説明

ダイヤル装置及び電子機器

【課題】従来のダイヤル装置では、操作ダイヤルの回転力を調整するための手段が存在せず、個々の回転機器が持つ摩擦抵抗力によってダイヤル装置の回転力が決まっていたため、ユーザーに応じた操作感、操作性が得られないという問題があった。
【解決手段】操作ダイヤル14と、置き指標15と、ホルダ16と、クラッチ部45と、第1の摩擦力発生部と、第2の摩擦力発生部と、を設けた。操作ダイヤル14は可変抵抗器60の回転軸64に連結される枢軸17を有し、置き指標15は枢軸と同一の軸心線上に回転中心が配置され且つ操作ダイヤルと相対的に回転可能とされている。ホルダ16は操作ダイヤル及び置き指標を回転自在に支持し、クラッチ部45は操作ダイヤルと置き指標との間を、所定位置において回転力が所定値以下のときに一体的に回転させる。また、第1の摩擦力発生部は操作ダイヤルの回転力を調整可能とされ、第2の摩擦力発生部は置き指標の回転力を調整可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種のコントロール機器に使用されるダイヤル装置及びそのダイヤル装置を使用した電子機器に関し、特に、ダイヤル操作時の回転力を微細に調整可能としたトルク調整機能を有するダイヤル装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、この種のダイヤル装置としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、電子機器等の操作パネルより突出した調整用回転ノブに関するものが記載されている。この特許文献1に記載された連動ノブは、第1及び第2のノブと、第1及び第2のリブと、第1のノブと第2のノブを係合して連動せしめる溝及び突起を具備している。第1及び第2のノブは、可変抵抗器の第1の軸及び第2の軸にそれぞれ取り付けられる。第1及び第2のリブは、第1及び第2のノブに各々略円筒状に設けられる。また、溝及び突起は、第1及び第2のリブに対向して設けられる、ことを特徴としている。
【0003】
第1の軸及び第2の軸は、可変抵抗器の回転軸として一体に設けられており、ボリューム本体に近い側が第2の軸として形成され、先端側の小径部が第1の軸として形成されている。そして、第1の軸に第1のノブがネジ止めされ、第2の軸に第2のノブがネジ止めされていて、これにより、2つのノブが同一軸心線上に配置されている。また、第1のノブの第1のリブに突状部を設けると共に、第2のノブの第2のリブに溝部を設け、突状部と溝部が弾性係合したときに両ノブが一体的に回転し、それ以外のずれた位置では相対的に回転するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−129419号公報
【0005】
しかしながら、上述した従来のダイヤル装置においては、第1のノブ及び第2のノブを回転するための回転力が、可変抵抗器の持つ摩擦抵抗力によって決定されており、その回転力を調整するための手段が無かった。そのため、個々の可変抵抗器が持つ摩擦抵抗力によってその回転力が決まってしまい、固体差によって回転力のバラツキが大きく、操作性が悪いものであった。また、可変抵抗器のストッパ機能が保障する耐久トルクが大きくないことから、可変抵抗器を回転するために過大な力が入力されると、そのストッパ機能が破損するおそれがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、従来のダイヤル装置では、操作ダイヤルの回転力を調整するための手段が存在せず、個々の回転機器が持つ摩擦抵抗力によってダイヤル装置の回転力が決まっており、ユーザーに応じた操作感、操作性が得られないという問題があった。また、可変抵抗器等の回転装置が個々に保障する耐久トルクが大きくないために、過大な操作力が入力されると、回転装置自体が持つストッパ機能が破損されるおそれがあるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のダイヤル装置は、第1のダイヤルと、第2のダイヤルと、ホルダと、クラッチ部と、第1の摩擦力発生部と、第2の摩擦力発生部と、を設けた。