説明

タンパク質ナノ粒子

【課題】安全性が高く、粒子径が小さいことにより透明性が高く、且つ、頭皮及び毛包への浸透性が良い、ミノキシジルを内包した組成物を提供すること。
【解決手段】ミノキシジルを内包したタンパク質ナノ粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミノキシジルを内包したタンパク質ナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤送達システム(DDS)の研究の進歩により、全身適用を目的とした経皮治療システム(Transdermal Therapeutic System:TTS)として、ニトログリセリンや硝酸イソソルビドなどの狭心症治療薬や、乗り物酔い治療薬のスコポラミンに続き、近年、多くのTTSが開発されてきた。更年期障害に対するホルモン補充治療法剤として、2日に1回の貼付で薬効が期待できるエストラジオールTTSや抗喘息薬の塩酸ツロブテノールTTSなどの、長時間にわたり有効血中濃度を維持できる製剤が開発されている。また、泌尿器科領域では経口剤として汎用されている排尿障害治療薬、オキシブチニンの経皮治療システムの臨床開発が現在進められている。これらのTTSは、多くの利点を有していることから、患者のQOLを改善する製剤として大きな期待が寄せられている(非特許文献1)。
【0003】
一方、微粒子材料は、バイオテクノロジーにおいて幅広い利用が期待されている。特にナノテクノロジーの進展によって生み出されたナノ微粒子材料を食品、化粧品、医薬品等に応用することが活発に検討され、研究成果も数多く報告されるようになってきている。
【0004】
例えば、化粧品においては、近年、より明確な肌効果が求められるようになってきており、ナノテクノロジーをはじめ様々な新しい技術を取り入れることにより、機能性・使用性の向上、他社品との差別化が計られている。肌は一般的に、角質層がバリアーとして存在するために薬物の皮膚への浸透性が低い。肌効果を十分に発揮させるためには、有効成分の皮膚透過性の改善が不可欠である。また、皮膚に対して高い有効性を持っていても、保存安定性が悪かったり、皮膚に刺激を起こしやすかったりするために製剤化が困難な成分も多い。これらを解決すべく、経皮吸収性の改善および保存安定性の向上、皮膚刺激性の低減など目的とした、様々な微粒子材料の開発が進められている。現在、超微細乳化やリポソームなど各種微粒子材料が研究されている(例えば、非特許文献2)。
【0005】
パルファンクリスチャンディオールのカプチュールは大豆レシチンで0.1μmの微小なリポソーム作製に成功し、その中にコラーゲン、エラスチンおよびヒアルロン酸を内包させた。この美容液は角質層まで20%、真皮層まで48%が浸透し、真皮層の繊維芽細胞の膜に融合する結果、活性成分が取り込まれ、細胞の再生を促進すると発表した(例えば、非特許文献3)。育毛分野では、捕集させた効能物質を毛嚢に安全に伝達して効能を増進させるための目的としてリポソームを開発し、これを改善しようとする研究が行われている(非特許文献4)。
【0006】
しかし、乳化膜は物理化学的に非常に弱くて且つ不安定なので、塩や電荷を有する有機物または無機物による汚染に起因して乳化膜が破壊され、熱や光に対しても非常に弱いため、長期間の保管において不安定であるという短所がある。
【0007】
乳化物やリポソームの代わりに高分子材料を用いれば、その構造上、保存安定性や生体内における粒子の安定性の点で、大きく改善されることが予想される。しかし、ほとんどの研究は乳化重合をはじめとする合成高分子を用いたものであり、より安全なキャリアーが求められている。たとえば、特許文献1は、高分子材料を用いたナノ粒子経皮吸収剤を提案している。特許文献2は、スキンケア成分を含む架橋高分子ナノ粒子を提案している。これらは界面活性剤を使用した乳化物や、モノマーもしくはマクロマー(重合性基を持つ合成高分子)の重合物であり、安全性に懸念がある。
【0008】
非特許文献5では、生体適合性高分子である乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)ナノ粒子を提案している。しかし、PLGAは加水分解されやすく保存安定性に問題がある。また、体内で加水分解された場合、乳酸が産生し、悪影響を及ぼす懸念がある。
【0009】
ところで、ミノキシジルは、化学名を6−(1−ピペリジニル)−2,4−ピリジンジアミン−3−オキサイドと称し、育毛剤としての適用が知られている(特許文献4参照)。ミノキシジルは溶解性が悪く、ミノキシジルを溶解するために通常50%以上のエタノールを含んでおり、それによる悪影響が懸念されている。特許文献3では、組成物により、エタノールによる頭皮への刺激が緩和を提案しているが、エタノール含量は40%以上であり、根本的な解決になっていない。また、ミノキシジル自身にも若干の皮膚刺激性があり、ミノキシジル含有発毛剤を使用した場合、ごく稀に皮膚に軽い炎症等を生じることがあり、こうした皮膚への刺激への緩和が求められている。また、ミノキシジルを溶解する溶剤の量が多くなると、べとつき等の使用感の悪化を招来する点も従来の課題であった。
【0010】
【非特許文献1】中田 雄一郎ら、経皮・経鼻・経肺吸収製剤の開発戦略(情報機構)、P27 (2005)
【非特許文献2】西田 光広、フレグランスジャーナル、11月、17(2005)
