説明

タイヤ用ゴム組成物及びスタッドレスタイヤ

【課題】氷上性能及びドライ操縦安定性を両立したタイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いたスタッドレスタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分及びシリカを含有し、上記ゴム成分が、共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物と、特定の一般式で表される第一化合物とを共重合して得られる共重合体、並びに、エポキシ化ジエン系ゴムを含み、上記エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ化率が0.5〜50モル%であるタイヤ用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いたスタッドレスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
氷雪路走行に使用される空気入りタイヤは、従来のスパイクタイヤに代わりスタッドレスタイヤが多く使用されるようになり、氷上性能の向上が一段と要求されてきている。氷雪上性能を向上させるためには、ガラス転移点(Tg)を下げ、低温(ここで、低温とは、氷雪上走行時の温度であり、−20〜0℃程度である)での弾性率を低く設定したものが多い。しかしながら、一般に、低温での弾性率を下げると、高温での弾性率も低下する傾向があるため、従来のスタッドレスタイヤは、ドライ路面を走行する際には、操縦安定性が低いという問題があった。
【0003】
上記の問題に対し、シリカを配合したゴム組成物において、ゴム成分に特定の極性基を導入する試みが提案されている。この試みによれば、シリカに対する親和性をゴム成分に持たせることができ、シリカの分散性を向上することができる。したがって、低温時の弾性率を低く設定した場合であっても、高温時の弾性率の低下を抑制することが可能となる。
【0004】
上記試みの例として、特許文献1では、アミノ基及びアルコキシ基を含有する有機ケイ素化合物で変性されたジエン系ゴムが開示され、特許文献2では、スズ変性ブタジエンゴムが開示され、特許文献3及び4では、エポキシ化天然ゴムが開示され、特許文献5では、エポキシ化された共役ジエン系共重合体が開示されている。しかしながら、これらの試みによっても、シリカの分散性の向上効果は充分ではなく、氷上性能と、ドライ路面での操縦安定性(ドライ操縦安定性)とをバランスよく改善する方法が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−344955号公報
【特許文献2】特許2006−63143号公報
【特許文献3】特開2007−169317号公報
【特許文献4】特開2007−182100号公報
【特許文献5】特開2006−188571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決し、氷上性能及びドライ操縦安定性を両立したタイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いたスタッドレスタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ゴム成分として、特定の構造を有する第一化合物と、共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物とを共重合して得られた共重合体、並びに、特定のエポキシ化率を有するエポキシ化ジエン系ゴムを組み合わせて用いることにより、シリカの分散性が向上し、氷上性能及びドライ操縦安定性をバランスよく改善できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、ゴム成分及びシリカを含有し、上記ゴム成分が、共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物と、下記一般式で表される第一化合物とを共重合して得られる共重合体、並びに、エポキシ化ジエン系ゴムを含み、上記エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ化率が0.5〜50モル%であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【化1】

(式中、Rは水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基又は炭素数5〜30の芳香族炭化水素基を表す。Yは窒素若しくは酸素を含む置換基を有する芳香族炭化水素基、又は窒素若しくは酸素を含む芳香族複素環基を表す。)
【0009】
上記第一化合物は下記一般式で表される窒素含有化合物であることが好ましい。
【化2】

(式中、R及びRは水素、
【化3】

又は
【化4】

であり、少なくともR及びRのいずれかは水素ではない。Rは水素又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。Xは(CR、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、又は、(CR1011−S−(CR1314からなる飽和形環形成部を表す。Xは
【化5】

又は
【化6】

で置換されていてもよい。Zは(CR、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、又は、(CR1011−S−(CR1314からなる飽和形環形成部を表す。R〜Rは水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基、炭素数5〜30の芳香族炭化水素基、又は環構成原子数3〜30の複素環基を表す。R〜Rは同じであっても異なっていてもよい。R及びR〜R14は水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基又は炭素数5〜30の芳香族炭化水素基を表す。R及びR〜R14は同じであっても異なっていてもよい。lは3〜10の整数を表す。m及びnは1〜9の整数を表す。)
【0010】
上記共重合体100質量%中の第一化合物の含有量は0.05〜30質量%であることが好ましい。
【0011】
上記ゴム成分100質量%中の共重合体の含有量は5質量%以上であることが好ましい。
【0012】
上記共重合体の重量平均分子量は1.0×10〜2.0×10であることが好ましい。
【0013】
上記共重合体の末端は下記一般式のいずれかで表される第二化合物で変性されていることが好ましい。
−M−(OR15
(式中、Qはハロゲン又は水素を表す。Mは金属、炭素又はケイ素を表す。R15は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又は脂環族炭化水素基を表す。a及びbはa+b=4の関係を満たす整数を表す。)
【化7】

