説明

タンパク質糖化抑制剤

【課題】優れたタンパク質糖化抑制能を有するタンパク質糖化抑制剤およびくすみ改善剤を提供する。
【解決手段】フジマメ(学名:Dolichos lablab L.)、パッションフルーツ(学名:Passiflora edulis Sims.)、ギシギシ(学名:Rumex japonicus Houtt.)、オウギヤシ(学名:Borassus flabellifer L.)、ヨウサイ(学名:Ipomea reptans Poir.)及びリュウキュウバライチゴ(学名:Rubus rosaefolius Smith ssp.maximowiczii Focke)の植物体又はその抽出物を含むものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコラーゲン等のタンパク質の糖化を抑制するタンパク質糖化抑制剤に関し、より詳しくは、植物抽出物を有効成分として含むタンパク質糖化抑制剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
糖化(glycation)とは、血中の糖濃度などの影響により、血管や細胞外マトリックス(ECM)に非酵素的且つ非可逆的に糖が結合する現象(メイラード反応)の総称である。近年の研究により、糖化は年齢とともに進行することが分かっており、動脈硬化や水晶体の白濁をはじめ、糖尿病、糖尿病に伴う諸疾患(動脈硬化、白内障、腎臓の機能低下など)、アルツハイマー病などの様々な疾患の原因となることも分かっている。
【0003】
また人間の皮膚は加齢に伴ってタンパク質が糖化して劣化することにより皮膚の状態が低下し、皺,たるみ,くすみ等が生じやすくなる。特に、近年においては、社会生活におけるストレスの影響によって皮膚のタンパク質の糖化が促進されることが問題となっている。
【0004】
このような背景から、タンパク質の糖化を抑制する作用を有する種々の薬剤が提案されている(特許文献1〜6を参照)。しかしながら、今後さらに高齢化やストレスの悪化や生活環境の悪化が進むことも予想されることから、タンパク質の糖化抑制能のさらなる改良が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−131599号公報
【特許文献2】特開2006−28090号公報
【特許文献3】特開2000−309521号公報
【特許文献4】特開2003−300894号公報
【特許文献5】特開2004−217544号公報
【特許文献6】特開2004−217545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにタンパク質の糖化抑制は上記したような疾患や加齢に伴って生じる種々の症状を改善することにかかわっており、この点からもタンパク質の糖化を抑制する物質が求められている。またその中でも近年安全性の観点から、植物等の天然物由来の成分であることが特に求められている。
【0007】
本発明は上記のような従来の事情に対処し、優れたタンパク質糖化抑制能を有し、安全で長期使用によっても副作用がなく、簡便に用いることのできるタンパク質糖化抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、このような現状に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の植物抽出物に優れたタンパク質糖化抑制作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、フジマメ、パッションフルーツ、ギシギシ、オウギヤシ、ヨウサイ、及びリュウキュウバライチゴの植物体又はその抽出物から選ばれる一種又は二種以上を含むことを特徴とするタンパク質糖化抑制剤である。
【0010】
また本発明は、パッションフルーツ、ギシギシ、オウギヤシ、ヨウサイ、及びリュウキュウバライチゴの植物体又はその抽出物から選ばれる一種又は二種以上を含むことを特徴とするくすみ改善剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタンパク質糖化抑制剤は優れたタンパク質の糖化抑制能を有しており、タンパク質糖化作用が関与する種々の症状や疾病、病態等の予防、改善、治療等に用いることができる。特にタンパク質糖化抑制によるしわやくすみの予防、改善に用いることができ、しわ改善剤、くすみ改善剤として用いることが可能である。また、天然物由来の成分を用いていることから、人又は動物に対して内用又は外用しても安全なものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳述する。
本発明のタンパク質糖化抑制剤は、フジマメ、パッションフルーツ、ギシギシ、オウギヤシ、ヨウサイ、及びリュウキュウバライチゴの植物体又はその抽出物のうち少なくとも一つからなる。本発明のタンパク質糖化抑制剤は、優れたタンパク質糖化抑制能を有している。よって、本発明のタンパク質糖化抑制剤は、飲食品(例えばサプリメント、飲料)、医薬品(例えば皮膚外用剤、内服薬)、医薬部外品、又は化粧料の材料として好適である。