【非特許文献3】週刊粧業、第1649号(1986)
【非特許文献4】Follicular liposomal delivery systems. J Liposome Res. 2002、12:143−8
【非特許文献5】辻本広行、Drug Delivery System、21-4、405(2006)
【特許文献1】特開2002−308728公報
【特許文献2】特開2004−244420公報
【特許文献3】特開2006−176447公報
【特許文献4】米国特許公報第4139619号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、安全性が高く、粒子径が小さいことにより透明性が高く、且つ、頭皮及び毛包への浸透性が良い、ミノキシジルを内包した組成物を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ミノキシジルを内包したタンパク質ナノ粒子を調製し、皮膚に適用した結果、安全性、透明性が高く、且つ、良好な頭皮及び毛包への浸透性が示されることを実証した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0013】
即ち、本発明によれば、ミノキシジルを内包したタンパク質ナノ粒子が提供される。
好ましくは、平均粒子サイズは10〜1000nmである。
好ましくは、本発明のタンパク質ナノ粒子は、タンパク質の重量に対して0.01〜100重量%のミノキシジルを含有する。
好ましくは、本発明のタンパク質ナノ粒子は、化粧品用成分、医薬部外品成分、及び医薬品成分からなる群より選ばれる少なくとも一種の生理活性成分をさらに内包する。
【0014】
好ましくは、タンパク質はコラーゲン、ゼラチン、酸処理ゼラチン、アルブミン、オバルブミン、カゼイン、トランスフェリン、グロブリン、フィブロイン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、又はビトロネクチンからなる群より選ばれる少なくとも一種である。
好ましくは、ナノ粒子の形成中および/又は形成後にタンパク質が架橋処理されている。
好ましくは、酵素を用いて架橋処理を行う。
本発明によれば、本発明のタンパク質ナノ粒子を含む水分散物が提供される。
【0015】
さらに本発明によれば、下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼインナノ粒子が提供される。
(a)カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体に混合させる工程;
(b)工程(a)で得た溶液にミノキシジルを添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液を pH3.5〜7.5の酸性水性媒体に注入する工程:
【0016】
さらに本発明によれば、下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼインナノ粒子が提供される。
(a)カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体に混合させる工程;
(b)工程(a)で得た溶液にミノキシジルを添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpH を等電点からpH1以上離れたpHまで下降させる工程:
【発明の効果】
【0017】
本発明のミノキシジルを内包したタンパク質ナノ粒子はナノ粒子であるため、吸収性が高い。また、本発明においては、タンパク質ナノ粒子を用いるため、化学架橋剤や合成界面活性剤を用いることなく製造でき、安全性が高い。さらに、疎水性のミノキシジルをナノ粒子に分散できるため、多量のエタノールを添加する必要がなく、頭皮へのエタノールによる刺激が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態についてさらに具体的に説明する。
本発明のタンパク質ナノ粒子は、ミノキシジルを内包することを特徴とする。ミノキシジルは、一般名2,4−ジアミノ−6−ピペリジノピリミジン−3−オキサイドで表される化合物であって、高血圧症の治療薬として用いられてきたが、その後、発毛作用が明らかとなり、発毛剤・育毛剤の成分として用いられるようになったものである。
【0019】
本発明で用いるミノキシジル以外の生理活性成分の種類は、皮膚から吸収されて活性を示す成分であれば特に限定されないが、例えば、化粧品用成分、医薬部外品成分又は医薬品成分から選ぶことができる。例えば、保湿剤、美白剤、育毛剤、養毛剤、発毛剤、血行促進剤、抗白髪剤、アンチエイジング剤、抗酸化剤、コラーゲン合成促進剤、抗しわ剤、抗にきび剤、ビタミン剤、紫外線吸収剤、香料、色素剤、制汗剤、冷感剤、温感剤、メラニン生成抑制剤、メラノサイト活性化剤、抗生剤、制癌剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、ホルモン剤、抗血栓剤、免疫抑制剤、皮膚疾患治療薬、抗真菌薬、核酸医薬、麻酔薬、解熱剤、鎮痛剤、鎮痒剤、抗浮腫剤、催眠鎮静剤、抗不安剤、興奮剤、精神神経用剤、筋弛緩剤、抗鬱剤、総合感冒薬剤、自律神経系剤、鎮けい剤、発汗剤、止汗剤、強心剤、不整脈用剤、抗不整脈剤、血管収縮剤、血管拡張剤、抗不整脈剤、血圧降下剤、糖尿治療剤、高脂血漿剤、呼吸促進剤、鎮咳剤、ビタミン剤、寄生性皮膚疾患用剤、恒常性剤、ポリペプチド、ホルモン、不全角化抑制剤、ワクチン、又は皮膚軟化剤などを挙げることができる。上記した生理活性成分は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0020】