(式中、R16、R17及びR18は、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R16、R17及びR18の少なくとも1つはアルコキシ基である。R16、R17及びR18は、同じであっても異なっていてもよい。R19及びR20は、水素原子、又はアルキル基を表す。R19及びR20は、同じであっても異なっていてもよい。rは整数を表す。)
【0014】
上記エポキシ化ジエン系ゴムの重量平均分子量は1.0×10〜2.0×10であることが好ましい。
【0015】
上記ゴム成分100質量%中のエポキシ化ジエン系ゴムの含有量は5〜50質量%であることが好ましい。
【0016】
上記エポキシ化ジエン系ゴムはエポキシ化天然ゴムであることが好ましい。
【0017】
上記ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は10〜150質量部であることが好ましい。
【0018】
上記ゴム組成物は、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0019】
上記ゴム組成物は、上記ゴム成分100質量部に対して5〜150質量部のカーボンブラックを含有することが好ましい。
【0020】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いたスタッドレスタイヤに関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ゴム成分及びシリカを含有し、上記ゴム成分が、共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物と、下記一般式で表される第一化合物とを共重合して得られる共重合体、並びに、エポキシ化ジエン系ゴムを含むゴム組成物であるので、該ゴム組成物をスタッドレスタイヤに用いることにより、氷上性能及びドライ操縦安定性を両立したスタッドレスタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分及びシリカを含有し、上記ゴム成分が、共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物と、下記一般式で表される第一化合物とを共重合して得られる共重合体、並びに、エポキシ化ジエン系ゴムを含む。
【0023】
上記共重合体は、共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物と、下記一般式で表される第一化合物とを共重合して得られる。第一化合物に由来する単位は、主鎖部に含まれている。ここで、主鎖部とは、末端部も含む概念である。
【化8】

(式中、Rは水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基又は炭素数5〜30の芳香族炭化水素基を表す。Yは窒素若しくは酸素を含む置換基を有する芳香族炭化水素基、又は窒素若しくは酸素を含む芳香族複素環基を表す。)
【0024】
Yが窒素を含む置換基を有する芳香族炭化水素基である場合、該窒素は、3級アミンを形成することが好ましい。これにより、重合反応が停止するおそれを少なくすることができる。一方、該窒素が2級アミン、1級アミン、アミド基を形成すると、重合反応が停止しやすくなる傾向がある。
【0025】
Yが酸素を含む置換基を有する芳香族炭化水素基である場合、該酸素は、エーテル基、アルコキシシリル基を形成することが好ましい。これにより、重合反応が停止するおそれを少なくすることができる。一方、該酸素がエステル基、カルボニル基、アルデヒドを形成すると、重合反応が停止しやすくなる傾向がある。
【0026】
上記一般式で表される第一化合物としては、例えば、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、4−アミノスチレン、4−ビニルベンジルアミンや、下記一般式で表される化合物などが挙げられる。なかでも、重合反応が容易であり、入手し易いという点で、2−ビニルピリジンや、下記一般式で表される化合物のように、Yが窒素を含む化合物であることが好ましい。すなわち、第一化合物は、窒素含有化合物であることが好ましい。
【0027】
窒素含有化合物のなかでも、共重合のしやすさ及び取り扱いの容易さの点から、下記一般式で表される化合物であることが好ましい。
【化9】

(式中、R及びRは水素、
【化10】

又は
【化11】

であり、少なくともR及びRのいずれかは水素ではない。Rは水素又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。Xは(CR、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、又は、(CR1011−S−(CR1314からなる飽和形環形成部を表す。Xは
【化12】

