説明

センサ付きICタグ適用高電圧機器

【課題】変電所の受電回線あるいは分岐回線を構成する開閉機器の接点不良などの状態監視を簡単な構成で実施し、定期点検に要する時間を短縮してコスト低減を図る。
【解決手段】センサ付きICタグ適用高電圧機器は、センサ付きICタグ30を、センサ付きICタグ30のセンサ37が検知対象とする物理量を取得でき、かつ、センサ付きICタグ30と外部にあるICタグリーダ33との通信が可能な位置に着脱自在に取り付けて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統の変電・開閉を行う高電圧機器に係り、特に、点検時における安全性の向上および点検費用削減を図ったセンサ付きICタグ適用高電圧機器に関する。
【背景技術】
【0002】
変電所等における変電設備では、一般的に、送電線から受電した電力は、一次側の母線を介して変圧器の一次側に供給され、変圧器で変圧された後、二次側の母線に供給され、二次側の母線を経由して負荷回路に供給される。
【0003】
変電設備は、送電線側から一次側の母線に至る間の受電線路を開閉する線路ユニット、一次側の母線と変圧器の間の変圧器回路を開閉する一次側変圧器ユニットまたは変圧器の二次側と二次側の母線に供給する二次側の変圧器ユニット、二次側の母線から負荷回路に至る分岐回線を開閉する分岐ユニット等で構成され、一次側の母線または二次側の母線に接続されるそれぞれのユニット毎にほぼ同じ構成の高電圧機器が設置される。
【0004】
従来の気中に設置される高電圧機器は、必要とする機器それぞれにおいて絶縁距離、点検スペース等を考慮して個別に設置されている。従来の気中に設置される高電圧機器の一例としては、遮断部にCT(Current Transformer)を取り付けた碍子形ガス遮断器が実開昭61−186136号公報、特開2000−253523号公報に開示されている。
【特許文献1】実開昭61−186136号公報
【特許文献2】特開2000−253523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の気中絶縁高電圧機器は、それぞれ独立の機器を配置しているため、それぞれの機器間の接続には細い銅線を束ねたケーブルが使用されている。このケーブルを、それぞれの機器に専用に設けられた接続部に取り付けボルト等のねじを使用して接触、固着させることによって機器間を電気的に接続している。
【0006】
このような電気的接続を行っている従来の気中絶縁高電圧機器は、通常屋外に設置されており降雨に曝される。特に近年、二酸化窒素等の酸性物質による大気汚染の進行に起因した酸性雨の影響によってケーブルと機器の接続部の間部分で酸化現象が生じている。当該部分が酸化することで、当該部分の抵抗が上昇、すなわち、当該部分での熱損失が増加するので、機器の絶縁物の劣化や送電ロス等の問題を招来し得る。
【0007】
上記問題点を解消するため、従来は定期点検の巡回時に、赤外線を利用して温度上昇を把握する方法を採用している。赤外線を利用した温度上昇を把握する方法としては、例えば、赤外線温度計等を用いた温度測定、または、赤外線の映像を捉えて部分的な温度上昇を把握する方法がある。
【0008】
しかしながら、赤外線温度計を用いた方法では、測定点が非常に多いため巡回して点検するための時間が非常に長くなり、1日の点検で実施するためには複数人数による点検が必要となる。一方、赤外線の映像を捉えて局所的な温度上昇を把握する方法では、赤外線の映像撮像装置が非常に高価なため、容易に使用することができなかった。
【0009】
また、これらの赤外線を使用する方法は、温度が高くなった箇所から赤外線が直接観測できる場所に限られており、赤外線を通さない物質に遮られる場所では温度測定ができなかった。
【0010】
気中絶縁開閉器の部分放電を測定する際には、系統の各部分に電圧を順次加えて、断路器、遮断器を順次投入して部分放電の発生の有無を確認する方法が多く採られる。
【0011】
しかしながら、上記方法ではある断路器または遮断器を投入したときに部分放電が発生した場合、投入した機器の下流部に部分放電が発生したのか、その先のケーブルで接続された機器の上流部分で部分放電が発生したのかが判別できない。
【0012】
