説明

タンパク質キナーゼとしての化合物および組成物

本発明は新規クラスの化合物、このような化合物を含む医薬組成物および異常なまたは無秩序なキナーゼ活性と関連する疾患または障害、特にAbl、Bcr−Abl、Aurora−A、Axl、BMX、CHK2、c−RAF、cSRC、Fes、FGFR3、Flt3、IKKα、IR、JNK2α2、Lck、Met、MKK6、MST2、p70S6K、PDGFRα、PKA、PKD2、ROCK−II、Ros、Rsk1、SAPK2α、SAPK2β、SAPK3、SAPK4、Syk、Tie2およびTrkBキナーゼの異常な活性化が関与する疾患または障害を処置または予防するためにこのような化合物を使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、35 U.S.C. §119(e)の下に2005年10月28日出願の米国仮特許出願60/731,179の優先権の利益を主張する。優先権主張の基礎の出願の記載は、引用により、それらの全体として、かつすべての目的に関して、本出願に包含される。
【0002】
技術分野
本発明は、新規クラスの化合物、このような化合物を含む医薬組成物および異常なまたは脱制御されたキナーゼ活性と関連する疾患または障害、特にAbl、Bcr−Abl、Aurora−A、Axl、BMX、CHK2、c−RAF、cSRC、Fes、FGFR3、Flt3、IKKα、IR、JNK2α2、Lck、Met、MKK6、MST2、p70S6K、PDGFRα、PKA、PKD2、ROCK−II、Ros、Rsk1、SAPK2α、SAPK2β、SAPK3、SAPK4、Syk、Tie2およびTrkBキナーゼの異常な活性化が関与する疾患または障害の処置または予防におけるこのような化合物の使用法を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
タンパク質キナーゼは、広範囲の細胞過程の制御ならびに細胞機能の制御の維持の中心的役割を有する、タンパク質の大きなファミリーを代表する。これらのキナーゼの部分的、非限定的リストは下記を含む:受容体チロシンキナーゼ、例えば、血小板由来増殖因子受容体キナーゼ(PDGF−R)、神経増殖因子受容体、trkB、Met、および繊維芽細胞増殖因子受容体、FGFR3;非受容体チロシンキナーゼ、例えば、Ablおよび融合キナーゼBCR−Abl;ならびにセリン/スレオニンキナーゼ、例えばb−RAF、SGK、MBCR−Abl、Lck、Csk、Fes、Bmxおよびc−src;ならびにセリン/スレオニンキナーゼ例えば、b−RAF、c−RAF、sgk、MAPキナーゼ(例えば、MKK4、MKK6、など)ならびにSAPK2α、SAPK2βおよびSAPK3。異常なキナーゼ活性は良性および悪性増殖性障害ならびに免疫系および神経系の不適切な活性化に由来する疾患を含む、多くの疾患状態で観察されている。
【0004】
本発明の新規化合物は、1種またはそれ以上のタンパク質キナーゼを阻害し、故に、キナーゼ−関連疾患の処置に有用であると期待される。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
第1の局面において、本発明は、式I:
【化1】

〔式中:
YはNおよびCHから選択され;
は水素およびC1−6アルキルから選択され;
は水素およびC1−6アルキルから選択されるか;またはRおよびRはRおよびRが結合しているフェニル環と一緒にC6−10アリールもしくはC5−10ヘテロアリールを形成し;
はNRおよびXから選択され;ここでXは結合およびC1−4アルキレンから選択され;Rは水素およびC1−6アルキルから選択され;Rは所望により独立してハロ−置換−C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキルおよびC3−8ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルから選択される1から3個のラジカルで置換されているC6−10アリールから選択され;ここで、Rの該ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキル置換基は所望によりC1−6アルキルで置換されている〕
で示される化合物ならびにそれらのN−オキシド誘導体、プロドラッグ誘導体、保護された誘導体、個々の異性体および異性体の混合物;ならびにこのような化合物の薬学的に許容される塩および溶媒和物(例えば、水和物)を提供する。
【0006】
第2の局面において、本発明は、式Iの化合物またはそれらのN−オキシド誘導体、個々の異性体および異性体の混合物;またはそれらの薬学的に許容される塩を1種またはそれ以上の適当な賦形剤と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0007】
第3の局面において、本発明は、キナーゼ活性、特にAbl、Bcr−Abl、Aurora−A、Axl、BMX、CHK2、c−RAF、cSRC、Fes、FGFR3、Flt3、IKKα、IR、JNK2α2、Lck、Met、MKK6、MST2、p70S6K、PDGFRα、PKA、PKD2、ROCK−II、Ros、Rsk1、SAPK2α、SAPK2β、SAPK3、SAPK4、Syk、Tie2および/またはTrkB活性の阻害が疾患の病状および/または総体症状を予防、阻止または改善できる動物の疾患の処置法であって、治療有効量の式Iの化合物またはそれらのN−オキシド誘導体、個々の異性体および異性体の混合物またはそれらの薬学的に許容される塩を動物に投与することを含む方法を提供する。
【0008】
第4の局面において、本発明は、キナーゼ活性、特にAbl、Bcr−Abl、Aurora−A、Axl、BMX、CHK2、c−RAF、cSRC、Fes、FGFR3、Flt3、IKKα、IR、JNK2α2、Lck、Met、MKK6、MST2、p70S6K、PDGFRα、PKA、PKD2、ROCK−II、Ros、Rsk1、SAPK2α、SAPK2β、SAPK3、SAPK4、Syk、Tie2および/またはTrkB活性が疾患の病状および/または総体症状に関与する動物の疾患を処置するための薬剤の製造における式Iの化合物の使用を提供する。
【0009】
第5の局面において、本発明は、式Iの化合物ならびにそれらのN−オキシド誘導体、プロドラッグ誘導体、保護された誘導体、個々の異性体および異性体の混合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩の製造法を提供する。
【0010】
発明の詳細な説明
定義
基および他の基、例えばハロ置換アルキルおよびアルコキシの構造成分としての“アルキル”は、直鎖または分岐鎖であり得る。C1−4−アルコキシはメトキシ、エトキシなどを含む。ハロ置換アルキルはトリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルなどを含む。
【0011】
“アリール”は6から10個の環炭素原子を含む単環式または縮合二環式芳香環集合体を意味する。例えば、アリールはフェニルまたはナフチル、好ましくはフェニルであり得る。“アリーレン”はアリール基から生じる二価のラジカルを意味する。
【0012】
“ヘテロアリール”は1個またはそれ以上の環員がヘテロ原子であるときの上記アリールを定義するとおりのものである。例えば、ヘテロアリールはピリジル、インドリル、インダゾリル、キノキサリニル、キノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾ[1,3]ジオキソール、イミダゾリル、ベンゾ−イミダゾリル、ピリミジニル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、チエニルなどを含む。
【0013】
“シクロアルキル”は示された環原子の数を含む飽和または部分的に不飽和、単環式、縮合二環式または架橋多環式環集合体を意味する。例えば、C3−10シクロアルキルはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含む。
【0014】
“ヘテロシクロアルキル”は本明細書に定義のとおりのシクロアルキルであるが、ただし、示された1個またはそれ以上の環炭素は−O−、−N=、−NR−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−S(O)−から選択される部分により置換されており、ここでRは水素、C1−4アルキルまたは窒素を保護する基である。例えば、本発明の化合物を記載するために本明細書で使用されるC3−8ヘテロシクロアルキルはモルホリノ、ピロリジニル、ピロリジニル−2−オン、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリジニロン(piperidinylone)、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デカ−8−イルなどを含む。
【0015】
“ハロゲン”(またはハロ)は好ましくはクロロまたはフルオロを示すが、またブロモまたはヨードであり得る。
【0016】
“キナーゼパネル”はAbl(ヒト)、Abl(T315I)、JAK2、JAK3、ALK、JNK1α1、ALK4、KDR、Aurora−A、Lck、Blk、MAPK1、Bmx、MAPKAP−K2、BRK、MEK1、CaMKII(ラット)、Met、CDK1/サイクリンB、p70S6K、CHK2、PAK2、CK1、PDGFRα、CK2、PDK1、c−kit、Pim−2、c−RAF、PKA(h)、CSK、PKBα、cSrc、PKCα、DYRK2、Plk3、EGFR、ROCK−I、Fes、Ron、FGFR3、Ros、Flt3、SAPK2α、Fms、SGK、Fyn、SIK、GSK3β、Syk、IGF−1R、Tie−2、IKKβ、TrKB、IR、WNK3、IRAK4、ZAP−70、ITK、AMPK(ラット)、LIMK1、Rsk2、Axl、LKB1、SAPK2β、BrSK2、Lyn(h)、SAPK3、BTK、MAPKAP−K3、SAPK4、CaMKIV、MARK1、Snk、CDK2/サイクリンA、MINK、SRPK1、CDK3/サイクリンE、MKK4(m)、TAK1、CDK5/p25、MKK6(h)、TBK1、CDK6/サイクリンD3、MLCK、TrkA、CDK7/サイクリンH/MAT1、MRCKβ、TSSK1、CHK1、MSK1、Yes、CK1d、MST2、ZIPK、c−Kit(D816V)、MuSK、DAPK2、NEK2、DDR2、NEK6、DMPK、PAK4、DRAK1、PAR−1Bα、EphA1、PDGFRβ、EphA2、Pim−1、EphA5、PKBβ、EphB2、PKCβI、EphB4、PKCδ、FGFR1、PKCη、FGFR2、PKCθ、FGFR4、PKD2、Fgr、PKG1β、Flt1、PRK2、Hck、PYK2、HIPK2、Ret、IKKα、RIPK2、IRR、ROCK−II(ヒト)、JNK2α2、Rse、JNK3、Rsk1(h)、PI3Kγ、PI3KδおよびPI3−Kβを含むキナーゼのリストである。本発明の化合物はキナーゼパネル(野生型および/またはその変異)に対してスクリーニングされ、該パネルメンバーの少なくとも1つの活性を阻害する。
