説明

タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患に関係するタンパク質の凝集を阻害するための新規薬物

本発明は、式(E)により表わされる化合物に関する。本発明は、タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患の治療または予防に使用するための、式(E)により表わされる化合物にも関する。さらに本発明は、本発明化合物を含む医薬組成物または診断用組成物およびキットに関する。さらに本発明は、凝集したタンパク質の沈着物をイメージングする方法に関する。検出可能な状態に標識された本発明化合物を調製するためのキットも開示する。式(E)において、X、YおよびLは、独立して、方向性なしに−C(R)(R)−、−C(R)=、−N(R)−、−N=、−N(R)=、−O−および−S−から選択され;MおよびZは、独立して、方向性なしに式(I)および式(II)から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(E)により表わされる化合物に関する。本発明は、タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患の治療または予防に使用するための、式(E)により表わされる化合物にも関する。さらに本発明は、本発明化合物を含む医薬組成物または診断用組成物およびキットに関する。さらに本発明は、凝集したタンパク質の沈着物をイメージングする方法に関する。検出可能な状態に標識された本発明化合物を調製するためのキットも開示する。
【0002】
いくつかの文献を本明細書の記載全体において引用する。本明細書に引用する文献(製造業者の明細、指示などをいずれも含む)の開示内容を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
M. Ono et al. (Bioorganic & Medicinal Chemistry 16 (2008)6867-6872)は、3,5−ジフェニル−1,2,4−オキサジアゾール類をベースとする特定のベータ−アミロイドプローブを記載している。
【0004】
US 2007/0276034には、特定のビス−およびトリス−ジヒドロキシアリール化合物ならびにそれらのメチレンジオキシ類似体および医薬的に許容できるエステルが開示され、それらはシヌクレイノパチー(synucleinopathy)の治療に適切であるとされている。
【0005】
WO 2008/131148には、特定のジフェニル−ヘテロアリール誘導体、ならびにそれらをアミロイド斑の結合およびイメージングのために使用することが記載されている。
【0006】
NURR−1活性化剤として有用な複素環式化合物が、WO 2004/072050に開示されている。
WO 2007/002540では、組織のイメージングに使用できる化合物における標識基として、放射性標識されたエチレングリコールまたはポリエチレングリコールが用いられている。
【0007】
WO 98/17652には、特定のオキサジアゾール誘導体が記載され、それらは神経変性性障害および脳虚血の治療に適切であると述べられている。
多数の神経疾患および神経変性性疾患が知られており、それらの多くが現在では治癒できない。これらの疾患には、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、ハレルフォルデン-スパッツ病、アルツハイマー病、老人性認知症、クロイツフェルト−ヤコブ病、動脈硬化性認知症、脳閉塞性血栓動脈炎、レーヴィ体認知症(DLB)、多系統萎縮症(MSA)および他の多くの病的状態が含まれる。
【0008】
クロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)、スクレイピーおよびウシ海綿状脳症(BSE)などの疾患を含めたプリオン病は、病理学的に脳の海綿状変性を特徴とする。プリオン病は主に、ミスフォールディングし、凝集した、ベータ−シートに富むPrPScイソ型の膜糖タンパク質PrPCからなる、異常な感染性作用物質により起きる。
【0009】
プリオン病は、BSEの出現のため、公衆衛生に関して大きな問題を引き起こした。科学的な証拠から、BSEはヒトへ伝染して新たな変異型クロイツフェルト−ヤコブ病(vCJD)を生じたことが示唆されている(Will et al. 1996, Bruce et al. 1997)。どのくらいの人々が現在この疾患を潜伏させ、また将来vCJDに罹患するかは分かっていない。現在入手できる証拠によれば、多数の患者が罹患する流行が差し迫っていることは否定されない(Andrews et al. 2000)。このため、この疾患がこれ以上拡散するのを防ぐ措置をとるほか、有効な療法薬を開発する必要性が高まっている。さらに、最近の証拠は、輸血による二次伝染が起きる可能性があることを示唆している(LLewelyn et al., 2004)。
【0010】
プリオン病の発病における中心的な事象は、細胞のプリオンタンパク質PrPCが病的PrPScイソ型に変換し、これが凝集して大きなタンパク質凝集物になることである。このPrPSc凝集物の形成が、プリオン病の発病の特徴である。現在入手できる証拠は、PrPScがこの変換の鋳型として作用し、かつ神経機能障害および細胞死を引き起こす神経毒物として作用することを示唆している(Prusiner 1998, Giese and Kretzschmar 2001)。したがって、プリオン病に対する最も有望な療法は、PrPSc増幅を妨げるものである。細胞培養およびインビボ試験から得られた証拠は、PrPScの形成がいったん阻害されるとPrPScのクリアランスが起きる可能性があることを示唆している(Mallucci 2003)。したがってこの療法方策は、潜伏期の後期でも、また疾患の臨床徴候が発現した後ですら有効である可能性がある;これは、ヒトのプリオン病に対処する際に有用であるためには必須である。
【0011】
PrPScの増幅をインビトロで妨げるのに有効なことが示された多数の化合物がある:たとえば、アクリジン誘導体、コンゴーレッド、ポルフィリン類/フタロシアニン類、Cp−60、ベータ−シート破壊ペプチド、およびPrPのバリアント(Caughey et al. 1998, Chabry et al. 1998, Demaimay et al. 2000, Horiuchi et al. 2000, Perrier et al. 2000, Rudyk et al. 2000, Soto et al. 2000)。しかし、これらの化合物はいずれも、これまでのところ疾患の処置のための使用、または療法効力および薬理学的特性が増大した化合物を開発するためのリード化合物としての使用に成功していない。
【0012】
有望な療法薬としてこれまでに同定された物質は主に偶然発見された。有望な抗プリオン薬を得るための大規模な化合物ライブラリーのハイスループットスクリーニングに適したインビトロアッセイ法は、これまでほとんど確立されていない。系統的なスクリーニングのための2つの異なる方法が、最近公表された研究において提唱された:一方は酵母をベースとするもの(Bach et al. 2003)、他方は感染ScN2a細胞培養物を用いるもの(Kocisko et al. 2004, Kocisko et al. 2003)である。しかし、これらの方法はそれぞれ2500および2000の化合物に限定されたライブラリーのスクリーニングが可能であり、かつ時間がかかることが分かった。
【0013】
低分子量物質のほか、他の3つの有望な方法が現在試験されている。第1は、PrPScの形成を抑制するために、PrPに対する抗体を使用する。この方法を細胞培養および腹腔内注射したマウスに用いて成功している(Enari et al., 2001; White et al., 2003)。他の方法は、スクレイピー感染マウスにおける潜伏期間を延長することが見いだされたCpGオリゴヌクレオチドの適用である(Sethi et al., 2002)。しかし、この方法の作用機序はこれまで解明されていない。最後に、感染した動物またはヒトのニューロンにおけるPrPCの発現をsiRNAにより抑制することが考察中である。この方法は、細胞培養においてはPrPSc形成を阻害することが示された(Daude et al., 2003)。3つの方法はすべて同じ問題、すなわち分子の血液−脳−関門通過という問題に直面する。この欠点のため、これらの方法は末梢臓器における被曝後予防に適するにすぎず、中枢神経系におけるこの疾患の療法には適さない。
【0014】
他のクラスの神経変性性疾患、いわゆるシヌクレイノパチーは、主にα−シヌクレイン(α−synuclein)を含有するタンパク質の凝集物、オリゴマー、プロトフィブリルおよびフィブリルの細胞内蓄積を特徴とする。シヌクレイノパチーの場合、神経細胞に対する病理学的作用はα−シヌクレインのオリゴマー凝集物の形成およびそれに続く膜細孔の形成により誘発されると考えられる。シヌクレイノパチーの例は、パーキンソン病(PD)、レーヴィ体認知症(DLB)および多系統萎縮症(MSA)である。これまでのところ、α−シヌクレイン凝集を阻害するための療法方策は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】US 2007/0276034
【特許文献2】WO 2008/131148
【特許文献3】WO 2004/072050
【特許文献4】WO 2007/002540
【特許文献5】WO 98/17652
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】M. Ono et al. (Bioorganic & Medicinal Chemistry 16 (2008)6867-6872)
【非特許文献2】Will et al. 1996
【非特許文献3】Bruce et al. 1997
【非特許文献4】Andrews et al. 2000
【非特許文献5】LLewelyn et al., 2004
【非特許文献6】Prusiner 1998
【非特許文献7】Giese and Kretzschmar 2001
【非特許文献8】Mallucci 2003
【非特許文献9】Caughey et al. 1998
【非特許文献10】Chabry et al. 1998
【非特許文献11】Demaimay et al. 2000
【非特許文献12】Horiuchi et al. 2000
【非特許文献13】Perrier et al. 2000
【非特許文献14】Rudyk et al. 2000
【非特許文献15】Soto et al. 2000
【非特許文献16】Bach et al. 2003
【非特許文献17】Kocisko et al. 2004
【非特許文献18】Kocisko et al. 2003
【非特許文献19】Enari et al., 2001
【非特許文献20】White et al., 2003
【非特許文献21】Sethi et al., 2002
【非特許文献22】Daude et al., 2003
【発明の概要】
【0017】
したがって、凝集性タンパク質に関連する疾患、たとえばプリオン病およびシヌクレイノパチーを処置するための新規化合物の同定が求められている。
したがって、本発明の基礎となる技術的問題は、プリオン病、シヌクレイノパチー、および凝集性タンパク質を特徴とする他の疾患、特にパーキンソン病を処置するための化合物を提供することである。さらに、前記の障害における凝集したタンパク質の沈着物をイメージングするのに適切なプローブである化合物を提供することが求められている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、2D−SIFTおよび細胞培養においてスクリーニングしたDIVERSet 1および2について作製したSAR−Mapである。この地図は、DIVERSet 1および2の一次細胞培養スクリーニングの837のヒット化合物から構築した構造類似化合物のクラスター(星印または四角により表わす)を示す。その際これらのクラスターは、類似クラスターが互いに近接するように配列される。クラスターを表わす記号は、凡例中に説明するように、それぞれそれらのサイズ、ならびにSIFT活性物質および細胞培養活性物質の割合に従って、大きさ、形状および色が決定される。したがって、大きな割合のSIFT活性物質および細胞培養活性物質を含む、より大きなクラスターは、大きな赤い星印で記号化される。DPP_1〜DPP_5と呼ぶ5つのクラスターを選択し、これらのクラスターを代表する原型化合物を表示する。
【図2−1】図2は、同定したクラスター(図1)中へソーティングしたすべての化合物を図2A〜Fに、種々のアッセイにおけるそれらの活性と共に示す。これらはすべて、3,5−ジフェニル−ピラゾール(DPP)誘導体の化合物クラスに属する(参照:DPPモチーフは図1に示される)。図2Fには、他のクラスターDPP_6を示す;これは図1のSAR−mapには含まれず、N原子がピラゾール環に結合した単一の細胞培養活性化合物を含む。図2Fには、さらにDIVERSet 1および2からの33のDPP化合物のうちの4つを示す;これらは細胞培養において不活性であることが認められ、DMプログラムが6つのDPPクラスと類似しないと判定された。本発明者らはこれらの化合物をDPPモチーフのライブラリー検索により同定した。
【図2−2】図2は、同定したクラスター(図1)中へソーティングしたすべての化合物を図2A〜Fに、種々のアッセイにおけるそれらの活性と共に示す。これらはすべて、3,5−ジフェニル−ピラゾール(DPP)誘導体の化合物クラスに属する(参照:DPPモチーフは図1に示される)。図2Fには、他のクラスターDPP_6を示す;これは図1のSAR−mapには含まれず、N原子がピラゾール環に結合した単一の細胞培養活性化合物を含む。図2Fには、さらにDIVERSet 1および2からの33のDPP化合物のうちの4つを示す;これらは細胞培養において不活性であることが認められ、DMプログラムが6つのDPPクラスと類似しないと判定された。本発明者らはこれらの化合物をDPPモチーフのライブラリー検索により同定した。
【図2−3】図2は、同定したクラスター(図1)中へソーティングしたすべての化合物を図2A〜Fに、種々のアッセイにおけるそれらの活性と共に示す。これらはすべて、3,5−ジフェニル−ピラゾール(DPP)誘導体の化合物クラスに属する(参照:DPPモチーフは図1に示される)。図2Fには、他のクラスターDPP_6を示す;これは図1のSAR−mapには含まれず、N原子がピラゾール環に結合した単一の細胞培養活性化合物を含む。図2Fには、さらにDIVERSet 1および2からの33のDPP化合物のうちの4つを示す;これらは細胞培養において不活性であることが認められ、DMプログラムが6つのDPPクラスと類似しないと判定された。本発明者らはこれらの化合物をDPPモチーフのライブラリー検索により同定した。
【図2−4】図2は、同定したクラスター(図1)中へソーティングしたすべての化合物を図2A〜Fに、種々のアッセイにおけるそれらの活性と共に示す。これらはすべて、3,5−ジフェニル−ピラゾール(DPP)誘導体の化合物クラスに属する(参照:DPPモチーフは図1に示される)。図2Fには、他のクラスターDPP_6を示す;これは図1のSAR−mapには含まれず、N原子がピラゾール環に結合した単一の細胞培養活性化合物を含む。図2Fには、さらにDIVERSet 1および2からの33のDPP化合物のうちの4つを示す;これらは細胞培養において不活性であることが認められ、DMプログラムが6つのDPPクラスと類似しないと判定された。本発明者らはこれらの化合物をDPPモチーフのライブラリー検索により同定した。
【図2−5】図2は、同定したクラスター(図1)中へソーティングしたすべての化合物を図2A〜Fに、種々のアッセイにおけるそれらの活性と共に示す。これらはすべて、3,5−ジフェニル−ピラゾール(DPP)誘導体の化合物クラスに属する(参照:DPPモチーフは図1に示される)。図2Fには、他のクラスターDPP_6を示す;これは図1のSAR−mapには含まれず、N原子がピラゾール環に結合した単一の細胞培養活性化合物を含む。図2Fには、さらにDIVERSet 1および2からの33のDPP化合物のうちの4つを示す;これらは細胞培養において不活性であることが認められ、DMプログラムが6つのDPPクラスと類似しないと判定された。本発明者らはこれらの化合物をDPPモチーフのライブラリー検索により同定した。
【図2−6】図2は、同定したクラスター(図1)中へソーティングしたすべての化合物を図2A〜Fに、種々のアッセイにおけるそれらの活性と共に示す。これらはすべて、3,5−ジフェニル−ピラゾール(DPP)誘導体の化合物クラスに属する(参照:DPPモチーフは図1に示される)。図2Fには、他のクラスターDPP_6を示す;これは図1のSAR−mapには含まれず、N原子がピラゾール環に結合した単一の細胞培養活性化合物を含む。図2Fには、さらにDIVERSet 1および2からの33のDPP化合物のうちの4つを示す;これらは細胞培養において不活性であることが認められ、DMプログラムが6つのDPPクラスと類似しないと判定された。本発明者らはこれらの化合物をDPPモチーフのライブラリー検索により同定した。
【図2−7】図2は、同定したクラスター(図1)中へソーティングしたすべての化合物を図2A〜Fに、種々のアッセイにおけるそれらの活性と共に示す。これらはすべて、3,5−ジフェニル−ピラゾール(DPP)誘導体の化合物クラスに属する(参照:DPPモチーフは図1に示される)。図2Fには、他のクラスターDPP_6を示す;これは図1のSAR−mapには含まれず、N原子がピラゾール環に結合した単一の細胞培養活性化合物を含む。図2Fには、さらにDIVERSet 1および2からの33のDPP化合物のうちの4つを示す;これらは細胞培養において不活性であることが認められ、DMプログラムが6つのDPPクラスと類似しないと判定された。本発明者らはこれらの化合物をDPPモチーフのライブラリー検索により同定した。
【図2−8】図2は、同定したクラスター(図1)中へソーティングしたすべての化合物を図2A〜Fに、種々のアッセイにおけるそれらの活性と共に示す。これらはすべて、3,5−ジフェニル−ピラゾール(DPP)誘導体の化合物クラスに属する(参照:DPPモチーフは図1に示される)。図2Fには、他のクラスターDPP_6を示す;これは図1のSAR−mapには含まれず、N原子がピラゾール環に結合した単一の細胞培養活性化合物を含む。図2Fには、さらにDIVERSet 1および2からの33のDPP化合物のうちの4つを示す;これらは細胞培養において不活性であることが認められ、DMプログラムが6つのDPPクラスと類似しないと判定された。本発明者らはこれらの化合物をDPPモチーフのライブラリー検索により同定した。
【図3−1】図3は、実施例2に記載した方法に従って一次スクリーニングの結果および医薬科学的考察に基づいて合成された化合物のリストを示す。これらの化合物を種々の試験アッセイ法を用いて分析した(すなわち、SIFT、プリオン病の細胞培養モデルにおけるアッセイ、インビボ動物試験、またはα−シヌクレイン凝集の生化学的アッセイ)。
【図3−2】図3は、実施例2に記載した方法に従って一次スクリーニングの結果および医薬科学的考察に基づいて合成された化合物のリストを示す。これらの化合物を種々の試験アッセイ法を用いて分析した(すなわち、SIFT、プリオン病の細胞培養モデルにおけるアッセイ、インビボ動物試験、またはα−シヌクレイン凝集の生化学的アッセイ)。
【図3−3】図3は、実施例2に記載した方法に従って一次スクリーニングの結果および医薬科学的考察に基づいて合成された化合物のリストを示す。これらの化合物を種々の試験アッセイ法を用いて分析した(すなわち、SIFT、プリオン病の細胞培養モデルにおけるアッセイ、インビボ動物試験、またはα−シヌクレイン凝集の生化学的アッセイ)。
【図3−4】図3は、実施例2に記載した方法に従って一次スクリーニングの結果および医薬科学的考察に基づいて合成された化合物のリストを示す。これらの化合物を種々の試験アッセイ法を用いて分析した(すなわち、SIFT、プリオン病の細胞培養モデルにおけるアッセイ、インビボ動物試験、またはα−シヌクレイン凝集の生化学的アッセイ)。
【図3−5】図3は、実施例2に記載した方法に従って一次スクリーニングの結果および医薬科学的考察に基づいて合成された化合物のリストを示す。これらの化合物を種々の試験アッセイ法を用いて分析した(すなわち、SIFT、プリオン病の細胞培養モデルにおけるアッセイ、インビボ動物試験、またはα−シヌクレイン凝集の生化学的アッセイ)。
【図3−6】図3は、実施例2に記載した方法に従って一次スクリーニングの結果および医薬科学的考察に基づいて合成された化合物のリストを示す。これらの化合物を種々の試験アッセイ法を用いて分析した(すなわち、SIFT、プリオン病の細胞培養モデルにおけるアッセイ、インビボ動物試験、またはα−シヌクレイン凝集の生化学的アッセイ)。
【図3−7】図3は、実施例2に記載した方法に従って一次スクリーニングの結果および医薬科学的考察に基づいて合成された化合物のリストを示す。これらの化合物を種々の試験アッセイ法を用いて分析した(すなわち、SIFT、プリオン病の細胞培養モデルにおけるアッセイ、インビボ動物試験、またはα−シヌクレイン凝集の生化学的アッセイ)。
【図3−8】図3は、実施例2に記載した方法に従って一次スクリーニングの結果および医薬科学的考察に基づいて合成された化合物のリストを示す。これらの化合物を種々の試験アッセイ法を用いて分析した(すなわち、SIFT、プリオン病の細胞培養モデルにおけるアッセイ、インビボ動物試験、またはα−シヌクレイン凝集の生化学的アッセイ)。
【図4】図4は、RMLスクレイピーを脳内感染させた後のマウスの生存時間に対して処置が及ぼす影響を示す。化合物を1日1回、感染後80日目から14日間投与した(50μLの10mM化合物)。(A)化合物10353_F11による処置は、脳内感染マウスの生存を延長する(p<0,05)。(B)には、種々の化合物による処置後の平均生存時間を示す。化合物anle138bおよびsery149の1日1回、腹腔内注射は、RMLスクレイピーによる攻撃後の生存時間を有意に延長する(anle138b:p<0,01;sery149:p<0,05)。平均生存時間を日数±標準偏差で表示する。
【図5】図5は、RMLスクレイピーを腹腔内感染させたマウスの脾臓PrPScレベルに対して処置が及ぼす影響を示す。(A)スクレイピープリオンを感染させた後、マウスを1日1回、化合物で処置した(腹腔内投与については25μLの100mM化合物、経口投与については50mg/kgの化合物)。(B)ドットブロットアッセイにおける脾臓PrPScレベルのデンシトメトリー分析。anle138bによる処置は、対照と比較して強いPrPScレベル低下を誘導した(p=0,001)。(C)スクレイピー感染マウスからの脾臓の免疫組織学的分析。anle138bで処置した後、PrPSc沈着が低い(グレード+)脾臓のパーセントは増大し、強いPrPSc沈着(グレード+++)は消失した。(D)は、脾臓におけるPrPSc染色沈着物(矢印)の2例を示す;左の写真は強いPrPSc染色(グレード+++)を示し、これに対し右の写真は低いPrPSc染色(グレード+)を示す。棒は平均PrPScレベル±標準誤差を表わす。
【図6】図6は、マウスの脳のイムノブロット分析および組織学的分析を示す。(A)マウスの脳内にRMLスクレイピーを接種した後、感染後80日目に処置を開始した。化合物を指示した時点で投与した(腹腔内投与については25μLの100mM化合物、経口投与については50mg/kgの化合物)。(B)種々の時点でのプリオン接種マウスの脳ホモジェネートにおけるPrPScレベルの定量。anle138bによる処置は、脳におけるPrPSc蓄積を完全に阻止する。106日目のPrPScの量が、なお80日目のレベルにある。anle186bによる処置は、マウスの脳におけるPrPSc蓄積の低下をもたらす。(C)化合物で処置した後の相対的なPrPScレベルの変化を80日目の未処置対照と比較したもの。(D)指示した時点でH&E染色した脳切片中のアポトーシス細胞((E)中の矢印)の組織学的検査。線プロットはアポトーシス細胞の平均数±標準誤差を示す。(E)アポトーシス細胞(矢印)を含むH&E染色切片を示す。
【図7】図7は、本発明化合物の1日1回投与による生存時間延長を示す。RMLスクレイピー株を脳内感染させたマウスは、スクレイピー感染の末期に達するまで生存時間の延長を示す。
【図8】図8は、本発明化合物によるα−シヌクレイン凝集抑制を示す。(A)DPP化合物351F11は、マルチマー状α−シヌクレイン複合体の形成を用量依存性で阻害することができる。(B)(C)他のDPP関連化合物について検出した、α−シヌクレイン凝集に対する用量依存性阻害作用。
【図9】図9は、本発明のDPP関連化合物で処置したプリオン感染細胞培養物を示す。DPP関連化合物は、細胞培養において低いマイクロモル濃度で、またマイクロモル下の濃度ですら、強いPrPSc減少を示した。
【図10】図10は、anle138bによる1日1回の処置が、RMLスクレイピー感染マウスにおいてPrPSc蓄積およびプリオン病態に及ぼす影響を示す。(A)PrPScについて染色した脳切片(上列:皮質および海馬、下列:小脳)は、DMSO処置した動物と比較して、anle138b処置がPrPSc蓄積を低下させることを示す。(B)プリオン接種マウスの脳ホモジェネートにおける指示した時点でのPrPScレベルの定量は、疾患の後期(感染後120目)で処置を開始した後ですら、anle138b処置マウスにおいてPrPSc蓄積が強く低下したことを示す。(C)H&E染色した脳切片の小脳におけるアポトーシス細胞の組織学的定量は、PrPSc蓄積の阻害の結果、神経細胞死が阻害されたことを示す。(D)化合物を含まないDMSO+ピーナッツバターで処置した対照マウスは、体重の漸減を示す。感染後80日目からのanle138bによる処置は、体重減少を約100日間阻止する。感染後120日目からの処置は、体重減少を約70日間阻止する。BおよびCにおける誤差バーは標準誤差を示す(n=4匹のマウス)。図Bに示した凡例を図CおよびDにも適用する。
【図11】図11は、種々の処置プロトコルの比較を示す。図に指示した種々の時点および計画でのanle138bによる処置は、RMLスクレイピーで攻撃した後の生存時間を有意に延長した(p<0,01)。平均生存時間を日数±標準偏差で表示する。
【図12】図12は、anle138b投与が脳のPrPScレベルに及ぼす用量依存性作用を示す。C57BL/6マウスに30μLの1%脳ホモジェネート(RMLスクレイピー)を脳内(i.c.)接種した。感染後80日目に、DMSO+ピーナッツバターと混合して経口適用する種々の量のanle138b(図に示すとおり)により処置を開始した。感染後120日目に動物を屠殺し、感染後80日目に屠殺した動物と比較して脳のPrPSc量を定量した。誤差バーは標準誤差を示す(n=4匹のマウス)。
【図13】図13は、DMSO+ピーナッツバターと混合した1mg/日のanle138bで1週間処置した非感染マウスからの脳組織のイムノブロット法によるPrPの定量を示す。それぞれの棒は各グループの4匹のマウスを表わす。
【図14】図14は、Anle138bの薬物動態分析を示す。1回量のanle138bを指示に従って非感染C57BL/6マウスに適用した。適用後の種々の時点で、脳および血清中の化合物の量をそれぞれの時点および実験グループ当たり2匹の動物について、LC−MSにより測定した。
【図15−1】図15は、種々の化合物によるα−シヌクレイン凝集物形成阻害を示す。表2の被験化合物の構造を示す。
【図15−2】図15は、種々の化合物によるα−シヌクレイン凝集物形成阻害を示す。表2の被験化合物の構造を示す。
【図15−3】図15は、種々の化合物によるα−シヌクレイン凝集物形成阻害を示す。表2の被験化合物の構造を示す。
【図16】図16は、MPTP処置していないマウスと比較したMPTP処置マウスにおけるニューロン損失の定量を示す;チロシンヒドロキシラーゼ(TH)陽性の黒質緻密層部(substantia nigra pars compacta)(SNpc)細胞を、抗TH抗体で免疫染色した50μm切片において測定することにより評価した。SNpcの2つ目毎の切片を、Stereo investigatorソフトウェア(MicroBrightfield、米国バーモント州コルチェスター)により分析した。免疫染色された細胞を、光学分画法により20×対物レンズを用いて計数した。2人の独立した研究者がブラインド法で立体解析学的計数を行なった。
【図17】図17は、anle138CがABeta凝集に及ぼす影響を示す。ABeta凝集を動的光散乱法により分析した。anle138Cの不存在下(上パネル)および存在下(中パネル)でのモノマーおよびオリゴマーAbeta40。下パネルは、試料を遠心した後に測定したアミロイドフィブリル状のAbeta40についてのサイズ分布を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、特許請求の範囲に挙げた態様によってまとめられる。以下および特許請求の範囲に挙げる好ましい態様すべての組合わせが本発明の範囲に含まれると理解される。
本発明は、一般式(E)により表わされる化合物に関する:
【0020】
【化1】

