸化を防止するために、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用い真空排気しながら実施するのがより好ましい。押出機のスクリュー圧縮比は2.5〜4.5に設定され、L/Dは20〜70に設定されている。ここでスクリュー圧縮比とは供給部Aと計量部Cとの容積比、即ち(供給部Aの単位長さあたりの容積)÷(計量部Cの単位長さあたりの容積)で表され、供給部Aのスクリュー軸の外径d1、計量部Cのスクリュー軸の外径d2、供給部Aの溝部径a1、および計量部Cの溝部径a2とを使用して算出される。また、L/Dとはシリンダー内径に対するシリンダー長さの比である。また、押出温度は185〜230℃に設定される。押出機内での温度が230℃を超える場合には、押出機とダイとの間に冷却機を設ける様にすると良い。
【0080】
スクリュー圧縮比が小さ過ぎると、十分に溶融混練されず、未溶解部分が発生したり、せん断発熱が小さ過ぎて結晶の融解が不十分となり、製造後のセルロースアシレートフィルムに微細な結晶が残存し易くなり、さらに、気泡が混入し易くなる。これにより、セルロースアシレートフィルムの強度が低下したり、あるいはフィルムを延伸する場合に、残存した結晶が延伸性を阻害し、配向を十分に上げることができなくなる。逆に、スクリュー圧縮比が大き過ぎると、せん断応力がかかり過ぎて発熱により樹脂が劣化し易くなるので、製造後のセルロースアシレートフィルムに黄色味が出易くなる。また、せん断応力がかかり過ぎると分子の切断が起こり分子量が低下してフィルムの機械的強度が低下する。したがって、製造後のセルロースアシレートフィルムに黄色味が出にくく且つフィルム強度が強くさらに延伸破断しにくくするためには、スクリュー圧縮比は2.5〜4.5の範囲が良く、より好ましくは2.8〜4.2、特に好ましいのは3.0〜4.0の範囲である。
【0081】
また、L/Dが小さ過ぎると、溶融不足や混練不足となり、圧縮比が小さい場合と同様に製造後のセルロースアシレートフィルムに微細な結晶が残存し易くなる。逆に、L/Dが大き過ぎると、押出機内でのセルロースアシレート樹脂の滞留時間が長くなり過ぎ、樹脂の劣化を引き起こし易くなる。又、滞留時間が長くなると分子の切断が起こったり分子量が低下してセルロースアシレートフィルムの機械的強度が低下する。したがって、製造後のセルロースアシレートフィルムに黄色味が出にくく且つフィルム強度が強くさらに延伸破断しにくくするためには、L/Dは20〜70の範囲が好ましく、より好ましくは22〜65の範囲、特に好ましくは24〜50の範囲である。
【0082】
本発明では、図1に示す単軸スクリューの押出機におけるスクリュー温度を分割して制御し、上流の供給部(Aで示す領域)から、下流側の計量部(Cで示す領域ダイ側)までの温度を段階的に上げることが好ましい。これにより、熔融必要とする最低限の熱履歴を抑えることにより、樹脂の熱劣化や黄色味着色を低減することができる。
本発明においては、スクリュー温度パターンが、上流の供給部から下流側の計量部までに、段階的に5℃〜50℃高くする設定が好ましく、5℃〜30℃高くする設定がさらに好ましく、10℃〜20℃高くする設定が特に好ましい。
本発明の上流の供給部から下流側の計量部の押出温度分布は185〜230℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは190〜230℃、さらに好ましくは195〜230℃の範囲である。下流側の押出温度が低過ぎると、融解が不十分となり、十分な溶融流動性が得られず、製造後のセルロースアシレートフィルムの面状が悪化してしまう。逆に、押出し温度が高過ぎると、セルオースアシレート樹脂が劣化し、黄色味(YI値)が悪化してしまう。
【0083】
上記の如く押出温度が設定された押出機を用いて製膜されたセルロースアシレートフィルムは、ヘイズが2.0%以下、イエローインデックス(YI値)が10以下である特性値を有している。
【0084】
ここで、ヘイズは押出温度が低過ぎないかの指標、換言すると製造後のセルロースアシレートフィルムに残存する結晶の多少を知る指標になり、ヘイズが2.0%を超えると、製造後のセルロースアシレートフィルムの強度低下と延伸時の破断が発生し易くなる。また、イエローインデックス(YI値)は押出温度が高過ぎないかを知る指標となり、イエローインデックス(YI値)が10以下であれば、黄色味の点で問題は無い。
押し出し機の種類として、一般的には設備コストの比較的安い単軸押し出し機が用いられることが多く、フルフライト、マドック、ダルメージ等のスクリュータイプがあるが、熱安定性の比較的悪いセルロースアシレート樹脂には、フルフライトタイプが好ましい。また、設備コストは高価であるが、スクリューセグメントを変更することにより、途中でベント口を設けて不要な揮発成分を脱揮させながら押出ができる二軸押出機を用いることが可能である、二軸押し出し機には大きく分類して同方向と異方向のタイプがありどちらも用いることが可能であるが、滞留部分が発生し難くセルフクリーニング性能の高い同方向回転のタイプが好ましい。二軸押出機は設備が高価であるが、混練性が高く、樹脂の供給性能が高いため、低温での押出が可能となる。このため、セルロースアセテート樹脂の製膜に適している。また、ベント口を適正に配置することにより、未乾燥状態でのセルロールアシレートペレットやパウダーをそのまま使用することも可能である。さらに、製膜途中で出たフィルムのミミ等も乾燥させることなしにそのまま再利用することもできる。
【0085】
なお、好ましいスクリューの直径は目標とする単位時間あたりの押出量によって異なるが、好ましくは10mm〜300mm、より好ましくは20mm〜250mm、さらに好ましくは30mm〜150mmである。
【0086】
厚み精度を向上させるためには、吐出量の変動を減少させることが重要であり、押出機出機とダイスとの間にギアポンプを設けて、ギアポンプから一定量のセルロースアシレート樹脂を供給することは効果がある。ギアポンプとは、ドライブギアとドリブンギアとからなる一対のギアが互いに噛み合った状態で収容され、ドライブギアを駆動して両ギアを噛み合い回転させることにより、ハウジングに形成された吸引口から溶融状態の樹脂をキャビティ内に吸引し、同じくハウジングに形成された吐出口からその樹脂を一定量吐出するものである。押出機先端部分の樹脂圧力が若干の変動があっても、ギアポンプを用いることにより変動を吸収し、製膜装置下流の樹脂圧力の変動は非常に小さなものとなり、厚み変動が改善される。ギアポンプを用いることにより、ダイ部分の樹脂圧力の変動巾を±1%以内にすることが可能である。
【0087】
ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。また、ギアポンプのギアの変動を解消した3枚以上のギアを用いた高精度ギアポンプも有効である。
【0088】
ギアポンプを用いるその他のメリットとしては、スクリュー先端部の圧力を下げて製膜できることから、エネルギー消費の軽減・樹脂温上昇の防止・輸送効率の向上・押出機内での滞留時間の短縮・押出機のL/Dを短縮が期待できる。また、異物除去のために、フィルターを用いる場合には、ギアポンプが無いと、ろ過圧の上昇と共に、スクリューから供給される樹脂量が変動したりすることがあるが、ギアポンプを組み合わせて用いることにより解消が可能である。一方、ギアポンプのデメリットとしては、設備の選定方法によっては、設備の長さが長くなり、樹脂の滞留時間が長くなることと、ギアポンプ部のせん断応力によって分子鎖の切断を引き起こすことがあり、注意が必要である。
樹脂が供給口から押出機に入ってからダイスから出るまでの樹脂の好ましい滞留時間は2分間〜60分間であり、より好ましくは3分間〜40分間であり、さらに好ましくは4分間〜30分間である。
【0089】
ギアポンプの軸受循環用ポリマーの流れが悪くなることにより、駆動部と軸受部とにおけるポリマーによるシールが悪くなり、計量および送液押し出し圧力の変動が大きくなったりする問題が発生するため、セルロースアシレート樹脂の溶融粘度に合わせたギアポンプの設計(特にクリアランス)が必要である。また、場合によっては、ギアポンプの滞留部分がセルロースアシレート樹脂の劣化の原因となるため、滞留のできるだけ少ない構造が好ましい。押出機とギアポンプあるいはギアポンプとダイ等をつなぐポリマー管やアダプタについても、できるだけ滞留の少ない設計が必要であり、且つ溶融粘度の温度依存性の高いセルロースアシレート樹脂の押出圧力安定化のためには、温度の変動をできるだけ小さくすることが好ましい。一般的には、ポリマー管の加熱には設備コストの安価なバンドヒーターが用いられることが多いが、温度変動のより少ないアルミ鋳込みヒーターを用いることがより好ましい。さらに上述のように押出し機内で温度分布を持たせるために、押出し機のバレルを3〜20に分割したヒーターで加熱し溶融することが好ましい。
【0090】
上記の如く構成された押出機によってセルロースアシレート樹脂が溶融され、その溶融樹脂が吐出口からダイに連続的に送られる。ダイはダイス内の溶融樹脂の滞留が少ない設計であれば、一般的に用いられるTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わないが、本発明ではTダイを用いることが好ましい。また、ダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためのスタティックミキサーを入れることも問題ない。ダイ出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜5.0倍がよく、好ましくは1.2〜3倍、さらに好ましくは1.3〜2倍である。リップクリアランスがフィルム厚みの1.0倍小さい場合には製膜により面状の良好なシートを得ることが困難である。また、リップクリアランスがフィルム厚みの5.0倍を超えて大きい場合にはシートの厚み精度が低下するため好ましくない。ダイはフィルムの厚み精度を決定する非常に重要な設備であり、厚み調整がシビアにコントロールできるものが好ましい。通常厚み調整は40〜50mm間隔で調整可能であるが、好ましくは35mm間隔以下、さらに好ましくは25mm間隔以下でフィルム厚み調整が可能なタイプが好ましい。また、セルロールアシレート樹脂は、溶融粘度の温度依存性、せん断速度依存性が高いことから、ダイの温度ムラや巾方向の流速ムラのできるだけ少ない設計が重要である。また、下流のフィルム厚みを計測して、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも長期連続生産の厚み変動の低減に有効である。
【0091】
フィルムの製造は設備コストの安い単層製膜装置が一般的に用いられるが、場合によっては機能層を外層に設けために多層製膜装置を用いて2種以上の構造を有するフィルムの製造も可能である。一般的には機能層を表層に薄く積層することが好ましいが、特に層比を限定するものではない。
【0092】
樹脂中の異物濾過のためや異物によるギアポンプ損傷を避けるため押し出し機出口にフィルター濾材を設けるいわゆるブレーカープレート式の濾過を行うことが好ましい。さらに精度高く異物濾過をするためには、ギアポンプ通過後にいわゆるリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は、濾過部を1カ所設けて行うことができ、また複数カ所設けて行う多段濾過でもよい。フィルター濾材の濾過精度は高い方が好ましいが、濾材の耐圧や濾材の目詰まりによる濾圧上昇から、濾過精度は15μm〜3μmが好ましくさらに好ましくは10μm〜3μmである。特に最終的に異物濾過を行うリーフ型ディスクフィルター装置を使用する場合では品質の上で濾過精度の高い濾材を使用することが好ましく、耐圧,フィルターライフの適性を確保するために装填枚数にて調整することが可能である。濾材の種類は、高温高圧下で使用される点から鉄鋼材料を用いることが好ましく、鉄鋼材料の中でも特にステンレス鋼,スチールなどを用いることが好ましく、腐食の点から特にステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成としては、線材を編んだものの他に、例えば金属長繊維あるいは金属粉末を焼結し形成する焼結濾材が使用でき、濾過精度,フィルターライフの点から焼結濾材が好ましい。
【0093】
(4)キャスティング
上記方法にて、ダイよりシート上に押し出された溶融樹脂をキャスティングドラム上で冷却固化し、フィルムを得る。この時、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等の方法を用い、キャスティングドラムと溶融押出ししたシートの密着を上げることが好ましい。このような密着向上法は、溶融押出しシートの全面に実施してもよく、一部に実施しても良い。特にエッジピニングと呼ばれる、フイルムの両端部にのみを密着させる方法が取られることも多いが、これに限定される物ではない。
【0094】
次に本発明の溶融製膜の特徴部分であるキャスティングについて説明する(図2に示す)。
図2は本発明の実施態様であるダイ24の先端形状を示す断面図である。同図に示すように、ダイ24は、冷却ドラム26の上方に設けられており、ダイ24の内部には溶融樹脂の流路となるスリット44が鉛直方向に形成されている。このスリット44の上部には不図示のマニホールドが形成されており、このマニホールドに供給された溶融樹脂がスリット44を介して押し出され、スリット44の先端(リップ)からシート状に吐出される。
【0095】
スリット44の先端は、冷却ドラム26の回転方向の下流側が斜めに広がった形状に形成されている。すなわち、スリット44の下流側の側面44Aが、その先端において下流方向に斜めに切りかかれており、テーパー44Bが形成されている。このテーパー44Bは、側面44Aの延長に対する角度θが、0<θ<60°となるように形成されている。また、テーパー44Bは、その先端でのスリット44の間隔X1が、側面44Aの位置におけるスリット44の間隔X0に対して、X0<X1<(3・X0)となるように形成されている。これは、スリット44の先端を広げすぎると(すなわち、θやX1が大きいと)、幅方向の溶融樹脂の厚みパターンのコントロールが難しくなり、塗布厚みの変動が大きくなるという問題を発生するからである。また、スリット44の先端が小さすぎると(すなわち、θやX1が小さいと)、スリット44から吐出された溶融樹脂が吐出直後に広がって、ダイ24の先端面に付着し、これが汚れとなって、セルロースアシレートフィルム12にスジ故障を発生させる要因となるからである。
【0096】
上記の如く形成されたダイ24の先端から溶融樹脂がシート状に吐出され、この溶融樹脂が、冷却ドラム26の上にキャストして冷却される。本実施の形態では、冷却用として、三個の冷却ドラム26、28、30が設けられている。
【0097】
本発明の溶融製膜のキャスティングドラムは複数の多連式を用いることを特徴としている。図3は冷却ドラム26、28、30の配置を示す模式図である。冷却ドラム26、28、30は以下のように設定される。
【0098】
本実施の形態では、冷却ドラム26は、ダイ24の位置に応じて配置される。すなわち、ダイ24のスリット44の先端(リップ)が、冷却ドラム26の中心O1の鉛直上方から冷却ドラム26の回転方向に90°の範囲αに配置されるようになっている。また、ダイ24のスリット44の先端は、冷却ドラム26からの距離が5〜200mmの位置に配置されるようになっている。
【0099】
このように、ダイ出口から押し出された溶融樹脂が冷却ドラム26上に着地するまでの距離を5〜200mmの範囲とするのは、距離が5mm未満では、ダイ24から吐出される溶融樹脂がダイリップ先端に付着して汚れ(通称「メヤニ」)となり易く、この汚れに起因して、製造されるセルロースアシレートフィルム12にダイスジが発生し易くなる。また、距離が200mmを超えると、ネッキングにより製造されるセルロースアシレートフィルム12の幅が減少する。
【0100】
冷却ドラム26の回転速度は、ダイ24から吐出する溶融樹脂の流速によって設定される。すなわち、本発明の製造方法では、キャスティング速度は、ダイ24から吐出する流速をV0とし、冷却ドラム26の表面速度をV1とした際に、1≦V1/V0≦15となるように設定することを特徴とする。好ましいのは1≦V1/V0≦12であり、より好ましいのは1≦V1/V0≦10、さらに好ましいのは1≦V1/V0≦8である。これにより、溶融樹脂が冷却ドラム26にキャストされた際に延伸されることを防止できる。冷却ドラム26表面の速度がダイ24から吐出られる溶融樹脂の流速より遅いと、冷却ドラム26上で溶融樹脂が寄ってしまい均一の厚みを持たせることができなくなる。また、冷却ドラム26表面の速度がダイ24から吐出られる溶融樹脂の流速の15倍より大きくなると、冷却ドラム26の回転速度が速すぎるため、メルトが延伸され、レターデーションの制御がし難くなる。なお、V0は単位時間あたりの吐出量をスリット44の先端の断面積で割って求められる。このようなV1/V0の比を調整することで、後述のように得られたフィルムの結晶化を一段と促進し、吸湿膨張係数及び熱膨張係数を一段と低減させる効果が得られる。
【0101】
冷却ドラム28は冷却ドラム26の位置に応じて配置される。すなわち、冷却ドラム26から剥離されるセルロースアシレートフィルム12の剥離位置が、冷却ドラム26の中心O1の鉛直下方から冷却ドラム26の回転方向に90°の範囲βになるように設定される。
【0102】
また、冷却ドラム26、28の間隔s1は、1mm〜50mmに設定される。これは、間隔s1が50mmを超えると、冷却ドラム26、28の間でセルロースアシレートフィルム12が冷却されて収縮し、段差ムラを発生するためである。また、間隔s1が1mmを下回ると、冷却ドラム26、28が接触したり、冷却ドラム26、28の間で乱流状態が発生してセルロースアシレートフィルム12に悪影響を及ぼすためである。