第1のダイヤルは回転機器の回転部に連結される枢軸を有し、第2のダイヤルは枢軸と同一の軸心線上に回転中心が配置され且つ第1のダイヤルと相対的に回転可能とされている。ホルダは第1のダイヤル及び第2のダイヤルを回転自在に支持し、クラッチ部は第1のダイヤルと第2のダイヤルとの間を、所定位置において回転力が所定値以下のときに一体的に回転させる。また、第1の摩擦力発生部は第1のダイヤルの回転力を調整可能とされ、第2の摩擦力発生部は第2のダイヤルの回転力を調整可能とされている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のダイヤル装置によれば、第1のダイヤル及び第2のダイヤルのトルク調整部をそれぞれ設け、第1のダイヤルと第2のダイヤルの回転力をそれぞれ微細に調整できる構成とした。そのため、各ダイヤルの回転力を、ユーザーの好みに応じた大きさに設定することができ、しかも、回転力を微細に調整できるため、操作感を良好なものとして、操作性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のダイヤル装置の実施の形態の一例を示す中央部縦断面図である。
【図2】本発明のダイヤル装置の実施の形態の一例を示すもので、図1と直交する方向における中央部縦断面図である。
【図3】図1のX−X線部分の断面図である。
【図4】本発明のダイヤル装置の使用状態の一例を示す説明図である。
【図5】本発明のダイヤル装置に係るホルダの斜視図である。
【図6】本発明のダイヤル装置に係るブレーキバンドの斜視図である。
【図7】本発明のダイヤル装置を使用した電子機器の実施の形態の一例を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1のダイヤルと第2のダイヤルに摩擦力発生部をそれぞれ設けると共に、第1のダイヤルと第2のダイヤルとの間をクラッチ機構で断続可能に連結する構成とした。そのため、第1のダイヤルと第2のダイヤルの回転力を自由に設定することができ、各ダイヤル単体の操作性と、2つのダイヤルを回転方向に一体化させた連結部品の操作性を共に向上できるダイヤル装置を、簡単な構成によって実現した。
【実施例】
【0011】
図7は、本発明のスイッチ装置が使用されている電子機器の実施の形態の一例を示すもので、テレビカメラを遠隔操作するリモートコントロール装置である。このリモートコントロール装置1は、一般的には、テレビカメラの操作卓に取り付けられており、その状態でテレビカメラの遠隔操作に使用されている。
【0012】
リモートコントロール装置1は、長方形の容器からなる筐体2と、この筐体2内に収納された図示しない制御装置と、この制御装置を動作させる操作情報を入力させる多数のスイッチ装置等を備えている。筐体2は、上面に開口した容器体4と、この容器体4の上面開口部を閉じる蓋体5と、蓋体5の上面に取り付けられた操作表示板6とを有している。容器体4の開口部には、図示しないが、蓋体5側に突出する位置合わせ用のガイドが設けられている。このガイドにより、蓋体5が容器体4に対して位置合わせされて、被された蓋体5に位置ずれが生じないようにしている。
【0013】
蓋体5は、図示しないが、下面に開口された下開口凹部と、上面に設けられた比較的底の浅い上開口凹部とを有している。下開口凹部内には基板が収納されており、その基板が、ブラケットを介して蓋体に固定されている。蓋体5の上開口凹部には操作表示板6が装着されており、その操作表示板6は、接着剤等の固着手段によって蓋体5に一体的に固定されている。基板は、蓋体5の下開口凹部の略全体を覆うことができる大きさを有する板状の部材からなり、その一面(若しくは両面)には所定の形状に形成された回路パターンが設けられている。
【0014】
