タイヤの製造方法及びタイヤ
【課題】樹脂材料を用いて形成されたタイヤ骨格部材の外周面に対して補強コード部材を凹凸が発生しないように配設できるようにする。
【解決手段】タイヤ骨格部材半体17Aの製造には、タイヤ外面側を成形する外金型42と、タイヤ内面側を成形する内金型44とを有する金型40を用いる。補強コード部材配設工程では、金型40を開き、外金型42におけるタイヤ骨格部材半体17Aの外周部を成形する部位に円筒形状の被覆コード部材26を配設する。この際、被覆コード部材26を外金型42に形成された凹部42Aに配設する。
【解決手段】タイヤ骨格部材半体17Aの製造には、タイヤ外面側を成形する外金型42と、タイヤ内面側を成形する内金型44とを有する金型40を用いる。補強コード部材配設工程では、金型40を開き、外金型42におけるタイヤ骨格部材半体17Aの外周部を成形する部位に円筒形状の被覆コード部材26を配設する。この際、被覆コード部材26を外金型42に形成された凹部42Aに配設する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造方法及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車等の車両には、ゴム、有機繊維材料、スチール部材などから構成された空気入りタイヤが用いられている。
近年では、軽量化や、成形の容易さ、リサイクルのし易さから、樹脂材料、特に熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性材料をタイヤ材料として用いることが求められている。
例えば、特許文献1には、熱可塑性の高分子材料を用いて成形された空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03−143701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空気入りタイヤでは、熱可塑性の高分子材料を用いて成形された環状のタイヤ骨格部材の外周面に補強層を配設し、この補強層の上にトレッドゴムを配設している。
【0005】
ここで、補強層をタイヤ骨格部材の外周部に配設する方法としては、樹脂材料で補強コードを被覆して構成された被覆コード部材をタイヤ骨格部材の周方向に巻き付ける方法が考えられる。
【0006】
しかしながら、このような方法ではタイヤ骨格部材の外周面と被覆コード部材の外周面とにタイヤ径方向の段差(凹凸)が発生する。この結果、タイヤ骨格部材の外周面に後工程においてPCT(Pre-Cured Tread)等のタイヤ構成ゴム部材を接着するために必要なバフ等の粗化処理を行った際に、前記段差部(凹部)に処理粉が残る。このため、タイヤ構成ゴム部材の接着力が低下する。
【0007】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、樹脂材料を用いて形成されたタイヤ骨格部材の外周面に対して補強コード部材を凹凸が発生しないように配設できるタイヤの製造方法及びタイヤを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のタイヤの製造方法は、環状のタイヤ骨格部材を形成する成形型の円弧状の内周面にタイヤ周方向に沿って補強コード部材を配設する補強コード部材配設工程と、補強コード部材が配置された前記成形型の内部に樹脂材料を入れ環状のタイヤ骨格部材を形成するタイヤ骨格部材製造工程と、を備える。
【0009】
請求項1のタイヤの製造方法によれば、補強コード部材配設工程において、環状のタイヤ骨格部材を形成する成形型の円弧状の内周面にタイヤ周方向に沿って補強コード部材を配設する。次いで、タイヤ骨格部材製造工程において、補強コード部材が配置された成形型の内部に樹脂材料を入れ環状のタイヤ骨格部材を形成する。このため、成形後のタイヤ骨格部材の外周面に、樹脂材料で補強コードを被覆して構成された被覆コード部材を巻き付ける場合のようにタイヤ骨格部材の外周面と被覆コード部材の外周面とにタイヤ径方向の段差が発生することがない。この結果、樹脂材料を用いて形成された環状のタイヤ骨格部材の外周面に対して補強コード部材を凹凸が発生しないように配設できる。
【0010】
請求項2のタイヤの製造方法は、請求項1に記載のタイヤの製造方法において、前記補強コード部材は、タイヤ幅方向に隣接する補強コードが樹脂材料で一体とされたベルト部材である。
【0011】
請求項2のタイヤの製造方法によれば、補強コード部材が、タイヤ幅方向に隣接する補強コードが樹脂材料で一体とされたベルト部材であるため、環状のタイヤ骨格部材を形成する成形型の内部に補強コード部材を容易に配設することができ、製造が容易になる。
【0012】
請求項3のタイヤの製造方法は、請求項1に記載のタイヤの製造方法において、前記補強コード部材は、タイヤ幅方向に隣接して配置された補強コードである。
【0013】
請求項3のタイヤの製造方法によれば、補強コード部材が、タイヤ幅方向に隣接して配置された補強コードであるため、前工程において補強コードを樹脂材料で被覆する必要がなく製造工程数を少なくすることができる。
【0014】
請求項4のタイヤは、円弧状の内周面にタイヤ周方向に沿って補強コード部材が配置された成形型の内部に樹脂材料を入れて形成された環状のタイヤ骨格部材を備えている。
【0015】
請求項4のタイヤによれば、円弧状の内周面にタイヤ周方向に沿って補強コード部材が配置された成形型の内部に樹脂材料を入れて形成された環状のタイヤ骨格部材を備えているので、タイヤ骨格部材の外周面と被覆コード部材の外周面とにタイヤ径方向の段差がない。この結果、樹脂材料を用いて形成されたタイヤ骨格部材の外周面に対して補強コード部材を凹凸が発生しないように配設できる。
【0016】
請求項5のタイヤは、請求項4に記載のタイヤにおいて、前記補強コード部材は、タイヤ幅方向に隣接する補強コードが樹脂材料で一体とされたベルト部材である。
【0017】
請求項5のタイヤによれば、補強コード部材が、タイヤ幅方向に隣接する補強コードが樹脂材料で一体とされたベルト部材であることから、環状のタイヤ骨格部材を形成する成形型の内部に補強コード部材を容易に配設することができ、製造が容易になる。
【0018】
請求項6のタイヤは、請求項4に記載のタイヤにおいて、前記補強コード部材は、タイヤ幅方向に隣接して配置された補強コードである。
【0019】
請求項6のタイヤによれば、補強コード部材が、タイヤ幅方向に隣接して配置された補強コードであるため、前工程において補強コードを樹脂材料で被覆する必要がなく製造工程数を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明のタイヤの製造方法及びタイヤは上記構成としたので、樹脂材料を用いて形成されたタイヤ骨格部材の外周面に対して補強コード部材を凹凸が発生しないように配設できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A)は本発明における第1実施形態のタイヤの一部を示すタイヤ幅方向に沿った断面斜視図である。(B)は本発明における第1実施形態のタイヤにリムを嵌合させた状態のビード部のタイヤ幅方向に沿った拡大断面斜視図である。
【図2】本発明における第1実施形態のタイヤにおける補強層の周囲を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
【図3】本発明における第1実施形態の補強コード部材を示す斜視図である。
【図4】本発明における第1実施形態で用いる金型の内部に補強コード部材を配設した状態を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
【図5】本発明における第1実施形態で用いる金型の内部に樹脂材料を流し込んだ状態を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
【図6】本発明における第1実施形態で用いる成形機を示す斜視図である。
【図7】本発明における第1実施形態において押出機を用いてタイヤ骨格部材半体の接合部に溶接用熱可塑性材料を付着させる動作を説明するための押出機を示す斜視図である。
【図8】本発明における第1実施形態においてブラスト装置を用いてタイヤ骨格部材の外周面に粗化処理を行なっている状態を示す斜視図である。
【図9】本発明における第2実施形態で用いる金型の内部に補強コード部材を配設した状態を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