本発明は、上述する課題を解消するためになされたものであり、変電所の受電回線または分岐回線を構成する各ユニット単位に行われる機器間のケーブルの接続部の接続状況、および開閉機器の接点部分の点検時間の低減、および部分放電の発生部分の特定時間の低減を図ることで点検費用の低減を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るセンサ付きICタグを適用した高電圧機器(センサ付きICタグ適用高電圧機器)は、上述した課題を解決するため、絶縁ガスを封入した容器内に高電圧部を有する高電圧機器において、センサ付きICタグを、前記センサ付きICタグのセンサが検知対象の物理量を取得でき、かつ、前記センサ付きICタグと外部にあるICタグリーダとの通信が可能な位置に着脱自在に取り付けて構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、センサ付きICタグを高電圧機器の接点またはケーブル接続部に取り付けて、その結果を記憶装置に記憶すると共に、ICタグリーダライタで出力を送信するように構成されるので、変電所の受電回線あるいは分岐回線を構成する各ユニット単位で行われる機器間のケーブルの接続部の接続状況、および開閉機器の接点部分の点検時間の低減、および部分放電の発生部分の特定時間の低減を図ることができ、この結果、点検費用の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るセンサ付きICタグ適用高電圧機器を実施するための最良の形態(実施形態)について、添付の図面を参照して説明する。尚、以下の説明における上下左右等の方向は、図面に示される状態を基準とする。
【0016】
図1は、本発明に係るセンサ付きICタグ適用高電圧機器の一例である温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Aの縦断面図である。
【0017】
図1に示されるように、温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Aは、遮断部(開閉部)2を収容する非金属製の碍管3と、遮断部2を大地に対して絶縁する支持碍管4と、金属製のフランジ部5と、支持碍管4を封止し架台6に取り付ける下部支持部材7とによって構成される容器内に例えば、六フッ化硫黄SF等の絶縁ガス8が封入される。
【0018】
温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Aは、フランジ部5に設けられた2つの電極部10a,10bを電気的に開閉(開放/投入)することで、遮断/投入動作を行う。具体的には、フランジ部5に上部電極部10aと共に設けられた固定接触子11が、フランジ部5に下部電極部10bと共に設けられ上下方向に移動する可動接触子12と接離することで、遮断状態と投入状態とを切り替える。すなわち、遮断/投入動作を行うための構成および動作原理は、従来の碍子形ガス遮断器と同様である。
【0019】
ここで、符号13は接続リード、14は接続リード13と電極部10a,10bとを電気的に接続する端子、15は端子14を保護する端子カバー、17は固定接触子11の外周を覆うように配置された絶縁ノズル、19は下部電極部10bの端子14に支持された操作ピストン、20は可動接触子12および絶縁ノズル17が取り付けられ操作ピストン19に嵌め込まれてパッファ室を形成するパッファシリンダ、21は可動接触子12、絶縁ノズル17およびパッファシリンダ20を一体で上下に動作させて固定接触子11と可動接触子12とを開閉操作する絶縁操作ロッド、22は開閉操作機構、23は摺動接点部、24はCT(Current Transformer)、25は電気/光(E/O)変換器、26は光/電気(O/E)変換器である。
【0020】
図1に示されるように、温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Aには、アクティブ型の温度センサ付きICタグ30Aが電極部10aに取り付けられている。また、温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Aでは、温度センサ付きICタグ30Aが取付けられている箇所に高い電界が加わらないようにするために静電遮蔽体31を用いて当該箇所を静電遮蔽(静電シールド)している。
【0021】
すなわち、静電遮蔽体31は、温度センサ付きICタグ30Aの外側に取り付けられ、静電遮蔽体31の表面が卵状の滑らかな形状となるようにして温度センサ付きICタグ30Aを覆う。静電遮蔽体31には、半導電性材料を使用する。このように静電遮蔽体31で温度センサ付きICタグ30Aを静電シールドすることで温度センサ付きICタグ30Aに電界が加わらないようにする。
【0022】