【0017】
“BCR−Ablの変異型”は野生型配列からの1個または複数のアミノ酸変化を意味する。BCR−ABLの変異型は、タンパク質と阻害剤(例えば、Gleevec、など)との重要な接点を乱すこと、しばしば、不活性から活性状態へ、すなわちBCR−ABLとGleevecが結合できない構造への変化を誘導することにより作用する。臨床サンプルの分析から、耐性表現型と関連して見られる変異形のレパートリーは、ゆっくりであるが時間と共に容赦なく増加し続ける。変異は4つの主な領域に集中するようである。変異の第1の群(G250E、Q252R、Y253F/H、E255K/V)はATPに対するリン酸結合ループ(Pループとしても既知)を形成するアミノ酸を含む。第2の群(V289A、F311L、T315I、F317L)はGleevec結合部位において見いだすことができ、直接、水素結合またはファンデルワールス相互作用を介して阻害剤と相互作用できる。変異の第3の群(M351T、E355G)は触媒ドメインの近くに集中する。変異の第4の群(H396R/P)はキナーゼ活性化/非活性化を調節する分子スイッチである構造である活性ループに位置する。CMLおよびALL患者で検出されるGleevec耐性と関連のあるBCR−ABL点変異は:M224V、L248V、G250E、G250R、Q252R、Q252H、Y253H、Y253F、E255K、E255V、D276G、T277A、V289A、F311L、T315I、T315N、F317L、M343T、M315T、E355G、F359V、F359A、V379I、F382L、L387M、L387F、H396P、H396R、A397P、S417Y、E459K、およびF486S(一文字表記により示されるアミノ酸領域は、GenBank配列、受入番号AAB60394に対するものであり、ABL型1a;Martinelli et al., Haematologica/The Hematology Journal, 2005, April; 90-4に対応する)を含む。特に明記しない限り、Bcr−Ablは本酵素の野生型および変異型を意味する。
【0018】
“処置”、“処置し”および“処置する”は、疾患および/または附随する症状を軽減するまたは無くす方法を意味する。
【0019】
好ましい態様の記載
本発明は、キナーゼ関連疾患、特にAbl、Bcr−Abl、Aurora−A、Axl、BMX、CHK2、c−RAF、cSRC、Fes、FGFR3、Flt3、IKKα、IR、JNK2α2、Lck、Met、MKK6、MST2、p70S6K、PDGFRα、PKA、PKD2、ROCK−II、Ros、Rsk1、SAPK2α、SAPK2β、SAPK3、SAPK4、Syk、Tie2およびTrkBキナーゼ関連疾患の処置のための化合物、組成物ならびに方法を提供する。例えば、白血病およびBCR−Ablに関連する他の増殖疾患は野生型およびBcr−Ablの変異型の阻害を介して処置され得る。
【0020】
ある態様において、式Iの化合物に関して、RおよびRの両方が水素である。
【0021】
他の態様において、RおよびRは、RおよびRが結合しているフェニル環と一緒にキノリニルまたはナフタレニルを形成する。
【0022】
他の態様において、Rは、NHRおよびX{ここで、Xが結合およびメチレンから選択され;Rが所望により独立してトリフルオロ−メチル、メトキシ、イミダゾリルおよびピペラジニル−メチル(ここで、該Rのイミダゾリルまたはピペラジニル置換基は所望によりメチルおよびエチルで置換されている)から選択される1から3個のラジカルで置換されているフェニルから選択される}から選択される。
【0023】
本発明の好ましい化合物は、1−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−フェニル]−3−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ウレア;1−[4−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−3−トリフルオロメチル−フェニル]−3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−フェニル]−ウレア;1−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−フェニル]−ウレア;1−(3,5−ジメトキシ−フェニル)−3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−フェニル]−ウレア;1−[4−(9H−プリン−6−イルオキシ)−フェニル]−3−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ウレア;1−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−[4−(9H−プリン−6−イルオキシ)−フェニル]−ウレア;1−[4−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−3−トリフルオロメチル−フェニル]−3−[4−(9H−プリン−6−イルオキシ)−フェニル]−ウレア;1−[5−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−キノリン−8−イル]−3−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ウレア;N−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−フェニル]−2−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−アセトアミド;2−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−N−[4−(9H−プリン−6−イルオキシ)−フェニル]−アセトアミド;N−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−フェニル]−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド;3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−N−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−フェニル]−5−トリフルオロメチル−ベンズアミド;N−[4−(9H−プリン−6−イルオキシ)−フェニル]−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド;4−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−(9H−プリン−6−イルオキシ)−フェニル]−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド;およびN−[5−(9H−プリン−6−イルオキシ)−キノリン−8−イル]−3−トリフルオロメチル−ベンズアミドから選択される。
【0024】
本発明のさらなる好ましい化合物は下記実施例および表1において記載されている。
【0025】
薬理学および有用性
本発明の化合物は、キナーゼの活性を調節し、それ自体、キナーゼがその疾患の病状および/または総体症状に関与する疾患または障害の処置に有用である。本明細書に記載の化合物および組成物ならびに本明細書に記載の方法で有用である薬剤により阻害されるキナーゼの例は、限定しないが、Abl、Bcr−Abl(野生型および変異型)、Aurora−A、Axl、BMX、CHK2、c−RAF、cSRC、Fes、FGFR3、Flt3、IKKα、IR、JNK2α2、Lck、Met、MKK6、MST2、p70S6K、PDGFRα、PKA、PKD2、ROCK−II、Ros、Rsk1、SAPK2α、SAPK2β、SAPK3、SAPK4、Syk、Tie2およびTrkBを含む。
【0026】
アベルソンチロシンキナーゼ(すなわちAbl、c−Abl)は、細胞サイクルの制御、遺伝毒性ストレスに対する細胞応答、およびインテグリンシグナル伝達を介した細胞環境についての情報伝達に関与する。全体として、Ablタンパク質は、様々な細胞外および細胞内供給源からのシグナルを統合し、細胞サイクルおよびアポトーシスに関する決定に影響を与える、細胞性モジュールとして複雑な役割を果たしているように見える。アベルソンチロシンキナーゼは、脱制御されたチロシンキナーゼ活性を伴うキメラ融合体(オンコプロテイン)BCR−Ablまたはv−Ablのようなサブタイプ誘導体を含む。BCR−Ablは、95%の慢性骨髄性(myelogenous)白血病(CML)および10%の急性リンパ性白血病の病因において重要である。STI571(Gleevec)は発癌性BCR−Ablチロシンキナーゼの阻害剤であり、慢性骨髄性(myeloid)白血病(CML)の処置に使用されている。しかしながら、CMLの急性転化期にある患者の幾分かは、BCR−Ablキナーゼの変異により、STI−571に耐性である。22を超える変異が今日までに報告されており、最も一般的なのはG250E、E255V、T315I、F317LおよびM351Tである。
【0027】