【図10】本発明における第2実施形態のタイヤの補強層の周囲を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
【図11】本発明におけるその他の実施形態としてのチューブ型タイヤを示すタイヤ幅方向に沿った断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、図面にしたがって本発明のタイヤの製造方法及びタイヤの第1実施形態について説明する。
【0023】
図1(A)に示すように、本実施形態のタイヤの製造方法で製造されるタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。なお、以下の説明において、「幅方向」と記載した場合は、タイヤ骨格部材17及びタイヤ10の幅方向を指し、「周方向」と記載した場合は、タイヤ骨格部材17及びタイヤ10の周方向を指す。
【0024】
図1(A)及び(B)に示すように、タイヤ10は、リム20のビードシート21及びリムフランジ22に接触する一対のビード部12、このビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16からなる環状のタイヤ骨格部材17(タイヤ骨格部材の一例)を備えている。
【0025】
タイヤ骨格部材17は、単一の樹脂材料で形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと同様に、タイヤ骨格部材17の各部位毎(ビード部12、サイド部14、クラウン部16など)に異なる特徴を有する樹脂材料を用いてもよい。
【0026】
また、タイヤ骨格部材17(例えば、ビード部12、サイド部14、クラウン部16等)に、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置し、補強材でタイヤ骨格部材17を補強してもよい。
【0027】
樹脂材料としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができる。なお、樹脂材料には、加硫ゴムは含まれない。
【0028】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0029】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0030】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。なお、走行時に必要とされる弾性と製造時の成形性等を考慮すると熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
【0031】
また、樹脂材料の同種とは、エステル系同士、スチレン系同士などの形態を指す。
【0032】
これらの樹脂材料としては、例えば、ISO75−2又はASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が78°C以上、JIS K7113に規定される引張降伏強さが10MPa以上、同じくJIS K7113に規定される引張降伏伸びが10%以上、同じくJIS K7113に規定される引張破壊伸び(JIS K7113)が50%以上、JIS K7206に規定されるビカット軟化温度(A法)が130°C以上のものを用いることができる。
【0033】
本実施形態のビード部12には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、スチールコードからなる円環状のビードコア18が埋設されている。しかし、本発明はこの構成に限定されず、ビードコア18は、スチールコード以外に、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、または硬質樹脂などで形成されていてもよい。また、ビード部12の剛性が確保され、リム20との嵌合に問題なければ、ビードコア18を省略してもよい。
【0034】
また、図1(B)に示すように、本実施形態では、ビード部12のリム20との接触部分、少なくともリム20のリムフランジ22と接触する部分にタイヤ骨格部材17を形成する樹脂材料よりも軟質である軟質材料からなる円環状のシール層24が形成されている。このシール層24はビードシート21と接触する部分にも形成されていてもよい。
【0035】
シール層24を形成する上記軟質材料としては、弾性体の一例としてのゴムが好ましく、特に従来一般のゴム製の空気入りタイヤのビード部外面に用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、タイヤ骨格部材17を形成する樹脂材料のみでリム20との間のシール性(気密性)が確保できれば、シール層24を省略してもよい。また、上記軟質材料としては、タイヤ骨格部材17を形成する樹脂材料よりも軟質な他の種類の樹脂材料を用いてもよい。
【0036】
図2に示すように、タイヤ骨格部材17のクラウン部16には、補強コード部材(ベルト部材)としての被覆コード部材26で構成された補強層28が積層されている。この補強層28は、タイヤ骨格部材17の外周部を構成し、クラウン部16の周方向剛性を補強している。
【0037】
被覆コード部材26は、タイヤ骨格部材17を形成する樹脂材料よりも剛性が高い補強コード26Aにタイヤ骨格部材17を形成する樹脂材料とは別体の被覆用樹脂材料27を被覆して形成されている。また、被覆コード部材26はクラウン部16との接触部分において、被覆コード部材26とクラウン部16とが接合(例えば、溶接、又は接着剤で接着)されている。
【0038】
また、被覆用樹脂材料27のヤング率は、タイヤ骨格部材17を形成する樹脂材料のヤング率の0.1倍から10倍の範囲内に設定することが好ましい。これは、ヤング率が10倍以下の場合は、リム組み性に問題がないが、11倍を超えるとクラウン部16が硬くなり、リム組みし難くなるからである。一方、ヤング率が0.1倍以下では、柔らか過ぎて補強層28によるベルト面内せん断剛性が低下してコーナリング力が低下してしまうからである。
【0039】
なお、本実施形態では、被覆用樹脂材料27を樹脂材料のうちの熱可塑性材料(例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなど)としている。
【0040】
補強コード26Aは、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)などを用いるとよい。
【0041】
なお、以下では、被覆コード部材26の上面(タイヤ径方向外側の面)を符号26Uで示し、下面(タイヤ径方向内側の面)を符号26Dで示す。
【0042】
図2に示すように、被覆コード部材26の補強コード26Aは、周方向に間隔をあけて配置されている。
【0043】
タイヤ骨格部材17の外周面17Sには、微細な粗化凹凸96が均一に形成され、その上に接合剤を介して、クッションゴム29が接合されている。このクッションゴム29は、径方向内側のゴム部分が粗化凹凸96に流れ込んでいる。
【0044】
また、クッションゴム29の上(外周面)にはタイヤ骨格部材17を形成している樹脂材料よりも耐摩耗性に優れた材料、例えばゴムからなるトレッド30が接合されている。
【0045】
なお、トレッド30に用いるゴム(トレッドゴム30A)は、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。また、トレッド30の代わりに、タイヤ骨格部材17を形成する樹脂材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の樹脂材料で形成したトレッドを用いてもよい。また、トレッド30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターン(図示省略)が形成されている。
【0046】
次に、本実施形態のタイヤの製造方法について説明する。
(補強コード製造工程)
図3には、本実施形態の被覆コード部材26が斜視図にて示されている。
図3に示される如く、被覆コード部材26は、リング状とされた複数の補強コード26A又はスパイラル(螺旋)状の補強コード26Aを被覆用樹脂材料27で被覆して円筒状のベルト部材とする。この際、予め被覆用樹脂材料27で被覆した補強コード26Aをドラム状部材の外周部に巻き付け隣接する被覆用樹脂材料27同士を溶着や接着によって結合してもよい。
【0047】
