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タービンロータ等の大型溶接構造物の異材溶接部及びその製造方法
説明

タービンロータ等の大型溶接構造物の異材溶接部及びその製造方法

【課題】本発明は、板厚方向に強度分布の変化が少ないバタリング部を含む異材溶接部材、及び該異材溶接部材の製造方法を提供すること。
【解決手段】組成及び調質条件の少なくともいずれかが異なる二つの母材を、該二つの部材の異なる組成又は調質条件の不整合を緩和するためのバタリング及び前記母材の一方と前記バタリングを接合するための本溶接金属を介して、溶接した異材溶接部において、前記バタリングが板厚方向に積層された溶接金属から構成され、前記バタリングにおける前記母材との希釈率が50%以下であること。溶接開先の底部側に部材を備えることにより開先深さを深くしたダミー材及び母材を、前記バタリングを用いて突き合わせ溶接する工程、及び前記バタリングからなる溶接金属内に開先を加工する工程を含むこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異材溶接部及びその製造方法、特に、タービンロータ等の大型溶接構造物における二つの異なる材料を溶接して一体化した製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型溶接構造物において、その形状による変形や作業スペース等の制約上、横向きに置いて溶接する場合がある。その一例として、タービンロータを溶接する場合が挙げられる。一般に、大型の蒸気タービンロータは、軸長が長大になることに加えて、高圧側ロータには高温クリープ破断強度が要求され、低圧側ロータには引張強度と靭性とが要求される。そのため、一部材で蒸気タービンロータを形成する場合、これらの各要求を満足させる特性を得ることが困難であった。そこで、高圧側ロータを高温クリープ破断強度に優れた材料で形成し、低圧側ロータを引張強度及び靭性に優れた材料で形成し、これらの材料を溶接によって一体化する製造方法が知られている。
【0003】
ところが、ロータを溶接すると、ロータの母材に熱影響部(Heat Affected Zone:HAZ)が形成される。このHAZは、硬度の高い急冷組織領域及び硬度の低い過時効領域を含むため、HAZには強度の不均一領域が生じる。溶接して形成されたロータが同材の組合せの場合では、溶接後に応力除去焼鈍を行うことにより強度の不均一は緩和されるが、異材の組合せの場合には、ロータの応力除去に必要な熱処理温度がそれぞれ異なるので、熱処理により生じた強度の不均一を緩和する効果を期待することができない。
【0004】
そのため、異材のロータを溶接する場合には、ロータを溶接する前に、ロータの開先面へロータと溶接部の化学組成の緩和を図るバタリング部を形成する方法が知られており、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示されている。これらの方法は、ロータと溶接材料との中間に位置する化学組成の溶接材を使用して、タングステン不活性ガス(Tungsten Inert Gas Arc:TIG)溶接、金属不活性ガス(Metal Inert Gas:MIG)溶接、サブマージアーク溶接(SAW)等により、バタリング部を肉盛溶接している。
【0005】
さらに、特許文献4には、バタリング材料を用いて突き合せ溶接を行い、その溶接金属からバタリング部を形成する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−123801号公報
【特許文献2】特開2000−64805号公報
【特許文献3】特公平6−78721号公報
【特許文献4】特開2007−278064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3に記載されたバタリング部を含む異材溶接部では、バタリングの積層方向が、母材の板厚に対して垂直となるため、応力負荷方向と同じになり、強度信頼性が低くなる。さらに、バタリングを母材端部(平面)に対して施工するため、シールド効果が薄れるので、溶接金属の酸素濃度が増加して、強度が低下する。
【0008】
