説明

ダイシング装置、ダイシング装置ユニット、及びダイシング方法

【課題】装置が大型化せず、作業性を向上させるとともに装置の重心を安定させることが可能であるダイシング装置、ダイシング装置ユニット、及びダイシング方法を提供すること。
【解決手段】X移動軸4と、X移動軸4と垂直に交差するY移動軸5とが平面視方形に形成されたダイシング装置1の方形匡体2の対角線上に配置され、且つ、ダイシング装置1の略中央部にワーク切断加工部9が配設されているとともに、X移動軸4が配置された一端側にワーク交換部13が設けられ、X移動軸4のワーク切断加工部9を挟んでワーク交換部13と反対側には、ワークWの切断時にブレード21の回転に伴って飛散する廃液又はミストを排出する排出口11及び排気口12を有する排出機構8が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置や電子部品が形成されたワーク等のワークを個々のチップに分割するダイシング装置、ダイシング装置ユニット、及びダイシング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や電子部品が形成されたワーク等のワークに対して切断や溝入れ加工を施すダイシング装置は、スピンドルによって高速に回転されるブレードやワークを保持するワークテーブル、ダイシング後のワークを洗浄する洗浄手段、ブレードとワークとの相対的位置を変化させる移動手段としての各種移動軸等を備えている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図1にダイシング装置の例を示す。ダイシング装置10は、互いに対向配置され、先端にブレード21とフランジカバー(不図示)が取り付けられた高周波モータ内蔵型のスピンドル22、22と、ワークW表面を撮像する撮像手段23と、ワークWを吸着保持するワークテーブル31とを有する加工部20が設けられている。
【0004】
ダイシング装置10は、加工部20の他に加工済みのワークWをスピン洗浄する洗浄部52と、フレームFにマウントされたワークWを多数枚収納したカセットを載置するロードポート51と、ワークWを搬送する搬送手段53と、撮像手段23により撮像された画像を表示し各部への動作を入力する表示手段24と、各部の動作を制御する不図示のコントローラ等とから構成されている。
【0005】
加工部20の構造は、図2に示すように、Xベース36に設けられたXガイド34、34でガイドされ、モータ35によって図のX−Xで示すX方向に駆動されるXテーブル33があり、Xテーブル33にはθ方向に回転する回転テーブル32を介してワークテーブル31が設けられている。
【0006】
一方、Yベース44の側面には、Yガイド42、42でガイドされ、図示しないモータとボールスクリューによって図のY−Yで示すY方向に駆動されるYテーブル41、41が設けられている。各Yテーブル41には夫々図示しない駆動手段によって図のZ−Zで示すZ方向に駆動されるZテーブル43が設けられ、Zテーブル43には先端にブレード21が取り付けられた高周波モータ内蔵型のスピンドル22及び撮像手段23(図2において不図示)が固定されている。加工部20の構造は以上のようになっているので、ブレード21はY方向にインデックス送りされるとともにZ方向に切込み送りされ、ワークテーブル31はX方向に切削送りされる(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
スピンドル22は、どちらも1,000rpm〜80,000rpmで高速回転され、近傍にはワークW又はブレード21へ切削液、冷却液を供給する不図示の供給ノズルが設けられている。供給された切削液、冷却液は加工に使用された後、ワークテーブル31を囲うように設けられたオイルパン(図1において不図示)に廃液として流れ込む。オイルパンに流れ込んだ使用済みの切削液、冷却液はオイルパンの下流側に形成された排出口より排出管を経由して外部へ排出される。なお、オイルパン上にはワークテーブル31の移動に合わせて伸縮する蛇腹カバーが設けられ、切削水、冷却水のXガイド34、34等の駆動機構への浸入を防いでいる(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
加工部20の周囲は防護カバー25により囲まれ、加工時の飛沫やミストが周囲に飛散することを防止している(例えば、特許文献4参照。)。また、加工部20内には浮遊するミストを装置外へ排出するための不図示の排出口が設けられている(例えば、特許文献5参照。)。
【0009】
近年これらのダイシング装置においては、半導体装置や電子部品の量産化、低価格化によるワークサイズの大型化にともない、移動軸のストロークが長大化し装置サイズの大型化が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−280328号