【0021】
環Dにおいて、X、YおよびLは、独立して、方向性なしに(nondirectionally)−C(R)(R)−、−C(R)=、−N(R)−、−N=、−N(R)=、−O−および−S−から選択され;
MおよびZは、独立して、方向性なしに
【0022】
【化2】

【0023】
から選択され;
−−−−は、場合により二重結合を表わす。
X、Y、Z、LおよびMは原子価および安定性が許すものとして選択されることは自明である。
【0024】
、R、R、R、R、RおよびRは、独立して、水素;C1−4アルキル;−C1−4アルキレン−ハロゲン;−C1−4アルキレン−OH;−C1−4アルキレン−C1−4アルコキシ;−C(O)−C1−4アルキル;およびC6−10アリールから選択され、その際、アリール環は場合によりC1−4アルキルまたはハロゲンにより置換されていてもよい。C6−10アリール基は特に制限はなく、たとえばフェニルおよびナフチルから選択できる。ハロゲン原子は、F、Cl、BまたはIであってよく、一般にFまたはClである。
【0025】
好ましくは、R、R、R、R、R、RおよびRは、独立して、水素;C1−4アルキル;−C1−4アルキレン−ハロゲン;−C1−4アルキレン−OH;−C1−4アルキレン−C1−4アルコキシ;および−C(O)−C1−4アルキルから選択される。より好ましくは、R、R、R、R、R、RおよびRは、独立して、水素;C1−4アルキル;および−C1−4アルキレン−ハロゲンから選択される。
【0026】
置換基の選択は、式(E)の化合物の目的用途に依存する可能性がある。好ましい1態様において、R、R、R、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つ(より好ましくは、R、RおよびRのうち少なくとも1つ)は、−C1−4アルキレン−ハロゲンである。これは、本発明化合物が凝集したタンパク質の沈着物をイメージングするためのプローブとして用いるものである場合に特に有用である;その場合、それらを検出可能な標識、たとえば検出可能なハロゲン同位体で、迅速かつ効率的に標識することができるからである。検出可能なハロゲン同位体の例には、18F、125I、123I、131I、77Brおよび76Br、特に18Fが含まれる。検出可能なハロゲン同位体を、本発明化合物中に存在する他のハロゲン原子のいずれか、たとえばフェニル環に結合したハロゲン原子として使用することも、もちろん可能である。
【0027】
あるいは、11Cを用いて本発明化合物を検出可能な状態に標識することができる。11Cは、R、R、R、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つ(より好ましくは、R、RおよびRのうち少なくとも1つ)、または本発明化合物の他のいずれかの部分に存在することができる。
【0028】
他の好ましい態様において、R、R、R、R、R、RおよびRは、独立して、水素およびC1−4アルキル、好ましくは水素から選択される。
環Dには特に制限はない。その一般的な例には下記のものが含まれる:
【0029】
【化3】

【0030】
環Dの特に好ましい例は下記のものである:
【0031】
【化4】

【0032】
前記の式において、Rは、水素;C1−4アルキル;−C1−4アルキレン−ハロゲン;−C1−4アルキレン−OH;−C1−4アルキレン−C1−4アルコキシ;−C(O)−C1−4アルキル;およびC6−10アリールから選択され、その際、アリール環は場合によりC1−4アルキルまたはハロゲンにより置換されていてもよい。好ましくは、Rは、水素;C1−4アルキル;−C1−4アルキレン−ハロゲン;−C1−4アルキレン−OH;−C1−4アルキレン−C1−4アルコキシ;および−C(O)−C1−4アルキルから選択される。より好ましくは、Rは、水素;C1−4アルキル;−C1−4アルキレン−ハロゲンから選択される。1態様において、Rは、水素およびC1−4アルキルから選択され、より好ましくは水素である。他の態様において、Rは−C1−4アルキレン−ハロゲンである。前記に説明したように、Rは所望により検出可能な状態に標識されていてもよい。
【0033】
前記の式において、Rは、水素;C1−4アルキル;−C1−4アルキレン−ハロゲン;−C1−4アルキレン−OH;−C1−4アルキレン−C1−4アルコキシ;−C(O)−C1−4アルキル;およびC6−10アリールから選択され、その際、アリール環は場合によりC1−4アルキルまたはハロゲンにより置換されていてもよい。好ましくは、Rは、水素;C1−4アルキル;−C1−4アルキレン−ハロゲン;−C1−4アルキレン−OH;−C1−4アルキレン−C1−4アルコキシ;および−C(O)−C1−4アルキルから選択される。より好ましくは、Rは、水素;C1−4アルキル;−C1−4アルキレン−ハロゲンから選択される。1態様において、Rは、水素およびC1−4アルキルから選択され、より好ましくは水素である。他の態様において、Rは−C1−4アルキレン−ハロゲンである。前記に説明したように、Rは所望により検出可能な状態に標識されていてもよい。
【0034】
さらに他の態様において、RおよびRは水素である。さらに他の態様において、Rは−C1−4アルキレン−ハロゲンであり、かつRは水素である。
Halは、F、Cl、Br、およびIから選択され、好ましくはF、ClまたはBr、より好ましくはClまたはBr、最も好ましくはBrである。
【0035】
E1は、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、および−NRE5E6から選択される。
E2は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、および−NRE5E6から選択され、好ましくはRE2は、水素、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、および−NRE5E6から選択される。
【0036】
他の態様において、RE1とRE2が隣接炭素原子に結合している場合、RE1とRE2は一緒に、方向性なしに、構造−T−(CRE7E8−V−、および二重結合が存在する対応する構造を形成することができる。この構造において、TはCRE9E10、NHおよびOから選択され、VはCRE9E10、NHおよびOから選択される。好ましくは、TおよびVのうち少なくとも一方はNHまたはOである。そのような構造の例には、−O−(CH−O−、−O−(CF−O−、−O−(CH−CH−、−NH−(CH−NH−、−NH−(CF−NH−、−NH−(CH−CH−、または二重結合が存在する対応する構造が含まれる。たとえば、n=1である場合、−N=CH−NH−は二重結合が存在する構造であり、これは−NH−CH−NH−に対応する。好ましくは、RE1とRE2は一緒に構造−O−(CH−O−を形成する。この基はインビボで水素化されて対応するヒドロキシ基になる可能性もあると推定される。
【0037】
nは1〜3である;好ましくは、nは1または2であり、より好ましくはnは1である。
E5およびRE6は、独立して水素およびC1−6アルキルから選択される;好ましくは、RE5およびRE6は、独立して水素およびC1−4アルキルから選択される。
【0038】
E7およびRE8は、独立してHまたはFであり、好ましくはHである。
E9およびRE10は、独立してHまたはFであり、好ましくはHである。
E1およびRE2がフェニル環に結合する位置は多様な可能性がある。
【0039】
1態様において、RE1およびRE2は独立してヒドロキシまたはアルコキシであり、フェニル環を環Dに結合させている炭素原子に対してメタおよびパラに結合している。
第2態様において、RE1とRE2は構造−T−(CRE7E8−V−または二重結合が存在する対応する構造であり、フェニル環を環Dに結合させている炭素原子に対してメタおよびパラに結合している。構造−T−(CRE7E8−V−についての前記の好ましい定義がこの態様に同様に適用される。
【0040】
第3態様において、RE1は−NRE5E6であり、フェニル環を環Dに結合させている炭素原子に対してパラ位に結合している。
さらに他の置換基RE3が場合によりフェニル環上にRE1およびRE2のほかに存在してもよい。RE3は、C1−6アルキル基またはC5−10アリール基(たとえばフェニルまたはナフチル基)、好ましくはC1−6アルキル基、より好ましくはC1−4アルキル基であってよい。置換基の個数mは特に制限がなく、一般に0〜2の範囲にあり、好ましくは0または1、一般に0である。
【0041】
さらに他の置換基RE4も存在することができる。それらは一般にハロゲン原子、C1−6アルキル基またはC5−10アリール基(たとえばフェニルまたはナフチル基)、好ましくはハロゲン原子またはC1−6アルキル基、より好ましくはC1−6アルキル基、最も好ましくはC1−4アルキル基である。置換基の個数pは特に制限がなく、一般に0〜2の範囲にあり、好ましくは0または1、一般に0である。
【0042】
ある態様において、下記の化合物が除外される:
3(5)−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5(3)−(4−クロロフェニル)ピラゾール(DE 41 26 543:表1の化合物26);
オルト−ヒドロキシフェニル−5 ジクロロ−3’−4’ フェニル−3 メチル−2 ピラゾール(FR 2.104.932:例IV);
オルト−ヒドロキシフェニル−5 ジクロロ−3’−4’ フェニル−3 フェニル−2 ピラゾール(FR 2.104.932:例IV);
【0043】
【化5】

【0044】
これらの化合物は、化合物IA−44、IA−47、IA−81、IA−106およびIA−115としてWO 2004/080972に開示されている。
本発明の他の態様においては、これらの化合物は除外されない。
【0045】
式(E)により表わされる化合物の好ましい例には、式(A)により表わされる化合物が含まれる:
【0046】
【化6】

【0047】
式(E)に関して前記に述べたX、Y、Z、M、L、環D、m、pおよびHalの定義を同様に式(A)に適用する。
A1およびRA2は、それぞれ独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、および−NRA5A6から選択され;ただし、RA1およびRA2のうち少なくとも一方はヒドロキシ、C1−6アルコキシ、または−NRA5A6である。好ましくは、RA1およびRA2は、独立して水素、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、および−NRA5A6から選択される。
【0048】
あるいは、RA1とRA2は一緒に、方向性なしに、構造−T−(CRE7E8−V−を形成することができる。そのような構造を形成するRE1およびRE2に関して前記に述べた説明、特にRE7、RE8、T、nおよびVの定義を、この構造を形成するRA1とRA2に同様に適用する。
【0049】
1態様において、RA1およびRA2は、独立してヒドロキシまたはアルコキシである。
第2態様において、RA1とRA2は構造−T−(CRE7E8−V−、または二重結合が存在する対応する構造である。構造−T−(CRE7E8−V−についての前記の好ましい定義をこの態様に同様に適用する。
【0050】
第3態様において、RA1は−NRA5A6であり、かつRA2は水素である。
さらに他の置換基RA3が、RA1およびRA2のほかに場合によりフェニル環上に存在することができる。RA3は、C1−6アルキル基またはC5−10アリール基(たとえばフェニルまたはナフチル基)、好ましくはC1−6アルキル基、より好ましくはC1−4アルキル基である。
【0051】
さらに他の置換基RA4も存在することができる。それらは一般にハロゲン原子、C1−6アルキル基またはC5−10アリール基(たとえばフェニルまたはナフチル基)、好ましくはハロゲン原子またはC1−6アルキル基、より好ましくはC1−6アルキル基、最も好ましくはC1−4アルキル基である。
【0052】
A5およびRA6は、独立して水素およびC1−6アルキルから選択され;好ましくは、RA5およびRA6は、独立して水素およびC1−4アルキルから選択される。
式(E)により表わされる化合物の好ましい例には、式(B)により表わされる化合物が含まれる。
【0053】
【化7】

【0054】
式(E)に関して前記に述べたX、Y、Z、M、L、環D、m、pおよびHalの定義を同様に式(B)に適用する。
B1は、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、および−NRB5B6から選択される。好ましくは、RB1はヒドロキシまたはC1−6アルコキシである。
【0055】
B2は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ;および−NRB5B6から選択され、好ましくはRB2は、水素、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ;および−NRB5B6から選択される。
【0056】
1態様において、RB1はヒドロキシまたはC1−6アルコキシであり、かつRB2は水素である。
B5およびRB6は、独立して水素およびC1−6アルキルから選択され、好ましくは、RB5およびRB6は、独立して水素およびC1−4アルキルから選択される。
【0057】
さらに他の置換基RB3が、RB1およびRB2のほかに場合によりフェニル環上に存在することができる。RB3は、C1−6アルキル基またはC5−10アリール基(たとえばフェニルまたはナフチル基)、好ましくはC1−6アルキル基、より好ましくはC1−4アルキル基である。
【0058】
さらに他の置換基RB4も存在することができる。それらは一般にハロゲン原子、C1−6アルキル基またはC5−10アリール基(たとえばフェニルまたはナフチル基)、好ましくはハロゲン原子またはC1−6アルキル基、より好ましくはC1−6アルキル基、最も好ましくはC1−4アルキル基である。
【0059】
好ましい本発明化合物には下記のものが含まれる:
【0060】
【化8】

【0061】
E7、RE8およびHalに関する前記の定義をこれらの化合物に適用する。
Rは、水素;C1−4アルキル;−C1−4アルキレン−ハロゲン;およびC6−10アリール(たとえばフェニルおよびナフチル基)から選択され、その際、アリール環は場合によりC1−4アルキルまたはハロゲンにより置換されていてもよい。好ましくは、Rは、水素;C1−4アルキル;−C1−4アルキレン−ハロゲンから選択される。1態様において、Rは、水素およびC1−4アルキルから選択され、より好ましくは水素である。他の態様において、Rは−C1−4アルキレン−ハロゲンである。前記に説明したように、所望によりRを検出可能な状態に標識することができる。
【0062】
A7は、HまたはC1−6アルキル、好ましくはHまたはC1−4アルキルである;
A8は、HまたはC1−6アルキル、好ましくはHまたはC1−4アルキルである;
A9は、HまたはC1−6アルキル、好ましくはHまたはC1−4アルキルである;
A10は、HまたはC1−6アルキル、好ましくはHまたはC1−4アルキルである;
B7は、HまたはC1−6アルキル、好ましくはHまたはC1−4アルキルである。
【0063】
下記の化合物は、タンパク質の凝集阻害または凝集したタンパク質のイメージングにおいて高い効力をもつことが認められたので、特に好ましい:
【0064】
【化9】

【0065】
これらにおいて、HalはClまたはBrであり、好ましくはHalはBrである。
最も好ましいのは、現在のところ下記の化合物である:
【0066】
【化10】

