説明

ターニングロール装置における被回転体の移動防止装置

【課題】駆動ターニングロールおよび従動ターニングロールに載置した被回転体が回転中に軸方向に移動することを防止する従来技術では、被回転体の移動を計測するための機構が新たに必要となり、装置が大掛かりとなる。
【解決手段】被回転体4の側部に円板6を設けるとともに、被回転体4を載置する従動台側ターニングロール10の端部にスラスト軸受14を取付け、このスラスト軸受14に円板6の外周部を当接可能とすることにより、被回転体4の軸方向への移動を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ターニングロール装置を用いて被回転体を回転させる際に被回転体の真円度や回転軸のズレ等に起因して発生する被回転体が軸方向に移動するのを防止するターニングロール装置における被回転体の移動防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に長尺の円筒体に対して円周方向に溶接作業をしたり、長尺の円筒体にメッキあるいは塗装等の作業を行う場合、当該円筒体をターニングロール装置に載置し、ターニングロール装置を回転させることによって円筒体を回転するようにしている。
【0003】
周知のように、ターニングロール装置は駆動モータによって回転駆動される一対の駆動ターニングロールを平行に設置した駆動台と、この駆動台と軸方向に離間した位置に一対の従動ターニングロールを平行に設置した従動台とから構成されている。
【0004】
ターニングロール装置を用いて長尺円筒体等の被回転体を回転させる場合、被回転体の軸芯が水平でない場合とか、被回転体の軸芯を水平にしたとしても、被回転体を載置する駆動ターニングロールと従動ターニングロールとが平衡していない場合、あるいは被回転体の外周部が真円でない場合には、被回転体は回転によって徐々に軸方向に移動、すなわち軸方向にズレてくる現象が発生する。
【0005】
従来、被回転体が軸方向へ移動するのを防止するために、駆動台の駆動軸外周に駆動軸と共に回動するクラウニングギヤー付ボールを設けて、このクラウニングギヤーに駆動ターニングロールに設けてあるインナーギヤーを噛み合わせ、従動台の従動軸外周にボールを介し駆動ターニングロールを揺動自在に設け、さらに、駆動ターニングロール及び従動ターニングロールの端にフリー回転のリングを設けて、この両リングに進退部材を連結するように構成した技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平1−30031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示された技術は、軸方向への移動を防止する精度は良いが、駆動台および従動台の構造が大掛かりになり、その結果ターニングロール装置がかなり高価になる欠点がある。また、既設のシンプルな構造のターニングロール装置に上記特許文献1に開示された技術を転用しようとする場合、多少の部品の追加では対応できず、大掛かりな改造になるという欠点もある。
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、上記従来技術の課題を解決するために、簡単な構造で被回転体の軸方向への移動を防止することができるターニングロール装置における被回転体の移動防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の実施形態によれば、駆動装置によって回転駆動される駆動ターニングロールを一対平行に設けた駆動台および当該駆動台と軸方向に離間した位置に従動ターニングロールを一対平行に設けた従動台を備え、前記一対の駆動ターニングロールおよび一対の従動ターニングロールに円筒状または円柱状の被回転体を載置して回転するようにしたターニングロール装置において、前記被回転体の端部に設けられた円板と、前記円板の外側面の円周部と対向するように前記駆動ターニングロールまたは従動ターニングロールの端部に取付けられた移動防止板と、前記円板および前記移動防止板の対向する側面のいずれかに設けられたスラスト軸受と、を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1に係るターニングロール装置における被回転体の移動防止装置の正面図。
【図2】図1を矢視II方向から見た拡大側面図。
【図3】図1を矢視III方向から見た拡大側面図。
【図4】従動台側ターニングロールにスラスト軸受を取付けた状態を示す拡大図。
【図5】本発明の実施形態2の要部を示す図。
【図6】本発明の実施形態3の要部を示す図。
【図7】本発明の実施形態4を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図。
【図8】本発明の実施形態5の正面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以降の各図を通して共通する部品には同一符号若しくは対応する符合を付けて、重複する説明は適宜省略するものとする。
【0012】
[実施形態1]
図1は実施形態1に係るターニングロール装置における被回転体の移動防止装置の正面図、図2は図1を矢視II方向に見た拡大正面図、図3は図1を矢視III方向に見た拡大正面図、図4は従動台側ターニングロールにスラスト軸受を取付けた状態を示す拡大図である。
【0013】
[構成]
まず、図1を参照して実施形態1の全体構成について説明する。