又は
【化13】

で置換されていてもよい。Zは(CR、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、又は、(CR1011−S−(CR1314からなる飽和形環形成部を表す。R〜Rは水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基、炭素数5〜30の芳香族炭化水素基、又は環構成原子数3〜30の複素環基を表す。R〜Rは同じであっても異なっていてもよい。R及びR〜R14は水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基又は炭素数5〜30の芳香族炭化水素基を表す。R及びR〜R14は同じであっても異なっていてもよい。lは3〜10の整数を表す。m及びnは1〜9の整数を表す。)
【0028】
及びR〜R14が脂肪族炭化水素基である場合、炭素数は1〜30であり、好ましくは1〜12である。また、R及びR〜R14が脂環族炭化水素基である場合、炭素数は3〜30であり、好ましくは5〜12である。更に、R及びR〜R14が芳香族炭化水素基である場合、炭素数は5〜30であり、好ましくは6〜30、より好ましくは6〜12である。R及びR〜R14の炭素数が上記範囲内であれば、第一化合物を容易に重合することができる。また、入手が容易であるという理由から、R及びR〜R14は、水素であることが好ましい。
【0029】
が脂肪族炭化水素基の場合、炭素数は1〜4であり、好ましくは1〜3である。Rの炭素数が5以上の場合、フィラーとの親和性が低くなる傾向がある。また、フィラーとの親和性が高くなるという理由から、Rは、水素であることが好ましい。
【0030】
〜Rが脂肪族炭化水素基である場合、炭素数は1〜30であり、好ましくは1〜8である。また、R〜Rが脂環族炭化水素基である場合、炭素数は3〜30であり、好ましくは5〜8である。更に、R〜Rが芳香族炭化水素基である場合、炭素数は5〜30であり、好ましくは6〜30、より好ましくは6〜10である。そして、R〜Rが複素環基(芳香族複素環基を含む)である場合、環構成原子数は3〜30であり、好ましくは3〜12である。R〜Rの炭素数及び環構成原子数が上記範囲外の場合、フィラーとの親和性が低くなる傾向がある。また、フィラーとの親和性が高くなるという理由から、R〜Rは、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0031】
lの値は、3〜10であり、好ましくは3〜7である。m及びnの値は、1〜9であり、好ましくは1〜6である。l、m及びnの値が上記範囲外の場合、入手が困難になる上、フィラーとの親和性が低くなる傾向がある。
【0032】
lの値は3〜10であるため、(CR)は複数存在する。複数の(CR)のそれぞれは同じであっても異なってもよい。同様に、mが2以上の場合、複数の(CR1011)のそれぞれは同じであっても異なってもよく、nが2以上の場合、複数の(CR1314)のそれぞれは同じであっても異なってもよい。
【0033】
本明細書において、飽和形環形成部とは、飽和環基の一部であることを意味する。すなわち、上記一般式において、XとNとは飽和環基を構成し、ZとNとは飽和環基を構成する。
【0034】
上記一般式で表される窒素含有化合物としては、例えば、3−又は4−(2−アゼチジノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ピロリジノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ピペリジノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ヘキサメチレンイミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ヘプタメチレンイミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−オクタメチレンイミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(2,5−ジメチルピロリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(2−メチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(3−メチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(4−メチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(2−エチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(4−(1−ピロリジニル)ピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(4−ピペリジノピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(2,6−ジメチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(3,3−ジメチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(3,5−ジメチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(4−ジメチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(1−メチルピペラジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(1−エチルピペラジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(1−メチルホモピペラジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−モルホリノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(2,6−ジメチルモルホリノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−チアゾリジリノエチル)スチレン、3−又は4−(2−トオモルホリノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ジメチルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−エチルメチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−ジエチルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−メチルプロピルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−メチルイソプロピルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−エチルイソプロピルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−ジプロピルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ジイソプロピルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−メチルブチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−エチルブチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−メチル−tert−ブチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−tert−ブチルイソプロピルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−ジブチルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(ジ−sec−ブチル)アミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ジイソブチルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(tert−アミル−tert−ブチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−ジペンチルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−メチルヘキシルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−ジヘキシルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(tert−アミル−tert−オクチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−ジオクチルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ビス(2−エチルヘキシルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−ジデシルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−メチルオクタデシルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−メチルアニリノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−ジフェニルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−フェニルベンジルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−フェニル−1−ナフチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−ベンジルメチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−エチルベンジルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−イソプロピルベンジルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−ブチルベンジルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−(tert−ブチル)ベンジルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−ジベンジルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−メチルフェネチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−ベンジル−2−フェネチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(4−ベンジルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(1−フェニルピペラジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(1−ベンジルピペラジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−インドリノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(2−メチルインドリノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(1,2,3,4−テトラヒドロキノリノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−フェノキサジノエチル)スチレン、3−又は4−(2−フェノチアジノエチル)スチレン、3−又は4−(2−アニリノピリジノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(2−ベンジルアミノピリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(2,2’−ジピリジルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(2−メチルアミノ)ピリジノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(1−(2−ピリジル)ピペラジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(2−(2−メチルアミノエチル)ピリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(4−(エチルアミノメチル)ピリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(4−(エチルアミノメチル)ピリジノ)エチル)スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの中では、性能改善効果が大きいという点で、3−又は4−(2−ジメチルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ピロリジノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ピペリジノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ヘキサメチレンイミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−モルホリノエチル)スチレン、3−又は4−(2−チアゾリジリノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(4−モルホリノピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−チオモルホリノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ジプロピルアミノエチル)スチレンなどが好ましい。
【0035】
上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、入手容易性などの実用面の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0036】
上記芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、入手容易性などの実用面の観点から、スチレンが好ましい。
【0037】
本発明で使用する共重合体は、第一化合物と、共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物とを共重合させることにより製造する。重合方法については特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、特に共重合体の設計の自由度、加工性などの観点から溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。溶液重合法においては、例えばリチウム化合物を重合開始剤とし、上記第一化合物と、共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させることにより、目的の共重合体を製造することができる。なお、溶液重合を用いた場合、重合反応の種類としては特に限定されず、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などが挙げられるが、分子量制御や末端変性を容易に行えるという点から、アニオン重合が好ましい。
【0038】
溶液重合法を用いた場合には、溶液中のモノマー濃度(第一化合物、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物の合計)は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。溶液中のモノマー濃度が5質量%未満では、得られる共重合体の量が少なく、コストが高くなる傾向がある。また、溶液中のモノマー濃度は50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。溶液中のモノマー濃度が50質量%を超えると、溶液粘度が高くなりすぎて撹拌が困難となり、重合しにくくなる傾向がある。
【0039】
アニオン重合を行う場合、重合開始剤としては特に制限はないが、有機リチウム化合物が好ましく用いられる。上記有機リチウム化合物としては、炭素数2〜20のアルキル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物などが挙げられるが、これらの中で、入手容易性、安全性などの観点からn−ブチルリチウム又はsec−ブチルリチウムが好ましい。
【0040】
上記有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によって共重合体を製造する方法としては特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂防族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、上記リチウム化合物を重合開始剤として使用し、上記一般式で表される第一化合物と、共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物とを、必要に応じてランダマイザーの存在下でアニオン重合させることにより、目的の共重合体を得ることができる。
【0041】
上記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましい。炭素数3〜8の炭化水素系溶剤としては、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
上記ランダマイザーとは、共重合体中の共役ジエン部分(例えば、ブタジエンにおける1、2−結合、イソプレンにおける3、4−結合)のミクロ構造の制御や、共重合体におけるモノマー単位(例えばブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位)の組成分布のランダム化などの作用を有する化合物のことである。ランダマイザーとしては特に制限はなく、一般的な材料を用いることができ、例えば、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタンなどのエーテル類及び第三級アミン類などを挙げることができる。また、カリウム−t−アミレート、カリウム−t−ブトキシドなどのカリウム塩類、ナトリウム−t−アミレートなどのナトリウム塩も用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上記ランダマイザーの使用量は、重合開始剤に対して、0.01モル当量以上が好ましく、0.05モル当量以上がより好ましい。ランダマイザーの使用量が0.01モル当量未満では、添加効果が小さく、共重合体がランダム化されにくくなる傾向がある。また、ランダマイザーの使用量は、重合開始剤に対して、1000モル当量以下が好ましく、500モル当量以下がより好ましい。ランダマイザーの使用量が1000モル当量を超えると、モノマーの反応速度が大きく変化してしまい、共重合体がランダム化されにくくなる傾向がある。
【0044】
上記共重合体の生成反応後に、必要に応じて、公知の老化防止剤や、重合反応を停止する目的でアルコールなどを加えることができる。
【0045】
上記共重合体100質量%中の第一化合物の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上である。0.05質量%未満では、氷上性能及びドライ操縦安定性の改善効果が得られにくい傾向がある。また、共重合体100質量%中の第一化合物の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。30質量%を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
【0046】
上記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1.0×10以上、より好ましくは2.0×10以上である。1.0×10未満では、ヒステリシスロスが大きくなり、低燃費性及び耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、共重合体の重量平均分子量は、好ましくは2.0×10以下、より好ましくは1.5×10以下である。2.0×10を超えると、加工性が悪化する傾向がある。
なお、本発明において、重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0047】
ゴム成分100質量%中の共重合体の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。5質量%未満であると、氷上性能及びドライ操縦安定性の改善効果が得られにくい傾向がある。また、ゴム成分100質量%中の共重合体の含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。90質量%を超えると、破壊強度が極端に悪化する傾向がある。
【0048】
上記共重合体の末端は、変性剤によって変性されていることが好ましい。これにより、フィラー上の特性基と共重合体との親和性が高くなるため、フィラーの分散性が向上する。その結果、ドライ操縦安定性を更に改善することができる。
【0049】
ここで、フィラー上の特性基とは、例えば、水酸基、カルボキシル基、アルデヒト基、カルボニル基、スルホン基、スルフィン基、エステル基、ニトロ基、チオール基、アミノ基などが挙げられる。
【0050】
変性剤としては特に限定されないが、氷上性能及びドライ操縦安定性がより改善されるとともに、耐摩耗性も改善されるという点から、下記一般式のいずれかで表される第二化合物を用いることが好ましい。なお、第二化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
−M−(OR15
(式中、Qはハロゲン又は水素を表す。Mは金属、炭素又はケイ素を表す。R15は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又は脂環族炭化水素基を表す。a及びbはa+b=4の関係を満たす整数を表す。)
【化14】