静電遮蔽体31として用いる半導電性材料は、商用周波数や雷で発生する1MHzの電磁波に対しては充分金属的な性質を示すように、誘電率と抵抗率の積で表される時定数が1/10以下とする。但し、前記半導電性材料の時定数は、温度センサ付きICタグ30Aの通信に用いる周波数(通信周波数)の電磁波が透過できるようにするため、通信周波数の逆数以上とする。
【0023】
例えば、温度センサ付きICタグ30Aの通信に用いる周波数が1GHzであれば、静電遮蔽体31として用いる半導電性材料の時定数は、1/10秒以上かつ1/10秒以下とする。換言すれば、時定数の逆数が、1MHz以上1GHz以下となるような半導電性材料を静電遮蔽体31として用いる。
【0024】
上記時定数の半導電性材料で温度センサ付きICタグ30Aを覆うことで、静電遮蔽体31で遮蔽された空間の外部にあるICタグリーダとの通信を妨げることなく、温度センサ付きICタグ30Aに高い電界が加わるのを防止できる。すなわち、商用周波数の電圧や雷がラインに入ってきた状況であっても、ICタグリーダとの通信に悪影響を与えることがなく、その上、温度センサ付きICタグ30Aの破壊または部分放電発生を抑止できる。
【0025】
図2は、本発明に係るセンサ付きICタグ適用高電圧機器のセンサ付きICタグ30およびこのセンサ付きICタグ30と無線通信を行いセンサ付きICタグ30から情報を読み出す、または、センサ付きICタグ30に情報を書き込むICタグリーダライタ33の構成概略を示した概略図である。尚、ICタグ30内、ICタグリーダライタ33内に示した実線は情報の流れ、破線はエネルギーの流れを表している。
【0026】
図2に示されるように、センサ付きICタグ30は、ICタグリーダライタ33と通信する信号や情報(以下、単に通信信号とする)34を含む電磁波を送受信するアンテナ35と、アンテナ35を介して受信した電磁波に対して変調および復調を行う変復調部36と、検知対象の物理量を検知し取得するセンサ37と、センサ37で取得した情報を記憶するメモリ38と、タイマーを内蔵する時計39と、動作電力の供給を行う電源部40と、電源部40へ電力を供給するバッテリー41と、センサ付きICタグ30を制御する制御部42とを備える。
【0027】
変復調部36は、送受信される信号34に対して、記録、送信等に適した変換を行う機能(変調機能および復調機能)を有すると共に通信信号34のフィルタ機能を有し、通信信号34に重畳するノイズ成分を除去することができる。メモリ38は、例えば、不揮発性のメモリで構成される記憶媒体である。制御部42は、例えば、メモリ38の情報記憶手順に関する情報等の制御に必要な情報を有し演算処理を行う。
【0028】
尚、センサ付きICタグ30は、一例として、バッテリー41を内蔵したアクティブタイプのものを採用している。従って、バッテリー41が消耗する前に定期的にセンサ付きICタグ30そのものを交換することを前提としており、通常は、ICタグリーダライタ33から読出信号34を受信しないと、測定結果などの情報を発信しないように構成される。
【0029】
一方、ICタグリーダライタ33は、センサ付きICタグ30との通信信号34を送受信するアンテナ45と、アンテナ45を介して受信した電磁波の変調および復調を行う変復調部46と、動作電力の供給を行う電源部47と、ICタグリーダライタ33の制御を行う制御部48とを備える。
【0030】
尚、センサ付きICタグ30およびICタグリーダライタ33は、電磁波に周波数変調またはデジタル変調を行い、データ読み出し開始指令信号等の各種信号および測定結果を送受信している。これは、部分放電等によるノイズと、必要な信号または情報との区別を容易にするためである。
【0031】
また、ICタグリーダライタ33のアンテナ45、変復調部46、電源部47、および、制御部48は、それぞれ、センサ付きICタグ30のアンテナ35、変復調部36、電源部40、および、制御部42と実質的に同じ動作をする構成要素である。
【0032】
ICタグリーダライタ33は、読出信号34をセンサ付きICタグ30へ伝送することで、センサ付きICタグ30と無線通信してセンサ付きICタグ30から情報を読み出すことができる。また、書込信号34をセンサ付きICタグ30へ伝送することで、センサ付きICタグ30に情報を書き込むことができる。つまり、ICタグリーダライタ33は、ICタグ30から情報を読み出すICタグリーダとしての機能とセンサ付きICタグ30に情報を書き込むICタグライタとしての機能を併せ持つ。
【0033】
ICタグリーダライタ33がセンサ付きICタグ30から受け取った測定データは、ケーブルまたは可搬型記憶メモリを介して、コンピュータ等の上位装置50へ入力される。
