説明

タッチパネルの電極層製造方法

【課題】耐久性の高いタッチパネル1を提供する。
【解決手段】基板22上に透明電極膜18を形成し、透明電極膜18の表面に第一の金属薄膜31を形成してから、第一の金属薄膜31表面にスパッタリング法で第二の金属薄膜32を形成して下部電極層30とする。第二の金属薄膜32を成膜する際には、スパッタリング雰囲気中に酸素ガス又は窒素ガスを導入し、導入量を増大しながら金属ターゲット61をスパッタリングするので、第二の金属薄膜32は表面側程酸素又は窒素の含有量が多くなり、下部電極層30の表面の耐摩耗性が高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタッチパネルの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タッチパネルはATMや、自動販売機や、携帯情報端末、携帯ゲーム機、電子案内表示板、カーナビゲーション、携帯電話等に広く用いられている。
タッチパネルは一般に、表面にITO薄膜等の透明電極膜が形成された2枚のパネルを、透明電極膜同士を対向した状態で貼り合わせて作成される。2枚のパネルのうち、少なくとも一方のパネルは可撓性を有しており、可撓性パネルを押圧すると、押圧した場所で透明電極膜同士が導通する。このようなタッチパネルにはマトリックス方式と呼ばれるものと、抵抗膜方式と呼ばれるものがある。
【0003】
いずれの方式のものも、透明電極膜同士を直接又は間接的に接触させることで、導通させるから、同じ場所を繰り返し押圧すると、摩擦によって透明電極膜に白濁化やクラックが生じることがある。特に、可撓性パネルで押圧される側のパネルの、透明電極に対する対応が求められている。
【特許文献1】特開2003−151366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、耐久性の高いタッチパネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基板と、前記基板上に配置された下部電極層とを有する表示パネルと、可撓性フィルムと、可撓性フィルム上に配置された上部電極層とを有する可撓性パネルとが、前記下部電極層と、前記上部電極層とを向かい合わせて所定間隔離間して配置され、前記可撓性フィルムを押圧し、前記上部電極層を前記下部電極層と接触させると、前記上部電極層と前記下部電極層の間に電流が流れ、接触位置が特定できるように構成されたタッチパネルの、前記下部電極層を製造する電極層製造方法であって、前記基板上に酸化物透明導電体から成る透明電極膜を形成し、前記透明電極膜の表面に、第一の金属薄膜を形成し、前記第一の金属薄膜表面に、スパッタリング法により、スパッタリング雰囲気中の酸素ガス圧力又は窒素ガス圧力のいずれか一方又は両方の圧力を増大させながら、金属酸化物又は金属窒化物を含有する第二の金属薄膜を形成し、前記透明電極膜と、前記第一、第二の金属薄膜とで、前記下部電極層を構成させる電極層製造方法である。
本発明は電極層製造方法であって、前記第一の金属薄膜は、Tiと、Zrと、Nbと、Taとからなる金属群より選択されるいずれか1種類の金属を主成分とさせる電極層製造方法である。
本発明は電極層製造方法であって、前記第二の金属薄膜は、Tiと、Zrと、Nbと、Taとからなる金属群より選択されるいずれか1種類の金属の酸化物又は窒化物を含有を主成分とさせる電極層製造方法である。
本発明は電極層製造方法であって、真空槽内に配置され、一の回転軸線を中心に回転移動される回転体と、保持対象基板の成膜面を前記回転軸線とは反対側に向け、前記回転体に固定する保持装置と、前記保持対象基板が回転移動する円周よりも外側にそれぞれ位置されたイオンガンとターゲットと、酸素又は窒素ガスを前記真空槽内に導入する反応ガス導入系と、スパッタリングガスを前記真空槽内に導入するスパッタリングガス導入系とを有し、前記ターゲットは、Tiと、Zrと、Nbと、Taとからなる金属群より選択されるいずれか1種類の金属を含有する成膜装置を用い、前記スパッタリングガス導入系から前記スパッタリングガスを導入し、前記反応ガス導入系から酸素又は窒素ガスのいずれか一方又は両方を導入し、前記酸素ガス又は窒素ガスの導入量を増加させながら前記ターゲットをスパッタリングし、前記第二の金属薄膜を成長させる電極層製造方法である。