なお、本実施形態では、タイヤ骨格部材半体17Aに対応する幅の被覆コード部材26を製造するが、タイヤ骨格部材17に対応する広幅の被覆コード部材26を製造してもよい。
【0048】
(補強コード部材配設工程)
本実施形態では、射出成形によって図6に示すようなタイヤ骨格部材半体17Aを形成し、その後、2つのタイヤ骨格部材半体17Aを互いに向かい合わせてタイヤセンターで接合する。
【0049】
タイヤ骨格部材半体17Aの製造には、図4に示すような成形型としての金型40を用いる。この金型40は、ビード部12(図1参照)からタイヤセンターCL(図1参照)までを構成するタイヤ骨格部材半体17Aを成形することができるように、タイヤ外面側を成形する外金型42と、タイヤ内面側を成形する内金型44とを有する。
【0050】
補強コード部材配設工程では、金型40を開き、外金型42の円弧状の内周面、即ち、外金型42におけるタイヤ骨格部材半体17Aの外周部を成形する部位に形成した凹部42Aに図3に示す円筒状の被覆コード部材26を配設する。
【0051】
(タイヤ骨格部材製造工程)
図4に示すように、内金型44にはビードコア固定用の治具46が、予め設定された位置に設けられている。また、外金型42と内金型44との間には、タイヤ骨格部材半体17Aの形状のキャビティS(空間)が形成されている。
【0052】
ビードコア固定用の治具46には、ビードコア18の寸法に応じた凹部47が形成されており、ビードコア18が金型40内に配置されたときには、ビードコア18の一部がこの凹部47に入ってタイヤ内側から支えられた状態となる。この結果、ビードコア18は、タイヤ内側方向への移動が規制されるとともに上下方向(タイヤ径方向)の移動も規制された状態となる。治具46は、本実施形態では、ビードコア収容位置に沿って均等間隔で12個配置されている。
【0053】
なお、治具46はマグネット材で形成することにより、ビードコア18をスチール等の磁性体で形成した場合には、磁力により接着させて確実に固定することができる。
【0054】
また、金型40のゲート(樹脂注入路)48は、ビードコア18が凹部47に入った状態でビードコア18のタイヤ外側を溶融状態の熱可塑性高分子材料が通過するように、形成されている。熱可塑性高分子材料は、例えば熱可塑性エラストマー(TPE)や熱可塑性樹脂である。
【0055】
ゲート48はリング状に開口したディスクゲートであり、キャビティSはリング状のゲート48に連通して中空円盤状に広がるように形成されている。なお、ゲート48はピンゲートであってもよいが、成形性の観点で、このようにディスクゲートのほうが好ましい。
【0056】
ビードコア18のタイヤ内側部を治具46の凹部47に入れ、金型40を閉じる。そして、図5に示すように、ゲート48から溶融した熱可塑性材料を金型40内に注入して射出成形してタイヤ骨格部材半体17Aを形成する。
【0057】
なお、この注入の際、治具46が設けられた位置では、熱可塑性材料は、ゲート48からビードコア18と外金型42との間を経由するように注入されるので、ビードコア18がタイヤ外側からタイヤ内側に向けて押圧される。従って、ビードコア18が受ける移動力を治具46で充分に支えることができる。よって、ビードコア18の位置ずれを防止するための治具46をビードコア18にタイヤ外側から当接させない状態にして、溶融した熱可塑性材料を注入することが可能になる。
【0058】
その後、金型40内からタイヤ骨格部材半体17Aを取り出す。これにより、図6に示すタイヤ骨格部材半体17Aが形成される。
【0059】
(タイヤ骨格形成工程)
図6に示すように、成形機80は、水平に配置された軸80Aと、この軸80Aを回転させるギヤ付きモータ80Bと、床面に接地されてギヤ付きモータ80Bを支持する台座80Cと、を有している。
【0060】
軸80Aの端部側には、樹脂材料を用いて形成されたタイヤ骨格部材17を支持するためのタイヤ支持部82が設けられている。タイヤ支持部82は、軸80Aに固定されたシリンダブロック82Aを有し、シリンダブロック82Aには、径方向外側に延びる複数のシリンダロッド82Bが周方向に等間隔に設けられている。
【0061】
シリンダロッド82Bの先端には、外面がタイヤ骨格部材17内面の曲率半径と略同等に設定された円弧曲面82Cを有するタイヤ支持片82Dが設けられている。図6はシリンダロッド82Bの突出量が最も大きい状態を示している。なお、各シリンダロッド82Bは、連動して同一方向に同一量突出可能となっている。
【0062】
従って、成形機80のタイヤ支持部82の径を縮小し、その外周側に、互いに向かい合わせに突き当てた2つのタイヤ骨格部材半体17Aを配置する。また、2つのタイヤ骨格部材半体17Aの内部に、薄い金属板(例えば、厚さ0.5mmの鋼板)からなる筒状のタイヤ内面支持リング83を配置する(図6では、内部を見せるために一方のタイヤ骨格部材半体17Aを外して記載されている)。
【0063】
タイヤ内面支持リング83の外径は、タイヤ骨格部材半体17Aの外周部分の内径と略同一寸法に設定されており、タイヤ内面支持リング83の外周面が、タイヤ骨格部材半体17Aの外周部分の内周面に密着するようになっている。これにより、タイヤ支持片82D間の隙間によりタイヤ支持部82の外周に生じる凹凸に起因する接合部分(溶接用熱可塑性材料53)の凸凹(前記凹凸の逆形状)の発生を抑制することができる。また、タイヤ支持片82D間の隙間によって配置部材(タイヤ骨格部材17、トレッド30、その他のタイヤ構成部材(例えば、補強層など))に凹凸が発生するのを抑制することができる。つまり、配置部材を配置する際に作用させる力(テンションや押圧力など)で配置部材のタイヤ支持片82D間の隙間に対応した部位に凹凸が発生するのを抑制することができる。なお、タイヤ内面支持リング83は薄い金属板で形成されているため、曲げ変形させてタイヤ骨格部材半体17Aの内部に容易に挿入可能である。
【0064】
そして、タイヤ支持部82の径を拡大してタイヤ内面支持リング83を複数のタイヤ支持片82Dで内側から保持する。
【0065】
成形機80の近傍には、図7に示すように、タイヤ骨格部材17が複数に分割されて形成された場合に、これら分割体を一体化するために用いる溶接用熱可塑性材料を押し出す押出機90が配置されている(なお、本実施形態では、左右半割りのタイヤ骨格部材半体17Aを溶接一体化してタイヤ骨格部材17を形成している)。この押出機90は溶融した溶接用熱可塑性材料53を下方に向けて吐出するノズル90Aを有している。このノズル90Aの出口部は略矩形状とされており、断面形状が略矩形状とされた帯状の溶接用熱可塑性材料53を吐出する。
【0066】
また、ノズル90Aの近傍には、タイヤ骨格部材17のタイヤ骨格部材半体17Aに付着させた溶接用熱可塑性材料53を押圧して均す均しローラ90B、及び均しローラ90Bをタイヤ骨格部材17に対して接離する方向に移動させるシリンダ装置90Cが配置されている。なお、シリンダ装置90Cは、図示しないフレームを介して押出機90の支柱52に支持されている。また、この押出機90は、床面に配置されたガイドレール54に沿って、成形機80の軸80Aと平行な方向に移動可能となっている。
【0067】
従って、押出機90を移動して、タイヤ骨格部材半体17Aの突き当て部分の上方にノズル90Aを配置する。そして、タイヤ支持部82を矢印R方向に回転させながら、ノズル90Aから溶融した溶接用熱可塑性材料53を接合部位に向けて押し出し、接合部位に沿って溶融した溶接用熱可塑性材料53を付着させる。付着した溶接用熱可塑性材料53は、下流側に配置した均しローラ90Bによって平らに均されると共に、両方のタイヤ骨格部材半体17Aの外周面に溶着する。溶接用熱可塑性材料53は自然冷却により次第に固化し、一方のタイヤ骨格部材半体17Aと他方のタイヤ骨格部材半体17Aとが溶接用熱可塑性材料53によって溶接され、これらの部材が一体となってタイヤ骨格部材17が形成される。
【0068】
(粗化処理工程)
次に、図8に示すように、押出機90を退避させて、ブラスト装置100をタイヤ支持部82の近傍に配置する。そして、ブラストガン102をタイヤ骨格部材17の外周面17Sに向け、タイヤ骨格部材17側を回転(矢印R方向)させながら、外周面17Sへ投射材104を高速度で射出する。射出された投射材104は、外周面17Sに衝突し、この外周面17Sに算術平均粗さRaが0.05mm以上となる微細な粗化凹凸96を形成する(図2参照)。なお、タイヤ骨格部材17側を回転させる代わりにブラストガン102側をタイヤ骨格部材17の周方向周りに回転させてもよい。
【0069】