さらに、特許文献4に記載されたバタリング層を含む異材溶接部では、溶接金属と母材の希釈の多い突き合わせ部にバタリングの底部が位置するため、強度信頼性が低くなる。さらに、バタリング部の外周側端部が溶接開先の開口部近傍に位置することとなり、特許文献1〜3に記載のように、平面上に肉盛溶接するバタリングと同じ条件となるため、シールド効果が薄れる。そのため、溶接金属の酸素濃度が増加して、強度が低下するという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記の問題点の解決を図って、組成又は調質条件の少なくともいずれかが異なる二つの母材を溶接してなる異材溶接部において、板厚方向で強度の分布の変化が少ないバタリング部を含む異材溶接部材、及び該異材溶接部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明者は、バタリング部を採取する突き合わせ溶接金属における組成分布を調査した。その結果、バタリング部の底部に該当する突き合せ部は、溶接金属と突き合わせる2つの母材が混在して形成されており、高い希釈率であることが明らかとなった。また、バタリング部の表層部に該当する溶接開口部では、中央部に比べて酸素濃度は高く、強度信頼性が低くなることも明らかになった。
【0011】
以上の結果を基にして、本発明の異材溶接部は、組成及び調質条件の少なくともいずれかが異なる二つの母材を、該二つの部材の異なる組成又は調質条件の不整合を緩和するためのバタリング及び前記母材の一方と前記バタリングを接合するための本溶接金属を介して、溶接した異材溶接部において、前記バタリングが板厚方向に積層された溶接金属から構成され、前記バタリングにおける前記母材との希釈率が50%以下であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の異材溶接部の製造方法は、組成及び調質条件の少なくともいずれかが異なる二つの母材を、該二つの部材の異なる組成又は調質条件の不整合を緩和するためのバタリング及び該バタリングと前記母材の一方を接合するための本溶接金属を介して、溶接した異材溶接部の製造方法において、溶接開先の底部側に部材を備えることにより開先深さを深くしたダミー材及び母材を、前記バタリングを用いて突き合わせ溶接する工程、及び前記バタリングからなる溶接金属内に開先を加工する工程を、少なくとも含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バタリングは、板厚方向に積層された溶接金属から構成されており、バタリング部の底部の希釈率とバタリング部の表層部の酸素濃度が低いため、希釈率を50%以下とすることが可能となり、そのため、酸素濃度の増加に基づく溶接金属の強度の低下を防止し、タービンロータ等の大型溶接構造物の強度信頼性を向上するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一例としてのタービンロータの異材を溶接する際のタングステン・不活性ガス溶接装置の側面を概略的に示す。
【図2】実施例1により、材質の異なる二つの部材を溶接する製造フローを模式的に示す。
【図3】従来方法により、材質の異なる二つの部材を溶接する製造フローを模式的に示す。
【図4】バタリング22の機械的特性評価結果の一例として、溶接金属の積層方向の影響を示す衝撃試験結果を示す。
【図5】バタリング材料を用いた溶接方法について、(a)平面に対して肉盛溶接する場合と、(b)開先に対して突き合わせ溶接する場合を示す。
【図6】従来方法その2の異材溶接部の製造フローの模式図。
【図7】希釈率を試算するためのモデルの模式図。
【図8】実施例2に係る材質の異なる二つの部材を溶接する製造フローを示す。
【図9】実施例3に係る異材溶接部の製造フローを示す。
【図10】実施例4に係る異材溶接部の製造フローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態として、以下、実施例を説明する。
【0016】
[実施例1]
