説明

センサ制御装置

【課題】フィルタ上流側及びフィルタ下流側の粒子状物質検出センサ(PMセンサ)について異常診断を好適に実施する。
【解決手段】エンジン11の排気管14には、PMフィルタ16が設けられるとともに、PMフィルタ16の上流側及び下流側にPMセンサ18,19がそれぞれ設けられている。ECU20は、PMセンサ18,19により検出されるPM付着量に基づいて、PMセンサ18,19について同時にセンサ再生処理(PM強制燃焼)を実施する。また、ECU20は、PMセンサ18,19のセンサ再生処理の実施後において、上流側PMセンサ18の次の再生処理の実施要求(燃焼要求)と、下流側PMセンサ19の次の再生処理の実施要求(燃焼要求)との順序に基づいてPMセンサ18,19の異常診断を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質検出センサの検出信号に基づいて排気中の粒子状物質(PM:Particulate Matter)の量を監視するセンサ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンから排出されるPMの量を検出するPMセンサ(粒子状物質検出センサ)が各種提案されている。例えば、特許文献1のPMセンサでは、絶縁基板上に一対の対向電極を設けておき、その一対の対向電極間にPMが付着すると電極間抵抗が変化することを利用し、電極間抵抗に応じた検出信号を出力する構成としている。そして、PMセンサの検出信号に基づいてPM量を算出することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−196453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンの排気管にPMを捕集するPMフィルタが設けられる場合があり、そのPMフィルタを備える構成では、捕集PMを燃焼により除去するフィルタ再生処理が必要に応じて実施される。かかる場合、PMフィルタの前後差圧を検出する圧力センサを設けておき、その圧力センサにより検出される前後差圧が所定値を超えると、フィルタ再生処理の実施タイミングであると判断されてPM再生処理が実施される。
【0005】
ただし、圧力センサで計測したフィルタ前後差圧によりフィルタ再生処理の実施タイミングを判定する構成では、実際のPM捕集量と圧力センサの検出値との相関のずれ等に起因して、フィルタ再生処理が本来実施すべきタイミングで実施できない場合が生じると考えられる。特に、近年では排気法規制の強化に伴いフィルタ再生処理の実施タイミングが早められる傾向にあるが、こうした場合には、PM再生処理の実施タイミングのずれは尚更問題となる。
【0006】
そこで、PMフィルタの前後にPMセンサをそれぞれ設け、これら各PMセンサの出力に基づいてフィルタ再生処理の実施タイミングを判定する構成が考えられる。かかる構成は、PMフィルタのPM捕集量を直接的にモニタできるため、PM再生処理の実施タイミングを好適に管理できると考えられる。
【0007】
また、近年の法規制の下では、上記のとおりPMフィルタの前後にPMセンサがそれぞれ設けられる構成において、それらPMセンサの異常診断を実施することが要求されると考えられる。
【0008】
本発明は、フィルタ上流側及びフィルタ下流側の粒子状物質検出センサ(PMセンサ)について異常診断を好適に実施することができるセンサ制御装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について説明する。
【0010】
本発明のセンサ制御装置は、内燃機関の排気管に、前記内燃機関の排気中に含まれる導電性の粒子状物質を捕集するフィルタ装置が設けられるとともに、そのフィルタ装置の上流側及び下流側に、前記粒子状物質を付着させてその付着量を検出する粒子状物質検出センサとして上流側センサ及び下流側センサがそれぞれ設けられるシステムに適用される。
【0011】
そして、請求項1に記載の発明では、前記上流側センサに付着している粒子状物質を、該上流側センサに設けられているヒータの加熱により燃焼させる第1燃焼手段と、前記下流側センサに付着している粒子状物質を、該下流側センサに設けられているヒータの加熱により燃焼させる第2燃焼手段と、前記上流側センサにより検出される粒子状物質の付着量が、前記第1燃焼手段により粒子状物質を燃焼させるための実施基準値に達した場合に、前記上流側センサについての燃焼要求を出す第1燃焼要求手段と、前記下流側センサにより検出される粒子状物質の付着量が、前記第2燃焼手段により粒子状物質を燃焼させるための実施基準値に達した場合に、前記下流側センサについての燃焼要求を出す第2燃焼要求手段と、前記第1燃焼手段による燃焼実施後において前記第1燃焼要求手段により出される燃焼要求と、前記第2燃焼手段による燃焼実施後において前記第2燃焼要求手段により出される燃焼要求とに基づいて、前記上流側センサ及び前記下流側センサについて異常の有無を判定する異常判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
要するに、フィルタ装置の上流側と下流側とを比べると、上流側はフィルタ装置による捕集前であるために排気中に含まれる粒子状物質が多く、下流側は排気中に含まれる粒子状物質が少ないと言える。ゆえに、上流側センサでは、下流側センサに比べて頻繁に、すなわち比較的短い時間間隔で燃焼要求が出されることとなる。本発明は、この点に着眼してなされたものであり、例えば、上流側センサにおいて排気中の粒子状物質が付着しない異常が生じていたり、他方、下流側センサにおいて鉄粉など導電性の異物が付着する異常が生じていたりすると、上流側センサに関して出される燃焼要求と下流側センサに関して出される燃焼要求との順序の関係が正常時と異なるものとなるため、その関係性を検出することでセンサ異常を判定するものである。
【0013】
例えば、上流側センサと下流側センサとの粒子状物質の燃焼が同時に実施される構成で下流側センサに関する燃焼要求が上流側センサに関する燃焼要求よりも先に出される場合に、上流側センサ及び下流側センサのいずれかが異常であると判定できる。又は、「上流側センサに関して出される燃焼要求の時間間隔>下流側センサに関して出される燃焼要求の時間間隔」となる場合に、上流側センサ及び下流側センサのいずれかが異常であると判定できる。
【0014】
以上により、フィルタ上流側及びフィルタ下流側の粒子状物質検出センサについて異常診断を好適に実施できることとなる。
【0015】
一般にフィルタ装置は、多孔質材料からなるセル隔壁を有し、そのセル隔壁の多数の微細孔により通気可能な構成となっており、その微細孔は粒子状物質の捕集が進むほど、次第に詰まってくる。つまり、フィルタ再生処理との関係を考えると、フィルタ再生処理の直後には微細孔に粒子状物質が付着していないことから目詰まりはなく、フィルタ下流側への粒子状物質の漏れ出しが生じるとも考えられる。この点に着眼すると、フィルタ再生処理の実施後においてその当初には、フィルタ上流側とフィルタ下流側とで粒子状物質の量の差異が小さくなり、上流側及び下流側の各センサにおいて燃焼要求の順序等に基づいて異常判定を実施する構成には不都合であると言える。
【0016】
そこで、請求項2に記載の発明では、前記フィルタ装置に捕集された粒子状物質を燃焼により除去するフィルタ再生処理を実施するフィルタ再生手段と、前記フィルタ再生処理の実施後において所定時間が経過するまでは、前記異常判定手段による前記燃焼要求に基づく異常判定を禁止する判定禁止手段と、を備える構成としている。
【0017】
上記構成によれば、フィルタ再生処理の実施後において所定時間が経過するまでは、すなわちフィルタ上流側とフィルタ下流側とで粒子状物質の量の差異が小さくなっている期間では、異常判定手段による異常判定が禁止される。これにより、異常判定の精度を維持することができる。
【0018】
また、請求項3に記載の発明では、前記第1燃焼要求手段により燃焼要求が出された場合、及び前記第2燃焼要求手段により燃焼要求が出された場合のいずれかで、前記第1燃焼手段及び前記第2燃焼手段により前記上流側センサ及び前記下流側センサについて同時に粒子状物質の燃焼を実施するものである。また、前記異常判定手段は、前記第1燃焼要求手段による燃焼要求が、前記第2燃焼要求手段による燃焼要求よりも先に出され、かつ前記第1燃焼要求手段により燃焼要求が出た時の前記上流側センサによる粒子状物質の検出量と前記下流側センサによる粒子状物質の検出量との差が、所定の異常判定値よりも小さい場合に異常有りと判定する。そして、前記フィルタ装置に捕集された粒子状物質を燃焼により除去するフィルタ再生処理を実施するフィルタ再生手段と、前記フィルタ再生処理の実施後において所定時間が経過するまでは、それ以外の期間と比べて前記異常判定値を小さくする判定値変更手段と、を備える構成としている。