【特許文献2】特開平11−77461号
【特許文献3】特開2002−103177号
【特許文献4】特開2006−247760号
【特許文献5】特開2003−124150号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、装置が大型化すると設置面積が増大し、設備にかかる費用も増大させることとなり、より効果的なコストダウンを行うことができないという問題が生じていた。そのため、より設置面積の小さいダイシング装置が求められることとなるが、従来ダイシング装置の移動軸は装置外形に対して平行又は直角に配置され、移動軸のストロークが長大化すれば長大化した長さに合わせて装置の外形も長大化する必要があった。
【0012】
また、特許文献1に記載されるダインシング装置では、ワークが筐体上を左右方向に走行することでブレードがオペレータから遠く離れた筐体の中央部に存在し、一方のブレードはオペレータから見てスピンドルに隠れることとなる。このため、ブレードの交換作業、精度確認調整作業、切削水ノズルの調整等が行い難いという問題があった。このような作業を行うためには状況に合わせて装置の側方や背後に回りこむ必要があり、装置間には必ず空間が設けられ、密接して設置されることがなかった。しかし、装置の大型化により側方部や背後に作業用のスペースを確保することが困難になってきている。
【0013】
これに対し、大型化した装置で加工部へのアクセス性を向上させるため、特許文献2に記載される切削装置のように駆動機構を片側へ偏倚させる方法があるが、ワーク切断加工時に生ずる振動を抑えるためにワーク切断加工部を支持する部分は十分な剛性を持たせているので重量が大きくなる。そして、重量の大きい部分はダイシング装置の中心に対して片側に偏倚していると全体として重心位置もダイシング装置の中心から変位してアンバランスになる。その結果、ダイシング装置が全体のバランスを崩して振動し易くなり、ダイシング装置に予め設定した切断精度が維持されなくなる問題が生じる。
【0014】
更に、量産化、ワークサイズの大型化による加工量が増大すると、切削屑等を含んだ使用済みの切削水や冷却水(以下、コンタミと称する)も大量に生じる。コンタミはブレードの回転方向に沿った延長線上に主に飛散し、ダイシング装置の方形筐体の壁面がブレードに対して直角又は略直角に形成されている場合、方形筐体若しくは方形筐体に相当する壁部分に衝突して跳ね返った切削水は壁面を流れ落ちるかミストとして周囲に散乱する。量産化、ワークサイズの大型化により増大したコンタミは流れ落ちる壁面やミストとして付着した箇所で乾燥して大量に堆積することになり、次に加工されるワークの汚染、排出路の詰り、内部確認用カバー表面の曇りにより視認性低下など様々な問題となる。このため、生じた大量のコンタミの発生を抑え、速やかに排出する必要があった。
【0015】
本発明はこのような問題に対して成されたものであり、ワークサイズの大型化に対応するため移動軸のストロークを長大化させても装置が大型化せず、各種調整作業やメンテナンス作業の作業性を向上させるとともに装置の重心を安定させることが可能であるダイシング装置、ダイシング装置ユニット、及びダイシング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明に係るダイシング装置は、ワークを載置したワークテーブルと、該ワークを切断するブレードと、該ワークテーブル上のワークを前記ブレードに対して相対的に移動させるワークテーブル送り機構と、前記ブレードを回転可能に取り付けた1つ以上のスピンドルと、該スピンドルを支持するスピンドル移動機構と、を備え、該スピンドル移動機構と前記ワークテーブル送り機構とが互いに直交して配設されたダイシング装置において、前記スピンドル移動機構と前記ワークテーブル送り機構は、平面視方形に形成されたダイシング装置の方形筐体の対角線上に配置され、且つ、前記ダイシング装置の略中央部にワーク切断加工部が配設されているとともに、前記ワークテーブル送り機構が配置された一端側にワーク交換部が設けられ、前記ワークテーブル送り機構の前記ワーク切断加工部を挟んで前記ワーク交換部とは反対側には、前記ワークの切断時に前記ブレードの回転に伴って飛散する廃液又はミストを排出する排出部が設けられることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、装置で長い距離を有する対角線方向に最も距離を必要とするX移動軸とY移動軸が配置され、装置の大型化を防ぎ省スペース化されたダイシング装置とすることが可能となる。また、スピンドル移動機構に取り付けられたブレードでワークを切断するとき、ブレードの回転に伴って飛散する廃液(切削水や洗浄水など)やミストをその飛散方向に設けた排出部から装置外部に排出することが可能となる。