この基板を用いて蓋体5に、多数の押圧式スイッチ装置7と、第1のダイヤル装置8と、複数の第2のダイヤル装置9と、複数の情報表示部10とが設けられている。押圧式スイッチ装置7は、図示しないが、押圧スイッチと、光源と、キートップ部材と、シート部材と、接着ゴム等によって構成されている。押圧スイッチは、一般的なオン・オフスイッチであり、入力部を1度押圧操作すると回路が開かれ(又は閉じられ)、2度目の押圧操作によって回路が閉じられ(又は開かれ)、3度目以降ではその回路の開閉動作が繰り返されるものである。このような押圧スイッチの多数個が、基板の一面の所定位置にそれぞれ実装されている。そして、各押圧スイッチの両側部には、照明用の光を放射する光源としての発光ダイオード(LED)が実装されている。
【0015】
複数の第2のダイヤル装置9は、基板に固定されたスイッチ部本体と、このスイッチ部本体の回転軸に固定されたダイヤル部とをそれぞれ有している。各スイッチ部本体の回転軸が、蓋体5の上面と操作表示板6とをそれぞれ貫通しており、その回転軸の筐体2の上面から上方へ突出した部分に、それぞれのダイヤル部が固定されている。また、情報表示部10は、例えば、液晶ディスプレイによって構成されており、その表示面が蓋体5の上面と操作表示板6とを貫通して、筐体2の上面に露出されている。
【0016】
第1のダイヤル装置8は、可変抵抗器を回動させて抵抗値を変化させることによりテレビカメラのIRIS(絞り)調整を行うものである。この第1のダイヤル装置8は、操作ダイヤル14と、置き指標15と、ホルダ16と、枢軸17と、トルク胴18と、第1のトルクバンド21と、第2のトルクバンド22、クラッチ部45等によって構成されている。そして、図4に示すような形態で蓋体5に取り付けられている。
【0017】
この第1のダイヤル装置8には、次の3つの要件が必須要件として要求されている。第1の要件は、クラッチ部45が接続されていない状態において操作ダイヤル14を動かしたときには、置き指標15は動かないこと。第2の要件は、クラッチ部45が接続されていない状態において置き指標15を動かしたときには、操作ダイヤル14は動かないこと。第3の要件は、クラッチ部45を接続して操作ダイヤル14と置き指標15を連動可能な状態としたとき、操作ダイヤル14又は置き指標15を動かしたときには他方の置き指標15又は操作ダイヤル14が一緒に動くことである。
【0018】
このような3つの要件を満たす第1のダイヤル装置8は、図1〜図4に示すような構成を有している。即ち、第1のダイヤル装置8のホルダ16は、図5に示すように、円筒状の胴体部31と、この胴体部31の軸方向の一側に設けられた固定部32と、この固定部32に設けられたストッパ受部33とを有している。ホルダ16の胴体部31の一側には、半径方向内側に展開するように内フランジ部31aが設けられている。この内フランジ部31aの穴38に、枢軸17の軸方向の一側を回転自在に支持する第1のベアリング24が嵌合されている。
【0019】
更に、胴体部31には、第1のトルクバンド21の一部を外部に突出させるための半円形をなす第1の円弧溝34と、第2のトルクバンド22の一部を外部に突出させるための半円形をなす第2の円弧溝35とが設けられている。2つの円弧溝34,35は、仕切り壁36を挟んで軸方向に隣り合うように配置されている。そして、第1及び第2の円弧溝34,35の周縁部は、補強用のリブ部37によって肉厚に補強されている。胴体部31の固定部32と反対側は、同一の肉厚を保持して筒状に開口されている。
【0020】
ホルダ16の固定部32は、胴体部31の軸方向の一側から半径方向外側に突出する4つの脚体片32aを有しており、各脚体片32aの先端部には、ホルダ16を筐体2の蓋体5にネジ止めする(図4を参照)ための挿通穴38がそれぞれ設けられている。また、固定部32の1組の隣り合う脚体片32a,32aの基部には、胴体部31と反対側に突出するストッパ受部33が設けられている。ストッパ受部33は、枢軸17が回動する角度を制限するもので、後述する回転ストッパの回転軌跡上に突出するように形成されている。ホルダ16の材質としては、例えば、POM(ポリアセタール)が好適であるが、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)その他のエンジニアリングプラスチックは勿論のこと、アルミニウム合金等の金属を用いることもできる。
【0021】
