説明

センサユニットとプログラムおよびその記録媒体

【課題】3つ以上のセンサ入力の場合でも使用することができ、また、設計者の手間を省き、マイコン搭載のメモリ容量も小さくすることができるセンサユニットを提供する。
【解決手段】センサ1〜3と、センサ値をマップ計算結果として出力する自己組織化マップ計算手段4と、状態図とセンサのパラメータ値の組を記憶している状態図記憶手段7と、状態図を入力として位置情報として出力する状態図位置計算手段5と、センサのパラメータ値から現在のセンサのパラメータ値を決定する状態図制御手段6とを有する。これによって、3つ以上のセンサがある場合でも2次元の状態図に射影し、制御を行うので、3つ以上の入力でも使用することができる。また、2次元の状態図を使用するので、信頼性の高いものを提供することができる。さらに、記憶すべきデータ量はセンサの数にほとんど関係なく一定であり、マイコンに搭載するメモリ容量も小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセンサ値から最適なセンサのパラメータ値を決定するセンサユニットとプログラムおよびその記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、掃除ロボットに複数のセンサで構成されるセンサユニットを設置し、センサの最適なパラメータの決定は、ロボットのマイコンの中に構成されたプログラムをカットアンドトライで修正しながら、検証実験によって求めている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−14857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、パラメータのチェックを設計者が行うために、例えば、2つの入力、1つの出力といった限定された入出力関係式しか実現することができず、3つ以上の入力の場合は使用することができない。また、実験で作成した入出力関係式が正しく表現されているかどうかを調べる必要があるため、設計者の手間がかかるという課題があった。さらに、入出力関係式のパラメータが多くなると、関係式をセンサユニットのマイコンに搭載する際のメモリ容量も大きくなる。という課題もあった。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、3つ以上のセンサ入力の場合でも使用することができ、また、設計者の手間を省き、マイコンに搭載するメモリ容量も小さくすることができるセンサユニットとプログラムおよびその記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、状態を検知する複数のセンサと、センサのセンサ値を自己組織化マップ上に射影して、マップ計算結果として出力する自己組織化マップ計算手段と、センサのデータを自己組織化マップ上に射影した結果である状態図とその時におけるセンサのパラメータ値の組を記憶している状態図記憶手段と、自己組織化マップ計算手段によるマップ計算結果と状態図記憶手段が記憶する状態図を入力として、マップ計算結果と状態図の位置関係を計算して、位置情報として出力する状態図位置計算手段と、状態図位置計算手段の位置情報と状態図記憶手段のセンサのパラメータ値から現在のセンサのパラメータ値を決定する状態図制御手段とを有するセンサユニットとを有するものである。
【0006】
これによって、3つ以上のセンサがある場合でも一般的に自己組織化マップと呼ばれる2次元の状態図に射影し、射影した結果によって制御を行うので、3つ以上の入力でも使用することができる。また、設計者が容易に判断することができる2次元の状態図を使用するので、信頼性の高いものを提供することができる。さらに、センサの数に関係なく2次元の状態図に射影して使用するため、記憶すべきデータ量はセンサの数にほとんど関係なく一定であり、マイコンに搭載するメモリ容量も小さくすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のセンサユニットとプログラムおよびその記録媒体は、3つ以上のセンサ入力の場合でも使用することができ、また、設計者の手間を省き、マイコンに搭載するメモリ容量も小さくすることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、従来の課題を解決するために、状態を検知する複数のセンサと、センサのセンサ値を自己組織化マップ上に射影して、マップ計算結果として出力する自己組織化マップ計算手段と、センサのデータを自己組織化マップ上に射影した結果である状態図とその時におけるセンサのパラメータ値の組を記憶している状態図記憶手段と、自己組織化マップ計算手段によるマップ計算結果と状態図記憶手段が記憶する状態図を入力として、マップ計算結果と状態図の位置関係を計算して、位置情報として出力する状態図位置計算手段と、状態図位置計算手段の位置情報と前記状態図記憶手段のセンサのパラメータ値から現在のセンサのパラメータ値を決定する状態図制御手段とを有するセンサユニットとを有するものである。