【0018】
また、ワーク切断加工部の剛性が高くて重量が大きい場合でも、重量の大きい部分がダイシング装置の中心部に一致するために、ダイシング装置の重心位置がダイシング装置の中央位置と略一致してダイシング装置全体のバランスが安定化する。その結果、加工時に移動軸により発生する振動の伝搬を最小限に留めることが可能となり、軸移動時間の短縮と、ダイシング装置に設定した加工精度を常に維持する効果をもたらす。
【0019】
また、ブレードを交換する際は、ワーク交換部に対峙している何れのブレードも簡便に交換することができる。さらにブレード交換後のブレードの取り付け状態などの確認及び調整等を簡便に行うことができる。
【0020】
本発明の一態様は、前記排出部には、前記廃液又はミストを排出するための流出口を有する排出機構が配設され、前記排出機構は、前記流出口に向かうにつれて幅狭となるように構成されることが好ましい。また、前記排出機構には、前記廃液又はミストを前記流出口に収束させるための1対のガイド部材が前記廃液又はミストの飛散方向の略延長線上に設けられることがより好ましい。
【0021】
この態様によれば、排出機構に流れ込んだ廃液(切削水や洗浄水など)やミストは、流出口(排出口や排気口)に接近するに伴い幅狭になる排出路を通過することにより、流出口に向けて収束するように流れて、流速を大きくしつつ流出口から装置外部に排出される。
【0022】
また、本発明の一態様は、前記ワーク切断加工部から流れ出る廃液を受けるオイルパンが前記ワークテーブルを囲むように設けられ、該オイルパンの一端には前記排出機構が配設され、前記オイルパンは前記ワーク切断加工部から前記排出機構へ向かうに伴い幅狭になるように形成されていることが好ましい。
【0023】
この態様によれば、オイルパンがワーク切断加工位置にて幅広に形成されているので、ワーク切断加工部から流れ出る廃液はオイルパンにより広範囲に受け止められるとともに、オイルパンは排出機構に向かうに伴い幅狭になるように形成されているので、オイルパンに流れ込んだ廃液は流速を大きくしながら排出機構に向かって流れ、流出口から装置外部に排出される。
【0024】
また、本発明の一態様は、前記ワーク交換部が設けられた側の前記方形筐体の角には、前記スピンドル移動機構と略平行となるように斜めに切欠かれた切欠き箇所が設けられていることが好ましい。
【0025】
この態様によれば、ダイシング装置の方形筐体の一つの角がスピンドル移動機構と略平行となるように斜めに切欠かれているため、ワーク交換部のワークが容易に交換可能であるとともに、切欠き箇所と平行に対峙したスピンドルやスピンドルに取り付けられたブレードなども容易に視認することが可能になり、メンテナンス性が向上する。
【0026】
また、上記態様において、前記方形筐体の前記切欠き箇所にワーク交換及びメンテナンスを行うための開口部が設けられていることがより好ましい。
【0027】
この態様によれば、ダイシング装置の方形筐体の切欠き箇所には開口部が設けられているため、開口部からはワーク交換部のワークが容易に交換可能であって、平行に対峙したスピンドルやスピンドルに取り付けられたブレードなども容易に視認することが可能になるとともに、アクセス距離が短くなる。
【0028】
また、本発明の一態様は、前記スピンドル移動機構には、該スピンドル移動機構が配置される前記方形筐体の対角線方向に沿って2つのスピンドルが対向するように配置されることが好ましい。
【0029】
また、前記目的を達成するために、本発明に係るダイシング装置ユニットは、本発明に係るダイシング装置を偶数台設置してなるダイシング装置ユニットであって、前記方形筐体の前記ワーク交換部同士が互いに隣接するように2台を一組として配置することにより構成されることを特徴とする。
【0030】
また、前記目的を達成するために、本発明に係るダイシング方法は、本発明に係るダイシング装置を用いたダイシング方法であって、前記ワークを前記方形筐体の一方の対角線方向に沿って搬送し、該方形筐体の略中央部に位置する前記スピンドル移動機構と前記ワークテーブル送り機構とが互いに直交した前記ワーク切断加工部にて停止させた後、回転する前記ブレードと前記ワークとを相対的に移動させることにより該ワークを切断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、装置外形の対角線方向に配置された移動軸により、ワークサイズの大型化に対応するため移動軸のストロークを長大化させても装置が大型化せず、各種調整作業やメンテナンス作業の作業性を向上させるとともに装置の重心を安定させ、コンタミやミストの排出効率が高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来のダイシング装置の外観を示す斜視図。