【0067】
本発明化合物は、そのプロドラッグ、エステル、溶媒和物または塩類の形で存在することもできる。
本発明化合物は塩類を形成し、それらも本発明の範囲に含まれる。本明細書中で本発明化合物という表記はその塩類の表記を含むと理解される。本明細書中で用いる用語“塩(類)”は、無機および/または有機の酸および塩基により形成される酸塩および/または塩基塩を表わす。さらに、化合物が塩基性部分と酸性部分の両方を含む場合、両性イオン(“分子内塩類”)を形成する可能性があり、これらは本明細書中で用いる用語“塩(類)”に含まれる。医薬的に許容できる(すなわち、無毒性の、生理学的に許容できる)塩類が好ましいが、他の塩類も、たとえば単離または精製の工程に有用であり、製造に際して使用できる。本発明化合物の塩類は、たとえば化合物と、ある量の、たとえば当量の酸または塩基を、媒質、たとえばその塩が沈殿する媒質または水性媒質中で反応させ、続いて凍結乾燥させることにより形成できる。
【0068】
塩基性部分を含む化合物は、多様な有機酸および無機酸と塩類を形成することができる。酸付加塩の例には下記のものが含まれる:アセテート(たとえば酢酸、またはトリハロ酢酸、たとえばトリフルオロ酢酸により形成されるもの)、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシエタンスルホン酸塩(たとえば2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩(たとえば2−ナフタレンスルホン酸塩)、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩(たとえば3−フェニルプロピオン酸塩)、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩(たとえば硫酸により形成されるもの)、スルホン酸塩(たとえば本明細書に挙げるもの)、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、たとえばトシレート、ウンデカン酸塩など。
【0069】
酸性部分を含む化合物は、多様な有機塩基および無機塩基と塩類を形成することができる。塩基塩の例には下記のものが含まれる:アンモニウム塩、アルカリ金属塩、たとえばナトリウム塩、リチウム塩およびカリウム塩、アルカリ土類金属塩、たとえばカルシウム塩およびマグネシウム塩、有機塩基(たとえば有機アミン)、たとえばベンザチン類、ジシクロヘキシルアミン類、ヒドラバミン類(N,N−ビス(デヒドロアビエチル)エチレンジアミンにより形成されるもの)、N−メチル−D−グルカミン類、N−メチル−D−グルカミド類、t−ブチルアミン類との塩、ならびにアミノ酸、たとえばアルギニン、リジンなどとの塩。塩基性窒素を含む基は、たとえば下記の物質で四級化することができる:ハロゲン化低級アルキル(たとえば塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、プロピルおよびブチル)、硫酸ジアルキル(たとえば硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミル)、長鎖ハロゲン化物(たとえば塩化、臭化およびヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリル)、ハロゲン化アラルキル(たとえば臭化ベンジルおよびフェネチル)など。
【0070】
本発明化合物のプロドラッグおよび溶媒和物も本発明に含まれるものとする。本明細書中で用いる用語“プロドラッグ”は、対象に投与した際に代謝プロセスまたは化学的プロセスにより化学変換を受けて本発明化合物あるいはその塩および/または溶媒和物を与える化合物を表わす。
【0071】
本発明化合物の溶媒和物には、たとえば水和物が含まれる。
本発明化合物のエステルには、C1−6、好ましくはC1−4アルキルエステルが含まれる。
【0072】
本発明化合物は、それらの互変異性体の形態(たとえばアミドまたはイミノエーテルとして)存在することができる。そのような互変異性体の形態はすべて本発明の一部とみなされる。
【0073】
鏡像異性体形態およびジアステレオマー形態を含めて、本発明化合物のすべての立体異性体(たとえば、種々の置換基上の不斉炭素のため存在する可能性があるもの)が本発明の範囲に含まれるものとする。本発明化合物の個々の立体異性体は、たとえば他の異性体を実質的に含まない場合があり(たとえば、特定の活性をもつ純粋な、または実質的に純粋な光学異性体として)、あるいはたとえばラセミ体として、または他のすべての立体異性体もしくは他の選択された立体異性体と混合している場合がある。本発明化合物のキラル中心は、IUPAC 1974 Recommendationsにより規定されるSまたはRの立体配置をもつ場合がある。
【0074】
ラセミ形態は、物理的方法、たとえば分別結晶化、ジアステレオマー誘導体の分離もしくは結晶化、またはキラルカラムクロマトグラフィーによる分離により分割することができる。個々の光学異性体はラセミ体からいずれか適切な方法により得ることができ、これには光学活性酸との塩の形成に続く結晶化が含まれるが、これに限定されない。
【0075】
混合物としての、または純粋な形態もしくは実質的に純粋な形態の、本発明化合物のすべての立体配置異性体が考慮される。本発明化合物の定義には、シス(Z)およびトランス(E)アルケン異性体、ならびに環式炭化水素または複素環式環のシスおよびトランス異性体が共に含まれる。
【0076】
本明細書全体を通して、基およびその置換基は安定な部分および化合物が得られるように選択することができる。
式(E)の化合物は、場合により医薬的に許容できるキャリヤーを含む、医薬組成物または診断用組成物の形で提供することができる。
【0077】
本発明者らは、“scanning for intensely fluorescent targets(SIFT)”技術に基づく生化学的アッセイシステムをプリオン病の細胞培養モデルにおける細胞アッセイと組み合わせて利用して、合成化合物の大規模ライブラリーを、神経変性性疾患、特にプリオン病およびシヌクレイノパチーに付随する凝集プロセスの阻害薬についてインビトロで分子レベルにおいてスクリーニングした。そのような阻害薬はこれらの疾患に対する新規な療法薬である可能性をもつ。
【0078】
このアッセイシステムは、タンパク質凝集を阻害するための新規薬物の探査に用いられているすべてのアッセイシステムより、自動化の程度、測定の速度(試料当たり75秒)、化合物の量(一次アッセイ当たりわずか200ピコモル)、および必要な試薬の使用量(たとえば、アッセイ当たりわずか0.2mgのCJD症例由来の脳に相当する量)に関して、はるかに優る。これらの比較的低い資源および時間の要求のみで、このような多数の(すなわち20.000)の化合物をスクリーニングすることができる。さらに、中枢化されたデータベース上にすべてのスクリーニングデータをマッピングし、それらを自動分析することにより、構造−活性関係を効率的に評価および分析することができる。本発明に含まれる細胞培養スクリーニング法との組合わせにより、生化学的アッセイと細胞ベースのアッセイの両方において活性である化合物を同定することができる。こうして、インビトロだけでなく細胞環境においても活性である化合物が同定され、同定された化合物の適切な安定性および反応性をインビボ適用のためにさらに発展させることが確実になる。
【0079】
こうして、本発明者らはこの一次スクリーニングにおいて多数の活性化合物を同定し、きわめて低い濃度ですら活性である化合物を同定するために、それらを続いて希釈系列で評価した。一次スクリーニングにおいて“活性”と特徴付けられた化合物についてクラスター分析を行ない、これにより5つの隣接クラスター(DPP_1からDPP_5まで;図1)が解明された;これらは化合物クラス3,5−ジフェニル−ピラゾール(DPP)誘導体に属する高活性化合物を含む(図1に示すDPPモチーフを参照)。
【0080】
本発明者らはさらに、同定した化合物クラスの多様な置換基を置換して、分子レベルで神経変性性疾患、特にプリオン病およびシヌクレイノパチーに付随する凝集プロセスの阻害薬として適切な関連化合物を同定した。この医薬−化学的方法を用いて、多数の追加化合物を合成した。これらの化合物について、選択した一次スクリーニングの物質と共に、SIFTアッセイ、細胞培養ベースのアッセイ、マウスにおけるインビボ実験、およびα−シヌクレイン凝集を指向した生化学的アッセイを含む、さらに他の試験を行なった(実施例を参照)。こうして、これらの化合物のインビトロおよびインビボ両方における活性が立証された。これらの化合物がシヌクレイノパチーにみられるこの病的タンパク質凝集のインビボモデルにおいて低いマイクロモル濃度でα−シヌクレインのマルチマー形成をも効果的に阻害しうるという所見は、同定した化合物が抗プリオン化合物として機能しうるだけでなく、発病機序を分子レベルでターゲティングすることにより、シヌクレイノパチー、たとえばパーキンソン病、DLBおよびMSAに対する療法可能性も備えているということの明瞭な指標となる。さらに、インビトロでのプリオンタンパク質凝集およびα−シヌクレイン凝集の両方に対するこれらの化合物の阻害活性は、タンパク質がミスフォールディングして主にβ−シートコンホメーションになることがその後のアミロイドフィブリルへのタンパク質凝集の基礎をなすさらに広範なタンパク質凝集性疾患に対する、これらの化合物の全般的な抗凝集活性を反映している可能性がある。したがって、これらの化合物およびDPPクラスの物質のメンバーに関連する化合物は、下記(これらに限定されない)を含めた(神経変性性)全域のタンパク質凝集性疾患の根治のための療法として有用な可能性をもつ:パーキンソン病、プリオン病、アルツハイマー病、多系統萎縮症、散在性レーヴィ体病、前頭側頭性認知症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、脊髄小脳性運動失調、および他のポリ−Q疾患、遺伝性脳アミロイド血管障害、家族性アミロイド多発性神経障害、原発性全身性アミロイド症(ALアミロイド症)、反応性全身性アミロイド症(AAアミロイド症)、II型糖尿病、注射局在性アミロイド症、ベータ−2ミクログロブリン性アミロイド症、遺伝性非神経障害性性アミロイド症、フィンランド遺伝性全身性アミロイド症。
【0081】
本発明はさらに、タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患の治療または予防に使用するための、本発明化合物、およびそのプロドラッグ、エステル、溶媒和物または塩に関する。さらに他の態様は、タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患を治療または予防する医薬組成物の調製のための本発明化合物の使用、ならびにタンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患を治療または予防する方法であって、療法有効量の本発明化合物をその必要がある患者に投与することを含む方法である。
【0082】
用語“凝集”は、本発明によれば、一般に1以上のタイプのタンパク質のオリゴマー状またはマルチマー状の複合体の形成を表わし、これは複合体中へのさらに他の生体分子、たとえば炭水化物、核酸および脂質などの取込みを伴う場合がある。
【0083】
本明細書中で用いる用語“タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患に関係するタンパク質”は、凝集したタンパク質の存在を特徴とする疾患に関係する。そのような凝集したタンパク質は特定の組織、より優先的に神経組織または脳の組織に、沈着物を形成する場合がある。凝集の程度は個々の疾患に依存する。
【0084】
本発明はさらに、タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患を治療または予防する医薬組成物の調製のための、前記に定めた本発明化合物の使用に関する。
本発明によれば、用語“医薬組成物”は、患者、好ましくはヒト患者に投与するための組成物に関する。本発明の医薬組成物は、前記に示した化合物、および場合により、本発明化合物の特性を変更することによりたとえばそれらの機能を安定化、調節および/または活性化することができるさらに他の分子を含む。組成物は固体、液体または気体の形態であってよく、特に粉末(単数または複数)、錠剤(単数または複数)、液剤(単数または複数)、またはエアゾール剤(単数または複数)の形態であってよい。本発明の医薬組成物は、場合によりさらに、医薬的に許容できるキャリヤーを含むことができる。適切な医薬用キャリヤーの例は当技術分野で周知であり、リン酸緩衝化生理食塩水、水、エマルジョン、たとえば油/水エマルジョン、種々のタイプの湿潤剤、無菌溶液、DMSOを含めた有機溶剤などを含む。そのようなキャリヤーを含む組成物は、周知の常法により配合できる。
【0085】
医薬組成物は、適正医薬品基準に従った様式で、個々の患者の臨床状態、医薬組成物の送達部位、投与方法、投与計画、および医師に既知である他の要因を考慮して、配合および投与されるであろう。したがって、本発明の目的のための医薬組成物の“有効量”は、それらを考慮して決定される。個体に投与する医薬組成物の有効量が特にその化合物の性質に依存することは当業者には分かるであろう。
【0086】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、非経口、脳槽内、膣内、腹腔内、局所(散剤、軟膏剤、滴剤または経皮パッチにより)、頬内に、または口内もしくは鼻内スプレー剤により投与することができる。“医薬的に許容できるキャリヤー”とは、無毒性であるいずれかのタイプの固体状、半固体状または液状の増量剤、希釈剤、封入材または配合助剤を意味する。本明細書中で用いる用語“非経口”は投与様式を表わし、これには静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内への注射および注入が含まれる。
【0087】
医薬組成物を持続放出システムにより投与することも適切である。持続放出組成物の適切な例は、造形品、たとえばフィルムまたはマイクロカプセルの形の半透性ポリマーマトリックスを含む。持続放出マトリックスには、ポリラクチド(U.S.Pat.No.3,773,919、EP 58 481)、L−グルタミン酸とガンマ−エチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidman, U. et al., Biopolymers 22:547-556 (1983))、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(R. Langer et al., J. Biomed. Mater. Res. 15:167-277 (1981),およびR. Langer, Chem. Tech. 12:98-105 (1982))、エチレンビニルアセテート(R. Langer et al., 同書)、またはポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP 133 988)が含まれる。持続放出医薬組成物には、リポソームに捕捉された化合物も含まれる。医薬組成物を収容したリポソームは、それ自体既知の方法により調製される:DE 32 18 121;Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA)82: 3688-3692 (1985); Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA)77: 4030-4034 (1980);EP 52 322;EP 36 676;EP 88 046;EP 143 949;EP 142 641;特願昭58−118008;U.S.Pat.Nos.4,485,045および4,544,545;ならびにEP 102324。通常、リポソームは小型の(約200〜800オングストローム)単層タイプのものであり、その脂質含量はコレステロール約30モル%より多く、その選択される割合は最適療法が得られるように調整される。
【0088】
非経口投与のために、医薬組成物は一般に、それを目的純度で、単位量の注射用剤形(液剤、懸濁液剤または乳剤)で、医薬的に許容できるキャリヤー、すなわち使用する投与量および濃度においてレシピエントに対して無毒性でありかつ配合物の他の成分と適合性であるものと混合することにより配合される。
【0089】
一般に配合物は、医薬組成物の成分を液状キャリヤーもしくは微細に分割した固体キャリヤーまたは両方と均一かつ密に接触させることにより調製される。次いで、必要ならば製品を造形して目的配合物にすることができる。好ましくはキャリヤーは非経口キャリヤー、より好ましくはレシピエントの血液と等張の溶液である。そのようなキャリヤービヒクルの例には、水、生理食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液が含まれる。非水性ビヒクル、たとえば固定油およびオレイン酸エチルも、リポソームと同様に本発明に有用である。キャリヤーは、少量の添加剤、たとえば等張性および化学的安定性を増強する物質を含有することが適切である。そのような物質は使用する投与量および濃度においてレシピエントに対して無毒性であり、下記のものを含む:緩衝剤、たとえばリン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸もしくは他の有機酸またはそれらの塩類;抗酸化剤、たとえばアスコルビン酸;低分子量(約10残基未満)(ポリ)ペプチド、たとえばポリアルギニンまたはトリペプチド;タンパク質、たとえば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、たとえばポリビニルピロリドン;アミノ酸、たとえばグリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはアルギニン;単糖類、二糖類および他の炭水化物:セルロースもしくはそれの誘導体、グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む;キレート化剤、たとえばEDTA;糖アルコール、たとえばマンニトールまたはソルビトール;対イオン、たとえばナトリウム;ならびに/あるいは非イオン界面活性剤、たとえばポリソルベート(polysorbate)類、ポロキサマー(poloxamer)類またはPEG。
【0090】
療法投与に用いる医薬組成物の成分は無菌でなければならない。無菌性は、無菌濾過膜(たとえば0.2μmの膜)により濾過することによって容易に達成される。医薬組成物の療法成分は一般に、無菌取出し口を備えた容器、たとえば皮下注射針により穿刺しうる栓を備えた静脈内液剤バッグまたはバイアルに入れられる。
【0091】
医薬組成物の成分は、通常は単位用量または複数用量の容器、たとえばシールしたアンプルまたはバイアル内に、水性液剤として、または再構成用の凍結乾燥配合物として貯蔵されるであろう。凍結乾燥配合物の一例として、10−mlバイアルに5mlの無菌濾過済み1%(w/v)水性液剤を充填し、得られた混合物を凍結乾燥する。凍結乾燥化合物(単数または複数)を静菌注射用水で再構成することにより、注入液剤を調製する。
【0092】
本発明はさらに、タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患を治療または予防する方法であって、療法有効量の本発明化合物をその必要がある患者に投与することを含む方法に関する。
【0093】
本明細書中で用いる用語“療法有効量”は、目的とする生物学的応答を誘発するのに十分な量を表わす。本発明において、目的とする生物学的応答はタンパク質凝集の阻害である。
【0094】
本発明はさらに、タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患に関係するタンパク質の凝集阻害について増強した効力をもつ化合物を同定する方法であって、下記の段階を含む方法に関する(a)標識したモノマー状タンパク質と差次標識した該タンパク質の凝集物とを、(1)前記に定めた化合物の誘導体である凝集阻害薬候補の存在下および/または(2)不存在下で接触させ;(b)該タンパク質凝集物へのモノマー状タンパク質の結合度を表わす共局在化した(co−localized)標識量を測定し;そして(c)該化合物の存在下または不存在下で得られた結果を比較し、その際、該化合物の存在下での共局在化した標識の減少は、その化合物が該タンパク質の凝集を阻害する能力の指標となる。
【0095】
本明細書中で用いる用語“モノマー状タンパク質”は、個々のタンパク質それぞれに特異的な三次元コンホメーションをもつ単一(ポリ)ペプチド鎖からなる分子単位を表わし、これは好ましくは一般にナノモル、マイクロモルまたはミリモル濃度まで水溶液に可溶性であり、かつ鎖中の個々のアミノ酸への1以上の炭水化物、炭水化物誘導体、脂質、ホスフェート、スルフェート、脂肪酸、およびヌクレオチドの共有結合により修飾することができる。好ましくは、その修飾はリン酸化、グリコシル化、タンパク質分解プロセシング、糖化、酸化、およびニトロ化である。本明細書中で用いる用語“(ポリ)ペプチド”は、最高30個のアミノ酸からなるペプチドのグループおよび30個より多いアミノ酸からなるポリペプチドのグループを含む、分子のグループを記述する。本明細書全体で用いる用語“タンパク質”は、(ポリ)ペプチドをも表わす。
【0096】
用語“凝集したタンパク質”は、前記に定めた1以上のタイプの“モノマー状タンパク質(単数または複数)またはポリペプチド(単数または複数)”が非共有結合したオリゴマーまたはマルチマーを意味し、これらは複合体形成したタンパク質単位の三次元コンホメーションがモノマー状タンパク質単位と対比して変化していること、および一般に水溶液中における複合体の溶解度が低いことを特徴とする。
【0097】
用語“タンパク質凝集を阻害するための化合物”は、タンパク質凝集物の形成を阻止することができる、および/または既存のタンパク質凝集物を崩壊もしくは破壊することができる化合物であって、本発明化合物から誘導体化により誘導された化合物を表わす。好ましくは、そのような化合物はコンピューターモデリングにより設計され、その際、コンピューターモデリングは、モノマー状もしくは凝集形態のタンパク質または両方に結合する化合物を検索するための仮想スクリーニングツールの使用を意味する。一般にこれらの方法は、タンパク質、好ましくは支持体と共に結晶化したタンパク質の三次元構造に依存する。より好ましくは、支持体を調節薬または阻害薬の候補と置き換える。
【0098】
用語“標識した・・・タンパク質”は、それに標識が結合したタンパク質を意味する。その標識を直接または間接的に結合させることができる。間接的標識は、特に標識した(ポリ)ペプチド、殊に標識した抗体を表わす。標識の結合は、当業者に既知であって標準的なテキストに記載されている多数の技術により実施できる(たとえば、Harlow and Lane “Antibodies, A Laboratory Manual”, CSH Press, Cold Spring Harbor, 1998を参照)。
【0099】
用語“差次標識したタンパク質”は、凝集したイソ型タンパク質とモノマー状イソ型タンパク質に異なる標識が結合していることを意味する。一般的な例は、凝集したタンパク質への“FITC”の結合とモノマー状タンパク質への“テキサスレッド”の結合である。これらの標識は異なる波長の光で検出できるので、タンパク質のイソ型の量および/または位置を測定することができる。より具体的には、異なる標識の使用により、共局在化した標識、すなわち互いに近接してみられる標識の存在を定量することが可能になる。
【0100】
“共局在化した標識の量を測定する”ことは、たとえば一般に1フェムトリットル未満の試料の同一の少量の元素から、一般に100マイクロ秒未満のきわめて短時間以内に出る少なくとも2つの異なる波長の単一光子の数を個別に(すなわち、波長特異的に)測定することにより実施でき、続いてそれぞれの光子数をコンピューターにより比較し、これを多次元ヒストグラムにおいて1つの軸を1つの特定の波長の光子数として図示することができる。したがって、2つの波長の場合、特定の期間の光子数を二次元蛍光強度ヒストグラム中に単一ドットとして表わすことができる。
【0101】
用語“該化合物の存在下または不存在下で得られた結果を比較する”は、その化合物がタンパク質凝集物の形成および/または量に及ぼす作用を評価することを意味する。本明細書中で用いるものとして、候補となる凝集阻害薬化合物の存在下で共局在化した標識が10%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは50%、最も好ましくは95%減少することは、それらの化合物がタンパク質凝集を阻害する能力の指標となる。用語“該化合物の不存在”は、凝集性タンパク質に阻害薬または候補阻害薬を添加しないこと、または添加されていないことを意味する。特定の場合、陰性対照、すなわちタンパク質凝集に対して影響をもたない化合物を加えるのが有用である可能性がある。用語“該化合物の不存在”は、これらの場合をも表わす。同様に、タンパク質凝集を阻害する本発明化合物はいずれも、新規な阻害薬化合物を同定するためのアッセイにおいて陽性対照として使用できる。用語“存在”が量をも表わすことは明らかである。明らかな理由で、本発明中に述べる化合物は異なる有効濃度をもつ。好ましくは、有効濃度は100μM未満、より好ましくは10μM未満、さらに好ましくは1μMである。
【0102】
本発明方法は、特にタンパク質凝集を高い効率で阻害しうる新規化合物を同定するために有用である。これは、誘導体化した化合物の大型ライブラリーのスクリーニングを可能にし、かつ高精度で阻害化合物を同定するのを可能にする。本発明の1観点において、この方法は蛍光相関分光法に基づく。近年、蛍光相関分光法(fluorescence correlation spectroscopy)(FCS)が神経変性性疾患、たとえばプリオン病におけるタンパク質凝集を分子レベルで高感度分析するのを可能にする方法として認識されている(Bieschke and Schwille 1997, Bieschke et al. 2000, Giese et al. 2000, Post et al. 1998)。さらに、FCS自体が小型化および自動化され、医薬産業におけるハイスループットスクリーニングのための確立された方法となった(Koltermann et al. 1998)。現在の共焦点型の蛍光相関分光法(FCS)は、広開口顕微鏡対物レンズを通して収束させた励起レーザービームにより規定される開放容量エレメントを通って単一蛍光標識分子が拡散することにより起きる信号変動を、単一光子計数検出器上に共焦点イメージングさせたものを分析する(Schwille et al. 1997)。本発明方法は、その最も好ましい態様において、この技術に基づく。この方法は、たとえばPrPScの凝集物へのPrPC結合の阻害、またはα−シヌクレインのオリゴマーもしくはプロトフィブリルもしくはフィブリルの形成の阻害に基づく、ハイスループットスクリーニングに適切である。
【0103】
タンパク質凝集の阻害薬を検出するためのこのアッセイシステムは、特定のタンパク質の凝集に関連するいずれかの神経変性性疾患、たとえばアルツハイマー病およびパーキンソン病のための新規な療法薬の探査に使用できる。さらに、マルチマー形成がそれらの成分の化学的性質に関係なく発病に際して重大な役割を果たすすべての疾患のための有望な療法薬を探査することが可能なはずである。
【0104】
本発明の好ましい態様において、その標識は蛍光標識である。
好ましくは、標識はたとえば下記の蛍光色素からなる群から選択される:フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、テキサスレッド、Alexa 488、Alexa 647、フィコエリトリン(phycoerythrin)、アロフィコシアニン(allophycocyanin)、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、6−カルボキシ−2’,4’,7’,4,7−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、5−カルボキシフルオレセイン(5−FAM)またはN,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)、放射性標識、たとえば32P、35S、Hなど。標識は2段階システムであってもよく、その場合、タンパク質もしくは(ポリ)ペプチドまたは本発明化合物を、ビオチン、ハプテンなど、高親和性結合パートナー(たとえばアビジン、特異的抗体など)をもつものにコンジュゲートさせ、この結合パートナーを検出可能な標識にコンジュゲートさせる。
【0105】
本発明の他の好ましい態様においては、前記の標識を、前記タンパク質に特異的に結合した抗体または抗体フラグメントに結合させる。
抗体の“特異的結合”という用語は、たとえばそれらの交差反応性に関して記述できる。好ましくは、“・・・に特異的に結合した抗体”は、凝集性タンパク質によりコードされる(ポリ)ペプチドに対して98%未満、95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満の同一性(当技術分野で既知の方法を用いて計算)をもつ(ポリ)ペプチドを結合しない抗体を表わす。ただし、抗体をそれらの結合親和性により記述または特定することもできる。好ましい結合親和性には、5x10−6M、10−6M、5x10−7M、10−7M、5x10−8M、10−8M、5x10−9M、10−9M、5x10−10M、10−10M、5x10−11M、10−11M、5x10−12M、10−12M、5x10−13M、10−13M、5x10−14M、10−14M、5x10−15M、および10−15M未満の解離定数、すなわちKをもつものが含まれる。
【0106】
用語“抗体”は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、一本鎖Fv抗体、または抗体フラグメントなど、特にFabフラグメントを表わす。抗体のフラグメントまたは誘導体には、さらにF(ab’)、FvまたはscFvフラグメントが含まれる;たとえばHarlow and Lane (1988)および(1999)、前掲を参照。そのような抗体および/またはフラグメントの作製のための種々の方法が当技術分野で知られており、それらを使用できる。たとえば、(抗体)誘導体はペプチド模倣体により作製できる。さらに、一本鎖抗体の作製について記載された技術(特にUS Patent 4,946,778を参照)を応用して、本発明のポリペプチド(単数または複数)および融合タンパク質に特異的な一本鎖抗体を作製することができる。同様に、トランスジェニック動物を用いて、本発明のポリペプチドおよび融合タンパク質に特異的なヒト化抗体を発現させることができる。より好ましくは、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体の作製のためには、連続細胞系培養により産生された抗体を提供するいずれかの技術を使用できる。そのような技術の例には、ハイブリドーマ技術(Koehler and Milstein Nature 256 (1975), 495-497)、トリオーマ(trioma)技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor, Immunology Today 4 (1983), 72)、およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのEBVハイブリドーマ技術(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc. (1985), 77-96)が含まれる。BIAcoreシステムに採用されている表面プラズモン共鳴を用いて、本発明のポリペプチドのエピトープに結合するファージ抗体の有効性を高めることができる(Schier, Human Antibodies Hybridomas 7 (1996), 97-105; Malmborg, J. Immunol. Methods 183 (1995), 7-13)。本発明に関して、用語“抗体”は、細胞において発現させることができる抗体構築体、たとえば特にウイルスまたはプラスミドベクターによりトランスフェクションまたはトランスダクションしうる抗体構築体を含むことも考慮される。多くの場合、抗体の代わりに他の特異的に結合する化合物、たとえばファージの表面に露出させたペプチド(ファージディスプレー)または単離した(ポリ)ペプチドを使用できることは当業者に既知である。これらの抗体または(ポリ)ペプチドは標識されていなくてもよく、または本発明に記載したいずれかの標識で標識されていてもよい。好ましくは、抗体はヒト、マウス、ラット、ヤギまたはウサギから得ることができる。
【0107】
本発明のより好ましい態様において、前記の抗体は凝集したタンパク質とモノマー状タンパク質を識別することができる。
用語“識別することができる”は、モノマー状または凝集したイソ型タンパク質のいずれかに特異的な抗体を表わす。好ましくは、この抗体は一方のイソ型タンパク質に対して5倍低いKをもち、より好ましくはKは10倍低い。その結果、その抗体は一方のイソ型タンパク質に結合することができるのに対し、それは他方のイソ型には本質的に結合できない。
【0108】
本発明の他の態様において、共局在化した標識の量は“scanning for intensely fluorescent targets(SIFT)”(Bieschke et al. 2000)、FRET、または高分解能共焦点イメージングの方法を用いて測定される。
【0109】
好ましくは、高分解能共焦点イメージングは、共焦点レーザー走査型顕微鏡または回転盤技術を利用した顕微鏡を用いて実施される。
本発明の他の好ましい態様において、モノマー状の凝集性タンパク質は下記からなる群から選択される:プリオンタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、アルファ−シヌクレイン、スーパーオキシドジスムターゼ、タウ、免疫グロブリン、アミロイド−A、トランスチレチン、ベータ2−ミクログロブリン、シスタチンC、アポリポタンパク質A1、TDP−43、ランゲルハンス島アミロイドポリペプチド、ANF、ゲルゾリン、インスリン、リゾチーム、フィブリノーゲン、ハンチンチン(huntingtin)およびアタキシン(ataxin)、ならびにポリ−Qストレッチを含む他のタンパク質、ならびにそれらのタンパク質のフラグメントまたは誘導体。好ましい態様において、モノマー状の凝集性タンパク質はアミロイド前駆体タンパク質(APP)およびアルファ−シヌクレインからなる群から選択される。より好ましい態様において、モノマー状の凝集性タンパク質はアルファ−シヌクレインである。
【0110】
好ましくは、ポリ−Qストレッチを含むタンパク質は少なくとも36の連続グルタミン残基をもつタンパク質である。より好ましくは、ポリ−Qストレッチを含むタンパク質はハンチンチンおよびアタキシンからなる群から選択される。
【0111】
好ましくは、前記のフラグメントまたは誘導体は、リン酸化、グリコシル化、タンパク質分解プロセシング、糖化、酸化、およびニトロ化により修飾された群から選択される。本発明に述べる(ポリ)ペプチドは、鎖中の個々のアミノ酸に結合した1以上の炭水化物、炭水化物誘導体、脂質、ホスフェート、スルフェート、脂肪酸、およびヌクレオチドを含むことができる。好ましくは、その修飾はリン酸化、グリコシル化、タンパク質分解プロセシング、糖化、酸化、およびニトロ化である。
【0112】
前記のタンパク質は脊椎動物または無脊椎動物のタンパク質であってよい。好ましくは、タンパク質は哺乳動物または鳥類のタンパク質である。より好ましくは、哺乳動物タンパク質は、霊長類、ヒト、マウス、ラット、ウシ(bos、cattle)、ブタ(sus、pig)、およびヒツジから選択される。特定の場合、混合イソ型、すなわちたとえばヒト由来の凝集形PrPScとマウス由来のモノマー形を用いるのが好ましいことがある。
【0113】
前記のタンパク質は、動物または組織培養物から単離することができ、あるいは組換え作製することができる。本発明者らは、アッセイシステムにおける取扱いを改善するために、前記のタンパク質を化学修飾し、または酵素、たとえばプロテアーゼもしくはグリコシダーゼにより処理しうることを考慮する。
【0114】
本発明のより好ましい他の態様において、モノマー状タンパク質はプリオンタンパク質であり、凝集したタンパク質はPrPScである(Prusiner, 1998)。
本発明のより好ましい他の態様において、モノマー状タンパク質はアルファ−シヌクレインであり、凝集したタンパク質はアルファ−シヌクレインのオリゴマーまたはプロトフィブリルまたはフィブリルからなる群から選択される。
【0115】
本発明は、タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患の処置において改善されたインビボ効力をもつ化合物を選択する方法であって、下記を含む方法にも関する:(a)本発明に定める化合物の誘導体である候補化合物を、本発明に定めるタンパク質の凝集性イソ型をもつ細胞培養物または動物に投与し;(b)観察可能な凝集物の量を定量し;そして(c)該タンパク質の凝集物または凝集物形成を低下させることができる化合物を同定および選択する。
【0116】
この本発明方法は、インビボで、すなわち生存生物の内部または外部にある細胞において、候補化合物を試験することを可能にする。インビボでの候補化合物の試験を、たとえば実施例に示す(後記を参照)。インビボでの候補化合物の試験により、毒性、複雑な化学的環境の存在下での安定性、および目的とする分子作用を達成する位置に到達する能力に関するデータを含む、重要な追加情報が得られる。
【0117】
好ましくは、タンパク質凝集に対する作用がみられる濃度を判定するために、またEC50を計算するために、本発明化合物を種々の濃度で投与する;ここで、用語EC50は、その化合物について可能な最大応答の50%を生じる化合物(モル)濃度を表わす。
【0118】
本発明は、動物においてインビボまたはエクスビボでタンパク質凝集を阻害するための、前記に定めた化合物の使用にも関する。
好ましい態様において、動物はヒト以外の動物である。
【0119】
本発明はさらに、本発明化合物および場合により医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤を含む、医薬組成物または診断用組成物に関する。
本発明によれば、用語“診断用組成物”は、個々の患者を本発明の医薬組成物に対する彼らの応答または組成物による治癒の可能性について診断するための組成物に関係する。用語“診断用組成物”は、前記に示した疾患の原因となる凝集したタンパク質の存在を判定するための組成物にも関連する。本発明の診断用組成物は、前記に示した化合物を含有する。診断用組成物はさらに、適切な緩衝剤(単数または複数)、および酵素、たとえば逆転写酵素、熱安定ポリメラーゼなどを含有することができる。診断用組成物を1つの容器または複数の容器内にパッケージすることができる。
【0120】
本発明のより好ましい態様において、前記化合物の効力は誘導体化によってさらに改善される。
用語“誘導体化”は、本発明によれば、分子の少なくとも1カ所に修飾をもつ化学的関連化合物の作製を表わす。
【0121】
本発明の好ましい態様において、前記化合物は検出可能であるか、または検出可能な状態に標識されている。本発明によれば、常法、たとえばNMR分光法、光学的検出、陽電子放射断層撮影(PET)、電子顕微鏡検査、磁気共鳴イメージング(MRI)、分光光度法、クロマトグラフィー、ELISAアッセイ、放射能放射の検出、好ましくはシンチレーション計数またはガンマ線計数によるもの、好ましくはPETにより化合物の存在をモニターすることができれば、化合物は検出可能であるかまたは検出可能な状態に標識されていると理解される。
【0122】
本発明化合物を凝集したタンパク質、特にアミロイド沈着物のイメージングのためのプローブとして用いる予定である場合、それらを標識しなければならない。標識の個々の性質は、イメージングのために使用する予定の方法に依存するであろう。一般に、陽電子を放射する(PET)短い半減期をもつ放射能標識、たとえば18F、11C、125I、123I、131I、77Brおよび76Br、特に18Fおよび11Cが有用であろう。本発明の標識化合物はそれらの半減期が短いため、それらを試験に使用する直前に調製すべきである。したがって、本発明の診断用組成物は、本発明化合物の前駆体を含むキットの形態で提供することもでき、それらを反応させて目的化合物を形成させる。本発明化合物が、−N(R)−である少なくとも1つの部分X、YまたはLを含み、Rが検出可能な標識を含む場合、そのようなキットは、特に好都合である。
【0123】
本発明の好ましい態様において、イメージングのために用いる化合物は部分−N(R)−を部分X、YまたはLとして含み、ここでRは−C1−4アルキレン−ハロゲンであり、そのハロゲン原子が放射性である。本発明の他の好ましい態様において、イメージングのために用いる化合物は部分−N(R)−を部分X、YまたはLとして含み、ここでRは−C1−4アルキルであり、これは少なくとも1つの11C同位体を含む。
【0124】
当業者は、検出可能な標識を本発明化合物に結合させることができる方法を考案することができるであろう。下記のスキームを具体例として採用できる:
2−[18F]フルオロエチルトシレート2は、酸素、硫黄および窒素求核基を含む化合物のフルオロエチル化により、または種々の金属仲介メチル化により、18F(半減期109.8分)を取り込ませるのに有用な前駆体である(R. Schirrmacher et al., J. Label. Compd. Radiopharm. 2002, 45, 763-774)。2−[18F]フルオロエチルトシレートは、2工程合成で、エチレングリコール−1,2−ジトシレート1をK[18F]/Kryptofix 2.2.2で直接求核置換して[18F]フルオロエチル化剤2を得る、直接求核置換により合成できる。スキームAに従って、非放射性試薬2を非放射性sery 363A、sery 363B、およびsery 388Bの合成に用いた。同じ条件をこれらの化合物の放射性類似体の合成に使用できる。
【0125】
【化11】