本発明は電極層製造方法であって、前記イオンガンから前記真空槽内部に希ガスのプラズマを放出させながら前記ターゲットをスパッタリングする電極層製造方法である。
【0006】
スパッタリング中に酸素又は窒素ガスの圧力を増大させる際、成膜開始時よりも成膜終了時が多くなるのであれば、段階的に増加させてもよいし、連続的に増加させてもよい。
【0007】
第二の金属薄膜は金属の酸化物又は窒化物を含有しているので透明性が高い。第二の金属薄膜は表面にいくほど、酸素又は窒素の含有量が多い。酸素や窒素の含有量の高い膜は機械的強度が高いので、下部電極層の表面は耐摩耗性が高く、繰り返し押圧されてもクラックや白濁化がおこらない。
【0008】
酸素や窒素の含有量が多いと電気抵抗が低くなるが、第二の金属薄膜は基板側程酸素や窒素の含有量が低く、しかも、第一の金属薄膜は酸素と窒素のいずれも含まないから、下部電極層全体の電気抵抗は低い。
【0009】
第二の金属薄膜は透明電極膜に直接接触しないので、第二の金属薄膜から酸素や窒素が透明電極膜に移行せず、透明電極膜の電気抵抗が上昇しない。
【発明の効果】
【0010】
下部電極層は透明性と電気的特性が優れているだけでなく、耐摩耗性が高いから、繰り返し押圧しても白濁化が起こらず、タッチパネルの寿命が長くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1の符号1はタッチパネルの一例を示しており、タッチパネル1は、表示装置20と、可撓性パネル10とを有している。
表示装置20は、LCDやPDP等の板状の表示パネル21を有しており、表示パネル21の表面又は裏面のうち、いずれか一方を表示面24として、該表示面24に図形や文字等の画像情報が表示されるように構成されている。
【0012】
ここでは、表示面24上に、ガラス基板やプラスチック基板等の透明な基板22が配置され、反射防止層15と、下部電極層30とが、基板22上に記載された順番に積層されているが、基板22を表示パネル21の一部で構成し、基板22の反射防止層15が積層される側の面で表示面24を構成してもよい。更に、反射防止層15を設けず、下部電極層30を基板22の表面に直接形成してもよい。
下部電極層30表面には複数のスペーサ29が間隔をあけて配置されている。
【0013】
可撓性パネル10は、樹脂フィルム等の可撓性フィルム11と、可撓性フィルム11表面上に形成された上部電極層17とを有しており、可撓性パネル10は、上部電極層17が形成された面を下部電極層30に向けた状態で、スペーサ29上に乗せられている。従って、上部電極層17と下部電極層30の間は、スペーサ29の高さだけ離間している。
【0014】
可撓性フィルム11と、上部電極層17と、下部電極層30と、反射防止層15と、基板22はそれぞれ透明であり、表示面24に表示される画像情報を、可撓性パネル10側から観察することができる。
反射防止層15は、屈折率の異なる透明膜12〜14が複数(ここでは3層)積層されて構成されている。
【0015】
太陽光や照明光等の外光が可撓性パネル10を透過して下部電極層30表面で反射する光を表面反射光とすると、各透明膜12〜14の屈折率及び膜厚は、表面反射光に対し、各透明膜12〜14表面で反射する界面反射光の位相がずれ、表面反射光が界面反射光で減衰されるように設計されている。従って、本発明の表示パネル21の表示する画像を鮮明に観察できる。
【0016】
上部電極層17の材質及び膜厚は、可撓性フィルム11と一緒に変形可能にされており、可撓性フィルム11が曲がると、上部電極層17が一緒に変形し、可撓性パネル10全体が変形可能になっている。
【0017】