平坦に形成された床面1上に後述する被回転体4の軸方向の寸法に対応して定めた間隔L1を隔ててターニングロール駆動台(以下、単に駆動台という)2およびターニングロール従動台(以下、単に従動台という)3を設置し、これら駆動台2および従動台3の上部に長尺の円筒状の被回転体4を載置する。この被回転体4は駆動台2および従動台3の上部に載置された状態で駆動台2の駆動力によって回転される。
【0014】
円筒状の被回転体4は、従動台3側の端面に対して板状の中間部材5を介して溶接等で円板6を同心状に取付けている。本実施形態では、この円板6の外径を被回転体4の外径よりも大きくしてある。
【0015】
前記駆動台2には、図2で示すように、被回転体4を載置する一対の駆動ターニングロール7aおよび7bを所定距離L2だけ離間して平行状態に配置しており、これら駆動ターニングロール7aおよび7bを、軸受を有する支持機構部8で支えるとともに、駆動モータやギヤ等を内蔵した駆動部9によって図示矢印方向に回転させるように構成されている。なお、駆動ターニングロール7aおよび7bの離間距離L2は、載置する被回転体4の外周面の曲率に応じて適宜調整できるようになっている。
【0016】
一方、従動台3には、図3で示すように、平行状態に配置された一対の従動ターニングロール10aおよび10bを軸受を有する支持機構部11で支えるように構成されている。従動ターニングロール10aおよび10b間の離間距離L2は、駆動台2側と同じように載置する被回転体4の外周面の曲率に応じて適宜調整できるようになっている。
【0017】
そして、各従動ターニングロール10aおよび10bの外側面すなわち、駆動台2側と反対側の端面には、前記円板6の厚みよりも軸方向の寸法が長い筒状スペーサ12を介して円板状の移動防止板13aおよび13bを同心状に取付ける。
【0018】
この結果、従動ターニングロール10aおよび10bの端面と、移動防止板13aおよび13bとの間には円板6の厚みよりも若干広い幅の間隙Gが形成され、この間隙G内に前記円板6の外周部の一部分(円弧部)が納まる状態になり、円板6の外側面と、移動防止板13aおよび13bの内側面とが対向する配置状態になる。
【0019】
そして、上記のように構成されたターニングロール装置において、図3および図4で示すように円板状の移動防止板13a、13bの内側面である間隙G側の側面に対して円環状のスラスト軸受(例えば、円環状のスラスト玉軸受)14a、14bを取付けることにより、被回転体4が徐々に従動台3側に移動してきたときに前記円板6の外側面の外周部の一部分(円弧部)をスラスト玉軸受14a、14bの転動体(玉)に当接可能にする。
【0020】
なお、以上の説明では、円板状の移動防止板13aおよび13bを筒状スペーサ12を介して従動ターニングロール10aおよび10bの外側面に取付けるようにしたが、従動ターニングロール10aおよび10b自体の円板6に対向する部位に、前記間隙Gに相当する環状溝を設け、その環状溝の側部に形成された円板状の残余部を移動防止板13aおよび13bとするようにしても良い。
【0021】
また、図3の場合、従動ターニングロール10aおよび10bの外径と円板状の移動防止板13aおよび13bの外径とを等しくしたため、従動ターニングロール10aおよび10bの外周と、円板状の移動防止板13aおよび13bの外周とが重なって見えるが、ロール10aおよび10b外径と移動防止板13aおよび13bの外径とを同一寸法にする必然性はなく、要は円板6の外周部の一部分(円弧部)が円板状の移動防止板13aおよび13bの側部のスラスト軸受14が当接する配置関係にあればよい。
【0022】
[作用]
以上のように構成された本実施形態1によるターニングロール装置における被回転体の移動防止装置の作用について説明する。
【0023】
駆動台2の駆動ターニングロール7a、7bおよび従動台3の従動ターニングロール10a、10b上に被回転体4を載置し、駆動部9によって駆動ターニングロール7aおよび7bを図示矢印方向に回転させると、載置されている被回転体4および従動ターニングロール10a、10bも矢印方向に回転する。
【0024】
前述したように、被回転体4の軸芯が水平でない場合とか、被回転体4の軸芯を水平にしたとしても、被回転体4を載置する駆動ターニングロール7a、7bと従動ターニングロール10a、10bとが平衡でない場合、あるいは被回転体4の外周部が真円でない場合には、被回転体4自身の回転によって被回転体4は徐々に軸方向に移動する現象が発生する。
【0025】
この軸方向の移動現象が駆動台2側から従動台3側に向かって発生すると、被回転体4の端面に取り付けた円板6の外周部の一部分(円弧部)が、従動ターニングロール10a、10bの端面に位置する移動防止板13aおよび13bに取付けたスラスト玉軸受14a、14bに当接し、これ以上の軸方向の移動を防止する。
【0026】
しかも、この当接時にスラスト玉軸受14a、14bによって円板6と移動防止板13aおよび13bとの摩擦力は減じられるので、円板6が摩擦によって移動防止板13aおよび13bの外周面に競り上がるような現象が発生することはない。
【0027】
[効果]
以上述べたように、本実施形態1によれば、被回転体4の端面に円板6を取付け、これに対向して従動ターニングロール10の端部に移動防止板13aおよび13bを固定し、さらに、この移動防止板13aおよび13bの端面にスラスト玉軸受14a、14bを設けるという簡易な構造で被回転体4の軸方向への移動を防止することができるので、被回転体4の外周部の溶接、切削、メッキ、塗装等の作業を支障なく実施することができる。
【0028】