本発明で用いるミノキシジル以外の育毛剤、養毛剤、発毛剤の種類は、特に限定されないが、具体例としては、グリチルレチン酸又はその誘導体、グリチルリチン酸又はその誘導体、ヒノキチオール、ビタミンE又はその誘導体、ビタミンCおよびその誘導体、ニコチン酸ベンジルやニコチン酸トコフェロールやニコチン酸β-ブトキシエステルやニコチン酸アミドなどのビタミンB3誘導体、パントテニルエチルエーテルやパントテニルアルコールなどのビタミンB5およびその誘導体、アスタキサンチンやβ―カロテンなどのカロテノイド、イソプロピルメチルフェノール、セファラチン、エチニルエストラジオール、塩酸ジフェンヒドラミン、メントール、6-ベンジルアミノプリン、ペンタデカン酸又はその誘導体、t-フラバノン、アデノシンおよびその誘導体、塩化カルプロニウム、フィナステリド、センブリエキスやクジンエキスやカンゾウ抽出物やキンセイソウ抽出物やトウガラシ抽出物やトウチャ抽出物やニンジン抽出物やホウコウエイ抽出物やボタン抽出物やミカン抽出物などの植物抽出エキスなどを挙げることができる。上記した育毛剤、養毛剤、発毛剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0021】
血行促進剤としては、例えば、ニコチン酸、センブリ抽出物、γ-オキサゾール、アルコキシカルボニルピリジンN-オキシド、塩化カルプロニウム、及びアセチルコリン又はその誘導体などを挙げることができる。
【0022】
抗炎症剤としては、例えば、アズレン、アラントイン、塩化リゾチーム、グアイアズレン、塩酸ジフェンヒドラミン、酢酸ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、グルタチオン、サポニン、サリチル酸メチル、メフェナム酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン及びケトプロフェンから選ばれる化合物並びにそれらの誘導体並びにそれらの塩、オウゴンエキス、カワラヨモギエキス、キキョウエキス、キョウニンエキス、クチナシエキス、クマザサ抽出液、ゲンチアナエキス、コンフリーエキス、シラカバエキス、ゼニアオイエキス、トウニンエキス、桃葉エキス並びにビワ葉エキスなどを挙げることができる。
【0023】
保湿剤としては、例えば、ヒアルロン酸、セラミド、リピジュア、イソフラボン、アミノ酸、コラーゲン、ムコ多糖、フコダイン、ラクトフェリン、ソルビトール、キチン・キトサン、リンゴ酸、グルクロン酸、プラセンタエキス、海藻エキス、ボタンピエキス、アマチャエキス、オトギリソウエキス、コレウスエキス、マサキ抽出物、コウカエキス、マイカイ花エキス、チョレイエキス、サンザシエキス、ローズマリーエキス、デュークエキス、カミツレエキス、オドリコソウエキス、レイシエキス、セイヨウノコギリソウエキス、アロエエキス、マロニエエキス、アスナロエキズ、ヒバマタエキス、オスモインエキス、オーツ麦エキス、チューベロースポリサッカライド、冬虫夏草エキス、大麦エキス、オレンジ抽出物、ジオウエキス、サンショウエキス、ヨクイニンエキスなどを挙げることができる。
【0024】
本発明のタンパク質ナノ粒子は、タンパク質の重量に対して0.1〜100重量%のミノキシジルを含有することが好ましく、タンパク質の重量に対して0.1〜50重量%のミノキシジルを含有することがさらに好ましい。
【0025】
本発明のタンパク質ナノ粒子を含む組成物を調製することもできる。上記組成物は、0.01〜50重量%のタンパク質ナノ粒子を含有することが好ましく、0.1〜10重量%のタンパク質ナノ粒子を含有することがさらに好ましい。
【0026】
本発明において、ミノキシジルは、タンパク質ナノ粒子の形成時に添加してもよいし、ナノ粒子の作成後に添加してもよい。
【0027】
本発明で用いるタンパク質ナノ粒子の平均粒子サイズは、通常は1〜1000nmであり、好ましくは10〜1000nmであり、より好ましくは10〜200nmであり、さらに好ましくは10〜100nmであり、特に好ましくは20〜50nmである。
【0028】
本発明で用いるタンパク質の種類は特に限定されないが、リジン残基およびグルタミン残基を有するタンパクが好ましく、分子量1万から100万程度のタンパク質を用いることが好ましい。タンパク質の由来は特に限定されないが、ヒト由来のタンパク質を用いることが好ましい。タンパク質として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。コラーゲン、ゼラチン、酸処理ゼラチン、アルブミン、オバルブミン、カゼイン、トランスフェリン、グロブリン、フィブロイン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、又はビトロネクチンからなる群より選ばれる少なくとも一種を使用することができる。また、タンパク質の由来は特に限定するものではなく、牛、豚、魚、および遺伝子組み換え体のいずれも用いることができる。遺伝子組み換えゼラチンとしては、例えばEU1014176A2号、米国特許6,992,172号に記載のものを用いることができるがこれらに限定されるものではない。その中で好ましいものは、カゼイン、酸処理ゼラチン、コラーゲン、又はアルブミンであり、最も好ましいものはカゼイン、又は酸処理ゼラチンである。本発明でカゼインを用いる場合、カゼインの由来は特に限定されず、乳由来であっても、豆由来であってもよく、α−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼインおよびそれらの混合物を使用することができる。カゼインは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