本発明の化合物は、ablキナーゼ、とりわけv−ablキナーゼを阻害する。本発明の化合物はまた野生型BCR−AblキナーゼおよびBCR−Ablキナーゼの変異を阻害し、故に、白血病(とりわけアポトーシス作用の機構が見られるとき、とりわけ慢性骨髄性(myeloid)白血病および急性リンパ芽球性白血病)のようなBcr−abl−陽性癌および腫瘍疾患の処置に適当であり、また、白血病性幹細胞のサブグループにおける効果を示し、ならびにこれらの細胞を、該細胞を摘出した後(例えば、骨髄摘出)インビトロで精製し、それらが癌細胞から浄化された後細胞を再移植する(例えば、精製骨髄細胞の再移植)可能性がある。
【0028】
マラリアはマラリア原虫属の寄生原虫類により引き起こされる。4種のマラリア原虫:熱帯熱マラリア原虫;三日熱マラリア原虫;卵形マラリア原虫;および四日熱マラリア原虫がその様々な形態で疾患を引き起こす。もっとも広がっておりそして危険である熱帯熱マラリア原虫は、治療せずに放置すると致命的な脳マラリアに至る。タンパク質チロシンキナーゼ活性は熱帯熱マラリア原虫寄生虫成熟の全ての段階に分布しており、本発明のキナーゼ阻害剤はマラリア原虫関連疾患を処置するために使用できる。本発明のチロシンキナーゼ阻害剤、特にc−kit阻害剤は、熱帯熱マラリア原虫の増殖の阻害を介してマラリア原虫関連疾患を処置するための手段であり得る。下記インビトロアッセイを、様々なマラリア寄生虫系統に対する本発明の化合物の活性を測定するための手段として使用する。
【0029】
Ras−Raf−MEK−ERKシグナル経路は増殖シグナルに対する細胞応答を仲介する。Rasはヒト癌の〜15%で癌形に変異される。Rafファミリーはセリン/スレオニンタンパク質キナーゼに属し、それは3個のメンバー、A−Raf、B−Rafおよびc−Raf(またはRaf−1)を含む。薬剤標的はRasの下流のエフェクターとしてRafの関係に集中している。しかしながら、最近のデータはB−Rafは活性化Ras対立遺伝子の関与が必要でないある腫瘍の形成において重要な役割を有し得ることを示唆した(Nature 417, 949 - 954 (01 Jul 2002)。特に、B−Raf変異は悪性黒色腫の多くにおいて検出された。
【0030】
黒色腫に対する医薬的処置はとりわけ後期黒色腫に対してそれらの有効性が制限される。本発明の化合物はまたb−Rafキナーゼと関連する細胞過程を阻害し、ヒト癌、とりわけ黒色腫の処置のための新規治療機会を提供する。
【0031】
本発明の化合物はまたc−Rafキナーゼと関連する細胞過程を阻害する。c−Rafはras腫瘍遺伝子により活性化され、これは多くのヒト癌を変異させる。したがって、c−Rafのキナーゼ活性の阻害はras介在腫瘍増殖を予防するための方法を提供し得る[Campbell, S. L., Oncogene, 17, 1395 (1998)]。
【0032】
PDGF(血小板由来増殖因子)は非常に一般的に存在する増殖因子であり、発癌および血管の平滑筋細胞の疾患、例えばアテローム性動脈硬化症および血栓症に見られるように、正常増殖およびまた病的細胞増殖の両方において重要な役割を果たす。本発明の化合物は、PDGF受容体(PDGFR)活性を阻害でき、したがって、神経膠腫、肉腫、前立腺腫瘍、および結腸、乳房および卵巣の腫瘍のような腫瘍疾患の処置に適当である。
【0033】
本発明の化合物は、例えば小細胞肺癌における腫瘍阻害物質としてだけでなく、またアテローム性動脈硬化症、血栓症、乾癬、強皮症および線維症のような非悪性増殖性障害にも、ならびに幹細胞を、例えば、5−フルオロウラシルのような化学療法剤の血液毒性作用と戦うために保護するために、および喘息において使用できる。本発明の化合物は、とりわけPDGF受容体キナーゼの阻害に応答する疾患の処置に有用である。
【0034】
本発明の化合物は、移植、例えば、異種移植に起因する障害、とりわけ閉塞性細気管支炎(OB)、すなわち異種肺移植の慢性拒絶のような、とりわけ組織拒絶反応の処置に有効である。OBのない患者と比較して、OBを有する者は、しばしば気管支肺胞洗浄液中のPDGF濃度の上昇を示す。
【0035】
本発明の化合物はまた再狭窄およびアテローム性動脈硬化症のような、血管平滑筋細胞移動および増殖(PDGFおよびPDGF−Rがしばしば役割を果たす場所である)が関連する疾患に有用である。血管平滑筋細胞インビトロおよびインビボにおけるこれらの効果および増殖または移動に対するそれらの結果は、本発明の化合物の投与により、またインビボでの血管内膜の機械的損傷後の肥厚に対する影響の試験により証明し得る。
【0036】
ニューロトロフィン受容体のtrkファミリー(trkA、trkB、trkC)は神経および非神経組織の生存、成長および分化を促進する。TrkBタンパク質は小腸および大腸の神経内分泌型細胞、膵臓のα細胞、リンパ節および脾臓の単球およびマクロファージ、ならびに表皮の顆粒層において発現される(Shibayama and Koizumi, 1996)。TrkBタンパク質の発現はWilms腫瘍および神経芽腫の好ましくない進行と関連している。さらにTkrBは癌前立腺細胞では発現されるが正常細胞では発現されない。trk受容体のシグナル経路下流はShc、活性化Ras、ERK−1およびERK−2遺伝子、ならびにPLC−γ変換経路を介するMAPKの活性化のカスケード含む(Sugimoto et al., 2001)。
【0037】
キナーゼ、c−Srcは多数の受容体の発癌シグナルを伝達する。例えば、腫瘍におけるEGFRまたはHER2/neuの過剰発現は、悪性細胞に対して特徴的であるが正常細胞には存在しないc−srcの構成的活性化をもたらす。他方、c−srcの不完全発現マウスは大理石骨病表現型を発現し、破骨細胞機能におけるc−srcの重要な関与および関連疾患への関与している可能性を指示する。
【0038】
Tecファミリーキナーゼ、Bmx、非受容体タンパク質−チロシンキナーゼは乳房上皮癌細胞の増殖を制御する。
【0039】
繊維芽細胞増殖因子受容体3は骨増殖の負の調節効果および軟骨細胞増殖の阻害に働くことを示した。繊維芽細胞増殖因子受容体3の様々な変異体、および1つの変異、TDII FGFR3によりもたらされる形成異常は、転写因子Statlを活性化する構成的チロシンキナーゼ活性を有し、細胞周期阻害剤の発現、増殖停止および異常な骨の発達をもたらす(Su et al., Nature, 1997, 386, 288-292)。FGFR3はまたしばしば多発性骨髄腫型癌において発現される。FGFR3活性の阻害剤は限定はしないが、リウマチ性関節炎(RA)、コラーゲンII関節炎、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、乾癬、若年型糖尿病、シューグレン病、甲状腺疾患、サルコイドーシス、自己免疫性ブドウ膜炎、炎症性腸疾患(クローンおよび潰瘍性大腸炎)、セリアック病および重症筋無力症を含むT細胞介在炎症性または自己免疫性疾患の処置において有用である。
【0040】
血清およびグルココルチコイド調節キナーゼ(SGK)の活性は摂動イオンチャネル活性、特にナトリウムおよび/またはカリウムチャネルの活性に相関性があり、本発明の化合物は高血圧を処理するために有用であり得る。
【0041】
Lin et al (1997) J. Clin. Invest. 100, 8: 2072-2078およびP. Lin (1998) PNAS 95, 8829-8834は腫瘍増殖および血管形成の阻害またアデノウイルス感染または乳房腫瘍および黒色腫異種移植モデルにおけるTie2(Tek)の細胞外ドメインの感染中の肺転移の減少を示した。Tie2阻害剤は新血管形成が不適当に起こる状況(すなわち、糖尿病網膜症、慢性炎症、乾癬、カポジ肉腫、黄斑変性症による慢性新血管形成、リウマチ性関節炎、小児血管腫および癌)において使用され得る。
【0042】
LckはT細胞シグナル伝達の役割を果たす。Lck遺伝子を欠いているマウスは胸腺細胞の発達に対して乏しい能力を有する。T細胞シグナル伝達の正の活性剤としてLckの機能はLck阻害剤が自己免疫疾患、例えば、リウマチ性関節炎を処置するために有用であり得ることを示唆する。
【0043】
他のMAPKと同様にJNKは癌、トロンビン誘導血小板凝集、免疫不全疾患、自己免疫性疾患、細胞死、アレルギー、骨粗鬆症および心臓疾患に対する細胞応答を介在する役割を有することに関与している。JNK経路の活性化と関連している治療対象は慢性骨髄性白血病(CML)、リウマチ性関節炎、喘息、骨関節症、虚血、癌および神経変性疾患を含む。肝臓疾患または肝虚血の発症と関係があるJNK活性化に重要である結果として、本発明の化合物はまた様々な肝臓疾患の処置に有用であり得る。心臓血管疾患、例えば、心筋梗塞またはうっ血性心不全におけるJNKの役割がまたJNKが様々な型の心臓ストレスに対する肥大応答を介在することを示したとして報告されている。JNKカスケードはまたIL−2プロモーターの活性化を含むT細胞活性化において役割を果たすことを立証されている。したがって、JNKの阻害剤は変化する異常な免疫応答において治療価値を有し得る。様々な癌のJNK活性化に対する役割がまた確立されており、癌におけるJNK阻害剤の利用可能性を示唆する。例えば、構造的に活性化JNKはHTLV−1介在腫瘍形成と関連している[Oncogene 13:135-42 (1996)]。JNKはカポジ肉腫(KS)において役割を果たし得る。KS増殖に関与する他のサイトカイン、例えば、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、IL−6およびTNFαの他の増殖効果はまたJNKにより介在され得る。加えて、p210 BCR−ABL形質転換細胞におけるc−jun遺伝子の調節はJNKの活性に対応し、慢性骨髄性白血病(CML)に対する処置におけるJNK阻害剤の役割を示唆する[Blood 92:2450-60 (1998)]。
【0044】