【0019】
上記構成によれば、フィルタ再生処理の実施後において所定時間が経過するまでは、すなわちフィルタ上流側とフィルタ下流側とで粒子状物質の量の差異が小さくなっている期間では、それ以外の期間と比べて異常判定値が小さくなる。これにより、フィルタ再生処理の実施直後において異常を誤判定してしまうことを回避でき、ひいては異常判定の精度を維持することができる。
【0020】
また、請求項4に記載の発明では、前記上流側センサにより検出される粒子状物質の付着量、及び前記下流側センサにより検出される粒子状物質の付着量のいずれかが所定量に達した場合に、前記上流側センサ及び前記下流側センサに付着している前記粒子状物質をそれら各センサに設けられているヒータの加熱により同時に燃焼させる燃焼制御手段と、前記燃焼制御手段により前記粒子状物質が燃焼される場合に、前記上流側センサに付着している粒子状物質の燃焼に要する所要時間と、前記下流側センサに付着している粒子状物質の燃焼に要する所要時間とを比較し、その比較結果に基づいて前記上流側センサ及び前記下流側センサについて異常の有無を判定する異常判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0021】
上述したとおりフィルタ装置の上流側は排気中に含まれる粒子状物質が多く、下流側は排気中に含まれる粒子状物質が少ないと言える。ゆえに、上流側センサ及び下流側センサに付着している粒子状物質をそれぞれ同時に燃焼させた場合には、上流側センサでは、下流側センサに比べて粒子状物質の燃焼に要する所要時間が長くなる。本発明は、この点に着眼してなされたものであり、例えば、上流側センサにおいて排気中の粒子状物質が付着しない異常が生じていたり、他方、いずれかのセンサでヒータ故障(断線等)が生じていたりすると、上流側センサでの燃焼の所要時間と下流側センサでの燃焼の所要時間との関係が正常時と異なるものとなるため、その関係性を検出することでセンサ異常を判定するものである。例えば、「上流側センサでの燃焼の所要時間<下流側センサでの燃焼の所要時間」となった場合に、上流側センサ及び下流側センサのいずれかが異常であると判定できる。以上により、フィルタ上流側及びフィルタ下流側の粒子状物質検出センサについて異常診断を好適に実施できることとなる。
【0022】
上記のとおりフィルタ装置は、フィルタ再生処理の実施後において所定時間が経過するまでは、フィルタ上流側とフィルタ下流側とで粒子状物質の量の差異が小さくなり、上流側及び下流側の各センサにおいて燃焼に要する所要時間に基づいて異常判定を実施する構成には不都合であると言える。
【0023】
そこで、請求項5に記載の発明では、前記フィルタ装置に捕集された粒子状物質を燃焼により除去するフィルタ再生処理を実施するフィルタ再生手段と、前記フィルタ再生処理の実施後において所定時間が経過するまでは、前記異常判定手段による前記所要時間に基づく異常判定を禁止する判定禁止手段と、を備える構成としている。
【0024】
上記構成によれば、フィルタ再生処理の実施後において所定時間が経過するまでは、すなわちフィルタ上流側とフィルタ下流側とで粒子状物質の量の差異が小さくなっている期間では、異常判定手段による異常判定が禁止される。これにより、異常判定の精度を維持することができる。
【0025】
また、請求項6に記載の発明では、前記異常判定手段は、前記上流側センサ及び前記下流側センサにおいて前記燃焼に要する所要時間の時間差が、所定の異常判定値よりも小さい場合に異常有りと判定するものである。そして、前記フィルタ装置に捕集された粒子状物質を燃焼により除去するフィルタ再生処理を実施するフィルタ再生手段と、前記フィルタ再生処理の実施後において所定時間が経過するまでは、それ以外の期間と比べて前記異常判定値を小さくする判定値変更手段と、を備える構成としている。
【0026】
上記構成によれば、フィルタ再生処理の実施後において所定時間が経過するまでは、すなわちフィルタ上流側とフィルタ下流側とで粒子状物質の量の差異が小さくなっている期間では、それ以外の期間と比べて異常判定値が小さくなる。これにより、フィルタ再生処理の実施直後において異常を誤判定してしまうことを回避でき、ひいては異常判定の精度を維持することができる。
【0027】
請求項7に記載の発明では、前記内燃機関の始動後に前記上流側センサ及び前記下流側センサが共に被水したことを判定する被水判定手段と、前記被水判定手段により両センサの被水が判定された後において、前記上流側センサのセンサ出力に基づいて該上流側センサの被水が解消されたタイミングを判定する第1被水解消判定手段と、前記被水判定手段により両センサの被水が判定された後において、前記下流側センサのセンサ出力に基づいて該下流側センサの被水が解消されたタイミングを判定する第2被水解消判定手段と、前記第1被水解消判定手段により判定された被水解消のタイミングと、前記第2被水解消判定手段により判定された被水解消のタイミングとに基づいて前記上流側センサ及び前記下流側センサについて異常の有無を判定する異常判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0028】
要するに、内燃機関の始動時には、排気管内において粒子状物質検出センサに対する被水が発生すると考えられる。この場合、粒子状物質検出センサが被水状態になると、水が導通媒体となることで、水の抵抗分に相当するセンサ出力が生じることとなる。また、被水によるセンサ出力は、排気管内における水の消失に伴い被水前のセンサ出力に復帰することとなる。ここで、被水状態での各センサのセンサ出力を比べると、内燃機関から高温の排気が流れ込むことから、本来は、先に上流側センサのセンサ出力が被水前のセンサ出力に復帰し、その後暫くして、下流側センサのセンサ出力が被水前のセンサ出力に復帰する。本発明は、この点に着眼してなされたものであり、例えば、いずれかのセンサにおいて鉄粉など導電性の異物が付着する異常が生じたりすると、被水解消後に被水前のセンサ出力に復帰できないため、それに基づいてセンサ異常を判定するものである。以上により、フィルタ上流側及びフィルタ下流側の粒子状物質検出センサについて異常診断を好適に実施できることとなる。
【0029】
請求項8に記載の発明では、前記フィルタ装置による前記粒子状物質の捕集率が低い状態であることを判定する捕集率判定手段と、前記捕集率判定手段により前記フィルタ装置が低捕集率の状態であると判定された場合に、前記上流側センサの出力変化と前記下流側センサの出力変化とに基づいて、前記上流側センサ及び前記下流側センサについて異常の有無を判定する異常判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0030】
要するに、フィルタ装置は粒子状物質の捕集率が低下する場合があり、例えば、フィルタ再生処理の直後には微細孔の目詰まりがないことから、フィルタ下流側への粒子状物質の漏れ出しが生じ捕集率が低下すると考えられる。本発明は、この点に着眼してなされたものであり、上記のとおりフィルタ装置が低捕集率の状態であり、本来は上流側センサと下流側センサとで共に出力変化が生じる筈なのにそうならない場合にセンサ異常を判定するものである。以上により、フィルタ上流側及びフィルタ下流側の粒子状物質検出センサについて異常診断を好適に実施できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】発明の実施の形態におけるエンジン制御システムの概要を示す構成図。
【図2】PMセンサのセンサ素子の要部構成を分解して示す分解斜視図。
【図3】PMセンサに関する電気的構成図。
【図4】PMセンサ異常診断処理を示すフローチャート。
【図5】PMフィルタのPM捕集量の推移とPMセンサのセンサ出力の推移とを示すタイムチャート。
【図6】第2の実施形態においてPMセンサ異常診断処理を示すフローチャート。
【図7】第2の実施形態においてPMセンサ異常診断処理を示すフローチャート。
【図8】異常診断(その1)の処理を示すフローチャート。
【図9】異常診断(その2)の処理を示すフローチャート。
【図10】第3の実施形態においてPMセンサ異常診断処理を示すフローチャート。
【図11】異常診断処理をより具体的に説明するためのタイムチャート。
【図12】第4の実施形態においてPMセンサ異常診断処理を示すフローチャート。
【図13】第5の実施形態においてPMセンサ異常診断処理を示すフローチャート。