【0013】
本発明で用いられるフジマメ(学名:Dolichos lablab L.)は、マメ科フジマメ属の植物である。
フジマメの種子は健胃、解毒薬として脾胃虚弱、下痢、嘔吐、帯下、浮腫などに用いるほか、悪瘡に外用する(牧野和漢薬草大図鑑)。特許第3963972ではその種子抽出物が角層剥離促進作用と肌荒れ改善作用に優れることが記載されている。特開2002−265324では肌荒れ改善が記載され、特開2002−265343ではハリつや改善などの肌の健全化や美白作用が記載されている。特開2008−56576ではフジマメ属を含むマメ科植物から抽出したイソフラボンの発酵物が抗グリケーション作用を有することが記載されている。
【0014】
本発明で用いられるパッションフルーツ(学名:Passiflora edulis Sims.)は、トケイソウ科トケイソウ属の植物である。
特開2001−226219ではその熱水抽出物が肌のハリ、つやを改善するとされ、特開2001−346537では果実外皮を用いた機能性食品が知られている。特開2005−75766ではエンドセリン-1産生抑制剤として、特開2009−102299ではコラーゲン産生促進剤として、特開平7−233044では線維芽細胞増殖促進剤として記載されている。また特開2007−261996ではアクロレイン付加体形成阻害剤として記載されている。
【0015】
本発明で用いられるギシギシ(学名:Rumex japonicus Houtt.)は、タデ科ギシギシ属の植物である。
ギシギシには強い抗菌作用と凝血作用があり、新鮮な根をたむし、疥癬などの皮膚病に外用する。また緩下、健胃作用があり、大黄の代用として緩下剤に用いられることもある(牧野和漢薬草大図鑑)。特開平10−175841ではメラニン生成抑制剤として用いられ、特開2004−359732では抗酸化剤として用いられ、特開2005−8572ではリパーゼ阻害剤として用いられている。
【0016】
本発明で用いられるオウギヤシ(学名:Borassus flabellifer L.)は、ヤシ科オウギヤシ属の植物である。
オウギヤシは、インドネシアでは雌花をKayu Lanangと称し、強精薬とする(世界有用植物事典)。特開2001−220313ではオウギヤシの熱水抽出物がハリ・つやの改善作用があるとされ、特開平10−29928では抗老化剤、コラーゲン産生促進剤に用いられている。
【0017】
本発明で用いられるヨウサイ(学名:Ipomea reptans Poir.)は、ヒルガオ科サツマイモ属の植物である。
ヨウサイの茎葉は中国で、鼻血、便秘、血便、ヘビや虫の咬傷などに用いられる。インドネシアではKangkongと称し、民間で不眠、めまい、偏頭痛などに用いる(世界有用植物事典)。特開2004−250344では抗酸化剤、抗炎症剤、脂肪分解促進剤として用いられている。
【0018】
本発明で用いられるリュウキュウバライチゴ(学名:Rubus rosaefolius Smith ssp.maximowiczii Focke)は、バラ科キイチゴ属の植物である。
特開2003−183122ではコラゲナーゼ活性阻害剤に用いられ、特開2002−241299ではメイラード反応修復剤に用いられている。
【0019】
上記したように、本発明による植物の植物体または植物抽出物にタンパク質糖化抑制作用があるという報告はこれまでになく、本発明者らによって初めて見出されたものである。
【0020】
尚、本発明で使用する各植物の植物体又はその抽出物とは、各々の植物体の各種部位(花、花穂、果皮、果実、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根茎、根皮、根、種子又は全草など)をそのまま又は乾燥したものを粉砕して乾燥粉末としたもの、又は、そのまま或いは乾燥・粉砕後、溶媒で抽出したものである。
【0021】
抽出物の場合、抽出に用いられる抽出溶媒は通常抽出に用いられる溶媒であれば何でもよく、特にメタノール、エタノールあるいは1,3−ブチレングリコール等のアルコール類、含水アルコール類、アセトン、酢酸エチルエステル等の有機溶媒を単独あるいは組み合わせて用いることができ、このうち特に、アルコール類、含水アルコール類が好ましく、特にメタノール、エタノール、1,3−ブチレングリコール、含水エタノールまたは含水1,3−ブチレングリコールが好ましい。また前記溶媒は、室温乃至溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。
【0022】
抽出方法は特に制限されるものはないが、通常、常温から、常圧下での溶媒の沸点の範囲であれば良く、抽出後は濾過又はイオン交換樹脂を用い、吸着・脱色・精製して溶液状、ペースト状、ゲル状、粉末状とすれば良い。更に多くの場合は、そのままの状態で利用できるが、必要ならば、その効果に影響のない範囲で更に脱臭、脱色等の精製処理を加えても良く、脱臭・脱色等の精製処理手段としては、活性炭カラム等を用いれば良く、抽出物質により一般的に適用される通常の手段を任意に選択して行えば良い。