【0009】
これによって、3つ以上のセンサがある場合でも一般的に自己組織化マップと呼ばれる2次元の状態図に射影し、射影した結果によって制御を行うので、3つ以上の入力でも使用することができる。また、設計者が容易に判断することができる2次元の状態図を使用するので、信頼性の高いものを提供することができる。さらに、センサの数に関係なく2次元の状態図に射影して使用するため、記憶すべきデータ量はセンサの数にほとんど関係なく一定であり、マイコンに搭載するメモリ容量も小さくすることができる。
【0010】
第2の発明は、特に、第1の発明において、センサは、その数を3以上とすることにより、より多くの情報を得ることができるので、より正確にパラメータの決定を行うことができる。
【0011】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、状態図記憶手段は、自己組織化マップ上に射影するセンサのデータとその時におけるセンサのパラメータ値は既知であるものにしたことにより、より正確に情報を把握することができ、さらにより正確な制御をすることができる。
【0012】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明において、状態図位置計算は、マップ計算結果、状態図、位置情報を使用者に報知するようにしたことにより、使用者はセンサユニットの状態を正確に知ることができる。
【0013】
第5の発明は、特に、第3または第4の発明において、状態図記憶手段は、センサのデータとその時におけるセンサのパラメータ値の組が入力されると、状態図に追加することにより、センサユニットの状態などの最新、かつ、正確な情報を入手することができるので、より正確にセンサユニットを制御することができる。
【0014】
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明において、状態図制御手段は、状態図記憶手段が記憶する状態図とそのときのセンサのパラメータ値を入力として、状態図を入力、センサのパラメータ値を出力とする関係式を記憶して、関係式を用いてセンサのパラメータ値を決定するようにしたことにより、パラメータを迅速に求めることができ、センサユニットの制御をタイムリーに行うことができる。
【0015】
第7の発明は、特に、第6の発明において、状態図制御手段は、自己組織化マップ計算手段のマップ計算結果を関係式に代入することによりセンサのパラメータ値を求める構成とするものである。よって、関係式に代入することによりパラメータを求めるようにしたことにより、パラメータを迅速に求めることができ、センサユニットの制御をよりタイムリーに行うことができる。
【0016】
第8の発明は、特に、第5〜第7のいずれか1つの発明において、状態図記憶手段は、センサのデータが過去に入力されたセンサのデータと同じである場合は、状態図に追加しない構成とすることにより、無駄なデータ学習による時間のロスを防ぐことができ、よりスピーディなセンサユニットの制御を行うことができる。
【0017】
第9の発明は、特に、第5〜第8のいずれか1つの発明において、状態図記憶手段は、センサのデータと過去に入力されたセンサのデータの差異が予め設定されたしきい値を上回る場合は、状態図に追加しない構成とすることにより、過去のサンプルデータとの差異が大きいもの、つまり、間違ったデータである可能性が高いものは除くので、より正確なセンサユニットの制御を行うことができる。
【0018】
第10の発明は、特に、第1〜第8のいずれか1つの発明において、自己組織化マップ計算手段は、自己組織化マップ上に射影した結果が規定された最大値を上回ったときは最大値を、または、自己組織化マップ上に射影した結果が規定された最小値を下回ったときは、最小値を出力する構成とすることにより、状態図の範囲外のデータでもセンサユニットの制御を行うことができるので、より幅広い範囲でのセンサユニットの制御を行うことができる。
【0019】
第11の発明は、特に、第1〜第10のいずれか1つの発明におけるセンサユニットの機能の少なくとも一部をコンピュータに実行させるためのプログラムとすることにより、プログラムであるので、電気・情報機器、コンピュータ、サーバーなどのハードリソースを協働させてセンサユニットの少なくとも一部を容易に実現することができる。