【図14】異常診断処理をより具体的に説明するためのタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、車載エンジンを備える車両エンジンシステムにおいて、同エンジンから排出される排気中のPM量(導電性粒子状物質の量)を監視するものである。特に、エンジン排気管においてフィルタ装置としてのPMフィルタの上流側及び下流側にそれぞれPMセンサを設け、そのPMセンサでのPM付着量に基づいてPMフィルタのPM捕集量を監視するものとしている。図1は、本システムの概略構成を示す構成図である。
【0033】
図1において、エンジン11は直噴式ガソリンエンジンであり、同エンジン11には、同エンジン11の運転に関わるアクチュエータとして燃料噴射弁12や点火装置13等が設けられている。エンジン11の排気管14には、排気浄化装置として三元触媒15とPMフィルタ16とが設けられている。PMフィルタ16は、例えば多孔質セラミックス材料よりなり、排気管長手方向に延びる多数のセル隔壁を有する構成となっている。PMフィルタ16のセル隔壁には多数の微細孔が形成されており、フィルタ上流側及び下流側は多数の微細孔により通気可能となっている。排気がPMフィルタ16を通過する際には、排気中のPMがセル隔壁にて捕集される。
【0034】
三元触媒15の上流側にはA/Fセンサ17が設けられている。また、PMフィルタ16の上流側及び下流側にはそれぞれ粒子状物質検出センサとしてのPMセンサ18,19が設けられている。以下、フィルタ上流側のPMセンサ18を上流側PMセンサ18、フィルタ下流側のPMセンサ19を下流側PMセンサ19とも称する。その他、本システムでは、エンジン回転速度を検出するための回転センサ21や、吸気管圧力を検出するための圧力センサ22等が設けられている。
【0035】
ECU20は、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータ(マイコン)を主体として構成されており、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、都度のエンジン運転状態に応じてエンジン11及びその周辺装置の各種制御を実施する。すなわち、ECU20は、上記各種センサ等から各々信号を入力し、それらの各種信号に基づいて燃料噴射量や点火時期を演算して燃料噴射弁12や点火装置13の駆動を制御する。
【0036】
また、ECU20は、PMセンサ18,19の検出信号に基づいてPMフィルタ16のPM捕集量を算出し、そのPM捕集量に基づいてPMフィルタ16の再生処理(フィルタ再生処理)を実施する。具体的には、上流側PMセンサ18のセンサ出力と、下流側PMセンサ19のセンサ出力との差分から、時間当たりのPM捕集量を算出し、その時間当たりのPM捕集量を逐次積算することによりPMフィルタ16の総PM捕集量を算出する。そして、その総PM捕集量が所定値(フィルタ再生処理の開始しきい値)に到達したら、フィルタ再生処理を実施する。フィルタ再生処理は周知の手法により実施されればよいが、略述すると、排気管14内に未燃燃料を供給してそれを排気管14内で燃焼させることにより、排気管内温度を上昇させてPMを燃焼除去する。又は、PMフィルタ16にヒータを一体化しておいてそのヒータの加熱によりPMを燃焼除去する。なお、上記に加え、前回の再生実行時からの車両走行距離や経過時間が所定値になる都度、フィルタ再生処理を実施する構成であってもよい。
【0037】
また、ECU20は、PMセンサ18,19に付着したPMを燃焼により除去するPM強制燃焼を実施したり、PMセンサ18,19の検出信号に基づいてこれら各センサ18,19の異常診断を実施したりする。ただしそれらの詳細は後述する。
【0038】
次に、PMセンサ18,19の構成、及びそのPMセンサ18,19に関する電気的構成を図2及び図3を用いて説明する。図2は、PMセンサ18,19を構成するセンサ素子31の要部構成を分解して示す分解斜視図であり、図3は、PMセンサ18,19に関する電気的構成図である。なお、PMセンサ18,19は同一の構成を有しており、センサ素子31の構成も同じである。
【0039】
図2に示すように、センサ素子31は、長尺板状をなす2枚の絶縁基板32,33を有しており、一方の絶縁基板32にはPM量を検出するためのPM検出部34が設けられ、他方の絶縁基板33にはセンサ素子31を加熱するためのヒータ部35が設けられている。センサ素子31は、絶縁基板32,33が二層に積層されることで構成されている。絶縁基板32が、PMを付着させるための被付着部に相当する。
【0040】
絶縁基板32には、他方の絶縁基板33とは反対側の基板表面に、互いに離間して設けられる一対の検出電極36a,36bが設けられており、この一対の検出電極36a,36bによりPM検出部34が構成されている。検出電極36a,36bは、各々複数の櫛歯を有する櫛歯形状をなしており、各検出電極36a,36bの櫛歯同士が互い違いとなるようして所定間隔をあけて対向配置されている。また、ヒータ部35は例えば電熱線からなる発熱体により構成されている。
【0041】
ただし、一対の検出電極36a,36bの形状は上記に限定されず、曲線状をなす形状で設けられているものや、各1本の線からなる一対の電極部が所定距離を隔てて平行に対向配置されているものであってもよい。
【0042】
なお、図示は省略するが、PMセンサ18,19は、センサ素子31を保持するための保持部を有しており、センサ素子31はその一端側が保持部により保持された状態で排気管に固定されるようになっている。この場合、少なくともPM検出部34及びヒータ部35を含む部位が排気管内に位置するように配されるとともに、センサ素子31において絶縁基板32(PM被付着部)が排気上流側を向くようにして、PMセンサ18,19が排気管に取り付けられる構成となっている。これにより、PMを含む排気が排気管内を流れる際、そのPMが絶縁基板32において検出電極36a,36b及びその周辺に付着し堆積する。また、PMセンサ18,19は、センサ素子31の突出部分を覆う保護カバーを有している。
【0043】
上記構成のPMセンサ18,19は、排気中のPMがセンサ素子31の絶縁基板32に付着し堆積すると、それによりPM検出部34の抵抗値(すなわち一対の検出電極36a,36b間の抵抗値)が変化すること、及びその抵抗値の変化がPM堆積量に対応していることから、その抵抗値の変化を利用してPM量を検出するものである。
【0044】
図3に示すように、PMセンサ18,19に関する電気的構成として、PMセンサ18,19の各PM検出部34(図では34A,34B)の一端側にはセンサ電源41が接続され、他端側にはシャント抵抗42が接続されている。センサ電源41は、例えば定電圧回路により構成されており、定電圧Vccが5Vとなっている。この場合、PM検出部34とシャント抵抗42とにより分圧回路40が形成されており、それらの中間点電圧がPM検出電圧Vpm(センサ検出値)としてECU20に入力されるようになっている。なお、上流側PMセンサ18のPM検出電圧がVpm1であり、下流側PMセンサ19のPM検出電圧がVpm2である。つまり、PMセンサ18,19の各PM検出部34ではPM堆積量に応じて抵抗値Rpmが変化し、その抵抗値Rpmとシャント抵抗42の抵抗値RsとによりPM検出電圧Vpmが変化する。そして、そのPM検出電圧Vpmが図示しないA/D変換器を介してマイコン44に入力される。
【0045】
ここで、Vcc=5V、Rs=100kΩとすると、PM検出電圧Vpmは次の(1)式で求められる。
Vpm=5V×100kΩ/(100kΩ+Rpm) …(1)
このとき、PM堆積量が0(又は略0)であれば、PM検出部34の抵抗値Rpmは無限大になることから、Vpm=0Vとなる。また、PM堆積によりPM検出部34の抵抗値Rpmが例えば1kΩまで低下すると、Vpm=4.95Vとなる。こうしてPM検出部34でのPM堆積量に応じてPM検出電圧Vpmが変化する。マイコン44は、PM検出電圧Vpmに応じてPM堆積量を算出する。
【0046】
分圧回路40により信号出力回路が構成されており、この分圧回路40によって0〜5Vを出力範囲としてPM検出電圧Vpmが変化可能となっている。この場合、PM検出電圧Vpmの出力上限値は5Vであり、より厳密には5Vよりも若干低い電圧値となっている。
【0047】
また、PMセンサ18,19のヒータ部35(図では35A,35B)には、それぞれヒータ電源45が接続されている。ヒータ電源45は例えば車載バッテリであり、車載バッテリからの給電により各ヒータ部35が加熱される。この場合、ヒータ部35のローサイドにはスイッチング素子としてのトランジスタ46(図では46A,46B)が接続されており、マイコン44により各トランジスタ46がオン/オフされることでヒータ部35の加熱制御が行われる。
【0048】