【0126】
他の有用な陽電子放射体11C(半減期20.38分)を、同じタイプの求核置換で[11C]ヨウ化メチルにより導入することができる(J. Eriksson et al., J. Label. Compd. Radiopharm. 2006, 49, 1177-1186)。スキームBに従って、非放射性ヨウ化メチルを非放射性sery 392Aおよびsery 392Bの合成に用いた。同じ条件をこれらの化合物の放射性類似体の合成に使用できる。
【0127】
【化12】

【0128】
検出可能な部分を環Dに結合させることが好ましい(これらの化合物は特に合成しやすいからである)が、これは必須ではない。検出可能な部分が分子の異なる位置にある本発明化合物を同様に得ることができる。
【0129】
本発明は、凝集したタンパク質の沈着物をイメージングする方法であって、下記の段階を含む方法を提供する:
(i)検出可能な状態に標識された本発明化合物を含む検出可能な量の組成物を対象に導入し;
(ii)該化合物が凝集したタンパク質と会合するのに十分な時間を置き;そして
(iii)凝集したタンパク質と会合した化合物を検出する。
【0130】
イメージング方法の好ましい態様において、凝集したタンパク質はアミロイド前駆体タンパク質(APP)およびアルファ−シヌクレインからなる群から選択される。より好ましい態様において、凝集したタンパク質はアルファ−シヌクレインである。
【0131】
検出可能な状態に標識された化合物を含む組成物を、前記のいずれかの投与法、たとえば経口法または非経口法により対象に導入することができる。標識化合物を患者に導入し、該化合物が凝集したタンパク質と会合した状態になるのに十分な期間の後、患者内の標識化合物を非侵襲的に検出する。あるいは、標識化合物を患者に導入し、該化合物が凝集したタンパク質と会合した状態になるのに十分な時間を置き、次いで患者から組織試料を採取し、そして患者から分離した組織において標識化合物を検出する。組織試料を患者から分離した後、標識化合物をこの組織試料に導入することもできる。該化合物が凝集したタンパク質と結合した状態になるのに十分な長さの時間を置いた後、化合物を検出することができる。
【0132】
凝集したタンパク質と会合した標識化合物の検出方法は当技術分野で周知であり、限定ではないが、放射性標識化合物の検出のための磁気共鳴イメージング(MRI)、陽電子放射断層撮影(PET)、または単一光子放射コンピューター断層撮影(single photon emission computed tomography)(SPECT)が含まれる。化合物に導入する標識は採用する検出方法に依存する。たとえば、PETを検出方法として選択する場合、化合物は陽電子放射性原子、たとえば11Cまたは18Fを保有しなければならない。
【0133】
凝集したタンパク質のイメージングを定量的に実施することもでき、これにより凝集したタンパク質の量を測定することができる。
本発明の好ましい態様において、タンパク質凝集に関連する疾患は、凝集形態である少なくとも1種類のタンパク質またはそのフラグメントもしくは誘導体の存在を特徴とし、その際、このタンパク質はプリオンタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、アルファ−シヌクレイン、スーパーオキシドジスムターゼ、タウ、免疫グロブリン、アミロイド−A、トランスチレチン、ベータ2−ミクログロブリン、シスタチンC、アポリポタンパク質A1、TDP−43、ランゲルハンス島アミロイドポリペプチド、ANF、ゲルゾリン、インスリン、リゾチーム、フィブリノーゲン、ハンチンチンおよびアタキシン、ならびにポリ−Qストレッチを含む他のタンパク質からなる群から選択される。好ましい態様において、タンパク質はアミロイド前駆体タンパク質(APP)およびアルファ−シヌクレインからなる群から選択される。より好ましい態様において、タンパク質はアルファ−シヌクレインである。
【0134】
好ましくは、ポリ−Qストレッチを含むタンパク質は少なくとも36の連続グルタミン残基をもつタンパク質である。より好ましくは、ポリ−Qストレッチを含むタンパク質はハンチンチンおよびアタキシンからなる群から選択される。
【0135】
前記のタンパク質がリン酸化、グリコシル化、タンパク質分解プロセシングなどにより修飾されたタンパク質を含めた多様なイソ型で存在する場合があることは、当業者に知られている。用語“少なくとも1種類の・・・”は、疾患が1種類より多い凝集形態のタンパク質の存在に関連する可能性があるという、当業者に既知の事実を表わす。たとえばアルツハイマー病においては、アミロイド前駆体タンパク質(APP)のフラグメントの凝集物およびタウの凝集物が通常は検出される。
【0136】
本明細書中で用いる用語“神経変性性疾患”は、パーキンソン病、プリオン病、アルツハイマー病、多系統萎縮症、散在性レーヴィ体病、前頭側頭性認知症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、脊髄小脳性運動失調、および他のポリ−Q疾患、遺伝性脳アミロイド血管障害、家族性アミロイド多発性神経障害などの疾患を含む。さらに、本明細書中で用いる用語“タンパク質凝集性疾患”は、主に神経系以外に発現する疾患を表わし、たとえば原発性全身性アミロイド症(ALアミロイド症)、反応性全身性アミロイド症(AAアミロイド症)、II型糖尿病、注射局在性アミロイド症、ベータ−2ミクログロブリン性アミロイド症、遺伝性非神経障害性性アミロイド症、およびフィンランド遺伝性全身性アミロイド症などの疾患を含む。
【0137】
本発明の他の好ましい態様において、疾患はパーキンソン病、プリオン病、アルツハイマー病、多系統萎縮症、散在性レーヴィ体病、前頭側頭性認知症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、脊髄小脳性運動失調、および他のポリ−Q疾患、遺伝性脳アミロイド血管障害、家族性アミロイド多発性神経障害、原発性全身性アミロイド症(ALアミロイド症)、反応性全身性アミロイド症(AAアミロイド症)、II型糖尿病、注射局在性アミロイド症、ベータ−2ミクログロブリン性アミロイド症、遺伝性非神経障害性性アミロイド症、およびフィンランド遺伝性全身性アミロイド症からなる群から選択される。より好ましい態様において、疾患はパーキンソン病である。
【0138】
本発明の好ましい態様において、プリオン病はクロイツフェルト−ヤコブ病、変型クロイツフェルト−ヤコブ病、遺伝性ヒトプリオン病、ウシ海綿状脳症(BSE)およびスクレイピーから選択される。
【0139】
最後に本発明は、本発明において定める化合物、ならびにさらに、該化合物に特異的に結合する抗体もしくは抗体フラグメント;および/または本発明において定めるモノマー状タンパク質もしくは凝集したタンパク質;および/または場合により該化合物と複合体を形成した、本発明において定めるモノマー状タンパク質もしくは凝集したタンパク質;ならびに使用のための指示を、1以上の容器内に含むキットに関する。
【0140】
一般的な実験法
本発明化合物は、利用可能ないずれかの有機合成技術により製造できる。多数のそのような技術がL. F. Tietze, Th. Eicher “Reaktionen und Synthesen”, 2. Auflage (Georg Thieme Verlag, Stuttgart, NY, 1991), T. W. Greene, P. G. M. Wuts ”Protective Groups in Organic Synthesis”, Third Edition (John Wiley & Sons, NY, 1999)、およびJ. March “Advanced Organic Chemistry”, Third Edition (John Wiley & Sons, NY, 1985)に詳述されている。
【0141】
本発明化合物を製造するための方法の多数の例を以下に示す。これらの方法はそのような製造法の性質を説明するためのものであり、利用可能な方法の範囲を制限するためのものではない。
【0142】
一般に、反応条件、たとえば温度、反応時間、溶媒、仕上げ処理などは、実施される個々の反応について当技術分野で一般的なものであろう。引用した参考資料は、それらに引用された資料と共に、そのような条件の詳細な記載を含む。一般に、温度は−80〜150℃であり、溶媒は非プロトン性またはプロトン性であり、反応時間は10秒ないし10日間であろう。仕上げ処理は、一般にいずれかの未反応試薬の反応停止、続いて水/有機層系の間での分配(抽出)および生成物を含有する層の分離からなる。
【0143】
標準的な合成法、たとえば無水反応条件(すなわち、不活性ガス環境)の使用が当技術分野で一般的であり、利用可能な場合には利用できるであろう。
下記のスキームそれぞれの改変により、下記において製造される特定の例示物質の多様な類似体が得られる。適切な有機合成方法を記載した後記の引用文献をそのような改変に利用できる。
【0144】
下記に例示するスキームそれぞれにおいて、反応生成物を互いに、および/または出発物質から分離することが有利な場合がある。各工程の目的生成物を、当技術分野で一般的な方法により目的とする均質度にまで分離および/または精製する(以下においては、分離する)。一般に、そのような分離は多相抽出、溶媒もしくは溶媒混合物からの結晶化、蒸留、昇華、またはクロマトグラフィーを伴う。クロマトグラフィーは、たとえばサイズ排除またはイオン交換クロマトグラフィー、高圧、中圧または低圧クロマトグラフィー、小規模および調製用薄層または厚層クロマトグラフィー、ならびに小規模薄層およびフラッシュクロマトグラフィー技術を含む任意数の方法を伴うことができる。
【0145】
他のクラスの分離方法は、目的生成物、未反応物質、反応副生物などに結合するように、または他の形で分離可能にするように選択した試薬による、混合物の処理を伴う。そのような試薬には、吸着剤、たとえば活性炭、モレキュラーシーブ、イオン交換媒体などが含まれる。あるいは、試薬は、塩基性物質の場合の酸、酸性物質の場合の塩基、結合試薬、たとえば抗体、結合タンパク質、選択的キレート化剤、たとえばクラウンエーテル、液/液イオン抽出などであってもよい。
【0146】
適切な分離方法の選択は、関与する物質の性質に依存する。たとえば、蒸留および昇華における沸点、および分子量、クロマトグラフィーにおける極性官能基の存在または不存在、多相抽出における酸性および塩基性媒質中での物質の安定性など。当業者は目的とする分離を達成する可能性が最も大きい技術を利用するであろう。
【0147】
特に、本発明化合物は、たとえばM. Ono et al. (Bioorganic & Medicinal Chemistry 16 (2008)6867-6872)、WO 2008/131148、WO 2004/080972、WO 2004/072050、およびWO 98/17652に開示されたものと同様な方法で製造できる。別経路も本発明の実施例のセクションに例示する。
【実施例】
【0148】
以下の実施例は本発明を説明するためのものである。ただし、それらを限定と解釈すべきではない。
実施例1:タンパク質凝集を阻害するための新規クラスの化合物の同定
2サブセットの市販化合物ライブラリーDIVERSet(ChemBridge Corp.,米国カリフォルニア州サンディエゴ)、それぞれ10.000の化合物を含み、本発明者らがDIVERSet 1および2と呼ぶものを、プリオン伝染の阻害薬について、2D−SIFT抗プリオンアッセイ(Bertsch et al. 2005)およびプリオン病の細胞培養モデルを用いてスクリーニングした。両アッセイにおいて、化合物を単一濃度で試験することにより一次ヒットが得られ、続いてこれらを希釈系列で証明した。さらに、細胞培養ヒットを他の細胞系により試験した。
【0149】
2D SIFTスクリーニング
薬物がPrPCとPrPScの会合に及ぼす阻害作用をハイスループットおよびハイコンテント(high−content)スクリーニングアッセイで試験するために、、“Scanning for Intensely Fluorescent Targets(SIFT)”技術を利用した;これは、2色の蛍光のための単一光子検出器を備えた倒立二色共焦点顕微鏡セットアップを用いる。カバースライドガラス底を備えた96ウェルまたは384ウェルのマイクロタイタープレート内で試料を調製する。アッセイ混合物は、組換えマウスPrP(rPrP)、マウスPrPではなくヒトPrPを認識するモノクローナル抗体(mAb)L42、およヒトCJD脳から調製したPrPSc凝集物からなる。rPrPおよびmAb分子を、それぞれグリーンおよびレッドの蛍光体で標識する。数個のrPrPおよびmAb分子がPrPSc凝集物に結合すると、結合した多数のレッドおよびグリーン蛍光体を示す三元複合系が形成されるであろう。そのような凝集物は両方の蛍光チャンネルにおいて同時に高い強度を生じるので、それらをSIFT法により同定および分析することができる。レッドおよびグリーンの蛍光強度の分布を、二次元蛍光強度ヒストグラムにより評価することができる。rPrPとPrPScの会合の阻害薬がアッセイに含まれる場合は常に、三元凝集物のグリーン蛍光強度が低下するはずである。その際、二次元ヒストグラムにおける凝集物のカラー分布はヒストグラムの“レッド”セクターの方へシフトするであろう。
【0150】
20000の化合物の一次SIFTスクリーニング
上記のアッセイシステムを、それぞれ10.000の多様な薬物様化合物を含む2つのライブラリー(ChemBridge;“DIVERSet1”および“DIVERSet2”)に、一次スクリーニング用の96ウェルマイクロタイタープレートにおいて適用した;化合物を添加しない陰性対照、および17μMのDOSPAを含有する陽性対照、ならびにCJDロッドおよび化合物を含有しない対照(抗体とrPrPの混合物中に凝集物が存在しないことを検査するために使用)を含む。
【0151】
DOSPAを含有する試料は、優先的にグリーンrPrPで標識された凝集物の信号をモニターするセクターのSIFT信号の低下を示した。これは、これらの対照において、より少ないrPrPがCJDプリオンロッドに結合したことの指標となる。プリオンロッドはレッドの抗体標識によりマークされているので、それらの蛍光はなお“レッド”セクターにおいてSIFT信号を発している。大部分の化合物はSIFT信号の分布に影響を及ぼさなかった。しかし、DIVERSet化合物のうち若干が“グリーン”セクターに検出される凝集物の数を減少させた。これらの試料のSIFT曲線は、DOSPA対照の方へシフトする。したがって、対応する化合物を有望な抗プリオン薬についての一次ヒットとみなすことができる。時には、若干の技術的問題によりアーティファクトが生成し、これがマイクロタイタープレート全体の全測定を不明瞭にした。これは別として、異常値として処理しなければなかったものおよび自動SIFT分析に不適切であったものは、妨害されなかった測定値のうちわずか7%であり、これらは大部分が被験化合物の固有蛍光のためであった。SIFTアッセイにより処理できない化合物のこのかなり低いパーセントは予想外であり、このアッセイ法の万能性および有効性を強調する。問題のある測定値および化合物の同定は、SIFTアッセイデータのハイコンテント性によって容易になる。各試料について、幾つかの蛍光パラメーター、たとえばそれぞれのカラーチャンネルについての平均蛍光強度を、同時に記録する。これらをカラー分布ヒストグラムに各セクターの高強度事象の和と一緒に表示する。したがって、高い固有蛍光をもつ試料を容易に選別することができる。
【0152】
SIFT一次ヒットおよび希釈系列による立証
一次ヒットとして分類された化合物について、“グリーン”セクター1〜5におけるbinの和を分析し、必要最小作用としての非処理対照と比較して、DOSPAの作用の約50%のカットオフ値を決定した。DIVERSet化合物にSIFTスクリーニングデータからスケーラー(scalar)SIFT活性値(tp1_sift)を帰属させて、プリオン凝集に対するそれらの阻害作用を特徴づけた;Bertsch et al. 2005の記載に従う。ゼロより小さい活性値は阻害作用が無いことを反映し、これに対しゼロより大きい活性値は阻害作用を反映する。その際、約1の数値は、そのプレート上の陽性対照測定値のものと同等な大きさの阻害作用の指標となる。
【0153】
一次ヒットを、SIFTアッセイにおける各化合物の二重6点希釈系列(0.1〜100μM)により、PrPC−PrPSc会合の用量依存性阻害について検査した。用量−応答曲線により、これらの化合物の濃度依存性阻害活性を確認した。17μMのDOSPAの作用と比較して、プリオンロッドへのrPrP結合の最大値の半分の阻害が0.3〜60μMの範囲のEC50値でみられた。
【0154】
細胞培養一次ヒットおよび希釈系列による立証
SIFTアッセイのほか、DIVERSetライブラリーをプリオン疾患の細胞培養モデルにおいてもスクリーニングした。これらのアッセイにおいては、DIVERSet化合物の抗プリオン活性をまず20μMの濃度で試験した。一次細胞培養スクリーニング(SMB細胞において20μMで)の結果を二元変数によりコード化した(tp3_reduktion);その際、数値“1.0”は“活性”をコードし、“0.0”は“不活性”をコードする。一次スクリーニングにおいて同定された活性化合物を立証した;その目的は、きわめて低い濃度ですら活性な化合物を同定することであった。一次細胞培養ヒットの確認を、DIVERSet 1については4種類の濃度(1μM、4μM、10μM、40μM)、DIVERSet 2については2種類のみの濃度(0.2μM、2μM)の希釈系列において行なった。結果(tp3_reduktion_mue)を、1μM(DS1)または0.2μM(DS2)で活性であるものについて“1.0”、2μM(DS2)で活性であるものについて“0.5”により表わす。20μMを超える濃度で不活性な化合物を“0.0”により表わす(DS1+2)。さらに、一次SMB細胞培養ヒットを単一濃度でScN2a細胞について立証した(tp3_scn2a);この場合も、“0.0”および“1.0”は、それぞれ不活性および活性を表わす。
【0155】
新規な抗プリオン化合物としてのジフェニルピラゾール類(DPP)および関連化合物
SAR−map作製
一次細胞培養スクリーニングにおいて“活性”と判定されたDIVERSet化合物について、ソフトウェアパッケージBenchware HTS DataMiner(DM;Tripos Inc.,米国ミズーリ州セントルイス)を用いてクラスター分析を行ない、図1に示すSAR−mapを得た。2つのライブラリーに含まれる多数の化合物(20.000)は、DataMinerを用いるクラスター分析のための出発点としては大きすぎるので、分析をまずDIVERSet 1および2の細胞培養スクリーニングの一次ヒット(837の化合物)に限定した。したがって、クラスターは活性化合物のみについて決定された。この場合、DMプログラムは構造的に類似しかつ活性である化合物をクラスターに分類するので、潜在的に関連する新規なリード構造を同定するのに適切である。第2段階で、こうして確立したクラス分けを、細胞培養において不活性な化合物を含む残りのライブラリーに適用した。その際、採用した尺度が高い構造類似性を指摘した場合、DMプログラムは作製したクラスターにさらに他の(不活性)化合物を追加した。
【0156】
クラスター分析の結果をDateMinerによりSAR−mapの形で図示し、その際、物質クラスターSを記号により表わす。DMは、表わされるクラスターが構造的に類似する場合にはその記号が互いに近接するようにそれらを配置する。記号のサイズ、形状および色はクラスター固有の特性に基づいて割り当てられ、それらはユーザーが選択することができる。
【0157】
したがって、記号のサイズをクラスターのサイズ/S/、すなわちそれに含まれる化合物Cの個数に比例するように選択した。記号の形状は、対応するクラスターS中の、SIFTスクリーニングにおいて判定された一次活性a(C)が選択された閾値amin=0.25を超える物質Cの画分に基づいて決定された。
【0158】
【化13】

