説明

セルロースエステル系樹脂組成物

【課題】 可塑剤のブリードアウトを高いレベルで抑制又は防止でき、種々の物性(機械的強度、耐衝撃性などの機械的特性や、難燃性、耐熱性などの化学的特性)のバランスに優れたセルロースエステル系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 セルロースエステル、可塑剤、および縮合リン酸エステル(A)とでセルロースエステル系樹脂組成物を構成する。前記可塑剤は、リン酸エステル(特に、芳香族リン酸エステル)などで構成してもよく、前記縮合リン酸エステル(A)は、レゾルシノールビス(ジアルキルフェニルホスフェート)などであってもよい。前記縮合リン酸エステル(A)の割合は、可塑剤100重量部に対して、例えば、5〜50重量部程度であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物由来の材料を出発原料とし、再生可能な材料であるセルロースエステル系樹脂組成物及びこの組成物で形成された成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルやポリアミド、ポリカーボネートなどのプラスチックは、パーソナルコンピュータなどのオフィス・オートメーション(OA)機器、テレビや冷蔵庫などの家電製品、容器やパッケージなどの包装材、壁材や床材などの建築資材、自動車などの輸送車両などを構成する材料として広く使用され、大量消費されている。前記プラスチックは成形性や生産性、機械的特性に優れるものの、合成樹脂であるため、廃棄や焼却によって、土壌中へ有害物質が流出したり、有毒ガスが発生するなど、環境的な負荷が大きい。
【0003】
そこで、天然素材系のセルロースや澱粉主体のプラスチックや、ポリ乳酸やカプロラクトン系共重合体などの生分解性プラスチックの使用が検討されている。しかし、これらの生分解性プラスチックは、成形性、生産性、耐熱性などが低い。例えば、ポリ乳酸は結晶化速度が著しく遅く、成形サイクルが長くなり、射出成形には不適である。このような欠点を克服する天然素材系プラスチックとしては、セルロースエステル(例えば、低置換度セルロースエステルなど)が提案されている。このようなセルロースエステルは、そのままでは成形性(熱成形性)に乏しく、通常、可塑剤の併用により可塑化された状態で熱成形(射出成形など)されている。
【0004】
例えば、特許第2533764号公報(特許文献1)には、脂肪酸セルロースエステル100重量部に対して、弱有機酸0.001〜0.05重量部、特定のチオエーテル化合物0.05〜1重量部、亜リン酸エステル化合物0〜1重量部、エポキシ化合物0〜5重量部を配合してなる脂肪酸エステル系樹脂組成物が開示されている。この文献には、脂肪酸セルロースエステル系樹脂は、通常、可塑剤を含有し、更に充填剤などが添加されていると記載されている。さらに、実施例において、酢化度54.8%のセルロースアセテートフレークス100重量部に対して、可塑剤としてジエチルフタレート40重量部及び各種安定剤を添加した混合物を押出機でペレット化した後、射出成形機でプレートに成形することが記載されている。
【0005】
特開平10−306175号公報(特許文献2)には、脂肪酸セルロースエステル100重量部に対して、融点が常温を超える亜リン酸エステル化合物0.05〜1重量部、弱有機酸0.001〜0.05重量部、チオエーテル化合物0.05〜1重量部、エポキシ化合物5重量部以下を配合してなる脂肪酸セルロースエステル系樹脂組成物が開示されている。この文献には、必要に応じ可塑剤として、トリフェニルホスフェートなどの正リン酸エステルなどを適量添加してもよいと記載され、実施例において、酢化度51%のセルロースアセテートフレークス100重量部に対して、可塑剤としてカプロラクトンオリゴマー40重量部が添加されている。
【0006】
しかし、このようなセルロースエステル材料では、トリフェニルホスフェートなどの可塑剤の使用により成形性を改善できるものの、可塑剤のブリードアウトが生じ、さらには、セルローエステル材料やその成形品の寸法安定性が低下することが多かった。
【特許文献1】特許第2533764号公報(請求項1、第2頁第3欄第15〜17行、第3頁第6欄第9〜20行)
【特許文献2】特開平10−306175号公報(請求項3、段落番号[0023][0028])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、可塑剤(例えば、非縮合型のリン酸エステルなど)を使用しても、この可塑剤のブリードアウトを高いレベルで抑制又は防止できるセルロースエステル系樹脂組成物及びその成形品を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、可塑剤のブリードアウトを抑制又は防止できるとともに、種々の物性(機械的強度、耐衝撃性などの機械的特性や、難燃性、耐熱性などの化学的特性)のバランスに優れたセルロースエステル系樹脂組成物及びその成形品を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、可塑剤を含むセルロースエステル系樹脂組成物(又はこの樹脂組成物で形成された成形品)から、前記可塑剤のブリードアウトを抑制又は防止できるブリードアウト抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、可塑剤(例えば、トリフェニルホスフェートなどのリン酸エステル)を含むセルロースエステル樹脂組成物に、縮合リン酸エステルを添加すると、前記樹脂組成物(又はその成形品)からの可塑剤のブリードアウト(染み出し)を高いレベルで抑制又は防止できることを見いだし、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明のセルロースエステル系樹脂組成物(セルロース系樹脂組成物)は、セルロースエステル、可塑剤、およびこの可塑剤のブリードアウトを抑制又は防止するためのブリードアウト抑制剤で構成された樹脂組成物であって、前記ブリードアウト抑制剤が、縮合リン酸エステル(A)で構成されている。前記セルロースエステルの平均置換度は、通常、2.7以下(例えば、1.7〜2.7程度)であってもよい。前記可塑剤は、例えば、リン酸エステル(非縮合リン酸エステル)などで構成してもよい。
【0012】
前記縮合リン酸エステル(A)は、室温で固体の縮合リン酸エステル(特に芳香族縮合リン酸エステル)であってもよい。また、前記縮合リン酸エステル(A)の融点は、例えば、40℃以上であってもよい。代表的な前記縮合リン酸エステルには、例えば、下記式(1)で表される化合物(芳香族縮合リン酸エステル)などが含まれる。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、R1〜R3は、同一又は異なって置換基を示し、kおよびmは0〜5の整数、nは0〜4の整数を示す。)
代表的な前記樹脂組成物では、例えば、可塑剤が芳香族リン酸エステルであり、かつ縮合リン酸エステル(A)が、下記式(2)で表される化合物であってもよい。
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、R1a、R1b、R2aおよびR2bは同一又は異なってアルキル基を示す。)
前記樹脂組成物において、可塑剤の割合は、セルロースエステル100重量部に対して5〜65重量部程度であってもよく、縮合リン酸エステル(A)の割合は、可塑剤100重量部に対して5〜50重量部程度であってもよい。
【0017】
代表的な前記樹脂組成物には、平均置換度が1.7〜2.5程度のセルローエステル(特に、酢酸セルロース)、芳香族リン酸エステル(特に、リン酸トリC6-10アリールエステルなどのリン酸トリアリールエステル)、および融点が60℃以上(例えば、70〜150℃程度)の芳香族縮合リン酸エステル(例えば、レゾルシノールビス(2,6−ジアルキルフェニルホスフェート)などの前記式(2)で表される化合物)とで構成されており、リン酸トリアリールエステルの割合が、前記酢酸セルロース100重量部に対して10〜35重量部程度であり、前記芳香族縮合リン酸エステルの割合が、芳香族リン酸エステル(特に、リン酸トリアリールエステル)100重量部に対して10〜40重量部程度である樹脂組成物などが含まれる。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、さらに、充填剤を含んでいてもよく、このような充填剤は、繊維状充填剤、板状充填剤及び粉粒状充填剤から選択された少なくとも一種であってもよい。このような充填剤は、例えば、タルク、マイカ、ウォラストナイト及び窒化ホウ素から選択された少なくとも一種であり、かつ平均粒径(又は平均繊維径)5μm以下であってもよい。前記樹脂組成物が充填剤を含む場合、可塑剤と充填剤との割合(重量比)は、前者/後者=95/5〜30/70程度であってもよい。
【0019】
前記樹脂組成物は、安定性を高めるため、さらに、エポキシ化合物を含んでいてもよい。また、前記樹脂組成物は、さらに、有機酸、チオエーテル系化合物、および亜リン酸エステルから選択された少なくとも1種の安定化剤を含んでいてもよい。
【0020】
本発明の樹脂組成物は、高温での溶融工程を含む成形方法に好適に利用でき、例えば、射出成形に用いてもよい。本発明には、前記樹脂組成物で形成された成形品も含まれる。
【0021】