【0023】
前記植物体の抽出部位としては、フジマメについては葉および枝、パッションフルーツについては葉、茎およびつる、ギシギシについては全草、オウギヤシについては葉、ヨウサイについては葉および茎、リュウキュウバライチゴについては葉および枝が好ましいが、それぞれ他の部位の抽出物も用いることが出来る。
【0024】
本発明のタンパク質糖化抑制剤は前記各植物体又はその抽出物の一種又は二種以上からなるものであることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲において他の種々の成分を含有することが出来る。
【0025】
本発明のタンパク質糖化抑制剤は、皮膚外用剤に配合してヒトおよび動物に用いることができる他、各種飲食品、飼料(ペットフード等)に配合して摂取させることができる。また医薬製剤としてヒトおよび動物に投与することができる。この際、皮膚外用剤、飲食品などの剤型・形態により乾燥、濃縮又は希釈などを任意に行い調整すれば良い。特に本発明の植物体又はその抽出物は、くすみ改善剤として好適に用いることができる。
【0026】
本発明のタンパク質糖化抑制剤を皮膚外用剤に配合する場合、各植物体の抽出物が好ましく、その配合量(乾燥質量)は外用剤全量中、概ね0.0001〜10質量%が好ましい。
【0027】
本発明を皮膚外用剤に適用する場合、上記成分に加えて、さらに必要により、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば酸化防止剤、油分、紫外線防御剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0028】
さらに、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属イオン封鎖剤、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸およびその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、カリンの果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸およびその誘導体またはその塩等の薬剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸等の美白剤、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類なども適宜配合することができる。
【0029】
またこの皮膚外用剤は、外皮に適用される化粧料、医薬部外品等、特に好適には化粧料に広く適用することが可能であり、その剤型も、皮膚に適用できるものであればいずれでもよく、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水−油二層系、水−油−粉末三層系、軟膏、化粧水、ゲル、エアゾール等、任意の剤型が適用される。
【0030】
使用形態も任意であり、例えば化粧水、乳液、クリーム、パック等のフェーシャル化粧料やファンデーション、口紅、アイシャドウ等のメーキャップ化粧料、芳香化粧料、浴用剤等に用いることができる。
【0031】
また、メーキャップ化粧品であれば、ファンデーション等、トイレタリー製品としてはボディーソープ、石けん等の形態に広く適用可能である。さらに、医薬部外品であれば、各種の軟膏剤等の形態に広く適用が可能である。そして、これらの剤型および形態に、本発明のタンパク質糖化抑制剤の採り得る形態が限定されるものではない。
【0032】
本発明のタンパク質糖化抑制剤を飲食品や飼料等に配合する場合、植物体またはその抽出物の配合量(乾燥質量)は、それらの種類、目的、形態、利用方法などに応じて、適宜決めることができ、例えば、飲食品全量中に錠剤やカプセル剤等の場合は1〜90質量%が好ましく、その他の飲食品では0.001〜50質量%が好ましい。成人一日当たり植物またはその抽出物の摂取量が約1〜1,000mg程度になるように調製することが好ましい。特に、保健用飲食品等として利用する場合には、本発明の有効成分を所定の効果が十分発揮されるような量で含有させることが好ましい。
【0033】
飲食品や飼料の形態としては、例えば、顆粒状、粒状、ペースト状、ゲル状、固形状、または、液体状に任意に成形することができる。これらには、飲食品等に含有することが認められている公知の各種物質、例えば、結合剤、崩壊剤、増粘剤、分散剤、再吸収促進剤、矯味剤、緩衝剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤やpH調製剤などの賦形剤を適宜含有させることができる。
【0034】