絶縁基板32上にPMが堆積した状態でヒータ部35の通電を開始すると、堆積PMの温度が上昇し、それに伴い堆積PMが強制的に燃焼される。こうした強制燃焼により、絶縁基板32に堆積したPMが燃焼除去される。マイコン44は、例えば、エンジン始動時や運転終了時に、又はPM堆積量が所定量になったと判定された時に、PMの強制燃焼要求が生じたとしてヒータ部35による加熱制御を実施する。より具体的には、マイコン44は、上流側PMセンサ18により検出されるPM堆積量が、堆積PMを強制燃焼させるための実施基準値に達した場合、又は下流側PMセンサ19により検出されるPM堆積量が、堆積PMを強制燃焼させるための実施基準値に達した場合に、燃焼要求を出して各PMセンサ18,19のヒータ部35a,35bを通電させてPM燃焼処理を実施する(それら実施基準値は同一である)。なお、PMセンサ18,19のPM強制燃焼の処理は、PMセンサ18,19においてPM堆積量の検出機能を再生するものであり、その意味からセンサ再生処理とも称される。
【0049】
その他、ECU20には、各種の学習値や異常診断値(ダイアグデータ)等を記憶するためのバックアップ用メモリとしてのEEPROM47が設けられている。
【0050】
次に、PMセンサ18,19の異常診断処理について説明する。本実施形態の異常診断は、PMフィルタ16の上流側と下流側とを比べると、上流側はフィルタ捕集前であるために排気中のPMが多く、下流側は排気中のPMが少なくなり、それゆえに、上流側PMセンサ18では、下流側PMセンサ19に比べて頻繁に、すなわち比較的短い時間間隔で燃焼要求が出されることに着眼してなされたものである。
【0051】
特に、上流側PMセンサ18について再生処理が実施された後において次に燃焼要求(再生処理の実施要求)が出されるタイミングと、下流側PMセンサ19について再生処理が実施された後において次に燃焼要求(再生処理の実施要求)が出されるタイミングとに基づいて、PMセンサ18,19の異常診断を実施する。また、上流側PMセンサ18において付着PMの燃焼に要する所要時間と、下流側PMセンサ19において付着PMの燃焼に要する所要時間とを比較し、その比較結果に基づいてPMセンサ18,19の異常診断を実施する。
【0052】
図4は、PMセンサ異常診断処理を示すフローチャートであり、本処理はECU20内のマイコン44により所定周期で繰り返し実行される。
【0053】
図4において、ステップS11では、今現在、両方のPMセンサ18,19についてセンサ再生処理(強制燃焼処理)が実施されている最中であるか否かを判定する。そして、センサ再生処理の実施中でなければステップS12に進み、センサ再生処理の実施中であればステップS16に進む。
【0054】
まずはセンサ再生処理の実施中でない場合を想定すると、ステップS12では、両PMセンサ18,19についてセンサ再生処理の実施要求の有無を判定する。具体的には、PMセンサ18,19について、少なくともいずれか一方のPM検出電圧Vpm(PM付着量)が、センサ再生処理の実施判断基準となる所定の実施基準値に達しているか否かを判定する。この場合、YESであれば後続のステップS13に進み、NOであればそのまま本処理を一旦終了する。
【0055】
ステップS13では、今回のセンサ再生処理の実施要求に関して、上流側及び下流側のPMセンサ18,19のうちいずれのPM検出電圧Vpmに基づきセンサ再生処理が要求されたのかを判定することで、センサ異常診断を実施する。言い換えれば、上流側PMセンサ18のPM検出電圧Vpm1が先にセンサ再生処理の実施基準値に到達したのか、下流側PMセンサ19のPM検出電圧Vpm2が先にセンサ再生処理の実施基準値に到達したのかを判定する。なおこのとき、上流側PMセンサ18について再生処理が実施されてから次に再生処理の実施要求が出されるまでの時間間隔が、下流側PMセンサ19について再生処理が実施されてから次に再生処理の実施要求が出されるまでの時間間隔よりも短ければ、上流側PMセンサ18のPM検出電圧Vpm1が先にセンサ再生処理の実施基準値に到達することなる。
【0056】
そして、上流側PMセンサ18のPM検出電圧Vpm1が先にセンサ再生処理の実施基準値に到達したのであれば、ステップS14に進み、両PMセンサ18,19について再生処理を実施する。このとき、各PMセンサ18,19についてヒータ部35による加熱が開始される。つまり、両センサ同時にセンサ再生処理が実施される。
【0057】
また、下流側PMセンサ19のPM検出電圧Vpm2が先にセンサ再生処理の実施基準値に到達したのであれば、ステップS15に進む。ステップS15では、PMセンサ18,19のいずれかに異常が発生しているとして、センサ異常の発生情報をダイアグデータとしてEEPROM47に記憶する。
【0058】
例えば、上流側PMセンサ18において排気中のPMが付着しない異常が生じていたり、他方、下流側PMセンサ19において鉄粉など導電性の異物が付着する異常が生じていたりすると、上流側PMセンサ18についての再生処理の実施要求と下流側PMセンサ19についての再生処理の実施要求との順序が正常時とは逆になり、上流側PMセンサ18についての再生処理の実施要求が後、下流側PMセンサ19についての再生処理の実施要求が先となる。これにより、PMセンサ18,19のいずれかが異常であると判定される。
【0059】
一方、センサ再生処理の開始後においてステップS16に進むと、同ステップS16では、各PMセンサ18,19についてセンサ再生処理が完了したか否かを判定する。そして、センサ再生処理が完了していなければ、ステップS17で再生所要時間TA1,TA2を計測する。この再生所要時間TA1,TA2は、PMセンサ18,19ごとに計測されるものであり、各PMセンサ18,19のPM検出電圧Vpm1,Vpm2の変化に基づいて時間計測される。
【0060】
再生所要時間TA1,TA2の計測に関してより具体的には、センサ再生処理において、ヒータ加熱により付着PMが燃焼除去されると、PM検出電圧Vpm1,Vpm2が減少変化していずれ所定値(本実施形態では0V)に到達する。かかる場合において、ヒータ通電開始からPM検出電圧Vpm1,Vpm2がそれぞれ所定値に達するまでの時間が再生所要時間TA1,TA2として計測される。
【0061】
また、各PMセンサ18,19のセンサ再生処理が完了していれば、ステップS18に進む。ステップS18では、センサ再生処理中に計測した各PMセンサ18,19の再生所要時間TA1,TA2に基づいて、TA1<TA2であるか否かを判定することで、センサ異常診断を実施する。そして、TA1<TA2であれば、すなわち、上流側PMセンサ18の再生所要時間TA1の方が下流側PMセンサ19の再生所要時間TA2よりも短ければ、ステップS15に進む。ステップS15では、上述のとおりセンサ異常の発生情報をダイアグデータとしてEEPROM47に記憶する。
【0062】
例えば、上流側PMセンサ18において排気中のPMが付着しない異常が生じていたり、他方、いずれかのPMセンサ18,19でヒータ故障(断線等)が生じていたりすると、各再生所要時間TA1,TA2の大小関係が正常時とは逆になり、「再生所要時間TA1<再生所要時間TA2」となる。したがって、PMセンサ18,19のいずれかが異常であると判定できる。
【0063】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0064】
両PMセンサ18,19について同時にセンサ再生処理(PM強制燃焼)が行われた後において、上流側PMセンサ18の次の再生処理の実施要求(燃焼要求)と、下流側PMセンサ19の次の再生処理の実施要求(燃焼要求)との順序に基づいてPMセンサ18,19の異常診断を実施する構成とした。より具体的には、両PMセンサ18,19について同時にセンサ再生処理を実施した後、上流側PMセンサ18のPM検出電圧Vpm1が先にセンサ再生処理の実施基準値に到達したのか、下流側PMセンサ19のPM検出電圧Vpm2が先にセンサ再生処理の実施基準値に到達したのかを判定し、その判定結果に基づいてPMセンサ18,19の異常診断を実施する構成とした。
【0065】
また、各PMセンサ18,19の再生所要時間TA1,TA2を比較し、その比較結果に基づいてPMセンサ18,19の異常診断を実施する構成とした。
【0066】
以上により、フィルタ上流側及びフィルタ下流側のPMセンサ18,19について異常診断を好適に実施できることとなる。
【0067】
上記のようにPMセンサ18,19の異常診断を好適に実施できることで、それら各PMセンサ18,19の検出信号に基づいて算出されるPMフィルタ16のPM捕集量の信頼性が向上する。これにより、PMフィルタ16のフィルタ再生処理についても適正化を図ることができる。