本発明に用いられるタンパク質は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0030】
本発明では、ナノ粒子の形成中および/又は形成後にタンパク質を架橋処理することができる。上記した架橋処理は、酵素を用いることができる。酵素としては、タンパクの架橋作用が知られているものであれば特に制限されず、その中で好ましいものはトランスグルタミナーゼである。
【0031】
トランスグルタミナーゼは、哺乳類由来のものであっても、微生物由来のものであってもよく、遺伝子組み換え体を用いることができる。具体的には、味の素(株)製アクティバシリーズ、試薬として発売されている哺乳類由来のトランスグルタミナーゼ、例えば、オリエンタル酵母工業(株)製、Upstate USA Inc.製、Biodesign International製などのモルモット肝臓由来トランスグルタミナーゼ、ヤギ由来トランスグルタミナーゼ、ウサギ由来トランスグルタミナーゼ、ヒト由来リコンビナントトランスグルタミナーゼなどが挙げられる。
【0032】
本発明において架橋処理のために用いられる酵素の量は、タンパク質の種類に応じて適宜設定することが出来るが、標準的には、タンパク質の重量に対して、0.1〜100重量%程度を添加することができ、好ましくは、1〜50重量%程度を添加することができる。
【0033】
酵素による架橋反応の時間は、タンパク質の種類、ナノ粒子サイズに応じて適宜設定することができるが、標準的には、1時間から72時間反応することができ、好ましくは、2時間から24時間反応することができる。
【0034】
酵素による架橋反応の温度は、タンパク質の種類、ナノ粒子サイズに応じて適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃で反応することができ、好ましくは、25℃から60℃で反応することができる。
【0035】
本発明に用いられる酵素を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
本発明のナノ粒子は、特許文献特開平6−79168号公報、又はC.Coester著、ジャーナル・ミクロカプスレーション、2000年、17巻、p.187−193に記載の方法に準じて作製することができるが、架橋方法としてグルタルアルデヒドの代わりに酵素を用いることが好ましい。
【0037】
また、本発明においては、酵素架橋処理を有機溶媒中で行うことが好ましい。ここで用いる有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、アセトン、THFなどの水溶性有機溶媒が好ましい。
さらに、本発明においては、架橋処理後に有機溶媒を留去し、水分散することが好ましい。有機溶媒を留去前に水を加えてもよく、留去後に水を加えても良い。
【0038】
本発明のタンパク質ナノ粒子には、脂質(リン脂質など)、アニオン性多糖、カチオン性多糖、アニオン性タンパク質、カチオンタンパク質、又はシクロデキストリンから選択される1種以上の成分を添加することもできる。脂質(リン脂質など)、アニオン性多糖、カチオン性多糖、アニオン性タンパク質、カチオンタンパク質、及びシクロデキストリンの添加量は特に限定されないが、一般的にはタンパク質の重量に対して0.1〜100重量%の量で添加することができる。本発明のタンパク質ナノ粒子を含む組成物においては、上記成分とタンパク質の比を変えることよって、徐放速度を調整することができる。
【0039】
本発明に用いることができるリン脂質として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリンなどが挙げられる。
【0040】
本発明に用いることができるアニオン性多糖とはカルボキシル基、硫酸基又はリン酸基等の酸性極性基を有する多糖類である。以下に具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、フコイダン、アガロペクチン、ポルフィラン、カラヤガム、ジェランガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸類等が挙げられる。
【0041】
本発明に用いることができるカチオン性多糖とは、アミノ基等の塩基性極性基を有する多糖類である。以下に具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。キチン、キトサンなどのグルコサミンやガラクトサミンを構成単糖として含むものなどが挙げられる。