【0103】
同様に、冷却ドラム28、30の間隔s2は1mm〜50mmに設定される。これは、間隔s2が50mmを超えると、セルロースアシレートフィルム12が冷却ドラム28、30の間で冷却されて収縮し、段差ムラを発生するためである。また、間隔s2が1mmを下回ると、冷却ドラム28、30が接触したり、冷却ドラム28、30の間で乱流状態が発生してセルロースアシレートフィルム12に悪影響を及ぼすためである。
【0104】
冷却ドラム30と引取ローラ31との距離s3は300mm以上に設定される。これは、距離s3が300mmを下回ると、引取ローラ31までにセルロースアシレートフィルム12が十分に冷却されず、引取ローラ31で延伸されるおそれがあるためである。
【0105】
各冷却ドラム26、28、30は、その直径r1、r2、r3がそれぞれ100mm〜1000mmに設定される。これは100mmよりも小さいと、セルロースアシレートフィルム12に円弧状の癖がついてしまうからである。また、1000mmより大きくしても、装置が大型化するだけで冷却効果があがらず、冷却効率が低下するためである。
【0106】
各冷却ドラム26、28、30の表面(外周面)は、ハードクロムメッキされている。したがって、表面が硬く、傷つきにくいという特性や、セルロースアシレートフィルム12との密着性が高いという特性、さらには、付着物が付きにくいという特性がある。
【0107】
また、各冷却ドラム26、28、30は、その表面温度t1、t2、t3が制御できるように構成されている。冷却ドラム26の表面温度t1は、(Tg−30℃)<t1<(Tg+10℃)、を満たすように設定される。これは、t1が(Tg+10℃)以上になると、冷却ドラム26上の溶融樹脂をフィルムとして剥離させる程度まで十分に冷却できないためである。また、t1が(Tg−30℃)以下になると、冷却ドラム26上で固化したセルロースアシレートフィルム12が収縮し、段差ムラを発生するためである。したがって、t1を(Tg−30℃)〜(Tg+10℃)に設定することによって、冷却ドラム26上の溶融樹脂をフィルムとして剥離できる程度まで確実に冷却することができ、且つ、急冷による収縮でセルロースアシレートフィルム12に段差ムラが発生することを防止できる。
【0108】
冷却ドラム30の表面温度t3は、(Tg−50℃)<t3<(Tg−20℃)で、且つ、(t1−10℃)>t3を満たすように設定される。t3を(Tg−20℃)以上、或いは(t1−10℃)以上に設定すると、セルロースアシレートフィルム12が冷却ドラム30から離れた後に急冷され、段ムラを生じるという不具合が発生する。したがって、t3を上記の範囲に設定することで、少なくとも二つの冷却ドラム26、30によってセルロースアシレートフィルム12を徐々に冷却することができる。これにより、セルロースアシレートフィルム12が急冷されて収縮することを防止できる。一方、t3を(Tg−50℃)以下に設定すると、冷却ドラム30においてセルロースアシレートフィルム12が急冷され、収縮してしまうという問題が発生する。したがって、t3を上記の範囲に設定することで、セルロースアシレートフィルム12が冷却ドラム30に急冷されることを防止でき、セルロースアシレートフィルム12の収縮によって段差ムラが発生することを防止できる。
【0109】
冷却ドラム28の表面温度t2は、t1よりも若干大きい温度、例えばt1≦t2≦(t1+10℃)に設定される。このように、t2をt1よりも高い温度に設定すると、冷却ドラム28とセルロースアシレートフィルム12との密着性が向上するので、セルロースアシレートフィルム12は冷却ドラム26から剥離しやすくなる。したがって、セルロースアシレートフィルム12が冷却ドラム26に連れ回りして回転方向に引っ張られることを防止でき、皺が発生して段差ムラを生じることを防止できる。なお、冷却ドラム28の温度t2が高すぎると、冷却ドラム28から離れた後にセルロースアシレートフィルム12が急冷されたり、或いは冷却ドラム28から剥離しにくくなったりするので、t2≦(t1+10℃)とすることが好ましい。
【0110】
上記の如く構成された製膜工程部14によれば、溶融樹脂(セルロースアシレートフィルム12)を最初に冷却する第1の冷却ドラム26と、引取ローラ31の直前で最後に冷却する最終の冷却ドラム30の、少なくとも二つの冷却ドラム26、30によってセルロースアシレートフィルム12を徐々に冷却するので、セルロースアシレートフィルム12が急冷されることを防止することができる。したがって、セルロースアシレート12のように収縮しやすい材料を用いた場合にも、急冷による収縮を防止することができ、段差ムラの発生を防止できる。
【0111】
また、製膜工程部14は、第1の冷却ドラム26と最終冷却ドラム30との間に、第1の冷却ドラム26よりも温度の高い中間冷却ドラム28を配設したので、セルロースアシレートフィルム12は第1の冷却ドラム26よりも中間の冷却ドラム28との密着性が向上し、第1の冷却ドラム26から簡単に剥離され、中間の冷却ドラム28によって搬送される。したがって、セルロースアシレートフィルム12が第1の冷却ドラム28から剥離する際に、第1の冷却ドラム28に連れ回りし、段差ムラを発生することを防止できる。
【0112】
なお、上述した実施形態は三個の冷却ドラム26、28、30で連続して冷却する三連式の例であるが、冷却ドラムの個数はこれに限定するものではなく、少なくとも二個以上の冷却ドラムを設けて連続的に冷却する多連式であれば、徐冷することができ、急冷による段差ムラの発生を防止できる。例えば、上述した実施形態において、中間の冷却ドラム28がなく、第1の冷却ドラム26と最終の冷却ドラム30だけであってもセルロースアシレートフィルム12を徐冷できるので、急冷による段差ムラの発生を防止できる。また、冷却ドラムの個数は四個以上としてもよい。すなわち、上述した実施の形態において、第1の冷却ドラム26と最終の冷却ドラム30との間に二個以上の中間冷却ドラムを配設してもよい。
【0113】
このように、本発明の多連式キャスティングドラムの温度及びキャスティング条件(V1/V0)を上述ように設定することで、セルロースアシレートの結晶化度を増加させ、パッキング密度の向上を促進し、さらに、フィルム両面ともに鏡面状の金属ドラムに接触させることで、面状および両面の物性を均一化することができる。結果として、得られるセルロースアシレートフィルムの吸湿膨張係数、熱膨張係数及び高温高湿環境下の寸法変化率を低減させ、反射防止塗布層の支持体及び偏光板の保護フィルムとして使用する場合、湿度変動又はまたは高温高湿環境下の寸法変化によって、積層構造の反射防止硬化性樹脂塗布層に剥れや、ひび割れ等の発生を抑制することができる。すなわち、本実施の形態によれば、反射防止フィルムの透明支持体として適したセルロースアシレートフィルム12を製造することができる。
【0114】
また、いわゆるタッチロール法を用いる場合、タッチロール表面は、ゴム、テフロン(登録商標)等の樹脂でもよく、金属ロールでも良い。さらに、金属ロールの厚みを薄くすることでタッチしたときの圧力によりロール表面が若干くぼみ、圧着面積が広くなりフレキシブルロールと呼ばれる様なロールを用いることも可能である。
【0115】
本発明では溶融後ダイから押出した後、キャスティングドラム上でタッチロールを用いて製膜することがより好ましい。この方法はダイから出たメルトをキャスティングドラムとタッチロールで挟み込んで冷却固化するものである。
このようなタッチロールは、ダイから出たメルトをロール間で挟む時に生じる残留歪を低減するために、弾性を有するものが好ましい。ロールに弾性を付与するためには、ロールの外筒厚みを通常のロールよりも薄くすることが必要であり、外筒の肉厚Zは、0.05mm〜7.0mmが好ましく、より好ましくは0.2mm〜5.0mm、更に好ましくは0.3mm〜2.0mm以下である。例えば、外筒厚みを薄くすることにより、弾性を付与したタイプや、金属シャフトの上に弾性体層を設け、その上に外筒を被せ、弾性体層と外筒の間に液状媒体層を満たすことにより極薄の外筒によりタッチロール製膜を可能にしたものが挙げられる。キャスティングロール、タッチロールは、表面が鏡面であることが好ましく、算術平均高さRaが100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。具体的には例えば特開平11−314263号、特開2002−36332号、特開平11−235747号、特開2004−216717号、特開2003−145609号各公報や、国際公開第97/28950号パンフレットに記載のものを利用できる。
このようにタッチロールは薄い外筒の内側を流体が満たされているため、キャスティングロールに接触させるとその押圧で凹状に弾性変形する。従って、タッチロールとキャスティングロールは冷却ロールと面接触するため押圧が分散され、低い面圧を達成できる。このためこの間に挟まれたフィルムに残留歪を残すことなく、表面の微細凹凸を矯正できる。好ましいタッチロールの線圧は3kg/cm〜100kg/cm、より好ましくは5kg/cm〜80kg/cm、さらに好ましくは7kg/cm〜60kg/cmである。ここで言う線圧とはタッチロールに加える力をダイの吐出口の幅で割った値である。
このような線圧を調整することによってフィルムの両面が均一に挟まれるため、セルロースアシレートの結晶化度を増加させ、パッキング密度の向上を促進し、フィルムの吸湿膨張係数、熱膨張係数及び高温高湿環境下の寸法変化率を一段と低減させる効果が得られる。タッチロール製膜条件と前述の本発明の多連式キャスティングドラム条件(温度およびキャスティング速度V1/V0)を併せて調整することにより、製膜したフィルム物性(吸湿膨張係数および熱膨張係数など)の相乗改良効果が得られる。
また、フィルムの両面に全体的に面圧が均一に掛けられるため、フィルム両面の物性をより均一化することができる。さらに、フィルムに形成された微細凹凸(ダイライン)及び厚みムラを一段と低減する効果も得られる。
【0116】
タッチロール温度は60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは75℃〜140℃である。このような温度制御はこれらのロール内部に温調した液体や気体を通すことで達成できる。
【0117】
(5)巻き取り
この後、キャスティングドラムから剥ぎ取り、ニップロールを経た後巻き取る。
次に、ニップロール31について説明する。ニップロール31は、製膜工程部14で製造したセルロースアシレートフィルム12を引き取るローラであり、一対のニップローラ31A、31Bによって構成される。この一対のニップローラ31A、31Bは、一方が駆動装置(不図示)に接続されて回転駆動し、もう一方が回動自在に支持されて従動するようになっており、セルロースアシレートフィルム12を挟持するように配置される。そして、ニップローラ31A、31Bを回転させることによって、セルロースアシレートフィルム12を製膜工程部14から引き取っている。
【0118】
巻き取り速度は10m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分〜80m/分、さらに好ましくは20m/分〜70m/分である。製膜幅は好ましくは0.7m〜5m、より好ましくは1m〜4m、さらに好ましくは1.3m〜3mである。
【0119】
このようにして得たシートは両端をトリミングし、巻き取ることが好ましい。トリミングされた部分は、粉砕処理された後、或いは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料としてまたは異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。トリミングカッターはロータリーカッター、シャー刃、ナイフ等の何れのタイプの物を用いても構わない。材質についても、炭素鋼、ステンレス鋼何れを用いても構わない。一般的には、超硬刃、セラミック刃を用いると刃物の寿命が長く、また切り粉の発生が抑えられて好ましい。
【0120】
また、巻き取り前に、少なくとも片面にラミフィルムを付けることも、傷防止の観点から好ましい。好ましい巻き取り張力は1kg/m幅〜50kg/幅、より好ましくは2kg/m幅〜40kg/幅、さらに好ましくは3kg/m幅〜20kg/幅である。巻き取り張力が1kg/m幅より小さい場合には、フィルムを均一に巻き取ることが困難である。逆に、巻き取り張力が50kg/幅を超える場合には、フィルムが堅巻きになってしまい、巻き外観が悪化するのみでなく、フィルムのコブの部分がクリープ現象により延びてフィルムの波うちの原因になったり、あるいはフィルムの伸びによる残留複屈折が生じるため好ましくない。巻き取り張力は、ラインの途中のテンションコントロールにより検知し、一定の巻き取り張力になるようにコントロールされながら巻き取ることが好ましい。製膜ラインの場所により、フィルム温度に差がある場合には熱膨張により、フィルムの長さが僅かに異なる場合があるため、ニップロール間のドロー比率を調整し、ライン途中でフィルムに規定以上の張力がかからない様にすることが必要である。
【0121】
巻き取り張力はテンションコントロールの制御により、一定張力で巻き取ることもできるが、巻き取った直径に応じてテーパーをつけ、適正な巻取り張力にすることがより好ましい。一般的には巻き径が大きくなるにつれて張力を少しずつ小さくするが、場合によっては、巻き径が大きくなるにしたがって張力を大きくする方が好ましい場合もある。
【0122】
≪未延伸セルロースアシレートフィルムの物性≫
このようにして得られた未延伸セルロースアシレートフィルムはRe=0〜20nm,Rth=0〜60nmが好ましく、より好ましくはRe=0〜15nm,Rth=0〜55nm、さらに好ましくはRe=0〜10nm,Rth=0〜50nmである。
Re、Rthは各々面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)で光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rthは前記Re、面内の遅相軸(KOBRA−21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して角度を変えて、傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定した複数のレターデーション値を基にKOBRA−21ADHが算出する。本明細書においては、特に断らない限りλとして590±5nmを使用している。
【0123】
このように得られた未延伸のセルロースアシレートフィルムの全光透過率は90%〜100%が好ましく、より好ましくは91〜100%、さらに好ましくは92〜100%である。好ましいヘイズは0〜1%であり、より好ましくは0〜0.8%、さらに好ましくは0〜0.6%である。
未延伸のセルロースアシレートフィルムの厚みは30μm〜250μmが好ましく、より好ましくは35μm〜200μm、さらに好ましくは40μm〜200μmである。厚みむらは長手方向、幅方向いずれも0%〜3%が好ましく、より好ましくは0%〜2%、さらに好ましくは0%〜1%である。
引張り弾性率は1.5kN/mm2〜3.5kN/mm2が好ましく、より好ましくは1.7kN/mm2〜3.4kN/mm2、さらに好ましくは1.8kN/mm2〜3.3kN/mm2である。
常温の破断伸度は3%〜200%が好ましく、より好ましくは10%〜150%、さらに好ましくは20%〜150%である。
Tg(フィルムのTg即ちセルロースアシレートと添加物の混合体のTgを指す)は95℃〜145℃が好ましく、より好ましくは100℃〜140℃、さらに好ましくは105℃〜135℃である。
25℃・相対湿度80%での平衡含水率は1質量%〜4質量%が好ましく、より好ましくは1.2質量%〜3質量%、さらに好ましくは1.5質量%〜2.5質量%である。
本発明のセルロースアシレートフィルムの黄色味(YI;イエローネスインデックス)は、0〜8が好ましく、0〜5がより好ましく、0〜4がさらに好ましい。
【0124】
《延伸と延伸セルロースアシレートフィルムの物性》
前記の方法で製膜した未延伸のセルロースアシレートフィルムを延伸してもよい。これによりRe,Rthを制御できる。
延伸はTg〜(Tg+50)℃で実施するのが好ましく、より好ましくは(Tg+3)℃〜(Tg+30)℃、さらに好ましくは(Tg+5)℃〜(Tg+20)℃である。好ましい延伸倍率は少なくとも一方に1%〜250%、より好ましくは2%〜200%、さらに好ましくは3%〜150%である。縦、横均等に延伸してもよいが、一方の延伸倍率を他方より大きくし不均等に延伸するほうがより好ましい。縦(MD)、横(TD)いずれを大きくしてもよいが、小さい方の延伸倍率は0%〜30%が好ましく、より好ましくは0%〜25%であり、さらに好ましくは0%〜20%である。大きいほうの延伸倍率は1%〜250%であり、より好ましくは10%〜200%、さらに好ましくは30%〜150%である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。ここで云う延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/(延伸前の長さ)
【0125】
このような延伸は出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸してもよく(縦延伸)、フィルムの両端をチャックで把持しこれを直交方向(長手方向と直角方向)に広げてもよい(横延伸)。また、特開2000−37772号公報、特開2001−113591号公報、特開2002−103445号公報に記載の同時2軸延伸法を用いてもよい。