このようにして、タイヤ骨格部材17の外周面17Sに微細な粗化凹凸96が形成されることで、外周面17Sが親水性となり、後述する接合剤の濡れ性が向上する。
【0070】
また、粗化処理する範囲は、タイヤ構成ゴム部材としての後述するクッションゴム29が積層される範囲と同じ、又は、クッションゴム29が積層される範囲よりも広い範囲とすることが好ましい。これにより、クッションゴム29は、全面的に粗化処理されて親密性が良好となった範囲に積層されるため、クッションゴム29とタイヤ骨格部材17との接合強度が確保される。
【0071】
(積層工程)
次に、粗化処理を行なったタイヤ骨格部材17の外周面17Sに接合剤を塗布する。
なお、接合剤としては、トリアジンチオール系接着剤、塩化ゴム系接着剤、フェノール系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、ハロゲン化ゴム系接着剤など、特に制限はないが、クッションゴム29が加硫できる温度(90°C〜140°C)で反応することが好ましい。
【0072】
次に、接合剤が塗布された外周面17Sに未加硫状態のクッションゴム29を1周分巻き付け、そのクッションゴム29の上に例えば、ゴムセメント組成物などの接合剤を塗布し、その上に加硫済み又は半加硫状態のトレッドゴム30Aを1周分巻き付けて、生タイヤ骨格部材状態とする。
【0073】
なお、加硫済みとは、最終製品として必要とされる加硫度に至っている状態をいい、半加硫状態とは、未加硫の状態よりは加硫度が高いが、最終製品として必要とされる加硫度に至っていない状態をいう。
【0074】
(加硫工程)
次に生タイヤ骨格部材を加硫缶やモールドに収容して加硫する。このとき、粗化処理によってタイヤ骨格部材17の外周面17Sに形成された粗化凹凸96に未加硫のクッションゴム29が流れ込む。そして、加硫が完了すると、粗化凹凸96に流れ込んだクッションゴム29により、アンカー効果が発揮されて、タイヤ骨格部材17とクッションゴム29との接合強度が向上する。すなわち、クッションゴム29を介してタイヤ骨格部材17とトレッド30との接合強度が向上する。
【0075】
そして、タイヤ骨格部材17のビード部12に、樹脂材料よりも軟質である軟質材料からなるシール層24(図1参照)を、接着剤等を用いて接着すれば、タイヤ10の完成となる。
【0076】
最後に、タイヤ支持部82の径を縮小し、完成したタイヤ10をタイヤ支持部82から取り外し、内部のタイヤ内面支持リング83を曲げ変形させてタイヤ外へ取り外す。
【0077】
(作用)
以上説明したように、本実施形態では、補強コード部材配設工程において、金型40を開き、外金型42の円弧状の内周面、即ち、外金型42におけるタイヤ骨格部材半体17Aの外周部を成形する部位に形成した凹部42Aに被覆コード部材26を配設する。次いで、タイヤ骨格部材製造工程において、被覆コード部材26が配置された成形型40の内部に樹脂材料を入れ環状のタイヤ骨格部材半体17Aを形成する。このため、成形後のタイヤ骨格部材17の外周面17Sに、樹脂材料で補強コードを被覆して構成された被覆コード部材を巻き付ける場合のように、隣接する被覆コード部材間におけるタイヤ骨格部材17の外周面17Sと、被覆コード部材の外周面と、にタイヤ径方向の段差(凹凸)が発生することがない。即ち、隣接する被覆コード部材の間に凹部が発生することがない。この結果、樹脂材料を用いて形成された環状のタイヤ骨格部材17の外周面17Sに、被覆コード部材26を凹凸が発生しないように配設できる。
【0078】
これにより、タイヤ骨格部材17の外周面17Sを粗化処理した際に発生した処理粉が,タイヤ骨格部材17の外周面17Sの凹部に残り、タイヤ骨格部材17とトレッド30との接合強度が低下するのを防止できる。この結果、タイヤ骨格部材17とトレッド30との接合強度を確保することができる。
【0079】
また、本実施形態では、補強コード部材26が、タイヤ幅方向に隣接する補強コード26Aが被覆用樹脂材料27で一体とされたベルト部材であるため、金型40の内部に補強コード26Aを容易に配設することができ製造が容易になる。
【0080】
また、トレッド30を加硫した場合、粗化処理によってタイヤ骨格部材17の外周面17Sに形成された粗化凹凸96にクッションゴム29が流れ込む。そして、加硫が完了すると、粗化凹凸93に流れ込んだゴム(加硫済み)により、アンカー効果が発揮されて、タイヤ骨格部材17とトレッド30との接合強度が向上する。
【0081】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0082】
図9に示すように、本実施形態は、金型40を開き、外金型42に補強コード部材としての補強コード26Aを直接配設する。この際、外金型42に形成された凹部42Bに補強コード26Aをはめ込む。
【0083】
なお、凹部42Bにリング状の補強コード26Aをタイヤ幅方向に所定の間隔を開けて(幅方向で不連続に)複数配設しても良いし、連続した補強コード26Aをタイヤ幅方向に所定の間隔を開けて螺旋(スパイラル)状に配設しても良い。また、補強コード26Aがタイヤ幅方向へ移動するのを防止する移動防止手段として、外金型42に形成された凹部42Bに補強コード26Aを保持するための溝やピン等を設けても良い。
【0084】
その後、第1実施形態と同様に金型40を閉じる。そして、ゲート48から溶融した熱可塑性材料を金型40内に注入して射出成形して、タイヤ骨格部材半体17Aを形成する。
【0085】
なお、本実施形態のタイヤ10における補強層28の周囲を示すタイヤ幅方向に沿った断面図は図10にようになる。
【0086】
従って、本実施形態では、樹脂材料を用いて形成された環状のタイヤ骨格部材17の外周面17Sに、補強コード26Aを凹凸が発生しないように配設できる。また、前工程において補強コード26Aを被覆用樹脂材料27で被覆する必要がなく、製造工程数を少なくすることができる。
【0087】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、タイヤ骨格部材半体17Aを接合してタイヤ骨格部材17を形成する構成としたが、本発明はこの構成に限らず、金型などを用いてタイヤ骨格部材17を一体的に形成してもよい。
【0088】
また、上記各実施形態のタイヤ10は、ビード部12をリム20に装着することで、タイヤ10とリム20との間で空気室を形成する、所謂チューブレスタイヤであるが、本発明はこの構成に限定されず、タイヤ10は、図11に示すように、完全なチューブ形状であってもよい。なお、図11に示す完全なチューブ形状のタイヤも図1に示すチューブレスタイヤと同様にリム組みされるようになっている。
【0089】
また、上記各実施形態では、タイヤ骨格部材17とトレッド30との間にクッションゴム29を配置したが、本発明はこれに限らず、クッションゴム29を配置しない構成としてもよい。
【0090】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0091】
10 タイヤ
17 タイヤ骨格部材(タイヤ骨格部材)
17S タイヤ骨格部材の外周面
26 被覆コード部材(補強コード部材、ベルト部材)
26A 補強コード(補強コード部材)
27 被覆用樹脂材料
28 補強層
29 クッションゴム(タイヤ構成ゴム部材)
30 トレッド(タイヤ構成ゴム部材)
96 粗化凹凸
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造方法及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車等の車両には、ゴム、有機繊維材料、スチール部材などから構成された空気入りタイヤが用いられている。
近年では、軽量化や、成形の容易さ、リサイクルのし易さから、樹脂材料、特に熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性材料をタイヤ材料として用いることが求められている。
例えば、特許文献1には、熱可塑性の高分子材料を用いて成形された空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03−143701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空気入りタイヤでは、熱可塑性の高分子材料を用いて成形された環状のタイヤ骨格部材の外周面に補強層を配設し、この補強層の上にトレッドゴムを配設している。
【0005】