【0068】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について第1の実施形態との相違点を中心に説明する。PMフィルタ16では、定期又は不定期に捕集PMが燃焼により除去されるフィルタ再生処理が行われる。また、フィルタ再生処理が実施された場合において、PMフィルタ16に新たにPMが捕集されていく過程を見ると、フィルタ再生処理の直後にはフィルタ微細孔にPMが付着していないことから目詰まりはなく、フィルタ下流側へのPMの漏れ出しが生じることが考えられる。つまり、PMフィルタ16のPM捕集の程度に応じて、フィルタ下流側のPM量が相違すると考えられる。また、PMフィルタ16の再生処理とPMセンサ18,19の再生処理とを比較すると、それら再生処理の実施の周期が大きく異なり、フィルタ再生処理の実施周期は比較的長く、センサ再生処理の実施周期は比較的短いものとなる。例えば、フィルタ再生処理は、例えば車両走行距離が数100km〜数1000kmになる度に実施されるのに対し、センサ再生処理は、例えば車両走行距離が数10kmになる度に実施される(1回の車両走行で複数回実施される)。
【0069】
図5のタイムチャートで説明すると、タイミングt1,t2がPMフィルタ16のフィルタ再生処理の実施タイミングであり、フィルタ再生処理の実施周期はTfである。また、フィルタ再生処理に対して、センサ再生処理は短周期で小刻みに実施されている。
【0070】
ここで、フィルタ再生処理の実施直後(例えば図5のTX1)と、それよりも後であって次回のフィルタ再生処理の実施直前(例えば図5のTX2)とでPMセンサ18,19のセンサ出力の変化をそれぞれ比較すると、上流側PMセンサ18については、排気中のPM濃度が一定であれば、センサ出力の変化はいずれも同様、すなわち出力変化の傾きは同じである。これに対し、下流側PMセンサ19については、排気中のPM濃度が一定であっても、PMフィルタ16におけるPM捕集量(PM捕集の程度)の違いに起因してセンサ出力の変化(出力変化の傾き)がTX1,TX2で相違するものとなっている。具体的には、フィルタ再生処理の実施直後(TX1)では、下流側PMセンサ19の出力変化の傾きが比較的大きく、次回のフィルタ再生処理の実施直前(TX2)では、下流側PMセンサ19の出力変化の傾きが比較的小さいものとなる。つまり、フィルタ再生処理の実施後においてその当初には、フィルタ上流側とフィルタ下流側とで排気中のPM量の差異が小さくなる。
【0071】
以下には、上記のとおり両PMセンサ18,19のPM付着量の関係が、PMフィルタ16のPM捕集の程度に関連している点を考慮し、フィルタ再生処理の実施後において所定時間が経過するまでは異常判定を禁止する構成、及び同じく所定時間が経過するまでは異常判定の判定値を変更する構成について説明する。
【0072】
<異常判定を禁止する構成>
図6は、図5のPMセンサ異常診断処理の一部を変更して示すフローチャートであり、以下、図5との相違点を中心に説明する。なお、図5との共通の処理については、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0073】
図6において、まずステップS21では、PMフィルタ16のフィルタ再生処理が実施されてからの経過時間が、所定時間に達しているか否かを判定する。この所定時間は、例えばフィルタ再生処理の実施周期の1/10、1/20等の時間であり、あらかじめ定められている。この場合、ステップS21がYESであれば、後続のステップS11以降の処理を実施し、ステップS21がNOであれば、そのまま本処理を終了する。つまり、フィルタ再生処理の実施後において所定時間が経過する以前は、異常診断が禁止されることとなる。
【0074】
<異常判定の判定値を変更する構成>
図7は、図5のPMセンサ異常診断処理の一部を変更して示すフローチャートであり、以下、図5との相違点を中心に説明する。なお、図5との共通の処理については、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0075】
図7において、ステップS13で上流側PMセンサ18のPM検出電圧Vpm1が先にセンサ再生処理の実施基準値に到達したと判定された場合に、ステップS30に進み、図8に示す「異常診断(その1)」を実施する。
【0076】
図8の「異常診断(その1)」において、ステップS31では、PMフィルタ16のフィルタ再生処理が実施されてからの経過時間が、所定時間に達しているか否かを判定する(図6のステップS21と同様)。そして、ステップS31がYESであれば、ステップS32に進み、ステップS31がNOであれば、ステップS33に進む。ステップS32では、異常判定値としてKE1を設定する。また、ステップS33では、異常判定値としてKE2を設定する。ここで、KE1,KE2は、いずれもPMセンサ18,19のPM付着量の差に基づいて異常判定を実施するためのしきい値であり、KE1>KE2である。
【0077】
その後、ステップS34では、今現在の上流側PMセンサ18のPM付着量と下流側PMセンサ19のPM付着量との差を算出し、続くステップS35では、そのPM付着量の差が、異常判定値よりも小さいか否かを判定する。異常判定値はステップS32又はS33での設定値(KE1又はKE2)であり、PM付着量との差<異常判定値であれば、ステップS36でPMセンサ異常であると判定する。なお、ステップS36でPMセンサ異常と判定された場合には、図7のステップS14でのセンサ再生処理は実施されない。
【0078】
また、図7において、ステップS16で各PMセンサ18,19について再生処理が完了したと判定された場合に、ステップS40に進み、図9に示す「異常診断(その2)」を実施する。
【0079】
図9の「異常診断(その2)」において、ステップS41では、PMフィルタ16のフィルタ再生処理が実施されてからの経過時間が、所定時間に達しているか否かを判定する(図6のステップS21と同様)。そして、ステップS41がYESであれば、ステップS42に進み、ステップS41がNOであれば、ステップS43に進む。ステップS42では、異常判定値としてKE3を設定する。また、ステップS43では、異常判定値としてKE4を設定する。ここで、KE3,KE4は、いずれもPMセンサ18,19の再生所要時間TA1,TA2の差に基づいて異常判定を実施するためのしきい値であり、KE3>KE4である。
【0080】
その後、ステップS44では、PMセンサ18,19の再生所要時間TA1,TA2(ステップS17の計測値)の差を算出し、続くステップS45では、その再生所要時間TA1,TA2の差が、異常判定値よりも小さいか否かを判定する。異常判定値はステップS42又はS43での設定値(KE3又はKE4)であり、再生所要時間TA1,TA2の差<異常判定値であれば、ステップS46でPMセンサ異常であると判定する。
【0081】
以上第2の実施形態によれば、フィルタ再生処理の実施後において所定時間が経過するまでは、異常判定を禁止する構成とした(図6のステップS21)。これにより、フィルタ再生処理の実施後においてフィルタ上流側とフィルタ下流側とでPM量の差異が小さくなっている期間では異常判定が禁止され、異常判定の精度を維持することができる。
【0082】
また、両PMセンサ18,19について同時にセンサ再生処理を実施した後、上流側PMセンサ18のPM検出電圧Vpm1が先にセンサ再生処理の実施基準値に到達した場合(第1燃焼要求手段による燃焼要求が、第2燃焼要求手段による燃焼要求よりも先に出される場合に相当)において、各PMセンサ18,19のPM付着量の差が、所定の異常判定値よりも小さい場合に異常有りと判定する構成とし、さらに、フィルタ再生処理の実施後において所定時間が経過するまでは、それ以外の期間と比べて異常判定値を小さくする構成とした(図8の異常診断(その1))。これにより、フィルタ再生処理の実施直後において異常を誤判定してしまうことを回避でき、ひいては異常判定の精度を維持することができる。
【0083】
また、各PMセンサ18,19の再生所要時間TA1,TA2の時間差が、所定の異常判定値よりも小さい場合に異常有りと判定する構成とし、さらに、フィルタ再生処理の実施後において所定時間が経過するまでは、それ以外の期間と比べて異常判定値を小さくする構成とした(図9の異常診断(その2))。これにより、やはりフィルタ再生処理の実施直後において異常を誤判定してしまうことを回避でき、ひいては異常判定の精度を維持することができる。
【0084】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、エンジン始動後において排気管内に存在する水によりPMセンサ18,19が被水することを利用し、被水解消に伴うセンサ出力の変化に基づいてPMセンサ18,19の異常診断を実施するものである。