本発明では、可塑剤と前記ブリードアウト抑制剤とを組みあわせることにより、セルロースエステル系樹脂組成物(およびこの樹脂組成物で形成された成形品)からの可塑剤のブリードアウト(染み出し)を高いレベルで抑制又は防止できる。そのため、本発明には、セルロースエステルおよび可塑剤で構成された樹脂組成物から、前記可塑剤のブリードアウトを抑制又は防止するためのブリードアウト抑制剤であって、縮合リン酸エステルで構成されているブリードアウト抑制剤も含まれる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のセルロースエステル系樹脂組成物(又はその成形品)では、セルロースエステルと可塑剤と縮合リン酸エステルとを組みあわせるので、可塑剤(例えば、非縮合型のリン酸エステルなど)を使用しても、この可塑剤のブリードアウトを高いレベルで抑制又は防止できる。また、本発明のセルロースエステル系樹脂組成物(又はその成形品)は、可塑剤のブリードアウトを抑制又は防止できるとともに、種々の物性(機械的強度、耐衝撃性などの機械的特性や、難燃性、耐熱性などの化学的特性)のバランスに優れている。このように、本発明の縮合リン酸エステルは、可塑剤を含むセルロースエステル系樹脂組成物(又はこの樹脂組成物で形成された成形品)から、前記可塑剤のブリードアウトを抑制又は防止するのに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のセルロースエステル系樹脂組成物は、セルロースエステル、可塑剤、およびこの可塑剤のブリードアウトを抑制又は防止するためのブリードアウト抑制剤で構成されている。
【0024】
[セルロースエステル]
セルロースエステルとしては、例えば、セルロース有機酸エステル[セルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2-6カルボン酸エステル]、前記有機酸エステルの誘導体(ポリカプロラクトングラフト化セルロースアセテートなどのグラフト体など)、セルロース有機酸エステル・エーテル類(アセチルメチルセルロース、アセチルエチルセルロース、アセチルプロピルセルロースなどのC2-6アシルセルロースC1-6アルキルエーテル、アセチルヒドロキシエチルセルロース、アセチルヒドロキシプロピルセルロースなどのC2-6アシルセルロースヒドロキシC2-6アルキルエーテルなど)、セルロース無機酸エステル(硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロースなど)、セルロース有機酸・無機酸混合エステル(硝酸酢酸セルロースなど)などが挙げられる。これらのセルロースエステルは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0025】
これらのセルロースエステルのうち、セルロース有機酸エステル、特に酢酸セルロース(又はセルロースアセテート)が好ましい。
【0026】
セルロースエステル(例えば、酢酸セルロース)において、成形性及び機械的特性の点から、置換基(アシル基)の平均置換度は、通常、2.7以下である場合が多く、好ましくは1.7〜2.7、さらに好ましくは1.8〜2.6(特に2〜2.5)程度であってもよい。生分解性の点からは、セルロースエステルの平均置換度は、例えば、1.7〜2.5、好ましくは1.8〜2.4、さらに好ましくは1.9〜2.3(特に2〜2.2)程度であってもよい。
【0027】
セルロースエステルの重合度は、特に制限されず、粘度平均重合度100〜1000、好ましくは100〜500、さらに好ましくは200〜500(特に200〜400)程度であってもよい。
【0028】
なお、前記樹脂組成物は、樹脂成分として少なくともセルロースエステルを含んでいればよく、樹脂としてセルロースエステルのみを含んでいてもよく、他の樹脂を含んでいてもよい。
【0029】
[可塑剤]
可塑剤としては、例えば、リン酸エステル{脂肪族リン酸エステル[リン酸トリアルキルエステル(リン酸トリエチル、リン酸トリブチルなどのリン酸トリC1-12アルキルエステル)、リン酸トリアルコキシアルキルエステル(例えば、リン酸トリブトキシエチルなどのリン酸トリC1-6アルコキシC1-12アルキルエステル)、芳香族リン酸エステル[リン酸アルキルジアリールエステル(例えば、リン酸オクチルジフェニル、リン酸2−エチルヘキシルジフェニルなどのリン酸C1-20アルキル−ジC6-15アリールエステル、好ましくはリン酸C1-12アルキル−ジC6-10アリールエステル)、リン酸トリアリールエステル(例えば、リン酸トリフェニル(TPP)、リン酸トリクレジル(TCP)、リン酸トリ(イソプロピルフェニル)、リン酸トリキシレニル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸クレジル−2,6−ジ(キシレニル)などのリン酸トリC6-15アリールエステル、好ましくはリン酸トリC6-10アリールエステルなど)など}、芳香族カルボン酸エステル[フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DEHP)などのフタル酸ジC1-12アルキルエステル、フタル酸ジメトキシエチルなどのフタル酸C1-6アルコキシC1-12アルキルエステル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸C1-12アルキル・アリール−C1-3アルキルエステル、エチルフタリルエチレングリコレート、ブチルフタリルブチレングリコレートなどのC1-6アルキルフタリルC2-4アルキレングリコレート、トリメリット酸トリメチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシル(TOTM)などのトリメリット酸トリC1-12アルキルエステル、ピロメリット酸テトラオクチルなどのピロメリット酸テトラC1-12アルキルエステルなど]、脂肪酸エステル[アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ブトキシエトキシエチル・ベンジル、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル(BXA)などのアジピン酸エステル、アゼライン酸ジエチル、アゼライン酸ジブチル、アゼライン酸ジオクチルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチルなどのセバシン酸エステル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチルなど]、多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど)の低級脂肪酸エステル[トリアセチン(TA)、ジグリセリンテトラアセテートなど]、グリコールエステル(ジプロピレングリコールジベンゾエートなど)、クエン酸エステル[クエン酸アセチルトリブチル(OACTB)など]、アミド類[N−ブチルベンゼンスルホンアミド(BM−4)など]、エステルオリゴマー(カプロラクトンオリゴマーなど)などを含んでいてもよい。これらの可塑剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0030】
これらの可塑剤のうち、リン酸エステル(非縮合リン酸エステル)、特に、リン酸トリアリールエステル(リン酸トリフェニルなど)などの芳香族リン酸エステルが好ましい。可塑剤としてリン酸エステルを用いると、難燃性及び耐熱性も向上できる。
【0031】
なお、可塑剤は、前記セルロースエステルとの相溶性の観点から、前記セルロースエステルの溶解性パラメータ(SP値)と同程度のSP値を有していてもよい。前記有機酸セルロースエステルのSP値は、置換度や種類によって異なるが、例えば、酢酸セルロースで10〜11(MPa)1/2程度である。従って、可塑剤のSP値は、例えば、8〜12(MPa)1/2、好ましくは8.5〜12(MPa)1/2、さらに好ましくは9〜12(MPa)1/2程度であってもよい。なお、本発明における溶解性パラメータ(SP、下記式ではδ)は、下記式で表されるスモール(Small)の式に準じる。
【0032】
δ=dΣ(Δδ)/M
(式中、dは密度、Δδは構成原子団に対応する溶解度パラメータ、Mは分子量を示す)
なお、スモールの式は、SP値が未知の物質に対し、上記のように、構成原子団に相当する溶解性パラメータ(又は溶解度パラメータ)を用いて溶解度パラメータを求める式であり、例えば、「可塑剤−その理論と応用−(初版第1刷) 村井孝一編著;第14〜16頁;(株)幸書房」などを参照できる。
【0033】
可塑剤は、常温で固体であってもよく、液状であってもよい。なお、常温で固体の可塑剤であっても、ヘンシェルミキサーなどの混合機により混練し、外部からの加熱又は混合機中の回転による摩擦熱で、系中の温度が可塑剤の融点以上に上昇すれば、可塑剤とセルロースエステルとは充分に混ざり合う。また、液状の可塑剤と固体の可塑剤とを組み合わせて用いてもよい。
【0034】
可塑剤(リン酸エステルなど)の割合は、前記セルロースエステル100重量部に対して、例えば、1〜80重量部、好ましくは5〜65重量部(例えば、5〜40重量部)、さらに好ましくは10〜35重量部(特に20〜35重量部)程度であってもよい。可塑剤の割合が少ないほど剛性は高くなり、加熱変形温度(HDT)も高くなる。しかし、可塑剤の割合が前記範囲よりも小さいと、可塑化効果が現れなくなるとともに、組成物の吸湿度が高くなり、高温高湿下における成形品の寸法安定性が低くなる虞がある。
【0035】
(ブリードアウト抑制剤)
ブリードアウト抑制剤は、セルロースエステルおよび可塑剤を含む組成物(およびその成形体)から、前記可塑剤のブリードアウトを抑制できる化合物であればよいが、縮合リン酸エステル(A)(通常、芳香族縮合リン酸エステル)で構成されている。
【0036】
縮合リン酸エステル(A)は、前記可塑剤のブリードアウトを抑制可能な化合物であればよく、通常、オキシ塩化リンなどのリン成分と、ポリオール類(通常、芳香族ポリオール類)と、モノアルコール類(特に、フェノール類などのモノヒドロキシアレーン類)との反応生成物(特に、芳香族縮合リン酸エステル)であり、少なくとも2つ(特に2つ)のリン酸単位を分子中に有する化合物である。