本発明の実施例1について、以下、図1〜6を参照して説明する。実施例1は、異材溶接部としてタービンロータの異材溶接部を示したが、他の製品の異材溶接部であっても構わない。溶接部を構成する二つの異材の仕様とその組成範囲については、次の表1に示す。実施例1は、表1の中から、Ni基超合金及び12%Cr鋼を取り上げ、これらから異材溶接部を構成するものとした。
【0017】
【表1】

【0018】
図1は、一例としての水蒸気タービンロータの異材の溶接する際のタングステン・不活性ガス溶接装置の側面を概略的に示す。この溶接装置は、少なくとも、駆動装置5、溶接機構6、制御評価装置10、駆動装置5と制御評価装置10との間で信号を送受信する信号ケーブル8、溶接機構6と制御評価装置10との間で信号を送受信する信号ケーブル9を、含んで構成される。ここで、駆動装置5は、少なくとも、タービンロータ1の軸方向及び円周方向にその溶接部3の近傍に移動することができるように構成され、溶接機構6は、母材1に熱を投入して溶接部3を形成するように構成されている。図1に示した駆動装置5は、溶接構造物(タービンロータ)に密着して移動する自立型であるが、この他に、例えば操作アーム等の外力により駆動装置5が移動するようにしたものでもよい。
【0019】
実施例1では、入熱量20KJ/cmのタングステン・不活性ガス(TIG)溶接としたが、例えば、サブマージアーク溶接(SAW)、被覆アーク溶接(Shielded Metal Ark Welding:SMAW)、金属不活性ガス(MIG)溶接、レーザー溶接、CMT(Cold Metal Transfer)のような他の方法でもよい。
【0020】
図2は、実施例1により、材質の異なる二つの部材を溶接する製造フローを模式的に示す。以下、図2の各図を参照して説明する。
【0021】
図2(A)は、母材20とダミー材21を突き合わせる工程を示す。ダミー材21の熱容量は、溶接時における冷却速度の不均一を抑制するために、母材20と同レベルであることが好ましい。ダミー材21の材質が母材20と同じであれば一層好ましい。ダミー材21の板厚は、母材20よりも厚く設定される。
【0022】
ダミー材21の底部は、母材20と重なるようにその端部を越えて延びている。実施例1では、母材20側に延びているダミー材21の底部の板厚を3mmとしたが、それ以上の厚さであればよい。この板厚が3mm未満となると、後に加工するバタリング22において、希釈率の高い部位が残存するので好ましくない。ただし、ダミー材21の底部の板厚は、3mmであれば薄い方が好ましく、最長でも10mmあれば十分である。
【0023】
また、母材20側に延びているダミー材21の底部の長さは、開先中央から10mmとしたが、3mm以上であればよい。底部の長さが3mm未満となると、突き合せ開先部の形状に穴が生じるたり、開先部の肉厚が薄くなって溶け落ちたりするという問題が生じるので、好ましくない。ただし、ダミー材21の底部の長さは、開先中央から3mm以上であれば短い方が望ましく、最長でも開先中央から15mmあれば十分である。
【0024】
図2(B)は、母材20とダミー材21の開先に対して、バタリング22用の溶接金属材料を用いて突き合せ溶接した工程の状態を示している。
【0025】
図2(C)は、ダミー材21とバタリング22の一部を切除して、バタリング22の開先を加工する工程の状態を示している。この工程により、バタリング22は、母材20の板厚と同じ方向に積層させた溶接金属から構成される。
【0026】
図2(D)は、母材23とバタリング22とを突き合わせする工程の状態を示している。バタリング22は、その突き合せ部位の希釈率が50%以下となるように採取して、その端部に対して開先を加工する。
【0027】
図2(E)は、母材23とバタリング22との開先に対して、本溶接金属24を用いて突き合せ溶接する工程の状態を示している。
【0028】
図3は、本発明との比較のために、従来方法により、材質の異なる二つの部材を溶接する製造フローを模式的に示す。ここに示した従来の方法が実施例1の方法と比較して大きく異なるのは、図3(A)に示す母材20の端面を平面にする工程と、図3(B)に示す母材20の端面に対してバタリング22を用いて肉盛り溶接する工程である。図3(A)に示す母材20の端面を平面にする工程では、図2(A)に示したダミー材21と突き合せることをしない。図3(B)に示す母材20の端面に対してバタリング22の溶接材料を用いて肉盛り溶接する工程では、バタリング22の溶接材料からなる肉盛溶接部の積層方向は、母材20の板厚方向に対して直角となるように肉盛溶接をしており、図2(B)に示した母材20の板厚方向に対して同方向の積層と比較して、90°向きが異なる。