【0085】
図10は、本実施形態におけるPMセンサ異常診断処理を示すフローチャートであり、本処理はECU20内のマイコン44により所定周期で繰り返し実行される。なお、本実施形態では、エンジン11の運転停止時に、各PMセンサ18,19においてセンサ再生処理(PM強制燃焼処理)を実施することとしており、エンジン始動時には、各PMセンサ18,19でのPM付着量がゼロ又は微量となっている。
【0086】
図10において、ステップS51では、エンジン始動後において排気管内被水によるセンサ異常診断が未実施であるか否かを、異常診断実施フラグにより判定する。このとき、異常診断実施フラグ=0であれば、センサ異常診断が未実施であると判定される。そして、異常診断未実施である場合に、後続のステップS52に進む。ステップS52では、エンジン始動後において各PMセンサ18,19の被水判定がなされたか否かを、被水発生フラグの状態により判定する。このとき、被水発生フラグ=0であれば、センサ被水が未だ判定されていないとして、ステップS53に進む。
【0087】
ステップS53では、各PMセンサ18,19のPM検出電圧Vpm1,Vpm2(センサ出力)に基づいて、各PMセンサ18,19で被水が発生しているか否かを判定する。このとき、各PMセンサ18,19のPM検出電圧Vpm1,Vpm2がそれぞれ水の抵抗値に相当するものになっていれば、被水発生していると判定される。被水発生の場合、続くステップS54で被水発生フラグに1をセットする。
【0088】
なお、ステップS53がNOとなる場合、ステップS55では、エンジン始動後において所定時間(被水モニタ時間)が経過したか否かを判定する。かかる場合、エンジン始動後において被水発生が確認されないまま所定時間が経過すると、ステップS55がYESとなり、異常診断実施フラグに1をセットする。つまり、本実施形態の異常診断は、エンジン始動時におけるPMセンサ18,19での被水発生を前提に実施されるものであり、被水発生の可能性が無くなった場合には、実際には異常診断を実施しないまま「実施済み」とされる。
【0089】
被水発生フラグに1がセットされた後は、ステップS52がNOとなり、ステップS57に進む。ステップS57では、PMセンサ18,19の両方で被水が解消されているか否かを判定する。つまり、PMセンサ18,19が被水状態から被水解消されると、各PMセンサ18,19において電極間抵抗が増加することから、PM検出電圧が減少側に変化する。ゆえに、両PMセンサ18,19においてPM検出電圧の減少変化が確認されれば、PMセンサ18,19の両方で被水が解消されていると判定される。被水解消が判定されることは、センサ異常有りと判定されることなく異常診断が完了したことを意味し、その後、ステップS62に進んで異常診断実施フラグに1をセットする。
【0090】
ステップS57がNOの場合には、ステップS58に進み、PMセンサ18,19のいずれか一方で、被水が解消されているか否かを判定する。これは、ステップS57と同様に、PM検出電圧Vpm(センサ出力)の減少変化に基づいて判定される。
【0091】
ステップS58がYESの場合、ステップS59に進み、時間差カウンタを1インクリメントする。時間差カウンタは、各PMセンサ18,19での被水解消タイミングの時間差を計測するものである。
【0092】
その後、ステップS60では、時間差カウンタの値が所定の異常判定値以上になったか否かを判定する。そして、カウンタ値<異常判定値であれば、そのまま本処理を一旦終了する。また、カウンタ値≧異常判定値であれば、ステップS61に進み、センサ異常が発生しているとして、センサ異常の発生情報をダイアグデータとしてEEPROM47に記憶する。その後、ステップS62では、異常診断実施フラグに1をセットする。
【0093】
ステップS61において、PMセンサ18,19のうちいずれで異常が発生しているかを特定する構成であってもよい。つまり、ステップS58では、両PMセンサ18,19のうち一方で被水解消したと判定され、その後他方のPMセンサで被水解消したと判定されない場合に異常有りと判定されるのであるから、被水解消したと判定されない方を異常センサと判断する。例えば、ステップS58で上流側PMセンサ18で被水解消したと判定され、その後、下流側PMセンサ19で被水解消したと判定されなければ、その下流側PMセンサ19が異常であると判定する。
【0094】
なお、ステップS57,S58が共にNOのまま継続され、その状態で所定時間が経過した場合には、その時点で両PMセンサ18,19について異常有りと判定する構成であってもよい。
【0095】
また、排気管14内にはエンジン11から高温の排気が流れ込むため、上流側PMセンサ18の方が、下流側PMセンサ19よりも被水解消のタイミングが早くなると考えられる。そこで、上流側PMセンサ18の被水解消タイミングと、下流側PMセンサ19の被水解消タイミングとを比較し、そのうち前者の方が後者よりも遅い場合に、センサ異常有りと判定することも可能である。
【0096】
図11は、本実施形態における異常診断処理をより具体的に説明するためのタイムチャートである。
【0097】
図11では、エンジン始動後において排気管14内に水が存在していることにより、各PMセンサ18,19に水が付着し(被水し)、水付着により電極間抵抗の変化によりセンサ出力(PM検出電圧Vpm)が共に増加している。この時のセンサ出力は、水の抵抗相当の出力範囲となっている。
【0098】
そしてその後、タイミングt11では、上流側PMセンサ18の被水解消に伴い、同センサ18のセンサ出力が減少側に変化し始める。これに伴い、時間差カウンタのインクリメントが開始される。
【0099】
その後、タイミングt12で、下流側PMセンサ19についても被水解消されると、それに伴い同センサ19のセンサ出力が減少側に変化し始める。このとき、時間差カウンタの値が異常判定値未満であれば、センサ異常有りと診断されることはない。これに対し、例えば下流側PMセンサ19において鉄粉など導電性の異物が付着する異常が生じたりすると、被水解消後に被水前のセンサ出力に復帰できない。そのため、センサ出力が復帰できないまま、時間差カウンタの値が異常判定値以上になると、センサ異常有りと診断される(タイミングt13)。
【0100】
以上第3の実施形態によれば、エンジン始動後にPMセンサ18,19が共に被水したと判定された後において、各PMセンサ18,19の被水解消タイミングを比較し、その比較結果に基づいてPMセンサ18,19の異常診断を実施する構成とした。これにより、フィルタ上流側及びフィルタ下流側のPMセンサ18,19について異常診断を好適に実施できることとなる。
【0101】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、PMフィルタ16によるPMの捕集率が低い状態であることを判定し、その低捕集率の状態で、上流側PMセンサ18の出力変化と下流側PMセンサ19の出力変化とに基づいてPMセンサ18,19の異常診断を実施するものである。
【0102】
図12は、本実施形態におけるPMセンサ異常診断処理を示すフローチャートであり、本処理はECU20内のマイコン44により所定周期で繰り返し実行される。
【0103】
図12では、まずステップS71〜S73において、今現在、PMフィルタ16によるPMの捕集率が低い状態にあるか否かを判定する。詳しくは、ステップS71では、図示しないフィルタ故障判定処理により、PMフィルタ16が故障状態にあると判定され、かつそのPM故障が、PM捕集率が低くなる故障であるか否かを判定する。また、ステップS72では、フィルタ再生処理の実施直後であるか否か、すなわちフィルタ再生処理の実施後、所定時間経過前であるか否かを判定する。ステップS73では、PMフィルタ16の上流側と下流側とを結ぶバイパス弁に設けられたバイパス弁が、開放状態にあるか否かを判定する。
【0104】
そして、ステップS71〜S73のいずれかがYESであれば、後続のステップS74に進み、全てNOであれば、そのまま本処理を一旦終了する。
【0105】
ステップS74に進んだ場合、同ステップS74では、上流側PMセンサ18及び下流側PMセンサ19のうちいずれか一方でのみ出力変化が生じている状態であるか否かを判定する。この場合、両方のPMセンサ18,19で出力変化が共に生じていれば、そのまま本処理を一旦終了し、一方でのみ出力変化が生じていれば、ステップS75に進む。
【0106】
ステップS75では、出力変化が生じているPMセンサが上流側PMセンサ18であるか否かを判定する。このとき、上流側PMセンサ18でのみ出力変化が生じていればステップS76に進み、下流側PMセンサ19でのみ出力変化が生じていればステップS79に進む。