ここで、補強層をタイヤ骨格部材の外周部に配設する方法としては、樹脂材料で補強コードを被覆して構成された被覆コード部材をタイヤ骨格部材の周方向に巻き付ける方法が考えられる。
【0006】
しかしながら、このような方法ではタイヤ骨格部材の外周面と被覆コード部材の外周面とにタイヤ径方向の段差(凹凸)が発生する。この結果、タイヤ骨格部材の外周面に後工程においてPCT(Pre-Cured Tread)等のタイヤ構成ゴム部材を接着するために必要なバフ等の粗化処理を行った際に、前記段差部(凹部)に処理粉が残る。このため、タイヤ構成ゴム部材の接着力が低下する。
【0007】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、樹脂材料を用いて形成されたタイヤ骨格部材の外周面に対して補強コード部材を凹凸が発生しないように配設できるタイヤの製造方法及びタイヤを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のタイヤの製造方法は、環状のタイヤ骨格部材を形成する成形型の円弧状の内周面にタイヤ周方向に沿って補強コード部材を配設する補強コード部材配設工程と、補強コード部材が配置された前記成形型の内部に樹脂材料を入れ環状のタイヤ骨格部材を形成するタイヤ骨格部材製造工程と、を備える。
【0009】
請求項1のタイヤの製造方法によれば、補強コード部材配設工程において、環状のタイヤ骨格部材を形成する成形型の円弧状の内周面にタイヤ周方向に沿って補強コード部材を配設する。次いで、タイヤ骨格部材製造工程において、補強コード部材が配置された成形型の内部に樹脂材料を入れ環状のタイヤ骨格部材を形成する。このため、成形後のタイヤ骨格部材の外周面に、樹脂材料で補強コードを被覆して構成された被覆コード部材を巻き付ける場合のようにタイヤ骨格部材の外周面と被覆コード部材の外周面とにタイヤ径方向の段差が発生することがない。この結果、樹脂材料を用いて形成された環状のタイヤ骨格部材の外周面に対して補強コード部材を凹凸が発生しないように配設できる。
【0010】
請求項2のタイヤの製造方法は、請求項1に記載のタイヤの製造方法において、前記補強コード部材は、タイヤ幅方向に隣接する補強コードが樹脂材料で一体とされたベルト部材である。
【0011】
請求項2のタイヤの製造方法によれば、補強コード部材が、タイヤ幅方向に隣接する補強コードが樹脂材料で一体とされたベルト部材であるため、環状のタイヤ骨格部材を形成する成形型の内部に補強コード部材を容易に配設することができ、製造が容易になる。
【0012】
請求項3のタイヤの製造方法は、請求項1に記載のタイヤの製造方法において、前記補強コード部材は、タイヤ幅方向に隣接して配置された補強コードである。
【0013】
請求項3のタイヤの製造方法によれば、補強コード部材が、タイヤ幅方向に隣接して配置された補強コードであるため、前工程において補強コードを樹脂材料で被覆する必要がなく製造工程数を少なくすることができる。
【0014】
請求項4のタイヤは、円弧状の内周面にタイヤ周方向に沿って補強コード部材が配置された成形型の内部に樹脂材料を入れて形成された環状のタイヤ骨格部材を備えている。
【0015】
請求項4のタイヤによれば、円弧状の内周面にタイヤ周方向に沿って補強コード部材が配置された成形型の内部に樹脂材料を入れて形成された環状のタイヤ骨格部材を備えているので、タイヤ骨格部材の外周面と被覆コード部材の外周面とにタイヤ径方向の段差がない。この結果、樹脂材料を用いて形成されたタイヤ骨格部材の外周面に対して補強コード部材を凹凸が発生しないように配設できる。
【0016】
請求項5のタイヤは、請求項4に記載のタイヤにおいて、前記補強コード部材は、タイヤ幅方向に隣接する補強コードが樹脂材料で一体とされたベルト部材である。
【0017】
請求項5のタイヤによれば、補強コード部材が、タイヤ幅方向に隣接する補強コードが樹脂材料で一体とされたベルト部材であることから、環状のタイヤ骨格部材を形成する成形型の内部に補強コード部材を容易に配設することができ、製造が容易になる。
【0018】
請求項6のタイヤは、請求項4に記載のタイヤにおいて、前記補強コード部材は、タイヤ幅方向に隣接して配置された補強コードである。
【0019】
請求項6のタイヤによれば、補強コード部材が、タイヤ幅方向に隣接して配置された補強コードであるため、前工程において補強コードを樹脂材料で被覆する必要がなく製造工程数を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明のタイヤの製造方法及びタイヤは上記構成としたので、樹脂材料を用いて形成されたタイヤ骨格部材の外周面に対して補強コード部材を凹凸が発生しないように配設できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A)は本発明における第1実施形態のタイヤの一部を示すタイヤ幅方向に沿った断面斜視図である。(B)は本発明における第1実施形態のタイヤにリムを嵌合させた状態のビード部のタイヤ幅方向に沿った拡大断面斜視図である。
【図2】本発明における第1実施形態のタイヤにおける補強層の周囲を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
【図3】本発明における第1実施形態の補強コード部材を示す斜視図である。
【図4】本発明における第1実施形態で用いる金型の内部に補強コード部材を配設した状態を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
【図5】本発明における第1実施形態で用いる金型の内部に樹脂材料を流し込んだ状態を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
【図6】本発明における第1実施形態で用いる成形機を示す斜視図である。
【図7】本発明における第1実施形態において押出機を用いてタイヤ骨格部材半体の接合部に溶接用熱可塑性材料を付着させる動作を説明するための押出機を示す斜視図である。
【図8】本発明における第1実施形態においてブラスト装置を用いてタイヤ骨格部材の外周面に粗化処理を行なっている状態を示す斜視図である。
【図9】本発明における第2実施形態で用いる金型の内部に補強コード部材を配設した状態を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
【図10】本発明における第2実施形態のタイヤの補強層の周囲を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
【図11】本発明におけるその他の実施形態としてのチューブ型タイヤを示すタイヤ幅方向に沿った断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、図面にしたがって本発明のタイヤの製造方法及びタイヤの第1実施形態について説明する。
【0023】
図1(A)に示すように、本実施形態のタイヤの製造方法で製造されるタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。なお、以下の説明において、「幅方向」と記載した場合は、タイヤ骨格部材17及びタイヤ10の幅方向を指し、「周方向」と記載した場合は、タイヤ骨格部材17及びタイヤ10の周方向を指す。
【0024】
図1(A)及び(B)に示すように、タイヤ10は、リム20のビードシート21及びリムフランジ22に接触する一対のビード部12、このビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16からなる環状のタイヤ骨格部材17(タイヤ骨格部材の一例)を備えている。
【0025】
タイヤ骨格部材17は、単一の樹脂材料で形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと同様に、タイヤ骨格部材17の各部位毎(ビード部12、サイド部14、クラウン部16など)に異なる特徴を有する樹脂材料を用いてもよい。
【0026】
また、タイヤ骨格部材17(例えば、ビード部12、サイド部14、クラウン部16等)に、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置し、補強材でタイヤ骨格部材17を補強してもよい。
【0027】
樹脂材料としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができる。なお、樹脂材料には、加硫ゴムは含まれない。