【0037】
ポリオール類としては、非芳香族ポリオール(例えば、脂肪族ポリオールなど)、芳香族ポリオール(通常、多価フェノール類、ビスフェノール類など)などが例示できる。ポリオール類は、通常、少なくとも芳香族ポリオールで構成されている。
【0038】
代表的な多価フェノール(ポリヒドロキシベンゼン)類としては、例えば、ジヒドロキシベンゼン(カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン)、置換基を有するジヒドロキシベンゼン{アルキル−ジヒドロキシベンゼン[ジヒドロキシトルエン(3,5−ジヒドロキシトルエンなど)、5−t−ブチルレゾルシノール、ジヒドロキシキシレン(2,6−ジヒドロキシ−p−キシレンなど)などのモノ又はジC1-10アルキル−ジヒドロキシベンゼンなど]、アリール−ジヒドロキシベンゼン(2,4−ジヒドロキシビフェニルなどのC6-10アリール−ジヒドロキシベンゼンなど)、ハロ−ジヒドロキシベンゼン(2,4−ジフルオロヒドロキノンなどのモノ又はジハロ−ジヒドロキシベンゼンなど)、アシル−ジヒドロキシベンゼン[アルキルカルボニル−ジヒドロキシベンゼン(2,4−ジヒドロキシアセトフェノンなどのC2-6アルキルカルボニル−ジヒドロキシベンゼンなど)、アリールカルボニル−ジヒドロキシベンゼン(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのC6-10アリールカルボニル−ジヒドロキシベンゼン)など}などのジヒドロキシベンゼン類、;これらのジヒドロキシベンゼン類に対応するトリヒドロキシベンゼン類[例えば、トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシノール)、トリヒドロキシアセトフェノンなど]などが挙げられる。
【0039】
代表的なビスフェノール類としては、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタンなどの置換基を有していてもよいビス(ヒドロキシフェニル)C1-10アルカン]、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類[例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどの置換基を有していてもよいビス(ヒドロキシフェニル)C5-10シクロアルカン]、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル類(4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テルなど)、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン類(4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンなど)、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド類(4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシドなど)、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド類(4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドなど)、ビス(ヒドロキシフェニル−アルキル)アレーン類[4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールなど]などが挙げられる。
【0040】
これらのうち、好ましいポリオール類は、ジヒドロキシベンゼン類[ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール、ヒドロキノンなど)、アルキル−ジヒドロキシベンゼン、ハロ−ジヒドロキシベンゼンなどの置換基を有していてもよいジヒドロキシベンゼン(特に、置換基を有していてもよいレゾルシノール)]などが挙げられる。
【0041】
モノアルコール類としては、非芳香族モノアルコール(脂肪族アルコールなど)、モノヒドロキシアレーン類が挙げられる。モノアルコール類は、通常、モノヒドロキシアレーン類であってもよい。代表的なモノヒドロキシアレーン類としては、例えば、フェノール類{例えば、フェノール、置換基を有するフェノール類[アルキルフェノール(o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノールなどのモノ又はジC1-10アルキルフェノール、好ましくはモノ又はジC1-6アルキルフェノール、さらに好ましくはジC1-4アルキルフェノール)、アリールフェノール(o−フェニルフェノールなどのモノ又はジC6-10アリールフェノールなど)、シクロアルキルフェノール(2−シクロヘキシルフェノールなどのモノ又はジC5-10シクロアルキルフェノールなど)などの炭化水素基を有するフェノール、アルコキシフェノール(o−メトキシフェノールなどのモノ又はC1-10アルコキシフェノールなど)、ハロフェノール(クロロフェノールなどのモノ又はジハロフェノールなど)、アシルフェノール[アルキルカルボニルフェノール(ヒドロキシアセトフェノンなどのC1-6アルキル−カルボニルフェノールなど)、アリールカルボニル−ジヒドロキシベンゼン(例えば、ヒドロキシベンゾフェノンなどのC6-10アリール−カルボニルフェノール)]などの置換基を有していてもよいモノヒドロキシC6-10アレーンなどが含まれる。
【0042】
これらのモノアルコール類のうち、フェノール、炭化水素基を有するフェノール類が好ましく、特にアルキルフェノールが好ましい。なお、リン成分およびポリオール類と反応させるモノアルコール類は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0043】
好ましい縮合リン酸エステル(A)は、芳香族縮合リン酸エステル(すなわち、ポリオール類が芳香族ポリオール類であり、かつモノアルコール類がモノヒドロキシアレーン類である縮合リン酸エステル)である。
【0044】
代表的な縮合リン酸エステル(A)には、例えば、下記式(1)で表される化合物(フェノール類およびジヒドロキシベンゼン類を原料とする縮合リン酸エステル)などが含まれる。
【0045】
【化3】

【0046】
(式中、R1〜R3は、同一又は異なって置換基を示し、kおよびmは0〜5の整数、nは0〜4の整数を示す。)
上記式(1)において、R1〜R3で表される置換基としては、例えば、炭化水素基[アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1-10アルキル基、好ましくはC1-8アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC5-10シクロアルキル基など)、アリール基(フェニル基、トリル基、キシリル基などのC6-10アリール基など)など]、アルコキシ基(メトキシ基などのC1-4アルコキシ基など)、アシル基(アセチル基などのC1-6アシル基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシカルボニル基など)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)などが挙げられる。
【0047】
好ましい置換基(例えば、R1およびR2)は、炭化水素基、特に、アルキル基(メチル基などのC1-4アルキル基など)などが挙げられる。
【0048】
また、置換数k、mおよびnの合計が1以上の整数(例えば、2〜8、好ましくは3〜6程度)である場合が多く、特にkおよびmが、それぞれ1以上(例えば、2〜4、好ましくは2〜3、特に2)であってもよい。
【0049】
置換基R1〜R3の置換位置は、特に限定されず、例えば、末端のベンゼン環の置換基R1およびR2は、ベンゼン環の2〜6位から適宜選択でき、通常、少なくとも2位(又は6位)に置換基R1又はR2が置換していてもよい。例えば、置換基R1およびR2は、kおよびmが2であるとき、2位および6位、2位および3位、2位および4位などに置換していてもよく、特に、2位および6位に置換していてもよい。
【0050】
前記式(1)で表される化合物のうち、好ましい縮合リン酸エステル(A)には、下記式(2)で表される化合物などが含まれる。
【0051】
【化4】

【0052】
(式中、R1a、R1b、R2aおよびR2bは同一又は異なってアルキル基を示す。)
上記式(2)において、R1a、R1b、R2aおよびR2bで表されるアルキル基としては、前記例示のアルキル基(メチル基などのC1-4アルキル基など)などが挙げられる。
【0053】
前記式(1)又は(2)で表される化合物には、例えば、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジクレジルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジキシリルホスフェート)などのレゾルシノールビスアリールホスフェート類(後述の式(3)で表される化合物);ハイドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジクレジルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジキシリルホスフェート)などのハイドロキノンビスアリールホスフェート類などが含まれる。
【0054】
また、上記式(2)で表される化合物のうち、特に好ましい縮合リン酸エステル(A)には、レゾルシノールビス(2,6−ジアルキルフェニルホスフェート)、すなわち、下記式(3)で表される化合物が含まれる。