このタッチパネル1の使用者は、表示パネル21の画像情報を観察し、その画像情報に基づき位置を選択し、選択した位置で可撓性パネル10を押圧する。可撓性パネル10は押圧された場所が湾曲し、その押圧場所で上部電極層17が下部電極層30に接触し、電気的に接続される。
【0018】
上部電極層17と下部電極層30はそれぞれ分析装置に接続されており、タッチパネル1が抵抗膜方式の場合は、押圧した位置に応じた値の電圧値から押圧位置が分かり、マトリックス方式の場合は、押圧によって導通した配線の位置から押圧位置が分かる。
【0019】
下部電極層30は、基板22の表面上に配置された透明電極膜18を有しており、透明電極膜18表面に第一の金属薄膜31と、第二の金属薄膜32とが記載した順番に積層されている。
【0020】
次に、第一、第二の金属薄膜31、32の形成に用いる成膜装置について説明する。図2の符号50は成膜装置の一例を示している。
この成膜装置50は、真空槽51と、回転軸53と、金属ターゲット61と、無機ターゲット62と、透明導電材料ターゲット63と、イオンガン55とを有している。
【0021】
回転軸53は真空槽51内部に配置されており、回転軸53には回転体52が固定されている。回転軸53は不図示の回転手段に接続されており、回転手段から動力が伝達されると、中心軸線(回転軸線)を中心に回転するように構成されている。
【0022】
回転体52の側面には不図示の保持装置が設けられている。保持装置は、保持対象基板の成膜面を、回転軸線と反対側に向けた状態で、回転軸線と平行に保持するように構成されており、回転軸53が回転すると、保持対象基板は回転体52と一緒に回転軸線を中心として回転する。
【0023】
真空槽51にはスパッタガス導入系57が接続されている。イオンガン55は放出口を有しており、スパッタガス導入系57又は他の導入系から希ガスが導入され、導入された希ガスをプラズマ化し、プラズマ化した希ガスを放出口から引き出し、イオンビームとして放出する。
【0024】
イオンガン55の放出口と、金属ターゲット61と、無機ターゲット62と、透明導電材料ターゲット63は、真空槽51内部の、保持対象基板が回転移動する円周よりも外側であって、該円周に沿って並べられている。
放出口と、金属ターゲット61と、無機ターゲット62と、透明導電材料ターゲット63の高さは、保持対象基板が保持装置に保持される時の高さと略等しく、保持対象基板は回転移動する時に、放出口と、金属ターゲット61と、無機ターゲット62と、透明導電材料ターゲット63と対面する位置を移動する。
【0025】
次に、この成膜装置50を用いて第一、第二の金属薄膜31、32を成膜する工程について説明する。
真空槽51には、反応ガス導入系58と、真空排気系59とが接続されており、真空槽51内部を真空排気系59で真空排気し、真空雰囲気を形成してから、該真空雰囲気を維持しながら、1又は複数枚の基板22を真空槽51内部に搬入し、各基板22を保持装置に保持させる。
金属ターゲット61と、無機ターゲット62と、透明導電材料ターゲット63はそれぞれ電源66〜68に接続されている。
【0026】
真空排気を続けながら、スパッタガス導入系57からスパッタガスを、反応ガス導入系58から酸素ガスを導入して、所定圧力のスパッタ雰囲気を形成する。該スパッタ雰囲気を維持しながら、真空槽51を接地電位に置いた状態で、無機ターゲット62(ここではSiターゲット)に電圧を印加し、イオンガン55からイオンビームを放射すると、無機ターゲット62からスパッタ粒子が放出され、酸素ガスがイオンビームでイオン化する。
【0027】
スパッタ粒子の放出と酸素ガスのイオン化を続けながら、基板22を回転移動させると、基板22は無機ターゲット62と対面する位置を通過する時にスパッタ粒子が到達して原子層(ここではSi層)が形成され、その原子層はイオン化した酸素で酸化されて酸化物(ここではSiO2)からなる透明膜12が形成される。
【0028】