【0029】
次に、図4及び図5を参照して、実施例1の異材溶接部の効果について説明する。図4は、バタリング22の機械的特性評価結果の一例として、衝撃試験結果を示す。図4の上図中の(a)は、衝撃試験片のノッチ方向が積層方向と直角、(b)は衝撃試験片のノッチ方向が積層方向と同方向のものである。衝撃試験の結果、衝撃試験片(b)の衝撃吸収エネルギーの値は、衝撃試験片(a)の値と比較して約10倍高かった。これより、板厚方向に応力が負荷される溶接構造物においては、強度信頼性の観点からみると、バタリング22の積層方向が板厚方向に直角の場合に比べて、同方向の場合には対衝撃性に優れてより好ましいことがわかる。このことから、本発明に係る実施例1は、衝撃試験片(b)と同じ思想のもとに、バタリング22の積層方向を母材の厚さ方向と同方向に設定しているので、強度信頼性の向上に寄与するものとなっている。
【0030】
図5は、バタリング22材料を用いた溶接方法を模式的に示す。図5(a)は、従来方法により平面に対して肉盛溶接をする方法を模式的に示し、図5(b)は、本発明に係る実施例1によい、開先に対して突き合わせ溶接する方法を模式的に示す。
【0031】
図5(a)に示すところの平面に対して肉盛溶接を行う場合、TIG溶接のシールドガスが周囲に飛散するため、溶接金属に対するシールド性が低下する。それに対して、図5(b)に示すところの開先に対して突き合わせ溶接を行う場合、シールドガスは開先内に集中するため、溶接金属に対するシールド性が向上する。シールド性は、溶接金属の酸化度に基づいて強度に影響を与える。当然ながら、酸化度が小さいほど強度は高くなり、酸化度が大きいほど強度は低くなる。このことから、本発明の実施例1では、図5(b)と同じ思想のもとに、バタリング22の採取方法を設定しているので、強度の向上に寄与したものとなっている。
【0032】
図6は、本発明の実施例1と比較するために、別の従来方法における異材溶接部の製造フローを示す。本発明の実施例1と異なるのは、図6(A)に示すダミー材21の板厚と、図6(C)に示すバタリング22の突き合わせ部の希釈率である。図6に示す製造フローに沿って異材溶接部を製造した場合、図6(B)において、バタリング22を用いた溶接部の底部は、母材20とダミー材21との希釈により、希釈率が50%以上になる。希釈率の定義は、数1の数式のとおりである。
【0033】
[数1] 希釈率=1−(初層溶接用溶接金属の体積)/(初層溶接による溶融域の
体積)
【0034】
式1によれば、希釈率は、初層溶接用溶接金属と初層溶接による溶融域の体積により決まる。ここで、様々な開先形状における希釈率を試算する。図7は、希釈率を試算するためのモデルを示す。図7(a)はモデルの対象物、図7(b)は簡易モデルを示す。xは初層溶接による溶融域の幅を、yは初層溶接用溶接金属の深さを、zは突き合わせ高さを示す。試算方法は、数2に示すモデル式を用いた。
【0035】
[数2] 希釈率=1−y/(2z+y)
【0036】
式2において、xは簡易モデルの試算上関係ないことから、y及びzを変数として希釈率を試算した。実際のyは、溶接金属形成条件上1〜3mmである。また、実際のzは、健全な裏波を形成する条件上、1〜3mmである。これより、実際のy及びzの変域内において希釈率を試算した結果、0.6〜0.7の値域であった。このように希釈率が高いと、バタリング部の特性が当初予定値よりも劣ることになる。そのため、希釈率は少なくとも50%以下、好ましくは25%以下とするのがよい。
【0037】
これに対し、図6(C)に示すバタリング22では、図6(B)で示した希釈率が50%以上の部位から採取する必要があり、特性劣化を回避することができない。以上のことから、実施例1によれば、希釈率が50%以上の部位からバタリングを採取しなく済むので、特性劣化を回避することができる。
【0038】
[実施例2]