Re、Rthの比を自由に制御するには、縦延伸の場合、ニップロール間をフィルム幅で割った値(縦横比)を制御することでも達成できる。即ち縦横比を小さくすることで、Rth/Re比を大きくすることができる。また、縦延伸と横延伸とを組み合わせてRe,Rthを制御することもできる。即ち縦延伸倍率と横延伸倍率を差が小さくすることでReは小さくでき、この差を大きくすることでReは大きくできる。
【0126】
このようにして延伸したセルロースアシレートフィルムのRe、Rthは下式を満足することが好ましい。
Rth≧Re
300≧Re≧0
500≧Rth≧30
前記ReおよびRthとしてより好ましくは、
Rth≧Re×1.1
250≧Re≧10
400≧Rth≧50
であり、さらに好ましくは、
Rth≧Re×1.2
200≧Re≧20
350≧Rth≧80
である。
【0127】
また製膜方向(長手方向)と、フィルムのReの遅相軸とのなす角度θが0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。即ち、縦延伸の場合は0°に近いほど好ましく、0±3°が好ましく、より好ましくは0±2°、さらに好ましくは0±1°である。横延伸の場合は、90±3°あるいは−90±3°が好ましく、より好ましくは90±2°あるいは−90±2°、さらに好ましくは90±1°あるいは−90±1°である。
延伸後のセルロースアシレートフィルムの厚みはいずれも15μm〜200μmが好ましく、より好ましくは30μm〜170μm、さらに好ましくは40μm〜140μmである。厚みむらは長手方向、幅方向いずれも0%〜3%が好ましく、より好ましくは0%〜2%、さらに好ましくは0%〜1%である。
【0128】
延伸セルロースアシレートフィルムの物性は以下の範囲が好ましい。
引張り弾性率は1.5kN/mm2〜3.5kN/mm2が好ましく、より好ましくは1.7kN/mm2〜3.4kN/mm2、さらに好ましくは1.8kN/mm2〜3.3kN/mm2である。
常温での破断伸度は3%〜150%が好ましく、より好ましくは5%〜140%、さらに好ましくは8%〜140%である。
80℃1日での熱寸法変化は縦、横両方向とも0%〜0.1%が好ましく、より好まし
くは0%〜0.08%、さらに好ましくは0%〜0.05%である。
25℃・相対湿度80%での平衡含水率は1質量%〜4質量%が好ましく、より好ましくは1.2質量%〜3質量%、さらに好ましくは1.5質量%〜2.5質量%である。
厚みは30μm〜200μmが好ましく、より好ましくは40μm〜180μm、さらに好ましくは50μm〜150μmである。厚みむらは長手方向、幅方向いずれも0%〜3%が好ましく、より好ましくは0%〜2%、さらに好ましくは0%〜1%である。
ヘーズは0%〜3%、より好ましくは0%〜2%、さらに好ましくは0%〜1%である。
全光透過率は90%〜100%が好ましく、より好ましくは91%〜100%、さらに好ましくは92%〜100%である。
【0129】
≪セルロースアシレートフィルムの加工応用≫
《用途》
本発明の未延伸、延伸セルロースアシレートフィルムは、光学フィルム、反射防止フィルムの透明支持体、偏光板保護フィルム用、液晶表示装置の光学補償シート(位相差フィルムともいう)、偏光板の保護機能且つ光学補償機能を兼有する光学フィルム、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体として有用である。これらの用途に用いるために、本発明の未延伸、延伸セルロースアシレートフィルムには以下の加工処理を必要に応じて施すことができる。
【0130】
《表面処理》
本発明の未延伸および延伸セルロースアシレートフィルムは表面処理を行うことによって、各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。前記グロー放電処理とは、0.10〜3000Paの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、さらにまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類およびそれらの混合物などが挙げられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000keV下で20〜500kGyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500keV下で20〜300kGyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリケン化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。具体的には特開2003−3266号公報、同2003−229299号公報、同2004−322928号公報、同2005−76088号公報等を用いることができる。
【0131】
(ケン化処理)
アルカリケン化処理は、ケン化液に浸漬しても良く、ケン化液を塗布しても良い。
【0132】
(アルカリ溶液)
本発明のアルカリ溶液はpH11以上のアルカリ溶液が好ましい。より好ましくはpH12〜14である。
アルカリ溶液に用いられるアルカリ剤の例として、水酸化ナトリウム、同カリウム、同リチウム等の無機アルカリ剤、又、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルブチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて併用することもでき、一部を例えばハロゲン化したような塩の形で添加してもよい。
これらのアルカリ剤の中でも、水酸化ナトリウム或は水酸化カリウムが、これらの量の調整により広いpH領域でのpH調整が可能となるため好ましい。
アルカリ溶液の濃度(アルカリ溶液中のアルカリ剤の含有量)は、セルロースアシレートのアシル置換度に応じて決定する必要がある。すなわち、セルロースアシレートにおいては、アシル基の炭素数増大に伴って、ケン化効率が著しく低下するため、アシル基の炭素数が大きくなるほどアルカリ濃度は高くする必要があるが、アルカリ濃度が高すぎるとアルカリ溶液の安定性が損なわれ、長時間塗布において析出する場合もあるため、セルロースアシレートの一次構造に応じて適切にアルカリ溶液を選定することがポイントとなる。そのため、本発明で用いられるアルカリ溶液は2mol/L以上であることが好ましく、2.5〜15mol/Lであることがより好ましく、2.5〜10mol/Lであることがさらに好ましく、2.5〜8mol/Lであることが最も好ましい。また、アルカリ溶液の濃度は、この範囲内で、使用するアルカリ剤の種類、反応温度および反応時間に応じて調整することもできる。
【0133】
本発明では、セルローストリアセテート(TAC)フィルムに通常使われるアルカリケン化液(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの2〜4mol/Lの水溶液)を用いる場合、ケン化処理温度が41℃〜80℃の温度で行われるものが本発明の特徴としている。好ましいのは41℃〜70℃、より好ましいのは41℃〜65℃である。ケン化温度が40°以下になると、セルロースアシレート表面ケン化不十分であり、親水化の対水接触角が低下させず、偏光膜との接着性が得られなく、偏光板の耐久性に悪影響を及ぼしてしまう。一方ケン化処理温度が高すぎると、アシレートフィルム中の成分(可塑剤など)が抽出されたり、フィルムの過度の膨潤が起こる場合があり、フィルム面状に白化などの問題が生じてしまう。
【0134】
アルカリ溶液の溶媒は、水の単独溶媒、もしくは水と有機溶媒との混合溶媒である。好ましい有機溶媒は、アルコール類、アルカノール類、グリコール化合物のモノエーテル類、ケトン類、アミド類、スルホキシド類、エーテル類が挙げられ、より好ましくは、分子量61以上のアルコール類であり、さらに好ましくは分子量61以上のグリコール類であり、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリンモノメチルエーテル、グリセリンモノエチルエーテル、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。水と併用される有機溶媒は、単独もしくは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0135】
有機溶媒を単独或いは2種以上を混合する場合の少なくとも一種の有機溶媒は、水への溶解性が大きなものが好ましい。有機溶媒の水の溶解度は、50質量%以上が好ましく、水と自由に混合するものがより好ましい。アルカリ剤、ケン化処理で副生する脂肪酸の塩、空気中の二酸化炭素を吸収して生じた炭酸の塩等への溶解性が充分なアルカリ溶液を調製できる。有機溶媒の溶媒中の使用割合は、溶媒の種類、水との混和性(溶解性)、反応温度および反応時間に応じて決定する。短い時間でケン化反応を完了するためには、高い濃度に溶液を調製することが好ましい。ただし、溶媒濃度が高すぎるとアシレートフィルム中の成分(可塑剤など)が抽出されたり、フィルムの過度の膨潤が起こる場合があり、適切に選択する必要がある。
水と有機溶媒の混合比は、50/50〜95/5質量比が好ましい。より好ましくは60/40〜90/10質量比であり、さらに好ましくは70/30〜90/10質量比である。この範囲において、アシレートフィルムの光学特性を損なうことなく容易にフィルム全面が均一にケン化処理される。
【0136】
(界面活性剤)
本発明のアルカリ溶液は、界面活性剤を含有することもできる。界面活性剤を添加することによって、たとえ有機溶媒がフィルム含有物質を抽出したとしてもアルカリ溶液中に安定に存在させ、後の水洗工程においても抽出物質が析出、固体化しない。好ましく用いられる界面活性剤については、例えば、特開2003−313326号公報などに記載がある。
【0137】
(消泡剤)
本発明のアルカリ溶液は、消泡剤を含有させることもでき、好ましく用いられる消泡剤について、例えば、特開2003−313326号公報などに記載がある。
【0138】
(防黴剤/防菌剤)
本発明に用いるアルカリ溶液には、防黴剤および/または防菌剤を含有させることもでき、好ましく用いられる防黴剤/防菌剤について、例えば、特開2003−313326号公報などに記載がある。
【0139】
(アルカリケン化処理)
本発明のフィルムは、フィルムを前記アルカリ溶液でケン化処理する工程、アルカリ溶液をフィルムから洗い落とす工程によりアルカリケン化処理を実施する。その後、アルカリ溶液を中和する工程、および中和液をフィルムから洗い落とす工程を含んでもよい。これらの工程は、フィルムを搬送しながら実施することが好ましく、特開2001−188130号公報記載のようなアルカリ溶液に浸漬する方法を用いてもよく、特開2004−203965号公報記載のようなアルカリ溶液を塗布する方法を用いてもよい。
ケン化時間は1〜10分であることが好ましく、2〜8分であることが好ましく、2〜6分であることがさらに好ましい。ケン化時間が長すぎると、後述する偏光板耐久性に悪影響を及ぼしてしまう。
【0140】
《機能層付与》
本発明の延伸および未延伸セルロースアシレートフィルムには、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることができる。中でも好ましいのが、偏光膜の付与(偏光板)、光学補償層の付与(光学補償フィルム)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)、ハードコート層の付与である。
また、機能層との接着のため下塗り層を設けることも好ましい。この層は上記表面処理をした後、塗設してもよく、表面処理なしで塗設してもよい。これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもできる。
【0141】
(1)偏光膜の作製
(偏光膜の使用素材)
現在、市販の偏光板に使用される偏光膜(偏光子)は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。偏光層は、Optiva Inc.に代表される
塗布型偏光膜も利用できる。偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例えば、スルホ基、アミノ基、ヒドロキシル基)を有することが好ましい。例えば、発明協会公開技法(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)58頁に記載の化合物が挙げられる。
【0142】
偏光膜は、厚み35μm以下のものであれば、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光膜としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光膜が好適である。特にヨウ素染色したポリビニルアルコール系フィルムの染色性が良好で好適である。
【0143】
厚み30μm以下の偏光膜は、たとえば、厚みが100μm以下のポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ素にて染色、架橋、延伸、乾燥することにより形成することができる。
【0144】
ポリビニルアルコール系フィルムとしては、ポリビニルアルコール系樹脂を、水または有機溶媒に溶解した原液を流延成膜する流延法、キャスト法、押出法等の任意の方法で成膜されたものを使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、100〜5000が好ましく、1400〜4000がより好ましい。ポリビニルアルコール系フィルムの膜厚は100μm以下であり、好ましくは20〜90μm、さらに好ましくは20〜85μmである。膜厚が100μmを超える場合は、液晶表示装置等に実装した場合に表示パネルの色変化が大きくなる。一方、膜厚が薄すぎる場合は延伸が困難となる。
【0145】
染色工程においては、ポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ素が添加された20〜70℃の染色浴に1〜20分間浸漬し、ヨウ素を吸着させる。染色浴中のヨウ素濃度は、通常水100質量部あたり0.1〜1質量部である。染色浴中には、染色効率を高めるために、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等のヨウ化物等の助剤を好ましくは0.02〜20質量部、より好ましくは2〜10質量部添加してもよい。染色浴中には、水溶媒以外に、水と相溶性のある有機溶媒が少量含有されていてもよい。なお、ポリビニルアルコール系フィルムは、ヨウ素または二色性染料含有水溶液中で染色する前に、水浴等で20〜60℃で0.1〜10分間膨潤処理してもよい。
【0146】
架橋工程においては、染色処理したポリビニルアルコール系フィルムを、ホウ素化合物含有水溶液中で延伸する。ホウ素化合物含有水溶液は、通常水100質量部に対して、ホウ酸、ホウ砂、グリオキザール、グルタルアルデヒド等のポリビニルアルコールの架橋剤を単独または混合して、1〜10質量部含有する。ホウ素化合物含有水溶液中には、面内の均一な特性を得るために、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化鋼、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等のヨウ化物等の助剤を好ましくは0.05〜15質量%、より好ましくは0.5〜8質量%添加してもよい。ホウ素化合物含有水溶液の温度は通常20〜70℃、好ましくは40〜60℃の範囲である。浸漬時間は、特に限定されないが、通常1秒〜15分間、好ましくは5秒〜10分間である。ホウ素化合物含有水溶液には、水溶媒以外に、水と相溶性のある有機溶媒が少量含有されていてもよい。
【0147】
乾燥工程においては、ヨウ素吸着配向処理を施したポリビニルアルコール系フィルムを、さらに水温が好ましくは10〜60℃、より好ましくは30〜40℃、濃度が好ましくは0.1〜10質量%のヨウ化カリウム等のヨウ化物水溶液に通常1秒〜1分間浸漬した後、水洗し、通常20〜80℃で1分〜10分間乾燥して偏光フィルムを得る。ヨウ化物水溶液中には、硫酸亜鉛、塩化亜鉛物等の助剤を添加してもよい。
【0148】
延伸法の場合、延伸倍率は3.0〜20.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸(相対湿度10%以下の環境下にて行う延伸)で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は3.0〜10.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は3.0〜7.5倍が好ましい。ウェット延伸の総延伸倍率が3.0倍未満の場合は高偏光度の偏光板を得難く、7.5倍を超える場合はフィルムが破断しやすくなる。なお、ここでいう延伸倍率は、(延伸後の偏光膜の長さ)/(延伸前の偏光膜の長さ)である。
延伸方向はMD方向に平行に行ってもよく(平行延伸)、斜め方向におこなってもよい(斜め延伸)。これらの延伸は、延伸方法や延伸回数等は、特に制限されるものではなく、染色,架橋の各工程で行ってもよく、いずれか一工程でのみ行ってもよい。また、同一工程で複数回行ってもよい。
【0149】
(I)平行延伸法