図1及び図2に示すように、枢軸17は、リング状の頭部17aを有する筒軸状の部材からなり、その頭部17aを下に向けた状態で第1のベアリング24の内輪の穴に挿通されている。枢軸17の頭部17aには、半径方向外側に一部を突出させた状態で取付ネジ40が取り付けられている。この取付ネジ40の頭部17aから突出した部分に回転ストッパ41が圧入されていて、頭部17aの外周面から半径方向外側に突出されている。この回転ストッパ41が、枢軸17の回動に応じて回動され、ホルダ16に設けたストッパ受部33の両側面に選択的に当接される。回転ストッパ41の材質としては、例えば、シリコンゴム等のゴム状弾性体が好適である。
【0022】
第1のベアリング24は、枢軸17の頭部17aに接触する根元部分まで挿入されており、この第1のベアリング24を挟むように、リング状をなすトルク胴18が枢軸17に嵌合されている。トルク胴18は、半径方向に貫通するネジ穴を有し、そのネジ穴に螺合された固定ネジ42によって枢軸17にネジ止めされ、枢軸17と一体に回動するように構成されている。このトルク胴18には、第1のトルクバンド21のリング部23aが嵌合される。トルク胴18の材質としては、例えば、黄銅が好適であるが、その他の軸受部材として使用される金属材料を用いることができることは勿論である。
【0023】
枢軸17の頭部17aと反対側の先端側に、第2のベアリング25が嵌合されている。第2のベアリング25は、枢軸17の先端から内側へ入った部分まで挿入されており、この枢軸17の先端部に操作ダイヤル14が固定されている。操作ダイヤル14は、第1のダイヤルの一具体例を示すもので、中心部に軸方向に延在された中央穴14aを有しており、その中央穴14aに枢軸17の先端部が嵌合されている。そして、操作ダイヤル14は、半径方向に貫通するネジ孔14bに螺合された固定ネジ43によって枢軸17にネジ止めされ、枢軸17と回転方向に一体とされている。この操作ダイヤル14の端面には、矢印形状の指示記号を設けた端面板44が取り付けられている。
【0024】
また、第2のベアリング25の外輪に置き指標15が嵌合されている。置き指標15は、第2のダイヤルの一具体例を示すもので、中央部に筒軸状のトルク胴部15aを有するリング状の部材として形成されている。この置き指標15の中央穴15bに、第2のベアリング25の外輪が嵌合されている。トルク胴部15aには、第2のトルクバンド22のリング部23aが嵌合される。トルク胴部15aの外径は、トルク胴18の外径と同一寸法に形成されており、これにより、第2のトルクバンド22を第1のトルクバンド21と共通の部品として、トルクバンドの共用化を図っている。
【0025】
また、図2に示すように、操作ダイヤル14と置き指標15との間にはクラッチ部45が介在されており、所定位置において回転力が所定値以下のときに、操作ダイヤル14と置き指標15とが一体的に回転するよう動力伝達可能に構成されている。クラッチ部45は、操作ダイヤル14に転動可能に保持された鋼球46と、この鋼球46を置き指標15側に付勢するスプリング47と、置き指標15の操作ダイヤル14と対向する面に設けたスリット溝48とを有している。スリット溝48は、置き指標15の端面に半径方向に延在するように設けられており、操作ダイヤル14に設けた矢印に対する指標としての役割も果たしている。
【0026】
鋼球46は、操作ダイヤル14の半径方向中途部において、その半径方向と直交するよう軸方向に延在させて設けた軸方向穴51に回転自在に収容されている。この鋼球46が、軸方向穴51内に挿入されたスプリング47によって付勢され、その軸方向穴51を閉じる固定ネジ52によってスプリング47の抜け出しが防止されている。鋼球46とスプリング47とスリット溝48とによってクラッチ部45が構成されている。
【0027】
操作ダイヤル14と置き指標15と枢軸17と鋼球46の材質としては、例えば、スチール鋼が好適であるが、ステンレス鋼その他の金属を用いることができ、また、強度の十分に大きなエンジニアリングプラスチックを用いることもできる。
【0028】