【0042】
本発明に用いることができるアニオン性タンパク質とは等電点が生理的pHよりも塩基性側にあるタンパク質およびリポタンパク質である。具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、リゾチーム、チトクロムC、リボヌクレアーゼ、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、α−キモトリプシンなどが挙げられる。
【0043】
本発明に用いられるカチオンタンパク質とは等電点が生理的pHよりも酸性側にあるタンパク質およびリポタンパク質である。具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ポリリジン、ポリアルギニン、ヒストン、プロタミン、オバルブミンなどが挙げられる。
【0044】
本発明においては、下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼインナノ粒子を用いることができる。
(a)カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体に混合させる工程;
(b)工程(a)で得た溶液にミノキシジルを添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液を pH3.5〜7.5の酸性水性媒体に注入する工程:
【0045】
さらに本発明においては、下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼインナノ粒子を用いることができる
(a)カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体に混合させる工程;
(b)工程(a)で得た溶液にミノキシジルを添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpH を等電点からpH1以上離れたpHまで下降させる工程:
【0046】
本発明においては、所望のサイズのカゼインナノ粒子を作製できる。また、疎水性のミノキシジルとカゼイン疎水性部分の相互作用を利用して、カゼインナノ粒子内にミノキシジルを内包できる。さらに、これらの粒子は水溶液中で安定に存在することが見出された。
【0047】
本発明のカゼインナノ粒子の作製方法は、カゼインを塩基性水性媒体液に混合し、塩基性水性媒体中に注入する方法と、カゼインを塩基性水性媒体液に混合し、攪拌しながら、pHを下降させる方法が挙げられる。
【0048】
カゼインを塩基性水性媒体液に混合し、塩基性水性媒体中に注入する方法としては、シリンジによるのが簡便で好ましいが、注入速度、溶解性、温度、撹拌状態を満足する方法であれば特に限定しない。一般的には、注入速度は、1mL/minから100mL/minで注入することができる。塩基性水性媒体の温度は、適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃にすることができ、好ましくは、25℃から70℃にすることができる。水性媒体の温度は、適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃にすることができ、好ましくは、25℃から60℃ですることができる。攪拌速度は、適宜設定することができるが、標準的には、100rpmから3000rpmにすることができ、好ましくは、200rpmから2000rpmである。
【0049】
カゼインを塩基性水性媒体液に混合し、攪拌しながら、pHを下降させる方法としては、酸を滴下するのが簡便で好ましいが、溶解性、温度、撹拌状態を満足する方法であれば特に限定しない。塩基性水性媒体の温度は、適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃にすることができ、好ましくは、25℃から70℃にすることができる。攪拌速度は、適宜設定することができるが、標準的には、100rpmから3000rpmにすることができ、好ましくは、200rpmから2000rpmである。
【0050】
本発明に用いる水性媒体は、有機酸または塩基、無機酸または無機塩基の水溶液、又は緩衝液を用いることができる。
【0051】
具体的には、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、カルボン酸、酒石酸、コハク酸、酢酸またはフタル酸、トリフルオロ酢酸、モルホリノエタンスルホン酸、2-〔4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル〕エタンスルホン酸のような有機酸;トリス(ヒドロキシメチル)、アミノメタン、アンモニアのような有機塩基;塩酸、過塩素酸、炭酸のような無機酸;燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムのような無機塩基を用いた水溶液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
本発明に用いる水性媒体の濃度は、約10mMから約1Mが好ましい。より好ましくは、約20mMから約200mMである。
【0053】