平行延伸法においては、延伸に先立ち、PVAフィルムを膨潤させるのが好ましい。膨潤度は1.2〜2.0倍(膨潤前と膨潤後の質量比)である。この後、ガイドロール等を介して連続搬送しつつ、水系媒体浴内や二色性物質溶解の染色浴内で、15〜50℃、就中17〜40℃の浴温で延伸するのが好ましい。延伸は2対のニップロールで把持し、後段のニップロールの搬送速度を前段のそれより大きくすることで達成できる。
【0150】
(II)斜め延伸法
斜め延伸法においては、特開2002−86554号公報に記載の斜め方向に傾斜め方向に張り出したテンターを用い延伸する方法を用いることができる。この延伸は空気中で延伸するため、事前に含水させて延伸しやすくすることが必用である。好ましい含水率は5%〜100%であり、延伸温度は40℃〜90℃が好ましく、延伸中の湿度は、相対湿度で50%〜100%が好ましい。
このようにして得られた偏光膜の吸収軸は10°〜80°が好ましく、より好ましくは30°〜60°であり、さらに好ましくは実質的に45°(40°〜50°)である。
【0151】
また、保護フィルムと貼り合わせる際の偏光膜の水分率(偏光膜の全体質量に占める偏光膜中の水分質量割合)は、偏光膜の厚さにもよるが、一般に20質量%未満であり、5〜20質量%、特に13〜17質量%の範囲であることが好ましい。水分率が20質量%を超える場合は、偏光板作製後の水分変化量が多くなり、高温高湿環境下における偏光度の低下や耐久性に悪影響を及ぼしている。
【0152】
(貼り合せ)
上記ケン化後の延伸、未延伸セルロースアシレートフィルムと、延伸して調製した偏光膜を貼り合わせ偏光板を作製する。張り合わせる方向は特に制限はないが、セルロースアシレートフィルムの流延軸方向と偏光板の延伸軸方向が0°、45°、90°のいずれかになるように行うのが好ましい。
貼り合わせの接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmが特に好ましい。
貼り合せの層構成として以下のようなものが挙げられる。
イ)A/P/A
ロ)A/P/B
ハ)A/P/T
ニ)B/P/B
ホ)B/P/T
なお、「A」は本発明の未延伸セルロースアシレートフィルム、「B」は本発明の延伸セルロースアシレートフィルム、「T」はセルローストリアセテートフィルム(富士写真フイルム(株)製、フジタックTD80U等)、「P」は偏光膜を指す。
【0153】
前記ロ)の構成の場合A,Bは同一組成のセルロースアセテートでも異なっていてもよい。前記イ)の構成の場合、Aは同一組成のセルロースアセテートでも異なっていてもよく、同一延伸倍率でも異なっていてもよい。前記ニ)の構成の場合、Bは同一組成のセルロースアセテートでも異なっていてもよく、同一延伸倍率でも異なっていてもよい。また本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込んで使用する場合は、どちらを液晶面にしてもよいが、構成ロ)、ホ)の場合はBを液晶側にするのがより好ましい。
本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込む場合、通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、この場合、本発明の偏光板であるイ)〜ホ)および通常の偏光板(T/P/T)を自由に組み合わせることができる。しかし液晶表示装置の表示側最表面のフィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等を設けることが好ましく、これら各層には後述のものを用いることができる。
【0154】
(偏光板の特性と応用)
このようにして得られた偏光板の光線透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。本発明の偏光板の透過率は、42.0%以上であることが好ましく、具体的には、42%〜50%あることが好ましく、より好ましくは42.5%〜50%、さらに好ましくは43.0%〜50%、最も好ましくは43.5%〜50%の範囲にある。また、偏光度は、99.0%以上であることが好ましく、具体的には、99%〜100%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは99.5%〜100%、さらに好ましくは99.6%〜100%、最も好ましくは99.9%〜100%の範囲にある。
さらに、このようにして得た本発明の偏光板はλ/4板と積層し、円偏光を作製することができる。この場合λ/4の遅相軸と偏光板の吸収軸とを45°になるように積層する。この時、λ/4は特に限定されないが、より好ましくは低波長ほどレターデーションが小さくなるような波長依存性を有するものがより好ましい。さらには長手方向に対し20°〜70°傾いた吸収軸を有する偏光膜、および液晶性化合物からなる光学異方性層からなるλ/4板を用いることが好ましい。
これらの偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合してもよい。プロテクトフィルムおよびセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。
【0155】
(2)反射防止フィルムの作成
(反射防止フィルムの構成)
本発明の反射防止フィルムは、本発明のセルロースアシレート透明支持体の片面上に、少なくとも1層のハードコート層と最外層に位置する低屈折率層を有する。本発明の反射防止フィルムの好ましい積層構成として、透明支持体、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順に層を有する構成を挙げることができる。透明支持体、中屈折率層、高屈折率層および低屈折率層の屈折率は、以下の関係を満足する。
低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率<中屈折率層の屈折率<高屈折率層の屈折率
また、ハードコート層と低屈折率層の間に、防眩性ハードコート層を設けてもよい。ハードコート層、光拡散性(内部散乱性)のハードコート層、高屈折率層、低屈折率層の順に層を有する構成も好ましい。
【0156】
図5には、本発明の反射防止フィルムの好ましい積層構成の一例が模式的な概略断面図として示されている。この場合、反射防止フィルムは、セルロースアシレートフィルム支持体1、ハードコート層2、光拡散性(内部散乱性、防眩性)ハードコート層3、そして低屈折率層4の順序の層構成を有する。低屈折率層4は、最外に位置するように配置する。ハードコート層3には、光拡散性(内部散乱性)を付与する粒子5などが分散している。本発明において、ハードコート層は、このように光拡散性(内部散乱性)を有するハードコート層と光拡散性(内部散乱性)を有しないハードコート層の組み合わせでもよく、防眩性を有するハードコート層と防眩性を有しないハードコート層の組み合わせでもよく、いずれかのハードコート層1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。
【0157】
本発明の反射防止膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
本発明の反射防止フィルムは、ヘイズ値が好ましくは3〜30%、より好ましくは4〜15%の範囲にあり、そして450nmから650nmの平均反射率が好ましくは1.8%以下、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.2%以下である。ヘイズ値および平均反射率が上記範囲に調節することにより、透過画像の劣化を伴なわず、良好な防眩性と反射防止特性が得られる。
【0158】
(高屈折率層および中屈折率層)
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒子サイズ100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜からなる。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908号公報、アニオン性化合物或いは有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(特開2001−166104号公報等)、特定の分散剤を併用すること(例えば、特開平11−153703号公報、米国特許第6,210,858B1号、特開2002−2776069号公報等)等が挙げられる。
【0159】
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。さらに、ラジカル重合性および/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有する多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有する有機金属化合物およびその部分縮合体組成物からなる群より選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
【0160】
(低屈折率層)
本発明における低屈折率層は、熱または電離放射線により架橋する含フッ素化合物、無機もしくは有機の微粒子、バインダー等から形成することが好ましく、粒子間もしくは粒子内部に空隙を有する層、ゾルゲル法による低屈折率層等も用いることができる。
低屈折率層の屈折率は、低ければ反射防止性能が良化するため好ましいが、低屈折率層の強度付与の観点では困難となる。このバランスを考えると、低屈折率層の屈折率は1.30〜1.50であることが好ましく、1.35〜1.49であることがさらに好ましい。また、低屈折率層の屈折率は、高屈折率層より、0.05〜2.0の範囲で低いことが必要である。
低屈折率層に用いられる架橋性のフッ素高分子化合物としてはパーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラデシル)トリエトキシシラン)等の他、含フッ素モノマーと架橋性基付与のためのモノマーを構成単位とする含フッ素共重合体が挙げられる。
【0161】
含フッ素ポリマーは、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの重合反応により合成することが好ましい。含フッ素モノマーの具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類、パーフルオロポリエーテルおよびその誘導体等が挙げられる。これらの中から、一つまたは複数のモノマーを任意の比率で組み合わせて、(共)重合により目的の含フッ素ポリマーを得ることができる。
また、上記含フッ素モノマーと、フッ素原子を含有しないモノマーとの共重合体を含フッ素ポリマーとして用いてもよい。併用可能なモノマーには特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロニトリル誘導体等を挙げることができる。好ましいフッ素化合物として、特開平9−222503号公報の段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報の段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報の段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報、特開2003−26732号公報の段落番号[0012]〜[0077]、特開2004−45462号公報の段落番号[0030]〜[0047]等に記載の化合物を挙げることができる。
また、含フッ素ポリマー中に、滑り性付与のため、ポリオルガノシロキサンを導入することも好ましい。これは、例えば末端にアクリル基、メタクリル基、ビニルエーテル基、スチリル基等を持つポリオルガノシロキサンと上記のモノマーとの重合によって得られる。
【0162】
架橋性基付与のためのモノマーとしては、グリシジルメタクリレートのように分子内にあらかじめ架橋性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有する(メタ)アクリレートモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート等)が挙げられる。後者は共重合の後、架橋構造を導入できることが特開平10−25388号公報および特開平10−147739号公報で知られている。
含フッ素ポリマーとして、市販されている素材を使用することもできる。市販されているフッ素ポリマーの例としては、サイトップ(旭硝子)、テフロンAF(デュポン)、ポリフッ化ビニリデン、ルミフロン(旭硝子)、オプスター(JSR)、等が挙げられる。
フッ素素材による低屈折率層は、動摩擦係数が0.03〜0.15、水に対する接触角が90〜120°であることが好ましい。
【0163】
上記のフッ素素材による低屈折率層中に無機微粒子を用いることは、強度改良の点で好ましい。無機微粒子としては非晶質のものが好ましく用いられ、金属等の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、なかでも酸化物が特に好ましい。これら無機化合物を構成する金属等の原子としては、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Ti、Sn、In、W、Y、Sb、Mn、Ga、V、Nb、Ta、Ag、Si、B、Bi、Mo、Ce、Cd、Be、PbおよびNiが好ましく、Mg、Ca、BおよびSiがさらに好ましい。二種類の金属等を含む無機化合物を用いてもよい。特に好ましい無機化合物は、二酸化ケイ素、すなわちシリカである。
該無機微粒子の平均粒子サイズは、0.001〜0.2μmであることが好ましく、0.005〜0.05μmであることがより好ましい。微粒子の粒子サイズはなるべく均一(単分散あるいは実質上単分散)であることが好ましい。
該無機微粒子の添加量は、低屈折率層の全質量の5〜90質量%であることが好ましく、10〜70質量%であるとさらに好ましく、10〜50質量%が特に好ましい。
該無機微粒子は表面処理を施して用いることも好ましい。表面処理法としてはプラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理とカップリング剤を使用する化学的表面処理があるが、カップリング剤を使用する化学的表面処理が好ましい。カップリング剤としては、オルガノアルコキシメタル化合物(例えば、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。該無機微粒子がシリカの場合はシランカップリング処理が特に有効である。
【0164】
低屈折率層として、無機もしくは有機の微粒子を用い、微粒子間または微粒子内にミクロボイドを形成した層を用いることも好ましい。
粒子間のミクロボイドは、微粒子を少なくとも2個以上積み重ねることにより形成することができる。なお、粒子サイズが等しい(完全な単分散の)球状微粒子を最密充填すると、26体積%の空隙率の微粒子間ミクロボイドが形成される。粒子サイズが等しい球状微粒子を単純立方充填すると、48体積%の空隙率の微粒子間ミクロボイドが形成される。実際の低屈折率層では、微粒子の粒子サイズの分布や粒子内ミクロボイドが存在するため、空隙率は上記の理論値からかなり変動する。
空隙率を増加させることで、低屈折率層の屈折率を低下させることができる。また、微粒子を積み重ねてミクロボイドを形成するのと、微粒子の粒子サイズを調整することで、粒子間ミクロボイドの大きさも適度の(光を散乱せず、低屈折率層の強度に問題が生じない)値に容易に調節できる。さらに、微粒子の粒子サイズを均一にすることで、粒子間ミクロボイドの大きさも均一である光学的に均一な低屈折率層を得ることができる。これにより、低屈折率層は微視的にはミクロボイド含有多孔質膜であるが、光学的あるいは巨視的には均一な膜にすることができる。
粒子間ミクロボイドは、微粒子およびポリマーによって低屈折率層内で閉じていることが好ましい。閉じている空隙には、低屈折率層表面に開かれた開口と比較して、低屈折率層表面での光の散乱が少ないとの利点もある。
ミクロボイドを形成することにより、低屈折率層の巨視的屈折率は、低屈折率層を構成する成分の屈折率の和よりも低い値になる。層の屈折率は、層の構成要素の体積当りの屈折率の和になる。微粒子やポリマーのような低屈折率層の構成成分の屈折率は1よりも大きな値であるのに対して、空気の屈折率は1.00である。そのため、ミクロボイドを形成することによって、屈折率が非常に低い低屈折率層を得ることができる。
【0165】
微粒子の平均粒子サイズは、0.5〜200nmであることが好ましく、1〜100nmであることがより好ましく、3〜70nmであることがさらに好ましく、5〜40nmの範囲であることが最も好ましい。微粒子の粒子サイズは、なるべく均一(単分散)であることが好ましい。
無機微粒子は、金属等の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物であることが好ましく、なかでも酸化物またはハロゲン化物であることがさらに好ましく、酸化物またはフッ化物であることが最も好ましい。これら無機化合物を構成する金属等の原子としては、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Ti、Sn、In、W、Y、Sb、Mn、Ga、V、Nb、Ta、Ag、Si、B、Bi、Mo、Ce、Cd、Be、PbおよびNiが好ましく、Mg、Ca、BおよびSiがさらに好ましい。また、無機微粒子は、非晶質であることが好ましい。二種類の金属等を含む無機化合物を用いてもよい。特に好ましい無機化合物は、二酸化ケイ素、すなわちシリカである。
【0166】
無機微粒子内ミクロボイドは、例えば、粒子を形成するシリカの分子を架橋させることにより形成することができる。シリカの分子を架橋させると体積が縮小し、粒子が多孔質になる。
