説明

タービン組立静止部品の位置計測装置

【課題】熟練者でなくても容易迅速にタービン組立静止部品の位置を計測する装置を提供する。
【解決手段】位置計測装置は、タービンの回転中心に沿ってレーザー光21を出射するレーザー光源部1と、レーザー光の光軸に対して45度の傾斜角度で配置され、上記出射レーザー光の一部を90度の角度で反射してタービンの静止部品11に照射する反射鏡兼透過鏡33と、この鏡を透過したレーザー光を受光する第1の受光器34と、上記静止部品に照射されて反射し上記反射鏡兼透過鏡を透過したレーザー光を受光する第2の受光器35と、上記反射鏡兼透過鏡と第1の受光器と第2の受光器とを収容する筺体31と、受信信号を演算してレーザー光源部から静止部品までの回転中心に沿う距離と上記回転中心から静止部品表面までの距離を演算する制御演算装置2とを備え、上記筺体がタービンの回転中心周りに回転自在に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンの回転部品であるローターに対して、静止部品を設計された適切な位置に設定する際に使用するタービン組立静止部品の位置計測装置に係り、特に熟練者でなくても容易迅速に静止部品の芯の位置を計測できるタービン組立静止部品の位置計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タービンの静止部品の一種であるノズルダイヤフラムは、回転体であるローターに対して適切な位置に設定されていない場合には、運転中に相互に接触したり、また適切な性能が得られなかったりする問題が起こる可能性がある。したがって、タービンの静止部品の芯出し操作や位置決め操作がタービンの組立作業においては非常に重要な操作となる。
【0003】
従来から、上記タービンの回転体としてのローターに対する静止部品の位置を確認するためには、太さが均一な細径のピアノ線を張設し、その張設位置を基準位置として周囲の静止部品までの距離を計測するワイヤリング法という手法が広く使用されている。
【0004】
すなわち、上記ワイヤリング法においては、張設したピアノ線を仮想のローターの中心と見なし、タービン組立の際にローターの基準位置となる部位でピアノ線の位置を固定して、タービン軸方向にピアノ線を張設しておき、ノズルダイヤフラムや静止部品の内径部分から、このピアノ線に至る距離を計測して、静止部品の相対位置を計測する手法である(特許文献1参照)。
【0005】
図6は従来のワイヤリング法を使用した位置計測作業の状態を示す一例の概要である。図6に示す状態から明らかなように、位置計測作業に際しては静止部品200が配置された狭いタービンケーシング201の内部に作業者203が立ち入って、計測器204を用いて、張設したピアノ線202で示す仮想のローターの中心と静止部品200との距離等の計測を実施する。図6に示す位置計測作業では、静止部品200の左右部、下部および図示しない上部の計測位置にて計測作業を実施している。
【0006】
また、タービンの静止部品は一般的に水平の締付け面で上下に分割されており、上半部品が組込まれていない状態(以下「トップスオフ状態」と称する)と上半部品が組込まれた状態(以下「トップスオン状態」と称する)とにおいて、静止部品の位置に多少の差異が生じるため、両方の状態でのワイヤリングが必要である。
【0007】
トップオフ状態とトップオン状態での位置の差異は、運転状態であるトップオン状態を静止部の位置決めを行うトップオフ状態で考慮しておかなければならないので、タービンの組立作業では極めて重要な操作である。
【0008】
ピアノ線と静止部品との間の距離は、特殊なマイクロメータを使用し、最小目盛の0.01mm単位で計測して、静止部品の水平方向の左右部と上下部との合計4点(トップオン状態の場合)、あるいは左右部と下部との合計3点(トップオフ状態の場合)について、静止部品がピアノ線に対してどの位置にあるのかを測定するものである。
【0009】