【図2】図1に示したダイシング装置の加工部の構造を示した斜視図。
【図3】本発明に係わるダイシング装置の平面図。
【図4】排出機構を拡大した平面図。
【図5】本発明に係わるダイシング装置ユニットの平面図。
【図6】ダイシング装置ユニットの別の形態を示した平面図。
【図7】ダイシング装置ユニットの更に別の形態を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面に従って本発明に係るダイシング装置の好ましい実施の形態について詳説する。まず初めに、本発明に係わるダイシング装置の構成について説明する。図3は本発明に係わるダイシング装置の平面図である。
【0034】
図3に示すように、ダイシング装置1の本体部である方形筐体2は平面視形状で方形に形成されている。方形筐体2上には、ワークWが載置されるワークテーブル3と、ワークテーブル3を図3に示す矢印X方向に移動させるワークテーブル送り機構としてのX移動軸4と、スピンドル22、22を矢印Y方向に移動させるスピンドル移動機構としてのY移動軸5が設けられたYベース6と、ワークテーブル3を囲むようにX移動軸4周囲に設けられたオイルパン7と、使用後の切削水、冷却水排、ミスト等を装置外へ排出する排出機構8と、が設けられている。
【0035】
X移動軸4はボールネジやリニアモータ等を用いた直動駆動軸であって、方形筐体2の図3における右側下部と左側上部を結ぶ第1対角線上に設置される。X移動軸上には不図示の移動テーブルが設けられ、テーブル上に設けられた不図示のθ回転軸に取り付けられるワークテーブル3はX方向へ往復移動するとともに回転移動される。
【0036】
Y移動軸5は門型構造を有するYベース6に設けられ、方形筐体2の図3における左側下部と右側上部を結ぶ第2対角線上に設けられる。このとき、Yベース6がX移動軸4を跨ぐようにダイシング装置1略中央部でX移動軸4とY移動軸5とが直交する。
【0037】
これにより、重心位置がダイシング装置1の中央位置と略一致しているので、ダイシング装置1全体のバランスが安定化する。よって、ワーク切断加工時にダイシング装置1の重心のアンバランスに起因する振動の発生が極力制止されるため、ダイシング装置1に設定した加工精度が安定的に維持される。
【0038】
Y移動軸5には先端にブレード21、21が取り付けられたスピンドル22、22が対向して取り付けられている。ダイシング装置1略中央部のX移動軸4とY移動軸5とが直交する部分にはワーク切断加工部9が設けられ、ワーク切断加工部9においてブレード21,21によりワークWが切断加工される。本実施例のワーク切断加工部9においては、ブレード21,21を保持するスピンドル22,22の移動距離を対角線の長さに応じて長くできるため、大口径のワークWであってもこれを効率良く切断することができる。
【0039】
なお、方形筐体2周囲及びワーク切断加工部9周囲は内部を遮蔽するための不図示の各種カバーにより囲まれている。
【0040】
また、Y移動軸5が設けられたYベースは方形筐体2を支える四隅の支柱を共用してもよく、剛性の高い門型構造を特別に設けなくとも、ダイシング装置1内にY移動軸5を効率良く配置でき、高剛性かつ高精度のダイシング装置1を構成することが可能である。
【0041】
オイルパン7は、ワーク切断加工部9から流れ出る使用済みの切削水や洗浄水の廃液を受けるオイルパンであり、ワークテーブル3を囲むようにX移動軸4周囲に設けられている。図3の矢印Aで示されるブレード21の回転方向に沿った延長線上であるオイルパン7の一端には排出機構8が設けられている。
【0042】
オイルパン7はワーク切断加工部9にて幅広に形成され、排出機構8に向かうに伴い幅狭かつ下降傾斜するように形成されている。これにより、切削水等の廃液はオイルパン7により広範囲で受け止められる。また、オイルパン7の下流側の該排出機構8へ向かうに伴い次第に狭くなっているので、切削水等の廃液の流速が相対的に速くなり廃液の捕集効率を一層高めることができる。
【0043】
なお、オイルパン7の底部はX移動軸4よりも高い位置に形成され、X移動軸4はオイルパン上に設置されたワークテーブル31の移動に合わせて伸縮する不図示の蛇腹カバーに覆われている。これにより切削水、冷却水のX移動軸4への浸入を防いでいる。
【0044】
排出機構8は排出口11を有し、排出口11は高速回転するブレード21,21でワークWを切断する際に、ブレード21の回転方向である矢印Aに沿って切削水や洗浄水が飛散する方向の略延長線上に配置されている。また、排出口11真上にはミストを排出するための排気口12が形成されている。