本発明のタンパク質糖化抑制剤を医薬製剤として用いる場合、該製剤は経口的にあるいは非経口的(静脈投与、腹腔内投与、等)に適宜に使用される。剤型も任意で、例えば錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の経口用固形製剤や、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤、または、注射剤などの非経口用液体製剤など、いずれの形態にも公知の方法により適宜調製することができる。これらの医薬製剤には、通常用いられる結合剤、崩壊剤、増粘剤、分散剤、再吸収促進剤、矯味剤、緩衝剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤やpH調整剤などの賦形剤を適宜使用してもよい。
【0035】
本発明のタンパク質糖化抑制剤を、皮膚外用剤、飲食品、飼料、医薬製剤等として用いる場合、タンパク質非酵素的糖化作用が関与する種々の症状や疾病、病態等の治療、予防、改善等に役立つ。具体的適用例としては、例えば、生活習慣病であるとされる糖尿病、該糖尿病に伴う諸疾患(動脈硬化、白内障、腎臓の機能低下など)、アルツハイマー病、悪性腫瘍、骨疾患、神経変性疾患、皮膚のたるみ・しわ、ハリ・弾力の低下などの症状や疾病の予防・治療等に好適に用いられる。また上記症状や疾病、病態等の治療、予防、改善等の生理機能をコンセプトとして、その旨を表示した皮膚外用剤、機能性飲食品、疾病者用食品、特定保健用食品等に応用することができる。
【0036】
尚、本発明のタンパク質糖化抑制剤の皮膚外用剤又は飲食品などへの添加の方法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【実施例】
【0037】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限り質量%で示す。
最初に、本実施例で用いた植物抽出物の調製方法、タンパク質糖化抑制効果に関する試験方法とその結果について説明する。
【0038】
1.試料の調製
試料はすべて沖縄県で生育し、沖縄県の有限会社東南植物楽園より入手した。
以下の試料を調製し、被験試料とした。
(1)フジマメ抽出物
フジマメの葉および枝乾燥物12.37gを室温で1週間100mLのメタノールに浸漬した。次いで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、フジマメメタノール抽出物1663.1mg(収率:13.4%)を得た。
(2)パッションフルーツ抽出物
パッションフルーツの葉、茎およびつる乾燥物12.12gを室温で1週間80mLのメタノールに浸漬した。次いで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、パッションフルーツメタノール抽出物1219.4mg(収率:10.1%)を得た。
【0039】
(3)ギシギシ抽出物
ギシギシの全草乾燥物11.39gを室温で1週間80mLのメタノールに浸漬した。次いで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、ギシギシメタノール抽出物718.2mg(収率:6.3%)を得た。
(4)オウギヤシ抽出物
オウギヤシの葉乾燥物10.34gを室温で1週間80mLのメタノールに浸漬した。次いで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、オウギヤシメタノール抽出物1120.2mg(収率:10.8%)を得た。
【0040】
(5)ヨウサイ抽出物
ヨウサイの葉および茎乾燥物3.37gを室温で1週間40mLのメタノールに浸漬した。次いで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、ヨウサイメタノール抽出物634.0mg(収率:18.8%)を得た。
(6)リュウキュウバライチゴ抽出物
リュウキュウバライチゴの葉および枝乾燥物10.05gを室温で1週間80mLのメタノールに浸漬した。次いで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、リュウキュウバライチゴメタノール抽出物1185.5mg(収率:11.8%)を得た。
【0041】
2.タンパク質糖化抑制効果試験方法およびその結果
上記1.で得られた各植物抽出物を試験試料として用い、次の方法でタンパク質糖化抑制効果を測定・評価した。
【0042】
96ウェルプレートにリン酸緩衝生理食塩水(PBS(Phosphate buffer saline))で調製した1/6M グルコース6−リン酸二ナトリウム水和物、10mg/mL ヒト血清アルブミンおよびジメチルスルホキシド(DMSO(Dimethyl sulfoxide))で調製した試験物質溶液(最終濃度 4mg/mL)を添加し、11日間、37℃でインキュベートした。