【0028】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0029】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0030】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。なお、走行時に必要とされる弾性と製造時の成形性等を考慮すると熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
【0031】
また、樹脂材料の同種とは、エステル系同士、スチレン系同士などの形態を指す。
【0032】
これらの樹脂材料としては、例えば、ISO75−2又はASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が78°C以上、JIS K7113に規定される引張降伏強さが10MPa以上、同じくJIS K7113に規定される引張降伏伸びが10%以上、同じくJIS K7113に規定される引張破壊伸び(JIS K7113)が50%以上、JIS K7206に規定されるビカット軟化温度(A法)が130°C以上のものを用いることができる。
【0033】
本実施形態のビード部12には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、スチールコードからなる円環状のビードコア18が埋設されている。しかし、本発明はこの構成に限定されず、ビードコア18は、スチールコード以外に、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、または硬質樹脂などで形成されていてもよい。また、ビード部12の剛性が確保され、リム20との嵌合に問題なければ、ビードコア18を省略してもよい。
【0034】
また、図1(B)に示すように、本実施形態では、ビード部12のリム20との接触部分、少なくともリム20のリムフランジ22と接触する部分にタイヤ骨格部材17を形成する樹脂材料よりも軟質である軟質材料からなる円環状のシール層24が形成されている。このシール層24はビードシート21と接触する部分にも形成されていてもよい。
【0035】
シール層24を形成する上記軟質材料としては、弾性体の一例としてのゴムが好ましく、特に従来一般のゴム製の空気入りタイヤのビード部外面に用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、タイヤ骨格部材17を形成する樹脂材料のみでリム20との間のシール性(気密性)が確保できれば、シール層24を省略してもよい。また、上記軟質材料としては、タイヤ骨格部材17を形成する樹脂材料よりも軟質な他の種類の樹脂材料を用いてもよい。
【0036】
図2に示すように、タイヤ骨格部材17のクラウン部16には、補強コード部材(ベルト部材)としての被覆コード部材26で構成された補強層28が積層されている。この補強層28は、タイヤ骨格部材17の外周部を構成し、クラウン部16の周方向剛性を補強している。
【0037】
被覆コード部材26は、タイヤ骨格部材17を形成する樹脂材料よりも剛性が高い補強コード26Aにタイヤ骨格部材17を形成する樹脂材料とは別体の被覆用樹脂材料27を被覆して形成されている。また、被覆コード部材26はクラウン部16との接触部分において、被覆コード部材26とクラウン部16とが接合(例えば、溶接、又は接着剤で接着)されている。
【0038】
また、被覆用樹脂材料27のヤング率は、タイヤ骨格部材17を形成する樹脂材料のヤング率の0.1倍から10倍の範囲内に設定することが好ましい。これは、ヤング率が10倍以下の場合は、リム組み性に問題がないが、11倍を超えるとクラウン部16が硬くなり、リム組みし難くなるからである。一方、ヤング率が0.1倍以下では、柔らか過ぎて補強層28によるベルト面内せん断剛性が低下してコーナリング力が低下してしまうからである。
【0039】
なお、本実施形態では、被覆用樹脂材料27を樹脂材料のうちの熱可塑性材料(例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなど)としている。
【0040】
補強コード26Aは、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)などを用いるとよい。
【0041】
なお、以下では、被覆コード部材26の上面(タイヤ径方向外側の面)を符号26Uで示し、下面(タイヤ径方向内側の面)を符号26Dで示す。
【0042】
図2に示すように、被覆コード部材26の補強コード26Aは、周方向に間隔をあけて配置されている。
【0043】
タイヤ骨格部材17の外周面17Sには、微細な粗化凹凸96が均一に形成され、その上に接合剤を介して、クッションゴム29が接合されている。このクッションゴム29は、径方向内側のゴム部分が粗化凹凸96に流れ込んでいる。
【0044】
また、クッションゴム29の上(外周面)にはタイヤ骨格部材17を形成している樹脂材料よりも耐摩耗性に優れた材料、例えばゴムからなるトレッド30が接合されている。
【0045】
なお、トレッド30に用いるゴム(トレッドゴム30A)は、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。また、トレッド30の代わりに、タイヤ骨格部材17を形成する樹脂材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の樹脂材料で形成したトレッドを用いてもよい。また、トレッド30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターン(図示省略)が形成されている。
【0046】
次に、本実施形態のタイヤの製造方法について説明する。
(補強コード製造工程)
図3には、本実施形態の被覆コード部材26が斜視図にて示されている。
図3に示される如く、被覆コード部材26は、リング状とされた複数の補強コード26A又はスパイラル(螺旋)状の補強コード26Aを被覆用樹脂材料27で被覆して円筒状のベルト部材とする。この際、予め被覆用樹脂材料27で被覆した補強コード26Aをドラム状部材の外周部に巻き付け隣接する被覆用樹脂材料27同士を溶着や接着によって結合してもよい。
【0047】
なお、本実施形態では、タイヤ骨格部材半体17Aに対応する幅の被覆コード部材26を製造するが、タイヤ骨格部材17に対応する広幅の被覆コード部材26を製造してもよい。
【0048】
(補強コード部材配設工程)
本実施形態では、射出成形によって図6に示すようなタイヤ骨格部材半体17Aを形成し、その後、2つのタイヤ骨格部材半体17Aを互いに向かい合わせてタイヤセンターで接合する。
【0049】
タイヤ骨格部材半体17Aの製造には、図4に示すような成形型としての金型40を用いる。この金型40は、ビード部12(図1参照)からタイヤセンターCL(図1参照)までを構成するタイヤ骨格部材半体17Aを成形することができるように、タイヤ外面側を成形する外金型42と、タイヤ内面側を成形する内金型44とを有する。
【0050】
補強コード部材配設工程では、金型40を開き、外金型42の円弧状の内周面、即ち、外金型42におけるタイヤ骨格部材半体17Aの外周部を成形する部位に形成した凹部42Aに図3に示す円筒状の被覆コード部材26を配設する。
【0051】
(タイヤ骨格部材製造工程)
図4に示すように、内金型44にはビードコア固定用の治具46が、予め設定された位置に設けられている。また、外金型42と内金型44との間には、タイヤ骨格部材半体17Aの形状のキャビティS(空間)が形成されている。
【0052】
ビードコア固定用の治具46には、ビードコア18の寸法に応じた凹部47が形成されており、ビードコア18が金型40内に配置されたときには、ビードコア18の一部がこの凹部47に入ってタイヤ内側から支えられた状態となる。この結果、ビードコア18は、タイヤ内側方向への移動が規制されるとともに上下方向(タイヤ径方向)の移動も規制された状態となる。治具46は、本実施形態では、ビードコア収容位置に沿って均等間隔で12個配置されている。
【0053】
なお、治具46はマグネット材で形成することにより、ビードコア18をスチール等の磁性体で形成した場合には、磁力により接着させて確実に固定することができる。
【0054】
また、金型40のゲート(樹脂注入路)48は、ビードコア18が凹部47に入った状態でビードコア18のタイヤ外側を溶融状態の熱可塑性高分子材料が通過するように、形成されている。熱可塑性高分子材料は、例えば熱可塑性エラストマー(TPE)や熱可塑性樹脂である。