第1のトルクバンド21及び第2のトルクバンド22は、図6に示すような構成を有している。即ち、トルクバンド21(及び22)は、リング状に形成されたリング部23aと、リング部23aの周方向の両端に設けた第1及び第2の対向片23b,23cと、周方向の中途部に設けた第1及び第2のストッパ片23d、23eとを有している。リング部23aは、略一周近くまで周方向に連続されており、その一端から半径方向外側に第1の対向片23bが延在され、他端から半径方向外側に第2の対向片23cが延在されている。そして、リング部23aの第1の対向片23b側の周方向の中途部に、半径方向外側に突出する第1のストッパ片23dが設けられ、第2の対向片23c側の周方向の中途部に、同じく半径方向外側に突出する第2のストッパ片23eが設けられている。
【0029】
第1及び第2の対向片23b,23cは、ホルダ16に組み立てた状態において、円弧溝34(又は35)の略中央部に対向した状態で配置される。また、第1及び第2のストッパ片23d、23eのうち、第1のストッパ片23dは円弧溝34(又は35)の一方の終端に当接され、第2のストッパ片23eは円弧溝34(又は35)の他方の終端に当接された状態となる。リング部23aの略中間部には、トルク胴18を枢軸17に締付固定している固定ネジ42を、トルクバンド21(及び22)を装着したままの状態で回動させるための半円形の切欠き53が設けられている。更に、固定ネジ42の回動をホルダ16の外側から可能とするために、ドライバの先端を挿入することができる透孔19が胴体部31に設けられている。
【0030】
また、トルクバンド21(及び22)の第1の対向片23bには、調整ネジ54が挿通される第1の挿通孔55aが設けられ、第2の対向片23cには、同じく調整ネジ54が挿通される第2の挿通孔55bが設けられている。更に、第1の対向片23bには、係合爪56を設けることによってナット保持部57が設けられている。ナット保持部57にはナット58が保持され、このナット58に調整ネジ54のネジ軸部が螺合されている。更に、調整ネジ54のネジ軸部の先端には、ネジ軸部の先端を覆い隠すための袋ナット59が装着されている。
【0031】
このような構成を有する第1のトルクバンド21及び第2のトルクバンド22が、図3等に示すような状態でホルダ16等に装着されている。第1のトルクバンド21及び第2のトルクバンド22の材質としては、例えば、POM(ポリアセタール)が好適である。トルクバンド21,22の材質としてPOMを使用することにより、所定の強度を確保しつつ、ネジの締付具合による感触への影響を無くすことができる。なお、トルクバンド21,22の材質としてPOM以外にも、例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)その他のエンジニアリングプラスチックを用いることができることは勿論である。
【0032】
枢軸17に固定されたトルク胴18と、第1のトルクバンド21と、調整ネジ54及びナット58とによって、第1のダイヤルである操作ダイヤル14の回転力を調整可能な第1の摩擦力発生部を構成している。そして、置き指標15に設けたトルク胴部15aと、第2のトルクバンド22と、調整ネジ54及びナット58とによって、第2のダイヤルである置き指標15の回転力を調整可能な第2の摩擦力発生部を構成している。また、ホルダ16に設けたストッパ受部33と、枢軸17に固定した回転ストッパ41とによって、枢軸17の回転角を規制する回転角規制部が構成されている。
【0033】
図1及び図2に示すように、枢軸17の下方に、回転機器の一具体例を示す可変抵抗器60が配置されている。可変抵抗器60は、テレビカメラのIRIS(絞り)を調整するもので、可変抵抗部が内蔵された抵抗器筐体61と、その蓋体62と、ナット63と、蓋体62の穴を貫通して外方に突出された回転軸64と、を有している。回転軸64の先端部は、枢軸17の頭部17aに設けた軸方向穴17bに嵌合されており、半径方向に貫通するネジ孔に螺合された固定ネジ65によって枢軸17にネジ止めされ、枢軸17と回転方向に一体とされている。可変抵抗器60は、所定の回路パターンを設けた基板67に搭載されていて、回転軸64と反対側に基板67が取り付けられている。