本発明に係る実施例2について、図8を参照して説明する。実施例1は、異材溶接部の製造方法における溶接部の底部側の形状に関する特徴を備えるものであったが、実施例2は、異材溶接部の製造方法における溶接部の底部側に加えて開口部側に関する特徴を備えるものである。ここでは、実施例1と一致する点についての説明は割愛し、実施例1との相違点のみを、以下、説明する。
【0039】
図8は、実施例2に係る材質の異なる二つの部材を溶接する製造フローを示す。実施例1と異なるのは、図8(A)及び(B)のみである。図8(A)は、母材20及びダミー材21を突き合わせる工程の状態を示している。母材20及びダミー材21との開口部近傍に、溶接開先の深さを深くするための、シールド板25を取り付けてある。実施例2におけるシールド板の高さは10mm、幅は3mmであるが、機能的にはそれ以上であれば構わないものの、コスト的には必要最小限であることが望ましい。この高さが10mm未満の場合、溶接開先内でのシールドガスの集中効果が発揮されず、そのため、シールド板開口部近傍の溶接部に酸素を巻き込んでしまい、特性劣化の原因となる。また、シールド板25の幅が3mm未満の場合、溶接装置の走査上必要となるシールド板の剛性が不足する。
【0040】
図8(B)は、バタリング22材を用いてシールド板まで突き合わせ溶接を行う状態を示す。シールド板開口部近傍の溶接部は、シールドガスの集中効果が低いため酸素を巻き込む。しかし、図8(C)が示すところのバタリング22に開先加工する際に、シールド板開口部近傍の溶接部は、バタリング22の形状に位置していないので切除する。その結果、図8(C)におけるバタリング部22は、酸素を巻き込んだ部位を含まないので、特性の劣化が生じない。
【0041】
[実施例3]
本発明に係る実施例3について、図9を参照して説明する。実施例3における二つの異材として、Ni基超合金と1%Cr−Mo-V系鋼とした。実施例2においては、異材溶接部の製造方法における溶接部の底部側の形状に関するものであったが、実施例3においては、かかる底部側の材質に関するものである。実施例2と一致する点についての説明は割愛し、実施例2との相違点のみを、以下、説明する。
【0042】
図9は、実施例3に係る材質の異なる二つの部材を溶接する製造フローを示す。実施例2と異なるのは、図9(A)及び(B)のみである。図9(A)は、母材20とダミー材21を突き合わせる工程を示している。溶接部底部の近傍では、ダミー材21と母材20とは、板厚が同じである。その近傍から離れた位置では、ダミー材21と母材20とは、必ずしも板厚が同じである必要はない。実施例1では、ダミー材21の底部が、母材20と重なるようにその端部を越えて延びていたが、実施例3においては母材20の溶接部近傍の底部が母材20と同じ材質で構成されている(図9(B)参照)。実施例3において、母材20の溶接部近傍とそれ以外の領域との厚さの差は3mmであるが、それ以上であれば構わない。この板厚が3mm未満の場合には、後に加工するバタリング22において、希釈率の高い部位が残存することになる。ただし、ダミー材21の底部の板厚は、3mm以上であれば、できるだけ薄い方が好ましく、10mmあれば十分である。これにより、実施例2と同じ効果を得ることができる。
【0043】
[実施例4]
本発明に係る実施例4について、図10を参照して説明する。実施例4における二つの異材として、Ni−Fe基合金と12%Cr系鋼とした。実施例1においては、異材溶接部の製造方法における溶接部の底部側の形状に関する特徴を示した。実施例4においては、異材溶接部の製造方法における溶接部の底部側の形状に関する特徴を示す。実施例1と一致する点の説明は割愛し、実施例1との相違点のみを、以下、説明する。
【0044】
図10は、実施例4に係る材質の異なる二つの部材を溶接する製造フローを示す。実施例2と異なるのは、図10(A)及び(C)のみである。図10(A)は、母材20及びダミー材21を突き合わせる工程を示している。母材20及びダミー材21の板厚は、同じでよい。実施例2では、ダミー材21の一部が、母材20の端部を越えてその底部に重なるように延びていたが、実施例4においては、ダミー材21の一部は、母材20の底部に重なるように延びていない。図10(C)は、溶接部の板厚を、母材20の板厚よりも薄く加工する工程と、バタリング22に開先を加工する工程を示している。実施例4によれば、溶接部底部の一部を切除することにより、溶接部の希釈率が高い部位を除去しているので、実施例2と同じ効果を得ることができる。