上記ピアノ線と静止部品との間の距離の計測作業においては、ピアノ線に対して、静止部品の位置関係を求めることが重要であるために、絶対寸法よりも相対的な寸法が重視されるが、ピアノ線は細く、容易に揺れ易いので、習熟した熟練者でないと計測が困難である。また、ピアノ線自体にも重量があり、張設したピアノ線が自重によって自然に撓むことになる。そのため、上下方向の位置計測値に対しては、そのたわみ量を勘案して修正を施す必要があるなどの煩雑な修正作業が必要であった(特許文献1参照)。
【0010】
こうして計測された位置計測値により、静止部品をどの方向に移動調整すればローターに対して静止部品が所定位置に治まるかが判明する。最終的に位置決めされた静止部品は、一般的には再度のワイヤリング作業によってその芯からの位置(距離)の確認が実行される。このように、タービンの組立作業においては、何度もワイヤリング作業が必要で、その都度、熟練者の正確な作業が必要とされているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−97903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来から静止部品の位置決め作業のために実施されているワイヤリング作業は、細いピアノ線を基準位置に設定することや特殊なマイクロメータの使用することなど、誰でもが簡単に実施できる作業ではなく、習熟した経験者が長時間を掛けて実施しているために、静止部品の位置決め作業に長時間を要し、タービンの組立作業効率が低い難点があった。
【0013】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、熟練者でなくても容易迅速に静止部品の芯の位置を計測できるタービン組立静止部品の位置計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係るタービン組立静止部品の位置計測装置は、タービンの回転中心に沿ってレーザー光を出射するレーザー光源部と、この出射レーザー光の光軸に対して45度の傾斜角度で配置され、上記出射レーザー光の一部を90度の角度で反射してタービンの静止部品に照射する反射鏡兼透過鏡と、上記回転中心に沿って出射され上記反射鏡兼透過鏡を透過したレーザー光を受光する第1の受光器と、上記静止部品に照射されて反射し上記反射鏡兼透過鏡を透過したレーザー光を受光する第2の受光器と、上記反射鏡兼透過鏡と第1の受光器と第2の受光器とを収容する筺体と、上記第1の受光器および第2の受光器の受信信号を演算してレーザー光源部から静止部品までの回転中心に沿う距離と上記回転中心から静止部品表面までの距離を演算する制御演算装置とを備え、上記反射鏡兼透過鏡と第1の受光器と第2の受光器とを収容した筺体がタービンの回転中心周りに回転自在に構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、上記タービン組立静止部品の位置計測装置において、前記筺体が円筒形状を有し、その円筒形状の筐体を回転自在に保持すると共に、この筐体を被計測物である静止部品に対して所定位置に設置するための脚部を備えることが好ましい。
【0016】
さらに、上記タービン組立静止部品の位置計測装置において、前記筺体をタービンの回転中心周りに回転自在に構成する機構としてリニアガイドで用いられるローラーボール駆動機構を用いることが好ましい。
【0017】
また、上記タービン組立静止部品の位置計測装置において、前記レーザー光源部から発射され反射兼透過鏡を通過したレーザー光を第1の受光部で受光する一方、被計測物としての静止部品から反射されたレーザー光を第2の受光部で受光し、第1の受光部と第2の受光部とにおける信号差からタービンの回転中心から静止部品までの距離を計測することが好ましい。
【0018】
さらに、上記タービン組立静止部品の位置計測装置において、前記第1の受光部と第2の受光部との2箇所において受光したレーザー光の信号から距離の差を演算し被計測物としての静止部品と位置計測装置との相対位置を求めることすることが好ましい。
【0019】
また、上記タービン組立静止部品の位置計測装置において、前記筐体の回転中心を被計測物としての静止部品の内径中心に合わせて設定するための調節機構が脚部に設けられていることが好ましい。
【0020】