ここでは、1層目の透明膜12を成膜後、基板22の回転移動と、酸素ガスのイオン化を続けながら、金属ターゲット61(ここではTiターゲット)をスパッタリングして、1層目と屈折率の異なる透明膜13(ここではTiO膜)を形成し、次いで無機ターゲット62をスパッタリングして2層目と屈折率の異なる透明膜14(ここではSiO2膜)を形成し、反射防止層15を形成したが、屈折率の異なる透明膜12〜14が積層されるのであれば、スパッタリングするターゲットの種類及び順番と、透明膜12〜14の数は特に限定されるものではない。
反射防止層15を成膜後、イオンビームの照射を停止し、酸素ガスの導入とスパッタガスの導入を続けながら、透明導電材料ターゲット63をスパッタリングして、反射防止層15の表面に透明導電材料から成る透明電極膜18を形成する。
【0029】
透明導電材料ターゲット63のスパッタリングと、酸素ガスの導入を停止し、真空排気と、Ar、Kr等の希ガスからなるスパッタガスの導入を続け、酸素と窒素のいずれも含有しないスパッタ雰囲気を形成する。該スパッタ雰囲気を維持し、基板22を回転移動させながら、金属ターゲット61に電圧を印加してスパッタリングすると、透明電極膜18の表面に酸素と窒素を含有しない第一の金属薄膜31(ここではTiからなる)が形成される。
【0030】
第一の金属薄膜31が所定膜厚に成長したところで、スパッタガスの導入と、真空排気を続けながら、酸素ガスからなる反応ガスの導入と、イオンビームの照射を開始し、スパッタ雰囲気に酸素ガスを含有させて、金属ターゲット61のスパッタリングを続けると、金属酸化物(ここではTiO)の薄膜の成長が開始する。
【0031】
金属ターゲット61のスパッタリングを続けながら、酸素ガスの導入量を増大させると、スパッタ雰囲気中の酸素分圧が増大し、第一の金属薄膜31側程酸素含有量が低く、表面側程酸素含有量が高い第二の金属薄膜32が形成される。
【0032】
第二の金属薄膜32を成膜する時には、金属ターゲット61だけではなく、無機ターゲット62や、透明導電材料ターゲット63にも電圧を印加すれば、イオン化した酸素ガスはターゲット61〜63にひきつけられ、イオン化した酸素ガスが真空槽51内部に広がるから、第二の金属薄膜32の成膜速度が速くなる。
【0033】
この場合、無機ターゲット62と透明導電材料ターゲット63の表面をシャッター72、73で覆っておき、金属ターゲット61の表面をシャッター71で覆わずに露出させておけば、基板22表面上には金属ターゲット61が放出するスパッタ粒子だけが到達し、無機ターゲット62と透明導電材料ターゲット63が放出するスパッタ粒子が第二の金属薄膜32に混入しない。
【0034】
第二の金属薄膜32が形成される時には、透明電極膜18は第一の金属薄膜31で覆われているから、酸素や窒素に曝されない。また、透明電極膜18の一部が露出していたとしても、基板22はターゲット61と対面した状態で静止せずに回転しているから、透明電極膜18は高温にならず、酸素や窒素と反応する量が少ない。従って、第二の金属薄膜32の成膜中に透明電極膜18の電気抵抗が上がらない。
【0035】
第一、第二の金属薄膜31、32を形成した後、真空槽51から基板22を取り出し、第二の金属薄膜32表面にスペーサー29を配置してから、表示装置20を可撓性パネル10とを貼り合わせれば、図1に示したようなタッチパネル1が得られる。
【0036】
以上は、同じ金属ターゲット61を用いて第一、第二の金属薄膜31、32を成膜する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、真空槽51内部に2つ以上金属ターゲット61を配置し、第一の金属薄膜31を形成後、スパッタリングする金属ターゲット61を変えて第二の金属薄膜32を形成してもよい。
【0037】
金属ターゲット61は、Tiと、Taと、Nbと、Zrとからなる金属群より選択されるいずれか1種類の金属を含有するものであって、1種類の金属で金属ターゲット61を構成してもよいし、2種類の金属で金属ターゲット61を構成してもよい。
【0038】