【0045】
次に、本発明の異材溶接部に係る異なる二つの母材について、その材質の例を次表に示す。ここでは、すでに説明した実施例1、3、4に加えて、実施例5〜8について掲げる。
【0046】
【表2】

【0047】
本発明に係る異材溶接部における母材の組合せとしては、実施例1、2におけるNi基超合金と12%Cr系鋼の組合せ、実施例3におけるNi基超合金と1%Cr−Mo-V系鋼の組合せ、実施例4におけるNi−Fe基合金と12%Cr系鋼の組合せに加えて、Ni-Fe基合金と1%Cr−Mo−V系鋼の組合せ(実施例5)、12%Cr系鋼と1%Cr−Mo−V系鋼の組合せ(実施例6)、12%Cr系鋼と3-4%Ni−Cr−Mo−V系鋼の組合せ(実施例7)、及び1%Cr−Mo−V系鋼と3-4%Ni−Cr−V系鋼の組合せ(実施例8)としてもよい。実施例5から8についても、実施例1から4について示した製造フローが適用可能であり、同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0048】
1 蒸気タービンロータ、4 溶接部、5 駆動装置、6 溶接機構、8 信号ケーブル、9 信号ケーブル、10 制御評価装置、11 トーチ、14 ガスボンベ、15 ロータ回転装置、17 ガスホース、18 ガスホース、19 アースケーブル、20 母材A、21 ダミー材、22 バタリング、23 母材B、24 本溶接金属、25 シールド板、26 信号ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成及び調質条件の少なくともいずれかが異なる二つの母材を、該二つの部材の異なる組成又は調質条件の不整合を緩和するためのバタリング及び前記母材の一方と前記バタリングを接合するための本溶接金属を介して、溶接した異材溶接部において、
前記バタリングが板厚方向に積層された溶接金属から構成され、前記バタリングにおける前記母材との希釈率が50%以下であることを特徴とする異材溶接部。
【請求項2】
前記バタリングが、30ppm以下の酸素を含むことを特徴とする請求項1に記載の異材溶接部。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された異材溶接部を含むことを特徴とする蒸気タービンロータ。
【請求項4】
前記二つの母材の少なくとも一方が、質量について、コバルト(Co)5〜15%、クロム(Cr)13〜15.5%、アルミニウム(Al)4.0〜5.5%、チタン(Ti)0.1〜2.0%、ニオブ(Nb)0.1〜1.0%、タンタル(Ta)0.1〜3.0%、モリブデン(Mo)0.1〜2.0%、タングステン(W)4.5〜10%、ハフニウム(Hf)0.1〜2.0%、炭素(C)0.05〜0.20%、ホウ素(B)0.001〜0.03%、ジルコニウム(Zr)0.01〜0.1%、残部が不可避的不純物を除きニッケル(Ni)からなるニッケル(Ni)基合金であることを特徴とする請求項3に記載されたタービンロータ。
【請求項5】
前記母材の少なくとも一方が、質量について、鉄(Fe)30〜40%、クロム(Cr)14〜16%、チタン(Ti)1.2〜1.7%、アルミニウム(Al)1.1〜1.5%、ニオブ(Nb)1.9〜2.7%、炭素(C)0.05%以下、残部が不可避的不純物を除きニッケル(Ni)からなるニッケル(Ni)−鉄(Fe) 基合金であることを特徴とする請求項3に記載されたタービンロータ。
【請求項6】
前記母材の少なくとも一方が、質量について、炭素(C)0.1〜0.2% 、マンガン(Mn)0.3〜1.0%、ニッケル(Ni)1%以下、クロム(Cr)9〜13% 、モリブデン(Mo)0.1〜1.5%、タングステン(W)0.2〜5.0%、ニオブ(Nb)0.02〜0.1%、コバルト(Co)3%以下を含む全焼戻しマルテンサイト組織を有する12%クロム(Cr)系鋼からなることを特徴とする請求項3に記載されたタービンロータ。
【請求項7】