ある異常増殖状態はraf発現と関連していると考えられ、したがってraf発現の阻害に反応することが考えられる。異常な高レベルのrafタンパク質の発現はまた形質転換および異常細胞増殖と関連する。これらの異常増殖状態はまたraf発現の阻害に反応することが考えられる。60%のすべての肺癌腫細胞系が通常高レベルのc−rafのmRNAおよびタンパク質を発現することが報告されているため、例えば、c−rafタンパク質の発現は異常細胞増殖における役割を果たしていることが考えられる。異常増殖状態のさらなる例は過増殖性疾患、例えば、癌、腫瘍、過形成、肺線維症、血管形成、乾癬、アテローム性動脈硬化症および血管の平滑筋細胞増殖、例えば、狭窄または血管形成術後の再狭窄である。rafを一部に含む細胞性シグナル伝達経路はまたT細胞増殖(T細胞活性化および増殖)、例えば、組織移植拒絶反応、内毒素性ショック、および糸球体腎炎により特徴づけられる炎症疾患と関連していた。
【0045】
ストレス活性化タンパク質キナーゼ(SAPK)はc−jun転写因子の活性化およびc−junにより調節される遺伝子の発現をもたらすシグナル伝達経路における最後から2番目の段階を表すタンパク質キナーゼのファミリーである。特に、c−junは遺伝毒性障害により損傷を受けたDNAの修復と関連するタンパク質をコードする遺伝子の転写と関連している。したがって、細胞におけるSAPK活性を阻害する薬剤はDNA修復を防止し、DNA損傷を誘導するかもしくはDNA合成を阻害し、細胞のアポトーシスを誘導する、または細胞増殖を阻害する薬剤に細胞を感受性にする。
【0046】
マイトージェン−活性タンパク質キナーゼ(MAPK)は転写因子、翻訳因子および様々な細胞外シグナルに応答する他の標的分子を活性化する保存されたシグナル伝達経路のメンバーである。MAPKはマイトージェン−活性化タンパク質キナーゼキナーゼ(MKK)による配列Thr−X−Tyrを有する二重リン酸化モチーフでのリン酸化により活性化される。高等真核生物において、MAPKシグナル伝達の生理学的役割は細胞的事象、例えば、増殖、腫瘍形成、発生および分化と相関があった。したがって、これらの経路を介して(特にMKK4およびMKK6を介して)シグナル伝達を調節する能力はMAPKシグナル伝達と関連するヒトの疾患、例えば、炎症性疾患、自己免疫性疾患および癌に対する処置および予防治療の発達をもたらすことができた。
【0047】
ヒトリボソームS6タンパク質キナーゼのファミリーは少なくとも8個のメンバー(RSKI、RSK2、RSK3、RSK4、MSK1、MSK2、p70S6Kおよびp70S6Kb)からなる。リボソームタンパク質S6タンパク質キナーゼは重要な多面的な機能を果たし、それらの中でタンパク質生合成中のmRNA翻訳の調節の重要な役割である(Eur. J. Biochem 2000 November; 267(21): 6321-30, Exp Cell Res. Nov. 25, 1999; 253 (1):100-9, Mol Cell Endocrinol. May 25, 1999;151(1-2):65-77)。p70S6によるS6リボソームタンパク質のリン酸化はまた細胞運動(Immunol. Cell Biol. 2000 August;78(4):447-51)および細胞増殖(Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol., 2000;65:101-27)の調節と関連しており、故に腫瘍転移、免疫反応および組織修復ならびに他の疾患状態において重要であり得る。
【0048】
SAPK(“junN末端キナーゼ”または“JNK”とも呼ばれる)はc−jun転写因子の活性化およびc−junにより調節される遺伝子の発現をもたらすシグナル伝達経路における最後から2番目の段階を示すタンパク質キナーゼのファミリーである。特に、c−junは遺伝毒性障害により損傷を受けたDNAの修復と関連するタンパク質をコードする遺伝子の転写と関連している。細胞におけるSAPK活性を阻害する薬剤はDNA修復を防止し、DNA損傷を誘導することにより機能するそれらの癌治療モダリティに対して細胞を感受性にする。
【0049】
BTKは自己免疫性および/または炎症性疾患、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、リウマチ性関節炎、多発性脈管炎(multiple vasculitis)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、重症筋無力症および喘息において役割を果たす。B細胞活性化におけるBTKの役割のため、BTKの阻害剤はB細胞介在病原性活性、例えば、自己抗体生産の阻害剤として有用であり、B細胞リンパ腫および白血病の処置のために有用である。
【0050】
CHK2はセリン/スレオニンタンパク質キナーゼのチェックポイントキナーゼファミリーのメンバーであり、DNA損傷、例えば、環境変異原および内在性反応酸素種により引き起こされる損傷の監視のために使用されるメカニズムに関連している。結果として、それは腫瘍抑制遺伝子と関連し、癌治療の標的である。
【0051】
CSKは癌細胞、特に大腸癌の転移能に影響する。
Fesは様々なサイトカインシグナル伝達経路、ならびに骨髄細胞の分化に関連している非受容体タンパク質チロシンキナーゼである。Fesはまた顆粒球分化機構の重要な要素である。
【0052】
Flt3受容体チロシンキナーゼ活性は白血病および骨髄異形成症候群と関連している。約25%のAMLにおいて、白血病細胞は細胞表面に構造的に活性型の自己リン酸化(p)FLT3チロシンキナーゼを発現する。p−FLT3の活性は白血病細胞において増殖および生存に利点を与える。白血病細胞がp−FLT3キナーゼ活性を表す急性白血病を有する患者は全体的に乏しい臨床結果を有する。p−FLT3キナーゼ活性の阻害は白血病細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)を誘導する。
【0053】
IKKαおよびIKKβ(1&2)の阻害剤はリウマチ性関節炎、移植拒絶反応、炎症性腸疾患、骨関節症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化症、乾癬、多発性硬化症、卒中、全身性エリテマトーデス、アルツハイマー病、脳虚血、外傷性脳損傷、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、くも膜下出血または脳および中枢神経系における炎症性メディエーターの過剰産生と関連する他の疾患または障害を含む疾患に対する治療剤
である。
【0054】
Metは主要なヒト癌の大部分の型と関連し、発現はしばしば悪い予後と転移に相関がある。Metの阻害剤は癌、例えば、肺癌、NSCLC(非小細胞肺癌)、骨癌、膵癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、腸癌、乳癌、婦人科腫瘍(例えば、子宮肉腫、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫または陰門の癌腫)、ホジキン病、食道癌、小腸の癌、内分泌腺系の癌(例えば、甲状腺、副甲状腺または副腎の癌)、軟組織の肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性または急性白血病、子供の固体腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓または尿管癌(例えば、腎臓細胞癌腫、腎盂の癌腫)、小児悪性腫瘍、中枢神経系の腫瘍(例えば、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸の腫瘍、脳幹神経膠腫または下垂体腺腫)、血液の癌、例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病など、バレット食道炎(前癌症候群)、新生皮膚病、乾癬、菌状息肉腫および前立腺肥大症、糖尿病関連疾患、例えば、糖尿病網膜症、網膜虚血および網膜新血管形成、肝硬変症、心血管疾患、例えば、アテローム性動脈硬化症、免疫疾患、例えば、自己免疫疾患および腎臓疾患を含む疾患に対する治療となる。好ましくは、疾患は癌、例えば、急性骨髄性白血病および結腸直腸癌である。
【0055】
Nima関連キナーゼ2(Nek2)は中心体に限局される有糸分裂の開始で最大活性を有する細胞周期調節タンパク質キナーゼである。機能的研究は中心体分離および紡錘糸形成の調節にNek2が関係するとした。Nek2タンパク質は頸部、卵巣、前立腺、および特に乳房の腫瘍を含むヒト腫瘍の範囲由来の細胞系では2から5倍高い。
【0056】
p70S6K介在疾患または状態は限定すべきではないが増殖性疾患、例えば、癌および結節硬化症を含む。
【0057】
前記によって、本発明は、さらに、処置を必要とする対象における、上記のいずれかの疾患または障害を処置する方法であり、該対象に治療的有効量(下記“投与および医薬組成物”参照)の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。上記の全ての使用に関して、必要な投与量は投与形態、処置すべき特定の状態および所望の効果に依存して変化する。
【0058】
投与および医薬組成物:
一般に、本発明の化合物は単独でまたは1種もしくはそれ以上の治療剤との組合せのいずれかで当分野で既知の通常のおよび許容される形式のいずれかを介して、治療有効量を投与される。治療有効量は、疾患の重症度、対象の年齢および相対的な健康度、使用される化合物の有効性および他の要素に依存して広く変化し得る。一般に、満足な結果は体重あたり約0.03から2.5mg/kgの1日投与量で全身に得られることが示される。大型哺乳動物、例えばヒトにおいて指示される1日投与量は、例えば1日に4回までの分割用量でまたは遅延形で都合良く投与される約0.5mgから約100mgの範囲である。経口投与のための適当な単位用量形は約1から50mgの活性成分を含む。
【0059】