【0055】
ゲート48はリング状に開口したディスクゲートであり、キャビティSはリング状のゲート48に連通して中空円盤状に広がるように形成されている。なお、ゲート48はピンゲートであってもよいが、成形性の観点で、このようにディスクゲートのほうが好ましい。
【0056】
ビードコア18のタイヤ内側部を治具46の凹部47に入れ、金型40を閉じる。そして、図5に示すように、ゲート48から溶融した熱可塑性材料を金型40内に注入して射出成形してタイヤ骨格部材半体17Aを形成する。
【0057】
なお、この注入の際、治具46が設けられた位置では、熱可塑性材料は、ゲート48からビードコア18と外金型42との間を経由するように注入されるので、ビードコア18がタイヤ外側からタイヤ内側に向けて押圧される。従って、ビードコア18が受ける移動力を治具46で充分に支えることができる。よって、ビードコア18の位置ずれを防止するための治具46をビードコア18にタイヤ外側から当接させない状態にして、溶融した熱可塑性材料を注入することが可能になる。
【0058】
その後、金型40内からタイヤ骨格部材半体17Aを取り出す。これにより、図6に示すタイヤ骨格部材半体17Aが形成される。
【0059】
(タイヤ骨格形成工程)
図6に示すように、成形機80は、水平に配置された軸80Aと、この軸80Aを回転させるギヤ付きモータ80Bと、床面に接地されてギヤ付きモータ80Bを支持する台座80Cと、を有している。
【0060】
軸80Aの端部側には、樹脂材料を用いて形成されたタイヤ骨格部材17を支持するためのタイヤ支持部82が設けられている。タイヤ支持部82は、軸80Aに固定されたシリンダブロック82Aを有し、シリンダブロック82Aには、径方向外側に延びる複数のシリンダロッド82Bが周方向に等間隔に設けられている。
【0061】
シリンダロッド82Bの先端には、外面がタイヤ骨格部材17内面の曲率半径と略同等に設定された円弧曲面82Cを有するタイヤ支持片82Dが設けられている。図6はシリンダロッド82Bの突出量が最も大きい状態を示している。なお、各シリンダロッド82Bは、連動して同一方向に同一量突出可能となっている。
【0062】
従って、成形機80のタイヤ支持部82の径を縮小し、その外周側に、互いに向かい合わせに突き当てた2つのタイヤ骨格部材半体17Aを配置する。また、2つのタイヤ骨格部材半体17Aの内部に、薄い金属板(例えば、厚さ0.5mmの鋼板)からなる筒状のタイヤ内面支持リング83を配置する(図6では、内部を見せるために一方のタイヤ骨格部材半体17Aを外して記載されている)。
【0063】
タイヤ内面支持リング83の外径は、タイヤ骨格部材半体17Aの外周部分の内径と略同一寸法に設定されており、タイヤ内面支持リング83の外周面が、タイヤ骨格部材半体17Aの外周部分の内周面に密着するようになっている。これにより、タイヤ支持片82D間の隙間によりタイヤ支持部82の外周に生じる凹凸に起因する接合部分(溶接用熱可塑性材料53)の凸凹(前記凹凸の逆形状)の発生を抑制することができる。また、タイヤ支持片82D間の隙間によって配置部材(タイヤ骨格部材17、トレッド30、その他のタイヤ構成部材(例えば、補強層など))に凹凸が発生するのを抑制することができる。つまり、配置部材を配置する際に作用させる力(テンションや押圧力など)で配置部材のタイヤ支持片82D間の隙間に対応した部位に凹凸が発生するのを抑制することができる。なお、タイヤ内面支持リング83は薄い金属板で形成されているため、曲げ変形させてタイヤ骨格部材半体17Aの内部に容易に挿入可能である。
【0064】
そして、タイヤ支持部82の径を拡大してタイヤ内面支持リング83を複数のタイヤ支持片82Dで内側から保持する。
【0065】
成形機80の近傍には、図7に示すように、タイヤ骨格部材17が複数に分割されて形成された場合に、これら分割体を一体化するために用いる溶接用熱可塑性材料を押し出す押出機90が配置されている(なお、本実施形態では、左右半割りのタイヤ骨格部材半体17Aを溶接一体化してタイヤ骨格部材17を形成している)。この押出機90は溶融した溶接用熱可塑性材料53を下方に向けて吐出するノズル90Aを有している。このノズル90Aの出口部は略矩形状とされており、断面形状が略矩形状とされた帯状の溶接用熱可塑性材料53を吐出する。
【0066】
また、ノズル90Aの近傍には、タイヤ骨格部材17のタイヤ骨格部材半体17Aに付着させた溶接用熱可塑性材料53を押圧して均す均しローラ90B、及び均しローラ90Bをタイヤ骨格部材17に対して接離する方向に移動させるシリンダ装置90Cが配置されている。なお、シリンダ装置90Cは、図示しないフレームを介して押出機90の支柱52に支持されている。また、この押出機90は、床面に配置されたガイドレール54に沿って、成形機80の軸80Aと平行な方向に移動可能となっている。
【0067】
従って、押出機90を移動して、タイヤ骨格部材半体17Aの突き当て部分の上方にノズル90Aを配置する。そして、タイヤ支持部82を矢印R方向に回転させながら、ノズル90Aから溶融した溶接用熱可塑性材料53を接合部位に向けて押し出し、接合部位に沿って溶融した溶接用熱可塑性材料53を付着させる。付着した溶接用熱可塑性材料53は、下流側に配置した均しローラ90Bによって平らに均されると共に、両方のタイヤ骨格部材半体17Aの外周面に溶着する。溶接用熱可塑性材料53は自然冷却により次第に固化し、一方のタイヤ骨格部材半体17Aと他方のタイヤ骨格部材半体17Aとが溶接用熱可塑性材料53によって溶接され、これらの部材が一体となってタイヤ骨格部材17が形成される。
【0068】
(粗化処理工程)
次に、図8に示すように、押出機90を退避させて、ブラスト装置100をタイヤ支持部82の近傍に配置する。そして、ブラストガン102をタイヤ骨格部材17の外周面17Sに向け、タイヤ骨格部材17側を回転(矢印R方向)させながら、外周面17Sへ投射材104を高速度で射出する。射出された投射材104は、外周面17Sに衝突し、この外周面17Sに算術平均粗さRaが0.05mm以上となる微細な粗化凹凸96を形成する(図2参照)。なお、タイヤ骨格部材17側を回転させる代わりにブラストガン102側をタイヤ骨格部材17の周方向周りに回転させてもよい。
【0069】
このようにして、タイヤ骨格部材17の外周面17Sに微細な粗化凹凸96が形成されることで、外周面17Sが親水性となり、後述する接合剤の濡れ性が向上する。
【0070】
また、粗化処理する範囲は、タイヤ構成ゴム部材としての後述するクッションゴム29が積層される範囲と同じ、又は、クッションゴム29が積層される範囲よりも広い範囲とすることが好ましい。これにより、クッションゴム29は、全面的に粗化処理されて親密性が良好となった範囲に積層されるため、クッションゴム29とタイヤ骨格部材17との接合強度が確保される。
【0071】
(積層工程)
次に、粗化処理を行なったタイヤ骨格部材17の外周面17Sに接合剤を塗布する。
なお、接合剤としては、トリアジンチオール系接着剤、塩化ゴム系接着剤、フェノール系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、ハロゲン化ゴム系接着剤など、特に制限はないが、クッションゴム29が加硫できる温度(90°C〜140°C)で反応することが好ましい。
【0072】
次に、接合剤が塗布された外周面17Sに未加硫状態のクッションゴム29を1周分巻き付け、そのクッションゴム29の上に例えば、ゴムセメント組成物などの接合剤を塗布し、その上に加硫済み又は半加硫状態のトレッドゴム30Aを1周分巻き付けて、生タイヤ骨格部材状態とする。
【0073】
なお、加硫済みとは、最終製品として必要とされる加硫度に至っている状態をいい、半加硫状態とは、未加硫の状態よりは加硫度が高いが、最終製品として必要とされる加硫度に至っていない状態をいう。
【0074】
(加硫工程)
次に生タイヤ骨格部材を加硫缶やモールドに収容して加硫する。このとき、粗化処理によってタイヤ骨格部材17の外周面17Sに形成された粗化凹凸96に未加硫のクッションゴム29が流れ込む。そして、加硫が完了すると、粗化凹凸96に流れ込んだクッションゴム29により、アンカー効果が発揮されて、タイヤ骨格部材17とクッションゴム29との接合強度が向上する。すなわち、クッションゴム29を介してタイヤ骨格部材17とトレッド30との接合強度が向上する。
【0075】
