説明

タービンの可変ノズル構造

【課題】簡単な構造で製造しやすく、しかもシュラウド側からの排気ガスの漏れを減少させたタービンの可変ノズル構造を提供する。
【解決手段】タービンケース10内に、タービンインペラ2の径方向外方に位置して、タービンケース10のシュラウド3とハブ14との間を支持軸41,42で掛け渡すように形成されたベーン40を周方向に間隔を隔てて回動可能に複数設けたタービンの可変ノズル構造であって、各ベーン40のシュラウド3側の翼端面45に少なくとも翼端面45の一部と密着する支持部材43を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンの可変ノズル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
タービンの可変ノズルは、ターボチャージャーなどの過給機のタービンケース内に、タービンインペラの径方向外方に位置して、周方向に間隔を隔てて複数のベーンを配設し、タービンインペラへのガス流量に応じて各ベーンの角度を変更することで効率を高めるものである。
【0003】
一般に可変ノズル4を備えた過給機1は、図5(A)〜(D)に示すようにエンジン(図示せず)から排出される排気ガスが、タービンケース10のスクロール通路12で周方向に分配されながらタービンインペラ2の入り口に周方向に間隔を隔てて配設された複数のベーン40からなる可変ノズル4の間を通り、タービンインペラ2を回転させながら排気口13より排出される。タービンインペラ2が回転することで回転軸20が回転し、回転軸20の先に設けられたコンプレッサインペラ(図示せず)も回転し、外部からコンプレッサケース(図示せず)に導かれた空気が加圧されてエンジンに過給される。
【0004】
このとき、ベーン40を適宜回動させることによりベーン40,40間の流路面積を任意に調節できる。
【0005】
エンジンが低回転状態のときは、ベーン40を図5(D)の実線の状態に回動してベーン40,40間のスロート幅W1を狭めて開口面積を小さくすることで、排気ガスの流れを増速して過給効率を上げる。エンジンが高回転状態のときは、ベーン4を図5(D)の点線の状態に回動してベーン40,40間のスロート幅W2を広げて開口面積を大きくすることでベーン40間におけるチョーク(詰まり)を防止するようになっている。
【0006】
ベーン40は、図5(A)に示すようにタービンケース10に設けられたシュラウド3とタービンケース10のハブ14とで形成されるリング状の空間からなる環状ガス流路15に、支持軸41,42を介して回動自在に配置されており、ベーン40が適宜回動することができるように、ベーン40翼端面とシュラウド3との間、ベーン40翼端面とハブ14との間には多少のクリアランスを有している(特許文献1の図4、特許文献2の図3、図5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−8869号公報
【特許文献2】特開2002−364374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、環状ガス流路15を通ってタービンインペラ2を回転させる排気ガスの流れは、図5(B)〜(D)の矢印aで示すようにベーン40の表面に沿った流れである。
【0009】
これに対し、ベーン40翼端面と、シュラウド3及びハブ14との間に設定されたクリアランスより漏出するガスの流れ方向は、図5(B)、(D)の矢印bで示すようにベーン40を横切る方向(支持軸41,42の軸線方向)である。
【0010】
このため、クリアランスより漏出するガスは、ベーン40の表面を流れる排気ガスと交差しており、タービンインペラ2に流入する排気ガスの流れが不安定となり、排気ガスの持つエネルギーがタービンインペラ2に有効に伝達されず、特に小流量時においてタービンの効率が低下するという問題を有する。
【0011】
そこで、本発明の目的は、タービン効率を低下させないタービンの可変ノズル構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明のタービンの可変ノズル構造は、タービンケース内に、タービンインペラの径方向外方に位置して、タービンケースのシュラウドとハブとの間を支持軸で掛け渡すように形成されたベーンを周方向に間隔を隔てて回動可能に複数設けたタービンの可変ノズル構造であって、前記各ベーンのシュラウド側の翼端面に少なくとも翼端面の一部と密着する支持部材を設けたことを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、ベーンのシュラウド側の翼端面に少なくとも翼端面の一部と密着する支持部材が設けられているので、ベーンの一部とシュラウドとの間にはクリアランスがなく、排気ガスがシュラウド側から漏出するのを減少させることができる。
【0014】
また前記支持部材が円柱体であり、該円柱体に前記支持軸が偏芯して取り付けられるのが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、製造が容易である。
【0016】
また前記シュラウドに、前記支持部材を前記支持軸を中心に回動可能に嵌装する凹部を形成するのが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、ベーンが支持部材と共に支持軸を中心に回動することができる。
【0018】