本発明の化合物は任意の慣用の経路、特に経腸的に、例えば経口的に、例えば錠剤形もしくはカプセル形で、または非経腸的に、例えば注射溶液形もしくは懸濁液形で、局所的に、例えばローション形、ゲル形、軟膏形もしくはクリーム形で、または経鼻形もしくは坐薬形で医薬組成物として投与できる。少なくとも1種の薬学的に許容される担体もしくは希釈剤と一緒に遊離形または薬学的に許容される塩形の本発明の化合物を含む医薬組成物を、混合、造粒または被覆方法による慣用の方法で製造できる。例えば、経口組成物は、活性成分とa)希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;b)滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウムもしくはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール;錠剤のためにまたc)結合剤、例えば、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン;所望によりd)崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩または起沸性混合物;および/またはe)吸収剤、着色剤、香味剤および甘味剤を一緒に含む錠剤またはゼラチンカプセルであり得る。注射組成物は、等張水溶液または懸濁液であり得、そして座薬は脂肪エマルジョンまたは懸濁液から製造し得る。該組成物は滅菌し得そして/またはアジュバント、例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤もしくは乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩および/またはバッファーを含む。加えて、それらはまた、治療に有効な他の物質を含み得る。適当な経皮投与用製剤は有効量の本発明の化合物を担体と含む。担体は宿主の皮膚を介する輸送を助けるために、薬理学的に許容される吸収性溶媒を含み得る。例えば、経皮デバイスは裏当て部分、化合物と所望により担体を含む貯蔵部、所望により長時間にわたって制御されたおよびあらかじめ決められた速度で宿主の皮膚に化合物を送達するための速度制御バリア、および皮膚にデバイスを固定するための手段を含む、バンデージ形である。マトリックス経皮製剤もまた使用され得る。例えば、皮膚および眼への、適当な局所投与用製剤は、当分野で既知の好ましくは水溶液、軟膏、クリームまたはゲルである。このような製剤は、可溶化剤、安定化剤、等張増加剤、バッファーおよび保存剤を含み得る。
【0060】
本発明の化合物は、治療有効量の1種またはそれ以上の治療剤との組合せ(薬学的組合せ剤)で投与され得る。例えばシクロスポリン、ラパマイシン、もしくはアスコマイシン、またはそれらの免疫抑制剤類似体、例えばシクロスポリンA(CsA)、シクロスポリンG、FK−506、ラパマイシン、もしくは同等な化合物、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、ブレキナール、レフルノミド、ミゾルビン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、15−デオキシスパガリン、免疫抑制性抗体、とりわけ白血球受容体に対するモノクローナル抗体、例えばMHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD25、CD28、B7、CD45、CD58もしくはそれらのリガンド、または他の免疫調節化合物、例えばCTLA41gと一緒に使用されるとき、例えば、相乗効果が、他の免疫調節剤もしくは抗炎症剤と生じ得る。本発明の化合物が他の治療と一緒に投与されるとき、共投与される化合物の用量は、もちろん使用される共薬剤の型、使用される特定の薬剤、処置される状態などに依存して変化する。
【0061】
本発明はまた、a)遊離形または薬学的に許容される塩形の本明細書に記載のとおりの本発明の化合物である第1の薬剤、およびb)少なくとも1つの共薬剤を含む薬学的組合せ剤、例えばキットを提供する。該キットはその投与のための指示書を含み得る。
【0062】
本明細書で利用される“共投与”または“組合せ投与”などの用語は、個々の患者に選択された治療剤を投与することを含むことを意味し、そして必ずしも薬剤が同じ投与経路によりまたは同時に投与されない処置レジメンを含むことを意図する。
【0063】
本明細書で使用される“薬学的組合せ剤”なる用語は、1種を超える活性成分の混合または組合せから生じる生産物を意味し、そして活性成分の固定された組合せ剤および固定されていない組合せ剤の両方を含む。“固定された組合せ剤”なる用語は、複数の活性成分、例えば式Iの化合物、および共薬剤両方が、単一の物または投与形で同時に患者に投与されることを意味する。“固定されていない組合せ剤”なる用語は、複数の活性成分、例えば式Iの化合物、および共薬剤両方が、同時に、共にまたは特定の時間制限なしに連続してのいずれかで、別々の物として投与することを意味し、このような投与は、治療有効量の2つの化合物を患者の体内に提供する。後者は、カクテル治療、例えば3つまたはそれ以上の活性成分の投与にも適用する。
【0064】
本発明の化合物の製造方法
本発明はまた、本発明の化合物の製造方法を含む。記載されている反応において、反応性官能基、例えばヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオまたはカルボキシ基を、これらが最終産物において望ましいとき、これらの望ましくない反応の参加を避けるために保護することが必要であり得る。慣用の保護基は、標準的技法にしたがって使用し得る、例えばT.W. Greene and P. G. M. Wuts in “Protective Groups in Organic Chemistry”, John Wiley and Sons, 1991参照。
【0065】
式Iの化合物は下記反応スキームIのとおりに行うことにより製造できる:
反応スキームI
【化2】

式中、Y、R、RおよびRは発明の概要で定義のとおりである。式Iの化合物は、適当な溶媒(例えば、DMF、ジクロロメタン、トルエンなど)、適当な塩基(例えば、トリエチルアミン、DIPEA、NaCOなど)および適当なカップリング剤(例えば、DCC、HATUなど)の存在下で、式2の化合物を式3の化合物と反応させることにより合成できる。該反応は約0℃から約50℃の温度範囲で行い、約24時間以内に完全に終了し得る。
【0066】
式Iの化合物の合成の詳細な例は下記実施例で見いだすことができる。
【0067】
本発明の化合物のさらなる製造方法
本発明の化合物を、遊離塩基形の化合物を薬学的に許容される無機酸または有機酸と反応させることにより薬学的に許容される酸付加塩として製造できる。あるいは、本発明の化合物の薬学的に許容される塩基付加塩を、遊離塩基形の化合物を薬学的に許容される無機塩基または有機塩基と反応させることにより製造できる。
【0068】
あるいは、塩形の本発明の化合物を出発物質または中間体の塩を使用して製造できる。
【0069】
遊離酸形または遊離塩基形の本発明の化合物を、対応する塩基付加塩形または酸付加塩形、各々から製造できる。例えば酸付加塩形の本発明の化合物は、適当な塩基(例えば、水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウムなど)と処理することにより対応する遊離塩基に変換できる。塩基付加塩形の本発明の化合物は、適当な酸(例えば、塩酸など)と処理することにより対応する遊離酸に変換できる。
【0070】
非酸化形の本発明の化合物を、適当な不活性有機溶媒(例えば、アセトニトリル、エタノール、ジオキサン溶液など)中で、0から80℃で還元剤(例えば、硫黄、二酸化硫黄、トリフェニルホスフィン、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、三塩化リン、三臭化物など)と処理することにより本発明の化合物のN−オキシドから製造できる。
【0071】
本発明の化合物のプロドラッグ誘導体を当業者に既知の方法で製造できる(例えばさらなる詳細のためにSaulnier et al., (1994), Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, Vol. 4, p. 1985参照のこと)。例えば、適当なプロドラッグを本発明の非誘導化化合物を適当なカルバミル化剤(例えば、1,1−アシルオキシアルキルカルバノクロリデート、パラ−ニトロフェニルカーボネートなど)と反応させることにより製造できる。
【0072】
本発明の化合物の保護された誘導体を当業者に既知の方法で製造できる。保護基の創造およびその除去に適用できる技術の詳細な説明はT. W. Greene, “Protecting Groups in Organic Chemistry”, 3rd edition, John Wiley and Sons, Inc., 1999において見ることができる。
【0073】
本発明の化合物を、本発明の工程中に溶媒和物(例えば、水和物)として都合良く製造または形成できる。本発明の化合物の水和物を、有機溶媒、例えばジオキシン、テトラヒドロフランまたはメタノールを使用し、水性/有機溶媒混合物から再結晶することにより都合良く製造できる。
【0074】
本発明の化合物を、化合物のラセミ混合物を光学的に活性な分割剤と反応させ、一組のジアステレオマー化合物を形成し、該ジアステレオマーを分離し、そして光学的に純粋なエナンチオマーを回収することにより、それらの個々の立体異性体として製造できる。エナンチオマーの分離は本発明の化合物の共有結合ジアステレオマー誘導体を使用して行い得るが、分離できる複合体が好ましい(例えば、結晶のジアステレオマー塩)。ジアステレオマーは異なる物理的性質(例えば、融点、沸点、溶解度、反応性など)を有し、そしてこれらの相違を利用して容易に分離できる。ジアステレオマーをクロマトグラフィー、または好ましくは溶解度の差異に基づく分割/分離技術により分割できる。次いで光学的に純粋なエナンチオマーを、ラセミ化をもたらさないであろう実用的手段により分割剤と一緒に回収する。ラセミ混合物から化合物の立体異性体の分離に適用できる技術のより詳細な説明はJean Jacques, Andre Collet, Samuel H. Wilen, “Enantiomers, Racemates and Resolutions”, John Wiley And Sons, Inc., 1981において見ることができる。
【0075】
手短に言えば、式Iの化合物を下記の工程を含む方法により製造できる:
(a)反応スキームIの工程;ならびに
(b)所望により本発明の化合物の薬学的に許容される塩への変換;
(c)所望により塩形の本発明の化合物の非塩形への変換;
(d)所望により非酸化形の本発明の化合物の薬学的に許容されるN−オキシドへの変換;
(e)所望によりN−オキシド形の本発明の化合物の非酸化形への変換;