さらに、上記タービン組立静止部品の位置計測装置において、前記筐体のタービン回転軸方向の位置を調整するための調節機構が脚部に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るタービン組立静止部品の位置計測装置によれば、タービンの回転中心に沿ってレーザー光がレーザー光源部から出射され、その出射光の一部が反射鏡兼透過鏡によって90度の角度で反射してタービンの静止部品に照射されると共に、レーザー光源部から発射され反射兼透過鏡を通過したレーザー光が第1の受光部で受光される一方、被計測物としての静止部品から反射されたレーザー光が第2の受光部で受光され、第1の受光部と第2の受光部とにおける信号差(光路長差)からタービンの回転中心から静止部品までの距離が計測できる。ここで、上記位置計測装置によれば、従来のワイヤリング作業のように細いピアノ線を基準位置に設定する必要がなく、また特殊なマイクロメータの使用することもなく、レーザー光の直進指向性を利用して静止部品間の距離等を正確に計測することが可能になる。しかも、計測作業は、誰でもが簡単に実施できる作業であり、通常技量の測定技術者であっても短時間で計測作業を実施できる。そのため、静止部品の位置決め作業が短時間で完了し、タービンの組立作業効率を大幅に改善することができる。
【0022】
すなわち、従来のワイヤリング法による計測のようにピアノ線の設定や特殊なマイクロメータの使用といった熟練者に限られていた作業を実施しなくても、容易迅速に静止部品の芯の位置計測を実施することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るタービン組立静止部品の位置計測装置の構成例を示す概略図。
【図2】レーザー光源部側から観察した筐体およびその筐体を保持する脚部の概略構成を示す正面図。
【図3】図2に示す固定脚の底部の構成例を示し、図3(a)は図2におけるIIIa−IIIa矢視断面図、図3(b)は図3(a)おけるIIIb−IIIb矢視断面図。
【図4】タービンケーシング内における静止部品の芯の計測操作を示す斜視図、図4(a)はタービン回転軸方向の一端側(A側)における計測操作を示す斜視図、図4(b)は他端側(B側)における計測操作を示す斜視図。
【図5】レーザー光源の位置調整例を示す計算式。
【図6】従来のワイヤリング法に基づく位置計測作業を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に本発明の実施形態について添付図面を参照してより具体的に説明する。本発明はレーザー光による長さの計測技術を利用することにより、熟練者でなくても簡単に静止部品の芯位置を計測することができる位置計測装置である。
【0025】
本発明の一実施形態に係るタービン組立静止部品の位置計測装置は、図1に示すように、タービンの回転中心に沿ってレーザー光21を出射するレーザー光源部1と、この出射されたレーザー光21の光軸に対して45度の傾斜角度で配置され、上記出射されたレーザー光21の一部を90度の角度で反射してタービンの静止部品11に照射する反射鏡兼透過鏡33と、上記回転中心に沿って出射され上記反射鏡兼透過鏡33を透過したレーザー光21を受光する第1の受光器34と、上記静止部品11に照射されて反射し上記反射鏡兼透過鏡33を透過したレーザー光22を受光する第2の受光器35と、上記反射鏡兼透過鏡33と第1の受光器34と第2の受光器35とを収容する筺体31と、上記第1の受光器34および第2の受光器35の受信信号を演算してレーザー光源部1から静止部品までの回転中心に沿う距離と上記回転中心から静止部品表面までの距離を演算する制御演算装置2とを備え、上記反射鏡兼透過鏡33と第1の受光器34と第2の受光器35とを収容した筺体31がタービンの回転中心周りに回転自在に構成されていることを特徴とする。
【0026】
また、図1においてレーザー光源部1は、第1、第2受光部34,35を固定して収容する円筒状の筐体31とは別の構成部品となる。第1、第2受光部34,35からの受光信号は、信号ケーブル23aによって電源・制御演算装置2に伝送され、レーザー光源部1と電源・制御演算装置2とは電源ケーブル23bによって電気的に接続されている。