【0055】
【化5】

【0056】
(式中、R1a、R1b、R2aおよびR2bは前記に同じ。)
前記縮合リン酸エステル(A)は、室温(例えば、15〜30℃程度)で液状又は固体状であってもよい。好ましい縮合リン酸エステル(A)には、効率よくブリードアウトを抑制するという観点から、室温で固体状の縮合リン酸エステルが含まれる。
【0057】
縮合リン酸エステル(A)(室温で固体状の縮合リン酸エステル)の融点は、例えば、10℃以上(例えば、20〜250℃程度)の範囲から選択でき、例えば、30℃以上(例えば、35〜220℃程度)、好ましくは40℃以上(例えば、50〜200℃程度)、さらに好ましくは60℃以上(例えば、70〜150℃程度)、特に80℃以上(例えば、85〜130℃程度)であってもよい。なお、縮合リン酸エステル(A)を2種以上組みあわせる場合、各縮合リン酸エステル(A)それぞれの融点が上記範囲であってもよく、縮合リン酸エステル(A)全体の融点が上記範囲であってもよい。また、縮合リン酸エステル(A)が不純物を含む場合、縮合リン酸エステルそのもの[又は高純度(例えば、純度99〜100%程度)の縮合リン酸エステル]の融点が、上記範囲であってもよい。
【0058】
ブリードアウト抑制剤(縮合リン酸エステル(A))の割合は、セルロールエステル100重量部に対して、例えば、0.1〜40重量部、好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部(例えば、2〜15重量部)程度であってもよい。
【0059】
また、ブリードアウト抑制剤(縮合リン酸エステル(A))の割合は、可塑剤100重量部に対して、例えば、3〜60重量部、好ましくは5〜50重量部(例えば、8〜45重量部)、さらに好ましくは10〜40重量部(例えば、15〜35重量部)程度であってもよい。
【0060】
[充填剤]
本発明の樹脂組成物は、さらに充填剤を含んでいてもよい。セルロースエステルと可塑剤と(ブリードアウト抑制剤と)充填剤とを組み合わせると、環境的な負荷が小さく、流動性、剛性及び寸法精度に優れた樹脂組成物を効率よく得ることができる。
【0061】
充填剤には、繊維状充填剤、非繊維状充填剤(粉粒状又は板状充填剤など)が含まれる。これらの充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0062】
繊維状充填剤としては、例えば、有機繊維(天然繊維、紙類など)、無機繊維(ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ウォラストナイト、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維など)、金属繊維などが挙げられる。これらの繊維状充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0063】
これらの繊維状充填剤のうち、天然繊維、紙類、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維など、特に天然繊維が好ましい。天然繊維としては、例えば、パルプ[コットン、種毛(カポック、ポンパックスなど)、靱皮繊維(亜麻、大麻、ラミー、ジュート、こうぞ、みつまたなど)、単子葉植物繊維(竹、わら、バガス、エスパルトなど)、木材繊維(例えば、針葉樹、広葉樹などの木材繊維)、葉繊維(マニラ麻、サイザル麻など)など]又は再生パルプ、前記靱皮繊維、単子葉植物繊維、葉繊維をパルプ化せずに直接的に得られた繊維などが例示できる。紙類は、古紙であってもよい。
【0064】
繊維状充填剤(例えば、天然繊維)の平均繊維長は、溶融混練におけるフィードを円滑に行い、耐衝撃性を改良する点から、例えば、10mm以下(例えば、0.1〜10mm)、好ましくは0.5〜10mm、さらに好ましくは1〜5mm程度である。繊維状充填剤の平均繊維径は、例えば、0.1〜50μm、好ましくは0.5〜30μm、さらに好ましくは1〜10μm程度である。
【0065】
非繊維状充填剤のうち、粉粒状又は板状充填剤としては、鉱物質粒子(タルク、マイカ、焼成珪成土、カオリン、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト、クレー、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ワラストナイト(又はウォラストナイト)など)、ホウ素含有化合物(窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホウ化チタンなど)、金属炭酸塩(炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなど)、金属珪酸塩(珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、アルミノ珪酸マグネシウムなど)、金属酸化物(酸化マグネシウムなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなど)、金属硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、金属炭化物(炭化ケイ素、炭化アルミニウム、炭化チタンなど)、金属窒化物(窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタンなど)、ホワイトカーボン、各種金属箔などが挙げられる。これらの非繊維状充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0066】
これらの非繊維状充填剤のうち、鉱物質粒子(タルク、マイカ、シリカ、ウォラストナイトなど)、ホウ素含有化合物(窒化ホウ素など)、特に、タルク、マイカ、窒化ホウ素が好ましい。タルクとしては、例えば、鉱山から採取したタルク鉱石を慣用の方法で分級したタルクなどが使用できる。窒化ホウ素は、例えば、尿素、ジシアンジアミド、塩化アンモニウムなどをホウ酸に添加し、アンモニウム中で高温で還元窒化し、慣用の方法で分級した窒化ホウ素などが使用できる。
【0067】
非繊維状充填剤(粉粒状充填剤)の平均粒径は、30μm以下程度の範囲から選択できるが、例えば、10μm以下(0.1〜10μm)、好ましくは5μm以下(例えば、0.3〜5μm)、さらに好ましくは0.5〜5μm(特に1〜5μm)程度である。
【0068】
これらの無機充填剤のうち、通常、粉粒状充填剤、特に鉱物質微粒子(例えば、タルクなど)が好ましく用いられるが、成形性の点からは、繊維状充填剤も好ましく用いることができる。
【0069】
充填剤の割合は、前記セルロースエステル100重量部に対して、例えば、1〜40重量部、好ましくは3〜30重量部、さらに好ましくは5〜25重量部程度であってもよい。また、前記樹脂組成物中における充填剤の割合は、例えば、樹脂組成物全体の0.1〜25重量%、好ましくは0.5〜20重量%、さらに好ましくは1〜20重量%程度であってもよい。
【0070】
可塑剤と充填剤との割合(重量比)は、前者/後者=99/1〜10/90程度の範囲から選択できるが、通常、95/5〜30/70、好ましくは90/10〜40/60、さらに好ましくは85/15〜50/50程度である。このような範囲で、可塑剤と充填剤とを組み合わせると、樹脂組成物の流動性及び剛性を効率よく向上できる。
【0071】
[エポキシ化合物]
本発明の樹脂組成物には、溶融工程を有する成形(例えば、射出成形)によって、有機酸(酢酸など)などの揮発成分が発生するのを低減する点から、安定化剤として、さらに、エポキシ化合物を添加するのが好ましい。
【0072】
エポキシ化合物としては、例えば、脂環式エポキシ化合物、グリシジルエステル化合物、グリシジルエーテル化合物、グリシジルアミン化合物、長鎖脂肪族エポキシ化合物などが挙げられる。これらのエポキシ化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0073】
脂環式エポキシ化合物としては、例えば、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、3,4−エポキシ−1−[8,9−エポキシ−2,4−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3−イル]−シクロヘキサンなどのエポキシ−[エポキシ−オキサスピロC8-15アルキル]−シクロC5-12アルカン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートや4,5−エポキシシクロオクチルメチル−4′,5′−エポキシシクロオクタンカルボキシレートなどのエポキシC5-12シクロアルキルC1-3アルキル−エポキシC5-12シクロアルカンカルボキシレート、ビス(2−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートなどのビス(C1-3アルキルエポキシC5-12シクロアルキルC1-3アルキル)ジカルボキシレートなどが挙げられる。これらの脂環式エポキシ化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0074】
グリシジルエステル化合物としては、例えば、脂肪族カルボン酸グリシジルエステル(酢酸グリシジルエステル、酪酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステルなどの飽和C2-24脂肪族カルボン酸グリシジルエステルや、アジピン酸ジグリシジルエステル、ドデカン二酸ジグリシジルエステルなどの脂肪族ジカルボン酸ジグリシジルエステルなど)、不飽和カルボン酸グリシジルエステル[(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステルなどの不飽和C2-24脂肪族カルボン酸グリシジルエステルなど]、芳香族カルボン酸グリシジルエステル(安息香酸グリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステルなど)などが挙げられる。これらのグリシジルエステル化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0075】