【0020】
第12の発明は、特に、第11の発明におけるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体とすることにより、記録媒体に記録したり通信回線を用いてプログラムを配信したりすることで、プログラムの配布・更新やそのインストール作業が簡単にできる。
【0021】
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態)
各図は、本発明の実施の形態におけるセンサユニットを示している。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態におけるセンサユニット1は、距離測定など状態を検知する複数のセンサである、第一のセンサ1、第二のセンサ2、第三のセンサ3と、複数のセンサ1、2、3によるセンサ値を自己組織化マップ上に射影して、マップ計算結果として出力する自己組織化マップ計算手段4と、センサのデータを自己組織化マップ上に射影した結果である状態図とその時のセンサのパラメータ値の組を記憶している状態図記憶手段7と、自己組織化マップ計算手段4によるマップ計算結果と状態図記憶手段7が記憶する状態図を入力として、マップ計算結果と状態図の位置関係を計算して、位置情報として出力する状態図位置計算手段5と、状態図位置計算手段5の位置情報と状態図記憶手段7のセンサのパラメータ値から現在のセンサのパラメータ値を決定する状態図制御手段6とを備えている。
【0024】
また、加えて、状態図位置計算手段5による低次元の状態図を使用者に報知(表示)するようにした状態表示手段10と、状態図更新手段8と、サンプルデータ追加手段9とを備えている。
【0025】
状態図更新手段7は、サンプルデータ追加手段9により既知であるセンサのデータとその時におけるセンサのパラメータ値の組がサンプルデータとして入力されると、サンプルデータのセンサのデータを自己組織化マップ上に射影した結果であるサンプルデータマップ計算結果を状態図記憶手段7が記憶する状態図にセンサのパラメータ値と対にして追加する。ただし、状態図更新手段8は、サンプルデータのセンサのデータ値が大幅に大きいとか、小さい場合は、サンプルのデータの値がおかしいとして状態図の追加を行わない。よって、状態図記憶手段7が記憶する状態図の群はより正確なデータベースを作成することができる。また、サンプルデータ追加手段9により上記工程を経て、サンプルデータによる状態図の更新が常に行われるために、より正確な複数のセンサ1、2、3のパラメータを設定することができる。
【0026】
また、状態図位置計算手段5は、状態図記憶手段7が記憶する状態図と自己組織化マップ計算手段4が計算したマップ計算結果を入力とし、マップ計算結果と状態図の位置関係を計算して、位置情報として出力するものである。また、状態図制御手段6は、状態図位置計算手段5による位置情報と状態図記憶手段7のセンサのパラメータ値を入力として、複数のセンサ1、2、3のパラメータを決定するものである。また、複数のセンサ1、2、3は状態図制御手段6の結果に従ってセンサ1、2、3のパラメータの修正を行うものである。
【0027】
上記のセンサユニット構成によると、複数のセンサ1、2、3のパラメータを自律的に、自己組織的に最適なものに変更することができ、センサ値を使用する機器(ロボット)のマイコンの負担、設計者によるカットアンドトライによる手間を大幅に削減することができる。ただし、上記図1の構成図においてはセンサの数を3として説明したが、センサの数はいくらでも良く、センサ数が多い方がより効果が大きい。
【0028】
また、状態表示手段10は低次元の自己組織化マップ、状態図を使用者に表示することにより、複数のセンサ1、2、3の状態を報知する。そのことにより、例えば、使用者はセンサが異常状態であることを知ることができる。よって、使用者にセンサユニットの安全使用状況などの情報を提供することができる。
【0029】
次に、自己組織化マップ計算手段3で使用する自己組織化マップについて説明する。自己組織化マップは、入力層と競合層の2層からなる多層ニューラルネットワークの一種であり、人の脳における働きの一つである「情報を学習し似通った情報同士を一つのグループとして取り扱うグループ分け、または、クラスタリングを行う行為」を人工的に行うものである。また、自己組織化マップを用いることにより多次元のデータを2次元に写像することが可能であり、高次元のデータの可視化、特に、クラスタリング結果の可視化を行うことが容易にできるという特長がある。
【0030】