(式中、R16、R17及びR18は、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R16、R17及びR18の少なくとも1つはアルコキシ基である。R16、R17及びR18は、同じであっても異なっていてもよい。R19及びR20は、水素原子、又はアルキル基を表す。R19及びR20は、同じであっても異なっていてもよい。rは整数を表す。)
【0051】
Qが表すハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。a個のハロゲンは、1種であってもよいし、2種以上であっても良い。
【0052】
Mとしては特に限定されないが、入手容易性などの点から、炭素、ケイ素、チタン、スズなどが好ましい。一方、Mがアルカリ金属又はアルカリ土類金属である場合、第二化合物によって変性された共重合体が活性となり、加水分解するため、不適であることが多い。
【0053】
15の炭素数は、1〜10であり、好ましくは1〜6である。R15の炭素数が10を超えると、変性反応が進みにくくなり、氷上性能やドライ操縦安定性の改善効果が得られにくくなる傾向がある。
【0054】
なお、上記一般式において、a及びbは0以上の整数である。
【0055】
16、R17及びR18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基(好ましくは炭素数1〜3)などが挙げられる。
【0056】
16、R17及びR18のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基などの炭素数1〜8のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4)などが挙げられる。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基などの炭素数5〜8のシクロアルコキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基などの炭素数6〜8のアリールオキシ基など)も含まれる。
【0057】
16、R17及びR18のシリルオキシ基としては、例えば、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜20の芳香族炭化水素基が置換したシリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、ジエチルイソプロピルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、t−ブチルジフェニルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリ−p−キシリルシリルオキシ基など)などが挙げられる。
【0058】
16、R17及びR18のアセタール基としては、例えば、−C(RR′)−OR″、−O−C(RR′)−OR″で表される基を挙げることができる。前者としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、イソプロポキシメチル基、t−ブトキシメチル基、ネオペンチルオキシメチル基などが挙げられ、後者としては、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、プロポキシメトキシ基、i−プロポキシメトキシ基、n−ブトキシメトキシ基、t−ブトキシメトキシ基、n−ペンチルオキシメトキシ基、n−ヘキシルオキシメトキシ基、シクロペンチルオキシメトキシ基、シクロヘキシルオキシメトキシ基などを挙げることができる。
【0059】
16、R17及びR18としては、良好に変性反応が進行し、氷上性能及びドライ操縦安定性が改善されるという理由から、アルコキシ基、アルキル基が好ましい。
【0060】
19及びR20のアルキル基としては、例えば、R16、R17及びR18のアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0061】
r(整数)としては、入手が容易であるとともに、氷上性能を改善できるという理由から、好ましくは2〜5、より好ましくは2〜4、最も好ましくは3である。rが1の場合、変性反応が阻害されやすくなる傾向がある。また、rが6以上であると変性剤としての効果が薄れる傾向がある。
【0062】
第二化合物を表す二つの一般式の内、前者の式で表される化合物の具体例としては、四塩化ケイ素、四塩化チタン、塩化スズ、ジクロロメタン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシチタン、テトラエトキシチタン、ジクロロジイソプロポキシチタン、臭化スズなどが挙げられる。なかでも、入手し易く、取り扱いが容易であるという点で、四塩化ケイ素、テトラエトキシシラン、四塩化チタン、塩化スズが好ましい。
【0063】
第二化合物を表す二つの一般式の内、後者の式で表される化合物の具体例としては、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノプロピル)トリエトキシシランなどが挙げられる。
【0064】
第二化合物以外の変性剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5ジヒドロイミダゾールなどが挙げられる。
【0065】
共重合体の変性方法としては特に限定されず、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報などに記載されている方法など、従来公知の手法を用いることができる。例えば、重合体と変性剤とを接触させればよく、調製した重合体溶液中に変性剤を添加して反応させる方法などが挙げられる。
【0066】
本発明のゴム組成物は、エポキシ化ジエン系ゴムを含有する。エポキシ化ジエン系ゴムとしては特に限定されず、例えば、エポキシ化天然ゴム(ENR)、エポキシ化イソプレンゴム、エポキシ化ブタジエンゴム、エポキシ化ブタジエンアクリロニトリルゴム、エポキシ化スチレンブタジエンゴム、エポキシ化イソプレンブタジエンゴムなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。なかでも、入手が容易であるなどの実用面での観点から、ENR、エポキシ化ブタジエンゴムなどが好ましく、ENRがより好ましい。
なお、本発明において、エポキシ化率とは、エポキシ化される前のゴム中の二重結合の総数に対するエポキシ化された二重結合の数の割合(モル%)のことであり、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0067】
ENRとしては特に限定されず、市販のエポキシ化天然ゴムでも、天然ゴム(NR)をエポキシ化したものでもよい。天然ゴムをエポキシ化する方法は、特に限定されず、クロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などがあげられる(特公平4−26617号公報、特開平2−110182号公報、英国特許第2113692号明細書など)。過酸法としては例えば、天然ゴムに過酢酸や過ギ酸などの有機過酸を反応させる方法などがあげられる。なお、有機過酸の量や反応時間を調整することにより、様々なエポキシ化率のエポキシ化天然ゴムを調製することができる。
【0068】
エポキシ化される天然ゴムとしては、特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)など、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0069】
エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ化率は、0.5モル%以上、好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上、更に好ましくは5モル%以上である。0.5モル%未満では、フィラーの分散性が充分に改善されず、氷上性能及びドライ操縦安定性の改善効果が得られにくい傾向がある。また、エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ化率は、50モル%以下、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下である。50モル%を超えると、破壊特性が悪化する傾向がある。