【0034】
図3は、センサ付きICタグ30のメモリ38に記憶される情報構成の一例を説明する説明図である。
【0035】
メモリ38に記憶される情報の一例は、図3に示されるように、データ最大容量、保持データ数、前回データ消去日時、シリアルナンバー(No.)、データ記憶領域数(例えば、1024領域)、および、ICタグの識別情報(ICタグのID番号)の情報を有する。
【0036】
例えば、図1に示される温度センサ付きICタグ30Aのメモリ38の場合、温度センサとシリアルナンバーの一つを対応させて、この一のシリアルナンバーと対応する一のデータ記憶領域に温度測定の結果を測定時刻と対応させて記憶する。図3に示されるメモリ38の場合、一つのデータ記憶領域に1024個の計測結果を記憶することができるので、1024領域あるデータ記憶領域を全て使用すれば、1024領域×1024個のデータを記憶できる。
【0037】
次に、温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Aの作用を説明する。
【0038】
まず、遮断器1Aの開閉動作により接点部分が導通すると、遮断器1Aと他の機器を接続する電極部10a,10b(電気抵抗Rとする)に電流Iが流れるので、抵抗損RIが生じて電極部10a,10bの温度が上昇する。図1に示されるように、温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Aでは、温度センサ付きICタグ30Aが電極部10aに取り付けられているので、温度センサ付きICタグ30Aは、電極部10aの温度を測定し取得する。
【0039】
温度センサ付きICタグ30Aでは、図2に示されるように、制御部42が、時計39に内蔵されるタイマーの働きで一定時間毎にセンサ37から検知した温度情報を、時間情報(例えば、時刻)と一緒にメモリ38に記憶する。
【0040】
ここで、メモリ38に測定結果を記憶していった結果、取得した物理量の情報を記憶するとメモリ容量を超えてしまう場合、事前に定めた所定のルールに従って制御部42がメモリ38に物理量の情報を記憶するように制御する。例えば、温度測定の結果が1024個(最大数)記憶されている場合、制御部42は、温度測定結果のデータを記憶しているデータ記憶領域において最古の温度測定結果を消去して新しい温度測定結果を記憶する。
【0041】
図3に示される例のように、ICタグの識別情報(ICタグのID番号)がメモリ38に記憶されている場合、ICタグの識別情報またはICタグリーダライタ33の識別情報の1つまたは両方が一致したことを条件として、ICタグリーダライタ33は、メモリ38に記憶された物理量(測定結果の情報)の読み出し、または、書き込みを許可する。
【0042】
つまり、ICタグリーダライタ33が、温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Aの外部から高周波信号(通信信号)33を電磁波により温度センサ付きICタグ30Aに与えると、ICタグリーダライタ33との情報授受が可能となる。このように、遠方から通信信号34を送信する遠隔操作によって、温度センサ付きICタグ30Aが取得した温度測定結果の情報を取得することができるので、ユーザは、温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Aの状態を変化させること無く測定・監視を行うことができる。
【0043】
温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Aによれば、開閉動作における電極部10a,10bの温度の監視を行うことで電極部10a,10bの錆びまたは緩みを原因とする抵抗値増加(抵抗損の増加)が判明した場合、高電圧の活線状態であっても、限界距離(感電したり、絶縁破壊を発生する距離)以上離れた場所からICタグリーダを使用して測定結果を読み出すことができる。従って、点検者(ユーザ)が感電する等のリスクを排除し従来よりも安全性を高めることができる。
【0044】
また、ICタグリーダライタ33からセンサ付きICタグ30へ照射されるデータ通信用の電磁波に時間情報を重畳させたものを通信信号34として送信すれば、センサ付きICタグ30は、アンテナ35および変復調部36を介して受信した時間情報を制御部42が認識して時計39を校正する信号を生成して時計39へ送信することができる。従って、ICタグリーダライタ33で情報の読み書きを行う毎に時計39の認識する時間を正しい時間に校正することができる。
【0045】