ミクロボイドを有する(多孔質)無機微粒子は、ゾル−ゲル法(特開昭53−112732号、特公昭57−9051号の各公報記載)または析出法(APPLIEDOPTICS、27、3356頁(1988)記載)により、分散物として直接合成することができる。また、乾燥・沈澱法で得られた粉体を、機械的に粉砕して分散物を得ることもできる。市販の多孔質無機微粒子(例えば、二酸化ケイ素ゾル)を用いてもよい。
ミクロボイドを有する無機微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)およびケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)が好ましい。
【0167】
有機微粒子は、モノマーの重合反応(例えば乳化重合法)により合成されるポリマー微粒子であることが好ましい。この有機微粒子も非晶質であることが好ましい。有機微粒子のポリマーはフッ素原子を含むことが好ましい。ポリマー中のフッ素原子の割合は、35〜80質量%であることが好ましく、45〜75質量%であることがさらに好ましい。また、有機微粒子内に、例えば、粒子を形成するポリマーを架橋させ、体積を縮小させることによりミクロボイドを形成させることも好ましい。粒子を形成するポリマーを架橋させるためには、ポリマーを合成するためのモノマーの20モル%以上を多官能モノマーとすることが好ましい。多官能モノマーの割合は、30〜80モル%であることがさらに好ましく、35〜50モル%であることが最も好ましい。
上記有機微粒子の合成に用いられるモノマーで、含フッ素ポリマーを合成するために用いるフッ素原子を含むモノマーの例として、フルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、アクリル酸またはメタクリル酸のフッ素化アルキルエステル類およびフッ素化ビニルエーテル類が含まれる。
【0168】
フッ素原子を含むモノマーとフッ素原子を含まないモノマーとのコポリマーを用いてもよい。
フッ素原子を含まないモノマーの例には、オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン)、アクリル酸エステル類(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル)、スチレン類(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン)、ビニルエーテル類(例えば、メチルビニルエーテル)、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル)、アクリルアミド類(例えば、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド)、メタクリルアミド類およびアクリルニトリル類が含まれる。
多官能モノマーの例には、ジエン類(例えば、ブタジエン、ペンタジエン)、多価アルコールとアクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、多価アルコールとメタクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジメタクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート)、ジビニル化合物(例えば、ジビニルシクロヘキサン、1,4−ジビニルベンゼン)、ジビニルスルホン、ビスアクリルアミド類(例えば、メチレンビスアクリルアミド)およびビスメタクリルアミド類が含まれる。
【0169】
ボイドを含有する低屈折率層中に、5〜50質量%の量のポリマーを含むことが好ましい。ポリマーは、微粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。ポリマーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持できるように調整する。ポリマーの量は、低屈折率層の全量の10〜30質量%であることがより好ましい。
【0170】
ポリマーと微粒子を接着させることは、低屈折率層の強度付与のために好ましい。その方法としては、
(ア)微粒子の表面処理剤にポリマーを結合させる方法、
(イ)微粒子をコアとして、その周囲にポリマーシェルを形成する方法、および
(ウ)微粒子間のバインダーとして、ポリマーを使用する方法、
を好ましく挙げることができる。
上記(ア)の表面処理剤に結合させるポリマーは、(イ)のシェルポリマーまたは(ウ)のバインダーポリマーであることが好ましい。
上記(イ)のポリマーは、低屈折率層の塗布液の調製前に、微粒子の周囲に重合反応により形成することが好ましい。
上記(ウ)のポリマーは、低屈折率層の塗布液にモノマーを添加し、低屈折率層の塗布と同時または塗布後に、重合反応により形成することが好ましい。(ア)〜(ウ)の内、二種類または三種類を組み合わせて、実施することが好ましく、(ア)と(ウ)の二種類の組み合わせ、または(ア)〜(ウ)の三種類の組み合わせで実施することが特に好ましい。
上記の方法については、特開平11−6902号公報等に詳しく記載されている。
【0171】
また、低屈折率層の素材として、オルガノシラン等有機金属化合物の加水分解部分縮合物(いわゆるゾルゲル膜)も好ましい。このうちオルガノシシランの加水分解部分縮合物が屈折率が低くかつ膜強度も強く好ましく、より好ましくは光硬化性のオルガノシランの加水分解部分縮合物である。
オルガノシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、CF3CH2CH2Si(OCH33、CF3(CF25CH2CH2Si(OCH33、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられるが、本発明で用いることができるオルガノシランはこれらに限定されるものではない。
また異なる2種以上のオルガノシランを混合して用いることも普通に行われ、硬さ、脆性の調節、および官能基導入の目的で適宜調節されることが好ましい。
【0172】
オルガノシランの加水分解縮合反応は無溶媒でも、溶媒中でも行うことができる。溶媒としては有機溶媒が好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどを挙げることができる。
加水分解縮合反応は触媒存在下で行われることが好ましい。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸類、シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの無機塩基類、トリエチルアミン、ピリジンなどの有機塩基類、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム、などの金属アルコキシド類、前記金属アルコキシド類と、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどとの金属キレート化合物類、などが挙げられる。
加水分解縮合反応は、アルコキシ基1モルに対して通常0.3〜2.0モル、好ましくは0.5〜1.0モルの水を添加し、上記溶媒および触媒の存在下、通常25〜100℃で、撹拌することにより行われる。触媒の添加量はアルコキシ基に対して通常0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%である。反応条件はオルガノシランの反応性により適宜調節されることが好ましい。
【0173】
オルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物、いわゆるゾルゲル成分(以後このように称する)を光硬化性とする場合は、ゾルゲル成分中に光によって反応促進剤を発生する化合物を含有していることが好ましく、具体的には光酸発生剤あるいは光塩基発生剤が好ましく、いずれもゾルゲル成分の縮合反応を促進することができる。具体的には、光酸発生剤としては、ベンゾイントシレート、トリ(ニトロベンジル)ホスフェート、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩など、光塩基発生剤としては、ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、ジ(メトキシベンジル)ヘキサメチレンジカルバメートなどを挙げることができる。このうち光酸発生剤がより好ましく、具体的にはトリアリールスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、が好ましい。これらの化合物と併用して増感色素も好ましく用いることができる。
光によって反応促進剤を発生する化合物の添加量としては、低屈折率層塗布液全固形分に対して0.1〜15%が好ましく、より好ましくは0.5〜5%である。
【0174】
本発明のゾルゲル成分による低屈折率層には、防汚性および滑り性付与の目的で、前述の含フッ素ポリマーも好ましく併用される。含フッ素ポリマーのうち含フッ素ビニルモノマーを重合して得られるポリマーが好ましく、さらにゾルゲル成分と共有結合可能な官能基を有することが、ゾルゲル成分との相溶性および膜強度の観点で好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
【0175】
(ハードコート層)
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。
硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、又加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒子サイズ0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0176】
(内部散乱性または防眩性ハードコート層)
ハードコート層は、防眩性および/または内部散乱性を付与するための透光性粒子、高屈折率無機超微粒子、およびハードコート性を十分に強力にするためのマトリックスを少なくとも各々1種ずつ含有する。
【0177】
防眩性または内部散乱性ハードコート層は、マトリックス中に平均粒子サイズ0.3〜10μmの透光性粒子が分散している屈折率不均一層である。防眩性または内部散乱性ハードコート層を形成する上記粒子を除く成分、即ち後述する粒子サイズ100nm以下の高屈折率無機超微粒子が分散したマトリックスの屈折率は、1.57〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.60〜1.80であり、高屈折率である。この値の範囲で、反射防止フィルムとして反射防止性能が充分となり、好ましい。
【0178】
防眩性または内部散乱性ハードコート層は、上記高屈折率無機超微粒子が分散したマトリックスに分散する粒子サイズ0.3〜10μmの透光性粒子によって、光の内部散乱が生じるために、防眩性ハードコート層での光学干渉の影響が生じない。
上記粒子サイズの透光性粒子を有しない高屈折率の防眩性または内部散乱性ハードコート層では、防眩性または内部散乱性ハードコート層と支持体との屈折率差による光学干渉のために、反射率の波長依存性において反射率の大きな振幅が見られ、結果として反射防止効果が悪化し、同時に色むらが発生する。
【0179】
前記透光性粒子は、上記したように防眩性や内部散乱性付与と透明支持体或はハードコート層との干渉による反射率悪化防止、色むら防止の目的で、平均粒子サイズ0.3〜10μmの透明な粒子が好ましい。より好ましくは1.0〜7.0μm、さらに好ましくは1.5〜4.0の範囲である。
【0180】
粒子の粒子サイズ分布は狭いほど好ましい。粒子の粒子サイズ分布を示すS値は下記式で表され、2以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.7以下である。
S=[D(0.9)−D(0.1)]/D(0.5)
D(0.1):体積換算粒子サイズの積算値の10%相当粒子サイズ
D(0.5):体積換算粒子サイズの積算値の50%相当粒子サイズ
D(0.9):体積換算粒子サイズの積算値の90%相当粒子サイズ
【0181】
透光性粒子の形状は、真球あるいは不定形のいずれも使用できる。また、形状が異なる2種以上の透光性粒子を併用して用いてもよい。また、防眩性または内部散乱性層のマトリックス層厚よりも小さい粒子サイズの透光性粒子が、透光性粒子全体の50%未満であることが好ましい。粒度分布はコールターカウンター法により測定できるが、分布は粒子数分布に換算する。上記透光性粒子は、形成された防眩性ハードコート層中の粒子量が好ましくは10〜1000mg/m2、より好ましくは30〜800mg/m2となるように防眩性または内部散乱性ハードコート層に含有される。
【0182】
さらに、他の好ましい態様として、粒子サイズの異なる少なくとも2種類以上の透光性粒子を併用する防眩性または内部散乱性ハードコート層が挙げられる。透光性粒子としては、素材種が異なっていても、同一であっても、下記の要件を満たせば、制限を受けるものではない。
【0183】
透光性粒子としては、無機粒子、有機粒子が挙げられる。
無機粒子の具体例としては、二酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化錫、ITO(SnO2をドープしたIn23)、酸化亜鉛、特定金属含有の酸化チタン(
特定金属として、コバルト、アルミニウム、ジルコニウムが挙げられる。)、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウムなどの粒子が挙げられる。これらの中で二酸化珪素、酸化アルミニウムが好ましい。
【0184】
有機粒子としては樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子としては、例えば、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、(メタ)アクリロニトリル系樹脂、(メタ)アクリルアミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂等の粒子などが挙げられる。好ましくは、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ポリスチレン系樹脂等の架橋樹脂粒子が挙げられる。特に、重合性モノマーおよび架橋剤の乳化重合、ソープフリー重合、懸濁重合、シード重合、二段階膨潤重合、分散重合法等で得られる重合体からなる架橋樹脂微粒子が好適に使用できる。
【0185】
上記透光性粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子(例えば日本触媒(株)製シーホスタシリーズ、屈折率=1.43)、アルミナ粒子(例えば住友化学工業(株)製スミコランダムシリーズ、屈折率=1.64)、TiO2粒子等の無機化合物の粒子、あるいは架橋アクリル粒子(例えば綜研化学(株)製MXシリーズ、屈折率=1.49)、架橋
スチレン粒子(例えば綜研化学(株)製SXシリーズ、屈折率=1.61)、架橋メラミン粒子、架橋ベンゾグアナミン粒子(例えば日本触媒(株)製エポスターシリーズ、屈折率=1.68)等の樹脂粒子が挙げられる。透光性粒子の形状は、真球あるいは不定形のいずれも使用できるが、表面突起形状が揃う球状粒子が好ましい。
【0186】
(前方散乱層)
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合に、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。上記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
【0187】
(その他の層)
本発明の反射防止フィルムには、さらに、プライマー層、防湿層、下塗り層や保護層、シールド層、滑り層を設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
【0188】
(塗布方法)
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。
【0189】
(3)光学補償層の付与(光学補償フィルムの作製)
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するためのものであり、延伸、未延伸セルロースアシレートフィルムの上に配向膜を形成し、さらに光学異方性層を付与することで形成される。
【0190】
(配向膜)
前記表面処理した延伸、未延伸の本発明のセルロースアシレートフィルム上に配向膜を設ける。この膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の光学補償フィルムの構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して本発明の偏光板を作製することも可能である。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性分子を配向させる機能のある分子構造を有する。
本発明では、液晶性分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例えば、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
【0191】