【0070】
エポキシ化ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1.0×10以上、より好ましくは5.0×10以上である。1.0×10未満では、低分子成分が多いため、ヒステリシスロスが大きくなり、低燃費性能及び耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、エポキシ化ジエン系ゴムの重量平均分子量は、好ましくは2.0×10以下、より好ましくは1.2×10以下である。2.0×10を超えると、充分なフィラーの分散効果が得られず、氷上性能及びドライ操縦安定性の改善効果が得られにくい傾向がある。
【0071】
なお、エポキシ化ジエン系ゴムがブタジエンゴムやイソプレンゴムなどの合成ゴムをエポキシ化したものである場合、重量平均分子量は、重合条件を調整することによって制御することができる。また、エポキシ化ジエン系ゴムがNRをエポキシ化したものである場合、重量平均分子量は、通常、1.0×10〜2.0×10である。
【0072】
ゴム成分100質量%中のエポキシ化ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。5質量%未満であると、充分なフィラーの分散効果が得られず、氷上性能及びドライ操縦安定性の改善効果が得られにくい傾向がある。また、ゴム成分100質量%中のエポキシ化ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。50質量%を超えると、破壊特性が悪化する傾向がある。
【0073】
本発明のゴム組成物は、他のジエン系ゴム(エポキシ化されていないもの)を含有することが好ましい。これにより、破壊特性や耐摩耗性などが改善される。他のジエン系ゴムとしては特に限定されないが、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。なかでも、氷上性能、ドライ操縦安定性能及び耐摩耗性をバランスよく示すことから、NR、IR、BR、SBRが好ましく、NR、IR、BRがより好ましい。なお、NR、IR、BR、SBRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0074】
ゴム成分100質量%中の他のジエン系ゴムの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。20質量%未満であると、破壊特性や耐摩耗性などの改善効果が得られにくくなる傾向がある。また、ゴム成分100質量%中の他のジエン系ゴムの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。90質量%を超えると、フィラーの分散性が充分に改善されず、氷上性能及びドライ操縦安定性の改善効果が得られにくい傾向がある。
【0075】
本発明のゴム組成物は、シリカを含有する。使用できるシリカとしては、例えば、湿式法で製造されたシリカ、乾式法で製造されたシリカなどが挙げられるが、特に制限はない。なお、シリカは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは80m/g以上、更に好ましくは150m/g以上である。50m/g未満であると、シリカの補強効果が小さいため、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、シリカのNSAは、好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/g以下である。300m/gを超えると、シリカの分散性が低下するため、ヒステリシスロスが増大し、燃費性能が悪化する傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0077】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、最も好ましくは30質量部以上である。5質量部未満では、充分な耐摩耗性が得られないおそれがある。また、当該シリカの含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。150質量部を超えると、加工性が悪化する傾向がある。
【0078】
本発明では、シリカとともにシランカップリング剤を併用しても良い。シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,Nジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどが挙げられる。なかでも、補強性改善効果が高いなどの点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドが好ましい。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。1質量部未満では、未加硫ゴム組成物の粘度が高くなるため、加工性が悪くなる傾向がある。また、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。20質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
【0080】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、上記以外の成分として、補強剤、各種オイル、可塑剤、カップリング剤などのタイヤ用又は一般のゴム組成物に配合される各種配合剤及び添加剤を配合することができる。また、これらの配合剤、添加剤の含有量も一般的な量とすることができる。
【0081】
本発明のゴム組成物は、耐摩耗性を改善するために、上記補強剤として、カーボンブラックを含有することが好ましい。使用できるカーボンブラックの例としては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。なお、カーボンブラックは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
カーボンブラックのNSAは、好ましくは80m/g以上、より好ましくは100m/g以上である。80m/g未満では、耐摩耗性を充分に改善できないおそれがある。また、カーボンブラックのNSAは、好ましくは280m/g以下、より好ましくは250m/g以下である。280m/gを超えると、カーボンブラックが分散しにくくなり、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217のA法によって求められる。
【0083】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。5質量部未満では、耐摩耗性を充分に改善できないおそれがある。また、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。150質量部を超えると、加工性が悪化する傾向がある。
【0084】
本発明のゴム組成物は、従来公知の製造方法により製造することができ、その製造方法が限定されるものではない。例えば、上記各成分をバンバリーミキサーや混練ロールなどの混練機を用いて、通常の方法及び条件で混練することによって製造することができる。
【0085】
本発明のゴム組成物は、タイヤ用の各部材に用いることができ、なかでも、トレッド(ベーストレッド及びキャップトレッド)に好適に用いることができる。
【0086】
本発明のスタッドレスタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、必要に応じて上記配合剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材の形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本発明のスタッドレスタイヤを得ることができる。このようにして得られた本発明のスタッドレスタイヤは、優れた氷上性能及びドライ操縦安定性を有する。
【実施例】