さらに、読み取り時のICタグリーダライタ33からセンサ付きICタグ30へ開始指令信号等の通信信号34およびセンサ付きICタグ30からICタグリーダライタ33へのデータは、電磁波に周波数変調またはデジタル変調を施すことで、部分放電等によるノイズと必要な信号または情報とを容易に区別することができる。
【0046】
次に、温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Aの他の実施例を説明する。尚、温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Aと実質的に異ならない構成要素については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0047】
図4は、他の実施例(第2の実施例)に係る温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Bの縦断面図である。
【0048】
図4に示される温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Bでは、温度センサ付きICタグ30Aを取り付けるために溝状に形成された取付穴55が電極部10aに設けられている。そして、温度センサ付きICタグ30Aは、取付穴55に着脱自在に取り付けられる。また、図4に示されるように、温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Bでは、静電遮蔽体31を取り付けておらず、温度センサ付きICタグ30Aは静電遮蔽体31によって静電遮蔽されていない。
【0049】
温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Bでは、取付穴55に温度センサ付きICタグ30Aを取り付けることによって、閉操作時により高電圧が遮断部2に印加された場合であっても、温度センサ付きICタグ30Aのアンテナ35に高電界が加わることを防止できる。従って、温度センサ付きICタグ30Aのアンテナ35を基点とした部分放電の発生を防止することができる。
【0050】
また、取付穴55を通じて電磁波が外部に伝播できるため、温度センサ付きICタグ30Aは、温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Bの外部にあるICタグリーダライタ33と通信可能である。尚、その他の効果は、上述した温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Aの場合と同様である。
【0051】
図5は、他の実施例(第3の実施例)に係る温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Cの縦断面図である。
【0052】
図5に示されるように、温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Cでは、温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Bの取付穴55が下部電極部10bにも設けられている。また、温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Cは、取付穴55の入口近傍に温度センサ付きICタグ30Aを覆って取付穴55を塞ぐ様に静電遮蔽体31を取り付けて構成される。
【0053】
温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Cでは、静電遮蔽体31で物理的に温度センサ付きICタグ30Aを覆って静電遮蔽することで、温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Bよりもより高い静電シールド効果が期待できる。尚、その他の効果は、上述した温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Bの場合と同様である。
【0054】
図6は、他の実施例(第4の実施例)に係る温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Dの縦断面図である。
【0055】
温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Dは、図1に示される温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Aに対して、静電遮蔽体31の代わりに、特別な形状に加工した静電遮蔽体58で温度センサ付きICタグ30Aを覆って静電遮蔽して構成される。