【0159】
したがって、その画分PSIFT(S)が50%を超えるクラスターを星印として示し、一方、残りの主に不活性なクラスターを四角として示す。同様に、記号の色は、細胞培養ベースのスクリーニングの一次ヒットに従ったクラスターの画分をコードし、
【0160】
【化14】

【0161】
その際、50%を超える活性物質を含むクラスターの記号は赤であり、残りのクラスターは灰色である。図1は、上記のクラスター分析から得たSAR−mapを示す。大きな赤い星印は、高い割合のSIFT陽性および細胞培養陽性である物質を含むクラスターの記号である。これらのクラスターは、有望なリード構造を表わす。DataMinerを用いて目的クラスターをさらに分析して5つの隣接クラスターのグループを同定し(DPP_1〜DPP_5と命名)、これらを図1に太線で示す。これらのクラスターに選別されたすべての化合物を図2に、各種アッセイにおけるそれらの活性と共に示す。これらのクラスターが互いに近接した位置にあるという事実は、それらが構造的に類似する物質を含むことの指標となる;すなわち、それらはすべて3,5−ジフェニル−ピラゾール(DPP)誘導体の化合物クラスに属する(図1に示すDPPモチーフと対比)。
【0162】
実施例2:医薬−化学的観点で凝集を阻害するための新規薬物の合成
前記のの新規なリード化合物の知見に基づいて、下記に概説するように種々の置換基の選択的置換によって多数の他の物質を合成した:
スキーム1:イソオキサゾール類の合成
【0163】
【化15】

【0164】
(E)−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−(3−フルオロフェニル)−2−プロペン−1−オン(1)[Nam et al., 2004]
3,4−ジメトキシアセトフェノン(1.8g,10mmol)、3−フルオロベンズアルデヒド(1.24g,10mmol)、NaOH(50mg,1.25mmol)およびBa(OH)・8HO(100mg,0.32mmol)のメタノール(10ml)中における溶液を、室温で24時間撹拌した。反応物を+4℃に冷却し、生じた沈殿を濾過により採集し、メタノールから再結晶し、乾燥させて、1(1.65g,58%)を黄色粉末として得た。
【0165】
2,3−ジブロモ−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−(3−フルオロフェニル)−プロパン−1−オン(2)[Harris et al., 1977]
1(715mg,2.5mmol)のクロロホルム(11ml)中における溶液を、臭素(400mg,2.5mmol)のクロロホルム(4ml)中における溶液に0℃で滴加した。0℃で2時間撹拌した後、反応物を石油ベンジン(20ml)で希釈し、混合物を10時間冷蔵し(−24℃)、生じた沈殿を濾過により採集し、n−ヘキサン(10ml)で洗浄し、乾燥させて、2(780mg,70%)を白色粉末として得た。
【0166】
3−(3,4−ジメトキシフェニル)−5−(3−フルオロフェニル)イソオキサゾール(3)[Harris et al., 1977]
2(450mg,1mmol)のエタノール(6ml)中における溶液を、ヒドロキシルアミン塩酸塩(306mg,4.4mmol)で処理し、続いてNaOH(460mg,11.5mmol)の水(1.5ml)中における溶液で処理した。混合物を2時間、加熱還流し、冷却し、水(3ml)で処理した。一夜冷蔵(4℃)した後、生成物を濾過により採集し、水(5ml)で洗浄し、乾燥させて、3(180mg,60%)を白色粉末として得た。
【0167】
3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−5−(3−フルオロフェニル)イソオキサゾール(4)[Vanelle et al., 2000]
3(100mg,0.33mmol)のジクロロメタン(5ml)中における溶液を−78℃に冷却し、三臭化ホウ素(0.16ml,1.7mmol)で処理し、−78℃で3時間、次いで室温で一夜、撹拌した。混合物を−78℃に冷却し、メタノール(5ml)で反応停止した。室温で3時間撹拌した後、溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をメタノール(10ml)と4回、共蒸発させた。生じた沈殿を5mlのクロロホルム中で還流し、冷却した後、生成物を濾過により採集し、乾燥させて、4(60mg,67%)を白色粉末として得た。
【0168】
スキーム2:ピラゾール類の合成
【0169】
【化16】

【0170】
1,3−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)−プロパン−1,3−ジオン(5)[Anselme,1967]
鉱油中の60%水素化ナトリウム懸濁液(0.4g,10mmol)を、石油ベンジン(20ml)で2回洗浄し、無水DMSO(10ml)を添加した。室温でアルゴン下に30分間撹拌した後、THF(5ml)を添加し、フラスコを15℃に冷却し、3,4−ジメトキシ安息香酸エチル(2.1g,10mmol)を添加した。温度を10℃にまで低下させ、3,4−ジメトキシアセトフェノン(1.08g,6mmol)のDMSO(4ml)中における溶液を、温度が15℃を超えない速度で添加した。添加終了後、反応混合物を室温で72時間撹拌し、次いで85%リン酸(1ml)を含有する砕氷(250g)中へ徐々に注入した。生じた沈殿を濾過により採集し、水(50ml)で洗浄し、乾燥させて、5(2.1g,99%)を黄色粉末として得た。
【0171】
3,5−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)ピラゾール(6)[Hauser et al., 1957]
5(1,0g,2.9mmol)および水和ヒドラジン(218mg,4.4mmol)のエタノール(15ml)中における溶液を、撹拌下で3時間、加熱還流した。透明な黄色溶液を減圧下で蒸発させ、水を添加し、生じた沈殿を濾過により採集し、水で洗浄し、乾燥させて、6(960mg,97%)を黄色粉末として得た。
【0172】
3,5−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)ピラゾール臭化水素酸塩(7)[Vanelle et al., 2000]
6(120mg,0.35mmol)のジクロロメタン(5ml)中における溶液を−78℃に冷却し、三臭化ホウ素(0.34ml,3.5mmol)で処理し、−78℃で3時間、次いで室温で一夜、撹拌した。混合物を−78℃にまで冷却させ、メタノール(5ml)で反応停止した。室温で3時間撹拌した後、溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をメタノール(10ml)と4回、共蒸発させた。生じた沈殿を5mlのクロロホルム中で還流し、冷却した後、生成物を濾過により採集し、乾燥させて、7(108mg,85%)を黄色粉末として得た。
【0173】
【化17】

【0174】
1−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−3−(3−ブロモフェニル)−プロパン−1,3−ジオン(21)[Anselme, 1967]
1.操作
乾燥した500−mLの三つ口フラスコにTeflon(登録商標)コートした磁気撹拌バー、ゴム隔膜、温度計、および還流冷却器を設置し、これに純窒素源に接続したT字管を取り付ける。反応全体を通して窒素の流速を観察することができる状態で、T字管の残りの継手をバブリング装置に接続する。フラスコを間欠的に水浴で冷却できるようにこの装置を配置する。反応器を窒素でフラッシした後、反応の残りの期間は反応器内に静止窒素雰囲気を維持する。フラスコに鉱油中の約60%水素化ナトリウム分散液(5g,0.125mole)(注釈1)を装入する。石油ベンジン40/60(3×40mL)(注釈2)で鉱油を水素化物から洗い去る。ゴム隔膜を通して挿入したステンレス鋼注射針付きルアーロック皮下注射器を用いて、上清の石油ベンジン層を除去する。残留する水素化ナトリウムを80mLのジメチルスルホキシド(注釈3)と混合し、ゴム隔膜を均圧滴下ろうとに置き換える。16.4g(0.1mole)の1−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)エタノン(注釈4)および26.9g(0.125mole)の3−ブロモ安息香酸メチル(注釈5)の、ジメチルスルホキシド60mL中における溶液を、滴下ろうとに入れる。ろうとを密栓し、撹拌を開始し、フラスコの内容物を水浴内で15℃に冷却する。1−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)エタノンおよび3−ブロモ安息香酸メチルの溶液を、水素の発生が制御可能な速度に維持されかつ温度が20℃を超えないように、60分間にわたって徐々に添加する(注釈6)。添加終了後、浴を取り除き、反応混合物を室温(23℃)で15時間撹拌する。得られた赤褐色の均質な反応混合物を、5mLの85%オルトリン酸(注釈7)を含有する500mLの氷水に、撹拌しながら徐々に注入する。1時間撹拌した後、生成物を濾過により分離し(注釈8)、水(2×100mL)と共に吸引濾過することにより洗浄し、一定重量になるまで40℃で6時間、真空乾燥すると、34.4gの粗(注釈9)生成物が得られる。200mLの99.9%エタノールおよび200mLの酢酸エチル(注釈10)から再結晶し、一定重量になるまで40℃で6時間、真空乾燥すると、28.5g(82%の収率)の純粋な(注釈11)1−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−3−(3−ブロモフェニル)プロパン−1,3−ジオンが得られる;m.p.136〜137℃。濾液を約30mLの体積になるまで減圧濃縮し、分離する結晶質固体をフィルター上に採集し、エタノール(2×10mL)と共に吸引濾過することにより洗浄し、一定重量になるまで40℃で6時間、真空乾燥すると、追加分(3.15g)の粗生成物が得られる。この粗生成物を20mLの99.9%エタノールおよび20mLの酢酸エチルから再結晶し、一定重量になるまで40℃で6時間、真空乾燥すると、さらに1.8g(5%の収率)の純粋な1−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−3−(3−ブロモフェニル)プロパン−1,3−ジオン(注釈12)が得られる。生成物の全収量は30.3g(87%)である。
【0175】
2.注釈
1.水素化ナトリウム、57〜63%の油分散液、注文番号13431、Alfa Aesar GmbH & Co KG、カールスルーエ、から入手されるものを使用した;
2.石油ベンジン、分析用グレード、沸騰範囲40〜60℃、注文番号101775、Merck KGaA、ダルムシュタット、からのものを使用した;
3.ジメチルスルホキシド、分析用グレード、注文番号102952、Merck KGaA、ダルムシュタット、からのものをさらに精製せずに使用した;
4.1−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)エタノン、98%、注文番号A13597、Alfa Aesar GmbH & Co KG、カールスルーエ、から入手されるものを使用した;
5.3−ブロモ安息香酸メチル、98%+、注文番号A16174、Alfa Aesar GmbH & Co KG、カールスルーエ、から入手されるものを使用した;
6.溶液の添加中、起泡を観察する。規模拡大した場合には機械的撹拌機およびポリエチレングリコールジメチルエーテルなどの消泡剤の使用が必要な可能性がある;
7.オルトリン酸、85% w/w水溶液、分析グレード、注文番号100573、Merck KGaA、ダルムシュタット、からのものを使用した;
8.反応混合物のpH値はpH=7。さらに15mLのオルトリン酸でpH=2の酸性にすると、1.3gの3−ブロモ安息香酸を得ることができる;
9.HPLCにより測定した生成物の純度は96.3%である;
10.99.9%無水エタノール、分析用グレード、注文番号100983、および酢酸エチル、分析用グレード、注文番号109623、Merck KGaA、ダルムシュタット、から得られるものを使用した;
11.HPLCにより測定した生成物の純度は99.3%である。Waters HPLCシステムをWaters 996光ダイオードアレイ検出器と共に用いて分析用HPLCを実施する。すべての分離に、水中0.1% v/vのトリフルオロ酢酸(TFA)(溶媒A)およびアセトニトリル中0.1% v/vのTFA(溶媒B)の移動相を、逆相(RP)カラムEurospher RP 18、100Å、5μm、250×4.6mmにより、1mL/分の流速で用いた。化合物をHPLC用グレードのアセトニトリルに濃度1mg/mLで溶解する。保持時間(RT)20.9分および10.3分のピークは、それぞれエノール形およびケト形のANLE 138Aである。個別に採集したピーク20.9分または10.3分の再注入により、同一保持時間をもつ同じ2つのピークが再び得られる;
12.HPLCにより測定した生成物の純度は98.4%である。
【0176】
3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−5−(3−ブロモフェニル)−1H−ピラゾール(22)[Hauser et al., 1957]
1.操作
28.4g(81.8mmole)の1−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−3−(3−ブロモフェニル)プロパン−1,3−ジオン(注釈1)および200mLのn−ブチルアルコール(注釈2)を、Teflon(登録商標)コートした磁気撹拌バー、還流冷却器、および電気加熱マントルを備えた500−mLの丸底フラスコに入れる。撹拌および加熱を開始し、固体が溶解した時点で6mL(6.2g,123.4mmole)のモノ水和ヒドラジン(注釈3)を添加し、反応混合物を撹拌しながら4時間、加熱還流する。反応混合物を20℃にまで冷却させ、0℃に1時間保存し、分離する生成物を吸引濾過により採集する。水(100mL)で洗浄し、一定重量になるまで40℃で36時間、真空乾燥すると、26.8g(95%の収率)の3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル−5−(3−ブロモフェニル)−1H−ピラゾール(注釈4)が得られる;m.p.195〜197℃。
【0177】
2.注釈
1.1−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−3−(3−ブロモフェニル)プロパン−1,3−ジオンは、ANLE 138Aに関するプロトコルに従って製造される;
2.99.4% n−ブチルアルコール、グレード“Baker分析済み”、注文番号8017、J.T.Baker B.V.、オランダ、デベンター、から入手されるものを使用した;
3.モノ水和ヒドラジン、グレードpurum、注文番号53850、Sigma−Aldrich Chemie GmbH、タウフキルヘン、から入手されるものを使用した;
4.HPLCにより測定した生成物の純度は99.3%である。Waters HPLCシステムをWaters 996光ダイオードアレイ検出器と共に用いて分析用HPLCを実施する。すべての分離に、水中0.1% v/vのトリフルオロ酢酸(TFA)(溶媒A)およびアセトニトリル中0.1% v/vのTFA(溶媒B)の移動相を、逆相(RP)カラムEurospher RP 18、100Å、5μm、250×4.6mmにより、1mL/分の流速で用いた。化合物をHPLC用グレードのアセトニトリルに濃度1mg/mLで溶解する。
【0178】
スキーム3:イミダゾール類の合成
【0179】
【化18】

【0180】
4−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−フェニルイミダゾール(8)[Li et al., 2000]
ベンズアミジン塩酸塩(313mg,2mmol)および炭酸水素ナトリウム(672mg,8mmol)のTHF(6ml)および水(1.5ml)中における混合物を、加熱還流した。α−ブロモ−3,4−ジメトキシアセトフェノン(518mg,2mmol)のTHF(1.5ml)中における溶液を30分間かけて添加し、その間、反応物を還流下に維持した。添加後、反応物を2時間、加熱還流し、THFを減圧下で蒸発させた。酢酸エチル(20ml)を混合物に添加し、有機相を分離し、ブライン(5ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。得られた粗生成物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール100:1)により精製して、8(470mg,84%)を固体として得た。
【0181】
4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−フェニルイミダゾール臭化水素酸塩(9)[Vanelle et al., 2000]
8(190mg,0.68mmol)のジクロロメタン(5ml)中における溶液を−78℃に冷却し、三臭化ホウ素(0.32ml,3.4mmol)で処理し、−78℃で3時間、次いで室温で一夜、撹拌した。混合物を−78℃に冷却し、メタノール(5ml)で反応停止した。室温で3時間撹拌した後、溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をメタノール(10ml)と4回、共蒸発させた。生じた沈殿を5mlのクロロホルム中で還流し、冷却した後、生成物を濾過により採集し、乾燥させて、9(192mg,85%)を粉末として得た。
【0182】
スキーム4:ピロール類の合成
【0183】
【化19】

【0184】
(E)−1−フェニル−3−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−プロペン−1−オン(10)
化合物10を、1の製造について記載した方法に従って製造した。収率90%。
【0185】
3−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−ニトロ−1−フェニルブタン−1−オン(11)[Hall et al., 2005]
10(774mg,2.9mmol)のMeOH(30ml)中における溶液を、ジエチルアミン(1.55ml,15mmol)およびニトロメタン(0.81ml,15mmol)で処理し、24時間、加熱還流した。溶液を冷却し、ジクロロメタン(60ml)と水(50ml)の間で分配し、1M塩酸で酸性にした。有機層を分離し、水層をジクロロメタン(20ml)で抽出した。有機層を合わせて水(50ml)およびブライン(50ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、得られた油をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル 3:2)により精製して、11(780mg,82%)を固体として得た。
【0186】
4−(3,4−ジメトキシフェニル)−1−フェニルピロール(12)[Hall et al., 2005]
11(400mg,1.22mmol)のメタノール(13ml)およびTHF(26ml)中における撹拌溶液を、室温で、水酸化カリウム(343mg,6.1mmol)により処理した。1時間後、反応混合物を硫酸(2.44ml)のメタノール(13ml)中における溶液に0℃で滴加し、室温で1時間撹拌した。水(20ml)および氷(20ml)を添加し、混合物を1M水酸化ナトリウム水溶液で中和し、ジクロロメタン(2×50ml)で抽出した。有機画分を合わせてブライン(25ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。得られた油を酢酸(8ml)および塩化アンモニウム(470mg)で処理し、溶液を100℃で1時間加熱した。反応混合物を冷却し、氷(50ml)を添加し、混合物を1M水酸化ナトリウム水溶液で中和した。溶液をジクロロメタン(2×50ml)で抽出した。有機画分を合わせてブライン(25ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。粗生成物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル 3:1)により精製し、次いでn−ヘキサン/酢酸エチル(2:1)の混合物から再結晶して、12(150mg,44%)を固体として得た。
【0187】
4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−フェニルピロール(13)[Vanelle et al., 2000]
12(80mg,0.29mmol)のジクロロメタン(5ml)中における溶液を−78℃に冷却し、三臭化ホウ素(0.13ml,1.4mmol)で処理し、−78℃で3時間、次いで室温で一夜、撹拌した。混合物を−78℃に冷却し、メタノール(5ml)で反応停止した。室温で3時間撹拌した後、溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をメタノール(10ml)と4回、共蒸発させた。得られた粗生成物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール 95:5)により精製し、次いで数滴のアセトニトリルを含むクロロホルムから再結晶して、13(36mg,50%)を固体として得た。
【0188】
スキーム5:ピラゾリン類の合成
【0189】
【化20】

【0190】
3−(3,4−ジメトキシフェニル)−5−(3−フルオロフェニル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール(14)
1(57mg,0.2mmol)および水和ヒドラジン(0.5ml,10mmol)の水(0.14ml)中における懸濁液を、撹拌しながら100℃で1.5時間加熱した。反応混合物を冷却し、水(0.2ml)を添加し、生じた沈殿を濾過により採集し、水で洗浄し、乾燥させて、14(37mg,62%)を白色固体として得た。
【0191】
スキーム6:N−Ac−ピラゾリン類の合成
【0192】
【化21】

【0193】
(E)−1−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−3−フェニル−2−プロペン−1−オン(15)
化合物15を、1の製造について記載した方法に従って製造した。収率64%。
【0194】
1−アセチル−3−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−5−フェニル−4,5−ジヒドロピラゾール(16)[Chimenti et al., 2004]
15(504mg,2mmol)および水和ヒドラジン(250mg,5mmol)の酢酸(12ml)中における溶液を、撹拌しながら120℃で24時間加熱した。反応混合物を冷却し、冷水(40ml)を添加し、生じた沈殿を濾過により採集し、エタノールから再結晶し、乾燥させて、16(458mg,74%)を白色固体として得た。
【0195】
1−アセチル−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−5−フェニル−4,5−ジヒドロピラゾール(17)[Vanelle et al., 2000]
17(70mg,0.23mmol)のジクロロメタン(3ml)中における溶液を−78℃に冷却し、三臭化ホウ素(0.13ml,1.4mmol)で処理し、−78℃で3時間、次いで室温で一夜、撹拌した。混合物を−78℃に冷却し、メタノール(5ml)で反応停止した。室温で3時間撹拌した後、溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をメタノール(10ml)と4回、共蒸発させた。得られた粗生成物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル 1:1)により精製して、17(25mg,37%)を固体として得た。
【0196】
スキーム7:1,2,4−オキサジアゾール類の合成
【0197】
【化22】