【0027】
上記レーザー光源部1は、例えば三脚上に装着された雲台上に固定されており、雲台の向きの調節によりレーザー光源の水平方向の左右の向きや上下方向の高さの微調整ができるように構成されている。
【0028】
筐体31と胴部81との間には、リニアガイド等で用いられているのと同様のローラーボール32が回転駆動機構として全周にわたって組込まれており、円筒状の筐体31全体が360度回転できる構造になっている。上記ローラーボール32は筐体31の円筒軸に対して正確に90度方向の平面上に配置されており、リニアガイドと同精度で筺体31を回動自在に保持し、回動時に筐体31のがたつきも発生しない。
【0029】
上記胴部81と、この胴部81に回転自在に嵌め込まれた円筒状の筺体31と筺体31の内部に収容固定された反射鏡兼透過鏡33、第1の受光器34と第2の受光器35とで計測部3が構成される。
【0030】
上記筐体31およびその付属品は、図2に示すように複数本の脚部38によって筐体31全体が支持されている。各脚部38は筺体31に接合された胴部脚82a、82bと、タービンケーシング内構造物88に固定された固定脚83a、83bと、上記胴部脚82a、82bおよび固定脚83a、83bに螺合する調整ねじ87a、87bとから成り、調整ねじ87a、87bを適宜回転させることにより、脚部38の全長が微調整でき、筺体31の回転中心軸がタービンの回転中心軸に合致するように調整することができる。
【0031】
また図2に示すように、筺体31が必要以上に回転することを抑止するために、筐体固定ねじ36を利用したストッパ機構が胴部81に設けられている。
【0032】
上記筐体31の内部には、レーザー光源部1から出射されたレーザー光の光軸に対して45度傾斜した状態で筐体31の回転中心に設置された反射兼透過鏡33が固定されている。レーザー光源部1から出社されたレーザー光21は反射鏡兼透過鏡33により90度の角度で反射され、また一部は反射鏡兼透過鏡33を透過して筐体31の回転中心に固定されている第1の受光部34に達し、この第1の受光部34からの信号に基づいて一般的な測長の原理によってレーザー光源部1と計測部3との間の距離が計測される。
【0033】
一方、反射鏡兼透過鏡33において反射したレーザー光22は被計測物である静止部品11の内径部分に達し、この表面から反射されて、反射鏡兼透過鏡33に戻ってくる。反射鏡兼透過鏡33に達した光は、一部は反射され一部は透過し、筐体31の回転中心に対して角度90度で固定されている第2の受光部35に至る。
【0034】
第2の受光部35で検出されたレーザー光は、レーザー光源部1からの距離を計測することになるが、第1の受光部34で計測された距離を差し引くことによって、静止部品11と第2の受光部35との間の距離が算定される。静止部品11の反射が弱いなどの場合には、静止部品11の表面における反射率を高める特殊シートを静止部品11の表面に貼設して反射の感度を高めることもできる。
【0035】
計測作業は筐体31を90度ずつ回転し、各回転後の固定位置で静止部品11の他の計測必要点での距離の計測が可能である。それぞれの測定位置での静止部品11の内径部分と第2の受光部35との間の距離が計測され、相対的な位置の計測が実行される。最終的には、左右の計測値の小さな方を基準のゼロにして、それに対する相対値として計測値が整理される。
【0036】
筐体31を支持固定する脚部38の構成を図2に示す。図2において筐体31を支持する脚部38は、筐体31の周囲を囲う胴部81と、そこから筐体中心から放射状に延びる方向に沿って突設された胴部脚82a、82bと、静止部品11やタービンケーシング内の構造物88の内径部分に固定される固定脚83a、83bと、胴部脚82a,82bと固定脚83a,83bとの間の距離を変更調整できるように設けられた調整ねじ87a,87bとから成る。
【0037】