【0087】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0088】
以下、第一化合物(1)〜(3)及び(5)、並びに、共重合体(1)〜(9)の合成で用いた各種薬品について説明する。
シクロヘキサン:関東化学(株)製のシクロヘキサン
ピロリジン:関東化学(株)製のピロリジン
4−モルホリノピペリジン:シグマアルドリッチ社製の4−モルホリノピペリジン
チオモルホリン:東京化成工業(株)製のチオモルホリン
ジプロピルアミン:シグマアルドリッチ社製のジプロピルアミン
ジビニルベンゼン:シグマアルドリッチ社製のジビニルベンゼン
ブチルリチウム溶夜:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
イソプロパノール:関東化学(株)製のイソプロパノール
ブタジエン:高千穂化学工業(株)製の1,3−ブタジエン
スチレン:関東化学(株)製のスチレン
第一化合物(4):関東化学(株)製の2−ビニルピリジン
変性剤:アヅマックス(株)製の3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン
テトラヒドロフラン:関東化学(株)製のテトラヒドロフラン
2,6−tert−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック200
テトラクロロシラン/ヘキサン溶液:関東化学(株)製の四塩化ケイ素を、窒素置換されたガラス製バイアル瓶中でヘキサンに溶解させたもの(0.1M テトラクロロシラン/ヘキサン溶液)
【0089】
製造例1(第一化合物(1)の合成)
充分に窒素置換した100ml容器にシクロヘキサン50ml、ピロリジン50mmol、ジビニルベンゼン6.5gを加え、0℃にて1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.7mlを加えて撹拌した。1時間後、イソプロパノールを加えて反応を停止させ、減圧蒸留を行うことで第一化合物(1)を得た。
【0090】
製造例2(第一化合物(2)の合成)
充分に窒素置換した100ml容器にシクロヘキサン50ml、4−モルホリノピペリジン50mmol、ジビニルベンゼン6.5gを加え、0℃にて1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.7mlを加えて攪拌した。1時間後、イソプロパノールを加えて反応を停止させ、減圧蒸留を行うことで第一化合物(2)を得た。
【0091】
製造例3(第一化合物(3)の合成)
充分に窒素置換した100ml容器にシクロヘキサン50ml、チオモルホリン50mmol、ジビニルベンゼン6.5gを加え、0℃にて1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.7mlを加えて撹拌した。1時間後、イソプロパノールを加えて反応を停止させ、減圧蒸留を行うことで第一化合物(3)を得た。
【0092】
製造例4(第一化合物(5)の合成)
充分に窒素置換した100ml容器にシクロヘキサン50ml、ジプロピルアミン50mmol、ジビニルベンゼン6.5gを加え、40℃に加温後、1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.7mlを加えて撹拌した。1時間後、イソプロパノールを加えて反応を停止させ、減圧蒸留を行うことで第一化合物(5)を得た。
【0093】
製造例5(共重合体(1)の合成)
充分に窒素置換した1000ml耐圧容器にシクロヘキサン600ml、ブタジエン1mol、テトラヒドロフラン5mmolを加え、40℃で1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.4mlを加えて撹拌した。3時間後、イソプロパノール3mlを加えて重合を停止させた。容器から反応溶液を取り出し、反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、メタノールで再沈殿処理を行い、加熱乾燥させて共重合体(1)を得た。
【0094】
製造例6(共重合体(2)の合成)
充分に窒素置換した1000ml耐圧容器にシクロヘキサン600ml、ブタジエン1mol、第一化合物(1)5.5mmol(1.1g)を加え、40℃に加温後、1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.4mlを加えて撹拌した。3時間後、イソプロパノール3mlを加えて重合を停止させた。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、メタノールで再沈殿処理を行い、加熱乾燥させて共重合体(2)を得た。
【0095】
製造例7(共重合体(3)の合成)
充分に窒素置換した1000ml耐圧容器にシクロヘキサン600ml、ブタジエン1mol、第一化合物(1)5.5mmol(1.1g)を加え、40℃に加温後、1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.4mlを加えて撹拌した。3時間後、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシランを1mmol添加した。さらに30分撹拌させた後、イソプロパノール3mlを加えて重合を停止させた。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、メタノールで再沈殿処理を行い、加熱乾燥させて共重合体(3)を得た。
【0096】
製造例8〜10(共重合体(4)〜(6)の合成)
表1の配合に従い、製造例7の方法で、共重合体(4)〜(6)をそれぞれ合成した。
【0097】
製造例11(共重合体(7)の合成)
充分に窒素置換した1000ml耐圧容器にシクロヘキサン600ml、ブタジエン1mol、第一化合物(5)70mmol(16.2g)を加え、40℃に加温後、1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.4mlを加えて撹拌した。3時間後、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシランを1mmol添加した。さらに30分撹拌させた後、イソプロパノール3mlを加えて重合を停止させた。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを、添加後、メタノールで再沈殿処理を行い、加熱乾燥させて共重合体(7)を得た。
【0098】
製造例12(共重合体(8)の合成)
表1の配合に従い、製造例11の方法で、共重合体(8)を合成した。
【0099】
製造例13(共重合体(9)の合成)
充分に窒素置換した1000ml耐圧容器にシクロヘキサン600ml、ブタジエン1mol、スチレン0.03mol、第一化合物(1)5.5mmol(1.1g)を加え、40℃に加温後、1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.4mlを加えて撹拌した。3時間後、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシランを0.1mmol添加した。さらに30分撹拌させた後、0.1M テトラクロロシラン/ヘキサン溶液1ml(0.1mmol)を加えて更に30分攪拌し、重合を停止させた。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、メタノールで再沈殿処理を行い、加熱乾燥させて共重合体(9)を得た。
【0100】
得られた共重合体の分析は以下の方法で行った。分析結果を、製造例5〜13で使用した薬品及びその使用量とともに表1に示す。
【0101】
(重量平均分子量(Mw)の測定)
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)を用いて測定した。校正は、標準ポリスチレンによって行った。
【0102】
(共重合体中の第一化合物の含有量の測定)
共重合体中の第一化合物の含有量は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズのNMR装置を用いて測定した。
【0103】
【表1】

