説明

ダイアフラムケース及びこれを用いた流量調整弁

【課題】装置コストの増大を抑えつつ、耐圧を向上させることが可能なダイアフラムケース等を提供する。
【解決手段】上蓋4と下蓋3の間にダイアフラム2を配置するとともに、ダイアフラム2と上蓋4の間に圧力作動室6を設けたダイアフラムケース1であって、上蓋4の外周端部に下方へ屈曲する折り曲げ部5を設けるとともに、折り曲げ部5の長さLに対応する厚さhのスペーサ7をダイアフラム2と下蓋3の間に配置し、折り曲げ部5と下蓋3を溶接する。また、スペーサ7は、上面視円環状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度式膨張弁等で使用されるダイアフラムケースの蓋構造に関し、特に、作動圧の高い冷媒の使用に適したダイアフラムケース及び流量調整弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーエアコン等の空調機器に使用される冷凍サイクルにおいては、冷房能力を安定させて効率よく運転するなどの目的から、凝縮器と蒸発器の間に配置した膨張弁の開度を制御し、冷凍サイクル内を循環する冷媒の流量調整を行っている。
【0003】
上記の膨張弁には、蒸発器の出口温度に応じて動作する温度式膨張弁が広く用いられ(例えば、特許文献1参照)、この膨張弁30は、図3に示すように、内部に弁室31を有する円柱状の弁本体32と、蒸発器の出口に設けられた感温筒33と接続される上面視略円形のダイアフラムケース34とを備える。
【0004】
弁本体32には、凝縮器からの液状冷媒を弁本体32内に流入させる流入管36と、弁室31内の液状冷媒を蒸発器に供給する流出管37とが接続される。また、弁体本32内には、流入管36から横方向に延びる第1冷媒通路38が設けられ、第1冷媒通路38の端部からは、第1冷媒通路38を弁室31に連通する第2冷媒通路39が延設される。
【0005】
弁室31内には、円錐状の上頭部を有する弁体41が収容され、弁体41の下方には、弁体41を上方に付勢するばね42が配置される。ばね42は、弁体41の下端部と当接する状態で配置されたばね受け部材43と、弁本体32の下部に配置されたばね支持部材44との間に介設される。また、弁本体32の下端部には、弁本体32の内部空間を密閉するためのキャップ46が装着され、その内部にはパッキン45が配置される。
【0006】
ダイアフラムケース34は、弁本体32の上部に配置され、その内部には、ステンレスの薄板等からなるダイアフラム48が収容される。ダイアフラム48の外周端部は、弁本体32の上部に接続される下蓋49と、下蓋49と対向して配置される上蓋50とによって挟持される。これらダイアフラム48、下蓋49及び上蓋50は、図4に示すように、それらの外周端で溶接され(溶接部58参照)、相互に固着されて一体化される。
【0007】
図3に戻り、ダイアフラム48と上蓋50の間には、システム冷媒等が封入され、圧力作動室53が形成される。また、上蓋50の中央部には、キャピラリチューブ54の一端が挿入され、キャピラリチューブ54を介して圧力作動室53及び感温筒33が接続される。さらに、ダイアフラム48の下方には、圧力作動室53の内圧に応じて上下に昇降する可動ストッパ55が配置され、可動ストッパ55の下面には、弁体41と連結する複数の作動棒56が付設される。
【0008】
上記膨張弁30において、蒸発器の出口温度が上昇すると、感温筒33内の冷媒が膨張して体積が増加し、キャピラリチューブ54を介して圧力作動室53の内圧が上昇する。そして、ダイアフラム48が押圧されて可動ストッパ55を押し下げ、作動棒56を通じて弁体41を下降させる。こうして、弁体41の上頭部を第2冷媒通路39から離間させて弁孔51を開き、流入管36と流出管37の間の流路を開放する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−135841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、冷凍サイクルにおいては、R410a等の高圧で作動する冷媒を使用するケースが増加しており、こうした冷媒を用いた場合には、圧力作動室53の内圧が達し得る最大圧が大きく引き上げられることになる。
【0011】
しかし、従来の膨張弁30のダイアフラムケース34では、図4に示すように、下蓋49の上面と上蓋50の下面とを接触させ、その状態で両者の外周端を溶接するため、圧力作動室53の内圧が引き上げられると、溶接部58が上下に裂けてダイアフラムケース34が破損する虞がある。