【0107】
ステップS76では、第1カウンタC1を1インクリメントし、続くステップS77ではそのカウンタ値が所定値K1以上であるか否かを判定する。そして、C1≧K1であれば、ステップS78で下流側PMセンサ19が異常であると判定する。つまり、本来は、上流側及び下流側の各PMセンサ18,19で共に出力変化が生じる筈なのに、上流側PMセンサ18で出力変化が生じているが下流側PMセンサ19での出力変化が生じていない場合に、センサ異常であると判定する。この場合、下流側PMセンサ19の異常発生情報をダイアグデータとしてEEPROM47に記憶する。なお、第1カウンタC1を用いることで、上流側PMセンサ18から下流側PMセンサ19までの排気の輸送遅れを考慮した上で、正確に異常診断を実施できる。
【0108】
また、ステップS79では、第2カウンタC2を1インクリメントし、続くステップS80ではそのカウンタ値が所定値K2以上であるか否かを判定する。そして、C2≧K2であれば、ステップS81で上流側PMセンサ18が異常であると判定する。つまり、本来は、上流側及び下流側の各PMセンサ18,19で共に出力変化が生じる筈なのに、下流側PMセンサ19で出力変化が生じているが上流側PMセンサ18での出力変化が生じていない場合に、センサ異常であると判定する。この場合、上流側PMセンサ18の異常発生情報をダイアグデータとしてEEPROM47に記憶する。
【0109】
以上詳述した第4の実施形態によれば、PMフィルタ16によるPM捕集率が低い状態であると判定された場合に、各PMセンサ18,19の出力変化に基づいてPMセンサ18,19の異常診断を実施する構成とした。これにより、フィルタ上流側及びフィルタ下流側のPMセンサ18,19について異常診断を好適に実施できることとなる。
【0110】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、エンジン11からのPM排出量が少ない状態であることを判定し、その低PM排出の状態で、上流側PMセンサ18の出力変化と下流側PMセンサ19の出力変化とに基づいてPMセンサ18,19の異常診断を実施するものである。
【0111】
図13は、本実施形態におけるPMセンサ異常診断処理を示すフローチャートであり、本処理はECU20内のマイコン44により所定周期で繰り返し実行される。
【0112】
図13では、まずステップS91において、今現在、エンジン11からのPM排出量が少ない状態にあるか否かを判定する。具体的には、アイドル運転中である場合、又は燃料カット中である場合に、PM排出量が少ない状態にあると判定する。その他、エンジン回転速度や負荷等のエンジン運転状態に基づいてPM排出量を推定し、そのPM排出量(推定値)が所定以下である場合に、PM排出量が少ない状態にあると判定してもよい。そして、ステップS91がYESであればステップS92に進み、NOであればステップS98に進む。
【0113】
ステップS92に進んだ場合、ステップS92〜S94において、各PMセンサ18,19について出力変化の有無を判定する。詳しくは、ステップS92では、上流側PMセンサ18で出力変化が生じているか否かを判定し、ステップS92がYESの場合/NOの場合のそれぞれで、下流側PMセンサ19で出力変化が生じているか否かを判定する(ステップS93,S94)。
【0114】
このとき、上流側PMセンサ18及び下流側PMセンサ19の両方で出力変化が生じていれば(S92,S93が共にYES)、ステップS95に進み、エンジン11及びPMセンサ18,19のいずれかで異常が発生していると判定する。また、上流側PMセンサ18でのみ出力変化が生じていれば(S92がYES、S93がNO)、ステップS96に進み、上流側PMセンサ18で異常が発生していると判定する。下流側PMセンサ19でのみ出力変化が生じていれば(S92がNO、S94がYES)、ステップS97に進み、下流側PMセンサ19で異常が発生していると判定する。
【0115】
一方、ステップS91がNOとなり、ステップS98に進んだ場合には、上流側PMセンサ18の単位時間当たりの出力変化量(上流側出力変化量)と、下流側PMセンサ19の単位時間当たりの出力変化量(下流側出力変化量)とを比較し、上流側出力変化量≦下流側出力変化量であるか否かを判定する。そして、上流側出力変化量≦下流側出力変化量であれば、ステップS99に進み、PMセンサ18,19のいずれかが異常であると判定する。なお、上記の各異常判定による異常発生情報はダイアグデータとしてEEPROM47に逐次記憶される。
【0116】
以上詳述した第5の実施形態によれば、エンジン11からのPM排出量が少ない状態であると判定された場合に、各PMセンサ18,19の出力変化の有無に基づいてPMセンサ18,19の異常診断を実施する構成とした。この場合、低PM排出の状態下で異常診断を実施することで、その診断精度を高めることができる。また、2つのPMセンサ18,19のうちどちらで出力変化があるかを判定することにより、異常発生しているPMセンサの特定が可能となる。
【0117】
また、仮に低PM排出の状態でなくても、上流側出力変化量≦下流側出力変化量となることはあり得ないため、それら出力変化量の比較によっても、センサ異常診断を好適に実施できる。
【0118】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0119】
・上記第1の実施形態では、上流側PMセンサ18と下流側PMセンサ19とについてセンサ再生処理を同時に実施する構成としたが、これを変更し、各々異なるタイミングでセンサ再生処理を実施する構成としてもよい。具体的には、上流側PMセンサ18により検出されるPM付着量が所定量に達した場合に、その上流側PMセンサ18の再生処理(PM強制燃焼)を実施し、下流側PMセンサ19により検出されるPM付着量が所定量に達した場合に、その下流側PMセンサ19の再生処理(PM強制燃焼)を実施する。
【0120】
そして、かかる構成において、上流側PMセンサ18について再生処理が実施されてから次に再生処理要求(燃焼要求)が出されるまでの時間間隔TB1と、下流側PMセンサ19について再生処理が実施されてから次に再生処理要求(燃焼要求)が出されるまでの時間間隔TB2とをそれぞれ算出し、それら時間間隔TB1,TB2に基づいてPMセンサ18,19の異常診断を実施する。この場合、TB1>TB2であれば、PMセンサ18,19のいずれかに異常が発生していると判定する。
【0121】
なお、上記のように再生処理要求(燃焼要求)が出されるまでの時間間隔TB1,TB2をそれぞれ算出する構成では、下流側PMセンサ19についての再生処理要求が出されるまで、異常診断を実施できない。その点、第1の実施形態の構成(図4の構成)によれば、上流側PMセンサ18の再生処理の実施周期で異常診断を実施できる。ゆえに、実施頻度の上で第1の実施形態の構成の方が望ましいと言える。
【0122】
・上記第1の実施形態では、センサ再生処理を実施する際の再生所要時間を、ヒータ通電開始からPM検出電圧Vpm1,Vpm2がそれぞれ所定値(0V)に達するまでの時間で計測する構成としたが、これを以下のように変更する。その変形例を図14のタイムチャートを用いて説明する。図14では、タイミングt21で、センサ再生処理が開始され、それに伴い各PMセンサ18,19のヒータ通電が開始される。このとき、PM自体が、温度に対して抵抗値が変化する温度特性を有しているため、PMの温度上昇により電極間抵抗が小さくなり、それに伴い各センサ出力が上昇する。そして、各センサ出力が出力上限値(例えば5V)に張り付いた状態となる。
【0123】
そしてその後、実際にPMが燃焼し始めると、各センサ出力が降下し始める。このとき、各々のセンサ出力が降下し始めるタイミング(図のt22,t23)は、PM燃焼の所要時間に対応するものであるため、そのセンサ出力の降下タイミングにより、各PMセンサ18,19の異常診断を実施できる。具体的には、各PMセンサ18,19の正常時には、下流側PMセンサ19のセンサ出力降下が先のタイミング(t22)、上流側PMセンサ18のセンサ出力降下が後のタイミング(t23)となる。これに対し、いずれかのPMセンサ18,19の異常時には、上流側PMセンサ18のセンサ出力降下が先のタイミング(t23)、下流側PMセンサ19のセンサ出力降下が後のタイミング(t24)となる。このようにセンサ出力の降下タイミングに基づいてPMセンサ18,19の異常の有無を判定できる。
【0124】