(f)所望により異性体の混合物からの本発明の化合物の個々の異性体への分離;
(g)所望により本発明の非誘導化合物の薬学的に許容されるプロドラッグ誘導体への変換;および
(h)所望により本発明の化合物のプロドラッグ誘導体のその非誘導形への変換。
【0076】
出発物質の製造において特に記載のない限り、化合物は既知であるか、または当分野で既知の方法に準じてもしくは下記の実施例に記載のとおりに製造できる。
【0077】
当業者は、上記変換は本発明の化合物の製造法の代表例のみであり、そして他の既知の方法を同様に使用できることを理解できよう。
【実施例】
【0078】
実施例
本発明は、本発明による式Iの化合物の製造を説明する下記実施例により限定されることなく、さらに例示される。
実施例1
1−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−フェニル]−3−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ウレア(4)の合成
【化3】

【0079】
4−(4−ニトロ−フェノキシ)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン:
【化4】

DMF(60ml)に溶解した4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(3.1g、20mmol)の溶液に4−ニトロフェノール(4.9g、35mmol)および炭酸カリウム(5.3g、38mmol)を加える。得られる溶液を110℃に一晩加熱する。出発物質の消失により指示されるとおりの反応の完了後、反応混合物を環境温度に冷却し、氷水に注ぐ。得られる固体を濾過により回収し、水(3×100ml)で洗浄する。粗生成物を溶離剤としてヘキサン:酢酸エチル(1/1 v/v)を使用するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、表題化合物を固体として得る:1H NMR 400 MHz (DMSO-d6) δ 12.34 (bs, 1H), 8.35 (m, 3H), 7.57 (m, 3H), 6.61 (m, 1H); HRMS(MALDI−FTMS) C12[MH]の計算値257.0669、実測値257.0670。
【0080】
4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−フェニルアミン
【化5】

この化合物を当分野で既知の方法を使用して対応するニトロ基の還元から得る:MS m/z 227.1(M+1)。
【0081】
1−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−フェニル]−3−(3−トリフルオロメチルフェニル)−ウレア
【化6】

ジクロロメタン(2ml)中の3−(トリフルオロメチル)アニリン(0.013ml、1mmol)の溶液にクロロギ酸4−ニトロフェニル(0.020ml、1mmol)およびピリジン(0.008ml、1mmol)を加える。反応混合物を5分撹拌し、この後、4(0.018g、0.78mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.134ml、0.78mmol)を加える。得られる反応物を1時間、環境温度で撹拌し、この時間後、LC−MS分析が3の消失を示す。溶媒を真空除去し、得られる残渣をDMSO(1ml)に溶解する。得られる溶液を逆相LC−MSにより精製し、表題化合物をトリフルオロ酢酸塩として得る:1H NMR 400 MHz (DMSO-d6) δ 12.19 (s, 1H), 8.98 (s, 1H), 9.1 (s, 1H), 8.91 (s, 1H), 8.28 (s, 1 H), 8.01 (s, 1H), 7.58 (m, 1H), 7.52 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.51-7.50 (m, 1H), 7.43 (t, J = 2.8 Hz, 1H ), 7.31 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.18 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 6.42 (m, 1H);HRMS(MALDI−FTMS) C2015[MH]の計算値414.1172、実測値414.1169。
【0082】
実施例2
N−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−フェニル]−2−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−アセトアミドの合成
【化7】

ジメチルホルムアミド(0.5ml)中の3(0.020g、0.088mmol)、(3−トリフルオロメチル−フェニル)−酢酸(0.020g、0.10mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(17.2μl、0.1mmol)の溶液にO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(0.036g、0.096mmol)を加える。1時間環境温度で撹拌後、粗反応混合物を酢酸エチルと水に分配する。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空濃縮し、粗生成物を得る。残渣をDMSO(1ml)に溶解し、得られる溶液を逆相LC−MSにより精製し、表題化合物をトリフルオロ酢酸塩として得る:1H NMR 400 MHz (DMSO-d6) δ 12.13 (bs, 1H), 10.38 (bs, 1H), 8.27 (s, 1H), 7.71 (s, 1H), 7.6-7.66 (m, 5H), 7.43 (m, 1H), 7.19 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 6.41 (m, 1H) 3.82 (s, 2H);HRMS(MALDI−FTMS) C2116[MH]+の計算値413.1220、実測値413.1222。
【0083】
適当な出発物質を使用して上記実施例に記載の方法を繰り返すことにより、表1に記載の式Iの下記の化合物を得る。
【表1】

【表2】

【0084】
【表3】

【表4】

【0085】
アッセイ
本発明の化合物を、親32D細胞と比較してBcr−Abl(32D−p210)を発現する32D細胞の細胞増殖を選択的に阻害する能力についてアッセイする。これらのBCR−Abl形質転換細胞の増殖を選択的に阻害する化合物は野生型または変異形のBcr−ablのいずれかを発現するBa/F3細胞における抗増殖性活性に対して試験する。加えて、化合物をAbl、Bcr−Abl、Aurora−A、Axl、BMX、CHK2、c−RAF、cSRC、Fes、FGFR3、Flt3、IKKα、IR、JNK2α2、Lck、Met、MKK6、MST2、p70S6K、PDGFRα、PKA、PKD2、ROCK−II、Ros、Rsk1、SAPK2α、SAPK2β、SAPK3、SAPK4、Syk、Tie2およびTrkBキナーゼを阻害する能力についてアッセイする。
【0086】
細胞性BCR−Abl依存性増殖の阻害(ハイスループット法)
使用するマウス細胞系は、BCR−Abl cDNAで形質転換した32D造血前駆細胞系(32D−p210)である。これらの細胞を、ペニシリン50μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mLおよびL−グルタミン200mMを添加したRPMI/10%胎児ウシ血清(RPMI/FCS)に維持する。形質転換されていない32D細胞を、IL3の源として15%のWEHI馴化培地を添加して同様に維持する。
【0087】
50μlの32Dまたは32D−p210細胞懸濁液を5000細胞/ウェルの密度でGreiner384ウェルマイクロプレート(black)に播種する。50nlの試験化合物(DMSO貯蔵溶液中で1mM)をそれぞれのウェルに加える(STI571を陽性対照として包含する)。細胞を72時間、37℃、5%COでインキュベートする。10μlの60%Alamar Blue溶液(Tek diagnostics)をそれぞれのウェルに加え、細胞をさらに24時間インキュベートする。蛍光強度(530nmで励起、580nmで放射)でAcquestTMシステム(Molecular Devices)を使用して定量する。
【0088】
細胞性BCR−Abl依存性増殖の阻害
32D−p210細胞を96ウェルTCプレートに15,000細胞/ウェルの密度で播種する。50μLの試験化合物の2倍連続希釈(Cmaxは40μM)をそれぞれのウェルに添加する(STI571を陽性対照として包含する)。細胞を48時間、37℃、5%COでインキュベート後、15μLのMTT(Promega)をそれぞれのウェルに添加し、細胞をさらに5時間インキュベートする。570nmの光学密度を分光測光により定量し、IC50値、50%阻害に必要な化合物の濃度を用量応答曲線から決定する。
【0089】
細胞サイクル分布に対する効果
32Dおよび32D−p210細胞を6ウェルTCプレートに、5mlの培地中2.5×10細胞/ウェルで播種し、1または10μMの試験化合物を添加する(STI571を対照として包含する)。細胞を次いで24時間または48時間、37℃、5%COでインキュベートする。2mlの細胞懸濁液をPBSで洗浄し、70%EtOHに1時間固定し、PBS/EDTA/RNase Aで30分処置する。ヨウ化プロピジウム(Cf=10μg/ml)を添加し、蛍光強度をFACScaliburTMシステム(BD Biosciences)でのフローサイトメトリーにより定量する。本発明の試験化合物は、32D−p210細胞に対してアポトーシス作用を証明するが、32D親細胞ではアポトーシスを誘発しない。
【0090】
細胞性BCR−Abl自己リン酸化に対する効果