前記母材の少なくとも一方が、質量について、炭素(C)0.25〜0.35%、マンガン(Mn)0.5〜1%、ニッケル(Ni)1%以下、クロム(Cr)0.8〜1.5%、モリブデン(Mo)1.0〜1.5% 、バナジウム(V)0.2〜0.3%を含むベーナイト組織を有する1%クロム(Cr)−モリブデン(Mo)−バナジウム(V)系鋼からなることを特徴とする請求項3に記載されたタービンロータ。
【請求項8】
前記母材の少なくとも一方が、質量について、炭素(C)0.17〜0.32 %、マンガン(Mn)0.2〜0.4%、ニッケル(Ni)3〜4%、クロム(Cr)1.25〜2.0%、モリブデン(Mo)0.25〜0.60%、バナジウム(V)0.05〜0.15%を含むベーナイト組織を有する3〜4%ニッケル(Ni)−クロム(Cr)−モリブデン(Mo)−バナジウム(V)系鋼からなることを特徴とする請求項3に記載されたタービンロータ。
【請求項9】
高圧蒸気タービン用ロータ、中圧蒸気タービン用ロータ及び高中圧蒸気タービン用ロータの少なくともいずれか一つにおいて、
蒸気温度の高い高温側の前記母材は、質量について、コバルト(Co)5〜15%、クロム(Cr)13〜15.5%、アルミニウム(Al)4.0〜5.5%、チタン(Ti)0.1〜2.0%、ニオブ(Nb)0.1〜1.0%、タンタル(Ta)0.1〜3.0%、モリブデン(Mo)0.1〜2.0%、タングステン(W)4.5〜10%、ハフニウム(Hf)0.1〜2.0%、炭素(C)0.05〜0.20%、ホウ素(B)0.001〜0.03%、ジルコニウム(Zr)0.01〜0.1%、残部が不可避的不純物を除きニッケル(Ni)からなるニッケル(Ni)基合金、又は、
鉄(Fe)30〜40%、クロム(Cr)14〜16%、チタン(Ti)1.2〜1.7%、アルミニウム(Al)1.1〜1.5%、ニオブ(Nb)1.9〜2.7%、炭素(C)0.05%以下、残部が不可避的不純物を除きニッケル(Ni)からなる、ニッケル(Ni)−鉄(Fe)基合金よりなるものであり、
前記温度の低い低温側の前記母材は、質量について、炭素(C)0.1〜0.2%、マンガン(Mn)0.3〜1.0%、ニッケル(Ni)1%以下、クロム(Cr)9〜13%、モリブデン(Mo)0.1〜1.5%、タングステン(W)0.2〜5.0%、ニオブ(Nb)0.02〜0.1%、コバルト(Co)3%以下を含む全焼戻しマルテンサイト組織を有する12%クロム(Cr)系鋼、又は、
炭素(C)0.25〜0.35%、マンガン(Mn)0.5〜1%、ニッケル(Ni)1%以下、クロム(Cr)0.8〜1.5%、モリブデン(Mo)1.0〜1.5%、バナジウム(V)0.2〜0.3%を含むベーナイト組織を有する1%クロム(Cr)−モリブデン(Mo)−バナジウム(V)系鋼からなるものであることを特徴とする請求項3に記載されたタービンロータ。
【請求項10】
高圧蒸気タービン用ロータ、中圧蒸気タービン用ロータ及び高中圧蒸気タービン用ロータのいずれかにおいて、
蒸気温度がより高い高温側の前記母材が、質量について、炭素(C)0.1〜0.2%、マンガン(Mn)0.3〜1.0%、ニッケル(Ni)1%以下、クロム(Cr)9〜13%、モリブデン(Mo)0.1〜1.5%、タングステン(W)0.2〜5.0%、ニオブ(Nb)0.02〜0.1%、コバルト(Co)3%以下を含む全焼戻しマルテンサイト組織を有する12%クロム(Cr)系鋼からなり、
蒸気温度がより低い低温側の前記母材は、質量について、炭素(C)0.25〜0.35%、マンガン(Mn)0.5〜1%、ニッケル(Ni)1%以下、クロム(Cr)0.8〜1.5%、モリブデン(Mo)1.0〜1.5%、バナジウム(V)0.2〜0.3%を含むベーナイト組織を有する1%クロム(Cr)−モリブデン(Mo)−バナジウム(V)系鋼からなるものであることを特徴とする請求項3に記載されたタービンロータ。
【請求項11】
高圧ロータ及び中圧ロータのいずれか一方並びに低圧ロータとを突合せ溶接により接続された高低圧一体型蒸気タービン用ロータ若しくは中低圧一体型蒸気タービン用ロータであって、
前記一方の高圧ロータ又は中圧ロータは、質量について、炭素(C)0.25〜0.35%、マンガン(Mn)0.5〜1%、ニッケル(Ni)1%以下、クロム(Cr)0.8〜1.5%、モリブデン(Mo)1.0〜1.5%、バナジウム(V)0.2〜0.3%を含むベーナイト組織を有する1%クロム(Cr)−モリブデン(Mo)−バナジウム(V)系鋼、又は、