【0056】
静電遮蔽体58は、金属製であり、図6に示されるように、端部を丸く加工して構成される。また、静電遮蔽体58は、上部電極部10aとの間に隙間を空けて上部電極部10に取り付けられる。
【0057】
温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Dは、図6に示されるように、特別な形状に加工された金属製の静電遮蔽体58で温度センサ付きICタグ30Aを覆うことで、商用周波数の電圧や雷がラインに入ってきた状況でも温度センサ付きICタグ30Aに高い電界が加わるのを防止できる。従って、温度センサ付きICタグ30Aが破壊すること、および、温度センサ付きICタグ30Aを基点とした部分放電の発生を防止することができる。
【0058】
また、静電遮蔽体58と上部電極部10aとの隙間を通して電波が伝播できるので、温度センサ付きICタグ30Aは、温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Dの外部にあるICタグリーダライタ33と通信を行うことができる。
【0059】
以上、本発明によれば、着脱自在に取り付けたセンサ付きICタグ30が、ICタグリーダからの読み出し信号を受信した時点で取得されたセンサの出力結果をICタグリーダへ送信する、または、センサの出力結果をある時間間隔で検出し時間情報と共にメモリ38に記憶していき、ICタグリーダからの読み出し信号を受信した時点でメモリ38に記憶していた情報をICタグリーダへ送信することができるので、点検者(ユーザ)が感電する等のリスクを排除し従来よりも安全性を高め、かつ、点検時間および点検費用を削減できる。
【0060】
また、センサ付きICタグ30が今まで記録した温度または部分放電の経過データを記憶したメモリ38内の情報をICタグリーダへ送信させるができるので、定期検査時において接点部分の電気的接触状態の変化を測定することができる。
【0061】
さらに、大気の温度を測定する温度センサを電極部10aの温度を測定する温度センサと別に有するセンサ付きICタグ30を使用することで、温度上昇の状態を両温度センサの測定結果の比較から判断でき、時系列の比較が可能になる。この比較結果から変化が急に現れたのか、徐々に現れたのかがわかるので、異常の状態を詳細に診断できる。尚、これらの情報は、電波で送受信されるため、電波の透過する絶縁物で隠れていても温度や部分放電の測定結果の送信が可能できる。
【0062】
一方、センサ付きICタグ30のセンサとして部分放電を測定するセンサを取り付けた場合、従来のように、部分放電の測定を行うための大掛かりな装置を外部につけることないので測定が容易になる。また、多くの箇所で部分放電を同時に測定することができるので、開閉操作を行うことで部分放電の発生位置を容易に特定することができる。
【0063】
尚、上述の説明では、本発明に係るセンサ付きICタグ適用高電圧機器が温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Aの場合を例に説明したが、センサ付きICタグのセンサは、図5に示されるように、1個に限らず同種のセンサが複数個取り付けられる場合もある。また、センサは、部分放電センサだけの場合や温度センサと部分放電センサとの両センサを有する場合もある。
【0064】
上述の説明では、センサ付きICタグ30がバッテリー41を備えたアクティブタイプの場合の例を説明したが、バッテリー41の代わりに高速充電が可能な蓄電池、電気二重層コンデンサ等の大容量コンデンサの場合もある。センサ付きICタグ30が蓄電池等を備える場合には、定期的に電磁波を照射させることで充電できるため、バッテリー41を備えたアクティブタイプの場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0065】
また、センサ付きICタグ30Aの取付位置が図1に示される位置と異なる場合もあるが得られる効果は同様である。具体的には、図5に示されるように下部電極部10bに取り付けられる場合、図7および図8に示されるように高電圧部としての固定接触子11に取り付けられる場合(第5の実施例および第6の実施例)、図9に示されるように高電圧部としての摺動接点部23に取り付ける場合(第7の実施例)であっても同様の作用効果を得ることができる。
【0066】