そして、タイヤ骨格部材17のビード部12に、樹脂材料よりも軟質である軟質材料からなるシール層24(図1参照)を、接着剤等を用いて接着すれば、タイヤ10の完成となる。
【0076】
最後に、タイヤ支持部82の径を縮小し、完成したタイヤ10をタイヤ支持部82から取り外し、内部のタイヤ内面支持リング83を曲げ変形させてタイヤ外へ取り外す。
【0077】
(作用)
以上説明したように、本実施形態では、補強コード部材配設工程において、金型40を開き、外金型42の円弧状の内周面、即ち、外金型42におけるタイヤ骨格部材半体17Aの外周部を成形する部位に形成した凹部42Aに被覆コード部材26を配設する。次いで、タイヤ骨格部材製造工程において、被覆コード部材26が配置された成形型40の内部に樹脂材料を入れ環状のタイヤ骨格部材半体17Aを形成する。このため、成形後のタイヤ骨格部材17の外周面17Sに、樹脂材料で補強コードを被覆して構成された被覆コード部材を巻き付ける場合のように、隣接する被覆コード部材間におけるタイヤ骨格部材17の外周面17Sと、被覆コード部材の外周面と、にタイヤ径方向の段差(凹凸)が発生することがない。即ち、隣接する被覆コード部材の間に凹部が発生することがない。この結果、樹脂材料を用いて形成された環状のタイヤ骨格部材17の外周面17Sに、被覆コード部材26を凹凸が発生しないように配設できる。
【0078】
これにより、タイヤ骨格部材17の外周面17Sを粗化処理した際に発生した処理粉が,タイヤ骨格部材17の外周面17Sの凹部に残り、タイヤ骨格部材17とトレッド30との接合強度が低下するのを防止できる。この結果、タイヤ骨格部材17とトレッド30との接合強度を確保することができる。
【0079】
また、本実施形態では、補強コード部材26が、タイヤ幅方向に隣接する補強コード26Aが被覆用樹脂材料27で一体とされたベルト部材であるため、金型40の内部に補強コード26Aを容易に配設することができ製造が容易になる。
【0080】
また、トレッド30を加硫した場合、粗化処理によってタイヤ骨格部材17の外周面17Sに形成された粗化凹凸96にクッションゴム29が流れ込む。そして、加硫が完了すると、粗化凹凸93に流れ込んだゴム(加硫済み)により、アンカー効果が発揮されて、タイヤ骨格部材17とトレッド30との接合強度が向上する。
【0081】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0082】
図9に示すように、本実施形態は、金型40を開き、外金型42に補強コード部材としての補強コード26Aを直接配設する。この際、外金型42に形成された凹部42Bに補強コード26Aをはめ込む。
【0083】
なお、凹部42Bにリング状の補強コード26Aをタイヤ幅方向に所定の間隔を開けて(幅方向で不連続に)複数配設しても良いし、連続した補強コード26Aをタイヤ幅方向に所定の間隔を開けて螺旋(スパイラル)状に配設しても良い。また、補強コード26Aがタイヤ幅方向へ移動するのを防止する移動防止手段として、外金型42に形成された凹部42Bに補強コード26Aを保持するための溝やピン等を設けても良い。
【0084】
その後、第1実施形態と同様に金型40を閉じる。そして、ゲート48から溶融した熱可塑性材料を金型40内に注入して射出成形して、タイヤ骨格部材半体17Aを形成する。
【0085】
なお、本実施形態のタイヤ10における補強層28の周囲を示すタイヤ幅方向に沿った断面図は図10にようになる。
【0086】
従って、本実施形態では、樹脂材料を用いて形成された環状のタイヤ骨格部材17の外周面17Sに、補強コード26Aを凹凸が発生しないように配設できる。また、前工程において補強コード26Aを被覆用樹脂材料27で被覆する必要がなく、製造工程数を少なくすることができる。
【0087】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、タイヤ骨格部材半体17Aを接合してタイヤ骨格部材17を形成する構成としたが、本発明はこの構成に限らず、金型などを用いてタイヤ骨格部材17を一体的に形成してもよい。
【0088】
また、上記各実施形態のタイヤ10は、ビード部12をリム20に装着することで、タイヤ10とリム20との間で空気室を形成する、所謂チューブレスタイヤであるが、本発明はこの構成に限定されず、タイヤ10は、図11に示すように、完全なチューブ形状であってもよい。なお、図11に示す完全なチューブ形状のタイヤも図1に示すチューブレスタイヤと同様にリム組みされるようになっている。
【0089】
また、上記各実施形態では、タイヤ骨格部材17とトレッド30との間にクッションゴム29を配置したが、本発明はこれに限らず、クッションゴム29を配置しない構成としてもよい。
【0090】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0091】
10 タイヤ
17 タイヤ骨格部材(タイヤ骨格部材)
17S タイヤ骨格部材の外周面
26 被覆コード部材(補強コード部材、ベルト部材)
26A 補強コード(補強コード部材)
27 被覆用樹脂材料
28 補強層
29 クッションゴム(タイヤ構成ゴム部材)
30 トレッド(タイヤ構成ゴム部材)
96 粗化凹凸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のタイヤ骨格部材を形成する成形型の円弧状の内周面にタイヤ周方向に沿って補強コード部材を配設する補強コード部材配設工程と、
補強コード部材が配置された前記成形型の内部に樹脂材料を入れ環状のタイヤ骨格部材を形成するタイヤ骨格部材製造工程と、
を備えるタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記補強コード部材は、タイヤ幅方向に隣接する補強コードが樹脂材料で一体とされたベルト部材である請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記補強コード部材は、タイヤ幅方向に隣接して配置された補強コードである請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【請求項4】
円弧状の内周面にタイヤ周方向に沿って補強コード部材が配置された成形型の内部に樹脂材料を入れて形成された環状のタイヤ骨格部材を備えるタイヤ。
【請求項5】
前記補強コード部材は、タイヤ幅方向に隣接する補強コードが樹脂材料で一体とされたベルト部材である請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記補強コード部材は、タイヤ幅方向に隣接して配置された補強コードである請求項4に記載のタイヤ。
【請求項1】
環状のタイヤ骨格部材を形成する成形型の円弧状の内周面にタイヤ周方向に沿って補強コード部材を配設する補強コード部材配設工程と、
補強コード部材が配置された前記成形型の内部に樹脂材料を入れ環状のタイヤ骨格部材を形成するタイヤ骨格部材製造工程と、
を備えるタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記補強コード部材は、タイヤ幅方向に隣接する補強コードが樹脂材料で一体とされたベルト部材である請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記補強コード部材は、タイヤ幅方向に隣接して配置された補強コードである請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【請求項4】
円弧状の内周面にタイヤ周方向に沿って補強コード部材が配置された成形型の内部に樹脂材料を入れて形成された環状のタイヤ骨格部材を備えるタイヤ。
【請求項5】
前記補強コード部材は、タイヤ幅方向に隣接する補強コードが樹脂材料で一体とされたベルト部材である請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記補強コード部材は、タイヤ幅方向に隣接して配置された補強コードである請求項4に記載のタイヤ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−35435(P2012−35435A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175322(P2010−175322)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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