炭素(C)0.1〜0.2% 、マンガン(Mn)0.3〜1.0%、ニッケル(Ni)1%以下、クロム(Cr)9〜13%、モリブデン(Mo)0.1〜1.5%、タングステン(W)0.2〜5.0%、ニオブ(Nb)0.02〜0.1%、コバルト(Co)3%以下を含む全焼戻しマルテンサイト組織を有する12%クロム(Cr)系鋼からなるものであり、
前記低圧ロータは、質量について、炭素(C)0.17〜0.32%、マンガン(Mn)0.2〜0.4%、ニッケル(Ni)3〜4%、クロム(Cr)1.25〜2.0%、モリブデン(Mo)0.25〜0.60%、バナジウム(V)0.05〜0.15%を含むベーナイト組織を有する3〜4%ニッケル(Ni)−クロム(Cr)−モリブデン(Mo)−バナジウム(V)系鋼からなるものであることを特徴とする請求項3に記載されたタービンロータ。
【請求項12】
組成及び調質条件の少なくともいずれかが異なる二つの母材を、該二つの部材の異なる組成又は調質条件の不整合を緩和するためのバタリング及び該バタリングと前記母材の一方を接合するための本溶接金属を介して、溶接した異材溶接部の製造方法において、
溶接開先の底部側に部材を備えることにより開先深さを深くしたダミー材及び母材を、前記バタリングを用いて突き合わせ溶接する工程、及び
前記バタリングからなる溶接金属内に開先を加工する工程を、
少なくとも含むことを特徴とする異材溶接部若しくは該異材溶接部を含むタービンロータの製造方法。
【請求項13】
組成及び調質条件の少なくともいずれかが異なる二つの母材を、該二つの部材の異なる組成又は調質条件の不整合を緩和するためのバタリング及び該バタリングと前記母材の一方とを接合するための本溶接金属を介して、溶接した異材溶接部の製造方法において、
溶接開先の開口部側に部材を備えることにより開先深さを深くしたダミー材及び母材を、前記バタリングを用いて突き合わせ溶接する工程、及び
前記バタリングからなる溶接金属内に開先を加工する工程を、
少なくとも含むことを特徴とする異材溶接部若しくは該異材溶接部を含むタービンロータの製造方法。
【請求項14】
前記ダミー材は、前記母材と同レベルの熱容量を有することを特徴とする請求項12又は13に記載の異材溶接部若しくは該異材溶接部を含むタービンロータの製造方法。
【請求項15】
前記ダミー材は、前記母材と同じ化学組成のものであることを特徴とする請求項12から14のいずれかの請求項に記載された異材溶接部若しくは該異材溶接部を含むタービンロータの製造方法。
【請求項16】
前記突き合わせ溶接工程において、前記ダミー材の3mm以上の板厚を有する底部を、開先中央から母材の底面に沿って延びるように突き合わせることを特徴とする請求項12に記載された異材溶接部若しくは該異材溶接部を含むタービンロータの製造方法。
【請求項17】
前記突き合わせ溶接工程において、前記ダミー材の底部を、開先中央から母材の底面に沿って3〜15mmの範囲内の長さ重ねるようにして突き合わせることを特徴とする請求項12又は16に記載された異材溶接部若しくは該異材溶接部を含むタービンロータの製造方法。
【請求項18】
前記バタリング材からなる溶接金属内に開先を加工する工程は、前記バタリングの突き合せ部の希釈率が50%以下となるように加工すること特徴とする請求項12、14から17のいずれかの請求項に記載された異材溶接部若しくは該異材溶接部を含むタービンロータの製造方法。
【請求項19】
前記バタリング材からなる溶接金属内に開先を加工する工程は、前記溶接部の板厚を、母材若しくはダミー材の板厚よりも薄く加工することを含むことを特徴とする請求項12、14から18のいずれかの請求項に記載された異材溶接部若しくは該異材溶接部を含むタービンロータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−240108(P2012−240108A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115134(P2011−115134)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】