図2により、自己組織化マップの動作について説明する。自己組織化マップは、上述したように、図2に示す入力層、競合層の2層からなるニューラルネットワークである。入力層はn個(図2の場合はn=4)のユニットから構成され、i番目のユニットの値をXi(i=1〜n)とする。また、競合層はm個(図2の場合はm=6)のユニットから構成され、j番目のユニットの値をYj(j=1〜m)とする。
【0031】
自己組織化マップにおいて、入力層のユニットXiと競合層のユニットYjは次式に示す関係式を満たす。
【0032】
Yj=f(Σj=1〜mWij・Xi)・・・(1)
ただし、f(x)=1(x>0.5)、f(x)=0(x≦0.5)、重み係数Wij(i=1〜n、j=1〜m)はある定数とする。
【0033】
つまり、入力層のユニットにデータXiが入力されると、競合層のユニットYjは(1)式によって計算することにより求めることができる。
【0034】
自己組織化マップによるデータの学習とは、重みWijを入力層Xjに入力された入力データZkの値によって変化することである。ただし、入力データZkは対応する入力層Xiに入力する。つまり、入力層Xi=Zi(i=1〜n)となる。t回目の学習の方法を以下で簡単に説明すると、全ての重み係数Wijと入力Xiとの距離djを(2)の式に従って計算し、最もその距離が短い、つまり、最も値が小さい競合ユニットjを勝者ユニットとする(詳細は、「自己組織化マップの応用」出版:海文堂、著作:徳高平蔵、岸田悟、藤村喜久郎、P7からP9)。
【0035】
dj=Σi=1〜n(Wij−Xi)・・・(2)
勝者ユニットjを決定すると、全ての重み係数Wijを以下の(3)の式に従って更新する。
【0036】
Wij← Wij+α・(Xi−Wij) ・・・(3)
ただし、αは近傍関数と呼ばれる関数であり、以下の性質を満たす。
1.近傍関数αは学習回数tに関する単調減少関数であり、学習回数tが無限大になったとき、0に収束する。
2.競合ユニット同士の距離sに関して単調減少する。図2の一例にて挙げると、競合ユニット1と競合ユニット5の場合の距離sは4=5−1となる。入力データZkの数に相当する重み係数Wijの変化を1工程、つまり、1回の学習として学習回数tが要求する数になるまで繰り返し行う。
【0037】
自己組織化マップによる学習結果について、図3〜図5を用いて説明する。
【0038】
図3は、縦軸に動物名、横軸を属性として、各々交わった箇所が正しければ○を、間違っていれば×を記入することにより作成した動物の属性図である。例えば、ハトは、「小さく」「2本足である」「羽を持っている」「飛ぶことができる」ので、それぞれ該当する項目「小さい」「2本足」「羽」「飛ぶ」に○を記入し、それ以外の項目は×とする。同様に、その他の動物についても属性図を作成する。
【0039】
図3で作成した属性図を入力データZk(l番目の入力データZのk番目の要素を意味する)に変換したのが、図4である。ただし、図3に示す属性データにおいて○であれば1、×であれば0としてl番目の入力データZkを作成する。
【0040】
図4に示す動物の属性データを入力データZkとして自己組織化マップによって、学習した結果を図5に示す。図5は点で示した競合ユニットを横7個、縦8個に並べて図示したものであり、動物名は各動物の入力データの勝者ユニットを表している。図5に示すように、属性が似通ったもの鳥類「アヒル」「ガチョウ」など、草食動物「ウマ」「ウシ」など、肉食動物「トラ」「ライオン」は距離的に近い場所に集合していること、同類によるグループに分けられたクラスタリングができていることがわかる。
【0041】
次に、図5に示す学習が終了した自己組織化マップの入力層のユニットXiに図4で示した工程で作成した新しいデータを下式の(4)に代入すると、最も値が大きい競合層のユニットYjを求めることができる。
【0042】
Yj=f(Σj=1〜mWij・Xi)・・・(4)
最も値が大きくなる競合層のユニットYjと図5の自己組織化マップ上の位置関係を見ることで新しいデータの性質を知ることができる。例えば、新しいデータを入力したとき、図5におけるタカの競合層のユニットが最も大きくなった場合、新しいデータはタカであるとわかるし、タカとワシ間の競合層のユニットが最も大きくなった場合、入力されたデータは鳥類であり、タカとワシと似通った特性のトンビであることがわかる。
【0043】
つまり、上記で示したように、サンプルとするデータによって自己組織化マップを作成し、作成した自己組織化マップに新しいデータを入力することにより、入力データの特性を容易に知ることができる。また、入力データの次元が多い場合でも図5の2次元の自己組織化マップ上に射影することと同等であるから、次元数が多い、データ数が多いなどの複雑なデータ分析も容易に行うことができる。