また前記円柱体を、前記ベーンの翼端面の上流側に設けるのが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、排気ガスがベーンの上流側においてシュラウド側から漏出することがない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、タービン効率を低下させないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るタービンの可変ノズル構造を示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示す可変ノズル部分の拡大図で、(A)は正面図で、(B)は側面図で、(C)は可変ノズルの斜視図である。
【図3】図3は、可変ノズルの小開度の状態を示す図で、(A)はハブ側から見た側面図であり、(B)はベーンの回動状態を示す図である。
【図4】図4は、可変ノズルの大開度の状態を示す図で、(A)はハブ側から見た側面図であり、(B)はベーンの回動状態を示す図である。
【図5】図5は、従来のタービンの可変ノズル部分を示す図で、(A)は断面図で、(B)は可変ノズル部分の拡大正面図で、(C)は可変ノズル部分の拡大側面図で、(D)は可変ノズルの小開度の状態(破線は大開度の状態)を示す図で、ハブ側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0023】
なお、図1〜図4(本実施形態)中、図5 (従来例)で示した部材と同等の機能を有する部材については同一の符号を付して説明する。
【0024】
図1〜図4に示すように、過給機1のタービン部は、タービンインペラ2を収納するタービンケース10、可変ノズル4等から構成されている。タービンインペラ2から延出する回転軸20は、軸受ケース21に回転自在に支持されており、回転軸20の先に図示してないが、コンプレッサインペラが結合し、タービンインペラ2とコンプレッサインペラが一体に回転するようになっている。
【0025】
タービンケース10には、排気ガスを周方向に分配するためのスクロール通路12が形成され、またタービンインペラ2と同軸に排気口13が形成される。
【0026】
さらにタービンケース10には、内側に突出する環状のハブ14が形成され、またタービンインペラ2のブレード形状に沿って形成されたシュラウド3が設けられている。
【0027】
シュラウド3は、回転軸20と平行な円筒部30とこれと直交するフランジ部31を有しており、フランジ部31はハブ14との間に所定の間隔があけられている。フランジ部31には、環状凹部31aが形成され、この環状凹部31aに環状支持部材32がフランジ部31と同一平面で嵌め込まれている。
【0028】
フランジ部31及び環状支持部材32と、ハブ14とでリング状の空間からなる環状ガス流路15が形成され、環状ガス流路15に可変ノズル4が配設される。可変ノズル4は、タービンインペラ2の径方向外方であって、周方向に間隔をおいて配設される多数の羽根状のベーン40からなる。
【0029】
ベーン40には、図1及び図2に示すように、ベーン40を回動させるための支持軸41,42が回転軸20と平行に設けられており、支持軸41はハブ14に回動自在に支持され、支持軸42は環状支持部材32を貫通してシュラウド3のフランジ部31(または環状支持部材32)に回動自在に支持されている。
【0030】
本発明の特徴は、排気ガスがシュラウド3側からベーン40を横切って漏れるのを、特に小流量時において減少させることにある。
【0031】
これを実現させるために本発明は、ベーン40のシュラウド3側の翼端面45に少なくとも翼端面45の一部と密着する支持部材43を設けている。すなわち、図1及び図2に示すようにベーン40には、シュラウド3のフランジ部31に対する翼端面45に、例えば円柱体等の支持部材43が密着して設けられている。このため支持部材(以下、円柱体という)43が設けられている箇所は、円柱体43の端面43aとベーン40の翼端面45とのクリアランスが零となっている。
【0032】
円柱体43の端面43aは、ベーン40の翼端面45上流側に設けられるように、例えば径方向一端が支持軸42を包含し、径方向他端がベーン40先端と略一致する大きさとなっており、円柱体43の径がベーン40の長手方向の長さの略半分となっている(図2参照)。このため、ベーン40の上流側では、シュラウド3との間でクリアランスが零になり、排気ガスが少なくともベーン40の上流側においてシュラウド3側から漏出することがない。
【0033】
タービンインペラ2内を流れる流量はハブ側<シュラウド側であり、タービンインペラ2はシュラウド側でより多くの仕事を取り出している。このことから、ノズルのクリアランスより漏出するガスがタービンインペラ2の性能へ与える影響はシュラウド3側でより大きなものとなると考えられる。
【0034】
そこで本発明は、ベーン40のシュラウド3側の翼端面45の上流側に円柱体43を密着して設けて、ベーン40のシュラウド3側に壁を構成することでクリアランスを零にしてタービン効率の低下を抑制している。
【0035】
この円柱体43をシュラウド3のフランジ部31に嵌装するために、前記した環状支持部材32には凹部32aが形成されている。凹部32aは、後述するように円柱体43が支持軸42を中心に回動しながら移動できるように、断面長円(楕円)形状となっている。
【0036】
なお、支持部材43は製造が容易な円柱体が好ましいが、円柱体に限らず多角形状の柱体でもよい。
【0037】
また、ベーン40の翼端面45の全域をカバーする大きさの円柱体43を設けると、隣接するベーン40の翼端面45と干渉するため、円柱体43は翼端面45の上流側をカバーする大きさとしている。