【0034】
この可変抵抗器60は、L字状に形成された支持ブラケット68によって支持されている。支持ブラケット68は薄い板金部材によって形成されており、長手方向中間部の幅を細くすることによって折曲加工を容易にしている。そして、折曲部の両側に2つの片を形成し、第1の片68aに可変抵抗器60が取り付けられている。支持ブラケット68の第2の片68bには挿通孔が設けられており、その挿通孔に挿通される取付ネジ69によって第2の片68bがホルダ16のストッパ受部33の外面にネジ止めされている。
【0035】
このような構成を有する第1のダイヤル装置8は、例えば、次のようにして組み立てることができる。まず、ホルダ16の第1の円弧溝34に第1のトルクバンド21を装着すると共に、第2の円弧溝35に第2のトルクバンド22を装着する。第1のトルクバンド21及び第2のトルクバンド22には、予め調整ネジ54とナット58と袋ナット59とを取り付けておくようにするとよい。しかしながら、これら調整ネジ54等は、組立作業の最後に取り付けるようにしてもよい。
【0036】
次に、ホルダ16のストッパ受部33側から内フランジ部31aの穴38に第1のベアリング24を嵌合する。次いで、胴体部31の内部に開口側からトルク胴18を挿入し、そのトルク胴18を第1のトルクバンド21のリング部23aの内側に嵌合する。次に、ストッパ受部33側から枢軸17を第1のベアリング24の穴に挿入し、トルク胴18の穴を貫通させる。このとき、枢軸17の頭部17aの内端面が第1のベアリング24の端面に当接するまで枢軸17を差し込むと、トルク胴18に設けたネジ孔が枢軸17に設けたネジ止め用の環状溝に一致することになる。
【0037】
次に、図2に示すように、トルク胴18に設けたネジ孔を、リング部23aに設けた切欠き53とホルダ16の胴体部31に設けた透孔19とに一致させる。次いで、透孔19内に締付工具の先端を挿入し、ネジ孔に螺合されている固定ネジ42を締め付け、トルク胴18を枢軸17に固定する。これにより、トルク胴18が枢軸17に対して回転方向に一体化される。
【0038】
次に、置き指標15の中央穴15bに第2のベアリング25を嵌合させる。次いで、第2のベアリング25が取り付けられた置き指標15を、ホルダ16に組み立てられている枢軸17に組み立てる。即ち、第2のベアリング25の穴に枢軸17を挿通させ、第2のベアリング25を所定位置まで押し込む。このとき、置き指標15のトルク胴部15aを第2のトルクバンド22のリング部23aの内側に嵌合する。これにより、置き指標15が、ホルダ16及び枢軸17に対して共に回転自在に支持される。
【0039】
次に、操作ダイヤル14を枢軸17の先端に固定する。即ち、操作ダイヤル14の中央穴14aに枢軸17の先端部を差し込み、ネジ孔14bに螺合されている固定ネジ43を締め付け、操作ダイヤル14を枢軸17に固定する。これにより、操作ダイヤル14が枢軸17に対して回転方向に一体化される。この際、操作ダイヤル14の軸方向穴51には鋼球46とスプリング47を挿入しておき、固定ネジ52でこれらの抜け止めをしておくようにする。これにより、クラッチ部45を介して操作ダイヤル14と置き指標15とが、スリット溝48に鋼球46が係合している状態の間だけ動力伝達可能に連結される。
【0040】
次に、基板67に実装されている可変抵抗器60を支持ブラケット68の一側に取り付け、回転軸64を枢軸17の頭部17a側から軸方向穴17bに挿入する。次いで、頭部17aに設けたネジ孔に螺合されている固定ネジ65を締め付け、回転軸64を枢軸17に固定する。これにより、可変抵抗器60の回転軸64が枢軸17に対して回転方向に一体化される。次に、支持ブラケット68の他側を、ホルダ16のストッパ受部33に取付ネジ69でネジ止めする。これにより、1個の装置としてユニット化された第1のダイヤル装置8の組立作業が完了する。
【0041】