【0045】
排出機構8は、図4に示すように最下流側に設けた排出口11及び排気口12に接近するに伴い幅狭になるように形成されている。例えば、方形筐体2の一つの角部の壁面を左右一対の水流ガイド部材8A、8Aとして構成されている。
【0046】
これにより、オイルパン7より流れこんだ使用済みの切削液やミストは排出口11及び排気口12に接近するに伴い、流速を増加さながら排出口11及び排気口12に向かってスムーズに排出される。また、ブレード21、21の回転方向に沿って飛散する切削水やミストは、図4の矢印Pのように水流ガイド部材8A、8Aに当たってその内側中央に収束する。そして、収束した切削水やミストは排出口11及び排気口12によって効率良く捕集される。
【0047】
X移動軸4の排出機構8が設けられた側とは反対側の一端にはワーク交換部13が設けられ、ワーク交換部13が設けられた側の方形筐体2の角はY移動軸5と略平行となるように斜めに切欠かれている。方形筐体2の切欠かれた部分には、ワーク交換部13のワークWを交換及びワーク切断加工部9周囲のメンテナンスを行うための開閉カバー付き開口部14がダイシング装置1を囲むカバーに形成されている。
【0048】
これにより、ワーク交換部13にY移動軸5と略平行に形成された開口部14が設けられているので、ブレード21,21を交換する際には、オペレータMは開口部14から2つのブレード21,21の何れも簡便に交換できる。更に、交換後のブレード21,21の取り付け状態などの確認・調整、例えば、ブレード21,21の同軸度調整・確認並びにブレード21,21のワークWに対する真直度の確認、調整作業も、開口部14から簡便に実施できる。この場合、ブレード21,21のワークWに対する真直度は、ワークWの切断方向における正面側から正確かつ容易に視認できる。
【0049】
また、ブレード21,21のスピンドル22,22に対する取り付け同軸度は、ワークWの切断方向に対して直角方向より視認することができる。更に、ブレード21,21の同軸度調整並びにブレード21,21のワークWに対する真直度の確認、調整は双方ともに、ダイシング装置1の開口部14から斜め45度の方向にて視ることができる。これにより、ブレード21,21の同軸度及び真直度の確認、調整作業を行う際、オペレータMはダイシング装置1の開口部14から実行できるので、従来例のようにダイシング装置1の側面若しくは背面側に回る必要がない。
【0050】
また、スピンドル22,22の定期的な端面調整についても、同様に開口部14が形成された側だけで実行できるので、従来のようにダイシング装置1の側面若しくは背面側に回ることなく簡便に作業を行える。更に、切削水、洗浄水、及び冷却水を供給するためのノズルの位置調整についても同様に、開口部14にて簡便に作業を行える。
【0051】
なお、ダイシング装置1の所定位置には、操作・表示部、撮像手段、モニターテレビ、表示灯及びコントローラ(図示せず)等が設けられている。
【0052】
更に、本実施の形態に係るダイシング装置1は、図5に示すように、2台一組として互いに突き合わせた形態で偶数組設置することにより、ダイシング装置ユニット16を構成することができる。この場合、各組のダイシング装置1、1の方形筐体2の切欠けられた斜辺縁部(開口部14,14)同士が互いに隣接するように配置される。
【0053】
このダイシング装置ユニット16によれば、2台、又は図6に示すように4台のダイシング装置1が突き合わせて並置されることにより、ワークWの個数が多数であってもダイシング加工の生産性を向上させることができる。
【0054】
また本発明では、図6に示すように2台のダイシング装置1、1の間にローダ17を共通に設置することができる。このように構成すると2台のダイシング装置1、1でローダ17を共用化でき、設備コストの低減化が可能になる。また、図6に示すように、ダイシング装置ユニット16の隣接部外側には、排出口11や排出管15を含む配管エリア18を共用できる。このように構成すると、配管エリア18の共用化に伴い、ダイシング設備の省スペース化及び配管コストの低減化が可能になる。
【0055】
更に、隣接する4台のダイシング装置1、1、1、1同士を互いにつき合わせて配置することにより、配置スペースの一層の有効活用が可能になるので、ダイシング装置1台当たりの専有面積が小さくなり、設備の大幅な省スペース化が可能になる。
【0056】
偶数台のダイシング装置1、1を一個所に並置した場合でも、オペレータMは、隣接する切欠個所のスペースが増大するため作業性が向上し、左右両側の開口部14、14から2台の各ダイシング装置1、1の双方のブレード21,21、スピンドル22,22及びノズルに対するアクセス距離が短くなる。よって、ブレード21、21の交換、ブレード21、21の同軸度若しくは真直度の確認、調整、スピンドル22,22の端面調整並びにノズルの位置調整を行う際に、当該確認調整作業、端面調整作業及び位置調整作業をより簡便に実施でき、保守点検作業性を大幅に向上させることができる。