BCR−Abl自己リン酸化を、c−abl特異的捕捉抗体および抗ホスホチロシン抗体を使用した、捕捉Elisaで定量する。32D−p210細胞を96ウェルTCプレートに、50μLの培地中2×10細胞/ウェルで播種する。50μLの試験化合物の2倍連続希釈(Cmaxは10μM)をそれぞれのウェルに添加する(STI571を陽性対照として包含する)。細胞を、90分、37℃、5%COでインキュベートする。次いで、細胞を1時間、氷上でプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含む150μLの融解緩衝液(50mMのTris HCl、pH7.4、150mMのNaCl、5mMのEDTA、1mMのEGTAおよび1%NP−40)で処理する。50μLの細胞融解物を、予め抗abl特異的抗体でコーティングし、ブロックした96ウェルoptiplateに添加する。プレートを、4時間、4℃でインキュベートする。TBS−Tween 20緩衝液で洗浄後、50μLのアルカリホスファターゼ結合抗ホスホチロシン抗体を添加し、プレートをさらに一晩4℃でインキュベートする。TBS−Tween 20緩衝液で洗浄後、90μLの発光基質を添加し、発光をAcquestTMシステム(Molecular Devices)を使用して定量する。BCR−Abl発現細胞の増殖を阻害する本発明の試験化合物は、細胞性BCR−Abl自己リン酸化を用量依存的方法で阻害する。
【0091】
Bcr−ablの変異型を発現する細胞の増殖に対する効果
本発明の化合物を、BCR−Ablの野生型または、STI571に対する耐性を付与するか感受性を低下させる変異型(G250E、E255V、T315I、F317L、M351T)のいずれかを発現するBa/F3細胞に対するそれらの抗増殖効果を試験する。変異体BCR−Abl発現細胞および非形質転換細胞に対するこれらの化合物の抗増殖性効果を、上記のとおり(IL3欠如培地中で)10、3.3、1.1および0.37μMで試験した。非形質転換細胞に対して毒性がない化合物のIC50値を、上記のとおりに得た用量応答曲線から決定した。
【0092】
FGFR3(酵素アッセイ)
精製FGFR3(Upstate)でキナーゼ活性アッセイをキナーゼバッファー(30mMのTris−HCl pH7.5、15mMのMgCl、4.5mMのMnCl、15μMのNaVOおよび50μg/mLのBSA)中の0.25μg/mLの酵素、および基質(5μg/mLのビオチン−ポリ−EY(Glu、Tyr)(CIS-US, Inc.)および3μMのATP)を含む最終容量10μLで行う。2つの溶液を作る:5μlの第1の溶液はキナーゼバッファー中にFGFR3酵素を含み、まず384フォーマットProxiPlate(登録商標)(Perkin-Elmer)に分配し、次いでDMSO中に溶解させた50nLの化合物を加え、次いで5μlの第2の溶液はキナーゼバッファー中に基質(ポリ−EY)およびATPを含み、それぞれのウェルに加えた。室温で1時間インキュベートして反応させ、30mMのTris−HCl pH7.5、0.5MのKF、50mMのETDA、0.2mg/mLのBSA、15μg/mLのストレプトアビジン−XL665(CIS-US, Inc.)および150ng/mLのクリプタート結合抗ホスホチロシン抗体(CIS-US, Inc.)を含む10μLのHTRF検出混合物の添加により停止する。ストレプトアビジン−ビオチン相互作用をするため室温で1時間インキュベーション後、時間分解蛍光シグナルはAnalyst GT(Molecular Devices Corp.)で読む。IC50値は12個の濃度(50μMから0.28nMの1:3希釈)でそれぞれの化合物の阻害%の線形回帰分析により計算する。このアッセイにおいて、本発明の化合物は10nMから2μMの範囲のIC50を有する。
【0093】
FGFR3(細胞アッセイ)
本発明の化合物をFGFR3細胞キナーゼ活性に依存している形質転換Ba/F3−TEL−FGFR3細胞増殖を阻害する能力に対して試験する。Ba/F3−TEL−FGFR3を培養培地として10%の胎児ウシ血清を補ったRPMI 1640を含む懸濁液中に800,000細胞/mLまで培養する。細胞を50μLの培養培地中に5000細胞/ウェルで384ウェル形式のプレート中に分配する。本発明の化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、希釈する。一般的に10mMから0.05μMの範囲の濃度勾配を作るため、1:3連続希釈で12点をDMSO中に作る。細胞を50nLの希釈化合物と加え、48時間、細胞培養インキュベーター中でインキュベーションする。増殖している細胞により作られる還元環境をモニタリングするために使用できるAlamarBlue(登録商標)(TREK Diagnostic Systems)を最終濃度10%で細胞に加える。37℃で細胞培養インキュベーター内でさらに4時間インキュベーション後、還元AlamarBlue(登録商標)(530nmで励起、580nmで放射)からの蛍光シグナルをAnalyst GT(Molecular Devices Corp.)で定量化する。IC50値は12個の濃度でそれぞれの化合物の阻害%の線形回帰分析により計算する。
【0094】
FLT3およびPDGFRβ(細胞アッセイ)
FLT3およびPDGFRβの細胞活性における本発明の化合物の効果を、Ba/F3−TEL−FGFR3を使用する代わりに、Ba/F3−FLT3−ITDおよびBa/F3−Tel−PDGFRβを使用することを除いて上記FGFR3細胞活性と同一の方法を使用して実施する。
【0095】
b−Raf−酵素アッセイ
本発明の化合物を、それらのb−Rafの活性を阻害する能力について試験する。アッセイを、黒色壁かつ透明底の384ウェルMaxiSorpプレート(NUNC)で行う。基質、IκBαをDPBS(1:750)で希釈し、15μlをそれぞれのウェルに添加する。プレートを4℃で一晩インキュベートし、EMBLAプレート洗浄機を使用して、3回TBST(25mMのTris、pH8.0、150mMのNaClおよび0.05%Tween−20)で洗浄する。プレートをSuperblock(15μl/ウェル)で3時間、室温でブロックし、TBSTで3回洗浄し、軽く叩いて乾燥させる。20μMのATP(10μl)含有アッセイ緩衝液、続いて100nlまたは500nlの化合物をそれぞれのウェルに添加する。B−Rafをアッセイ緩衝液で希釈し(25μl中に1μl)、10μlの希釈したb−Rafをそれぞれのウェルに添加する(0.4μg/ウェル)。プレートを室温で2.5時間インキュベートする。キナーゼ反応を、プレートを6回TBSTで洗浄することにより停止させる。Phosph−IκBα(Ser32/36)抗体をSuperblock中で希釈し(1:10,000)、15μlをそれぞれのウェルに添加する。プレートを4℃で一晩インキュベートし、TBSTで6回洗浄する。AP結合ヤギ抗マウスIgGをSuperblockで希釈し(1:1,500)、15μlをそれぞれのウェルに添加する。プレートを室温で1時間インキュベートし、TBSTで6回洗浄する。15μlの蛍光Attophos AP基質(Promega)をそれぞれのウェルに添加し、プレートを室温で15分インキュベートする。プレートをAcquestまたはAnalyst GTで、Fluorescence Intensity Program(励起455nm、放射580nm)を使用して読み取る。
【0096】
b−Raf−細胞アッセイ
本発明の化合物をA375細胞でMEKのリン酸化を阻害する能力に対して試験する。A375細胞系(ATCC)はヒト黒色腫患者由来であり、B−Raf遺伝子にV599E変異を有する。リン酸化MEKのレベルがB−Raf変異のため上昇する。サブコンフルエントからコンフルエントA375細胞を化合物と2時間37℃で無血清培地中でインキュベーションする。次いで細胞を冷PBSで1回洗浄し、1%のTriton X100を含む溶解バッファーで溶解する。遠心分離後、上清をSDS−PAGEに付し、次いでニトロセルロース膜に移す。次いで膜を抗−リン酸−MEK抗体(ser217/221)(細胞シグナル)でウエスタンブロッティングに付す。リン酸化MEKの量はニトロセルロース膜のリン酸−MEKバンドの密度によりモニタリングする。
【0097】
SYBRグリーンIを使用する抗マラリアアッセイ
本発明の化合物を、感染赤血球における寄生虫血症の増殖を阻害するそれらの能力を測定するためにアッセイできる。増殖を2本鎖DNAに対して高親和性を有するSYBRグリーンI(Invitrogen)(登録商標)色素の添加により定量化する。
【0098】
薬剤スクリーニングのために、非ヒト血清を含む20μlのスクリーニング培地を、3個のアッセイプレートに分配する。抗マラリア対照(クロロキンおよびアーテミシニン)を含む、それぞれ50nlの本発明の化合物を次にアッセイプレートに移す。50nlのDMSOを基準およびバックグラウンド対照プレートに移す。次に、スクリーニング培地中の30μlの熱帯熱マラリア原虫感染ヒト赤血球の懸濁液を最終のヘマトクリットが2.5%であり、最終寄生虫血症の3%を有するようにアッセイプレートおよび基準対照プレートに分配する。非感染赤血球を最終ヘマトクリットが2.5%であるようにバックグラウンド対照プレートに分配する。該プレートを93%のN、4%のCOおよび3%のOガス混合物を有する、37℃のインキュベーターに72時間置く。10μlのSYBRグリーンI(登録商標)の10×溶液を該プレートに分配する。該プレートを密閉し、−80℃のフリーザーに一晩、赤血球の溶解のために置く。プレートを解凍し、最適染色のために室温で一晩放置する。蛍光強度をAcquest system(Molecular Devices)を使用して、測定する(励起497nm、放射520nm)。阻害%をそれぞれの化合物に対して計算する。
【0099】
Upstate KinaseProfilerTM−放射酵素的フィルター結合アッセイ