このようにして組み立てられた第1のダイヤル装置8の操作トルクは、調整ネジ54の回動操作により、所望の大きさに簡単に設定できると共に、微細なトルク調整を精度よく行うことができる。しかも、ユーザーに応じた操作感、操作性を得ることができる。図3は、第1の摩擦力発生部におけるトルク調整を説明することができる図であり、第2の摩擦力発生部におけるトルク調整も略同様である。
【0042】
図2及び図3に示すように、第1の摩擦力発生部の場合、調整ネジ54を締付側に回すと、2つの対向片23b、23cが互いに近づく方向に移動する。これにより、トルク胴18に巻き付けられている第1のトルクバンド21のリング部23aの締付力が増加され、トルク胴18と回転方向が一体とされている操作ダイヤル14を回転操作するための操作力が増加される。これに対して、調整ネジ54を緩み側に回すと、2つの対向片23b、23cが互いに離れる方向に移動する。これにより、トルク胴18に巻き付けられているリング部23aの締付力が緩められ、操作ダイヤル14を回転操作するための操作力が減少される。
【0043】
この場合、操作力(摩擦抵抗力)の増減は、調製ネジ54の回動操作によって行われており、調製ネジ54の回動量に較べると、その回動量によるリング部23aの半径方向における変位量は極めて微細なものである。そのため、調製ネジ54を回動操作することにより、第1のトルクバンド21によるトルク胴18の締付力を微細に変化させて、操作ダイヤル14を回転するための力を広範囲に亘って微調整することができる。従って、操作ダイヤル14及び置き指標15の回転力を、ユーザーの好みに応じて任意の大きさに設定できると共に、その後においても精度よく微調整することができる。
【0044】
このように操作トルクの調整を行うことができる第1のダイヤル装置8は、例えば、次のようにして使用することができる。最初に、第1のダイヤル装置8を大きく動かして目標値に近づけ、次に、第1のダイヤル装置8を微細に動かして微調整を行うようにする。この場合は、まず、操作ダイヤル14又は置き指標15を回転させ、クラッチ部45の鋼球46をスリット溝48に係合させる。この場合、回転しようとする側のダイヤルは回転できるが、その回転力は他方のダイヤルには伝わらないため、他方のダイヤルは当初の位置に維持される。
【0045】
次に、鋼球46がスリット溝48に係合している状態で、モニタ画面を見ながら、直径の大きな置き指標15を目標値(これは、画面の「明るさ」等を見て、大まかに決める。)まで回転させる。このとき、置き指標15と操作ダイヤル14とはクラッチ部45を介して連結されて回転方向に一体とされており、また、操作ダイヤル14には枢軸17が固定されているため、可変抵抗器60の回転軸64が同じ回転量だけ回転駆動される。これにより、テレビカメラのIRIS値が大きき変化し、画面の「明るさ」が目標値まで急速に近づけられる。
【0046】
次に、操作ダイヤル14と置き指標15を相対的に回転させて鋼球46をスリット溝48から離脱させる。次いで、モニタ画面を見ながら、操作ダイヤル14を回して画面の最適な明るさ(IRIS値の最適な値)を探す。このとき、操作ダイヤル14の回転力は置き指標15には伝わらないため、置き指標15は目標値の近傍の回転停止位置に保持される。そして、操作ダイヤル14の回動操作によって所望の画面状態が得られたところで、その操作ダイヤル14の位置を保持する。
【0047】
その後、画面状態を変えたい場合には、操作ダイヤル14を戻して、鋼球46をスリット溝48に係合させることにより、目標値の近傍の回転停止位置までIRIS値(画面状態)を戻すことができる。このように、本発明によれば、2つのダイヤルを2段階に回動することにより、IRIS値(画面状態)の調整を迅速に、しかも、精度よく行うことができる。
【0048】
また、枢軸17には回転ストッパ41が取り付けられており、枢軸17が過大に回転操作された場合には、その回転ストッパ41がホルダ16に設けたストッパ受部33に当接するように構成している。そのため、可変抵抗器60に必要以上の回転力が加えられるのを防止することができ、操作ダイヤル14の回転操作によって可変抵抗器60が破損されるのを防ぐことができる。従って、操作ダイヤル14の回転量の規制を、回転装置である可変抵抗器60が持つ機械特性に頼っていないため、製造中止等によって可変抵抗器60を入手することが困難になった場合にも、同種の他部品への置き換えを容易に行うことができる。