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。ポリマーの例には、例えば特開平8−338913号公報明細書中段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
【0192】
液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖は、一般に疎水性基を官能基として有する。具体的な官能基の種類は、液晶性分子の種類および必要とする配向状態に応じて決定する。例えば、変性ポリビニルアルコールの変性基としては、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
【0193】
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償フィルムの強度を著しく改善することができる。
【0194】
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報明細書中段落番号[0080]〜[0100]記載のもの等が挙げられる。配向膜ポリマーは、前記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。
架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、或いは高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。
【0195】
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である前記ポリマー、架橋剤を含む透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行ってよい。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例えば、メタノール)と水との混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、さらには光学異方性層の層表面の欠陥が著しく減少する。
【0196】
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行うことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分間〜36時間で行うことができるが、好ましくは1分間〜30分間である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。
【0197】
配向膜は、延伸・未延伸セルロースアシレートフィルム上または前記下塗層上に設けられる。配向膜は、前記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
工業的に実施する場合、搬送している偏光膜のついたフィルムに対し、回転するラビングロールを接触させることで達成するが、ラビングロールの真円度、円筒度、振れ(偏芯)はいずれも30μm以下であることが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1〜90°が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360°以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。フィルムの搬送速度は1〜100m/minが好ましい。ラビング角は0〜60°の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40〜50°が好ましい。45°が特に好ましい。
このようにして得た配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
【0198】
次に、配向膜の上に光学異方性層の液晶性分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させる。
光学異方性層に用いる液晶性分子には、棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子が含まれる。棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
【0199】
(棒状液晶性分子)
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性分子には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性分子を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性分子として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
【0200】
棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、ラジカル重合性不飽基或はカチオン重合性基が好ましく、具体的には、例えば特開2002−62427号公報明細書中の段落番号[0064]〜[0086]に記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。
【0201】
(円盤状液晶性分子)
円盤状(ディスコティック)液晶性分子には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
【0202】
円盤状液晶性分子としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。円盤状液晶性分子から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物が円盤状液晶性分子である必要はなく、例えば、低分子の円盤状液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。円盤状液晶性分子の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、円盤状液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
【0203】
円盤状液晶性分子を重合により固定するためには、円盤状液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことができる。例えば、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0151]〜[0168]記載の化合物等が挙げられる。
ハイブリッド配向では、円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)と偏光膜の面との角度が、光学異方性層の深さ方向でかつ偏光膜の面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に減少することが好ましい。さらに、角度の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加および減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度は、角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。さらに、角度は連続的に変化することが好ましい。
【0204】
偏光膜側の円盤状液晶性分子の長軸の平均方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)の円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマーなどを挙げることができる。長軸配向方向の変化の程度も、前記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
【0205】
(光学異方性層の他の組成物)
前記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することができる。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
【0206】
前記重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、前記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。前記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
【0207】
前記界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
【0208】
また、円盤状液晶性分子とともに使用するポリマーは、円盤状液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
前記ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性分子の配向を阻害しないように、前記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
円盤状液晶性分子のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
【0209】
(光学異方性層の形成)
光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0210】
塗布液の塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。
【0211】
(液晶性分子の配向状態の固定)
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2,367,661号、同2,367,670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2,448,828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2,722,512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3,046,127号、同2,951,758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3,549,367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4,239,850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4,212,970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0212】
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20mJ/cm2〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100mJ/cm2〜800mJ/cm2の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0213】
この光学補償フィルムと偏光膜とを組み合わせることも好ましい。具体的には、前記のような光学異方性層用塗布液を偏光膜の表面に塗布することにより光学異方性層を形成する。その結果、偏光膜と光学異方性層との間にポリマーフィルムを使用することなく、偏光膜の寸度変化にともなう応力(歪み×断面積×弾性率)が小さい薄い偏光板が作製される。本発明に従う偏光板を大型の液晶表示装置に取り付けると、光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い画像を表示することができる。
偏光膜と光学補償層との傾斜角度は、LCDを構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。通常の傾斜角度は45°である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45°でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
【0214】
《液晶表示装置》
本発明の液晶表示装置は、本発明のセルロースアシレートフィルム、上述の偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムからなる群より選択される少なくとも1つを用いて形成される。これらのフィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。
【0215】
(TNモード液晶表示装置)
TNモード液晶表示装置は、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
【0216】
(OCBモード液晶表示装置)
OCBモード液晶表示装置は、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許第4,583,825号、同5,410,422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensated Bend) 液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
【0217】
(VAモード液晶表示装置)
VAモード液晶表示装置は、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向しているのが特徴であり、VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
【0218】
(IPSモード液晶表示装置)
IPSモード液晶表示装置は、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に面内に水平に配向しているのが特徴であり、これが電圧印加の有無で液晶の配向方向を変えることでスイッチングするのが特徴である。具体的には特開2004−365941号公報、特開2004−12731号公報、特開2004−215620号公報、特開2002−221726号公報、特開2002−55341号公報、特開2003−195333号公報に記載のものなどを使用できる。
【0219】
(その他液晶表示装置)
ECBモードおよびSTN(Super Twisted Nematic)モード、FLC(Ferroelectric
Liquid Crystal)モード、AFLC(Anti-ferroelectric Liquid Crystal)モード、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードに対しても、前記と同様の考え方
で光学的に補償することができる。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。GH(Guest-Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。
以上述べてきたこれらの詳細なセルロース誘導体フィルムの用途は発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)45頁〜59頁に詳細に記載されている。
【0220】
《測定法》
以下に本発明で使用した測定法について記載する。なお、吸湿膨張係数、熱膨張係数(CTE)、高温高湿環境下の寸法変化率については、前述のとおりである。
【0221】
(1)セルロースアシレートの重合度
平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分子量分布測定などの方法により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
【0222】
(2)セルロースアシレートの置換度
アシル基の置換度は、ASTM D-817-91に準じた方法、セルロースアシレートを完全に加水分解し、遊離したカルボン酸またはその塩をガスクロマトグラフィーあるいは高速液体クロマトグラフィーで定量する方法、1H−NMRあるいは13C−NMRによる方法などを単独または組み合わせることにより決定することができる。
【0223】
(3)Re,Rth
フィルムの幅方向に等間隔で20点サンプリングし、これを25℃・相対湿度60%にて4時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、サンプルフィルム表面に対し垂直方向および遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差値を測定する事から、面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出した。この20点の平均値をRe、Rthとした。
【0224】
(4)Tg測定
DSCの測定パンにサンプルを10mg入れた。これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後、30℃まで−10℃/分で冷却した。この後、再度30℃から250℃まで昇温してベースラインが低温側から偏奇し始める温度をTgとした。
【0225】
(5)含水率