【0012】
このため、図5に示すように、下蓋61及び上蓋62の外周端部に折り曲げ部63、64を設けるとともに、折り曲げ部63、64の端部を溶接して下蓋61と上蓋62を固定するダイアフラムケース65が提案されている。
【0013】
上記構成によれば、圧力作動室66の内圧上昇に伴う応力が溶接部67に直接作用しないため、溶接部67に過大な力が加わるのを回避することができ、耐圧を向上させることが可能になる。しかし、かかるダイアフラムケース65では、下蓋61及び上蓋62の双方において、外周端部に折り曲げ部63、64を設けた専用品を使用する必要があるため、装置コストの増大を招くという問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、装置コストの増大を抑えつつ、耐圧を向上させることが可能なダイアフラムケース等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は、上蓋と下蓋の間にダイアフラムを収容するとともに、該ダイアフラムと前記上蓋の間に圧力作動室を設けたダイアフラムケースであって、前記上蓋の外周端部に下方へ屈曲する折り曲げ部を設けるとともに、該折り曲げ部の長さに対応する厚さのスペーサを前記ダイアフラムと前記下蓋の間に配置し、前記折り曲げ部と前記下蓋を溶接することを特徴とする。
【0016】
そして、本発明によれば、上蓋の外周端部に折り曲げ部を設け、折り曲げ部と下蓋を溶接するため、圧力作動室から遠ざけて溶接部を形成することができ、耐圧を向上させることが可能になる。加えて、ダイアフラムと下蓋の間にスペーサを配置するため、下蓋に従来と同様の部材を流用し得るようになり、装置コストの増大を抑えることも可能になる。
【0017】
上記ダイアフラムケースにおいて、前記スペーサを上面視円環状に形成することができ、これによれば、ダイアフラムの下方に配置される可動体の動きを妨げることなく、スペーサを配置することができる。
【0018】
また、本発明は、上蓋と下蓋の間にダイアフラムを収容するとともに、該上蓋とダイアフラムの間に圧力作動室を形成したダイアフラムケースを備え、前記圧力作動室の内圧に応じて弁体を駆動させ、冷媒流量を調整する流量調整弁であって、前記ダイアフラムケースは、前記上蓋の外周端部に下方へ屈曲する折り曲げ部を設けるとともに、前記折り曲げ部の長さに対応する厚さのスペーサを前記ダイアフラムと前記下蓋の間に配置し、前記折り曲げ部と前記下蓋を溶接することを特徴とする。本発明によれば、前記発明と同様に、装置コストの増大を抑えつつ、耐圧を向上させることが可能になる。
【0019】
上記流量調整弁において、前記スペーサを上面視円環状に形成することができ、また、流量調整弁を温度式膨張弁とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、装置コストの増大を抑えつつ、耐圧を向上させることが可能なダイアフラムケース等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明にかかるダイアフラムケースを適用した温度式膨張弁の一実施の形態を示す全体図である。
【図2】図1のダイアフラムケースの拡大断面図である。
【図3】従来の温度式膨張弁の構成を示す全体図である。
【図4】図3のダイアフラムケースの拡大断面図である。
【図5】ダイアフラムケースの改良例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明にかかるダイアフラムケースを適用した温度式膨張弁の一実施の形態を示す全体図である。なお、同図において、図3と同一の構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0024】
ダイアフラムケース1は、上面視略円形状に形成され、弁本体32の上部に配置される。ダイアフラムケース1の内部には、ステンレスの薄板等からなるダイアフラム2が収容され、ダイアフラム2の外周端部は、弁本体32の上部に接合される下蓋3と、下蓋3と対向して配置される上蓋4とによって挟持される。
【0025】
ダイアフラム2と上蓋4の間には、システム冷媒等が封入され、圧力作動室6が形成される。また、上蓋4の中央部には、キャピラリチューブ54の一端が挿入され、キャピラリチューブ54を介して圧力作動室6及び感温筒33が接続される。ダイアフラム2の下方には、圧力作動室6の内圧に応じて上下に昇降する可動ストッパ55が配置され、可動ストッパ55の下面には、弁体41と連結する複数の作動棒56が付設される。