【0198】
3,4−ジメトキシベンズアミドキシム(18)[Chalquest, 2001]
3,4−ジメトキシベンゾニトリル(4.0g,24.5mmol)、ヒドロキシルアミン塩酸塩(2.0g,28.8mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(5.0ml,29.2mmol)のエタノール(70ml)中における溶液を、室温で48時間撹拌した。エタノールを減圧下で蒸発させ、冷水(60ml)を添加し、生じた沈殿を濾過により採集し、乾燥させて、18(3.4g,71%)を白色粉末として得た。
【0199】
3,5−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール(19)[Korbonits, 1982]
18(700mg,3.57mmol)および3,4−ジメトキシ安息香酸エチル(834mg,3.97mmol)のエタノール(12ml)中における溶液に、カリウムtert−ブトキシド(425mg,3.79mmol)を添加し、反応混合物を12時間、加熱還流した。混合物を冷却し、沈殿を濾過により採集し、熱エタノールで洗浄し、乾燥させて、19(540mg,44%)を白色粉末として得た。
【0200】
3,5−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール臭化水素酸塩(20)[Vanelle et al., 2000]
19(220mg,0.64mmol)のジクロロメタン(6ml)中における溶液を−78℃に冷却し、三臭化ホウ素(0.59ml,6.1mmol)で処理し、−78℃で3時間、次いで室温で一夜、撹拌した。混合物を−78℃に冷却し、メタノール(5ml)で反応停止した。室温で3時間撹拌した後、溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をメタノール(10ml)と4回、共蒸発させた。生じた沈殿を5mlのクロロホルム中で還流し、冷却した後、生成物を濾過により採集し、乾燥させて、20(190mg,81%)を粉末として得た。
【0201】
以上の実施例は目的化合物を合成または誘導体化する例を提示する。図3に示す残りの化合物をこれらに従って合成した。これらの化学合成した物質について、選択した一次スクリーニングの物質と共に、SIFTアッセイ、細胞培養ベースのアッセイ、マウスにおけるインビボ実験、およびα−シヌクレイン凝集を指向した生化学的アッセイを含めたさらに他の試験を行なった(後記を参照)。試験した物質のリストを図3に示す。
【0202】
実施例3:使用した材料および方法
化合物ライブラリー
スクリーニングしたライブラリーはそれぞれ10.000の化合物を含み、これらはより大きなDIVERSetライブラリー(ChemBridge Corp.、カリフォルニア州サンディエゴ)の一部を含むにすぎないので、本発明者らはDIVERSet1およびDIVERSet2と呼ぶ。DIVERSetは合理的に選択された多様な薬物様低分子のコレクションである。これらの化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)溶液として96−ウェルマイクロタイタープレートに供給した。各化合物の分子構造および若干の物理化学的データを含むデータベースは、www.chembridge.comにおいて入手できる。
【0203】
組換えマウスPrP 23−231の調製
本質的にLiemann et al. (1998)による記載に従って、組換えPrP 23−231を調製および精製した;ただし、細菌発現のためにBL21DE3 RIL大腸菌(E.coli)細胞(Novagen)をマウスPrP23−231用のプラスミドpET17b−MmPrP23−231WT31で形質転換した。また、細菌を光学濃度0,5まで増殖させた後、1mM IPTGの添加によりタンパク質産生を誘導し、2時間後に細胞を収穫した。次いで、フレンチプレスを用いる代わりに細胞溶解用緩衝液に0,5% Triton X−100を添加して37℃で30分間インキュベートすることにより細菌を溶解した。さらに、ゲル濾過の代わりにニッケルキレートアフィニティークロマトグラフィー工程を用いた。リフォールディング後の最終カチオン交換クロマトグラフィー工程も省略した。
【0204】
特に、イオン交換クロマトグラフィーにより精製したPrPを記載に従って酸化処理し、0,1mM EDTAの添加および約6へのpH調整により酸化を終了した。0,1mM NiCl2の添加後、最高50mgのPrPを、製造業者の推奨に従って予めNiCl2を装入した2mLのキレート化用sepharose(Pharmacia)に付与し、緩衝液A(8M尿素,10mM MOPS pH7,0)で予め平衡化した。Ni−キレートマトリックスへのPrPの結合を、室温で少なくとも3時間、混合物を連続反転することにより実施した。このマトリックスをpolyprepカラム(BioRad)へ移し、フロースルーから排液した。カラムを5mLの緩衝液B(8M尿素、10mM MOPS pH7,0、500mM NaCl)で2回洗浄し、次いで5mLの緩衝液D(7,2M尿素,10mM MOPS pH7,0、150mM NaCl、50mMイミダゾール)で6回、連続溶離した。精製PrPを含有する画分をプールし、centriprep装置で濃縮し、最後にリフォールディングのために10mM MES pH6,0中へ1:50希釈した。
【0205】
抗体および組換えPrPの蛍光標識
L42モノクローナル抗体(r−biopharm、ドイツ、ダルムシュタット)を、Alexa Fluor 647(Alexa−647;Invitrogen、ユージーン)で製造業者のマニュアルに従って標識した。組換えマウスPrP 23,231を、Alexa Fluor 488(Alexa−488;Invitrogen、ユージーン)で、20mMリン酸カリウム緩衝液、pH6、0.1% Nonidet P40、40mM炭酸水素ナトリウム緩衝液、pH8,3中において標識した。結合しなかった蛍光体を、20mMリン酸カリウム緩衝液pH6、0.1% Nonidet P40で平衡化したPD10カラム(GE Healthcare、ドイツ、フライブルク)上でのゲル濾過により分離した。標識反応および標識比率の品質管理を、Insight Reader(Evotec Technologies、ドイツ、フライブルク)による蛍光相関分光分析(FCS)測定により実施した。標識比率は、PrP分子当たり約1,3個の蛍光体であった。
【0206】
PrPC−PrPSc会合のアッセイ
PrPScをCJD患者の脳からSafar et al. (Safar et al.(1998))に従って調製し、1×PBS+0.1%サルコシル(sarcosyl)溶液に再懸濁した最終ペレットのアリコートを緩衝液A(20mMリン酸カリウム緩衝液、pH6.0、0.1% Nonidet P40)中へ5倍希釈し、水浴ソニケーター内で60秒間、音波処理した。1000rpmで1分間遠心した後、上清をアッセイ用緩衝液A中へ100倍希釈した。
【0207】
標識したマウスrPrPと標識したL42モノクローナル抗体の混合物を、20mMリン酸カリウム緩衝液、pH6、0.1% Nonidet P40中に、これらの標識分子が2〜6nMでほぼ等量存在するように調製した。20μLのアッセイ体積で、8μLのrPrP/抗体混合物、2μLの化合物、および10μLの希釈PrPSc調製物を混合した。カバースライドガラス底を備えた96ウェルプレート(Evotec−Technologies、ドイツ、ハンブルク)に試料を装入し、Insight Readerで測定した。
【0208】
単一粒子測定および分析
FIDA測定を、488nmレーザーについては200μW、633nmレーザーについては300μWの励起エネルギーで実施した。走査パラメーターを、100μmの走査路長さ、50Hzのビームスキャナー周波数、および2000μmの位置決めテーブル移動に設定した。測定時間は10秒であった。2種類の蛍光体からの蛍光を個別に単一光子検出器で記録し、一定長さの時間間隔(bin)にわたり、bin長さ40マイクロ秒を用いて、光子を合計した。レッドおよびグリーン蛍光光子のカウント数を測定し、先の記載に従って二次元強度分布ヒストグラムにおいて分析した(Bieschke et al., 2000)。
【0209】
蛍光強度データを、2D−SIFTソフトウェアモジュール(Evotec−Technologies、ドイツ、ハンブルク)を用いてセクター内の高強度binを合計することにより評価した。対照測定値に従って、各測定系列についてのbin強度のカットオフ値を手動で調整した。
【0210】
実施例4:スクレイピー感染マウスにおいて感染後80日目の有望な新規抗プリオン化合物の療法適用
伝染性海綿状脳症(TSE)またはプリオン病の対処における有望な新規抗プリオン化合物の有効性を証明するために、動物実験を実施した;この場合、SIFTおよび/またはスクレイピー細胞培養アッセイにおいて抗プリオン活性をもつ化合物を用いて、RML株スクレイピーに感染させたマウスを潜伏期(incubation period)の後期に処置した。感染後80日目に14日間、化合物を腹腔内適用することを選択した;これは、このプリオン株を感染させた動物に一般に最初の不顕性症状が発現する時期だからである。これは、TSE感染して最初の疾患症状を示しているヒトが実際に療法処置を受ける最も早い時期に相当するであろう。そのようにきわめて厳密な条件を療法のために選択することにより、プリオン療法薬としての被験化合物の機能性を現実的な状態で評価することが目的であった。一般にTSE療法薬は、現在まで動物実験において被曝後の予防について試験されているにすぎない;この場合、それらをプリオン感染時期付近で適用する。実際の生活では、そのような療法計画をTSE感染個体に実施できる機会はごく稀にすぎない。大部分のTSE患者にとって、家族性および散発性の症例(これらが大部分である)について感染または潜伏期開始の時期は不明であり、知ることができない。したがって、大部分のTSE患者はTSEの最初の症状が発現した後に初めて処置を受けることができるであろう。
【0211】
実験法:
6〜7週令の雌C57Bl6マウスに、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中1%の、RMLスクレイピー株による末期疾患マウスからの無菌脳ホモジェネート30μLを脳内注射することにより、RMLスクレイピーを接種した。感染後80日目にこれらのマウスを、選択した有望な新規抗プリオン化合物またはビヒクルであるジメチルスルホキシド(DMSO)水溶液で処置した。5種類の有望な抗プリオン化合物を、この処置に関する細胞培養モデルにおけるそれらの抗プリオン活性に従って選択した;それらは、Diverset化合物ライブラリー(Chembridge Corp.、米国サンディエゴ)における位置に従った10353F11、ならびにanle138b、anle143b、sery106およびsery149と呼ばれた。これらの化合物による処置を連続14日間、1日当たり50μLの化合物10353F11、他の化合物についてはそれぞれ25μLの、ビヒクル(DMSO)中の希釈液を腹腔内注射することにより実施した。化合物10353F11を10mMの濃度で用い、化合物anle138b、anle143b、sery106およびsery149については100mMを、期間全体にわたって注射した。動物を疾患の徴候について感染後80日目から1日1回、訓練された動物飼育者がモニターした。運動失調、震え、仰位からの立直り困難、および尾硬直の臨床症状により特徴づけられるこの疾患の末期に達して瀕死状態となった時点で、動物を屠殺した。一般に、疾患末期中の疾患進行により、1または2日以内に動物は死亡するであろう。屠殺した動物から脳半球および脾臓の半分をウェスタンブロット分析用に新鮮な状態で−80℃において凍結させ、一方、第2の脳半球および脾臓の第2半分ならびに内臓全部を(免疫)組織学的検査のために4%ホルムアルデヒド溶液中で固定した。
【0212】
結果
図4に示すように、RMLスクレイピー株を腹腔内感染させたマウスに潜伏期の後期(感染後80日目)に、選択した有望な抗プリオン薬を1日1回、腹腔内適用することによる処置は、10353F11(図4A)ならびにanle138bおよびsery149(図4B)についてはスクレイピー感染症の末期に達するまで潜伏期を延長させた。それぞれ7匹および8匹の動物のグループについて化合物anle138bおよびsery149に関して測定した平均生存時間が、ビヒクルである100% DMSOのみを投与した12匹の動物のグループと比較して、それぞれ14.9日および11.5日間、延長した。化合物sery106およびanle143bについては、同じDMSO対照グループと比較した処置動物8匹のグループにおける生存時間の延長は、統計的有意性のレベル未満であった。化合物10353F11について、それぞれ8匹の動物のグループについて測定した生存時間は、対照グループと比較して11日間、延長された。これらの実験でみられた生存時間延長は、ほぼ処置期間に相当する。これは、薬物を投与している限りこれらの薬物による処置が疾患進行を停止させたことを意味する可能性がある。この場合、これらの薬物による処置は、疾患進行を停止させることによりTSE感染個体の寿命を延長し、かつ彼らの健康状態を安定化して、疾患がさらに悪化するのを防ぐであろう。
【0213】
実施例5:腹腔内感染後のスクレイピー感染マウスにおける有望な抗プリオン化合物の療法適用
伝染性海綿状脳症(TSE)またはプリオン病の対処におけるこの新規な抗プリオン化合物の有効性を証明するために、さらに他の動物実験を実施した。この実験のために、マウスにRMLスクレイピーを腹腔内感染させ、化合物anle138bで処置した;これは、それの抗プリオン活性が後期プリオン疾患の動物モデルにおいて証明されたものである(実施例4)。この化合物の腹腔内適用と経口適用の組合わせを選択し、感染直後に処置を開始した。
【0214】
実験法:
マウスのスクレイピー感染および処置
6〜7週令の雌C57Bl6マウスに、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中1%の、RMLスクレイピー株による末期疾患マウスからの無菌脳ホモジェネート100μLを腹腔内接種することにより、RMLスクレイピーを接種した。anle138bまたはビヒクルであるジメチルスルホキシド(DMSO)水溶液によるこれらのマウスの処置を、感染直後に開始した。この化合物による処置は、連続14日間、ビヒクル(DMSO)中に希釈した化合物を1日当たり25μL腹腔内注射し、続いて4日間および5日間、植物油/DMSO混合物中の化合物を1日当たり50μL、口内強制投与で経口投与することにより実施された(図5A)。化合物anle138bを、腹腔内適用については100mMの濃度で、経口投与については50mg/kgで用いた。動物を、感染後35日目、すなわち腹腔内感染マウスの脾臓にPrPScを明瞭に検出できる時点で屠殺した。屠殺した動物から脾臓の半分をウェスタンブロット分析用に新鮮な状態で−80℃において凍結させ、一方、脾臓の第2半分および内臓全部を免疫組織学的検査のために4%ホルムアルデヒド溶液中で固定した。
【0215】
PETブロット
ホルマリン固定した脳組織を2mm厚さの組織ブロックに切断し、濃ギ酸中で1時間、汚染除去し、4%リン酸緩衝化生理食塩水−緩衝化ホルマリン中で48時間、Brown et. al. 1990のプロトコルに従って後固定し、そしてパラフィンに包埋した。切片(5〜7μm)をミクロトームで切り取り、水浴(55℃)に入れ、予め湿らせた0.45μm細孔ニトロセルロース膜(Bio−Rad、カリフォルニア州リッチモンド)上に採集し、少なくとも30分間、55℃で乾燥させた。ニトロセルロース膜をキシレンで脱パラフィン処理した。キシレンをイソプロパノールで置換し、続いて段階的に再水和した。Tween 20を最終濃度0.1%で、蒸留水中での最終的な再水和工程に添加した。膜を乾燥させ、室温で数カ月間保存して、その後のPrPSc染色の質の低下はなかった。
【0216】
TBST(10mmol/L Tris−HCl,pH7.8;100mmol/L NaCl;0.05% Tween 20)で予め湿らせた後、PK−緩衝液(10mmol/L Tris−HCl,pH7.8;100mmol/L NaCl;0.1% Brij 35)中250μg/mlのプロテイナーゼK(Boehringer)による消化を55℃で8時間実施した。この工程で、膜に付着したタンパク質が膜に固定された。TBSTで3回洗浄した後、膜上のタンパク質を10mmol/L Tris−HCl(pH7.8)中3mol/Lのグアニジンイソチオシアネートで10分間、変性させた。グアニジンをTBSTで3回、洗浄除去した。ブロッキング溶液(TBST中の0.2%カゼイン)中で30分間のプレインキュベーション後、免疫検出を実施した。一次抗体として、組換えマウスPrPに対するポリクローナルウサギ抗体(CDC1と表示される)を、抗体希釈用溶液(Ventana)中1:500の希釈度で用いた。インキュベーションを少なくとも1時間実施した。TBST中で3回洗浄した後、希釈度1:500のアルカリホスファターゼ結合したウサギ抗マウス抗体(Dako、ハンブルク)と共に少なくとも1時間のインキュベーションを実施した。TBST中で10分間、5回洗浄した後、膜をNTM(100mmol/L Tris−HCl,pH9.5;100mmol/L NaCl;50mmol/L MgCl)中で5分間、2回インキュベートすることによりアルカリ性pHに調整した。抗体反応の視覚化は、NBT/BCIPを用いるホルマザン反応により得られた。ブロットをオリンパス解剖顕微鏡で評価した。
【0217】
結果
薬物処置マウスおよびビヒクル処置マウスが死亡した後に摘出した脾臓組織をPrPSc沈着物の存在について免疫組織化学的に染色し、イムノブロット法により脾臓PrPScレベルを分析した。図5Bに示すように、処置動物の脾臓PrPScレベルはビヒクル処置マウスと比較して有意に低下する。感染マウスからの脾臓組織の検査は、化合物anle138bで処置した後、PrPSc沈着物が減少したことを示す。PrPSc沈着物の低い脾臓のパーセントが増大し、強いPrPSc沈着物が減少する(図5C)。(図5D)には、2つのPETブロット、PrPSc沈着物の例を示す。これらの結果は、選択した実験設定および療法計画において、末梢組織におけるこの化合物の明瞭な抗プリオン効果の指標となる。
【0218】

実施例6:スクレイピー感染マウスにおける感染後80日目からの新規な抗プリオン化合物の療法適用
生存時間延長が処置期間に対応するという実施例4からの所見を証明するために、動物実験を実施した;この場合、化合物をより高い濃度でより長い期間投与して、潜伏期の後期のRML株スクレイピー感染マウスを処置した。感染後80日目における、化合物の腹腔内適用と経口適用の組合わせを選択した;これは、このプリオン株を感染させた動物に一般に最初の不顕性症状が発現する時期だからである。
【0219】

実験法:
6〜7週令の雌C57Bl6マウスに、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中1%の、RMLスクレイピー株による末期疾患マウスからの無菌脳ホモジェネート30μLを脳内注射することにより、RMLスクレイピーを接種した。これらのマウスを、感染後80日目に新規な抗プリオン化合物またはビヒクルDMSOで処置した。2種類の有望な抗プリオン化合物anle138bおよびanle186bを用いた。これらの化合物による処置は、連続14日間、ビヒクルDMSO中に希釈した化合物を1日当たり25μL腹腔内注射し、続いて、植物油/DMSO混合物中の化合物を1日当たり50μL、口内強制投与で5日間、2回経口投与することにより実施された(図6A)。3匹の対照マウスおよびanle138bで処置した2匹のマウスにおいては、DMSO/化合物原液と混合したピーナツバター飼料ペレットを与えることにより、この化合物を109日目から136日目までさらに経口投与した。これらの化合物を、腹腔内適用については100mMの濃度で、経口投与については50mg/kgで用いた。各処置グループの4匹の動物を、指示した時点で屠殺した(図6A)。各処置グループの8匹の動物を、疾患の徴候について感染後80日目から1日1回、訓練された動物飼育者がモニターした。運動失調、震え、仰位からの立直り困難、および尾硬直の臨床症状により特徴づけられるこの疾患の末期に達て瀕死状態となった時点で、動物を屠殺した。一般に、疾患末期中の疾患進行により、1または2日以内に動物は死亡するであろう。屠殺した動物から脳半球および脾臓の半分をウェスタンブロット分析用に新鮮な状態で−80℃において凍結させ、一方、第2の脳半球および脾臓の第2半分ならびに内臓全部を組織学的検査のために4%ホルムアルデヒド溶液中で固定した。
【0220】
結果
感染後の脳ホモジェネート中のPrPScレベルおよびアポトーシスによる細胞死
薬物処置マウスおよびビヒクル処置マウスの脳ホモジェネートをPrPScレベルについてイムノブロット分析により分析した。図6Bに示すように、指示した時点で検査したanle138bグループからのすべての動物の脳におけるPrPScレベルを80日目の未処置マウスのレベルに維持することができたのに対し、対照グループのPrPScレベルは上昇する。anle186bについての結果は、対照グループとanle138bの間にある。PrPScの増加速度を低下させることができた(図6B)。図6Cは、80日目の未処置対照と比較した、化合物で処置した後の相対PrPScレベルの変化を示す。脳のPrPScレベルは、anle138bで処置した後、わずかに低下する。指示した時点のH&E染色した脳切片の組織学的検査によれば、anle138bおよびanle186b処置マウスは病的変化の軽減を示した。処置グループからの感染マウスの小脳顆粒細胞層のアポトーシス細胞数が、対照グループと比較して減少する(図6D)。これらの結果は、両化合物とも血液−脳−関門を通過しうることの指標となる。したがってこの療法は、処置中の動物の脳におけるそれ以上のPrPSc沈着および疾患進行を阻止することができた。これらの結果は、化合物anle138bによる処置が、薬物を投与している限り疾患進行を停止させたことを意味する。これらの結果は、この化合物を用いる療法によりPrPSc形成を妨げることによって疾患進行を改変するのが可能であることの指標となる。この場合、処置は疾患進行を停止させることによりTSE感染個体の寿命を延長し、彼らの健康状態を安定化し、またはおそらく改善して、疾患がそれ以上悪化するのを防ぐであろう。
【0221】