【0038】
ハブ14に回動自在に支持されている支持軸41の突出端には、操作機構6が連結され、操作機構6は図示しないアクチュエータ等によって駆動される。操作機構6が駆動されることによって支持軸41が回動され、各ベーン40が支持軸41,42を中心に連動して回動するようになっている。
【0039】
操作機構6によって各ベーン40が回動された状態を図3、図4に示す。
【0040】
図3(A)で示す可変ノズル4は、ベーン40,40間のスロート幅W1を狭めて可変ノズル4の開度を最小とした場合であり、図4(A)で示す可変ノズル4は、ベーン40,40間のスロート幅W2を広げて可変ノズル4の開度を最大とした場合を示している。
【0041】
可変ノズル4を、図3(A)で示す小開度から図4(A)で示す大開度に変えるとき、あるいは図4(A)で示す大開度から図3(A)で示す小開度に変えるとき、円柱体43は図3(B)あるいは図4(B)で示すように支持軸41,42の軸心41aを中心にして反時計方向あるいは時計方向へ回動しながら移動することになり、凹部32aは円柱体43の移動を許容できるように、断面長円(楕円)形状となっている。
【0042】
以下、本実施形態による過給機の可変ノズル4の作用について説明する。
【0043】
外部よりスクロール通路12に流入した排気ガスは、環状ガス流路15、可変ノズル4を経て増速されてタービンインペラ2に流入し、タービンインペラ2を回転し、排気口13より排気される。
【0044】
エンジンの回転数が低く、排気ガス流量が少ないときには、可変ノズル4は、図3(A)に示すようにベーン40,40間のスロート幅W1を狭めて小開度とし、排気ガスの流れを増速してタービンインペラ2の回転を高速にして過給効率を上げる。
【0045】
このとき、ベーン40のシュラウド3側の翼端面45に少なくとも翼端面45の一部(上流側)と密着する円柱体43を設けているため、ベーン40のシュラウド3側は、円柱体43の端面43aと密着した壁が構成されることになり、ベーン40の上流側にはシュラウド3側との間にクリアランスが形成されず、排気ガスがベーン40の上流側においてシュラウド3側から漏出することがない。
【0046】
また可変ノズル4が、シュラウド3側とハブ14側との圧力のバランスでハブ14側に移動したとしても、ベーン40と共にこれに密着された円柱体43も移動するため、シュラウド3側には、ベーン40の翼端面45の上流側と円柱体の端面43aとの間にクリアランスが生じることがない。
【0047】
特にタービンは、排気ガス流量が少なく、ベーン40が小開度(図3の状態)の場合に、排気ガスがシュラウド3側のクリアランスから生じる漏れ流れが、タービンの効率を著しく悪化させている。
【0048】
本発明によれば、ベーン40の翼端面45における上流側では、シュラウド3側でのクリアランスが零になり、排気ガスは、図2(A)及び図3(A)の矢印bのごとくベーン40の翼端面45上流側と円柱体43の端面43aとの密着部に遮られてベーン40を横切ることがなく、排気ガスが少なくともベーン40の上流側においてシュラウド3側から漏出することがない(矢印aはベーン40表面に沿った流れである)。すなわち、ベーン40の翼端面45上流側におけるスロート近傍の排気ガスの流れ(矢印a)を阻害しない。
【0049】
このように本発明によれば、ベーン40のシュラウド3側の翼端面45に少なくとも翼端面45の一部と密着する支持部材43を設けて、漏れ流れが生じる箇所を減らすことで、これまで問題とされていた小流量時におけるシュラウド3側からの漏れを減少させることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 過給機
2 タービンインペラ
3 シュラウド
4 可変ノズル
6 操作機構
10 タービンケース
12 スクロール通路
13 排気口
14 ハブ
15 環状ガス流路
20 回転軸
30 円筒部
31 フランジ部
31a 環状凹部
32 環状支持部材
32a 凹部
40 ベーン
41,42 支持軸
43 支持部材(円柱体)
43a 端面
45 翼端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンケース内に、タービンインペラの径方向外方に位置して、タービンケースのシュラウドとハブとの間を支持軸で掛け渡すように形成されたベーンを周方向に間隔を隔てて回動可能に複数設けたタービンの可変ノズル構造であって、
前記各ベーンのシュラウド側の翼端面に少なくとも翼端面の一部と密着する支持部材を設けたことを特徴とするタービンの可変ノズル構造。
【請求項2】
前記支持部材が円柱体であり、該円柱体に前記支持軸が偏芯して取り付けられた請求項1記載のタービンの可変ノズル構造。
【請求項3】
前記シュラウドに、前記支持部材を前記支持軸を中心に回動可能に嵌装する凹部を形成した請求項1又は請求項2記載のタービンの可変ノズル構造。
【請求項4】
前記円柱体を、前記ベーンの翼端面の上流側に設けた請求項2又は請求項3記載のタービンの可変ノズル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−169233(P2011−169233A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33800(P2010−33800)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】