【0044】
また、定性量が明らかな物質を同様に自己組織化マップで学習した場合、競合層のユニットを座標として示したもの(図5)の横軸、縦軸がある特徴的な値(鉛含有量、塩分量)を示すことがわかっている。つまり、自己組織化マップを使用することにより2次元の主成分分析を容易に行うことができる。
【0045】
次に、本実施の形態における自己組織化マップによる解析の具体例を、使用センサユニットとして超音波センサを使用した時を一例として図6、図7で説明する。
【0046】
図6は、送信センサによる超音波の送信波、受信センサによる障害物から反射した受信波を示した図である。一般的に知られるように、送信した時間t1と反射波を受信した受信時間t2と障害物の距離xとの間にはx=(t2−t1)/(2・v)の関係がある。ただし、vは超音波の速度である。
【0047】
しかし、図6に示すように、その他の波として送信センサから受信センサに筐体で伝搬したり、回り込みによって発生したりする直接波が存在する。直接波の大きさ、時間は筐体の大きさ、形、センサ位置など、様々な条件下で決定する。
【0048】
一般的なセンサの開発として、図7のように、直接波の大きさよりも大きく、直接波の時間よりも長いしきい値を設けて、しきい値以上の波を検知する構成として直接波の影響を受けないようように設計する。しかし、上述したように、直接波は複雑な経路をたどって伝搬する波であるので、従来の技術ではしきい値の設定に時間と手間がかかっていた。特に、ロボットに代表されるような、複数の超音波センサ、多い場合は10個以上の超音波センサを設置するものは、全ての超音波センサのしきい値を設定する手間とそれにかかる時間はロボット開発、または、量産時における大きな問題となっていた。
【0049】
そこで、本実施の形態では、入力として受信センサの定性量データを予め特性がわかっているサンプルデータを用いて学習した自己組織化マップに代入して、センサのパラメータ、一例にて挙げると、しきい値の時間と大きさを決定する。
【0050】
前工程として、しきい値の値が明らかな超音波センサの定性量、送信時間t1、受信時間t2などを入力データとして学習を行い、超音波センサに対応した自己組織化マップを作成する。また、図5に示すように競合層のユニットを配置した時の横軸、縦軸の特徴的な値、一例にて示すと、送信センサと受信センサとの距離r、送信波の大きさSとする。
【0051】
図8に学習した自己組織化マップの結果を示す。ただし、サンプルデータa、b、c、d、eの自己組織化マップ上の座標も同時に示した。
【0052】
もし図8の自己組織化マップにしきい値が決定していない超音波センサのデータを入れると、ある点に射影される。サンプルデータa、b、c、d、e上に射影されれば、同じ環境であると考えて、対応するサンプルデータのしきい値の時間、大きさを使用すれば良い。
【0053】
しかし、一般には、サンプルデータと同じ点に射影されないため、下記に示す各サンプルデータとの距離を関係式として求める。
【0054】
サンプルaとの距離 d1=(a1−r)+(b1−S)
サンプルbとの距離 d2=(a2−r)+(b2−S)
サンプルcとの距離 d3=(a3−r)+(b3−S)
サンプルdとの距離 d4=(a4−r)+(b4−S)
サンプルeとの距離 d5=(a5−r)+(b5−S)
上記に示すサンプルとの距離が最も短いものに属するサンプルを選択し、そのサンプルデータが最も近いものとして、センサのしきい値を決定する。
【0055】
なお、上記では一例にてセンサとして超音波を使用したが、要はセンサとパラメータであればどのようなものでも良い。
【0056】
また、類似度を示す関係式を作成し、類似度に応じてセンサのパラメータを決定しても良い。
【0057】
上記で示したように、超音波センサに関して学習を行った自己組織化マップを使用することにより、超音波センサのパラメータを決定することができる。また、多くの超音波センサを使用した場合でも、2次元の自己組織化マップに射影するので、より簡単にセンサのパラメータを決定することができる。
【0058】
自己組織化マップ計算手段4は、既に学習した自己組織化マップを記憶しており、第一のセンサ1、第二のセンサ2、第三のセンサ3のセンサデータを入力することで、図8に示す自己組織化マップ上の座標を決定する。
【0059】
状態図記憶手段7は、図8に示すサンプルデータの自己組織化マップ上の座標位置である状態図と対応するサンプルデータの情報、図8の例ではしきい値を記憶している。
【0060】
状態図位置計算手段5は、自己組織化マップ計算手段4による自己組織化マップの結果と状態図記憶手段7による状態図を図8のように図示して、位置関係を、関係式を用いて把握する。