本発明に用いる塩基性水性媒体のpHは、8以上が好ましく、8から12が好ましい。より好ましくはpH10〜12である。pHが高すぎると加水分解の懸念や取り扱い上の危険性があるため、上述の範囲が好ましい。
【0054】
本発明において、カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体に混合させる温度は、0〜80℃が好ましく、10〜60℃が好ましい。より好ましくは、20〜40℃である。
【0055】
本発明に用いる酸性水性媒体のpHは、好ましいpHは3.5〜7.5である。より好ましくはpHは5から6である。前述の範囲外では、粒子サイズが大きくなる傾向が見られる。
【0056】
本発明のタンパク質ナノ粒子を含む組成物はさらに、添加物を含むことができる。添加物としては特に限定することはないが、保湿剤、柔軟剤、経皮吸収促進剤、無痛化剤、防腐剤、酸化防止剤、色素剤、増粘剤、香料、又はpH調整剤から選択される1種以上のものを使用することができる。
【0057】
本発明で用いることができる保湿剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。カンテン、ジグリセリン、ジステアリルジモニウムヘクトライト、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール、ヨクイニンエキス、ワセリン、尿素、ヒアルロン酸、セラミド、リピジュア、イソフラボン、アミノ酸、コラーゲン、ムコ多糖、フコダイン、ラクトフェリン、ソルビトール、キチン・キトサン、リンゴ酸、グルクロン酸、プラセンタエキス、海藻エキス、ボタンピエキス、アマチャエキス、オトギリソウエキス、コレウスエキス、マサキ抽出物、コウカエキス、マイカイ花エキス、チョレイエキス、サンザシエキス、ローズマリーエキス、デュークエキス、カミツレエキス、オドリコソウエキス、レイシエキス、セイヨウノコギリソウエキス、アロエエキス、マロニエエキス、アスナロエキズ、ヒバマタエキス、オスモインエキス、オーツ麦エキス、チューベロースポリサッカライド、冬虫夏草エキス、大麦エキス、オレンジ抽出物、ジオウエキス、サンショウエキス、ヨクイニンエキスなどが挙げられる。
【0058】
本発明で用いることができる柔軟剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。グリセリン、ミネラルオイル、エモリエント成分(例えば、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸ポリグリセリル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸オクチル、オレイン酸、オレイン酸グリセリル、カカオ脂、コレステロール、混合脂肪酸トリグリセリド、コハク酸ジオクチル、酢酸ステアリン酸スクロース、シクロペンタシロキサン、ジステアリン酸スクロース、パルミチン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ベヘン酸アラキル、ポリベヘン酸スクロース、ポリメチルシルセスキオキサン、ミリスチルアルコール、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシルなど)が挙げられる。
【0059】
本発明で用いることができる経皮吸収促進剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。エタノール、ミリスチン酸イソプロピル、クエン酸、スクワラン、オレイン酸、メントール、リモネン、N-メチル-2-ピロリドン、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、尿素、植物油、動物油が挙げられる。
【0060】
本発明で用いることができる無痛化剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ベンジルアルコール、塩酸プロカイン、塩酸キシロカイン、 クロロブタノールなどが挙げられる。
【0061】
本発明で用いることができる防腐剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、過酸化水素、ギ酸、ギ酸エチル、ジ亜塩素酸ナトリウム、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、ペクチン分解物、ポリリジン、フェノール、イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール、フェノキシエタノール、レゾルシン、チモール、チラム、ティートリー油が挙げられる。
【0062】
本発明で用いることができる酸化防止剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ビタミンA、レチノイン酸、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、レチニルアセテート、レチニルパルミテート、レチノイン酸トコフェリル、ビタミンCおよびその誘導体、カイネチン、β−カロテン、アスタキサンチン、ルテイン、リコピン、トレチノイン、ビタミンE、α−リポ酸、コエンザイムQ10、ポリフェノール、SOD、フィチン酸などが挙げられる。
【0063】