第一、第二の金属薄膜31、32の成膜に、異なる種類の金属で構成された金属ターゲット61を用いれば、第一の金属薄膜31とは異なる種類の金属の窒化物及び/又は酸化物からなる第二の金属薄膜32が形成される。
第一、第二の金属薄膜31、32の膜厚は特に限定されないが、第一の金属薄膜31の膜厚が厚すぎると透明性が劣り、第二の金属薄膜32の膜厚が厚すぎると電気抵抗が劣るから、第一、第二の金属薄膜31、32の合計膜厚は0.1nm以上5nm以下が好ましい。
【0039】
以上は、同じ真空槽51内部で反射防止層15と透明電極膜18を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、反射防止層15と透明電極膜18を異なる成膜装置で成膜してから、図2の成膜装置50に搬入してもよいが、同じ成膜装置50で連続して成膜すれば、基板22が大気に曝されないので、下部電極層30の膜質がよくなる。
【0040】
透明導電材料ターゲット63は、In23を主成分とし、2A族、4A族、2B族、4B族からなる元素群より選択される少なくとも1種の元素を0.1原子%以上20原子%以下含む材料、ZnOを主成分として1A族、3A族、4A族、1B族、3B族、4B族とからなる元素群より選択される少なくとも1種の元素を0.1原子%以上20原子%以下含む材料、又は、SnO2を主成分として3A族、5A族、3B族、5B族とからなる元素群より選択される少なくとも1種の元素を0.1原子%以上20原子%以下含む材料が好ましい。
【0041】
以上は、表示装置20用の基板22の表面上に第一、第二の金属薄膜31、32を成膜する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、保持対象基板として可撓性フィルム11を用い、可撓性フィルム11の表面に透明電極膜27を成膜した後、透明電極膜27の表面に、第一、第二の金属薄膜31、32を記載した順番に成膜して、透明電極膜27と、第一、第二の金属薄膜31、32とを有する上部電極層80を形成してから、可撓性パネル10を表示装置20と貼り合わせて、図3に示すようなタッチパネル81を作成してもよい。
【0042】
図3のタッチパネル81では、透明電極膜27と、可撓性フィルム11の間に反射防止層15が配置されているが、反射防止層15を設けず、上部電極層80を可撓性フィルム11表面に直接配置してもよい。
第二の金属薄膜32を成膜する時の反応ガスとしては、化学構造中に酸素原子を含有するものであれば、酸素ガス以外にもO2、O3、H2Oを用いることができるし、化学構造中に窒素原子を含有するガス、例えば、窒素ガスと、NH3を用いることができる。これらの反応ガスは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を同時に用いてもよい。
【実施例】
【0043】
酸素ガスを反応ガスとして用い、Tiからなる金属ターゲット61と、Siからなる無機ターゲット62を交互にスパッタリングして、SiO2膜と、TiO膜と、SiO2膜を記載した順番に積層し、基板22表面に反射防止層15を形成した。
【0044】
次いで、酸素欠損補充最適量の酸素を真空槽51に導入しながら、ITO(In23とSnO2(10重量%))からなる透明導電材料ターゲット63をスパッタリングし、ITO膜からなる透明電極膜18を形成した。
【0045】
反射防止層15と、透明電極膜18が形成された状態の基板22を処理対象基板とし、この処理対象基板の透明電極膜18の表面に、下記表1〜8の「表面保護膜の種類」の欄に記載した方法で金属薄膜を積層して下部電極層30を形成し、試験片とした。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
【表6】

【0052】
【表7】

【0053】
【表8】

【0054】
上記表1、2はTiからなるターゲットを、表3、4はZrからなるターゲットを、表5、6はNbからなるターゲットと、表7、8はTaからなるターゲットをそれぞれ用いた場合である。