上記胴脚部82a,82bはレーザー光の通過を妨害しないような位置に配置される。また、胴部脚82a,82bは、トップスオン計測時に上半側の静止部品とも固定ができるように上半側にも胴部脚82c、82dのように設けられている。トップスオン計測時には必要に応じて、下半側と同じように固定脚83a,83bや調整ねじ87a,87bを使用することによりで筺体31および計測部3を所定位置に固定することができる。
【0038】
図3(a)は、図2に示す固定脚の底部の構成例を示し、図3(a)は図2におけるIIIa−IIIa矢視断面図であり、図2に示す固定脚83aを直角方向から見た断面図である。また、図3(b)は図3(a)おけるIIIb−IIIb矢視断面図である。
【0039】
固定脚83aは固定脚83bと同一の構造を有する。図3(a)において固定脚83aには、静止部品11やタービンケーシング内の構造物88の幅を挟み込むように、U字断面を有する底部押え84が設けられている。
【0040】
図3(b)に示すように、底部押え84の内部には、円柱状の円柱座85が固定されて設けられており、静止部品11等の内径部とは円弧同士の接触となる。この底部押え84の前後に固定ねじ86が複数個設けられており、静止部品の内径部に跨った底部押え84を両側から固定ねじ86,86で挟み込むようにして、底部押え84を静止部品11等に固定する。
【0041】
筐体中心から胴体脚82a,82bの端部までの長さ寸法は正確に計測されており、固定脚83a,83bについても円柱座85の外径端までの長さ寸法が正確に計測されている。マイクロメータ等によって静止部品11等の内径寸法に一致するように、調整ねじ87a,87bを回動せしめ、胴脚部82と固定脚83との間の脚長部分の距離を調整する。上記調整操作によって、計測の基準位置となる筐体31の中心から固定脚83a,83bの円柱座85までの寸法を静止部品11の内径寸法に設定することができる。
【0042】
上記のような調整操作により、計測部3の中心位置は、2本の脚部38の長さを静止部品11等の内径寸法に合致させることにより、静止部品11等の内径の芯に設定することができる。
【0043】
筐体31内部に配設された反射鏡兼透過鏡33によって90度方向に分岐され静止部品11に照射されるレーザー光22は、静止部品11の適切な軸方向位置に当たり反射する必要があるが、レーザー光22が反射する上記軸方向位置は、図3(a)に示すように、底部押え84において対向するように設けられた一対の固定ねじ86を回転させて調整し、前後の固定ねじ86の締付け度合いを変えることによって、静止部品11に対する固定脚83aのタービン回転軸方向の固定位置が調整できるように構成されている。
【0044】
次に、図4(a),図4(b)を参照して本実施例に係るタービン組立静止部品の位置計測装置を用いてタービンの静止部品の位置計測を行う際の手順を説明する。図4(a)および図4(b)は、タービンケーシング内における静止部品の芯の計測操作を示す斜視図であり、図4(a)はタービン回転軸方向の一端側(A側)における計測操作を示し、図4(b)は他端側(B側)における計測操作を示す斜視図である。図4(a)および図4(b)は、いずれも水平部分で上下方向に二分割されているタービンの静止部品であるタービンケーシング101の下半分の概略図を示している。いずれも上半分のケーシングが組み込まれていない「トップスオフ」の状態である。
【0045】
上記タービンケーシング101の前部および後部には、内部を流通する高圧流体の漏洩を防止するためのグランド部102a,102bが設けられていると共に、ローターに高圧流体を導入するための静止部品であるノズルダイヤフラム103が設置されている。
【0046】
従来のワイヤリング作業でケーシング内の静止部品の芯出しを実施する際には、ケーシングの軸方向に張設するピアノ線の位置設定を、ケーシングの上半を組込んでもローターの位置を確認できるケーシングのグランド部102a,102bの最も外側の内径部A、Bで実施している。
【0047】
すなわち、タービンケーシング101の前後に設けたグランド部102a,102bの最も外側の径部分の芯にピアノ線の位置を設定し、ケーシング内部のノズルダイヤフラム等の各位置を張設されたピアノ線を基準位置として相対的な距離を測定している。また内径部A,Bの部分が静止部品11を組み込む際の基準点になっている。