さらに、センサ付きICタグ適用高電圧機器が断路器の場合もある。作用効果は温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Aの場合と同様である。
【0067】
一方、センサ付きICタグ適用高電圧機器は、電路の開閉を行う開閉部2を備えない電力用高電圧機器の場合もある。例えば、センサ付きICタグ適用高電圧機器が、図10および図11に示されるようなガス絶縁母線の電流引出装置(ブッシング)1Fの場合(第1の実施例および第2の実施例)や、図12に示されるような碍管3中に非直線性の抵抗素子である避雷器素子60を配置した避雷器1Gの場合にも温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器1Aの場合と同様の作用効果が得られる。
【0068】
ここで、図10および図11において、符号61は絶縁スペーサ、62は高電圧導体、63は金属密閉タンクである。また、図12おいて、符号64は静電遮蔽体、65は接地導体である。
【0069】
尚、本発明では、センサ付きICタグ30への書き込みは必ずしも必須の処理ではない。従って、ICタグリーダライタ33は、センサ付きICタグ30に記憶された情報の読み出しのみを行うICタグリーダでも良い。
【0070】
また、本発明は、上述した発明の実施例に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。すなわち、上述した発明の実施例に開示される複数の構成要素を適宜組み合わせて種々の発明を形成したり、実施例に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る高電圧機器の一例である温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器(第1の実施例)の縦断面図。
【図2】本発明に係る高電圧機器のセンサ付きICタグおよびこのセンサ付きICタグと無線通信を行うICタグリーダライタの構成概略を示した概略図。
【図3】本発明に係る高電圧機器に取り付けられたセンサ付きICタグのメモリに記憶される情報構成の一例を説明する説明図。
【図4】本発明に係る高電圧機器の一例である温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器(第2の実施例)の縦断面図。
【図5】本発明に係る高電圧機器の一例である温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器(第3の実施例)の縦断面図。
【図6】本発明に係る高電圧機器の一例である温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器(第4の実施例)の縦断面図。
【図7】本発明に係る高電圧機器の一例である温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器(第5の実施例)の縦断面図。
【図8】本発明に係る高電圧機器の一例である温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器(第6の実施例)の縦断面図。
【図9】本発明に係る高電圧機器の一例である温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器(第7の実施例)の縦断面図。
【図10】本発明に係る高電圧機器の他の一例であるセンサ付きICタグ適用ブッシング(第1の実施例)の縦断面図。
【図11】本発明に係る高電圧機器の他の一例であるセンサ付きICタグ適用ブッシング(第2の実施例)の縦断面図。
【図12】本発明に係る高電圧機器の他の一例であるセンサ付きICタグ適用避雷器の縦断面図。
【符号の説明】
【0072】
1A,1B,1C,1D 温度センサ付きICタグ適用碍子形ガス遮断器(センサ付きICタグ適用高電圧機器)
1E センサ付きICタグ適用ブッシング(センサ付きICタグ適用高電圧機器)
1F センサ付きICタグ適用避雷器(センサ付きICタグ適用高電圧機器)
2 遮断部(開閉部)
3 碍管
4 支持碍管
5 フランジ部
6 架台
7 下部支持部材
8 絶縁ガス
10a 上部電極部
10b 下部電極部
11 固定接触子
12 可動接触子
13 接続リード
14 端子
15 端子カバー
17 絶縁ノズル
19 操作ピストン
20 パッファシリンダ
21 絶縁操作ロッド
22 開閉操作機構
23 摺動接点部
24 CT(Current Transformer)
25 E/O変換器
26 O/E変換器
30 センサ付きICタグ
30A 温度センサ付きICタグ