【0061】
状態図制御手段6は、状態図位置計算手段5による自己組織化マップ上のサンプルデータと取得したデータの位置関係から状態図記憶手段7が記憶するサンプルデータの情報を利用して、センサのパラメータを決定する。
【0062】
本実施の形態は、状態を検知する複数のセンサと、センサのセンサ値を自己組織化マップ上に射影して、マップ計算結果として出力する自己組織化マップ計算手段と、センサのデータを自己組織化マップ上に射影した結果である状態図とその時におけるセンサのパラメータ値の組を記憶している状態図記憶手段と、自己組織化マップ計算手段によるマップ計算結果と状態図記憶手段が記憶する状態図を入力として、マップ計算結果と状態図の位置関係を計算して、位置情報として出力する状態図位置計算手段と、状態図位置計算手段の位置情報と前記状態図記憶手段のセンサのパラメータ値から現在のセンサのパラメータ値を決定する状態図制御手段とを有するセンサユニットとを有するものである。
【0063】
これによって、3つ以上のセンサがある場合でも一般的に自己組織化マップと呼ばれる2次元の状態図に射影し、射影した結果によって制御を行うので、3つ以上の入力でも使用することができる。また、設計者が容易に判断することができる2次元の状態図を使用するので、信頼性の高いものを提供することができる。さらに、センサの数に関係なく2次元の状態図に射影して使用するため、記憶すべきデータ量はセンサの数にほとんど関係なく一定であり、マイコンに搭載するメモリ容量も小さくすることができる。
【0064】
また、本実施の形態は、センサは、その数を3以上とすることにより、より多くの情報を得ることができるので、より正確にパラメータの決定を行うことができる。
【0065】
さらに、本実施の形態は、状態図記憶手段を自己組織化マップ上に射影するセンサのデータとその時におけるセンサのパラメータ値は既知であるものにしたことにより、より正確に情報を把握することができ、さらにより正確な制御をすることができる。
【0066】
本実施の形態は、状態図位置計算は、マップ計算結果、状態図、位置情報を使用者に報知するようにしたことにより、使用者はセンサユニットの状態を正確に知ることができる。
【0067】
さらに、状態図記憶手段は、センサのデータとその時におけるセンサのパラメータ値の組が入力されると、状態図に追加することにより、センサユニットの状態などの最新、かつ、正確な情報を入手することができるので、より正確にセンサユニットを制御することができる。
【0068】
また、状態図制御手段は、状態図記憶手段が記憶する状態図とその時におけるセンサのパラメータ値を入力として、状態図を入力、センサのパラメータ値を出力とする関係式を記憶して、関係式を用いてセンサのパラメータ値を決定するようにしたことにより、パラメータを迅速に求めることができ、センサユニットの制御をタイムリーに行うことができる。
【0069】
状態図制御手段は、自己組織化マップ計算手段のマップ計算結果を関係式に代入することによりセンサのパラメータ値を求める構成とするものである。よって、関係式に代入することによりパラメータを求めるようにしたことにより、パラメータを迅速に求めることができ、センサユニットの制御をよりタイムリーに行うことができる。
【0070】
さらに、状態図記憶手段は、センサのデータが過去に入力されたセンサのデータと同じである場合は、状態図に追加しない構成とすることにより、無駄なデータ学習による時間のロスを防ぐことができ、よりスピーディなセンサユニットの制御を行うことができる。
【0071】
そして、状態図記憶手段は、センサのデータと過去に入力されたセンサのデータの差異が予め設定されたしきい値を上回る場合は、状態図に追加しない構成とすることにより、過去のサンプルデータとの差異が大きいもの、つまり、間違ったデータである可能性が高いものは除くので、より正確なセンサユニットの制御を行うことができる。
【0072】
さらに、自己組織化マップ計算手段は、自己組織化マップ上に射影した結果が規定された最大値を上回ったときは最大値を、または、自己組織化マップ上に射影した結果が規定された最小値を下回ったときは、最小値を出力する構成とすることにより、状態図の範囲外のデータでもセンサユニットの制御を行うことができるので、より幅広い範囲でのセンサユニットの制御を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上のように、本発明にかかるセンサユニットとプログラムおよびその記録媒体は、3つ以上のセンサ入力の場合でも使用することができ、また、設計者の手間を省き、マイコンに搭載するメモリ容量も小さくすることができるものであるので、掃除用、監視用あるいは作業用ロボットなどに用いるセンサユニットとして適応できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態におけるセンサユニットを示すブロック図