【0057】
次に、上記ダイシング装置1を用いたダイシング加工方法について説明する。まず、スピンドル22、22にブレード21、21を取り付けるとともに、ワークテーブル3にワークWを載置固定する。次いで、ワークテーブル3をX移動軸4により方形筐体2の第1対角線方向に沿って方形筐体2の略中央部側に搬送させ、ワーク切断加工部9にワークWを所定の移動速度で搬入させる。
【0058】
続いて、ワーク切断加工部9の中心に向かってスピンドル22、22を移動させ、スピンドル22、22に取り付けたブレード21,21を高速回転させながらワークWの切断加工を行う。加工中、スピンドル22,22先端に設けた不図示の切削水用ノズル及び洗浄用ノズルから夫々切削水、洗浄水、及び冷却水をワークWの加工ポイントに供給する。
【0059】
続いて、供給された切削水(洗浄水、冷却水を含む。以下同じ。)は、オイルパン7により受けられた後、オイルパン7の下流側に流れて排出口11より排出管15を通過して装置外部に排出される。又、加工時に切削水と共にミストがブレード21,21の回転方向である矢印Aに沿って飛散し、飛散したミストは上昇しつつワーク切断加工部9から方形筐体2の排出機構8側に向かって流れる。方形筐体2の排出機構8側に流れたミストは、排出口11の上方に設けた排気口12より不図示の排気管を通過して外部に排出される。
【0060】
続いて、ワークWに対する1つの切断ラインに沿うダイシング加工が終了すると、ブレード21,21は、次に加工する隣の切断ラインにインデックス送りされて位置決めされ、同様の加工手順により当該切断ラインに沿うダイシング加工が実施される。
【0061】
ダイシング加工が繰り返されることにより、所定数の切断ラインに沿うダイシング加工が全て終了すると、ワークテーブル3と共にワークWを90度回転させて、同様の加工手順により切断ラインと直交する方向の切断ラインに沿ってダイシング工が行われる。
【0062】
続いて、当該切断ラインに沿うダイシング加工が全て完了すると、ワークWは多数のチップに切断分割される。この後、ワークWを載置したワークテーブル3はX移動軸4によりワーク交換部13に搬送され、次に加工すべきワークWと交換される。この後、上記した加工手順に従って当該ワークWのダイシング加工が新たに実施される。
【0063】
所定数枚のワークWをダイシング加工すると、オイルパン7の最下流側底部に設けた排出機構8の近傍に研削屑(研削粉を含む)が堆積するので、ダイシング装置1の稼動を定期的に停止して、オイルパン7の清掃が実行される。
【0064】
これにより、オペレータMはこの開口部14からブレード21、21、スピンドル22、22及び切削水等を供給する不図示のノズルまでのアクセス距離が短くなり、方形筐体2の外形寸法が大きい場合でもブレード21、21の交換作業、ブレード21、21の同軸度若しくは真直度の確認、調整作業、スピンドル22、22の端面調整作業並びにノズルの位置調整作業を容易迅速に行うことができ、これらの作業性が従来例に比し大幅に向上する。
【0065】
以上、説明したように、本発明に係わるダイシング装置、ダイシング装置ユニット、及びダイシング方法によれば、ダイシング装置の方形筐体で長い距離を有する対角線方向に最も距離を必要とするX移動軸とY移動軸が配置され、装置の大型化を防いで省スペース化され、各種調整作業やメンテナンス作業の作業性を向上させるとともに装置の重心が安定したダイシング装置とすることが可能となる。
【0066】
また、方形筐体の対角線方向に配置された移動軸と装置外周縁との間の空いた空間に排出機構が配置されて排出口に向かって幅狭となっているので、廃液の流速が高められて効率良く捕集されてスムーズに排出される。
【0067】
なお、本実施の形態では2つのスピンドルがY移動軸に対向して設けられたダイシング装置において説明しているが本発明はこれに限らず、Y移動軸に1つのスピンドルのみが設けられたダイシング装置においてもY移動軸とX移動軸とがダイシング装置の対角線方向に配置することにより実施可能である。
【0068】