本発明で用いることができる色素剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。オキアミ色素、オレンジ色素、カカオ色素、カオリン、カルミン類、グンジョウ、コチニール色素、酸化クロム、酸化鉄、二酸化チタン、タール色素、クロロフィル、化粧品用成分、医薬部外品成分又は医薬品成分に使用可能な法定色素などが挙げられる。
【0064】
本発明で用いることができる増粘剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。クインスシード、カラギーナン、アラビアガム、カラヤガム、キサンタンガム、ジェランガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、ペクチン、デンプン、シクロデキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0065】
本発明で用いることができる香料として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ジャコウ、アカシア油、アニス油、イランイラン油、シナモン油、ジャスミン油、スウィートオレンジ油、スペアミント油、ゼラニウム油、タイム油、ネロリ油、ハッカ油、ヒノキ油、フェンネル油、ペパーミント油、ベルガモット油、ライム油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ローズ油、ローズウッド油、アニスアルデヒド、ゲラニオール、シトラール、シベトン、ムスコン、リモネン、バニリンなどが挙げられる。
【0066】
本発明で用いることができるpH調整剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸、コハク酸が挙げられる。
【0067】
本発明のタンパク質ナノ粒子を含む組成物の剤型は特に限定されないが、例えば、外用液剤、湿布剤、塗布剤、清拭剤、浴剤、消毒剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、泥膏剤、パップ剤、硬膏剤、創面被覆剤、創面被覆剤-ガーゼ型、止血剤、接着剤、粘着テープ剤、経皮吸収型粘着テープ、創傷保護剤、エアゾール剤、ローション剤、トニック剤、リニメント剤、乳剤、懸濁剤、飽和剤、チンキ剤、粉剤、泡剤、化粧水、マッサージクリーム、栄養クリーム、パック、シート状外用剤、メーキャップ化粧料、皮膚着色用外用剤、皮膚粘着タイプの化粧料、シャンプー、リンス、パーマネントウエーブ用組成物、染毛剤、ボディーソープ、石鹸、浴用剤、サンケア(サンスクリーン、サンオイル、アフターサンローション)、フレグランスなどを挙げることができる。
【0068】
本発明のタンパク質ナノ粒子の投与方法としては、経皮・経粘膜投与が挙げられる。
【0069】
本発明のタンパク質ナノ粒子の投与量は、ミノキシジルの使用量、患者の体重、疾患の状態などに応じて適宜設定することができるが、一般的には、1回の投与につき、1μg〜50mg/cm2程度を投与することができ、好ましくは2.5μg〜10mg/cm2程度を投与することができる。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
実施例1:
カゼインNa(乳由来・和光純薬製)10mgをpH9、50mMリン酸バッファー1mLに混合させる。外設40℃、800rpmの攪拌条件で、カゼイン溶液1mLをマイクロシリンジを用いて、ミノキシジル1.7mgを溶解したpH5、200mMのリン酸バッファー水10mL中に注入したところ、ミノキシジルを内包したカゼインナノ粒子の水分散液が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、ニッキソー(株)製マイクロトラックを用い測定したところ、55nmであった。
【0071】
実施例2:
カゼインNa(乳由来・和光純薬製)10mgおよびミノキシジル1mgをpH10、50mMリン酸バッファー1mLに混合させる。塩酸を加えpHを7に調整したところ、カゼインナノ粒子が得られた。
上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、マルバーン製Nano−ZSを用い測定したところ、23nmであった。
【0072】
実施例3:
カゼインNa(乳由来・和光純薬製)10mgおよびミノキシジル1mgをpH10、100mMリン酸バッファー1mLに混合させる。グリチルレチン酸(和光純薬製)3.4mgをエタノール0.1mLに溶解させる。この2種の溶液を混合し、塩酸を加えpHを7に調整したところ、カゼインナノ粒子が得られた。
上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、ニッキソー(株)製ナノトラックを用い測定したところ、22nmであった。
【0073】
実施例4:
カゼインNa(乳由来・和光純薬製)20mgおよびミノキシジル1mgをpH10、100mMリン酸バッファー1mLに混合させる。ヒノキチオール(和光純薬製)1.7mgをエタノール0.25mLに溶解させる。この2種の溶液を混合し、塩酸を加えpHを7に調整したところ、カゼインナノ粒子が得られた。
上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、ニッキソー(株)製ナノトラックを用い測定したところ、21nmであった。