グリシジルエーテル化合物としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂など)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂など)などが挙げられる。これらのグリシジルエーテル化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0076】
グリシジルアミン化合物としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジンなどが挙げられる。これらのグリシジルアミン化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0077】
長鎖脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、エポキシ化油脂(エポキシ化大豆油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化アマニ油など)、エポキシ化脂肪酸アルキル(エポキシ化ステアリン酸メチル、エポキシ化ステアリン酸ブチル、エポキシ化ステアリン酸オクチルなどのエポキシ化C8-24脂肪酸C1-12アルキルなど)、エポキシ化ポリブタジエン、長鎖α−オレフィンオキシドなどが挙げられる。これらの長鎖脂環族エポキシ化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。エポキシ化大豆油は、例えば、ダイセル化学工業(株)から、商品名ダイマック「S−300K」(融点−5℃〜5℃、比重0.991)として入手できる。
【0078】
これらのエポキシ化合物のうち、脂環式エポキシ化合物や長鎖脂肪族エポキシ化合物、特に、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、4,5−エポキシシクロオクチルメチル−4′,5′−エポキシシクロオクタンカルボキシレートなどのエポキシC5-12シクロアルキルC1-3アルキル−エポキシC5-12シクロアルカンカルボキシレートや、エポキシ化大豆油などのエポキシ化油などが好ましい。
【0079】
エポキシ化合物の割合は、前記セルロースエステル100重量部に対して、0.05〜5重量部程度の範囲から選択でき、揮発成分の臭気(有機酸臭など)を感じない程度にまで揮発成分の発生を抑制する点から、例えば、0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜4重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部(例えば、0.5〜1重量部)程度であってもよい。
【0080】
[安定化剤]
本発明の樹脂組成物には、さらに、有機酸、チオエーテル化合物、亜リン酸エステル化合物などの安定化剤が含まれていてもよい。これらの安定化剤を使用することにより、樹脂組成物(又は成形品)の着色を効率よく抑制又は防止することができる。これらの安定化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0081】
(有機酸)
有機酸としては、通常、pKa値が、1以上(例えば、1〜10)、好ましくは2以上(例えば、2〜8)程度の弱有機酸を使用できる。このような有機酸としては、例えば、モノカルボン酸類[脂肪族カルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸などのC1-10脂肪族カルボン酸など)、脂環族カルボン酸(シクロヘキサンカルボン酸など)、芳香族カルボン酸(安息香酸、ナフトエ酸などのC7-12芳香族カルボン酸など)など]、ポリカルボン酸類[脂肪族飽和ポリカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸などのC2-10脂肪族飽和ポリカルボン酸など)、脂肪族不飽和ポリカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ソルビン酸などのC4-10脂肪族不飽和ポリカルボン酸など)、脂環族ポリカルボン酸(1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸などのC8-10脂環族ポリカルボン酸など)、芳香族ポリカルボン酸(フタル酸、トリメリット酸などのC8-12芳香族ポリカルボン酸など)など]、オキシカルボン酸類[脂肪族オキシカルボン酸(グリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、グリセリン酸などのC2-10脂肪族オキシカルボン酸など)、芳香族オキシカルボン酸(サリチル酸、オキシ安息香酸、没食子酸などのC7-12芳香族オキシカルボン酸など)など]、オキシポリカルボン酸類[脂肪族オキシポリカルボン酸(酒石酸、クエン酸、リンゴ酸などのC2-10脂肪族オキシポリカルボン酸など)など]、複素環式カルボン酸(ピリジンカルボン酸など)、芳香族スルホン酸(ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などのC6-10芳香族スルホン酸など)などが挙げられる。これらの有機酸は、無水物、水和物などであってもよい。これらの有機酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0082】
これらの有機酸のうち、脂肪族カルボン酸(酢酸、プロピオン酸など)などのモノカルボン酸類、脂肪族飽和ポリカルボン酸(シュウ酸、マロン酸など)や脂肪族不飽和ポリカルボン酸(マレイン酸、フマル酸など)などのポリカルボン酸類、脂肪族オキシカルボン酸(グリコール酸、乳酸など)などのオキシカルボン酸類、脂肪族オキシポリカルボン酸(クエン酸、リンゴ酸など)などのオキシポリカルボン酸類、特に、クエン酸又はその水和物などのC2-6脂肪族オキシポリカルボン酸が好ましい。
【0083】
有機酸の割合は、前記セルロースエステル100重量部に対して、例えば、0.005〜0.5重量部、好ましくは0.01〜0.1重量部、さらに好ましくは0.02〜0.05重量部程度である。有機酸の割合が、この範囲にあると、耐酸化効果を発揮して、成形品の着色が抑制されるとともに、セルロースエステルの分解による有機酸のブリードアウトも効率よく抑制できる。
【0084】
(チオエーテル化合物)
チオエーテル化合物は、酸化(および着色)を防止するために使用され、例えば、ジラウリル−3,3′−チオジブロピオネート、ジトリデシル−3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジパルミチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジブロピオネート、ラウリルステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、パルミチルステアリル−3,3′−チオジプロピオネートなどのジアルキルチオジカルボキシレートなどを例示できる。これらのチオエーテル化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0085】
これらのチオエーテル化合物のうち、ジラウリル−3,3′−チオジブロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジブロピオネートなどのジC10-22アルキル−3,3′−チオジC2-6脂肪族カルボキシレートなどが好ましい。
【0086】
チオエーテル化合物の割合は、前記セルロースエステル100重量部に対して、例えば、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部(特に0.1〜0.5重量部)程度であってもよい。
【0087】
(亜リン酸エステル化合物)
亜リン酸エステル化合物は熱安定性を向上させるために使用され、例えば、トリアリールホスファイト(トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスファイト、トリナフチルホスファイトなど)、ジアリールアルキルホスファイト(ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイトなどのジアリールC1-18アルキルホスファイトなど)、アリールジアルキルホスファイト(フェニルジイソオクチルホスファイトなどのアリールC1-18ジアルキルホスファイトなど)、トリアルキルホスファイト(トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリ−n−ブチルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイトなどのトリC1-18アルキルホスファイトなど)、ジアルキルホスファイト(ジラウリルホスファイトなどのジC1-18アルキルホスファイトなど)、アルキルアリール単位を含むホスファイト[トリス(2,4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、ジノニルフェニル−o−ビフェニルホスファイトなどのトリス(C1-18アルキル−アリール)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなど]、脂肪族カルボン酸亜リン酸エステル(トリステアリルホスファイトなどのC1-18脂肪族カルボン酸亜リン酸エステルなど)、アルキレンオキシド単位含むホスファイト(ポリジプロピレングリコールノニルフェニルホスフェート、テトラフェニルジプロピレングリコールホスファイトなど)、サイクリックネオペンタン単位を含むホスファイト[サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなど]、ジホスファイト類(ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジドデシルペンタエリスリトールジイソシアネート、4,4′−イソプロピリデンジフェニルジドデシルジホスファイトなど)、トリホスファイト類[ヘプタシスジプロピレングリコールトリホスファイト、ヘキサ・トリデシル−1,1,3−トリ(3−t−ブチル−6−メチル−4−オキシフェニル)−3−メチルプロパントリホスファイト]などが挙げられる。これらの亜リン酸エステル化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0088】