試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))にてカールフィッシャー法で測定した。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
【0226】
(6)残留溶剤量
ガスクロマトグラフィー(GC−18A、島津製作所(株))を用いて、試料7mm×35mmのベース残留溶剤量を測定した。
【0227】
(7)弾性率、破断伸び
東洋ボールドウィン製万能引っ張り試験機STM T50BPを用い、25℃、60%雰囲気中、チャック間のサンプル長さ10cm×幅1cmのサンプルを引っ張り速度100%/分で測定し、弾性率、破断伸びを求めた。
【0228】
(8)黄色味(YI;イエローネスインデックス)
「Z−II OPTICAL SENSOR」を用い(JIS K7105 6.3)に従い黄色味(YI;イエローネスインデックス)を測定した。フィルムは透過法にて三刺激値、X、Y、Zを測定した。さらに三刺激値X、Y、Zを用い下記式によりYI値を算出した。
YI={(1.28X−1.06Z)/Y}×100
さらにフィルムのYI値は前記式にて算出したYI値を、そのフィルムの厚みで割り、1mm当たりに換算して比較した。
【実施例】
【0229】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0230】
[合成例1] セルロースアセテートプロピオネートの合成
セルロース(広葉樹パルプ)150質量部、酢酸75質量部を、冷却装置ならびに還流装置を付けた反応容器に取り、60℃にて加熱しながら4時間攪拌した。反応容器を2℃に冷却した。
別途、アシル化剤としてプロピオン酸無水物1545質量部、硫酸10.5質量部の混
合物を作製し、−20℃に冷却した後に、上記の前処理を行ったセルロースを収容する反応容器に一度に加えた。30分経過後、外設温度を徐々に上昇させ、アシル化剤の添加から2時間経過後に内温が30℃になるように調節し、内温を30℃に保ってさらに3時間攪拌した。反応容器を5℃の氷水浴にて冷却し、5℃に冷却した25質量%含水酢酸120gを1時間かけて添加した。内温を40℃に上昇させ、1.5時間攪拌した。次いで反応容器に、硫酸の2倍モルに相当する酢酸マグネシウム4水和物を2倍量の50質量%含水酢酸に溶解した溶液を添加し、30分間攪拌した。25質量%含水酢酸、33質量%含水酢酸、50質量%含水酢酸、水をこの順に加え、セルロースアセテートプロピオネートを沈殿させた。得られたセルロースアセテートプロピオネートの沈殿は温水にて洗浄を行った。20℃の0.005質量%水酸化カルシウム水溶液中で0.5時間攪拌した後に脱液を行い、70℃で真空乾燥させた。
1H−NMR及び、GPC測定によれば、得られたセルロースアセテートプロピオネー
トは、アセチル化度0.30、プロピオニル化度2.63、数平均重合度200であった。
【0231】
[合成例2] セルロースアセテートブチレートの合成
セルロース(広葉樹パルプ)100質量部、酢酸135質量部を、冷却装置ならびに還流装置を付けた反応容器に取り、60℃にて加熱しながら4時間攪拌した。反応容器を2℃に冷却した。
別途、アシル化剤として酪酸無水物1080質量部、硫酸10.0質量部の混合物を作製し、−20℃に冷却した後に、前処理を行ったセルロースを収容する反応容器に一度に加えた。30分経過後、外設温度を30℃まで上昇させ、5時間反応させた。反応容器を5℃の氷水浴にて冷却し、約5℃に冷却した12.5質量%含水酢酸2400gを1時間かけて添加した。内温を40℃に上昇させ、1時間攪拌した。次いで反応容器に、硫酸の2倍モルに相当する酢酸マグネシウム4水和物を2倍量の50質量%含水酢酸に溶解した溶液を添加し、30分間攪拌した。25質量%含水酢酸、33質量%含水酢酸、50質量%含水酢酸、水をこの順に加え、セルロースアセテートブチレートを沈殿させた。得られたセルロースアセテートブチレートの沈殿は温水にて洗浄を行った。洗浄後、0.005質量%水酸化カルシウム水溶液中で0.5時間攪拌した後に脱液を行い、70℃で減圧乾燥させた。得られたセルロースアセテートブチレートはアセチル化度0.84、ブチリル化度2.12、数平均重合度210であった。
【0232】
<実施例1> セルロースアシレートフィルムの溶融製膜
(1)セルロースアシレートの調製
合成例1および合成例2の方法において、アシル化剤の組成、アシル化の反応温度および時間、部分加水分解の温度および時間を変化させることにより、同様にして所望のセルロースアシレートを合成した。目的とするアシル置換度に応じて、セルロースにアシル化剤(酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、プロピオン酸無水物、酪酸、酪酸無水物から単独または複数を組み合わせて選択される)、ならびに触媒としての硫酸を混合し、反応温度を40℃以下に保ちながらアシル化を実施した。原料となるセルロースが消失してアシル化が完了した後、さらに40℃以下で加熱を続けて、所望の重合度に調整した。酢酸水溶液を添加して残存する酸無水物を加水分解した後、60℃以下で加熱を行うことで部分加水分解を行い、所望の全置換度に調整した。残存する硫酸を過剰量の酢酸マグネシウムにより中和した。酢酸水溶液から再沈殿を行い、さらに、水での洗浄を繰り返すことにより、(表1に記載のアシル基の種類、置換度の異なる)セルロースアシレートを得た。
【0233】
(2)セルロースアシレートのペレット化
上記セルロースアシレートを100℃で3時間乾燥し含水率を0.1質量%以下にしたものに、下記から選択した光学調整剤B−1〜B−6のいずれかを表1に記載した量加えた。
【0234】
【化1】

【0235】
可塑剤としては、下記の中から表1に記載されるものを選び、表1に記載される量だけ(表1に記載)添加した。
可塑剤A:ポリエチレングリコール(分子量600)
可塑剤B:グリセリンジアセテートモノオレート
可塑剤C:ビフェニルジフェニルフォスフェート
可塑剤D:ジオクチルアジペート
さらに、全サンプル水準に二酸化珪素部粒子(アエロジルR972V)0.05質量%、紫外線吸収剤(2−(2”−ヒドロキシ−3”、5−ジ−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール:0.05質量%、2,4−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン:0.1質量%)、安定剤 (ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト)(PEP−24G)0.3質量%を添加した。
これらを真空排気付き2軸混練押出し機を用い、スクリュー回転数300rpm、混練時間40秒、押出し量200kg/hrでダイから押出し60℃の水中で固化した後、裁断し直径2mm、長さ3mmの円柱状のペレットを得た。
【0236】
(3)溶融製膜
上記方法で調製したセルロースアシレートペレットを、100℃の真空乾燥機で3時間乾燥した。これを80℃のホッパーに投入した。スクリューの直径はは60mm、L/D=は40、圧縮比は3.5であった。なお、バレル温度は入口から出口に向かい150℃から表1に示す下流側温度に昇温した。溶融後、メルトを3μmフィルターで濾過しスリット間隔0.8mmのダイから押出し、表1に示すキャスティング条件でメルトを図2および図3に示す多連式キャスティングドラムにて固化した。この時、各水準静電印加法(10kVのワイヤーをメルトのキャスティングドラムへの着地点から10cmのところに設置)を用い両端10cmずつ静電印加を行った。固化したメルトをキャスティングドラムから剥ぎ取り、巻き取り直前に両端(全幅の各5%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた後、30m/分で3000m巻き取った。このようにして得た未延伸フィルムの幅は各サンプル水準とも1.5mであった。
【0237】
【表1】

【0238】
このようにして得たセルロースアシレートのTg、Re,Rth、YI値、吸湿膨張係数、熱膨張係数、高温高湿環境下の寸法変化率、破断伸び率を求め、表1に記載した。その他の物性はヘイズが0.10%、透明度(透明性)が93.1%、輝点異物がなく、フィルム表面のダイスジや段ムラがなく、面状に優れ、光学用途に対しては優れた特性を有するものであった。
【0239】
(4)延伸
このようにして得たセルロースアシレートフィルムを(Tg+15℃)において表1に記載の倍率で延伸した。この後、両端各5%ずつトリミングした。これらのRe,Rthを上記の方法で測定し表1に記載した。
【0240】
(5)反射防止フィルムの作成
(5−1)オルガノシランのゾル組成物(a)の調製
攪拌機と還流冷却器を備えた反応器、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン161質量部、シュウ酸123質量部、エタノール415質量部を加え混合したのち、70℃で5時間反応させた後、室温まで冷却し、オルガノシランのゾル組成物(a)を得た。
【0241】
(5−2)高屈折率無機超微粒子分散物(b)の調製
コバルトを含有する二酸化チタン微粒子(MPT−129、石原産業(株)製)100質量部、下記構造の分散剤(化2)25質量部、重合禁止剤2,4−ジ−t−ブチルハイドロキノン0.05質量部及びシクロヘキサノン285質量部を、粒径粒子サイズ0.1mmのジルコニアビーズ(YTZボール、(株)ニッカトー製)と共に、ダイノミルにより分散した。分散温度は35〜40℃で8時間実施した。200メッシュのナイロン布でビーズを分離して、高屈折率無機超微粒子分散物(b)を調製した。得られた分散物の分散粒径粒子サイズは、走査型電子顕微鏡で測定した所、単分散性良好な平均粒径粒子サイズ30nmの粒子であった。
【0242】
【化2】

【0243】
(5−3)ハードコート層用塗布液(A)の調製
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)100質量部に、加水分解したシランカップリング剤KBM−5103(信越化学(株)製)3質量部加え、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)1.2質量部、150質量部のイソプロピルアルコール/シクロヘキサノン=50/50質量比の混合溶媒を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液(A)を調製した。
【0244】
(5−4)防眩性ハードコート層用塗布液(B)の調製
多官能性アクリレートDPHA 270.6質量部をメチルエチルケトン/シクロヘキ
サノン=50/50%の混合溶媒439質量部に溶解し、得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)7.5質量部および光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)5.0質量部を49質量部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を加えた。この溶液に、上記の高屈折率無機超微粒子分散物(b)555.4質量部加え、平均粒子サイズ3μmの架橋型ポリスチレン(SX−300H、綜研化学(株)製)11.1質量部および平均粒子サイズ3μmの架橋PMMA粒子(MX−300、屈折率1.49、綜研化学(株)製)5質量部を添加して、高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌、分散した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性ハードコート層の塗布液(B)を調製した。
【0245】
(5−5)低屈折率層用塗布液(C)の調製
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN7228、固形分濃度6%、JSR(株)製)15kg、MEK−ST(平均粒子サイズ15nmコロイダルシリカのメチルエチルケトン分散液、固形分濃度30%、日産化学(株)製)0.7kg、MEK−ST−L(平均粒子サイズ45nmコロイダルシリカのメチルエチルケトン分散液、固形分濃度30%、日産化学(株)製)0.7kg、オルガノシランのゾル組成物(a)0.4kgおよびメチルエチルケトン3kg、シクロヘキサノン0.6kgを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液(C)を調製した。
【0246】
(5−6)ハードコート層および防眩性ハードコート層の塗設
表1に作成したセルロースアシレート未延伸、延伸フィルムをロール形態で巻き出して、塗布側表面をコロナ除電器で除電処理した上に、上記のハードコート層用塗布液(A)をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量500mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ2.0μmのハードコート層を形成した。このハードコート層の上に、上記の防眩性ハードコート層用塗布液(B)をバーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥の後、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ2.5μmの防眩性ハードコート層を形成し、巻き取った。使用するセルロースアシレート未延伸、延伸フィルムの支持体を表2に記載した。
【0247】
(5−7)低屈折率層の塗設
ハードコート層を塗設したセルロースアシレートフィルムを再び巻き出して、上記低屈折率層用塗布液(C)を線数200本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度15m/分の条件で塗布し、90℃で4分乾燥の後、さらに100℃で10分乾燥させてから窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成し、巻き取った。
【0248】
(5−8)反射防止フィルムのケン化処理
2.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、60℃に保温した。0.05mol/Lの希硫酸水溶液を調製した。作製した反射防止フィルムを上記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、上記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を100℃で十分に乾燥させた。このようにして、ケン化処理済み
反射防止フィルムを作製した。
【0249】
ケン化処理したセルロースアシレート反射防止フィルムの表面の面状(異物、濁り)を下記の基準で評価した。
ケン化処理フィルムから全幅で長手方向に1mの長さに切りだし、この試料にシャウカステン上で光を透過させながら目視およびルーペで異物および濁りの有無を観察し、以下のランクを用いて評価した。
〇:異物、濁りの発生が全く認められない
(10人で評価し、一人も認識できないレベル)
△:異物、濁りが弱く発生する
(10人で評価し、2〜5人が認識するレベル)
×:異物、濁りが強く発生する
(10人で評価し、6人以上が認識するレベル)
ケン化処理した本発明のセルロースアシレートフィルムの面状は優れており、いずれも異物や濁りの発生が全く認められず、ランクは「○」であった。
【0250】
このようにして得られた反射防止フィルムの吸湿膨張係数、熱膨張係数、高温高湿環境下の寸法変化率を前述の測定法にて評価し、表2に記載した。 また、得られた反射防止フィルムのその他物性について、以下の項目の評価を行った。結果を表2に記載した。
(ア)平均反射率
反射防止層が塗布されていない側の面を粗面化した後、黒いインクを用いて光吸収処理を行い、裏面での光の反射を防止した。分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、入射角5°の正反射の条件にて450〜650nmにおける各反射スペクトルを測定し、その平均値を反射率とした。
【0251】
(イ)ヘイズ
得られたフィルムのヘイズをヘイズメーターMODEL 1001DP(日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
【0252】
(ウ)鉛筆硬度
反射防止フィルムを温度25℃・相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS S6006が規定する3Hの試験用鉛筆を用いて、1kgの荷重にて以下の内容で目視評価した。
○:n=5の評価において傷が全く認められない
△:n=5の評価において傷が1または2つ
×:n=5の評価において傷が3つ以上
【0253】
(エ)色味
作成したフィルムを偏光板上にはりつけ、角度を変えて見たときの反射光の色味を目視で判定した。
○:ほとんど色味なし
△:色味がつくが、気にならない
×:色味変化目立つ
【0254】
(オ)防眩性評価
作成した反射防止フィルムにルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/m2)を映し、その反射像のボケの程度を以下の基準で評価した。
〇:蛍光灯の輪郭が全くわからない
△:蛍光灯の輪郭がわずかにわかる
×:蛍光灯がほとんどぼけない
【0255】
(カ)ギラツキ感
作成した反射防止フィルムにルーバーありの蛍光灯拡散光を映し、表面のギラツキを以下の基準で評価した。
○:全くまたはほとんどギラツキが見られない
△:わずかにギラツキがある
×:ギラツキがはっきり認識できる
【0256】
(キ)密着性