【0026】
上蓋4の外周端部には、図2に示すように、下方へ屈曲する折り曲げ部5が形成され、また、ダイアフラム2の下面と下蓋3の上面との間には、上面視円環状のスペーサ7が介設される。このスペーサ7は、折り曲げ部5の長さLを長くした場合に生じるダイアフラム2及び下蓋3間の不要な隙間を埋めるためのものであり、その厚さhは、折り曲げ部5の長さLに応じて適宜定められる。なお、スペーサ7は、SUS、真鍮等の金属によって形成される。
【0027】
また、ダイアフラム2の外周端部にも、上蓋4の折り曲げ部5に対応して、下方に屈曲する折り曲げ部が形成される。これに対し、下蓋3は、その外周端部に折り曲げ部が形成されず、図3に示す従来の下蓋49と同等の部材が流用される。上蓋4及び下蓋3は、上蓋4の外周端部と下蓋3及びスペース7の外周端部との間にダイアフラム2の外周端部を挟持するように、上蓋4の内側に下蓋3を嵌合させた後、ダイアフラム2の折り曲げ部の下端と、上蓋4の折り曲げ部5の下端と、下蓋3の外周端部とを溶接することによって接合される(溶接部8参照)。
【0028】
上記構成によれば、上蓋4の外周端部に折り曲げ部5を設け、その上で、折り曲げ部5及び下蓋3を溶接して上蓋4と下蓋3を固定するため、圧力作動室6から遠ざけて溶接部8を形成することができる。このため、作動圧の高い冷媒を使用して圧力作動室6の内圧が高くなる場合でも、溶接部8に過大な力が加わるのを回避し、溶接部8の破損を防止することが可能になる。
【0029】
加えて、ダイアフラム2と下蓋3の間にスペーサ7を配置するため、ダイアフラム2と下蓋3の間に不要な隙間を生じさせることなく、上蓋4の折り曲げ部5の長さLを長くすることができる。これにより、下蓋3に従来と同様の部材を流用しつつ、溶接部8を圧力作動室6から遠ざけることができ、装置コストの増大を抑えながら、耐圧を向上させることが可能になる。
【0030】
なお、上記実施の形態においては、本発明にかかるダイアフラムケースを温度式膨張弁に適用した場合を例示したが、本発明は、水位調整弁等の他の流量調整弁や圧力センサ等にも広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 ダイアフラムケース
2 ダイアフラム
3 下蓋
4 上蓋
5 折り曲げ部
6 圧力作動室
7 スペーサ
8 溶接部
31 弁室
32 弁本体
33 感温筒
36 流入管
37 流出管
38 第1冷媒通路
39 第2冷媒通路
41 弁体
42 ばね
43 ばね受け部材
44 ばね支持部材
45 プラグ
46 カバー
51 弁孔
54 キャピラリチューブ
55 可動ストッパ
56 作動棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上蓋と下蓋の間にダイアフラムを収容するとともに、該ダイアフラムと前記上蓋の間に圧力作動室を設けたダイアフラムケースであって、
前記上蓋の外周端部に下方へ屈曲する折り曲げ部を設けるとともに、該折り曲げ部の長さに対応する厚さのスペーサを前記ダイアフラムと前記下蓋の間に配置し、前記折り曲げ部と前記下蓋を溶接することを特徴とするダイアフラムケース。
【請求項2】
前記スペーサが上面視円環状に形成されることを特徴とする請求項1に記載のダイアフラムケース。
【請求項3】
上蓋と下蓋の間にダイアフラムを収容するとともに、該上蓋とダイアフラムの間に圧力作動室を形成したダイアフラムケースを備え、前記圧力作動室の内圧に応じて弁体を駆動させ、冷媒流量を調整する流量調整弁であって、
前記ダイアフラムケースは、前記上蓋の外周端部に下方へ屈曲する折り曲げ部を設けるとともに、前記折り曲げ部の長さに対応する厚さのスペーサを前記ダイアフラムと前記下蓋の間に配置し、前記折り曲げ部と前記下蓋を溶接することを特徴とする流量調整弁。
【請求項4】
前記スペーサが上面視円環状に形成されることを特徴とする請求項3に記載の流量調整弁。
【請求項5】
該流量調整弁が温度式膨張弁であることを特徴とする請求項3又は4に記載の流量調整弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−281337(P2010−281337A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132918(P2009−132918)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】