インキュベート後、ELISA法により最終糖化産物のひとつであるCML(Ne-(carboxymethyl)lysine)産生量をCircuLexTM CML/Ne-(carboxymethyl) lysine ELISA Kit (CycLex社製)で測定した。
試験物質溶液を添加していない対照(コントロール)のCML(カルボキシメチルリジン(carboxymethyllysine))量を100とした時の各試料溶液のCML量を表1に示す。ここでCML(カルボキシメチルリジン(carboxymethyllysine)とは、終末糖化産物であるadvanced glycosylation end products (AGEs)の一つであり、糖化のマーカーとなるものである。
【0043】
【表1】

【0044】
表1から分かるように、本発明の植物抽出物は、優れたタンパク質糖化抑制効果を有しており、タンパク質糖化抑制剤として有用である。
このため本発明のタンパク質糖化抑制剤を配合することで、タンパク質糖化抑制効果を有する皮膚外用剤、経口用組成物(例えば機能剤、飲食品など)、医薬製剤等を提供することができ、タンパク質非酵素的糖化作用が関与する種々の症状や疾病、病態等の予防、防止、改善、治療等に役立つ。
【0045】
具体的適用例としては、糖尿病、糖尿病に伴う諸疾患(動脈硬化、白内障、腎臓の機能低下など)、アルツハイマー病、悪性腫瘍、骨疾患、神経変性疾患、皮膚のたるみ・しわ、くすみ、ハリ・弾力の低下などの症状や疾病を予防、防止、改善、治療することが挙げられる。ただしこれら例示に適用が限定されるものでない。
【0046】
以下に、種々の剤型の本発明によるタンパク質糖化抑制剤の配合例を処方例として説明する。本発明はこの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0047】
[配合処方例1:キャンディー]
砂糖 2000mg
水飴 1926mg
タンパク質糖化抑制剤:フジマメ熱水抽出物(乾燥質量) 20mg
コラーゲンペプチド 10mg
ハトムギ抽出物(乾燥質量) 2mg
ハス胚芽抽出物(乾燥質量) 2mg
香料 40mg
(合計)4000mg
【0048】
[配合処方例2:錠剤]
ショ糖エステル 70mg
結晶セルロース 74mg
メチルセルロース 36mg
グリセリン 25mg
シカクマメ抽出物 300mg
タンパク質糖化抑制剤:パッションフルーツ含水エタノール抽出物(乾燥質量) 120mg
コラーゲンペプチド 60mg
ハトムギ抽出物(乾燥質量) 10mg
N−アセチルグルコサミン 180mg
ヒアルロン酸 150mg
ビタミンE 30mg
ビタミンB6 20mg
ビタミンB2 10mg
α−リポ酸 20mg
コエンザイムQ10 40mg
セラミド(コンニャク抽出物) 55mg
L−プロリン 300mg
(合計)1500mg
【0049】
[配合処方例3:ソフトカプセルA]
食用大豆油 528mg
タンパク質糖化抑制剤:ギシギシ含水エタノール抽出物(乾燥質量) 90mg
コラーゲンペプチド 45mg
ハトムギ抽出物(乾燥質量) 8mg
ハス胚芽抽出物(乾燥質量) 16mg
ローヤルゼリー 70mg
マカ 60mg
GABA(γ−アミノ酪酸) 30mg
ミツロウ 60mg
ゼラチン 375mg
グリセリン 113mg
グリセリン脂肪酸エステル 105mg
(合計)1500mg
【0050】
[配合処方例4:ソフトカプセルB]
玄米胚芽油 650mg
タンパク質糖化抑制剤:オウギヤシ含水エタノール抽出物(乾燥質量) 300mg
コラーゲンペプチド 255mg
ハトムギ抽出物(乾燥質量) 50mg
レスベラトロール 5mg
エラスチン 180mg
DNA 30mg
葉酸 30mg
(合計)1500mg
【0051】
[配合処方例5:顆粒]
タンパク質糖化抑制剤:ヨウサイ熱水抽出物(乾燥質量) 140mg
コラーゲンペプチド 70mg
ハトムギ抽出物(乾燥質量) 20mg
ハス胚芽抽出物(乾燥質量) 40mg
ビタミンC 150mg
大豆イソフラボン 270mg
還元乳糖 360mg
大豆オリゴ糖 36mg
エリスリトール 36mg
デキストリン 30mg
香料 24mg
クエン酸 24mg
(合計)1200mg
【0052】
[配合処方例6:ドリンク剤(50mL中)]
タンパク質糖化抑制剤:リュウキュウバライチゴ熱水抽出物(乾燥質量) 10mg
コラーゲンペプチド 5mg
ハトムギ抽出物(乾燥質量) 2mg
還元麦芽糖水飴 28mg
エリスリトール 8mg
クエン酸 2mg
香料 1.3mg
N−アセチルグルコサミン 1mg
ヒアルロン酸 0.5mg
ビタミンE 0.3mg
α−リポ酸 0.2mg
コエンザイムQ10 1.2mg
セラミド(コンニャク抽出物) 0.4mg
L−プロリン 2mg
水 残余
【0053】
[配合処方例7:軟膏]
(配合成分) (質量%)
タンパク質糖化抑制剤:フジマメ含水エタノール抽出物(乾燥質量) 1.0
ステアリルアルコール 18.0
モクロウ 20.0
ポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸エステル 0.25
グリセリンモノステアリン酸エステル 0.3
ワセリン 40.0
精製水 残余
【0054】
[配合処方例8:美容液]
(配合成分) (質量%)
(A相)
95%エチルアルコール 10.0
ポリオキシエチレン(20)オクチルドデカノール 1.0
パントテニルエチルエーテル 0.1
タンパク質糖化抑制剤:パッションフルーツ含水エタノール抽出物(乾燥質量) 1.5
メチルパラベン 0.15
(B相)
水酸化カリウム 0.1
(C相)
グリセリン 5.0
ジプロピレリングリコール 10.0
亜硫酸水素ナトリウム 0.03
カルボキシビニルポリマー 0.2
精製水 残余
【0055】
[配合処方例9:パック]
(配合成分) (質量%)
(A相)
ジプロピレングリコール 5.0
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 5.0
(B相)
タンパク質糖化抑制剤:ギシギシメタノール抽出物(乾燥質量) 0.01
オリーブ油 5.0
酢酸トコフェロール 0.2
エチルパラベン 0.2
香料 0.2
(C相)
亜硫酸水素ナトリウム 0.03
ポリビニルアルコール(ケン化度90、重合度2000) 13.0
エタノール 7.0
精製水 残余
【0056】
[配合処方例10:乳液]
(配合成分) (質量%)
マイクロクリスタリンワックス 1.0
ミツロウ 2.0
ラノリン 20.0
流動パラフィン 10.0
スクワラン 5.0
ソルビタンセスキオレイン酸エステル 4.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル 1.0
プロピレングリコール 7.0
タンパク質糖化抑制剤:オウギヤシ含水エタノール抽出物(乾燥質量) 10.0
亜硫酸水素ナトリウム 0.01
エチルパラベン 0.3
香料 適量
精製水 残余
【0057】
[配合処方例11:クリーム]
(配合成分) (質量%)
固形パラフィン 5.0
ミツロウ 10.0
ワセリン 15.0
グリセリンモノステアリン酸エステル 2.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル 3.0
石けん粉末 0.1
硼砂 0.2
タンパク質糖化抑制剤:ヨウサイメタノール抽出物(乾燥質量) 0.05
亜硫酸水素ナトリウム 0.03
エチルパラベン 0.3
香料 適量
精製水 残余
【0058】
[配合処方例12:ドリンク剤(50mL中)]
タンパク質糖化抑制剤:リュウキュウバライチゴ熱水抽出物(乾燥質量) 5mg
タンパク質糖化抑制剤:フジマメ熱水抽出物(乾燥質量) 5mg
コラーゲンペプチド 5mg
ハトムギ抽出物(乾燥質量) 2mg
還元麦芽糖水飴 28mg
エリスリトール 8mg
クエン酸 2mg
香料 1.3mg
ヒアルロン酸 0.5mg
ビタミンE 0.3mg
コエンザイムQ10 1.2mg
セラミド(コンニャク抽出物) 0.4mg
L−プロリン 2mg
水 残余
【0059】
[配合処方例13:錠剤]
ショ糖エステル 70mg
結晶セルロース 74mg
メチルセルロース 36mg
グリセリン 25mg
シカクマメ抽出物 300mg
タンパク質糖化抑制剤:パッションフルーツ含水エタノール抽出物(乾燥質量) 40mg
タンパク質糖化抑制剤:ギシギシ含水エタノール抽出物(乾燥質量) 50mg
コラーゲンペプチド 60mg
N−アセチルグルコサミン 180mg
ヒアルロン酸 150mg
α−リポ酸 20mg
セラミド(コンニャク抽出物) 55mg
(合計)1060mg
【0060】
[配合処方例14:ソフトカプセルC]
食用大豆油 528mg
タンパク質糖化抑制剤:オウギヤシ熱水抽出物(乾燥質量) 50mg
タンパク質糖化抑制剤:ヨウサイ熱水抽出物(乾燥質量) 80mg
コラーゲンペプチド 43mg
ハス胚芽抽出物(乾燥質量) 16mg
ローヤルゼリー 70mg
マカ 60mg
ミツロウ 60mg
ゼラチン 375mg
グリセリン 113mg
グリセリン脂肪酸エステル 105mg
(合計)1500mg

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フジマメ、パッションフルーツ、ギシギシ、オウギヤシ、ヨウサイ、及びリュウキュウバライチゴの植物体又はその抽出物から選ばれる一種又は二種以上を含むことを特徴とするタンパク質糖化抑制剤。
【請求項2】
パッションフルーツ、ギシギシ、オウギヤシ、ヨウサイ、及びリュウキュウバライチゴの植物体又はその抽出物から選ばれる一種又は二種以上を含むことを特徴とするくすみ改善剤。

【公開番号】特開2011−195503(P2011−195503A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63999(P2010−63999)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】