31 静電遮蔽体
33 ICタグリーダライタ
34 通信信号
35 アンテナ
36 変復調部
37 センサ
38 メモリ
39 時計
40 電源部
41 バッテリー
42 制御部
45 アンテナ
46 変復調部
47 電源部
48 制御部
50 上位装置
55 取付穴
58 静電遮蔽体
60 避雷器素子
61 絶縁スペーサ
62 高電圧導体
63 金属密閉タンク
64 静電遮蔽体
65 接地導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ガスを封入した容器内に高電圧部を有する高電圧機器において、
前記高電圧機器は、センサ付きICタグを、前記センサ付きICタグのセンサが検知対象の物理量を取得でき、かつ、前記センサ付きICタグと外部にあるICタグリーダとの通信が可能な位置に着脱自在に取り付けて構成したことを特徴とするセンサ付きICタグ適用高電圧機器。
【請求項2】
前記高電圧機器は、
前記高電圧部の電気的接続状態を切り替える接点を備えた遮断器および断路器、
前記容器内に非直線性の抵抗素子を有する避雷器、および
前記容器内に絶縁体で支持され外部機器との電気的接続を担う導体を有するブッシング
の何れかであることを特徴とする請求項1記載のセンサ付きICタグ適用高電圧機器。
【請求項3】
前記センサ付きICタグは、
他装置との接続リードと電気的に接続される電極部、および、前記容器内の高電圧部の少なくとも何れかに取り付けられることを特徴とする請求項1または2記載のセンサ付きICタグ適用高電圧機器。
【請求項4】
前記センサ付きICタグを、時定数の逆数が1MHzより大きく、かつ、前記センサ付きICタグの通信周波数より小さい半導電性材料で覆ったことを特徴とする請求項1及至3記載のセンサ付きICタグ適用高電圧機器。
【請求項5】
前記センサ付きICタグを、静電遮蔽する静電遮蔽体で覆ったことを特徴とする請求項1及至4記載のセンサ付きICタグ適用高電圧機器。
【請求項6】
前記静電遮蔽体は、端部を丸く加工した金属で構成され、前記センサ付きICタグが外部のICタグリーダと通信可能な隙間を開けて前記センサ付きICタグを覆うことを特徴とする請求項5記載のセンサ付きICタグ適用高電圧機器。
【請求項7】
前記高電圧機器は、他装置との接続リードと電気的に接続される電極部、および、前記容器内の高電圧部の少なくとも何れかに溝状に形成された取付穴を設け、この取付穴に前記センサ付きICタグを着脱可能に取り付けたことを特徴とする請求項1及至6記載のセンサ付きICタグ適用高電圧機器。
【請求項8】
前記センサ付きICタグは、このセンサ付きICタグが有するセンサによって取得された測定結果を記録するメモリを備えたことを特徴とする請求項1及至7記載のセンサ付きICタグ適用高電圧機器。
【請求項9】
前記センサ付きICタグが有するセンサは、当該センサを取り付けた箇所の温度を計測する温度センサであることを特徴とする請求項1及至8記載のセンサ付きICタグ適用高電圧機器。
【請求項10】
前記センサ付きICタグが有するセンサは、当該センサ近傍で生じた部分放電を検出する部分放電検出機能を有することを特徴とする請求項1及至9記載のセンサ付きICタグ適用高電圧機器。
【請求項11】
前記センサ付きICタグは、前記センサ付きICタグを動作させる電力を供給するバッテリーを有し、このバッテリーを外部から無線により充電する機能を持つことを特徴とする請求項1及至10記載のセンサ付きICタグ適用高電圧機器。
【請求項12】
絶縁ガスを封入した容器内に高電圧部を有する高電圧機器において、
前記高電圧機器は、前記容器を構成する壁面の一部を非金属で形成し、前記容器内にセンサ付きICタグを取り付けて、このセンサ付きICタグと前記容器外部にあるICタグリーダとの通信を可能に構成したことを特徴とするセンサ付きICタグ適用高電圧機器。
【請求項13】
絶縁ガスを封入した容器内に高電圧部を有する高電圧機器において、
前記高電圧機器は、前記容器外の電極部にセンサ付きICタグを取り付けて、このセンサ付きICタグと機器外部にあるICタグリーダとの通信を可能に構成したことを特徴とするセンサ付きICタグ適用高電圧機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−99459(P2008−99459A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279140(P2006−279140)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】