【0055】
上記表1〜8中、「無し」は金属薄膜を形成せず、透明電極膜18で下部電極層を構成した場合である。
上記表1、3、5、7の「Ti」と、「Zr」と、「Nb」と、「Ta」は、それぞれ反応ガスを導入せずにターゲットをスパッタリングした場合であり、「酸化Ti」と「窒化Ti」は反応ガスとしてそれぞれ酸素と窒素を導入してスパッタリングした場合であり、「窒素添加酸化Ti」は酸素と窒素の両方を導入してスパッタリングを行った場合である。
【0056】
また、上記表2、4、6、8の「Ti+酸化Ti」と、「Ti+窒化Ti」と。「Zr+酸化Zr」と、「Zr+窒化Zr」と、「Nb+酸化Nb」と、「Nb+窒化Nb」と、「Ta+酸化Ta」と、「Ta+窒化Ta」は、反応ガスを用いずにターゲットをスパッタリングした後、一定量の反応ガス(酸素ガス又は窒素ガス)を導入しながらターゲットをスパッタリングさせた場合であり、「Ti+酸化Ti(傾斜)」と、「Ti+窒化Ti(傾斜)」と、「Zr+酸化Zr(傾斜)」と、「Zr+窒化Zr(傾斜)」と、「Nb+酸化Nb(傾斜)」と、「Nb+窒化Nb(傾斜)」と、「Ta+酸化Ta(傾斜)」と、「Ta+窒化Ta(傾斜)」は、反応ガスを用いずにターゲットをスパッタリングした後、反応ガス(酸素ガス又は窒素ガス)の導入量を増大させながらスパッタリングを行った場合である。
【0057】
また、表1〜8中の0.1nmと2.5nmと5nmは第一、第二の金属薄膜31、32の合計膜厚を示であり、第一、第二の金属薄膜31、32の各膜厚は、合計膜厚の50%となるように設定した。
尚、第一、第二の金属薄膜31、32の合計膜厚が0.1nmでは、実際には膜ではなく、透明電極膜18の表面に島状に形成されていると推測される。
各試験片について、下記に示す摺動特性試験と、「電圧降下評価」試験を行った。
【0058】
<摺動特性試験>
図4の符号90は摺動試験機を示しており、摺動試験機90は台91を有しており、台91上にはボールベアリング96が配置され、ボールベアリング96上にステージ98が乗せられている。
【0059】
各試験片を下部電極層30が形成された側の面が、上部電極層17と対向するように、図1に示した可撓性パネル10と貼り合わせて、試験用パネルを作成した。試験用パネルを、可撓性パネル10を上方に向けた状態でステージ98上に乗せ、ステージ98上の振動子94下端に樹脂製の振動子先端部95を取り付けた。
【0060】
更に、振動子94と、振動子先端部95と、荷重93との合計が、それぞれ250gf、500gf、1000gfになるように、振動子94上端に荷重93を取り付けた。振動子先端部95で可撓性パネル10を押圧しながら、荷重250gfで30万回、荷重500gfで6万回、10万回、20万回、荷重1000gfで5万回、振動子94をそれぞれ往復移動させた。
【0061】
往復移動後の試験パネルについて、下部電極層30表面に傷が見られないものを○、部分的に傷が見られたものを△、摺動した部分全体に傷が見られたものを×として評価した。評価結果を上記表1〜8に記載した。
上記表1〜8から明らかなように、下部電極層30の表面に酸化物又は窒化物で構成された第二の金属薄膜32が形成されたものは、耐磨耗性が高いことが確認された。
【0062】
<電圧降下評価>
試験片の下部電極層30が形成された側の表面に、Agペーストを塗布し、2本の細長電極を互いに平行になるように形成した。各電極間に定電圧電源により電圧を印加し、電圧計のプローブを片方の電極に接触させ、もう一方のプローフを電極と電極の間で下部電極層30表面に接触させ、電極と電極間の距離と、電圧降下の関係を調べ、電極と電極の間の距離と、電圧降下の関係が線形性が確認されたものを○とし、下部電極層30表面の電気抵抗が高く、電極と電極の間の距離と、電圧降下の関係に線形性が確認されなかったものを×として評価した。
その結果を下記表9〜12に示す。
【0063】
【表9】

【0064】
【表10】

【0065】
【表11】

【0066】
【表12】

【0067】