潜伏期の延長
図7に示すように、RMLスクレイピー株を脳内感染させたマウスに潜伏期の後期(感染後80日目)に化合物を1日1回投与することによる処置の結果、スクレイピー感染症の末期に達するまで生存時間が延長した(図7)。さらに、109日目から136日目までピーナツバターと混合したanle138bを与えることによる追加処置を受けた2匹のマウスにおいて生存時間がより長いことは、i)生存が処置期間と相関すること、ii)前記化合物が経口投与した際に有効であること、およびiii)前記化合物が血液−脳−関門を通過することの指標となる。
【0222】
実施例7:インビトロでのα−シヌクレイン凝集の抑制
シヌクレイノパチーは、主にタンパク質α−シヌクレインからなる凝集物およびフィブリルの細胞内蓄積を特徴とする(神経変性性)疾患である(概説についてはGoedert, 2001を参照)。最も顕著な神経変性性シヌクレイノパチーは、パーキンソン病(PD)、レーヴィ体認知症(DLB)、および多系統萎縮症(MSA)である。
【0223】
インビトロでのα−シヌクレインの凝集は、自然界で生体膜の近辺に存在する誘電状態を模倣する有機溶剤などの物質の存在下で起きることが証明された(Munishkina et al., 2003)。α−シヌクレインのミスフォールディングおよび凝集の中心的な観点を研究するための、ならびにこの疾患プロセスにおける有毒な凝集物種を形成するためのモデル系を提供する、インビトロ凝集アッセイ法が開発された(Kostka et al 2008)。
【0224】
選択した化合物がα−シヌクレイン凝集を抑制する可能性を試験するために、本発明者らはインビトロ系を用いた;その際、低濃度(<3%)の有機溶剤ジメチルスルホキシド(DMSO)、および−ある実験では−鉄(III)を用いて、インビトロでα−シヌクレイン凝集を誘導した。それぞれグリーンAlexa488−またはレッドAlexa647−蛍光体で標識したα−シヌクレインモノマーの混合物に適用した交差相関分析およびSIFT分析による単一粒子蛍光相関セットアップを用いて、マルチマー形成をモニターした。そのようなα−シヌクレイン混合物を、反応に化合物を添加した試料と並行して凝集させた。
【0225】
実験法:
α−シヌクレインの蛍光標識
組換えα−シヌクレインを、アミノ反応性蛍光色素であるAlexa Fluor−488−O−スクシンイミジルエステルまたはAlexa Fluor−647−O−スクシンイミジルエステル(Molecular Probes、米国)でそれぞれ標識した。反応の完了後、製造業者の指示に従った2つの連続PD10カラム(Amersham Bioscience、ドイツ)による反応混合物のサイズ排除クロマトグラフィーによって、結合しなかった色素分子を分離した。標識効率および結合しなかった色素の除去を、標識α−シヌクレインモノマーを含有する画分の適切な希釈液についてのFCS測定により判定した。
【0226】
単一粒子蛍光相関測定
蛍光相関測定用のカバースライドガラス底を備えた特殊なマイクロタイタープレート(Evotec−Technologies、ドイツ)のウェル内において、20μlの体積で、下記のものを含有する緩衝液中においてα−シヌクレインの凝集を実施した:50mM Tris、pH7.0、およびそれぞれAlexa488−またはAlexa647−蛍光体で標識したα−シヌクレインモノマーの混合物:約5〜10nMの最終濃度の各α−シヌクレイン種。Insight蛍光相関計測器(Evotec−Technologies、ドイツ)により、1.2 NAの40×顕微鏡対物レンズ(オリンパス、日本)を用いて、FIDA光学セッティング、ピンホール直径70μm、および488nmレーザーについて200μWの励起、633nmレーザーについて300μWの励起で、測定を実施した。測定時間は10秒であり、その間、ビームスキャナー装置により、100μmの走査路長さを用い、50Hzの走査周波数、および2000μmの位置決めテーブル移動で、レーザー焦点をウェル全体に移動させた。これは約10mm/秒の走査速度に相当する。二次元強度分布ヒストグラムを作成し、2−D SIFTソフトウェア(Evotec OAI、ドイツ)を用いて分析した。
【0227】
結果:化合物によるα−シヌクレイン凝集抑制
DMSOおよびDMSO/Fe3+により起きたα−シヌクレインの凝集は、レッドおよびグリーン両方の標識α−シヌクレイン単位をより多数含むマルチマー状α−シヌクレイン複合体の形成により反映される。したがって、阻害化合物を添加しない対照反応は、多数の光子を放射する多数の複合体の存在を示す。図8Aにみられるように、DPP化合物351F11をアッセイ溶液に添加すると、マルチマー状α−シヌクレイン複合体の形成を用量依存性で大幅に阻害することができる。したがって化合物351F11は、シヌクレイノパチーにみられる病的なタンパク質凝集に関するこのインビトロモデルにおいて、低マイクロモル濃度でα−シヌクレインのマルチマー形成を効果的に阻害することができる。これは、化合物351F11が抗プリオン化合物として機能しうるだけでなく、パーキンソン病、DLBおよびMSAなどのシヌクレイノパチーについて分子レベルで病理学的機序を妨げる療法化合物となる可能性も備えていることの明瞭な指標である。α−シヌクレイン凝集に対する用量依存性阻害作用は、試験した他のDPP関連化合物についても検出できる(図8B、C)。したがってこれらの化合物は、α−シヌクレイン凝集をインビトロで阻害する能力が証明された新規グループの物質であり、これらはパーキンソン病その他のシヌクレイノパチーに対する根治療法の開発を可能にするであろう。
【0228】
さらに、インビトロでのプリオンタンパク質凝集とα−シヌクレイン凝集の両方に対するこれらの化合物の阻害活性は、タンパク質の主にβ−シートコンホメーションへのミスフォールディングが後続のアミロイドフィブリルへのタンパク質凝集の基礎をなす、より広範なタンパク質凝集性疾患に対する、化合物の全般的な抗凝集活性を反映している可能性がある。したがって、これらの化合物およびDPPクラスの物質の他のメンバーは、たとえば下記のものを含めた全域の(神経変性性)タンパク質凝集性疾患の根治処置のための療法薬として有用である可能性をもつ:アルツハイマー病、プリオン病、パーキンソン病、多系統萎縮症、散在性レーヴィ体病、前頭側頭性認知症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、脊髄小脳性運動失調、および他のポリ−Q疾患、遺伝性脳アミロイド血管障害、家族性アミロイド多発性神経障害、原発性全身性アミロイド症(ALアミロイド症)、反応性全身性アミロイド症(AAアミロイド症)、II型糖尿病、注射局在性アミロイド症、ベータ−2ミクログロブリン性アミロイド症、遺伝性非神経障害性性アミロイド症、フィンランド遺伝性全身性アミロイド症。
【0229】
実施例8:細胞培養におけるPrPScの阻害
実験法:
プリオン感染した細胞培養物を、前記の一次スクリーニングについて記載した新規な合成化合物で処理した。化合物を図9に示す濃度で添加した。それらの化合物の構造を下記および図3に示す:
【0230】
【化23】

【0231】
5−(3,5−ジブロモフェニル)−3−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)ピラゾール(anle145d)
【0232】
【化24】

【0233】
5−(3−ブロモフェニル)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)ピラゾール(sery255b)
結果:
きわめて高い割合のDPP関連化合物が、細胞培養において低マイクロモル濃度で、またマイクロモル下の濃度ですら、強いPrPSc減少を示した。これは、これらの化合物が抗プリオン活性をもつ関連化学物質のグループであることの指標となる。
【0234】
実施例9:種々のDPP誘導体が脳および脾臓におけるPrPSc蓄積に及ぼす阻害作用
化合物がインビボでPrPSc蓄積に及ぼす阻害作用に関して3種類の実験プロトコルにより試験した:
a)C57BL/6マウスに30μLの1%脳ホモジェネート(RMLスクレイピー)を脳内(i.c.)接種した。感染後80日目に、1日当たり1mgの化合物をDMSO+ピーナツバターと混合して経口適用する処置を開始した。感染後120日目に、脳のPrPScレベルをイムノブロット分析により測定した;
b)C57BL/6マウスに30μLの1%脳ホモジェネート(RMLスクレイピー)を脳内(i.c.)接種した。感染後80日目に、1日当たり0,84mgの化合物(DMSO中)を14日間、腹腔内注射し、続いて2×5日間(間の2日間は処置をしない)、1mgの化合物(DMSO+植物油中)を強制経口適用する処置を開始した。感染後106日目に、脳のPrPScレベルを測定した;
c)C57BL/6マウスに100μLの1%脳ホモジェネート(RMLスクレイピー)を腹腔内(i.p.)接種した。1日当たり1mgの化合物をDMSO+ピーナツバターと混合したもので34日間処置した後、感染後35日目に脾臓のPrPScレベルを測定した;
DMSO処置グループと比較したPrPSc蓄積の相対阻害を表1に示す(処置期間終了時のDMSO処置動物の平均値を0%阻害と規定し、処置期間開始時の対照動物の平均値を100%阻害と規定した)。
【0235】
【表1】

【0236】
表1:種々のDPP誘導体が脳および脾臓におけるPrPSc蓄積に及ぼす阻害作用
a,b,c 使用した実験プロトコル(前記)を示す)
これらの実験の結果は、これらの実験条件下での下記の指標となる:i)化合物anle138bおよび化学的関連化合物がインビボで強いプリオン増幅阻害をもたらす、ii)この適用についてこれらの実験条件下でanle138bが最適な相対活性をもつものであることを示す構造−活性関係がある。
【0237】
実施例10:血液−脳−関門を通過することができ、かつ病的タンパク質凝集物との相互作用がみられる
C57BL/6マウスに30μLの1%脳ホモジェネート(RMLスクレイピー)を脳内(i.c.)接種した。感染後80日目に、1日当たり1mgの化合物(sery383)または3mgの化合物(sery363a)をDMSO+ピーナツバターと混合して経口適用する処置を開始した。感染後120日目に、脳のPrPScレベルをイムノブロット分析により測定した。
【0238】
【化25】

【0239】
DMSO処置した対照と比較して、sery363aはPrPSc蓄積を35%低下させ、sery383はPrPSc蓄積を30%低下させた。
Sery363aは、PETイメージング用の診断トレーサーとして使用するために必要な同位体標識に好適なanle138b修飾体を提供するので、これを合成してこれらの実験に用いた。
【0240】
Sery383、ならびに−NH2基およびハロゲン原子を含む構造類似化合物はアルファ−シヌクレイン凝集の阻害について高活性であることが認められたので、この化合物をこのアッセイに用いた(実施例16、“種々の化合物によるα−シヌクレイン凝集物形成の阻害”を参照)。
【0241】
これらの実験の結果は、両化合物とも血液−脳−関門を通過することができ、かつ病的タンパク質凝集物と相互作用しうることの指標となる;これは、これらの化合物が療法化合物および診断用化合物としての使用に利用できる特性をもつことを示す。
【0242】
実施例11:anle138bによる1日1回の処置がRMLスクレイピー感染したマウスにおいてPrPSc蓄積およびプリオン病理に及ぼす影響
C57BL/6マウスに30μLの1%脳ホモジェネート(RMLスクレイピー)を脳内(i.c.)接種した。感染後それぞれ80日目または120日目に、1日当たり5mgの化合物をDMSO+ピーナツバターと混合して経口適用する処置を開始した(図10)。
【0243】
PrPScについて染色した脳切片(図10A)は、anle138b処置がDMSO処置動物と比較してPrPSc蓄積を低下させることを示す。プリオン接種マウスの脳ホモジェネートにおける種々の時点のPrPScレベルの定量は、疾患の後期(感染後120日目;図10B)に処置を開始した後ですら、anle138b処置マウスにおけるPrPSc蓄積が強く低下することを示す。H&E染色した脳切片の小脳におけるアポトーシス細胞の組織学的定量は、PrPSc蓄積を阻害すると神経細胞死が阻害されることを示す(図10C)。化合物を含まないDMSO+ピーナツバターで処置した対照マウスは体重漸減を示す(図10D)。感染後80日目からのanle138bによる処置は、体重減少を約100日間阻止する。感染後120日目からの処置は、体重減少を約70日間阻害する。
【0244】
これらの実験所見は、疾患の明瞭な徴候が存在した後に処置を開始した場合ですら、化合物処置がPrPSc蓄積、神経細胞死、および疾患の臨床徴候の進行を阻害することの指標となる。
【0245】
実施例12:種々の処置プロトコルの比較
C57BL/6マウスに30μLの1%脳ホモジェネート(RMLスクレイピー)を脳内(i.c.)接種した。種々の時点および計画でのanle138bによる処置(図11の図面凡例中に示す)が、RMLスクレイピー攻撃後の生存時間を有意に延長した(p<0,01)。平均生存時間を日数±標準偏差で表わす。
【0246】
図11に示すように、これらの実験所見は、i)化合物処置が化合物の経口適用によっても有効であること、ii)処置が疾患の臨床後期に開始した場合ですら同様に有効であること、およびiii)処置が長いほど生存が長くなることの指標となる。
【0247】
実施例13:anle138b投与が脳のPrPScレベルに及ぼす用量依存性作用
C57BL/6マウスに30μLの1%脳ホモジェネート(RMLスクレイピー)を脳内(i.c.)接種した。感染後80日目目に、種々の量のanle138b(図12に示す)をDMSO+ピーナツバターと混合して経口適用する処置を開始した。感染後120日目に動物を屠殺し、脳のPrPSc量を感染後80日目目に屠殺した動物と比較して定量した。
【0248】

図12に提示するデータは、anle138bが用量依存性で脳のPrPSc蓄積を低下させたことを示す。
【0249】
実施例14:DMSO+ピーナツバターと混合した1日当たり1mgのanle138bで1週間処置した非感染マウスからの脳組織のイムノブロット法によるPrPの定量。図13に示すように、対照マウスと比較して、anle138bで処置したマウスにPrPレベルの低下はみられなかった。
【0250】
これらの実験所見は、スクレイピー感染マウスにおける療法効果がPrPの発現低下によるものではなく、病的に凝集したタンパク質種の形成を阻害することによるものであることの指標となる。
【0251】
実施例15:anle138bの薬物動態分析
図14に示すように、1回量のanle138bを非感染C57BL/6マウスに適用した。適用後、種々の時点で、脳および血清中の化合物量を各時点および各験グループ当たり2匹の動物についてLC−MSにより測定した。
【0252】
これらの実験所見は、経口による良好な生物学的利用能および良好な脳透過があることの指標となる。anle138cがマウスの血液中に検出され、したがってそれはanle138bの代謝産物であると推定される。
【0253】
実施例16:種々の化合物によるα−シヌクレイン凝集物の形成阻害
α−シヌクレインの凝集をDMSOおよび10μM FeClにより誘導し、共焦点単分子分光法により分析した;Kostka et al. (J Biol Chem (2008) 283: 10992-11003)の記載に従う。表2に示すように、10μMの濃度で添加した種々の化合物が中間体IIオリゴマーの形成作用に及ぼす作用を、化合物なしの対照と比較して調べた。各化合物の構造を図15に示す。
【0254】
【表2】

【0255】
表2:種々の化合物によるα−シヌクレイン凝集物の形成阻害

これらの実験所見は、これらの化合物が有毒なα−シヌクレイン凝集物の形成を阻害することの指標となる;これは、これらの構造関連化合物がタンパク質凝集を伴うタンパク質疾患の処置、特にα−シヌクレインの凝集がみられる疾患の処置に使用できる可能性をもつことの指標となる。
【0256】
実施例16:パーキンソン病のインビボマウスモデルにおける化合物の作用
実験による証拠は、ミトコンドリア毒素、たとえばMPTPおよびロテノン(rotenone)を適切な濃度で用いたパーキンソン病の実験モデルにおいて、凝集したα−シヌクレインの形成がみられ、これが神経細胞死に関係することを示唆する。MPTP(30mg/kg体重、1日1回)を1〜5日目に腹腔内注射することによりマウスを処理して、黒質のドーパミン作動性ニューロンの変性を誘発した。動物(実験グループ当たり3〜10匹)を種々の化合物またはビヒクルで処置した(250mg/kg体重、1日1回、経口適用(487,5μlのオリーブ油と混合した12,5μlのDMSO中の化合物をチューブ供給)、0〜12日目)。非−MPTP処理マウス(対照;0%の細胞死と規定)、およびビヒクルのみで処置したMPTP処理マウス(DMSO;100%の細胞死と規定)と比較したニューロン損失を、12日目に定量した。チロシンヒドロキシラーゼ(TH)陽性の緻密骨質部黒質細胞(substantia nigra pars compacta)(SNpc)細胞の定量のために、50μmの切片を抗TH抗体で免疫染色した。SNpcの2つ目毎の切片をStereo investigatorソフトウェア(MicroBrightfield、米国バーモント州コルチェスター)により分析した。免疫染色された細胞を光学分画法により20×対物レンズを用いて計数した。2人の独立した研究者がブラインド法で立体解析学的計数を行なった。
【0257】
図16に示す実験所見は、被験化合物がパーキンソン病のインビボモデルにおいて細胞死を減少させることの指標となる。

実施例17:anle138cがABeta凝集に及ぼす作用
Abeta40を50μMの濃度で下記の条件下に30時間インキュベートした:50mMリン酸ナトリウム、50mM塩化ナトリウム、0.01%ナトリウムアジド、pH7.4、37℃、細い磁気撹拌バーで撹拌、50μMのanle138cを含むもの、または含まないもの。DMSOを被験試料のものと等しい濃度で対照試料に添加した。DMSO濃度は2%(vol/vol)であり、anle138Cの原液は3mMであった。DLS実験の前にペプチド溶液を16000gで15分間遠心した。
【0258】
モノマー状Abeta40の最大ピークは約1.5nmの流体力学的半径および約30nmのオリゴマーピークに対応する(上パネル)が、anle138Cの存在下における凝集状態のAbeta40(中パネル)はモノマーピークのほかに20nm付近にオリゴマーピークを示した。下パネルは、試料を遠心した後に測定したアミロイドフィブリル状のAbeta40に関するサイズ分布を示す。ABeta凝集を動的光散乱により分析した。DLS測定を二重試験として25℃でDynaPro Titan(Wyatt Technology Corp.、カリフォルニア州)計測器により827.08nmのレーザーを用いて実施した。散乱角度は90°であった。DLS測定は、10秒間、20回の取得からなっていた。溶液の屈折率(RI)を589nmおよび20℃で1.333に設定し、試験波長におけるRIをCauchy方程式により係数3119nmで求めた。粘度は20℃で1.019cpであり、温度依存性変動を水溶液モデルにより計算した。サイズ分布を制約条件付き正規化法(constrained regularization method)により測定した。
【0259】
図17に示すこれらの実験所見は、anle138cが大型Abetaオリゴマーの形成を阻害することの指標となる;これは、anle138cおよび関連化合物がABetaの凝集をも妨げることができ、凝集したABetaの沈着が神経病理学的特徴であるアルツハイマー病などの疾患に療法および診断の目的で使用できることの指標である。
【0260】
本発明化合物の別態様を下記の項目にまとめる。これらの化合物を前記の本発明化合物と同じ方法で使用できる:
1.式(1)により表わされる化合物
【0261】
【化26】

【0262】
[式中:
X、YおよびLは、独立して、方向性なしに−C(R11)(R12)−、−C(R13)=、−N(R14)−、−N=、−N(R17)=、−O−および−S−から選択され;
MおよびZは、独立して、方向性なしに
【0263】
【化27】

【0264】
から選択され;
−−−−は、場合により二重結合を表わし;
R1〜R15またはR17またはR18は、独立して水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、アジド、スルホニル、チオ、ホスホニル、カルボキシ、カルボニルアミド、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、炭素環式基、カルボシクロオキシ、カルボシクロアルキル、カルボシクロアルケニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、複素環式基、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール基、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニルおよびヘテロアリールアルコキシから選択され、あるいは2つの隣接基が連結して1〜6個の炭素原子をもつ架橋基を形成していてもよく、その際、1または2個の炭素原子が−O−、−S−または−N(R’)−により交換されていてもよく、ここでR’はHおよびC1−4アルキルから選択され;それはそれぞれ場合により置換されていてもよい]
およびそのプロドラッグ、エステル、溶媒和物または塩;
ただし、化合物は下記の化合物(a)、(b)または(c)ではない。
【0265】
【化28】

【0266】
2.環Aが下記の構造から選択される、項目1による化合物:
【0267】
【化29】

【0268】
3.R7がハロ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、アジド、アルコキシ、チオ、アルキルチオ、アミノ、ハロアルコキシ、アルキルまたはハロアルキルである、項目1または2による化合物。
【0269】
4.R2およびR3がそれぞれ独立してヒドロキシおよびC1−6アルコキシから選択され;あるいはR2とR3が一緒に構造−O−(CH−O−を形成し、ここでnは1〜3であり、好ましくはnは1である、項目1〜3のいずれかによる化合物。
【0270】
5.タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患の治療または予防に使用するための、式(1)により表わされる化合物
【0271】
【化30】

【0272】
[式中:
X、YおよびLは、独立して、方向性なしに−C(R11)(R12)−、−C(R13)=、−N(R14)−、−N=、−N(R17)=、−O−および−S−から選択され;
MおよびZは、独立して、方向性なしに
【0273】
【化31】

【0274】
から選択され;
−−−−は、場合により二重結合を表わし;
R1〜R15またはR17またはR18は、独立して水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、アジド、スルホニル、チオ、ホスホニル、カルボキシ、カルボニルアミド、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、炭素環式基、カルボシクロオキシ、カルボシクロアルキル、カルボシクロアルケニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、複素環式基、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール基、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニルおよびヘテロアリールアルコキシから選択され、あるいは2つの隣接基が連結して1〜6個の炭素原子をもつ架橋基を形成していてもよく、その際、1または2個の炭素原子が−O−、−S−または−N(R’)−により交換されていてもよく、ここでR’はHおよびC1−4アルキルから選択され;それはそれぞれ場合により置換されていてもよい]
およびそのプロドラッグ、エステル、溶媒和物または塩。
【0275】
6.タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患を治療または予防する医薬組成物の調製のための、項目5に定めた式(1)により表わされる化合物の使用。
7.タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患を治療または予防する方法であって、療法有効量の項目5に定めた式(1)により表わされる化合物をその必要がある患者に投与することを含む方法。
【0276】
8.タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患に関係するタンパク質の凝集を阻害するための化合物を同定する方法であって、下記の段階を含む方法:
標識したモノマー状タンパク質と差次標識した該タンパク質の凝集物とを、(1)項目5に定めた化合物である凝集阻害薬候補の存在下および/または(2)不存在下で接触させ;
該タンパク質凝集物へのモノマー状タンパク質の結合度を表わす共局在化した標識量を測定し;そして
該化合物の存在下および不存在下で得られた結果を比較し、
その際、該化合物の存在下での共局在化した標識の減少は、その化合物が該タンパク質の凝集を阻害する能力の指標となる。
【0277】
9.標識が蛍光標識である、項目8の方法。
10.標識が、該タンパク質に特異的に結合する抗体または抗体フラグメントに結合している、項目8または9の方法。
【0278】
11.抗体または抗体フラグメントが、凝集したタンパク質とモノマー状タンパク質を識別できる、項目10の方法。
12.共局在化した標識の量を、“scanning for intensely fluorescent targets(SIFT)”または蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)または高分解能共焦点イメージングの方法を用いて測定する、項目8〜11のいずれかの方法。
【0279】
13.モノマー状タンパク質および凝集したタンパク質が、プリオンタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、アルファ−シヌクレイン、スーパーオキシドジスムターゼ、タウ、免疫グロブリン、アミロイド−A、トランスチレチン、ベータ2−ミクログロブリン、シスタチンC、アポリポタンパク質A1、TDP−43、ランゲルハンス島アミロイドポリペプチド、ANF、ゲルゾリン、インスリン、リゾチーム、フィブリノーゲン、ハンチンチンおよびアタキシン、ならびにポリ−Qストレッチを含む他のタンパク質、ならびにそれらのタンパク質のフラグメントまたは誘導体からなる群から選択される、項目8〜12のいずれかの方法。
【0280】
14.モノマー状タンパク質がプリオンタンパク質であり、凝集したタンパク質がPrPScである、項目13の方法。
15.モノマー状タンパク質がアルファ−シヌクレインであり、凝集したタンパク質がアルファ−シヌクレインのオリゴマーまたはプロトフィブリルまたはフィブリルからなる群から選択される、項目13の方法。
【0281】
16.タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患の治療または予防においてインビボ効力をもつ化合物を選択する方法であって、下記を含む方法:
(a)項目5に定めた候補化合物を、項目13〜15のいずれかに定めたタンパク質の凝集性イソ型をもつ細胞培養物またはヒト以外の動物に投与し;
(b)観察可能な凝集物の量を定量し;そして
(c)該タンパク質の凝集物もしくは凝集物形成を低下させることができるか、または細胞培養物またはヒト以外の動物の生存時間を延長することができる化合物を、同定および選択する。
【0282】
17.インビトロで、動物において、またはエクスビボで、タンパク質凝集を阻害するための、項目5に定めた化合物の使用。
18.項目5に定めた化合物、および場合により医薬的に許容できるキャリヤーを含む、医薬組成物または診断用組成物。
【0283】
19.化合物が下記からなる群から選択される、項目1もしくは5のいずれかによる化合物、または項目6の使用、または項目7〜16のいずれかによる方法、または項目17による使用、または項目18による組成物:
【0284】
【化32】