これらの亜リン酸エステル化合物のうち、分岐アルキル基を含むホスファイト、例えば、トリC6-18アルキルホスファイト(トリイソデシルホスファイトなど)、分岐C3-6アルキル基(t−ブチル基など)を含むホスファイト[トリス(2,4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなど]などが好ましい。
【0089】
亜リン酸エステル化合物の割合は、前記セルロースエステル100重量部に対して、例えば、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部(特に0.3〜0.8重量部)程度であってもよい。
【0090】
[酸変性樹脂]
前記樹脂組成物には、さらに、酸変性樹脂が含まれていてもよい。前記樹脂組成物に酸変性樹脂を添加すると、酸変性樹脂が滑剤(外部滑剤)として作用するためか、溶融混練における障害[例えば、シリンダーの損傷、混練機における摩擦音(スクリューの摩擦音など)など]を効率よく防止できる。酸変性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0091】
酸変性樹脂は、酸基(カルボキシル基、酸無水物基など)又はその誘導性基(アミド基、イミド基、エステル基など)により変性されている。酸変性樹脂を構成する樹脂としては、慣用の熱可塑性樹脂、例えば、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂(ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなど)、スチレン系樹脂[ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体など]、ハロゲン含有ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体など)、アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体など)などのビニル重合系樹脂;ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンアリレート、又はこれらのコポリエステルなど)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12など)などの縮合系樹脂などが挙げられる。
【0092】
オレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン、メチルペンテン−1などのα−オレフィン(α−C2-10オレフィン)の単独又は共重合体、α−オレフィンと共重合性単量体との共重合体などが利用できる。このようなオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂(ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー樹脂など)、ポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテン共重合体など)などが例示できる。オレフィン系樹脂としては、少なくともプロピレン単位を含むポリプロピレン系樹脂であるのが好ましい。
【0093】
なお、変性は、慣用の方法で行うことができる。例えば、ビニル重合系樹脂では、対応するビニル単量体と、酸基(又はその誘導性基)を有する化合物(単量体)とを共重合(ランダム、ブロック又はグラフト共重合)する方法、ビニル重合系樹脂に対して、酸基を有する化合物をグラフト重合する方法などにより、酸基を導入(又は酸基により変性)してもよい。また、縮合系樹脂では、酸基を有する化合物(単量体)を樹脂(縮合系樹脂)にグラフト重合させることにより、酸基を導入(又は酸基により変性)してもよい。
【0094】
このような酸基を有する化合物(又は単量体)には、不飽和カルボン酸、例えば、不飽和モノカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アンゲリカ酸などのC3-8アルケンカルボン酸、好ましくはC3-6アルケンカルボン酸;ソルビン酸など)、アルケンジカルボン酸(マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、メサコン酸などのC4-10アルケンジカルボン酸、好ましくはC4-8アルケンジカルボン酸など)、これらの不飽和カルボン酸に対応する酸無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸など)などの他、これらの化合物の誘導体(アルカリ又はアルカリ土類金属などの金属塩、アミド、イミド、エステルなど)なども含まれる。これらのうち、不飽和ジカルボン酸又はその無水物、特に、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物が好ましい。酸基を有する化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0095】
好ましい酸変性樹脂には、酸変性オレフィン系樹脂(酸基により変性されたオレフィン系樹脂)、特に、無水マレイン酸、無水イタコン酸などにより変性された酸変性ポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレンなど)などが含まれる。このような酸変性オレフィン系樹脂は、セルロースエステルとの相溶性に優れている。
【0096】
酸変性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0097】
酸変性樹脂の数平均分子量は、例えば、5000〜100000、好ましくは8000〜75000程度であってもよく、通常、10000以上(例えば、10000〜70000、好ましくは15000〜70000、さらに好ましくは20000〜50000)程度であってもよい。
【0098】
また、酸変性樹脂において、酸基(酸基を有する化合物)の割合(共重合割合)は、例えば、酸変性樹脂に対して0.5〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは3〜15重量%程度であってもよい。
【0099】
酸変性樹脂の割合は、セルロースエステル100重量部に対して、0.05〜20重量部程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜15重量部、好ましくは0.2〜10重量部(例えば、0.5〜10重量部)、さらに好ましくは0.3〜5重量部(例えば、0.4〜3重量部)程度であってもよい。
【0100】
[無機系消臭剤]
本発明の樹脂組成物は、前記セルロースエステル樹脂組成物から発生する臭気を消臭(又は脱臭)するため、さらに無機系消臭剤(以下、単に消臭剤ということがある)を含んでいてもよい。このような無機系消臭剤としては、少なくとも、前記セルロースエステルのエステルに対応する酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの有機酸、特に少なくとも酢酸)の臭気を消臭可能である場合が多い。なお、無機系消臭剤は、少なくとも臭気を消臭できればよく、消臭剤および充填剤として作用する無機物であってもよい。
【0101】
このような無機系消臭剤としては、前記樹脂組成物の用途(例えば、着色の有無など)に応じて適宜選択でき、鉱物類又はその誘導体[ハイドロタルサイト化合物(ハイドロタルサイト系化合物)又はその焼成物、ゼオライト、モンモリロナイト、ケイソウ土、白土、麦飯石など]、金属化合物[金属酸化物又は金属水酸化物、金属リン酸塩(四価金属リン酸塩など)、金属硫酸塩(硫酸第1鉄など)、金属炭酸塩(炭酸亜鉛など)などの金属無機酸塩など]、炭(活性炭、木炭、竹炭など)などが挙げられる。
【0102】
金属酸化物又は金属水酸化物には、例えば、遷移金属酸化物又は遷移金属水酸化物[チタン酸化物又は水酸化物(酸化チタンなど)、ジルコニウム酸化物又は水酸化物(水和酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウムなど)などの周期表第4族金属酸化物又は水酸化物;鉄酸化物又は水酸化物(酸化鉄、水酸化鉄など)などの周期表第8族金属酸化物又は水酸化物;亜鉛酸化物又は水酸化物(酸化亜鉛など)などの周期表第11族金属酸化物又は水酸化物など]、アルミニウム酸化物又は水酸化物[アルミナ(活性アルミナなど)など]、ケイ素酸化物又は水酸化物(シリカゲルなど)、カルシウム酸化物又は水酸化物(ヒドロキシアパタイトなど)などが含まれる。これらの無機系消臭剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0103】