【0104】
以下、エポキシ化天然ゴム(ENR)の調製に用いた各種薬品について説明する。
天然ゴムラテックス:野村貿易(株)製のHYTEX(固形分60質量%)
過酸化水素水:関東化学(株)製の30質量%過酸化水素水
氷酢酸:関東化学(株)製の99.7質量%酢酸
界面活性剤:花王(株)製のエマルゲン120
【0105】
調製したENRのエポキシ化率は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズのNMR装置を用いて測定した。
【0106】
調製したENRの重量平均分子量(Mw)は、上記共重合体と同様の方法で測定した。
【0107】
製造例14(過酢酸溶液の調製)
300ml三角フラスコに氷酢酸57gと過酸化水素水107gを加え、撹拌後、恒温槽で40℃に保ったまま24時間静置し、過酢酸溶液(1)を得た。
【0108】
製造例15(ENR(1)の調製)
1Lガラス容器に天然ゴムラテックス300g、蒸留水300g、界面活性剤3.6gを加え、10℃に冷却し、攪拌しながら過酢酸溶液(1)164gを10分間かけて滴下した。滴下終了後、天然ゴムラテックスを5分間撹拌し、さらにメタノール1Lをゆっくり注ぎ込み、凝集物を得た。得られた凝集物を1cm程度に粉砕し、2Lの水に入れて一晩放置させた。凝集物を水で数回洗浄し、1日風乾後、減圧乾燥させ、ENR(1)175gを得た。HNMRの結果、エポキシ化率は10.2モル%であった。また、GPC測定の結果、重量平均分子量は65.0×10であった。
【0109】
製造例16(ENR(2)の調製)
過酢酸溶液(1)の量を16.4g、滴下時間を1分にした以外は製造例14と同じ操作を行い、ENR(2)176gを得た。HNMRの結果、エポキシ化率は0.9モル%であった。また、GPC測定の結果、重量平均分子量は67.2×10であった。
【0110】
製造例17(ENR(3)の調製)
過酢酸溶液(1)の量を5g、滴下時間を20秒にした以外は製造例14と同じ操作を行い、ENR(3)176gを得た。HNMRの結果、エポキシ化率は0.3モル%であった。また、GPC測定の結果、重量平均分子量は66.8×10であった。
【0111】
製造例18(ENR(4)の調製)
天然ゴムラテックスの量を150g、蒸留水の量を150g、界面活性剤の量を2.7g、過酢酸溶液(1)の量を541g、滴下時間を30分にした以外は製造例14と同じ操作を行い、ENR(4)87gを得た。HNMRの結果、エポキシ化率は65.6モル%であった。また、GPC測定の結果、重量平均分子量は69.1×10であった。
【0112】
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
NR:TSR20
IR:JSR(株)製のJSR IR2200
ENR(1)〜(4):上記製造例15〜18で調製
ENR(5):マレーシアゴム局(MRB)製のENR(エポキシ化率:25モル%)
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス含量:97質量%)
共重合体(1)〜(9):上記製造例5〜13で合成
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(チッ素吸着比表面積(NSA):125m/g)
シリカ:デグッサ社製のウルトラシルVN3(チッ素吸着比表面積(NSA):175m/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi69
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
オイル:出光興産(株)製のミネラルオイルPW−380
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD
【0113】
実施例(1)〜(13)及び比較例(1)〜(6)
表2に示す配合処方にしたがって、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を約150℃で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、約80℃で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0114】
上記加硫ゴム組成物を使用して、以下に示す試験方法により、氷上性能及びドライ操縦安定性を評価した。
【0115】
(動的粘弾性試験)
ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製の動的粘弾性試験機を用いて、温度0℃、周波数5Hz、振幅0.1%における弾性率(0.1%G*)と、温度0℃、周波数5Hz、振幅40%における弾性率(40%G*)とを測定した。得られた測定結果を用いて、40%G*から0.1%G*を引いた値(ΔG*)を算出した。そして、下記式
s=(ΔG*)/(0.1%G*)
で表される指標s(sは0<s<1の値である)を氷上性能と操縦安定性のバランスの指標として用い、比較例6を100として指数表示した。sが0に近いほど、氷上性能及びドライ操縦安定性のバランスが良いことを示す。
【0116】
【表2】