・上記第3の実施形態では、エンジン11の運転停止時に各PMセンサ18,19においてセンサ再生処理(PM強制燃焼処理)を実施し、エンジン始動時には各PMセンサ18,19でのPM付着量がゼロ又は微量となっていることを前提としているが、これを変更してもよい。例えば、エンジン始動時において、各PMセンサ18,19のセンサ出力が、水の抵抗相当の値よりも小さいことを異常診断の実行条件とする。この場合、エンジン始動時において、各PMセンサ18,19が被水したこと、及び被水解消したことの判定が可能となるため、異常診断を実施できる。
【0125】
・上記実施形態では、直噴式ガソリンエンジンについての適用を例示したが、他の形式のエンジンにも適用できる。例えば、ディーゼルエンジン(特に、直噴式ディーゼルエンジン)に適用することとし、ディーゼルエンジンの排気管に設けられたPMセンサについて本発明を用いることも可能である。また、エンジンの排気以外のガスを対象としてPM量を検出するものであってもよい。
【符号の説明】
【0126】
11…エンジン(内燃機関)、14…排気管、16…PMフィルタ(フィルタ装置)、18,19…PMセンサ(粒子状物質検出センサ)、20…ECU、44…マイコン(第1燃焼手段、第2燃焼手段、第1燃焼要求手段、第2燃焼要求手段、異常判定手段、フィルタ再生手段、判定禁止手段、判定値変更手段、燃焼制御手段、被水判定手段、第1被水解消判定手段、第2被水解消判定手段、捕集率判定手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気管に、前記内燃機関の排気中に含まれる導電性の粒子状物質を捕集するフィルタ装置が設けられるとともに、そのフィルタ装置の上流側及び下流側に、前記粒子状物質を付着させてその付着量を検出する粒子状物質検出センサとして上流側センサ及び下流側センサがそれぞれ設けられるシステムに適用され、
前記上流側センサに付着している粒子状物質を、該上流側センサに設けられているヒータの加熱により燃焼させる第1燃焼手段と、
前記下流側センサに付着している粒子状物質を、該下流側センサに設けられているヒータの加熱により燃焼させる第2燃焼手段と、
前記上流側センサにより検出される粒子状物質の付着量が、前記第1燃焼手段により粒子状物質を燃焼させるための実施基準値に達した場合に、前記上流側センサについての燃焼要求を出す第1燃焼要求手段と、
前記下流側センサにより検出される粒子状物質の付着量が、前記第2燃焼手段により粒子状物質を燃焼させるための実施基準値に達した場合に、前記下流側センサについての燃焼要求を出す第2燃焼要求手段と、
前記第1燃焼手段による燃焼実施後において前記第1燃焼要求手段により出される燃焼要求と、前記第2燃焼手段による燃焼実施後において前記第2燃焼要求手段により出される燃焼要求とに基づいて、前記上流側センサ及び前記下流側センサについて異常の有無を判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とするセンサ制御装置。
【請求項2】
前記フィルタ装置に捕集された粒子状物質を燃焼により除去するフィルタ再生処理を実施するフィルタ再生手段と、
前記フィルタ再生処理の実施後において所定時間が経過するまでは、前記異常判定手段による前記燃焼要求に基づく異常判定を禁止する判定禁止手段と、
を備える請求項1に記載のセンサ制御装置。
【請求項3】
前記第1燃焼要求手段により燃焼要求が出された場合、及び前記第2燃焼要求手段により燃焼要求が出された場合のいずれかで、前記第1燃焼手段及び前記第2燃焼手段により前記上流側センサ及び前記下流側センサについて同時に粒子状物質の燃焼を実施するものであり、
前記異常判定手段は、前記第1燃焼要求手段による燃焼要求が、前記第2燃焼要求手段による燃焼要求よりも先に出され、かつ前記第1燃焼要求手段により燃焼要求が出た時の前記上流側センサによる粒子状物質の検出量と前記下流側センサによる粒子状物質の検出量との差が、所定の異常判定値よりも小さい場合に異常有りと判定するものであり、
前記フィルタ装置に捕集された粒子状物質を燃焼により除去するフィルタ再生処理を実施するフィルタ再生手段と、
前記フィルタ再生処理の実施後において所定時間が経過するまでは、それ以外の期間と比べて前記異常判定値を小さくする判定値変更手段と、
を備える請求項1又は2に記載のセンサ制御装置。
【請求項4】
内燃機関の排気管に、前記内燃機関の排気中に含まれる導電性の粒子状物質を捕集するフィルタ装置が設けられるとともに、そのフィルタ装置の上流側及び下流側に、前記粒子状物質を付着させてその付着量を検出する粒子状物質検出センサとして上流側センサ及び下流側センサがそれぞれ設けられるシステムに適用され、
前記上流側センサにより検出される粒子状物質の付着量、及び前記下流側センサにより検出される粒子状物質の付着量のいずれかが所定量に達した場合に、前記上流側センサ及び前記下流側センサに付着している前記粒子状物質をそれら各センサに設けられているヒータの加熱により同時に燃焼させる燃焼制御手段と、
前記燃焼制御手段により前記粒子状物質が燃焼される場合に、前記上流側センサに付着している粒子状物質の燃焼に要する所要時間と、前記下流側センサに付着している粒子状物質の燃焼に要する所要時間とを比較し、その比較結果に基づいて前記上流側センサ及び前記下流側センサについて異常の有無を判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とするセンサ制御装置。
【請求項5】
前記フィルタ装置に捕集された粒子状物質を燃焼により除去するフィルタ再生処理を実施するフィルタ再生手段と、
前記フィルタ再生処理の実施後において所定時間が経過するまでは、前記異常判定手段による前記所要時間に基づく異常判定を禁止する判定禁止手段と、
を備える請求項4に記載のセンサ制御装置。
【請求項6】
前記異常判定手段は、前記上流側センサ及び前記下流側センサにおいて前記燃焼に要する所要時間の時間差が、所定の異常判定値よりも小さい場合に異常有りと判定するものであり、
前記フィルタ装置に捕集された粒子状物質を燃焼により除去するフィルタ再生処理を実施するフィルタ再生手段と、
前記フィルタ再生処理の実施後において所定時間が経過するまでは、それ以外の期間と比べて前記異常判定値を小さくする判定値変更手段と、
を備える請求項4又は5に記載のセンサ制御装置。
【請求項7】
内燃機関の排気管に、前記内燃機関の排気中に含まれる導電性の粒子状物質を捕集するフィルタ装置が設けられるとともに、そのフィルタ装置の上流側及び下流側に、前記粒子状物質を付着させてその付着量を検出する粒子状物質検出センサとして上流側センサ及び下流側センサがそれぞれ設けられるシステムに適用され、
前記内燃機関の始動後に前記上流側センサ及び前記下流側センサが共に被水したことを判定する被水判定手段と、
前記被水判定手段により両センサの被水が判定された後において、前記上流側センサのセンサ出力に基づいて該上流側センサの被水が解消されたタイミングを判定する第1被水解消判定手段と、
前記被水判定手段により両センサの被水が判定された後において、前記下流側センサのセンサ出力に基づいて該下流側センサの被水が解消されたタイミングを判定する第2被水解消判定手段と、
前記第1被水解消判定手段により判定された被水解消のタイミングと、前記第2被水解消判定手段により判定された被水解消のタイミングとに基づいて前記上流側センサ及び前記下流側センサについて異常の有無を判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とするセンサ制御装置。
【請求項8】
内燃機関の排気管に、前記内燃機関の排気中に含まれる導電性の粒子状物質を捕集するフィルタ装置が設けられるとともに、そのフィルタ装置の上流側及び下流側に、前記粒子状物質を付着させてその付着量を検出する粒子状物質検出センサとして上流側センサ及び下流側センサがそれぞれ設けられるシステムに適用され、
前記フィルタ装置による前記粒子状物質の捕集率が低い状態であることを判定する捕集率判定手段と、
前記捕集率判定手段により前記フィルタ装置が低捕集率の状態であると判定された場合に、前記上流側センサの出力変化と前記下流側センサの出力変化とに基づいて、前記上流側センサ及び前記下流側センサについて異常の有無を判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とするセンサ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−77668(P2012−77668A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222593(P2010−222593)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】