これらの無機系消臭剤のうち、前記酸変性樹脂に対する親和性が高い消臭剤、例えば、ハイドロタルサイト化合物(ハイドロタルサイト系化合物)又はその焼成物、ジルコニウム酸化物又は水酸化物(水和酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム)、金属リン酸塩(四価金属リン酸塩など)が好ましい。
【0104】
ハイドロタルサイト化合物は、下記式(I)で表わされるハイドロタルサイト構造を有する化合物(ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト様化合物)である。
【0105】
1(1-x)2x(OH)2n-(x/n)・mH2O (I)
(式中、M1は2価の金属であり、M2は3価の金属であり、xは0より大きく0.5以下の数であり、An-はn価の陰イオンであり、mは正数である。)
上記式(I)において、M1で表される2価金属(又は金属イオン)としては、マグネシウム(Mg2+)、亜鉛(Zn2+)などが例示でき、M2で表される3価金属(又は金属イオン)には、アルミニウム(Al3+)、ロジウム(Rh3+)などが例示できる。また、An-で表される陰イオンとしては、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、ハロゲンイオン(塩化物イオンなど)などが挙げられる。
【0106】
なお、ハイドロタルサイト焼成物は、ハイドロタルサイト化合物を約500℃以上で焼成し、水酸基、水やA(又はAに対応する成分、炭酸根など)が脱離することにより得られる化合物である。
【0107】
好ましいハイドロタルサイト化合物には、M1がマグネシウムであり、M2がアルミニウムであるマグネシウム−アルミニウムハイドロタルサイト化合物(又はその焼成物)などが含まれる。
【0108】
水和酸化ジルコニウムは、結晶質および非晶質のいずれであってもよく、オキシ水酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、含水酸化ジルコニウムおよび酸化ジルコニウム水和物と同義の化合物である。水和酸化ジルコニウムは公知の化合物であり、特にその製法は限定されないが、好ましい製法として湿式法が挙げられる。このような湿式法では、オキシ塩化ジルコニウム水溶液などのジルコニウム含有水溶液を、水やアルカリ水溶液で加水分解することにより、容易に水和酸化ジルコニウムを得ることができる。
【0109】
酸化ジルコニウムは、結晶質および非晶質のいずれであってもよいが、高い消臭性を発揮させるには非晶質が好ましい。本発明において、酸化ジルコニウムとしては、市販品をそのまま使用してもよく、また、上記の水和酸化ジルコニウムを焼成した焼成物(無水物)を用いてもよい。水和酸化ジルコニウムを焼成して非晶質の酸化ジルコニウムを得るための好ましい焼成温度は150〜350℃程度であってもよい。
【0110】
なお、このようなハイドロタルサイト化合物、水和酸化ジルコニウムおよび酸化ジルコニウムは、酢酸、吉草酸、酪酸などの低級脂肪酸や、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類に対して優れた消臭性を発揮する。特にその製法は限定されない。
【0111】
金属リン酸塩としては、下記式(II)で表される水に対して不溶性又は難溶性の4価金属リン酸塩などが挙げられる。
【0112】
a3b4c5de(PO4f・nH2O (II)
(式中、M3は1価金属であり、M4は2価金属であり、M5は4価金属であり、a、b、c、e及びnは0又は正数であって、bとcが共に0であることはなく、d及びfは正数であり、a+b+2c+4d=2e+3fを満たす。)
上記式(II)において、M5で表される4価金属(4価金属イオン)としては、ジルコニウム、チタン、スズ、セリウム、ハフニウムなどが挙げられ、特に、ジルコニウム、チタンが好ましい。また、M3で表される1価金属及び/又はM4で表される2価金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケル、マンガン、コバルトなどが挙げられる。これらのうち、ナトリウム、カリウム、銅、亜鉛及びマンガンが好ましい。また、好ましい態様では、a、b、c、d、e及びfの各係数は以下の式のいずれかを満たす(但し、a,b及びcは0であってもよいが、bとcが共に0であることはない)。
【0113】
a+b+c=1、d=1、e=1、f=1
a+b+c=1、d=2、e=0、f=3
a+b+c=2、d=1、e=0、f=2。
【0114】
特に好ましい4価金属リン酸塩としては、式(a+b+c=2、d=1、e=0、f=2)を満たす係数(但し、a,b及びcは0であってもよく、bとcが共に0であることはない)を有するγ型の層状構造を有する結晶質化合物が挙げられる。
【0115】
なお、このような金属リン酸塩は、酢酸、吉草酸、酪酸などの低級脂肪酸に加えて、硫化水素やメチルメルカプタンなどの含硫黄系ガスに対しても優れた消臭性を発揮する。
【0116】
これらの無機系消臭剤(酸変性樹脂に対する親和性が高い消臭剤)のうち、ハイドロタルサイト化合物又はその焼成物、水和酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウムが好ましく、特に、水和酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウムが好ましい。このような無機系消臭剤は、セルロースエステルに対する相溶性が高く、効率よく消臭能力を高めることができる。
【0117】
なお、消臭剤は、特開平10−279817号公報に記載の消臭剤であってもよい。また、ジルコニウム化合物(水和酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム)は、東亞合成(株)から、ケスモン(登録商標)の商品名「NS−70」、「NS−80E」などとして入手できる。
【0118】
消臭剤の形状(又は形態)は、特に限定されないが、通常、粉粒状(又は粉末)である場合が多い。消臭剤(粉粒状消臭剤)の平均粒径は、例えば、0.01〜20μm、好ましくは0.02〜10μm、さらに好ましくは0.05〜5μm程度であってもよい。平均粒径が小さすぎる(例えば、0.01μm未満)と再凝集しやすく、取り扱いが困難である。また、平均粒径が大きすぎる(例えば、20μmより大きい)と、樹脂(セルロースエステル)に対する分散性が低下する虞がある。
【0119】
無機系消臭剤の割合は、セルロースエステル(外部可塑化セルロールエステルにおけるセルロースエステル、又は内部可塑化されたセルロースエステルを意味する。以下、成分割合において同じ)100重量部に対して、0.01〜10重量部程度の範囲から選択でき、通常、0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.2〜3重量部程度であってもよい。
【0120】
なお、消臭剤と前記酸変性樹脂とを組み合わせることにより、セルロースエステル由来の酸(特に酢酸などの有機酸)の発生を高レベルで抑制でき、前記樹脂組成物(およびその成形体)からの異臭(酢酸などの有機酸臭)を著しく抑制又は低減できる。
【0121】
そのため、特に、消臭剤と前記酸変性樹脂とを組み合わせる場合、セルロースエステル100重量部に対して、消臭剤0.1〜1重量部、好ましくは0.15〜0.9重量部、さらに好ましくは0.2〜0.8重量部程度の少量であっても、高い消臭能でセルロースエステルを消臭できる。
【0122】
また、消臭剤と酸変性樹脂との割合は、前者/後者(重量比)=5/95〜95/5程度の範囲から選択でき、例えば、10/90〜90/10、好ましくは15/85〜80/20、さらに好ましくは20/80〜70/30(例えば、30/70〜60/40)程度であってもよい。
【0123】
本発明の樹脂組成物は、用途に応じて、慣用の添加剤、例えば、他の安定化剤(例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、耐光安定剤など)、着色剤(染料、顔料など)、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、分散剤、流動化剤、ドリッピング防止剤、抗菌剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0124】
本発明の樹脂組成物は、慣用の方法で調製することができ、例えば、各成分をタンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、ニーダーなどの混合機を用いて乾式又は湿式で混合して調製してもよい。さらに、前記混合機で予備混合した後、一軸又は二軸押出機などの押出機で混練してペレットに調製したり、加熱ロールやバンバリーミキサーなどの混練機で溶融混練して調製してもよい。溶融混練の温度は、可塑剤などの各成分の融点に応じて選択でき、例えば、50〜220℃、好ましくは60〜200℃、さらに好ましくは70〜150℃程度である。例えば、可塑剤として、TPP(融点約50℃)を用いた場合、ミキサー内の摩擦熱で70℃以上になるように攪拌混合してもよい。
【0125】