また、本実施の形態ではX移動軸4とY移動軸5はダイシング装置1の外形に対して45度に傾斜して配置されているが、本発明はこれに限らず、ダイシング装置1外形の対角線方向に沿っていれば40度から50度程度の傾斜角であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1、10…ダイシング装置,2…方形筐体,3、31…ワークテーブル,4…X移動軸,5…Y移動軸,6…Yベース,7…オイルパン,8…排出機構,9…ワーク切断加工部,11…排出口,12…排気口,13…ワーク交換部,14…開口部,15…排出管,16…ダイシング装置ユニット,17…ローダ,20…加工部,21…ブレード,22…スピンドル,23…撮像手段,24…表示手段,32…回転テーブル,33…Xテーブル,41…Yテーブル,43…Zテーブル,51…ロードポート,52…洗浄部,53…搬送手段,W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置したワークテーブルと、該ワークを切断するブレードと、該ワークテーブル上のワークを前記ブレードに対して相対的に移動させるワークテーブル送り機構と、前記ブレードを回転可能に取り付けた1つ以上のスピンドルと、該スピンドルを支持するスピンドル移動機構と、を備え、該スピンドル移動機構と前記ワークテーブル送り機構とが互いに直交して配設されたダイシング装置において、
前記スピンドル移動機構と前記ワークテーブル送り機構は、平面視方形に形成されたダイシング装置の方形筐体の対角線上に配置され、且つ、前記ダイシング装置の略中央部にワーク切断加工部が配設されているとともに、前記ワークテーブル送り機構が配置された一端側にワーク交換部が設けられ、
前記ワークテーブル送り機構の前記ワーク切断加工部を挟んで前記ワーク交換部とは反対側には、前記ワークの切断時に前記ブレードの回転に伴って飛散する廃液又はミストを排出する排出部が設けられることを特徴とするダイシング装置。
【請求項2】
前記排出部には、前記廃液又はミストを排出するための流出口を有する排出機構が配設され、
前記排出機構は、前記流出口に向かうにつれて幅狭となるように構成されることを特徴とする請求項1に記載のダイシング装置。
【請求項3】
前記排出機構には、前記廃液又はミストを前記流出口に収束させるための1対のガイド部材が前記廃液又はミストの飛散方向の略延長線上に設けられることを特徴とする請求項2に記載のダイシング装置。
【請求項4】
前記ワーク切断加工部から流れ出る廃液を受けるオイルパンが前記ワークテーブルを囲むように設けられ、該オイルパンの一端には前記排出機構が配設され、
前記オイルパンは前記ワーク切断加工部から前記排出機構へ向かうに伴い幅狭になるように形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のダイシング装置。
【請求項5】
前記ワーク交換部が設けられた側の前記方形筐体の角には、前記スピンドル移動機構と略平行となるように斜めに切欠かれた切欠き箇所が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のダイシング装置。
【請求項6】
前記方形筐体の前記切欠き箇所にワーク交換及びメンテナンスを行うための開口部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載のダイシング装置。
【請求項7】
前記スピンドル移動機構には、該スピンドル移動機構が配置される前記方形筐体の対角線方向に沿って2つのスピンドルが対向するように配置されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のダイシング装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のダイシング装置を偶数台設置してなるダイシング装置ユニットであって、前記方形筐体の前記ワーク交換部同士が互いに隣接するように2台を一組として配置することにより構成されることを特徴とするダイシング装置ユニット。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のダイシング装置を用いたダイシング方法であって、前記ワークを前記方形筐体の一方の対角線方向に沿って搬送し、該方形筐体の略中央部に位置する前記スピンドル移動機構と前記ワークテーブル送り機構とが互いに直交した前記ワーク切断加工部にて停止させた後、回転する前記ブレードと前記ワークとを相対的に移動させることにより該ワークを切断することを特徴とするダイシング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−93624(P2013−93624A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−28721(P2013−28721)
【出願日】平成25年2月18日(2013.2.18)
【分割の表示】特願2010−57802(P2010−57802)の分割
【原出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】