上記表9〜12から明らかなように、下部電極層30を酸化物又は窒化物で構成した場合には線形性が確認されなかったが、下部電極層30を金属薄膜と、酸化物又は窒化物の二層構造としたものは線形性が確認され、下部電極層30の電気抵抗が低いことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第一例のタッチパネルを説明するための断面図
【図2】本発明に用いる成膜装置を説明するための断面図
【図3】第二例のタッチパネルを説明するための断面図
【図4】摺動試験機を説明するための模式的な断面図
【符号の説明】
【0069】
1、81……タッチパネル 10……可撓性パネル 11……可撓性フィルム 15……反射防止層 17……上部電極層 18……透明電極膜 20……表示装置 21……表示パネル 30……下部電極層 31……第一の金属薄膜 32……第二の金属薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に配置された下部電極層とを有する表示パネルと、
可撓性フィルムと、可撓性フィルム上に配置された上部電極層とを有する可撓性パネルとが、
前記下部電極層と、前記上部電極層とを向かい合わせて所定間隔離間して配置され、前記可撓性フィルムを押圧し、前記上部電極層を前記下部電極層と接触させると、前記上部電極層と前記下部電極層の間に電流が流れ、接触位置が特定できるように構成されたタッチパネルの、前記下部電極層を製造する電極層製造方法であって、
前記基板上に酸化物透明導電体から成る透明電極膜を形成し、
前記透明電極膜の表面に、第一の金属薄膜を形成し、
前記第一の金属薄膜表面に、スパッタリング法により、スパッタリング雰囲気中の酸素ガス圧力又は窒素ガス圧力のいずれか一方又は両方の圧力を増大させながら、金属酸化物又は金属窒化物を含有する第二の金属薄膜を形成し、前記透明電極膜と、前記第一、第二の金属薄膜とで、前記下部電極層を構成させる電極層製造方法。
【請求項2】
前記第一の金属薄膜は、Tiと、Zrと、Nbと、Taとからなる金属群より選択されるいずれか1種類の金属を主成分とさせる請求項1記載の電極層製造方法。
【請求項3】
前記第二の金属薄膜は、Tiと、Zrと、Nbと、Taとからなる金属群より選択されるいずれか1種類の金属の酸化物又は窒化物を含有を主成分とさせる請求項1記載の電極層製造方法。
【請求項4】
真空槽内に配置され、一の回転軸線を中心に回転移動される回転体と、
保持対象基板の成膜面を前記回転軸線とは反対側に向け、前記回転体に固定する保持装置と、
前記保持対象基板が回転移動する円周よりも外側にそれぞれ位置されたイオンガンとターゲットと、
酸素又は窒素ガスを前記真空槽内に導入する反応ガス導入系と、
スパッタリングガスを前記真空槽内に導入するスパッタリングガス導入系とを有し、
前記ターゲットは、Tiと、Zrと、Nbと、Taとからなる金属群より選択されるいずれか1種類の金属を含有する成膜装置を用い、
前記スパッタリングガス導入系から前記スパッタリングガスを導入し、前記反応ガス導入系から酸素又は窒素ガスのいずれか一方又は両方を導入し、前記酸素ガス又は窒素ガスの導入量を増加させながら前記ターゲットをスパッタリングし、前記第二の金属薄膜を成長させる請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の電極層製造方法。
【請求項5】
前記イオンガンから前記真空槽内部に希ガスのプラズマを放出させながら前記ターゲットをスパッタリングする請求項4記載の電極層製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−262836(P2008−262836A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105270(P2007−105270)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】