【0049】
以上説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で各種の変形実施が可能である。前述の実施例では、電子機器として、ダイヤル装置を用いたテレビカメラ用のリモートコントロール装置に適用した例について説明したが、例えば、業務用録音装置、音響装置その他各種の電子機器に適用できるものである。
【符号の説明】
【0050】
1…リモートコントロール装置(電子機器)、 2…筐体、 8…第1のダイヤル装置(ダイヤル装置)、 14…操作ダイヤル(第1のダイヤル)、 15…置き指標(第2のダイヤル)、 15a…トルク胴部、 16…ホルダ、 17…枢軸、 18…トルク胴、 21…第1のトルクバンド、 22…第2のトルクバンド、 23a…リング部、 23b、23c…対向片、 23d、23e…ストッパ片、 24,25…ベアリング、 31…胴体部、 33…ストッパ受部、 34,35…円弧溝、 41…回転ストッパ、 45…、クラッチ部、 46…鋼球、 47…スプリング、 48…スリット溝、 54…調整ネジ、 57…ナット保持部、 60…可変抵抗器(回転機器)、 64…回転軸、 68…支持ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機器の回転部に連結される枢軸を有する第1のダイヤルと、
前記枢軸と同一の軸心線上に回転中心が配置され且つ前記第1のダイヤルと相対的に回転可能とされた第2のダイヤルと、
前記第1のダイヤル及び前記第2のダイヤルを回転自在に支持するホルダと、
前記第1のダイヤルと前記第2のダイヤルとの間を、所定位置において回転力が所定値以下のときに一体的に回転させるクラッチ部と、
前記第1のダイヤルの回転力を調整可能な第1の摩擦力発生部と、
前記第2のダイヤルの回転力を調整可能な第2の摩擦力発生部と、
を設けた
ダイヤル装置。
【請求項2】
前記第1の摩擦力発生部は、
前記枢軸に設けたトルク胴と、
前記トルク胴に巻き付けられると共に前記枢軸の回転方向に対して回転不能な状態で前記ホルダに支持された第1のトルクバンドと、
前記第1のトルクバンドによる前記トルク胴に対する締付力を調整可能な調整ネジと、を有する
請求項1記載のダイヤル装置。
【請求項3】
前記第2の摩擦力発生部は、
前記第2のダイヤルに設けたトルク胴部と、
前記トルク胴部に巻き付けられると共に前記枢軸の回転方向に対して回転不能な状態で前記ホルダに支持された第2のトルクバンドと、
前記第2のトルクバンドによる前記トルク胴部に対する締付力を調整可能な調整ネジと、を有する
請求項1記載のダイヤル装置。
【請求項4】
前記枢軸の回転角を規制する回転角規制部を設け、
前記回転角規制部は、
前記枢軸に固定された回転ストッパと、
前記回転ストッパの回転軌跡上に突出するよう前記ホルダに設けたストッパ受部と、を有する
請求項1記載のダイヤル装置。
【請求項5】
ユニット化されたダイヤル装置を備えた電子機器であって、
前記ダイヤル装置は、
回転機器の回転部に連結される枢軸を有する第1のダイヤルと、
前記枢軸と同一の軸心線上に回転中心が配置され且つ前記第1のダイヤルと相対的に回転可能とされた第2のダイヤルと、
前記第1のダイヤル及び前記第2のダイヤルを回転自在に支持するホルダと、
前記第1のダイヤルと前記第2のダイヤルとの間を、回転力が所定値以下のときに一体的に回転させるクラッチ部と、
前記第1のダイヤルの回転力を調整可能な第1の摩擦力発生部と、
前記第2のダイヤルの回転力を調整可能な第2の摩擦力発生部と、
を設けた
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−209876(P2011−209876A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75401(P2010−75401)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】