【0074】
実施例5:
カゼイン(乳由来・和光純薬製)100mgおよびミノキシジル0.5mgを、pH10、50mMリン酸バッファー10mLに混合させる。フィナステリド(LKT Labs, Inc製)1mgをエタノール50μLに溶解させる。この2種の溶液を混合し、塩酸を加えpHを7に調整したところ、カゼインナノ粒子が得られた。
上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、ニッキソー(株)製ナノトラックを用い測定したところ、22nmであった。
【0075】
実施例6:
酸処理ゼラチン10mg、TG-S(味の素製)5mgを水1mLに溶解させる。外設40℃、800rpmの攪拌条件で、ゼラチン溶液1mLをマイクロシリンジを用いて、ミノキシジル1.7mgを溶解したエタノール10mL中に注入したところ、ゼラチンナノ粒子が得られた。外設55℃で5時間静置し、ゼラチンナノ粒子を酵素架橋する。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、ニッキソー(株)製マイクロトラックを用い測定したところ、80nmであった。
【0076】
得られたゼラチンナノ粒子分散液に水5mLを加え、ロータリーエバポレーターにて、エタノールを除去し、ゼラチンナノ粒子の水分散液が得られた。
上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、ニッキソー(株)製マイクロトラックを用い測定したところ、211nmであった。
【0077】
試験例1:
実施例2から6に記載の育毛剤内包ナノ粒子分散液を室温にて1ヶ月保存後、ニッキソー(株)製マイクロトラックを用い平均粒経を測定した。
比較例1として、合成ポリマー(PLGA)のナノ粒子分散液であるナノインパクト(ホソカワミクロン製)を用いた。
試験例1の測定結果を表1に示す。比較例1は沈殿が見られた。
【0078】
【表1】

【0079】
モニター5名に上記実施例の水分散物の使用感を評価してもらってところ、塗り伸ばしやすさ、さっぱり感に優れている、べたつきがない、など使用感も良好であった。
【0080】
上記の実施例により、本発明の構成により、エタノール等の溶剤を含まない水性製剤で、ミノキシジルを安定に保持できることがわかる。安全性が高く、粒子径が小さいことにより透明性が高く、天然高分子を用いることによって安全性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミノキシジルを内包したタンパク質ナノ粒子。
【請求項2】
平均粒子サイズが10〜1000nmである、請求項1に記載のタンパク質ナノ粒子。
【請求項3】
タンパク質の重量に対して0.01〜100重量%のミノキシジルを含有する、請求項1又は2に記載のタンパク質ナノ粒子。
【請求項4】
化粧品用成分、医薬部外品成分、及び医薬品成分からなる群より選ばれる少なくとも一種の生理活性成分をさらに内包する、請求項1から3の何れかに記載のタンパク質ナノ粒子。
【請求項5】
タンパク質がコラーゲン、ゼラチン、酸処理ゼラチン、アルブミン、オバルブミン、カゼイン、トランスフェリン、グロブリン、フィブロイン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、又はビトロネクチンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1から4の何れかに記載のタンパク質ナノ粒子。
【請求項6】
ナノ粒子の形成中および/又は形成後にタンパク質が架橋処理されている、請求項1から5の何れかに記載のタンパク質ナノ粒子。
【請求項7】
酵素を用いて架橋処理を行う、請求項6に記載のタンパク質ナノ粒子。
【請求項8】
請求項1から7の何れかに記載のタンパク質ナノ粒子を含む水分散物。
【請求項9】
下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼインナノ粒子。
(a)カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体に混合させる工程;
(b)工程(a)で得た溶液にミノキシジルを添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液を pH3.5〜7.5の酸性水性媒体に注入する工程:
【請求項10】
下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼインナノ粒子。
(a)カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体に混合させる工程;
(b)工程(a)で得た溶液にミノキシジルを添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpH を等電点からpH1以上離れたpHまで下降させる工程:

【公開番号】特開2009−173610(P2009−173610A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16146(P2008−16146)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】