【図2】同センサユニットにおける自己組織化マップの構成例を示す図
【図3】同センサユニットにおける自己組織化マップを作成するデータの一例を示す第一の属性図
【図4】同センサユニットにおける自己組織化マップを作成するデータの一例を示す第二の属性図
【図5】同センサユニットにおける自己組織化マップの結果を示す状態図
【図6】同センサユニットにおける超音波センサの送信出力と受信入力の関係を示す図
【図7】同センサユニットにおける超音波センサの直接波用しきい値を示す図
【図8】同センサユニットにおける自己組織化マップの結果を示す図
【符号の説明】
【0075】
1 第一のセンサ
2 第二のセンサ
3 第三のセンサ
4 自己組織化マップ計算手段
5 状態図位置計算手段
6 状態図制御手段
7 状態図記憶手段
8 状態図更新手段
9 サンプルデータ追加手段
10 状態表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
状態を検知する複数のセンサと、前記センサのセンサ値を自己組織化マップ上に射影して、マップ計算結果として出力する自己組織化マップ計算手段と、センサのデータを自己組織化マップ上に射影した結果である状態図とその時におけるセンサのパラメータ値の組を記憶している状態図記憶手段と、前記自己組織化マップ計算手段によるマップ計算結果と前記状態図記憶手段が記憶する状態図を入力として、マップ計算結果と状態図の位置関係を計算して、位置情報として出力する状態図位置計算手段と、前記状態図位置計算手段の位置情報と前記状態図記憶手段のセンサのパラメータ値から現在のセンサのパラメータ値を決定する状態図制御手段とを有するセンサユニット。
【請求項2】
センサは、その数を3以上とする請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項3】
状態図記憶手段は、自己組織化マップ上に射影するセンサのデータとその時におけるセンサのパラメータ値は既知であるものである請求項1または2に記載のセンサユニット。
【請求項4】
状態図位置計算はマップ計算結果、状態図、位置情報を使用者に報知するようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載のセンサユニット。
【請求項5】
状態図記憶手段は、センサのデータとその時におけるセンサのパラメータ値の組が入力されると、状態図に追加する請求項3または4に記載のセンサユニット。
【請求項6】
状態図制御手段は、状態図記憶手段が記憶する状態図とそのときのセンサのパラメータ値を入力として、状態図を入力、センサのパラメータ値を出力とする関係式を計算して、記憶する請求項1〜5のいずれか1項に記載のセンサユニット。
【請求項7】
状態図制御手段は、自己組織化マップ計算手段のマップ計算結果を関係式に代入することによりセンサのパラメータ値を求める構成とする請求項6に記載のセンサユニット。
【請求項8】
状態図記憶手段は、センサのデータが過去に入力されたセンサのデータと同じである場合は、状態図に追加しない構成とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のセンサユニット。
【請求項9】
状態図記憶手段は、センサのデータと過去に入力されたセンサのデータの差異が予め設定されたしきい値を上回る場合は、状態図に追加しない構成とする請求項5〜8のいずれか1項に記載のセンサユニット。
【請求項10】
自己組織化マップ計算手段は、自己組織化マップ上に射影した結果が規定された最大値を上回ったときは最大値を、または、自己組織化マップ上に射影した結果が規定された最小値を下回ったときは、最小値を出力する構成とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のセンサユニット。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のセンサユニットにおける機能の少なくとも一部をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−14745(P2008−14745A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185233(P2006−185233)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】