本発明の化合物を、一連のキナーゼの個々のメンバーを阻害する能力についてアッセイする。化合物を、10μMの最終濃度でデュプリケートで、この一般的プロトコールに従い試験する。キナーゼ緩衝液組成物および基質は一連の“Upstate KinaseProfilerTM”を含んでいる異なるキナーゼに対して変化することを留意する。キナーゼ緩衝液(2.5μL、10×−必要であればMnCl含有)、キナーゼ緩衝液中の活性キナーゼ(0.001−0.01単位;2.5μL)、特異的またはポリ(Glu4−Tyr)ペプチド(5−500μMまたは.01mg/ml)およびキナーゼ緩衝液(50μM;5μL)を、氷上でエッペンドルフで混合する。Mg/ATPミックス(10μL;67.5(または33.75)mMのMgCl、450(または225)μMのATPおよび1μCi/μl[γ−32P]−ATP(3000Ci/mmol)を添加し、反応物を約30℃で約10分インキュベートする。反応混合物を2cm×2cmのP81(ホスホセルロース、正に荷電したペプチド基質のため)またはWhatman No.1(ポリ(Glu4−Tyr)ペプチド基質のため)試験紙升目にスポット(20μL)する。アッセイ升目を4回、それぞれ5分、0.75%リン酸で、そして1回アセトンで5分洗浄する。アッセイ升目をシンチレーションバイアルに移し、5mlシンチレーションカクテルを添加し、ペプチド基質への32P取り込み(cpm)をBeckmanシンチレーションカウンターで計数する。それぞれの反応について阻害パーセントを計算する。
【0100】
遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物は、例えば、本出願に記載のインビトロ試験法により示される通り、価値のある薬理学的特性を示す。例えば、式Iの化合物は、好ましくは野生型BCR−AblならびにG250E、E255V、T315I、F317LおよびM351T BCR−Abl変異体に対して1×10−10から1×10−5Mの範囲、好ましくは500nM、250nM、100nMおよび50nM未満のIC50を示す。10μMの濃度で式Iの化合物は、好ましくはAbl、Bcr−Abl、Aurora−A、Axl、BMX、CHK2、c−RAF、cSRC、Fes、FGFR3、Flt3、IKKα、IR、JNK2α2、Lck、Met、MKK6、MST2、p70S6K、PDGFRα、PKA、PKD2、ROCK−II、Ros、Rsk1、SAPK2α、SAPK2β、SAPK3、SAPK4、Syk、Tie2およびTrkBキナーゼに対して50%以上、好ましくは約70%以上の阻害%を示す。
【0101】
ここに記載の例および態様は、説明の目的のためのみであり、それに照らした様々な修飾または変化が当業者には示唆され、それらは本発明の精神および範囲の範囲内および添付の特許請求の範囲内に包含されることは理解されるべきである。本明細書で引用する全ての刊行物、特許および特許出願は全ての目的のために引用して本明細書に包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

〔式中:
YはNおよびCHから選択され;
は水素およびC1−6アルキルから選択され;
は水素およびC1−6アルキルから選択されるか;またはRおよびRはRおよびRが結合しているフェニル環と一緒にC6−10アリールもしくはC5−10ヘテロアリールを形成し;
はNRおよびXから選択され;ここでXは結合およびC1−4アルキレンから選択され;Rは水素およびC1−6アルキルから選択され;Rは所望により独立してハロ−置換−C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキルおよびC3−8ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルから選択される1から3個のラジカルで置換されているC6−10アリールから選択され;ここで、Rの該ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキル置換基は所望によりC1−6アルキルで置換されている〕
で示される化合物ならびにその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物および異性体。
【請求項2】
およびRの両方が、水素であるか、またはRおよびRがRおよびRが結合しているフェニル環と一緒にキノリニルまたはナフタレニルを形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がNHRおよびXから選択され;ここで、Xが結合およびメチレンから選択され;Rが所望により独立してトリフルオロ−メチル、メトキシ、イミダゾリルおよびピペラジニル−メチルから選択される1から3個のラジカルで置換されているフェニルから選択され;ここで、Rの該イミダゾリルまたはピペラジニル置換基が所望によりメチルおよびエチルで置換されている、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
1−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−フェニル]−3−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ウレア;1−[4−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−3−トリフルオロメチル−フェニル]−3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−フェニル]−ウレア;1−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−フェニル]−ウレア;1−(3,5−ジメトキシ−フェニル)−3−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−フェニル]−ウレア;1−[4−(9H−プリン−6−イルオキシ)−フェニル]−3−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ウレア;1−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−[4−(9H−プリン−6−イルオキシ)−フェニル]−ウレア;1−[4−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−3−トリフルオロメチル−フェニル]−3−[4−(9H−プリン−6−イルオキシ)−フェニル]−ウレア;1−[5−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−キノリン−8−イル]−3−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ウレア;N−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−フェニル]−2−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−アセトアミド;2−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−N−[4−(9H−プリン−6−イルオキシ)−フェニル]−アセトアミド;N−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−フェニル]−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド;3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−N−[4−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−フェニル]−5−トリフルオロメチル−ベンズアミド;N−[4−(9H−プリン−6−イルオキシ)−フェニル]−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド;4−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−(9H−プリン−6−イルオキシ)−フェニル]−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド;およびN−[5−(9H−プリン−6−イルオキシ)−キノリン−8−イル]−3−トリフルオロメチル−ベンズアミドから選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
治療有効量の請求項1に記載の化合物と薬学的に許容される賦形剤を一緒に含む医薬組成物。
【請求項6】
キナーゼ活性の阻害が疾患の病状および/または総体症状を予防、阻害または改善することができる動物の疾患を処置する方法であって、該動物に治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項7】
キナーゼがAbl、Bcr−Abl、Axl、BMX、CHK2、c−RAF、cSRC、Fes、FGFR3、Flt3、IKKα、IR、JNK2α2、Lck、Met、MKK6、MST2、p70S6K、PDGFRα、PKA、PKD2、ROCK−II、Ros、Rsk1、SAPK2α、SAPK2β、SAPK3、SAPK4、Syk、Tie2およびTrkBから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
Abl、Bcr−Abl、Axl、BMX、CHK2、c−RAF、cSRC、Fes、FGFR3、Flt3、IKKα、IR、JNK2α2、Lck、Met、MKK6、MST2、p70S6K、PDGFRα、PKA、PKD2、ROCK−II、Ros、Rsk1、SAPK2α、SAPK2β、SAPK3、SAPK4、Syk、Tie2およびTrkBのキナーゼ活性が疾患の病状および/または総体症状に関与する動物の疾患を処置するための薬剤の製造における請求項1に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2009−513632(P2009−513632A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537826(P2008−537826)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/041229
【国際公開番号】WO2007/053343
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【出願人】(593052785)ザ スクリップス リサーチ インスティテュート (91)
【Fターム(参考)】