【0117】
表2に示す様に、特定の共重合体と、特定のエポキシ化率を有するENRと、シリカとを含有する実施例(1)〜(13)は、これらの成分のいずれかを含まない比較例(1)〜(6)と比較して、sの値が小さいことから、氷上性能及びドライ操縦安定性がバランス良く得られたことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分及びシリカを含有し、
前記ゴム成分が、共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物と、下記一般式で表される第一化合物とを共重合して得られる共重合体、並びに、エポキシ化ジエン系ゴムを含み、
前記エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ化率が0.5〜50モル%であるタイヤ用ゴム組成物。
【化1】

(式中、Rは水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基又は炭素数5〜30の芳香族炭化水素基を表す。Yは窒素若しくは酸素を含む置換基を有する芳香族炭化水素基、又は窒素若しくは酸素を含む芳香族複素環基を表す。)
【請求項2】
前記第一化合物が下記一般式で表される窒素含有化合物である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化2】

(式中、R及びRは水素、
【化3】

又は
【化4】

であり、少なくともR及びRのいずれかは水素ではない。Rは水素又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。Xは(CR、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、又は、(CR1011−S−(CR1314からなる飽和形環形成部を表す。Xは
【化5】

又は
【化6】

で置換されていてもよい。Zは(CR、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、又は、(CR1011−S−(CR1314からなる飽和形環形成部を表す。R〜Rは水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基、炭素数5〜30の芳香族炭化水素基、又は環構成原子数3〜30の複素環基を表す。R〜Rは同じであっても異なっていてもよい。R及びR〜R14は水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基又は炭素数5〜30の芳香族炭化水素基を表す。R及びR〜R14は同じであっても異なっていてもよい。lは3〜10の整数を表す。m及びnは1〜9の整数を表す。)
【請求項3】
前記共重合体100質量%中の第一化合物の含有量が0.05〜30質量%である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム成分100質量%中の共重合体の含有量が5質量%以上である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記共重合体の重量平均分子量が1.0×10〜2.0×10である請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記共重合体の末端が下記一般式のいずれかで表される第二化合物で変性されている請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
−M−(OR15
(式中、Qはハロゲン又は水素を表す。Mは金属、炭素又はケイ素を表す。R15は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又は脂環族炭化水素基を表す。a及びbはa+b=4の関係を満たす整数を表す。)
【化7】

(式中、R16、R17及びR18は、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R16、R17及びR18の少なくとも1つはアルコキシ基である。R16、R17及びR18は、同じであっても異なっていてもよい。R19及びR20は、水素原子、又はアルキル基を表す。R19及びR20は、同じであっても異なっていてもよい。rは整数を表す。)
【請求項7】
前記エポキシ化ジエン系ゴムの重量平均分子量が1.0×10〜2.0×10である請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
前記ゴム成分100質量%中のエポキシ化ジエン系ゴムの含有量が5〜50質量%である請求項1〜7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
前記エポキシ化ジエン系ゴムがエポキシ化天然ゴムである請求項1〜8のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項10】
前記ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量が10〜150質量部である請求項1〜9のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項11】
天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含有する請求項1〜10のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項12】
前記ゴム成分100質量部に対して5〜150質量部のカーボンブラックを含有する請求項1〜11のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のゴム組成物を用いたスタッドレスタイヤ。

【公開番号】特開2011−80023(P2011−80023A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235683(P2009−235683)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】