【0048】
本実施例に係る計測装置では、図4(a)に示すように、まずレーザー光源部1と計測部3とを用いて、照射するレーザー光21をタービンケーシング101のグランド部102a(A側)の芯に設定する操作を行う。レーザー光源部1をタービンケーシング101部分から離れた地点に設置する。計測部3をグランド部102aのA点部分にセットする。図2において既に説明したように、計測部3を支持する2本の脚部38の調整ねじ87a,87bを調整して、計測部3の回転中心とグランド部の内周面との距離をグランド部102aの内周面の半径と同じ長さに設定し、固定脚83a,83bをグランド部102aに固定して計測部3を所定位置に位置決めする。
【0049】
レーザー光源部1からレーザー光21を発射し、計測部3の筐体31を回転させグランド部102aの水平近傍の左右2点および真下部分の1点の3測定点にレーザー光を照射して計測部3から各測定点までの距離を計測し、位置を確認する。レーザー光源部1を載置しているテーブル(雲台)の傾斜角度、固定位置等を微調整して、計測部3の芯にレーザー光21が通るように調整する。
【0050】
次に、図4(b)に示すように、計測部3をタービン回転中心軸方向に移動させて、計測部3の回転中心とグランド部102bの内周面との距離をグランド部102bの内周面の半径と同じ長さに設定する。つまり、グランド部102bのB点部分の半径寸法に合わせて計測部3を同じようにセットする。
【0051】
レーザー光源部1よりレーザー光21を発射し、同様にレーザー光21のグランド部102bにおける位置を確認する。このときレーザー光21はグランド部102aにおいて計測したA点を通過している。
【0052】
このとき、図5に示すように、A点を通過したレーザー光21がB点において距離hの変位を生じていた場合には、レーザー光21がA点およびB点を共に通過するように、テーブル(雲台)に載置したレーザー光源部1からのレーザー光21の水平方向の照射位置Δdおよび上下方向の照射角度Δθについて微少調整移動を実施する。
【0053】
次に、再びA点部分に計測部3をセットして、レーザー光源部1からのレーザー光21の光路がグランド部102a,102bの芯に一致することを確認して、レーザー光21が計測の起点となる基準位置にあることを確認する。
【0054】
このように、レーザー光21がタービンケーシング101のグランド部102a,102bの芯を通るように設定された後に、計測部3をタービンケーシング101内部の静止部品であるノズルダイヤフラム103の内径部分に合わせてセットして、軸方向に出射されたレーザー光21から90度方向に反射されたレーザー光によってノズルダイヤフラム103の内径部分の水平近傍部の左右2点と真下部分の1点までの距離を計測する。これらの計測操作によりノズルダイヤフラム103の位置が計測される。
【0055】
上記の計測操作は、上半部品が組込まれていない状態で、いわゆる「トップスオフ状態」での計測であるが、上半部品やケーシングを組込んだ状態での「トップスオン状態」でも同様の手順によって計測が可能である。このとき、レーザー光源部1の位置設定状態を変えずにおけば、従来のワイヤリング計測では把握できなかった、トップスオン状態でのグランド部の位置変化も計測できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係るタービン組立静止部品の位置計測装置によれば、従来のワイヤリング作業のように細いピアノ線を基準位置に設定する必要がなく、また特殊なマイクロメータの使用することもなく、レーザー光の直進指向性を利用して静止部品間の距離等を正確に計測することが可能になる。しかも、計測作業は、誰でもが簡単に実施できる作業であり、通常技量の測定技術者であっても短時間で計測作業を実施できる。そのため、静止部品の位置決め作業が短時間で完了し、タービンの組立作業効率を大幅に改善することができる。
【0057】
すなわち、従来のワイヤリング法による計測のようにピアノ線の設定や特殊なマイクロメータの使用といった熟練者に限られていた作業を実施しなくても、容易迅速に静止部品の芯の位置計測を実施することが可能になる。