【0285】
[式中、R16は、それぞれ独立してHおよびC1−4アルキルから選択され;あるいは2個の隣接するR16基が連結して1〜3個の炭素原子をもつ架橋基を形成していてもよい]
およびそのプロドラッグ、エステル、溶媒和物または塩。
【0286】
20.化合物が検出可能な状態に標識されている、項目16もしくは19のいずれかによる方法、または項目17もしくは19のいずれかによる使用、または項目18もしくは19のいずれかによる診断用組成物。
【0287】
21.2種類以上の化合物を同時に使用する、項目16、19〜20のいずれかによる方法、または項目17、19〜20のいずれかによる使用。
22.タンパク質凝集に関連する疾患が凝集形態の少なくとも1種類のタンパク質またはそのフラグメントもしくは誘導体の存在を特徴とし、その際、タンパク質が、プリオンタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、アルファ−シヌクレイン、スーパーオキシドジスムターゼ、タウ、免疫グロブリン、アミロイド−A、トランスチレチン、ベータ2−ミクログロブリン、シスタチンC、アポリポタンパク質A1、TDP−43、ランゲルハンス島アミロイドポリペプチド、ANF、ゲルゾリン、インスリン、リゾチーム、フィブリノーゲン、ハンチンチンおよびアタキシン、ならびにポリ−Qストレッチを含む他のタンパク質からなる群から選択される、項目5または19のいずれかによる化合物。
【0288】
23.疾患が、アルツハイマー病、プリオン病、パーキンソン病、多系統萎縮症、散在性レーヴィ体病、前頭側頭性認知症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、脊髄小脳性運動失調、および他のポリ−Q疾患、遺伝性脳アミロイド血管障害、家族性アミロイド多発性神経障害、原発性全身性アミロイド症(ALアミロイド症)、反応性全身性アミロイド症(AAアミロイド症)、II型糖尿病、注射局在性アミロイド症、ベータ−2ミクログロブリン性アミロイド症、遺伝性非神経障害性性アミロイド症、およびフィンランド遺伝性全身性アミロイド症からなる群から選択される、項目5、19または22のいずれかによる化合物。
【0289】
24.プリオン病が、クロイツフェルト−ヤコブ病、変型クロイツフェルト−ヤコブ病、遺伝性ヒトプリオン病、ウシ海綿状脳症(BSE)およびスクレイピーから選択される項目23の化合物。
【0290】
25.項目5および18〜24のいずれかに定めた化合物、ならびにさらに、該化合物に特異的に結合する抗体もしくは抗体フラグメント;および/または項目13〜15に定めたモノマー状タンパク質もしくは凝集したタンパク質;および/または場合により該化合物と複合体を形成した項目13〜15に定めたモノマー状タンパク質もしくは凝集したタンパク質;ならびに使用のための指示を、1以上の容器内に含むキット。
【0291】
本明細書中で用いる用語“ハロ”は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択されるハロゲン原子、好ましくは臭素を表わす。
本明細書中で用いる用語“カルボキシ”は、基−COOHを表わす。
【0292】
用語“アルキル”および“alk”は、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子を含む、直鎖または分枝鎖アルカン(炭化水素)基を表わす。そのような基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0293】
用語“アルケニル”は、2〜12個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子、および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、直鎖または分枝鎖炭化水素基を表わす。そのような基の例には、エテニルまたはアリルが含まれる。
【0294】
用語“アルキニル”は、2〜12個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子、および少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む、直鎖または分枝鎖炭化水素基を表わす。そのような基の例には、エチニルが含まれる。
【0295】
用語“アルコキシ”は、前記のアルキル基が酸素結合(−O−)により結合したものを表わす。
本発明によれば“アシル基”は、アルキル、アリール、複素環式基またはヘテロアリールがカルボニル基に結合した官能基である。アシル基の例は、ホルミル基;C1−6アルキル−カルボニル基、たとえばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基およびピバロイル基;C2−6アルケニル−カルボニル基、たとえばエテノイル基、プロペノイル基およびブテノイル基;アロイル基、たとえばベンゾイル基など、好ましくはアセチル基である。
【0296】
本明細書中で用いる用語“アシルオキシ”は、−O−に結合したアシル基を表わす。同様に、“アシルアミノ”は−N(R”)−に結合したアシル基であり、ここでR”はHまたはC1−6アルキルである。
【0297】
用語“炭素環式基”は、1〜4つの環、好ましくは1つの環、および環当たり3〜8個の炭素原子を含む、完全飽和環式炭化水素基を表わす。そのような基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれる。
【0298】
用語“カルボシクロオキシ”は、前記の炭素環式基が酸素結合(−O−)により結合したものを表わす。
用語“カルボシクロアルキル”は、炭素環式基で置換されたアルキル基を表わし、その際、炭素環式基およびアルキルは前記に概説したものとして定義される。
【0299】
用語“カルボシクロアルケニル”は、炭素環式基で置換されたアルケニル基を表わし、その際、炭素環式基およびアルケニルは前記に概説したものとして定義される。
用語“アリール”は、6〜20個、好ましくは6〜10個の主鎖炭素原子を含み、1〜3つの芳香環をもつ環式芳香族炭化水素基、特に単環式または二環式の基、たとえばフェニル、ビフェニルまたはナフチルを表わす。2以上の芳香環をもつ場合(二環式など)、アリール基の芳香環は1点で連結していてもよく(たとえばビフェニル)、あるいは縮合していてもよい(たとえばナフチル、フェナントレニルなど)。
【0300】
用語“アリールアルキル”は、アリール基で置換されたアルキル基を表わし、その際、アリールおよびアルキルは前記に概説したものとして定義される。
用語“アリールアルケニル”は、アリール基で置換されたアルケニル基を表わし、その際、アリールおよびアルケニルは前記に概説したものとして定義される。
【0301】
用語“アリールアルキニル”は、アリール基で置換されたアルキニル基を表わし、その際、アリールおよびアルキニルは前記に概説したものとして定義される。
用語“アリールオキシ”は、前記のアリール基が酸素結合(−O−)により結合したもの、たとえばフェノキシ基、アントリルオキシ基、ビフェニリルオキシ基など、好ましくはフェノキシ基を表わす。
【0302】
用語“アリールアルコキシ”は、アリール基で置換されたアルコキシ基を表わし、その際、アリールおよびアルコキシは前記に概説したものとして定義される。
用語“複素環式基”は、完全飽和または部分不飽和もしくは完全不飽和の環式基(たとえば3〜7員単環式、7〜11員二環式、または10〜16員三環式の環系)であって、少なくとも1つの炭素原子含有環中に少なくとも1個のヘテロ原子をもつものを表わす。ヘテロ原子を含む複素環式基の各環は、窒素原子、酸素原子および/または硫黄原子から選択される1、2、3または4個のヘテロ原子をもつことができ、その際、窒素および硫黄ヘテロ原子は場合により酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は四級化していてもよい(用語“ヘテロアリリウム”は、第四級窒素原子をもち、したがって陽電荷をもつ、ヘテロアリール基を表わす)。複素環式基は、分子の残りの部分に、環または環系のヘテロ原子または炭素原子のいずれにおいて結合していてもよい。単環式複素環式基の例には下記のものが含まれる:エチレンオキシド、アゼチジニル、ピロリジニル、ピロリル、ピラゾリル、オキセタニル、ピラゾリニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、イソチアゾリジニル、フリル、テトラヒドロフリル、チエニル、オキサジアゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロロジニル、2−オキソアゼピニル、アゼピニル、ヘキサヒドロジアゼピニル、4−ピペリドニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、1,3−ジオキソランおよびテトラヒドロ−1,1−ジオキソチエニルなど。二環式複素環式基の例には下記のものが含まれる:インドリル、イソインドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチエニル、キヌクリジニル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリジニル、ベンゾフリル、ベンゾフラザニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、シンノリニル、キノキサリニル、インダゾリル、ピロロピリジル、フロピリジニル(たとえばフロ[2,3−c]ピリジニル、フロ[3,2−b]ピリジニル]またはフロ[2,3−b]ピリジニル)、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロジオキシドベンゾチオフェニル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロキナゾリニル(たとえば3,4−ジヒドロ−4−オキソ−キナゾリニル)、トリアジニルアゼピニル、テトラヒドロキノリニルなど。三環式複素環式基の例には下記のものが含まれる:カルバゾリル、ベンジドリル、フェナントロリニル、ジベンゾフラニル、アクリジニル、フェナントリジニル、キサンテニルなど。
【0303】
用語“ヘテロシクロオキシ”は、前記の複素環式基が酸素結合(−O−)により結合したものを表わす。
用語“ヘテロシクロアルキル”は、複素環式基で置換されたアルキル基を表わし、その際、複素環式基およびアルキルは前記に概説したものとして定義される。
【0304】
本明細書中で用いる用語“ヘテロアリール”は、ヘテロ原子として酸素、硫黄および/または窒素を含む5〜6員芳香環を表わし、それにさらに芳香環が縮合していてもよい。ヘテロアリール基の例は下記のものであるが、それらは限定ではない:ベンゾフラニル、フリル、チエニル、ベンゾチエニル、チアゾリル、インダゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、ピラニル、テトラヒドロピラニル、ピラゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、プリニル、カルバゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾアミダゾリル、インドリル、イソインドリル、ピラジニル、ジアジニル、ピラジン、トリアジニルトリアジン、テトラジニル、テトラゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾピリジルおよびベンゾインダゾリル。
【0305】
用語“ヘテロアリールオキシ”は、前記のヘテロアリール基が酸素結合(−O−)により結合したものを表わす。
用語“ヘテロアリールアルキル”、“ヘテロアリールアルケニル”、および“ヘテロアリールアルキニル”は、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基がヘテロアリール基で置換された基を表わし、その際、ヘテロアリール、ならびにアルキル、アルケニルおよびアルキニルは前記に概説したものとして定義される。
【0306】
用語“ヘテロアリールアルコキシ”は、ヘテロアリール基で置換されたアルコキシ基を表わし、その際、ヘテロアリールおよびアルコキシは前記に概説したものとして定義される。
【0307】
本明細書中で用いる“置換された”は、いずれか可能な結合位置で1個以上の置換基、好ましくは1〜4個の置換基で置換された基を表わす。置換基の例には、下記の基のうち1以上が含まれるが、これらに限定されない:アルキル、アルコキシ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ(すなわち−COOH)、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アミノ(すなわち−NH)、チオールおよびニトロ。
【0308】
好ましい他の態様において、R1は水素およびアルキルからなる群から選択され、より好ましくは水素である。
好ましい他の態様において、R2はヒドロキシおよびアルコキシからなる群から選択される。
【0309】
好ましい他の態様において、R3はヒドロキシおよびアルコキシからなる群から選択される。
好ましい他の態様において、R2とR3は一緒に連結して構造−O−(CH−O−を形成し、ここでnは1〜3であり、好ましくはnは1である。
【0310】
好ましい他の態様において、R4は水素、ヒドロキシおよびアルコキシからなる群から選択され、より好ましくは水素である。
好ましい他の態様において、R5は水素およびアルキルからなる群から選択され、より好ましくは水素である。
【0311】
好ましい他の態様において、R6は水素およびアルキルからなる群から選択され、より好ましくは水素である。
好ましい他の態様において、R7は水素、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシおよびアルコキシからなる群から選択され、より好ましくはR7は水素、ハロ、ヒドロキシまたはアルコキシであり、よりさらに好ましくはR7はハロである。
【0312】
好ましい他の態様において、R8は水素、ヒドロキシおよびアルコキシからなる群から選択される。
好ましい他の態様において、R9は水素、ハロ、ヒドロキシおよびアルコキシからなる群から選択される。
【0313】

好ましい他の態様において、R10は水素およびアルキルからなる群から選択され、より好ましくは水素である。
【0314】
好ましい他の態様において、R11は水素およびアルキルからなる群から選択される。
好ましい他の態様において、R12は水素およびアルキルからなる群から選択される。
好ましい他の態様において、R13は水素およびアルキルからなる群から選択される。
【0315】
好ましい他の態様において、R14は水素およびアルキルからなる群から選択される。
好ましい他の態様において、R15は水素およびアルキルからなる群から選択される。
本発明化合物の他の好ましい態様において、R7はハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロ、アジド、アルコキシ、チオ、アルキルチオ、アミノ、ハロアルコキシ、アルキルまたはハロアルキルである。
【0316】
好ましい他の態様において、R7はハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロ、より好ましくはハロである。
さらに好ましい他の態様において、R2およびR3はそれぞれ独立してヒドロキシおよびC1−6アルコキシから選択され;あるいはR2とR3は一緒に構造−O−(CH−O−を形成し、ここでnは1〜3であり、好ましくはnは1である。
【0317】
好ましい他の態様において、化合物は下記からなる群から選択される:
【0318】
【化33】

【0319】
[式中、R16は、それぞれ独立してHおよびC1−4アルキルから選択され;あるいは2個の隣接するR16基が連結して1〜3個の炭素原子をもつ架橋基を形成していてもよい]
およびそのプロドラッグ、エステル、溶媒和物または塩。
【0320】
より好ましい他の態様において、化合物は下記からなる群から選択される:
【0321】
【化34】

【0322】
3−(4−ヒドロキシフェニル)−5−(3,4−ジヒドロキシフェニル)イソオキサゾール
【0323】
【化35】

【0324】
3,5−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)ピラゾール
【0325】
【化36】

【0326】
5−(3−ブロモフェニル)−3−(3,4−メチレンジオキシフェニル)ピラゾール
【0327】
【化37】

【0328】
5−(3−フルオロフェニル)−3−(3,4−メチレンジオキシフェニル)ピラゾール
【0329】
【化38】

【0330】
3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−5−(3−フルオロフェニル)ピラゾール
【0331】
【化39】

【0332】
2,4−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)イミダゾール臭化水素酸塩
【0333】
【化40】

【0334】
3−(3,4−ジメトキシフェニル)−5−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ピラゾール
【0335】
【化41】

【0336】
5−(3,5−ジブロモフェニル)−3−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)ピラゾール臭化水素酸塩
【0337】
【化42】

【0338】
5−(3−フェニル)−3−(2−ヒドロキシフェニル)ピラゾール(10353_F11)
前記の別態様の化合物は検出可能な状態に標識されていてもよい。
【0339】
【表3−1】

【0340】
【表3−2】

【0341】
【表3−3】

【0342】
【表3−4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(E)により表わされる化合物
【化1】

[式中:
X、YおよびLは、独立して、方向性なしに−C(R)(R)−、−C(R)=、−N(R)−、−N=、−N(R)=、−O−および−S−から選択され;
MおよびZは、独立して、方向性なしに
【化2】

から選択され;
−−−−は、場合により二重結合を表わし;
、R、R、R、R、RおよびRは、独立して、水素;C1−4アルキル;−C1−4アルキレン−ハロゲン;−C1−4アルキレン−OH;−C1−4アルキレン−C1−4アルコキシ;−C(O)−C1−4アルキル;およびC6−10アリールから選択され、その際、アリール環は場合によりC1−4アルキルまたはハロゲンにより置換されていてもよく;
Halは、F、Cl、Br、およびIから選択され;
E1は、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、および−NRE5E6から選択され;
E2は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、および−NRE5E6から選択され;あるいは
E1とRE2が隣接炭素原子に結合している場合、RE1とRE2は一緒に、方向性なしに、構造−T−(CRE7E8−V−(TはCRE9E10、NHおよびOから選択され、VはCRE9E10、NHおよびOから選択される)、および二重結合が存在する対応する構造を形成することができ;
E5およびRE6は、独立して水素およびC1−6アルキルから選択され;
E7およびRE8は、独立してHまたはFであり;
E9およびRE10は、独立してHまたはFであり;
nは、1〜3であり;
E3は、C1−6アルキル基またはC5−10アリール基であり;
mは、0〜2であり;
E4は、ハロゲン原子、C1−6アルキル基またはC5−10アリール基であり;
pは、0〜2である]
および式(E)により表わされる化合物のプロドラッグ、エステル、溶媒和物または塩;
ただし、下記の化合物を除外する:
3(5)−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5(3)−(4−クロロフェニル)ピラゾール;
オルト−ヒドロキシフェニル−5 ジクロロ−3’−4’ フェニル−3 メチル−2 ピラゾール;
オルト−ヒドロキシフェニル−5 ジクロロ−3’−4’ フェニル−3 フェニル−2 ピラゾール;
【化3】

【請求項2】
式(E)により表わされる化合物が式(A)または(B)により表わされる化合物である、請求項1に記載の化合物:
【化4】

[式中:
m、n、p、T、V、X、Y、L、M、Z、R、R、R、R、R、R、R、RE7、RE8およびHalは、請求項1に定めたものであり;
式(A)において:
A1およびRA2は、それぞれ独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、および−NRA5A6から選択され;または
ただし、RA1およびRA2のうち少なくとも一方はヒドロキシ、C1−6アルコキシ、または−NRA5A6であり;
あるいは、RA1とRA2は一緒に、方向性なしに、構造−T−(CRE7E8−V−を形成することができ;
A3は、C1−6アルキル基またはC5−10アリール基であり;
A4は、ハロゲン原子、C1−6アルキル基またはC5−10アリール基であり;
A5およびRA6は、独立して水素およびC1−6アルキルから選択され;
式(B)において:
B1は、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、および−NRB5B6から選択され;
B2は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ;および−NRB5B6から選択され;
B3は、C1−6アルキル基またはC5−10アリール基であり;
B4は、ハロゲン原子、C1−6アルキル基またはC5−10アリール基であり;
B5およびRB6は、独立して水素およびC1−6アルキルから選択される]
および式(A)または(B)により表わされる化合物のプロドラッグ、エステル、溶媒和物または塩。
【請求項3】
環Dが方向性をもって下記の構造から選択される化合物である、請求項1または2に記載の化合物:
【化5】

[式中:
およびRは、水素;C1−4アルキル;−C1−4アルキレン−ハロゲン;およびC6−10アリールから選択され、その際、アリール環は場合によりC1−4アルキルまたはハロゲンにより置換されていてもよい]。
【請求項4】
環Dが方向性をもって下記の構造から選択される化合物である、請求項3に記載の化合物:
【化6】

[式中:
は請求項3に定めたものであり;
は、Hである]。
【請求項5】
化合物が下記からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物:
【化7】

[式中:
Rは、水素;C1−4アルキル;および−C1−4アルキレン−ハロゲンから選択され;
Halは、F、Cl、Br、およびIから選択され;
E7およびRE8は、独立してHまたはFであり;
A7は、HまたはC1−4アルキルであり;
A8は、HまたはC1−4アルキルであり;
A9は、HまたはC1−4アルキルであり;
A10は、HまたはC1−4アルキルであり;
B7は、HまたはC1−4アルキルである]
およびこれらの化合物のプロドラッグ、エステル、溶媒和物または塩。
【請求項6】
化合物が下記からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物:
【化8】

[式中:
Halは、ClまたはBrである]
およびこれらの化合物のプロドラッグ、エステル、溶媒和物または塩。
【請求項7】
化合物が検出可能な状態に標識されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物および場合により医薬的に許容できるキャリヤーを含む、医薬組成物または診断用組成物。
【請求項9】
タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患の治療または予防に使用するための、式(E)により表わされる化合物
【化9】

[式中:
X、YおよびLは、独立して、方向性なしに−C(R)(R)−、−C(R)=、−N(R)−、−N=、−N(R)=、−O−および−S−から選択され;
MおよびZは、独立して、方向性なしに
【化10】

から選択され;
−−−−は、場合により二重結合を表わし;
、R、R、R、R、RおよびRは、独立して、水素;C1−4アルキル;−C1−4アルキレン−ハロゲン;−C1−4アルキレン−OH;−C1−4アルキレン−C1−4アルコキシ;−C(O)−C1−4アルキル;およびC6−10アリールから選択され、その際、アリール環は場合によりC1−4アルキルまたはハロゲンにより置換されていてもよく;
Halは、F、Cl、Br、およびIから選択され;
E1は、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、および−NRE5E6から選択され;
E2は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、および−NRE5E6から選択され;あるいは
E1とRE2が隣接炭素原子に結合している場合、RE1とRE2は一緒に、方向性なしに、構造−T−(CRE7E8−V−(TはCRE9E10、NHおよびOから選択され、VはCRE9E10、NHおよびOから選択される)、および二重結合が存在する対応する構造を形成することができ;
E5およびRE6は、独立して水素およびC1−6アルキルから選択され;
E7およびRE8は、独立してHまたはFであり;
E9およびRE10は、独立してHまたはFであり;
nは、1〜3であり;
E3は、C1−6アルキル基またはC5−10アリール基であり;
mは、0〜2であり;
E4は、ハロゲン原子、C1−6アルキル基またはC5−10アリール基であり;
pは、0〜2である]
および式(E)により表わされる化合物のプロドラッグ、エステル、溶媒和物または塩。
【請求項10】
タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患を治療または予防する医薬組成物の調製のための、請求項9に記載の化合物の使用。
【請求項11】
タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患を治療または予防する方法であって、療法有効量の請求項9に記載の化合物をその必要がある患者に投与することを含む方法。
【請求項12】
タンパク質凝集関連の疾患が凝集形態の少なくとも1種類のタンパク質またはそのフラグメントもしくは誘導体の存在を特徴とし、その際、タンパク質がプリオンタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、アルファ−シヌクレイン、スーパーオキシドジスムターゼ、タウ、免疫グロブリン、アミロイド−A、トランスチレチン、ベータ2−ミクログロブリン、シスタチンC、アポリポタンパク質A1、TDP−43、ランゲルハンス島アミロイドポリペプチド、ANF、ゲルゾリン、インスリン、リゾチーム、フィブリノーゲン、ハンチンチンおよびアタキシン、ならびにポリ−Qストレッチを含む他のタンパク質からなる群から選択される、請求項9に記載の化合物、請求項10に記載の使用、または請求項11に記載の方法。
【請求項13】
疾患が、パーキンソン病、プリオン病、アルツハイマー病、多系統萎縮症、散在性レーヴィ体病、前頭側頭性認知症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、脊髄小脳性運動失調、および他のポリ−Q疾患、遺伝性脳アミロイド血管障害、家族性アミロイド多発性神経障害、原発性全身性アミロイド症(ALアミロイド症)、反応性全身性アミロイド症(AAアミロイド症)、II型糖尿病、注射局在性アミロイド症、ベータ−2ミクログロブリン性アミロイド症、遺伝性非神経障害性性アミロイド症、およびフィンランド遺伝性全身性アミロイド症からなる群から選択される、請求項9に記載の化合物、請求項10に記載の使用、または請求項11に記載の方法。
【請求項14】
プリオン病が、クロイツフェルト−ヤコブ病、変型クロイツフェルト−ヤコブ病、遺伝性ヒトプリオン病、ウシ海綿状脳症(BSE)およびスクレイピーから選択される、請求項9に記載の化合物、請求項10に記載の使用、または請求項11に記載の方法。
【請求項15】
インビトロ、動物内、またはエクスビボでのタンパク質凝集を阻害するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項16】
請求項9に記載の化合物、ならびにさらに、該化合物に特異的に結合する抗体もしくは抗体フラグメント;および/または請求項12に記載のモノマー状タンパク質もしくは凝集したタンパク質;および/または場合により該化合物と複合体を形成した請求項12に記載のモノマー状タンパク質もしくは凝集したタンパク質;ならびに使用のための指示を、1以上の容器内に含むキット。
【請求項17】
凝集したタンパク質の沈着物をイメージングする方法であって、
(i)検出可能な状態に標識された請求項9に記載の化合物を含む検出可能な量の組成物を対象に導入し;
(ii)該化合物が凝集したタンパク質と会合するのに十分な時間を置き;そして
(iii)凝集したタンパク質と会合した化合物を検出する
段階を含む方法。
【請求項18】
検出可能な状態に標識された請求項9に記載の化合物を調製するためのキットであって、反応した際に請求項9に記載の化合物[X、YおよびLのうち少なくとも1つは−N(R)−であり、Rは検出可能な標識を含む]を形成する少なくとも2種類の前駆化合物を含むキット。
【請求項19】
検出可能な標識が、18F、11C、125I、123I、131I、77Brおよび76Br、特に18Fおよび11Cから選択される、請求項17に記載の方法または請求項18に記載のキット。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図2−7】
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【図2−8】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図3−5】
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【図3−6】
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【図3−7】
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【図3−8】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図15−3】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2011−522810(P2011−522810A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512038(P2011−512038)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004144
【国際公開番号】WO2010/000372
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(506351994)ルートヴィヒ‐マクシミリアンズ‐ウニヴェルジテート・ミュンヘン (5)
【出願人】(598165611)マックス−プランク−ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ (4)
【Fターム(参考)】