各反射防止フィルムの防眩性ハードコート層を有する側の表面において、カッターナイフで碁盤目状に縦11本、横11本の切り込みを入れて合計100個の正方形の升目を刻み、日東電工(株)製のポリエステル粘着テープ(NO.31B)における密着試験を同じ場所で繰り返し3回行った。剥れの有無を目視で観察し、下記の4段階評価を行った。
〇:100升において剥れが全く認められなかった
△:100升において剥れが認められたものが10升以下
×:100升において剥れが認められたものが10升超
【0257】
(ク)湿度変動による引き裂き試験
セルロースアシレートフィルム上に形成した層の湿度変動による剥離と割れを評価するために、引き裂き試験を実施した。反射防止フィルムを25℃・相対湿度10%の環境下で24時間調湿した後、25℃・相対湿度80%の環境下に24時間保持した後、再び25℃・相対湿度10%の環境下で24時間、25℃・相対湿度80%の環境下に24時間の順に50回のサイクルを行った。5cm×5cmのピースの一辺にNTカッターにて2mmの切込みを入れた後、ハードコート面を手前に置き手前側に引き裂くのを引き裂き方向1とし、ハードコート面を奥側に置き手前側に引き裂くのを引き裂き方向2とした。引き裂き方向1と引き裂き方向2の2種類の方向で3回ずつ引き裂いたフィルムの引き裂かれたエッジを×10ルーペにて観察した。
○:引き裂きエッジにハードコート層の剥離、ひび割れ無し、エッジのささくれ
立ちなし
△:3回のうち2回以下、ひび割れが僅かあり、引き裂きエッジに部分的なささ
くれあり
×:3回のうち2回以下ハードコート層の剥離あり、ひび割れがあり。
【0258】
(ケ)高温高湿環境下における引き裂き試験
セルロースアシレートフィルム上に形成した層の高温高湿環境下における剥離と割れを評価するために、引き裂き試験を実施した。反射防止フィルムを60℃・相対湿度90%の環境下に500時間、または80℃ドライの環境下に500時間おいてサーモ処理した後、5cm×5cmのピースの一辺にNTカッターにて2mmの切込みを入れた後、ハードコート面を手前に置き手前側に引き裂くのを引き裂き方向1とし、ハードコート面を奥側に置き手前側に引き裂くのを引き裂き方向2とする。引き裂き方向1と引き裂き方向2の2種類の方向で3回ずつ引き裂いたフィルムの引き裂かれたエッジを×10ルーペにて観察する。なお、ここでいうドライとは相対湿度10%以下を意味する。
〇:引き裂きエッジにハードコート層の剥離、ひび割れ無し、エッジのささくれ
立ちなし
△:3回のうち2回以下、ひび割れが僅かあり、引き裂きエッジに部分的なささ
くれあり
×:3回のうち2回以下ハードコート層の剥離あり、ひび割れがあり
【0259】
本発明のセルロースアシレートフィルムを支持体として作成した反射防止フィルムでは、表2に示すように、優れる光学特性を有するとともにした上、物理特性ともにも品質合格ものであった。湿度変動及び高温高湿環境変動による積層構造の反射防止層の剥れ、ひび割れ等の発生がなかった。
一方、本発明の範囲外のもの(No.5、6、16、26)では、湿度変動及び高温高湿環境変動における積層構造の反射防止層の剥れ、ひび割れ等の発生が顕著であった。
【0260】
さらに、本発明のセルロースアシレートフィルムを反射防止フィルムの塗布支持体として用い、特開2005−4140号公報、特開2005−70318号公報、特開2005−70744号公報、特開2004−287123号公報、特開2004−285320号公報、特開2004−109966号公報、特開2003−103693号公報の実施例に従い、反射防止フィルムを作成したところ、同様の良好な結果が得られた。
【0261】
(6)偏光板の作成
(6−1)セルロースアシレートフィルムのケン化
未延伸、延伸セルロースアシレートフィルムをNaOHの2.5mol/Lの水溶液を用い、60℃で2分間浸漬ケン化した後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、水洗浴を通した。
【0262】
(6−2)偏光膜の作成
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光膜を調製した。
【0263】
(6−3)貼り合わせ
このようにして得た偏光膜と、上記ケン化処理した反射防止層を塗布したセルロースアシレートフィルム、未延伸セルロースアシレートフィルム、延伸セルロースアシレートフィルムをそれぞれ用い、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とセルロースアシレートフィルムの長手方向が、平行となるように下記組み合わせで貼り合せた(選択した構成は表1に記載した)。なお、偏光板Bにおいて偏光膜の両面に形成したセルロースアシレートフィルムは、同じ種類のセルロースアシレートを含むものである。偏光板D、F、Gについても同じである。
【0264】
偏光板A:反射防止層を塗布したセルロースアシレートフィルム/偏光膜/フジ
タックTD80UF(セルローストリアセテートフィルム、富士写真
フイルム(株)製)
偏光板B:反射防止層を塗布したセルロースアシレートフィルム/偏光膜/未延
伸セルロースアシレートフィルム
偏光板C:未延伸セルロースアシレートフィルム/偏光膜/フジタックTD80
UF(富士写真フイルム(株)製)
偏光板D:未延伸セルロースアシレートフィルム/偏光膜/未延伸セルロースア
シレートフィルム
偏光板E:延伸セルロースアシレートフィルム/偏光膜/フジタックTD80U
F(富士写真フイルム(株)製)
偏光板F:延伸セルロースアシレートフィルム/偏光膜/未延伸セルロースアシ
レートフィルム
偏光板G:延伸セルロースアシレートフィルム/偏光膜/延伸セルロースアシレ
ートフィルム
【0265】
(6−4)偏光板裁断加工適性(打ち抜き加工適性)
このようにして得た偏光板を5枚重ね合わせて10cm角のトムソン刃で100枚打ち抜き、偏光板を裁断した際のエッジの状態および切り屑の発生状態を×10ルーペにて観察し、エッジのささくれ、割れ、切り屑の発生確率を求め表2に記載した。なお、裁断は過酷な条件である低湿(25℃・相対湿度10%)にて行った。
【0266】
【表2】

【0267】
(6−5)反射防止フィルム付き偏光板の実装評価
次に、得られた反射防止フィルム付き偏光板A、Bを用いて26インチ液晶TVに実装し、反射防止層を最表層に配置した。液晶表示装置の視野角改良効果の有無、文字ボケの有無を目視確認した。この時の評価基準は、富士写真フイルム CV FILM CV L01Aを用いた以外全く同様にして作製した偏光板を同じく26インチ液晶TVに実装したものとし、比較判定した。尚、CV FILM CV L 01Aでは、階調反転しない視野角範囲は十分なものではなかった。本発明の反射防止フィルムを用いた液晶表示装置では、外光の映り込みがないために優れたコントラストが得られ、防眩性により反射像が目立たず優れた視認性を有していた。
【0268】
(6−6)偏光板B〜Gの実装評価
VA型液晶セルを使用した26インチの液晶表示装置(シャープ(株)製)に設けられている観察者側の偏光板を剥がし、代わりに上記偏光板C,Dの場合は偏光板を、偏光板E,F,Gの場合は偏光板と位相差板を外し、セルロースアシレートフィルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側に貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸が直交するように配置して、液晶表示装置を作成した。
これを全面白表示にし、裁断屑によりスポット状に見える点を数え単位面積あたりに換算し表2に示した。本発明を実施したものはスポットがなく無く良好であった。
【0269】
さらに、特開平11−316378号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、本発明の未延伸セルロースアシレートフィルムを使用しても、良好な光学補償フィルムを作成できた。
特開平7−333433号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムに代わって、本発明の未延伸セルロースアシレートフィルムに変更し光学補償フィルターフィルムを作製しても、良好な光学補償フィルムを作成できた。
【0270】
さらに本発明の偏光板CおよびD、位相差偏光板E〜Gを、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載の20インチOCB型液晶表示装置、特開2004−12731号公報の図11に記載のIPS型液晶表示装置に用いたところ、良好な液晶表示素子が得られた。
【0271】
<実施例2> タッチロール法による溶融製膜
本発明の4、5、16、20および本発明23〜本発明25に対し、特開平11−235747号公報の実施例1に記載のタッチロール(二重抑えロールと記載のあるもの)を用い(但し薄肉金属外筒厚みは3mmとした)、表3記載の条件でタッチロール製膜を実施した(タッチロール製膜を実施したこと以外、全て同じ条件で実施)。
このようにして得た未延伸及び延伸セルロースアシレートフィルムの面状(厚みムラ及び微細凸凹)を下記の方法で測定した。
【0272】
(厚みムラ測定)
セルロースアシレートフィルムの全幅に亘り35mm幅でサンプリングした(TDサンプル)。幅方向中央部を35mm幅で2m長サンプリングした(MDサンプル)。TDサンプル、MDサンプルを連続厚み計(FILM THICKNESS TESTER KG601A、ANRITSU(アンリツ電気(株))製)で測定し、(最大値−平均値)、(平均値−最小値)の平均を厚みムラとした。
【0273】
(微細凹凸(ダイライン)測定)
3次元表面構造解析顕微鏡(Zygo社製New View5022)を用いて下記条件でセルロースアシレートフィルムを測定した。
対物レンズ:2.5倍
イメージズーム:1倍
測定視野:幅方向(TD)2.8mm、長手方向(MD)2.1mm
この中で0.01μm〜30μmの高さの山(凸部)、0.01μm〜30μmの深さの谷(凹部)の本数を数えた。ただし、凸部、凹部はいずれもMD方向に連続して1mm以上連続しているものを指す。この凸部、凹部の本数を測定幅(2.8mm)で割った後100倍し、10cm当りの凸部、凹部の数とした。上記測定を、製膜したサンプルフィルム全幅にわたって等間隔で30点測定して平均化することにより、幅10cm当りの凸部と凹部の数を求めた。
【0274】
【表3】

【0275】
表3に示すように、タッチロール法を用いて溶融製膜したフィルムの吸湿膨張係数及び熱膨張係数を低下させる効果があり、湿度変動及び高温高湿環境変動における積層構造の反射防止層の剥れ、ひび割れ等の発生具合は改良された。また、タッチロール法を用いて溶融製膜したフィルムに形成された微細凹凸(ダイライン)及び厚みムラはさらに良好であった。未延伸及び延伸セルロースアシレートフィルムのその他物性は表1、2とほぼ近い特性値を示すものであった。
さらに、国際公開第97/28950号パンフレットの第1の実施例と同様のタッチロール(シート成形用ロールと記載のあるもの)を用い(但し金属製外筒に用いた冷却水は温度18℃から120℃のオイルに変更)、表3記載の条件でタッチロールを実施したところ、表3と同様の結果を得た。
【産業上の利用可能性】
【0276】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、低吸湿膨張係数と低熱膨張係数が低く、高温高湿環境下の寸法安定性に優れており、少なくとも一方の面上に反射防止層などの層を形成した場合であっても、湿度変動や高温高湿環境によって層が剥がれたりひび割れたりしない。当該セルロースアシレートフィルムを支持体としてその上に反射防止硬化性樹脂塗布層を形成した本発明の反射防止フィルムは、湿度変動および高温高湿における反射防止硬化性樹脂塗布層の剥れやひび割れ等がなく、優れた防眩性反射防止性能および物理強度を有し、加工性および生産性に優れている。本発明のセルロースアシレートフィルムは、高品位な偏光板の保護機能且つ反射防止機能を兼ね備える反射防止フィルム、光学補償フィルム等として用いることができ、これらを用いた視認性が優れる画像表示装置を提供することができる。したがって、本発明の産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0277】
【図1】押出機の構成を示す概略図である。
【図2】ダイ先端からドラムへの溶融樹脂の流れを説明する断面図である。
【図3】冷却キャスティングドラムの配置を示す模式図である。
【図4】タッチロールの配置を示す模式図である。
【図5】反射防止フィルムの層構成を模式的に示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0278】
1 セルロースアシレートフィルム支持体
2 ハードコート層
3 防眩性ハードコート層
4 低屈折率層
5 微粒子
12 セルロースアシレートフィルム
14 製膜工程部
23 タッチロール
24 ダイ
26、28、30 冷却ドラム
31 ニップロール
60 押出機
62 シリンダ
64 スクリュー軸
66 フライト
68 単軸スクリュー
80 供給口
82 吐出口
A 供給部
B 圧縮部
C 計量部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)〜(3)を満足するセルロースアシレートを含有し、25℃における吸湿膨張係数が1.0×10-5〜10×10-5/%RHであることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
式(1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(2) 0≦X≦2.0
式(3) 1.2≦Y≦3.0
[式中、Xはアセチル基の置換度を表し、Yは炭素数3〜7のアシル基の置換度の総和を表す。]
【請求項2】
25℃から80℃における熱膨張係数が5〜120ppm/℃であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項3】
60℃・相対湿度90%の環境に500時間放置したときの放置前後のフィルムの寸法変化率が0〜0.1%であることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項4】
下式(1)〜(3)を満足するセルロースアシレートをダイから押し出して溶融製膜するセルロースアシレートフィルムの製造方法であって、溶融温度が185〜230℃であり、ダイの吐出口における溶融セルロースアシレート樹脂の流速をV0、冷却ドラムの表面速度V1とした際に、1≦V1/V0≦15を満たすことを特徴とする、セルロースアシレートフィルムの製造方法。
式(1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(2) 0≦X≦2.0
式(3) 1.2≦Y≦3.0
[Xはアセチル基の置換度を表し、Yは炭素数3〜7のアシル基の置換度の総和を表す。]
【請求項5】
タッチロールを用いて溶融製膜することを特徴とする請求項4に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法で作製されたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項7】
請求項1〜3または6のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの少なくとも一方の面に、少なくとも1層のハードコート層と最外層に位置する低屈折率層とを有することを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項8】
25℃における吸湿膨張係数が1.0×10-5〜10×10-5/%RHであることを特徴とする、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項9】
25℃から80℃における熱膨張係数が5〜120ppm/℃であることを特徴とする、請求項7または8に記載の反射防止フィルム。
【請求項10】
60℃・相対湿度90%の環境に500時間放置した前後の、フィルムの寸法変化率が0〜0.1%であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項11】
450nmから650nmの平均反射率が1.8%以下であることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項12】
請求項1〜3または6のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1枚を、偏光膜の保護膜として有することを特徴とする偏光板。
【請求項13】
請求項1〜3または6のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを有することを特徴とする光学補償フィルム。
【請求項14】
請求項1〜3または6のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム、請求項7〜11のいずれか1項に記載の反射防止フィルム、請求項12に記載の偏光板および請求項13に記載の光学補償フィルムからなる群より選択される1枚以上のフィルムを有する液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−39636(P2007−39636A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29933(P2006−29933)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】