この結果、ターニングロール装置を製作する場合価格を抑制することができ、また、既設のターニングロール装置を改造する場合、大掛かりな改造を行なわなくても、多少の部品を追加するだけで改造することができる。
【0029】
[実施形態2]
図5を参照して実施形態2について説明する。
図5は、移動防止板13aおよび13bに取付けたスラスト軸受をスラスト玉軸受14a、14bからスラスト滑り軸受15に変更したものである。なお、スラスト滑り軸受15の材料には、竪型水車発電機のスラスト軸受の滑り面に採用されているポリテトラフルオロエチレン等の摺動特性に富んだ合成樹脂が適している。
本実施形態2の場合も実施形態1と同等の作用効果を奏することができる。
【0030】
[実施形態3]
図6を参照して実施形態3について説明する。
図6は、スラスト玉軸受14を図4のように移動防止板13に取付ける代わりに、円板6の移動防止板13に対向する側面に取付けるように変更したものである。
本実施形態3の場合も実施形態1と同等の作用効果を奏することができる。
【0031】
[実施形態4]
図7aは本実施形態4の側面図、図7bは図7aを矢印VIIから見た正面図である。本実施形態4は、円板6を溶接により被回転体4に取付ける代わりに、複数のボルト16によって被回転体4に取付けるように変更したものである。
本実施形態4の場合も実施形態1と同等の作用効果を奏することができる。
【0032】
[実施形態5]
図8は、本実施形態5の正面断面図である。
本実施形態5は、円板6の取り付け構造と、移動防止板の位置を変更したものである。
本実施形態5は、円筒状の被回転体4が例えば火力発電所等に設置される給水加熱器等の熱交換器の筐体である場合のように、被回転体端部に鏡板17を有する場合に好適な実施形態である。
【0033】
被回転体4の端部に取付けられた鏡板17の回転中心部に透孔を開け、鏡板17の被回転体4内部側に円板状当て板18を配置し、鏡板17の外側にパイプ状の被回転体19を介して円板20を配置する。
【0034】
そして、これら円板20、パイプ状の被回転体19、鏡板17および円板状当て板18の各透孔に通しボルト21を貫通させ、その両端にナット22をねじ込むことにより鏡板17の回転中心上にパイプ状の被回転体19と円板20とを取付ける。
【0035】
さらに、床面1上に前記従動台3とは別個のローラ支持台23を置き、このローラ支持台23上に軸受を有する支持機構部24を載置し、支持機構部24により前記パイプ状の被回転体19の外周面を支承する一対のローラ25およびこれと一体の移動防止板26を回転自在に固定する。
なお、ローラ25および移動防止板26の間隔は、円板20の厚みよりも若干広めにしてローラ25および移動防止板26間に円板20の外周部の一部が納まるようにする。
【0036】
本実施形態5によれば、被回転体4が回転とともに従動ターニングロール10側に徐々に移動する場合、鏡板17の回転中心部に固定した円板20の外側面を移動防止板26で受けることによりを被回転体4の軸方向の移動を防止することができる。
なお、この場合も実施形態1乃至3のように、円板20と移動防止板26との対向部位にころがり軸受または滑り軸受(図示せず)を設けることは勿論である。
【0037】
[実施形態6]
本実施形態6は、特に図示はしないが、円板6および移動防止板13を図1のように、従動台3側に設けるのではなく、駆動台2側に設けるようにしたものである。
本実施形態6の場合も実施形態1と同等の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…床面、2…駆動台,3…従動台、4…被回転体、5…中間部材、6…円板、7…駆動ターニングロール、8…支持機構部、9…駆動部、10…従動ターニングロール、11…支持機構部、12…、13…移動防止板、14…スラスト玉軸受、15…スラスト滑り軸受、16…ボルト、17…鏡板、18…当て板、19…パイプ状被回転体、20…円板、21…通しボルト、22…ナット、23…ローラ支持台、24…支持機構部、25…ローラ、26…移動防止板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置によって回転駆動される一対の駆動ターニングロールを平行に設置した駆動台および当該駆動台と軸方向に離間した位置に一対の従動ターニングロールを平行に設置した従動台を備え、前記一対の駆動ターニングロールおよび一対の従動ターニングロールに円筒状または円柱状の被回転体を載置して回転するようにしたターニングロール装置において、
前記被回転体の端部に設けられた円板と、
前記円板の外側面の円周部と対向するように前記駆動ターニングロールまたは従動ターニングロールの端部に取付けられた移動防止板と、
前記円板および前記移動防止板の対向する側面のいずれかに設けられたスラスト軸受と、を備えたことを特徴とするターニングロール装置における被回転体の移動防止装置。
【請求項2】
前記スラスト軸受はころがり軸受であることを特徴とする請求項1記載のターニングロール装置における被回転体の移動防止装置。
【請求項3】
前記スラスト軸受は滑り軸受であることを特徴とする請求項1記載のターニングロール装置における被回転体の移動防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−91888(P2012−91888A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238616(P2010−238616)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】