【符号の説明】
【0058】
1 レーザー光源部
2 電源・制御演算装置
3 計測部
11 静止部品(被計測物)
21,22 レーザー光
23a 信号ケーブル
23b 電源ケーブル
31 筐体(測光計測部)
32 ローラーボール(回転駆動機構)
33 反射鏡兼透過鏡
34 第1の受光部
35 第2の受光部
36 筐体固定ねじ
38 脚部
81 胴部
82,82a82b,82c,82d 胴部脚
83,83a,83b 固定脚
84 底部押え
85 円柱座
86 固定ねじ(軸方向位置調節機構)
87a,87b 調整ねじ(中心軸位置調節機構)
101 タービンケーシング
102a,102b グランド部
103 ノズルダイヤフラム
A 静止部基準点(A側)
B 静止部基準点(B側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンの回転中心に沿ってレーザー光を出射するレーザー光源部と、この出射レーザー光の光軸に対して45度の傾斜角度で配置され、上記出射レーザー光の一部を90度の角度で反射してタービンの静止部品に照射する反射鏡兼透過鏡と、上記回転中心に沿って出射され上記反射鏡兼透過鏡を透過したレーザー光を受光する第1の受光器と、上記静止部品に照射されて反射し上記反射鏡兼透過鏡を透過したレーザー光を受光する第2の受光器と、上記反射鏡兼透過鏡と第1の受光器と第2の受光器とを収容する筺体と、上記第1の受光器および第2の受光器の受信信号を演算してレーザー光源部から静止部品までの回転中心に沿う距離と上記回転中心から静止部品表面までの距離を演算する制御演算装置とを備え、上記反射鏡兼透過鏡と第1の受光器と第2の受光器とを収容した筺体がタービンの回転中心周りに回転自在に構成されていることを特徴とするタービン組立静止部品の位置計測装置。
【請求項2】
請求項1記載のタービン組立静止部品の位置計測装置において、前記筺体が円筒形状を有し、その円筒形状の筐体を回転自在に保持すると共に、この筐体を被計測物である静止部品に対して所定位置に設置するための脚部を備えることを特徴とするタービン組立静止部品の位置計測装置。
【請求項3】
請求項1記載のタービン組立静止部品の位置計測装置において、前記筺体をタービンの回転中心周りに回転自在に構成する機構としてリニアガイドで用いられるローラーボール駆動機構を用いたことを特徴とするタービン組立静止部品の位置計測装置。
【請求項4】
請求項1記載のタービン組立静止部品の位置計測装置において、前記レーザー光源部から発射され反射兼透過鏡を通過したレーザー光を第1の受光部で受光する一方、被計測物としての静止部品から反射されたレーザー光を第2の受光部で受光し、第1の受光部と第2の受光部とにおける信号差からタービンの回転中心から静止部品までの距離を計測することを特徴とするタービン組立静止部品の位置計測装置。
【請求項5】
請求項1記載のタービン組立静止部品の位置計測装置において、前記第1の受光部と第2の受光部との2箇所において受光したレーザー光の信号から距離の差を演算し被計測物としての静止部品と位置計測装置との相対位置を求めることを特徴とするタービン組立静止部品の位置計測装置。
【請求項6】
請求項1記載のタービン組立静止部品の位置計測装置において、前記筐体の回転中心を被計測物としての静止部品の内径中心に合わせて設定するための調節機構が脚部に設けられていることを特徴とするタービン組立静止部品の位置計測装置。
【請求項7】
請求項1記載のタービン組立静止部品の位置計測装置において、前記筐体のタービン回転軸方向の位置を調整するための調節機構が脚部に設けられていることを特徴とするタービン組立静止部品の位置計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−61297(P2013−61297A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201097(P2011−201097)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】