このようにして得られた樹脂組成物は、射出成形、押出成形、真空成形、異型成形、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、ブロー成形、ガス注入成形などによって各種成形品に成形することができる。これらの成形方法のうち、高温での溶融工程を含む成形方法に用いるのが好ましく、特に、流動性、剛性及び寸法精度が高いため、射出成形に用いるのが好ましい。さらに、この樹脂組成物は、射出成形の成形サイクルを短くしても、強度や伸度などの機械的特性や耐熱性に優れた成形品を得ることが可能であり、生産性が高い。例えば、成形サイクルを5分以下(例えば、10秒〜5分程度)、好ましくは10秒〜3分、さらに好ましくは10秒〜1分(特に10〜40秒)程度にすることが可能である。さらに、前記樹脂組成物は、前記特性を有するため、薄肉(例えば、0.5〜3mm程度)で射出成形により成形しても、バリの発生が抑制される。射出成形におけるシリンダー温度は、特に限定されず、100〜250℃(例えば、100〜220℃)、好ましくは120〜240℃(例えば、120〜200℃)、さらに好ましくは130〜230℃(例えば、130〜180℃)程度であってもよい。また、金型温度は、特に限定されず、30〜150℃程度の範囲から選択でき、例えば、40〜120℃、好ましくは45〜110℃(例えば、50〜100℃)程度であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明では、前記のように、可塑剤およびセルロースエステルを含むセルロースエステル系樹脂組成物に、前記ブリードアウト抑制剤を添加することにより、セルロースエステル系樹脂組成物(およびこの樹脂組成物で形成された成形品)からの可塑剤のブリードアウト(染み出し)を高いレベルで抑制又は防止できる。しかも、本発明の樹脂組成物は、機械的強度のバランスに優れるとともに、環境的な負荷も小さい。また、本発明の樹脂組成物は成形性が高く、例えば、薄肉品の成形においてバリの発生が少ない射出成形が可能である。さらに、得られる成形品は、難燃性及び耐熱性も高い。そのため、本発明の樹脂組成物は、各種用途、例えば、OA・家電機器分野、電気・電子分野、通信機器分野、サニタリー分野、自動車などの輸送車両分野、家具・建材などの住宅関連分野、雑貨分野などの各パーツ、ハウジングなどに好適に使用することができる。
【実施例】
【0127】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0128】
[混練方法]
ヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製、FM型20L)を用いて、ミキサー内の摩擦熱で70℃以上となるように、表1に示す成分を攪拌して混合した。得られた混合物を二軸押出機(池見(株)製、PCM30、シリンダー温度:170℃、ダイス温度:220℃)に供給し、押し出してペレット化した。得られたペレットを、射出成形機(東芝(株)製、IS100E)に供給して、シリンダー温度220℃、金型温度50℃、成形サイクル30秒(射出15秒、冷却時間15秒)の条件で試験片を射出成形した。得られた試験片について、下記の特性評価を行った結果を表1に示す。
【0129】
[各成分の内容]
以下に、表1に示す成分の内容を示す。なお、表1において、「部」とは、「重量部」を意味する。
【0130】
酢酸セルロース:ダイセル化学工業(株)製、商品名「L40」、置換度2.5、粘度平均重合度170、SP値11
トリフェニルホスフェート(TPP):大八化学工業(株)製、分子量326、リン含有率9.5重量%、沸点399℃、比重1.21、融点48.5℃、引火点225℃、SP値10.5
レゾルシノールビス[ジ(2,6−キシリル)ホスフェート]:大八化学工業(株)製、商品名「PX−200」、リン分8.7%以上、融点92℃
[OC63(CH322P(O)OC64OP(O){OC63(CH322
タルク:竹原化学(株)製、商品名「ハイトロンA」
ウォラストナイト:川鉄鉱業(株)製、商品名「PH450」
不飽和カルボン酸変性樹脂(変性PP):三洋化成工業(株)製、商品名「ユーメックス1010」、無水マレイン酸10%変性ポリプロピレン
エポキシ化合物:ダイセル化学工業(株)製、商品名「セロキサイド2021P」、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
チオエーテル化合物:日本油脂(株)製、商品名「アンチオックスL」、ジラウリルチオジプロピオネート
亜リン酸エステル:旭電化(株)製、商品名「アデカスタブ3010」、トリイソデシルホスファイト。
【0131】
[加熱変形温度(HDT)]
ASTM D648に準拠し、荷重0.45MPaで測定した。
【0132】
[曲げ強度]
3点曲げ法 JIS K 7203に準じて測定した(単位:MPa)。
【0133】
[曲げ弾性率]
ASTM D−790に準拠し、曲げ弾性率を測定した。
【0134】
[耐衝撃性]
得られた成形品を用いて、JIS K 7113規定の2号のダンベルを打ち抜き、試験片を得た。前記試験片の両端を支持し、シャルピー衝撃試験機に供して衝撃強度(kJ/m2)を測定した。
【0135】
[難燃性]
UL−94試験法に準拠し、1/16インチ(約1.6mm)厚みのテストピースを使用して評価した。
【0136】
[ブリードアウト試験]
得られたペレットを0.5mm×5cm×10cmの平板に成形し、表面に油性インキで文字(ABC)と書き、この平板を65℃、90℃RHの条件下で4時間放置した。そして、平板表面の可塑剤のブリードアウト状態を、目視により以下の基準で評価した。
【0137】
○:ブリードアウトがほとんどなく、インキの文字がほとんど滲んでいない
△:ブリードアウトが若干見られ、インキの文字が滲んでいる
×:ブリードアウトが著しく、インキの文字が判読できないレベルに滲んでいる。
【0138】
【表1】


【0139】
表1の結果から明らかなように、実施例で得られた成形品は、各種機械的強度のバランスに優れ、しかもブリードアウトがほとんど見られない。これに対して、縮合リン酸エステルを配合していない比較例1および比較例2では、機械物性、難燃性は同じレベルにあるものの、成形品からのブリードアウトが顕著であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースエステル、可塑剤、およびこの可塑剤のブリードアウトを抑制又は防止するためのブリードアウト抑制剤で構成された樹脂組成物であって、前記ブリードアウト抑制剤が、縮合リン酸エステル(A)で構成されているセルロースエステル系樹脂組成物。
【請求項2】
セルロースエステルの平均置換度が、2.7以下である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
可塑剤が、リン酸エステルで構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項4】
縮合リン酸エステル(A)が、室温で固体の芳香族縮合リン酸エステルである請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項5】
縮合リン酸エステル(A)の融点が、40℃以上である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項6】
縮合リン酸エステル(A)が、下記式(1)で表される化合物である請求項1記載の樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1〜R3は、同一又は異なって置換基を示し、kおよびmは0〜5の整数、nは0〜4の整数を示す。)
【請求項7】
可塑剤が芳香族リン酸エステルであり、かつ縮合リン酸エステル(A)が、下記式(2)で表される化合物である請求項1記載の樹脂組成物。
【化2】

(式中、R1a、R1b、R2aおよびR2bは同一又は異なってアルキル基を示す。)
【請求項8】
可塑剤の割合が、セルロースエステル100重量部に対して5〜65重量部であり、縮合リン酸エステル(A)の割合が、可塑剤100重量部に対して5〜50重量部である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項9】
平均置換度が1.7〜2.5の酢酸セルロース、リン酸トリアリールエステル、および融点が70〜150℃の芳香族縮合リン酸エステルで構成されており、リン酸トリアリールエステルの割合が、前記酢酸セルロース100重量部に対して10〜35重量部であり、前記芳香族縮合リン酸エステルの割合が、リン酸トリアリールエステル100重量部に対して10〜40重量部である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、繊維状充填剤、板状充填剤及び粉粒状充填剤から選択された少なくとも一種の充填剤を含む請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項11】
可塑剤と充填剤との割合(重量比)が、前者/後者=95/5〜30/70である請求項11記載の樹脂組成物。
【請求項12】
さらに、エポキシ化合物を含む請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項13】
さらに、有機酸、チオエーテル系化合物、および亜リン酸エステルから選択された少なくとも1種の安定化剤を含む請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項14】
射出成形に用いる請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1記載の樹脂組成物で形成された成形品。
【請求項16】
セルロースエステルおよび可塑剤で構成された樹脂組成物から、前記可塑剤のブリードアウトを抑制又は防止するためのブリードアウト抑制剤であって、縮合リン酸エステルで構成されているブリードアウト抑制剤。

【公開番号】特開2006−176596(P2006−176596A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369862(P2004−369862)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】